JP2019521963A - Cd47を活性化する作用物質およびその炎症治療における使用 - Google Patents

Cd47を活性化する作用物質およびその炎症治療における使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、CD47を活性化する作用物質、および炎症(特に、加齢黄斑変性などの、慢性的なMP浸潤を特徴とする治療抵抗性低悪性度炎症)の治療におけるその使用に関する。本発明はまた、前記作用物質を含む医薬組成物、医薬およびキットにも関する。【選択図】なし

Description

本発明は、CD47を活性化する作用物質に関する。本発明は、加齢黄斑変性などの炎症性の障害および疾患の治療にも関する。
先進国では加齢黄斑変性(AMD)が法的盲の原因の第1位となっている。後期AMDには、脈絡膜血管新生(CNV)を特徴とする、進行が速い滲出型(「ウェット型」AMD)と、地図状萎縮として知られる網膜色素上皮(RPE)萎縮および光受容細胞変性を特徴とする、進行が遅い萎縮型(GAまたは後期「ドライ型」AMD)の2種類の臨床形態がある。AMDは「萎縮」型と「ウェット」型に分類されることが多いが、両型とも生得免疫の活性化の増大を背景として発症し、同じ遺伝子多型、例えば補体H因子(CFH)(Hainesら,Science.2005,308:419−421;Edwardsら,Science.2005,308:421−424)、高温要求性セリンプロテアーゼA1(HTAR1)および加齢黄斑症感受性2(ARMSD2)(Dewanら,Science.2006,314:989−992;Yangら,Science.2006,314:992−993)の遺伝子多型などと関連する。
単核食細胞(MP)には、ミクログリア細胞(MC)、単球(Mo)およびマクロファージ(Mφ)を含む細胞ファミリーが含まれる。生理学的には、MCは網膜内層のみに存在する。網膜色素上皮(RPE)と光受容細胞外節(POS)との間に位置する網膜下腔は、白血球抑制FasL(CD95L)を含む免疫抑制性のRPEシグナルを介する免疫特権域である。それでも、視力を脅かす2種類の進行型AMDでは網膜下腔にMPが蓄積する(Kleinら,Am J Ophthalmol.2004,137:486−495)。MPは、脈絡膜血管新生ではRPEと密に接触し、地図状萎縮ではRPE病巣の周辺に存在する(Guptaら,Exp Eye Res.2003,76:463−471;Sennlaubら,EMBO Mol Med.2013,5:1775−1793)。MPは、CNV(Tsutsumiら,J Leukoc Biol.2003,74:25−32)およびGAの光受容細胞変性(Cruz−Guillotyら,Int J Inflam.2013,2013:503725)の一因であると考えられている。最近、後期AMD発症の重要な危険因子である網膜下MPが軟性ドルーゼンの内部および周辺にも存在することが示されている(Sennlaubら,EMBO Mol Med.2013,5:1775−1793;Levyら,EMBO Mol Med.2015,7:211−226)。それでも、網膜下免疫抑制の変化とそれによるAMDへのMP蓄積の原因は未だ明らかにされていない。
ウェット型AMDの治療法として、抗新生血管剤の使用および光線力学療法(斑へのレーザー光照射)などが知られている。ウェット型AMDを治療するための抗新生血管剤としては、血管内皮増殖因子(VEGF)の作用を遮断し、それによりウェット型AMD患者の脈絡膜血管新生および視力喪失を引き起こす血管新生(網膜での新たな血管の形成)を遅らせる作用物質が挙げられる。このような「抗VEGF」剤でウェット型AMDの治療に承認されている、または臨床試験段階にあるものとしては、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(商標))およびアフリベルセプト(EYLEA(商標))が挙げられる。治療法の新たな提案が、例えば、CFHR1および/またはCFHR3ポリペプチドの投与を開示している国際公開第2008008986号に記載されている。国際特許出願の国際公開第2011137363号は、5−リポキシゲナーゼ(5−LO)活性を低下させて加齢黄斑変性を治療することに関するものである。また別の例として、対象にRdCVFLポリヌクレオチドまたはポリペプチドを投与してAMDを治療することに関する国際公開第2014060517号がある。
一方、ドライ型AMDまたは地図状萎縮を治療するための薬物は現在市販されていないが、高用量の抗酸化剤、ルテインおよびゼアキサンチンを含むビタミン補給剤が進行を遅らせることが示唆されている(Seddonら,Eye Disease Case−Control Study Group JAMA.1994,272:1413−1420)。グルココルチコイド、シクロオキシゲナーゼ阻害剤などの非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)およびシクロスポリンなどの免疫抑制剤などは、様々な様相の炎症を阻害することから「抗炎症」薬と呼ばれることが多い。しかし、それらは炎症全体を阻害するものではない。シクロスポリンは、主として活性化T細胞において、リンパ球の機能に影響を及ぼす、サイトカイン遺伝子のカルシニューリン誘発性の転写を阻害する(MatsudaおよびKoyasu,2000)が、同時にMφ上のToll様受容体をアップレギュレートする(シクロスポリン)(TedescoおよびHaragsim,Journal of Transplantation.2012,volume 2012,230386)。グルココルチコイドは炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝に影響を及ぼし、T細胞に直接作用することにより遅延型過敏反応を抑制することができることで恐らく最もよく知られている(Liuら,Allergy Asthma Clin Immunol.2013,9:30)が、その濃度によってはMφ機能に反対の作用を示す(Limら,Immunology.2007,122:47−53)。NSAIDは、プロスタグランジンの産生を阻害するが、MPを活性化し(Gagnonら,Agent Actions.1989,26:141−147)、MP浸潤を持続させ得る(Gilroyら,Nat Med.1999,5:698−701)ロイコトリエンの合成を増大させる(Robinson,Clin Exp Rheumatol.1989,7 Suppl 3:S155−161)シクロオキシゲナーゼ阻害剤である。MP媒介性の網膜下炎症を阻害する効率がこのように欠如していることは、全身NSAIDによる治療などの広く用いられている「抗炎症」治療法がAMD進行を遅らせなかった理由を説明するであろう。
以上のことを考え合わせると、AMDにおける網膜下でのMP蓄積およびMP活性化の機序を阻害するのに特に適合した「抗炎症」療法が必要とされることがわかる。
AMDは、生得免疫系および最も注目すべきこととしてMPの蓄積を主として伴う治療抵抗性および低悪性度の慢性炎症と関連がある(Combadiereら,J Clin Invest.2007,117:2920−2928;Levyら,EMBO Mol Med.2015,7:211−226)。細胞傷害性Tリンパ球、好中球およびMP(Caspi,International reviews of immunology.2002,21:197−208;Kerrら,Prog Retin Eye Res.2008,27:527−535)を特徴とする急速に進行する自己免疫病変とは対照的に、進行が遅いGAにおける浸潤白血球は、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患および癌を含む他の長期化する加齢関連疾患と同じく主としてMPである(Grivennikovら,Cell.2010,140:883−899;Hotamisligil,Cell.2010,140:900−917)。さらに一般的に言えば、炎症とは組織損傷および微生物侵入に対する生物の応答である。理想的には、炎症は迅速かつ効率的に病原体を除去し、再生または瘢痕化のいずれかにより組織損傷を修復する。炎症応答が迅速に制御されなければ、多くの慢性炎症性疾患にみられるように、炎症応答は病原性となり、疾患進行の一因となる。治療抵抗性および低悪性度の慢性炎症は、代謝疾患(肥満、アテローム性動脈硬化症)(Hotamisligil,Cell.2010,140:900−917)、神経変性疾患(Glassら,Cell.2010,140:918−934)および癌(Grivennikovら,Cell.2010,140:883−899)などの状況においてみられ、したがって、多くの慢性加齢関連疾患の発病に大きく寄与する。治療抵抗性炎症は、これらの疾患の主因ではないが、好中球および間質マクロファージが産生する殺菌メディエーター(活性酸素種、プロテアーゼおよび炎症性サイトカインなど)が宿主細胞にもかなりの二次的障害を引き起こし、それ自体がより多くの炎症を引き起こし得ることから、そのような発病に大きく寄与する。持続性の主要な問題のために、または炎症、二次的障害および新たな炎症からなるサイクルを抜け出すことができないために、慢性炎症がどの程度持続するのかは明らかでないことが多い。罹患組織では、多くの場合、単球(Mo)、ミクログリア細胞などの常在性マクロファージ(rMφ)および炎症時に発生する単球由来炎症性マクロファージ(iMφ)を含む細胞ファミリーである単核食細胞(MP)の存在に関連するが、リンパ球浸潤または適応免疫応答にはほとんど関連しない(NathanおよびDing,Cell.2010,140:871−882)。
したがって、上記の要素の観点からみると、治療抵抗性低悪性度炎症、より具体的には単核食細胞の蓄積に関連する炎症、さらに具体的にはAMDの予防および/または治療のための有効成分を特定することが依然として必要とされている。
本発明者らは驚くべきことに、TSP1がその受容体CD47を介して単核食細胞除去を媒介することを明らかにしたため、この目的は本発明によって達成される。
CD47は、免疫および血管新生応答に重要な役割を果たしていることが知られている。特にTSP−1とCD47との結合は、細胞の遊走および接着、細胞増殖またはアポトーシスを含む複数の基本的な細胞機能に影響を及ぼし、血管新生およびリンパ球除去の調節において役割を果たしている(Chaoら,Curr.Opin.Immunol.2012,24(2):225−32)。CD47は、骨髄性細胞上に存在する抑制性膜貫通受容体であるシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)とも相互作用する。CD47/SIRPα相互作用により二方向のシグナル伝達が起こり、食作用の阻害、細胞間融合の刺激およびT細胞活性化を含む異なる細胞間の応答を生じる(Barclay,Curr.Opin.Immunol.2009,21(1):47−52)。
国際特許出願の国際公開第99/40940号には、炎症性疾患の予防または治療のための抗CD47抗体の使用が開示されている。これと同様に、国際公開第2010/70047号には、自己免疫障害および炎症障害の治療に薬物として使用するためのCD47結合ポリペプチドが記載されている。また、国際公開第2011/143624号には、食作用を調節するための抗CD47抗体の使用が開示されている。しかし、これらの特許出願による炎症疾患の治療は必然的にCD47の阻害を伴う。
驚くべきことに、本出願者は、CD47の活性化は、単核食細胞除去にとって極めて重要であり、CD47活性化はそのリガンドであるTSP1を介することを証明した。さらに本発明者らは、HTRA1がTSP1を分解し、それによりそのCD47活性化および単核食細胞除去を阻害することを示した。さらに、本発明者らは驚くべきことに、CD47アゴニストとFasアゴニストとの併用療法により、HTRA1誘導性の単核食細胞蓄積を回復させ、それにより炎症を治療することを確立した。
したがって、本発明は、CD47を活性化する作用物質、ならびに治療抵抗性のMP蓄積および炎症(例えば加齢黄斑変性など)の治療におけるその使用に関する。
本発明は、炎症の治療に使用するための作用物質であってCD47を活性化する作用物質に関する。
一実施形態では、本発明の炎症の治療に使用するための作用物質は、CD47を直接活性化する。一実施形態では、前記作用物質はCD47アゴニスト、好ましくはTSP1ペプチド模倣物である。別の実施形態では、前記作用物質は、4N1K、PKHB1およびPKT16を含む群から選択される活性化ペプチドである。
別の実施形態では、本発明の炎症の治療に使用するための作用物質は、CD47を間接的に活性化する。一実施形態では、前記作用物質は、TSP1活性化因子、HTRA1阻害剤およびFas活性化因子を含む群から選択される。
一実施形態では、本発明による炎症は急性炎症または慢性炎症である。一実施形態では、作用物質は、治療抵抗性慢性炎症、好ましくは治療抵抗性低悪性度炎症の治療に使用するためのものである。一実施形態では、前記炎症は単核食細胞の蓄積に関連する炎症である。一実施形態では、前記炎症は、加齢黄斑変性;網膜色素変性;パーキンソン病、多発性硬化症またはアルツハイマー病などの神経変性疾患;および肥満またはアテローム性動脈硬化症などの代謝障害を含む群から選択される。特定の実施形態では、前記炎症は加齢黄斑変性である。
本発明はさらに、上記の作用物質を少なくとも1種含む組成物に関する。一実施形態では、本発明による組成物は、CD47アゴニストとFas活性化因子とを含む。
本発明の別の目的は、炎症(好ましくは加齢黄斑変性)の治療に使用するための、CD47を活性化する少なくとも1種の作用物質と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物である。
本発明のさらなる目的は、炎症(好ましくは加齢黄斑変性)の治療に使用するための、CD47を活性化する少なくとも1種の作用物質を含む医薬である。
一実施形態では、上記の作用物質、医薬組成物または医薬は、好ましくは硝子体内注射により眼内に投与されるか、または局所眼内投与により適用される。
本発明は、上記の作用物質、医薬組成物または医薬を少なくとも1種含むキットにも関する。
定義
本発明では、下記の用語は以下のような意味を有する:
「アミノ酸」という用語は、20種類の天然のアミノ酸;多くの場合、翻訳後にin vivoで修飾された上記のアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニン;ならびに、特に限定されないが2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むその他の通常とは異なるアミノ酸を包含するものと理解される。さらに、一実施形態では、「アミノ酸」という用語はD−アミノ酸およびL−アミノ酸(立体異性体)をともに包含する。
「アミノ酸置換」という用語は、ポリペプチド内で1つのアミノ酸が別のアミノ酸に置き換わることを指す。一実施形態では、アミノ酸は、例えば保存的アミノ酸置換のように、構造および/または化学的特性の類似した別のアミノ酸と置き換わっている。「保存的アミノ酸置換」は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似性に基づいて行われ得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられ;極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられ;正荷電(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられ;負荷電(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。非保存的置換は、上記のクラスのうち1つのクラスのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。例えば、アミノ酸置換により、1つのアミノ酸が構造および/または化学的特性の異なる別のアミノ酸の置き換わる、例えば、1つのグループ(例えば、極性)のアミノ酸が異なるグループ(例えば、塩基性)の別のアミノ酸に置き換わることもある。アミノ酸置換は、当該技術分野で周知の遺伝学的方法または化学的方法を用いて生成することができる。遺伝学的方法には、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成などが含まれ得る。遺伝子工学以外の方法、例えば化学修飾などによりアミノ酸の側鎖基を変化させる方法も有用であり得ることが考えられる。
「同一性」という用語は、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の同一性の尺度を指す。一般に、最も高次のマッチが得られるよう配列を整列させる。「同一性」自体は当該技術分野で認められている意味を有し、公開されている技術を用いて算出することができる。例えば、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics And Genome Projects,Smith,D.W.編,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis Of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis In Molecular Biology,von Heijne,G.,Academic Press,1987;ならびにSequence Analysis Primer,Gribskov,M.およびDevereux,J.編,M Stockton Press,New York,1991を参照されたい。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の間の同一性を測定する方法がいくつか存在するが、「同一性」という用語は当業者に周知である(CarilloおよびLipton,SIAM J Applied Math,1998,48:1073)。2つの配列間の同一性または類似性を求めるのによく用いられる方法としては、特に限定されないが、Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop編,Academic Press,San Diego,1994;ならびにCarilloおよびLipton,SIAM J Applied Math,1998,48:1073に開示されているものが挙げられる。同一性および類似性を求める方法がコンピュータプログラムの形で体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を求めるための好ましいコンピュータプログラムによる方法としては、特に限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereuxら,J Molec Biol,1990,215:403)が挙げられる。最も好ましくは、同一性レベルを求めるのに用いたプログラムは、以下の実施例に用いたGAPプログラムであった。
例として、基準ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%の「同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、そのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、ポリヌクレオチド配列が基準ヌクレオチド配列のヌクレオチド100個当たり平均5つまでの点変異を含み得る点を除き、基準配列と同一であると意図される。換言すれば、基準ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、基準配列のヌクレオチドのうち最大5%が欠失しているか、もしくは別のヌクレオチドで置換されていてもよく、または、基準配列内にいくつかのヌクレオチドが基準配列のヌクレオチド全体の最大5%まで挿入されていてもよい。基準配列のこのような変異は、基準ヌクレオチド配列の5’末端もしくは3’末端の位置に、またはこれらの末端位置の間の任意の場所に、基準配列のヌクレオチドの中に個別に散在して、または基準配列内で1つもしくは複数の連続するグループの形で存在し得る。
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合により互いに結合した50個未満のアミノ酸からなるアミノ酸の直鎖状ポリマーを指す。本発明のペプチドは、特定の長さの産物に限定されない。この用語は、天然に存在するものおよび天然に存在しないものの両方の、ペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ならびに当該技術分野で公知のその他の修飾を指すものでない、またこれを除外する。
「スペーサーペプチド」とも呼ばれる「ペプチドリンカー」という用語は、2つのペプチドまたはポリペプチドを互いに結合させるのに使用されるペプチドを指す。一実施形態では、本発明のペプチドリンカーは3〜50アミノ酸を含む。ペプチドリンカーは、当該技術分野で公知であるか、本明細書に記載されるものである。本発明の一実施形態では、ペプチドリンカーは「L」とも呼ばれる。
「ポリヌクレオチド」という用語は任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これらは未修飾のRNAもしくはDNAまたは修飾されたRNAもしくはDNAであり得る。「ポリヌクレオチド」としては、特に限定されないが、一本鎖DNAおよび二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖RNAおよび二本鎖RNAならびに一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であり得るか、または一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。さらに、「ポリヌクレオチド」は、RNAもしくはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語は、1つまたは複数の修飾塩基を含むDNAまたはRNAおよび安定性またはその他の理由で主鎖が修飾されたDNAまたはRNAも包含する。「修飾」塩基としては、例えば、トリチル化塩基およびまれな塩基、例えばイノシンなどが挙げられる。DNAおよびRNAには様々な修飾が施されており、このため、「ポリヌクレオチド」は、天然において典型的にみられる化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態のポリヌクレオチドならびにウイルスおよび細胞に特有の化学形態のDNAおよびRNAを包含する。「ポリヌクレオチド」は、比較的短く、多くの場合オリゴヌクレオチドと呼ばれるポリヌクレオチドも包含する。
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合、すなわちペプチドイソスターによって互いに結合した2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を指す。「ポリペプチド」は、通常ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短い鎖およびこれより長く、一般にタンパク質と呼ばれる鎖の両方を指す。ポリペプチドは、遺伝子がコードする20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。
「タンパク質」という用語は、100個以上のアミノ酸の配列および/または多量体の実体を指す。本発明のタンパク質は特定の長さの産物に限定されない。「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、天然に存在するものおよび天然に存在しないものの両方の、タンパク質の発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ならびに当該技術分野で公知のその他の修飾を指すものではない、またはこれを除外する。このような修飾については、基本的なテキストおよびさらに詳細な研究論文ならびに膨大な研究文献に十分に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含むポリペプチドまたはタンパク質の任意の場所に存在し得る。所与のポリペプチドまたはタンパク質の複数の部位に同じタイプの修飾が同じまたは異なる程度に存在し得ることが理解されよう。また、所与のポリペプチドまたはタンパク質は多数のタイプの修飾を含み得る。ポリペプチドまたはタンパク質は、ユビキチン化の結果として分岐していてよく、また、分岐の有無を問わず環状であってよい。環状、分岐状および分岐環状のポリペプチドまたはタンパク質は、転写後の自然な過程により生じるもの、または合成法により施されるものであり得る。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、転移RNAを介するタンパク質へのアミノ酸の付加、例えばアルギニン化などおよびユビキチン化が挙げられる。例えば、「Proteins−structure and molecular properties」,第2版,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Comany,New York,1993;Wolt,F.,「Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects」,Posttranslational covalent modification of proteins,B.C.Johnson編,Academic Press,New York,1983,pgs.1−12;Seifterら,「Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors」,Meth Enzymol,1990,182:626−646;Rattanら,「Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging」,Ann NY Acad Sci,1992,663:48−62を参照されたい。タンパク質はタンパク質全体またはその部分配列であり得る。「単離タンパク質」とは、その天然環境の成分から同定および分離され、かつおよび/または回収されたタンパク質のことである。
好ましい実施形態では、単離タンパク質を:
(1)ローリー法により求める場合、タンパク質の80重量%、85重量%、90重量%、95重量%超、最も好ましくは96重量%、97重量%、98重量%もしくは99重量%超まで、
(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によりN末端または内部のアミノ酸配列のうち少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または
(3)還元もしくは非還元条件下、クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いて、SDS−PAGEにより均質になるまで
精製する。
単離タンパク質は、タンパク質の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないことから、組換え細胞内のin situのタンパク質を包含する。しかし、通常、単離タンパク質は、少なくとも1つの精製段階によって調製される。
「機能保存フラグメント」という用語は、特に限定されないが、アミノ酸の、特性(例えば、極性、水素結合能、酸性、塩基性疎水性,芳香族など)の類似したアミノ酸への置換を含む、ペプチドの全体的なコンホメーションおよび機能を変化させずに所与のアミノ酸残基が変化している、本発明のペプチドに由来するペプチドを指す。あるタンパク質において、保存されていると記載されるアミノ酸以外のアミノ酸は異なるものであり得るため、機能が類似した任意の2つのタンパク質の間のタンパク質またはアミノ酸配列の類似性のパーセントは様々なものであり得、例えば、類似性がMEG ALIGNアルゴリズムに基づくCluster法などによるアライメント法により求めた場合、70%〜99%であり得る。「機能保存バリアント」もBLASTまたはFASTAアルゴリズムにより求めた場合、少なくとも20%、好ましくは40%、より好ましくは60%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性を有し、比較される天然または親タンパク質と同じまたは実質的に同じ特性または機能を有するポリペプチドを包含する。
「誘導体」という用語は、ポリペプチドのin vitroまたはin vivoでのコンホメーション、活性、特異性、効果または安定性を修飾するため、別の方法で、すなわち、任意のタイプの分子をポリペプチドに共有結合させることにより、配列のいずれかのアミノ酸への化合物の付加により修飾された本発明のポリペプチドまたはその機能保存バリアントの変形物を指す。
「アゴニスト」という用語は、タンパク質と結合し、そのタンパク質の生物学的活性化を刺激し、それにより前記タンパク質の作用を刺激する、天然または合成の化合物を指す。その結果、「CD47アゴニスト」は、対象に投与したとき、そうでなければCD47とその天然のリガンドとの結合により生じる下流のいずれかの生物学的作用を含む患者のCD47に関連する生物活性の刺激をもたらす、任意の化学実体を含む。このようなCD47アゴニストとしては、CD47発現またはCD47の下流のいずれかの生物学的作用を刺激し得る任意の作用物質が挙げられる。
「免疫グロブリン」という用語は、何らかの重要な特異的免疫反応性を有するかどうかを問わず、2つの重鎖と2つの軽鎖の組合せを有するポリペプチドを包含する。「抗体」という用語は、目的とする抗原(例えば、CD47、TSP1、HTRA1またはFas)に対する有意な既知の特異的免疫反応活性を有する、2つの重鎖と2つの軽鎖の組合せを指す。抗体および免疫グロブリンは、間に鎖間共有結合を有するかどうかを問わず、軽鎖と重鎖とを含む。脊椎動物系の基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている。「免疫グロブリン」という総称は、生化学的に識別することが可能な5種類の異なるクラスの抗体を含む。5種類のクラスの抗体はいずれも本発明の範囲内に含まれ、以下の記述は一般に、IgGクラスの免疫グロブリン分子に関するものである。IgGに関して、免疫グロブリンは、分子量が約23,000ダルトンの同一の軽鎖ポリペプチド2つと、分子量が53,000〜70,000ダルトンの同一の重鎖2つとを含む。この4つの鎖はジスルフィド結合により「Y字」立体配置で結合しており、軽鎖が「Y字」の口の部分を始点として可変領域全体を通して続く重鎖を挟んでいる。抗体の軽鎖はカッパまたはラムダ([κ]、[λ])に分類される。重鎖の各クラスはカッパまたはラムダ軽鎖と結合し得る。一般に、軽鎖と重鎖は互いに共有結合しており、2つの重鎖の「尾部」領域は、共有ジスルフィド結合により、または免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞もしくは遺伝子操作した宿主細胞により作製されたものである場合は非共有結合により、互いに結合している。重鎖では、アミノ酸配列は、Y字立体配置の分岐末端のN末端から各鎖の底部のC末端まで続いている。当業者には、重鎖がいくつかのサブクラス(例えば、γ1〜γ4)を有するガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)に分類されることが理解されよう。抗体の「クラス」をIgG、IgM、IgA、IgGまたはIgEに決めるのは、それぞれこの鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは十分に特徴付けられており、機能的特化を付与することが知られている。これらの各クラスおよびアイソタイプの修飾型は、本開示を踏まえれば当業者に容易に認識されるものであり、したがって、本発明の範囲内に含まれる。上記の通り、抗体の可変領域によって、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識し、これと特異的に結合することが可能となる。つまり、抗体のVLドメインとVHドメインが一緒になって可変領域を形成し、この可変領域により三次元の抗原結合部位が定められる。この抗体四次構造は、Y字の各腕の末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VH鎖およびVL鎖それぞれの3つの相補性決定領域(CDR)によって定められる。
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、わずかに存在し得る天然の変異を除いて同一である集団から得られた抗体を指す。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原性部位に対するものである。さらに、様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体はそれぞれ抗原上の1つの決定基に対するものである。モノクローナル抗体はその特異性に加えて、他の抗体が混入せずに合成され得る点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、任意の特定の方法による抗体の作製を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に有用なモノクローナル抗体は、Kohlerら,Nature,256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により調製してもよく、または細菌、真核動物もしくは植物の細胞に組換えDNA法を用いて作製してもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。また、「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonら,Nature,352:624−628(1991)およびMarksら,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
「ポリクローナル抗体」という用語は、特異的抗原に対して反応し、それぞれが異なるエピトープを識別する免疫グロブリン分子の集合体を指す。したがって、モノクローナル抗体とは対照的に、ポリクローナル抗体は単一の細胞株に由来するものではない。
「抗体フラグメント」という用語は、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖より少ないアミノ酸残基を含む、抗体の部分または領域を指す。「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原と結合するか、または抗原結合(すなわち、CD47との特異的結合)に関してインタクト抗体(すなわち、それが由来するインタクト抗体)と競合する、免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチドフラグメントを指す。本明細書で使用される抗体分子の「抗体フラグメント」という用語は、抗体の抗原結合フラグメント、例えば、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、一本鎖抗体重鎖可変ドメイン(VH)、一本鎖抗体(scFv)、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、単一ドメイン抗体フラグメント(Dab)、一腕(一価)抗体、ダイアボディ、トライアボディ、CDR1、CDR2、CDR3、CDRの組合せ、可変領域、テトラボディ、二機能性ハイブリッド抗体、フレームワーク領域、定常領域、またはそのような抗原結合フラグメントの組合せ、アセンブリもしくはコンジュゲーションにより形成される任意の抗原結合分子を包含する。フラグメントは、例えば、インタクトもしくは完全な抗体もしくは抗体鎖の化学処理もしくは酵素処理、または組換え手段により得ることができる。
指定のタンパク質(例えば、TSP1抗体またはその抗原結合フラグメント)の前に記載される「〜に由来する」という用語は、ポリペプチドの起源を指す。一実施形態では、特定の出発ポリペプチドに由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、CDR配列またはそれに関連する配列である。一実施形態では、特定の出発ポリペプチドに由来するアミノ酸配列は連続していない。例えば、一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRが1つの出発抗体に由来する。一実施形態では、特定の出発ポリペプチドまたはアミノ酸配列に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、その出発配列の配列と実質的に同一のアミノ酸配列、あるいはその少なくとも3〜5個のアミノ酸、5〜10個のアミノ酸、少なくとも10〜20個のアミノ酸、少なくとも20〜30個のアミノ酸もしくは少なくとも30〜50個のアミノ酸からなる領域、またはその起源が出発配列にあることが当業者に特定可能である領域を有する。
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間のVドメイン対が生じ、それにより二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントが得られるようVHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5〜10残基)を用いてsFvフラグメント(sFvのパラグラフを参照されたい)を構築することにより調製される小さい抗体フラグメントを指す。二重特異性のダイアボディは、2つの抗体のVHドメインおよびVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在する2つの「交差する」sFvフラグメントからなるヘテロ二量体である。ダイアボディについては、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開93/11161号;およびHolligerら,Proc.Natl.Acad.Sci.,90:6444−6448(1993)により詳しく記載されている。
用語「ペプチボディ」:ペプチボディは、Fcドメイン上に移植した生物学的に活性なペプチドからなる。この方法では、抗体の特定の望ましい特徴、特に、2つのFcの二量体化がもたらすアビディティによる見かけの親和性の増大が保持される。
「エピトープ」という用語は、作用物質(例えば、抗体もしくは小分子)が結合する、ペプチドもしくはタンパク質(複数可)に存在する特定のアミノ酸配置を指す。エピトープは多くの場合、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面集団からなり、特定の三次元構造的特徴ならびに特定の電荷的特徴を有する。エピトープは、直鎖状であるか、または立体構造的であり得る、すなわち、必ずしも隣接しているわけではない抗原の様々な領域のアミノ酸の配列を2つ以上含むものであり得る。
「Fv」という用語は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体フラグメントのことである。このフラグメントは、緊密に非共有結合した1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。この2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変(H鎖およびL鎖それぞれに由来する3つのループ)が生じる。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なCDRを3つのみ含む半分のFv)であっても、結合部位全体より親和性は低いものの、抗原を認識しこれと結合する能力を有する。
用語「免疫特異的」、「〜に特異的な」または「と特異的に結合する」:本明細書で使用される抗体が検出可能なレベルで、好ましくは約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、10−1以上、10−1以上または1010−1以上の親和性定数Kaで抗原と反応する場合、それは「免疫特異的」、「〜に特異的な」または「と特異的に結合する」と言う。抗体のその同起源の抗原に対する親和性は解離定数Kdで表されることも多く、ある特定の実施形態では、ある抗体が10−4M以下、約10−5M以下、約10−6M以下、10−7M以下、10−8M以下、5.10−9M以下、10−9M以下、5.10−10M以下または10−10M以下のKdで結合する場合、それは抗原と特異的に結合する。抗体の親和性は、従来の技術、例えばScatchard Gら、(Ann NY Acad Sci.1949、51:660−672)に記載されている技術を用いて容易に求めることができる。抗体の抗原、細胞または組織に対する結合特性は一般に、例えば免疫組織化学(IHC)および/または蛍光活性化細胞選別(FACS)などの免疫蛍光に基づくアッセイを含む免疫検出法を用いて決定および評価され得る。
「哺乳動物」という用語は、ヒト、家畜、農業動物および動物園、競技用またはペットの動物を含む任意の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
ポリペプチドに関する「合成の」という用語は、天然に存在しないアミノ酸配列を含むポリペプチドを包含する。例えば、非天然のポリペプチドは、修飾形態の天然のポリペプチド(例えば、付加、置換または欠失などの変異を含むもの)またはアミノ酸の直鎖状配列内で、天然では本来結合していない第二のアミノ酸配列(天然に存在するものであるかどうかは問わない)と結合した第一のアミノ酸配列(天然に存在するものであるかどうかは問わない)を含むポリペプチドである。
「小分子」という用語は、脂質、単糖、セカンドメッセンジャー、その他の天然物および代謝産物を含む低分子量分子を意味する。小分子はタンパク質などの高分子とは異なるものである。
「結合部位」という用語は、目的の標的抗原(例えば、CD47、TSP1、HTRA1またはFas)との選択的結合に関与するポリペプチドの領域を含む。結合ドメインまたは結合領域は少なくとも1つの結合部位を含む。例示的な結合ドメインとしては、抗体可変ドメインが挙げられる。本発明の抗体分子は、単一の抗原結合部位または複数(例えば、2つ、3つまたは4つ)の抗原結合部位を含み得る。
「siRNA」または「低分子干渉RNA」という用語は、約15〜約50塩基対、例えば約21〜約25塩基対を含み、細胞内で発現する標的遺伝子またはRNAと同一またはほぼ同一のヌクレオチド配列を有する、二本鎖構造を指す。siRNAは、標準的なワトソン・クリック型塩基対形成相互作用により互いにアニールしたセンスRNA鎖と相補的アンチセンスRNA鎖とを含む。センス鎖は、標的miRNA分子内に含まれる核酸配列と実質的に同一である核酸配列を含む。標的mRNA内に含まれる標的配列と「実質的に同一である」は、標的配列と約3%以下異なる核酸配列を指す。siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、相補的な2つの一本鎖RNA分子を含み得るか、2つの相補的な部分が塩基対を形成し一本鎖「ヘアピン」領域により共有結合した単一の分子を含み得る。siRNAは、当業者に周知の方法により、化学的もしくは生物学的に作製することができ、または組換えプラスミドもしくはウイルスベクターから発現させることができる。
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」(または「ASO」)という用語は、標的遺伝子のmRNAに相補的な配列を有する低分子のデオキシオリゴヌクレオチドを指す。このようなオリゴヌクレオチドは、相補的塩基対形成により標的mRNAと結合し、二本鎖RNAを分解する酵素であるRNアーゼHの結合を誘引し、それにより標的mRNAを破壊する。
「治療」または「治療すること」という用語は、治療的処置と予防手段または防止手段の両方を指し;目的は炎症を予防する、または速度を低下させる(軽減する)ことである。治療を必要とする者は、既に炎症を有する者および炎症を起こしやすい者または炎症を予防するべき者を含む。対象または哺乳動物は、本発明による作用物質の治療量を投与した後、患者に以下に挙げる1つまたは複数のものの観察可能かつ/または測定可能な減少または非存在、すなわち、炎症に関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和、有病率および死亡率の低下、ならびに生活の質の改善がみられる場合、炎症の「治療」が成功を収めたことになる。治療の成功および疾患の改善を評価する上記のパラメータは、医師がよく知る日常的方法により容易に測定されるものである。
「対象」という用語は哺乳動物、好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。一実施形態では、対象は「患者」、すなわち、医療を受けるのを待っている、または受けている、または医療処置の対象であった/対象である/対象となる予定である、または炎症の進展に関してモニターされている、温血動物、より好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、対象は成人(例えば、18歳を超える対象)である。別の実施形態では、対象は小児(例えば、18歳未満の対象)である。一実施形態では、本発明の化合物を、それを必要とするヒト患者に投与する。
「治療有効量」という用語は、標的に重大な負の副作用または有害な副作用を引き起こさずに、(1)炎症の発症を遅らせる、もしくは予防する;(2)炎症の1つもしくは複数の症状の進行、増悪もしくは悪化を遅らせる、もしくはそれを停止させる;(3)炎症の症状の改善をもたらす;(4)炎症の重症度もしくは発症頻度を低下させる;または(5)炎症を治癒させること、を目的とする作用物質のレベルまたは量を意味する。予防処置または防止処置には、炎症の発症前に治療有効量を投与し得る。あるいはまたはさらに、治療処置または治療処置の維持のために、炎症の開始後に治療有効量を投与してもよい。
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、動物、好ましくはヒトに投与したときに有害反応、アレルギー反応またはその他の不都合な反応を引き起こさない賦形剤を指す。同用語は、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体または添加剤は、無毒性の固体、半固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、封入材料または任意のタイプの製剤助剤を指す。ヒトへの投与には、調製物がFDA Office of biologics standardsにより要求される無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきである。
数値の前の「約」という用語は、前記数値より10%大きいまたは小さいことを意味する。
(詳細な説明)
本発明は、互いに連結された少なくとも2つのペプチド単量体を含む多量体ペプチドまたはポリペプチドであって前記少なくとも2つのペプチド単量体がCD47を活性化する多量体ペプチドまたはポリペプチドに関する。
一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、4N1Kペプチド(配列KRFYVVMWKK、配列番号1)、PKHB1ペプチド(配列(D)K−R−F−Y−V−V−M−W−K−(D)K、式I)および/もしくはPKT16ペプチド(配列(D)K−(NMeR)−F−Y−V−V−Nle−W−K−(D)K、式II)、またはその機能保存フラグメントのアミノ酸を含む。
Figure 2019521963
一実施形態では、多量体ペプチドまたはポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列およびその機能保存フラグメントから選択される少なくとも5個の連続するアミノ酸を含む。別の実施形態では、実施形態の作用物質、本発明の活性化ポリペプチドまたはタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列および機能保存フラグメントから選択される少なくとも6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸を含む。
一実施形態では、少なくとも2つのペプチド単量体は、同一のものまたは異なるものである。例として、一実施形態では、多量体ペプチドまたはポリペプチドは、2つの4N1Kペプチドを含み得る。さらなる例として、別の実施形態では、多量体ペプチドまたはポリペプチドは、1つの4N1KペプチドとPKT16ペプチドとを含み得る。
一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも2つの4N1Kペプチドまたはその機能保存フラグメントを含む。一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも2つのPKHB1ペプチドまたはその機能保存フラグメントを含む。一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも2つのPKT16ペプチドまたはその機能保存フラグメントを含む。
一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも1つの4N1Kペプチドと少なくとも1つのPKHB1ペプチドまたはその機能保存フラグメントを含む。一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも1つの4N1Kペプチドと少なくとも1つのPKT16ペプチドまたはその機能保存フラグメントを含む。一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも1つのPKHB1ペプチドと少なくとも1つのPKT16ペプチドまたはその機能保存フラグメントを含む。
一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、任意の数の反復単位を含む。一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、2〜10個、2〜20個または2〜30個の反復サブユニットを含む。一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の反復サブユニットを含む。したがって、一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、十一量体または十二量体であり得る。
特定の実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の4N1Kペプチドを含む。したがって、特定の実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、4N1Kペプチドの二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、十一量体または十二量体である。特定の実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、4N1Kの二量体である。
一実施形態では、本発明のペプチド単量体の結合は、それが多量体ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の生物活性、すなわち、CD47の活性化に実質的に干渉しない限り、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。
一実施形態では、本発明のペプチド単量体を、結合部分を介して結合させてもよい。
連結部分の例としては、特に限定されないが、単純な共有結合、柔軟なペプチドリンカー、アルキルリンカー、ジスルフィド架橋またはポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーが挙げられる。ペプチドリンカーは、完全に人工的な(例えば、グリシン、セリン、アスパラギン、トレオニンおよびアラニンからなる群より独立に選択されるアミノ酸残基を2〜20個含む)ものまたは天然のタンパク質から取り入れたものであり得る。ジスルフィド架橋形成は、本明細書で以下にさらに記載するように、例えばシステイン残基の付加により達成することができる。ポリエチレングリコール(PEG)を介する連結は、遊離システインを有する単量体と直鎖状ビス−マレイミドPEGなどの多官能性PEGとの反応により達成することができる。あるいは、アルデヒド型に酸化させた後の単量体上のグリカンを介して、およびアルデヒド反応性の基を含む多官能性PEGを用いて、連結を実施することができる。2つの単量体の間の結合の位置の選択には、その結合が、多量体ペプチドまたはポリペプチドがCD47を活性化する能力に実質的に干渉しないよう考慮するべきである。
一実施形態では、連結部分はペプチドリンカーである。
一実施形態では、本発明のペプチドリンカーは、長さが3〜30アミノ酸、好ましくは4〜20アミノ酸、より好ましくは5〜15アミノ酸である。一実施形態では、本発明のペプチドリンカーは、少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個または15個のアミノ酸を含む。一実施形態では、本発明のペプチドリンカーは、最大20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個または12個のアミノ酸を含む。
一実施形態では、本発明のペプチドリンカーは、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個のアミノ酸を含む。別の実施形態では、本発明のペプチドリンカーは、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個またはそれ以上のアミノ酸を含む。
ペプチドリンカーの例としては、特に限定されないが、ポリGlyリンカーなどのGlyリッチリンカー、Serリッチリンカー、一続きのGly残基とSer残基(「GSリンカー」とも呼ばれる)を含むリンカー、Proリッチリンカー、ヘリックスリンカーなどが挙げられる。
一実施形態では、ペプチドリンカーのアミノ酸は、天然に存在する20種類のアミノ酸から選択される。好ましい実施形態では、1〜20個のアミノ酸は、Gly、Ala、Pro、Asn、Gln、Cys、Lysから選択される。より好ましい実施形態では、リンカーは、立体障害のないアミノ酸、例えばGly、Gly−Gly[(Gly)]、Gly−Gly−Gly[(Gly)]...(Gly)20、Ala、Gly−Ala、Ala−Gly、Ala−Alaなどで大部分が構成されている。リンカーの他の具体例は、(Gly)Lys(Gly)(配列番号2);(Gly)AsnGlySer(Gly)(配列番号3)(この構造は、グリコシル化部位をグリコシル化することが可能な哺乳動物細胞系で組換えにより産生させると、グリコシル化部位を提供する);(Gly)Cys(Gly)(配列番号4);およびGlyProAsnGly(配列番号5)である。
好ましい実施形態では、ペプチドリンカーはGly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly[(Gly)、配列番号6]である。別の好ましい実施形態では、ペプチドリンカーはGlyとAlaの組合せである。別の好ましい実施形態では、ペプチドリンカーはGlyとLysの組合せである。
一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、ペプチドリンカー、好ましくはGlyリッチリンカーを介して結合した2つの4N1Kペプチドを含む。別の実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、ペプチドリンカー、好ましくはGlyリッチリンカーを介して結合した2つのPKHB1ペプチドを含む。一実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、ペプチドリンカー、好ましくはGlyリッチリンカーを介して結合した2つのPKT16ペプチドを含む。
特定の実施形態では、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列を含む、またはこれよりなる。
本発明は、本明細書で上に記載した多量体ペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列または核酸配列にも関する。
一実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)形態のRNAである。本発明のRNAは一本鎖または二本鎖であり得る。
本発明の別の目的は、本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む、ベクターである。好ましい実施形態では、本発明のベクターは発現ベクターである。
本発明のさらなる目的は、本明細書で上に記載した本発明の多量体ペプチドまたはポリペプチドを含む組成物である。
本発明の別の目的は、プロテアーゼHTRA1に耐性を示す修飾TSP1タンパク質(HTRA1耐性修飾TSP1)またはそのフラグメントであり、前記修飾TSP1タンパク質はCD47を活性化する。
本出願人は、HTRA1がTSP1を(i)インテグリンα3β1との結合能があることがわかっている部位、(ii)「2型」ドメインの間にある2つの部位および(iii)それぞれがCD47受容体と相互作用することが可能であり、その効率の高いCD47活性化に関与する2つのバリン−バリン−メチオニン(VVM)配列の間にある2つの部位で切断することを示す(実施例4を参照されたい)。一方、これと全体的構造が同じで、CD47を含むいくつかの同じ細胞表面受容体と相互作用するタンパク質TSP2は、プロテアーゼHTRA1に耐性を示す。
一実施形態では、プロテアーゼHTRA1に耐性を示す修飾TSP1タンパク質のフラグメントは、修飾TSP1タンパク質のアミノ酸を50〜1100個、100〜1000個、900個、800個、700個、600個、500個または400個含む。別の実施形態では、本発明のフラグメントは、修飾TSP1タンパク質のアミノ酸を150〜1100個、1000個、900個、800個、700個、600個、500個または400個含む。別の実施形態では、本発明のフラグメントは、修飾TSP1タンパク質のアミノ酸を200〜1100個、1000個、900個、800個、700個、600個、500個または400個含む。別の実施形態では、本発明のフラグメントは、修飾TSP1タンパク質のアミノ酸を300〜1100個、1000個、900個、800個、700個、600個、500個または400個含む。特定の実施形態では、本発明のフラグメントは、修飾TSP1タンパク質のアミノ酸を369個含む。
一実施形態では、本発明のフラグメントは、修飾TSP1タンパク質のC末端部分を含む、またはこれよりなる。好ましい実施形態では、本発明のフラグメントは、修飾TSP1タンパク質の最後の369個のアミノ酸を含む、またはこれよりなる。
一実施形態では、修飾TSP1タンパク質またはそのフラグメントは、CD47との結合能を保持していると同時に、プロテアーゼHTRA1に耐性を示す。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、HTRA1切断配列のうち少なくとも1つの配列のアミノ酸が少なくとも1個欠失している、置換されている、または付加されている、修飾TSP1タンパク質である。
本明細書で使用される「HTRA1切断配列」は、TSP1のアミノ酸配列内にあり、プロテアーゼHTRA1により切断される配列を意味する。一実施形態では、TSP1の少なくとも1つのHTRA1切断配列は、配列番号8の241〜244位のQVTQである。一実施形態では、TSP1の少なくとも1つのHTRA1切断配列は、配列番号8の287〜290位のGQVRである。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、HTRA1切断配列のうち少なくとも1つの配列のアミノ酸が少なくとも1個欠失している修飾TSP1タンパク質である。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号8の242〜243位の残基VTが欠失している修飾TSP1タンパク質である。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号8の288〜289位の残基QVが欠失している修飾TSP1タンパク質である。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号8の242〜243位の残基VTおよび288〜289位の残基QVが欠失している修飾TSP1タンパク質である。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、配列番号9と少なくとも75%同一の配列を含む。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、配列番号9と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一の配列を含む。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントは、配列番号9を含む、またはこれよりなるアミノ酸配列を有する。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号9のアミノ酸配列を有するC末端部分を有する。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1フラグメントは、配列番号9よりなるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、HTRA1切断配列のうち少なくとも1つの配列のアミノ酸が少なくとも1個置換されている修飾TSP1タンパク質である。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号8の242位の残基Vが置換されている修飾TSP1タンパク質である。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号8の289位の残基Vが置換されている修飾TSP1タンパク質である。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号8の残基V242およびV289が置換されている修飾TSP1タンパク質である。
一実施形態では、置換は、A、C、D、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、V、WおよびYを含むか、これよりなる群から選択される、アミノ酸置換である。特定の実施形態では、置換はアミノ酸Nである。一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントは、置換V242N(配列番号8による位置)を含む修飾TSP1タンパク質である。別の実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントは、置換V289N(配列番号8による位置)を含む修飾TSP1タンパク質である。別の実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントは、置換V242NおよびV289N(配列番号8による位置)を含む修飾TSP1タンパク質である。
一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、配列番号11と少なくとも75%同一の配列を含む。一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一の配列を含む。一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントは、配列番号11を含む、またはこれよりなるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号11のアミノ酸配列を有するC末端部分を有する。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1フラグメントは、配列番号11よりなるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、少なくとも1つのシステイン置換をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1つの置換されたシステインは、C3、C15、C34、C35、C55、C73、C93、C109、C129、C145、C191およびC366(配列番号8による位置)を含む群から選択される。一実施形態では、少なくとも1つの置換されたシステインはC34(配列番号8による位置)である。別の実施形態では、少なくとも1つの置換されたシステインはC191(配列番号8による位置)である。一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、2つのシステイン置換をさらに含む。一実施形態では、2つの置換されたシステインはC34およびC191(配列番号8による位置)である。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、配列番号10と少なくとも75%同一の配列を含む。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一の配列を含む。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントは、配列番号10を含む、またはこれよりなるアミノ酸配列を有する。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号10のアミノ酸配列を有するC末端部分を有する。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1フラグメントは、配列番号10よりなるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、配列番号12と少なくとも75%同一の配列を含む。一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントのアミノ酸配列は、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一の配列を含む。一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントは、配列番号12を含む、またはこれよりなるアミノ酸配列を有する。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号12のアミノ酸配列を有するC末端部分を有する。一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1フラグメントは、配列番号12よりなるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1またはそのフラグメントは、HTRA1切断配列がTSP2のHTRA1耐性配列に置き換わった修飾TSP1タンパク質またはそのフラグメントである。
一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1のアミノ酸配列は、配列番号13と少なくとも75%同一の配列を含む。一実施形態では、HTRA1耐性修飾TSP1のアミノ酸配列は、配列番号13と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一の配列を含む。一実施形態では、そのHTRA1耐性修飾TSP1は、配列番号13を含む、またはこれよりなるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性派生TSP2は、(i)TSP2のアミノ酸配列と(ii)TSP1尾部のアミノ酸配列とを含み、TSP1尾部がTSP1の2番目のVVM配列を含む、キメラTSP2/TSP1組換えタンパク質である。一実施形態では、2番目のVVM配列を含むTSP1尾部のアミノ酸配列は、キメラTSP2/TSP1組換えタンパク質のN末端に位置する。
一実施形態では、本発明のHTRA1耐性派生TSP2は、配列番号14と少なくとも75%同一の配列を含む。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性派生TSP2は、配列番号14と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一の配列を含む。一実施形態では、本発明のHTRA1耐性派生TSP2は、配列番号14を含む、またはこれよりなるアミノ酸配列を有する。
本発明は、本明細書で上に記載したプロテアーゼHTRA1に耐性を示す修飾TSP1タンパク質またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド配列または核酸配列にも関する。
一実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)形態のRNAである。本発明のRNAは一本鎖または二本鎖であり得る。
本発明の別の目的は、本発明によるプロテアーゼHTRA1に耐性を示す修飾TSP1タンパク質またはそのフラグメントをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む、ベクターである。好ましい実施形態では、本発明のベクターは発現ベクターである。
本発明のさらなる目的は、上述されるプロテアーゼHTRA1に耐性を示す修飾TSP1タンパク質もしくはそのフラグメントまたはポリヌクレオチドを含む、組成物である。
一実施形態では、本発明の多量体ペプチドもしくはポリペプチドまたは本発明によるプロテアーゼHTRA1に耐性を示す修飾TSP1タンパク質もしくはそのフラグメントは、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の体内での安定性を高める、または細胞内への浸透能を高める修飾を有する。
このような修飾としては、特に限定されないが、N末端修飾、C末端修飾、特に限定されないがCH2−NH、CH2−S、CH2−S=O、O=C−NH、CH2−O、CH2−CH2、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むペプチド結合修飾、主鎖修飾および残基修飾が挙げられる。ペプチド模倣化合物を調製する方法は当該技術分野で周知であり、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に明記されている。
一実施形態では、ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH3)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH2−)、a−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(Rは任意のアルキル、例えばメチル)、カルバ結合(−CH2−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH2−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、逆アミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH2−CO−)(Rは、炭素原子上に天然に存在する「通常の」側鎖である)により置換されていてよい。
一実施形態では、これらの修飾は、ペプチド鎖に沿ったいずれかの結合に、場合によっては同時に複数(2つ〜3つ)の結合に存在し得る。
一実施形態では、合成の非天然の酸、例えばフェニルグリシン、TIC、ナフチレラニン(naphthylelanine)(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体またはo−メチル−Tyrなどを天然の芳香族アミノ酸であるTrp、TyrおよびPheに置き換えてもよい。
一実施形態では、本発明のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質はさらに、直鎖状または環状であり得る。「環状」は、分子の少なくとも2つの離れた部分、すなわち非連続部分が互いに結合していることを意味する。例えば、分子のアミノ末端とカルボキシ末端が共有結合して環状分子を形成し得る。あるいは、分子が(例えば、リンカー内に)2つ以上のCys残基を含み、ジスルフィド結合形成を介して環状化し得る。さらに、2つ以上のタンデムペプチド二量体が結合して二量体の二量体を形成し得ることが考えられる。したがって、例えば、Cys残基を含むタンデム二量体が、別のこのような二量体のCysと分子間ジスルフィド結合を形成し得る。
一実施形態では、本発明のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は担体分子、例えば、直鎖状ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリリジン、デキストランなど)、分岐鎖ポリマー;脂質;コレステロール基(ステロイドなど);または炭水化物もしくはオリゴ糖などと共有結合または非共有結合していてもよい。
これ以外に考えられる担体としては、ポリオキシエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどの1つまたは複数の水溶性ポリマーの付加が挙げられる。当該技術分野で公知のまた別の有用なポリマーとしては、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロースまたはその他の炭水化物系ポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコールならびにこれらのポリマーの混合物が挙げられる。
好ましい実施形態では、担体はポリエチレングリコール(PEG)である。一実施形態では、PEG基は、任意の好都合な分子量であり得、また直鎖状または分岐状であり得る。一実施形態では、PEGの平均分子量は、約2kDa〜約100kDa、より好ましくは約5kDa〜約50kDa、最も好ましくは約5kDa〜約10kDaの範囲になる。
一実施形態では、PEG基は、アシル化、還元的アルキル化、マイケル付加、チオールアルキル化、またはPEG部分上の反応基(例えば、アルデヒド基、アミノ基、エステル基、チオール基、ct−ハロアセチル基、マレイミド基またはヒドラジノ基)を介する標的化合物上の反応基(例えば、アルデヒド基、アミノ基、エステル基、チオール基、a−ハロアセチル基、マレイミド基またはヒドラジノ基)への他の化学選択的コンジュゲーション/ライゲーション法を介して本発明の化合物に結合する。
一実施形態では、タンパク質内のグリコシル化部位であることがわかっている部位に炭水化物(オリゴ糖)基を結合させる。一般に、配列Asn−X−Ser/Thrの一部である場合、セリン(Ser)またはトレオニン(Thr)残基にはO結合オリゴ糖を結合させ、アスパラギン(Asn)残基にはN結合オリゴ糖を結合させ、この場合、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり得る。Xは、プロリンを除く19種類の天然に存在するアミノ酸のうちの1つであるのが好ましい。N結合オリゴ糖およびO結合オリゴ糖ならびに各タイプにみられる糖残基の構造は異なっている。両者に共通してみられる糖のタイプの1つがN−アセチルノイラミン酸(シアル酸と呼ばれる)である。シアル酸は通常、N結合オリゴ糖およびO結合オリゴ糖の両方の末端残基であり、その負電荷によりグリコシル化化合物に酸性の特性を付与し得る。このような部位(1つまたは複数)が本発明の化合物のリンカーに組み込まれていてよく、ポリペプチド化合物が(例えば、CHO、BHK、COSなどの哺乳動物細胞内で)組換えにより産生される過程で細胞によりグリコシル化されるのが好ましい。しかし、このような部位を、当該技術分野で公知の合成法または半合成法によりさらにグリコシル化してもよい。
一実施形態では、上記のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をさらに、1つまたは複数のFcポリペプチドに直接またはリンカー基を介して融合させてもよい。
一実施形態では、上記化合物のFc配列は、ヒト免疫グロブリンIgG−1重鎖(Ellison,J.W.ら,Nucleic Acids Res.10:4071−4079(1982)を参照されたい)または当該技術分野で公知の他の任意のFc配列(例えば、特に限定されないがIgG−2、IgG−3およびIgG−4またはその他の免疫グロブリンを含む他のIgGクラス)から選択され得る。
抗体のFc領域は、ジスルフィド結合または非共有結合によって結合し二量体型または多量体型になり得る単量体ポリペプチドのセグメントで構成されていることはよく知られている。天然のFc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、関与する抗体のクラス(例えば、IgG、IgA、IgE)またはサブクラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgAl、IgGA2)に応じて1〜4つの範囲内にある。本明細書で使用される「Fc」という用語は、単量体型、二量体型および多量体型のFc分子の総称である。Fc単量体は、適切なCys残基が存在する場合、ジスルフィド結合形成を介する二量体化を防止する特定の条件が存在しない限り自発的に二量体化することに留意するべきである。
一実施形態では、Fcポリペプチドは、in vivo半減期が対照Fcポリペプチドより長い任意のバリアントであり得る。Fcポリペプチドのバリアントの例としては、特に限定されないが、わずかに酸性のpHで対照Fcポリペプチドより高い親和性でFcRnと結合するFcポリペプチド、生理的pHで対照Fcポリペプチドと同等以下の親和性でFcRnと結合するFcポリペプチド、ループ5、8および/または10の内部に、またはこれに隣接して3〜20個のアミノ酸の挿入を含むFcポリペプチドなどが挙げられる。
一実施形態では、本発明のタンパク質は、1つまたは複数のFc基とさらに融合した上記の多量体ペプチドを少なくとも1つ含む。好ましい実施形態では、本発明のタンパク質は、ペプチドリンカー、好ましくはGlyリッチリンカーを介して連結された2つの4N1Kペプチドを含み1つまたは複数のFc基とさらに融合した多量体ペプチドを少なくとも1つ含む。
特定の実施形態では、本発明のタンパク質は、ペプチドリンカーを介して連結された2つの4N1Kペプチドを含み、その2つの4N1KペプチドがそれぞれFcポリペプチドとさらに融合されている、多量体ペプチドを2つ含む。
本出願人は本明細書で、CD47−/−マウスが、Tsp1−/−マウスと同様に加齢、光およびレーザーにより誘導される網膜下単核食細胞蓄積を生じるが、CD36−/−は生じないことを示す(実施例1を参照されたい)。野生型レシピエントの網膜下腔に養子移植したTsp1−/−ミクログリア細胞およびCD47−/−ミクログリア細胞は、野生型ミクログリア細胞と比較して除去に対する有意な抵抗を示し、組換えTSP1は、野生型ミクログリア細胞の除去を極めて有意に促進し、Tsp1−/−ミクログリア細胞の表現型を正常に戻したが、CD47−/−ミクログリア細胞には何ら効果を示さず、TSP1とCD47の相互作用がミクログリア細胞除去を媒介することが確認された(実施例1を参照されたい)。本出願人は、HTRA1が単球マクロファージ分化の初期に盛んに発現することおよびSNP rs11200638がHTRA1発現を有意に増大させることも示す(実施例2を参照されたい)。本出願人は、HTRA1がTSP1を5つの異なる部位でタンパク質分解し、そのうち2つの部位は、効率的なCD47活性化に必要な2つのバリン−バリン−メチオニン部位の間に位置することを示す(実施例3および4を参照されたい)。さらに、in vitroでは、組換えHTRA1が、RPE細胞と共培養した単核食細胞の生存および活性化ペプチドによるCD47の活性化を有意に増大させ(実施例5を参照されたい)、2つのCD47結合部位を含む活性化ペプチドにより、それがさらに効率的になり(実施例6を参照されたい)、またはTSP−1によるCD47およびMega FasLによるFASの同時活性化がこの効果を逆転させた(実施例5を参照されたい)。本出願人は、in vivoで、易炎症性Cx3cr1欠損マウスにレーザーで網膜下炎症を誘導した後、組換えTSP−1またはCD47活性化ペプチドの硝子体内注射により網膜下単核単球の除去が効率的に促進されたことを示す(実施例6を参照されたい)。さらに、組換えTSP−1またはCD47活性化ペプチドは、無菌性腹膜炎モデルの炎症性マクロファージ除去を効率的に促進した(実施例6を参照されたい)。まとめると、本発明者らは、(i)CD47活性化および(ii)CD47とFASの活性化の組合せにより、単核食細胞が効率的に除去されることを示す。
したがって、本発明は、炎症の治療に使用するための作用物質であってCD47を活性化する作用物質に関する。一実施形態では、CD47を活性化する作用物質は、炎症を治療するために使用される(または治療するのに使用するためのものである)。
本発明の意味の範囲内では、「活性化する」という用語は、作用物質が標的タンパク質の生物活性を直接的または間接的に活性化することが可能であることを意味する。特定の実施形態では、CD47を活性化する作用物質とは、CD47を直接的または間接的に活性化させる際にCD47の生物活性を活性化することが可能な作用物質のことである。
一実施形態では、本発明の作用物質はCD47を直接活性化する。CD47を直接活性化する作用物質の例としては、特に限定されないが、CD47のアゴニスト、活性化抗体、活性化ペプチド、活性化ポリペプチド、活性化タンパク質、ペプチボディなどが挙げられる。
本明細書で使用される「CD47のアゴニスト」という用語は、受容体CD47と結合し、それを活性化してその生物活性を生じることが可能なタンパク質およびペプチドを意味する。
一実施形態では、CD47のアゴニストは、その天然のリガンドであるTSP−1、CD47と結合し、CD47活性化による下流の生物学的効果、すなわち細胞内の単核食細胞の除去を誘発するTSP1の能力を保持しているTSP1バリアント、TSP1フラグメントまたはTSP1ペプチド模倣物である。
一実施形態では、TSP1のバリアント、フラグメントまたはペプチド模倣物は、本明細書で上に明記したプロテアーゼHTRA1に耐性を示す修飾TSP1タンパク質(HTRA1耐性修飾TSP1)またはそのフラグメントである。
別の実施形態では、TSP1のバリアント、フラグメントまたはペプチド模倣物は、本明細書で上に明記した、CD47と結合する能力を保持していると同時にプロテアーゼHTRA1に耐性を示す派生TSP2タンパク質(HTRA1耐性派生TSP2)である。
別の実施形態では、CD47のアゴニストは、その天然のリガンドであるSIRPα、SIRPαバリアント、SIRPαフラグメントまたはSIRPαペプチド模倣物である。
一実施形態では、CD47のアゴニストは活性化抗体である。活性化抗体の例としては、特に限定されないが、抗体Ad22(Pettersenら,J.Immunol.1999,162(12):7031−40)、抗体1F7(Mannaら,J Biol Chem.2005,280:29637−29644)および抗体MABL(Unoら,Oncology Reports.2007,17(5):1189−1194)が挙げられる。
別の実施形態では、CD47のアゴニストは活性化ペプチドである。活性化ペプチドの例としては、特に限定されないが、4N1Kペプチド(配列番号1);PKHB1ペプチド(式I);およびPKT16ペプチド(式II)が挙げられる。
一実施形態では、本発明の活性化ペプチドは、長さが5〜15アミノ酸、6〜14アミノ酸、7〜13アミノ酸、8〜12アミノ酸または9〜11アミノ酸である。別の実施形態では、本発明の活性化ペプチドは、長さが5〜14アミノ酸、5〜13アミノ酸、5〜12アミノ酸、5〜11アミノ酸または5〜10アミノ酸である。別の実施形態では、本発明の活性化ペプチドは、長さが6〜15アミノ酸、7〜15アミノ酸、8〜15アミノ酸、9〜15アミノ酸または10〜15アミノ酸である。
一実施形態では、本発明の活性化ペプチドは配列番号1のアミノ酸を含む。一実施形態では、本発明の活性化ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列および機能保存フラグメントから選択される少なくとも5個の連続するアミノ酸を含む。特定のCD47では、TSP1活性化因子、HTRA1阻害剤およびFas活性化因子を含む群から選択される。
別の実施形態では、実施形態の作用物質である本発明の活性化ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列および機能保存フラグメントから選択される少なくとも6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸を含む。好ましい実施形態では、本発明の活性化ペプチドは配列番号1のアミノ酸よりなる。
一実施形態では、本発明の活性化ペプチドは、4N1K、PKHB1、PKT16およびその機能保存フラグメントを含む群から選択される。一実施形態では、本発明の活性化ペプチドは、PKHB1、PKT16またはその機能保存フラグメントである。一実施形態では、本発明の活性化ペプチドはPKHB1またはその機能保存フラグメントである。別の実施形態では、本発明の活性化ペプチドはPKT16またはその機能保存フラグメントである。
一実施形態では、CD47のアゴニストは、本明細書で上に明記した多量体ペプチドまたはポリペプチドである。一実施形態では、CD47のアゴニストは、少なくとも1つの4N1Kペプチドを含む多量体ペプチドまたはポリペプチドである。一実施形態では、多量体ペプチドまたはポリペプチドは、好ましくは4N1Kペプチドの2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の反復サブユニットを含む。特定の実施形態では、CD47のアゴニストは、配列番号7のアミノ酸配列を含む、またはこれよりなる多量体ペプチドである。別の実施形態では、本発明の作用物質は、CD47を間接的に活性化する。一実施形態では、本発明を間接的に活性化する本発明の作用物質は、HTRA1阻害剤である。HTRA1阻害剤の例としては、特に限定されないが、HTRA1に対する抗体、そのバリアントまたはフラグメント、HTRA1遺伝子および/またはHTRA1遺伝子の転写産物に対するsiRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が挙げられる。
別の実施形態では、本発明の作用物質はFas活性化因子である。Fas活性化因子の例としては、特に限定されないが、Fasと結合しDISCの形成を活性化することが可能なタンパク質およびペプチドならびにFasと結合し、対応する細胞のアポトーシスを誘発するFasLの能力を保持しているFasLのバリアント、フラグメントまたはペプチド模倣物が挙げられる。
特定の実施形態では、本発明のFas活性化因子としては、好ましくはFasLリガンドまたはその任意の機能的フラグメントもしくは誘導体が挙げられる。一実施形態では、本発明に使用するFas活性化因子はFas受容体アゴニストである。
特定の実施形態では、本発明のFas活性化因子としては、好ましくはFas受容体アゴニストであるAPO010(TopoTarget社、コペンハーゲン、デンマーク)が挙げられ、APO010は、ヒトアディポネクチンの二量体形成コラーゲンドメインと融合した3つのヒトFasリガンド(FasL)細胞外ドメインからなり、潜在的にアポトーシス促進活性および抗悪性腫瘍活性を有する組換え可溶性六量体融合タンパク質である。Fas受容体アゴニストであるAPO010は、感受性腫瘍細胞集団のFas受容体を活性化してカスパーゼ依存性アポトーシスを生じさせる(Verbruggeら,2009)。特定の実施形態では、本発明のFas活性化因子としては、好ましくはFasアゴニストであるMega FasL(AdipoGen社)が挙げられる。さらに、本発明のほかのFas活性化因子としては、好ましくは米国特許第6,001,962号および米国特許第6,846,637号に開示されているFasアゴニストペプチドが挙げられる。
一実施形態では、本発明の作用物質は予防薬および/または治療薬である。特定の実施形態では、本発明の作用物質は治療薬である。
本発明の意味の範囲内では、「炎症」は、Dorland’s Medical Dictionaryで「組織の傷害または破壊により誘発され、その傷害を与える物質と受傷組織の両方を破壊、希薄化または隔離する局所的な保護応答」と定義されている通りの意味である。炎症は、毛細血管系の開窓、血液要素の間質腔内への漏出および炎症組織内への白血球の遊走を特徴とする。肉眼レベルでは、炎症は通常、紅斑、浮腫、痛覚過敏(圧痛)および疼痛といったよく知られた臨床徴候が伴う。
一実施形態では、本発明による作用物質は炎症の治療に使用するためであり、前記炎症は、加齢黄斑変性(AMD)、網膜色素変性、パーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、肥満、アテローム性動脈硬化症、アレルギー、強直性脊椎炎、関節炎(変形性関節症、関節リウマチまたは乾癬性関節炎)、喘息、移植片対宿主病、腹膜炎、クローン病、大腸炎、皮膚炎、憩室炎、線維筋痛症、肝炎、過敏性腸症候群、全身性紅斑性狼瘡、腎炎および潰瘍性大腸炎を含む群から選択される。
一実施形態では、本発明の炎症は急性炎症である。別の実施形態では、本発明の炎症は慢性炎症である。
一実施形態では、本発明の炎症は治療抵抗性炎症である。一実施形態では、本発明の炎症は低悪性度慢性炎症である。一実施形態では、本発明の炎症は治療抵抗性低悪性度炎症である。
一実施形態では、本発明の炎症は、加齢黄斑変性(AMD)および加齢黄斑症(ARM)などの加齢関連疾患;肥満およびアテローム性動脈硬化症などの代謝疾患;神経変性疾患ならびに癌を含む群から選択される治療抵抗性低悪性度炎症である。一実施形態では、本発明の治療抵抗性低悪性度炎症は加齢黄斑変性(AMD)である。
一実施形態では、本発明の予防薬および/または治療薬は、単核食細胞蓄積に関連する炎症の治療に使用するためのものである。
単核食細胞(MP)は、ミクログリア細胞(MC)、単球(Mo)およびマクロファージ(Mφ)を含む細胞ファミリーを含む。単核食細胞蓄積に関連する炎症としては、特に限定されないが、加齢黄斑変性(AMD)、加齢黄斑症(ARM)または網膜色素変性などの網膜炎症;パーキンソン病、多発性硬化症またはアルツハイマー病などの神経変性疾患;肥満またはアテローム性動脈硬化症などの代謝障害;アレルギー;強直性脊椎炎;変形性関節症、関節リウマチまたは乾癬性関節炎などの関節炎;喘息、移植片対宿主病;腹膜炎、クローン病;大腸炎;皮膚炎;憩室炎;線維筋痛症;肝炎;過敏性腸症候群;全身性紅斑性狼瘡;腎炎;および潰瘍性大腸炎が挙げられる。一実施形態では、本発明による炎症は腹膜炎である。
一実施形態では、本発明による炎症は、加齢黄斑変性(AMD)、網膜色素変性または加齢黄斑症などの網膜炎症;パーキンソン病、多発性硬化症またはアルツハイマー病などの神経変性疾患;肥満またはアテローム性動脈硬化症などの代謝障害を含む群から選択される。
一実施形態では、本発明による炎症は、AMD、加齢黄斑症、網膜色素変性、アテローム性動脈硬化症およびパーキンソン病、多発性硬化症またはアルツハイマー病などの神経変性疾患を含む群から選択される加齢性疾患である。
一実施形態では、本発明の炎症性疾患は癌でも腫瘍でもない。
網膜は、再生能が極めて低いため免疫病原性の損傷を特に受けやすいが、特に、直接感染(強膜、眼瞼)のみならず、血液が媒介する細菌侵入(血液−組織バリア)からも保護されている。さらに、この組織は、炎症を介する傷害からそれを保護するのに寄与する「免疫特権」の部位である。免疫特権に関与する因子としては、DCおよび抗原提示細胞がリンパ節まで遊走するためのリンパ排液系(例えば、眼球および脳)の欠如、エフェクター細胞が組織(角膜、網膜下腔)に浸潤するための血管の欠如ならびに免疫寛容を誘導する局所的に産生される因子が挙げられる。重要なのは、この特権が、免疫特権をもたない組織と比較して、活性化閾値を高く設定する網膜における緊張性の抑制性シグナル、および特に浸潤炎症細胞の効率的な除去(免疫抑制性の微小環境)によっても媒介されることである(Streileinら,Vision Res.2002,42:487−495)。そのようにして、潜在的な抗原提示細胞およびエフェクター細胞(リンパ球、マクロファージ)を、それらが細胞傷害性を生じる前にそれを中和することができる。
一実施形態では、本発明による炎症は非自己免疫性炎症である。自己免疫性炎症性疾患の例としては、特に限定されないが、腎臓、肝臓および肺の炎症、アテローム性動脈硬化症およびメタボリック症候群、ベーチェット病および子宮内膜症が挙げられる。
一実施形態では、本発明による炎症は自己免疫性炎症である。自己免疫性炎症性疾患の例としては、特に限定されないが、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、セリアックスプルー病、強皮症、乾癬、炎症性腸疾患およびシェーグレン症候群が挙げられる。
一実施形態では、本発明による炎症は眼の炎症である。本明細書で使用される眼の炎症疾患とは、眼または周辺組織の任意の部分に起こる炎症のことである。したがって、眼内または視神経、血管、筋肉もしくは眼周辺のその他の組織に炎症が発生し、その結果生じる疾患が眼の炎症疾患である。
一実施形態では、眼の炎症は、加齢黄斑変性(AMD)、網膜色素変性、加齢黄斑症(ARM)、ブドウ膜炎、強膜炎、上強膜炎、視神経炎、角膜炎、眼窩偽腫瘍、網膜血管炎および慢性結膜炎を含む、またはこれよりなる群から選択される。
一実施形態では、本発明による炎症は眼の炎症ではない。
一実施形態では、本発明による炎症は網膜炎症である。
本発明の意味の範囲内では、「網膜炎症」は、単核食細胞が媒介する網膜下腔の炎症を意味する。一実施形態では、本発明の網膜炎症は、加齢黄斑変性(AMD)、加齢黄斑症および網膜色素変性を含む。
一実施形態では、本発明の作用物質は、加齢黄斑変性の治療に使用するためのものである。特定の実施形態では、加齢黄斑変性は萎縮型(またはドライ型)AMDおよび血管新生型(またはウェット型)AMDを含む。
一実施形態では、本発明の予防薬および/または治療薬は、萎縮型AMDの治療に使用するためのものである。別の実施形態では、本発明の予防薬および/または治療薬は、血管新生型AMDの治療に使用するためのものである。
一実施形態では、本発明によるAMDは初期段階のものである。初期段階は、黄斑の内部および周辺に、色素沈着(色素上皮の異常)に関連して、ドルーゼンと呼ばれる細胞外沈着物が蓄積することを特徴とする。
別の実施形態では、本発明によるAMDは後期段階のものである。後期段階は、片側または両側の合併症を特徴とする。後期段階のAMDは萎縮型AMDまたはウェット型AMDであり得る。特定の実施形態では、AMDは後期段階のドライ型AMD(地図状AMDとも呼ばれる)である。
一実施形態では、本発明の作用物質は、加齢黄斑症(ARM)の治療に使用するためのものである。一実施形態では、ARMは初期ARMである。別の実施形態では、ARMは後期ARMである。
一実施形態では、本発明の作用物質は、網膜色素変性の治療に使用するためのものである。
一実施形態では、対象は炎症、好ましくは単核食細胞蓄積に関連する炎症に罹患している。特定の実施形態では、対象は網膜炎症に罹患している。好ましい実施形態では、対象は、加齢黄斑変性(AMD)、加齢黄斑症(ARM)または網膜色素変性に罹患している。
一実施形態では、対象は初期段階のAMDに罹患している。別の実施形態では、対象は後期段階のAMDに罹患している。一実施形態では、対象は脈絡膜血管新生型AMD(「ウェット型」AMD)に罹患している。別の実施形態では、対象は地図状萎縮型(「ドライ型」AMD)に罹患している。
一実施形態では、対象は初期段階のARMに罹患している。別の実施形態では、対象は後期段階のARMに罹患している。
別の実施形態では、対象は炎症を発症しやすい、すなわち単核食細胞蓄積を生じやすい。特定の実施形態では、対象は網膜炎症を発症するリスクがある。好ましい実施形態では、対象は、AMD、ARMまたは網膜色素変性を発症するリスクがある。
AMDおよびARMを発症するリスクの例としては、特に限定されないが、遺伝、生活習慣、例えば喫煙、日光曝露または食事バランス不良など、年齢、血中コレステロール濃度過剰、高血圧などが挙げられる。
一実施形態では、本発明の対象は高齢者である。本明細書で使用される「高齢者」という用語は、少なくとも50歳、少なくとも55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳または90歳の対象を意味する。
特定の実施形態では、対象は、ヒト染色体10q26上のHTRA1プロモーター内に位置するSNP rs11200638の存在によりAMDを発症するリスクがある。日本人および白人の集団では、SNP rs11200638は、滲出型加齢黄斑変性のリスクの10倍増加に関連している。最もリスクの高い遺伝子型は(A;A)である。
一実施形態では、対象は、炎症、好ましくはAMD、ARMまたは網膜色素変性に対する別の治療法による治療を未だ受けたことがない。別の実施形態では、対象は、炎症、好ましくはAMD、ARMまたは網膜色素変性に対する別の治療法による治療を既に受けたことがある。
本発明は、本明細書で上に記載したCD47を活性化する作用物質を少なくとも1種含む組成物にも関する。一実施形態では、本発明の組成物は、炎症の治療に使用するためのCD47を活性化する作用物質を少なくとも1種含む。
一実施形態では、組成物は、炎症を治療するために使用される(または治療するのに使用するためのものである)。
一実施形態では、本発明の組成物は、CD47を直接活性化する少なくとも1種の作用物質とCD47を間接的に活性化する少なくとも1種の作用物質とを含む。特定の実施形態では、本発明の組成物は、CD47を活性化する作用物質とFasを活性化する作用物質とを含む。
本発明の別の目的は、本明細書で上に記載した少なくとも1種の本発明の作用物質と、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と、を含む医薬組成物である。
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容される添加剤としては、特に限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリラート、ロウ、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
本発明はさらに、本発明の作用物質、組成物または医薬組成物を少なくとも1種含む医薬に関する。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、炎症、好ましくはAMDを治療するために使用される(または治療に使用するためのものである)。
好ましくは、本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、治療有効量の本発明の作用物質を含む。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、追加の予防薬および/または治療薬をさらに含む。一実施形態では、前記追加の予防薬および/または治療薬は、炎症、特にAMDを治療するための別の作用物質である。
本発明の化合物、本発明の組成物、医薬組成物および医薬の1日の総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医により決定されることが理解されよう。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効量レベルは、治療する障害および障害の重症度;用いる特定の化合物の活性;用いる特定の組成物、患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別および食事;投与の時間、投与の経路および用いる特定の化合物の***速度;治療の実施期間;用いる特定の化合物と併用して、または同時に使用する薬物;ならびに医学分野で周知のこれらと同様の因子を含む様々な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を得るのに必要なレベルより低いレベルの化合物の用量から開始し、所望の効果が得られるまで徐々に用量を増大させることは、当業者の技能範囲内に十分に含まれることである。しかし、製品の1日用量は、成人1人当たり1日約10〜約10000mg、好ましくは100〜約5000mg、より好ましくは成人1人当たり1日約200〜約2000mgの広範囲にわたって変化し得る。好ましくは、組成物は、治療する患者に対する用量を症状に合わせて調整するため、10mg、50mg、100mg、250mg、500mg、1000mgおよび2,000mgの有効成分を含有する。医薬は通常、約10〜約10000mgの有効成分、好ましくは5〜約5000mg、より好ましくは約10〜約2000mgの有効成分を含有する。有効量の薬物は通常、体重1kgに対し1日当たり0.01mg〜約100mg、好ましくは体重1kgに対し1日当たり約0.05mg〜40mg、より好ましくは体重1kgに対し1日当たり約0.1mg〜20mg、より好ましくは体重1kgに対し1日当たり約0.2mg〜1mgの投与量レベルで提供される。
一実施形態では、治療有効量は、本発明の組成物、医薬組成物または医薬の約10〜約10000mg/ml、好ましくは100〜約5000mg/ml、より好ましくは、本発明の組成物、医薬組成物または医薬の約200〜約2000mg/mlの範囲内にある。
一実施形態では、治療有効量は、本発明の組成物、医薬組成物または医薬の約10〜約10000mg/g、好ましくは100〜約5000mg/g、より好ましくは、本発明の組成物、医薬組成物または医薬の約200〜約2000mg/gの範囲内にある。
一実施形態では、治療有効量は、本発明の組成物、医薬組成物または医薬の約10〜約10000mg/ml、好ましくは5〜約5000mg/ml、より好ましくは約10〜約2000mg/ml、より好ましくは、本発明の組成物、医薬組成物または医薬の約20〜約1000mg/mlの範囲内にある。
一実施形態では、治療有効量は、本発明の組成物、医薬組成物または医薬の約10〜約10000mg/g、好ましくは5〜約5000mg/g、より好ましくは約10〜約2000mg/g、より好ましくは、本発明の組成物、医薬組成物または医薬の約20〜約1000mg/gの範囲内にある。
本発明の一実施形態では、予防薬および/または治療薬は、CD47活性化因子を約5mg/mL〜約500mg/mL、約5mg/mL〜約100mg/mL、約5mg/mL〜約10mg/mLの濃度で含む。
本発明の一実施形態では、予防薬および/または治療薬は、CD47活性化因子を約0.1μM〜約1000μM、好ましくは約1μM〜約750μM、より好ましくは約5μm〜約600μM、さらにより好ましくは約10μM〜約500μMの濃度で含む。
本発明の別の実施形態では、予防薬および/または治療薬は、CD47活性化因子を約1μg/mL〜約1mg/mL、約1μg/mL〜約500μg/mL、約1μg/mL〜約100μg/mLの濃度で含む。
本発明の別の実施形態では、予防薬および/または治療薬は、CD47活性化因子をヒト眼内液1mL当たり約1〜約10μg、好ましくはヒト眼内液1mL当たり約5μgの眼内濃度で含む。
対象への投与に使用するためには、組成物を対象への投与用に製剤化する。本発明の組成物は、経口、非経口、局所、吸入スプレーにより、直腸に、鼻に、頬側に、膣に、または埋込みリザーバーを介して投与され得る。本明細書で使用される投与という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内への注射または注入技術を含む。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、経口投与に適した形態である。
経口投与に適した形態の例としては、特に限定されないが、錠剤、口腔内分散剤/口腔内分散錠剤、発泡錠、粉末剤、顆粒剤、丸剤(糖衣丸剤を含む)、糖衣錠剤、カプセル剤(軟ゼラチンカプセル剤を含む)、シロップ剤、液剤、ゲル剤またはその他の飲用液剤、懸濁剤、スラリー剤、リポソーム形態などが挙げられる。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、経口投与に適した製剤用に1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む。
一実施形態では、本発明の本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、局所投与に適した形態である。
局所投与に適した形態の例としては、特に限定されないが、液体、ペーストまたは固体の組成物、より具体的には水溶液剤、滴剤、点眼剤、点眼剤、分散液剤、スプレー剤、マイクロカプセル、マイクロ粒子、ナノ粒子、ポリマーパッチまたは放出制御パッチの形態のものが挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の本発明の組成物、医薬組成物または医薬は点眼剤の形態である。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、注射、例えば、眼内、筋肉内、皮下、真皮内、経皮または静脈内への注射または注入などに適した形態である。
注射に適した形態の例としては、特に限定されないが、液剤、例えば、無菌水溶液剤、分散液剤、乳剤、懸濁剤、使用前に液体を加えて液剤または懸濁剤を調製するのに使用するのに適した固体形態、例えば粉末、リポソーム形態などが挙げられる。
無菌注射用形態の本発明の組成物は、水性懸濁剤または油性懸濁剤であり得る。これらの懸濁剤は、当該技術分野で公知の技術により、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて製剤化し得る。無菌注射用製剤は、非経口投与に許容される無毒性の希釈剤または溶媒を用いた無菌注射溶液または無菌注射懸濁液であってもよい。使用され得る許容される媒体および溶媒には、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、従来の方法では、無菌不揮発性油を溶媒または懸濁媒として用いる。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発性油を用いてもよい。注射剤の調製には、オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体が有用であり、天然の薬学的に許容される油、例えば特にポリオキシエチル化型のオリーブ油またはヒマシ油なども同じく有用である。これらの油性液剤または懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えばカルボキシメチルセルロースまたは乳剤および懸濁剤を含む薬学的に許容される剤形の製剤化によく用いられるこれと同様の分散剤なども含有し得る。製剤化の目的のために、その他のよく用いられる界面活性剤、例えばTween、Spanおよびその他の乳化剤など、または薬学的に許容される固体、液体もしくはその他の剤形の製造によく用いられるバイオアベイラビリティエンハンサーも使用してもよい。
特定の実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、眼内投与、好ましくは眼内注射に適した形態である。
本発明の意味の範囲内では、「眼内投与」は、作用物質を眼の内部に直接注射することを意味し、ここでは、眼の内部は眼球内に位置する任意の領域を意味し、一般には、特に限定されないが、眼球内にみられる任意の機能的(例えば、視覚に関するもの)もしくは構造組織または眼球の内部の一部分または全体の内側を覆う組織もしくは細胞層がこれに含まれる。このような領域の具体例としては、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、黄斑および網膜ならびに後眼部の領域または部位に血管を形成している、またはこれを神経支配している血管および神経が挙げられる。一実施形態では、眼の内部は、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、黄斑および網膜ならびに後眼部の領域または部位に血管を形成している、またはこれを神経支配している血管および神経を含む後眼部を意味する。この実施形態では、眼内投与は後眼部内、好ましくは硝子体内への投与を指し、眼内投与は、好ましくは硝子体内注射である。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬は、注射に適した製剤用に1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬を必要とする対象に少なくとも1日1回投与する。例えば、本発明の組成物、医薬組成物または医薬を1日1回、1日2回または1日3回投与してもよい。好ましい実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬を必要とする対象に1日1回投与する。
別の実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬を必要とする対象に少なくとも週に1回投与する。例えば、本発明の組成物、医薬組成物または医薬を週1回、週2回、週3回、週回または最大週7回投与してもよい。
別の実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬を必要とする対象に月1回、月2回、2か月に1回、2か月もしくは3か月に1回、年2回または年1回投与する。
本発明はさらに、それを必要とする対象において炎症を治療する方法であって、前記対象に治療有効量の本発明の作用物質を投与することを含む方法に関する。
一実施形態では、本発明の方法は、単核食細胞蓄積に関連する炎症を治療するためのものである。好ましい実施形態では、本発明の方法は加齢黄斑変性を治療するためのものである。
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬を対象に投与する。
本発明の別の目的は、それを必要とする対象においてCD47活性を阻害する方法であって、対象に有効量の本発明の作用物質を投与することを含む方法である。
本発明の別の目的は、それを必要とする対象において単核食細胞蓄積を除去する方法であって、前記対象に上述の予防薬および/または治療薬を治療有効量投与することを含む方法である。
本発明の別の目的は、それを必要とする対象において単核食細胞蓄積を除去し、それにより単核食細胞蓄積に関連する炎症を治療する方法であって、前記対象に上述の予防薬および/または治療薬を治療有効量投与することを含む方法である。
本発明は、本発明による作用物質、医薬組成物または医薬を少なくとも1種含むキットにも関する。
一実施形態では、本発明のキットは、必要とする対象に作用物質、医薬組成物または医薬を投与する手段をさらに含む。
一実施形態では、本発明のキットは、前記対象に作用物質、医薬組成物または医薬を投与するための指示書をさらに含む。
一実施形態では、本発明のキットは、第一のパーツが本発明によるCD47を活性化する作用物質を少なくとも1種含み、第二のパーツが本発明によるCD47を活性化する少なくとももう1種の作用物質を含む、パーツキットである。特定の実施形態では、本発明のキットは、第一のパーツが、本発明によるCD47を直接活性化する少なくとも1種の作用物質と本発明によるCD47を間接的に活性化する少なくとも1種の作用物質とを含むパーツキットである。好ましい実施形態では、本発明のキットは、第一のパーツが、本発明によるCD47を活性化する作用物質と本発明によるFasを活性化する作用物質とを含むパーツキットである。
別の実施形態では、本発明のキットは2つのパーツを含み、第一のパーツは、本発明による作用物質、医薬組成物または医薬を少なくとも1種含み、第二のパーツは、追加の予防薬および/または治療薬を含む。一実施形態では、前記追加の予防薬および/または治療薬は、炎症、特にAMDを治療するための別の作用物質である。
一実施形態では、本発明のパーツキットの構成要素を別個に、逐次的に、同時に、並行して、または経時的に交互に投与し得る。
一実施形態では、本発明のキットは、炎症を治療するために使用される(または治療するのに使用するためのものである)。
一実施形態では、追加の予防薬および/または治療薬を含むパーツキットのパーツは、少なくとも1種の本発明の作用物質、医薬組成物または医薬と同じ投与経路に適した形態である。別の実施形態では、追加の予防薬および/または治療薬を含むパーツキットのパーツは、少なくとも1種の本発明の作用物質、医薬組成物または医薬とは別の投与経路に適した形態である。
TSP1による、CD47を介して媒介される単核食細胞除去を示す一連のヒストグラムである。(A)2〜3か月齢および12か月齢のC57BL6/J野生型マウス、Tsp1−/−マウス、Cd47−/−マウスおよびCd36−/−マウスの網膜下IBA−1単核単球の定量化(1グループ当たりn=6〜9、一元配置ANOVA/ボンフェローニ検定、2〜3か月齢群の系統と比較してp<0.0001)。(B)4500ルクスの一定の緑色光に4日間曝露した後の2〜3か月齢のC57BL6/J野生型マウス、Tsp1−/−マウス、Cd47−/−マウスおよびCd36−/−マウスの網膜下IBA−1単核単球の定量化(n=6〜12/グループ、Anova/ダネット、対照群と比較してp<0.0001)。(C)表記の系統の3か月齢マウスのレーザー損傷から7日後にCD102CNVまで0〜500μmの距離でカウントしたRPE上の網膜下IBA−1単核単球の定量化(n=9〜21/グループ、Anova/ダネット、対照群と比較してp<0,0001)。(D)組換えTSP1を有する、または有さないC57BL6/J野生型マウスに養子移植してから24時間後の表記の系統のCFSEミクログリア細胞の定量化(10μg/ml、n=8〜16/グループ;一元配置ANOVA/ボンフェローニ検定、C57BL6/J CSFEミクログリア細胞と比較してp<0.0001;TSP1を有さない同じ系統のCSFEミクログリア細胞と比較してp<0.0001)。 白血球のSNP rs11200638およびHTRA1発現を示す一連のグラフである。(A)In vitroで表記の時間培養後のHtra1 mRNAの定量的RT−PCRをヒト健常ドナー血液から単離した単球のRps26 mRNAに対して正規化したもの(3つの調製物でほぼ同じ結果が得られた)。(B)ヒト健常ドナー血液のリンパ球、単球および培養24時間後の単球のRps26 mRNAに対して正規化したHtra1 mRNAの定量的RT−PCR(3つの調製物でほぼ同じ結果が得られた)。(C)rs11200638がホモ接合型のウェット型AMDの患者ならびに年齢をマッチさせた遺伝子多型のない対照被験者の単球を24時間培養後の、新鮮な血液に由来するリンパ球および単球のRps26 mRNAに対して正規化したHtra1 mRNAの定量的RT−PCR(nを散布図で示す;マン・ホイットニー:新鮮なリンパ球p=0.0012;新鮮なPBMCp=0.0353;24時間後のPBMCp=0.0312)。PBMC:末梢血単球。 HTRA1が媒介するTSP1分解を示す図である。(A)組換えTSP1、および組換えHTRA1と37℃で共インキュベートした組換えTSP1のクーマシー染色およびウエスタンブロット。(B)組換えTSP2、および組換えHTRA1と37℃で共インキュベートした組換えTSP2のクーマシー染色およびウエスタンブロット。(C)および(D)(n=9〜39/グループ;マン・ホイットニーp=0.0013、PBSを注射したTsp1−/−マウス対TSP1を注射したTsp1−/−マウス;p=0.0014、TSP1を注射したTsp1−/−マウス対rHTRA1消化rTSP1を注射したTsp1−/−マウス)の硝子体内注射を実施した野生型マウスおよびTsp1−/−マウスの3か月齢マウスのレーザー損傷から7日後の(C)CD102CNVまで0〜500μmの距離でカウントしたRPE上の網膜下IBA−1単核単球数および(D)CD102CNVの面積の定量化。 網膜下免疫抑制のモデルである網膜色素上皮細胞(RPE)と共培養した単球(Mo)の生存を示す一連のヒストグラムである:(i)HTRA−1はRPE関連免疫抑制を妨害する。;(ii)CD47アゴニストのTSP1およびFASアゴニストのMegaFasLで同時に処理することにより、HTRA1を除去した後に免疫抑制が回復する;(iii)CD47アゴニストペプチドによりHTRA−1の存在下でもHTRA−1による免疫抑制妨害が回復する。(A)HTRA−1の存在下および非存在下でのMo単一培養(実線)およびMo/RPE共培養(点線)の様々な時点後のCFSEMo(右パネル)およびOTX−2陽性RPE細胞(左パネル)の数。;(B)HTRA−1と24時間共培養し、次いで対照と24時間またはTSP−1およびMegaFasLと24時間共培養した後のCFSEMoの数(n=3;Anova/ダネットp=0.0018)。;(C)24時間にわたるHTRA−1との共培養および対照ペプチド4NGGまたはCD47刺激ペプチドPKT16による同時刺激の後のCFSEMoの数(n=3;ANOVAダネットp=0,0286)。(D)48時間にわたるHTRA−1との共培養および表記の濃度の対照ペプチド4NGGまたはCD47刺激ペプチド4NK1もしくはPKT16による同時刺激の後のPU1Moの数(n=8;ペプチドを加えていない対照HTRA1と比較したANOVAダネットp<0,0001)。(E)48時間にわたるHTRA−1との共培養および表記の濃度の対照ペプチド4NGGまたはCD47刺激ペプチド4NK1もしくは4N1K−GGGGGGGG−4N1K二ペプチドによる同時刺激の後のPU1Moの数(n=8;ペプチドを加えていない対照HTRA1と比較したANOVAダネットp<0,0001)。 レーザー損傷Cx3cr1GFP/GFPマウスでの網膜下単核食細胞の除去を示す一連のヒストグラムである。第4日および第7日にPBS、組換えヒトTSP−1(10μg/ml)、4NGG対照ペプチドまたはPKHB1 CD47活性化ペプチド(200μM)を2μl注射した2か月齢Cx3cr1GFP/GFPマウスのレーザー損傷10日後にCD102CNVから0〜500μmの距離でカウントしたRPE上の網膜下IBA−1MPの定量化(n=20〜25回の照射、マン・ホイットニーp<0,0001)。 WT C57BL6/J(上右)およびCd47−/−マウス(下右)にチオグリコラートを注射してから1日後に新たに回収したMo由来Mφ上の近接ライゲーションアッセイで検出されたCD11b−CD47複合体(矢印で示した白い点)の共焦点顕微鏡像を示す一連の写真である。陰性対照は腹膜炎を誘導していないWT C57BL6/Jマウス(左)に対応する。核染色にはヘキストを用いた(灰色;陰性:一次抗体は省いた;実験を3回反復し、類似の結果が得られた)。negCTL=陰性対照、スケールバー=10μm。 第1日にWT C57BL6/JマウスにPBSもしくはrTSP−1(マン・ホイットニーp=0.0048);または対照ペプチド4NGGもしくはCD47活性化ペプチドPKHB1(マン・ホイットニーp=0.0087)を注射した後の第2日の同マウスの滲出液中のCD115F4/80ICAM−2loMo由来Mφの定量化を示す一連のヒストグラムである。
以下の実施例を参照することにより本発明がさらに理解されるであろう。これらの実施例は本発明の具体的な実施形態のうち代表的なものを意図するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
材料および方法
ウエスタンブロット、逆転写およびリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応ならびにELISA
既に記載されている(Houssierら,PLoS Med.2008,5:e39)通りに、モノクローナル抗TSP1抗体(Abcam社)を用いてWB解析を実施した。RT−PCRプライマーをTaqman、照会:Hs01016151_m1から注文した。
ミクログリア細胞調製物
PBS灌流マウスからミクログリア細胞を調製した。Neural Dissociation Kit Papain(miltenyi Biotech社)を用いて脳または網膜を分離した後、70μmでろ過した細胞懸濁物を洗浄し、75%等張Percoll(Percoll Plus、GE Healthcare社)に再懸濁させ、25%PercollおよびPBSを重層した。細胞を4℃、1000gで30分間遠心分離した。75%と25%の境界面にあるリングを収集し、PBSで洗浄し、遠心分離した。
RPE−Mo共培養
単球
ヘルシンキ宣言に従い、国立キャンズ・ヴァン病院眼科センター(パリ、フランス)倫理委員会による承認(第913572号)を受けたヒト単球発現に関する試験の書面および説明による同意を志願者から得た。健常被験者のヘパリン処置静脈血からFicoll Paque層(GE Healthcare社)での1段階の遠心分離によりPBMCを単離し、CD16 Depletion Kit(StemCells Technology社)を用いずにEasySep Human Monocyte Enrichment Cocktailで選別した。マウス腹膜マクロファージ、骨髄由来単球および光受容細胞外節(POS)の単離(いずれも無血清X−Vivo 15培地中)を、既に記載されている(Sennlaubら,EMBO Mol Med.2013,5:1775−1793)通りに実施した。共培養実験に関して、単核単球を、CellTrace(商標)CFSE(Life technologies(登録商標))を用いて染色した後3回洗浄するか、またはPU1免疫組織化学でRPEにMP特異的転写因子が発現していないことにより同定した。
初代RPE培養
食肉処理場から眼球摘出後2〜3時間の新鮮なブタ眼球を入手した。眼球から周辺組織を取り除き、消毒液(Pursept(登録商標))に短時間浸漬した。前眼部の水晶体、硝子体および硝子体を除去した。後眼部をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で2回洗浄し、次いで0.25%トリプシンの存在下、37℃でインキュベートしてRPE細胞を剥離させた。1時間のインキュベーション後、トリプシン溶液を除去し、非動化した20%ウシ胎児血清(FCS)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、抗生物質(1%ペニシリン/ストレプトマイシン)の存在下で細胞を回復させた。細胞を数回洗浄し、次いで培養皿中、37℃でインキュベートした。培養3日後、この細胞を0.25%トリプシンと再びインキュベートし、洗浄し、48ウェル培養プレート(Grenier(登録商標))に150,000細胞/培養ウェルの密度(300,000細胞/Lまたは500μL/ウェル)で播種した。37℃で4日間インキュベートした後、細胞がコンフルエンスに達し、最適な細胞特性(色素沈着が十分な扁平細胞)が得られた。この初代細胞培養物の加齢を避けるため、全ての実験を培養プレートに播種後第5日〜第7日の間に実施した。
モノンサイト(mononcytes)RPE共培養
FCSを含まないDMEM(DMEM+1%ペニシリン/ストレプトマイシンのみ)で共培養する前日、RPE細胞の培地を交換した。単球を48ウェルプレートにRPE細胞の存在下または非存在下、200,000細胞/培養ウェルの濃度で播いた。
共培養ウェルの一部を大腸菌(E.coli)由来のリポ多糖(LPS)1ng/mlまたは組換えHTRA1(R&D社、5μg/ml)と接触させて、全身の炎症性の活性化(LPS)またはAMDと同じ微小環境(HTRA1の増大)を模倣した(上を参照されたい)。37℃で24時間インキュベートした後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(PAF)で4℃にて30分間固定した。
免疫組織化学
PBS−0.1%Triton−クエン酸0.1%の溶液で4%PAFを洗浄した後、RPE細胞を透過処理した。非特異的免疫原部位をPBS−0.1%Triton−5%ウマ血清でブロックした。1時間後、ブロッキング溶液を除去し、細胞をPBS triton0.1%および1%ウマ血清で希釈した一次抗体(ポリクローナルウサギ抗ヒトPU.1、1/200、LifeTechnologies社;ポリクローナルヤギ抗ヒトOTX2、1/500、R&D社)の存在下に置き、4℃で12時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、蛍光色素と結合させPBS−0.1%Triton−1%ウマ血清で希釈した二次抗体をDAPI(核染色)とともに加え、周囲温度で1時間放置した後、PBSで数回洗浄した。
反転蛍光顕微鏡(Arrayscan(登録商標))による読取りおよび自動定量化
1ウェル当たり25視野をArrayscan(登録商標)により解析し、次いで、各培養条件の細胞数をコンピュータプロトコルにより直接カウントした。核はいずれもDAPIで標識され、単球が緑色の488nm(CellTrace(商標)CFSE)で、または/およびRPE細胞が遠赤色の647nm(抗OTX2一次抗体による認識)で示された。複数のプレートの定量化をプールしたグラフについては(図4Dおよび4E)、結果をHTRA1処理条件に対して正規化したPU.1またはOTX2陽性細胞の数の百分率で表した。
消化TSP1+液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC−MS/MS)+スペクトル解析
トリプシン消化
50mM炭酸水素アンモニウムに溶かした5mMジチオトレイトール(dithiotreitol)(AmBic)と37℃で30分間インキュベートすることによりタンパク質を還元し、次いで、50mM AmBicに溶かした15mMヨードアセトアミドと室温で30分間インキュベートすることによりアルキル化した。トリプシン消化を50mM AmBic中、37℃、タンパク質/酵素比25/1で一晩実施した。
マススペクトロメトリー解析
ペプチド混合物に最終濃度が0.1%となるようにギ酸を添加し、HCTultraイントラップ(Bruker社)と連動したU3000 nanoLC(Thermo社)で解析した。ペプチドを、プレカラムRP−C18(5mm、300μm i.d.、100Å、Thermo社)で移動相A(2%ACN/0.1%ギ酸)を用いて流速20μL/分で5分間、濃縮および脱塩し、次いで、分析カラムRP−C18(15cm、75μm i.d.、100Å、Dionex社)で流速300nL/分にて分離した。溶離勾配として、2%〜10%の溶媒B(95%ACN/0.1%ギ酸)を10分間、次いで10%〜35%のBを60分間、35%〜50%のBを10分間流した。イオントラップを、衝突誘起解離(CID)による断片化のために各MSスペクトルから8つの前駆体イオンを選択してポジティブモードで使用した。キャピラリー電圧を2kVに設定し、フルスキャンスペクトルを取得し、100〜2800m/zのMSMSスペクトルを一価イオン排除、ダイナミックエクスクルージョン30秒間および単離幅4Daで取得した。ICCスマートターゲットを250000に設定し、ターゲット質量を622m/zに設定した。
トリプシンペプチドはまた、ポジティブリフレクトロンモードのAutoflexスピード(Bruker社)でα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸をマトリックス(85%CAN、0.1%TFA、10mMリン酸アンモニウム中0.9mg/mLのCHCA)として使用し、質量範囲700〜4000m/zでMALDI−TOF MSによっても解析した。
タンパク質同定
LC−MS/MSデータの解析には、Data Analysis 3.4(Bruker社)を用いて生データを処理した。シグナル強度閾値100000(AU)およびスペクトルデコンボリューションを用いて、最大5000の化合物についてMgfファイルを作成した。SwissProtデータベース(01/04/2015)、Homos sapiens taxonomy(登録数20203)にMascotを用いてProteinScape 2.1(Bruker社)でタンパク質同定を実施した。トリプシンを、切れ残り2の酵素として選択した。Cysのカルバミドメチル化を固定修飾、Metの酸化を可変修飾としてそれぞれ設定し;MS許容誤差およびMS/MS許容誤差を0.5Daに設定した。ペプチドのバリデーションにはp値<0.05であることが必要であった。さらに、酵素としてセミトリプシンを使用し、同じパラメータを用いて解析を実施した。
MALDI−TOFデータについてはBioTools 3.2(Bruker社)およびMascotを用いてPMF解析を実行し、パラメータには以下のもの:SwissProtデータベース(01/04/15)、Homos sapiens taxonomy(登録数20203);酵素としてトリプシンまたはセミトリプシン;切れ残り1;固定修飾としてCysのカルバミドメチル化、可変修飾としてMetの酸化;MS許容誤差60ppmを用い、タンパク質のバリデーションにはp値<0.05であることが必要であった。
動物
Tsp1−/−マウス、CD47−/−マウス、CD36−/−−マウスおよびCx3cr1GFP/GFPマウスは購入したものである(Charles River Laboratories社、Jackson laboratories社)。マウスは全て、Crb1rd8、Pde6brd1およびGnat2cpfl3変異が陰性(Tsp1−/−)であったが、または陰性となるように戻し交配した。マウスを動物施設内で特定の病原微生物が存在しない条件下、12/12時間の明/暗(100〜500ルクス)周期で飼育し、水および通常の飼料を自由摂取させた。実験のプロトコルおよび手順はいずれも、地元の動物管理倫理委員会「Comite d’ethique en experimentation animale Charles Darwin」による承認(第Ce5/2010/011号、第Ce5/2010/044号、第Ce5/2011/033号)を受けた。
PKT16の合成
固相/液相混合法を用いてPKT16を合成した。簡潔に述べれば、2−クロロトリチルクロリド樹脂を予め完全無水CHCl中で2時間膨張させた。Fmoc−Aa−OH(0.32mmol)をCHCl(4mL)中、ジイソプロピエチルアミン(diisopropyethylamine)(DIPEA、4eq.)の存在下で2−CTC樹脂(400mg、充填量=1.6mmol/g)とカップリングさせた。CHCl/MeOH/DIPEA(7:2:1)の混合物、次いでMeOHで洗浄することにより、樹脂上の未反応部位をキャップした。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中20%のピペリジンを用いてFmoc基を除去した後、Fmoc脱保護のために20%ピペリジン/DMF、活性化のために2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HBTU/HOBt)、塩基としてDIPEAおよび溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、標準的なFmoc保護アミノ酸(Bachem社、スイス)により鎖伸長を実施した。直鎖状ペプチド鎖の組立てが完了したとき、樹脂を収縮させるため、最終洗浄段階としてさらにMeOH洗浄を実施した(1×1分、1×15分)。
HFIP/CHClカクテル(1:4、v/v)で2回、それぞれ15分間処理することにより、樹脂からペプチドを切断した。反応混合物をろ過し、樹脂をCHClおよびMeOHで順次洗い流した。ろ液をプールし、次いで減圧下で溶媒を蒸発させた。最後に、ドライアイスで冷やしたEtO2を用いて粗直鎖状ペプチドを3回沈殿させ、遠心分離(3×5分、7800rpm)および乾燥(窒素流下)の後、回収した。粗物質をHPLCにより精製した。
レーザー損傷モデル
手術用顕微鏡に装着した532nm眼科用レーザー(Vitra Laser、532nm、450mW、50ミリ秒および250μm)でレーザー凝固を実施した。ガラスキャピラリー(Eppendorf社)および微量注入器を用いて、2μlのHTRA1および/またはTSP1の硝子体内注射を実施した。注射溶液2μlは、50μg/mlTSP1およびHTRA1を含み、この濃度は、各タンパク質が眼内体積で約10分の1に希釈されると仮定した眼内濃度5μg/mlに相当する。一連の実験では、光刺激後およびレーザー損傷後に加齢に伴い過度の網膜下炎症を発症するCx3cr1GFP/GFPマウス(Combadiereら,J Clin Invest.2007,117:2920−2928;Levyら,EMBO Mol Med.2015,7:211−226)にレーザー損傷を実施した。損傷後第4日(MP浸潤が最大になるとき)および第7日に、PBS、組換えTSP1(10μg/ml)、4NGG対照ペプチドまたはCD47活性化ペプチドPKT16(200μM)のいずれかの100μM溶液を2μlの体積で注射し、第10日、フラットマウントしたRPE/脈絡膜フラットマウントで網膜下炎症を評価した。
光刺激モデル
既に記載されている(Sennlaubら,EMBO Mol Med.2013,5:1775−1793)通りに、2〜3か月齢のマウスを6時間暗順応させ、瞳孔を散大させ、緑色LED光に4日間曝露し(午前2時開始、4500ルクス、JP Vezon equipements社)、次いで12時間/12時間周期の通常の施設条件下で飼育した。光曝露終了時または10日後(第14日)にMPカウントを評価した。
単核食細胞定量化のための脈絡膜および網膜のフラットマウント
眼球を摘出し、4%PFAで30分間固定し、輪部で切開し;角膜および水晶体を廃棄した。網膜をRPE/脈絡膜/強膜から慎重に剥がした。網膜および脈絡膜を抗IBA−1(Wako chemicals社)、次いで二次抗体の抗ウサギAlexa 488(Molecular Probes社)とインキュベートし、ヘキスト染色を実施した。脈絡膜および網膜をフラットマウントし、蛍光顕微鏡DM5500B(Leica社)で観察した。RPE/脈絡膜フラットマウント全体および網膜の外節側のIBA−1+細胞をカウントした。
網膜下養子MP移植および除去
Levyら(EMBO Mol Med.2015,7:211−226)に従い、図のマウス系統の脳ミクログリアを上記の通りに選別し、10μM CFSE(Life Technologies社)で標識し、洗浄し、PBSに再懸濁させた。麻酔をかけた10〜14週齢の野生型マウスの網膜下腔にガラスマイクロキャピラリー(Eppendorf社)および微量注入器を用いて細胞12000個(4μL)を注射した。眼圧上昇を回避し、4μLの溶液で網膜が剥離するよう網膜下注射の前にガラスキャピラリーで孔を開けた。眼底検査により網膜下注射を確認した。特定の実験では、細胞に組換えヒトTSP1(10μg/ml、R&D Systems社)を同時に注射し、24時間後に眼球を摘出し、4%PFAで30分間固定し、DAPIで標識した。出血のみられる眼球は廃棄した。フラットマウントで網膜下腔内の網膜のRPE側およびRPEの頂端側のCFSE+細胞を定量化した。
チオグリコラート誘導性腹膜炎およびフローサイトメトリー
10週齢の雄C57BL/6JマウスおよびCd47−/−マウスに3%チオグリコラート(T9032、Sigma社)0.5mlをi.p.注射することによりマウス腹腔滲出細胞(PEC)を誘発した。1日後、氷冷PBSで腹膜を洗い流すことによりPECを単離した。製造業者のプロトコルに従い磁気ソーティング(EasySep Mouse Monocyte Enrichment Kit、Stemcell Technologies社)によりMφを陰性選択し、X−VIVO 15培地(Lonza社)に再懸濁させ、Lab−Tek(登録商標)Chamber Slide(商標)(Nunc(登録商標))に播いた。
5%CO2雰囲気下、37℃で2時間経過した後、細胞をPBSですすぎ、4%パラホルムアルデヒド溶液で10分間固定し、すすぎ、細胞をTritonの0.1%PBS溶液中で10分間インキュベートすることにより透過処理した。Duolink(登録商標)PLAアッセイを製造業者の指示(Sigma−Aldrich社)通りに実施した。簡潔に述べれば、ウサギ抗CD11b(ab75476、Abcam社;1:1000)およびヤギ抗CD47(AF1866、R&D Systems社;1:1000)を4℃で一晩インキュベートした。そののち、抗ウサギおよび抗マウスオリゴヌクレオチド標識二次抗体(PLA Probes社)をインキュベートし、次いで、リガーゼおよびポリメラーゼ反応によりシグナルを増幅した。Olympus FLUOVIEW FV1000共焦点レーザー走査顕微鏡で画像を撮影した。
統計解析
Graph Pad 6(GraphPad Software社)をデータ解析およびグラフ表示に用いた。数値はいずれも平均+/−SEMで報告する。実験計画に応じて平均値間の一元配置ANOVA、次いでボンフェローニの事後検定(多重比較)またはマン・ホイットニーのU検定(2グループ間比較)により統計解析を実施した。n値およびP値は図の説明文に示す。
実施例1:TSP1はCD47を介してMP除去を媒介する
Tsp1−/−マウスには、実験的に誘導した脈絡網膜炎、光誘導損傷およびレーザー誘導損傷後に網膜下炎症の増大および長期化がみられることから、TSP1は網膜下単核単球除去に関与する(Wangら,Arch Ophthalmol.2012,130:615−620;Ngら,Invest Ophthalmol Vis Sci.2009,50:5472−5478;Chenら,Am J Pathol.2012,180:235−245)。この作用を媒介するTSP1受容体は明らかにされていない。2〜3か月齢および12か月齢のマウスの網膜およびRPE/脈絡膜のフラットマウントにおいて網膜下IBA−1単核単球を定量化したところ、同じ条件で飼育した野生型個体と比較して、Tsp1−/−マウスおよびCd47−/−マウスには加齢による網膜下単核単球の有意な増加がみられたが、Cd36−/−マウスにはみられなかった(図1A、マウスは全て、Crb1rd8遺伝子を排除するように戻し交配し、ほかにケージを覆うものがない状態で、ケージレベルで100〜500ルクス、12時間ずつの明/暗周期の下で育てた)。
同様に、4日間の光刺激後、Tsp1−/−マウスおよびCd47−/−マウスでは、網膜下単核単球が有意に多く蓄積し、通常の光条件下に戻してさらに10日経過した後も単核単球が蓄積し続けた(図1B、本明細書において用いた本発明者らの光刺激モデルの強度は、易炎症性Cx3cr1GFP/GFPマウスには網膜下炎症を誘導するが、WTマウスには誘導しないよう調整したものである(Sennlaubら,EMBO Mol Med.2013,5:1775−1793))。さらに、レーザー照射から7日後、Tsp1−/−マウスおよびCd47−/−マウスでは、網膜下IBA−1単核単球が有意に多かった(図1C)。
これらの結果から、TSP1がその受容体CD47を介して網膜下MP除去に関与することが示唆された。
野生型マウス、Tsp1−/−マウスまたはCd47−/−マウスのCFSE標識脳ミクログリア細胞を野生型レシピエントの網膜下に注射した養子移植実験。24時間後のフラットマウントの網膜下ミクログリア細胞集団の評価から、Tsp1−/−ミクログリア細胞およびCd47−/−ミクログリア細胞が野生型ミクログリア細胞と比較して有意に除去に抵抗性であることが示された(図1D)。組換えTSP1の同時注射により、野生型ミクログリア細胞の除去が極めて有意に促進され、Tsp1−/−ミクログリア細胞の表現型が正常に戻ったが、Cd47−/−ミクログリア細胞には何ら効果はみられず、このことから、TSP1とCD47の相互作用がミクログリア細胞除去を媒介することが確認された(図1D)。
まとめると、これらのデータは、TSP1欠損個体およびCD47欠損個体がともに加齢、光およびレーザーにより誘導される網膜下単核ファーゴサイト(phargocyte)蓄積を生じることから、TSP1はそのCD47受容体を介して網膜下ミクログリア細胞を除去し、この相互作用が生理学的に重要であることを示している。興味深いことに、CD36−/−は網膜下単核ファーゴサイト(phargocyte)蓄積というTsp1−/−表現型を共有していなかったことから、本発明者らのデータは、この機序にはCD36もTGFβ(CD36の不在下では活性化されない)もあまり関与していないことを示唆している。
実施例2:AMD関連SNP rs11200638は単球由来マクロファージのHTRA1発現を有意に増大させる
遺伝子に関連する多数の研究から、染色体10q26はAMDに関連する領域の主要な候補であることがわかっている。リスクハプロタイプは、高温要求性Aセリンペプチダーゼ1(HTRA1)プロモーターの保存されたCpGアイランド(DNAメチル化部位)のCGパターンを破壊するSNP rs11200638を含む(Yangら,Science.2006,314:992−993)。このSNPは、リンパ球でのHTRA1転写のエピジェネティックな阻害を取り除くことがわかっている(Yangら,Science.2006,314:992−993)。HTRA1を発現することができるマクロファージ(Houら,Arthritis and rheumatism.2013,65:2835−2846)とは対照的に、リンパ球はAMD患者の網膜にはあまり存在しない。単球由来マクロファージのHTRA1発現を評価するため、最初に、健常ドナーから新たに精製し様々な長さの時間培養したCD14末梢血単球(PBMC)でのHTRA1発現を解析した。HTRA1のRT−PCR解析から、単球からマクロファージへの分化の初期にHTRA1が迅速かつ有意に誘導され、それが少なくとも168時間にわたって高レベルで持続することがわかった(7日間;図2A)。RT−PCR解析では、新鮮なPBMCにはHtra1 mRNAが新鮮な血液リンパ球の10倍発現し、この発現は、24時間のPBMC培養の後にさらにその10倍増加することが明らかになった(図2B)。rs11200638がホモ接合型のウェット型AMDの患者および年齢をマッチさせた遺伝子多型のない対照被験者の定量的RT−PCRにより、rs11200638がリンパ球において有意に高いHtra1 mRNAレベルと関係があるのみならず、さらに重要なことに、PBMCおよび初期PBMC由来マクロファージが、AMDでは多量のHtra1を発現し、蓄積することから、PBMCおよび初期PBMC由来マクロファージでも有意に高いHtra1 mRNAレベルに関連することが確認された(図2C)。
まとめると、以上のデータから、rs11200638は、リンパ球でのHtra1転写増大に関連し、その観察結果は、本発明者らがAMDにおいて蓄積し、病原性の役割を演じることを示した単核単球にも及ぶことが確認される。
実施例3:HTRA1はTSP1を分解する
HTRA1はどちらかといえば非選択性のプロテアーゼであり、複数種のタンパク質を分解することがわかっている(Anら,Invest Ophthalmol Vis Sci.2010,51:3379−3386)。興味深いことに、組換えHTRA1(rHTRA1)と37℃で24時間共インキュベートした組換えTSP1(rTSP1)の電気泳動ゲルのクーマシー染色から、HTRA1がTSP1を分解することが明らかになった(図3A)。タンパク質のウエスタンブロット解析では、共インキュベートした条件下で完全な大きさのTSP1が消失し、これより小さいバンドが複数現れることが確認された(図3A)。組換えTSP2/rHTRA1と共インキュベートしたタンパク質の電気泳動ゲルのクーマシー染色では、そのような分解はみられなかった(図3B)。次に、in vivoのレーザー誘導網膜下炎症におけるrTSP1およびHTRA1消化TSP1の機能性を解析した。第3日にPBS、rHTRA1、rTSP1およびrHTRA1消化rTSP1を硝子体内注射した野生型マウスおよびTsp1−/−マウスの第7日のレーザー誘導網膜下炎症の定量化により、(i)野生型マウスではrHTRA1が網膜下炎症を悪化させるが、Tsp1−/−マウスでは悪化させないこと、および(ii)rTSP1は、この炎症を有意に減少させるが、rHTRA1消化rTSP1は減少させないことが明らかになった(図3C)。その結果、脈絡膜フラットマウントでCD102CNVによって覆われた表面として第7日に測定した関連する脈絡膜血管新生にも同様の差がみられた(図3D)。
まとめると、これらの結果は、HTRA1がTSP1を消化し、その結果、in vivoのレーザー誘導炎症におけるTSP1の抗炎症作用に関する機能を完全に喪失することを示している。
実施例4:HTRA1はCD47を活性化する2つのVVM部位の間でTSP1を切断する
TSP1のHTRA1切断部位を明らかにするため、TSP1の消化後フラグメントを液体クロマトグラフィー−タンデムマススペクトロメトリーに供した。この解析から、HTRA1はTSP1を(i)インテグリンα3β1との結合能があることがわかっている部位で、(ii)「2型」ドメインの間にある2つの部位で、および(iii)それぞれがCD47受容体と相互作用することが可能であり、その効率の高いCD47活性化に関与する2つのバリン−バリン−メチオニン(VVM)配列の間にある2つの部位で切断することが明らかになった。TSP1のCD36またはLAP結合ドメインは直接影響を受けなかった。
これらの結果およびTSP1がCD47を介して免疫抑制能を展開するという観察結果(図1)は、HTRA1による切断がTSP1の2つのVVM部位を切り離すことから、HTRA1はCD47を少なくとも部分的に不活性することを示唆している。実際、TSP1の半最大有効濃度(EC50)は、1つのVVM部位のみを含むCD47活性化ペプチドまたはTSP2のEC50よりはるかに低い。
実施例5:CD47の活性化はin vitroの網膜下免疫抑制に対するHTRA1の作用を逆転させる
網膜下免疫抑制に対するHTRA1の作用を評価するため、CFSE標識ヒト単球とブタRPEの共培養モデルを開発した。このモデルでは、網膜下腔への単核単球のin vivo養子移植(Levyら,EMBO Mol Med.2015,7:211−226)と同様に、CFSE単球の少なくとも50%が24時間以内に迅速に除去されるが、RPE細胞数(OTX−2核のカウントにより示される)は影響を受けない(図4Aおよび4B)。共培養物に組換えHTRA1(5μg/mL)を添加すると、このRPEの免疫抑制が極めて有意に阻害され、24時間後のhMo数は対照条件より3〜4倍多かった(共培養対照群と比較してp<0.0001)。核RPEマーカー(下を参照されたい)があまり減少しなかったため、共培養物中のRPE細胞数はOTX2を用いて自動的にカウントした(Arrayscan)。transwellを用いた実験では、Mo細胞死を誘導するにはRPE細胞との間の物理的接触が必要であり、HTRA1の熱不活化によりその作用が消失することが示された(不掲載)。
AMDにおいて観察される網膜下微小環境を模倣するため、共培養物を組換えHTRA1(5μg/mL)の存在下に曝露した。プロテアーゼの存在によりRPEの免疫抑制作用が有意に阻害され(おそらくTSP1の不活性化による)、単球の生存能が有意に増大した(図4A、左パネル)。HTRA1は、RPE細胞の生存能に影響を及ぼさなかった(図4A、右パネル)。HTRA1誘導性TSP1不活性化および免疫抑制の阻害を逆転させる試みで、培地および共培養物をPBSまたはTSP1(CD47を活性化するため)とMegaFasl(FASのゴニスト)の混合物のいずれかによってさらに24時間処理した。48時間後、PBSで処理したHTRA1曝露共培養物のMoカウント数は、48時間の対照条件と比較して有意に高い状態で維持された。しかし、FASとCD47アゴニストTSP1を組み合わせて処理した場合、相当数のMoが除去され、その数に48時間後の対照培養物との有意差は認めらなかった(図4B)。次に、本発明者らは、CD47活性化ペプチドPKT16がHTRA1共培養条件下でMo除去を促進することができるかどうかを試験した。CD47活性化ペプチドPKT16(100μM)または4NGG対照ペプチドをHTRA1処理共培養物に直接加えた。CFSE単球の定量化では、4NGGは単球数に対して有意な効果を示さなかったが、PKT16はHTRA1誘導性の単球生存能増大を完全に逆転させたことが明らかである(図4Cの左パネル)。OTX2+核の数が変化しなかったことから、4NGGまたはPKT16のRPE細胞に対する毒性は全く認められなかった(図4Bの右パネル)。さらに、用量反応実験では、4N1KおよびPKT16は4NNGとは異なり、48時間後のHTRA1活性化共培養物中のMo数(これらの実験では、CFSE染色を回避するPU1免疫組織化学法により認識される)を用量依存性に減少させることが明らかになった(図4D)。さらに、HTRA1活性化共培養物を様々な濃度(0μM、4μM、20μMおよび50μM)の対照ペプチド4NGG、CD47活性化ペプチド4N1Kまたは4N1K−GGGGGGGG−4N1Kペプチド(名称d4N1K、Genepep社)とインキュベートした。48時間の培養後の定量化により、2つのCD47受容体と結合するd4N1Kは、加水分解されていないTSP1と同様に、共培養モデルでのMo除去の誘導に有意に有効であることが示された(図4E).
実施例6:CD47の活性化はレーザー誘導易炎症性Cx3cr1GFP/GFPマウスの網膜下単核食細胞除去をin vivoで促進する。
In vivoでのCD47活性化の効果を評価するため、光刺激後およびレーザー損傷後に加齢に伴い過度の網膜下炎症を発症するCx3cr1GFP/GFPマウス(Combadiereら,JCI.2007;Levyら,EMBO Mol Med.2015)にレーザー損傷を実施した。損傷後第4日(MP浸潤が最大になるとき)および第7日に、PBS、TSP1、対照ペプチド4NGGまたはCD47活性化ペプチドPKT16の溶液(100μM)を2μlの体積で注射し、第10日、フラットマウントにしたRPE/脈絡膜フラットマウントで網膜下炎症を評価した。
結果から、TSP1またはPKT16を注射した場合、レーザー照射後10日までに、レーザー照射に隣接するRPEに観察された網膜下IBA−1MPがPBSまたは対照ペプチド4NGGと比較して有意に効率的に除去されたことが示される(図5)。
実施例7:CD47活性化は腹膜炎時のrecMφ除去を促進する
CD47が他の病的状況下で炎症解消に影響を及ぼすかどうかを試験するため、ともに異なる速度論でアポトーシス促進性の除去を受ける初期の好中球蓄積とそれに続く動員された単球由来炎症性マクロファージ(recMφ)を特徴とする急性チオグリコラート誘導腹膜炎のモデルを用いた(Gautierら,Blood.2013,122:2714−2722)。
近接ライゲーションアッセイにより、腹膜炎誘導後第1日に回収したWT recMφに多数の特異的CD11b/CD47複合体が明らかとなった(図6、上右、矢印により示される白い点)。対照として、CD47−/−マウスにはこの複合体は観察されない(図6、下右)。
実験から、第1日に組換えTSP1またはCD47特異的活性化ペプチドPKHB1を単回腹腔内注射することにより、第2日に観察されるようにrecMφの除去が有意に促進されたこともわかる(図7)。
以上の結果から、CD11bとCD47の複合体が腹腔recMφ上に存在し、またCD47活性化が腹膜炎時のrecMφ除去を促進することがわかる。

Claims (30)

  1. リンカーを介して連結された少なくとも2つのペプチド単量体を含む多量体ペプチドまたはポリペプチドであって、前記少なくとも2つのペプチド単量体がCD47を活性化する、多量体ペプチドまたはポリペプチド。
  2. 前記少なくとも2つのペプチド単量体が、4N1K、PKHB1およびPKT16を含む群から選択される、請求項1に記載の多量体ペプチドまたはポリペプチド。
  3. 前記リンカーがペプチドリンカー、好ましくはGlyリッチリンカーである、請求項1または2に記載の多量体ペプチドまたはポリペプチド。
  4. 二量体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多量体ペプチドまたはポリペプチド。
  5. 配列番号7を含む、または配列番号7からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多量体ペプチドまたはポリペプチド。
  6. プロテアーゼHTRA1に耐性を示すものが、プロテアーゼHTRA1に対する耐性である、修飾TSP1タンパク質またはそのフラグメント。
  7. 少なくとも1つのHTRA1切断配列の少なくとも1個のアミノ酸が、欠失している、置換されている、または付加されている、請求項6に記載の修飾TSP1タンパク質。
  8. 配列番号8の242〜243位の残基VTおよび/または配列番号8の288〜289位の残基QVが欠失している、請求項6または7に記載の修飾TSP1タンパク質。
  9. 配列番号8の242位および/または289位の残基Vが置換されている、請求項6または7に記載の修飾TSP1タンパク質。
  10. 炎症の治療に使用するための作用物質であって、CD47を活性化する作用物質。
  11. CD47を直接活性化する、請求項10に記載の作用物質。
  12. CD47アゴニスト、好ましくはTSP1ペプチド模倣物である、請求項11に記載の作用物質。
  13. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の修飾TSP1タンパク質またはそのフラグメントである、請求項11に記載の作用物質。
  14. 4N1K、PKHB1およびPKT16を含む群から選択される活性化ペプチドである、請求項11に記載の作用物質。
  15. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の多量体ペプチドまたはポリペプチドである、請求項11に記載の作用物質。
  16. CD47を間接的に活性化する、請求項10に記載の作用物質。
  17. TSP1活性化因子、HTRA1阻害剤およびFas活性化因子を含む群から選択される、請求項16に記載の作用物質。
  18. 前記炎症が、急性炎症または慢性炎症である、10〜17のいずれか1項に記載の作用物質。
  19. 前記炎症が治療抵抗性炎症、好ましくは治療抵抗性低悪性度慢性炎症である、請求項10〜18のいずれか1項に記載の作用物質。
  20. 前記炎症が、単核食細胞蓄積に関連する炎症である、請求項10〜19のいずれか1項に記載の作用物質。
  21. 前記炎症が、加齢黄斑変性;加齢黄斑症;網膜色素変性;パーキンソン病、多発性硬化症またはアルツハイマー病などの神経変性疾患;肥満またはアテローム性動脈硬化症などの代謝障害、および関節症などの加齢関連慢性変性疾患を含む群から選択される、請求項10〜20のいずれか1項に記載の作用物質。
  22. 前記炎症が、加齢黄斑変性;加齢黄斑症;網膜色素変性;および神経変性疾患を含む群から選択される加齢性疾患である、請求項10〜21のいずれか1項に記載の作用物質。
  23. 前記炎症が、加齢黄斑変性;加齢黄斑症および網膜色素変性を含む群から選択される眼の炎症である、請求項10〜22のいずれか1項に記載の作用物質。
  24. 前記炎症が加齢黄斑変性である、請求項10〜23のいずれか1項に記載の作用物質。
  25. 請求項10〜24のいずれか1項に記載の作用物質を少なくとも1種含む、組成物。
  26. CD47アゴニストとFas活性化因子とを含む、請求項25に記載の組成物。
  27. 炎症、好ましくは加齢黄斑変性の治療に使用するための、CD47を活性化する少なくとも1種の作用物質と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物。
  28. 炎症、好ましくは加齢黄斑変性の治療に使用するための、CD47を活性化する少なくとも1種の作用物質を含む医薬。
  29. 好ましくは硝子体内注射により眼内に投与される、または局所眼内投与により適用されることを特徴とする、請求項10〜24のいずれか1項に記載の作用物質、請求項27に記載の医薬組成物または請求項28に記載の医薬。
  30. 請求項10〜24のいずれか1項に記載の作用物質、請求項27に記載の医薬組成物または請求項28に記載の医薬を少なくとも1種含む、キット。
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