JP2020064093A - 光学積層体 - Google Patents

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大輔 服部
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【課題】輝度が高く、輝度ムラが抑制され、かつ、一体物としての強度に優れた光学積層体を提供する。【解決手段】光学積層体は、導光板30と基材10と低屈折率層20とを有する。導光板は、基材および低屈折率層の光源側の端面より光源側に延出した延出部を有する。延出部の長さLEは、導光板の導光方向の全長LTに対して1%〜30%である。1つの実施形態においては、低屈折率層の屈折率は1.25以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、光学積層体に関する。
導光板を用いて光を取り出す光学装置(例えば、画像表示装置、照明装置)において、導光板と周辺光学部材(例えば、反射板、拡散板、プリズムシート、光取り出しフィルム)とを積層する際に、低屈折率層を介して積層する技術が知られている。このような技術によれば、低屈折率層を介することにより、単純に粘着剤のみで積層する場合に比べて光の利用効率が高いと報告されている。しかし、低屈折率層の屈折率をどれだけ低くしても空気の屈折率(1.00)よりも大きいので、光の利用効率には限界があり、その結果、輝度および輝度ムラが継続的な問題となっている。
特開平10−62626号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、輝度が高く、輝度ムラが抑制され、かつ、一体物としての強度に優れた光学積層体を提供することにある。
本発明の実施形態による光学積層体は、導光板と基材と低屈折率層とを有する。該導光板は、該基材および該低屈折率層の光源側の端面より光源側に延出した延出部を有する。該延出部の長さLは、該導光板の導光方向の全長Lに対して1%〜30%である。
1つの実施形態においては、上記低屈折率層の屈折率は1.25以下である。
1つの実施形態においては、上記低屈折率層の空隙率は50%以上である。
本発明によれば、導光板と基材と低屈折率層とを有する光学積層体において、導光板に基材および低屈折率層の光源側の端面より光源側に延出した延出部を設け、当該延出部の長さを導光板の導光方向の全長に対して所定の割合とすることにより、輝度が高く、輝度ムラが抑制され、かつ、一体物としての強度に優れた光学積層体を実現することができる。
本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。 本発明の別の実施形態による光学積層体の概略断面図である。 図1または図2の光学積層体の概略平面図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.光学積層体の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、導光板30と基材10と低屈折率層20とをこの順に有する。別の実施形態においては、図2に示す光学積層体101のように、低屈折率層20と基材10との配置は入れ替わっていてもよい。低屈折率層20は、代表的には、基材10に直接(粘着剤層および/または接着剤層を介在させることなく)塗工形成されている。本発明の実施形態においては、図1〜図3に示すように、導光板30は、基材10および低屈折率層20の光源側(図面の右側:光源は図示せず)の端面より光源側に延出した延出部を有する。言い換えれば、低屈折率層(および低屈折率層が形成される基材)は、光源から所定距離離間して形成されている。さらに言い換えれば、導光板30の延出部の両表面は空気との界面とされている。延出部の長さLは、導光板の導光方向の全長Lに対して1%〜30%であり、好ましくは5%〜25%であり、より好ましくは10%〜20%である。このような構成であれば、輝度を高くし、輝度ムラを抑制し、かつ、一体物としての光学積層体の強度を高くすることができる。より詳細には以下のとおりである。導光板の光源側に延出部を設け(低屈折率層を光源から離間して設け)、延出部の両表面を空気との界面とすることにより、光量が大きい光源側端部において空気による全反射を利用することができ、したがって、導光板内においてきわめて良好な光の伝播が実現される。その結果、輝度を高くすることができ、かつ、輝度ムラ(光源に近い部分と光源から遠い部分での明るさが異なること)を顕著に抑制することができる。さらに、延出部の長さを導光板の導光方向の全長に対して所定の割合とすることにより(特に、当該割合を所定値以下とすることにより)、導光板と低屈折率層とを一体化した光学積層体の一体物としての強度を維持することができる。より具体的には、低屈折率層の剥離を防止し、光学積層体の一体物としての実用的な強度および取扱い性を実現することができる。このように、導光板の光源側に延出部を設け、当該延出部の長さを導光板の導光方向の全長に対して所定の割合とすることにより、輝度が高く、輝度ムラが抑制され、かつ、一体物としての強度に優れた光学積層体を実現することができる。
導光板30の屈折率n1と低屈折率層20の屈折率n2とは、好ましくはn1>n2の関係を満たす。導光板30の屈折率n1は、好ましくは1.47以上であり、より好ましくは1.47〜1.60であり、さらに好ましくは1.47〜1.55である。低屈折率層20の屈折率n2は、好ましくは1.25以下であり、より好ましくは1.20以下であり、さらに好ましくは1.15以下である。屈折率n2の下限は、例えば1.01である。屈折率n1と屈折率n2との差は、好ましくは0.22以上であり、より好ましくは0.22〜0.40であり、さらに好ましくは0.25〜0.35である。導光板の屈折率n1は、導光板の構成材料を適切に選択することにより調整され得る。低屈折率層の屈折率n2は、構成材料、空隙率、空隙の構造・形状等を適切に選択することにより調整され得る。なお、導光板および低屈折率層の詳細については後述する。
導光板30と基材10とは、代表的には粘着剤層(図示せず)を介して積層されている。実用的には、導光板30と反対側の最外層として粘着剤層が配置され、本発明の実施形態による光学積層体と光学部材、光学フィルム、光学セル(例えば、画像表示セル)等との積層を可能としている。さらに、実用的には、最外層の粘着剤層の表面にはセパレーター(図示せず)が剥離可能に仮着され、粘着剤層が使用されるまで保護するとともに、ロール形成を可能としている。
以下、光学積層体の構成要素について具体的に説明する。
B.導光板
導光板30は、代表的には、樹脂(好ましくは、透明樹脂)のフィルムまたは板状物、あるいはガラスで構成され得る。このような樹脂の代表例としては、熱可塑性樹脂、反応性樹脂(例えば、電離放射線硬化性樹脂)が挙げられる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、PET等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂の具体例としては、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
導光板の厚みは、例えば100μm〜100mmであり得る。導光板の厚みは、好ましくは50mm以下であり、より好ましくは30mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下である。
導光板の屈折率n1は、上記のとおり、好ましくは1.47以上であり、より好ましくは1.47〜1.60であり、さらに好ましくは1.47〜1.55である。このような範囲であれば、低屈折率層の屈折率n2との所望の屈折率差を実現することができる。
C.基材
基材10は、代表的には、樹脂(好ましくは、透明樹脂)のフィルムまたは板状物で構成され得る。樹脂については、導光板に関して上記B項で説明したとおりである。
基材の厚みは、例えば10μm〜100μmであり、好ましくは10μm〜50μmである。
基材の屈折率は、好ましくは1.47以上であり、より好ましくは1.47〜1.60であり、さらに好ましくは1.47〜1.55である。このような範囲であれば、導光板から取り出される光に悪影響を与えることなく光学セル(例えば、画像表示セル)に導くことができる。基材の屈折率と導光板の屈折率との差は、好ましくは0.1以下である。
D.低屈折率層
低屈折率層は、代表的には、内部に空隙を有する。低屈折率層の空隙率は、例えば50%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。一方、空隙率は、例えば90%以下であり、好ましくは85%以下である。空隙率が上記範囲内であることにより、低屈折率層の屈折率を適切な範囲とすることができる。
低屈折率層の屈折率は、上記のとおり、好ましくは1.25以下であり、より好ましくは1.20以下であり、さらに好ましくは1.15以下である。屈折率の下限は、例えば1.01であり得る。このような範囲であれば、非常に優れた光の利用効率を実現することができる。
低屈折率層は、上記所望の空隙率および屈折率を有する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。低屈折率層は、好ましくは塗工または印刷等により形成され得る。低屈折率層を構成する材料としては、例えば、国際公開第2004/113966号パンフレット、特開2013−254183号公報、および特開2012−189802号公報に記載の材料を採用し得る。具体的には、例えば、シリカ系化合物;加水分解性シラン類、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物;有機ポリマー;シラノール基を含有するケイ素化合物;ケイ酸塩を酸やイオン交換樹脂に接触させることにより得られる活性シリカ;重合性モノマー(例えば、(メタ)アクリル系モノマー、およびスチレン系モノマー);硬化性樹脂(例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素含有樹脂、およびウレタン樹脂);およびこれらの組み合わせが挙げられる。
低屈折率層における空隙(孔)のサイズは、空隙(孔)の長軸の直径および短軸の直径のうち、長軸の直径を指すものとする。空隙(孔)のサイズは、例えば、2nm〜500nmである。空隙(孔)のサイズは、例えば2nm以上であり、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは20nm以上である。一方、空隙(孔)のサイズは、例えば500nm以下であり、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。空隙(孔)のサイズの範囲は、例えば2nm〜500nmであり、好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは10nm〜200nmであり、さらに好ましくは20nm〜100nmである。空隙(孔)のサイズは、目的および用途等に応じて、所望のサイズに調整することができる。
空隙(孔)のサイズは、BET試験法により定量化できる。具体的には、比表面積測定装置(マイクロメリティック社製:ASAP2020)のキャピラリに、サンプル(形成された空隙層)を0.1g投入した後、室温で24時間、減圧乾燥を行って、空隙構造内の気体を脱気する。そして、上記サンプルに窒素ガスを吸着させることで吸着等温線を描き、細孔分布を求める。これによって、空隙サイズが評価できる。
低屈折率層のヘイズは、例えば5%未満であり、好ましくは3%未満である。一方、ヘイズは、例えば0.1%以上であり、好ましくは0.2%以上である。ヘイズの範囲は、例えば0.1%以上5%未満であり、好ましくは0.2%以上3%未満である。ヘイズは、例えば、以下のような方法により測定できる。なお、ヘイズは、低屈折率層の透明性の指標である。
空隙層(低屈折率層)を50mm×50mmのサイズにカットし、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製:HM−150)にセットしてヘイズを測定する。ヘイズ値については、以下の式より算出する。
ヘイズ(%)=[拡散透過率(%)/全光線透過率(%)]×100(%)
上記内部に空隙を有する低屈折率層としては、例えば、多孔質層、および/または空気層を少なくとも一部に有する低屈折率層が挙げられる。多孔質層は、代表的には、エアロゲル、および/または粒子(例えば、中空微粒子および/または多孔質粒子)を含む。低屈折率層は、好ましくはナノポーラス層(具体的には、90%以上の微細孔の直径が10−1nm〜10nmの範囲内の多孔質層)であり得る。
上記粒子としては、任意の適切な粒子を採用し得る。粒子は、代表的には、シリカ系化合物からなる。粒子の形状としては、例えば、球状、板状、針状、ストリング状、およびブドウの房状が挙げられる。ストリング状の粒子としては、例えば、球状、板状、または針状の形状を有する複数の粒子が数珠状に連なった粒子、短繊維状の粒子(例えば、特開2001−188104号公報に記載の短繊維状の粒子)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ストリング状の粒子は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ブドウの房状の粒子としては、例えば、球状、板状、および針状の粒子が複数凝集してブドウの房状になったものが挙げられる。粒子の形状は、例えば透過電子顕微鏡で観察することによって確認できる。粒子の平均粒子径は、例えば5nm〜200nmであり、好ましくは10nm〜200nmである。上記構成を有することにより、屈折率が充分に低い低屈折率層を得ることができ、かつ低屈折率層の透明性を維持することができる。なお、本明細書では、平均粒子径とは、窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積(m/g)から、平均粒子径=(2720/比表面積)の式によって与えられた値を意味するものとする(特開平1−317115号公報参照)。
低屈折率層の厚みは、好ましくは0.2μm〜5μmであり、より好ましくは0.3μm〜3μmである。低屈折率層の厚みがこのような範囲であれば、本発明による破損防止効果が顕著なものとなる。
低屈折率層は、上記のとおり、代表的には塗工または印刷により形成され得る。このような構成であれば、低屈折率層をロールトゥロールにより連続的に設けることができる。低屈折率層は、基材全面に形成されてもよく、所定のパターンで形成されてもよい。低屈折率層が所定のパターンで形成される場合には、塗工は、例えば所定のパターンを有するマスクを介して行われる。印刷は、任意の適切な方式が採用され得る。印刷方法は、具体的には、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の有版式の印刷方法であってもよく、インクジェット印刷、レーザー印刷、静電印刷等の無版式の印刷方法であってもよい。
以下、低屈折率層の具体的な構成の一例について説明する。本実施形態の低屈折率層は、微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位からなり、該構成単位同士が触媒作用を介して化学的に結合している。構成単位の形状としては、例えば、粒子状、繊維状、棒状、平板状が挙げられる。構成単位は、1つの形状のみを有していてもよく、2つ以上の形状を組み合わせて有していてもよい。以下においては、主として、低屈折率層が上記微細孔粒子どうしが化学的に結合している多孔体の空隙層である場合について説明する。
このような空隙層は、空隙層形成工程において、例えば微細孔粒子どうしを化学的に結合させることにより形成され得る。なお、本発明の実施形態において「粒子」(例えば、上記微細孔粒子)の形状は特に限定されず、例えば球状でもよく他の形状でもよい。また、本発明の実施形態において、上記微細孔粒子は、例えば、ゾルゲル数珠状粒子、ナノ粒子(中空ナノシリカ・ナノバルーン粒子)、ナノ繊維等であってもよい。微細孔粒子は、代表的には無機物を含む。無機物の具体例としては、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。1つの実施形態においては、上記微細孔粒子は、例えばケイ素化合物の微細孔粒子であり、上記多孔体は、例えばシリコーン多孔体である。上記ケイ素化合物の微細孔粒子は、例えば、ゲル状シリカ化合物の粉砕体を含む。また、多孔質層および/または空気層を少なくとも一部に有する低屈折率層の別形態としては、例えば、ナノファイバー等の繊維状物質からなり、該繊維状物質が絡まり合い空隙が形成されて層を成している空隙層がある。このような空隙層の製造方法は特に限定されず、例えば、上記微細孔粒子どうしが化学的に結合している多孔体の空隙層の場合と同様である。さらに別の形態としては、中空ナノ粒子やナノクレイを用いた空隙層、中空ナノバルーンやフッ化マグネシウムを用いて形成した空隙層が挙げられる。空隙層は、単一の構成物質からなる空隙層であってもよいし、複数の構成物質からなる空隙層であってもよい。空隙層は、単一の上記形態で構成されていてもよく、複数の上記形態を含んで構成されていてもよい。
本実施形態においては、多孔体の多孔質構造は、例えば、孔構造が連続した連泡構造体であり得る。連泡構造体とは、例えば上記シリコーン多孔体において、三次元的に孔構造が連なっていることを意味し、孔構造の内部空隙が連続している状態ともいえる。多孔質体が連泡構造を有することにより、空隙率を高めることが可能である。ただし、中空シリカのような独泡粒子(個々に孔構造を有する粒子)を使用する場合には、連泡構造を形成できない。一方、例えばシリカゾル粒子(ゾルを形成するゲル状ケイ素化合物の粉砕物)を使用する場合、当該粒子が三次元の樹状構造を有するために、塗工膜(ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を含むゾルの塗工膜)中で当該樹状粒子が沈降および堆積することで、容易に連泡構造を形成することが可能である。低屈折率層は、より好ましくは、連泡構造が複数の細孔分布を含むモノリス構造を有する。モノリス構造は、例えば、ナノサイズの微細な空隙が存在する構造と、同ナノ空隙が集合した連泡構造とを含む階層構造を意味する。モノリス構造を形成する場合、例えば、微細な空隙で膜強度を付与しつつ、粗大な連泡空隙で高い空隙率を付与し、膜強度と高空隙率とを両立することができる。このようなモノリス構造は、好ましくは、シリカゾル粒子に粉砕する前段階のゲル(ゲル状ケイ素化合物)において、生成する空隙構造の細孔分布を制御することにより形成され得る。また例えば、ゲル状ケイ素化合物を粉砕する際、粉砕後のシリカゾル粒子の粒度分布を所望のサイズに制御することにより、モノリス構造を形成することができる。
低屈折率層は、例えば上記のようにゲル状化合物の粉砕物を含み、当該粉砕物同士が化学的に結合している。低屈折率層における粉砕物同士の化学的な結合(化学結合)の形態は、特に制限されず、例えば架橋結合、共有結合、水素結合が挙げられる。
ゲル状化合物のゲル形態は、特に制限されない。「ゲル」とは、一般に、溶質が相互作用のために独立した運動性を失って集合した構造を有し、固化した状態をいう。ゲル状化合物は、例えば、ウェットゲルでもよいし、キセロゲルでもよい。なお、一般に、ウェットゲルは、分散媒を含み、分散媒中で溶質が一様な構造をとるものをいい、キセロゲルは、溶媒が除去されて、溶質が空隙を持つ網目構造をとるものをいう。
ゲル状化合物としては、例えば、モノマー化合物をゲル化したゲル化物が挙げられる。具体的には、上記ゲル状ケイ素化合物としては、例えば、モノマーのケイ素化合物が互いに結合したゲル化物、具体例として、モノマーのケイ素化合物が互いに共有結合、水素結合または分子間力結合したゲル化物が挙げられる。共有結合としては、例えば脱水縮合による結合が挙げられる。
低屈折率層における上記粉砕物の体積平均粒子径は、例えば0.10μm以上であり、好ましくは0.20μm以上であり、より好ましくは0.40μm以上である。一方、体積平均粒子径は、例えば2.00μm以下であり、好ましくは1.50μm以下であり、より好ましくは1.00μm以下である。体積平均粒子径の範囲は、例えば0.10μm〜2.00μmであり、好ましくは0.20μm〜1.50μmであり、より好ましくは0.40μm〜1.00μmである。粒度分布は、例えば、動的光散乱法、レーザー回折法等の粒度分布評価装置、および走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡等により測定することができる。なお、体積平均粒子径は、粉砕物の粒度のバラツキの指標である。
ゲル状化合物の種類は、特に制限されない。ゲル状化合物としては、例えばゲル状ケイ素化合物が挙げられる。以下、ゲル状化合物がゲル状ケイ素化合物である場合を例として説明するが、これには限定されない。
上記架橋結合は、例えばシロキサン結合である。シロキサン結合としては、例えば以下に示すような、T2の結合、T3の結合、T4の結合が挙げられる。空隙層(低屈折率層)がシロキサン結合を有する場合、いずれか一種の結合を有してもよいし、いずれか二種の結合を有してもよいし、三種全ての結合を有してもよい。シロキサン結合のうち、T2およびT3の比率が多いほど、可撓性に富み、ゲル本来の特性を期待できる。一方で、T4の比率が多いほど、膜強度が発現しやすい。したがって、目的、用途、所望の特性等に応じて、T2、T3およびT4の比率を変えることが好ましい。
Figure 2020064093
また、低屈折率層(空隙層)においては、例えば、含まれるケイ素原子がシロキサン結合していることが好ましい。具体例として、空隙層に含まれる全ケイ素原子のうち、未結合のケイ素原子(つまり、残留シラノール)の割合は、例えば50%未満であり、好ましくは30%以下であり、より好ましくは15%以下である。
ゲル状化合物がゲル状ケイ素化合物である場合、モノマーのケイ素化合物は、特に制限されない。モノマーのケイ素化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。ゲル状ケイ素化合物が、上記のように、モノマーのケイ素化合物が互いに水素結合または分子間力結合したゲル化物である場合、式(1)のモノマー間は、例えば、それぞれの水酸基を介して水素結合できる。
Figure 2020064093
式(1)中、Xは、例えば2、3または4であり、好ましくは3または4である。Rは、例えば直鎖もしくは分枝アルキル基である。Rの炭素数は、例えば1〜6であり、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜2である。直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、分枝アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、Xが3である下記式(1’)に示す化合物が挙げられる。下記式(1’)において、Rは、式(1)の場合と同様であり、例えばメチル基である。Rがメチル基である場合、ケイ素化合物は、トリス(ヒドロキシ)メチルシランである。Xが3である場合、ケイ素化合物は、例えば、3つの官能基を有する3官能シランである。
Figure 2020064093
式(1)で表されるケイ素化合物の別の具体例としては、Xが4である化合物が挙げられる。この場合、ケイ素化合物は、例えば、4つの官能基を有する4官能シランである。
モノマーのケイ素化合物は、例えば、ケイ素化合物前駆体の加水分解物でもよい。ケイ素化合物前駆体としては、例えば、加水分解によりケイ素化合物を生成できるものであればよく、具体例としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2020064093
前記式(2)中、Xは、例えば2、3または4であり、
およびRは、それぞれ独立して、直鎖もしくは分枝アルキル基であり、
およびRは、同一でも異なっていてもよく、
は、Xが2の場合、互いに同一でも異なっていてもよく、
は、互いに同一でも異なっていてもよい。
XおよびRは、例えば、式(1)におけるXおよびRと同じである。Rは、例えば、式(1)におけるRの例示が援用できる。
式(2)で表されるケイ素化合物前駆体の具体例としては、例えば、Xが3である下記式(2’)に示す化合物が挙げられる。下記式(2’)において、RおよびRは、それぞれ、式(2)の場合と同様である。RおよびRがメチル基の場合、ケイ素化合物前駆体は、トリメトキシ(メチル)シラン(以下、「MTMS」ともいう)である。
Figure 2020064093
モノマーのケイ素化合物は、例えば低屈折率性に優れる点から、3官能シランが好ましい。また、モノマーのケイ素化合物は、例えば強度(例えば、耐擦傷性)に優れる点から、4官能シランが好ましい。モノマーのケイ素化合物は、一種類のみを使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。例えば、モノマーのケイ素化合物として、3官能シランのみを含んでもよいし、4官能シランのみを含んでもよいし、3官能シランと4官能シランの両方を含んでもよいし、その他のケイ素化合物をさらに含んでもよい。モノマーのケイ素化合物として二種類以上のケイ素化合物を使用する場合、その比率は特に制限されず、適宜設定できる。
以下、このような低屈折率層の形成方法の一例について説明する。
当該方法は、代表的には、樹脂フィルム上に低屈折率層(空隙層)の前駆体である空隙構造を形成する前駆体形成工程、および、前駆体形成工程後に当該前駆体内部で架橋反応を起こさせる架橋反応工程、を含む。当該方法は、微細孔粒子を含む含有液(以下、「微細孔粒子含有液」または単に「含有液」という場合がある。)を作製する含有液作製工程、および、当該含有液を乾燥させる乾燥工程をさらに含み、前駆体形成工程において、乾燥体中の微細孔粒子どうしを化学的に結合させて前駆体を形成する。含有液は、特に限定されず、例えば、微細孔粒子を含む懸濁液である。なお、以下においては、主として、微細孔粒子がゲル状化合物の粉砕物であり、空隙層がゲル状化合物の粉砕物を含む多孔体(好ましくはシリコーン多孔体)である場合について説明する。ただし、低屈折率層は、微細孔粒子がゲル状化合物の粉砕物以外である場合も、同様に形成することができる。
上記の方法によれば、例えば、非常に低い屈折率を有する低屈折率層(空隙層)が形成される。その理由は、例えば以下のように推測される。ただし、当該推測は、低屈折率層の形成方法を限定するものではない。
上記粉砕物は、ゲル状ケイ素化合物を粉砕したものであるため、粉砕前のゲル状ケイ素化合物の三次元構造が、三次元基本構造に分散された状態となっている。さらに、上記方法では、ゲル状ケイ素化合物の破砕物を樹脂フィルム上に塗工することで、三次元基本構造に基づく多孔性構造の前駆体が形成される。つまり、上記の方法によれば、ゲル状ケイ素化合物の三次元構造とは異なる、粉砕物の塗工による新たな多孔構造(三次元基本構造)が形成される。このため、最終的に得られる空隙層においては、例えば空気層と同程度に機能する低屈折率を実現することができる。さらに、上記の方法においては、砕物同士を化学的に結合させるため、三次元基本構造が固定化される。このため、最終的に得られる空隙層は、空隙を有する構造であるにもかかわらず、十分な強度と可撓性とを維持することができる。
さらに、上記の方法は、上記前駆体形成工程と上記架橋反応工程とを別工程として行う。加えて、架橋反応工程を好ましくは多段階で行う。架橋反応工程を多段階で行うことにより、例えば、架橋反応工程を1段階で行うよりも前駆体の強度をさらに向上させ、高空隙率と強度が両立した低屈折率層を得ることができる。このメカニズムは不明であるが、例えば、以下のように推測される。すなわち、上記のとおり、空隙層の形成と同時に触媒等により膜強度を向上させると、触媒反応の進行により、膜強度は向上するが空隙率が低下する問題がある。これは、例えば、触媒による微細孔粒子どうしの架橋反応の進行により、微細孔粒子どうしの架橋(化学的な結合)の数が増加することにより、結合は強固になるが空隙層全体が凝縮し空隙率が低下するためと考えられる。これに対し、前駆体形成工程と架橋反応工程とを別工程として行い、かつ、架橋反応工程を多段階で行うことにより、例えば、前駆体全体の形態をあまり変化させずに(例えば、全体の凝縮をあまり起こさずに)架橋(化学的な結合)の数を増加させることができると考えられる。ただし、これらは、推測可能なメカニズムの一例であり、低屈折率層の形成方法を限定するものではない。
前駆体形成工程においては、例えば、一定の形状を有する粒子を積層させ、空隙層の前駆体を形成する。この時点での前駆体の強度は非常に弱い。その後、例えば、光もしくは熱活性触媒反応により、微細孔粒子どうしを化学的に結合させ得る生成物(例えば、光塩基発生剤から発生した強塩基触媒等)を発生させる(架橋反応工程の1段階目)。効率よく短時間で反応を進めるためにさらに加熱エージング(架橋反応工程の2段階目)を行なうことにより、微細孔粒子どうしの化学的な結合(架橋反応)がさらに進み強度が向上すると考えられる。例えば、微細孔粒子がケイ素化合物の微細孔粒子(例えばゲル状シリカ化合物の粉砕体)であって、前駆体中に残留シラノール基(Si−OH基)が存在する場合、残留シラノール基どうしが架橋反応により化学的に結合すると考えられる。ただし、この説明も例示であり、低屈折率層の形成方法を限定するものではない。
上記の方法は、微細孔粒子を含む含有液を作製する含有液作製工程を有する。微細孔粒子がゲル状化合物の粉砕物である場合は、粉砕物は、例えばゲル状化合物を粉砕して得られる。ゲル状化合物の粉砕によって、上記のように、ゲル状化合物の三次元構造が破壊され三次元基本構造に分散される。粉砕物の調製の一例は以下のとおりである。
モノマー化合物のゲル化は、例えば、モノマー化合物を、互いに水素結合させることまたは分子間力結合させることで行うことができる。モノマー化合物としては、例えば、上記式(1)で表されるケイ素化合物が挙げられる。式(1)のケイ素化合物は、水酸基を有するため、式(1)のモノマー間は、例えば、それぞれの水酸基を介して水素結合または分子間力結合が可能である。
あるいは、ケイ素化合物は、上記ケイ素化合物前駆体の加水分解物でもよく、例えば、上記式(2)で表されるケイ素化合物前駆体を加水分解して生成してもよい。
モノマー化合物前駆体の加水分解の方法は、特に制限されず、例えば、触媒存在下での化学反応により行うことができる。触媒としては、例えば、シュウ酸、酢酸等の酸等が挙げられる。加水分解反応は、例えば、シュウ酸の水溶液を、ケイ素化合物とジメチルスルホキシドとの混合液(例えば懸濁液)に、室温環境下でゆっくり滴下混合させた後に、そのまま30分程度撹拌することで行うことができる。ケイ素化合物前駆体を加水分解する際は、例えば、ケイ素化合物前駆体のアルコキシ基を完全に加水分解することで、その後のゲル化・熟成・空隙構造形成後の加熱・固定化を、さらに効率良く行うことができる。
モノマー化合物のゲル化は、例えば、モノマー間の脱水縮合反応により行うことができる。脱水縮合反応は、例えば、触媒存在下で行うことが好ましく、触媒としては、例えば、塩酸、シュウ酸、硫酸等の酸触媒、およびアンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒等の、脱水縮合触媒が挙げられる。脱水縮合触媒としては、塩基触媒が好ましい。脱水縮合反応において、モノマー化合物に対する触媒の添加量は、特に制限されない。触媒は、例えば、モノマー化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル〜10モル、より好ましくは0.05モル〜7モル、さらに好ましくは0.1モル〜5モル添加され得る。
モノマー化合物のゲル化は、例えば、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒に対するモノマー化合物の割合は、特に制限されない。溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、γ−ブチルラクトン(GBL)、アセトニトリル(MeCN)、エチレングリコールエチルエーテル(EGEE)等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。ゲル化に使用する溶媒を、以下、「ゲル化用溶媒」ともいう。
ゲル化の条件は、特に制限されない。モノマー化合物を含む溶媒に対する処理温度は、例えば20℃〜30℃であり、好ましくは22℃〜28℃であり、より好ましくは24℃〜26℃である。処理時間は、例えば1分〜60分であり、好ましくは5分〜40分であり、より好ましくは10分〜30分である。脱水縮合反応を行う場合、その処理条件は、特に制限されず、これらの例示を援用できる。ゲル化を行うことで、例えば、シロキサン結合が成長し、シリカ一次粒子が形成され、さらに反応が進行することで、一次粒子同士が、数珠状に連なり三次元構造のゲルが生成される。
ゲル化により得られるゲル状化合物は、ゲル化反応の後、熟成処理を施すことが好ましい。熟成処理により、例えば、ゲル化で得られた三次元構造を有するゲルの一次粒子をさらに成長させ、粒子自体のサイズを大きくすることが可能であり、結果的には、粒子同士が接触しているネック部分の接触状態を、点接触から面接触にする(接触面積を増やす)ことができる。熟成処理を行ったゲルは、例えば、ゲル自体の強度が増加し、結果的には、粉砕を行った後の三次元基本構造の強度を向上できる。これにより、例えば、粉砕物を塗工した後の乾燥工程において、三次元基本構造が堆積した空隙構造の細孔サイズが、乾燥過程の溶媒揮発に伴って収縮することを抑制できる。
熟成処理は、例えば、所定の温度で所定の時間、ゲル状化合物をインキュベートすることにより行うことができる。熟成温度は、例えば30℃以上であり、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。一方、熟成温度は、例えば80℃以下であり、好ましくは75℃以下であり、より好ましくは70℃以下である。熟成温度の範囲は、例えば30℃〜80℃であり、好ましくは35℃〜75℃であり、より好ましくは40℃〜70℃である。熟成時間は、例えば5時間以上であり、好ましくは10時間以上であり、より好ましくは15時間以上である。一方、熟成時間は、例えば50時間以下であり、好ましくは40時間以下であり、より好ましくは30時間以下である。熟成時間の範囲は、例えば5時間〜50時間であり、好ましくは10時間〜40時間であり、より好ましくは15時間〜30時間である。なお、熟成条件については、例えば、シリカ一次粒子サイズの増大、およびネック部分の接触面積の増大が得られるよう最適化され得る。さらには、使用している溶媒の沸点を考慮することが好ましく、例えば、熟成温度が高すぎると、溶媒が過剰に揮発してしまい、塗工液(ゲル液)濃度の濃縮により三次元空隙構造の細孔が閉口する等の不具合が生じる可能性がある。一方で、例えば、熟成温度が低すぎる場合は、熟成による効果が十分に得られないばかりでなく、量産プロセスの経時での温度バラツキが増大することとなり、特性に劣る低屈折率層ができる可能性がある。
熟成処理は、例えばゲル化処理と同じ溶媒を使用できる。具体的には、ゲル処理後の反応物(つまり、ゲル状化合物を含む溶媒)に対して、そのまま熟成処理を施すことが好ましい。ゲル化後の熟成処理を終えたゲル(ゲル状化合物、例えば、ゲル状ケイ素化合物)に含まれる残留シラノール基のモル数は、例えば50%以下であり、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下である。一方、残留シラノール基のモル数は、例えば1%以上であり、好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上である。残留シラノール基のモル数の範囲は、例えば1%〜50%であり、好ましくは3%〜40%であり、より好ましくは5%〜30%である。ゲルの硬度を上げる目的では、例えば、残留シラノール基のモル数が低いほど好ましい。シラノール基のモル数が高すぎると、例えば、シリコーン多孔体の前駆体が架橋されるまでに、空隙構造を保持できなくなる可能性がある。一方で、シラノール基のモル数が低すぎると、例えば、微細孔粒子含有液(例えば懸濁液)を作製する工程及び/又はその後の工程において、ゲル状化合物の粉砕物を架橋できなくなり、十分な膜強度を付与できなくなる可能性がある。なお、残留シラノール基のモル数は、例えば、原材料(例えば、モノマー化合物前駆体)のアルコキシ基のモル数を100とした場合の残留シラノール基の割合である。なお、上記はシラノール基の例であるが、例えば、モノマーのケイ素化合物を各種反応性官能基で修飾した場合は、各々の官能基に対しても同様の事項および条件等が適用され得る。
モノマー化合物をゲル化用溶媒中でゲル化した後、得られたゲル状化合物を粉砕する。粉砕は、例えば、ゲル化用溶媒中のゲル状化合物に対して、そのまま粉砕処理を施してもよいし、ゲル化用溶媒を他の溶媒に置換してから、当該他の溶媒中のゲル状化合物に対して、粉砕処理を施してもよい。また例えば、ゲル化反応に用いた触媒および用いた溶媒が、熟成工程後も残存することで、液の経時ゲル化(ポットライフ)、乾燥工程時の乾燥効率低下を発生させる場合は、他の溶媒に置換することが好ましい。上記他の溶媒を、以下、「粉砕用溶媒」ともいう。
粉砕用溶媒は、特に制限されず、例えば有機溶媒が使用できる。有機溶媒としては、沸点が例えば130℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは85℃以下の溶媒が挙げられる。具体例としては、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、メタノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルセロソルブ、アセトン、ジメチルホムアミド(DMF)、イソブチルアルコール等が挙げられる。粉砕用溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゲル化用溶媒と粉砕用溶媒との組合せは、特に制限されず、例えば、DMSOとIPA、DMSOとエタノール、DMSOとメタノール、DMSOとブタノール、DMSOとイソブチルアルコールの組合せ等が挙げられる。このように、ゲル化用溶媒を破砕用溶媒に置換することで、例えば、後述する塗膜形成において、より均一な塗工膜を形成することができる。
ゲル状化合物の粉砕方法は、特に制限されず、例えば、超音波ホモジナイザー、高速回転ホモジナイザー、その他のキャビテーション現象を用いる粉砕装置により行うことができる。ボールミル等のメディア粉砕を行う装置は、例えば、粉砕時にゲルの空隙構造を物理的に破壊するのに対し、ホモジナイザー等のキャビテーション方式粉砕装置は、例えば、メディアレス方式のため、ゲル三次元構造にすでに内包されている比較的弱い結合のシリカ粒子接合面を、高速のせん断力で剥離する。これにより、得られるゲル三次元構造は、例えば、一定範囲の粒度分布をもつ空隙構造を保持することができ、塗工・乾燥時の堆積による空隙構造を再形成できる。粉砕の条件は、特に制限されず、例えば、瞬間的に高速の流れを与えることで、溶媒を揮発させることなくゲルを粉砕することができることが好ましい。例えば、上記のような粒度バラツキ(例えば、体積平均粒子径または粒度分布)の粉砕物となるように粉砕することが好ましい。仮に粉砕時間・強度等の仕事量が不足した場合は、例えば、粗粒が残ることとなり緻密な細孔を形成できないばかりか外観欠点も増加し高い品質を得ることができない可能性がある。一方で、仕事量が過多な場合は、例えば、所望の粒度分布よりも微細な粒子となり、塗工・乾燥後に堆積した空隙サイズが微細となり、所望の空隙率が得られない可能性がある。
以上のようにして、微細孔粒子(ゲル状化合物の粉砕物)を含む液(例えば懸濁液)を作製することができる。さらに、微細孔粒子を含む液を作製した後に、または作製工程中に、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒を加えることにより、微細孔粒子および触媒を含む含有液を作製することができる。触媒は、例えば、微細孔粒子同士の架橋結合を促進する触媒であってもよい。微細孔粒子どうしを化学的に結合させる化学反応としては、シリカゾル分子に含まれる残留シラノール基の脱水縮合反応を利用することが好ましい。シラノール基の水酸基同士の反応を触媒で促進することで、短時間で空隙構造を硬化させる連続成膜が可能である。触媒としては、例えば、光活性触媒および熱活性触媒が挙げられる。光活性触媒によれば、例えば、前駆体形成工程において、加熱によらずに微細孔粒子どうしを化学的に結合(例えば架橋結合)させることができる。これによれば、例えば、前駆体形成工程において、前駆体全体の収縮が起こりにくいため、より高い空隙率を維持できる。また、触媒に加え、またはこれに代えて、触媒を発生する物質(触媒発生剤)を用いてもよい。例えば、光活性触媒に加え、またはこれに代えて、光により触媒を発生する物質(光触媒発生剤)を用いてもよいし、熱活性触媒に加え、またはこれに代えて、熱により触媒を発生する物質(熱触媒発生剤)を用いてもよい。光触媒発生剤としては、例えば、光塩基発生剤(光照射により塩基性触媒を発生する物質)、光酸発生剤(光照射により酸性触媒を発生する物質)等が挙げられ、光塩基発生剤が好ましい。光塩基発生剤としては、例えば、9−アントリルメチル N,N−ジエチルカルバメート(9-anthrylmethyl N,N-diethylcarbamate、商品名WPBG−018)、(E)−1−[3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]ピペリジン((E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine、商品名WPBG−027)、1−(アントラキノン−2−イル)エチル イミダゾールカルボキシレート(1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate、商品名WPBG−140)、2−ニトロフェニルメチル 4−メタクリロイルオキシピペリジン−1−カルボキシラート(商品名WPBG−165)、1,2−ジイソプロピル−3−〔ビス(ジメチルアミノ)メチレン〕グアニジウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオナート(商品名WPBG−266)、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウム n−ブチルトリフェニルボラート(商品名WPBG−300)、および2−(9−オキソキサンテン−2−イル)プロピオン酸1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(東京化成工業株式会社)、4−ピペリジンメタノールを含む化合物(商品名HDPD−PB100:ヘレウス社製)等が挙げられる。なお、上記「WPBG」を含む商品名は、いずれも和光純薬工業株式会社の商品名である。光酸発生剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩(商品名SP−170:ADEKA社)、トリアリールスルホニウム塩(商品名CPI101A:サンアプロ社)、芳香族ヨードニウム塩(商品名Irgacure250:チバ・ジャパン社)等が挙げられる。また、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒は、光活性触媒および光触媒発生剤に限定されず、例えば、熱活性触媒または尿素のような熱触媒発生剤でもよい。微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒、塩酸、酢酸、シュウ酸等の酸触媒等が挙げられる。これらの中で、塩基触媒が好ましい。微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒もしくは触媒発生剤は、例えば、粉砕物(微細孔粒子)を含むゾル粒子液(例えば懸濁液)に、塗工直前に添加して使用する、または触媒もしくは触媒発生剤を溶媒に混合した混合液として使用することができる。混合液は、例えば、ゾル粒子液に直接添加して溶解した塗工液、触媒もしくは触媒発生剤を溶媒に溶解した溶液、または、触媒もしくは触媒発生剤を溶媒に分散した分散液でもよい。溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。
次に、基材上に微細孔粒子を含む含有液(例えば懸濁液)を塗工する(塗工工程)。塗工は、例えば、後述する各種塗工方式を用いることができ、また、これらに限定されない。微細孔粒子(例えばゲル状シリカ化合物の粉砕物)を含む含有液を、基材上に直接塗工することにより、微細孔粒子および触媒を含む塗工膜を形成することができる。塗工膜は、例えば、塗工層ということもできる。塗工膜を形成することにより、例えば、三次元構造が破壊された粉砕物が沈降・堆積することによって、新たな三次元構造が構築される。なお、例えば、微細孔粒子を含む含有液が、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒を含まなくてもよい。例えば、後述するように、塗工膜に、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒を吹き付けてから、または吹き付けながら前駆体形成工程を行っても良い。しかし、微細孔粒子を含む含有液が、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒を含み、塗工膜中に含まれる触媒の作用により、微細孔粒子どうしを化学的に結合させて多孔体の前駆体を形成してもよい。
上記溶媒(以下、「塗工用溶媒」ともいう)は、特に制限されず、例えば、有機溶媒が使用できる。有機溶媒としては、例えば、沸点150℃以下の溶媒が挙げられる。具体例としては、例えば、IPA、エタノール、メタノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノール等が挙げられ、また、粉砕用溶媒と同様のものが使用できる。低屈折率層の形成方法が、ゲル状化合物を粉砕する工程を含む場合、塗工膜の形成工程においては、例えば、ゲル状化合物の粉砕物を含む粉砕用溶媒を、そのまま使用してもよい。
塗工工程においては、例えば、溶媒に分散させたゾル状の粉砕物(以下、「ゾル粒子液」ともいう)を、基材上に塗工することが好ましい。ゾル粒子液は、例えば、基材上に塗工・乾燥した後に、前記化学架橋を行うことで、一定レベル以上の膜強度を有する空隙層を、連続成膜することが可能である。なお、本発明の実施形態における「ゾル」とは、ゲルの三次元構造を粉砕することで、空隙構造の一部を保持したナノ三次元構造のシリカゾル粒子が溶媒中に分散して流動性を示す状態をいう。
塗工用溶媒における粉砕物の濃度は、特に制限されず、例えば0.3%(v/v)〜50%(v/v)であり、好ましくは0.5%(v/v)〜30%(v/v)であり、より好ましくは1.0%(v/v)〜10%(v/v)である。粉砕物の濃度が高すぎると、例えば、ゾル粒子液の流動性が著しく低下し、塗工時の凝集物・塗工スジを発生させる可能性がある。粉砕物の濃度が低すぎると、例えば、ゾル粒子液の溶媒の乾燥に相当の時間がかかるだけでなく、乾燥直後の残留溶媒も高くなるために、空隙率が低下してしまう可能性がある。
ゾルの物性は、特に制限されない。ゾルのせん断粘度は、10001/sのせん断速度において、例えば100cPa・s以下であり、好ましくは10cPa・s以下であり、より好ましくは1cPa・s以下である。せん断粘度が高すぎると、例えば、塗工スジが発生し、グラビア塗工の転写率の低下等の不具合が見られる可能性がある。逆に、せん断粘度が低すぎる場合は、例えば、塗工時のウェット塗工厚みを厚くすることができず、乾燥後に所望の厚みが得られない可能性がある。
基材に対する粉砕物の塗工量は、特に制限されず、例えば、所望のシリコーン多孔体(結果として、低屈折率層)の厚み等に応じて適宜設定できる。具体例として、厚み0.1μm〜1000μmのシリコーン多孔体を形成する場合、基材に対する粉砕物の塗工量は、基材の面積1mあたり、例えば0.01μg〜60000μgであり、好ましくは0.1μg〜5000μgであり、より好ましくは1μg〜50μgである。ゾル粒子液の好ましい塗工量は、例えば、液の濃度や塗工方式等と関係するため、一義的に定義することは難しいが、生産性を考慮すると、できるだけ薄層で塗工することが好ましい。塗工量が多すぎると、例えば、溶媒が揮発する前に乾燥炉で乾燥される可能性が高くなる。これにより、溶媒中でナノ粉砕ゾル粒子が沈降・堆積し、空隙構造を形成する前に、溶媒が乾燥することで、空隙の形成が阻害されて空隙率が大きく低下する可能性がある。一方で、塗工量が薄過ぎると、基材の凹凸・親疎水性のバラツキ等により塗工ハジキが発生するリスクが高くなる可能性がある。
さらに、低屈折率層の形成方法は、例えば上記のように、基材上に、空隙層(低屈折率層)の前駆体である空隙構造を形成する前駆体形成工程を有する。前駆体形成工程は、特に限定されないが、例えば、微細孔粒子含有液を塗工して作製された塗工膜を乾燥させる乾燥工程により、前駆体(空隙構造)を形成してもよい。乾燥工程における乾燥処理によって、例えば、上記の塗工膜中の溶媒(ゾル粒子液に含まれる溶媒)を除去するだけでなく、乾燥処理中に、ゾル粒子を沈降・堆積させ、空隙構造を形成することができる。乾燥処理の温度は、例えば50℃〜250℃であり、好ましくは60℃〜150℃であり、より好ましくは70℃〜130℃である。乾燥処理の時間は、例えば0.1分〜30分であり、好ましくは0.2分〜10分であり、より好ましくは0.3分〜3分である。乾燥処理温度および時間については、例えば、連続生産性や高い空隙率の発現の関連では、より低く短いほうが好ましい。条件が厳しすぎると、例えば、樹脂フィルムに塗工する場合、樹脂フィルムのガラス転移温度に近づくことで、樹脂フィルムが乾燥炉の中で伸展してしまい、塗工直後に、形成された空隙構造にクラック等の欠点が発生する可能性がある。一方で、条件が緩すぎる場合、例えば、乾燥炉を出たタイミングで残留溶媒を含むため、次工程でロールと擦れた際に、スクラッチ傷が入る等の外観上の不具合が発生する可能性がある。
乾燥処理は、例えば、自然乾燥でもよいし、加熱乾燥でもよいし、減圧乾燥でもよい。中でも、工業的に連続生産することを前提とした場合は、加熱乾燥を用いることが好ましい。加熱乾燥の方法は、特に制限されず、例えば、一般的な加熱手段が使用できる。加熱手段としては、例えば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等が挙げられる。また、使用される溶媒については、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層(シリコーン多孔体)のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられる。また、上記IPA等にペルフルオロ系界面活性剤もしくはシリコーン系界面活性剤を少量添加し表面張力を低下させてもよい。
さらに、低屈折率層の形成方法は、上記のとおり、前駆体形成工程後に、前駆体内部で架橋反応を起こさせる架橋反応工程を含み、当該架橋反応工程において、光照射または加熱により塩基性物質を発生させ、かつ、架橋反応工程が多段階である。架橋反応工程の1段階目では、例えば、微細孔粒子どうしを触媒(塩基性物質)の作用により化学的に結合させる。これにより、例えば、塗工膜(前駆体)における粉砕物の三次元構造が、固定化される。従来の焼結による固定化を行う場合は、例えば、200℃以上の高温処理を行うことで、シラノール基の脱水縮合、シロキサン結合の形成を誘発する。本形成方法においては、上記の脱水縮合反応を触媒する各種添加剤を反応させることで、例えば、基材(樹脂フィルム)にダメージを起こすことなく、100℃前後の比較的低い乾燥温度、および数分未満の短い処理時間で、連続的に空隙構造を形成、固定化することができる。
化学的に結合させる方法は、特に制限されず、例えば、ゲル状ケイ素化合物の種類に応じて、適宜決定できる。具体例として、化学的な結合は、例えば、粉砕物同士の化学的な架橋結合により行うことができ、その他にも、例えば、酸化チタン等の無機粒子等を粉砕物に添加した場合、無機粒子と粉砕物とを化学的に架橋結合させることも考えられる。また、酵素等の生体触媒を担持させる場合も、触媒活性点とは別の部位と粉砕物とを化学架橋結合させる場合もある。したがって、低屈折率層の形成方法は、例えば、ゾル粒子同士で形成する空隙層(シリコーン多孔体)だけでなく、有機無機ハイブリッド空隙層、ホストゲスト空隙層等の応用展開が考えられる。
上記触媒存在下での化学反応は、低屈折率層の形成方法におけるどの段階で行う(起こる)かは、特に限定されず、例えば、上記多段階の架橋反応工程における少なくとも一つの段階で行う。例えば、低屈折率層の形成方法では、上記のとおり、乾燥工程が前駆体形成工程を兼ねていてもよい。また例えば、乾燥工程後に、多段階の架橋反応工程を行い、その少なくとも一つの段階で、微細孔粒子どうしを触媒の作用により化学的に結合させてもよい。例えば、上記のとおり触媒が光活性触媒である場合には、架橋反応工程において、光照射により、微細孔粒子どうしを化学的に結合させて多孔体の前駆体を形成してもよい。また、触媒が熱活性触媒である場合には、架橋反応工程において、加熱により微細孔粒子どうしを化学的に結合させて多孔体の前駆体を形成してもよい。
上記化学反応は、例えば、事前にゾル粒子液(例えば懸濁液)に添加された触媒を含む塗工膜に対し光照射もしくは加熱、または、塗工膜に触媒を吹き付けてから光照射もしくは加熱、または、触媒を吹き付けながら光照射もしくは加熱することによって、行うことができる。光照射における積算光量は、特に限定されず、波長360nm換算で、例えば200mJ/cm〜800mJ/cmであり、好ましくは250mJ/cm〜600mJ/cmであり、より好ましくは300mJ/cm〜400mJ/cmである。照射量が十分でなく触媒の光吸収による分解が進まず効果が不十分となることを防止する観点からは、200mJ/cm以上の積算光量が好ましい。また、空隙層下の基材にダメージがかかることによる熱ジワが発生することを防止する観点からは、800mJ/cm以下の積算光量が好ましい。加熱処理の条件は、特に制限されない。加熱温度は、例えば50℃〜250℃であり、好ましくは60℃〜150℃であり、より好ましくは70℃〜130℃である。加熱時間は、例えば0.1分〜30分であり、好ましくは0.2分〜10分であり、より好ましくは0.3分〜3分である。あるいは、上記のとおり塗工されたゾル粒子液(例えば懸濁液)を乾燥する工程が、触媒存在下での化学反応を行う工程を兼ねていてもよい。すなわち、塗工されたゾル粒子液(例えば懸濁液)を乾燥する工程において、触媒存在下での化学反応により、粉砕物(微細孔粒子)同士を化学的に結合させてもよい。この場合、乾燥工程後に塗工膜をさらに加熱することにより、粉砕物(微細孔粒子)同士をさらに強固に結合させてもよい。さらに、触媒存在下での化学反応は、微細孔粒子含有液(例えば懸濁液)を作製する工程、および、微細孔粒子含有液を塗工する工程においても起こる場合があると推測される。しかしながら、この推測は、低屈折率層の形成方法を限定するものではない。また、使用される溶媒については、例えば、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられる。
低屈折率層の形成方法においては、架橋反応工程が多段階であることにより、例えば、架橋反応工程が1段階の場合よりも、空隙層(低屈折率層)の強度をさらに向上させることができる。以下、架橋反応工程の2段階目以降の工程を「エージング工程」という場合がある。エージング工程においては、例えば、前駆体を加熱することにより、前駆体内部で架橋反応をさらに促進させてもよい。架橋反応工程において起こる現象およびメカニズムは不明であるが、例えば、上記のとおりである。例えば、エージング工程においては、加熱温度を低温にして、前駆体の収縮を抑制しながら架橋反応を起こさせることで強度を向上させ、高空隙率と強度の両立を達成できる。エージング工程における温度は、例えば40℃〜70℃であり、好ましくは45℃〜65℃であり、より好ましくは50℃〜60℃である。エージング工程を行う時間は、例えば10hr〜30hrであり、好ましくは13hr〜25hrであり、より好ましくは15hr〜20hrである。
以上のようにして形成される低屈折率層は、強度に優れるため、例えば、ロール状の多孔体とすることができ、製造効率が良い、取り扱いやすい等の利点がある。
このようにして形成される低屈折率層(空隙層)は、例えば、さらに他のフィルム(層)と積層して、多孔質構造を含む積層構造体としてもよい。この場合、積層構造体における各構成要素は、例えば、粘着剤または接着剤を介して積層させてもよい。各構成要素の積層は、例えば、効率的であることから、長尺フィルムを用いた連続処理(いわゆるRoll to Roll等)により積層を行ってもよく、基材が成形物・素子等の場合はバッチ処理を行ったものを積層してもよい。
E.粘着剤層
粘着剤層を構成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。粘着剤としては、代表的には、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が挙げられる。アクリル系粘着剤組成物は業界で周知であるので、詳細な説明は省略する。粘着剤層の厚みは、例えば3μm〜200μmである。なお、低屈折率層に隣接して粘着剤層が配置される場合には、当該粘着剤層は、代表的には、粘着剤層を構成する粘着剤が通常の状態では低屈折率層の空隙に浸透しない程度の硬さを有する。このような粘着剤層の貯蔵弾性率は、例えば1.3×10(Pa)〜1.0×10(Pa)であり得る。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
(I)低屈折率層の屈折率
アクリルフィルムに低屈折率層を形成した後に、50mm×50mmのサイズにカットし、これを粘着層を介してガラス板(厚み:3mm)の表面に貼合した。上記ガラス板の裏面中央部(直径20mm程度)を黒マジックで塗りつぶして、該ガラス板の裏面で反射しないサンプルとした。エリプソメーター(J.A.Woollam Japan社製:VASE)に上記サンプルをセットし、500nmの波長、入射角50〜80度の条件で、屈折率を測定した。
(II)輝度
実施例および比較例で得られた光学積層体について、光学積層体の導光板端部からLEDの光を入射し、中央部分の輝度を測定した。当該輝度を、導光板と低屈折率層との間を空気層とした場合の輝度を100%としたときの割合(%)として評価した。
(III)輝度ムラ
実施例および比較例で得られた光学積層体について、光学積層体の導光板端部からLEDの光を入射し、輝度ムラを目視により観察した。以下の基準で評価した。
○:積層体全面について輝度(明るさ)が均一である
×:積層体のLEDに近い部分と遠い部分とで輝度(明るさ)に違いが認められる
(IV)強度
実施例および比較例で得られた光学積層体を取り扱う際の低屈折率層の剥離の有無を調べた。以下の基準で評価した。
○:低屈折率層は剥離せず、一体物として問題なく取り扱うことができた
×:低屈折率層が剥離した
[製造例1]低屈折率層形成用塗工液の調製
(1)ケイ素化合物のゲル化
2.2gのジメチルスルホキシド(DMSO)に、ケイ素化合物の前駆体であるメチルトリメトキシシラン(MTMS)を0.95g溶解させて混合液Aを調製した。この混合液Aに、0.01mol/Lのシュウ酸水溶液を0.5g添加し、室温で30分撹拌を行うことでMTMSを加水分解して、トリス(ヒドロキシ)メチルシランを含む混合液Bを生成した。
5.5gのDMSOに、28重量%のアンモニア水0.38g、および純水0.2gを添加した後、さらに、上記混合液Bを追添し、室温で15分撹拌することで、トリス(ヒドロキシ)メチルシランのゲル化を行い、ゲル状ケイ素化合物を含む混合液Cを得た。
(2)熟成処理
上記のように調製したゲル状ケイ素化合物を含む混合液Cを、そのまま、40℃で20時間インキュベートして、熟成処理を行った。
(3)粉砕処理
つぎに、上記のように熟成処理したゲル状ケイ素化合物を、スパチュラを用いて数mm〜数cmサイズの顆粒状に砕いた。次いで、混合液Cにイソプロピルアルコール(IPA)を40g添加し、軽く撹拌した後、室温で6時間静置して、ゲル中の溶媒および触媒をデカンテーションした。同様のデカンテーション処理を3回行うことにより、溶媒置換し、混合液Dを得た。次いで、混合液D中のゲル状ケイ素化合物を粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)した。粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)は、ホモジナイザー(エスエムテー社製、商品名「UH−50」)を使用し、5ccのスクリュー瓶に、混合液D中のゲル状化合物1.85gおよびIPAを1.15g秤量した後、50W、20kHzの条件で2分間の粉砕で行った。
この粉砕処理によって、上記混合液D中のゲル状ケイ素化合物が粉砕されたことにより、該混合液D’は、粉砕物のゾル液となった。混合液D’に含まれる粉砕物の粒度バラツキを示す体積平均粒子径を、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(日機装社製、UPA−EX150型)にて確認したところ、0.50〜0.70であった。さらに、このゾル液(混合液C’)0.75gに対し、光塩基発生剤(和光純薬工業株式会社:商品名WPBG266)の1.5重量%濃度MEK(メチルエチルケトン)溶液を0.062g、ビス(トリメトキシシリル)エタンの5%濃度MEK溶液を0.036gの比率で添加し、低屈折率層形成用塗工液を得た。
[製造例2]粘着剤の調製
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90.7部、N−アクリロイルモルホリン6部、アクリル酸3部、2−ヒドロキシブチルアクリレート0.3部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル100gと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業社製のコロネートL,トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体)0.2部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.3部、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−403)0.2部を配合したアクリル系粘着剤溶液を調製した。次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが10μmになるように塗布し、150℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成した。
[実施例1]
製造例1で調製した低屈折率層形成用塗工液を厚さ20μmの基材(アクリルフィルム)に塗工した。塗工層のウェット厚み(乾燥させる前の厚み)は約27μmであった。該塗工層を、温度100℃で1分処理して乾燥し、基材上に低屈折率層(厚み0.9μm)を形成した。得られた低屈折率層の屈折率は1.18であった。次に、基材/粘着剤層の積層体の両面に製造例2で形成した粘着剤層(厚み10μm)を配置し、両面粘着剤層付積層体を作製した。得られた両面粘着剤層付積層体を導光板(厚み400μm、導光方向の全長L:85mm)に貼り合わせた。このとき、両面粘着剤層付積層体を導光板の光源側端面から17mm(Lの20%)離間するようにして貼り合わせた。言い換えれば、導光板の延出部の長さLが17mm(Lの20%)となるようにして貼り合わせた。さらに、両面粘着剤層付積層体の導光板と反対側に光拡散フィルムを貼り合わせた。このようにして、光学積層体を作製した。得られた光学積層体を上記(II)〜(IV)の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例2]
低屈折率層の屈折率を1.15としたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例3]
導光板の延出部の長さLを8.5mm(Lの10%)としたこと以外は実施例2と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例1]
光源側端面を揃えて両面粘着剤層付積層体と導光板とを貼り合わせたこと(すなわち、導光板に延出部を設けなかったこと)以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例2]
導光板の延出部の長さLを42.5mm(Lの50%)としたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
Figure 2020064093
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、導光板に基材および低屈折率層の光源側の端面より光源側に延出した延出部を設け、当該延出部の長さを導光板の導光方向の全長に対して所定の割合とすることにより、輝度が高く、輝度ムラが抑制され、かつ、一体物としての強度に優れた光学積層体を得ることができる。延出部を設けない比較例1では、輝度ムラが顕著となり、輝度も相対的に低い。延出部の長さが所定の割合を超える比較例2では、一体物としての強度が不十分である。
本発明の光学積層体は、導光板を用いて光を取り出す光学装置(例えば、画像表示装置、照明装置)に好適に用いられ得る。
10 基材
20 低屈折率層
30 導光板
100 光学積層体
101 光学積層体

Claims (3)

  1. 導光板と基材と低屈折率層とを有し、
    該導光板が、該基材および該低屈折率層の光源側の端面より光源側に延出した延出部を有し、
    該延出部の長さLが、該導光板の導光方向の全長Lに対して1%〜30%である、
    光学積層体。
  2. 前記低屈折率層の屈折率が1.25以下である、請求項1に記載の光学積層体。
  3. 前記低屈折率層の空隙率が50%以上である、請求項1または2に記載の光学積層体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023189089A1 (ja) * 2022-03-31 2023-10-05 日東電工株式会社 光学積層体および光学積層体の製造方法

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