JP2019515291A - 核燃料塩 - Google Patents

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Abstract

本開示は、特定の溶融塩原子炉の構成および関連するシステムおよび方法に使用可能な核燃料塩を記載する。ウランおよび他の核***性元素の二成分、三成分、四成分塩化物燃料塩が記載される。さらに、UClxFyの燃料塩および臭化物燃料塩が開示される。本開示はまた、そのような燃料塩を製造する方法およびシステム、原子炉部品の腐食を減らす塩を生成する方法およびシステム、兵器用途には不適切な燃料塩を生成する方法およびシステムを開示する。

Description

発明の詳細な説明
本願は、2017年5月2日にPCT国際特許出願として提出されたものであり、米国特許仮出願62/330,695(提出日2016年5月2日)の優先権の利益を主張するものであり、これらの仮出願は参照により本明細書に含まれる。
〔イントロダクション〕
溶融燃料を原子炉において利用して発電することは、固体燃料に比べて大きな利点がある。例えば、溶融燃料炉は、一般に、固体燃料の構築において必要な燃料作製プロセスを抑えつつ、固体燃料炉よりも高い電力密度を提供する。また、溶融燃料炉は、塩浄化を行わないシステムにおいても、任意の炉においてより高いレベルの燃焼度を提供し得る。
原子炉における使用に好適な溶融フッ化物燃料塩が、四フッ化ウラン(UF)および他のフッ化物塩を混合したものを用いて開発されている。例えば、UF系燃料塩は、LiF、BeF2、ThFおよびUFの混合物を含み得る。なお、このようなUF系燃料塩組成物のファミリーにおける重金属含有量は、およそ40〜45重量%の範囲である場合があり、その融解温度はおよそ500℃である場合がある。
〔核燃料塩〕
本開示は、特定の溶融塩原子炉設計において核燃焼として使用可能な塩化物のウラン塩の詳細な三つの実施形態を記載する。親出願には、ウランだけでなく他の関連技術の二成分、三成分、四成分塩化物燃料塩の広範囲が記載されている。本開示は、特に特定の原子炉設計に適するように決定された燃料塩の実施形態に注目する。
一形態において、本開示の燃料塩は、(1)600℃未満の融点、(2)1から50モル%のUCl、(3)1.5g/ccより大きいウラン濃度、および(4)600J/kg−Cより大きい比熱、を有するUCl、UCl、およびNaClの三成分塩化物燃料塩を含む。燃料塩の実施形態は、600℃、550℃、500℃、450℃、400℃、もしくは、さらに350℃未満の融点を有していてもよい。燃料塩の実施形態は、1.5g/cc、1.6g/cc、1.7g/cc、1.8g/cc、1.9g/cc、2g/cc、もしくは、さらに2.1g/ccより大きいウラン濃度を有していてもよい。燃料塩の実施形態は、600J/kg−C、700J/kg−C、800J/kg−C、もしくは、さらに900J/kg−Cより大きい比熱を有していてもよい。
燃料塩の実施形態は、(17UCl−71UCl−12NaClに対して)UClの量を減らしてもよい。上述の特性に加え、そのような燃料塩の実施形態は、50モル%未満のUCl、40%、30%、20%、15%未満、もしくは、さらに10モル%未満のUClであってもよい。ウラン燃料塩の実施形態は、モル分率で1から50%までのUClを有する。燃料塩の実施形態は、モル分率で1から33%までのUClを有する。燃料塩の実施形態は、核***性燃料塩が有するNaClのモル分率が40から66%までになるモル分率のNaClを有する。
本明細書に記載されたシステムおよび方法を特徴づける他の様々な利点および特徴は、以下の詳しい記載を読み、関連する図面を見れば明らかとなるであろう。追加の特徴は、以下の記載で示されるとともに、その一部は記載から明らかであろうし、あるいは本技術を実践することにより知りうる。本技術の利点および特徴は、明細書、その請求項、および添付された図面に特に示された構造により実現し、達成することができるであろう。
上記の概略的な記載および以下の詳細な記載はともに例示的なものであり、請求項に記載した発明をさらに説明するためのものであることを理解されたい。
〔図面の簡単な説明〕
以下の図面は、本願の一部をなすものであり、記載される技術を説明するものであって、本発明の範囲をいかなるかたちでも限定することを意図するものではない。本発明の範囲は添付の請求項に基づくものとする。
図1A〜図1Gは、高速スペクトル増殖燃焼モードで運転する溶融塩原子炉の新規な実施形態の概要を示す。
図2は、溶融塩原子炉の他の構成を示す。
図3は、特定の炉向け燃料の作製方法の一実施形態を示す。
図4は、UCl−UCl−NaCl燃料塩の予測三元状態図である。
図5は、66NaCl−34UCl組成物を利用する図1A〜図1Fに記載の炉の炉心部を大きくした場合における、時間関数としてのモデルkeffを示す。
図6は、本開示の1つ以上の実施形態に係る、高速スペクトル溶融塩原子炉への燃料装荷に関する操作例を表すプロセスフローを示す。
図7は、ClおよびBrの主な同位体の(n,γ)捕獲断面積を示す。
図8は、17UBr−71UBr−12NaBrおよび235U濃縮19.99%の臭化物燃料塩の実施形態の増殖燃焼曲線のモデル結果を示す。
図9は、UClを含有する燃料塩の製造方法の一実施形態を示す。
図10は、図9の方法を基にした、UClを含有する燃料塩の製造を協調的に行う方法の一実施形態を示す。
図11は、図10の方法を行う際に好適に使用できる接触容器およびそれらの接続を概略的に示す。
図12は、溶融核燃料を使用する原子炉において腐食を減らす方法の一実施形態を示す。
図13は、溶融塩原子炉において燃料塩に対向する材料として使用し得る合金のリストである。
図14は、溶融塩原子炉の操作方法を示す。
図15は、放射性同位元素を1種類以上添加することにより、武器として応用され得る可能性を低減した燃料塩を作製する方法の一実施形態を示す。
図16は、塩化アンモニウムを用いてUClを製造する方法の一実施形態を示す。図示した方法の実施形態において、固体状態のUOおよびNHClの混合物をウラン作製操作において作製する。
図17は、UClFの製造方法の一実施形態を示す。
図18は、UClFの別の製造方法の一実施形態を示す。
図19は、ドレインタンクを利用して燃料精製を行う精製システムの一実施形態を示す。
図20は、例えば図19のオフガス処理システム等の、溶融塩炉によって生産された気体核***生成物の処理において好適に使用されるオフガス処理システムの一実施形態を示す。
図21は、図19および図20に記載されたシステムに基づいて燃料塩を精製する方法の一実施形態を示す。
図22は、製造された実施形態の燃料塩の図表における位置を示すUCl−UCl−NaCl燃料塩の三元状態図である。
〔発明を実施するための形態〕
本開示は、特定の溶融塩原子炉の構成および関連するシステムおよび方法に使用可能な核燃料塩の諸実施形態を記載する。ウランおよび他の核***性元素の二成分、三成分、四成分塩化物燃料塩が記載される。さらに、UClの燃料塩および臭化物燃料塩が開示される。本開示はまた、そのような燃料塩を製造する方法およびシステム、原子炉部品の腐食を減らす塩を生成する方法およびシステム、兵器用途には不適切な燃料塩を生成する方法およびシステムを開示する。
本開示は、高速スペクトル溶融塩増殖燃焼原子炉燃料、および燃料製造、管理、使用の方法に関する。
溶融塩核***原子炉に関する従来および現在の研究の多くは、ウランベースおよびトリウムベースのフッ化塩に焦点を当ててきた。溶融塩化物は、二、三の主要な点のために、フッ化物ベースの塩とは大きく異なっている。第一に、塩化物はフッ化物よりも減速能力がいくらか低い。塩化物が37Cl同位元素で濃縮されているときはとりわけそうである。第二に、塩化物は、適当な融点を有する混合物において重金属濃度を非常に高くし得る。これは、塩化ウラン混合物を高速中性子スペクトルにおいて用いることを可能にする点である。一般的に、フッ化物塩は10〜20モル%を超える重金属を含む。これまで提案されたフッ化物塩混合物は、一般的に、モル濃度で63〜72モル%のLiF(濃縮されて99.997%Liとなっている)、16〜25モル%のBeF、6.7〜11.7モル%のThF、そしてわずか0.3モル%のUFを含んでいた(重金属は40〜45重量%)。そのような塩は500℃で融けた。一方、本明細書で提案される塩化物の一実施形態は、以下でさらに詳しく述べるように、17UCl−71UCl−12NaClの組成を有しており(重金属は62重量%)、やはり500℃で融ける。
本開示の燃料の実施形態のいくつかは、燃料塩の再処理を伴わない平衡または疑似平衡増殖燃焼反応を提供し、一方、別の実施形態は、燃料塩の再処理を伴わない非平衡増殖燃焼反応を提供する。これは注目すべきことである。というのは、従来の溶融塩原子炉の構成では、原子炉内での燃料塩の化学的分離なしには平衡増殖燃焼反応を達成できず、燃料塩の化学的再処理を進行させることが必要だったからである。例えば、本開示は、平衡増殖燃焼反応、疑似平衡増殖燃焼反応、および/または非平衡増殖燃焼反応を示す高速スペクトル原子炉で用いるのに適当な溶融塩化物燃料塩を開示するが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、再処理はほとんどあるいはまったく必要とされず、用いられるわずかな再処理も、物理的な再処理(例えば、ガススパージングおよび/または濾過などによる、副産物の物理的分離)のみでよい。本開示の溶融燃料塩の様々な実施形態は、第一の塩化ウラン、第二の塩化ウラン、および/または付加的な金属塩化物からなる混合物を含んでよい。本開示のいくつかの実施形態は、四塩化ウラン(UCl)含有レベルがモル分率で約5%の溶融燃料塩を提供する。これは、溶融燃料塩において、運転可能な融解温度を保ちつつ、高い重金属含有量(例えば、約61重量%)を達成することを助ける。UClを含む諸実施形態は、UCl、三塩化ウラン(UCl)、および/または付加的な金属塩化物(例えば、NaCl)を、所望の重金属含有レベルおよび融解温度(例えば、330〜800℃)が達成されるように混合することにより、生成できる。
本開示の溶融燃料塩によって達成できる高レベルの核***性物質含有量、および上記溶融燃料塩の生成しやすさのため、本開示の燃料には、核不拡散対策を施すことが望ましい。本開示の実施形態のいくつかは、1つ以上の選択されたランタニドを事前に加え(つまり、始動前に加え)て、初期塩(initial salt)の活性を増した溶融燃料塩を提供する。さらに、のちに分離しない限り、ランタニドは燃料内で中性子吸収物質として機能し、それにより、当該ランタニド入り燃料の兵器レベル用途の好ましさを減らす。
(溶融塩原子炉)
燃料塩の実施形態をより詳細に説明する前に、当該燃料塩の実施形態を用いるのに適当な溶融燃料塩原子炉の一般的な部品について簡単に説明しておくのが助けとなるだろう。図1A〜図1Fは、高速スペクトル増殖燃焼モードで運転するための溶融塩原子炉100の新規な実施形態を一般的に示す。図2は、溶融塩原子炉200の異なる構成を示す。これらは、本明細書に記載する燃料の実施形態を説明するための状況を提供する例に過ぎず、潜在的にはいかなる溶融塩原子炉も以下に記載する燃料の実施形態を用いるのに合わせることができることを理解されたい。以下に示すように、溶融塩原子炉では様々なフッ化塩を用いることができるが、フッ化物ベースの燃料塩が通常示す重金属濃度は、本開示で記載する塩化物ベースおよびフッ化塩化物ベースの燃料塩で達成できる重金属濃度を大幅に下回る。
図1Aは、本開示の1つ以上の実施形態に係る、溶融塩高速スペクトル原子炉100の単純化された概略図である。1つの実施形態では、原子炉100は炉心部102を備える。炉心部102(「炉容器」とも呼ぶ)は、燃料入口104と燃料出口106とを有する。燃料入口104および燃料出口106は、運転中、溶融燃料塩108が炉心部102を流れるように配置される。例えば、燃料入口104および/または燃料出口106はそれぞれ、集中ノズルおよび拡散ノズルとして機能する円錐部から成ってもよい。この点に関して、溶融燃料108は、炉心部102の入口104から出口106まで炉心部102の大部分(volume)を通って流体的に運ばれる。図1Aは流体燃料の流れを矢印で示しているが、流れの方向は原子炉構成およびプラント構成ごとに適当に修正してよい。具体的には、図1Aは炉心部の「底部」から「頂部」へ向かう流体燃料108の流れを示しているが、代替的な装置では、炉心部の頂部から底部へ向かう流体燃料108の流れを作り、かつ/または維持してもよい。
炉心部108は、炉心部102内の溶融燃料塩108内で臨界を達成するのに適した任意の形状であってよい。非限定的な例として、原子炉100は、図1Aに示すような細長い炉心部を備えてよいが、これに限定されない。さらに、炉心部108はいかなる断面形状でもよい。非限定的な例として、炉心部108は、円形断面、楕円形断面、または多角形断面でもよいが、これらでなければならないわけではない。
溶融燃料塩108が炉心部102を通って流れるとき、溶融燃料塩108内で臨界に達するように、炉心部102の寸法が選択される。臨界とは、核燃料が核***連鎖反応を維持する運転状態、つまり、燃料中の中性子生産速度が、中性子が消費される(あるいは、失われる)速度に少なくとも等しい状態のことである。例えば、細長い炉心部の場合、細長い炉心部の長さおよび断面積は、炉心部102内で臨界を確立するように選んでよい。臨界を確立するために必要な特定の寸法は、少なくとも、原子炉100内の核***性物質、親物質、および/または担体塩の種類の関数である。溶融燃料原子炉の原理は、米国特許出願12/118,118(Leblanc,出願日2008年5月9日)に記載されており、その全文がここに含まれる。
炉心部102は、溶融塩原子炉で使用するのに適切な任意の物質からできている。例えば、炉心部102の大部分は、1つ以上のモリブデン合金、1つ以上のジルコニウム合金(例えば、ジルカロイ(登録商標))、1つ以上のニオビウム合金、ニッケル、1つ以上のニッケル合金(例えば、ハステロイ(登録商標)N)、あるいは耐熱フェライト鋼、耐熱マルテンサイト鋼、または耐熱ステンレス鋼などからできているが、そうでなければならないわけではない。本明細書で追加で詳述するように、内面を1つ以上の追加の材料で覆うか、メッキするか、裏打ちするかして、腐食および/または放射線損傷に対する抵抗を与えてもよい。
示された実施形態では、原子炉100は、一次冷却材システム110を備える。一次冷却材システム110は、炉心102から熱を取り、その熱を、熱交換器119を通して、二次冷却材システム120中の二次冷却材126に運ぶ。図1Aに示す実施形態では、溶融燃料塩108が一次冷却材118として用いられる。冷却は、進行中の連鎖反応で熱せられた溶融燃料塩108を炉心102から流し、温度の下がった溶融燃料塩108を炉心102内へ流すことで行われる。その際の流れの速度は、炉心102の温度をその運転範囲内に保つのに必要な速度である。この実施では、一次冷却材システム110は、溶融燃料塩108が炉心102の外にあるときは、溶融燃料塩108を臨界未満の状態に保つようになっている。
一次冷却材システム110は、パイプ114から成る1つ以上の一時冷却材ループ112を備えてよい。一次冷却材システム110は、溶融燃料塩の状況における実施に適した本技術分野で既知の任意の一次冷却材システム構成を含んでよい。一次冷却材システム110は、1つ以上の一次冷却材ループ112の1つ以上のパイプ114および/または流体運搬アセンブリを通して、燃料108を循環させ、炉心部102で発生した熱を、下流にある熱駆動電気発生装置およびシステムに向けて運んでよい。単純化のため、図1Aでは1つの一次冷却材ループ112だけを示す。しかしながら、一次冷却材システム110が複数の平行した一次冷却材ループ(例えば、2〜5個の平行ループ)を備え、それぞれのループが一次冷却材回路を通して、溶融燃料塩の総量のうち選ばれた部分を運んでもよい。
代替的な実施形態(その例を、図1Gおよび図2に示す)では、一次冷却材システム110は、一次冷却材118(溶融燃料塩108とは異なる)が炉心部108(例えば、主容器)に入るよう構成されてよい。この実施形態では、燃料塩108は炉心部あるいは主容器を離れず、むしろ一次冷却材118が炉心102に流入して、炉心の温度を所望の範囲内に保つ。この実施形態では、原子炉100は炉心部102または主容器内に付加的な熱交換器(図示せず)を備えてよい。この実施形態では、二次冷却材システム120は任意でよく、使用可能な熱出力は一次冷却材システム110から直接導くことができる。この実施形態では、一次冷却材は、適切な融点を有する塩化物でよい。例えば、上記塩は塩化ナトリウムと塩化マグネシウムの混合物でよい。
図1Aに示す実施形態では、一次冷却材システム110は1つ以上のポンプ116を備えている。例えば、1つ以上のポンプ116は一次冷却材システム110に流体的に接続され、1つ以上のポンプ116が、一次冷却材/炉心部回路を通して一次冷却材118(この場合は溶融燃料塩108)を流すようになっていてよい。1つ以上のポンプ116は、本技術分野における任意の冷却材/燃料ポンプを含んでよい。例えば、1つ以上のポンプ116として、一次冷却材ループ112に流体的に接続された1つ以上の機械的ポンプが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の例として、1つ以上のポンプ116として、一次冷却材ループ112に流体的に接続された1つ以上の電磁的(EM)ポンプが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
図1Aにさらに示すように、原子炉100は、一次冷却材システム110と1つ以上の熱交換器119を介して熱的に接続された二次冷却材システム120を備えている。二次冷却材システム120は、パイプ124から成る1つ以上の二次冷却材ループ122を有してよい。二次冷却材システム120は、溶融燃料塩の状況における実行に適した本技術分野で既知の任意の二次冷却材システム構成を有してよい。二次冷却材システム120は、1つ以上の二次冷却材ループ122の1つ以上のパイプ124および/または流体運搬アセンブリを通して二次冷却材126を循環させ、それによって、炉心部102で発生し一次熱交換器119を介して受け取った熱を、下流にある熱駆動電気発生装置およびシステムへと運んでよい。単純化のため、図1Aには、二次冷却材ループ124を1つだけ示す。しかしながら、二次冷却材システム120は複数の平行した二次冷却材ループ(例えば、2〜5個の平行ループ)を有してよく、それぞれのループが二次冷却材回路を通して、二次冷却材の選ばれた部分を運んでよい。なお、二次冷却材としては、本技術分野で既知の任意の二次冷却材が挙げられる。例として、二次冷却材が液体ナトリウムを含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。
図1Aでは描かれていないが、原子炉100は、任意の数の追加または中間加熱/冷却システムおよび/または熱伝達回路を備えてよい。そのような追加の加熱/冷却システムは、炉心102をその運転温度範囲内に保つ他に、様々な目的のために配置してよい。例えば、第三の加熱システムを炉心102と一次冷却材システム110とに配置して、固体化した燃料塩を含む冷たい炉が、塩が融けて流動性を有する運転温度まで熱せられるようにしてよい。
他の補助的な部品127を一次冷却材ループ112で用いてよい。そのような補助的な部品127としては、運転中に一次冷却材118が沈殿してできた粒子を除去する1つ以上のフィルタまたはドロップアウトボックス(drop out boxes)が挙げられる。望ましくない液体を一次冷却材118から除去するため、補助的な部品127は任意の適当な液液抽出システムを備えてよい。その例としては、1つ以上の並流または向流ミキサ/沈殿槽ステージ、イオン交換技術、または気体吸収システムが挙げられる。気体除去のために、補助的な部品127は、フラッシュ蒸発チャンバ、蒸留システム、またはガスストリッパのような任意の適当な気液抽出技術を備えてよい。補助的な部品127のうちいくつかの追加的な実施は、以下でより詳細に論じられる。
原子炉100において、金属塩化物のような様々な金属塩を用いることで、時間とともに腐食および/または放射線劣化が生じるかもしれない。燃料塩またはその放射線と直接または間接に接触する原子炉100の様々な塩対向部品(例えば、炉心部102、一次冷却パイプ114、熱交換器119など)の完全性に対する腐食および/または放射線劣化の影響を和らげるために、様々な手段を用いてよい。
1つの実施では、原子炉100の1つ以上の部品を通る燃料の流れの速度は、選択された燃料塩速度に限られている。例えば、1つ以上のポンプ116が、溶融燃料塩108を、原子炉100の一次冷却材ループ112を通して、選択された燃料塩速度で流してもよい。いくつかの例では、一定のレベルを下回る流速は、増殖プロセスおよび原子炉制御を含む原子炉の性能に悪影響をもたらし得る。非限定的な例として、一次ループ112(および一次冷却材システム110の他の部分)における全燃料塩の総量は、速度の下限値に関して望ましいレベルを超えてよい。これは、一次ループ112を通る適切な流量を維持するために、流速が減少すると一次ループ112の対応する管の断面積が大きくなるからである。そのため、速度の下限値を非常に低くすると(例えば、1m/秒)、炉心外にある燃料塩の量が大きくなり、原子炉100の増殖プロセスおよび原子炉制御に対してマイナスの影響を与え得る。さらに、一定レベルを超える流速は、一次ループ112および/または炉心部102の内側表面の腐食および/または浸食により、原子炉の性能および寿命に有害な影響を与え得る。そのため、運転中の燃料塩速度を適切にすることで、腐食/浸食を最小限にするための速度限界と、炉心外にある燃料塩の総量(out-of-core fuel salt inventory)を管理するための速度限界とのバランスをとることができる。例えば、溶融塩化物燃料塩の場合は、燃料塩速度は、2から20m/秒のあいだ(例えば7m/秒だが、これに限定されない)に制御してよい。
図1Bと1Cは、本開示の1つ以上の実施形態に係る溶融塩高速スペクトル原子炉100の単純化された概略図を示す。当該溶融塩高速スペクトル原子炉100は、その1つ以上の内表面に保護層128を有している。
1つの実施形態では、保護層128は、原子炉100の燃料塩108に面する原子炉100の1つ以上の表面上に配置されている。保護層128は、原子炉100の1つ以上の塩対抗面の腐食および/または放射線劣化に対する抵抗を提供してよい。本開示の目的にとって、腐食および/または放射線劣化に対する抵抗力のある物質とは、腐食および/または放射線劣化に対して、原子炉100のむき出しの表面に比べてすぐれた抵抗力を見せる任意の物質と解釈される。
保護層128は、対応する核燃料塩に対する耐腐食抵抗および/または耐放射線抵抗を原子炉の内表面に与えるのに適した、本技術分野で既知の任意の物質を含んでよい。したがって、保護層128の材料は、用いられる塩108によって変わってよい。1つの実施形態では、保護層128は1つ以上の耐熱金属を含む。例えば、保護層128は、ニオビウム、モリブデン、タンタル、タングステン、またはレニウムのうち1つ以上を含んでよいが、これらに限定されない。他の実施形態では、保護層128は1つ以上の耐熱合金を含む。例えば、保護層128は、モリブデン合金(例えば、チタン−ジルコニウム−モリブデン(TZM)合金)、タングステン合金、タンタル、ニオビウム、またはレニウムのうち1つ以上を含んでよいが、これらに限定されない。他の実施形態では、保護層128は、ニッケル、および/または、1つ以上のニッケル合金を含む。他の実施形態では、保護層128は、炭化ケイ素のような炭化物を含むが、これに限定されない。
一実施形態において、保護層128は、任意の保護材料を用いて原子炉100の1つ以上の部分(例えば、パイプ114または一次ループ112)の内面にめっき処理を施すことにより形成される。他の実施形態において、保護層128は、原子炉100の1つ以上の部分の内面に施された任意の保護材料からなる1つ以上の被膜を含む。さらに他の実施形態において、様々な部材のバルク材料は、1つ以上の上述した保護材料から形成されてもよい。例えば、一次冷却材ループ112のパイプ114はTZMパイプを含んでもよいが、これに限定されない。
一実施形態において、図1Bに示すように、炉心部102の塩対向面は保護層128を含む。例えば、炉心部102の容器が鋼またはジルコニウム合金から形成され、炉心部102の塩対向内面に耐熱合金、ニッケル、またはニッケル合金によるめっきを施すことにより、保護層128が形成されてもよい。例えば、炉心部102は、厚さ約5〜7mmのモリブデン系保護層128を含み、炉心部102の容器の壁厚が約9〜11cmであってもよいが、これに限定されない。
同様に、図1Cに示すように、一次冷却材ループ112のパイプ114の塩対向面(パイプまたは他の部材の内面および/または外面であり得る)は、保護層128を含む。例えば、耐熱合金またはニッケル合金によるめっきをパイプ114の塩対向面に施すことで、保護層128を形成してもよい。
図1Dは炉心100の反射組立品130の概略図を示す。反射組立品130は、炉心部102から発せられる中性子を反射し、燃料塩108に戻すのに適している。一実施形態において、反射組立品130は炉心102を少なくとも部分的に囲むように炉心部102の外面に設けられる。図示した実施形態において、原子炉組立品130によって反射されて炉心部102に戻された中性子は、炉心部102内における臨界の維持および/または供給親物質からの核***性燃料の増殖に寄与し得る。そのような中性子の損失を減らすことによって、臨界に必要な燃料塩の量、ひいては、炉心102のサイズを小さくしてもよい。反射組立品130は、本技術分野で知られている中性子反射に適したいずれかの材料から形成されてもよい。例えば、反射組立品は、ジルコニウム、鋼、鉄、黒鉛、ベリリウム、炭化タングステン、鉛、鉛ビスマス、等の物質を1つ以上含んでもよいが、これに限定されない。
図1Eおよび図1Fは、本開示の1つ以上の実施形態における、複数の反射モジュール132からなる反射組立品130を示す。なお、本開示の原子炉100のいくつかの運転温度において、様々な中性子反射物質が液化する。例えば、鉛および鉛ビスマスは両方とも良好な中性子反射特性を発揮する。しかしながら、鉛は約327℃で溶融する一方、鉛ビスマス合金の融解温度は一般的に200℃未満である。本願の他の所で述べたとおり、原子炉100は、約330〜800℃の温度範囲にて運転してもよく、当該範囲は鉛および鉛ビスマス合金に対応する融点よりも高い。一実施形態において、図1Eおよび図1Fに示すように、原子炉モジュール132は任意の中性子反射物質133の液相を収容する反射容器を含んでいる。原子炉モジュール132は本技術分野で知られているいずれの物質から形成されてもよく、温度耐性、耐食性、他の部材との非反応性、および/または燃料、放射線耐性、構造支持性、重量、等を含む設計機能の内の1つ以上を考慮して選択してもよい。場合によっては、1つ以上の反射容器が、容器の内側の反射材料と共に、中性子に対してほぼ半透明な物質によって形成されてもよく、および/または1つ以上の反射容器が、耐熱性の物質によって形成されてもよい。例えば、反射モジュール132(反射容器等)は、1つ以上の耐熱合金、1つ以上のニッケル合金または1つ以上の炭化物、または黒鉛化合物から形成されてもよい。例えば、反射モジュール132および/または反射容器の形成に使用される物質は、1つ以上のモリブデン合金(例えば、TZM合金)、1つ以上のタングステン合金、1つ以上のタンタル合金、1つ以上のニオビウム合金、1つ以上のレニウム合金、1つ以上のニッケル合金、炭化ケイ素、または黒鉛化合物、等のいずれか1つ以上の成分または組み合わせを含んでもよいが、これに限定されない。反射モジュールは、運転温度にて存在可能な1つ以上の減速化合物(例えば、黒鉛および/または鉛)を含んで(含有してまたはそれらから形成されて)もよく、強力な減速材(例えば、黒鉛)および弱い減速材料(例えば、鉛)のバランスを取ってもよく、反射体の全体に及ぶ中性子スペクトルの判定に使用されてもよい。
一実施形態において、反射モジュール132は炉心部102の外面に配置され、炉心部102の外面にわたって分散している。図1Eおよび図1Fの例に示すように、反射モジュール132は、炉心部102の外面にわたって方位的に配置されている。各反射モジュール132にはある量の中性子反射液(例えば、鉛または鉛ビスマス、等)が入っている。これに関して、中性子反射液133が炉心部102において連続的に形成されるように反射モジュール132を個別に配置してもよい。図1Eおよび図1Fは反射モジュール132の方位的な配置を示しているが、そのような構成は限定的に解釈されるべきではない。なお、反射モジュール132の幾何学的配置および数量がいずれであっても、本開示における原子炉100の状況における範囲内での実施に好適である。例えば、図示はしないが、反射モジュール132のセットが積層リング状の構成を採用してもよく、当該構成において、各モジュールは任意の中性子反射液によって満たされたリングであってもよい。これに関して、モジュール132のセットは、炉心部102の周囲に中性子反射体積部を形成するように積み重ねられてもよい。上記体積部は、球体形状または円柱形状であってもよく、四角柱、六角柱、八角柱、三角柱、五角柱、またはその他の角柱、もしくはあらゆる断面形状を持つ体積部であってもよい。一実施形態において、反射器の外側表面全体には厚さ12.7mm(1/2’’)のハステロイ(登録商標)NまたはSiCによるめっきが施されており、内側容器には同じ材料のめっきが厚さ2cmで施されている。反射モジュールの形状は炉心の設計に合わせて適宜形成すればよく、台形、六角形、円形、楕円形を含む好適な形状のいずれかを含んでもよく、不規則な形状でさえ含んでもよい。
図1Gは溶融塩化物高速炉(MCFR)を用いた核反応から電力を発生させる原子力発電所の一実施形態を示す。発電所の用途において、MCFRによって生成された熱は、電力変換ハードウェアによって電力に変換される。図示した実施形態において、作動流体として水(蒸気)を用いたランキンサイクル電力変換ハードウェアを使用した。ランキンサイクルプラントの変換効率は、タービンに供給される蒸気の温度(および圧力)によって大きく左右され、温度が高いほど、効率は高くなる。パフォーマンスは蒸気の温度のみならず圧力にも関係しており、効率のもっとも高いランキンサイクルプラントは、超臨界および超々臨界蒸気を使用している。
電力変換システムは、電力変換システム用作動流体に接触するすべてのシステムを包含する。図示した蒸気ランキンサイクルプラントは、蒸気発生器152と、タービンシステム154と、1つ以上の水循環ポンプ156および冷却塔158を備える水循環ループ162と、電気発生器160と、制御システム162とを含んでいる。さらに、新しい燃料塩を保存するための燃料保存システム166と、使用済燃料塩を受け取り安全に収容するための反応生成物保存システム168とが図示されている。図1Gに示すように、電力変換システムにおいて、はじめに、熱交換器(例えば蒸気発生器152)を通じて一次冷却材が熱を動力サイクル作動流体に伝達する。モデル化されたシステムは、ランキンサイクルシステムのより詳細な構成要素と共に一次冷却材塩ループ114および蒸気発生器152の簡易モデルを含んでいる。モデル化の目的で、ランキンサイクルによる蒸気タービンを使用したが、他のサイクルに基づく熱機関も使用可能であり、ブレイトンサイクルによる密閉サイクルガスタービン(例えば、空気、ヘリウム、またはCO)等が挙げられる。
モデル化に使用される電力変換システムへは、一次冷却材熱伝達流体の質量流速、往き戻り温度および往き戻り圧力が入力される。動力サイクルのコストおよびパフォーマンスを、異なる定格の熱出力レベルである600MW、1200MW、1800MW、2400MW、および3000MWについて評価する。基準となる原子炉の設計条件として、一次冷却材塩の温度は612℃で蒸気発生器152に伝わり、498℃で蒸気発生器152から戻る。より高い/低い温度および圧力での操作がコストおよびパフォーマンスに影響する可能性があるが、分析は、580℃、300barの主蒸気条件および600℃、70barの再熱蒸気条件のモデル化操作にて行った。
分析では、Thermoflow社のソフトウェアパッケージであるSTEAMPROTMおよびTHERMOFLEXTMを使用し、定常状態運転における動力サイクルのコストおよびパフォーマンスのデータを取得する。分析において、タービンシステム154の構成要素として標準的な熱力学モデルを使用し、動力サイクルにおける特定の構成要素として専用のモデルを組み合わせた。図1Gに示すように、熱遮断用に冷却塔158を利用することもできたが、熱遮断には、川や湖等の大水域の利用を想定している(つまり、冷却塔はモデル化しなかった)。熱力学的効率および構成要素のパラメータは、STEAMPROTMおよびTHERMOFLEXTMのサブモデルによって決められたデフォルト値に維持される。モデル化には、燃料塩として17%UCl−71%UCl−12%NaClを使用し、一次冷却材として58%NaCl−42%MgClを使用した。燃料塩の物性を、データ曲線のあてはめに基づくルックアップテーブルとしてTHERMOFLEXTMに追加した。使用したデータを、下記燃料塩についての表1、および一次冷却材塩についての表2に示す。
Figure 2019515291
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電力変換システムは原子炉100から熱出力を受け取り、その熱を機械力に変換し、続いて電力に変換する。分析では、特に、従来の電力変換用蒸気ランキンサイクルハードウェアの使用に焦点を当てた。分析対象の構成は、高圧力タービン(HPT)、中圧力タービン(IPT)、および低圧力タービン(LPT)の3つのタービンを有し、タービンシステム154として簡略的に図示されている。図1Gは、2400MWthランキンサイクル分析の簡易サイクル図である。図1Gに示すモデルは簡易化されており、発電所の主要構成部分のみを示している。使用したモデルにおいて、HPTは、原子炉からの熱エネルギーを運ぶ一時冷却液によって加熱された「主蒸気」発生システムから蒸気を受け取る。HPTからの排気は再熱蒸気発生システムへ送られ、そこで、一時冷却液がHPTからの排気に熱を伝達し、そうして加熱された蒸気がIPTへ供給される。IPTからの排気は直接LPTへ供給され、追加のエンタルピーが抽出される。LPTとしては特に、並行する複数のタービンが用いられることがある。使用したモデルにおいては、最終膨張工程用に2つのLPTを用いる。モデルにおいて、すべてのタービンが共通の軸に取り付けられており、電気発生器160に直接連結されている。LPTの出口は凝縮器に繋がっており、そこで蒸気が周囲温度近くまで冷却される。本分析において、LPTは貫流凝縮器を想定しており、大きな湖または川等の大水域から熱を受け取る。凝縮器の後、水はポンプによってくみ出され、いくつかの給水温器へと送られる。給水温器は、タービンの様々な箇所から抽出した蒸気と混ぜることによって給水を予熱する。予熱された液体は、給水温器から蒸気発生器へと供給され、そこで、主タービン用の温度まで加熱される。
解析処理は、ランキンサイクルシステムの特徴を特定するためのSTEAMPROTMの使用、および溶融塩ループとの相互作用を調査するための、そのモデルのThermoflexへの転送を伴う。ThermoflexはSTEAMPROTMよりも多くの機能および選択肢を持った「完全に適応性のある」設計ツールとされる一方、STEAMPROTMは蒸気タービンの部品を構成するための専用のツールである。STEAMPROTMにおいて、プラントは「ブラックボックス蒸気発生装置」および「貫流開ループ水冷」を備えるものと定義される。蒸気サイクルは、電動モーター駆動ボイラー給水ポンプによる単回再熱復水超臨界サイクルと定義される。全てのタービンは、3600RPMで運転する仕様になっている。タービングループの特徴、給水温器、およびポンプはSTEAMPROのデフォルトパラメーターおよび選択方法によって決定される。そして、サイクルは計算され、THERMOFLEXTMに転送される。STEAMPROTMは、定格条件においての効率的な運転のために選択された、ランキンサイクルプラントの詳細な部品配置を提供する。
THERMOFLEXTMにおいては、ブラックボックス蒸気発生装置は主蒸気および再熱蒸気発生装置用の「溶融塩−蒸気」熱交換器と置き替えられる。モデルには、簡略化された燃料塩および一次冷却材塩のループが含まれる。燃料および一次冷却材塩のループはエネルギー源を提供するために備えられ、詳細にはモデル化されていない。THERMOFLEXTMにおけるモデル化法は、塩および蒸気のループにおいて熱交換器の吐出仕様を特定すること、そして燃料塩への入熱が定格条件に一致するように蒸気流量を調整することが目的である。プラントの部品配置や性能特性はSTEAMPROTMによって決定されるが、THERMOFLEXTMは流動している流体の状態のための良好な性能を得るために、部品(例えばタービン、ポンプ、熱交換器など)をさらに調整(リサイズ)する。燃料塩ループへの入熱は、原子炉の熱出力を表している。総効率は、熱入力に関連するタービン軸の出力である。正味電力は、熱入力に関連するポンピングおよび予備的な消失を減算した、発生装置の出力である。
下記表3は、600MW、1200MW、1800MW、2400MW、および3000MWの熱入力で運転された超臨界ランキンサイクルの性能およびコスト結果を示す。
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図2は、溶融塩原子炉200の簡略概略図の他の実施形態を示す。原子炉200は、いくつかの例では、燃料塩108がプールを流動/循環する、もしくは別の場合では、配管を通して収納または誘導されるプール式原子炉である。図2に示す例では、燃料塩は密閉原子炉容器206における冷却材202のプール210の中心に位置する管204の中に収納されている。原子炉容器206の上部は、いくらかの不活性ガス218が充填されている。燃料管204は、軽水原子炉における従来の固体燃料列と同様に配列されている。冷却材202は、プール210の中心から、プール210の外周部に位置する熱交換器208に熱を移動する。図示される本実施形態では、プール210内の冷却材202の(点線矢印212により示される)循環、つまり自然なまたは撹拌翼もしくは他の機構(図示せず)により誘起される循環は、熱を燃料管204から遠ざけるように移動させ、当該熱は熱交換器208によって取り除かれる。
熱交換器208は、プール210から二次冷却材システム214に熱を移動させる。一実施形態においては、二次冷却材は熱交換器において沸騰される水であり、その結果得られる蒸気216は、発電用にタービン(図示せず)を駆動するために使用される。
図1Eおよび1Fを参照して説明した反射モジュール132のような任意の複数の反射モジュール232は、原子炉の効率化のために、図2に示されるように原子炉容器内および/または図1Eおよび1Fと同様に原子炉容器の外の燃料管列の周りに配置されてもよい。必要に応じて、原子炉を亜臨界に保つために任意の停止用制御棒が備えられていてもよい。
濃縮された(〜12%235U)燃料での初期始動の後、MCFRは濃縮された核***性物質の持続的な供給を必要としなくてもよい。代わりに、MCFRは、他の親物質のうち劣化または天然ウランを供給されてもよい。通常運転中、モデル化によれば、原子炉の反応度のゆっくりとした増大が示される。この反応度の増大を相殺するため、少量の十分に混合された燃料塩を除去して、供給親塩と置き換えてもよい。親物質の追加は、実質的には、反応度を低減する制御棒と同じ役割を果たす。
使用済MCFR燃料は、廃棄されるのではなく、新たな原子炉の始動のために十分な量が利用可能になるまで収集される。このような子原子炉は、化学的に同一の燃料塩を含むため、新たに濃縮することなく始動し得る。使用済燃料を子プラントの初期燃料として使用するために当該プラントに全て移動することで、MCFR群の全体の生成は、アクチニドの使用を著しく低減し、MCFR群の全体の構築が終了するまで放射性廃棄物の大部分の処分を先に延ばすことができる。アクチニド保持燃料塩の最終的な廃棄のため、これまでの研究では、塩自体が化学変換なしに適切な廃棄物形態にパッケージされ得ることが見出されている。
(塩化物系燃料塩)
核燃料塩は、E.H.Ottewitteによる「Configuration of a Molten Chloride Fast Reactor on a Thorium FuelCycle to Current Nuclear Fuel Cycle Concerns」(博士課程論文、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校、1982年)におおまかに記載されており、この内容の全ては、参照により本明細書に含まれる。塩化ウラン化合物はB.R.Harder,G.LongおよびW.P.Stanawayによる「Compatibility and Processing Problems in the Use of Molten UraniumChloride-Alkali Chloride Mixtures as Reactor Fuels」(SymposiumonReprocessing of Nuclear Fuels、アイオワ州立大学、405-432、1969年8月)におおまかに記載されており、この内容の全ては、参照により本明細書に含まれる。下記の新規の燃料塩の実施形態は、この研究を改善したものであり、モデル化および他の理論的研究を通して進展している。
なお、本開示の溶融塩化物燃料塩は、妥当な温度における高重金属濃度の燃料塩108への導入をもたらす。非限定的な例として、本開示の1つ以上の塩化物燃料塩は、約500℃の溶融温度にて61重量%より高い重金属濃度をもたらす場合がある。下記の燃料塩を使用して運転される場合、溶融燃料塩炉は実施形態において200〜800℃の範囲の妥当なノミナルの運転温度を有している。異なる燃料の各々が若干異なる最適な運転温度を有する一方、原子炉は330〜550℃、350〜520℃、400〜510℃、および450〜500℃の運転温度範囲を有する。高ウラン含有量を達成できるということは、本開示の高速中性子スペクトル増殖燃焼原子炉において塩化ウラン系燃料塩混合物を利用することを可能とする。さらに、核***性物質は12.5%235Uもしくは19.99%235U等のいかなる所望のレベルまたは他のいかなる適切な濃縮レベルまで濃縮されてもよい。
また、本開示の溶融塩化物燃料塩は、本明細書に記載の運転温度まで加熱された場合、比較的低い蒸気圧を有する。異なる燃料の各々において、燃料塩の気化量の低減のための最適動作圧が若干異なる一方、原子炉については動作圧が1〜10atmおよび2〜5atmの範囲のものが検討される。
以下、1つ以上の付加的な金属塩化物と金属塩化物燃料塩との混合物を有する溶融塩化物核燃料塩の様々な実施形態について説明する。例えば、溶融塩化物核燃料塩は、第一の塩化ウラン、第二の塩化ウランおよび/または付加的な金属塩化物の混合物を含んでもよいが、これに限定されない。なお、燃料塩108の様々な成分の相対量は、限定されないが、融点、熱伝導度、腐食性、アクチニド含有量、反応度、平衡状態の実効中性子増倍率(keff)などを含む、燃料塩の1つ以上の熱的、化学的、または中性子的パラメータを制御するために操作される。例えば、任意の燃料塩混合物における核***性ウラン(例えば235U)の相対量は、任意の出力密度を得るのに必要な炉心部102の大きさに影響し得る。非限定的な例として、16%の235U含有量を有する燃料塩は約11mの炉心部体積しか必要としないかもしれないが、10モル%(特記しないかぎり、化学物質のすべての%値はモル%で表される)の235U含有量を有する燃料塩は、約67立方メートル(m)の炉心部体積を有していてもよく、また200MW/mの出力密度を生成してもよい。このような関係は、炉心部102の大きさ(または燃料管204の数)の、用いられる燃料塩108の組成に対する強い依存性を示している。
一実施形態においては、本開示の塩混合物は、燃料塩108の(原子炉における核反応中に当該反応により消費される核***性物質に対する生成される新たな核***性物質の比率である)関連増殖率が1より大きく(例えば、増殖率=1.000001、1.001など)なるように、また、それにより潜在的に達成可能なレベル未満の増殖能力で長い原子炉寿命を得るように、選択される。他の実施形態においては、本開示の塩混合物は、燃料塩108の上記関連増殖率が1未満になるように、また、それにより任意の期間に濃縮を消費するように選択される。具体的な燃料組成の選択は、原子炉設計、通常の運転パラメータ(例えば、温度および圧力)、とりわけ、全体的な使用上の目的(例えば、濃縮度および原子炉寿命の低減、追加の核***性物質の増殖など)を含む、多くの異なる競合要因に依存されることが理解される。
(塩素37修正塩化物燃料塩)
燃料塩の生成のために使用される核***元素(例えばウランまたはトリウム)の濃縮化に加えて、本明細書の燃料塩の実施形態は、塩化物化合物の何れか1つ以上におけるいくらかの量の塩化物イオンが特定のパーセントの37Clを含有するように濃縮されてもよい。塩素は、様々な質量数の多くの同位元素を有する。もちろん、(天然に存在する塩素の76%を形成する)35Clおよび(天然に存在する塩素の24%を形成する)37Clという2つの安定した同位元素が存在する。最も一般的な同位元素である35Clは中性子減速材である。つまり、35Clは高速の中性子を減速し、それにより中性子を熱中性子に変化させる。同位元素35Clは強い中性子吸収剤でもあり、腐食性硫黄および長命で放射性の36Clの形成を導く。一方、同位元素37Clは高速の中性子に対して比較的透過的である。
本技術の一態様によれば、溶融燃料塩108として使用される任意の塩化物含有化合物の37Cl含有量を調整する。上記の通り、塩化物化合物を生成するために天然に存在する塩化物イオンを使用する場合、塩化物イオンのおよそ76%が35Clとなり、24%が37Clとなる。しかし、本明細書に記載の本実施形態では、いかなる特定の塩化物燃料塩の実施形態においても、全Clに対するいかなる比率の37Clも使用してよく、場合によっては、全Clに対する37Clの、選択された比率を満たしてもよいし、または選択された比率を超えてもよい。遠心機、イオン交換カラムなどを含むいかなる既知のまたは開発される濃縮技術も、所望および/または選択された37Cl比率濃度を保証するために使用されてもよいが、これらに限定されない。
一実施形態において、すべての塩化物含有化合物は、限りなく純度の高い37Clの供給から生成され得る。例えば、塩化物系燃料塩化合物は、燃料塩中の塩化物イオンの90%、95%、98%、99%、または、さらには99.9%より多くが37Clとなるように生成されてもよい。さらには、塩化物ベースの核燃料は、燃料中、または燃料の異なる成分中の37Clの他の塩化物イオンに対するいかなる目標パーセント量もしくは選択されたパーセント量を達成するために開発され得る。例えば、熱反応用に設計された燃料用としては、塩化物系燃料塩化合物は、燃料塩中の塩化物イオンの10%、5%、2%、1%、または、さらには0.1%未満が35Clであり、残りが37Clとなるように生成され得る。高速反応向けの燃料用としては、塩化物系燃料塩化合物は、上述したように、燃料塩中の塩化物イオンの10%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%より多く、または100%までもが37Clとなるように生成され得る。モデル化によれば、少なくとも75%37Clに濃縮された塩素により、MCFR性能は著しく向上することが示された。濃縮された塩素を使用することにより、長寿命の放射化生成物である36Clの中性子寄生吸収および生成が低減される。
図3は、特定の原子炉向けの燃料を生成する方法の一実施形態を示す。37Clに対する35Clの相対量のこの調整は、高速反応または熱反応における燃料塩の反応度を制御する追加の方法を提供する。方法300は、特定操作302から開始される。特定操作302においては、全Clに対する37Clの所望の比が決定される。適切な比を決定するために、原子炉設計、原子炉の所望の運転パラメータ(例えば温度、圧力など)、および燃料において使用される塩化物系化合物などの要因が考慮される。
燃料特定操作302は、例えば、燃料中の全Clに対する37Clの比が第二の比である初期Cl塩を選択して初期溶融塩化物燃料塩を用いる炉の初期中性子実効増倍率(keff)を決定すること、初期中性子実効増倍率を目標中性子実効増倍率と比較すること、および、次のまたは最終的に得られる37Clの全Clに対する比を、比較操作の結果に基づいて計算することを含み得る。目標中性子実効増倍率(keff)は、原子炉の製造者または操作者の希望に基づいて特定し得る。これらの技術は、選択された37Clの全Clに対する比を決定302するために適宜反復および/または調整し得る。
そして、燃料生成操作304を行う。燃料生成操作304において、最終的に得られる燃料における37Clの全Clに対する比を修正することにより燃料を作製する。
一実施形態において、上記修正溶融塩化物燃料塩は、複数の異なる塩化物化合物の混合物を含み、この複数の異なる塩化物化合物は、第一の核***性塩化物塩化合物および第一の非核***性塩化物塩化合物を含む。この実施形態において、燃料生成操作304は、第一の核***性塩化物塩化合物または第一の非核***性塩化物塩化合物の37Clの全Clに対する比がそれぞれ異なるように第一の核***性塩化物塩化合物および第一の非核***性塩化物塩化合物を生成することを含み得る。各化合物の37Clの全Clに対する比は、2つ(またはそれ以上)の化合物を組み合わせて、最終的に得られる修正燃料塩混合物を作製した際に、当該修正溶融塩化物燃料塩が、化合物の質量平衡および化合物のそれぞれの37Clの全Clに対する比に基づいた所望の37Clの全Clに対する比を有するように調整する。
燃料生成操作304の結果、修正溶融塩化物燃料塩中の全Clに対する37Clの比が第一の比である修正溶融塩化物燃料塩であって、原子炉において使用した場合、目標中性子実効増倍率が達成される、修正溶融塩化物燃料塩が得られる。当該燃料塩を「修正」と称して、最終的に得られる比が天然の37Clの全Clに対する比と異なることを識別する。例えば、燃料塩は、33%のUCl、33%のUCl、および33%のNaClの混合物であってもよく、最終的に得られる修正燃料塩の全Clに対する37Clの比40%を達成するために、NaClを濃縮して37Clの全Clに対する比が75%になるようにしてもよく、残り2つの成分が天然の比となるようにしてもよい。これにより、全Clに対する37Clの比が40%である、最終修正UCl−UCl−NaCl燃料塩が得られる。
前述の例は、効率のため、多元化合物燃料塩混合物のうち1つの化合物のみを濃縮することを決定してもよいことを示す。例えば、非核***性塩化物塩が最終的に得られる燃料塩に含まれている場合、37Clの全Clに対する比が高い(または低い)塩を大量に生成して、後に配合燃料において使用するために保持してもよい。天然の塩素から37Clを精製することは本技術分野において既知であり、いずれの好適な方法を用いてもよい。例えば、遠心分離カラムまたはイオン交換カラム(IXC)濃縮法が使用可能であり、必要量まで拡張可能であると思われる。他の方法もまた可能である。
修正燃料を作製した後、炉操作306において、修正燃料を炉に装荷し、修正燃料を用いて炉を運転する。運転中に反応度が最適でないと判定された場合、今ある燃料と置き換えるか、または今ある燃料とブレンドするように、後段の燃料生成およびブレンド操作(図示せず)において所望の反応度が達成されるまで、方法300を用いて新たな燃料を生成する。さらに他の実施形態において、方法300を用いて、時間をかけて炉における反応度を変更または維持してもよい。
以下にさらに詳細に説明するように、塩化物含有燃料塩は、UCl、UCl、UClF、UCl、およびUClFのうち1つ以上、および/または本明細書に記載する特定の燃料塩の実施形態のうちのいずれかを含んでいてもよく、上述のように修正を加えてもよい。非核***性塩化物化合物を使用する場合、このような付加的な金属塩化物塩は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClおよび/またはNdClから選択し得る。
(UCl−UCl−[X]Cl燃料塩)
核燃料としての使用に好適なウラン塩の実施形態は、0〜100%のUCl、0〜100%のUClおよび0〜95%の金属塩化物塩の混合物である塩を含む。そのため、これらの塩は、100%UCl燃料塩、100%UCl燃料塩を含み、同様に、付加的な金属塩化物塩有りまたは無しの、UClおよび/またはUClの混合物である燃料塩を含む。付加的な金属塩化物塩としてのNaClの結果を基にして、モデル結果に基づくと、NaCl含有量が68モル%未満である燃料塩が好適であると考えられる。他の実施形態において、核燃料としての使用に好適なウラン塩は、融点が800℃未満、700℃未満、600℃未満、500℃未満、400℃未満または350℃未満である、0〜100%のUCl、0〜100%のUClおよび0〜95%の金属塩化物塩の混合物である塩を含む。NaCl実施形態について、核燃料としての使用に好適なウラン塩は、構成塩の各々の融点が800℃未満、700℃未満、600℃未満、500℃未満、400℃未満または350℃未満である、0〜100%のUCl、0〜100%のUClおよび0〜68%のNaClの混合物である塩を含む。さらに他の実施形態において、燃料塩のNaCl含有量は12%のNaClと68%のNaClとの間で変化し得る。
溶融塩化物は、これまで使用されてきたフッ化物と、注目すべき2つの点において大幅に異なる。第1に、塩化物は、フッ化物よりも、中性子を減速する効果が弱いことである。これにより、増殖燃焼運転に欠かせない高速な中性子スペクトルを確保できる。より重要には第2に、塩化物によれば、コンパクトな高速増殖炉の設計を得るために重要な非常に高い重金属濃度が、混合物において、適度な融点とともに得られる可能性があることである。フッ化物塩は、通常、重金属の含有量が10〜12モル%以下であり、提案される塩混合物は、通常、モル濃度63〜72モル%のLiF(99.997%Liまで濃縮)、16〜25モル%のBeF、6.7〜11.7モル%のThF、およびわずか0.3モル%のUF(重金属は40〜45重量%)を含有する。
図4は、UCl−UCl−NaCl燃料塩ベースの熱力学モデルの予測三元状態図である。三元状態図400は、UCl−UCl−NaClの任意の混合物の予測融解温度を示す。特に注目されるのは、融点が500℃未満である混合物であって、三元状態図400の網掛け部402に図示される混合物である。共融点404は、338℃の融解温度を有し、17UCl−40.5UCl−42.5NaCl(つまり、17モル%のUCl、40.5モル%のUClおよび42.5モル%のNaCl)の組成を有する。網掛け部402は、融点の限界範囲500℃を示す。この限界範囲402の一番右へ移動すると、17UCl−71UCl−12NaClである実施形態が得られるが、500℃未満の融点を有する燃料塩混合物の実施形態として、限界範囲402内においては、多くの組成が考えられることに留意すべきである。また、融解温度限界を少し拡張して508℃にした場合、34UCl−66NaClの組成物は、UClを含まない選択肢を提供する。同様に、三元図400では、800℃〜338℃における任意の融点限界に対する特定のUCl−UCl−NaCl燃料塩実施形態を特定することが幅広く可能である。例えば、融点が300〜550℃、338〜500℃、および338〜450℃である三成分塩を容易に特定し得る。
混合物の具体的な組成は、得られるウラン含有レベルおよび融解温度が所望のレベルとなるような、UCl、UClまたはNaClのうち2つ以上を含む配合をいずれも含み得る。例えば、具体的な組成は、対応融解温度が330℃と800℃との間となるように選択し得るが、これに限定されない。別の例として、具体的な組成は、全体的なウラン含有レベルが61重量%以上となるように選択し得るが、これに限定されない。全体的なウラン含有レベルを選択することに加え、燃料組成を、任意の量の核***性ウラン(親物質の対語)を満たすように決定してもよい。例えば、燃料塩108の具体的な組成は、燃料塩108の235U含有量が20%未満となるように選択し得る。
初期概念構築の一部として、様々な燃料塩、核***性物質の濃縮度、サイズおよび出力について、一連の中性子輸送計算および燃焼計算を行った。予想された通り、濃縮度が高いと、炉心のサイズを小さくできるが、増殖能力が低くなってしまう。何らかの形で核***生成物を取り除いた系は、平衡挙動に達することができる一方、その他は増殖して最終的に核***生成物の形成に圧倒されてしまう。燃料塩の選択については複数の選択肢が存在し、それぞれにメリットとリスクがある。以下の記載では、特に注目される実施形態を示すが、以下の記載は、本発明の範囲を、以下に記載する実施形態のみを請求するように限定するものではなく、図4から特定できるいずれの実施形態も検討され、同様に、NaCl以外の異なる金属塩化物を有するいずれの実施形態も検討される。付加的な非核***性金属塩化物としては、例えば、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClおよび/またはNdClが挙げられる。
(UCl燃料塩の実施形態)
一実施形態において、燃料塩108はUClを含む。例えば、燃料塩108は、モル分率5%以上のUCl含有量を有し得る。他の実施形態において、原子炉100の燃料塩108は、UCl、付加的な塩化ウラン塩および/または付加的な金属塩化物塩(例:担体塩)の混合物を含んで混合物のUCl含有量がモル分率5%以上となるようにしてもよい。他の実施形態において、混合物のUCl含有量は、モル分率0.01%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上または4%以上のUClであってもよい。なお、UCl含有量がモル分率5%以上である燃料塩108は、腐食被爆(corrosive exposure)を受ける量が多くなる場合がある。以下に記載のように、塩化物含有量が増えることによって起こる腐食を軽減するために様々なアプローチを実施し得る。
他の実施形態において、炉の燃料塩108は、UCl、付加的な塩化ウラン塩および/または付加的な金属塩化物塩の混合物を含んで、混合物のウラン濃度が61重量%以上となるようにしてもよい。
一実施形態において、以下にさらに詳細に記載するように、付加的な塩化ウラン塩は、UClを含む。他の実施形態において、付加的な金属塩化物塩は、担体塩、核***生成物塩化物塩、アクチニド塩化物塩および/またはランタニド塩化物塩を含み得る。例えば、付加的な金属塩化物塩は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClおよび/またはNdCl(これらに限定されない)を含み得るが、これに限定されない。
例えば、原子炉100の燃料塩108は、UClおよびUClの混合物(NaCl無し)を含んでおり、当該混合物の組成が82UCl−18UCl(モル%)相当になるようにし得るが、これに限定されない。なお、このような燃料塩組成物は、ウラン含有量がおよそ65重量%であり融解温度が545℃である。
例えば、原子炉100の燃料塩108は、UCl、UClおよびNaClの混合物を含んでおり、当該混合物の組成が17UCl−71UCl−12NaCl(モル%)相当になるようにし得るが、これに限定されない。なお、このような燃料塩組成物は、ウラン含有量がおよそ61重量%であり融解温度がおよそ500℃である。
例えば、原子炉100の燃料塩108は、UClおよびNaClの混合物(UCl無し)を含んでおり、当該混合物の組成が50UCl−50NaCl(モル%)相当になるようにし得るが、これに限定されない。なお、このような燃料塩組成物は、融解温度がおよそ368℃となる。なお、本明細書において、燃料塩108中にランタニドおよび/またはプルトニウムが形成されるにつれて、これらはUClと同じように機能する場合がある。なぜなら、ランタニドおよびプルトニウムは三塩化物化合物を形成するためである(上述の通り)。この場合、この組成の変更によって、燃料塩108の挙動が共融挙動に向けてシフトする場合があり(上述の通り)、これにより組成物の融点が下がる場合がある。
さらに他の例として、純UClを燃料塩として使用し得る。純UClの融解温度(図4に示す通り)は590℃である。
66NaCl−34UCl組成物のウラン含有量は、より少ないため、初期臨界に達するために、この2成分塩は、UCl含有組成物よりも大きな炉心を必要とする。例えば、炉心部102は、初期臨界に達するために、UClを含む燃料塩108の場合に必要な体積の3〜4倍大きな体積を必要とする場合がある。
図5は、66NaCl−34UCl組成物を利用する図1A〜図1Fに記載の炉の炉心部を大きくした場合における、時間関数としてのモデルkeffを示す。曲線502は、出力レベル5800MWの場合のkeff曲線のモデルを示し、曲線504は、出力レベル3420MWの場合のkeff曲線のモデルを示す。なお、双方の曲線502、504は、劣化ウラン(DU)供給にて、ランタニド除去を特に行わずに運転する場合のモデルである。図5に示すように、3420MWの場合(曲線504)は、臨界未満になるまでに70年近くの間運転でき、一方、5800MWの場合(曲線502)は臨界未満になるまでにおよそ41年間運転できる。さらに、図5に示すモデルから、この何年にもわたる運転の間にランタニドを全く除去しない場合、燃料の燃焼度が43%であることも予測される。そのため、従来の溶融塩原子炉は臨界維持を濃縮ウランに依存していたが、このモデリングから、塩素系ウラン燃料塩がこの依存度を減らすのに有効であることが分かる。
図6は、本開示の1つ以上の実施形態に係る、高速スペクトル溶融塩原子炉への燃料装荷に関する操作例を表すプロセスフロー600を示す。図6の操作は図示した順に提示するが、当然、種々の操作は図示した順番以外の順番にて行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
フロー図600の操作602は、ある量のUClを準備することを含む。例えば、任意の量のUClを、ほぼ純粋な形で準備し得るが、これに限定されない。他の例として、任意の量のUClを、UClと他の塩との混合物の形で準備し得るが、これに限定されない。他の塩としては、例えば担体塩(例:NaCl)が挙げられるが、これに限定されない。
フロー図600の操作604は、ある量の、付加的な塩化ウラン塩または付加的な金属塩化物塩のうち少なくとも1つを、準備することを含む。例えば、付加的な塩化ウランは、UCl(これに限定されない)を含み得るが、これに限定されない。一実施形態において、任意の量のほぼ純粋なUClを準備し得る。他の実施形態において、任意の量のUClを、UClと他の塩との混合物の形で準備してもよく、他の塩としては、例えば担体塩(例:NaCl)が挙げられるが、これに限定されない。他の例として、付加的な金属塩化物は、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClおよび/またはNdClのうち1つ以上(これらに限定されない)を含むが、これに限定されない。一実施形態において、任意の量の付加的な金属塩化物を準備してもよい。他の実施形態において、任意の量の付加的な金属塩化物を、金属塩化物と他の塩との混合物の形で準備してもよく、他の塩としては、例えば担体塩が挙げられるが、これに限定されない。
フロー図600の操作606は、上記ある量のUClと、上記ある量の付加的な塩化ウラン塩または付加的な金属塩化物塩のうち少なくとも1つと、を混合して、UCl含有量がモル分率5%より多い溶融塩化物核燃料塩を生成することを含む。例えば、操作602において準備した、上記ある量のUClを、操作604にて準備したものと混合して、得られる溶融塩化物塩混合物のUCl含有量がモル分率5%より多くなるようにし得るが、これに限定されない。この点について、操作602の上記ある量のUClおよび上記ある量の付加的な塩化ウランおよび/または付加的な金属塩化物は、得られる溶融塩化物塩混合物のUCl含有量がモル分率5%より多くなるように選択し得る。追加するか、あるいは代わりに、操作606は、上記ある量のUClを、上記ある量の付加的な塩化ウラン塩および/または付加的な金属塩化物塩と混合して、融解温度が330〜800℃である溶融塩化物塩混合物を作製することを含む。
一実施形態において、操作602および604にて準備するものは、得られる溶融塩化物塩混合物の化学組成が82UCl−18UCl(またはおよそ82UCl−18UCl)となるように選択および混合し得る。他の実施形態において、操作602および604にて準備するものは、得られる溶融塩化物塩混合物の化学組成が17UCl−71UCl−12NaCl(またはおよそ17UCl−71UCl−12NaCl)となるように選択および混合し得る。他の実施形態において、操作602および604にて準備するものは、得られる溶融塩化物塩混合物の化学組成が50UCl−50NaCl(またはおよそ50UCl−50NaCl)となるように選択および混合し得る。
フロー図600の操作608は、上述のような、いくらかの量のUClを有する溶融塩化物核燃料塩(例:混合物のUCl含有量はモル分率0.01%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上または5%以上であり得る)を、少なくとも、高速スペクトル溶融塩原子炉の炉心部へ供給することを含む。一実施形態において、操作606の混合物は、上記ある量のUClと上記ある量の付加的な塩化ウラン塩または付加的な金属塩化物塩のうち少なくとも1つとを、高速スペクトル溶融塩原子炉内において混合することによって形成し得る。一実施形態において、操作606の混合物は、上記ある量のUClと上記ある量の付加的な塩化ウラン塩または付加的な金属塩化物塩のうち少なくとも1つとを、高速スペクトル溶融塩原子炉の外部(例えば、混合容器等が挙げられるが、これに限定されない)において混合することによって形成し得る。この点に関して、UClと上記ある量の付加的な塩化ウラン塩または付加的な金属塩化物塩のうち少なくとも1つとを混合した後、この溶融塩化物塩混合物を原子炉100に装荷してもよい。そして、炉は、本明細書に記載のとおり、例えば、燃料塩において核***を開始し、そして、炉心において、増殖燃焼挙動をある期間維持することにより運転され得る。
一実施形態において、付加的な金属塩化物(上述)のうち1つ以上の濃度は、核燃料混合物中に付加的な金属塩化物が析出する析出濃度以下となるように選択する。例えば、核***生成物濃度は、核***生成物によってPu等の燃料塩108の他の成分が燃料溶液から析出するような濃度未満に維持し得る。
上述の溶融塩化物塩組成は、本開示の原子炉100または関連する方法に対する限定ではないことに再度留意されたい。むしろ、具体的な組成は、単に説明目的のためのみに提示される。本開示の原子炉100においてどのような溶融塩化物燃料塩を実施してもよいことを認識されたい。
(UCl燃料塩の実施形態)
UClをUClと共に含有する上記の実施形態に加え、燃料塩のさらなる実施形態は、UClを含み、UCl成分を含まない。これらの実施形態およびこれらに関連する融点も、図4において左軸に沿って示す。なお、UClを含まない燃料混合物は、UCl腐食の懸念がかなり強まる場合に、特に注目される場合があり、腐食軽減技術の必要性を軽減する場合がある(下記の通り)。例えば、原子炉100の燃料塩108は、UClおよびNaClの混合物を含んで混合物の組成が66NaCl−34UCl(モル%)相当となるようにし得るが、これに限定されない。なお、このような燃料塩組成物は、融解温度がおよそ508℃であるが、ウラン含有レベルが、UCl含有組成物と比べて低い(上述)。
UCl燃料塩の実施形態は、また、純UClも含むが、融点がわずかに800℃を超えるため、この実施形態は、ある種の炉設計にとっては好適でない場合がある。
(混合塩化フッ化物燃料塩の実施形態)
アクチニドの混合塩化フッ化物塩、特にウランの混合塩化フッ化物塩もまた、核***性塩として溶融塩炉にて好適に使用し得る。UClFは、使用し得る塩化−フッ化物塩の一実施形態である。UClFの融点は410℃〜440℃であり、純UClの融点(590℃)よりも低い。UClF塩の分子対称性および化学組成から、UClFの揮発性もまたUClよりも低いと予想されるため、UClFは、低温(例:800℃未満、またはさらに低い500℃未満)溶融塩炉における燃料塩としてさらにいっそう注目されるものである。
上記の内容、図4に記載のUClの予測三元図、および、UClFとUClとの間の類似性に基づくと、燃料塩混合物中のUClの一部または全ての代わりにUClFを使用することによって、ほぼ同等の反応性を維持しつつ、さらに性質の良い(例:融点が低く、揮発性が低い)燃料塩の実施形態を得られると期待される。UClF、UCl、およびNaClの三元図は算出していないものの、UClF、UClおよびNaClの三元図は、図4に記載の塩17UCl−40.5UCl−42.5NaClの共融点404相当の近傍の位置において最低融点を示すと予想される。つまり、このようなUClF、UCl、およびNaClの三元図は、UClが15〜20モル%含まれ、残りの、NaClが35〜45モル%であり、かつUClFが35〜45モル%である領域において、低融点について類似の傾向を示すと予想される。UClFは通常UClよりも十分に低い融点を有することから、UClFを燃料塩の実施形態においてUClの代替として用いることで、図4において見られる融点よりもさらに低い融点を有する燃料塩が得られると予想される。
この情報から考えると、ClF燃料塩のウラン実施形態は、UClFを1〜100モル%有する塩を含む。例えば、混合塩化フッ化物燃料塩の実施形態は、UClFを少なくとも、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および99%有する塩を含む。純粋な、または、ほぼ純粋なUClFの燃料塩も可能である。なぜなら、融点が本明細書に記載された炉の動作領域の範囲内にあるからである。別の実施形態において、UClF燃料塩は、UClFを検出可能な量だけ有し得る。検出限界は技術の進歩により変化し得ると認識されているが、一実施形態において、検出可能な量とは、0.01モル%以上を意味する。
UClFと組み合わせて燃料塩の実施形態を作ることができる他の塩には、UCl、NaCl、およびUClが含まれる。上述のとおり、UClF−UCl−NaClの塩は特に検討されており、UClを15〜20モル%有し、残りの、NaClが35〜45モル%であり、かつUClFが35〜45モル%である実施形態が含まれる。さらに、本明細書において説明する他の塩、例えばThCl、フッ化ウラン塩、非核***性の塩、および臭化ウラン塩等のいずれも含み得る。
UClFに加え、他の混合アクチニド塩、例えば、UClおよびUClFを、溶融炉における燃料塩としてまたは燃料塩の構成物質として好適に使用し得る。プルトニウムまたはトリウムの混合塩化フッ化物塩もまた、溶融燃料塩として好適に使用し得る。
UClF、UCl、およびUClFの作製方法の実施形態を以下に記載する。UClFを作製する実験についても記載する。
塩化物燃料塩における全Clに対する37Clの比を変更したものの実施形態もまた可能であり、溶融燃料塩に使用し得る。さらに、混合塩化フッ化物燃料塩の実施形態は、NaClに加えて、またはNaClの代わりに、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClおよび/またはNdCl等の非核***性塩化物化合物を含んでもよい。
使用にあたって、混合塩化フッ化ウラン塩の実施形態は、上述した塩化物塩の実施形態と同様に使用する。例えば、所望の塩組成物(例えばUClが15〜20モル%含まれ、残りの、NaClが35〜45モル%であり、かつUClFが35〜45モル%である組成物)を作製する。この作製は、離れて行ってもよいし、または、構成物質を直接炉心の中に添加することによって行ってもよい。構成物質は固体の状態で添加してもよいし、液体の状態で添加してもよい。炉心に燃料塩を装荷すると、炉は運転状態に入り、上述のように、連鎖反応が開始する。
(塩化トリウム燃料塩)
一実施形態において、燃料塩108は、任意の量のトリウムを含み得る。例として、塩化物ベースの核燃料塩の場合、トリウムは、燃料塩108中に、塩化トリウム(例:ThCl)の形で存在し得る。ThClの製造方法は当該技術分野において既知であり、いずれの好適な方法を用いてもよい。
ThClを塩化物塩系に導入すると、系の融解温度が約50℃下がることが分かっている。そのため、図4の塩の三元図の情報に基づけば、ThCl実施形態は、この三成分系における融点以下の融点を有するはずであり、溶融状態にありながら増殖燃焼反応を維持することができるはずである。例えば、三元図の情報に基づけば、800℃未満、さらに低い550℃の融点が実現可能であるはずである。
ThClを利用する実施形態の1つは、UClF−UCl−UCl−ThCl−[X]Cl(上述のように、[X]Clは任意の付加的な非核***性塩)である。これらの実施形態において、様々な塩化物塩のうちいずれかのモル比を適宜決定して所望の融点を実現し得る。一実施形態において、ThClの量は、検出可能量のThClおよび80モル%の間であり、他の成分(つまり、UClF、UCl、UCl、および[X]Cl)は、それぞれ独立に0から80%の間である。そのため、UCl−UCl−ThCl−NaClと同様に、UClF−ThCl−[X]Cl、およびUCl−ThCl−[X]Clなどの実施形態が検討される。
(臭化ウラン燃料塩の実施形態)
本明細書の塩化物燃料塩の実施形態に加え、臭化物燃料塩もまた、塩化物燃料塩の代替として、または塩化物燃料塩のバックアップとして可能である。溶融塩化物燃料塩炉のひとつの特徴は、中性子スペクトルが非常に高速であるため、炉の核***性燃料を、燃料親物質から増殖燃焼できることである。これは、濃縮塩化物塩を用いてアクチニド原子を結合することによって可能となる。塩素は、一般に、水、黒鉛、フッ素等の他の物質と比べて、中性子減速材として比較的劣る。また、塩素は、寄生捕獲(無駄な中性子)の中性子捕獲断面積が比較的小さい。性能の良い塩成分は、アクチニドと強固な化学結合を形成し、低蒸気圧にて存在し、Z数が高く高速スペクトルを可能にし、小さい(n,γ)捕獲断面積を持つものであり得る。上述のように、37Clはとても良い選択である。しかし、この分析に基づくと、臭素も好適であり得る。
臭化物塩(UBr、UBr)は塩化物塩と同じ族に属しており、類似の化学的性質を持つ。臭素は塩素よりもZ数が大きいため、塩素ほど中性子を減速させず、より高速のスペクトルにつながるはずである。臭素の化学結合は塩素のそれと類似しているはずである。これらの特徴により、臭化物塩は、塩化物塩の代替として注目される。UBrの融解温度は519℃であると報告されており、これはUClの融解温度よりも低い。そのため、UBrは本明細書に記載するシステムおよび方法において好適に使用し得るはずである。UBrの沸点は791℃であると報告されており、高温での操作は不可能と思われるものの、本明細書に示す低い領域の一部(例:330〜550℃、338〜500℃および338〜450℃)における運転を意図している原子炉にとっては、この沸点は制限とはならない。
図7は、ClおよびBrの主な同位体についての(n,γ)捕獲断面積を示す。図7によれば、Brの(n,γ)捕獲断面積は、ほとんどのエネルギースペクトルにおいてClよりも高い。実際、37Cl(図7の曲線708)は、スペクトルのほぼ全域にわたって79Br(図7の曲線706)および81Br(図7の曲線704)よりも低い捕獲断面積を有する。35Cl(図7の曲線702)もまた、1×10−4MeVより上においてBrよりもおおよそ低い。
さらに、臭化物塩が実際に増殖燃焼反応を維持する好適性について調べた。調査開始時点における、塩の化学的構造および基準の塩化物塩の濃縮度は同じにした。化学的構造は17UBr−71UBr−12NaBr、濃縮度は12.6%235Uであった。この燃料塩を、標準的な1GWth溶融塩化物高速炉(他の変更なし)においてモデル化した。得られた系は臨界に達さず、炉心のサイズを大きくするか、濃縮度を高くするか、どちらかが求められた。モデルの濃縮度を19.99%(低濃縮燃料として認識することが許容される最大値)まで高めると、図8に示す増殖燃焼曲線が得られた。炉は、人工的に上昇させたkeffにて運転開始し、数十年間で弱まっていくが、最終的に、keffを再度上昇させるのに十分な量のPuおよびマイナーアクチニドを増殖させる。図8のモデル化の結果から、臭化物塩系に合わせて最適化しなくても、臭化物燃料塩の実施形態は増殖燃焼を起こし、溶融臭化物塩炉が運転可能であることが分かる。このように、UBrおよび/またはUBr含有燃料塩であって、19%よりも高い235U濃縮度であるものが好適である。
増殖燃焼反応を維持するのに必要な体積を最小限にしつつ最大限の性能を得るために、いくつかの最適化可能性が存在する。1つ目は、臨界未満に落ちることなく増殖燃焼性能を確保する最低濃縮度を求めることである。2つ目は、炉のサイズ調整および材料構成を用いて、スペクトルを増殖が最大になる領域に調整することである。3つ目は、上述の塩化物の実施形態に沿って、複数の異なる燃料塩の組み合わせ(XXUBr−YYUBr−ZZNaBr)を調査して最適な実施形態を見つけることである。
さらに、塩の1種類以上の成分において使用される臭化物アニオンを、37Clを用いた塩化物塩について上述したものと同様に修正し得る。図7に示すように、2種類の安定した臭素同位体79Brおよび81Brは、それぞれ異なる中性子捕獲断面積を有する。そのため、臭化物塩に使用されるこれらの同位体の比を修正することにより、塩の捕獲特性を調整することができる。一実施形態において、全ての臭化物含有化合物は、可能な限り純度の高い79Brまたは81Brの供給から作製される。例えば、臭化物系燃料塩化合物は、燃料塩における臭化物イオンのうち90%よりも多く、95%よりも多く、98%よりも多く、99%よりも多く、さらには99.9%よりも多い量が79Brまたは81Brとなるように作製される。また、臭化物ベースの核燃料は、Brまたは81Br、もしくはこれら2つの組み合わせの、燃料中または燃料の他の成分中における他の臭化物イオンに対する量が、目標パーセント量または任意のパーセント量になるように開発される。例えば、一実施形態において、燃料塩中の臭化物イオンのうち10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、または0.1%よりも少ない量が81Brとなり、残りが79Brとなるように、臭化物系燃料塩化合物を作製し得る。また、上述のように、燃料塩中の臭化物イオンのうち、10%より多く、25%より多く、30%より多く、35%より多く、40%より多く、45%より多く、50%より多く、55%より多く、60%より多く、65%より多く、70%より多く、75%より多く、80%より多く、85%より多く、90%より多くの、またはさらに多い100%までの量が、81Brとなるように、臭化物ベースの燃料塩化合物を作製し得る。
(塩化ウラン燃料製造方法)
UClおよびUClの製造方法は、様々な方法が本技術分野において知られており、いずれの好適な方法を用いてもよい。例えば、UClは以下の化学反応から製造し得る。
UO+ClCCCl=CCl→UCl+副産物
同様に、UClは、以下の反応のうちいずれかを用いて製造し得る。
U+3/2H2→UHおよびUH+3HCl→UCl+3H
UCl+Cs→UCl+CsCl
上記の方法を用いて、任意の量のUClおよびUClを作製し、その後、混合することにより、上述の塩化ウラン燃料塩の実施形態のうちいずれかを作製し得る。上記の方法に加えて、以下に、UCl−UCl−NaCl実施形態を作製し得る効率的かつ簡便な他の方法を記載する。
合成した塩は、化学的に厳密に管理して、腐食および核物質の析出を最小限に抑える。このような化学的管理では、主に、酸化物および水酸化物の形成、特にウランカチオンに関するものを防ぐ。これらは塩化物のものよりもはるかに安定している。そのため、構成塩は、一旦製造したら、存在する間ずっと、酸化物層、酸素、または水に触れさせてはならない。この厳しい条件を満たすために、密閉容器内において、不活性雰囲気下にて塩を浄化および加工する。構成塩を混合する必要がある場合、混合操作は、空気、水、または酸素にさらすことなく行うべきである。保存は、漏れの無い、酸化物の含まれないキャニスター内で、不活性ガスの分圧を正の値にして行うべきである。これらの厳密な純度操作を、同位体濃縮および高温と関連して行うことは、特有の課題となる。
より簡便な実験室規模の方法が多数存在するものの、高純度で、塩素37が高濃縮である塩化物塩混合物を得るためには、4ステップの方法を用いることが勧められる。まず、二酸化ウランおよび炭酸ナトリウムを、直列に繋がれた容器内において、連動して、塩素と一酸化炭素ガスとの制御された混合物と、液相温度より低い温度にて反応させ、四塩化ウラン、塩化ナトリウム、および二酸化炭素ガスを得る。2番目に、四塩化ウランを液相温度よりも低い温度にて加熱し、乾燥アルゴンをゆっくりと通過させ、昇華を起こし、続いて、加熱ラインを介して、新鮮な塩化ナトリウムの冷却床に移送する。3番目に、ある分量のケイ素をUCl−NaCl混合物に添加し、液相で反応させ、四塩化ケイ素を得る。四塩化ケイ素は塩からスパージし得る。Siの代わりに他の還元剤を使用することも可能であり、適宜検討される。四番目に、この塩を保存容器に移し、アルゴン下にて冷却保蔵する。
図9は、上述した方法に基づく、UClを含有する燃料塩の製造方法の実施形態を示す。図示した実施形態において、この方法は、二酸化ウラン接触操作902からスタートする。二酸化ウラン接触操作902において、ある量のUOを、UClの形成が可能な温度にて、気体状態の塩素および一酸化炭素に接触させる。一実施形態において、この操作は、ある量の固体状態のUOを準備することによって行い得る。気体との接触を容易にする高表面積形態、例えば、粉体、粒体、または多孔質基質等の形で固体状態のUOを準備することにより、反応をより効率的に行うことができる。接触操作902を行うと、気体に接触するUOのうち少なくとも一部が、以下の炭素塩素化(carbochlorination)反応を介してUClに変換される。
UO(s)+2CO(g)+2Cl(g)=UCl(s)+2CO(g)
この反応は、還元剤である一酸化炭素および酸化剤である塩化物が両方含まれているため、特殊である。上記2つの成分は、はるかに安定な酸化物から四塩化ウランを作製する熱力学を満たすために、ウランの酸化状態をIVからVIに変動させる。この反応は、部分反応について言うと、非常に複雑であり、以下の順に起こると考えることができる。
UO2(s)+1/2Cl2(g)→UOCl;酸化、
UOCl+1/2Cl2(g)→UOCl2(s);酸化、
UOCl2(s)+CO(g)→UOCl+CO2(g);還元、
UOCl2(s)+1/2Cl2(g)→UOCl3(s);酸化、
UOCl3(s)+1/2Cl2(g)→UOCl;酸化、
UOCl+CO(g)→UCl+CO2(g);還元。
なお、四塩化物が得られた後、2つの反応が予測されることが重要である:
UCl+1/2Cl2(g)→UCl;酸化、
UCl+1/2Cl2(g)→UCl;酸化。
2つの酸化反応によって五塩化ウランおよび六塩化ウランが生成されることが知られているが、これらの生成物は250℃にて分解して四塩化ウランになると予測される。五塩化ウランおよび六塩化ウランの生成、および、四塩化ウランの融解および昇華をも避けるために、反応温度は250℃〜400℃の間に保たれる。
上述のように、得られたUClにおける全Clに対する、または、上述の燃料全体におけるClに対する、目標量の37Clを得るために、塩素の一部または全部は37Clである。所望の比によっては、複数の異なるCl同位体の複数の供給源を用いて、全Clに対する所望の37Clの比を達成し得る(例えば、純37Clの供給源、天然Clの供給源、純35Cの供給源、および/または他の35Clおよび37Clのブレンド)。
方法900は、炭酸ナトリウム(NaCO)接触操作904も含む。UO接触操作902と同様に、このNaCO接触操作904は、ある量のNaCOを、NaClの形成が可能な温度にて、気体状態の塩素および一酸化炭素に接触させることを含む。一実施形態において、この操作は、ある量の固体状態のNaCOを準備することによって行い得る。気体との接触を容易にする高表面積形態、例えば、粉体、粒体、または多孔質基質等の形で固体のNaCOを準備することにより、反応をより効率的に行い得る。炭酸ナトリウム接触操作904を行うと、気体に接触するNaCOのうち少なくとも一部が、NaClに変換される。また、上述のように、最終的に得られるNaCl中のCl濃縮の量(例:37Cl濃縮)は、使用する塩素ガスの濃縮度を制御することによって制御可能である。この反応の式は以下の通りである。
NaCO(s)+CO(g)+Cl(g)=2NaCl(s)+2CO(g)
方法900は、液体または気体状態のUClをシリコン金属に接触させるケイ素接触操作906も含む。一実施形態において、ケイ素接触操作906では、反応状態を制御することによって特定のUCl−Si反応または特定の複数のUCl−Si反応が起こる。この操作では、得られるUClの量が、使用するSiの量によって制御され、UClが過剰に準備される。この操作906は、過剰量の液体状態UClを準備して、既知量のケイ素を、ケイ素が全てまたはほぼ全て反応するまでこの液体に浸すことによって行われる。ケイ素接触操作906を行うと、気体に接触するUClのうち少なくとも一部が、UClに変換される。UClに変換されるUClの量は、使用するSiの量に対する化学量論的な量である。これは、SiはUClとはよく反応するがUClとはあまり反応しないためである。そのため、既知の開始量のUClを用いて、任意の所望のUCl−UCl混合物を、UClの気体と接触させるSiの量およびUClの量を制御するだけで得ることができる。この操作906の実施形態において好適に使用可能な反応の式は、以下のとおりである。
4UCl(gまたはl)+Si(s)=4UCl(g)+SiCl(g)
四塩化ケイ素の沸点は57℃であり、溶融塩の温度において容易に気化してアルゴンによって運ばれていく。取り除いた後は、中和浴にて収集または反応させることができる。天然の酸化層である二酸化ケイ素は、塩に対して不活性であり、懸濁として存在するか、または析出物として沈殿する。二酸化ケイ素の存在は、塩の質に影響しない。
他の反応もまた可能である。例えば、ケイ素接触操作906において、UClからUClおよびSiClを形成することができる温度および圧力状態下にてシラン(SiH)または二塩化ケイ素(SiCl)等の他のケイ素含有ガスを用い得る。この反応においてUClは気体または固体の状態のいずれでもよく、温度および圧力状態に応じて選択し得る。
別の実施形態において、ケイ素接触操作906では、過剰量のUClを使用することに代えて、過剰量のSiを用いて、既知量のUClを、同じ化学量論的な量のUClに変換し得る。既知量のUClを作製することが目的であり、結果的に得られる塩化ケイ素種は重要ではないため、過剰量のSiを用いてケイ素接触操作906を行うことは、反応状態を制御するよりも簡便である。
接触操作902、904、906は、既知の、または今後開発される、任意の好適な接触容器または機器を用いて行い得る。例えば、一実施形態において、接触させる固体材料は、ルース粒体またはルース粉体であり、気体材料は、圧力下において、接触容器内を流すか循環させて(例:容器の一端にあるバルブに流し込み、容器の他端にあるバルブから取り除く)、容器が一時的に充填層反応器となるようにするか、または、容器を通る流速が十分である場合、流動層反応器となるようにする。これらの実施形態において、気体を固体材料に接触させる際、固体材料を容器から取り除くことなく行われる。
方法900は、さらに、生成されたUCl、UClおよびNaClを混合して所望の燃料塩実施形態を得ることを含む。混合する際、UCl、UClおよびNaClは、それぞれ独立に、気相、液相、または固相であり得る。例えば、各材料を適当な量ずつ別々に作製し、その後別々に加熱して溶融状態にし、1つの容器に移し、容器内にて混合および固体化されるようにしてもよい。これにより、輸送が容易な固体状態の燃料塩実施形態が得られる。上述したように、各材料は、原子炉容器内または外において混合および/または融解することができる。
方法900は、独立した複数の操作として行い得る。また、方法900では、複数の操作を協調的に行い得る。例えば、接触容器を繋げることにより、UO接触操作902およびNaCO接触操作904において、同じ塩素ガスを用いてもよい。
図10は、図9の方法を基にした、UClを含有する燃料塩の製造を協調的に行う方法の実施形態を示す。この協調的方法1000では、固体状態のUOを含む第1接触容器、固体状態のNaCOを含む第2接触容器、およびSi元素の固体を含む収集容器を、システム準備操作1002において準備する。この操作1002は、システムの全ての部材を、適切な運転状態(例:200〜550℃、1〜5atm)へ持っていくことに加え、ClおよびCOの準備を行うことも含む。一実施形態において、上述の容器は、アルゴン等の不活性ガスを用いて、固形分の周りの気層に充満させて準備してもよい。
上述のとおり、Clガスは、37Clの量を修正(つまり、天然の37Clの量である24%とは異なる量に修正)してもよく、これにより、最終的に得られる燃料塩におけるCl成分の中性子減速度および中性子吸収度を変更してもよい。例えば、一実施形態において、Cl37Clを23%未満に修正し得る。別の実施形態において、Clガスは、25%より多い量の37Clを有し得る。
図11は、図10の方法を行う際に使用するのに適した接触容器およびそれらの接続を概略的に示す。図11は、固体状態のUOを保持する第1接触容器1102、固体状態のNaCOを保持する第2接触容器1104、およびシリコン(Si)金属固体を収容する収集容器1106を示す。容器1102、1104、1106は、気体が第1容器1102を通って流れ、次いで第2容器1104を通ることができるように接続されている。収集容器1106は、さらに第2容器1104に接続され、第2容器から、例えば重力によって、または容器1104と1106との間に圧力差を誘起することよって、気体または液体のうち一方または両方を受け取ることができるようになっている。別の実施形態において、Siを第2容器1104に添加してもよく、また、Siを中間接触容器(図示せず)に準備してもよい。
Cl供給源1108、CO供給源1110、および不活性ガス供給源1112は、ガスボンベとして記載されているが、どのような供給源を使用してもよい。図に記載の実施形態において、COおよびClは第1容器1102のみに接続されている一方、不活性ガス(アルゴンとして記載されているが、どのような不活性ガスを用いてもよい)は、3つの容器全てに接続されて、各容器の環境をそれぞれ独立に制御できるようになっている。
バルブ、フィルタ、チェックバルブ、圧力および温度センサー、流量モニターおよび流量制御器、加熱および冷却機器、ポンプ、圧縮器等の補助的な部品は図示していない。当業者は、これらの部品をどのように実現すれば本明細書に記載の結果が得られるか、容易に理解する。同様に、フィッティングおよびアクセスポート、内部拡散部品、および他の要素もまた必要に応じて用いてもよく、これらは図11において特に特定していない。
ここで図10に戻って、準備操作1002においてシステムの準備ができたら、反応ガス流動操作1004において、ClおよびCOを図11の第1容器1102および第2容器1104内に流す。これにより、UOおよびNaCOがClおよびCOと接触して、UClおよびNaClが各容器にてそれぞれ生成される。これらの気体は各容器1102、1104を一度流してもよく(単回通過)、または、何度か再循環させてもよい。例えば、一実施形態において、反応ガス流動操作1004は、全てのUOがUClに変換されるまで行ってもよく、全てのNaCOが変換されるまで行ってもよく、両方が変換されるまで行ってもよい。また、反応ガス流動操作1004は、最終的に得られる燃料塩を作製するために、今のところ必要な量またはそれより多い量のUClおよびNaClを得るのに十分な、一定の時間のみ行ってもよい。
2つの容器1102および1104内に気体を流した後、これらの気体は、再処理および再利用のために収集してもよい。特に、濃縮Clガスを使用する場合、できる限り多くのClガスを回収することはコスト効率が良い場合がある。また、これらの気体は処理をして外界へ放出してもよく、例えば、酸化銅吸収装置を通過させてCOを減少させることによって処理をして外界へ放出してもよい。
生成されるUClおよびNaClの量は、操作環境および、容器1102、1104を気体が流れる時間の長さによって変わる。そのため、操作者は、システム1100を簡単に制御して所望の量の各材料を得ることができる。さらに、容器1102、1104の相対寸法および形状は、一度の操作で、ある量のUClに対して特定の相対量のNaClが生成されるように調整することができる。これにより、どのような所望のUCl−NaCl燃料塩をも作製できるようにシステムを構成することができ、また、操作1012を参照して以下にさらに詳しく述べる拡張によって、どのようなUCl−UCl−NaCl燃料塩をも作製できるようにシステムを構成することができる。
図11のシステムの実施形態において、容器は直列に接続されており、気体は、第1容器を最初に通り、次に第2容器を通る。また別の実施形態において、気体は、それぞれ独立に各容器を通ってもよい。この別の実施形態によれば、複数の異なるCl供給源(したがって、異なるCl濃縮度)を使用できる。
2つの容器1102および1104内に気体を流し、これにより、第1容器1102内に少なくともいくらかのUClおよび第2容器1104内に少なくともいくらかのNaClを生成した後、UClガス化操作1006を行う。この操作において、第1容器1102の温度および/または圧力を、UClが固相から気相に変換されるように調整する。一実施形態において、UClは昇華を経て変換され、液相を経ずに変換が行われる。また、別の実施形態において、温度および圧力状態は、UClがまず液相に変換され、次いで蒸発して気体になるように調整される。一実施形態において、ガス化操作1006は、全てのまたはほぼ全てのUClが気相に変換されるまで、昇華状態を任意の一定時間保持してもよい。
一実施形態において、二酸化ウランの炭素塩素化(carbochlorination)は、完了するまで行われる。しかし、反応の程度は、効率の目的以外では、重要ではない。二酸化ウランおよび四塩化ウランの粉体のどのような混合物も、四塩化ウランの高蒸気圧により、都合よく分離することができる。四塩化ウランは、520℃という低い温度にて昇華することが分かっている。四塩化ウランを加熱すること、例えば、一実施形態において、520℃(四塩化ウランの融点の70℃下)まで加熱することによって、UClはゆっくりと揮発し、どのような未反応UOからも容易に取り出すことができるはずである。UClガス化操作1006は、第1容器1102から全てまたはほぼ全ての反応物ClおよびCOガスを洗い流した後で行ってもよい。
気体状態のUClは、その後、UCl移動操作1008において、第2容器1104に移される。この操作は、従来手段のいずれを用いて行ってもよい。UOの融点(1atmにおいて2,865℃)はUClの沸点(791℃)よりも高いため、どのようなUOも、第1容器に固体として残る。しかし、フィルタまたはドロップアウトを設けることにより、気体移動の際に、粒体が第1容器1102から意図に反して取り除かれることを防ぐことができる。一実施形態において、全てまたはほぼ全てのUClが、この操作1008の間に移動する。また、最終的に得られる所望の燃料塩の所望の量および割合に基づいて、既知量のUClを移動させてもよい。当該技術分野で知られているとおり、リアルタイム流量計およびガス分析器を用いて、移動量を確認または制御してもよい。
任意の量のUClガスを第2容器1104に移動させた後、燃料塩融解操作1010において、第2容器1104の環境を調整し、UClガスが凝縮してNaCl固体が融解するようにし、これら両方を液相状態にする。第2容器が1atmの圧力に保たれる一実施形態において、この環境は、UClのNaClに対する相対量に依存して、368℃〜800℃の温度領域に対応する(図4の三元図の下軸に示されているとおり)。NaCOの融点が1atmにおいて851℃であるため、この環境は、NaCOが固体状態に保持されていながらUCl−NaCl混合物が液体になる点に容易に調整することができる。一実施形態において、例えば、塩化ナトリウムは350℃、つまりUCl−NaClの共晶融点の20℃下にて保持される。
燃料塩融解操作1010の後、UCl−NaCl移動操作1012において、一部または全ての液体UCl−NaClが、その後、収集容器1106内に移される。この操作は、従来手段のいずれを用いて行ってもよく、例えば、第2容器1104をアルゴンにて加圧して溶融UCl−NaCl混合物を押し出して収集容器1106へ移動させる等の手段がある。また、この液体は、単に重力を利用して収集容器1106に注いでもよい。既に述べたとおり、処理・特殊装置を利用して、残存NaCOが第2容器1104から取り除かれることを防いでもよい。
システム1100は、さらに、収集容器1106に液体が入った際、液体中のUClが収集容器1106中のSiに接触するように設計される。一実施形態において、Si反応が、上述の効果、つまり、UClと化学量論的に反応してSiClおよびUClを形成する効果を得るように、状態が制御される。収集容器は、UClが液体のまま保持される一方、SiClが沸騰して蒸発し気体になり容易に取り除けるような操作状態にて保持される。そのため、収集容器1106中のSiの量を制御することによって、得られるUClの量を制御することができる。
システム1100は、最終的に収集容器1106に移されるUClおよびNaClの相対量を容易に制御することが可能であり、UClに変換されるUClの量も容易に制御可能であるため、システム1100および方法1000を用いて、どのような所望のUCl−UCl−NaCl混合物も作製することができる。
UCl−NaCl移動操作1112の後、最終収集操作1012を行い得る。この操作1012において、SiClを取り除いて不活性ガスで置き換える。燃料塩は、輸送しやすいように収集容器1106内で固化してもよく、また、保存用または輸送用の他の容器(液体、固体、または気体状態にて)に移してもよい。
容器1102、1104、1106における反応の速度は、使用する固体UOおよび固体NaCOの形態(例えば、粉体、粒体、多孔質基質、塊等)および、気体の流れ、温度および圧力状態、さらに、接触容器の内部構造(例えば、容器は、内部バッフル、拡散器、または他の部品を用いて流動する気体との接触を促進するように構成されている)に依存する。どのような固体UOおよびNaCOも使用することができるが、高表面積形態のものは反応の速度を増加させ、一般的に、より効率的である。同様に、既知のまたは今後開発されるどのような種類の容器も使用し得るが、固体−気体の接触および液体‐気体の接触を促進するように特に設計されている接触容器が、単純な設計のものと比して、より効率的である。さらに、混合器や攪拌器等の動的機器を、いずれかの容器においてまたは全ての容器において使用してよく、これにより、図9または図10のいずれかの操作において接触、ガス化、または混合を促進し得る。
UCl−UCl−NaCl燃料塩生成システム1100および方法900、1000の種々の実施形態について、本開示の目的のために述べてきたが、本明細書に記載された技術の十分な範囲内において様々な変更や修正を行ってもよい。例えば、当業者は、システム1100または方法900、1000に多くの細かい変更を施しても、最終的に得られる燃料塩混合物および最終生産物に関して同様の制御が可能であることを理解するであろう。例えば、固体ケイ素は、第2容器1104に導入してもよく、また、固体ケイ素は、第2容器1104および収集容器1106の間にあるフロースルーチャンバー(図示せず)に保持されてもよい。同様に、第1および第2容器は、直列ではなく、それぞれ独立に操作してもよく、UClガスおよびNaCl液体を別々に収集容器1106に移してもよい。当業者が容易に思いつく、および、本開示の精神の範囲内であり添付の請求項で規定されているような、多数の他の変更を行い得る。
また、UCl−NaClの2成分混合物を所望する場合、図9または図10の方法をさらに好適化してもよい。この実施形態において、UCl−NaCl混合物全量を、長時間水素とともにスパージして、以下の反応を開始させることができる。
2UCl+H2(g)=2UCl+2HCl(g)
を過剰に準備することにより、UClが全てUClに変換され得る。
(塩化アンモニウムを用いてUOからUClを合成する)
図16は、塩化アンモニウムを用いてUClを製造する方法の実施形態を示す。図の方法1600の実施形態では、固体状態のUOおよびNHClの混合物をウラン作製操作1602において作製する。この固体混合物は、どのような従来手段を用いて作製してもよく、例えば、ボールミル、ロッドミル、自生粉砕ミル、SAGミル、ペブルミル、ロールグラインダー、スタンプミル等の任意の好適な機器による粉砕、破砕、切断等が挙げられる。
続いて、第1変換操作1604を行う。この操作では、以下の反応によって(NHUClを生成するのに適した条件下にて、固体混合物をHClに曝す。
UO(s)+2NHCl(s)+4HCl(g)=(NHUCl・2H
一実施形態において、変換操作1604は、閉鎖環境において固体混合物をHClガスに曝しながら1atmにて100℃まで加熱し、十分に変換が行われるまでこの温度を維持することを含む。実施形態によっては、この温度は少なくとも1時間の間維持し得る。しかし、変換を完全に行うために、時間の延長が必要な場合もあり、例えば、温度を2時間、3時間、4時間、またはそれ以上維持することもある。使用するHClの濃度によっては、当該温度は、HCl水溶液の沸点直下の温度にて維持し得る。これにより、閉鎖環境にHCl水溶液のプールを供給することによってHClガス環境を維持することが可能となる。
他の方法にて(NHUClへの変換を行ってもよい。例えば、HClガスを、より高温にて、窯、移動床、サイクロン流動床反応器、または他の気体−固体接触技術を通過させることが挙げられる。発煙HCl(濃度が40%よりも濃いHCl水溶液)を用いてHClガスを発生させてもよい。さらに他の実施形態において、混合物を、(NHUClが得られる条件下において、気体ではなく液体状態のHCl水溶液と接触させてもよい。
さらに他の実施形態では、塩化カルシウム(CaCl)およびHCl水溶液を用いることによって、第1変換操作1064用のHClガスを作製する。この実施形態において、HClガスは、以下の反応を経て生成する。
CaCl(s、無水)+HCl(aq)=CalCl・2HO(s)+HCl(g)
この実施形態において、第1変換操作1604は、無水CaClペレットを反応環境に供給して無水CaClをHCl水溶液に接触させることを含む。一実施形態において、CaClペレットをHClのプールに配置することによって接触させる。第1変換操作1604において、反応容器を設けてもよい。これにより、混合物と、CaClペレットを含むHClプールとを別々に保持し、HClガスのみが混合物と接触できるようにし得る。別の実施形態において、液体HClを、固体状態のCaCl上に循環または流動させてもよい。接触方法にかかわらず、HCl水溶液から水が取り除かれてCaClが水和されるため、HClガスが環境内に放たれるような程度にまで液体中のHClの濃度が高くなる。このHClガス生成方法において投入物として使用するHCl水溶液の濃度は、安全性が高く取扱いも容易であり、他のHClガス供給源を用いるよりも好ましい場合がある。このHCl作製方法は、本明細書に記載されるどの方法にて使用するようにも好適化される。
また、アニオンである37Cl同位体の量が修正されたHCl水溶液およびNHClを用いて、方法1600によって塩化物燃料塩を生成してもよい。上述したとおり、37Cl同位体の分離および回収は、いくつかの方法により可能である。そして、この37Clを用いて塩化水素を発生させることができ、この塩化水素は、水と組み合わせると、修正を含んだHCl水溶液を発生させる。塩化水素を作製する方法は多く知られており、どの好適な方法を用いてもよい。例えば、ClガスをHガスと組み合わせてNaClをHSOと反応させる方法が含まれる。同様に、修正を含んだNHClを、任意の既知の方法によって、37Cl供給源を用いて発生させてもよい。HClおよびNHCl両者のうちいずれかの修正の量を制御して、最終的に得られる燃料塩における全Clに対する37Clの任意の所望の比を得てもよい。例えば、最終的に得られる燃料塩における全Clに対する37Clの比を、25%より多くする等が挙げられる。
第1変換操作1604の後、第2変換1606操作を行う。この操作において、(NHUClは、以下の反応によってUClに変換されるのに適した条件下にて維持される。
(NHUCl=UCl+2NHCl
一実施形態において、第2変換1606は、(NHUCl・2HOをHCl環境から取り出すこと、および、(NHUCl・2HOを、所望の量の(NHUClがUClに変換されるまで変換に十分な温度に加熱することを含む。変換は200℃より高い温度にて起こると予想されるが、より高温になると反応速度が上昇する場合がある。一実施形態において、(NHUCl・2HOは、200℃より高い任意の温度であって、(NHUClまたはUClが融解する温度よりも低い温度まで加熱する。例えば、200〜500℃、250〜350℃または400℃等である。変換操作1606中に、(NHUClを、発生するUClが融解する温度まで加熱する実施形態を含む、別の実施形態も可能である。
図示した方法1600の実施形態は、UCl生成物を大量に製造するのに好適である。また、例えば上述のとおり、UClはUClから還元によって容易に得ることができるため、方法1600を用いて、図16に示すように任意の還元操作1608を加えるだけで、容易にまとまった量のUClを作製することも可能である。
この方法を検証するために、方法1600の実施形態を行った。この実験において、2グラムのUOおよび0.44グラムのNHCl(すなわち、NHClが10%過剰)を共に粉砕し、HCl水溶液と共に反応器に入れ、この環境にHClガスが過剰に存在するようにした。反応器を100℃に加熱し、この温度にて4時間保持した。そして、真空下にて、得られた生成物を取り出して分解管に入れ、80℃から400℃まで加熱した。UClの生成をX線回折にて確認した。
この実験において、CaCl法を用いてHClガスを生成した。UOおよびNHClの混合物を、上部の開いたガラス容器に入れ、容器を反応器内に入れた。HCl水溶液のプールを反応器の底に設け、CaClのペレットをHCl水溶液と接触させるように置いた。CaClの水和により過剰量のHClガスが発生し、このガスは容器中の固体混合物と反応した。
(塩化フッ化ウラン燃料製造プロセス)
図17は、UClFの製造方法の実施形態を示す。方法1700は、以下の反応をベースとする。
3UCl+UF=4UCl
図示した実施形態において、方法1700は、前駆体作製操作1702においていくらかの量のUClおよびUFを作製することからスタートする。UClおよびUFは、本明細書に記載したいずれかの方法で作製してもよいし、本技術分野で知られているいずれかの方法で作製してもよい。
そして、組み合わせ操作1704において、固体状態のUClおよびUFを化学量論的な量にて組み合わせる。図示した実施形態において、UClを3部およびUFを1部組み合わせる。組み合わせ操作1704は、次に記載する混合操作1706を見越して混合器(例:ボールミル)内で行ってもよいし、混合器に移す前に中間容器にて行ってもよい。
そして、混合操作1706において、組み合わせたUClおよびUFをある時間の間混合し、固体状態のUClF混合物を得る。混合操作1706は、従来の固体混合手段のいずれを用いてもよく、例えば、ボールミル、ロッドミル、自生粉砕ミル、SAGミル、ペブルミル、ロールグラインダー、スタンプミル等の任意の好適な機器による粉砕、破砕、切断等が挙げられる。混合の際、温度または圧力を上昇させて行ってもよいし、上昇させずに行ってもよい。混合時間は、混合条件(例:高温)に基づき、15分から5日の間から選択される一定の時間であり得る。例えば、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、または24時間等である。また、混合は、反応が完了するのに十分な長さの時間の間行ってもよく、この時間の長さは、リアルタイム検査または事前に行う検査に基づいて決定する。
別の実施形態において、混合操作1706は、一方または双方のウラン塩を、固体状態ではなく溶融状態で用いて行ってもよい。さらに他の実施形態において、混合操作は、炉の炉心内で行って、UClF塩が炉心内で生成するようにしてもよい。
操作1702〜1706のうちいずれかまたは全ての操作は、さらに、無酸素環境において行ってもよい。例えば、アルゴンまたは他の不活性ガス下において混合を行うことにより操作を行ってもよい。
方法1700を実証するために、実験を行った。行ったのは、以下のような実験である。700mgのUClを、アルゴン下、ボールミル内にて193mgのUFと1時間混合した。1時間混合した後、X線回折分析を行った。混合前の前駆体および本実験の生成物のX線回折分析によれば、前駆体UClまたはUFは最終生成物において存在していないことが分かった。これによれば、反応は完了しており最終生成物はUClFであると推定される。
なお、方法1700は、前駆体塩の化学量論量を変化させることによってUClおよびUClFを生成するように好適化してもよい。上述のとおり、これらの塩もまた、溶融塩炉における、核燃料としての使用、または核燃料塩の構成物質としての使用に適した性質を有し得る。
図18は、UClFの他の製造方法の実施形態を示す。この方法1800では、以下の反応に基づき、UOからUClFを生成する。
2UO(s)+3NHCl(s)+NHHF(s)+7HCl(g)=2[NHUClF・2HO(s)
[NHUClF・2HO(s)=2NHCl+UClF+2HOこの反応は、図16を参照して説明したものと類似のものである。
図示した方法1800の実施形態では、前駆体作製操作1802において、固体状態のUO、NHCl、およびNHHFの混合物を作製する。この固体混合物は、どのような従来手段を用いて生成してもよく、例えば、ボールミル、ロッドミル、自生粉砕ミル、SAGミル、ペブルミル、ロールグラインダー、スタンプミル等の任意の好適な機器による粉砕、破砕、切断等が挙げられる。
そして、第1変換操作1804を行う。この操作では、以下の反応によって(NHUClFを生成するのに適した条件下にて、固体混合物をHClに曝す。
2UO(s)+3NHCl(s)+NHHF(s)+7HCl(g)=2[NHUClF・2HO(s)
一実施形態において、第1変換操作1804は、閉鎖環境において固体混合物を過剰量のHClガスに曝しながら1atmにて100℃まで加熱し、十分に変換が行われるまでこの温度を維持することを含む。実施形態によっては、この温度は少なくとも1時間の間維持し得る。しかし、変換を完全に行うために、時間の延長が必要な場合もあり、例えば、温度を2時間、3時間、4時間、またはそれ以上維持することもある。使用するHClの濃度によっては、当該温度は、HCl水溶液の沸点直下の温度にて維持し得る。これにより、閉鎖環境にHCl水溶液のプールを供給することによってHClガス環境を維持することが可能となる。
他の方法にて(NHUClFへの変換を行ってもよい。例えば、HClガスを、より高温にて、窯、移動床、サイクロン、流動床反応器、または他の気体‐固体接触技術を通過させることが挙げられる。発煙HCl(濃度が40%よりも濃いHCl水溶液)を用いてHClガスを発生させてもよい。さらに他の実施形態において、図16を参照して上述したとおり、第1変換操作1804用のHClガスを、塩化カルシウム(CaCl)およびHCl水溶液を用いて作製してもよい。
第1変換操作1804の後、第2変換1806操作を行う。この操作において、(NHUClFは、以下の反応によってUClFに変換されるのに適した条件下にて維持される。
[NHUClF・2HO(s)=2NHCl+UClF+2H
一実施形態において、第2変換1806は、(NHUClF・2HOをHCl環境から取り出すこと、および、(NHUClF・2HOを、所望の量の(NHUClFがUClFに変換されるまで変換に十分な温度に加熱することを含む。変換は200℃より高い温度で起こると予想されるが、より高温になると反応速度が上昇する場合がある。一実施形態において、(NHUClF・2HOは、200℃より高い任意の温度であって、(NHUClFまたはUClFが融解する温度よりも低い温度まで加熱し得る。例えば、200〜500℃、250〜350℃または400℃等である。第2変換操作1806中に、(NHUClFを、発生するUClFが融解する温度まで加熱する実施形態を含む、別の実施形態も可能である。
また、他の箇所で述べたように、方法1800を用いて、アニオンである37Cl同位体の量が修正されたHCl水溶液およびNHClを用いて、修正を含んだ37Cl塩を生成してもよい。HClおよびNHCl両者のうちいずれかの修正の量を制御して、最終的に得られる燃料塩におけるClの全量に対する37Clの任意の所望の比を達成してもよい。例えば、最終的に得られる燃料塩における全Clに対する37Clの比を、25%より多くする等が挙げられる。
(燃料塩実施例)
様々な燃料塩の実施形態を実験室において作製し、試験を行って、図4の三元状態図の裏付けを行った。
数バッチのUClを作製した。作製した中でも典型的な1つのバッチは、以下のように作製した。1.895gの金属ウランのサンプルをヘキサン類で洗浄し、硝酸で処理して、酸化物を除去した。この金属ウランを石英るつぼに入れ、管状炉に装填し、流動H下、250℃にて30分間保持し、UHを得た。このUHは、より高表面積の生産物として観察され、出発物質の金属ウランとは形態学的に異なっていた。炉温を350℃まで昇温し、流動ガスをHClに切り替え、温度を90分保持し、UClを得た。雰囲気をHに変更し、炉を室温にした。管状炉をH雰囲気下にて保持し、Arグローブボックスに移した。UClの特性をX線回折にて明らかにしたところ、総回収質量は2.47gであった。
同様に、数バッチのUClを作製した。作製した中でも典型的な1つのバッチは、以下のように作製した。1.50gのUOのサンプルをシュレンクフラスコに加え、Arを充填した。不活性状態下、10倍モル過剰のヘキサクロロプロペンを加えた。フラスコ温度を75℃に昇温し、30分間保持した。温度を165℃付近の還流まで昇温し、3時間保持した。生成物を室温にし、四塩化炭素、トルエン、およびヘキサンで洗浄した。ヘキサンによる洗浄後、乾燥させ、X線回折にてUClであることを特定した。この手順により、1.9gのUClを得た。
適当な量の構成化合物をMoるつぼ内でAr雰囲気下650℃にて2時間融解させることによって、2成分混合物および3成分混合物を作製した。3.761gのUClおよび1.239gのNaClを用いて、同様の方法にて、66NaCl−34UClのサンプルを作製し、特性を明らかにした。71UCl−17UCl−12NaClの典型的なバッチは、0.6188gのUCl、0.1331gのUClおよび0.0158gのNaClを含む。これら3つの成分をMoるつぼに加え、上述のように処理した。混合塩生成物を、示差走査熱量測定によって分析した。
UClFの実施形態を、上述のように、UClとUFとの間の合成反応を用いて作製した。この実験において、700mgのUClを、193mgのUFと、ボールミル内においてアルゴン下にて1時間混合した。1時間混合した後、X線回折分析を行った。混合する前の前駆体および本実験の生成物のX線回折分析によれば、前駆体UClまたはUFは最終生成物において存在していないことが分かった。これによれば、反応は完了しており最終生成物はUClFであると推定される。
以下の燃料塩を作製した。当該燃料塩の融点は表4のように測定された。
Figure 2019515291
(腐食を低減するための燃料の修正)
溶融塩腐食を管理するために、ニッケルおよびモリブデン合金等の新型材料を反射器、PHX、および容器等の燃料塩対向部材として使用することが必要になる場合がある。実施形態によっては、好適な炉の設計および運転条件のおかげで、これらの新型材料を用いて部材をクラッドまたはコーティングするだけでよい場合があるが、このような部材の大半は、既存のASME Code Caseのステンレスおよびその他の材料等の、より従来から存在する材料から構成することができる。さらに、もし部材の交換が定期的に行われる場合は、非常に優れたクラッド性能を与えたり、完璧なコーティングを実証したりする必要はない。
一実施形態において、適合性耐食肉盛(corrosion resistantcladding,CRC)を、ASME基準適合基材と共に、全ての燃料塩対向面において利用する。ASMEのセクションIII、ディビジョンVの「高温炉(High Temperature Reactors)」では、CRCの使用が許可されている。材料、接合法、および非破壊検査法を注意深く選択することにより、腐食、放射線損傷、および高温運転に対する防御を複数層備えた頑強な複合金属製炉格納容器を建設することが可能になる。本実施形態において、CRCは、無制御に放出される放射性核種に対する第一の障壁である。これは、圧力容器板、配管、一次熱交換器管および管板における耐食肉盛からなり、陽圧用に設計されている。
一実施形態において、燃料塩は、腐食によって生成されると思われる塩に対応する、1種類以上の塩化物塩を設けることによって腐食を減らすように好適化されている。このような塩を、付加的な非核***性塩化物塩の1つとして(または唯一の付加的な非核***性塩化物塩として)設けることにより、塩対向機械部品の腐食を減らす。
図12は、溶融核燃料を用いる原子炉において腐食を削減する方法の実施形態を示す。方法1200は、Cl、F、またはClF、ClF、Cl等の組み合わせ等を含む燃料塩アニオンのいずれに対しても、好適である。図示した実施形態において、方法1200は、特定操作1202からスタートする。特定操作1202では、どの材料(単数の材料または複数の材料)が炉において塩に対向するかを判定する。例えば、上述のように、ニッケルおよびモリブデン合金は、様々な塩対向部材に用い得る。
そして、特定操作1202の後、分析操作1204において、当該特定された材料中における、腐食する可能性が最も高いカチオン(単数のカチオンまたは複数のカチオン)の判定を行う。この分析操作1204は、純粋な理論解析であってもよく、例えば、材料中の各元素に関する塩生成の相対自由エネルギーの比較に基づいていてもよい。代わりに、またはさらに追加で、分析操作1204は、代表的な塩を複数用いて腐食試験を行い、実験的に、腐食しやすい化学的性質を特定することを含んでもよい。
塩腐食の影響を受けるカチオン(単数のカチオンまたは複数のカチオン)の判定を行った後、当該炉専用に燃料塩を作製し得る。当該炉の核燃料塩には、塩アニオン(例:MCFR中の塩化物)および材料カチオン(例:分析操作1024にて、特定の合金についてMo腐食が問題であると判定された場合、Mo)からなる腐食抑制塩が含まれる。腐食抑制塩の量は実験的に決定してもよく、または、燃料塩中の腐食抑制塩の量を、炉の運転条件下(圧力、温度等)において平衡を達成するのに必要な量にすることによって腐食反応を防止するのに必要な塩の量に基づいて選択してもよい。または、核燃料に可溶にすることができる核燃料中の腐食抑制塩の量の上限値。
例えば、方法1200の一実施形態において、分析操作1024にて、Cr腐食が発生する可能性があると判定される場合がある。これを受けて、少なくともいくらかの量のCrClを含む耐食燃料を作製し得る。
図13は、採用候補であるいくつかの合金のリストである。当該図には、合金、各合金の主成分(>1質量%)元素(単数の元素または複数の元素)、および各合金の少量(<1質量%)元素を記載する。
図13に記載の合金のうちいくつかについて、代表条件下にて、71UCl−17UCl−12NaCl燃料塩の実施形態と66NaCl−34UCl燃料塩の実施形態との両方を用いて、実験を行った。試験した合金は、316SSステンレスを含む。これらの実験において、合金の試験片を、ある量の燃料塩に挿入し、この状態を650℃にて100時間保持した。そして、これらの試験片を、エネルギー分散分光法を用いて検査した。ステンレスを検査した結果、合金試験片から、クロムが激減し、Feが測定可能な程度減少したことが分かった。これにより、合金(以下を参照)中のカチオンの相対自由エネルギーに基づいた理論的解析の結果、すなわち、CrはCl塩によって腐食する可能性がより高く、Feは比較的低く、NiおよびMoはさらに低い、ということを示す結果が有効であることが分かった。
ΔHCrCl2<ΔHCrCl3<ΔHFeCl2<ΔHNiCl2<ΔHMoCl2
この分析を受けて、腐食抑制塩は、316SS合金向けに、CrCl、CrClおよびFeClのうち1つ以上を含み得る。これらの腐食抑制塩のうちいくつかまたは全てを塩化物燃料塩に加えて、当該合金の腐食を減少または防止し得る。
(燃料モニタリング)
運転中、溶融塩炉内の燃料塩をモニターしてもよい。このモニタリングを行って、十分な増殖がいつ起こったかを判定し、燃料のうちいくらかを取り出して新たな燃料と入れ替えることにより反応度を低く保つことができるようにしてもよい。このようなモニタリングは様々な形で行い得るが、溶融塩の全体的な質を示す、溶融塩中の分子の少なくとも1つの濃度をモニターすることを含む。モニタリングの結果(例えば、十分な増殖が起こったことを示す結果)を受けて、運転パラメータを変更したり、いくらかの燃料塩を新たな燃料塩で置き換えたりする等の、何らかの動作を行い得る。
モニタリングは、分光法または分光ツールを含む、既知のまたは今後開発されるどのような種類の好適なスペシエーション法またはスペシエーション機器を用いて行ってもよい。例えば、一実施形態において、ラマン分光法またはレーザーアブレーション法を用いてリアルタイムでモニタリングを行う。ラマン分光法では、サンプルの同定および定量に用いることができる、分子振動の情報が得られる。この技術では、単色光源(すなわち、レーザー)をサンプルに照射し、散乱光を検出する。いくらかの量の燃料を炉心(サイドストリーム内等)から取り出し、「窓」を含むモニタリングセルを通過させることにより、分光法を行い得る。ラマン窓部の材料としては、例えば、石英ガラス、溶融シリカ、サファイア、ダイアモンド、およびいくつかのガラス等が挙げられる。レーザーアブレーション法では、化合物を高エネルギー状態に励起した。励起された材料は、質量分析計によって、または光学的に評価し、成分組成および場合により分子種を判定することができる。炉およびモニタリングシステムの運転パラメータを満たすことができる限り、どのような材料を用いてもよい。実施形態によっては、モニタリングのために炉心から取り出す燃料は、以下にさらに述べるような燃料精製/処理のために取り出した燃料のサイドストリームの全てまたは一部、制御目的のために燃料親物質によって置き換えられるサイドストリームの全てまたは一部、および/または図1Aを参照して上述した一次冷却材ループ110からのサイドストリームの全てまたは一部であり得る。
サイドストリームのサンプリング構成以外のサンプリング構成を使用してもよい。例えば、一実施形態において、炉心のどこかに窓を設置し、この窓を通してスペシエーション機器(例:ラマン分光器またはアブレーション装置)が燃料に対して、または、もしあれば、燃料上のヘッドスペースに対して、光を送ることができるようにしてもよい。また、スペシエーション機器は、炉の外にあるモニタリングシステムと無線または有線で接続されている遠隔計器であって、例えば炉心または配管の壁を通して燃料塩または燃料塩ストリームに挿入可能な遠隔計器であり得る。他の実施形態において、分光器は、炉心内における熱交換器または他の部材に物理的に内蔵して燃料塩を直接サンプリングすることができるようにしてもよい。さらに他の実施形態において、分光器またはアブレーション装置は、図1Aを参照して説明したような補助部材127であってもよい。
また、さらに別の、非リアルタイムの実施形態において、サンプルを周期的に炉心から取り出して分析してもよい。そして、このようなサンプルは、元に戻すか、または後で用いるために収集し得る。例えば、一実施形態において、いくらかの量の燃料塩を、運転中のMCFRにおいてスケジュールに従って交換し、取り出した燃料塩を、レーザーアブレーションにて、光学的方法にて、またはラマンプローブを用いて、分析する。そして、この分析の結果を用いて、例えば燃料塩の置き換えのスケジュールを変更する等、1つ以上のパラメータを変更する。調整し得る他の運転パラメータとしては、例えば、炉心温度、交換する燃料塩の質、変位要素の位置、燃料塩の反応度、および炉心への添加剤の供給速度等が挙げられる。
図14は、溶融塩原子炉の運転方法を示す。図示した実施形態において、方法1400は、操作1402において、原子炉の炉心において溶融塩における増殖燃焼挙動を維持することからスタートする。
運転中、溶融塩のうち少なくともいくらかをリアルタイム分析操作1404において分析する。一実施形態において、ラマン分光法またはレーザーアブレーション法等のスペシエーション法を用いて分析を行い、溶融塩中の分子の少なくとも1つの濃度を判定する。また、スペシエーションを行って、燃料中の全てではないにしてもほぼ全ての分子およびそれらの相対量を判定することにより、当該位置における燃料塩の完全なまたはほぼ完全な化学的組成が分かるようにしてもよい。また他の実施形態において、ガンマ検出器等の放射線検出器を用いて溶融塩のエネルギーまたは活性をモニターしてもよく、当該位置の燃料塩の部分的または完全な化学的組成の判定を、塩の組成および測定に基づいて行ってもよい。
燃料塩の化学的組成について得られた情報に基づき、化学的組成またはある特定の濃度が何らかの規定の閾値を超えている場合、調整操作1406を行い得る。この調整は、原子炉の運転パラメータを1つ以上調整する、または燃料交換等の特定のタスクを行うことを含み得る。
ラマン分光法は、燃料塩の質および/または他の安全または設計考慮事項、例えば、核***生成物の蓄積、粘性、等、をモニターするのに用い得るスペシエーション技術のうちの1つにすぎない。他の技術としては、吸光度分光法、レーザーアブレーション分光法、レーザー誘導破壊分光法、赤外線(IR)分光法、および、電気化学によって複数の異なる塩組成(例:UCl、UClおよびNaCl)の相対濃度を判定することが含まれる。上述のとおり、既知のまたは今後開発されるいずれかの技術を用いてモニタリングを行ってもよい。
(凍結栓)
溶融燃料塩炉の他の態様は、複数の凍結材料栓の複数の異なる目的のための使用可能性を含む。凍結材料栓(本明細書において凍結栓と称する)は、意図される運転状況において、固体状態であり、燃料塩と非反応性であり、燃料塩が炉内で移動することを防ぐために用い得るのに十分な強さの固体構造を有しているが、所望の活性化温度に達すると、融解して混合可能になり燃料塩の移動を可能にする、ある量の材料である。
凍結栓は多岐にわたる目的のために使用し得る。実施形態によっては、一度に多数の目的のために使用し得る。例えば、単純な実施形態において、凍結栓を用いて、運転温度においては燃料塩が炉心から流れ出て廃棄物タンクに流れ込むことを防ぐが、炉心温度が凍結栓の活性化温度を超えると融解が起こり、これにより、燃料塩が廃棄物タンクに向かって出て行くことができるようにしてもよい。これは、廃棄物タンクを炉心の下に配置して燃料塩が重力にて流動可能にする、または炉心および廃棄物タンクを異なる圧力に保持することにより凍結栓が融解したら溶融燃料塩が圧力下において廃棄物タンクに流れこむようにすることによって達成し得る。
場合によっては、凍結栓は、融解した際に燃料内において検出されることがある。例えば、凍結栓は、中性子吸収物質である材料から作製して、もし炉心が活性化温度を超えた場合、中性子吸収物質が融解し、その後炉心中に分散され、反応度が下がるようにしてもよい。この実施形態において、凍結栓は、中性子吸収物質である。類似の機能を達成するために、他の実施形態において、凍結栓を用いて、炉心とは別に設置された容器内に保持されたある量の中性子吸収物質が燃料塩と混合するのを防ぐ。活性化温度に達すると、凍結栓が融解し、中性子吸収物質が炉内に放たれる。廃棄物タンクの実施形態と同様に、中性子吸収物質の容器を炉心上に設置して重力下において炉心に流れ込むように、または圧力下において保持して中性子吸収物質が炉心に押し出されるようにしてもよい。このように、凍結栓が活性化または融解すると、炉心の中性子の反応において非常に検出しやすい。追加のまたは別の実施形態において、凍結栓は、1つ以上の元素であって、例えば、燃料モニタリングシステム(例:ラマン分光法)、炉内の他のセンサー、等の、他の好適な方法にて検出可能な元素を含み得るまたは分離し得る。多くの他の構成の安全関連の凍結栓が可能である。
凍結栓は、所望の活性化温度に応じた適切な融点を有する凍結栓材料を設けることによってパッシブに保持され得る。別の実施形態において、凍結栓は、冷却ジャケット等のアクティブに冷却された材料を凍結栓の位置の周辺に設けることによってアクティブに保持され得る。アクティブに保持される凍結栓は、例えば、操作者による活性化制御(冷却を制御することによって)を可能にするために、または外からの電力または制御が失われた際に発動する安全対策として、使用し得る。アクティブな制御によって、燃料塩を凍結栓として使用することも可能になり、炉の運転における凍結栓の使用が簡略化される。
好適な凍結栓材料としては、燃料塩に混和性を有し炉の運転温度のそれよりも高い適切な融解温度を有する塩が含まれる。場合によっては、意図しない凍結栓の溶出の発生を減少させる、凍結栓と燃料塩との間の化学的障壁を含むことが妥当である場合がある。例えば、上述した燃料塩等の3成分燃料塩を利用するMCFRの実施形態において、好適な凍結栓は、3成分塩の実施形態の融点よりも高い融点を有する任意の塩化物塩であり得る。
減速の目的のため、中性子吸収物質として機能する凍結栓の実施形態は、35Clで作られた凍結栓を含む。上述のとおり、35Clは中性子減速材であって中性子吸収材であり、35Clの塩は、燃料塩に溶けると、塩の反応度を低下させる。MCFRでの使用に適した凍結栓の他の候補には、133Cs、101Ru、103Rh、99Tcおよび105Pd等、高吸収断面積の核***生成元素の塩化物塩が含まれる。
実施形態によっては、凍結栓材料は燃料塩でなくてもよく、また燃料塩と同じアニオンを有する塩でなくてもよい。好適な凍結栓材料は、アクションを起こすための安全な融点を目標とする融解温度を有するものであって、燃料塩とネガティブに反応する可能性の低い材料を含む。燃料塩の融解温度を高くしたものは、この一例にすぎない。そのため、凍結栓は、場合によってはどのような材料でも作られ得る。
さらに他の実施形態において、凍結栓材料は中性子反射材であってもよく、これにより、活性化温度に達した際、反射性凍結栓が融解して中性子の反射が減少し、これにより炉の反応度全体が変更されるようにしてもよい。本実施形態において、凍結栓が融解した際に、さらに中性子吸収物質がさらされる、放出される、またはむき出しにされ得る。例えば、反射性凍結栓は、中性子吸収剤を覆っており、これにより活性化温度に達した際に自己分解する反射部材として機能し得る。
(持続的な燃料精製)
一実施形態において、MCFRの通常運転中、周期的にいくらかの量の核燃料塩を新鮮な燃料塩と置き換えること以外には、燃料塩に対しては小さな処理しか行われない。場合によっては、取り出された核***性燃料は燃料塩親物質と置き換えられる。燃料精製のための小さな処理のいくつかの候補には、貴金属等の核***生成物を機械的に濾過すること、および希ガスを最小限取り除くことが含まれる。一実施形態において、当該処理は、持続的な核反応中に生成された希ガスを取り除くことを含む。このようなガスには、様々なKr、XeおよびArの同位体が含まれる。これらのガスは、燃料塩をスパージすることにより取り除き得る。スパージによって、その他の発生し得る揮発性気体核***生成物を取り除く効果も得られる。
一実施形態において、核***性物質は、MCFR燃料サイクルのどの部分においても分離しない。むしろ、増殖したプルトニウムが、運転中に、親物質ウランおよび、ランタニドを含む生成された核***生成物(これらは化学的に類似する)と混合し、燃料塩の実施形態に可溶となると思われる。MCFR内のランタニドは取り除く必要がないため、このように、MCFRにおける燃料精製は、既存のフッ化物溶融塩炉の典型的な燃料処理よりも簡略化し得る。
燃料精製は、さらに、機械的濾過を行って、持続する核反応および/または流体流動および移動部材の操作によって発生し得るあらゆる析出物を取り除くことを含み得る。濾過およびスパージは、両方とも、図1Aを参照して上述したものを含む従来手段によって行い得る。
燃料精製は、さらに、機械的濾過を行って、持続する核反応および/または流体流動および移動部材の操作によって発生し得るあらゆる析出物を取り除くことを含み得る。濾過およびスパージは、両方とも、図1Aを参照して上述したものを含む従来手段によって行い得る。
図19は、ドレインタンク1904を利用した燃料精製のための精製システムの実施形態を示す。一実施形態において、システム1900は、全てとまではいかずともほぼ全ての不溶核***生成物、腐食物質、および、設計仕様を超えて燃料塩の化学量論組成を変化させる可能性のある他の成分を取り除くように設計される。システム1900はまた、燃料塩を、通常運転および非設計運転下において許容できる仕様にまで浄化してもよい。図示したシステム1900において、気相の混在物は、炉心上のボイドスペースとなり得る。これらの混在物は、核***生成物、希ガス、UCl等を含み得る。オフガスシステムは、このオフガス流を安全に扱ってUClを回収する機器を含む。システム1900は、熱を消散させ、安定した長寿命ガスを収集および保存/処分し、UClを回収し、不活性ガスを再圧縮/リサイクルする機器を含む。さらに、システム1900は、酸素および硫黄等の腐食元素の濃度を下げる能力を有し得る。その上、システム1900は、135Xe等の溶解希ガスを取り除き得る。
図示した実施形態において、本システムは、燃料塩の浄化を円滑にするいくつかの異なる単位操作からなる。これらには、以下のものが含まれる:不溶核***生成物を濾過する;炉心に再挿入する前に燃料塩から希ガス核***生成物を取り除く手助けをするヘリウム気泡を発生させる;炉心に再挿入する前の溶融塩からヘリウム気泡/希ガスを脱泡させる;脱泡したヘリウム気泡/希ガスを、長延期化学的捕捉システムに通過させる(長延期化学的捕捉システムにおいて、同位元素が、問題ないレベルまで減衰する);および、ヘリウムをリサイクルする。一実施形態において、炉システムからのいずれのベントガスもこのシステム1900に放出され得る。これらの気体は、スクラバーを通り、スクラバーにおいて、冷却された燃料塩と接触して、ガス流中のいかなるUClも取り除かれ得る。
図示した実施形態において、ドレインタンク1904は、炉心1902中の燃料塩液面1912よりも低い位置に配置され、炉心1902からの溶融燃料塩が、重力下、ドレインタンク1904に流れ込んで精製されるようになっている。燃料1906は炉心中の1つ以上の位置から、重力流動またはサイフォンによって取り出し得る。炉心ヘッドスペース1920とドレインタンクヘッドスペース1921との間の気体の輸送を制御して、ドレインタンク1904中の燃料塩の所望の液面1916を維持し得る。一実施形態において、炉心の完全性を維持するために、浸漬管1910が、炉心1902の上部から燃料塩1906中の深さ(ここから取り除くことが所望される)まで設けられている。流速は、バルブにより、または吐出管径および炉心1902とドレインタンク1904との間の圧力差を選択することにより、制御し得る。
処理システム1900は、連続的、または一度に運転することができる。本システムは、任意の所望の処理量を扱うように大きさを決定し得る。例えば、システム中の燃料塩1906全量のうち毎分1%または毎分0.1%処理するように大きさを決定し得る。一実施形態において、ドレインタンク1904は、炉心と同じ運転温度および圧力にて保持し得る。別の実施形態において、ドレインタンクおよび、処理済燃料塩のサイドストリームは、燃料塩の処理または取扱い特性を向上するように選択された複数の異なる状態下において保持し得る。例えば、一実施形態において、ドレインタンク1904中の燃料塩1906は、800〜900℃の温度、例えば、850℃等にて保持し得る。ヒーター交換器1908が温度制御のためにドレインタンク1904中に図示されているが、ドレインタンク周りの加熱ジャケット等、どのような好適な技術を用いてもよい。さらに他の実施形態において、炉心1902とドレインタンク1904との相対運転状態によって、ドレインタンク1904をアクティブに加熱することなく処理が可能となる。この場合、タンク1904は、アクティブに加熱するよりも、むしろ断熱すればよい。
実施形態によっては、バルブ数を減らして、または省略して、必要メンテナンス量を減らしてもよい。例えば、一実施形態において、システムはバッチ式に運転され、バルブは省略される。ドレインタンク1904は、炉心1902に対するドレインタンク1904の圧力を調整することによって(例えば、気体をドレインタンク1904内に注入することによって、または物理的にドレインタンク1904を炉心1902中の燃料塩液面1912より高くする/低くすることによって)、炉心1902との間でやりとりをする。別の実施形態において、Flowserve社のVTPTM変速式溶融塩ポンプ等の、ポンプ1914を1つ以上設けて、処理済燃料塩1906を炉心1902に送り返すようにしてもよい。一実施形態において、戻り配管に液面制御バルブを設けることは望ましくない場合があるため、ドレインタンク1904中の塩1906の液面1916は、ポンプ1914のスピードによって制御し得る。液面1916は、非侵入型核液面検出器(non-intrusive nuclear level detector)、ドレインタンク中の熱電対、または任意の好適な液面検出技術のいずれかによって測定し得る。
システム1900は、ドレインタンク1904から燃料塩を受け取ることができる、3つの異なる燃料塩処理部材を含む:ヘリウム接触器1926および分離容器1928を含む脱気システム1924;フィルタ1930として図示される濾過システム;およびUCl凝縮器1932である。図示した実施形態において、脱気システム1924および濾過システム1930は直列に接続され、脱気システムから出ていく燃料塩が濾過システムを通るようになっており、UCl凝縮器1932は並列処理部材となっている。しかし、別の実施形態において、これらの3つの部材は、直列または並列のどちらの構成で接続してもよい。各部材1924、1930、1932は、以下でさらに詳細に説明する。
図示した脱気システム1924において、ドレインタンク1904からの燃料塩1906は、ヘリウム接触器1926として機能する脱ガス容器に移され、そこで強い撹拌を伴いながらヘリウムが追加され得る。一実施形態において、回転脱ガス装置をヘリウム接触器1926として使用し得る。接触の結果、135Xeおよび他の希ガスが燃料塩1906からヘリウムガスに拡散する。ここで135Xeおよび他の希ガスとのHe混合物となったヘリウムガスは、燃料塩1906から分離して、オフガス処理システム1922へ、直接、またはドレインタンク1904中のヘッドスペース1921をまず経由してから間接的に、放出され得る。ヘリウム接触器1926からの燃料塩1906は、分離容器1928へ、例えば重力によるまたはポンピングによるオーバーフローによって移され、ヘリウムが燃料塩1906から分離するためのさらなる滞留時間が与えられる。一実施形態において、ヘリウム接触器1926および分離容器1928は、ドレインタンクよりも高い位置に配置され、燃料塩がヘリウム接触器から「オーバーフロー」して分離タンクを通って第ニのポンプなしでフィルタ1930まで到達するのに必要な圧力降下が与えられる。ポンピングまたは差圧輸送を用い得る、別の実施形態を用いてもよい。さらに他の実施形態において、分離容器1928を省略して、より大きいヘリウム接触器1926、または、独立におよび交互にバッチモードで運転することによりヘリウム接触および分離時間が十分に得られる一連の並列接触器1926を用いてもよい。
図示した実施形態において、脱気システム1924は連続運転をしてもよく、それにより燃料塩が双方の容器1926、1928を通って各1926、1928の底から出ていく一定の流れが維持されるようにしてもよい。重力流動および各容器の底から排出することの利点の1つは、各容器の底に固体物質が蓄積するのが避けられることである。蓄積された固体物質は放射性廃棄物となる場合があり、取り除いて処分しなければならないことがある。分離容器1928からの流れは濾過システム1930に流れ出て、これにより、燃料塩1906がドレインタンク1904に返送される前に、いかなる粒子も取り除かれる。
一実施形態において、燃料塩を脱気システム1924に、濾過システム1930に、または両方に導入する前に、燃料塩にいくつかの処理薬品を加えてもよい。このような処理薬品の目的は、燃料塩中の混在物を化学的に修飾して、脱気システム1924または濾過システム1930によって混在物をより効率的に取り除くことであり得る。例えば、液体NaAlClを注入することで、酸化物の除去を補助し得る。
別の実施形態において、脱気システム1924は炉心1902に内蔵してもよい。本実施形態において、ヘリウムガスは炉心1902に送達される。一部の気体は燃料塩から分離してヘッドスペース1920に集まり、そこで、上述したとおり、オフガスシステム1922によって取り除かれて処理されてもよく(ドレインタンク1904を通過させる、または通過させない)、一部のヘリウムは循環ポンプにおいてキャビテーションを起こす。本実施形態において、ヘリウムはポンプから収集され、同様に、上述したとおり、オフガスシステム1922によって取り除かれて処理され得る。
一実施形態において、濾過システム1930は、ドレインタンク1904の上部に直接接続されていてもよい。どのような好適な種類のフィルタを用いてもよい。例えば、一実施形態において、濾過システムは、フィルタ容器1930内におけるいくつかの独立したチューブフィルタ素子を支持する管板を含んでいてもよい。一実施形態において、フィルタ素子は、使用中に浄化されない場合がある。固体物質は、フィルタ容器1930が使われなくなるまで時間とともにフィルタ材料の表面に蓄積し、フィルタ素子は廃棄物として廃棄されるかまたは再生される。フィルタ容器1930は、システム1900の設計処理量に基づく任意の所望の通常寿命に合わせて大きさを決定し得る。
一実施形態において、フィルタ素子は、腐食を減少させるために、焼結モリブデン粉体または繊維のいずれかから形成される。フィルタシステムの初期の圧力降下は非常に低い。フィルタ素子は「逆さ」に取り付けてもよく、つまり、管板を容器1930の下にして、フィルタ素子が垂直に上に向かって管板の上に延在するように取り付けてもよく、これにより、容器からの流れが継続的にタンク1904に流れ込むようにしてもよい。フィルタ注入口は管板のできる限り近くに配置してもよく、これによりフィルタ容器内に溶融塩が停滞することを最小限にし得る。粒子がフィルタ表面に蓄積して圧力降下が増加するにつれて、フィルタ容器内の液面が上昇する。
UCl凝縮器1932は、気体UClを凝縮してドレインタンク1906へ送り返すように設計されている。図示した実施形態において、UCl凝縮器1932は、フィルタシステム1930およびドレインタンク1904から気体を受けとって処理するように接続されている。別の実施形態において、UCl凝縮器1932は、炉心1902等の他の部材からの他のガス流に接続してもよい。
一実施形態において、凝縮器1932は、ドレインタンク1904から来る冷却された燃料塩1906を冷却材として使用する向流接触熱交換器である。純UClの融点は590℃であり沸点は791℃であるため、図示したシェルアンドチューブ熱変換器1934等の任意の従来の熱交換器を用いて、ドレインタンク1904からの燃料塩1906の一部をUClの沸点より低い温度、例えば700℃等まで冷却してもよく、ニッケルまたはモリブデンで構成された充填物に、ベントガスと反対方向に通過させてもよい。凝縮器1932は、ニッケルおよび/またはモリブデンの充填要素をランダムに含有する充填塔であってもよい。これによりベントガス中のどのようなUClも凝縮し得る。交換器は接触容器であるため、凝縮されたUClは冷却された燃料塩と組み合わされ、ドレインタンク1904に戻り得る。凝縮器1932から排出された気体は、オフガス処理システム1922へと送られる前に冷却してもよい。
図19に示すとおり、ドレインタンク1904からの吐出流は、炉心1902、脱気システム1926、またはUCl凝縮器1932へ、冷却材として移送され得る。これらの流れは、バルブを設ける(図示せず)ことによってアクティブに制御してもよく、また、制限オリフィスを様々なラインに配置することにより燃料塩の流れのバランスをとってバルブの必要性が無くなるようにしてもよい。これらの制限オリフィスのサイジングは、配管の実際の経路指定およびそれに伴う水理計算に依存する。
オフガス処理システム1922は、核***生成物ガスを受け取り、一部の放射性同位元素を減衰させるのに十分な時間の間保持する。図示した実施形態において、ベントガス1918は、炉心1902中の燃料塩液面1912上のボイドスペース1920から取り出されてドレインタンク1904に流れ込む。ドレインタンク1904を離れたガスの流れは、直接、または図19に示すようにUCl凝縮器1928を得て間接的に、オフガス処理システム1922を通過し得る。さらに、図示した実施形態において、オフガス処理システム1922は脱気システム1924から気体を直接受け取る。一実施形態において、炉心1902、ドレインタンク1904、およびオフガス処理システム1922を含むシステム全体を通る気体の流速は、オフガス処理システム1922の出口に配置されるバルブおよび機器によって制御される。この出口においては、温度は冷たく、放射線は無いかまたはほとんど無い。本実施形態によれば、炉とドレインタンクとの間に圧縮機/送風機は必要ない。トリチウムの全収率がオフガスシステム1922を通って流出すると予想される。
図20は、例えば図19のオフガス処理システム1922等の、溶融塩炉によって生成される気体核***生成物を処理するために好適に使用できるオフガス処理システム2000の実施形態を示す。このシステムは、ヘリウム等の担体ガス中の気体核***生成物を受け取るように設計されるが、他のガスも可能である。図示した実施形態において、オフガスシステム200を通る流れは、主に2つのリサイクルループからなる。短延期ホールドアップループ2002および長延期ホールドアップループ2004である。
処理される入口ガスは、図20に記載のリサイクルループに入る前に、まず、冷却器2006およびフィルタ2008によって冷却され濾過され得る。一実施形態において、フィルタ2008は、ガス中に存在し得る、気体によって運ばれる粒体、金属、塩、または核***生成物をいずれも取り除くように設計される。溶融塩の化学的性質に基づけば、濾過された入口ガスの主成分はKr、Xeおよびトリチウムである。
短延期ホールドアップループ2002は、活性炭を含有する容器を1つ以上含む。図示した実施形態において、短延期ホールドアップループ2002は、3つの並列する活性炭容器2006を有し、それぞれが、通常、予想されるXe量の50%を扱うような大きさになっている。一実施形態において、短延期ホールドアップループ2002は、受け取ったガスを、135Xeが入口濃度の5%未満にまで低下するのに十分な間保持するように設計されたホールドアップループである。この期間は、135Xeの入口濃度および出口濃度をモニタリングすることによってアクティブに制御および判定してもよく、また、ループ2002は、135Xeの半減期、例えば、45〜49時間または40〜60時間、に基づいた一定の滞留時間にて設計してもよい。
活性炭容器2006は遮蔽空間において保持してもよく、または、システム2000から逃げる放射線を弱くするために個別に遮蔽された容器であってもよい。例えば、容器2006を浸す水または他の熱伝達流体のサーマル槽等の、容器冷却システム2008をさらに設けて、崩壊熱を軽減するようにしてもよい。一実施形態において、容器2006からの廃熱を用いて低圧蒸気を発生させてもよく、これにより冷却システム2008からエネルギーを回収してもよい。
短延期ホールドアップループ2002から出ていくガスは、長延期ホールドアップループ2004に移送してもよく、担体ガス回収システムに移送してもよく、または両方に移送してもよい。図示した実施形態において、短延期ホールドアップループ2002から出ていくガスは、2つの流れに分離し、一方は長延期ホールドアップループ2004に向かい、他方はヘリウムガス回収システム2010へ向かう。一実施形態において、短延期ホールドアップループ2002からのガスの全流出量の50%より多い量(例:70〜90%)のガスの流れが、1つ以上の化学的トラップ2012および放射線警報機2014を通過してから、担体ガス圧縮機2018の入口にあるサージタンク2016に入る。ヘリウムは圧縮され、そして、蓄積タンク2020に格納される。一実施形態において、この蓄積タンク2020からのヘリウムは、例えば脱ガスシステム1924に送り込まれることによって、新たに担体ガスとして使用するために定量されてリサイクルされる。
担体ガス回収システム2010によって処理されない短延期ホールドアップループ2002からの出口ガスは、いずれも長延期ホールドアップループ2004に移送される。長延期ホールドアップループ2004は、KrおよびXeを、放射性同位体濃度が、放出しても許容される閾値にまで降下するのに十分な長さの間保持するように設計されている。一実施形態において、短延期ホールドアップループ2002と同様に、長延期ホールドアップループ2004は、活性炭を含有する容器を1つ以上含む。図示した実施形態において、長延期ホールドアップループ2004は、3つの並列する活性炭容器2006を有し、それぞれが、通常、予想されるXe量の50%を規定の期間取り扱うような大きさになっており、この場合、90日であるが、所望の放出閾値によっては50〜150日であり得る。活性炭容器2006は遮蔽空間に保持してもよく、または、システム2000から逃げる放射線を弱くするために個別に遮蔽された容器であってもよい。上述のように、容器冷却システム2008をさらに設けてもよい。
この長期Xeホールドアップシステムを出ると、ガスは、予熱器2022を通って移送され得る。予熱器2022では、ガス温度が800℃以上に昇温される。そして、ガスは触媒容器2024を通過し、触媒容器2024では、トリチウムが空気によって酸化される。そして、ガスは、単数の水冷式後段冷却器2026または図示するような複数の水冷式後段冷却器2026を通って流れる。水冷式後段冷却器2026は、最後の炭充填吸収器2028における熱負荷を減らすために温度を降下させる。一実施形態において、吸収器2028は−20℃において動作するように設計される。トリチウム、KrおよびXeは、ヘリウムガスが床を通過する間、炭上に保持される。冷却された吸収器を離れると、ヘリウムは圧縮され、炉パージシステムへ、ポンプシール等向けに再循環することができる。図示した実施形態において、3つの冷却吸収器2028があり、これらは、予想量の50%を扱うような大きさとなっており、3つのうち2つが常に運転されている。どの時点においても、停止中の吸収器2028が、吸収器を電気的に加熱して吸収器中に加熱したヘリウムを少し逆方向に流すことによって再生される。Kr、Xe、およびOを含有する、この再生されたガス流は、液体窒素冷却式レシーバーシリンダー2030に流れ込んで永久貯蔵され得る。
図21は、図19および図20に記載のシステムに基づいて燃料塩を精製する方法の実施形態を示す。図示した実施形態において、方法2100は、移動操作2102において、運転中の炉心1902から、照射済燃料塩をドレインタンク1904に移すことからスタートする。
そして、燃料塩は、脱ガス操作2104において脱ガスされる。脱ガス操作2104において、ヘリウムガス等の担体ガスが、照射済燃料塩と接触し、これにより気体状態の核***生成物が燃料塩から取り除かれる。一実施形態において、脱ガス操作2104は、接触容器内において燃料塩を担体ガスに接触させた後、燃料塩を第2容器に移動させ、しばらくの間滞留させることにより、分離を起こすための追加の時間を稼ぐようにすることを含み得る。操作2014においては、担体/核***生成物ガス混合物、および、照射済燃料塩に比して気体核***生成物の量が減少した、脱ガスされた燃料塩が生成される。
脱ガス操作2104の後、脱ガスされた燃料塩は、濾過操作2106において濾過し得る。濾過操作2106の一実施形態において、脱ガスされた燃料塩は、重力下においてフィルタ1930を通過し、濾過された燃料塩廃物は、ドレインタンク1904に流れ込む。おそらく、運転温度においては燃料塩中のいずれの固形物も何らかの形の混在物(核***生成物固形物、腐食生成物、または他の混在物のいずれか)であるため、濾過された固形物はいずれも不要であり、この操作2106において取り除かれて処分される。
精製方法2100は、さらに、担体ガス処理・回収操作2108において、脱ガス操作2104にて発生した担体/核***生成物ガス混合物を処理することを含む。この操作2108は、システムからの担体ガス/核***生成物混合物を収集して、それを上述のシステム1922等のオフガス処理システムに送ることを含む。担体ガス処理・回収操作2108は、担体ガス/核***生成物混合物を第一の期間保管してから、担体ガスを分離器、カーボンフィルタ、イオン交換体、または、他の化学的トラップに通すことによって混合物から回収することを含んでもよい。これらの分離器、カーボンフィルタ、イオン交換体、または、他の化学的トラップは、KrおよびXeを担体ガスから取り除くか、または担体ガスを十分に浄化して再利用できるようにする。
精製方法2100は、さらに、UCl凝縮操作2110において、燃料塩から蒸発する気体状態のUClを回収してそれを再凝縮することを含み得る。回収したUCl凝縮物は、燃料塩流に溶かしてこの流れをドレインタンクまたは炉心に戻すことによって、燃料塩に戻す。この燃料塩の流れは、高濃度UCl4燃料塩とみなし得る。
方法2100は、濾過されて脱ガスされた燃料塩を炉心に戻すことを含む。図19のシステム1900の一実施形態において、方法2100は、炉心1902からのサイドストリームに対して連続的に操作される。本実施形態において、ドレインタンク1904は、炉心1902からの照射済燃料塩と、濾過システム1930からの濾過済み燃料塩との両方を連続的に受け取る。さらに、UCl凝縮器からも、UClが凝縮された燃料塩を受け取る。同時に、ドレインタンクから、精製済み燃料塩が炉心に送られる。別の実施形態において、上記の方法2100の操作は、連続的処理またはバッチ処理として同時に行い得る。さらに、種々の操作を順次、連続的処理またはバッチ処理として行い得る。
(燃料塩の後処理)
運転中の炉から取り出された燃料塩は、本明細書の燃料塩成分以外に、核***生成物を含む。一部の核***生成物はスパージ、沈降、または示差沈殿によって容易に取り除き得るが、他の核***生成物、特に上述のようなランタニドは、取り除きにくい場合がある。なお、使用済燃料塩は別の溶融塩炉用の出発原料として「そのまま(as is)」の使用に適し得るため、このような使用済燃料塩の精製は、塩化物燃料塩の高速スペクトルにおいては必要ない場合がある。しかし、精製することが望ましい場合は、核***生成物除去システムを利用し得る。
除去システムは、核燃料塩から1種類以上のランタニドを取り除くように構成し得る。核***生成物除去システムは、プラズマ質量フィルタを1つ以上含んでいてもよい。1つ以上のプラズマ質量フィルタとしては、例えば、アルキメデス型プラズマ質量フィルタが含まれるが、これに限定されない。アルキメデス型プラズマ質量フィルタの使用については、R. Freemanらによる『Archimedes Plasma MassFilter,』 AIP Conf. Proc. 694, 403 (2003) に記載されており、この内容の全ては、参照により本明細書に含まれる。
他の実施形態において、アルキメデスフィルタプラント(AFP)は、1つ以上の炉の燃料塩から1種類以上のランタニドを取り除くように作用し得る。一実施形態において、AFPは、プラズマ質量フィルタを2つ含み得る。例えば、2つのプラズマ質量フィルタの各々は、1日におよそ1トンの燃料塩を処理することができるが、これに限定されない。他の実施形態において、1つ目のプラズマフィルタは、燃料塩から重い元素を分離するように調整され、2つ目のプラズマフィルタは核***生成物から塩成分を分離するように調整される。この構成において、AFPはおよそ100〜200の溶融塩原子炉群(例:溶融塩化物塩高速炉)をサポートし得る。他の実施形態において、これらの原子炉群は、アルキメデス型フィルタリングをバッチ型処理にて利用し得る。バッチ型処理において、例えば、各炉は、炉自体の塩の一部(例:10〜20%)をAFPに対して1〜3年ごとに送り得るが、これに限定されない。また、この塩は、元の炉に戻してもよいし、他の炉の塩と交換してもよいし、または元の炉における、劣化ウラン含有塩と置き換えてもよい。ランタニドを浄化した塩は、上述のとおり、継続的な濃縮を必要とすることなく、追加の溶融塩原子炉を始動させるのに用い得る。
なお、上述のアルキメデス型フィルタは単に説明目的のために提示したものであり、本開示の原子炉100は、これに限られない。本明細書において、本開示の原子炉100は、アルキメデス型システムの状況において使用される典型的なシステムと比べて、分離を行う必要性がかなり低い場合があることが認識される。例えば、本開示の原子炉100は、およそ0.99または0.9に要求される分離効率で十分である場合がある。そのため、本開示の原子炉100の状況においては、大幅に簡略化されたプラズマ質量フィルタ設計を用い得る。
他の実施形態において、核***生成物除去システムは、毎日30〜50kgの塩を浄化することができる、かなり小さいプラズマ質量フィルタを含む。例えば、少ないバイパス流量(流れのうち、〜10−8)をフィルタに送って浄化し、その後すぐに、オフサイト転送の必要なく炉心に送り返し得るが、これに限定されない。なお、本明細書において、小型のプラズマ質量フィルタではスケールメリットがいくらか下がり得るが、これらのフィルタは値段が手ごろであり、核***性物質が濃縮された新鮮な燃料を調達するよりもはるかに価格が安い。
(拡散防止技術)
溶融核燃料塩は原子炉100から取り出し得るため、本開示の溶融燃料塩108に対して、拡散防止の安全措置を講じることが望ましい。一実施形態において、溶融燃料塩108は、ランタニドまたは他の元素等の1種類以上の材料があらかじめ加えられているか、または、初めにランタニドまたは他の元素等の1種類以上の材料を用いて作製される。これらの材料は、燃料塩から分離しづらいが、拡散抵抗性を向上させ、溶融燃料塩108において中性子吸収材として機能する。これにより、もし燃料塩を溶融塩炉において核燃料として使用する前に取り出しても、燃料塩を武器用途に用い得る可能性が低くなるが、その高速スペクトルのため、MCFRの臨界条件には大きく影響しない。ランタニドを加えることによって、燃料塩の取扱いもさらに危険になり、これによっても、燃料塩の武器用途での使用に対する魅力度は減少する。
材料の武器使用に対する魅力度を判定する1つの方法は、性能指数(Figure ofMerit, FOM)と称される。FOMは、材料(単数の材料または複数の材料)の質量、線量、および崩壊熱を考慮した計算である。FOMの式の1つは以下のとおりである。
Figure 2019515291
上記の式において、Mは化合物の金属成分の最低限の臨界質量(kg)であり(すなわち、酸化物、塩化物、他のアニオン、等の重量寄与分は含まない)、hは崩壊熱の熱量(W/kg)であり、Dは表面から1mにおける0.2Mの線量(rad/hr)である。非拡散目的のため、FOMが<1.0であると、武器目的に対する魅力度が無いとみなされる。このように、一実施形態において、ランタニドを、FOMを<1.0とするのに必要な程度まで燃料塩に加える。
一実施形態において、1種類以上のランタニドをあらかじめ溶融塩化物系燃料に加えると、このあらかじめ加えられている1種類以上のランタニドは、1種類以上のランタニド三塩化物を形成するように働く。なお、これらの化合物は、少なくとも化学的意味においてPuClと類似しており、PuClは、溶融塩中に存在するものである(例:Pu−239は、濃縮中に形成されてPuClを形成し得る)。1種類以上のランタニド三塩化物が存在することにより、PuClが武器用途に使用されにくくなる。
溶融燃料塩108中にランタニド三塩化物が存在することにより、誰かが化学処理を適用してPuを残りの溶融燃料塩から分離しようとした場合、溶融燃料塩108中に存在するPuの有用性が減少する。この意味で、ランタニドは、ある形の化学分離の間に、Puと「相乗り(ride along)」する。この特徴によって少なくとも3つの利点がもたらされる。1つ目は、ランタニドによって、最終的なPuサンプルがより強い放射性を持ち、より取扱いが難しくなり、遮蔽することがより難しくなる等のことが起こる。2つ目に、ランタニドによって、Puサンプル内での発熱が増加し、Puの融点より高い温度に達し得るため、すでに述べたように、Puの取扱いがより難しくなり、遮蔽することがより難しくなる等のことが起こる。3つ目に、ランタニドが存在することにより、材料の臨界質量が変化し、任意量のPuサンプル中における反応プロセスが、ランタニドを含まないサンプルよりもはるかに効率が悪くなる。そのため、ランタニド含有Puサンプルの場合、武器機器の目的にはより多くのPu材料が必要となり得るため、武器使用が難しく現実的でなくなる。
また、混合物から化学的に分離したウランは、低濃縮ウラン(LEU)であるため、武器用途に適さない。
なお、いくらかのランタニドが、原子炉100の運転中に核***生成物として燃料塩108内に形成され得るが、本明細書において、本実施形態のランタニドは、原子炉100の始動の前に核燃料塩108中にあらかじめ加えられる、つまり、有意量のプルトニウムが生産される前に、あらかじめ加えられることが意図される。運転開始後、連鎖反応によってランタニド核***生成物が生成されて増大していくため、燃料塩は、自然と武器用途に適さなくなっていく。
一実施形態において、1種類以上のランタニドは、原子炉100の始動よりも前に、溶融燃料塩108にあらかじめ加える。一実施形態において、1種類以上のランタニドは、原子炉100が任意の反応度閾値に達するよりも前に、溶融燃料塩108にあらかじめ加える。1種類以上のランタニドは、例えば、原子炉100が臨界に達する前に、または臨界未満の閾値に達する前に、溶融燃料塩108にあらかじめ加えるが、これに限定されない。
他の実施形態において、1種類以上のランタニドは、炉内において(例:ウラン−プルトニウム増殖燃焼運転においてウランを濃縮することによって発生される)任意の閾値のプルトニウム(例:Pu−239)が発生する前に、溶融燃料塩108にあらかじめ加える。1種類以上のランタニドは、例えば、炉内において任意の量のプルトニウムが発生する前に、溶融燃料塩108にあらかじめ加えるが、これに限定されない。例として、1種類以上のランタニドは、8kgのプルトニウムが原子炉100内において発生する前に、溶融燃料塩108にあらかじめ加える。他の例において、1種類以上のランタニドは、4kgのプルトニウムが原子炉100内において発生する前に、溶融燃料塩108にあらかじめ加える。また他の例において、1種類以上のランタニドは、2kg(その他様々な量)のプルトニウムが原子炉100内において発生する前に、溶融燃料塩108にあらかじめ加える。なお、上記のプルトニウム質量は、本実施形態を限定するものではなく、単に説明目的のためのものであり、本実施形態の状況において、どのようなプルトニウム閾値を実施してもよい。
他の実施形態において、1種類以上のランタニドは、溶融燃料塩108と混合して、得られるランタニド入り燃料塩のランタニド濃度が0.1〜10重量%となるようにしてもよい。他の実施形態において、1種類以上のランタニドは、溶融燃料塩108と混合して、得られるランタニド入り燃料塩のランタニド濃度が4〜8%となるようにしてもよい。また他の実施形態において、任意の単数種類のランタニドまたは複数種類のランタニドは、溶融燃料塩108と、<1.0の閾値FOM、例えば、0.99未満、0.98未満、0.97未満、0.96未満、または0.95未満のFOM閾値が達成されるような割合で混合してもよい。実施形態によっては、0.95未満のFOM閾値、例えば、0.9未満または0.8未満のFOM閾値が要求される場合がある。
一実施形態において、1種類以上のランタニドは、La、Ce、Pr、およびNdのうち1種類以上を含み得る。他の実施形態において、塩化物系溶融核燃料塩108の場合、1種類以上のランタニドは、溶融燃料塩108と1種類以上のランタニド塩化物とを混合することにより、溶融核燃料塩108中に混合し得る。例として、1種類以上のランタニド塩化物は、LaCl、CeCl、PrClおよびNdClのうち1種類以上を含み得る。他の実施形態において、塩化物系溶融核燃料塩108の場合、1種類以上のランタニド(または1種類以上のランタニド塩化物)は、1種類以上のランタニドまたはランタニド塩化物を含有する1種類以上の担体塩(例:NaCl)と溶融燃料塩108とを混合することによって、溶融核燃料塩108中に混合し得る。
他の実施形態において、溶融核燃料塩と少なくとも1種のランタニドとの混合物は、高速スペクトル溶融塩原子炉の外で形成される。例えば、溶融核燃料塩108と1種類以上のランタニドとの混合物は、ある量の溶融核燃料塩108(原子炉100内に加える前)と1種類以上のランタニド(またはランタニド塩化物)とを、原子炉100の炉心部102の外に設けた分離混合ステーション中にて混合することによって、または運転開始から規定の時間が経った後、期待量のPuが炉心において増殖するとされるモデル時間において形成され得るが、これらに限定されない。
他の実施形態において、溶融核燃料塩と少なくとも1種のランタニドとの混合物は、高速スペクトル溶融塩原子炉内において形成される。例えば、溶融核燃料塩108と1種類以上のランタニドとの混合物は、原子炉100の始動前に、ある量の1種類以上のランタニド(またはランタニド塩化物)を、一次回路(例:炉心部102、一次冷却システム110、等)内に含有される溶融核燃料塩108内に混合することによって形成し得るが、これに限定されない。
図15は、プロセスフロー1500の一実施形態を示す。プロセスフロー1500は、本開示の1つ以上の実施形態に係る、高速スペクトル溶融塩核に、1種類以上のランタニドがあらかじめ加えられた核燃料を装荷することに関する操作の例を示す。図15における記載および説明は、上述の図1A〜図1Fの例に関して、および/または他の例および状況に関して行い得る。当然のことながら、操作フローは、他のいくつかの環境および状況において実施してもよく、および/または図1A〜図1Fに修正を加えた状態において実施してもよい。また、図15の操作は図示した順に提示するが、当然、種々の操作は図示した順番以外の順番にて行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
プロセス1500は、操作1502において、溶融核燃料塩を準備することを含む。例えば、任意の量の溶融核燃料塩を準備し得るが、これに限定されない。例えば、溶融核燃料塩は、本開示の全体に記載されている塩化物ベースの燃料塩のいずれかを含み得るが、これに限定されない。他の例において、溶融核燃料塩は、本開示の全体に記載されているフッ化物ベースの燃料塩のいずれかを含み得るが、これに限定されない。
プロセス1500は、操作1504において、少なくとも1種のランタニドを準備することを含む。例えば、1種類以上のランタニド(例えば、La、Ce、Pr、およびNdのうち1種類以上等が挙げられるが、これらに限定されない)を準備するが、これに限定されない。一実施形態において、1種類以上のランタニドは、ランタニド塩の形で準備される。例えば、1種類以上のランタニドは、操作1502の溶融核燃料塩と化学的に親和性があるランタニド塩の形で準備され得る。例えば、塩化物系溶融核燃料塩の場合、1種類以上のランタニドは、1種類以上のランタニド塩(例えば、LaCl、CeCl、PrClまたはNdCl等が挙げられるが、これらに限定されない)の形で準備され得る。他の実施形態において、任意の量の1種類以上のランタニド(または1種類以上のランタニド塩)を、1種類以上のランタニド(または1種類以上のランタニド塩)と付加的な塩(例えば、操作1502の溶融核燃料塩と親和性のある担体塩が挙げられるが、これに限定されない)との混合物の形で準備し得る。
プロセス1500は、操作1506において、高速スペクトル溶融塩原子炉の始動よりも前に、または所定量のPuが増殖された後に、溶融核燃料塩と少なくとも1種のランタニドとを混合してランタニド入り溶融核燃料塩を形成することを含む。一実施形態において、操作1502において準備された上記ある量の溶融燃料塩を操作1504の1種類以上のランタニド(または1種類以上のランタニド塩)と混合して、得られる溶融塩混合物のランタニド含有量が0.1〜10重量%となるようにする。例えば、操作1502において準備された上記ある量の溶融燃料塩を、操作1504の1種類以上のランタニド(または1種類以上のランタニド塩)と混合して(ただし混合する必要はない)、得られる溶融塩混合物のランタニド含有量が4〜8重量%になるようにし得るが、これに限定されない。
プロセス1500は、操作1508において、ランタニド入り溶融核燃料塩を、少なくとも高速スペクトル溶融塩原子炉の炉心部に供給することを含む。一実施形態において、操作1506の混合物は、高速スペクトル溶融塩原子炉100内において上記ある量の溶融燃料塩を1種類以上のランタニド(または1種類以上のランタニド塩)と混合することによって形成し得る。一実施例において、炉心内においてランタニドを溶融燃料塩に加えてもよい。他の実施形態において、高速スペクトル溶融塩原子炉100の外で(例えば、混合容器が挙げられるが、これに限定されない)、操作1506の混合物を、上記ある量の溶融燃料塩を1種類以上のランタニド(または1種類以上のランタニド塩)と混合することによって形成し得る。この点に関して、溶融燃料塩を1種類以上のランタニド(または1種類以上のランタニド塩)と混合した後、ランタニド入り塩混合物を原子炉100に加えてもよい。
上述のとおり、方法1500の目標の1つは、燃料塩を、武器開発の供給原料としての使用に対する魅力度が劣るものにすることである。方法1500の実施形態の一態様は、線量、つまり、ランタニド入り燃料塩による放射線被曝が、増加することである。加えるランタニドの量は、目標線量に基づいて決定され得る。例えば、エネルギー省およびその他の規制機関は、「自衛の限界値(self-protecting limits)」と称されるものに対する、推奨閾値を発行している。この閾値以上では、材料の武器使用に対する魅力度がなくなるとされている。このような魅力度対策は、線量が高いためにレシピエントが多くの放射線に被爆して、被爆によるダメージによって、意図するタスクを完了できなくなるような高さの線量であり得る。このような線量の限界値の1つは毎時100rads(rads/hr)であり、もう1つは500rads/hrであり、3つ目は1,000rads/hrである。これらは全て1メートルの距離において測定される。しかし、10,000rads/hrという高い限界値が提案されており、これを用い得る。方法1500の実施形態は、どのような所望の線量を有する燃料塩を提供するようにも好適化することができる。
このような魅力度対策のもう1つは、上述のFOMである。上述したとおり、この対策に基づいて、1.0未満のFOMを有するように初期燃料塩に人工的修正を加えたものは、武器使用に対する魅力度が無いとみなされる。一実施形態において、任意の単数種類のランタニドまたは複数種類のランタニドは、溶融燃料塩108と、<1.0という閾値FOMを達成するような割合で混合し得る。別の実施形態において、0.99未満、0.98未満、0.97未満、0.96未満または0.95未満という、より厳しいFOM閾値を選択してもよく、ランタニドまたは、FOM方程式の因子である最低臨界質量M、熱量h、および線量Dを変更することにより所望の閾値を達成する他の原料を加えてもよい。いくつかの実施形態では、0.95未満のFOM閾値、例えば、0.9未満や0.8未満のFOM閾値が求められる場合がある。
使用するランタニドはいずれのランタニドでもよいが、特に高い線量であって長寿命のランタニド同位体がより好ましい。ランタニドに加えて、他の元素の放射性同位体を用いて燃料塩の線量を増加させてもよい。これらにはセシウム−137およびヨウ素−121が含まれる。
(塩化プルトニウム燃料塩)
一実施形態において、燃料塩108は、任意の量のプルトニウムを含み得る。例として、塩化物ベースの核燃料塩の場合、プルトニウムは、燃料塩108中に、三塩化プルトニウム(例:PuCl)の形で存在し得る。PuClの製造方法は当該技術分野において既知であり、いずれの好適な方法を用いてもよい。
PuClは、塩化ウラン塩と混合可能であることが分かっている。PuClを利用する実施形態の1つは、UCl−UCl−PuCl−[X]Cl(上述のように、[X]Clは任意の付加的な非核***性塩)である。これらの実施形態において、様々な塩化物塩のうちいずれかのモル比を適宜決定して所望の融点を実現し得る。一実施形態において、PuClの量は、検出可能量のPuClから80モル%までの間であり、他の成分(つまり、UCl、UCl、および[X]Cl)は、それぞれ独立に0から80%までの間である。そのため、UCl−UCl−PuCl−NaClと同様に、UCl−PuCl−[X]Cl、およびUCl−PuCl−[X]Clなどの実施形態が検討される。
(ウラン燃料塩の実施形態)
上記に開示した燃料塩の17UCl−71UCl−12NaClの実施形態は、500℃、あるいはそれ以下の融点を有する燃料塩に対して、最高ウラン濃度を有する三成分塩化ウラン塩の実施形態を示す。そのため、この塩の実施形態は、燃料におけるウランの量を最大化するそれらの状態および炉にふさわしく、それによって全臨界塩量の最小化が最適な目標となる。
また一方で、臨界塩量の大きさは、溶融塩炉における原価作用因だけではない。燃料のその他の特性は、下記の(1)から(3)を含む全炉コストにも影響を及ぼす。(1)燃料塩の温度特性、例えば、体積熱容量および熱伝導率(熱交換器および必要とされるパイプの大きさ、システムを通る冷却材および燃料塩の速度、さらに冷やされる炉心の外面にある燃料塩の所定の時間での量に影響を及ぼす)。(2)燃料塩の腐食性(炉の塩対向部品のために必要とされる材料のコストに影響を及ぼす)。(3)塩におけるUCLの量(相対的に高い蒸気圧により、より高いUCL燃料塩は塩上のヘッドスペースにおいてより高いUCLの濃度を持つという手法(means)は、オフガスを扱うために、より高額な設備および材料を必要とする)。
それは、特定の溶融塩炉設計において、相対的に低いウラン濃度、ただし、高い熱伝導率および高い比熱を有する燃料塩の実施形態は、高ウラン含量燃料塩よりコスト効率が良くなることを示している。17UCl−71UCl−12NaClの実施形態よりも潜在的によりコスト効率がよい燃料塩実施形態は、600℃未満の融点、1.5g/ccより大きいウラン濃度、600J/kg−Cより大きい比熱、を持つUCl−UCl−NaClの三成分実施形態である。燃料塩の実施形態は600℃、550℃、500℃、450℃、400℃、もしくは、さらに350℃未満の融点を有していてもよい。燃料塩の実施形態は、1.5g/cc、1.6g/cc、1.7g/cc、1.8g/cc、1.9g/cc、2g/cc、もしくは、さらに2.1g/ccより大きいウラン濃度を有していてもよい。燃料塩の実施形態は、600J/kg−C、700J/kg−C、800J/kg−C、もしくは、さらに900J/kg−Cより大きい比熱を有していてもよい。
燃料塩の実施形態は、より腐食性を減らし、かつ腐食性を17UCl−71UCl−12NaClより小さくするために(17UCl−71UCl−12NaClに対して)UClの量を減らしてもよい。腐食性が減らされた燃料塩は、潜在的に、費用がかかる部品を減らす効果がある。その部品は組み立てが容易であり、塩対向材料(例えば、モリブデン被覆材の代わりにニッケル被覆材)が高価ではないからである。ウラン燃料塩の実施形態は、モル分率で1から50%までのUClを有する。腐食性を抑えた燃料塩の実施形態は、50モル%未満のUCl、40%、30%、20%、15%未満、もしくは、さらに10モル%未満のUClを有していてもよい。例えば、モル分率で2から30%までのUCl、モル分率で5から20%までのUCl、モル分率で8から12%までのUClを有する燃料塩が考えられる。実施形態によっては、腐食性を抑えた燃料塩の実施形態は、微量の(1%未満)、ただし測ることのできるUClだけを有していてもよい。
燃料塩の実施形態は、モル分率で1から33%までのUClを有する。燃料塩の実施形態は、核***性燃料塩が有するNaClのモル分率が40から66%までになるモル分率のNaClを有する。
熱量計算に基づくと、燃料塩の実施形態の実施例は、上記のように、30UCl−10UCl−60NaClである。下記表5は、30UCl−10UCl−60NaCl燃料塩と、17UCl−71UCl−12NaClの高ウラン濃度の実施形態との650℃における推定の材料特性の差を示す。下記表6は、30UCl−10UCl−60NaCl実施形態燃料塩が、17UCl−71UCl−12NaCl燃料塩と比較して、代表的な溶融塩炉の名目上の大きさ(2500W)の性能をどの程度向上させるのかを示す。
Figure 2019515291
Figure 2019515291
これらの上記表が示すように、伝熱特性が改善されるため、燃料塩の実施形態を利用する溶融塩炉は低い燃料塩流量で動作することができ、そのため、利用するポンプを両方小さくすることを可能にする。モル分率で40から66%までのNaClを有する燃料塩の実施形態を利用する溶融塩炉は、より多くのウラン高濃度の実施形態とは対照的に、同等の多量のウラン、および/または、発電能力を持つために、相対的により大きい炉心を必要とする。しかしながら、モル分率で40から66%までのNaClを有するいくつかの燃料塩の実施形態を利用する溶融塩炉は、稼働するために、より少ない燃料塩全体の全容積が必要とするように計算される。より少ない燃料塩が、冷却目的のために炉の外部に必要とされているからである。これは、燃料塩実施形態のウランの濃さがより薄いのにも関わらず、である。燃料塩はとても高価なので、炉を稼働するための燃料塩の総量におけるこの削減は、相当なコスト削減となる。燃料塩実施形態のさらなる利益は、炉心での強力な自然循環、体積流量の削減によるポンプサイズの縮小、製造の容易さと安価な材料とによる高価な部品の削減、そして、放射線障害の減少による維持コストの縮小である。
燃料塩の実施例は、製造所で製造された。その実験では、UCl0.12272g、UCl0.04792g、およびNaCl0.04089gが結合されて0.21153gの30.143モル%UCl−10.671モル%UCl−59.186モル%NaClが作られた。この合成物のサンプル31.31mgは、Netzch STA 449 F3 Jupiter 同時熱分析器を使用する、温度の比熱測定法および示差走査熱量測定分析(thermogravimetric and differential scanning calorimetry analysis)(TGA−DSC)を使い分析された。TGA−DSC分析はサンプルの融点を505.6℃と測定した。
図22は、図4の三角図において製造された燃料塩の位置を示している。製造時の実施形態に関して図4の計算は融点を508℃として特定している。上述したように、製造所分析は、測定された融点が505.6℃であること示している。
(結論)
本明細書に記載された発明の特定の態様を示して説明したが、本明細書の教示に基づいて、本明細書の発明およびそのより広範な態様から逸脱することなく、変更や修正を行ってもよいこと、したがって、添付の請求項の範囲に、本明細書の発明の真の精神および範囲内におけるそのような変更および修正が全て含まれることは、当業者にとって明らかであろう。当業者は、通常、本明細書および、特に、添付の請求項(例:添付の請求項の本体部)において使用される用語は、通常、「オープン」な用語(例:「含んでいる」という語は、「含んでいるが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、等)を意図するものであることを理解するであろう。また、もし、導入される請求項の文言に特定の数量が意図される場合、このような意図は明確にその請求項において記載し、このような記載が無い場合は、このような意図は存在しないということを、当業者は理解するであろう。
例えば、理解をしやすくするために、以下の添付請求項では、請求項の文言の先頭に「少なくとも1つ」「1つ以上の」といった導入句を用いることがある。しかし、これらの句を用いることによって、不定冠詞「a」または「an」等が先頭にくる請求項文言を含む特定の請求項が、このような記載事項を1つしか含まない請求項として限定されることを暗示すると解釈されるべきではない。たとえ1つの請求項が、「1以上の」または「少なくとも1つ」といった導入句と、「a」または「an」等の不定冠詞とを含んでいる場合でもである。(例:「a」および/または「an」は、通常、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。)請求項の文言の先頭に定冠詞を用いることについても同様のことが言える。また、もし仮に、導入される請求項文言について特定の数量が明確に記載されていても、このような文言は、通常、記載の数量以上を意味すると解釈されるべきである(例:他に修飾語句のない「2つの記載事項」という最小限の記載は、通常、少なくとも2つの記載事項、または2つ以上の記載事項、を意味する)ことを、当業者は理解するであろう。
特に断りの無い限り、明細書および請求項において使用する原料の量、分子量等の特性、反応条件等を表す数値は全て、「およそ(約)」という用語によって、いかなる場合も変更されるものとして理解されたい。「およそ(約)」という用語は、均等物の程度を拡大または制限して、「およそ(約)」という用語が無い場合は特定の数値を意味するという意図ではない。また、特に記載しない限り、「およそ(約)」という用語は、範囲および数値データに関する記載に沿って、「ちょうど(厳密に)」を明確に含むものである。本開示のコンテクストにおける「およそ(約)」という用語は、「およそ(約)」の直後に記載された数値の15%以内(±15%)の数値を意味し、この範囲内におけるいずれの数値(この範囲内における、上限値(つまり、+15%)と同じ数値および下限値(つまり、−15%)と同じ数値)をも含む。例えば、数値「100」は、85と115との間の、85および115を含む全ての数値を包含する。(100%は例外である。100%の上限値は常に100%であるからである。)
濃度、量、およびその他の数値データは、本明細書において、範囲の形で表現または提示され得る。当然のことながら、このような範囲の形は便宜および簡略化のためのみに使用されるため、当該範囲の限界として明確に記載されている数値のみを含むのではなく、当該範囲内に含まれる個々の数値または小領域の全てをも、各数値および小領域が明確に記載されているかのように含むものとして柔軟に解釈されるべきである。実例として、「4%〜7%」という数値範囲は、およそ4パーセント〜およそ7パーセントという明確に記載されている数値のみを含むのではなく、当該範囲内の個々の数値および小範囲をも含むものとして解釈されるべきである。つまり、この数値範囲に含まれるのは、4.5、5.25および6等の個々の数値および4〜5、5〜7、および5.5〜6.5等のような小領域である。1つの数値のみを記載している範囲についても同様の原理が適用される。また、このような解釈は、記載された範囲の広さや特徴にかかわらず適用されるべきである。
本発明の広い範囲について説明する数値範囲およびパラメータはおおよその値であるが、具体例において記載される数値は、可能な限り正確に報告する。しかし、どのような数値も、潜在的に、それぞれの試験測定において求められる標準偏差による一定の誤差を必然的に含む。
また、「A、B、およびC等のうち少なくとも1つ」に類似する表記を使用する場合、通常、このような構成は、当業者がこの表記を理解するであろうということを意図する(例:「A、B、およびCのうち少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AおよびBを共に有するシステム、AおよびCを共に有するシステム、BおよびCを共に有するシステム、および/またはA、B、およびCを共に有するシステム、等を含み得るが、これらに限定されない)。「A、B、またはC等のうち少なくとも1つ」に類似する表記を使用する場合、通常、このような構成は、当業者がこの表記を理解するであろうということを意図する(例:「A、B、またはCのうち少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AおよびBを共に有するシステム、AおよびCを共に有するシステム、BおよびCを共に有するシステム、および/またはA、B、およびCを共に有するシステム、等を含み得るが、これらに限定されない)。また、通常、2つ以上の代替語を示す離接語および/または離接句は、明細書、請求項、または図面のいずれにおいても、文脈から判断してそうでないと分かる場合を除いて、それらの代替語のうち1つ、代替語のうちいずれか、または双方の代替語を含む可能性を考慮するものと理解されるべきであることは、当業者にとって当然である。例えば、「AまたはB」というフレーズは、通常、「A」または「B」または「AおよびB」である可能性を含むものとして理解されるであろう。
場合により、本明細書において、1つ以上の要素は、「〜するように構成される」、「〜するように構成可能な」、「〜するように機能する/〜する働きをする」、「〜ように好適化された/好適化され得る」、「〜可能な」、「〜するように適合可能な/適合する」、等と記載することがある。このような用語(例:「〜するように構成される」)は、文脈から判断してそうでないと分かる場合を除いて、通常、アクティブな状態の要素および/または非アクティブな状態の要素および/または待機状態の要素を包含し得ることを、当業者は理解するであろう。
添付の請求項に関して、当該請求項に記載の操作は通常どのような順番でも行い得ることを当業者は理解するであろう。また、様々な操作フローが順序立てて示されているが、これらの様々な操作は、記載された順番以外の順番で行ってもよく、また、同時に行ってもよいと理解されるべきである。文脈から判断してそうでないと分かる場合を除いて、このような別の順序付けの例としては、重複、交互、中断、並べ替え、漸増的、予備、補足的、同時、逆、または他の異なる順序付けが挙げられ得る。また、「〜に応じて」、「〜に関する」のような用語、または他の過去形の形容詞は、文脈から判断してそうでないと分かる場合を除いて、通常、そのような変形を排除するものではない。
本明細書に記載のシステムおよび方法は、本明細書に固有の目的および利点と同時に、言及した目的および利点を達成するように、うまく好適化されていることは明確である。本明細書中に記載の方法およびシステムは、多くの方法で実施することができるため、上記に例示した実施形態および実施例によって制限されるものではないということを、当業者は理解するであろう。この点に関して、本明細書に記載の複数の異なる実施形態の特徴のいくつかを組み合わせて1つの実施形態としてもよく、本明細書に記載の特徴の全てよりも少ない特徴または多い特徴を有する別の実施形態が可能である。
本開示の目的のために様々な実施形態を記載したが、本明細書に記載の技術の十分な範囲内において、様々な変更および修正を施し得る。例えば、明確に記載していないが、ラマン分光法は、溶融塩炉の運転中に燃料塩の品質をモニターするために用いられる多くの技術のうちの1つにすぎない場合があり、同様に、複数のラマンプローブを用いて炉中の複数の異なる位置において燃料塩の品質の変化の情報を得てもよい。当業者が容易に思いつく、および、本開示の精神の範囲内であり添付の請求項で規定されているような、多数の他の変更を行い得る。
高速スペクトル増殖燃焼モードで運転する溶融塩原子炉の新規な実施形態の概要を示す図である。 上記溶融塩高速スペクトル原子炉の単純化された概略図を示す。 上記溶融塩高速スペクトル原子炉の他の単純化された概略図を示す。 炉心の反射組立品の概略図を示す図である。 複数の反射モジュールからなる反射組立品を示す図である。 複数の反射モジュールからなる反射組立品を示す図である。 溶融塩化物高速炉を用いた核反応から電力を発生させる原子力発電所の一実施形態を示す図である。 溶融塩原子炉の他の構成を示す図である。 特定の炉向け燃料の作製方法の一実施形態を示す図である。 UCl−UCl−NaCl燃料塩の予測三元状態図である。 66NaCl−34UCl組成物を利用する図1A〜図1Fに記載の炉の炉心部を大きくした場合における、時間関数としてのモデルkeffを示す図である。 本開示の1つ以上の実施形態に係る、高速スペクトル溶融塩原子炉への燃料装荷に関する操作例を表すプロセスフローである。 ClおよびBrの主な同位体の(n,γ)捕獲断面を示す図である。 17UBr−71UBr−12NaBrおよび235U濃縮19.99%の臭化物燃料塩の実施形態の増殖燃焼曲線のモデル結果を示す図である。 UClを含有する燃料塩の製造方法の一実施形態を示す図である。 図9に記載の方法を基にした、UClを含有する燃料塩の製造を協調的に行う方法の一実施形態を示す図である。 図10に記載の方法を行う際に好適に使用できる接触容器およびそれらの接続を概略的に示す図である。 溶融核燃料を使用する原子炉において腐食を減らす方法の一実施形態を示す図である。 溶融塩原子炉において燃料塩に対向する材料として使用し得る合金のリストである。 溶融塩原子炉の操作方法を示す図である。 放射性同位元素を1種類以上添加することにより、武器として応用され得る可能性を低減した燃料塩を作製する方法の一実施形態を示す図である。 塩化アンモニウムを用いてUClを製造する方法の一実施形態を示す図である。 UClFの製造方法の一実施形態を示す図である。 UClFの別の製造方法の一実施形態を示す。 ドレインタンクを利用して燃料精製を行う精製システムの一実施形態を示す図である。 例えば図19のオフガス処理システム等の、溶融塩炉によって生産された気体核***生成物の処理において好適に使用されるオフガス処理システムの一実施形態を示す図である。 図19および図20に記載されたシステムに基づいて燃料塩を精製する方法の一実施形態を示す図である。 製造された実施形態の燃料塩の図表における位置を示すUCl−UCl−NaCl燃料塩の三元状態図である。

Claims (16)

  1. 核反応から電力を生成する原子炉施設であって、
    核***性塩化ウラン燃料塩を含む炉心であって、上記核***性塩化ウラン燃料塩はモル分率で1%から50%までのUClを含み、上記核***性塩化ウラン燃料塩は600℃未満の融点を有する、炉心と、
    熱を上記燃料塩から冷却材に移動するように構成された熱交換器と、を備える、原子炉施設。
  2. 上記核***性塩化ウラン燃料塩におけるUClのモル分率は、1から33%までである、請求項1に記載の原子炉。
  3. 上記核***性塩化ウラン燃料塩はモル分率で40%から66%までのNaClを有する、請求項1に記載の原子炉。
  4. 上記核***性塩化ウラン燃料塩は、30%UCl、10%UCl、60%NaClである、請求項1に記載の原子炉。
  5. 上記核***性塩化ウラン燃料塩は、30%UCl、11%UCl、59%NaClである、請求項1に記載の原子炉。
  6. 上記核***性塩化ウラン燃料塩は、600J/kg−Cより大きい熱容量を有する、請求項1に記載の原子炉。
  7. 上記核***性塩化ウラン燃料塩の融点は、338から550℃までである、請求項1に記載の原子炉。
  8. 上記核***性塩化ウラン燃料塩は、複数の塩化物塩の混合物であり、
    上記複数の塩化物塩の塩化物イオンは、全Clに対する37Clの第一の比を有し、上記第一の比は天然に生じる全Clに対する37Clの比とは異なる、請求項1に記載の原子炉。
  9. 上記複数の塩化物塩の混合物の上記塩化物イオンの25%以上は37Clである、請求項8に記載の原子炉。
  10. 上記核***性塩化ウラン燃料塩は、UClと、UCl、UClF、UCl、UClF、PuCl、ThCl、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl3、および/またはNdClの一種以上との混合物である、請求項1に記載の原子炉。
  11. 上記核***性塩化ウラン燃料塩は、UClと、少なくとも一種のランタニドとの混合物であり、上記核***性燃料塩の性能指数は1.0未満である、請求項1に記載の原子炉。
  12. 上記炉の燃料塩対向部品は、ニッケル、または、ニッケル合金の被覆材を備えている、請求項1に記載の原子炉。
  13. 上記核***性塩化ウラン燃料塩におけるUClのモル分率は、2から30%までである、請求項1に記載の原子炉。
  14. 上記核***性塩化ウラン燃料塩におけるUClのモル分率は、5から20%までである、請求項1に記載の原子炉。
  15. 上記核***性塩化ウラン燃料塩におけるUClのモル分率は、8から12%である、請求項1に記載の原子炉。
  16. モル分率で少なくとも1%のUClを含み、
    核***性燃料塩は600℃未満の融点を有する、核***性ウラン燃料塩。
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