JP2020085124A - 伝動ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】多数のエレメントの幅方向における中央の開口部分にフープを組み付けて構成する伝動ベルトを対象にして、伝動ベルトが走行する際のエレメントの姿勢を安定させて、耐久性および信頼性を向上することが可能な伝動ベルトを提供する。【解決手段】板厚方向に配列した多数の板片状のエレメント3を、フープ2によって環状に結束して構成される伝動ベルト1において、隣接するエレメント3同士で互いにはまり合う第1ボス部10および第1ディンプル部11と、第2ボス部13および第2ディンプル部14とを設け、それら第1ボス部10および第1ディンプル部11と第2ボス部13および第2ディンプル部14とを、それぞれ、エレメント3の高さ方向におけるロッキングエッジ12を挟んだ上下に分かれた位置に形成する。【選択図】図4
Description
この発明は、多数の板片状のエレメントを姿勢をそろえて配列し、帯状のフープで環状に結束することにより構成される伝動ベルトに関するものである。
特許文献1には、無段変速機用の伝動ベルトが記載されている。この特許文献1に記載された伝動ベルトは、無端キャリヤ(帯状のフープ)、および、複数の横断部材(板片状のエレメント)を備えている。エレメントは、ベース部、および、二本のピラー部を有している。二本のピラー部は、それぞれ、ベース部の軸方向(幅方向)の両端に形成されている。二本のピラー部の間には、フープを組み付けて配置するための開口部およびサドル面が形成されている。エレメントは、フープの周方向に沿って一列に配列されている。エレメントの第1ピラー部および第2ピラー部には、それぞれ、互いにはまり合う凸部(ボス部)と凹部(ディンプル部)とが形成されている。それらボス部とディンプル部とがはまり合うことにより、隣接するエレメント同士を位置決めするとともに、エレメント同士の相対移動を規制している。そして、上記のようなエレメントの幅方向における中央の開口部分にフープが配置されている。フープによって多数のエレメントを環状に結束することにより、伝動ベルトが構成されている。
上記の特許文献1に記載された伝動ベルトのエレメントでは、ボス部およびディンプル部が、いずれも、二本のピラー部に形成されている。ピラー部は、上記のようにベース部からエレメントの高さ方向における上方に延出するように形成されており、エレメントの傾斜ゾーンすなわちロッキングエッジよりもエレメントの高さ方向における上側に位置している。ロッキングエッジは、伝動ベルトのピッチラインを形成する部分であり、ベース部に形成されている。したがって、エレメントのボス部およびディンプル部は、いずれも、ロッキングエッジ(ピッチライン)よりも上側に形成されている。特許文献1に記載された伝動ベルトのエレメントは、図1に示すように、伝動ベルト100がプーリ(図示せず)に巻き掛かる部分では、エレメント101の列が扇状に広がる。すなわち、エレメント101は、ロッキングエッジ102(ピッチライン)またはロッキングエッジ102(ピッチライン)よりも下側(図1の下側)の所定の箇所を中心にして回転するように動き、エレメント101の上側(図1の上側)の端部が、エレメント101同士が互いに離れる方向に開いてしまう。そのため、伝動ベルト100がプーリ(図示せず)に巻き掛かる部分では、ボス部103とディンプル部104との係合が外れ易くなってしまう。
また、図2に示すように、無段変速機200に用いられる伝動ベルト100は、プライマリプーリ(駆動プーリ)201とセカンダリプーリ(受動プーリ)202との間で、伝動ベルト100の走行方向に対するベルト軌道の芯ずれが不可避的に発生する。そのため、エレメント101がプライマリプーリ201に巻き掛かる入口部分では、エレメント101の幅方向(図2の左右方向)における一方の端部が、エレメント101同士が互いに離れる方向に開いてしまう。具体的には、図2に示すように、プライマリプーリ201の可動シーブ(図示せず)側(図2の左側)の端部が開いてしまう。そのため、伝動ベルト100がプライマリプーリ201に巻き掛かる部分の入口付近では、プライマリプーリ201の可動シーブ側の、ボス部103とディンプル部104との係合が外れ易くなってしまう。
上記の特許文献1に記載された伝動ベルトのエレメントは、幅方向における左右の二箇所にボス部とディンプル部との係合部分が設けられている。しかしながら、上記のように、伝動ベルトがプーリに巻き掛かる部分、あるいは、伝動ベルトがプライマリプーリプーリに巻き掛かる入口部分で、少なくとも片方のボス部とディンプル部との係合が外れてしまう可能性がある。場合によっては、両方のボス部とディンプル部との係合が外れてしまう可能性もある。そのようにエレメントのボス部とディンプル部との係合が外れた状態で伝動ベルトが走行すると、伝動ベルトの耐久性が低下してしまうおそれがある。
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、多数のエレメントの幅方向における中央の開口部分にフープを組み付けて構成する伝動ベルトを対象にして、伝動ベルトが走行する際のエレメントの姿勢を安定させて、耐久性および信頼性を向上させることが可能な伝動ベルトを提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、板厚方向に配列した多数の板片状のエレメントを、前記エレメントの幅方向における中央部分に配置する帯状のフープで環状に結束することにより構成される伝動ベルトにおいて、前記エレメントは、本体部分を形成する9ベース部と、前記幅方向における前記ベース部の一方の端部に、前記エレメントの高さ方向における上方へ立ち上がった状態に形成された第1ピラー部と、前記幅方向における前記ベース部の他方の端部に、前記高さ方向における上方へ立ち上がった状態に形成された第2ピラー部と、前記幅方向における前記第1ピラー部と前記第2ピラー部との間の前記ベース部の前記高さ方向における上端に形成され、前記幅方向における前記第1ピラー部と前記第2ピラー部との間に配置される前記フープの内周面に接触するサドル面と、前記エレメントの配列が円弧状に湾曲する際に隣接する他の前記エレメントと接触して自転の軸となるロッキングエッジと、前記第1ピラー部の前記板厚方向における一方の前面に形成された第1ボス部と、前記第1ピラー部の前記板厚方向における他方の後面に形成され、隣接する他の前記エレメントの前記第1ボス部とはまり合う第1ディンプル部と、前記ベース部の前記前面の前記高さ方向における前記ロッキングエッジよりも下側に形成された第2ボス部と、前記ベース部の前記後面の前記高さ方向における前記ロッキングエッジよりも下側に形成され、隣接する他の前記エレメントの前記第2ボス部とはまり合う第2ディンプル部と、を有していることを特徴とするものである。
なお、この発明の伝動ベルトは、固定シーブおよび可動シーブから構成され、所定の動力源からトルクが入力される駆動プーリと、前記プライマリプーリと共に前記伝動ベルトが巻き掛けられる従動プーリと、を備えたベルト式無段変速機に用いられ、前記駆動プーリの回転軸線方向における前記固定シーブ側に前記第1ピラー部が位置するように、前記駆動プーリに巻き掛けられることを特徴として構成してもよい。
この発明の伝動ベルトでは、第1ボス部および第1ディンプル部と、第2ボス部および第2ディンプル部とにより、隣接するエレメント同士を位置決めして、エレメントの配列の姿勢を安定させる。そして、それら第1ボス部および第1ディンプル部と、第2ボス部および第2ディンプル部とが、ロッキングエッジを挟んで、エレメントの上下に分かれた位置に形成される。そのため、前述の図1で示したように、エレメントの高さ方向における上側の端部が開く状況になっても、ロッキングエッジよりも下側(すなわち内周側)に設けられた第2ボス部と第2ディンプル部との係合が外れ易くなることはないので、エレメントの配列の姿勢が維持される。したがって、この発明の伝動ベルトによれば、伝動ベルトが走行する際のエレメントの姿勢を安定させて、伝動ベルトの耐久性および信頼性を向上させることができる。
なお、この発明の伝動ベルトは、固定シーブおよび可動シーブから構成される駆動プーリ(プライマリプーリ)と、従動プーリ(セカンダリプーリ)とを備えたベルト式無段変速機に適用できる。すなわち、この発明の伝動ベルトは、ベルト式無段変速機の駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられて用いられる。その場合、エレメントの第1ピラー部が、駆動プーリの固定シーブ側に位置するように、伝動ベルトが駆動プーリに巻き掛けられる。そのため、前述の図2で示したように、エレメントの幅方向における可動シーブ側の端部が開く状況になっても、固定シーブ側に設けられた第1ボス部と第1ディンプル部との係合が外れ易くなることはないので、エレメントの配列の姿勢が適切に維持される。したがって、この発明の伝動ベルトによれば、伝動ベルトが走行する際のエレメントの姿勢を確実に安定させて、伝動ベルトの耐久性および信頼性を向上させることができる。
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
この発明の実施形態で対象にする伝動ベルトは、二つのプーリの間で動力伝達を行うベルト伝動装置のVベルトとして用いられる。例えば、車両に搭載されるベルト式無段変速機に用いられる。図3に示す例では、伝動ベルト1は、ベルト式無段変速機CVTの駆動プーリ(プライマリプーリ)P1および従動プーリ(セカンダリプーリ)P2のそれぞれのプーリ溝Pvに巻き掛けられている。駆動プーリP1は、所定の動力源からトルクが入力されるプーリであり、駆動プーリP1の回転軸(図示せず)に固定されて回転軸と一体に回転する固定シーブSfと、駆動プーリP1の回転軸と一体に回転しつつ、駆動プーリP1の回転軸線AL方向に移動可能な可動シーブSmとから構成されている。そして、伝動ベルト1は、伝動ベルト1と、駆動プーリP1および従動プーリP2との間で生じる摩擦力によってトルクを伝達する。
伝動ベルト1は、例えば、図4、図5に示すように、帯状のフープ2と、多数(例えば、数百枚)の板片状のエレメント3とを備えている。そして、伝動ベルト1は、多数のエレメント3を姿勢をそろえて配列し、フープ2によって環状に結束することにより構成されている。
フープ2は、上記のように、多数のエレメントを環状に結束して保持するための部材である。したがって、フープ2には、伝動ベルト1がプーリP1,P2に巻き掛かる際に、その巻き掛かり径を自在に変更可能にするための十分な可撓性と、動力伝達時にプーリP1,P2から受ける伝達トルクや挟圧力に対抗するための十分な抗張力とを兼ね備えていることが要求される。そのため、フープ2は、例えば、図6に示すように、リング2aを、その厚さ方向に複数枚重ね合わせることによって構成されている。リング2aは、例えばスチールバンドなどの可撓性のある金属製の帯状部材によって形成されている。
エレメント3は、例えば、金属製の板片状の部材によって形成されている。エレメント3は、主要な構成要素として、ベース部4、サドル面5、第1ピラー部6、第2ピラー部7、第1フック部8、第2フック部9、第1ボス部10、第1ディンプル部11、ロッキングエッジ12、第2ボス部13、および、第2ディンプル部14を有している。
ベース部4は、エレメント3の本体部分を形成している。エレメント3の幅方向(図4の左右方向)におけるベース部4の一方(図4の右側)の端部が第1端部4aとなっており、エレメント3の幅方向におけるベース部4の他方(図4の左側)の端部が第2端部4bとなっている。第1端部4aの端面4c、および、第2端部4bの端面4dが、それぞれ、プーリ溝Pvのテーパ面に対応して傾斜する面として形成されている。これら左右の端面4c,4dが、エレメント3のいわゆるフランク面であって、プーリP1,P2のそれぞれのプーリ溝Pvに摩擦接触し、プーリP1,P2と伝動ベルト1との間でトルクを伝達する。
サドル面5は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で、フープ2の内周面2bと接触する面であり、エレメント3の高さ方向(図4、図5の上下方向)におけるベース部4の上端側の端面4eに形成されている。具体的には、後述するようにベース部4の両端部4a,4bにそれぞれ形成される第1ピラー部6と第2ピラー部7との間の端面4eに、サドル面5が形成されている。
第1ピラー部6は、ベース部4の第1端部4aに、エレメント3の高さ方向における上方に立ち上がった状態に形成されている。図4に示す例では、第1ピラー部6は、ベース部4のエレメント3の幅方向における右側の第1端部4aから、ベース部4のエレメント3の高さ方向における上方へ延び出ている。第1ピラー部6は、ベース部4と一体に形成されている。
第2ピラー部7は、ベース部4の第2端部4bに、エレメント3の高さ方向における上方に立ち上がった状態に形成されている。図4に示す例では、第2ピラー部7は、ベース部4のエレメント3の幅方向における左側の第2端部4bから、ベース部4のエレメント3の高さ方向における上方へ延び出ている。第2ピラー部7は、ベース部4と一体に形成されている。
なお、上記の第1端部4aは、エレメント3の幅方向におけるベース部4の一方(図4の右側)の端部の周辺部分(端面4cを含む)を示している。したがって、第1ピラー部6は、端面4cを含む第1端部4aから、エレメント3の高さ方向における上方へ延び出るように形成されていてもよい。すなわち、第1ピラー部6は、端面4cから連続的に、端面4cと同様の傾きで、上方へ延び出るように形成されていてもよい。一方で、第1ピラー部6は、必ずしも端面4cを含まなくともよい。例えば、第1ピラー部6は、端面4cを含まずに、第1端部4aから、エレメント3の高さ方向における上方へ延び出るように形成されていてよい。すなわち、第1ピラー部6は、端面4cと連続せずに、上方へ延び出るように形成されていてもよい。例えば、第1ピラー部6は、端面4cからエレメント3の幅方向におけるベース部4の中心部3a側にずれた位置から、上方へ延び出るように形成されていてもよい。図4に示す例では、第1ピラー部6は、端面4cと連続せずに、サドル面5と垂直もしくはほぼ垂直に、上方へ立ち上がっている。
同様に、上記の第2端部4bは、エレメント3の幅方向におけるベース部4の他方(図4の左側)の端部の周辺部分(端面4dを含む)を示している。したがって、第2ピラー部7は、端面4dを含む第2端部4bから、エレメント3の高さ方向における上方へ延び出るように形成されていてもよい。すなわち、第2ピラー部7は、端面4dから連続的に、端面4dと同様の傾きで、上方へ延び出るように形成されていてもよい。一方で、第2ピラー部7は、必ずしも端面4dを含まなくともよい。例えば、第2ピラー部7は、端面4dを含まずに、第2端部4bから、エレメント3の高さ方向における上方へ延び出るように形成されていてよい。すなわち、第2ピラー部7は、端面4dと連続せずに、上方へ延び出るように形成されていてもよい。例えば、第2ピラー部7は、端面4dから中心部3a側にずれた位置から、上方へ延び出るように形成されていてもよい。図4に示す例では、第2ピラー部7は、端面4dと連続せずに、サドル面5と垂直もしくはほぼ垂直に、上方へ立ち上がっている。
したがって、図4に示す例では、第1ピラー部6および第2ピラー部7は、いずれも、プーリP1,P2と接触することがなく、プーリP1,P2から荷重を受けない。すなわち、第1ピラー部6および第2ピラー部7には、プーリP1,P2からエレメント3の幅方向を向いた力は作用しない。そのため、第1ピラー部6および第2ピラー部7の耐久性や信頼性が向上する。
第1フック部8は、第1ピラー部6から中心部3aに向けて延び出るように形成されている。具体的には、第1フック部8は、ベース部4のエレメント3の高さ方向における第1ピラー部6の上端部6aから、中心部3aに向けて突出している。第1フック部8は、第1ピラー部6およびベース部4と一体に形成されている。
なお、中心部3aは、エレメント3の幅方向におけるベース部4の形状上の中心、あるいは、エレメント3の幅方向におけるベース部4の寸法上の中心である。すなわち、中心部3aは、エレメント3の幅方向における中心位置を示す中心線であり、第1端部4aの端面4cと第2端部4bの端面4dとの間の距離を等分する位置を示す部分である。
第2フック部9は、第2ピラー部7から中心部3aに向けて延び出るように形成されている。具体的には、第2フック部9は、ベース部4のエレメント3の高さ方向における第2ピラー部7の上端部7aから、中心部3aに向けて突出している。第2フック部9は、第2ピラー部7およびベース部4と一体に形成されている。
図4に示すように、エレメント3は、第1フック部8の先端部8aと第2フック部9の先端部9aとの間の開口幅(図4の左右方向における先端部8aと先端部9aとの間の距離)が、フープ2の幅(図4の左右方向におけるフープ2の寸法)よりも狭くなっている。先端部8aと先端部9aとは、エレメント3の幅方向で互いに対向している。したがって、先端部8aと先端部9aとの間の開口幅がフープ2の幅よりも狭いことにより、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で、エレメント3のフープ2からの脱落が防止される。
第1ボス部10は、第1ピラー部6の上端部6aに形成されている。具体的には、第1ボス部10は、上端部6aのエレメント3の板厚方向(図5の左右方向)における第1ピラー部6の一方(図5の左側)の前面6bから外部に突出している。第1ボス部10は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント3の第1ディンプル部11と緩くはまり合うように形成されている。
第1ディンプル部11は、第1ピラー部6の上端部6aに形成されている。具体的には、第1ディンプル部11は、上端部6aのエレメント3の板厚方向における第1ピラー部6の他方(図5の右側)の後面6cから内部にくぼんでいる。第1ディンプル部11は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント3の第1ボス部10と緩くはまり合うように形成されている。したがって、伝動ベルト1は、フープ2の周方向に隣接するエレメント3同士で、第1ボス部10と第1ディンプル部11とがはまり合っている。
ロッキングエッジ12は、ベース部4に形成されており、エレメント3の配列が円弧状に湾曲する際に隣接する他のエレメント3と接触して自転の軸となる部分である。エレメント3は、姿勢をそろえて環状に配列された状態でフープ2によって結束され、その状態でプーリP1,P2に巻き掛けられる。したがって、伝動ベルト1がプーリP1,P2に巻き掛けられた状態では、多数のエレメント3の列が、プーリP1,P2の中心に対して扇状に広がり、かつ、互いに密着している必要がある。そのため、エレメント3の高さ方向におけるベース部4の下側(図4、図5の下側)の部分が薄肉に形成されている。具体的には、エレメント3の板厚方向におけるベース部4の一方(図5の左側)の前面4fで、サドル面5よりも下側(図4、図5の下側)の所定の位置に、このロッキングエッジ12が形成されている。ベース部4は、このロッキングエッジ12を起点にして、ロッキングエッジ12よりも下側の部分の板厚が薄くなっている。そのため、伝動ベルト1がプーリP1,P2に巻き掛けられ、多数のエレメント3の列が扇状に広がる状態では、ロッキングエッジ12が、隣接する他のエレメント3の板厚方向におけるベース部4の他方(図5の右側)の後面4gと接触する。
第2ボス部13は、ベース部4の中心部3aに形成されている。具体的には、第2ボス部13は、エレメント3の高さ方向におけるロッキングエッジ12よりも下側(図4、図5の下側)に形成されている。第2ボス部13は、ベース部4のエレメント3の板厚方向における第2ピラー部7の一方(図5の左側)の前面4fから外部に突出している。第2ボス部13は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント3の第2ディンプル部14と緩くはまり合うように形成されている。
第2ディンプル部14は、ベース部4の中心部3aに形成されている。具体的には、第2ディンプル部14は、エレメント3の高さ方向におけるロッキングエッジ12よりも下側(図4、図5の下側)に形成されている。第2ディンプル部14は、ベース部4のエレメント3の板厚方向における第2ピラー部7の他方(図5の右側)の後面4gから内部にくぼんでいる。第2ディンプル部14は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント3の第2ボス部13と緩くはまり合うように形成されている。したがって、伝動ベルト1は、フープ2の周方向に隣接するエレメント3同士で、第2ボス部13と第2ディンプル部14とがはまり合っている。
上記のように、第1ボス部10と第1ディンプル部11、および、第2ボス部13と第2ディンプル部14とが、それぞれ、互いにはまり合うことにより、隣接するエレメント3同士の相対位置を決めるとともに、それら隣接するエレメント3同士の相対移動が規制される。それにより、エレメント3の環状の配列状態、および、その配列状態での姿勢が維持される。
なお、この発明の実施形態における第2ボス部13は、少なくとも一部が、ベース部4の前面4fの高さ方向におけるロッキングエッジ12よりも下側に形成されていればよい。図4に示す例では、第2ボス部13の一部は、ベース部4の前面4fの高さ方向におけるロッキングエッジ12よりも上側に形成されている。すなわち、第2ボス部13の一部を除く他の大部分は、ベース部4の前面4fの高さ方向におけるロッキングエッジ12よりも下側に形成されている。同様に、この発明の実施形態における第2ディンプル部14は、少なくともその一部が、ベース部4の前面4fの高さ方向におけるロッキングエッジ12よりも下側に形成されていればよい。上記の第2ボス部13のように、第2ディンプル部14の一部が、ベース部4の前面4fの高さ方向におけるロッキングエッジ12よりも上側に形成されていてもよい。
要するに、この発明の実施形態における第2ボス部13および第2ディンプル部14は、ベース部4の前面4fの高さ方向におけるロッキングエッジ12を含む、ロッキングエッジ12の近傍に形成されていればよい。そのような位置に第2ボス部13および第2ディンプル部14を形成することにより、前述の図1で示したように、エレメント3の高さ方向における上側の端部が開く状況になっても、少なくとも一部がロッキングエッジ12よりも下側に設けられた、すなわち、ロッキングエッジ12の近傍に設けられた、第2ボス部と第2ディンプル部との係合状態を確実に維持できる。その結果、駆動プーリP1と従動プーリP2との間を走行するエレメント3の配列の姿勢を適切に維持できる。したがって、この発明の実施形態における伝動ベルト1によれば、伝動ベルト1が走行する際のエレメント3の姿勢を安定させることができ、ひいては、伝動ベルト1の耐久性および信頼性を向上させることができる。
また、この発明の実施形態における第1ボス部10および第1ディンプル部11は、エレメント3の幅方向における両端にそれぞれ設けられる二本のピラー部6,7のうち、片方の第1ピラー部6に形成される。この発明の実施形態における伝動ベルト1を用いてベルト式無段変速機CVTを構成する場合、伝動ベルト1は、ベルト式無段変速機CVTの駆動プーリP1の回転軸線AL方向における固定シーブSf側にエレメント3の第1ピラー部6が位置するように、駆動プーリP1に巻き掛けられる。すなわち、第1ボス部10および第1ディンプル部11は、駆動プーリP1の回転軸線AL方向における固定シーブSf側に設けられる。そのため、前述の図2で示したように、エレメント3の幅方向における可動シーブSm側の端部が開く状況になっても、固定シーブSf側に設けられた第1ボス部10と第1ディンプル部11との係合状態を確実に維持できる。その結果、エレメント3の配列の姿勢を適切に維持できる。したがって、この発明の実施形態における伝動ベルト1によれば、伝動ベルト1が走行する際のエレメント3の姿勢を確実に安定させることができ、ひいては、伝動ベルト1の耐久性および信頼性を向上させることができる。
1…伝動ベルト、 2…フープ、 2a…リング、 2b…(フープの)内周面、 3…エレメント、 3a…(エレメントの幅方向における)中心部、 4…ベース部、 4a…第1端部、 4b…第2端部、 4c…(ベース部・右側の)端面、 4d…(ベース部・左側の)端面、 4e…(ベース部・上端の)端面、 4f…(ベース部の)前面、 4g…(ベース部の)後面、 5…サドル面、 6…第1ピラー部、 6a…(第1ピラー部の)上端部、 6b…(第1ピラー部の)前面、 6c…(第1ピラー部の)後面、 7…第2ピラー部、 7a…(第2ピラー部の)上端部、 8…第1フック部、 8a…(第1フック部の)先端部、 9…第2フック部、 9a…(第2フック部の)先端部、 10…第1ボス部、 11…第1ディンプル部、 12…ロッキングエッジ、 13…第2ボス部、 14…第2ディンプル部、 CVT…ベルト式無段変速機、 P1…駆動プーリ(プライマリプーリ)、 P2…従動プーリ(セカンダリプーリ)、 Pv…プーリ溝、 Sf…(駆動プーリの)固定シーブ、 Sm…(駆動プーリの)可動シーブ、 AL…(駆動プーリの)回転軸線。
Claims (1)
- 板厚方向に配列した多数の板片状のエレメントを、前記エレメントの幅方向における中央部分に配置する帯状のフープで環状に結束することにより構成される伝動ベルトにおいて、
前記エレメントは、
本体部分を形成するベース部と、
前記幅方向における前記ベース部の一方の端部に、前記エレメントの高さ方向における上方へ立ち上がった状態に形成された第1ピラー部と、
前記幅方向における前記ベース部の他方の端部に、前記高さ方向における上方へ立ち上がった状態に形成された第2ピラー部と、
前記幅方向における前記第1ピラー部と前記第2ピラー部との間の前記ベース部の前記高さ方向における上端に形成され、前記幅方向における前記第1ピラー部と前記第2ピラー部との間に配置される前記フープの内周面に接触するサドル面と、
前記エレメントの配列が円弧状に湾曲する際に隣接する他の前記エレメントと接触して自転の軸となるロッキングエッジと、
前記第1ピラー部の前記板厚方向における一方の前面に形成された第1ボス部と、
前記第1ピラー部の前記板厚方向における他方の後面に形成され、隣接する他の前記エレメントの前記第1ボス部とはまり合う第1ディンプル部と、
前記ベース部の前記前面の前記高さ方向における前記ロッキングエッジよりも下側に形成された第2ボス部と、
前記ベース部の前記後面の前記高さ方向における前記ロッキングエッジよりも下側に形成され、隣接する他の前記エレメントの前記第2ボス部とはまり合う第2ディンプル部と、を有している
ことを特徴とする伝動ベルト。
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JP2018220122A Pending JP2020085124A (ja) | 2018-11-26 | 2018-11-26 | 伝動ベルト |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2020085124A (ja) |
-
2018
- 2018-11-26 JP JP2018220122A patent/JP2020085124A/ja active Pending
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