JP2020084013A - インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ラミネート剥離強度、耐擦過性、及び間欠吐出安定性に優れるとともに、光沢性に優れた画像を形成可能であるインクジェットインク組成物を提供する。【解決手段】 ポリウレタンポリウレア樹脂粒子を含有するインクジェットインク組成物であって、前記ポリウレタンポリウレア樹脂粒子におけるポリウレタンポリウレアが、分岐構造を有するポリエチレンイミンに由来する骨格を含む、インクジェットインク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置を用いて、高精細に画像を記録することが可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。インクジェット記録方法に用いられるインクに求められる性能としては、インクの吐出安定性、画像の堅牢性などが挙げられる。これらの性能を向上するために、種々のポリウレタン樹脂を用いたインクジェット用水性インクが検討されている。
従来のウレタン系高分子(粒子)は親水基やウレタン基などの極性基が多いため、水性インクに多量に用いると粘度が上昇する傾向がある。インクジェット印刷においては、粘度が上昇すると、吐出が不安定になり目詰まりもしやすくなるので、樹脂の添加量が制限され十分な定着性や耐擦過性が得られなかった。また、フィルムのような光沢が要求される記録媒体に印刷する場合の光沢性が低いものになっている。
また、インクジェット記録方法で記録するとき、インジェットヘッドのノズルから一定時間インクが吐出されない状態が続くと、ノズルからインク中の水の蒸発が起こる。その後、ノズルから次のインクを吐出させようとすると、インクの滴が真っ直ぐに飛ばなかったり、吐出ができなかったりするということが生じる。このような現象が生じるインクは、間欠吐出安定性が低いということになる。
例えば、特許文献1に記載されたインクは、顔料の分散剤としてポリエチレングリコールモノメチルエーテルが付加したアロファネートで変性されたウレタン樹脂を用いている。また、特許文献2に記載されたインクは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが付加したアロファネートで変性されたウレタン樹脂を添加した顔料インクである。
また、特許文献3に記載されたインクは、イソシアヌレートで変性されたウレタン樹脂を用いている。
特許文献4には、着色剤並びにポリビニルイミダゾール、ポリビニルイミダゾールの誘導体、ビニルイミダゾールのコポリマー及びビニルイミダゾール誘導体のコポリマーからなる群から選ばれるポリマーを含み、ここに前記ポリマーは前記インク組成物に溶解性であるインク組成物が開示されている。この文献には、水性コーティングが可能なインク受容性組成物を形成して接着力を得ようとすることが検討されている。同じく、特許文献5にはインク受容性組成物であって、以下:(a)充填材;(b)ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニルまたはこれらの組み合わせの、ホモポリマー、コポリマーもしくはターポリマーを含む、結合剤;および(c)カチオン性ポリマーを含み、ここで、該組成物は、基材にコーティングされると、約300%より大きいインク負荷を受容する、インク受容性コーティングを形成する組成物が検討されている。また、ポリエチレンイミンを用いる例としては、特許文献6にあるように染料及びカチオン性ポリマーを含み、カチオン性ポリマーが、ポリリジン、ポリアリルアミン及びポリエチレンイミンからなる群から選択される少なくとも一つを含むことの検討がなされている。
特開2006−022132号公報 特開2012−140602号公報 特開2013−035897号公報 特表2000−508683号公報 特開2004−513187号公報 特開2013−079294号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたインクは、いずれも間欠吐出安定性及び記録される画像の耐擦過性(耐乾摩擦性及び耐湿摩擦性)が不十分である。
特許文献3に記載されたインクは、記録される画像の耐擦過性、目詰まり回復性及びOPPフィルムに印刷した時の光沢性が低いものである。
引用文献4〜6のいずれにおいても、OPPやPETフィルムに印刷する場合は耐擦過性や光沢性が得られるものではなかった。
また、OPPやPETフィルムに印刷する場合はラミネートする場合があり、ラミネート剥離強度が強いものでなければならないが、ラミネート剥離強度のみがある場合は裏印刷に使用できる可能ではあるが、光沢性や耐擦性が確保できなければ表印刷には使用できない。
このように、ラミネート剥離強度が良好で、かつ耐擦過性、及び光沢性に優れる画像を記録することができるインクは未だ見出されていない。さらに、耐擦過性、定着性及び光沢性に優れ、かつ間欠吐出安定性が良好なインクも未だ見出されていない。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子を含有するインクジェットインク組成物であって、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子におけるポリウレタンポリウレアが、分岐構造を有するポリエチレンイミンに由来する骨格を含むことにより、インクジェットインク組成物は、ラミネート剥離強度、耐擦過性、及び間欠吐出安定性に優れるとともに、光沢性に優れた画像を形成可能であることを見出して、本発明を完成させた。
本発明のインクジェットインク組成物は、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子を含有するインクジェットインク組成物であって、前記ポリウレタンポリウレア樹脂粒子におけるポリウレタンポリウレアが、分岐構造を有するポリエチレンイミンに由来する骨格を含む。
前記ポリウレタンポリウレアが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン及びm−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる1種以上に由来する骨格を含んでもよい。
前記ポリウレタンポリウレアの酸価が、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であってもよい。
前記ポリウレタンポリウレアが、カルボキシル基を有するグリコールに由来する骨格を含んでもよい。
前記カルボキシル基を有するグリコールに由来する骨格が、ジメチロールプロピオン酸に由来する骨格であってもよい。
前記ポリウレタンポリウレアが、飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールに由来する骨格の1種以上を含んでもよい。
前記飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールの重量平均分子量が、500以上3000以下であってもよい。
前記ポリウレタンポリウレアが、脂肪族ジアミンに由来する骨格及び芳香族ジアミンに由来する骨格からなる群より選択される1種以上を含んでもよい。
前記ポリウレタンポリウレアが、炭素数1以上8以下のアルキルジアミンに由来する骨格を含んでもよい。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェットインク組成物を、記録媒体に対し吐出する吐出工程を含む。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクジェットインク組成物
本実施形態のインクジェットインク組成物は、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子を含有する。ポリウレタンポリウレア樹脂粒子におけるポリウレタンポリウレアは、分岐構造を有するポリエチレンイミンに由来する骨格を含む。インクジェットインク組成物は、上記構成を含むことにより、ラミネート剥離強度、耐擦過性、及び間欠吐出安定性に優れるとともに、定着性及び光沢性に優れた画像を形成可能である。
本明細書において、インクジェットインク組成物を単にインクジェットインクと称することがある。また、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子におけるポリウレタンポリウレアを単に「高分子」と称することがあり、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子を単に「高分子粒子」と称することがある。
1.1.高分子
高分子粒子を含有するインクジェットインクにおいて、該ポリウレタンポリウレアが分岐構造を有するポリエチレンイミンを1成分として作製された高分子であることを特徴とする。
1.1.1.高分子の概要
ポリウレタンポリウレアは、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−ビス(イソシアナタプロピル)ベンゼン及びm−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートに由来する骨格を含むことが好ましい。これらのジイソシアネートが重合して高分子となった場合に、イソシアネート基の結合する位置が、結晶化又はスタック化しにくい位置であるため、インクジェットインク組成物は、耐擦過性及び光沢性に一層優れる画像を形成可能である。
ポリウレタンポリウレアは、例えば、ポリオールに由来する骨格を含み、ウレタン基(ウレタン結合)及びウレア基(ウレア結合)からなる群より選ばれる1種以上の基を含む。ポリウレタンポリウレアは、水に分散した形態、すなわちポリウレタンポリウレアエマルジョンの形態であってもよい。。
本実施形態のインクジェットインク組成物に含まれる高分子は、ポリイソシアネートを用いて重合される樹脂であるが、少なくとも、ポリイソシアネートと、ポリオール及びポリアミンを用いて重合される。さらに、必要に応じて架橋剤や鎖延長剤としてのポリオール及びポリアミンを用いて重合されてもよい。
高分子は、イソシアネート基とヒドロキシル基との反応により生じるウレタン結合(ウレタン基)、及び、イソシアネート基とアミノ基との反応により生じるウレア結合(尿素結合)(ウレア基)から選ばれる1種以上の基を含む高分子であり、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
さらに高分子というときには、架橋構造の有無を問わず、熱可塑性を有するもの、及び、架橋構造が形成されてTgや融点を全く又はわずかしか示さないものも含まれてもよい。
ウレタン結合を形成するためのイソシアネート基は、イソシアネート基を含む化合物から供給されてもよい。また、ウレタン結合を形成するためのヒドロキシル基(水酸基)は、ヒドロキシル基を含む化合物から供給されてもよい。そして、高分子化するために、イソシアネート基を有する化合物は、2個以上のイソシアネート基を有し、ヒドロキシル基を有する化合物は、2個以上のヒドロキシル基を有するものが選択され重合されてもよい。本明細書では、2個以上のイソシアネート基を有する化合物は、「ポリイソシアネート」と称し、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物は、「ポリオール」と称することがある。なお、これらのうち、2個のイソシアネート基を有する化合物は、「ジイソシアネート」と称することがあり、また、2個のヒドロキシル基を有する化合物を「ジオール」と称することがある。
また、ポリイソシアネートのイソシアネート基の間にある分子鎖と、ポリオールのヒドロキシル基の間にある分子鎖及びポリアミンのアミノ基の間にある分子鎖は、ポリウレタンとなった場合のウレタン結合又はウレア結合以外の部分となる。本明細書では、ポリウレタンとなった場合のウレタン結合又はウレア結合以外の部分の全部又は一部を「骨格」と称することがある。骨格は、直鎖状又は分岐状であり得る。
また、高分子は、上記のウレタン結合及びウレア結合以外の結合を含んでいてもよい。そのような結合としては、複数のイソシアネート結合と水との反応により生じるウレア結合、ウレア結合とイソシアネート基との反応により生じるビュレット結合、ウレタン結合とイソシアネート基との反応により生じるアルファネート結合、イソシアネート基の二量化によるウレトジオン結合、及び、イソシアネート基の三量化によるイソシアヌレート結合が挙げられる。これらの結合は、反応温度等により積極的に生じさせたり、生じさせないようにしたりすることができる。したがって、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとポリアミンとが共存すると、ウレタン結合及びウレア結合の他にこれらの結合(基)を含む高分子が生成し得る。アロファネート構造、ビウレット構造、ウレトジオン構造及びイソシアヌレート構造からなる群より選ばれる1種以上の構造を有することで、記録媒体への密着性が増し、膜強度が高くなり、耐擦過性が良好になる場合がある。
なお、本明細書では、2個以上のアミノ基を有する化合物は、「ポリアミン」と称することもあり、上記のポリイソシアネート及びポリオールの呼称と同様とする。
1.1.2.高分子の原料
本実施形態に係る高分子は、少なくともジイソシアネート、ポリオール及びポリアミンを用いて重合して得られる。また、本実施形態に係るインクジェットインク組成物に用いられる高分子は、さらに必要に応じて架橋剤や鎖延長剤としてのポリオール、ポリアミン等も用いることができる。
1.1.2.1.ジイソシアネート
本実施形態の高分子に使用されるジイソシアネートは、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m−ビス(イソシアネートプロピル)ベンゼン及びm−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
これらのジイソシアネートの化学構造を以下に示す。またこれらのジイソシアネートは、慣用名等で種々の命名ができるため、いずれも多数の別名を有する。そのため、別名の表記に代えてCAS番号を併記する。
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート:CAS=5124−30−1
Figure 2020084013
イソホロンジイソシアネート:CAS=4098−71−9
Figure 2020084013
1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン:CAS=38661−72−2
Figure 2020084013
m−ビス(イソシアネートプロピル)ベンゼン:CAS=2778−42−9
Figure 2020084013
m−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン:CAS=3634−83−1
Figure 2020084013
これらのジイソシアネートは、重合して例えばヒドロキシル基(水酸基)やアミノ基とともに結合を形成して高分子となった場合に、シクロヘキシル環やベンゼン環が、スタック又は結晶化しにくいような位置で結合できる。これにより高分子(ポリウレタンポリウレア)が、ミクロ相分離構造や、ミクロ結晶の架橋構造の密度を高めすぎることが抑制される。そのため、高分子のTg(ガラス転移温度)を低くすることができるし、高分子の柔軟性を高くすることができる。これによりインクジェットインク組成物が、記録媒体に付着された場合に、画像の耐擦過性および定着性を良好にできるとともに、十分な光沢性を有する画像を形成することができる。
また、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m−ビス(イソシアネートプロピル)ベンゼン及びm−ビス(イソシアネートメチル)については、イソシアネート基が、六員環のメタ位に配置される(1,3−配置)ので、シクロヘキシル環やベンゼン環が、スタック又は結晶化しにくい構造となるように重合される。そのため、これらを重合させて得られる高分子(ウレタン樹脂)では、ミクロ相分離構造や、ミクロ結晶の架橋構造の密度を高めすぎることが抑制される。
また、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートは、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,2’−ジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネートの混合物及びそれぞれの単独物質いずれでもよい。さらに、これらの任意の組合せの2量体以上からなる多官能イソシアネートとして用いてもよい。多官能ポリイソシアネートは、2分子以上のポリイソシアネートからなる構造を有し、ポリオールやポリアミンなどのヒドロキシル基やアミノ基と反応するために、分子の末端に2以上のイソシアネート基を有する化合物である。これら多官能ポリイソシアネートにはアロファネート構造、ウレトジオン構造、イソシアヌレート構造及びビウレット構造からなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれていてもよい。
多官能ポリイソシアネートとは、モノメリックのジイソシアネートやポリメリックの2分子以上のポリイソシアネートからなる構造であり、分子中に多くの分岐を有するものが好ましい。このような多官能ポリイソシアネートからなる構造を有する高分子は、分子が立体的に複雑に絡み合った構造と、ウレタン結合が密集している状態になる。したがって、比較的低酸価であっても、安定的に水系のインク中で分散できる。これらのポリイソシアネートを用いることで間欠吐出安定性を確保しながら、且つ耐擦過性及びフィルムに印刷した時の光沢性に優れる画像を記録することができるとともに、耐擦過性が良好になる。
1.1.2.2.ポリオール
本実施形態のインクジェットインク組成物に含まれる高分子は、ポリオールを原料として用いることができる。ポリオールとしては、二官能以上、すなわちヒドロキシル基を2つ以上有する化合物であり、特に、2つ以上のヒドロキシル基、又は2つ以上のヒドロキシル基を有しかつ環式炭化水素構造を有する炭化水素化合物であれば特に限定されない。用いることができるポリオールとしては、例えば、アルキレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール及び飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールが挙げられる。これらの中では、得られる画像の耐擦過性及び定着性を一層良好なものとする観点から、飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールが好ましい。
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4−ジヒドロキシフェニルメタン、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールメラミン、ポリオキシプロピレントリオール、ジメチル−1,3−ペンタンジオール、ジエチル−1,3−ペンタンジオール、ジプロピル−1,3−ペンタンジール、ジブチル−1,3−ペンタンジール、及び2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
高分子の原料にアルキレングリコールを用いると、高分子中に形成される三次元網目構造に分子量の小さいアルキレングリコールが侵入してイソシアネートと反応してウレタン結合を形成することでより強固な皮膜を得られる場合がある。これにより皮膜(画像)の強度が強固になり耐擦過性がさらに向上することがある。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、酸エステルが挙げられる。酸エステルを構成する酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、リノレン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、及びイタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸、並びに、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、及び芳香族の水素添加物などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらの酸成分の無水物、塩、アルキルエステル、酸ハライドなども酸成分として用いることができる。また、酸エステルを構成するアルコール成分としては、特に限定されず、上述のポリオールにおけるジオールを例示することができる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキサイドの付加重合物、及び(ポリ)アルキレングリコールなどのポリオール類の縮合重合物が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、及びα−オレフィンオキサイドが挙げられる。そして(ポリ)アルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(ポリオキシエチレングリコール)、ポリプロピレングリコール(ポリオキシプロピレングリコール)、及びポリブチレングリコールが挙げられる。これらのうち、ポリオキシプロピレングリコールを用いると、高分子(ウレタン樹脂)の柔軟性が向上し耐擦過性やフィルムに印刷したときの光沢性を向上させることができる。ポリオキシプロピレングリコールは、市販品を用いることができ、例えば、旭硝子株式会社製エクセノールシリーズ、三洋化成株式会社製ニューポールPPシリーズ、及び日油株式会社製ユニオールDシリーズ(いずれも製品のシリーズ名)が挙げられる。
ポリカーボネートジオールは、2つのヒドロキシル基と、カーボネート結合を有する分子鎖を含む。
本実施形態でポリオールの一部又は全部として用い得るポリカーボネートジオールの例としては、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネート等のカーボネート成分、ホスゲン、及び、脂肪族ポリオール成分を反応させて得られるポリカーボネートジオールが挙げられ、さらに、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のアルカンジオール系ポリカーボネートジオールが挙げられる。ポリカーボネートジオールを高分子の出発物質として用いることにより、生成する高分子の耐熱性及び耐加水分解性が良好となる傾向がある。
ポリオールとしてポリカーボネートジオールを用いることにより、高分子がポリカーボネートジオールに由来する骨格を有するものとなるため、得られる画像の耐擦過性をさらに良好なものとすることができる。
高分子の原料として用いることのできるポリカーボネートジオールは、一般的に分子中に2個の水酸基を有し、ジオール化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応により得ることができる。かかるジオール化合物としては、例えば1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、4−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジオール、及び1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる。これらは一種又は二種以上を併用できる。また、上記のジオールの中でも結晶化が起こりにくいネオペンチルグリコール、4−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、又は2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールがより好ましい。
ポリカーボネートジオールの製造に使用可能な炭酸エステルとしては、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、及びアルキレンカーボネートが挙げられる。このうち反応性の観点からジアリールカーボネートが好ましい。カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、及びエチレンカーボネートが挙げられ、ジフェニルカーボネートがより好ましい。
ポリカーボネートジオールの市販品としては、例えば、三菱化学のBENEBiOLシリーズのNL1010DB、NL2010DB、NL3010DB、NL1010B、NL2010B、NL3010B、NL1050DB、NL2050DB、NL3050DB、旭化成ケミカルズのデュラノールシリーズ、東ソーのニッポランシリーズ、クラレのポリヘキサンジオールカーボネート、ダイセル化学工業製のプラクセルシリーズ、CDCD205PL、宇部興産製のETERNACOLLシリーズなどがある。
本実施形態のインクジェットインク組成物に含有される高分子の原料としてポリオールを用いる場合、ポリオールの分子中に酸基が存在することがより好ましく、ポリオールがカルボキシル基含有グリコールであることが更に好ましい。カルボキシル基含有グリコールとしては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸及びジメチロール酪酸が挙げられる。これらのうちさらに好ましくは、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸である。本実施形態のインクジェットインク組成物が水系である場合、高分子は、このようなカルボキシル基含有ジオールを原料として重合することにより得られることがより好ましい。このようなポリオールを用いることにより、高分子の酸価を所望の範囲内に調整できる傾向にある。
また、高分子の原料としてポリオキシプロピレングリコール及びポリカーボネートジオールの少なくとも一方を用いる場合、その重量平均分子量は500以上3000以下であることが好ましい。重量平均分子量が500以上であれば、高分子におけるウレタン結合の密度を高めすぎることがなく、ポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリカーボネートジオールに由来する分子鎖の硬直性を抑えることができる。これにより高分子の柔軟性が高まり、画像の耐擦過性が良好となる。また、その重量平均分子量が3000以下であれば、高分子におけるウレタン結合の密度が小さくなりすぎず、ポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリカーボネートジオールに由来する分子鎖の伸張性が増大しすぎることがない。そのため、高分子の柔軟性が抑えられるので、タック性が生じにくく、耐擦過性を確保することができる。したがって、上記重量平均分子量が500以上3000以下であることで、高分子によって形成される膜(画像)の強度と柔軟性のバランスが良くなるため、記録される画像の耐擦過性を良好とすることができる。重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるGPC測定方法により求められる。
このような成分を用いて得られる高分子は、主にハードセグメントとソフトセグメントという2種類のセグメントで構成されたものとなる。ハードセグメントは、ポリイソシアネート、短鎖のポリオール、ポリアミン及び架橋剤や鎖延長剤などにより構成され、主に高分子の強度に寄与する。一方、ソフトセグメントは、長鎖ポリオールなどにより構成され、主に樹脂の柔軟性に寄与するとされる。そして、インクジェットインク組成物が記録媒体に付着され、かかる高分子で形成される皮膜は、これらのハードセグメント及びソフトセグメントがミクロ相分離構造をとっているため、強度と柔軟性を兼ね備え、高い弾性を有するものとなる。このような皮膜の特性が、記録物の耐擦過性の向上に寄与している。
飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンジオール及びポリイソプレンジオール、並びにそれらの水素添加物である、水添ポリブタジエンジオール及び水添ポリイソプレンジオールが挙げられる。これらは、市販品を購入することができる。飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールの添加量は、インク組成物全体の10%以上80%以下であることが好ましい。添加量が10%以上であることにより、十分な接着力が得られる傾向にあり、、添加量が80%以下であることにより、水中での安定性に優れる傾向にある。添加量は、接着性の観点から20〜60%であることがより好ましい。飽和又は不飽和の重量平均分子量は500以上であることが好ましい。重量平均分子量が500以上であることにより十分な接着力が得られる傾向にある。重量平均分子量は、さらに好ましくは600〜4000である。重量平均分子量が4000以下であることにより、一層十分な接着力が得られる傾向にある。
飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールは、具体的に、ポリウレタン樹脂に使用される従来公知のものを使用することができ、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、1,4結合の繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオール(例えば、Poly bd(商標) R−15HT、Poly bd(商標)R−45HT(いずれも出光興産株式会社製))、1,2結合の繰り返し単位を主に有するポリ(1,2−ブタジエン)グリコール(例えば、G−1000、G−2000,G−3000(いずれも日本曹達株式会社製))が挙げられる。水添ポリブタジエンジオールとしては、例えば、1,4結合の繰り返し単位を主に有する水素化ポリブタジエンジオール(例えば、ポリテールH、ポリテールHA(いずれも三菱化学株式会社製))、1,2結合の繰り返し単位を主に有する水素化ポリブタジエンジオール(例えばGI−1000、GI−2000、GI−3000(いずれも商品名:日本曹達株式会社製))が挙げられる。
1.1.2.3.ポリエチレンイミン
本実施形態においては、ポリエチレンイミンの中でも分岐構造を有する(以下、「分岐状」ともいう。)ポリエチレンイミンを用いる。分岐状ポリエチレンイミンは第一級、第二級及び第三級アミノ基を含むので、分岐状ポリエチレンイミンの第一級アミノ基はイソシアネート基と反応してウレア基を形成する。したがって、本実施形態におけるポリウレタンの重合ではポリウレタンポリウレアが形成される。分岐状ポリエチレンイミンの一級アミンはイソシアネートと反応して形成されたウレア基や、イソシアネートと反応しなかった二級および三級アミンなどの極性によって、定着性、耐擦過性、及び接着力が向上する。分岐状ポリエチレンイミンとしては、例えば、下記式(A)及び(B)で表される繰り返し単位を有し、末端の一部又は全部がアミノ基であるものが挙げられる。市販品としては、例えば、日本触媒のエポミンSP−003、SP−006、SP−012、SP−018、SP−200、HM−2000およびP−1000が挙げられる。その中でも特にSP−003及びSP−006のように重量平均分子量が600以下のものが好ましい。分子量が大きくなると、ポリウレタン樹脂の作製が難しくなり、安定な分散体が作りにくい。
−(CH2CH2N(CH2CH2NHR))− (A)
−(CH2CH2NH)− (B)
上記式中、Rは水素原子又は単結合を示す。Rが単結合を示す場合は更に別の繰り返し単位と結合する。
1.1.2.4.その他の出発物質
1.1.2.4.1.ポリアミン
本実施形態のインクジェットインク組成物に含まれる高分子の原料には、ポリエチレンイミン以外に、他のポリアミンが含まれてもよい。そのポリアミンとしては、二官能以上のアミノ基を有する化合物であれば特に限定されない。すなわち、本実施形態のポリウレタンポリウレアは、ポリアミンに由来する骨格を含んでいてもよく、脂肪族ポリアミンに由来する骨格及び芳香族ポリアミンに由来する骨格からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、脂肪族ジアミンに由来する骨格及び芳香族ジアミンに由来する骨格からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、炭素数1以上8以下のアルキルジアミンに由来する骨格を含むことが更に好ましい。このような骨格を含むことにより、インクジェットインク組成物の固化物の柔軟性がより良好なものとなり、画像の定着性及び耐擦過性に一層優れる傾向にある。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン等の炭素数1以上8以下のアルキルジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、o−、m−、p−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキシレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、ビシクロヘプタンジメタンアミン、メンセンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソプロビリチンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンが挙げられる。芳香族ジアミンは特に限定されず、公知のものであってもよい。なお、ポリアミンとして汎用の化合物は、短鎖ポリオールと同等程度の分子量を有するものが多く、基本的には高分子のハードセグメントであるウレア基やビウレット基となるものである。
なお、ポリアミンは、多官能ポリイソシアネートと反応させる成分、鎖延長剤、架橋剤などとしても用いることができるが、イソシアネート基とアミノ基とを反応させるとウレア結合が形成される。したがって、ポリアミンを用いる場合には、高分子における、ウレア基/ウレタン基の比率が所望の比率になるようにその使用量を決定し、高分子の物性をコントロールすることもできる。
高分子において、ウレア基/ウレタン基の比率を調整する方法としては、高分子を合成する際のアミン化合物(ポリアミン)のアミノ基の当量を考慮しつつ使用量を調整する方法及び高分子を水に転相する際に、未反応のイソシアネート基の残存率を調整する方法などがある。
高分子を合成するときのポリアミンの使用量を調整する方法では、ポリアミンとイソシアネート基の反応により生じるウレア結合の量をコントロールする。まず、ポリアミンの使用量を異ならせて複数種の高分子を合成し、ウレア基/ウレタン基の比率を算出する。得られたモル比率から、ポリアミンの使用量とモル比率との関係を調べて検量線を作成し、この検量線を利用して、所望のモル比率を有する高分子を合成するために必要となるポリアミンの使用量を決定する。なお、予め検量線を作成するのは、同種のポリアミンを使用したとしても、その他の成分が異なると反応率などが変わる場合もあるため、同じモル比率とはならないからである。
また、高分子を水に転相するときに、未反応のイソシアネート基の残存率を調整する方法としては、まず、高分子の合成反応の途中で、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)によって、ポリイソシアネートの使用量に対するイソシアネート基の残存率を確認する。イソシアネート基の残存率は、反応時間やポリイソシアネートの使用量などを変えることで調整することができる。
1.1.2.4.2.架橋剤及び鎖延長剤
本実施形態の高分子は、架橋剤及び/又は鎖延長剤を含んでもよい。
架橋剤はプレポリマーの合成時に用いられ、鎖延長剤はプレポリマーの合成後に鎖延長反応を行うときに用いられる。架橋剤や鎖延長剤としては、架橋や鎖延長などの用途に応じて、上記のポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなどから適宜に選択して用いることができる。
鎖延長剤としては、例えば、上述のポリイソシアネートのうち、ウレタン結合を形成していないもののイソシアネート基と反応させる化合物が挙げられる。鎖延長剤として用いることができる化合物としては、例えば、上述のポリオール及びポリアミンが挙げられる。また、鎖延長剤として、高分子を架橋させることができるものを用いることもできる。鎖延長剤として用いることができる化合物としては、例えば、数平均分子量500未満の低分子量ポリオール及びポリアミンが挙げられる。
また、架橋剤としては、ポリイソシアネート、ポリオール及びポリアミンのうち、三官能以上のものも挙げられる。三官能以上の多官能ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート、アロファネート又はビウレット構造を有するポリイソシアネートが挙げられる。三官能以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びポリオキシプロピレントリオールを用いることができる。三官能以上のポリアミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのトリアルコールアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等の三官能以上のアミノ基を有するアミンが挙げられる。
なお、高分子の架橋の有無は、架橋構造を有する高分子が溶剤に溶解せず、膨潤する現象を用いて、ゲル分とゾル分の比率を計算して算出されるゲル分率により判定することができる。ゲル分率とは、固化した高分子の溶解性から測定される架橋度の指標であり、架橋度が高いものほどゲル分率は高くなる傾向がある。
1.1.2.4.3.その他のイソシアネート
本実施形態のインクジェットインク組成物に含まれる高分子は、上述した機能、効果を阻害しない範囲で、上述のジイソシアネート以外のイソシアネートを原料として用いてもよい。そのようなイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及び脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、及び3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、及び1,5−ナフチレンジイソシアネートが挙げられる。あるいは、芳香族ポリイソシアネートの芳香環の80%以上が水素化されてなるブロック化脂環式ポリイソシアネートを用いてもよい。
脂環式ポリイソシアネートの例としては、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及び水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)が挙げられる。
これらのポリイソシアネートを用いることで、形成される膜強度が高くなり、耐擦過性が良好になる場合がある。特に、上記脂環式ポリイソシアネート用いると、膜強度がさらに高くなり、耐擦過性がさらに良好になることがある。また、これらのポリイソシアネートは、複数種を混合して用いてもよい。
また、ポリイソシアネートは、2分子以上のポリイソシアネートが結合した構造であってもよい。2分子以上のポリイソシアネートが結合した構造は、例えば、ウレトジオン構造、及びイソシアヌレート構造である。このようなポリイソシアネートを選択すれば、高分子が、分子が立体的に複雑に絡み合った構造を有し、ウレタン結合が密集している状態になる。したがって、例えば、低い酸価であっても、安定的に水系のインク組成物中で分散できる。
一般に、間欠吐出安定性の低下は、インクジェットヘッドのノズルからの水の蒸発によって生じる。間欠吐出安定性を高めるためには、インクジェットヘッドのノズル近傍に存在するインク組成物から水がある程度蒸発して、高分子同士の相互作用、又はインク組成物が顔料を含む場合は高分子と顔料との相互作用が強まったときにも、顔料や高分子が凝集せずに安定に分散された状態を保つことが要素の一つである。本実施形態の高分子は、比較的低酸価であるものの、上述のポリイソシアネートからなる構造を含むことによって立体的に複雑に絡み合った構造を有するため、水の蒸発が進んでも高分子同士又は高分子と顔料との間で静電作用や斥力などによる反発が生じやすく、安定した分散構造を得やすい。
本明細書では、高分子の骨格とは、上述から明らかなように、官能基間の分子鎖のことを指す。したがって、本実施形態の高分子は、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミン等の原料の分子鎖に由来する骨格を有する。その他の骨格としては、特に限定されないが、例えば、置換又は非置換の飽和、不飽和若しくは芳香族系の鎖であり、このような鎖にはカーボネート結合、エステル結合、アミド結合等を有してもよい。また、このような骨格における置換基の種類や数は、特に限定されず、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホニル基、及びホスフォニル基が含まれてもよい。
1.1.3.高分子の合成及び分析
1.1.3.1.高分子の合成
本実施形態のインクジェットインク組成物に用いる高分子は、高分子の重合方法として既知の方法を利用して合成することができる。以下、例を挙げて説明する。ポリイソシアネート及びそれと反応する化合物(分岐構造を有するポリエチレンイミン、ポリオール、及び、必要に応じてポリアミン等)を、イソシアネート基が多くなるような使用量として反応させ、分子の末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを重合する。このとき、必要に応じてメチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン等の沸点100℃以下の有機溶剤を使用してもよい。これは一般的にプレポリマー法といわれるものである。
原料としてカルボキシル基含有ジオールを用いる場合には、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、及びトリエチルアミンに例示される有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニアに例示される無機塩基などの中和剤を用いてプレポリマーの酸基を中和する。好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属を含む中和剤を用いることで、高分子の分散安定性が向上する。これら中和剤は、プレポリマーが有する酸性基1モル当たり、好ましくは0.5〜1.0モル、より好ましくは0.8〜1.0モル用いることによって粘度上昇が起こりにくくなり作業性が向上する。
その後、鎖延長剤や架橋剤を含む液体中にプレポリマーを添加し、鎖延長反応や架橋反応を行う。次いで、有機溶剤を使用した場合にはエバポレーターなどを用いて除去して、高分子粒子分散液を得る。
高分子の重合反応に用いる触媒としては、チタン触媒、アルミニウム触媒、ジルコニウム触媒、アンチモン触媒、ゲルマニウム触媒、ビスマス触媒及び金属錯体系触媒が良好である。この中でチタン触媒としては、テトラブチルチタネート、テトラメチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート、シュウ酸チタンカリなどのシュウ酸金属塩が好ましい。またその他の触媒としては公知の触媒であれば特に限定はしないが、例えば、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ化合物などが挙げられる。非重金属触媒としては、チタン、鉄、銅、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、マンガン等の遷移金属のアセチルアセトナート錯体がウレタン化活性を有することが古くから知られている。近年、環境意識の高まりから、重金属触媒を代替できる低毒性の触媒が望まれており、なかでもチタン化合物及びジルコニウム化合物の高いウレタン化活性が注目されており、これらが好ましい。
1.1.3.2.高分子の分析
高分子の組成、ポリイソシアネートの構造、及び高分子の酸価は、それぞれ以下の方法によって分析することができる。
まず、高分子を含有するインク組成物から、高分子を抽出する方法について説明する。インクジェットインク組成物に顔料が含まれる場合、顔料を溶解しないが高分子を溶解するような有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトンなど)を用いて、インクジェットインク組成物から高分子を抽出することができる。また、インクジェットインク組成物を超遠心法で分取し、その上澄み液を酸によって酸析することで高分子を抽出することもできる。
(A)高分子の組成
高分子を、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解してサンプルとし、プロトン核磁気共鳴法(1H−NMR)又はカーボン13核磁気共鳴法(13C−NMR)により分析を行って得られたピークの位置から、ポリイソシアネート、ポリエチレンイミン、ポリオール、ポリアミン等の種類を確認することができる。さらに、各成分の化学シフトのピークの積算値の比から、組成比を算出することもできる。また、高分子を熱分解ガスクロマトグラフィー(GC−MS)により分析しても、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなどの種類を確認することができる。また、カーボン13核磁気共鳴分光法(13C−NMR)により分析を行うと、長鎖ポリオールの単位ユニットの繰り返し数を求め、数平均分子量を算出することもできる。
(B)ポリイソシアネートの構造
高分子を、フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)により分析して得られた赤外吸収スペクトルから、ポリイソシアネートの構造を確認することができる。主な吸収は以下の通りである。アロファネート構造は、3300cm-1にNH伸縮振動吸収、1750〜1710cm-1、及び、1708〜1653cm-1に2本のC=O伸縮振動吸収が存在する。ウレトジオン構造は、1780〜1755cm-1にC=O伸縮振動吸収、1420〜1400cm-1にウレトジオン環に基づく吸収が存在する。イソシアヌレート構造は、1720〜1690cm-1にC=O伸縮振動吸収、1428〜1406cm-1にイソシアヌレート環に基づく吸収が存在する。ビウレット構造は、1720〜1690cm-1にC=O伸縮振動吸収が存在する。
(C)高分子の酸価
高分子の酸価は滴定法により測定することができる。酸価は、京都電子工業社(Kyoto Electronics Manufacturing Co. Ltd.)製のAT610(製品名)を用いて測定を行い、以下の数式(1)に数値をあてはめて算出する。
酸価(mg/g)=(EP1−BL1)×FA1×C1×K1/SIZE (1)
ここで、上記の数式中、EP1は滴定量(mL)、BL1はブランク値(0.0mL)、FA1は滴定液のファクター(1.00)、C1は濃度換算値(5.611mg/mL)(0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)、K1は係数(1)、SIZEは試料採取量(g)をそれぞれ表す。
そして、電位差を利用したコロイド滴定により、テトラヒドロフランに溶解させた高分子について、酸価を測定することができる。このときの滴定試薬としては、水酸化ナトリウムのエタノール溶液を用いることができる。
1.1.4.ポリウレタンポリウレアの酸価
上記のようにして測定することができるポリウレタンポリウレアの酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、7mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることがより好ましく、8mgKOH/g以上25mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であれば、ポリウレタンポリウレア粒子は、水系インク組成物中での分散安定性に一層優れ、インクジェットインク組成物は、高温でも目詰まりを起こしにくい。一方、酸価が100mgKOH/g以下であれば、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子が水で膨潤しにくく、水系インク組成物が一層増粘しにくい傾向にあり、記録物の耐水性に一層優れる傾向にある。
高分子の酸価を上記範囲内に調整するために、ポリウレタンポリウレアは、カルボキシル基を有するグリコールに由来する骨格を含むことが好ましい。カルボキシル基を有するグリコールに由来する骨格の含有量を調節することにより酸価を所望の範囲に変化させることができる。インクジェットインク組成物が水系のインク組成物である場合には、水により容易に分散できるように、カルボキシル基含有グリコールを重合成分として用いて、カルボキシル基を有するポリウレタンポリウレアとすることが好ましい。カルボキシル基含有グリコールは、前述したものが挙げられる。
1.1.5.高分子の含有量
本実施形態のインクジェットインク組成物は、上述の高分子を複数種含有してもよい。また、高分子は、エマルジョンの形態で添加されてもよい。本実施形態のインクジェットインク組成物における高分子の合計の含有量は固形分として、質量基準(以下単に%と示すものは質量%を示す)で、0.1%以上20.0%以下であることが好ましく、1.0%以上15.0%以下であることがより好ましい。
1.2.その他の成分
1.2.1.顔料
本実施形態のインクジェットインク組成物は、色材として顔料、染料等を含有してもよい。本実施形態のインクジェットインク組成物は、上述の高分子により、物理的に色材を記録媒体に定着できるため、用いる色材としては、顔料がより好ましい。このような顔料が記録媒体に付着されることにより、画像(記録物)が形成される。
顔料としては、特に制限されず、顔料種としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料、アゾ顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料などの有機顔料などを用いてもよい。
ブラック顔料としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学株式会社製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ社製)が挙げられる。
ホワイト顔料としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト 1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン),6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム),19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)が挙げられる。
イエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、及びC.I.ピグメントヴァイオレット19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、及びC.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
ブラック、ホワイト、イエロー、マゼンタ及びシアン以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、及びC.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
上記例示した顔料は、アニオン性基が直接又は他の原子団を介して粒子表面に結合してなる顔料(表面処理顔料)、及び、アニオン性官能基を有する樹脂で分散させた顔料の少なくとも一方として使用できる。
アニオン性基が直接又は他の原子団を介して粒子表面に結合してなる顔料としては、例えば、顔料粒子の表面にアニオン性基を含む官能基を結合させたものや、顔料粒子の表面にアニオン性樹脂を結合させたものが挙げられる。また、アニオン性官能基を有する樹脂で分散させた顔料としては、例えば、顔料粒子の表面にアニオン性樹脂を物理的に吸着させたものや、アニオン性樹脂で顔料を包含したものが挙げられる。
顔料粒子の表面にアニオン性基を含む官能基を結合させた自己分散顔料は、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32などのアニオン性基が、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団を介して結合してなるものである。Mとしては、水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム(NH4)、並びに、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどの有機アミンが挙げられる。また、他の原子団としては、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基及びこれらの基を組み合わせた基が挙げられる。
これらの自己分散顔料としては、公知の方法により酸化処理によりアニオン性基を顔料粒子の表面に結合させたものや、ジアゾカップリングなどアニオン性基を含む官能基を顔料粒子の表面に結合させたものが挙げられ、いずれも好適に用いることができる。顔料粒子の表面にアニオン性樹脂を結合させた自己分散顔料は、親水性ユニットとして、少なくともアニオン性基を有するユニットを有する樹脂が、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団を介して結合してなるものである。
顔料粒子の表面にアニオン性樹脂を物理的に吸着させた樹脂分散顔料、及び、アニオン性樹脂で顔料を被覆した樹脂分散顔料は、いずれも、樹脂分散剤を用いる分散方式である。樹脂分散剤としては、親水性基と疎水性基とを有する共重合体を用いる。
自己分散顔料や樹脂分散顔料に用いる樹脂分散剤としては、インクジェット用のインクに使用可能な公知の樹脂をいずれも用いることができる。好適な樹脂分散剤としては、親水性基に少なくともアニオン性基が含まれる樹脂が好ましい。親水性基としては、例えば、(メタ)アクリル酸やその塩などの親水性単量体によるものが挙げられる。また、疎水性基としては、例えば、スチレンやその誘導体、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有するモノマー、(メタ)アクリル酸エステルなどの脂肪族基を有するモノマー、などの疎水性単量体による官能基が挙げられる。
樹脂分散剤として用いる樹脂は、重量平均分子量が10,000以上100,000以下、さらには30,000以上80,000以下であるものや、酸価が50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であるものが好ましい。本実施形態においては、酸価が50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下のスチレン−(メタ)アクリル系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂を分散剤として用いることがより好ましい。分散剤を用いる分散方式を利用する場合、樹脂分散剤/顔料の質量比率は、0.1倍以上10.0倍以下、さらには0.5倍以上5.0倍以下とすることが好ましい。
これら例示した顔料は、複数種を用いてもよい。インクジェットインク組成物中の顔料(固形分)の合計の含有量は、使用する顔料種により異なる。ただし、良好な発色性を得る観点から、インクジェットインク組成物の総質量を100質量%としたときに、顔料の含有量が0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、インクジェットインク組成物を調製する際には、あらかじめ顔料を分散させた顔料分散液を調製して、その顔料分散液をインクジェットインク組成物に添加してもよい。このような顔料分散液を得る方法としては、分散剤を使用せずに自己分散顔料を分散媒中に分散させる方法、ポリマー分散剤(樹脂分散剤)を使用して顔料を分散媒に分散させる方法、表面処理した顔料を分散媒に分散させる方法が挙げられる。
1.2.2.水
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、水を含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インクジェットインク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
水の含有量は、インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは45質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。なお、インクジェットインク組成物に含まれる水は、例えば、原料として用いる高分子粒子分散液、及び顔料分散液由来の水を含むものとする。水の含有量が30質量%以上であることにより、インクジェットインク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、水を含有する、水系インク組成物であることがより好ましい。これにより、高分子がエマルジョン形態で分散しやすく、定着性及び耐擦過性にさらに優れた画像をインクジェット法により容易に形成することができる。
1.2.3.水溶性有機溶剤
本実施形態のインクジェットインク組成物は、水溶性有機溶媒を含んでもよい。水溶性有機溶媒を含むことにより、インクジェットインク組成物のインクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、長期放置時による記録ヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制することができる。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、1価ないしは多価のアルコール、(ポリ)アルキレングリコール、グリコールエーテル、ε‐カプロラクタム、2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドンなどのラクタム、ε‐カプロラクトン、δ‐バレロラクトンなどのラクトンなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセチン、ジアセチン等含硫黄極性溶媒などを用いることができる。その中でもラクタムが好ましく、2−ピロリドンがより好ましい。インクジェットインク組成物中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク組成物の総量に対して、合計で3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
1.2.4.界面活性剤
本実施形態のインクジェットインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。
インクジェットインク組成物に界面活性剤を配合する場合には、インクジェットインク組成物全体に対して、界面活性剤の合計で0.01質量%以上3質量%以下、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上0.5質量%以下配合することが好ましい。
インクジェットインク組成物が界面活性剤を含有することにより、ヘッドからインクを吐出する際の安定性が増す傾向がある。
1.2.5.キレート剤
本実施形態のインクジェットインク組成物は、キレート剤を含んでもよい。キレート剤は、イオンを捕獲する性質を有する。そのようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩が挙げられる。
1.2.6.pH調整剤
本実施形態のインクジェットインク組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、促進したりすることができ、インクジェットインク組成物の洗浄性を調節することができる。pH調整剤としては、例えば、モルホリン類、ピペラジン類、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、を例示できる。
1.2.7.その他の成分
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、さらに必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、必要に応じて、防錆剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
1.3.インクジェットインク組成物の製造方法
本実施形態のインクジェットインク組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、高分子を重合する際に、2−ピロリドンのような水溶性有機溶剤を含む溶媒中で反応させて、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m−ビス(イソシアネートプロピル)ベンゼン及びm−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼンから選ばれた1種以上およびポリオレフィンポリオールに由来するウレタン基又はウレア基を有する高分子を形成する。
そして、得られた高分子粒子分散液又は高分子溶液と、上述の各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより製造することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
このようにして製造すると、2−ピロリドンのような水溶性有機溶剤をインクジェットインク組成物の成分として残存させて利用することができるので、その溶剤を有効利用できる。
1.4.作用効果等
本実施形態のインクジェットインク組成物が、耐擦過性、目詰まり回復性及び間欠吐出安定性に優れる要因は以下のように考えられる。但し要因はこれに限定されない。本実施形態のインクジェットインク組成物によれば、上述の高分子を添加することにより、記録される画像の耐擦過性を向上させるとともに、目詰まり回復性及び間欠吐出安定性を高く維持できる。間欠吐出安定性は、高分子の酸価と関連しており、酸価が高いと、高分子の親水性が高まり、間欠吐出安定性が向上する。ところが、高分子の酸価を高くしすぎると、間欠吐出安定性は向上するものの、記録された画像の耐擦過性及び耐水性が低下する傾向がある。また、高分子をインクジェットインク組成物に含有させる形態によっては、インクの間欠吐出安定性が低下するということもわかっている。また、コロナ処理された基材のヒドロキシル基やカルボキシル基のような極性基と、本実施形態に係るポリウレタンポリウレア中に存在する分岐状ポリエチレンイミン由来のアミノ基やイミノ基、若しくはウレタン基、ウレア基、アロハネート基、ビウレット基のような極性基との相互作用によって、ラミネート剥離強度及び定着性、すなわち基材との密着性、が向上する。
また、一般に、間欠吐出安定性の低下は、インクジェットヘッドのノズルからの水の蒸発によって生じる。間欠吐出安定性を高めるためには、インクジェットヘッドのノズル近傍に存在するインクから水がある程度蒸発して、高分子と顔料との相互作用が強まったときにも、顔料や樹脂が凝集せずに安定に分散された状態を保っていることが必要である。
本実施形態のインクジェットインク組成物に含まれる高分子は、比較的低酸価であるものの、立体的に複雑に絡み合った構造を有するため、水の蒸発が進んでも高分子と顔料との間で静電作用や斥力などによる反発が生じやすい。これにより本実施形態のインクジェットインク組成物は、記録物の耐擦過性が向上し、顔料の分散状態が安定に保たれるので、目詰まり安定性や間欠吐出安定性を向上することができる。
さらに、本実施形態のインクジェットインク組成物に含まれる高分子のように、イソシアネートを適切に配合することによって、フィルム等の平坦性の高い記録媒体に塗布した場合の光沢性が向上する。この要因は以下のように考えられるが、要因はこれに限定されない。
高分子は主にポリイソシアネートとそれと反応する成分で構成されるので、インクジェットインク組成物の間欠吐出安定性の向上のため、高分子の酸価を高める場合、酸基含有ジオールなどの短鎖ポリオールが占める割合を大きくすることになる。すると、短鎖ポリオールと同様に、ポリイソシアネートと反応する対象の成分である、長鎖ポリオールが占める割合が小さくなる。この場合、高分子におけるウレタン結合の増加やソフトセグメントの減少になり、高分子膜の柔軟性が損なわれる。したがって、高分子の酸価を高めることによってその親水性を高めると、インクジェットインク組成物の間欠吐出安定性は向上するが、画像の耐擦過性及び耐水性が低下する。
2.記録方法
2.1.記録媒体
本実施形態に係る記録方法は、インクジェットインク組成物を用いて記録媒体に記録を行う記録方法に使用される。以下、本実施形態に係る記録方法とともに使用される記録媒体の例について説明する。
本実施形態の記録方法に用いる記録媒体は、特に限定されないが、低吸収性又は非吸収性記録媒体が好ましい。低吸収性又は非吸収性記録媒体とは、インクを全く吸収しない、又はほとんど吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、本実施形態で使用する記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。このような非吸収性の性質を備える記録媒体としては、インク吸収性を備えるインク受容層を記録面に備えない記録媒体や、インク吸収性の小さいコート層を記録面に備える記録媒体が挙げられる。
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
低吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、表面に油性インクを受容するための塗工層が設けられた塗工紙が挙げられる。塗工紙としては、特に限定されないが、例えば、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
本実施形態のインクジェットインク組成物を用いれば、このようなインク非吸収性又はインク低吸収性の記録媒体に対しても、定着性が良好で耐擦過性が良好な所定の画像をより容易に形成することができる。
本実施形態に係る記録方法では、付着対象である記録媒体が、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を主成分とすることがより好ましい。このような記録媒体は、一般的に接着の困難な記録媒体であり、これに対して定着性及び耐擦過性の良好な画像を形成することができるので、定着性及び耐擦過性が良好であるという効果が更に顕著である。
2.2.記録方法
本実施形態に係る記録方法は、上述のインクジェットインク組成物を用いる。このような記録方法によれば、例えば、記録媒体上に、インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して画像層を形成する場合に、間欠吐出安定性を確保し、画像の定着性と耐擦過性が両立された画像を得ることができる。
本実施形態の記録方法は、上記で説明した本実施形態のインクジェットインク組成物をインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに電歪素子による力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本実施形態においては、インクに電歪素子による力学的エネルギーを付与する方式を用いることが特に好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り種々の変更は可能であり、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して%と記載しているものは特に断らない限り質量%である。
<調製例1>
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、下記のようにして得られたポリカーボネートジオールa1500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220g及び2−ピロリドン(2−P:沸点245℃)1347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。そこに、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(MCHDI)を1300g、ウレタン化触媒XK−614(楠本化成製)を2.6g加え90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。
次いで反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエタノールアミン220gを添加し混合した。その中から4340gを抜き出して、強攪拌下のもと水5400g及びトリエタノールアミン22gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1500gを投入し、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gおよび分岐状のポリエチレンイミン(日本触媒製製品名「エポミンP−300」)369gを加えて鎖延長反応を行った。固形分濃度が30%となるように溶媒を留去し、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例2>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の調製において、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gおよびポリエチレンイミン(日本触媒製製品名「エポミンP−300」)369gを、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gおよびポリエチレンイミン(日本触媒製製品名「エポミンSP−006」)185gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA2(樹脂固形分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例3>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の調製において、ポリカーボネートジオールa1500gを、ポリカーボネートジオールa1000gと下記のようにして得られたポリカーボネートジオールb750gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA3(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。なお、ポリカーボネートジオールbは、1,4−シクロヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物であり、その数平均分子量は3000であった。
<調製例4>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の調製において、ポリカーボネートジオールa1500gを、両末端水酸基水素化ポリブタジエン(GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製製品))1500gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例5>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の調製において、ポリカーボネートジオールa1500gを、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1000gおよびGI−3000(商品名:日本曹達株式会社製)750gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA5(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例6>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4の製造において、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1500gを、ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量2000)1500gに変更した以外は調製例4と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA6(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例7>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4の製造において、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1500gを、ポリカーボネートジオールa1000gおよびGI−3000(商品名:日本曹達株式会社製)750gに変更した以外は調製例4と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA7(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例8>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4の製造において、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1500gを、ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量2000)1000gおよびポリカーボネートジオールa500gに変更した以外は調製例4と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA8(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例9>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の製造において、2−ピロリドン(沸点245℃)1347gをメチルエチルケトン(沸点79.6℃)1347gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA9(ウレタン樹脂成分30%、水70%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例10>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA2の製造において、2−ピロリドン(沸点245℃)1347gをメチルエチルケトン(沸点79.6℃)1347gに変更した以外は調製例2と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA10(ウレタン樹脂成分30%、水70%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例11>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA3の製造において、2−ピロリドン(沸点245℃)1347gをメチルエチルケトン(沸点79.6℃)1347gに変更した以外は調製例3と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA11(ウレタン樹脂成分30%、水70%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例12>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4の製造において、2−ピロリドン(沸点245℃)1347gをメチルエチルケトン(沸点79.6℃)1347gに変更した以外は調製例4と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA12(ウレタン樹脂成分30%、水70%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例13>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA5の製造において、2−ピロリドン(沸点245℃)1347gをメチルエチルケトン(沸点79.6℃)1347gに変更し、固形分濃度が30%となるように溶媒を留去した以外は調製例5と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA13(ウレタン樹脂成分30%、水70%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例14>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の製造において、ビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gを35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(Mw116.21)水溶液408gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA14(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例15>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の製造において、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1300gをイソホロンジイソシアネート1100gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA15(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例16>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の製造において、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1300gを1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン950gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA16(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例17>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA2の製造において、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1300gをm−ビス(イソシアネートプロピル)ベンゼン1070gに変更した以外は調製例2と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA17(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例18>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA3の製造において、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1300gをm−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン930gに変更した以外は調製例3と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA18(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例19>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA15の製造において、イソホロンジイソシアネート1100gを1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン930gに変更した以外は調製例15と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA19(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例20>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4の製造において、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1300gを下記のようにして得られたポリイソシアネートA1400gに変更し、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1500gを水酸基及びカルボキシル基含有ポリブタジエン(GI−3000(商品名:日本曹達株式会社製))2250gに変更した以外は調製例4と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA20(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例21>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の製造において、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1300gを下記のようにして得られたポリイソシアネートB1020gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA21(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例22>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4の製造において、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1500gを、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1000gおよびポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量2000)500gに変更した以外は調製例4と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA22(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例23>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4の製造において、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1500gを、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1000gおよびポリカーボネートジオールa300gおよびポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量2000)200gに変更した以外は調製例4と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA23(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例24>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA22の製造において、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1000gおよびポリカーボネートジオールa500gを、GI−3000(商品名:日本曹達株式会社製)2100g及びトリメチロールプロパン5gに変更した以外は調製例22と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA24(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例25>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA22の製造において、GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)1000gおよびポリカーボネートジオールa500gを、GI−3000(商品名:日本曹達株式会社製)2050g及びトリエチレングリコール10gに変更した以外は調製例22と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA25(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例26>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA4の製造において、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220gを2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)440gに変更し、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(MCHDI)1300gを4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(MCHDI)1730gに変更した以外は調製例4と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA36(ウレタン樹脂成分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価210mgKOH/g)を得た。
<調製例27>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA1の製造において、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gおよびポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP−300)369gを、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液1084gに変更した以外は調製例1と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA27(樹脂固形分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g、ウレア基/ウレタン基比率1/15=0.066)を得た。
<調製例28>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA2の製造において、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gおよびポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンSP−006)185gを、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液1084gに変更した以外は調製例2と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA28(樹脂固形分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例29>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA3の製造において、ビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gおよびポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP−300)369gを、ビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液1084gに変更した以外は調製例3と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA29(樹脂固形分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g)を得た。
<調製例30>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA9の製造において、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gおよびポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP−300)369gを、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液1084gに変更した以外は調製例9と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA30(樹脂固形分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g、ウレア基/ウレタン基比率1/15=0.066)を得た。
<調製例31>
ポリウレタンポリウレアエマルジョンA20の製造において、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液542gおよびポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP−300)369gを、35質量%のビシクロヘプタンジメタンアミン水溶液1084gに変更した以外は調製例20と同様にして、ポリウレタンポリウレアエマルジョンA31(樹脂固形分30%、水64%、2−ピロリドン6%、酸価18mgKOH/g、ウレア基/ウレタン基比率1/15=0.066)を得た。
<ポリカーボネートジオールaの製造>
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた1Lガラス製セパラブルフラスコに、原料として、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD):123g、ジフェニルカーボネート:203g、酢酸マグネシウム4水和物:4.4mgを入れ、窒素ガスで置換した。攪拌下、内温を160℃〜170℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、大気圧から圧力を26kPaまで下げた後、副生物のフェノールを系外へ除去しながら100分間反応させた。次いで、圧力を0.6kPaまで下げて反応を続けた。更に、180℃まで温度を上げて副生物のフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら100分間反応させて、ポリカーボネートジオールaを得た。株式会社日立製作所製L7100システムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、溶媒をTHFとしてスチレン換算の数平均分子量を測定したところ、2000であった。
<ポリカーボネートジオールbの製造>
ポリカーボネートジオールaの製造に用いた装置と同じ装置を用いて、原料として、1,5−ペンタンジオール(1,5−PD):63g、1,8−オクタンジオール(1,8−OD):60g、ジフェニルカーボネート:203g、酢酸マグネシウム4水和物:4.4mgを入れ、窒素ガスで置換した。攪拌下、内温を160℃〜170℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、大気圧から圧力を26kPaまで下げた後、副生物のフェノールを系外へ除去しながら100分間反応させた。次いで、圧力を0.6kPaまで下げて反応を続けた。更に、180℃まで温度を上げて副生物のフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら100分間反応させて、ポリカーボネートジオールbを得た。スチレン換算の数平均分子量を測定したところ、3000であった。
<ポリイソシアネートAの合成>
撹拌機、温度計、冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた反応器に、窒素雰囲気下で186.0質量部の4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、14.0質量部のイソプロピルアルコール、及び0.1質量部のジブチルスズオキサイドを加え、温度80℃で2時間反応させ、ウレタン化を行い、反応液を得た。得られた反応液に、0.01質量部の2−エチルヘキサン酸ジルコニウム(アロファネート化触媒)を加え、温度110℃で反応させ、反応液を得た。得られた反応液を薄膜蒸留装置により蒸留することで未反応の4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを除去して、ポリイソシアネートAを得た。イソシアネート基含有率を20.0%に調整した。
<ポリイソシアネートBの合成>
撹拌機、温度計、冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた反応器に、窒素雰囲気下で186.0質量部の水添キシリレンジイソシアネート、14.0質量部のイソプロピルアルコール、及び0.1質量部のジブチルスズオキサイドを加え、温度80℃で2時間反応させ、ウレタン化を行い、反応液を得た。得られた反応液に、0.01質量部の2−エチルヘキサン酸ジルコニウム(アロファネート化触媒)を加え、温度110℃で反応させ、反応液を得た。得られた反応液を薄膜蒸留装置により蒸留することで未反応の水添キシリレンジイソシアネートを除去して、ポリイソシアネートBを得た。イソシアネート基含有率を20.0%に調整した。
各ウレタン樹脂エマルジョンに用いた各イソシアネート類を以下に示す。
ポリカーボネートジオールa
ポリカーボネートジオールb
GI−2000(商品名:日本曹達株式会社製)
GI−3000(商品名:日本曹達株式会社製)
トリメチロールプロパン(Mw134.17)
トリエチレングリコール(Mw150.17)
ポリオキシプロピレングリコール(Mn2000)
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(Mw262.35)
イソホロンジイソシアネート(Mw222.24)
1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(Mw194.23)
m−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン(Mw188.18)
m−ビス(イソシアネートプロピル)ベンゼン(Mw244.29)
ポリイソシアネートA
ポリイソシアネートB
ビシクロヘプタンジメタンアミン(Mw154.25)
2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(Mw116.2)
ジメチロールプロピオン酸(Mw134.13)
顔料分散液の調製
(顔料分散液1)
イオン交換水500g及びカーボンブラック15gを混合し、1mmのジルコニアビーズを用いたロッキングミルを用いて30分間撹拌して、顔料を予備湿潤させた。ここに4485gのイオン交換水を加え、高圧ホモジナイザーで分散させた。このときの顔料の平均粒子径は110nmであった。これを高圧容器に移し、圧力3MPaで加圧した後、オゾン濃度が100ppmであるオゾン水を導入することによって顔料の表面のオゾン酸化処理を行った。その後0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてこの分散液のpHを9.0に調整した後、顔料固形分の濃度を調整して、顔料分散液1を得た。顔料分散液1には、粒子表面に−COONa基が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は30質量%であった。
(顔料分散液2)
カーボンブラック500g、水溶性樹脂1000g、水14000gを混合し、混合物を得た。水溶性樹脂としては、酸価100mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和したものを用いた。1mmのジルコニアビーズを用いたロッキングミルを用いてこの混合物を1時間分散した後、遠心分離により不純物を除去し、さらにポアサイズ5.0μmのミクロフィルター(ミリポア製)を用いて減圧ろ過を行った。次いで、顔料固形分の濃度を調整して、pHが9.0である顔料分散液2を得た。顔料分散液2には、水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料の含有量は30質量%、樹脂の含有量は15質量%であった。
(顔料分散液3)
攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた反応容器を窒素置換した後、メチルエチルケトン300質量部を入れ、スチレン40質量部、エチルメタクリレート40質量部、ラウリルアクリレート5質量部、ラウリルメタクリレート5質量部、メトキシポリエチレングリコール400アクリレートAM−90G(新中村化学工業株式会社製)5質量部、アクリル酸5質量部、過硫酸アンモニウム0.2質量部、t―ドデシルメルカプタン0.3質量部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながらポリマー分散剤を重合反応させた。その後、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40質量%のポリマー分散剤の溶液を調製した。
上記ポリマー分散剤溶液について、株式会社日立製作所製L7100システムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、溶媒をTHFとしてスチレン換算の重量平均分子量を測定したところ、58000であった。また、多分散度(Mw/Mn)の値は3.1であった。
また、上記ポリマー分散剤溶液40質量部と、シアン顔料としてクロモファインブルー C.I.Pigment Blue15:3(大日精化工業株式会社製、商品名、以下「PB15:3」ともいう)30質量部と、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100質量部と、メチルエチルケトン30質量部とを混合し、アルティマイザー25005(スギノマシン株式会社製製品名)で8パスの分散処理を行った。その後、イオン交換水を300質量部添加して、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整した。次いで、シアン顔料の体積平均粒径を粒度分布計で測定しながら、体積平均粒径が100nmとなるまで分散し、3μmのメンブレンフィルターでろ過して固形分(ポリマー分散剤と顔料)が20質量%である顔料分散液を得た。
インクジェットインク組成物の調製
<インクの調製>
(実施例1〜26、比較例1〜5)
下記に示す各成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ5.0μmのミクロフィルター(ミリポア製)にて減圧ろ過を行い、実施例及び比較例の各インクジェットインク組成物を調製した。実施例及び比較例の各インクジェットインク組成物の組成を表1〜表3に示す。なお、表1〜表3には顔料固形分の正味の添加量を示す。
各表に示す以外の成分として、1,2−ヘキサンジオール(1,2−HD)を2質量%、プロピレングリコール(PG)を10質量%、トリエタノールアミン(TEA)を0.5質量%、EDTA(エチレンジアミン4酢酸2Na塩)を0.02質量%、オルフィンPD501(日信化学工業製のノニオン性界面活性剤:アセチレングリコール系)を0.5質量%用いた。さらに、実施例9〜13では2−ピロリドンを3質量%、それ以外の例では2.2質量%、イオン交換水を残量(残量とは、インクの全成分の合計量が100.0質量%となる量)用いた。ウレタン樹脂エマルジョンA1〜A31を用いた各インクジェットインク組成物の組成及び評価結果を表1〜表3に示す。
Figure 2020084013
Figure 2020084013
Figure 2020084013
評価方法
<評価>
上記で得られた各インクジェットインク組成物をそれぞれインクカートリッジに充填し、ピエゾ素子のエネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名PX−G930、セイコーエプソン株式会社製)に搭載した。各例において1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が28ng±10%であるインク滴を1滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。記録条件は、温度:23℃、相対湿度:55%とした。各例について以下の各評価を行い、それらの評価基準において、A、B及びCを許容できるレベル、D及びEを許容できないレベルとした。
(耐擦過性試験)
JIS L0849 2013 に基づいて、テスター産業の学振式耐擦過性評価装置AB−301を用いて、200g荷重100往復の条件で耐擦過性試験を行った。上記のインクジェット記録装置を用いて、フィルム(商品名OPP無地ロール25μm厚、東洋紡製)に、記録デューティが100%である、1.0インチ×0.5インチのベタ画像を記録した記録物を得た。プラテン温度を55℃として、1440dpi×1440dpiのドット密度でベタ画像を記録した。記録の10分後及び1日後にそれぞれ、記録物のベタ画像の上に乾燥した金巾綿を押し当てて評価(乾摩擦)した。また、記録の10分後及び1日後にそれぞれ、記録物のベタ画像の上に湿らせた金巾綿を押し当てて評価(湿摩擦)した。その後、金巾綿の汚れ、非記録部の汚れ及び印刷部分の剥がれ具合を目視で確認して、以下に示す評価基準にしたがって耐擦過性の評価を行った。なお、ここでいう耐乾摩擦性及び耐湿摩擦性が、耐擦過性に相当する。
A:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れもほとんどなく、印刷部分の剥がれ面積が接触部分の0%。
B:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れもほとんどなく、印刷部分の剥がれ面積が接触部分の0%超1%未満。
C:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがわずかにあり、印刷部分の剥がれ面積が接触部分の1%以上5%未満。
D:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがあり、印刷部分の剥がれ面積が接触部分の5%以上10%未満。
E:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがかなりあり、印刷部分の剥がれ面積が接触部分の10%以上。
(間欠吐出安定性試験)
プリンター PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の一部を改造して、プラテン温度を調節しフィルムが印刷できるプリンターとした。このプリンターを用いて、温度40℃、相対湿度20%の環境下で間欠印刷時における吐出安定性の評価を行った。まず、全てのノズルから正常にインクジェットインク組成物が吐出されることを確認した。そして、実施例1のインクジェットインク組成物をA4判の写真用紙(セイコーエプソン株式会社製フォト光沢紙)上に吐出した。その後、温度40%、相対湿度20%の環境下で2分間の休止時間を設け、再度、A4判の写真用紙上にインクジェットインク組成物を吐出した。二回目の吐出において、A4判の写真用紙上に付着した1滴目のドットの位置と、狙い位置とのドットの位置ずれを光学顕微鏡で測定した。得られたドットの位置ずれに基づいて、下記評価基準により間欠特性を評価した。
A:ドットの位置ずれが10μm以下であった。
B:ドットの位置ずれが10μmを超え20μm以下であった。
C:ドットの位置ずれが20μmを超え30μm以下であった。
D:ドットの位置ずれが30μmを超え50μm以下であった。
E:ドットの位置ずれが50μm超過であった。
(連続印字安定性試験)
プリンター PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の一部を改造して、プラテン温度を調節しフィルムが印刷できるプリンターとした。このプリンターのインクカートリッジに上記で得られたインクジェットインク組成物を充填した。そして、縦720dpi×横720dpiの解像度で、A4判の普通紙(王子製紙株式会社製 OKプリンス上質紙64g/m2)上にインク組成物を吐出することにより、ベタパターンによる記録サンプルを作製した。温度40℃、相対湿度20%の環境下で、最大8時間までこの操作を繰り返してインクジェットインク組成物を吐出し、安定してインクジェットインク組成物の液滴がノズルから吐出されなくなるまでの時間を測定した。得られた時間に基づいて、下記評価基準により連続印字安定性を評価した。
A:吐出開始から8時間たっても、1度も不吐出や吐出乱れが観察されなかった。
B:吐出開始から2時間以上8時間未満で、不吐出や吐出乱れが観察された。
C:吐出開始から1時間以上2時間未満で、不吐出や吐出乱れが観察された。
D:吐出開始から10分以上1時間未満で、不吐出や吐出乱れ等が観察された。
E:吐出開始から10未満で、不吐出や吐出乱れ等が観察された。
(目詰まり回復性試験)
プリンター PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、このプリンターのインクカートリッジに上記で得られたインクジェットインク組成物を充填し、縦720dpi×横720dpiの解像度で、A4判の普通紙(王子製紙株式会社製 OKプリンス上質紙64g/m2)上に印刷して全ノズルでインクジェットインク組成物が吐出されることを確認した。その後、プリンターを温度40℃、相対湿度20%の環境下に30日間放置した。放置後、再び全ノズルよりインクジェットインク組成物を吐出し、初期と同等の印刷が可能となるまでにクリーニングを繰り返し実施し、その際のクリーニングの回数を計測した。クリーニングの回数に基づいて、下記評価基準により目詰まり回復性を評価した。
A:1回から3回のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
B:4回から6回のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
C:7回から20回のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
D:20回から30回のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
E:30回のクリーニングでもいずれかのノズルからインク組成物が吐出できなかった。
(20°光沢性試験)
コロナ処理OPPフィルム(フタムラ化学製FOS−AQ 60μm厚)にPX−G930を用いてプラテン温度55℃でベタ印刷(1440dpi×1440dpi)し、90℃で10分乾燥させたものをサンプルとして作製した。光沢度計でそのサンプルの20°光沢を測定した。光沢度はハンディタイプの光沢度計MULTI GLOSS 268(コニカミノルタ株式会社製)で測定した。
A:OPPフィルム上で20°光沢が65以上。
B:OPPフィルム上で20°光沢が55以上65未満。
C:OPPフィルム上で20°光沢が45以上55未満。
D:OPPフィルム上で20°光沢が35以上45未満。
E:OPPフィルム上で20°光沢が35未満。
(ラミネート剥離強度試験)
コロナ処理OPPフィルム(フタムラ化学製FOS−AQ 60μm厚)にPX−G930の一部を改造して、プラテン温度を調節しフィルムが印刷できるプリンターとした。プラテン温度55℃でインク組成物をベタ印刷(1440dpi×1440dpi)し、90℃で10分乾燥させたものをサンプルとして作製した。
東洋モートンの二液硬化型ドライラミネート接着剤TM329とCAT8Bとを組み合わせた組成の接着剤を準備した。JIS Z0237に準じて、ポリエチレンシーラント(三井東セロ製PE TUX−HCE 60μm)を用いて、2番のバーコーターで接着剤を2〜3μmの厚さになるようにサンプルに塗布した。次いで、ドライヤーで約10秒かけて接着剤の溶剤を飛ばした後にラミネートした。その後、辻井染機工業株式会社製ニューマチックマングルを用いて、1m/分の送り速度、0.005MPaの圧力で加圧した後、40℃で約48時間養生してラミネート剥離強度試験用のサンプルを得た。
各サンプルを15mm幅に切断し、株式会社エーアンドディ製引張試験機 TSNSILON RTG1250を用いて、剥離強度試験を行った。50Nのロードセルを用い、5mm/sの速度で試験を行った。サンプルをJIS Z0237に準じて180°に折り返し、折り返したサンプルを試験板から25mmはがし、チャックに固定して、測定後の最初の25mmは無視し、それから50mmの長さの測定値を3回ずつ測定し、平均して値とした。
A:5.0N/15mm以上
B:2.5N/15mm以上5.0N/15mm未満
C:1.0N/15mm以上2.5N/15mm未満
D:0.5N/15mm以上1.0N/15mm未満
E:0.5N/15mm未満
評価結果
本願実施例の結果から、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子を含有するインクジェットインクにおいて、ポリウレタンポリウレア樹脂粒子におけるポリウレタンポリウレアが、分岐構造を有するポリエチレンイミンに由来する骨格を含むことにより、ラミネート剥離強度が良好で、耐擦過性および定着性に優れ、またフィルム等の光沢性が要求される場合も十分な光沢性が得られ、かつ間欠吐出安定性を満足することがわかった。これにより、インクジェットインクは、裏印刷および表印刷の両方に対応できるインクジェットインクとなる。
一方、本願比較例の結果から、上記ポリウレタンポリウレア樹脂粒子を含有しない比較例では、上記の特性を満足しないことがわかった。比較例では、耐擦過性及び間欠吐出安定性を両立させることができないことがわかった。
本願実施例の結果から、ポリウレタンポリウレアが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン及びm−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる1種以上に由来する骨格を含むことにより、耐擦過性及び光沢性に優れた画像を形成可能であることが分かった。
本願実施例の結果から、酸価を特定の範囲内とすることにより、間欠吐出安定性に一層優れることが分かった。
本願実施例の結果から、飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールに由来する骨格から選ばれる1種以上を含有することにより、耐擦過性に一層優れる結果が得られることが分かった。また、飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールの重量平均分子量が特定の範囲内とすることにより、耐擦過性に一層優れる結果が得られることが分かった。
本願実施例の結果から、脂肪族ジアミンに由来する骨格及び芳香族ジアミンに由来する骨格から選ばれる1種以上の骨格を含油数ることにより、耐擦過性に一層優れる結果が得られることが分かった。
本願実施例の結果から、炭素数1以上8以下のアルキルジアミンに由来する骨格を含有することにより、耐擦過性に一層優れる結果が得られることが分かった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (10)

  1. ポリウレタンポリウレア樹脂粒子を含有するインクジェットインク組成物であって、
    前記ポリウレタンポリウレア樹脂粒子におけるポリウレタンポリウレアが、分岐構造を有するポリエチレンイミンに由来する骨格を含む、インクジェットインク組成物。
  2. 前記ポリウレタンポリウレアが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン及びm−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる1種以上に由来する骨格を含む、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
  3. 前記ポリウレタンポリウレアの酸価が、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である、請求項1又は2記載のインクジェットインク組成物。
  4. 前記ポリウレタンポリウレアが、カルボキシル基を有するグリコールに由来する骨格を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  5. 前記カルボキシル基を有するグリコールに由来する骨格が、ジメチロールプロピオン酸に由来する骨格である、請求項4記載のインクジェットインク組成物。
  6. 前記ポリウレタンポリウレアが、飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールに由来する骨格の1種以上を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  7. 前記飽和又は不飽和のポリオレフィンポリオールの重量平均分子量が、500以上4000以下である、請求項6記載のインクジェットインク組成物。
  8. 前記ポリウレタンポリウレアが、脂肪族ジアミンに由来する骨格及び芳香族ジアミンに由来する骨格からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  9. 前記ポリウレタンポリウレアが、炭素数1以上8以下のアルキルジアミンに由来する骨格を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物を、記録媒体に対し吐出する吐出工程を含む、インクジェット記録方法。
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