以下、図面と共に本発明に係る入力装置の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態において、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。
図1(a),(b)は、本実施形態に係る入力装置の概略図を示している。図1(a),(b)に示すように、本実施形態に係る入力装置1は、静電容量方式のタッチディスプレイ11、当該タッチディスプレイ11の表面11aに配置されるオブジェクト12(第1のオブジェクト)、タッチディスプレイ11の背面11bに配置されるオブジェクト13(第2のオブジェクト)、及びオブジェクト12とオブジェクト13とを電気的に接続するワイヤ14から構成される。なお、ここで言うタッチディスプレイ11の表面11aは、映像が提示される面を指している。タッチディスプレイ11は、タッチディスプレイ11の表面11aへの指のタッチを検出することができる。タッチディスプレイ11の背面11bとは、表面11aの反対側に位置するタッチディスプレイ11の面を指している。本実施形態において、タッチディスプレイ11は、背面11bへの指のタッチを検出することはできない。
オブジェクト12は、オブジェクト12とタッチディスプレイ11の表面11aとの間に静電容量を形成する静電容量生成部材21(第1静電容量生成部材)を含む。オブジェクト13は、オブジェクト13とタッチディスプレイ11の筐体11cとの間に静電容量を形成する静電容量生成部材22(第2静電容量生成部材)を含む。オブジェクト12とオブジェクト13とを接続するワイヤ14、静電容量生成部材21、及び静電容量生成部材22により、タッチディスプレイ11の表面11aにおいてオブジェクト12が配置されている部分と、タッチディスプレイ11の筐体11cとの間は容量結合されている。タッチディスプレイ11は、ユーザの指がオブジェクト13に触れると、オブジェクト12の位置に指が触れていると判断することができる。
タッチディスプレイ11は、静電容量生成部材21,22によって形成された静電容量に基づいて、ユーザがオブジェクト12、オブジェクト13、又はタッチディスプレイ11に触れていなくても、オブジェクト12の位置を常時検出し続ける。本実施形態において、タッチディスプレイは、一般の静電容量方式のタッチディスプレイ11であってもよい。
オブジェクト12及びオブジェクト13の各々は、タッチディスプレイ11の表面11a及び背面11bにおいてユーザの操作によって連動して移動する。例えば、オブジェクト12及びオブジェクト13は、それぞれ磁石を含み、タッチディスプレイ11を挟んで互いに引き合うことで連動して移動する。クリップによってタッチディスプレイ11が挟まれた状態で、当該クリップの両端にそれぞれオブジェクト12とオブジェクト13とが設置された構成であってもよい。この場合、クリップは、導電性を有する部材で構成される。クリップは、バネで構成されてもよい。
以上の構成によれば、ユーザがオブジェクト13を移動させた際に、オブジェクト12も同様に移動する。このため、ユーザは、オブジェクト12の位置を、オブジェクト13を介して移動させることができる。タッチディスプレイ11は、オブジェクト12の位置を検出することで、オブジェクト13の位置も検出することができる。したがって、オブジェクト12の位置を常時検出し続けることで、オブジェクト13の動きを検出することができる。すなわち、タッチディスプレイ11は、静電容量生成部材21,22によって形成された静電容量に基づいて、ユーザによるオブジェクト13の操作を検出する。この結果、タッチディスプレイ11の表面11aに対して直接的に入力を行うことが困難な場合であっても、ユーザはタッチディスプレイ11の背面11bからオブジェクト13を操作することで入力を行うことができる。
図2(a),(b)は、本実施形態の変形例に係る入力装置1の概略図を示している。この変形例では、オブジェクト13をタッチディスプレイ11の背面11bではなく、タッチディスプレイ11の外部に配置している。実施形態では、ユーザが指で操作するオブジェクト13の本体13aと静電容量生成部材22とが一体化していたのに対し、本変形例では、オブジェクト13の本体13aと静電容量生成部材22とが分離している。オブジェクト13の本体13aと静電容量生成部材22とは、ワイヤ14で接続されており、一体となってオブジェクト13として機能する。
静電容量生成部材22は、オブジェクト13とタッチディスプレイ11の筐体11cとの間に静電容量を形成する。静電容量生成部材22とオブジェクト13の本体13aとは、ワイヤ14で電気的に接続されている。オブジェクト12とオブジェクト13の本体13aとは、ワイヤ14で接続されている。このため、タッチディスプレイ11の表面11aにおいてオブジェクト12が配置されている部分と、タッチディスプレイ11の筐体11cとの間は容量結合されている。タッチディスプレイ11は、ユーザの指がタッチディスプレイ11に触れると、オブジェクト12の位置に指が触れていると判断することができる。
オブジェクト12及びオブジェクト13は、ワイヤ14だけでなく、非可撓性を有する保持具15により機械的に接続されている。このため、オブジェクト12及びオブジェクト13は、連動して移動する。ユーザは、オブジェクト12の位置を、オブジェクト13を介して移動させることができる。したがって、タッチディスプレイ11の表面11aに対して直接的に入力を行うことが困難な場合であっても、ユーザは、タッチディスプレイ11の外部領域からオブジェクト13を操作することで入力を行うことができる。
図3(a),(b)は、本実施形態に係る入力装置1のオブジェクト12の静電容量生成部材21を示している。本実施形態において、静電容量生成部材21は、オブジェクト12に含まれる導体である。静電容量生成部材21がタッチディスプレイ11の表面11aと接触する又は接近することで、タッチディスプレイ11とオブジェクト12との間に静電容量が形成される。タッチディスプレイ11の表面11aは絶縁体であるため、静電容量生成部材21はタッチディスプレイ11の表面11aと接触してもよい。静電容量生成部材21によって形成される静電容量の大きさは、静電容量生成部材21の物理的な大きさ、又は当該静電容量生成部材21とタッチディスプレイ11の表面11aと間の電気的な距離で調整することができる。また、オブジェクト12とオブジェクト13とを接続するワイヤ14は、オブジェクト12に含まれる静電容量生成部材21と直接接続している。オブジェクト12において、静電容量生成部材21は、オブジェクト12の本体12a(外装)からタッチディスプレイ11の表面11a側にのみ露出しており、その反対側には露出していない。したがって、入力装置1の使用中にユーザが静電容量生成部材21に触れることがない。
オブジェクト13の静電容量生成部材22は、オブジェクト13に含まれる導体である。静電容量生成部材22によって形成される静電容量の大きさは、静電容量生成部材22の物理的な大きさ、又は当該静電容量生成部材22とタッチディスプレイ11の表面11aと間の電気的な距離で調整することができる。
図4(a),(b)は、本実施形態に係る入力装置1のオブジェクト13の具体的な構成を示している。オブジェクト13の静電容量生成部材22は、外部に露出した導体部分22aを有する。すなわち、静電容量生成部材22は、オブジェクト13ではタッチディスプレイ11の背面11b側だけでなく、その反対側にもオブジェクト13の本体13aから露出している。すなわち、静電容量生成部材22は、タッチディスプレイ11の背面11b側からその反対側にオブジェクト13の本体13a(外装)を貫通しており、オブジェクト13の表面の一部に露出している。静電容量生成部材22は、オブジェクト13の表面の全部に露出していてもよい。静電容量生成部材22は、タッチディスプレイ11の背面11b側の反対側において露出していなくてもよい。静電容量生成部材22の上述した導体部分22aは、ワイヤ14と電気的に接続されている。
静電容量生成部材22がタッチディスプレイ11の背面11bの反対側で露出している場合、ユーザは、静電容量生成部材22に指で触れた状態でオブジェクト13を移動させることもできるし、導体部分22aに指で触れない状態でオブジェクト13を移動させることもできる。ユーザが露出した静電容量生成部材22に触れた場合、タッチディスプレイ11とオブジェクト13との間に新たな静電容量が導入される。オブジェクト12とオブジェクト13とはワイヤ14で接続されているため、タッチディスプレイ11の表面11aにおいてオブジェクト12が配置されている部分と、オブジェクト12との間の容量結合が強化される。この場合、タッチディスプレイ11では、オブジェクト12の位置でより大きな静電容量が検出される。タッチディスプレイ11は、検出値から、ユーザがオブジェクト13に触れているか否か、又はユーザが絶縁物を介してオブジェクト13を操作しているか否かを検出する。タッチディスプレイ11が検出する静電容量の大きさによって、接触している指の面積を判定することもできる。
このため、ユーザがオブジェクト13の露出した静電容量生成部材22に触れることで、タッチディスプレイ11に対する入力が実現される。また、ユーザが静電容量生成部材22に触れながらオブジェクト13を移動させる場合と、ユーザが静電容量生成部材22に触れずにオブジェクト13を移動させる場合とで、タッチディスプレイ11に対して異なる入力を行うことができる。すなわち、入力の多様性を増大させることができる。
図5(a),(b)は、本実施形態の変形例に係る入力装置1のオブジェクト12を示している。このオブジェクト12は、高さ方向に底面12bの中心部を貫通する穴12cを有する円筒形状を有している。このオブジェクト12を用いれば、ユーザは、オブジェクト12の直下の位置に提示される表示を、穴12cを介して視認することができる。静電容量生成部材21は、穴12cの周囲にドーナッツ状に配置されている。このため、静電容量生成部材21によって視認性が阻害されない。この場合、タッチディスプレイ11は、オブジェクト12の高さ方向から見て、ドーナッツ状の重心位置、すなわち、穴12cの中心を、オブジェクト12の位置として検出する。このため、ユーザは穴12cを通して、タッチディスプレイ11が検出しているオブジェクト12の位置を知ることができる。結果として、本変形例によれば、ユーザは、より精密なポインティング入力を行うことができる。図5(a),(b)に示した変形例では、静電容量生成部材21の穴12cは空洞であるが、当該穴12cにタッチディスプレイ11の表面11aと接触するように透明電極を配置してもよい。
オブジェクト12は、透明電極を含む透明な素材で構成されてよい。すなわち、オブジェクト12は、光を透過する材料によって構成された部分を有していてもよい。この場合も、ユーザは、より精密なポインティング入力を行うことができる。
図6(a),(b)は、本実施形態の変形例に係る入力装置1のオブジェクト12を示している。オブジェクト12及びオブジェクト13の少なくとも一方が、本変形例のオブジェクト12と同様の構成を有していてもよい。本変形例の静電容量生成部材21は、静電容量生成部材21と他の部材(例えばタッチディスプレイ)との間でインピーダンスを変化させるインピーダンス調整機構30を有する。本変形例の静電容量生成部材21(オブジェクト12)は、中心部材32と中心部材32を囲う4つのリング33,34,35,36から構成されている。中心部材32及び各リング33,34,35,36がタッチディスプレイ11と接する面は導体であり、中心部材32及び各リング33,34,35,36の側面も導体である。これら複数の導体部分が静電容量生成部材21(オブジェクト13の場合は静電容量生成部材22)として機能する。各リング33,34,35,36は、それぞれ上下にスライドすることができる。図6(a),(b)に示した変形例では、リング34及びリング35が上方にスライドしている状態を示している。
図6(a),(b)に示した変形例におけるオブジェクト12とタッチディスプレイ11との間に形成される静電容量は、中心部材32と各リング33,34,35,36によって構成される静電容量生成部材21がタッチディスプレイ11の表面11a又は背面11bと接触している領域の面積によって決定される。図6(a),(b)に示した構成では、接触している領域の面積は、中心部材32、リング33、及びリング34の底面積の合計である。
この場合、オブジェクト12とタッチディスプレイ11との間の静電容量を増大させるには、リング34若しくはリング35、又はリング34とリング35との両方を下方にスライドさせて、タッチディスプレイと接触させる。オブジェクト12とタッチディスプレイ11との間の静電容量を減少させるには、リング33若しくはリング34、又はリング33とリング34の両方を上方にスライドさせて、接触面積を減少させる。図6(a),(b)に示した変形例のように、静電容量生成部材21(オブジェクト12)にインピーダンス調整機構30を加えることで、異なる感度,閾値などを持つタッチディスプレイ11に対しても入力装置1を適用することができる。
図7(a),(b)は、本実施形態の変形例に係る入力装置1のオブジェクト12を示している。本変形例において、静電容量生成部材21(オブジェクト12)は、図6(a),(b)に示した変形例とは異なるインピーダンス調整機構30を有する。オブジェクト12及びオブジェクト13の少なくとも一方が、本変形例のオブジェクト12と同様の構成を有していてもよい。本変形例のオブジェクト12において、静電容量生成部材21は、図3(b)に示した静電容量生成部材21のようにオブジェクト12の本体に覆われた円柱状の導体部分37と、当該導体に連結している変形導体38及び変形導体39とを有している。変形導体38及び変形導体39は、タッチディスプレイ11の表面11a又はオブジェクト12の側面12dに接触するように変形することができる。
図7(a),(b)では、変形導体38がタッチディスプレイ11の表面11aと接触し、変形導体39がオブジェクト12の側面12dに接触している状態を示している。オブジェクト12とタッチディスプレイ11との間に形成される静電容量は、静電容量生成部材21とタッチディスプレイ11とが接触している面積によって決定される。変形導体38がタッチディスプレイ11の表面11aに接触している場合、変形導体38及び変形導体39がともにオブジェクト12の側面12dに接触している場合よりも、形成される静電容量が大きい。さらに静電容量を増大させるには、変形導体39もタッチディスプレイ11の表面11aに接触するように変形させる。静電容量を減少させるには、変形導体38及び変形導体39の両方をオブジェクト12の側面12dに接触させる。図7(a),(b)に示した変形例のように、静電容量生成部材21にインピーダンス調整機構30を加えることで、異なる感度,閾値などを持つタッチディスプレイ11に対しても入力装置1を適用することができる。
図8(a),(b)は、本実施形態の変形例に係る入力装置1のオブジェクト12を示している。本変形例において、静電容量生成部材21は、図6(a),(b)及び図7(a),(b)に示した変形例とは異なるインピーダンス調整機構30を有する。オブジェクト12及びオブジェクト13の少なくとも一方が、本変形例のオブジェクト12と同様の構成を有していてもよい。本変形例のオブジェクト12において、静電容量生成部材21は、タッチディスプレイ11の表面11a又は背面11bと接触するオブジェクト12の底面12bに設置された導体部分41と、当該導体部分41とワイヤ14との間に配置されたインピーダンス42とによって構成されている。このインピーダンス42は、抵抗、コンデンサ、若しくはコイル、又は、これらの組み合わせによって構成されている。インピーダンス42を導体部分41とワイヤ14との間に挿入することで、オブジェクト12とタッチディスプレイ11との間に形成される静電容量を含むインピーダンス42を調整することができる。
図8(a)に示されている構成では、オブジェクト12に含まれるインピーダンス42は1つである。図8(b)に示されているように、オブジェクト12の内部に、互いに特性が異なる複数のインピーダンス42を含んでもよい。この場合、スイッチなどそれに類する機構によって、複数のインピーダンス42の中のうちの1つが、オブジェクト12内の導体部分41とワイヤ14とを接続するようにしてもよい。
図9(a)〜(c)は、本実施形態の変形例に係る入力装置1のオブジェクト13を示している。本変形例において、静電容量生成部材22は、図6(a)〜図8(b)に示した変形例のインピーダンス調整機構30とは異なり、静電容量生成部材22と他の部材(例えばタッチディスプレイ11)との間でインピーダンスを変化させるインピーダンス調整機構31を有する。
図6(a)〜図8(b)に示した変形例のインピーダンス調整機構30では、インピーダンスは予め決められた値となるのに対し、本変形例のインピーダンス調整機構31ではユーザがオブジェクト13に加える力(圧力)に応じて、オブジェクト13とタッチディスプレイ11との間のインピーダンス、主に静電容量が変化する。また、図6(a)〜図8(b)に示した変形例のインピーダンス調整機構30は、主に入力装置1を感度,閾値などの異なるタッチディスプレイに適用する際に利用されるのに対し、本変形例のインピーダンス調整機構31は、主にユーザの入力の多様性を向上するのに利用される。
図9(a)〜(c)に示す変形例のオブジェクト13は、弾性体で構成されている。オブジェクト13は、内部に可撓性を有する導体部分からなる静電容量生成部材22を有する。図9(a)〜(c)に示されているように、ユーザが指でオブジェクト13に対してタッチディスプレイ11に押しつけるように力を加えた場合、オブジェクト13が変形し、それに連動して内部の静電容量生成部材22も変形する。オブジェクト13とタッチディスプレイ11との間の静電容量は、タッチディスプレイ11の背面11bに投影した静電容量生成部材22の面積と、タッチディスプレイ11の背面11bと静電容量生成部材22との間の距離とに依存する。このため、図9(a)〜(c)に示されているように、ユーザによってオブジェクト13がタッチディスプレイ11側に押圧されることで、内部の静電容量生成部材22が変形し、オブジェクト13とタッチディスプレイ11との間の静電容量が増加するようにインピーダンスが変化する。
オブジェクト13は、弾性体で構成されている。このため、ユーザが力を加えるのを止めると、オブジェクト13は図9(a)〜(c)に示されているようにユーザに押圧される前の状態に戻り、静電容量は減少する。換言すれば、本変形例において、静電容量生成部材22のインピーダンス調整機構31は、オブジェクト13に加わる圧力によって変形することで、オブジェクト13とタッチディスプレイ11との間に生じるインピーダンスを変化させる。
本変形例において、タッチディスプレイ11は、オブジェクト13とタッチディスプレイ11との間のインピーダンスの変化を、オブジェクト12とタッチディスプレイ11との接触している点の静電容量の変化として検出する。このため、タッチディスプレイ11は、オブジェクト12が接触している点の静電容量の変化を検出することで、ユーザがオブジェクト13に力を加えているか否かを判定すると共に、ユーザがどの程度の力をオブジェクト13に加えているのかも判定する。すなわち、タッチディスプレイ11は、オブジェクト13に加わっている圧力を検出する。これにより、本変形例のオブジェクト13によれば、オブジェクト13に加える力に応じて、タッチディスプレイ11に対して異なる入力操作を行うことができる。すなわち、入力操作の多様性を向上させることができる。
図10(a),(b)は、本実施形態の変形例に係る入力装置1のオブジェクト13を示している。このオブジェクト13は、複数の導体部分51,52,53,54及び複数のインピーダンス56,57,58を含んでいる。図10(a),(b)に示されているように、オブジェクト13は、導体部分51,52,53,54、及びインピーダンス56,57,58によって構成される静電容量生成部材22を有する。導体部分51,52,53,54は、オブジェクト13の外部に露出しており、それぞれが対応する異なるインピーダンス56,57,58を介してワイヤ14に接続されている。インピーダンス56,57,58は、それぞれ、異なる特性を有するインピーダンスである。本変形例のオブジェクト13にユーザが触れていない場合、オブジェクト13とタッチディスプレイ11との間に形成される静電容量の大きさは、オブジェクト13の底面13bに配置された導体部分54によって決定される。一方、外部に露出している導体部分51,52,53のいずれかにユーザが触れている場合には、人体を介して静電容量を含むインピーダンスが接続される。
本変形例のタッチディスプレイ11では、導体部分51,52,53への指の接触により導入されるインピーダンスは、人体が接続されることによるインピーダンスと、静電容量生成部材22に接続されているインピーダンス56,57,58のいずれかとが合成されたものとなる。例えば、インピーダンス56及びインピーダンス57は共に容量成分が支配的であり、かつ、インピーダンス56に含まれる容量成分がインピーダンス57に含まれる容量成分がよりも大きい場合、ユーザが導体部分51に触れた時に導入されるインピーダンスが、ユーザが導体部分52に触れた時に導入されるインピーダンスよりも大きい。
タッチディスプレイ11では、ユーザが導体部分51に触れている場合と、ユーザが導体部分52に触れている場合と、いずれの導体部分51,52,53にも触れていない場合とで、オブジェクト12とタッチディスプレイ11とが接触している点において、異なる静電容量が検出される。すなわち、タッチディスプレイ11は、オブジェクト13の露出した導体部分51,52,53のいずれかにユーザが触れているか否かを判定する。タッチディスプレイ11は、ユーザが複数の導体部分51,52,53のいずれかに触れていると判定した場合、ユーザがどの導体部分に触れているのかを判定する。したがって、触れる導体部分51,52,53によって、異なる入力操作を行うことができる。すなわち、入力操作の多様性が向上する。
図11(a),(b)は、本実施形態の変形例に係る入力装置1を示している。図10(a),(b)に示した変形例のオブジェクト13では、複数の導体部分51,52,53がそれぞれ異なるインピーダンスを介して1本のワイヤに接続されていたのに対し、本変形例のオブジェクト12では複数の導体部分61,62,63,64のそれぞれが、異なるワイヤ65,66,67,68に電気的に接続されており、各ワイヤ65,66,67,68によってオブジェクト13と電気的に接続されている。オブジェクト12に接続されているオブジェクト13は、外部に露出した複数の導体部分を有しており、これらの導体部分がそれぞれ異なるワイヤ65,66,67,68に電気的に接続されている。
オブジェクト12の導体部分61は、オブジェクト12の中心に配置されており、オブジェクト13においてタッチディスプレイ11との間に静電容量を形成する導体部分と接続されている。オブジェクト12の導体部分62,63,64は、オブジェクト13から露出した複数の導体部分にそれぞれ接続されている。オブジェクト12の中心にある導体部分51の位置は、ユーザがオブジェクト13に触れているか否かによらず常にタッチディスプレイ11で検出される。導体部分62,63,64は、オブジェクト13から露出した導体部分に電気的に接続されている。
オブジェクト12の導体部分62,63,64は、タッチディスプレイ11の背面11bとの容量結合が十分でないため、ユーザがオブジェクト12の導体部分62,63,64に対応する導体部分に触れていない場合には、タッチディスプレイ11は何も検出しない。導体部分62,63,64に対応するオブジェクト13から露出した導体部分のいずれかにユーザが触れた場合、対応する導体部分62,63,64には静電容量が導入される。オブジェクト12の導体部分62,63,64は、それぞれ異なる位置に配置されている。タッチディスプレイ11は、ユーザの指がオブジェクト13に含まれているいずれかの導体部分に触れた場合、オブジェクト12の導体部分61,62,63,64のいずれかの位置にそれぞれ指が触れているように観測される。このような構成とすることで、入力操作の多様性を向上させることができる。
図12は、本実施形態に係る入力装置1をHMD100に適用した例を示す。この場合、タッチディスプレイ11の表面11a以外の場所で入力操作を行うことができる。入力装置1は、タッチディスプレイ11の表面11aを用いた入力操作が制限される場合に、特に有効に機能する。その具体的な例の一つが、スマートフォンをHMDとして利用する場合である。一般的に、スマートフォンのタッチディスプレイ11の表面11aをユーザの目の近傍に配置できるように、ユーザの頭部に装着する部材によってスマートフォンを保持する。この場合、タッチディスプレイ11の表面11aとユーザの顔面との間にできる隙間は僅かであり、タッチディスプレイ11の表面11aに対して自由に入力操作を行うことは困難である。このような場面に入力装置1は好適である。
図12には示されていないが、スマートフォンのタッチディスプレイ11の表面11aにはオブジェクト12が配置されている。オブジェクト12は、ワイヤ14を介してオブジェクト13と接続されている。オブジェクト12及びオブジェクト13の各々は、磁性体を含んでおり、互いに引き合っている。オブジェクト12及びオブジェクト13の少なくとも一方に含まれる磁性体は、強磁性体である。ユーザは、タッチディスプレイ11の背面11bに配置されたオブジェクト13を簡単に移動させることができる。オブジェクト12及びオブジェクト13は、磁性体で生じた磁力によって連動して移動する。このように、オブジェクト12は、オブジェクト13の動きに合わせて移動する。磁力によってオブジェクト12とオブジェクト13とが連動して移動する場合、機械的なリンク機構が不要で、小型で安価に製造することができる。
これまで説明してきたように、オブジェクト12とタッチディスプレイ11の表面11aの間、及び、オブジェクト13とタッチディスプレイ11の背面11bの間には、静電容量が形成されている。このため、ユーザがオブジェクト13に触れていか否かによらず、タッチディスプレイ11は常にオブジェクト12の位置を検出し続けることができる。ユーザは、オブジェクト13を動かすことで、オブジェクト12の軌跡に応じた入力を行うことができる。例えば、ユーザがオブジェクト13を円を描くように動かした場合に、描いた円の内部にある表示物体を選択するなどの入力を行うことができる。
図12に示したオブジェクト13は、図4(a),(b)に示した変形例のように、導体部分が外部に露出している静電容量生成部材22を有している。ユーザが静電容量生成部材22の露出した部分に触れた場合、タッチディスプレイ11はユーザが静電容量生成部材22に触れたことを検出する。この結果、ユーザは、露出した静電容量生成部材22に触れることで入力を行うことができる。例えば、ユーザが露出した静電容量生成部材22に触れることで、オブジェクト12の直下の表示物体が選択される。さらに、オブジェクト13の移動と、ユーザの露出した静電容量生成部材22への接触とを組み合わせた入力操作を行うこともできる。例えば、ユーザは、露出した静電容量生成部材22に触れることで、オブジェクト12の直下の表示物体を選択し、露出した静電容量生成部材22に触れたままオブジェクト13を移動させることで、選択した表示物体を移動させることができる。この場合、ユーザは、露出した静電容量生成部材22から指を離すことで、表示物体の移動を停止させることができる。
以上、本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンスなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
本明細書で説明したデータは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
本明細書で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
本明細書で「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した場合においては、その要素へのいかなる参照も、それらの要素の量または順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、または何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
「含む(include)」、「含んでいる(including)」、及びそれらの変形が、本明細書あるいは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書あるいは特許請求の範囲において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
本開示の全体において、文脈から明らかに単数を示したものではなければ、複数のものを含むものとする。