以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態による表示制御装置の機能は、図1に示す表示生成装置100によって実現されている。表示生成装置100は、車両Aに搭載された複数の電子制御ユニットのうちの一つである。表示生成装置100は、表示管理装置40及びHUD(Head-Up Display)装置50等と共に、車両Aにおいて用いられる情報提示システムを構成している。
表示管理装置40は、例えばHCU(HMI(Human Machine Interface)Control Unit)であって、表示及び音声等による運転者への情報提示を統合的に制御する。表示管理装置40は、周辺監視装置10、ナビゲーション装置17、ドライバ監視装置20及び車両制御装置30等と直接的又は間接的に電気接続されている。
周辺監視装置10は、車両Aの周辺の状態を監視する電子制御ユニットである。周辺監視装置10は、自律センサ11、ロケータ12及び車外通信器13等と電気的に接続されている。自律センサ11は、フロントカメラ、ミリ波及び準ミリ波レーダ、ライダ並びにソナー等を含む構成である。自律センサ11は、車両Aの周囲、特に車両Aの前方の範囲から、物体を検出する。自律センサ11は、物体の検出情報を周辺監視装置10へ向けて逐次出力する。
ロケータ12は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信器及び慣性センサ等と、高精度地図データベース12aとを含む構成である。GNSS受信器は、複数の人工衛星から送信された測位信号を受信する。高精度地図データベース12aは、大量の高精度地図データDMを格納した記憶媒体である。高精度地図データDMは、少なくとも高さ(z)方向の情報について、詳細な情報を保持した地図データである。高精度地図データDMには、道路の三次元形状情報、レーン数情報、各レーンに許容された進行方向を示す情報等、高度運転支援及び自動運転に利用可能な情報が含まれている。さらに、高精度地図データには、例えば白線等の道路標示について、両端の位置を示すノード点の情報が含まれている。ロケータ12は、GNSS受信器で受信した測位信号に基づき、車両Aの現在位置を測位する。ロケータ12は、車両Aの位置情報と、高精度地図データベース12aから読み出した車両Aの周囲及び進行方向の高精度地図データDMとを、周辺監視装置10へ向けて逐次出力する。
車外通信器13は、例えば車載されたV2X通信器である。車外通信器13は、他車両に搭載された車載通信器及び道路脇に設置された路側器との間で、無線通信によって情報を送受信する。車外通信器13は、車車間通信又は路車間通信によって、他車両の位置情報及び速度情報等を受信可能である。車外通信器13は、受信した周囲の他車両の情報を、周辺監視装置10へ向けて逐次出力する。
周辺監視装置10は、自律センサ11、ロケータ12及び車外通信器13から取得した情報を組み合わせることにより、車両Aの周囲の物体情報として、物体の大きさ及び形状、相対位置(方向及び距離)、並びに相対速度等を把握する。周辺監視装置10は、例えば歩行者、サイクリスト、オートバイ及び他車両等を少なくとも検出可能である。周辺監視装置10は、検出した周辺物体の検出情報を表示管理装置40へ向けて逐次出力する。
ナビゲーション装置17は、運転者等のユーザによって設定された目的地までの経路案内を行う車載装置である。ナビゲーション装置17は、ディスプレイの画面表示及び音声の再生等により、交差点、分岐ポイント及び合流ポイント等にて、直進、右左折及び車線変更等の誘導を行う。
ナビゲーション装置17は、ナビ地図データベース18を有している。ナビ地図データベース18は、大量のナビ地図データNMを格納した記憶媒体である。ナビ地図データには、道路についてのリンクデータ、ノードデータ、及び形状データ等の情報が含まれている。ナビゲーション装置17は、ナビ地図データベース18から読み出した車両Aの周囲及び進行方向のナビ地図データNMを、案内経路情報等と共に表示管理装置40に提供可能である。
ナビ地図データNM及び高精度地図データDMは、互いに精度の異なる地図データである。特定の範囲について、高精度地図データDMに記録された情報は、ナビ地図データNMに記録された情報よりも高精度且つ高密度である。一方で、高精度地図データDMの整備された範囲が特定種別の道路(例えば、高速道路等)等に限定されるのに対し、ナビ地図データNMは、低精度の地図データではあるものの、一般道を含む広範囲について網羅的に整備されている。
ここで、ナビゲーション装置17に替えて、スマートフォン等のユーザ端末が、表示管理装置40又は表示生成装置100等に接続されていてもよい。ユーザ端末にて実行されるアプリケーションには、運転者等のユーザ操作に基づき、目的地までの経路が設定される。ユーザ端末は、ナビゲーション装置17と同様に、ナビ地図データNMに相当する地図データを、案内経路情報と共に表示管理装置40等に提供できる。
ドライバ監視装置20は、車両Aの運転者の状態を監視する電子制御ユニットである。ドライバ監視装置20は、ドライバカメラ21等と電気的に接続されている。ドライバカメラ21は、近赤外光源及び近赤外カメラを有している。ドライバカメラ21は、近赤外線を検出する撮像素子を有しており、撮像素子の撮像面を運転席側に向けた姿勢にて、例えばインスツルメントパネルの上面等に配置されている。ドライバカメラ21は、近赤外光源によって近赤外光を照射された運転者の上半身を、撮像素子によって撮影する。ドライバカメラ21は、撮影した運転者の顔画像をドライバ監視装置20へ向けて逐次出力する。
ドライバ監視装置20は、ドライバカメラ21にて撮影された顔画像を解析し、運転者の状態を把握する。ドライバ監視装置20は、ドライバカメラ21の顔画像の解析により、目の位置(アイポイント)、目の輪郭、及び黒目の中心位置等を検出する。ドライバ監視装置20は、これらの位置関係及び状態に基づき、視線方向及び開眼度等を演算する。ドライバ監視装置20は、これらの情報を組み合わせることで、運転者の脇見状態、眠気の状態(覚醒度)、漫然状態及び運転以外のタスクをしている状態等を判別する。ドライバ監視装置20は、こうした判別結果をアイポイントの位置情報等と共に、運転者の状態情報として表示管理装置40へ向けて逐次出力する。
車両制御装置30は、車両Aの走行状態を制御する電子制御ユニットである。車両制御装置30は、車輪速センサ31等と電気的に接続されている。車輪速センサ31は、車両Aの各輪のハブ部分に設けられており、各輪の回転速度を示す車速信号を出力する。車両制御装置30は、車輪速センサ31から取得する車速信号に基づき、車両Aの走行速度を算出する。車両制御装置30は、自車状態を示す情報として、車速情報等を表示管理装置40へ向けて逐次出力する。
表示管理装置40は、周辺監視装置10から取得する周辺物体の検出情報、ドライバ監視装置20から取得する運転者の状態情報、及び車両制御装置30から取得する車速情報等を統合し、運転者への情報提示を制御する。表示管理装置40は、取得した情報に基づき、HUD装置50によって虚像表示させるべきコンテンツを決定する。表示管理装置40は、表示生成装置100へ向けて出力する表示指令により、決定したコンテンツを含む映像データPSの生成を表示生成装置100に指示する。表示管理装置40は、例えば経路案内、自動運転情報(又は運転支援制御情報)、接触注意、及び衝突前警報等のコンテンツの表示を、表示生成装置100に指示する。加えて表示管理装置40は、取得した上記の情報のうちで、映像データPSの生成に必要な描画情報を、表示生成装置100へ向けて逐次出力する。
HUD装置50は、表示生成装置100と共に虚像表示システムを構成している。HUD装置50は、車両Aの運転者の前方に虚像Viを重畳表示させる。虚像Viは、一例としてアイポイントから15m程度前方の空間中に位置する仮想の結像面ISに結像される。尚、虚像Viの結像位置は、例えば車両Aの前方10〜20m程度の範囲で適宜変更されてよい。
HUD装置50は、重畳コンテンツCTs(図5参照)及び非重畳コンテンツCTn(図6参照)を、虚像Viとして表示し、車両Aに関連する種々の情報を運転者に提示可能である。重畳コンテンツCTsは、車両前方の実景(以下、「前景」)に重畳表示され、拡張現実(以下、「Augmented Reality:AR」)表示を行うAR表示物である。重畳コンテンツCTsの表示位置は、例えば路面の特定位置、前方車両、歩行者及び道路標識等、前景に存在する特定の重畳対象に関連付けられている。重畳コンテンツCTsは、前景中にある特定の重畳対象に重畳表示され、当該重畳対象に相対固定されているように、重畳対象を追って、運転者の見た目上で移動可能である。即ち、運転者のアイポイントと、前景中の重畳対象と、重畳コンテンツCTsとの相対的な位置関係は、継続的に維持される。そのため、重畳コンテンツCTsの形状は、重畳対象の相対位置及び形状に合わせて、所定の周期で更新され続ける。重畳コンテンツCTsは、非重畳コンテンツCTnよりも水平に近い姿勢で表示され、例えば運転者から見た奥行き方向に延伸した表示形状とされる。
一例として、HUD装置50は、ターンバイターン(TbT)画像81の虚像Viを、重畳コンテンツCTsとして表示する(図2参照)。TbT画像81は、経路案内のための情報表示像80であり、運転者の見かけ上にて、予定走行経路となる自車レーン等の路面上に重畳表示される。TbT画像81は、ナビゲーション装置17より取得される経路案内情報に基づき、目的地へ向かうルートを運転者に提示する。
非重畳コンテンツCTnは、前景に重畳表示される表示物のうちで、重畳コンテンツCTsを除いた非AR表示物である。非重畳コンテンツCTnは、重畳コンテンツCTsとは異なり、重畳対象を特定されないで、前景に重畳表示される。非重畳コンテンツCTnの表示位置は、特定の重畳対象に関連付けられていない。非重畳コンテンツCTnの表示位置は、投影領域PA(画角VA)内の決まった位置とされる。故に、非重畳コンテンツCTnは、ウィンドシールドWS等の車両構成に相対固定されているように表示される。加えて非重畳コンテンツCTnの形状は、実質的に一定とされる。尚、車両Aと重畳対象との位置関係に起因し、非重畳コンテンツCTnであっても、重畳コンテンツCTsの重畳対象に重畳表示されるタイミングが発生してもよい。
以上のようなAR表示を実現する構成として、HUD装置50は、プロジェクタ51及び反射光学系53を備えている。プロジェクタ51は、表示生成装置100から入力される映像データPSに基づき、虚像Viとして結像される光像Piの光を、反射光学系53へ向けて射出する。プロジェクタ51には、レーザプロジェクタ、ELプロジェクタ及び液晶プロジェクタ等が採用可能であり、第一実施形態では、一例として液晶プロジェクタが用いられている。プロジェクタ51は、複数の発光ダイオードを二次元配列させてなるバックライトと、RGBのサブ画素を二次元配列させてなる液晶パネルとを有している。
反射光学系53は、反射型のスクリーン及び反射鏡を含んでいる。スクリーン及び反射鏡は、合成樹脂又はガラス等からなる無色透明の基材の表面に、アルミニウム等の金属を蒸着させてなる。スクリーンには、プロジェクタ51の射出光によって光像Piが描画される。反射鏡は、スクリーンに描画された光像Piを、ウィンドシールドWSに規定された投影領域PAに投影する。ウィンドシールドWSに投影された光は、投影領域PAによって運転者側へ向けて反射され、運転者の頭部周辺に位置するよう予め規定されたアイボックスに到達する。アイボックスにアイポイントを位置させた運転者は、光像Piの光を、前景に重畳された虚像Viとして視認可能となる。
以上のHUD装置50には、画角VAが設定される。HUD装置50にて虚像Viを結像可能な空間中の仮想範囲を上述の結像面ISとすると、画角VAは、運転者のアイポイントと結像面ISの外縁とを結ぶ仮想線に基づき規定される視野角である。画角VAは、アイポイントから見て、運転者が虚像Viを視認できる角度範囲となる。HUD装置50では、垂直方向における垂直画角よりも、水平方向における水平画角の方が大きくされている。アイポイントから見たとき、結像面ISと重なる前方範囲が画角VA内の範囲となる。
表示生成装置100は、表示管理装置40から取得する表示指令及び描画情報に基づき、HUD装置50の虚像表示に用いられる映像データPSを生成する。表示生成装置100は、生成した映像データPSをプロジェクタ51へ向けて逐次出力する処理により、図1及び図2に示すように、HUD装置50による虚像Viの表示を制御する。
表示生成装置100の制御回路60は、プロセッサ61、RAM62、メモリ装置63及び入出力インターフェース等によって構成されている。プロセッサ61は、RAM62と結合された演算処理のためのハードウェアであって、種々のプログラムを実行可能である。RAM62は、映像生成のためのビデオRAMを含む構成であってよい。メモリ装置63は、不揮発性の記憶媒体を含む構成であり、プロセッサ61によって実行される種々のプログラムを格納している。メモリ装置63に格納されたプログラムには、運転者の前景に重畳される虚像Viの表示を制御する表示制御プログラムが少なくとも含まれている。表示生成装置100は、表示制御プログラムをプロセッサ61によって実行し、地図データ判定部70、重なり判定部71、リスク推定部72、表示重み判定部73及び表示生成部74等の機能部を実装する。
地図データ判定部70は、情報表示像80の生成に用いられる地図データとして、互いに精度の異なるナビ地図データNM及び高精度地図データDMを取得可能である。地図データ判定部70は、車両Aが現在走行中の道路について、高精度地図データDMが高精度地図データベース12aに格納されている場合、表示管理装置40を通じて、高精度地図データDMを取得する。一方で、高精度地図データDMの未整備な道路を車両Aが走行している場合、地図データ判定部70は、高精度地図データDMに替えて、ナビ地図データNMを表示管理装置40から取得する。
地図データ判定部70は、取得している地図データがナビ地図データNM及び高精度地図データDMのいずれであるか、換言すれば、高精度地図データDMを取得できているか否かを判定する。尚、地図データ判定部70は、高精度地図データDMの取得が可能な場合でも、ナビ地図データNMを高精度地図データDMと共に取得してもよい。
重なり判定部71は、情報表示像80として重畳コンテンツCTsを虚像表示させる場合に、描画情報等に基づき、重畳コンテンツCTsの表示レイアウトをシミュレーションする。加えて重なり判定部71は、表示レイアウトのシミュレーション結果に基づき、運転者からの見た目上で、虚像表示された情報表示像80と、前景中の物体との重なり状態を判定する。
重なり判定部71は、描画情報に含まれる車両Aの位置情報、地図データ及び検出情報等のフュージョン処理により、道路モデル等を含んだ自車の周囲の走行環境を、仮想空間中に再現する。加えて重なり判定部71は、重畳コンテンツCTsとして表示させる情報表示像80の形状に対応した仮想オブジェクトを、道路モデル上にレイアウトする。例えば、TbT画像81を自車レーンに重畳表示させる場合、道路モデルの自車レーン上に、予定走行経路を示すような仮想オブジェクトがレイアウトされる。
重なり判定部71は、アイポイントの位置情報に基づき、道路モデル上にレイアウトした仮想オブジェクトを視認する仮想視点位置を、仮想空間中に設定する。加えて重なり判定部71は、結像面ISの車両Aに対する座標情報を参照し、結像面ISを仮想空間中に設定する。重なり判定部71は、仮想視点位置から仮想オブジェクトへ向かう仮想視線に沿って、仮想オブジェクトを結像面ISに投影した形状を、虚像Viの表示形状として演算する。
重なり判定部71は、検出情報に基づき、少なくとも一つの周辺物体について、自車両(車両A)との位置関係と、その形状及びサイズ等とを把握する。重なり判定部71は、周辺物体の相対位置に相当する道路モデル上に、周辺物体に対応する形態の物体モデルを配置する。重なり判定部71は、仮想視点位置から見たとき、結像面ISでの表示形状を規定された虚像Viと、少なくとも一つの物体モデルとの重なりの有無を判定する。そして、重なり判定部71は、アイポイントから前景を見た場合に、情報表示像80と重なる特定物体IOを、前景中にある周辺物体の中から特定する。
重なり判定部71は、虚像Viと物体モデルとが重なっている場合、仮想視点位置から物体モデルへ向かう仮想視線に沿って、物体モデルを結像面ISに投影し、その投影形状を演算する。重なり判定部71は、物体モデルの投影形状を、例えば矩形形状等に単純化させる。重なり判定部71は、虚像Viの表示形状と、物体モデルの投影形状とに基づき、結像面ISにおける虚像Viの全面積のうちで、投影形状と重なる範囲(後述の「遮蔽範囲83」に相当)の占める面積割合(以下「遮蔽割合Rb」)を算出する。
リスク推定部72は、重なり判定部71にて特定物体IOが特定された場合に、当該特定物体IOの自車両(車両A)に対するリスクを設定する。リスク推定部72は、特定物体IOのリスクレベルを、リスク推定値として算定する。リスク推定値は、一例として、レベル1,レベル2・・・等の離散的な値として算出される。特定物体IOが高リスクな状態となるほど、リスク推定値は、大きな(高い)値となる。複数の特定物体IOが重なり判定部71にて認識されている場合、リスク推定部72は、個々の特定物体IOのリスク推定値を個別に設定する。
リスク推定部72は、物体の検出情報、運転者の状態情報、及び車速情報等を、特定物体IOのリスク推定値の算定に用いる。具体的に、リスク推定部72は、自車両(車両A)の車速、リスク対象である特定物体IOとの相対距離及び相対速度、並びに運転者の覚醒度及び脇見状態等の状態情報等に基づき、リスク推定値を決定する。
表示重み判定部73は、表示管理装置40によって表示を指示された情報表示像80の情報の重要度を、表示重みレベルとして判定する。表示重みレベルは、各情報表示像80に対して予め紐付けられている。提示情報の重要度、必要性及び緊急性等が高い情報表示像80ほど、大きい(高い)表示重みレベルが設定されている。上記に例示したコンテンツのうちでは、衝突前警報に対し最も大きい表示重みレベルが紐付けられている。そして、接触注意、自動運転情報、交差点直前での経路案内、道なりの経路案内の順に、表示重みレベルは小さく(低く)なる(図4参照)。尚、情報表示像80にて提示される情報は、上記のものに限定されず、適宜選定されてよい。
表示生成部74は、映像データPSを描画する描画部である。映像データPSは、時系列に連続する多数のフレーム画像(例えば毎秒30〜120フレーム)によって構成されている。個々のフレーム画像には、スクリーンに光像Piとして発光表示され、虚像Viとして空間中に結像される表示像の元画像が描画される。一例として、車両Aに搭載されたナビゲーション装置17によって目的地への経路案内が実施されている場合、上述のTbT画像81が、運転者への情報提示に用いられる虚像Viの元画像として、各フレーム画像に描画される。表示生成部74は、各フレーム画像へのTbT画像81の描画により、虚像表示されるTbT画像81を生成する。TbT画像81の表示色は、例えば青色又は水色等の単一色とされる。
表示生成部74は、重なり判定部71及びリスク推定部72によって特定物体IOが特定されている場合に、当該特定物体IOの視認を妨げないように、虚像表示の態様を変更する。表示生成部74は、虚像Viとして表示される情報表示像80のうちで、特定物体IOと重なる遮蔽範囲83の視認性を低下させる透過制御を実施する。遮蔽範囲83の視認性は、表示調整前の情報表示像80の全体や表示調整後の通常範囲82に対して、低い状態とされる。
一例として、表示生成部74は、図3に示すように、複数の画像レイヤを重ねる処理により、遮蔽範囲83の視認性を低下させたTbT画像81を生成する。表示生成部74は、第一画像レイヤLy1及び第二画像レイヤLy2を設定する。第一画像レイヤLy1に描画される描画物(網掛け範囲参照)は、仮想空間中にて、物体モデルを結像面ISに投影した投影形状に基づき、描画態様を規定される。一方、第二画像レイヤLy2に描画される描画物(斜線範囲参照)は、仮想オブジェクトを結像面ISに投影した虚像Viの表示形状に基づき、描画態様を規定される。表示生成部74は、第一画像レイヤLy1を第二画像レイヤLy2よりも上位のレイヤとし、第二画像レイヤLy2に第一画像レイヤLy1を重ねる。尚、各描画物には、反射光学系53及びウィンドシールドWSでの反射に伴う歪みを予め補正する処理が適宜実施される。
以上のレイヤ処理により、第二画像レイヤLy2の描画物から第一画像レイヤLy1の描画物を差し引いたTbT画像81の元画像が描画される。このTbT画像81にて、特定物体IOとの重なりが想定される範囲には、遮蔽範囲83が形成されている。図2に示すように、遮蔽範囲83は、運転者の見た目上にて、特定物体IOよりも僅かに大きく規定される(図2参照)。その結果、遮蔽範囲83の外縁は、特定物体IOの外縁よりも特定の余裕代86だけ、外側に位置する。余裕代86は、特定物体IOの外縁に対し、水平(左右)方向及び鉛直(上下)方向の両方に設定される。さらに、情報表示像80は、通常範囲82及び輪郭部分84を有している。通常範囲82は、情報表示像80のうちで遮蔽範囲83から外れた範囲であり、視認性を低下させない範囲である。輪郭部分84は、情報表示像80のうちで遮蔽範囲83とされる対象から除外された部分であり、情報表示像80の輪郭を形成する部分である。
表示生成部74は、リスク推定部72にて推定されたリスク推定値、及び表示重み判定部73によって判定された表示重みレベルに基づき、遮蔽範囲83の視認性を低下させるか否かを決定する。こうした処理のため、図1及び図4に示すように、表示生成部74は、表示生成マップCdMを参照する。
表示生成マップCdMは、情報提示システムの設計段階にて作成され、メモリ装置63に記憶されている。表示生成マップCdMでは、リスク推定値及び表示重みレベルが情報表示像80の表示態様と関連付けられている。表示生成マップCdMは、リスク推定値及び表示重みレベルを二軸とする二次元マップであり、リスク推定値及び表示重みレベルに対応する表示態様を出力する。
表示生成マップCdMには、通常表示領域An及び表示補正領域Acが規定されている。通常表示領域Anは、特定物体IOが特定されていない場合と実質同一の通常表示の実施を決定する領域である。通常表示領域Anは、表示補正領域Acに対して、表示重みレベルの高い側に規定されている。即ち、表示生成マップCdMのうちで、表示重みレベルについて所定の閾値THwを超える領域が、通常表示領域Anとされている。
表示補正領域Acは、通常表示とは異なる態様での表示を実施させる領域である。表示補正領域Acは、通常表示領域Anに対して、表示重みレベルの低い側に規定されている。表示重みレベルについて所定の閾値THw以下となる領域が、表示補正領域Acとなる。表示補正領域Acには、非表示領域Ac1、輪郭表示領域Ac2及び強度低下領域Ac3が含まれている。
非表示領域Ac1及び輪郭表示領域Ac2は、情報表示像80の少なくとも一部を非表示にする領域である。非表示領域Ac1は、情報表示像80全体の一時的な表示中断を決定する領域である。非表示領域Ac1は、表示補正領域Acのうちで、リスク推定値の最も高い側に規定されている。
輪郭表示領域Ac2は、情報表示像80の一部である遮蔽範囲83を一時的に非表示とする領域である。この場合、遮蔽範囲83を除く通常範囲82及び輪郭部分84が通常通り描画され、通常範囲82及び輪郭部分84を含む虚像Viが、重畳コンテンツCTsとして特定物体IO及び前方路面に重畳表示される(図5参照)。輪郭表示領域Ac2は、非表示領域Ac1よりもリスク推定値の低い側と、非表示領域Ac1よりも表示重みリスクの高い側とを、L字状に囲むように規定されている。
強度低下領域Ac3は、遮蔽範囲83の視認性を低下させた通常の透過制御の実施を決定する領域である。この場合、遮蔽範囲83は、完全な非表示にはされない(図2参照)。強度低下領域Ac3は、表示補正領域Acのうちで最もリスク推定値の低い側に規定されており、表示補正領域Acのうちで、所定の閾値THr以下のリスク推定値に対応付けられた領域である。
表示生成部74は、リスク推定部72にて推定されたリスク推定値、及び表示重み判定部73にて判定された表示重みレベルを、表示生成マップCdMに適用する。そして、表示生成部74は、現在のリスク推定値及び表示重みレベルに基づく情報表示像80の表示態様を、表示生成マップCdMの参照によって決定する。
表示生成部74は、二つの表示生成マップCdMを参照可能である。一方の表示生成マップCdMは、高精度地図データDMを取得できている場合に参照される表示生成マップCdM(以下、「メイン生成マップCdM1」)である。他方の表示生成マップCdMは、ナビ地図データNMしか取得できてない場合に参照される表示生成マップCdM(以下、「サブ生成マップCdM2」)である。表示生成部74は、地図データ判定部70による取得中の地図データの判定結果に基づき、メイン生成マップCdM1及びサブ生成マップCdM2のうちで、参照対象とする一方を切り替える。メイン生成マップCdM1及びサブ生成マップCdM2では、各閾値THw,THrの少なくとも一つの設定値が、互いに異なっている。
さらに表示生成部74は、重なり判定部71にて算出される遮蔽割合Rbに基づき、透過制御を変更する。表示生成部74は、遮蔽割合Rbと比較する閾値として、上限閾値THh及び下限閾値THsを準備している。
図1及び図6に示すように、表示生成部74は、情報表示像80における遮蔽範囲83の遮蔽割合Rbが上限閾値THh(例えば80%)を超えた場合に、代替表示像として、情報提示アイコン88を虚像表示させる。より正確には、表示生成部74は、遮蔽割合Rbが上限閾値THhを超える状態が所定の時間継続した場合に、情報提示アイコン88を表示させる。表示生成部74は、情報表示像80(二点鎖線参照)の表示を中断させ、情報表示像80の代わりに、情報提示アイコン88を表示させる。
情報提示アイコン88は、重畳対象を特定されない非重畳コンテンツCTnである。情報提示アイコン88は、情報表示像80を実質的に同一の情報を運転者の提示可能である。情報提示アイコン88の表示サイズは、情報表示像80よりも小さくされている。情報提示アイコン88は、前景中の特定物体IOに重ならないように、画角VAの外縁近傍に表示位置を規定されている。以上により、例えば前方車両が大型の貨物車両であった場合に、表示生成部74は、重畳コンテンツCTsによる情報提示を諦めて、非重畳コンテンツCTnによる情報提示に切り替えることができる。
表示生成部74は、地図データ判定部70による高精度地図データDMの取得の有無に基づき、上限閾値THhを補正する。表示生成部74は、高精度地図データDMが取得されていない場合に、高精度地図データDMが取得されている場合よりも、上限閾値THhを低い値(例えば、60%)に変更する。その結果、ナビ地図データNMのみが取得されている場合には、高精度地図データDMが取得されている場合と比較して、重畳コンテンツCTsから非重畳コンテンツCTnへとの切り替えタイミングが早められる。
ここで、自車両(車両A)が前方車両等の特定物体IOに接近するシーンでは、リスク推定値の上昇と、遮蔽割合Rbの増加とが共に生じる。故に、表示生成部74は、上限閾値THhに替えて、表示生成マップCdM(図4参照)の閾値を利用して、情報表示像80から情報提示アイコン88へのコンテンツの切り替えを実施してもよい。例えば、表示生成部74は、非表示領域Ac1であると特定した場合、又は輪郭表示領域Ac2と特定した場合に、情報表示像80を非表示とし、情報提示アイコン88を表示させる。こうした表示制御でも、遮蔽範囲83の割合が上限閾値を超えた場合に、情報提示アイコン88を表示させることが可能になる。
図1及び図7に示すように、表示生成部74は、情報表示像80における遮蔽範囲83の遮蔽割合Rbが下限閾値THs(例えば、10%)未満の場合には、遮蔽範囲83の視認性を維持させる。即ち、表示生成部74は、透過制御を中止し、情報表示像80を通常表示させる。以上により、遠方の特定物体IOに重なるようにして、通常形状の情報表示像80が重畳表示される。尚、下限閾値THsも、上限閾値THhと同様に、高精度地図データDMの取得の有無に基づき、値を補正されてよい。
表示生成部74は、自車(車両A)から特定物体IOまでの距離に応じて、遮蔽範囲83の形状及びサイズを適宜調整する。表示生成部74は、できるだけ特定物体IOを隠さいないように、特定物体IOが自車に接近している場合には、遮蔽範囲83の拡大を、急速に実施する。一方で、特定物体IOが自車から離れていく場合には、表示生成部74は、遮蔽範囲83の縮小を、ゆっくり実施してよい。換言すれば、遮蔽範囲83の特定物体IOに対する形状追従性は、特定物体IOの接近時の方が、特定物体IOの離間時よりも高く設定される。
以上のような表示調整処理の詳細を、図8に基づき、図1及び図4〜図7を参照しつつ説明する。表示生成装置100は、図8に示す表示調整処理を、表示生成部74にて情報表示像80の描画が開始されたことに基づき開始し、情報表示像80の表示が終了されるまで継続的に実施する。
S101では、映像データPSの生成に必要な表示指令及び描画情報を表示管理装置40から取得し、S102に進む。S102では、S101にて取得した情報を用いて、情報表示像80と前景中の物体との重なりを判定し、S103に進む。S102では、情報表示像80と重なる周辺物体がある場合、遮蔽割合Rbの算出も行う。S103では、情報表示像80と重なる特定物体IOの有無を判定する。S103にて、特定物体IOが無いと判定した場合、S104に進む。S104では、通常形状の情報表示像80を生成する描画状態とする。以上により、通常形状の情報表示像80がHUD装置50によって虚像表示される。
一方、S103にて、特定物体IOが有ると判定した場合、S105に進む。S105では、高精度地図データDMの取得の有無に基づき、表示生成マップCdM及び各閾値THh,THsを設定し、S106に進む。S106では、S105にて読み込んだ各閾値THh,THsと、S102にて算出した遮蔽割合Rbとの比較を行う。S106にて、遮蔽割合Rbが下限閾値THs未満であると判定した場合、S104に進み、通常形状の情報表示像80を表示させる(図7参照)。
S106にて、遮蔽割合Rbが上限閾値THh以上であると判定した場合、S107に進む。S107では、情報表示像80の生成を中止し、情報提示アイコン88を生成する描画状態とする。以上により、特定物体IOを避けるような位置に、情報提示アイコン88が虚像表示される(図6参照)。
S106にて、遮蔽割合Rbが上限閾値THh未満であり、且つ、下限閾値THs以上であると判定した場合、S108に進む。S108では、特定物体IOのリスク推定値を算定し、S109に進む。S109では、表示指令の示す情報表示像80の表示重みレベルを判定し、S110に進む。S110では、S108にて算定したリスク推定値、及びS109にて判定した表示重みレベルを、表示生成マップCdMに適用し、情報表示像80の表示態様を決定する。そして、決定した表示態様の情報表示像80を生成する描画状態とする。以上により、通常形状又は補正形状の情報表示像80がHUD装置50によって虚像表示されるか、或いは情報表示像80の虚像表示が一時的に中断される。
次に、表示重みレベルが閾値THw以上となり、通常形状の情報表示像80によって自動運転情報等を提示する具体的な二つのシーンを、図9及び図10に基づき、順に説明する。これらのシーンでは、前方車両LVがいたとしても、前方車両LVと重なったところの視認度を下げない通常表示を行う。
図9に示すシーンにおいて、車両Aは、ACC(Adaptive Cruise Control)機能により、前方車両LV(例えば二輪車)に追従走行している。情報表示像80は、ACC機能の実行状態を示すACC画像87aと、前方車両LVを強調する強調画像89とを含んでいる。ACC画像87aは、自車レーンの路面に重畳表示される。強調画像89は、前方車両LVを囲むように重畳表示されて、ACC機能に認識されている追従対象を示す。
図10に示すシーンにおいて、車両Aは、濃霧に起因する視界不良の環境を走行している。情報表示像80は、視界不良サポートのための車線表示画像87bと、前方車両LVを強調する強調画像89とを含んでいる。車線表示画像87bは、自車レーンの路面のうちで、左右の区画線の内側に重畳表示され、自車レーンの範囲を運転者に示す。強調画像89は、前方を走行する前方車両LVを注意喚起する。
ここまで説明した第一実施形態では、情報表示像80の虚像Viと前景中の特定物体IOとが重なる場合、情報表示像80のうちで特定物体IOと重なった遮蔽範囲83の視認性が低下される。故に、前景中の特定物体IOは、虚像Viとして表示される情報表示像80によって覆い隠され難くなり、少なくとも一部が運転者から知覚され易い状態となり得る。一方で、視認性を下げた状態であっても、遮蔽範囲83の表示が継続されるため、情報表示像80は、運転者に情報提示可能な表示態様を維持できる。以上によれば、前景中の特定物体IOへの運転者の注意を維持させつつ、運転者への情報提示が継続可能になる。
加えて第一実施形態では、情報表示像80における遮蔽範囲83の遮蔽割合Rbが上限閾値THhを超えた場合に、表示生成部74は、情報提示アイコン88の表示へと切り替える。以上によれば、遮蔽範囲83の設定に起因して、情報表示像80によって提示される情報の内容について、運転者が識困難となる事態は、回避される。
また第一実施形態では、高精度地図データDMの取得の有無に基づき、上限閾値THhの値が変更される。具体的には、高精度地図データDMが無い場合、上限閾値THhは、低く設定され、情報提示アイコン88への切り替えが早期に実施される。以上によれば、地図データの精度不足に起因して、重畳コンテンツCTsの位置ずれが生じ易くなっても、情報表示像80によって特定物体IOが隠される事態は、生じ難くなる。
さらに第一実施形態では、遮蔽割合Rbが下限閾値THs未満の場合には、透過制御が回避され、遮蔽範囲83の視認性は維持される。故に、特定物体IOまでの距離が遠い場合に、ごく一部の視認性を低下させた情報表示像80が表示され、運転者の違和感を引き起こす事態は、回避される。
加えて第一実施形態では、リスク推定値に基づき、遮蔽範囲83の視認性を低下させるか否かの決定が実施される。以上によれば、遮蔽範囲83の視認性を低くする表示調整は、情報提示を継続しつつ特定物体IOへの注意も維持させたいようなリスク状態のシーンにおいて、限定的に実施され得る。その結果、情報表示像80による情報提示は、運転者に煩わしく感じられ難くなる。
具体的に、第一実施形態では、リスク推定値が閾値THr(図4参照)未満である場合に、遮蔽範囲83の視認性を低下させる表示調整が実施される。一方で、リスク推定値が閾値THrを超える場合、情報表示像80は、全体又は遮蔽範囲83を非表示とする。こうした設定であれば、情報表示像80は、特定物体IOのリスクが高まる前の段階で、運転者の注意を遮らないよう、情報提示を実施できる。以上によれば、情報表示像80を用いた情報提示は、多くの走行シーンにおいて有効に実施可能となる。
また第一実施形態では、表示重みレベルに基づき、遮蔽範囲83の視認性を低下させるか否かの決定が実施される。以上によれば、遮蔽範囲83の視認性を低くする表示調整は、特定物体IOに注意が向くことを許容できる情報提示を行う場合に、限定的に実施され得る。その結果、情報表示像80による情報提示は、重要な情報を運転者に確実に提示可能となる。
具体的には、第一実施形態では、表示重みレベルが閾値THw(図4参照)を超える情報表示像80は、図9及び図10に示したように、遮蔽範囲83の視認性を下げる対象にはならない。こうした設定であれば、遮蔽範囲83の視認性低下に起因して、情報表示像80により提示される情報が、運転者に認識され難くなる事態の発生は、防がれる。
さらに第一実施形態では、リスク推定値及び表示重みレベルを表示生成マップに適用する処理により、遮蔽範囲83の視認性を低下させるか否かが決定される。以上によれば、複雑な演算処理が不要となるため、表示生成部74は、リスク推定値及び表示重みレベルに基づき、情報表示像80の表示態様を速やかに決定できる。その結果、リスク推定値及び表示重みレベルに基づく表示態様の遷移が、走行シーンに合わせて円滑に実施され易くなる。
さらに第一実施形態では、輪郭部分84が遮蔽範囲83から除外され、輪郭部分84の視認性は、遮蔽範囲83よりも高く設定される。こうした表示態様であれば、遮蔽範囲83が設定されても、一つの情報表示像80が複数に分断されてしまう状態にはなり難い。故に、情報表示像80の全体形状は、運転者によって認識可能なとなる。したがって、情報表示像80の提示情報の意味理解が、遮蔽範囲83の表示調整に起因して困難になる事態は、防がれる。
加えて第一実施形態では、運転者から見た特定物体IOの外縁と、遮蔽範囲83の外縁との間に、余裕代86が確保されている。車両Aに生じる姿勢変化及び自律センサ11の計測誤差等に起因し、表示生成装置100にて把握される特定物体IOの見かけ上のサイズには、誤差が生じ得る。故に、予め余裕代86を設ける設定によれば、特定物体IOに対する遮蔽範囲83のずれが許容される。その結果、情報表示像80は、特定物体IOの全体を、より確実に運転者から視認し易くできる。
尚、第一実施形態では、プロセッサ61が「処理部」に相当し、地図データ判定部70が「地図データ取得部」に相当し、情報提示アイコン88が「代替表示像」に相当する。また、ナビ地図データNMが「低精度地図データ」に相当し、表示生成装置100が「表示制御装置」に相当する。
(第二実施形態)
図11〜図14に示す本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態の情報提示システムには、第一実施形態の表示管理装置40(図1参照)及び表示生成装置100(図1参照)に相当する構成として、表示制御装置200が設けられている。表示制御装置200は、周辺監視装置10、ナビゲーション装置17、ドライバ監視装置20、車両制御装置30及びHUD装置50等と電気的に接続されており、第一実施形態と実質同一の情報提示を行う。表示制御装置200の制御回路60にて、プロセッサ61により表示制御プログラムが実行されると、表示制御装置200には、第一実施形態と実質同一の各機能部(70〜74)に加えて、表示管理部75がさらに構築される。表示管理部75は、表示管理装置40と同様に、取得した情報に基づき、HUD装置50によって虚像表示させるべきコンテンツを決定する。
第二実施形態のリスク推定部72は、運転者の状態情報を用いることなく、特定物体IOのリスクレベルを推定し、リスク推定値を算定する。一方で、リスク推定部72は、特定物体IOについてのリスク推定値の算定とは別に、ドライバ監視装置20から取得する状態情報に基づき、運転者の状態レベル(以下、「ドライバ状態レベル」)を推定する。ドライバ状態レベルは、例えば運転者の視点、脇見状態、覚醒度及び漫然度等の情報に基づき算定される。ドライバ状態レベルは、運転者が運転に対して注意できている状態ほど、大きな(高い)値となる。リスク推定部72は、後述の表示調整処理(図14参照)において、特定物体IOのリスク推定値を算定した後に(S207参照)、運転者の状態レベルを算定する演算を実施する(S208参照)。
表示生成部74は、メモリ装置63に記憶された複数の表示生成マップを参照可能である。各表示生成マップには、互いに異なるドライバ状態レベルが関連付けられている。即ち、ドライバ状態レベルN(標準状態)の表示生成マップ、ドライバ状態レベルN+1(高注意状態)の表示生成マップ、ドライバ状態レベルN+2(さらに高注意状態)の表示生成マップ等が、予め規定されている。
表示生成部74は、リスク推定部72にて算定されたドライバ状態レベルに対応する表示生成マップを、複数のうちから選択する。表示生成部74は、選択した表示生成マップに、リスク推定部72にて算定されたリスク推定値(S207参照)及び表示重み判定部73にて判定された表示重みレベル(S209参照)を適用し、情報表示像80の表示態様を決定する(S210参照)。
以上の複数の表示生成マップの詳細をさらに説明する。
複数の表示生成マップでは、関連付けられたドライバ状態レベルが高くなるほど、表示補正領域Acは、通常表示領域An側に拡大される。表示補正領域Acと通常表示領域Anの閾値となる表示重みレベルは、標準状態でのTHw1に対して、高注意状態ではTHw2へと上昇し(図12参照)、いっそうの高注意状態ではTHw3へと引き上げられる(図13参照)。
加えて各表示生成マップにて、表示重みレベルが所定値(閾値THw3)を超える領域は、ドライバ状態レベルに係わらず、通常表示領域Anとされている。故に、ドライバ状態レベルが高くても、表示重みレベルの高い情報表示像80は、遮蔽範囲83の視認性を落とされることなく、通常表示される。
また複数の表示生成マップでは、関連付けられたドライバ状態レベルが高くなるほど、輪郭表示領域Ac2と強度低下領域Ac3との境界がリスク推定値の低い側に変更される。輪郭表示領域Ac2と強度低下領域Ac3の閾値となるリスク推定値は、高注意状態でのTHr1に対して、いっそうの高注意状態ではTHr2へと引き下げられる(図13参照)。その結果、輪郭表示領域Ac2が低リスク推定値側に拡大される一方で、強度低下領域Ac3は、低リスク推定値側に狭められる。
さらに各表示生成マップにて、リスク推定値が所定値(閾値THr2)未満となる領域は、ドライバ状態レベルに係わらず、非表示領域Ac1外とされ、強度低下領域Ac3となっている。故に、リスク推定値が大きくない場合には、情報表示像80は、非表示へと切り替えられることなく、遮蔽範囲83の輝度を低下させた態様で虚像表示される。
次に、第二実施形態の表示調整処理の詳細を、図14に基づき、図11及び図5を参照しつつ説明する。
S201では、周辺監視装置10、ナビゲーション装置17、ドライバ監視装置20及び車両制御装置30等から描画情報を取得し、S202に進む。S202では、地図データ判定部70にて取得されている地図データの種類を判定し、S203に進む。S203では、S202の判定結果を参照し、高精度地図データDMの取得の有無を判断する。S203にて、高精度地図データDMを取得しておらず、ナビ地図データNMのみを取得していると判定した場合、S204に進み、通常形状の情報表示像80をHUD装置50によって表示させる。
一方、S203にて、高精度地図データDMを取得していると判定した場合、S205に進むS205では、S201にて取得した各種の情報を用いて、情報表示像80と前景中の物体との重なりを判定し、S206に進む。S206では、情報表示像80と重なる特定物体IOの有無を判定する。S206にて、特定物体IOが無いと判定した場合、S204に進む。対して、S206にて、特定物体IOが有ると判定した場合、S207に進む。
S207〜S210では、上述したように、リスク推定値、ドライバ状態レベル及び表示重みレベルを順に算定又は判定し、これらの値に基づき、情報表示像80の表示態様を決定する。以上により、通常形状又は補正形状の情報表示像80の表示がHUD装置50によって開始される。
ここまで説明した第二実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、遮蔽範囲83の視認性を低下させる表示調整により、前景中の特定物体IOへの運転者の注意を維持させつつ、運転者への情報提示が継続可能になる。
さらに第二実施形態では、ナビ地図データNMの取得しかできない場合に、特定物体IOが存在していても、情報表示像80を通常形状で表示させる。即ち、遮蔽範囲83の視認性を低下させる表示調整の実施は、高精度地図データDMを取得できている期間に限定される。重畳コンテンツCTsの生成にナビ地図データNMしか使用できない場合、重畳コンテンツCTsは、重畳対象に対してずれ易くなる。故に、遮蔽範囲83が特定物体IOに対してずれるリスクも増加する。故に、遮蔽範囲83の特定物体IOに対するずれが運転者の違和感をならないように、地図データの精度が低い場合には、遮蔽範囲83の透過制御は、中止されるのがよい。
加えて第二実施形態では、ドライバ状態レベルに基づき、表示生成部74にて参照される表示生成マップが切り替えられる。故に、表示生成部74は、虚像Viの表示調整を、運転者の注意状態に合わせて実施できる。以上によれば、虚像表示の煩わしさの抑制と、虚像表示の視認性確保との両立が、いっそう実現され易くなる。
また第二実施形態では、表示生成部74は、ドライバ状態レベルが高くなるほど、表示補正領域Acが通常表示領域An側に拡大された表示生成マップを選択する。その結果、運転者の運転状態が良好な場合、表示の強さを低減する領域が拡大されるようになる。以上によれば、運転者の煩わしさの低減と、虚像Viの視認性の確保とがいっそう両立され易くなる。
さらに第二実施形態では、表示生成部74は、ドライバ状態レベルが高くなるほど、強度低下領域Ac3がリスク推定値の低い側に狭められた表示生成マップを選択する。その結果、運転者の運転状態が良好な場合、遮蔽範囲83を非表示とする領域が拡大される。以上によれば、運転者の煩わしさの低減と、虚像Viの視認性の確保とが、いっそう両立され易くなる。
加えて第二実施形態では、表示重みレベルの高い情報表示像80は、ドライバ状態レベルに係らず、通常表示される。故に、重要な情報を提示する情報表示像80は、視認性を落とされることなく、十分な視認性を確保された状態で虚像表示され得る。以上によれば、遮蔽範囲83の視認性を低下させる表示調整を行う形態であっても、運転者による重要情報の認識は、妨げられ難い。
また第二実施形態では、ドライバ状態レベルが高くても、リスク推定値が大きくない場合には、情報表示像80は、非表示にされない。故に、情報表示像80は、少なくとも最小限の視認性を確保された表示態様で虚像表示され得る。尚、第二実施形態では、各閾値THw3,THr2がそれぞれ「所定値」に相当する。
(他の実施形態)
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
図15に示す上記第一実施形態の変形例1の情報提示システムでは、表示管理装置40の制御回路40aに、リスク演算部41が実装されている。リスク演算部41は、第一実施形態のリスク推定部72(図1参照)と同様の機能を有しており、車両Aの周囲の物体についてのリスク推定値を算定する。表示管理装置40は、リスク演算部41にて算定した各物体のリスク推定値を、描画情報として表示生成装置300に提供する。
表示生成装置300の制御回路60には、第一実施形態のリスク推定部72(図1参照)に替えて、リスク設定部372が実装されている。制御回路60には、第一実施形態と実質同一の地図データ判定部70、重なり判定部71、表示重み判定部73及び表示生成部74がさらに実装されている。リスク設定部372は、特定物体IOのリスク推定値を算定する演算処理に替えて、リスク演算部41にて推定されたリスク推定値を取得し、重なり判定部71にて特定された特定物体IO(図2参照)に紐付ける処理を行う。こうした処理により、変形例1でも、特定物体IOのリスク推定値が設定される。尚、変形例1では、リスク設定部372が「リスク推定部」に相当する。
上記第一実施形態の変形例2では、表示生成装置の機能が、HUD装置に内蔵されている。即ち、HUD装置に設けられた制御回路が、表示制御プログラムを実行し、重なり判定部、リスク推定部、表示重み判定部及び表示生成部等の機能部を有する。以上のような変形例1及び変形例2の構成であっても、上記第一実施形態と同様の効果を奏する。
図16に示す上記第一実施形態の変形例3において、表示生成部74は、重畳コンテンツCTsを、遮蔽範囲83の視認性低下を中断させた通常状態と、遮蔽範囲83の視認性を低下させた調整状態との間で、適宜切り替える。詳記すると、表示生成部74は、情報表示像80の表示を開始させる最初の期間において、重畳コンテンツCTsと特定物体IOとが重なっていても、遮蔽範囲83の視認性を低下させない。さらに、表示生成部74は、遮蔽範囲83の視認性を下げた重畳コンテンツCTsを一旦表示させた後、所定のタイミングで、透過制御を再度中止させる。
以上の変形例3によれば、例えば、経路案内を行う場合、表示生成装置は、通常形状のTbT画像81(図7参照)を最初に表示させた後、遮蔽範囲83の視認度を下げたTbT画像81(図2参照)を表示させる。さらにその後、TbT画像81が案内ポイント(例えば交差点)に近づく所定のタイミングで、TbT画像81は、通常形状に戻される。
変形例3の表示調整処理では、S301にて取得する描画情報等に基づき、S302にて現在が所定のタイミングに該当するか否かを判定する。所定のタイミングは、上述したように、表示開始直後の最初の期間、又は案内ポイントへの接近後の期間である。S302にて、現在が所定のタイミングであると判定した場合、S303に進み通常形状の情報表示像80を表示させる。一方で、所定のタイミングでは無いと判定した場合、S304以上の処理に進み、遮蔽範囲83の視認性低下が適宜実施される。尚、S304〜S308の各処理は、第二実施形態におけるS205〜S207,S209,S210(図14参照)の各処理と実質的に同一である。
図17に示す上記第一実施形態の変形例4において、遮蔽範囲83は、特定物体IOの全体に対して設定されるのではなく、特定物体IOの特に重要な範囲に対して局所的に設定される。一例として、変形例4の遮蔽範囲83は、情報表示像80のうちで、前方車両の後部の灯火類、具体的には、ブレーキランプ及びテールランプの少なくとも一方を含む近傍範囲に規定される。遮蔽範囲83は、例えば円形状又は矩形状に設定される。以上の遮蔽範囲83の設定によれば、少なくとも前方車両の灯火類を隠さないような重畳コンテンツCTsが表示される。
尚、表示生成部74は、遮蔽割合Rbが上限閾値THhを超えた場合に、特定物体IOの全体を含む形状の遮蔽範囲83から、特定物体IOの特定部分のみを含む形状の遮蔽範囲83へと、遮蔽範囲83の形状を変更してもよい。
図18に示す上記第一実施形態の変形例5では、情報表示像80において各輪郭部分84を除く範囲が全て遮蔽範囲83とされる。このように、遮蔽範囲83は、輪郭部分84を除く範囲まで、最大限拡大されてもよい。以上によれば、特定物体IOが情報表示像80によって隠される事態は、いっそう生じ難くなる。
上記実施形態の変形例6において、重なり判定部は、情報表示像80を形成する多数の画素のうちで、虚像表示された場合に、運転者の見た目上にて特定物体IOとの重なると想定される遮蔽画素を選定し、当該遮蔽画素の範囲を遮蔽範囲83として設定する。表示生成部74は、遮蔽範囲83の発光輝度を通常範囲82よりも低く設定し、遮蔽範囲83の視認性を通常範囲82に対して相対的に低下させる。一例として、表示生成部74は、発光ダイオードをアレイ状に配列させてなるバックライトにおいて、遮蔽画素を照明する各発光ダイオードの発光輝度を下げる。このとき、液晶パネルにおけるRGBの各サブ画素の状態(階調値)は維持される。
以上により、遮蔽範囲83の全体が、実質均一且つ低発光輝度で面発光する。また表示生成部74は、輪郭部分84の発光輝度については、通常範囲82と実質同一の発光輝度となるように設定する。その結果、輪郭部分84の視認性は、遮蔽範囲83よりも高くなり、通常範囲82と実質同一となる。
以上の変形例6では、表示生成部74は、遮蔽範囲83の発光輝度を通常範囲82よりも低くする補正により、遮蔽範囲83の視認性を低く設定する。遮蔽範囲83の発光輝度の低下によれば、運転者は、遮蔽範囲83と重なった特定物体IOを容易に認識できるようになる。さらに、発光輝度のみを調整し、発光色を維持することによれば、情報表示像80による提示情報の意味が変化したといった誤解が、運転者に惹起される事態も回避される。
また上記実施形態の変形例7では、遮蔽範囲83の視認性を低下させる表示調整にて、各サブ画素の階調値の変更によって発光色を変えるような制御が、ハックライトの輝度調整と共に実施されてもよい。
また上記実施形態の変形例8,9では、遮蔽範囲83の視認性を低下させる表示調整として、遮蔽範囲83における単位面積あたりの発光面積を、通常範囲の単位面積あたりの発光面積よりも小さくする制御が、表示生成部74によって実施される。以上の制御によれば、遮蔽範囲83には発光部分と非発光部分が発生するため、遮蔽範囲83の平均輝度は、通常範囲の平均輝度よりも低くなる。その結果、遮蔽範囲83の視認性が低下する。
具体的に、変形例8では、通常範囲82の全体が実質均一に面発光される。対して、遮蔽範囲には、ドット模様が表示される。変形例8では、個々のドットが発光部分とされ、ドットを除く空白域が非発光部分とされる。各ドットは、複数の画素分の大きさとされる。各ドットの発光輝度は、通常範囲及び輪郭部分と実質同一の発光輝度とされる。
変形例9の遮蔽範囲83には、網掛け模様が表示される。変形例9では、網掛けを形成する個々の線が発光部分とされ、各線間の空白域が非発光部分とされる。各線の発光輝度は、通常範囲82及び輪郭部分84と実質同一の発光輝度とされる。尚、変形例8,9における発光部分及び非発光部分は、入れ替えられていてもよい。
さらに、変形例10では、遮蔽範囲83が通常範囲82よりも低い輝度範囲で点滅する。点滅期間における最高輝度は、通常範囲の発光輝度と同程度か、僅かに低い程度とされる。点滅期間における最低輝度は、バックライトの消灯状態よりも僅かに明るい程度とされる。
また変形例11では、遮蔽範囲83の全体が一旦非発光状態としたうえで、遮蔽範囲83内にアニメーションが表示される。変形例11では、例えば細い帯状の発光部分が、ワイパーのように遮蔽範囲内を往復移動する。発光部分の発光輝度は、通常範囲の発光輝度と同程度か、僅かに低い程度とされる。以上の変形例10,11のような表示態様であっても、上記第一実施形態と同様の効果が発揮され得る。
上記実施形態において、表示重みレベルが高い場合、情報表示像は、リスク推定値の大小に依らず、常に通常表示されていた。しかし、リスク推定値が高い場合に、情報表示像の発光輝度を上げる表示調整、又は情報表示像を点滅させる表示調整等が実施されてもよい。尚、こうした強調のための点滅表示は、発光輝度を周期的に変化させる表示である。即ち、点滅表示における最低輝度は、点滅実施以前の通常の発光輝度と同程度とされる。一方、点滅表示における最高輝度は、通常の発光輝度よりも高く設定される。
上記実施形態における輪郭部分は、通常範囲と同じ発光輝度とされていたが、通常範囲よりも低輝度に設定されてもよい。また輪郭部分には、遮蔽範囲の位置する内側へ向けて発光輝度を漸減させるグラデーションが設けられていてもよい。或いは、通常範囲から離れるに従って、発光輝度を漸減させるようなグラデーションが輪郭部分に設けられていてもよい。
さらに、余裕代の部分に、グラデーションが設けられていてもよい。具体的には、通常範囲から遮蔽範囲の中央へ向けて、余裕代となる部分にて、連続的に発光輝度が低下するような表示態様とされていてもよい。尚、輪郭部分の表示及び余裕代の確保は、実施されなくてもよい。
上記実施形態では、遮蔽範囲の視認性を低下させるか否かが、リスク推定値及び表示重みレベルに応じて決定されていた。しかし、こうした調整は、実施されなくてもよい。さらに、上記実施形態では、表示生成マップへの適用によって情報表示像の表示態様が設定されていたが、例えばAI技術の適用により、機械学習によって生成された関数としての学習器を用いて、情報表示像の表示態様が決定されてもよい。
上記実施形態では、情報表示像80の表示形状を決定するため、複数の表示生成マップCdMが使用されていた。しかし、表示生成部74は、一つの表示生成マップCdMのみに基づき、情報表示像80の表示形状を設定してもよい。
上記実施形態では、自車と同一のレーンを走行する前方車両が特定物体IO物体とされていた。しかし、特定物体IOは、前方車両のような他の車両に限定されない。周辺監視装置にて検出可能な障害物、具体的には、前景中において、道路上に存在するか、又は自車と同一のレーンを移動するオートバイ、サイクリスト及び歩行者等が、特定物体IOとして選定されてよい。さらに、特定物体の形状及び大きさに合わせて、情報表示像の形状及びサイズも適宜変更されてよい。
一方で、道路上に存在しない周辺物体、具体的には、道路脇の建築物、ガードレール及び歩行者等は、特定物体IOとはされない。故に、図19に示すように、経路案内を行う重畳コンテンツCTsは、建築物BOを避けることなく、当該建築物BOの壁等に対して重畳表示される。
対して、道路上に存在する例えば落下物等は、特定物体IOとされる。故に、図20に示すように、経路案内を行う重畳コンテンツCTsには、路上の落下物に対応した形状の遮蔽範囲83が設定される。そして、重畳コンテンツCTsは、遮蔽範囲83の輝度調整等により、落下物を避けるような形状で、自車レーンの路面に重畳表示される。
上記実施形態では、高精度地図データベース12aに格納された高精度地図データDMが、重畳コンテンツCTsの生成に用いられていた。しかし、ネットワークを通じて受信される高精度地図データDMが、情報表示像80の生成に用いられてもよい。
HUD装置の具体的な構成は、適宜変更可能である。例えば上記実施形態では、一つの焦点に虚像を結像させる単焦点方式のHUD装置が採用されていた。しかし、遠近二つの焦点に遠虚像及び近虚像を結像させる二焦点方式のHUD装置や、焦点位置を車両の前後方向に変更可能な可変焦点方式のHUD装置等が採用されてもよい。二焦点方式のHUD装置を採用した場合、遮蔽範囲の視認性を低下させる表示調整は、主に遠虚像に適用される。
またプロジェクタは、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing,登録商標)プロジェクタであってもよい。さらに、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を用いたプロジェクタが採用されていてもよい。加えて、虚像Viを空中表示させる光学系の一つに、ホログラフィック光学素子が採用されていてもよい。
上記実施形態では、運転者から見て重畳対象に重畳コンテンツがずれなく重畳されるように、ドライバ監視装置にて検出されるアイポイントの位置情報を用いて、重畳コンテンツとして結像される虚像光の投影形状及び投影位置が逐次制御されていた。しかし、ドライバ監視装置の検出情報を用いることなく、予め設定された基準アイポイント中心の設定情報を用いて、重畳コンテンツとして結像される虚像光の投影形状及び投影位置が制御
されてもよい。
上記実施形態にて、表示生成装置又は表示制御装置の制御回路により提供された各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。さらに、こうした機能がハードウェアである電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
加えて、表示制御プログラム等に関連したデータ処理、並びに命令及びコードを実行するプロセッサ(処理部)の具体的な構成は、適宜変更可能である。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)に加えて、GPU(Graphics Processing Unit)を含む構成であってもよい。またプロセッサは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及びAIの学習及び推論に特化したアクセラレータ(例えばDSP(Digital Signal Processor)等)を含んでいてもよい。さらにプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA等に実装された構成であってもよい。
各プログラム等を格納する構成として、フラッシュメモリ及びハードディスク等の種々の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)が、各メモリ装置に採用可能である。こうした記憶媒体の形態も、適宜変更されてよい。例えば記憶媒体は、メモリカード等の形態であって、スロット部に挿入されて、制御回路に電気的に接続される構成であってよい。さらに記憶媒体は、上述のような車載装置又はサーバ等のメモリ装置に限定されず、当該メモリ装置へのプログラムのコピー基となる光学ディスク及び汎用コンピュータのハードディスクドライブ等であってもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。