去る2011年3月の、日本の福島原発事故のため、原発事故に対する警戒心が高まっている。これにより、韓国の政府は、「原子力施設等の防護及び放射能防災対策法」を施行し、放射線非常計画区域を既存の8〜10kmから20〜30kmに拡大して改編した。
ここに、「放射線非常(以下、単に非常という。)」とは、原子力施設で発生し得る様々な事故・故障のうち、放射能(放射性物質)が外部に漏れ、または漏れる恐れのある事故状況のことを意味する。また、「放射線非常計画区域」とは、原子力施設において放射能漏れ事故が発生することに備え、保護薬品の用意や救護所の確保、避難・疎開等のような住民保護対策を予め集中して用意するために設定する法的区域のことをいう。ところが、放射線非常時、放射線の流出は、放射線非常計画区域にとどまらないこともあり得る。したがって、本発明における「事故区域」とは、事故、戦争、テロ、自然災害、故意等により放射線に被曝し、または被爆の恐れが予想される場所のことをいう。すなわち、事故区域とは、放射線非常計画区域のみならず、暫定的に放射線被害の可能性がある全ての区域や領域を意味することとする。
放射線非常が発生すると、迅速な初期対応及び住民保護措置の用意と実行のために、最も先行すべきなのが、区域内へ流出した放射線の分布現況及び変化推移に関する情報、すなわち、放射線分布情報を把握することである。リアルタイムの放射線分布情報により、事故への対応の水準と範囲を決定することができるからである。
現在、有事の際、迅速に放射線分布情報が把握できる、事故地域の放射線レベル分布データの確保のために、複数の放射線監視器と、通信ネットワークと、運用サーバを有する監視ネットワークとを活用した監視システムが設けられている。
放射線監視器(RMS:Radiation Monitoring System)は、通常、事故地域の所々に事前・事後に設置され、または事故地域を移動しながら、陸上、海上、及び空中の各位置の放射線レベルを測定する機器であって、基本的に、放射線レベル測定機能、GPS機能、及びリアルタイム通信機能(これらの機能は、物理的に異なる装置に具現されてもよい。)を有する。固定式監視器は、放射線レベルの監視を要する区域の主要位置に固定設置されるものである。移動式監視器としては、放射線非常が発生すると、予め設定された主要地点に移動設置される形式、車両や船舶に搭載され、予め設定された経路の道路や海上に移動される形式、ヘリコプターや飛行機に搭載され、飛行しながら移動される形式、または関係者が直接背負って携帯し、予め定められたまたは任意の経路に移動される形式等がある。このように事故区域現場の放射線レベルを測定する過程を「探査過程」、各種の監視器の移動経路を「探査経路」、探査過程で測定された放射線レベル情報を「探査データ」と称することとする。
運用サーバは、放射線非常監視システムを運用して管理する機関(国家機関または地方自治体の機関、いろんな機関が関与する第2の機関等であり、法令規定で定められ得る。例えば、合同放射線監視センタ、以下「管理機関」という。)が運用するサーバである。
このような監視システムによると、平常は、固定式監視器により、区域内における特定位置の放射線レベルが常時測定され、運用サーバに伝送される。それから、放射線非常時は、各種の移動式監視器を探査経路に沿って稼働させながら、事故領域の数箇所で、リアルタイムで放射線レベルを測定し、ネットワークを介して運用サーバに伝送することになる。運用サーバ(運用サーバも、物理的に分離された複数の装置であってもよい。)の管理機関は、位置基盤リアルタイム放射線レベルを総合して、区域内の放射線分布情報を導出するが、例えば、放射線非常の中央指揮本部のような機関は、この放射線分布情報に基づき事故への対応の水準と範囲を決定することになる。
このような放射線分布情報の獲得のための監視システムの作動は、大きく(1)事故区域現場の放射線レベルを測定する探査段階、(2)各監視器からリアルタイムの位置基盤放射線レベルを収集し、それを総合して、地図上に放射線分布情報を導出する状況把握段階、及び(3)リアルタイムの放射線分布情報に基づき、最適の事故拡散防止及び住民保護措置等を決定する対応段階に細分化される。
一方、他の基本的な非常計画システムの作動訓練と同様に、有事の際、放射線分布情報の獲得のための監視システムも、平常、周期的または非周期的に仮想の訓練を行う必要がある。ところが、従来、監視システムによると、仮想の放射線非常が発生した時点で、単に、非常計画上の監視器がどのくらい速く計画上の探査経路を通過したかを訓練できるだけで、仮想事故区域の放射線レベルが平常と同一であるので、訓練の緊迫感や現実感がなかった。さらには、探査段階において、リアルタイムの位置基盤放射線レベルが平常の値であるので、後半の状況把握段階及び対応段階に対する訓練は、前半の探査段階と連動せずに分離されるしかなかった。すなわち、従来、監視システムの仮想訓練は、有機的に行われず、訓練の効率性があまり高くないことが現状であった。
一方、従来技術によると、一定地域の放射線被爆線量を有・無線によりリアルタイムで測定し、非常事故による放射能汚染の有無を確認して管理する技術や、平価された結果物を地理情報システム(GIS)に連結して、放射性物資の被害地域と住民への保護措置対策等の対応・対策を樹立可能にする技術等が知られている(特許文献1、2、3参照)。
しかしながら、これらによると、各種の放射線汚染監視システムの訓練を、いかにして現実感のあるようにし、監視システムの有効な作動を担保するのかについての体系的な技術は知られていなかった。
以下、添付された図面を参照して、本発明の好適な実施例についてさらに詳述する。しかしながら、添付された図面は、本発明における技術的思想の内容と範囲を容易に説明するための例示であるだけで、これにより、本発明の技術的範囲が限定または変更されるものではない。このような例示に基づき、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形と変更が可能であることは、当業者にとって当然であろう。
上述のように、本発明は、放射線非常時、迅速に事故地域の放射線分布情報を把握可能に、放射線レベル分布データの確保のための複数の放射線監視器と、前記監視器と無線通信する運用サーバを有する監視ネットワークと、前記監視器と無線通信する訓練サーバとを活用した仮想事故基盤放射線非常の現場探査訓練方法であって、シナリオ設定過程と、仮想放射線レベル探査過程と、仮想放射線分布情報獲得過程と、を含んでいる。図1は、本発明による訓練方法に関与する客体と、それらの間の関係を示す概念的な関係図であり、図2は、本発明に係る訓練方法に関与する構成要素と、それらの間の情報伝達関係を概略的に示す図である。
本発明における「放射線監視器」または「監視器」とは、基本的に放射線レベル測定機能、GPS機能、及びリアルタイム通信機能を有し、有事の際、事故地域の所々に事前・事後に設置され、または事故地域を予定された経路(探査経路)に沿って移動しながら、陸上、海上、及び空中の位置基盤リアルタイム放射線レベルを測定して、前記運用サーバに伝送する機器である。「予定された」とは、「アクションプランで定められた」との意味である。
本発明における「運用サーバ」は、放射線非常監視システムを管理する管理機関が運用するサーバであって、複数の監視器からの位置基盤リアルタイム放射線レベルデータを伝送され、これを総合して、区域内の放射線分布情報を導出する役割をする。
本発明における前記「訓練サーバ」は、訓練状況においてのみ前記監視ネットワークと連動するサーバであって、放射線分布情報シナリオを設定し、これを監視器に伝送する役割をする。
本発明において、特定の時点に、各監視器は、一つの放射線レベル情報のみを測定または授受する。したがって、特定の時点に一つの監視器が測定または授受する放射線レベル情報を単数の「データム」と表現し、これらのデータムが集まった情報を複数の「データ」と表現する。
放射線事故は、無色無臭の放射線が広範囲に分布され得る。この場合、実用的に可能な限り多数の監視器を設置しても、リアルタイムで、広範囲な地域の全体を対象にして放射線レベルを測定することはできない。したがって、固定式または固定式と移動式監視器で事故地域を移動しながら汚染度を測定するしかないことが現状である。このような現状を反映して、本発明における「リアルタイム」とは、実質的なリアルタイムでもあるが、所定の時間的範囲内の時間を意味することもある。後者の場合、例えば、リアルタイムデータは、測定時刻から10分を経過していない、事故地域の全ての放射線レベルデータを意味することもできる。
本発明において、シナリオ設定過程は、前記訓練サーバが、訓練管理者から訓練予定区域の訓練予定時間帯別の仮想の放射線レベルを設定した、訓練予定区域の統合リアルタイムの位置別放射線レベル仮想データを入力されて保存する過程である。シナリオ、すなわち、訓練予定区域における各位置別の訓練予定時間における各時刻別の仮想の放射線レベル値からなる[位置‐時刻‐仮想の放射線レベル]設定データを入力されて保存する過程である。
シナリオの設定時は、放射性物質の汚染水準別の拡散領域分布、訓練区域の位置別‐時刻帯別の事故放射線レベル(=設定データム)等を構成することになる。
シナリオは、訓練対象区域の地図上に表示された特定時刻の放射線レベル分布情報の形態であることが、視認性のために好ましい。図3に、このようにシナリオを地図上に等高線形状のグラフィックで表示した例を図示した。図面において、緑色から赤色に行くほど放射線レベルが高いこと、すなわち、放射線汚染度が高いのを示すが、例えば、緑色領域の放射線レベルが100nSv(ナノシーベルト)/h以下、赤色領域の放射線レベルが1mSv/h以上であることに設定され得る。図示によると、特定の時点における事故地域の各位置別の放射線レベル情報が分かる。シナリオは、特定の時点を固定して定められてもよいが、放射線非常事故の推移、風速や風向の変化等を考慮し、経時的に放射線レベル分布情報が変わってゆくことにより定められてもよい。例えば、シナリオを訓練開始時刻から30分おきに別に設定することにより、より現実感のある訓練が可能である。ところが、シナリオを一つにし、または経時的に複数個のシナリオを設定しても、基本的な訓練方法は同一であるので、本発明では、一つのシナリオを設定したことを基準として説明する。
本発明において、前記仮想放射線レベル探査過程は、シナリオによる仮想のデータムを各監視器に送る過程であり、2つの方式のいずれかを選択すればよい。
(1)第一の方式(事前セッティング方式)は、訓練の開始前、前記訓練サーバが、設定されたシナリオ情報をそれぞれの監視器に伝送してセットすることである。このセッティングは、オフラインでも可能である。このような方式を選ぶと、移動式監視器である場合、アクションプランにより探査経路に沿って移動しながら、リアルタイム位置(現在の位置と時刻)に該当するシナリオ情報上の放射線レベルに関する情報(仮想データム)が抽出される。固定式または設置式である場合も、同一にリアルタイムの仮想データムが抽出される。
図4に、全ての監視器の予定された探査経路の例を示した。図面において、上下にジグザグに移動する経路は、飛行機に搭載された監視器の探査経路を示す。
(2)下記の第二の方式(リアルタイム方式)は、監視器が、前記シナリオ情報を保存して制御する機能を有していないときに適用され得る。
先ず、訓練が開始され、前記複数の放射線監視器が、移動式である場合、予め確定したアクションプランにより探査経路に沿って移動しながら、リアルタイム位置(現在の位置と時刻)を直接または前記運用サーバを介して前記訓練サーバに伝送する。固定式または設置式監視器の場合は、位置が固定されているので、1回の位置情報の伝送のみで充分である。引き続き、各監視器のリアルタイム位置を伝送された前記訓練サーバは、シナリオに設定された所定のリアルタイム位置(すなわち、現在の位置と時刻)に対応する各監視器、すなわち、シナリオ上の時間にシナリオ上の位置にある各監視器に、シナリオ上に設定された仮想データムを伝送する。
仮想放射線レベル探査過程を経ると、訓練中の各監視器には、リアルタイムでシナリオ上の位置基盤仮想データムを表示させることが好ましい。このとき、実測データム(=実際に測定された放射線レベル情報)と区分するために、仮想データムには、所定の表示子(タグ)が結合されていてもよい。監視器に表示された仮想データムにより、現場関係者は、それに適した現場対応方案を訓練する。
本発明において、前記仮想放射線分布情報獲得過程は、前記運用サーバが各監視器からリアルタイムで仮想データムを収集し、これを統合して、仮想放射線分布情報を得る過程である。この過程の流れは、実際の放射線分布情報を獲得する過程と同一であり、同様に二段階に区分される。
先ず、複数の監視器のそれぞれが前記訓練サーバから伝送されたリアルタイムの位置基盤放射線レベル仮想データムを運用サーバに伝送する。このとき、仮想データムは、前記「事前セッティング方式」による場合は、監視器が現在位置した場所に対応されて抽出された仮想データムであり、前記「リアルタイム方式」による場合は、訓練サーバからリアルタイムで伝送された仮想データムである。仮想データムが運用サーバに伝送されるとき、実測データムも一緒に伝送されてもよく、実測データムと区分するために、仮想データムには、所定の表示子(タグ)が結合されてもよい。また、現実感を強調するために、訓練サーバから伝送された仮想データムに実測データムを補正して(例えば、加減して)運用サーバに伝送することもできる。
続けて、運用サーバは、複数の監視器から伝送されたリアルタイムの位置別放射線レベル仮想データをまとめて保存し、これを、探査経路と、探査経路上で測定された仮想放射線レベルとをマッチさせるなどの方法で統合する。図5に、図3のシナリオと図4の探査経路に従って訓練した結果、探査経路上で測定された仮想放射線レベルを探査経路上に視覚的に示した。また、運用サーバは、このような探査結果を統合的に分析し、リアルタイムの事故地域仮想放射線分布情報を導出する。このとき、仮想放射線分布情報は、訓練対象区域の地図上に表示された特定時刻の放射線レベル分布情報の形態にすることが好ましい。図6に、図5により得られた情報を分析し統合して、仮想放射線分布情報を地図上に等高線形状のグラフィックで表示した例を示した。
一方、放射線非常のような非常状況には、無線ネットワークの負荷が発生しやすい。したがって、本発明において、各情報(データム/データ)は、適切な所定の周期で伝送されるようにすることが好ましい。
図2には、本発明に係る仮想事故基盤放射線非常の現場探査訓練方法に関与する酵素要素と、それらの間の情報伝達関係を概略的に示されているが、運用サーバと訓練サーバが分離されていながら、相互間通信する形態であるものが例示されている。しかしながら、本発明において、運用サーバや訓練サーバは機能的概念であるので、両方が物理的に一つのサーバに搭載されてもよい。
一方、本発明は、単に、仮想事故基盤放射線非常の現場探査訓練方法にのみ限定されるものではなく、訓練方法により訓練した結果を評価する評価方法も提供する。
すなわち、上述したシナリオ設定過程、仮想放射線レベル探査過程、及び仮想放射線分布情報獲得過程の以降、以下のような訓練評価過程を加えてもよい。訓練評価過程は、前記訓練サーバに保存された前記過程(A)におけるシナリオ上のリアルタイムの位置別放射線レベル仮想データ(すなわち、訓練区域の「位置‐時刻‐仮想放射線レベル」に対する設定データ)と、前記運用サーバが統合した前記過程(C)における探査測定されたリアルタイムの位置別放射線レベル仮想データ(すなわち、探査データ)とを相互比較して訓練結果を評価することである。
例えば、図3に示した仮想放射線分布シナリオに基づいて訓練を行い、その結果、獲得された結果が、図5に示すような探査放射線分布情報であれば、図3と図5がどのくらい類似するかを判断することにより、訓練が精巧に行われたか否かを評価することができることである。
以上の訓練方法の運用過程を関係者中心にして再度説明する。
1)訓練管理者が、訓練前、仮想事故現場に事故時刻帯別の仮想の事故領域及び領域別の放射線汚染程度(放射線レベル)を設定した事故シナリオ情報を設計して訓練サーバに保存する。
2)訓練課程において、非常対応の監視器を作動すると、監視器は、自動で訓練サーバと通信し、事故シナリオ情報を伝送してセットする(オフラインでセッティング可能)。
3)監視器が実際の計測を行うたびに、監視器の位置情報(固定された設置位置またはGPSを用いた位置情報の収集)により、事故シナリオにおける仮想データムを自動算出する。このとき、実測データムと仮想データムを合わせて仮想データム(=訓練用計測値)となるようにしてもよい。監視器には、実際に測定された実測データムと訓練用仮想データムが全て表示されてもよい。
4)それぞれの監視器の位置情報、時間情報、及び仮想データムが遠隔の中央指揮本部にある運用サーバに自動で伝送される。
5)事故現場における現場対応担当者は、監視器の仮想データムをモニタリングし、非常時の現場対応業務を訓練する。
6)遠隔の中央指揮本部の運用サーバは、現場から収集された仮想データムを統合してリアルタイムでモニタリングし、非常時、センタ対応業務訓練及びデータ分析を通じた住民保護措置の意志決定を訓練する。
7)仮想事故情報のリアルタイム共有及び意志交換を通じて、中央指揮本部と事故現場の現場対応担当者との間の対応業務の協力を訓練する。
8)訓練後は、訓練管理者が、事故対応手続き、所要時間、事故シナリオと訓練分析結果との比較等を通じて訓練評価を行う。
以上、本発明に係る仮想事故基盤放射線非常の現場探査訓練方法によれば、実際の放射線非常事故に類似した環境において、事故現場及び管制センタの非常対応を効果的に訓練するために、ハードウェア・イン・ザ・ループ方式で、仮想の放射性物質流出事故のシナリオについて、実際の非常対応装備及び実際の運用環境を活用して、事故現場と中央管制センタにおける放射線非常対応訓練を運用・評価することができることになる。
また、放射線非常の訓練時、多様な事故状況シナリオにより、実際に類似した環境において、予想事故区域の放射線分布情報を得る訓練を行うことにより、放射線非常に対する対応能力を高めることができることになる。