JP2020001226A - 化粧シート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、印刷加工時の不具合、耐傷性曲げ加工、及び不燃性を両立した化粧シートを提供することを目的とする。【解決手段】化粧シート10は、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1を有する。基材層1はナノサイズの造核剤を含有し、その造核剤は、単層膜の外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態でポリプロピレン樹脂に添加される。基材層1は、マルテンス硬さが30N/mm2以上100N/mm2以下である。基材層1の厚さが20μm以上55μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、建築物の内外装、建具、家具、造作材、床材等の表面化粧等に使用される化粧シートに関する技術である。
近年、特許文献1に示す通り、環境保護上の問題が懸念されているポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シート(例えば、ポリプロピレンシート)が数多く提案されている。これらの化粧シートは、塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生は抑制される。しかし、一般的にポリプロピレンシートは、弾性率が低いために耐傷性に劣ることや、印刷などのシート作成時などにおいてシートに張力を掛けたときに伸び易いなどの課題があった。
ところで化粧シートを、木質基板、金属基板、不燃基板などの基板表面に貼り付けることで化粧板となり、化粧シートは化粧板に対し目的に応じた意匠性を付与する。従って、化粧シートは、必要に応じて基板の表面が完全に見えなくなるように覆い隠す必要がある。この場合、少なくとも顔料によって着色され、隠蔽性が付与された化粧シートを用いる必要がある。そして、最も単純な化粧シートの構成としては、着色されたシート単体(単層)からなる基材層だけの構成と言うことができる。このような基材層だけからなる化粧シートの場合、通常は、付与できる意匠が柄の無い単色に限定されてしまうが、例えば顔料としてアルミフレークやパール顔料等の光輝材を添加することで光輝感を付与することはできるため、必要十分な意匠表現は可能である。また、更なる高意匠を付与したい場合は、基材層の表面に印刷などの加飾を施すことも有効である。
一方、前述のように、着色ポリプロピレンフィルムは弾性率が低いため、単層の化粧シートとして用いる場合、耐傷性や、印刷などの加工時に張力を掛けても伸びないようにする必要がある。張力付与時の伸びについては、従来の着色ポリプロピレンフィルムにあっては層厚を60μm程度以上に厚くすることで改善が可能である。また、耐傷性については、従来の着色ポリプロピレンフィルムにあっては、特許文献2や特許文献3のように、ポリプロピレン樹脂からなる透明樹脂層や、ポリオールとイソシアネートからなるウレタン系熱硬化樹脂を用いたトップコート層を設けることで改善が可能である。
また、特許文献2や特許文献3のように、着色ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン樹脂を最適に選定することで、耐傷性や印刷加工時の伸びについて改善を図ることが可能である。しかし、結晶性を高めることによって弾性率が向上する一方、破断応力が弾性率相応に上昇しないため、フィルム自体が破け易くなってしまい、印刷加工時に破断などの不具合が発生し易くなってしまう。更に、化粧シートとしての後加工、特にVカットなどの曲げ加工時においては、曲げ箇所の割れや白化といった不具合が生じ易くなる。
特許第3271022号公報 特許第3861472号公報 特許第3772634号公報
従来にあっては、着色ポリプロピレンフィルムを単体で用いた化粧シートや、着色ポリプロピレンフィルムを基材層とした化粧シートに対し、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が求められている。
また、建築基準法第35条の2(建築基準法施行令第128条の3の2、同令128条の4、同令129条及び同令112条)に記載される特殊建築物等においては、天井面及び壁面において不燃(準不燃、難燃)材料を用いなければならない内装制限が適用される。このような不燃材料に化粧シートを用いる場合、不燃基材に化粧シートを貼り付けた不燃化粧板に対して燃焼試験を実施し、建築基準法施行令第108条の2第1号及び第2号に記載した不燃材料の技術的基準を満たす不燃材料への適合を判定することになるが、ポリ塩化ビニル樹脂に対しポリプロピレン樹脂は燃焼カロリーが高いため、化粧シートの厚さを薄くしなければ規格適合が困難である。上記着色ポリプロピレンフィルム単体の化粧シートであれば問題ないが、より高機能を付与できる透明樹脂層及びトップコート層を備えた化粧シートの場合、透明樹脂層及びトップコート層は主に耐傷性が低下してしまうために層厚を薄くすることが困難であるため、基材層となる着色ポリプロピレンフィルムの薄膜化が求められる。
すなわち、着色ポリプロピレンフィルムを単体で用いた化粧シートや、着色ポリプロピレンフィルムを基材層とした化粧シートに対し、不燃性が要請される場合があるが、この場合、不燃性と、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性とがトレードオフの関係にある。つまり、従来にあっては、不燃性の観点からは層厚を薄くする必要があるが、層厚を薄くすると、張力付与時に伸び易くなったり切れ易くなることや、耐傷性が確保出来ないといった不具合が発生した。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、耐傷性、印刷加工時の伸び抑制と曲げ白化や割れの両立、更に不燃材料への適合を両立した、着色ポリプロピレンフィルムを単体で用いた化粧シートや、着色ポリプロピレンフィルムを基材層とした化粧シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤を、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包させてベシクル化して造核剤ベシクルとしてポリプロピレン樹脂に添加し、更に、製造プロセスを種々検討及び実験を重ねて、マルテンス硬さを最適な範囲とすることで、上記課題を改善した化粧シートを提供できることを見出した。
課題を達成するべく、本発明の一態様に係る化粧シートは、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層を有し、上記基材層は無機顔料を含有するポリプロピレン樹脂に対し、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを添加して形成し、上記基材層のマルテンス硬さが30N/mm以上100N/mm以下であり、上記基材層の厚さが20μm以上55μm以下であることを要旨とする。
基材層の一方の面側に、透明樹脂層及びトップコート層の少なくとも1方の層が積層する場合には、化粧シートの総厚が140μm以下であることが好ましい。
ここで、造核剤ベシクルとは、単層膜の外膜を具備するカプセル状のベシクルに造核剤が内包された構成となっており、例えば超臨界逆相蒸発法によって調製することができる。また、造核剤とは結晶性ポリプロピレン樹脂中において結晶化の起点となる物質である。
本発明の一態様によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤をベシクル化して造核剤ベシクルとして添加し、マルテンス硬さ及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立、更には、不燃性と、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性の両立が可能な化粧シートを提供できる。
ここで、本発明の化粧シートが有する不燃性は、不燃基板に評価対象の化粧シートを貼り付けた不燃化粧板に対して燃焼試験を実施し、建築基準法施行令第108条の2第1号及び第2号に記載した不燃材料の技術的基準を満たすことが好ましい。具体的には、本発明の化粧シートが有する不燃性は、ISO5660−1に準拠したコーンカロリ燃焼試験に準拠し、化粧板の時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に、(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、かつ(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な外側から内側まで貫通する亀裂及び穴がないことを満たす不燃性を有することが好ましい。
本発明に係る実施形態の化粧シートを示す断面図である。 本発明に基づく実施形態に係る他の化粧シートを示す断面図である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
「構成」
図1に示す実施形態の化粧シート10は、基材層1(原反層)だけの単層構造の場合の例である。
本実施形態の基材層1は、着色ポリプロピレンフィルムから構成される。着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1は、ポリプロピレン樹脂に着色のために無機顔料が混合していると共に、ナノサイズの造核剤を含有する。本実施形態では、造核剤は、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態でポリプロピレン樹脂に添加される。
その基材層1は、マルテンス硬さが30N/mm以上100N/mm以下であり、基材層1の厚さが20μm以上55μm以下となっている。
基材層1を構成するポリプロピレン樹脂は、その50質量%以上100質量%以下が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることが好ましい。
必要に応じて、基材層1の一方の面に絵柄層2を形成(積層)して、意匠性を向上させても良い。
また、化粧シート10は、基材層1の一方の面側に、透明樹脂層3及びトップコート層4の少なくとも1方の層が積層していても良い、図2に例示した化粧シート10は、化粧シート10の一方の面に、絵柄層2、透明樹脂層3及びトップコート層4がこの順に積層した例である。透明樹脂層3又はトップコート層4の一方が省略されていても良い。また、絵柄層2を省略しても良い。
ただし、本実施形態の化粧シート10は、不燃性確保の観点からは、化粧シート10全体の総厚を140μm以下となるように設計することが好ましい。透明樹脂層3及びトップコート層4を設ける場合、例えば、基材層1:55μm、透明樹脂層3:70μm、トップコート層4:15μmとする。ここで、基材層1、絵柄層2、透明樹脂層3、及びトップコート層4のうち、絵柄層2は層厚が薄いため、絵柄層2の厚さを無視して化粧シート10全体の総厚を140μm以下となるように設計しても良い。
ここで、透明樹脂層3及びトップコート層4の少なくとも一方の層には、意匠性の要求によっては、エンボスによる凹凸形状を付与しても良い。更に、耐傷性などの要求から、透明樹脂層3及びトップコート層4の少なくとも一方の層を複数層積層することも可能であり、その他、公知の他の層を配置する構成としてもよい。
図1及び図2中、符号Bは、基板を表している。基板Bは、化粧シート10が貼り合わせられる基板である。基板Bとしては、特に限定は無いが、木質ボード類、無機系ボード類、金属板、複数の材料からなる複合板などが例示できる。本実施形態の化粧シート10は不燃性を有するので、基板Bも不燃材から構成されることが好ましい。
化粧シート10と基板Bとの間に、適宜、プライマー層や隠蔽層などを設けても良い。
本実施形態の化粧シート10の引張弾性率、特に基材層1単体の引張弾性率の範囲が、700MPa以上2000MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が700MPa未満の場合、印刷加工時の不具合を抑制することができないおそれがある。引張弾性率が2000MPaを超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤ベシクルを用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。引張弾性率の好適な範囲は1000MPa以上、1800MPa以下である。この範囲とすることで、印刷加工時の不具合、耐傷性、曲げ加工について、それぞれ優れた状態で両立することができる。
次に、化粧シート10を構成する各層について説明する。
<基材層1>
基材層1は、着色ポリプロピレンフィルムからなる。着色ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主原料とし、そのポリプロピレン樹脂に無機顔料が混合されて着色されている。
更に、基材層1に、結晶性を上げるためにナノサイズの造核剤が添加されている。本実施形態では、ナノサイズの造核剤が、造核剤ベシクルの状態で添加される。
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂は、後述する高結晶性ホモポリプロピレンを用いることが好ましいが、高結晶性ホモポリプロピレンに限定されない。曲げ加工などの加工性をより重視する用途においては、高結晶性ホモポリプロピレンに対し、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することができる。
着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1のマルテンス硬さを、30N/mm以上100N/mm以下に調整する。
マルテンス硬さが30N/mm未満の場合、印刷加工時の不具合を抑制できず、実用上必要な耐傷性を確保することも困難となる可能性が高い。一方、マルテンス硬さが100N/mm超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤ベシクルを用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
基材層1のマルテンス硬さの好適な範囲は50N/mm以上80N/mm以下である。この範囲とすることで、印刷加工時の不具合、耐傷性、曲げ加工について、それぞれ優れた状態で両立することができる。
ここで、マルテンス硬さとは、物質の硬さ(硬度)を示す指標の一種であり、圧子に荷重を掛けてサンプルの表面に押し込み、その際に形成された窪み(圧痕)の深さ(押込深さ)を測定して、当該荷重から算出される押込力と、当該押込深さから算出される窪みの表面積との商と定義されている。その測定は、ISO14577にて定められている方法で測定する。
また、着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1の厚さは、20μm以上55μm以下であることが重要である。
基材層1の厚さが20μm未満の場合、マルテンス硬さを最適な範囲にしてもフィルム強度が不足してしまうため、印刷加工時の不具合や耐傷性の悪化を抑制することが困難である。一方、基材層1の厚さが55μmを超える場合、透明樹脂層3及びトップコート層4を積層する構成において、不燃性を合格にすることが困難となってしまう。
基材層1の厚さのより好適な範囲は、30μm以上45μm以下である。この範囲であれば、印刷加工時の不具合、耐傷性、曲げ加工を十分な余裕を持って両立ができると共に、不燃性試験においても不燃基材に特に制限なく、不燃性を合格にすることができる。
本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂として、結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。特に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上のプロピレン単重合体である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を全ポリプロピレン樹脂の質量に対して50%以上100%以下の範囲で用いることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂の結晶化温度は、一般的に100〜130℃の範囲内とされており、造核剤を添加すると110〜140℃の範囲内とされる。本実施形態の化粧シート10における着色ポリプロピレンフィルムにおいては、この範囲内にある結晶化温度から硬化完了温度までの冷却時間を、公知の冷却プロセスによる制御で行うことによって、マルテンス硬さを30N/mm以上100N/mm以下に調整している。また、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%未満のポリプロピレン樹脂を用いた場合、結晶性が不足するため、冷却プロセスをコントロールしてもマルテンス硬さが好適な範囲より低くなってしまう。また、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が50%未満の場合も同様に、結晶性が不足するため、冷却プロセスをコントロールしてもマルテンス硬さが好適な範囲より低くなってしまう。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量13の炭素C(核種)を用いた13C−NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。そして、結晶性ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C−NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。ペンタッド分率は、主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほど結晶化度が高いことを表す。
(無機顔料)
無機顔料は、隠蔽性を付与するための酸化チタンに代表される公知の無機顔料を用いることができる。着色用の無機顔料としては、鉄−亜鉛、クロム−アンチモン、鉄−アルミなどの複合酸化物、酸化鉄などが挙げられるが、これらは所望の色によって自由に配合を調整されるものである。また、無機顔料として、アルミフレークやパール顔料といった光輝材も添加することができる。カーボンブラックのような有機顔料を併用しても構わない。
更に、分散性の向上や、押出適正を改善するために脂肪酸金属塩などの添加剤を加えても構わない。
(造核剤ベシクル)
また、基材層1はナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用される。基材層1は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、基材層1の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。なお、本実施形態において、基材層1を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まるので、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の着色ポリプロピレンフィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した着色ポリプロプレンフィルムを実現することができる。
ここで、造核剤を単純添加した場合は、ポリプロピレン樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなると共に添加した造核剤量に対して結晶核の数が、造核剤ベシクルとして添加した場合よりも大幅に少なくなってしまう。このため、ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が大きくなってしまい、曲げ加工時の割れや白化が抑制できない、よって、結晶化度を高めることによる弾性率向上と加工性が両立できない。
本実施形態の化粧シート10を構成する、着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下、好ましくは、0.1質量部以上0.3質量部以下の造核剤ベシクルが添加されていることが好ましい。造核剤ベシクルの添加量が0.05質量部未満の場合、結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。また、0.5質量部を超える添加量の場合、結晶核が過多のため球晶成長が逆に阻害され、結果的に結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製することができる。その中でも特に超臨界逆相蒸発法が好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本実施形態の化粧シート10においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、基材層1の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
上述のように、本実施形態の化粧シート10の特徴(発明特定事項)の一つは、「基材層1が、ベシクルに内包された造核剤を含有する」ことにある。そして、造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち基材層1中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏するが、その特徴を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっていて、作製した化粧シート10の状態においても、造核剤は基材層1に高分散されている。しかしながら、基材層1を構成する樹脂組成物に造核剤をベシクルの状態で添加して基材層1を作製した後の、化粧シート10の作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、造核剤が外膜で包含(***)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シート10の処理工程によってばらつくためである。そして、この造核剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本願発明は、従来に比して、基材層1に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート10の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
ここで、上記構成の造核剤ベシクルが、透明樹脂層3やトップコート層4にも含有させていても良い。
(絵柄層2)
着色ポリプロピレンフィルム1の表面には、化粧シート10に柄模様を付加するための絵柄層2を設けることができる。柄模様としては、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。
更に、基材層1と絵柄層2との間には、目的とする意匠の程度に応じて下地ベタインキ層(不図示)を設けるようにしてもよい。下地ベタインキ層は、基材層1の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地ベタインキ層は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。更に、絵柄層2は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、絵柄層2と下地ベタインキ層とは、求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な組み合わせとなるが、特に限定されるものではない。
下地ベタインキ層及び絵柄層2の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、油性の硝化綿樹脂、2液ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、もしくはこれらの混合物等を用いることができる。
また、下地ベタインキ層及び絵柄層2には、各種機能を付与するために、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
ここで、下地ベタインキ層及び絵柄層2は、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層は、基材層1の全面を被覆しているため、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成することができる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって別々に選択してもよいが、同じ方法を選択して一括加工することが効率的である。
(透明樹脂層3)
透明樹脂層3の主成分として用いる樹脂材料は、オレフィン系樹脂からなることが好適であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4、4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレン又はαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート10の表面強度の向上を図る場合には、基材層1と同様に高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
ここで、本明細書で主成分とは、特に特定が無い場合には、対象とする材料の90質量%以上を指す。
透明樹脂層3を設ける場合、透明樹脂層3の層厚は50μm以上100μm以下が好ましい。50μm未満の場合、透明樹脂層3表面の耐傷性の向上効果が低く、透明樹脂層3を設ける意義が少なくなってしまう。100μmを超える場合、単位面積当たりの有機物量が多くなってしまい、不燃規格の適合が困難となってしまうおそれがある。
もっとも、透明樹脂層3の上にトップコート層4を設ける場合には、透明樹脂層3の層厚は50μm未満としても良い。
なお、透明樹脂層3を構成する樹脂組成物には、必要に応じて熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種機能性添加剤を含有させてもよい。これらの各種機能性添加剤は、周知のものから適宜選択して用いることができる。
(トップコート層4)
更なる耐傷性の向上や艶の調整が必要な場合は、透明樹脂層3の表面にトップコート層4を設けることができる。
トップコート層4の主成分の樹脂材料としては、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
トップコート層4の主成分として用いる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートには、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などの硬化剤より適宜選定して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制及び密着性の向上を図ることができる。
トップコート層4には艶調整のために艶調整剤を添加することができる。艶調整剤は市販されている公知の物を用いれば良い。例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子を用いても良い。又は、アクリル等の有機材料からなる微粒子を用いることもできる。ただし、高い透明性が要求される場合には、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカやガラス等の微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶調整剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶調整剤を用いることで、艶調整剤の添加量を少なくすることができる。
また、トップコート層4に各種機能を付与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系を用いることができる。また、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系を用いることができる。
トップコート層4の層厚は3μm以上15μm以下が好ましい。3μm未満の場合、耐傷性の向上効果が低く、トップコート層4を設ける意義が少なくなってしまう。15μmを超える場合、曲げ加工時においてクラックや割れが生じてしまい、意匠上の問題や耐候性が悪化する問題が発生する。
<製造方法>
化粧シート10の製造例について説明する。
ベシクルに造核剤を内包させて当該造核剤をベシクル化してなる造核剤ベシクルを作製し、作製した造核剤ベシクルを、無機顔料と共にポリプロピレン樹脂に添加して基材層用の樹脂材料を作製する。
造核剤ベシクルは、例えば、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに上記造核剤を内包させてベシクル化することで作製する。
使用するポリプロピレン樹脂は、その50質量%以上100質量%以下に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
上記の基材層用の樹脂材料を加熱溶融し、押し出し成形などによって、厚さが20μm以上55μm以下のシート状に成形して基材層1とする。
このとき、結晶化温度から硬化完了温度までの冷却時間を公知の調整方法で調整することで、当該基材層1のマルテンス硬さを30N/mm以上100N/mm以下に制御する。
更に、必要に応じて、基材層1の上面に絵柄層2を印刷によって形成し、その上に透明樹脂層3及びトップコート層4の少なくとも1方の層を印刷によって形成する。
このとき、透明樹脂層3の厚さを50μm以上100μm以下の範囲とし、トップコート層4の厚さを3μm以上15μm以下の範囲とし、化粧シート10の総厚を140μm以下とすることが好ましい。
<作用その他>
(1)本実施形態の化粧シート10は、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1を有し、基材層1はナノサイズの造核剤を含有し、その造核剤は、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で添加され、基材層1は、マルテンス硬さが30N/mm以上100N/mm以下であり、基材層1の厚さが20μm以上55μm以下である。
この構成によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤をベシクル化して造核剤ベシクルとして添加し、更にマルテンス硬さ及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立、更には、不燃性と、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性の両立が可能な化粧シート10を提供することが出来る。
(2)本実施形態の化粧シート10は、基材層1を構成するポリプロピレン樹脂の50質量%以上100質量%以下が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂からなることが好ましい。
この構成によれば、より確実にマルテンス硬さを30N/mm以上、100N/mm以下に調整可能となる。
(3)本実施形態の化粧シート10は、基材層1への造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。
この構成によれば、基材層1を構成する着色ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上し、確実に必要な弾性率(硬度)を確保できるようになる。
(4)本実施形態の化粧シート10は、造核剤ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることが好ましい。
この構成によれば、基材層1の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
(5)本実施形態の化粧シート10は、基材層1の一方の面に絵柄層2を積層されていることが好ましい。
この構成によれば、化粧シート10の意匠性を向上させることが出来る。
(6)本実施形態の化粧シート10は、基材層1の一方の面側に、透明樹脂層3及びトップコート層4の少なくとも1方の層が積層し、化粧シート10の総厚が140μm以下であることが好ましい。
この構成によれば、化粧シート10が透明樹脂層3及びトップコート層4を有していても、化粧シート10に不燃性を付与可能となる。
以下に、本実施形態の化粧シート10の具体的な実施例について説明する。
(造核剤ベシクルの製造方法)
まず、本実施例において用いた造核剤リポソームの製造方法を説明する。
造核剤リポソームは、前述の超臨界逆相蒸発法を用いて、メタノール100質量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21;ADEKA社製)70質量部、ベシクルの外膜を構成するリン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とする。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100質量部を注入する。温度と圧力を超臨界状態に保ちながら更に15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことでリン脂質からなる単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤を内包する造核剤ベシクルを得た。
(実施例1)
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂78質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム−アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.05質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1を製膜した。
(実施例2)
上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの基材層1を製膜した。
(実施例3)
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂39質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂39部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム−アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.05質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1を製膜した。
(実施例4)
上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの基材層1を製膜した。
(実施例5)
実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層1を製膜した。
(実施例6)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層1を製膜した。
(実施例7)
実施例3と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層1を製膜した。
(実施例8)
実施例4と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層1を製膜した。
(実施例9)
実施例1と同様に作成した、厚さ20μmの基材層1に対し、一方の面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。続いて、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ70μmの透明樹脂層3を作成し、その両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
続いて、基材層1のコロナ処理を施した面に対して、2液硬化型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)にて絵柄印刷を行って絵柄層2を形成した。更に、絵柄層2の表面に対して、上記透明樹脂層3をドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学社製、塗布量2g/m)からなる接着剤層を介してドライラミネート法により貼り合わせた。次に、透明樹脂層3の表面に対してエンボス用の金型ロールを用いてエンボス模様を形成した後、当該エンボス模様を覆うように2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製、塗布量3g/m)を塗布してトップコート層4を形成し化粧シート10を得た。
(実施例10)
実施例2と同様に作成した、厚さ20μmの基材層1に対し、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(実施例11)
実施例3と同様に作成した、厚さ20μmの基材層1に対し、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(実施例12)
実施例4と同様に作成した、厚さ20μmの基材層1に対し、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(実施例13)
実施例5と同様に作成した、厚さ55μmの基材層1に対し、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(実施例14)
実施例6と同様に作成した、厚さ55μmの基材層1に対し、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(実施例15)
実施例7と同様に作成した、厚さ55μmの基材層1に対し、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(実施例16)
実施例8と同様に作成した、厚さ55μmの基材層1に対し、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(比較例1)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの基材層1を製膜した。
(比較例2)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの基材層1を製膜した。
(比較例3)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例3と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの基材層1を製膜した。
(比較例4)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例4と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの基材層1を製膜した。
(比較例5)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例5と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層1を製膜した。
(比較例6)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例6と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層1を製膜した。
(比較例7)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例7と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層1を製膜した。
(比較例8)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例8と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層1を製膜した。
(比較例9)
比較例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ60μmの基材層1を製膜した。その後、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(比較例10)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ60μmの基材層1を製膜した。その後、実施例9と同様に透明樹脂層3及びトップコート層4を形成し、化粧シート10を得た。
(比較例11)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ15μmの基材層1を製膜した。
(比較例12)
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂31.2質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂46.8部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム−アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1を製膜した。
(比較例13)
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂39質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂39部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム−アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として1.0質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ20μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層1を製膜した。
(評価)
以上の実施例1〜16、比較例1〜13について、マルテンス硬さの測定、引張弾性率の測定、印刷不具合、耐傷性、曲げ加工適正、及び不燃性の評価を行った。
<マルテンス硬さ>
ISO14577に準拠したマルテンス硬さ測定装置(フィッシャースコープHM2000;株式会社フィッシャー・インストルメンツ)を用いて測定を行った。サンプルは、測定時に基材層1以外の積層された樹脂層の影響を避けるために化粧シート10の断面から行った。具体的には、化粧シート10を冷間硬化タイプのエポキシ樹脂やUV硬化樹脂などの樹脂に包埋して十分に硬化させた後、化粧シート10の断面が現れるように切断して機械研磨を施すことにより測定面を得た。具体的な測定方法は、各サンプルの測定面における基材層1に対して圧子を押し込み、その押し込み深さと荷重からマルテンス硬さを算出する。測定条件は、試験力10mN、試験力負荷所要時間10秒、試験力保持時間5秒として測定を行った。算出した各サンプルのマルテンス硬さは表1に示す通りである。
<引張弾性率>
引張弾性率の測定は、(株)島津製作所製オートグラフ(AGS−500NX)を用い、引張速度を50mm/minとして引張試験を実施し、引張弾性率を算出した。
<印刷不具合>
絵柄層2をグラビア印刷機を用いてグラビア印刷により形成し、その際、基材層1が張力により伸びて、各色の積層時に見当がずれる不具合を印刷不具合として評価した。
全く見当調整不要な場合を「◎」、自動見当調整により簡便に調整可能な場合は「○」、見当調整に注意を要する場合は「△」、見当調整が不可能で印刷継続が不可能な場合を「×」とした。また、印刷中のフィルムが高い頻度で破断し、量産性に問題がある場合も「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば印刷加工としては問題ない。
<耐傷性>
耐傷性については、鉛筆硬度試験を実施して評価した。鉛筆硬度試験においては、3Bの鉛筆を用い、化粧シート10に対して鉛筆の角度を45±1°に固定して、当該鉛筆に750kgの荷重を付加した状態でスライドさせて化粧シート10の表面状態を観察した。(旧JIS規格 JISK5400に準拠)。試験は5回実施し、鉛筆の傷、跡について評価を行った。
全く傷や跡の見られない場合を「◎」、僅かに鉛筆の跡が見える場合を「○」、鉛筆の跡が見える場合を「△」、鉛筆の傷や着色ポリプロピレンフィルムの破れが見える場合を「×」とした。
なお、「○」以上の評価であれば、実用上の問題はない。また、「△」以上の評価であれば、例えば家具や人の触れない高い位置の垂直面などの用途に限定されるものの、問題は発生しない。「○」以上の評価であることが好ましい。
<曲げ加工適正>
曲げ加工適性試験においては、基材層1として中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法により得られた実施例1〜16及び比較例1〜13の各化粧シート10をウレタン系の接着剤を用いて貼り付け、基材層1の他方の面に対して、反対側の化粧シート10にキズが付かないようにV型の溝を基材層1と化粧シート10とを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シート10の面が山折りとなるように基材層1を当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート10の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、曲げ加工性の状態について評価を行った。
白化や亀裂などが全く見られない場合を「◎」、一部に僅かに白化が見える場合を「○」、一部に白化が見える場合を「△」、全面に白化が見えるか一部に亀裂が見える場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば、実用上問題ない。
<不燃性>
実施例1〜16及び比較例1〜13の各化粧シート10を用いて、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を実施した。不燃性は、建築基準法施行令第108条の2第1号及び第2号の規定を満足したか否かで判定した。
合格を「○」、不合格を「×」と表記した。
これらの評価結果を表1に示す。
Figure 2020001226
表1から分かるように、実施例1〜8の化粧シート10では、印刷加工時の不具合及び強度について実用に耐えうる状況を確保しつつ、曲げ加工についても両立ができていることがわかる。更に、実施例9〜16の化粧シート10は、実施例1〜9に絵柄層2、透明樹脂層3及びトップコート層4を積層し、高意匠と高耐傷性を両立しながら、曲げ加工について両立できていることが分かる。また、基材層1の膜厚が55μm以下となっていることで、不燃性についても合格となっている。
一方、比較例1〜8の化粧シート10では、ベシクル化されていない造核剤を用いたため、結晶化度の向上による強度向上が十分ではなく、特に膜厚が薄い場合と高結晶性ホモポリプロピレン樹脂の配合割合が低い場合に印刷加工時の不具合が発生している。また、印刷加工時の不具合がなかった場合でも、化粧シート10に求められる強度が不足していたり、曲げ加工時に不具合が生じているものがある。これらはベシクル化した造核剤と比較し、結晶化度を向上させる能力が低いことと、球晶サイズが比較して大きくなってしまったことが原因と考えられる。
また、比較例9〜13の化粧シート10では、造核剤としての添加量、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂の配合割合、基材層1の膜厚、マルテンス硬さのいずれかが本出願の範囲を超えたものであるが、その評価結果についていずれかが問題ある結果となっていることが分かる。
ここで比較例11では、自動見当調整は可能であったものの、印刷中のフィルムが高い頻度で破断してしまい、製品を作ることができなかった。これは、マルテンス硬さ及び引張弾性率は十分だったものの、厚さが小さすぎたため、印刷中の張力変動にフィルムが耐えられず、破断する頻度が高まってしまったものと考えられる。
以上から、実施例1〜16の化粧シート10は、印刷加工時の不具合、強度、曲げ加工、不燃性の全てを両立した化粧シート10であることが明らかとなった。
なお、本発明の化粧シート10は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
10 化粧シート
1 基材層
2 絵柄層
3 透明樹脂層
4 トップコート層
B 基板

Claims (11)

  1. 無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層を有し、上記基材層は無機顔料を含有するポリプロピレン樹脂に対し、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを添加して形成し、上記基材層のマルテンス硬さが30N/mm以上100N/mm以下であり、上記基材層の厚さが20μm以上55μm以下であることを特徴とする化粧シート。
  2. 上記ポリプロピレン樹脂の50質量%以上100質量%以下が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
  3. 上記造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。
  4. 上記造核剤ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した化粧シート。
  5. 上記基材層の一方の面に絵柄層を積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した化粧シート。
  6. 上記基材層の一方の面側に、透明樹脂層及びトップコート層の少なくとも1方の層が積層され、
    化粧シートの総厚が140μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した化粧シート。
  7. 上記造核剤ベシクルは、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに上記造核剤を内包させてベシクル化したものであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法であって、
    ベシクルに造核剤を内包させて当該造核剤をベシクル化してなる造核剤ベシクルを作製し、
    ポリプロピレン樹脂に無機顔料及び上記作製した造核剤ベシクルを添加した樹脂材料から、マルテンス硬さが30N/mm以上100N/mm以下であり、厚さが20μm以上55μm以下の上記基材層を作製することを特徴とする化粧シートの製造方法。
  9. 上記ポリプロピレン樹脂の50質量%以上100質量%以下に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を使用することを特徴とする請求項8に記載した化粧シートの製造方法。
  10. 上記基材層を製造する際に、結晶化温度から硬化完了温度までの冷却時間を調整することで、当該基材層のマルテンス硬さを30N/mm以上100N/mm以下に制御することを特徴とする請求項9に記載した化粧シートの製造方法。
  11. 上記基材層の一方の面側に、透明樹脂層及びトップコート層の少なくとも1方の層を積層し、
    上記透明樹脂層及びトップコート層を設ける場合、上記透明樹脂層の厚さを50μm以上100μm以下の範囲とし、上記トップコート層の厚さを3μm以上15μm以下の範囲とし、化粧シートの総厚を140μm以下とすることを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
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