以下、図面を参照しながら、実施形態に係る超音波診断装置、医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムを説明する。なお、一つの実施形態又は変形例に記載した内容は、他の実施形態又は他の変形例にも同様に適用されてもよい。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103とを有する。
超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子等の複数の素子を有する。これら複数の素子は、後述する装置本体100が有する送信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する複数の素子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
超音波プローブ101は、装置本体100と着脱可能に設けられる。被検体P内の2次元領域の走査(2次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、複数の圧電振動子が一列で配置された1Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100に接続する。1Dアレイプローブは、リニア型超音波プローブ、コンベックス型超音波プローブ、セクタ型超音波プローブ等である。また、被検体P内の3次元領域の走査(3次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100と接続する。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。以下、装置本体100に、1Dアレイプローブが接続される場合について説明する。
入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等の入力手段により実現される。入力装置102は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体100に転送する。
ディスプレイ103は、例えば、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データにより示される超音波画像等を表示したりする。ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等によって実現される。
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する。なお、超音波画像データは、画像データの一例である。装置本体100は、超音波プローブ101が受信した被検体Pの2次元領域に対応する反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能である。また、装置本体100は、超音波プローブ101が受信した被検体Pの3次元領域に対応する反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能である。図1に示すように、装置本体100は、送信回路110と、受信回路120と、Bモード処理回路130と、ドプラ処理回路140と、画像生成回路150と、画像メモリ160と、記憶回路170と、制御回路180と、フィルタ処理回路190とを有する。
送信回路110は、超音波プローブ101から超音波を送信させる。送信回路110は、レートパルサ発生回路と、送信遅延回路と、送信パルサとを有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。送信回路110は、被検体P内の2次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から2次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。また、送信回路110は、被検体P内の3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。
レートパルサ発生回路は、所定のレート周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波(送信ビーム)を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。レートパルスが送信遅延回路を経由することで、異なる送信遅延時間を有した状態で送信パルサに電圧が印加される。例えば、送信遅延回路は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、レートパルサ発生回路により発生される各レートパルスに対して与える。送信パルサは、かかるレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。なお、送信遅延回路は、各レートパルスに与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの超音波の送信方向を任意に調整する。
駆動パルスは、送信パルサからケーブルを介して超音波プローブ101内の圧電振動子まで伝達した後に、圧電振動子において電気信号から機械的振動に変換される。この機械的振動によって発生した超音波は、生体内部に送信される。ここで、圧電振動子ごとに異なる送信遅延時間を持った超音波は、集束されて、所定方向に伝搬していく。
なお、送信回路110は、制御回路180による制御を受けて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有する。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
超音波プローブ101により送信された超音波の反射波は、超音波プローブ101内部の圧電振動子まで到達した後、圧電振動子において、機械的振動から電気的信号(反射波信号)に変換され、受信回路120に入力される。受信回路120は、プリアンプと、A/D(Analog to Digital)変換器と、直交検波回路等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成し、生成した反射波データをフィルタ処理回路190に出力する。受信回路120は、超音波プローブ101が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、受信回路120は、超音波プローブ101が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。反射波データは、受信信号の一例である。受信回路120は、受信部の一例である。
プリアンプは、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン調整(ゲイン補正)を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換することでゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。直交検波回路は、A/D変換された反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(IQ信号)を反射波データとしてフィルタ処理回路190に出力する。すなわち、反射波データは、位相情報を含む。
ここで、本実施形態に係る受信回路120は、並列同時受信を実行可能である。並列同時受信は、送信された超音波(1回の送信超音波)の音場内に複数の受信走査線を設定し、各受信走査線上からの超音波信号(反射波信号)を略同時に受信することで、フレームレート(時間分解能)を向上させる技術である。すなわち、受信回路120は、超音波プローブ101による1回の超音波の送受信毎に、複数の受信走査線に対応する複数の反射波データを出力する。
本実施形態では、受信回路120は、制御回路180による制御を受けて、1フレーム分の超音波画像データを得るために、並列同時受信を複数回行う。具体的には、本実施形態では、送信回路110が、1フレーム分の超音波画像データの走査範囲を網羅するように音場が異なる超音波を複数回送信し、受信回路120が、超音波が送信されるたびに並列同時受信を行う。すなわち、本実施形態では、1フレーム分の超音波画像データの走査範囲が複数の領域に分割され、送信回路110が、超音波を領域毎に送信し、受信回路120が、超音波が送信されるたびに並列同時受信を行う。
図2は、第1の実施形態において、1フレーム分の超音波画像データを得るために複数回行われる並列同時受信の一例を説明するための図である。なお、本実施形態では、1フレーム分の超音波画像データを得るために行われる並列同時受信の回数をM(Mは、2以上の整数)回とする。すなわち、送信回路110は、1フレーム分の超音波画像データを得るために、超音波をM回送信する。
また、本実施形態では、受信回路120が、1回の送信超音波の音場内に8本の受信走査線を設定し、8本の受信走査線上からの反射波信号を略同時に受信することで、8つの反射波データを生成する場合について説明する。すなわち、1回の並列同時受信において受信回路120により生成される反射波データの数が「8」である場合を例に挙げて説明する。なお、1回の並列同時受信において受信回路120により生成される反射波データの数は、「8」に限られず、他の値であってもよい。
図2において、符号「10_k(kは、1以上M以下の整数)」は、1フレーム分の超音波画像データを得る際に、送信回路110によりk回目に送信された超音波(k回目の送信超音波)を指す。また、符号「10_k_i(iは、1以上8以下の整数)」は、k回目の並列同時受信において受信回路120により生成されたi番目の反射波データを指す。
k回目の並列同時受信において生成されたi番目の反射波データは、送信超音波10_kの音場内に設定されたi番目の受信走査線上からの反射波信号に基づいて受信回路120により生成される。このように、8個の反射波データ10_k_1〜10_k_8は、超音波プローブ101から送信された送信超音波10_kに基づいて受信回路120により生成される。すなわち、8個の反射波データ10_k_1〜10_k_8は、送信超音波10_kに基づく反射波データである。
例えば、図2には、送信回路110が、n(nは、1以上(M−2)以下の整数)回目の超音波10_n、(n+1)回目の超音波10_(n+1)を送信した場合が示されている。図2に示すように、受信回路120は、1回の超音波10_nの送信に対して、8個の反射波データ10_n_1〜10_n_8を生成し、8個の反射波データ10_n_1〜10_n_8をフィルタ処理回路190に出力する。同様に、受信回路120は、1回の超音波10_(n+1)の送信に対して、8個の反射波データ10_(n+1)_1〜10_(n+1)_8を生成し、8個の反射波データ10_(n+1)_1〜10_(n+1)_8をフィルタ処理回路190に出力する。
また、図2には、1回の超音波10_(n+2)(図示せず)の送信に対して、受信回路120が生成した反射波データ10_(n+2)_1も示されている。
ここで、本実施形態における音場の位置関係について一般化して説明する。例えば、jを1以上(M−1)以下の整数とすると、j回目の送信超音波の音場と(j+1)回目の送信超音波の音場とが互いに隣り合う。換言すると、pを2以上(M−1)以下の整数とすると、p回目の送信超音波10_pの音場の一端側に、(p−1)回目の送信超音波10_(p−1)の音場が存在する。また、送信超音波10_pの音場の他端側に、(p+1)回目の送信超音波10_(p+1)の音場が存在する。なお、送信超音波10_pの音場の一端側とは、例えば、1回目の送信超音波10_1の音場が位置する側を指す。また、送信超音波10_pの音場の他端側とは、例えば、M回目の送信超音波10_Mの音場が位置する側を指す。
ここで、1フレーム分の超音波画像データを得る際に設定される(8×M)個の受信走査線の並び順について説明する。以下の説明では、k回目の送信超音波10_kの音場内に設定されるi番目の受信走査線を「50_k_i」で表す。すなわち、受信走査線50_k_iは、反射波データ10_k_iと対応する関係にある。
本実施形態では、受信走査線50_1_1から、受信走査線50_M_8に向かって、1つの送信超音波10_kの音場内で、受信走査線50_k_1、受信走査線50_k_2、・・・、受信走査線50_k_7、受信走査線50_k_8の順で、受信走査線が等間隔で並んでいる。そして、送信超音波10_1の音場、送信超音波10_2の音場、・・・、送信超音波10_(M−1)の音場、送信超音波10_Mの音場が、この順で並んでいる。したがって、受信走査線50_k_8と受信走査線50_(k+1)_1とが隣り合い、受信走査線50_k_1と受信走査線50_(k−1)_8とが隣り合う。
フィルタ処理回路190は、入力されたデータに対してフィルタ処理を行う。例えば、フィルタ処理回路190は、反射波データに対してフィルタ処理を行う。そして、フィルタ処理回路190は、フィルタ処理が施された反射波データをBモード処理回路130及びドプラ処理回路140に出力する。フィルタ処理回路190は、例えば、プロセッサにより実現される。フィルタ処理回路190は、フィルタ処理部の一例である。フィルタ処理回路190の詳細については後述する。
Bモード処理回路130は、フィルタ処理回路190が出力した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理及び対数圧縮等を行なって、サンプル点ごとの信号強度(振幅強度)が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。Bモード処理回路130は、生成したBモードデータを画像生成回路150に出力する。Bモード処理回路130は、例えば、プロセッサにより実現される。
ドプラ処理回路140は、フィルタ処理回路190が出力した反射波データを周波数解析することで、ドプラ効果に基づく移動体(血流や組織、造影剤エコー成分等)の運動情報を抽出し、抽出した運動情報を示すデータ(ドプラデータ)を生成する。例えば、ドプラ処理回路140は、移動体の運動情報として、平均速度、分散及びパワー等を多点に渡り抽出し、抽出した移動体の運動情報を示すドプラデータを生成する。ドプラ処理回路140は、生成したドプラデータを画像生成回路150に出力する。
具体的には、ドプラ処理回路140は、カラードプラ法を実行し、同一方向(同一走査線上)に対して複数回送信された超音波に基づく複数の反射波データから、ドプラ効果に基づく周波数解析を行なって、血流の運動情報を抽出する。同一方向に複数回超音波を送信することにより得られるデータの同一地点からの反射波信号のデータ列をパケットと呼ぶ。パケットサイズは、例えば、5から16程度である。
そして、ドプラ処理回路140は、このパケットに対して組織からの信号(クラッタ信号とも呼ばれる)を抑圧するウォールフィルタを掛けて、血流からの信号(血流信号)を抽出する。そして、ドプラ処理回路140は、最新フレームの血流信号の反射波データ(IQ信号)と、最新フレームよりも1つ前のフレームの血流信号の反射波データとの複素共役をとることで自己相関値(自己相関係数)を算出する自己相関処理を実行する。例えば、ドプラ処理回路140は、自己相関値C0(ラグ0)及び自己相関値C1(ラグ1)を算出する。ドプラ処理回路140は、自己相関値を算出する自己相関処理を実行することにより、複数の血流信号(複素信号)を一つの複素信号にまとめる。そして、ドプラ処理回路140は、算出した自己相関値から、パワー、平均速度及び分散を算出する。例えば、ドプラ処理回路140は、2つの自己相関値ラグ0及びラグ1に基づいて、パワー、平均速度及び分散を算出する。そして、ドプラ処理回路140は、平均速度、分散及びパワーのうち少なくとも1つを示すドプラデータを出力する。ドプラ処理回路140は、例えば、プロセッサにより実現される。
Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。
画像生成回路150は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140が出力したデータから超音波画像データを生成する。画像生成回路150は、プロセッサにより実現される。ここで、画像生成回路150は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。例えば、画像生成回路150は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路150は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路150は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
更に、画像生成回路150は、Bモード処理回路130により生成された3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路150は、ドプラ処理回路140により生成された3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成回路150は、「3次元のBモード画像データ及び3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。そして、画像生成回路150は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対して様々なレンダリング処理を行なう。画像生成回路150は、生成部の一例である。
Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路150が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
画像メモリ160は、画像生成回路150により生成された各種の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ160は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140により生成されたデータも記憶する。画像メモリ160が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路150を経由して表示用の超音波画像データとなる。また、画像メモリ160は、受信回路120が出力した反射波データも記憶する。画像メモリ160に記憶される反射波データは、フィルタ処理回路190がフィルタ処理を行う際に用いられる。また、画像メモリ160は、フィルタ処理回路190が出力した、フィルタ処理が施された反射波データを記憶することも可能である。例えば、画像メモリ160は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
記憶回路170は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路170は、必要に応じて、画像メモリ160が記憶するデータの保管等にも使用される。例えば、記憶回路170は、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
制御回路180は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御回路180は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路170から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送信回路110、受信回路120、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140、画像生成回路150及びフィルタ処理回路190の処理を制御する。また、制御回路180は、画像メモリ160に記憶された表示用の超音波画像データにより示される超音波画像を表示するようにディスプレイ103を制御する。制御回路180は、例えば、プロセッサにより実現される。超音波画像は、画像の一例である。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、若しくは、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路170に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路170にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。ここで、1フレーム分の超音波画像データを得るために、音場が異なる超音波を複数回送信し、並列同時受信を複数回行う場合について説明する。この場合には、超音波画像データにより示される超音波画像において、互いに隣り合う2つの超音波の音場の境界に対応する部分でスジ状のアーティファクトが発生してしまう場合がある。この場合、超音波画像の画質が劣化してしまう。そこで、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波画像の画質の劣化を抑制するために、以下で説明するように構成されている。
図3は、第1の実施形態に係るフィルタ処理回路190の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、フィルタ処理回路190は、特定機能190aと、重み決定機能190bと、重み付け加算機能190cとを備える。
ここで、例えば、図3に示すフィルタ処理回路190の構成要素である特定機能190a、重み決定機能190b及び重み付け加算機能190cが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路170に記憶されている。フィルタ処理回路190は、各プログラムを記憶回路170から読み出し、読みだした各プログラムを実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態のフィルタ処理回路190は、図3のフィルタ処理回路190内に示された各機能を有することとなる。
なお、本実施形態においては、単一のフィルタ処理回路190にて、各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
また、特定機能190a、重み決定機能190b、重み付け加算機能190c、Bモード処理回路130の機能、ドプラ処理回路140の機能、画像生成回路150の機能、及び、制御回路180の機能を実現させるためのプログラム(医用画像処理プログラム)を記憶回路170が記憶してもよい。そして、装置本体100が有する1つのプロセッサが医用画像処理プログラムを読み出し、読みだした医用画像処理プログラムを実行してもよい。
図4及び図5は、第1の実施形態に係るフィルタ処理回路190が実行するフィルタ処理の一例を説明するための図である。フィルタ処理回路190は、全ての反射波データのうち、反射波データ10_1_1〜10_1_4,10_M_5〜10_M_8以外の反射波データ(処理対象の反射波データ)に対してフィルタ処理を行う。具体的には、フィルタ処理回路190は、処理対象の反射波データに含まれるI信号及びQ信号のそれぞれに対してフィルタ処理を行う。
処理対象の反射波データのうち、図4には、フィルタ処理回路190により4つの反射波データ10_n_5〜10_n_8に対してフィルタ処理が行われる場合の一例が示されている。また、図5には、フィルタ処理回路190により4つの反射波データ10_(n+1)_1〜10_(n+1)_4に対してフィルタ処理が行われる場合の一例が示されている。
本実施形態では、フィルタ処理回路190は、フィルタ処理として、反射波データ10_k_iと、反射波データ10_k_iに対応する特定の反射波データとを重み付け加算する重み付け加算処理を行うことにより、1つの合成データ11_k_iを生成する。そして、フィルタ処理回路190は、フィルタ処理が施された反射波データ10_k_iとして、合成データ11_k_iをBモード処理回路130及びドプラ処理回路140に出力する。
まず、第1の実施形態に係る特定機能190aについて説明する。特定機能190aは、反射波データ10_k_iと合成される反射波データを特定する。例えば、特定機能190aは、反射波データ10_k_iと合成される反射波データとして、k回目の送信超音波以外の他の送信超音波に基づく複数の反射波データのうち、受信走査線の並び順で、反射波データ10_k_iに最も近い反射波データを特定する。
より具体的には、sを1以上7以下の整数とすると、特定機能190aは、反射波データ10_s_5〜10_s_8のそれぞれと合成される反射波データとして、反射波データ10_(s+1)_1を特定する。これは、反射波データ10_s_5〜10_s_8のそれぞれに対応する受信走査線50_s_5〜50_s_8(図示せず)のそれぞれに対して、受信走査線の並び順で、受信走査線50_(s+1)_1(図示せず)が最も近いからである。具体的には、反射波データ10_s_5〜10_s_8のそれぞれに対して、受信走査線の並び順で、s回目の送信超音波10_s以外の他の送信超音波の音場内に設定された複数の受信走査線のうち、反射波データ10_(s+1)_1に対応する受信走査線50_(s+1)_1(図示せず)が最も近いからである。
なお、特定機能190aは、反射波データ10_s_5〜10_s_8のそれぞれに最も近い反射波データを特定する際に、受信走査線50_s_5〜50_s_8のそれぞれと、s回目の送信超音波10_s以外の他の送信超音波の音場内に設定された全ての受信走査線との距離を計算しなくてもよい。例えば、特定機能190aは、送信超音波10_sの音場に音場が隣り合う2つの送信超音波10_(s−1),10_(s+1)のうち、受信走査線50_s_5〜50_s_8に近い送信超音波10_(s+1)を特定する。そして、特定機能190aは、受信走査線50_s_5〜50_s_8のそれぞれと、送信超音波10_(s+1)の音場内に設定された受信走査線50_(s+1)_1〜50_(s+1)_8のそれぞれとの距離を計算することで、反射波データを特定してもよい。
例えば、図4に示す場合には、特定機能190aは、反射波データ10_n_5〜10_n_8のそれぞれと合成される反射波データとして、反射波データ10_(n+1)_1を特定する。
また、rを2以上8以下の整数とすると、特定機能190aは、反射波データ10_r_1〜10_r_4と合成される反射波データとして、反射波データ10_(r−1)_8を特定する。これは、反射波データ10_r_1〜10_r_4のそれぞれに対応する受信走査線50_r_1〜50_r_4(図示せず)のそれぞれに対して、受信走査線の並び順で、受信走査線50_(r−1)_8(図示せず)が最も近いからである。具体的には、受信走査線50_r_1〜50_r_4(図示せず)のそれぞれに対して、r回目の送信超音波10_r以外の他の送信超音波の音場内に設定された複数の受信走査線のうち、反射波データ10_(r−1)_8に対応する受信走査線50_(r−1)_8が最も近いからである。
なお、特定機能190aは、反射波データ10_r_1〜10_r_4のそれぞれに最も近い反射波データを特定する際に、受信走査線50_r_1〜50_r_4のそれぞれと、r回目の送信超音波10_r以外の他の送信超音波の音場内に設定された全ての受信走査線との距離を計算しなくてもよい。例えば、特定機能190aは、送信超音波10_rの音場に音場が隣り合う2つの送信超音波10_(r−1),10_(r+1)のうち、受信走査線50_r_1〜50_r_4に近い送信超音波10_(r−1)を特定する。そして、特定機能190aは、受信走査線50_r_1〜50_r_8のそれぞれと、送信超音波10_(r−1)の音場内に設定された受信走査線50_(r−1)_1〜50_(r−1)_8のそれぞれとの距離を計算することで、反射波データを特定してもよい。
例えば、図5に示す場合には、特定機能190aは、反射波データ10_(n+1)_1〜10_(n+1)_4のそれぞれと合成される反射波データとして、反射波データ10_(n−1)_8を特定する。
なお、特定機能190aにより特定された反射波データは、特定の反射波データの一例である。
次に、重み決定機能190bについて説明する。重み決定機能190bは、重み付け加算に用いられる重みw1及び重みw2を決定する。重みw1は、フィルタ処理が行われる反射波データ10_k_iに対する重みである。重みw2は、特定機能190aにより特定された特定の反射波データに対する重みである。重みw1と重みw2との和(w1+w2)は、「1」となる。
重み決定機能190bは、フィルタ処理が行われる反射波データ10_k_i毎に、反射波データ10_k_iと、特定の反射波データとの間の距離に応じて、重みw1及び重みw2を決定する。ここでいう距離は、受信走査線の並び順で求められる。例えば、重み決定機能190bは、並び順が近いほど距離が近くなると判断する。そして、重み決定機能190bは、距離が近くなるほど重みw1が小さくなるように重みw1及び重みw2を決定する。
例えば、図4に示す場合、重み決定機能190bは、反射波データ10_n_8に対する重みw1として「0.6」を決定し、反射波データ10_(n+1)_1に対する重みw2として「0.4」を決定する。また、重み決定機能190bは、反射波データ10_n_7に対する重みw1として「0.7」を決定し、反射波データ10_(n+1)_1に対する重みw2として「0.3」を決定する。このように、反射波データ10_n_7に対する重みw1よりも、反射波データ10_n_8に対する重みw1のほうが小さいのは、次の理由による。すなわち、受信走査線の並び順において、反射波データ10_n_7に対応する受信走査線50_n_7(図示せず)よりも、反射波データ10_n_8に対応する受信走査線50_n_8(図示せず)のほうが、特定の反射波データ10_(n+1)_1に対応する受信走査線50_(n+1)_1(図示せず)に近いからである。
同様の理由で、重み決定機能190bは、反射波データ10_n_6に対する重みw1として「0.85」を決定し、反射波データ10_(n+1)_1に対する重みw2として「0.15」を決定する。また、重み決定機能190bは、反射波データ10_n_5に対する重みw1として「1.0」を決定し、反射波データ10_(n+1)_1に対する重みw2として「0」を決定する。
また、図5に示す場合、重み決定機能190bは、同様に、反射波データ10_(n+1)_1に対する重みw1として「0.6」を決定し、反射波データ10_n_8に対する重みw2として「0.4」を決定する。また、重み決定機能190bは、反射波データ10_(n+1)_2に対する重みw1として「0.7」を決定し、反射波データ10_n_8に対する重みw2として「0.3」を決定する。
また、重み決定機能190bは、反射波データ10_(n+1)_3に対する重みw1として「0.85」を決定し、反射波データ10_n_8に対する重みw2として「0.15」を決定する。また、重み決定機能190bは、反射波データ10_(n+1)_4に対する重みw1として「1.0」を決定し、反射波データ10_n_8に対する重みw2として「0」を決定する。
次に、重み付け加算機能190cについて説明する。重み付け加算機能190cは、処理対象の反射波データ10_k_i毎に、重み決定機能190bにより決定された重みw1及び重みw2を用いて、反射波データ10_k_iと、反射波データ10_k_iに対応する特定の反射波データとを重み付け加算する。具体的には、重み付け加算機能190cは、以下の式(1)に示すように、反射波データ10_k_iと、特定機能190aにより特定された反射波データとを重み付け加算することにより、合成データ11_k_iを生成する。
合成データ11_k_i=反射波データ10_k_i×w1+
特定された反射波データ×w2 (1)
例えば、図4に示す場合、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_8に重み「0.6」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_(n+1)_1に重み「0.4」を掛けることにより得られるデータとを合成(加算)することにより、合成データ11_n_8を生成する。
また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_7に重み「0.7」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_(n+1)_1に重み「0.3」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_n_7を生成する。また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_6に重み「0.85」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_(n+1)_1に重み「0.15」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_n_6を生成する。
また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_5に重み「1.0」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_(n+1)_1に重み「0」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_n_5を生成する。すなわち、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_5を合成データ11_n_5とする。
また、図5に示す場合、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_(n+1)_1に重み「0.6」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_n_8に重み「0.4」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_(n+1)_1を生成する。
また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_(n+1)_2に重み「0.7」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_n_8に重み「0.3」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_(n+1)_2を生成する。また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_(n+1)_3に重み「0.85」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_n_8に重み「0.15」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_(n+1)_3を生成する。
また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_(n+1)_4に重み「1.0」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_n_8に重み「0」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_(n+1)_4を生成する。すなわち、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_(n+1)_4を合成データ11_(n+1)_4とする。
フィルタ処理回路190は、上述したフィルタ処理を全ての処理対象の反射波データに対して行う。ここで、上述したようにpを2以上(M−1)以下の整数とすると、受信回路120及びフィルタ処理回路190により実行される処理は、以下のように一般化される。
まず、複数の反射波データ10_p_1〜10_p_8に対してフィルタ処理が行われる場合について説明する。この場合、例えば、受信回路120は、送信超音波10_pの送受信により、複数の受信走査線50_p_1〜50_p_8(図示せず)に対応する複数の反射波データ10_p_1〜10_p_8を出力する。また、受信回路120は、送信超音波10_(p−1)の送受信により、複数の受信走査線50_(p−1)_1〜50_(p−1)_8(図示せず)に対応する複数の反射波データ10_(p−1)_1〜10_(p−1)_8を出力する。また、受信回路120は、送信超音波10_(p+1)の送受信により、複数の受信走査線50_(p+1)_1〜50_(p+1)_8(図示せず)に対応する複数の反射波データ10_(p+1)_1〜10_(p+1)_8を出力する。
そして、フィルタ処理回路190は、複数の反射波データ10_p_1〜10_p_8のそれぞれに対して、特定の反射波データ10_(p−1)_8又は特定の反射波データ10_(p+1)_1を用いて、フィルタ処理を行う。
具体的には、まず、フィルタ処理回路190は、反射波データ10_p_1〜10_p_4のそれぞれに合成される反射波データを、次のようにして特定する。例えば、フィルタ処理回路190の特定機能190aは、複数の受信走査線50_(p−1)_1〜50_(p−1)_8(図示せず)のうち、反射波データ10_p_1〜10_p_4のそれぞれに対応する受信走査線50_p_1〜50_p_4のそれぞれに最も近い受信走査線50_(p−1)_8を特定する。そして、フィルタ処理回路190は、特定した受信走査線50_(p−1)_8に対応する反射波データ10_(p−1)_8を特定する。そして、フィルタ処理回路190は、複数の反射波データ10_p_1〜10_p_4のそれぞれに対して、特定の反射波データ10_(p−1)_8を用いて、フィルタ処理を行う。
また、フィルタ処理回路190は、反射波データ10_p_5〜10_p_8のそれぞれに合成する反射波データを、次のようにして特定する。例えば、フィルタ処理回路190は、複数の受信走査線50_(p+1)_1〜50_(p+1)_8(図示せず)のうち、反射波データ10_p_5〜10_p_8のそれぞれに対応する受信走査線50_p_5〜50_p_8のそれぞれに最も近い受信走査線50_(p+1)_1を特定する。そして、フィルタ処理回路190は、特定した受信走査線50_(p+1)_1に対応する反射波データ10_(p+1)_1を特定する。そして、フィルタ処理回路190は、複数の反射波データ10_p_5〜10_p_8のそれぞれに対して、特定の反射波データ10_(p+1)_1を用いて、フィルタ処理を行う。
ここで、送信超音波10_pは、第1の超音波の一例である。また、送信超音波10_(p−1)及び送信超音波10_(p+1)は、第2の超音波の一例である。また、複数の反射波データ10_p_1〜10_p_8のそれぞれは、第1の受信信号の一例である。また、複数の反射波データ10_(p−1)_1〜10_(p−1)_8,10_(p+1)_1〜10_(p+1)_8のそれぞれは、第2の受信信号の一例である。また、複数の受信走査線50_p_i(図示せず)のそれぞれは、第1の受信走査線の一例である。また、複数の受信走査線50_(p−1)_1〜50_(p−1)_8,50_(p+1)_1〜50_(p+1)_8のそれぞれは、第2の受信走査線の一例である。
次に、複数の反射波データ10_1_5〜10_1_8に対してフィルタ処理が行われる場合について説明する。この場合、受信回路120は、1回目の送信超音波10_1の送受信により、複数の受信走査線50_1_5〜50_1_8(図示せず)に対応する複数の反射波データ10_1_5〜10_1_8を出力する。また、受信回路120は、2回目の送信超音波10_2の送受信により、複数の受信走査線50_2_1〜50_2_8(図示せず)に対応する複数の反射波データ10_2_1〜10_2_8を出力する。
そして、フィルタ処理回路190は、反射波データ10_1_5〜10_1_8のそれぞれに合成される反射波データを、次のようにして特定する。例えば、フィルタ処理回路190は、複数の受信走査線50_2_1〜50_2_8(図示せず)のうち、反射波データ10_1_5〜10_1_8のそれぞれに対応する受信走査線50_1_5〜50_1_8のそれぞれに最も近い受信走査線50_2_1を特定する。そして、フィルタ処理回路190は、特定した受信走査線50_2_1に対応する反射波データ10_2_1を特定する。そして、フィルタ処理回路190は、反射波データ10_1_5〜10_1_8のそれぞれに対して、特定の反射波データ10_2_1を用いて、フィルタ処理を行う。
ここで、送信超音波10_1は、第1の超音波の一例である。また、送信超音波10_2は、第2の超音波の一例である。また、複数の反射波データ10_1_5〜10_1_8のそれぞれは、第1の受信信号の一例である。また、複数の反射波データ10_2_1〜10_2_8のそれぞれは、第2の受信信号の一例である。また、複数の受信走査線50_1_5〜50_1_8のそれぞれは、第1の受信走査線の一例である。また、複数の受信走査線50_2_1〜50_2_8のそれぞれは、第2の受信走査線の一例である。
次に、複数の反射波データ10_M_1〜10_M_4に対してフィルタ処理が行われる場合について説明する。受信回路120は、(M−1)回目の送信超音波10_(M−1)の送受信により、複数の受信走査線50_(M−1)_1〜50_(M−1)_8(図示せず)に対応する複数の反射波データ10_(M−1)_1〜10_(M−1)_8を出力する。また、受信回路120は、M回目の送信超音波10_Mの送受信により、複数の受信走査線50_M_1〜50_M_4(図示せず)に対応する複数の反射波データ10_M_1〜10_M_4を出力する。
そして、フィルタ処理回路190は、反射波データ10_M_1〜10_M_4のそれぞれに合成される反射波データを、次のようにして特定する。例えば、フィルタ処理回路190は、複数の受信走査線50_(M−1)_1〜50_(M−1)_8(図示せず)のうち、反射波データ10_M_1〜10_M_4のそれぞれに対応する受信走査線50_M_1〜50_M_4のそれぞれに最も近い受信走査線50_(M−1)_8を特定する。そして、フィルタ処理回路190は、特定した受信走査線50_(M−1)_8に対応する反射波データ10_(M−1)_8を特定する。そして、フィルタ処理回路190は、複数の反射波データ10_M_1〜10_M_4のそれぞれに対して、特定の反射波データ10_(M−1)_8を用いて、フィルタ処理を行う。
ここで、送信超音波10_Mは、第1の超音波の一例である。また、送信超音波10_(M−1)は、第2の超音波の一例である。また、複数の反射波データ10_M_1〜10_M_4は、第1の受信信号の一例である。また、複数の反射波データ10_(M−1)_1〜10_(M−1)_8のそれぞれは、第2の受信信号の一例である。また、複数の受信走査線50_M_1〜50_M_4のそれぞれは、第1の受信走査線の一例である。また、複数の受信走査線50_(M−1)_1〜50_(M−1)_8のそれぞれは、第2の受信走査線の一例である。
なお、フィルタ処理回路190は、1回目の送信超音波10_1に基づく複数の反射波データ10_1_1〜10_1_4のそれぞれに対してフィルタ処理を行わない。同様に、フィルタ処理回路190は、M回目の送信超音波10_Mに基づく複数の反射波データ10_M_5〜10_M_8のそれぞれに対してフィルタ処理を行わない。
図6は、フィルタ処理回路190に入力される人為的に作成された反射波データの信号強度(信号強度)を示すグラフである。図7は、図6のグラフにより示される反射波データに対してフィルタ処理回路190によりフィルタ処理が行われた結果の一例を示すグラフである。図8は、図6のグラフによって示される40個の反射波データから生成された超音波画像データが示す超音波画像20の一例を示す図である。図9は、図7のグラフによって示されるフィルタ処理が行われた40個の反射波データから生成された超音波画像データが示す超音波画像21の一例を示す図である。図6のグラフによって示される反射波データは、1フレーム分の超音波画像データを得るために行われる並列同時受信の回数が「5」であり、1回の並列同時受信において受信回路120により生成される反射波データの数が「8」である場合のデータである。したがって、反射波データの数は、「40(8×5)」となる。
図6のグラフは、段階関数(ステップ関数)で表される。図6のグラフでは、横軸は、各反射波データに対応する受信走査線の並び順を示し、縦軸は、各反射波データの信号強度を示す。以下の説明では、並び順がe(eは、1以上40以下の整数)番目の受信走査線に対応する反射波データを、「反射波データe」と表記する場合がある。
図6のグラフにより示されるように、1回目の送信超音波に基づく反射波データ1〜8の信号強度は、「1」を中心に最大±0.2のランダムノイズが付与されている。同様に、2回目の送信超音波に基づく反射波データ9〜16の信号強度は、「2」を中心に最大±0.2のランダムノイズが付与されている。3回目の送信超音波に基づく反射波データ17〜24の信号強度は、「3」を中心に最大±0.2のランダムノイズが付与されている。4回目の送信超音波に基づく反射波データ25〜32の信号強度は、「4」を中心に最大±0.2のランダムノイズが付与されている。5回目の送信超音波に基づく反射波データ33〜40の信号強度は、「1」を中心に最大±0.2のランダムノイズが付与されている。
図6のグラフでは、例えば、反射波データ8と反射波データ9、反射波データ16と反射波データ17、反射波データ24と反射波データ25、及び、反射波データ32と反射波データ33では、信号強度の差が大きい。このように、音場が隣り合う2つの送信超音波において、一方の送信超音波に基づく反射波データの信号強度と、他方の送信超音波に基づく反射波データの信号強度とが、2つの送信超音波の音場の境界で大きく異なる。このため、図8に示すように、図6のグラフによって示される40個の反射波データから生成された超音波画像データが示す超音波画像20では、隣り合う2つの超音波の音場の境界に対応する部分でスジ状のアーティファクトが発生してしまう場合がある。
フィルタ処理回路190により、図6のグラフにより示される反射波データに対してフィルタ処理が行われた結果の一例が、図7に示されている。図7のグラフにおいて、横軸は、フィルタ処理が行われた各反射波データに対応する受信走査線の並び順を示し、縦軸は、フィルタ処理が行われた各反射波データの信号強度を示す。図7のグラフでは、図6のグラフと比較すると、隣接する2つの受信走査線に対応する2つの反射波データの信号強度の差が小さい。したがって、図9に示すように、図7のグラフによって示されるフィルタ処理が行われた40個の反射波データから生成された超音波画像21は、スジ状のアーティファクトの発生が抑制された画像となる。なお、超音波画像21は、画像の一例である。
第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、超音波画像におけるスジ状のアーティファクトの発生を抑制することができる。これゆえ、第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、超音波画像の画質の劣化を抑制することができる。
図10は、第1の実施形態に係るフィルタ処理回路190が実行するフィルタ処理の流れの一例を示すフローチャートである。図10に示すフィルタ処理は、例えば、超音波診断装置1が、1フレーム分の超音波画像データを得るために複数回の並列同時受信を行う場合に、フィルタ処理回路190の各機能190a〜190cにより実行される。
図10に示すように、特定機能190aは、変数kに「1」を設定する(ステップS101)。そして、特定機能190aは、変数iに「1」を設定する(ステップS102)。そして、特定機能190aは、変数iの値が5以上であるか否かを判定する(ステップS103)。
変数iの値が「5」未満である場合(ステップS103:No)には、特定機能190aは、変数kの値が「2」以上であるか否かを判定する(ステップS104)。変数kの値が「2」未満である場合(ステップS104:No)には、特定機能190aは、反射波データ10_k_iを画像メモリ160に格納し(ステップS105)、ステップS110に進む。
変数kの値が「2」以上である場合(ステップS104:Yes)には、特定機能190aは、反射波データ10_k_iと合成される反射波データ10_(k−1)_8を特定する(ステップS106)。
そして、重み決定機能190bは、重みw1及び重みw2を決定する(ステップS107)。そして、重み付け加算機能190cは、重みw1及び重みw2を用いて、反射波データ10_k_iと反射波データ10_(k−1)_8とを重み付け加算することにより、合成データ11_k_iを生成する(ステップS108)。そして、重み付け加算機能190cは、合成データ11_k_iを画像メモリ160に格納する(ステップS109)。そして、特定機能190aは、変数iの値を1つインクリメントし(ステップS110)、ステップS103に戻る。
変数iの値が「5」以上である場合(ステップS103:Yes)には、特定機能190aは、変数kの値が「M」であるか否かを判定する(ステップS111)。変数kの値が「M」でない場合(ステップS111:No)には、特定機能190aは、反射波データ10_k_iと合成される反射波データ10_(k+1)_1を特定する(ステップS112)。
そして、重み決定機能190bは、重みw1及び重みw2を決定する(ステップS113)。そして、重み付け加算機能190cは、重みw1及び重みw2を用いて、反射波データ10_k_iと反射波データ10_(k+1)_1とを重み付け加算することにより、合成データ11_k_iを生成する(ステップS114)。そして、重み付け加算機能190cは、合成データ11_k_iを画像メモリ160に格納する(ステップS115)。そして、特定機能190aは、変数iの値が、「8」であるか否かを判定する(ステップS116)。
変数iの値が「8」でない場合(ステップS116:No)には、特定機能190aは、変数iの値を1つインクリメントし(ステップS117)、ステップS112に戻る。
一方、変数iの値が「8」である場合(ステップS116:Yes)には、特定機能190aは、変数kの値を1つインクリメントする(ステップS118)。そして、特定機能190aは、変数iに「1」を設定し(ステップS119)、ステップS103に戻る。
変数kの値が「M」である場合(ステップS111:Yes)、特定機能190aは、反射波データ10_k_iを画像メモリ160に格納する(ステップS120)。そして、特定機能190aは、変数iの値が「8」であるか否かを判定する(ステップS121)。変数iの値が「8」でない場合(ステップS121:No)、特定機能190aは、変数iの値を1つインクリメントし(ステップS122)、ステップS120に戻る。
変数iの値が「8」である場合(ステップS121:Yes)、特定機能190aは、フィルタ処理を終了する。
図10に示すステップS101〜S106,S110〜S112,S116〜S122は、特定機能190aに対応するステップである。ステップS101〜S106,S110〜S112,S116〜S122は、フィルタ処理回路190が記憶回路170から特定機能190aに対応するプログラムを呼び出し実行することにより、特定機能190aが実現されるステップである。
ステップS107,S113は、重み決定機能190bに対応するステップである。ステップS107,S113は、フィルタ処理回路190が記憶回路170から重み決定機能190bに対応するプログラムを呼び出し実行することにより、重み決定機能190bが実現されるステップである。
ステップS108,S109,S114,S115は、重み付け加算機能190cに対応するステップである。ステップS108,S109,S114,S115は、フィルタ処理回路190が記憶回路170から重み付け加算機能190cに対応するプログラムを呼び出し実行することにより、重み付け加算機能190cが実現されるステップである。
ここで、フィルタ処理のステップS105,S109,S115,S120で画像メモリ160に格納された合計(8×M)個の反射波データ及び合成データは、フィルタ処理回路190から、Bモード処理回路130又はドプラ処理回路140を経由して画像生成回路150に入力される。そして、画像生成回路150は、Bモード処理回路130又はドプラ処理回路140を経由した合計(8×M)個の反射波データ及び合成データに基づいて、1フレーム分の超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成回路150は、フィルタ処理が行われた複数の反射波データに基づいて、超音波画像データを生成する。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1について説明した。第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、上述したように、超音波画像の画質の劣化を抑制することができる。
(第1の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例)
なお、上述した第1の実施形態では、フィルタ処理回路190が、反射波データ10_k_iに対してフィルタ処理を行う場合について説明した。しかしながら、フィルタ処理回路190は、他の種類のデータに対しても同様にフィルタ処理を行ってもよい。そこで、フィルタ処理回路190が、他の種類のデータに対しても同様にフィルタ処理を行う場合の2つの変形例を、第1の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例として説明する。
図11は、第1の実施形態の第1の変形例に係る超音波診断装置1aの構成例を示すブロック図である。第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、第1の変形例に係る超音波診断装置1aが、第1の実施形態に係る装置本体100に代えて第1の変形例に係る装置本体100aを有する。装置本体100aにおいて、フィルタ処理回路190は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140と、画像生成回路150との間に設けられる。
第1の変形例に係るフィルタ処理回路190は、Bモード処理回路130から出力されたBモードデータに対して、第1の実施形態と同様に、フィルタ処理を行う。また、フィルタ処理回路190は、ドプラ処理回路140から出力された、移動体の速度値、パワー値及び分散値の少なくとも1つを示すドプラデータに対して、第1の実施形態と同様に、フィルタ処理を行う。そして、フィルタ処理回路190は、フィルタ処理されたBモードデータ及びフィルタ処理されたドプラデータを画像生成回路150に出力する。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、受信信号の一例である。
また、Bモードデータは、包絡線検波処理が行われた反射波データに対して対数圧縮されたデータである。一般的に、ある対数に他の対数を加算する場合には、これらの対数における2つの真数の乗算となる。そのため、フィルタ処理において、このような対数圧縮されたデータを重み付け加算することは、重み付け乗算とも称される。
図12は、第1の実施形態の第2の変形例に係る超音波診断装置1bの構成例を示すブロック図である。第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図12に示すように、第2の変形例に係る超音波診断装置1bは、第1の実施形態に係る装置本体100に代えて第2の変形例に係る装置本体100bを有する。装置本体100bにおいて、ドプラ処理回路140は、第1の実施形態に係るドプラ処理回路140の機能に加えて、第1の実施形態に係るフィルタ処理回路190のフィルタ処理機能と同様のフィルタ処理機能140aを有する。ドプラ処理回路140は、フィルタ処理機能140aに対応するプログラムを記憶回路170から読み出し、読み出したプログラムを実行することにより、フィルタ処理機能140aを実現する。
第2の変形例では、フィルタ処理機能140aは、移動体の速度、パワー及び分散の少なくとも1つを示すドプラデータ、又は、自己相関処理後のデータである自己相関値(反射波データに対して自己相関処理が施されたデータ)に対して、第1の実施形態に係るフィルタ処理と同様のフィルタ処理を行う。なお、反射波データに対して自己相関処理が施されたデータは、受信信号の一例である。上述したドプラ処理回路140のように、同一方向(同一走査線上)に複数回超音波を送受信するため、送信走査線が移動する際の時間的なずれが大きく、かつ、1回の送信超音波による1回の並列同時受信内での受信信号の位相差よりも、音場が隣り合う2つの送信超音波による2回の並列同時受信間での受信信号の位相差が相対的に大きくなる場合に、第2の変形例によるフィルタ処理は好適である。
(第1の実施形態の第3の変形例)
また、第1の実施形態では、フィルタ処理回路190が、1つの特定の反射波データを用いて、1つの処理対象の反射波データに対してフィルタ処理を行う場合について説明した。しかしながら、フィルタ処理回路190は、複数の特定の反射波データを用いて、1つの処理対象の反射波データに対してフィルタ処理を行ってもよい。そこで、このような変形例を第1の実施形態に係る第3の変形例として説明する。
図13は、第1の実施形態の第3の変形例に係るフィルタ処理回路190が実行する処理の一例を説明するための図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図13に示すように、特定機能190aは、第1の実施形態と同様に、受信走査線の並び順で、反射波データ10_n_8に対応する受信走査線50_n_8(図示せず)に最も近い受信走査線50_(n+1)_1を特定する。そして、特定機能190aは、第1の実施形態と同様に、受信走査線50_(n+1)_1に対応する反射波データ10_(n+1)_1を特定する。
第3の変形例では、更に、特定機能190aは、受信走査線の並び順で、受信走査線50_n_8に2番目に近い受信走査線50_(n+1)_2を特定する。そして、特定機能190aは、受信走査線50_(n+1)_2に対応する反射波データ10_(n+1)_2を特定する。
同様に、特定機能190aは、反射波データ10_n_5〜10_n_7のそれぞれに合成される反射波データとして、2つの反射波データ10_(n+1)_1,10_(n+1)_2を特定する。
そして、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_5〜10_n_8のそれぞれに対して、2つの特定の反射波データ10_(n+1)_1,10_(n+1)_2を用いて、フィルタ処理を行う。
例えば、重み付け加算機能190cは、2つの特定の反射波データ10_(n+1)_1,10_(n+1)_2を重み付け加算することにより、1つの特定の反射波データ(合成反射データ)を生成する。そして、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_5〜10_n_8のそれぞれに対して、1つの特定の合成反射波データを用いて、フィルタ処理を行う。
(第1の実施形態の第4の変形例)
第1の実施形態では、jを1以上(M−1)以下の整数として、j回目の送信超音波の音場と(j+1)回目の送信超音波の音場とが互いに隣り合う場合について説明した。また、第1の実施形態では、受信走査線の間隔が等間隔である場合について説明した。しかしながら、j回目の送信超音波の音場と(j+1)回目の送信超音波の音場との一部が重なってもよい。また、受信走査線の間隔が等間隔でなくてもよい。そこで、このような変形例を第1の実施形態の第4の変形例として説明する。
図14は、第1の実施形態の第4の変形例に係るフィルタ処理回路190が実行する処理の一例を説明するための図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図14に示すように、反射波データ10_n_7に対応する受信走査線50_n_7(図示せず)と、反射波データ10_n_8に対応する受信走査線50_n_8(図示せず)との間隔が、第1の実施形態に係る受信走査線50_n_7と受信走査線50_n_8との間隔よりも広くなっている。
同様に、図14に示す反射波データ10_(n+1)_1に対応する受信走査線50_(n+1)_1(図示せず)と、反射波データ10_(n+1)_2に対応する受信走査線50_(n+1)_2(図示せず)との間隔が、第1の実施形態に係る受信走査線50_(n+1)_1と受信走査線50_(n+1)_2との間隔よりも広くなっている。
この結果、図14に示すn回目の送信超音波10_nの音場の一部と、n回目の送信超音波10_nの音場の一部と重なっている。
図14に示すような場合であっても、第4の変形例に係るフィルタ処理回路190は、第1の実施形態と同様に、処理対象の反射波データに対してフィルタ処理を行う。例えば、図14に示すように、特定機能190aは、反射波データ10_n_8に合成される反射波データとして、反射波データ10_(n+1)_2を特定する。また、特定機能190aは、反射波データ10_n_5〜10_n_7に合成される反射波データとして、反射波データ10_(n+1)_1を特定する。
そして、重み決定機能190bは、反射波データ10_n_8に対する重みw1として「0.6」を決定し、反射波データ10_(n+1)_2に対する重みw2として「0.4」を決定する。また、重み決定機能190bは、反射波データ10_n_7に対する重みw1として「0.7」を決定し、反射波データ10_(n+1)_1に対する重みw2として「0.3」を決定する。また、重み決定機能190bは、反射波データ10_n_6に対する重みw1として「0.85」を決定し、反射波データ10_(n+1)_1に対する重みw2として「0.15」を決定する。また、重み決定機能190bは、反射波データ10_n_5に対する重みw1として「1.0」を決定し、反射波データ10_(n+1)_1に対する重みw2として「0」を決定する。
そして、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_8に重み「0.6」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_(n+1)_2に重み「0.4」を掛けることにより得られるデータとを合成(加算)することにより、合成データ11_n_8を生成する。
また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_7に重み「0.7」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_(n+1)_1に重み「0.3」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_n_7を生成する。また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_6に重み「0.85」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_(n+1)_1に重み「0.15」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_n_6を生成する。
また、重み付け加算機能190cは、反射波データ10_n_5に重み「1.0」を掛けることにより得られるデータと、反射波データ10_(n+1)_1に重み「0」を掛けることにより得られるデータとを合成することにより、合成データ11_n_5を生成する。
第4の変形例によれば、2つの送信超音波の音場の一部が重なり、受信走査線の間隔が等間隔でなくても、フィルタ処理を行うことができる。
(第1の実施形態の第5の変形例及び第6の変形例)
上述した第1の実施形態では、フィルタ処理回路190が、処理対象の反射波データ毎に、受信走査線の並び順に基づいて、重みw1,w2を決定する場合について説明した。しかしながら、フィルタ処理回路190は、受信走査線の並び順以外の情報に基づいて重みw1,w2を決定してもよい。そこで、受信走査線の並び順以外の情報に基づいて重みw1,w2を決定する2つの変形例を第1の実施形態の第5の変形例及び第6の変形例として説明する。
図15は、第1の実施形態の第5の変形例に係るフィルタ処理回路190が実行する処理の一例を説明するための図である。図15には、処理対象の反射波データに対応する受信走査線30と、処理対象の反射波データと合成される特定の反射波データに対応する受信走査線31とが示されている。ここで、超音波プローブ101が、コンベックス型超音波プローブ又はセクタ型超音波プローブである場合、深さ(観測位置)が深くなるほど、受信走査線30と受信走査線31との実空間上での距離(間隔)が長くなる。例えば、図15に示すように、深さ32よりも深さ33の方が、受信走査線30と受信走査線31との実空間上での距離が長い。また、超音波プローブ101が、リニア型超音波プローブである場合、同じ走査範囲に設定する走査線の本数に応じて、実空間上での受信走査線間の距離(間隔)は変化する。
そこで、第5の変形例に係る重み決定機能190bは、実空間における処理対象の反射波データに対応する受信走査線30と、特定の反射波データに対応する受信走査線31との距離に基づいて、処理対象の反射波データ毎に、重みw1,w2を決定する。具体的には、重み決定機能190bは、距離が長くなるほど重みw1が大きくなるように、重みw1,w2を決定する。
例えば、図15に示すように、重み決定機能190bは、深さ32では、処理対象の反射波データに対する重みw1を「0.6」、特定の反射波データに対する重みw2を「0.4」に決定する。そして、重み決定機能190bは、深さ32よりも深い深さ33では、実空間における距離が変化するため、処理対象の反射波データに対する重みw1を「0.65」、特定の反射波データに対する重みw2を「0.35」に決定する。
第5の変形例によれば、重みw1,w2を決定する際に、実空間上での距離が加味されるので、より精度良く重みw1,w2を決定することができる。この結果、より一層、超音波画像の画質の劣化を抑制することができる。
図16は、第1の実施形態の第6の変形例に係るフィルタ処理回路190が実行する処理の一例を説明するための図である。図16には、処理対象の反射波データの受信位置40aおよび対応する送信感度分布40と、処理対象の反射波データと合成される特定の反射波データの受信位置41aおよび対応する送信感度分布41とが示されている。ここで、反射波データの受信位置とは受信回路120により生成される反射波データに対応する受信走査線の位置を示す。また、送信感度分布とは、反射波データを得る際に、送信回路110から供給される駆動信号に基づき発生させた超音波の送信音場に基づく送信感度の分布のことを指す。通常、送信音場に基づき送信感度を、受信音場に基づき受信感度を求めることができ、それらの畳み込みにより送受信感度を求めることが出来る。ただし、ここでは簡単のため、受信音場は受信位置によらず一定であり、送受信感度は送信感度分布と受信位置に応じて変化するものとして示す。
図16に示す横軸は、方位方向における各受信走査線の位置を示し、縦軸は、送受信感度を示す。図16には、処理対象の反射波データ(受信位置40aに対応する反射波データ)の送受信感度が「1000」であり、処理対象の反射波データと合成される特定の反射波データ(受信位置41aに対応する反射波データ)の送受信感度が「200」である場合が示されている。
第6の変形例では、重み決定機能190bは、スジ状のアーティファクトの発生を抑制するために、相対的に送受信感度が低いほうの反射波データに対する重みを引き上げる。例えば、図16に示す場合、重み決定機能190bは、送受信走査線の並び順で決定した重みw1(0.6),w2(0.4)を次のように修正する。例えば、重み決定機能190bは、スジ状のアーティファクトの発生を抑制するために、相対的に送受信感度が低いほうの反射波データである特定の反射波データに対する重みw2を「0.4」から「0.45」に引き上げる。これに伴い、重み決定機能190bは、重みw1を「0.6」から「0.55」に引き下げる。
このように、第6の変形例に係る重み決定機能190bは、処理対象の反射波データの送受信感度と、特定の反射波データの送受信感度とに基づいて、処理対象の反射波データ毎に、重み付け加算処理に用いる重みw1,w2を決定する。
したがって、第6の変形例によれば、重みw1,w2を決定する際に、送受信感度が加味されるので、より精度良く重みw1,w2を決定することができる。この結果、より一層、超音波画像の画質の劣化を抑制することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図17は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置300の構成の一例を示す図である。図17に示すように、医用画像処理装置300は、ネットワーク500を介して、超音波診断装置200及び画像保管装置400に接続される。なお、図1に示す構成はあくまでも一例であり、図示する超音波診断装置200、画像保管装置400及び医用画像処理装置300以外にも、端末装置などの種々の装置がネットワーク500に接続されてもよい。
超音波診断装置200は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1と同様に、1フレーム分の超音波画像データを得るために、並列同時受信を複数回行う。そして、超音波診断装置200は、並列同時受信を複数回行うことにより得られた複数の反射波データを画像保管装置400及び医用画像処理装置300に送信する。
画像保管装置400は、超音波診断装置200によって収集された複数の反射波データを保管する。例えば、画像保管装置400は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。画像保管装置400は、ネットワーク500を介して超音波診断装置200から複数の反射波データを取得し、取得した複数の反射波データを装置内又は装置外に設けられたハードディスク又は光ディスク等のメモリに記憶させる。また、画像保管装置400は、医用画像処理装置300からの要求に応じて、メモリに記憶させた反射波データを医用画像処理装置300に送信する。
医用画像処理装置300は、ネットワーク500を介して超音波診断装置200及び画像保管装置400から複数の反射波データを取得し、取得した複数の反射波データを処理する。例えば、医用画像処理装置300は、超音波診断装置200又は画像保管装置400から複数の反射波データを取得し、取得した複数の反射波データを後述するメモリ320に格納し、メモリ320に記憶された複数の反射波データに対して各種処理を行う。そして、医用画像処理装置300は、処理後の画像(例えば表示用の超音波画像)等を後述するディスプレイ340に表示させる。
図1に示すように、医用画像処理装置300は、通信インターフェース310と、メモリ320と、入力装置330と、ディスプレイ340と、処理回路350とを有する。
通信インターフェース310は、処理回路350に接続され、ネットワーク500を介して接続された超音波診断装置200及び画像保管装置400との間で行われる各種データの伝送、及び、超音波診断装置200及び画像保管装置400との間で行われる通信を制御する。例えば、通信インターフェース310は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。例えば、通信インターフェース310は、超音波診断装置200又は画像保管装置400から複数の反射波データを受信し、受信した反射波データを処理回路350に出力する。
メモリ320は、処理回路350に接続され、各種データを記憶する。例えば、メモリ320は、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。本実施形態では、メモリ320は、超音波診断装置200又は画像保管装置400から受信した複数の反射波データを記憶する。具体的には、メモリ320は、超音波プローブ101による1回の超音波の送受信毎に得られた複数の反射波データを複数の超音波の送受信分だけ記憶する。例えば、メモリ320は、M回の並列同時受信により得られた複数の反射波データを記憶する。
また、メモリ320は、処理回路350の処理に用いられる種々の情報や、処理回路350による処理結果等を記憶する。例えば、メモリ320は、処理回路350によって生成された表示用の画像データ等を記憶する。
入力装置330は、処理回路350に接続され、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路350に出力する。例えば、入力装置330は、種々の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力装置、又は、音声入力装置によって実現される。
ディスプレイ340は、処理回路350に接続され、処理回路350から出力される各種情報及び各種画像を表示する。例えば、ディスプレイ340は、液晶モニタやCRTモニタ等によって実現される。例えば、ディスプレイ340は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや、種々の表示用の画像、処理回路350による種々の処理結果を表示する。ディスプレイ340は、表示部の一例である。
処理回路350は、入力装置330を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置300が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路350は、プロセッサによって実現される。本実施形態では、処理回路350は、通信インターフェース310から出力された複数の反射波データを、複数の超音波の送受信分だけメモリ320に記憶させる。また、処理回路350は、画像生成機能353により生成された表示用の超音波画像データにより示される表示用の超音波画像を表示するようにディスプレイ340を制御する。
図17に示すように、処理回路350は、フィルタ処理機能351と、信号処理機能352と、画像生成機能353とを有する。ここで、例えば、図17に示す処理回路350の構成要素であるフィルタ処理機能351、信号処理機能352及び画像生成機能353の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ320に記憶されている。処理回路350は、各プログラムをメモリ320から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路350は、図17の処理回路350内に示された各機能を有することとなる。
なお、フィルタ処理機能351、信号処理機能352及び画像生成機能353の全ての処理機能がコンピュータによって実行可能な1つのプログラムの形態で、メモリ320に記憶されていてもよい。例えば、このようなプログラムは、医用画像処理プログラムとも称される。この場合、処理回路350は、医用画像処理プログラムをメモリ320から読み出し、読み出した医用画像処理プログラムを実行することで医用画像処理プログラムに対応するフィルタ処理機能351、信号処理機能352及び画像生成機能353を実現する。
フィルタ処理機能351は、図3に示すフィルタ処理回路190の特定機能190a、重み決定機能190b及び重み付け加算機能190cに対応する。フィルタ処理機能351は、メモリ320に記憶されている反射波データを用いて、第1の実施形態に係るフィルタ処理回路190と同様の処理を行う。フィルタ処理機能351は、フィルタ処理部の一例である。
信号処理機能352は、図1に示すBモード処理回路130の機能及びドプラ処理回路140の機能と同様の機能を有する。例えば、信号処理機能352は、フィルタ処理機能351によりフィルタ処理された反射波データに対して、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140と同様の処理を行う。
画像生成機能353は、図1に示す画像生成回路150の機能と同様の機能を有する。例えば、画像生成機能353は、信号処理機能352から出力されたデータから、表示用の超音波画像データを生成する。画像生成機能353は、生成部の一例である。
以上、第2の実施形態に係る医用画像処理装置300について説明した。第2の実施形態に係る医用画像処理装置300によれば、第1の実施形態に係る超音波診断装置1と同様に、超音波画像の画質の劣化を抑制することができる。
以上述べた少なくとも1つの実施形態又は変形例によれば、超音波画像の画質の劣化を抑制することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。