JP2019172724A - エレクトロクロミックポリマー、エレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミック表示素子 - Google Patents

エレクトロクロミックポリマー、エレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミック表示素子 Download PDF

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健一 石塚
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Abstract

【課題】高い発消色繰り返し耐久性と良好なメモリー性を有し、素子の透明性を担保可能なエレクトロクロミック化合物を提供する。【解決手段】少なくとも1つのN−フェニルフェノチアジンを有する構造単位を含むポリマーを含有する、エレクトロクロミック材料を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、エレクトロクロミックポリマー、エレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミック表示素子に関する。
電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。前記エレクトロクロミズムを示すエレクトロクロミック材料は、一般的に対向する2つの電極間に形成されており、イオン伝導可能な電解質層が電極間に満たされた構成において酸化還元反応する。前記対向する2つの電極のうちの一方の近傍で還元反応が起こる場合、他方の電極の近傍では、逆反応である酸化反応が起こる。
すなわち、エレクトロクロミック材料を用いたデバイスにおいて、電圧印加により両極での発色が起こり、色彩、光学濃度に変化を与える。
前記エレクトロクロミック材料を用いたエレクトロクロミック表示素子において、透明な表示デバイスを作成する場合、またフルカラー表示のため、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の3層の発色層を積層させた構成のデバイスを作成する場合、消色状態にて無色透明の材料により構成されていることが必要である。
前記エレクトロクロミック材料としては、中性状態が無色透明状態であり、酸化状態で発色するエレクトロクロミック現象を示すフェノチアジン化合物が利用されている。
デバイスの発色層として前記フェノチアジン化合物を用いる場合、エレクトロクロミック化合物の担持粒子として、酸化チタンもしくは酸化スズ粒子を用いることで、高い光学的濃度や高コントラスト比を実現できることが報告されている。(例えば、非特許文献1参照)
また、前記フェノチアジン化合物を含むポリマー電解質を用いたエレクトロクロミック表示素子が提案されている(例えば、非特許文献2参照)
J. Phys. Chem. B 2000, 104, 11449-11459 Displays 2010, 31, 150-154
しかしながら、前記非特許文献1に開示された、従来のフェノチアジン化合物は、エレクトロクロミック表示素子中に、少なくとも担持粒子の使用が必要となる。担持粒子の光散乱は、透明性の低下、すなわちヘイズ値を増大させることが考えられ、透明性が必須となる透明な表示デバイスへの適用が困難である。
また、前記非特許文献2においては、フェノチアジン化合物を電解質に溶解させるため、使用溶媒が限られる。さらに、フェノチアジン化合物は、電極表面に固定化されていないため電荷保持できず、発色維持が困難である。このメモリー性は、素子の大面積化に伴い、消費電力に大きく影響するため、メモリー性は担保すべき重要な特性の一つとして挙げられる。
さらに、上記課題が、簡便なプロセスを用いて製造されたエレクトロクロミック表示素子において実現できるのがより好ましい。
そこで、本発明者は、特定の構造すなわち、フェノチアジン構造に着目し、エレクトロクロミック現象により、従来化合物と同等の電気的耐久性を有し、さらに透明性に優れ、かつ種々の色彩を得ることができる材料を鋭意検討した。
すなわち、本発明は高い発消色繰り返し耐久性と良好なメモリー性を有し、素子の透明性を担保できるエレクトロクロミック材料を提供する。
本発明者らは、フェノチアジン構造を有するエレクトロクロミック化合物について鋭意検討した結果、少なくとも、少なくとも1つのN−フェニルフェノチアジン構造単位を含むエレクトロクロミックポリマーが高い発消色繰り返し耐久性と良好なメモリー性を有し、素子の透明性を担保できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の一実施形態は、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を含む構造単位を少なくとも1つ有するエレクトロクロミックポリマーを提供する。
本発明の上記エレクトロクロミックポリマーは、重合性官能基をさらに有するものであってもよい。
本発明の別の実施形態は、上記エレクトロクロミックポリマーを少なくとも1つ含むエレクトロクロミック材料を提供する。
本発明のさらに別の実施形態は、
上記エレクトロクロミック材料と、
上記エレクトロクロミック材料とは異なる他の重合性化合物
とを含む、エレクトロクロミック組成物を提供する。
本発明のさらにまた別の実施形態は、
第一の電極と、
第二の電極と、
前記第一の電極及び前記第二の電極の間に充填されている電解質と、
前記第一の電極上であって前記第二の電極側に位置する、上記エレクトロクロミックポリマー、上記エレクトロクロミック材料、及び上記エレクトロクロミック組成物からなる群より選択される1つ以上を含むエレクトロクロミック層
とを有する、エレクトロクロミック表示素子を提供する。
本発明の実施形態によれば、高い発消色性繰り返し耐久性と良好なメモリー性を有し、素子の透明性を担保できるエレクトロクロミック材料を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<エレクトロクロミックポリマー>
本発明の実施形態であるエレクトロクロミックポリマーは、少なくとも1つのN−フェニルフェノチアジン構造を含む。
上記エレクトロクロミックポリマーは、高い発消色性繰り返し耐久性と良好なメモリー性を有するため、該ポリマーを使用することによって、駆動安定性に優れたエレクトロクロミック表示素子を提供できる。エレクトロクロミック材料は、上記エレクトロクロミックポリマーに加え、さらに他のエレクトロクロミックポリマーを含んでもよい。
本発明におけるエレクトロクロミックポリマーは、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよい。上記分岐構造は、例えば3方向以上に分岐した構造であってもよい。分子量の制御が容易である観点では、直鎖状のポリマーが好ましく、耐熱性が高い観点では、3方向以上に分岐した構造を有していることが好ましい。本発明におけるエレクトロクロミックポリマーは、1価の構造単位T、2価の構造単位L、及び3価以上の構造単位Bのいずれか1つ以上を含み得る。上記直鎖状のエレクトロクロミックポリマーは、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する2価の構造単位L1を含んでいればよく、他の2価の構造単位L2を含んでいてもよい。上記3方向以上に分岐した構造を有するエレクトロクロミックポリマーは、前記置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する2価の構造単位L1を含むものであっても、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する3価以上の構造単位B1を含むものであってもよい。置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する3価以上の構造単位B1を含む場合は、末端部を構成する1価の構造単位Tを少なくとも含み、さらに2価の構造単位Lを含んでもよい。好ましくは、上記特定のエレクトロクロミックポリマーは、少なくとも、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する構造単位を含む3価以上の構造単位B1と、2価の構造単位Lと、1価の構造単位Tとを含む。本発明におけるエレクトロクロミックポリマーにおいて、N−フェニルフェノチアジンを有する構造単位が、それぞれ構造単位B1、L1、及びT1として、構造単位B、L、及びTの少なくとも1つに含まれる。
エレクトロクロミックポリマーは、各構造単位を、それぞれ1種のみ含んでいても、又は、それぞれ複数種含んでいてもよい。エレクトロクロミックポリマーにおいて、各構造単位は、「1価」〜「3価以上」の結合部位において互いに結合している。
上述のように、エレクトロクロミック材料は、上記エレクトロクロミックポリマーに加え、さらに他のエレクトロクロミックポリマーを含んでもよい。上記他のエレクトロクロミックポリマーは、直鎖状であっても、又は、分岐構造を有していてもよい。上記他のエレクトロクロミックポリマーは、好ましくは、電荷輸送性を有する2価の構造単位L2と末端部を構成する1価の構造単位T2とを少なくとも含み、分岐部を構成する3価以上の構造単位B2を更に含んでもよい。
(構造)
上記3方向以上に分岐した構造を有するエレクトロクロミックポリマーに含まれる部分構造の例として、以下が挙げられる。上記エレクトロクロミックポリマーは以下の部分構造を有するポリマーに限定されない。下記部分構造中、「B」は構造単位Bを、「L」は構造単位Lを、「T」は構造単位Tをそれぞれ表す。「*」は、他の構造単位との結合部位を表す。下記部分構造中、複数のLは、互いに同一の構造単位であってもよいし、互いに異なる構造単位であってもよい。「T」及び「B」についても、同様である。
直鎖状のエレクトロクロミックポリマー
Figure 2019172724

分岐構造を有するエレクトロクロミックポリマー
Figure 2019172724
以下、各構造単位について、より具体的に説明する。
(構造単位B)
構造単位Bは、分岐部を構成する3価以上の構造単位である。構造単位Bは、エレクトロクロミック表示素子の耐久性向上の観点から、好ましくは6価以下であり、より好ましくは3価又は4価である。構造単位Bは、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する3価以上の構造単位B1、及び上記置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有しない3価以上の構造単位B2を含む。
(構造単位B1)
本発明の実施形態であるエレクトロクロミック材料に用いられるエレクトロクロミックポリマーは、先に示した分岐部を構成する3価以上の構造単位Bを任意に含んでよいが、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する3価以上の構造単位B1を含んでいてもよい。
上記N−フェニルフェノチアジン構造とは、フェノチアジンの窒素原子上の水素部位がフェニル基で置換された構造を意味する。上記窒素原子に結合したフェニル基は、置換基又は連結基を有してよく、置換基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。また、フェノチアジン構造を構成する芳香環も、置換基又は連結基を有してよい。
エレクトロクロミックポリマーが分子内に置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する3価以上の構造単位B1を含む場合、エレクトロクロミック表示素子の繰り返し耐久性及びメモリー性を向上させることが容易となる。詳細は不明であるが、分子内に上記N−フェニルフェノチアジン構造を含むエレクトロクロミックポリマーが、安定性に優れることに起因すると考えられる。
上記構造単位B1の具体例として、以下が挙げられる。構造単位B1は、以下に限定されない。
Figure 2019172724
(構造単位B2)
本発明の実施形態であるエレクトロクロミック材料に用いられるエレクトロクロミックポリマーは、先に示した分岐部を構成する3価以上の構造単位Bを任意に含んでよいが、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有しない3価以上の構造単位B2を含んでいてもよい。例えば、構造単位B2は、エレクトロクロミック表示素子の耐久性向上の観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、縮合多環式芳香族炭化水素構造、及び、これらの1種又は2種以上を含有する構造から選択される。
構造単位B2の具体例として、以下が挙げられる。構造単位B2は、以下に限定されない。
Figure 2019172724
Wは、3価の連結基を表し、例えば、炭素数2〜30個のアレーントリイル基又はヘテロアレーントリイル基を表す。アレーントリイル基は、芳香族炭化水素から水素原子3個を除いた原子団である。ヘテロアレーントリイル基は、芳香族複素環から水素原子3個を除いた原子団である。Arは、それぞれ独立に2価の連結基を表し、例えば、それぞれ独立に、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Arは、好ましくはアリーレン基、より好ましくはフェニレン基である。Yは、2価の連結基を表し、例えば、構造単位LにおけるR(ただし、重合性官能基を含む基を除く。)のうち水素原子を1個以上有する基から、更に1個の水素原子を除いた2価の基が挙げられる。Zは、炭素原子、ケイ素原子、又はリン原子のいずれかを表す。
上記構造単位中、ベンゼン環及びArは、1以上の置換基Rを有していてもよい。置換基Rは、それぞれ独立に、−R、−OR、−SR、−OCOR、−COOR、−SiR、ハロゲン原子、及び、後述する重合性官能基を含む基からなる群から選択される。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基;又は、炭素数2〜30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す(但し、Rが水素原子となる場合は除く)。
アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。アルキル基は、更に、炭素数2〜20個のアリール基又はヘテロアリール基により置換されていてもよく、アリール基又はヘテロアリール基は、更に、炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基により置換されていてもよい。
Rは、好ましくは、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基である。
芳香族炭化水素としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。芳香族複素環としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。
(構造単位L)
構造単位Lは、2価の構造単位である。構造単位Lは、電荷を輸送する能力を有する原子団を含んでいればよく、特に限定されない。構造単位Lは、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する2価の構造単位L1、及び上記置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有しない2価の構造単位L2を含む。
(構造単位L1)
本発明の実施形態であるエレクトロクロミック材料に用いられるエレクトロクロミックポリマーは、先に示した2価の構造単位Lを任意に含んでよいが、一実施形態において、少なくとも、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する2価の構造単位L1を含み得る。
エレクトロクロミックポリマーが分子内に上記構造単位L1を含む場合、エレクトロクロミック表示素子の繰り返し耐久性、メモリー性を向上させることが容易となる。詳細は不明であるが、N−フェニルフェノチアジン構造を導入した場合、ポリマーの安定性が向上するためと考えられる。
上記構造単位L1の好ましい具体例として、以下が挙げられる。構造単位L1は、以下に限定されない。
Figure 2019172724
(構造単位L2)
本発明の実施形態であるエレクトロクロミック材料に用いられるエレクトロクロミックポリマーは、先に示した2価の構造単位Lを任意に含んでよいが、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有しない2価の構造単位L2を含んでいてもよい。構造単位L2は、電荷を輸送する能力や共役長を伸長する原子団を含んでいてもよく、特に限定されない。例えば、構造単位L2は、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ビフェニル構造、ターフェニル構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、フェナントレン構造、ジヒドロフェナントレン構造、ピリジン構造、ピラジン構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造、ジアザフェナントレン構造、フラン構造、ピロール構造、オキサゾール構造、オキサジアゾール構造、チアゾール構造、チアジアゾール構造、トリアゾール構造、ベンゾチオフェン構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾオキサジアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、ベンゾチアジアゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。
一実施形態において、構造単位L2は、優れた耐久性を得る観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましく、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることがより好ましい。ここで、芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。
構造単位L2の具体例として、以下が挙げられる。構造単位L2は、以下に限定されない。
Figure 2019172724
Figure 2019172724
Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、−R、−OR、−SR、−OCOR、−COOR、−SiR、ハロゲン原子、及び、後述する重合性官能基を含む基からなる群から選択される。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基;又は、炭素数2〜30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す。アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。アルキル基は、更に、炭素数2〜20個のアリール基又はヘテロアリール基により置換されていてもよく、アリール基又はヘテロアリール基は、更に、炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基により置換されていてもよい。Rは、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基である。Arは、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた原子団である。ヘテロアリーレン基は、芳香族複素環から水素原子2個を除いた原子団である。Arは、好ましくはアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
芳香族炭化水素としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。芳香族複素環としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。
(構造単位T)
構造単位Tは、エレクトロクロミックポリマーの末端部を構成する1価の構造単位である。構造単位Tは、特に限定されない。構造単位Tは、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する1価の構造単位T1、及び上記置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有しない1価の構造単位T2を含む。
(構造単位T1)
本発明の実施形態であるエレクトロクロミック材料に用いられるエレクトロクロミックポリマーは、先に示した1価の構造単位Tを任意に含んでよいが、一実施形態において、少なくとも1つの置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する1価の構造単位T1を含む。
上記構造単位T1の好ましい具体例として、以下が挙げられる。構造単位T1は、以下に限定されない。
Figure 2019172724
(構造単位T2)
本発明の実施形態であるエレクトロクロミック材料に用いられるエレクトロクロミックポリマーは、先に示した1価の構造単位Lを任意に含んでよいが、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有しない1価の構造単位T2を含んでいてもよい。構造単位T2は、例えば、置換又は非置換の、芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。構造単位T2は構造単位L2と同じ構造を有していてもよい。一実施形態において、構造単位T2は、エレクトロクロミック特性を低下させずに耐久性を付与するという観点から、置換又は非置換の芳香族炭化水素構造であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン構造であることがより好ましい。また、他の実施形態において、後述するように、エレクトロクロミックポリマーが末端部に重合性官能基を有する場合、構造単位T2は重合可能な構造(例えば、ピロール−イル基等の重合性官能基)であってもよい。
構造単位T2の具体例として、以下が挙げられる。構造単位T2は、以下に限定されない。
Figure 2019172724
Rは、構造単位L2におけるRと同様である。エレクトロクロミックポリマーが末端部に重合性官能基を有する場合、好ましくは、Rのいずれか少なくとも1つが、重合性官能基を含む基である。
(重合性官能基)
一実施形態において、重合反応により硬化させ、素子中での安定性を向上させる観点から、エレクトロクロミックポリマーは、重合性官能基を少なくとも1つ有することが好ましい。「重合性官能基」とは、熱及び/又は光を加えることにより、互いに結合を形成し得る官能基をいう。
重合性官能基としては、炭素−炭素多重結合を有する基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エチニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミノ基、ビニルオキシ基、ビニルアミノ基等)、小員環を有する基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基等の環状アルキル基;エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)等の環状エーテル基;ジケテン基;エピスルフィド基;ラクトン基;ラクタム基等)、複素環基(例えば、フラン−イル基、ピロール−イル基、チオフェン−イル基、シロール−イル基)などが挙げられる。重合性官能基としては、特に、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタン基が好ましく、反応性及び有機エレクトロニクス素子の特性の観点から、ビニル基、オキセタン基、又はエポキシ基がより好ましい。
重合性官能基の自由度を上げ、重合反応を生じさせやすくする観点からは、エレクトロクロミックポリマーの主骨格と重合性官能基とが、アルキレン鎖で連結されていることが好ましい。また、例えば、電極上に有機層を形成する場合、ITO等の親水性電極との親和性を向上させる観点からは、エチレングリコール鎖、ジエチレングリコール鎖等の親水性の鎖で連結されていることが好ましい。さらに、重合性官能基を導入するために用いられるモノマーの調製が容易になる観点からは、エレクトロクロミックポリマーは、アルキレン鎖及び/又は親水性の鎖の末端部、すなわち、これらの鎖と重合性官能基との連結部、及び/又は、これらの鎖とエレクトロクロミックポリマーの骨格との連結部に、エーテル結合又はエステル結合を有していてもよい。前述の「重合性官能基を含む基」とは、重合性官能基それ自体、又は、重合性官能基とアルキレン鎖等とを合わせた基を意味する。重合性官能基を含む基として、例えば、国際公開第WO2010/140553号に例示された基を好適に用いることができる。
重合性官能基は、エレクトロクロミックポリマーの末端部(すなわち、構造単位T)に導入されていても、末端部以外の部分(すなわち、構造単位L又はB)に導入されていても、末端部と末端以外との部分の両方に導入されていてもよい。重合性官能基は、硬化性の観点からは、少なくとも末端部に導入されていることが好ましく、硬化性及びエレクトロクロミック特性の両立を図る観点からは、末端部のみに導入されていることが好ましい。また、エレクトロクロミックポリマーが分岐構造を有する場合、重合性官能基は、エレクトロクロミックポリマーの主鎖に導入されていても、側鎖に導入されていてもよく、主鎖と側鎖との両方に導入されていてもよい。
重合性官能基は、硬化率に寄与する観点からは、エレクトロクロミックポリマー中に多く含まれる方が好ましい。一方、エレクトロクロミック特性を妨げない観点からは、エレクトロクロミックポリマー中に含まれる量が少ない方が好ましい。重合性官能基の含有量は、これらを考慮し、適宜設定できる。
例えば、エレクトロクロミックポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、十分な溶解度の変化を得る観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、重合性官能基数は、エレクトロクロミック特性を保つ観点から、1,000個以下が好ましく、500個以下がより好ましい。
エレクトロクロミックポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、エレクトロクロミックポリマーを合成するために使用した、重合性官能基の仕込み量(例えば、重合性官能基を有するモノマーの仕込み量)、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量、エレクトロクロミックポリマーの重量平均分子量等を用い、平均値として求めることができる。また、重合性官能基の数は、エレクトロクロミックポリマーのH NMR(核磁気共鳴)スペクトルにおける重合性官能基に由来するシグナルの積分値と全スペクトルの積分値との比、エレクトロクロミックポリマーの重量平均分子量等を利用し、平均値として算出できる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
(構造単位B、L、及びTの割合)
エレクトロクロミックポリマーに含まれる構造単位Bの割合は、エレクトロクロミック表示素子の耐久性向上の観点から、全構造単位を基準として、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Bの割合は、粘度の上昇を抑え、エレクトロクロミックポリマーの合成を良好に行う観点、又は、十分な耐久性を得る観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。上記割合は、構造単位B1を含めた構造単位Bの総量を意味する。
エレクトロクロミックポリマーに含まれる構造単位Lの割合は、十分なエレクトロクロミック特性を得る観点から、全構造単位を基準として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Lの割合は、構造単位T及び必要に応じて導入される構造単位Bを考慮すると、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が更に好ましい。エレクトロクロミックポリマーが構造単位L1を含む場合、上記割合は構造単位L1を含めた全量を意味する。
エレクトロクロミックポリマーに含まれる構造単位Tの割合は、エレクトロクロミック表示素子の特性向上の観点、又は、粘度の上昇を抑え、エレクトロクロミックポリマーの合成を良好に行う観点から、全構造単位を基準として、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Tの割合は、十分な耐久性を得る観点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。エレクトロクロミックポリマーが構造単位T1を含む場合、上記割合は構造単位T1を含めた全量を意味する。
エレクトロクロミックポリマーが重合性官能基を有する場合、重合性官能基の割合は、エレクトロクロミックポリマーを効率よく硬化させるという観点から、全構造単位を基準として、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、3モル%以上が更に好ましい。また、重合性官能基の割合は、良好なエレクトロクロミック特性を得るという観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。なお、ここでの「重合性官能基の割合」とは、重合性官能基を有する構造単位の割合をいう。
エレクトロクロミック特性、耐久性、生産性等のバランスを考慮すると、構造単位L及び構造単位Tの割合(モル比)は、L:T=100:70〜1が好ましく、100:50〜3がより好ましく、100:30〜5が更に好ましい。また、エレクトロクロミックポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位L、構造単位T、及び構造単位Bの割合(モル比)は、L:T:B=100:10〜200:10〜100が好ましく、100:20〜180:20〜90がより好ましく、100:40〜160:30〜80が更に好ましい。
構造単位の割合は、エレクトロクロミックポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量を用いて求めることができる。また、構造単位の割合は、エレクトロクロミックポリマーのH NMRスペクトルにおける各構造単位に由来するスペクトルの積分値を利用し、平均値として算出することができる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
一実施形態において、3方向以上に分岐する構造を有するエレクトロクロミックポリマーは、3価以上の構造単位Bとして、置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を有する3価以上の構造単位B1を少なくとも含み、かつ構造単位L及び/又はTとして、少なくとも1つのアルコキシ基を有するトリフェニルアミン構造を有する構造単位L1及び/又はT1を含む。
また、他の実施形態において、上記エレクトロクロミックポリマーは、上記構造単位B1と、構造単位L及び/又はTとして、少なくとも上記構造単位L1及び/又はT1を含む。
さらに他の実施形態において、上記エレクトロクロミックポリマーは、上記構造単位B1と、上記構造単位L及び構造単位Tとを含み、上記構造単位Tとして、少なくとも上記構造単位T1と重合性官能基を有する構造単位Tとを含む。
本発明の実施形態によれば、少なくとも構造単位B1と、構造単位L1及び/又は構造単位T1とを含むエレクトロクロミックポリマーを使用することによって、エレクトロクロミック表示素子の繰り返し耐久性、メモリー性の向上を実現することが可能となる。このような効果を効果的に得る観点から、構造単位Bに含まれる構造単位B1の割合は、構造単位Bの全量を基準として構造単位B1を、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上とする。
また、エレクトロクロミックポリマーが構造単位L1を含む場合、構造単位Lの全量を基準として構造単位L1を、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上とする。
さらに、エレクトロクロミックポリマーが構造単位Tとして構造単位T1を含む場合、構造単位Tの全量を基準として構造単位T1を、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上とする。
特に、エレクトロクロミックポリマーの耐熱性を向上させる観点から、構造単位L1及び/又はT1の割合は、それぞれポリマーの全構成単位を基準として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましい。エレクトロクロミックポリマーが構造単位L1とT1とを含む場合、上記割合はL1とT1との合計量を意味する。
(数平均分子量)
エレクトロクロミックポリマーの数平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、エレクトロクロミック特性に優れるという観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましい。また、数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、エレクトロクロミック組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましい。
(重量平均分子量)
エレクトロクロミックポリマーの重量平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。重量平均分子量は、耐久性に優れるという観点から、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましい。また、重量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、エレクトロクロミック組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、400,000以下が更に好ましい。
数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
(製造方法)
エレクトロクロミックポリマーは、種々の合成方法により製造でき、特に限定されない。例えば、鈴木カップリング、根岸カップリング、園頭カップリング、スティルカップリング、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング等の既知のカップリング反応を用いることができる。鈴木カップリングは、芳香族ボロン酸誘導体と芳香族ハロゲン化物との間で、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応を起こさせるものである。鈴木カップリングによれば、所望とする芳香環同士を結合させることにより、エレクトロクロミックポリマーを簡便に製造できる。
カップリング反応では、触媒として、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物、Ni化合物等が用いられる。また、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等を前駆体とし、ホスフィン配位子と混合することにより発生させた触媒種を用いることもできる。エレクトロクロミックポリマーの合成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
<エレクトロクロミック組成物>
本発明のエレクトロクロミック組成物は、上記の本発明のエレクトロクロミックポリマーと、このエレクトロクロミックポリマーとは異なる一つ以上の他の重合性化合物を含むものである。
[他の重合性化合物]
前記他の重合性化合物は、本発明のエレクトロクロミックポリマーとは異なる化合物であって、少なくとも1つの重合性官能基を有する化合物である。
前記他の重合性化合物としては、例えば、1官能の重合性化合物、2官能の重合性化合物、3官能以上の重合性化合物、機能性モノマー、重合性オリゴマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、前記他の重合性化合物としては、2官能以上の重合性化合物が特に好ましい。
前記他の重合性化合物における重合性官能基としては、前記本発明における重合性官能基と同様である。
前記1官能の重合性化合物としては、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記2官能の重合性化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記3官能以上の重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記において、EO変性はエチレンオキシ変性を表し、PO変性はプロピレンオキシ変性を表す。
前記機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報に記載のシロキサン繰り返し単位が20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の一実施形態において、前記本発明のエレクトロクロミックポリマー、及び前記本発明のエレクトロクロミックポリマーとは異なる他の重合性化合物の少なくともいずれか一方が、重合性官能基を2つ以上有していることが、架橋構造体を形成する点から好ましい。
本発明の一実施形態において、前記本発明のエレクトロクロミックポリマーの含有量は、エレクトロクロミック組成物の全量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましい。
前記含有量が、10質量%以上であると、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能が充分に発現でき、加電圧による繰り返しの使用で耐久性が良好であり、発色感度が良好である。
前記含有量が、100質量%でもエレクトロクロミック機能が可能であり、この場合、厚みに対する発色感度が最も高い。それに相反して、電荷の授受に必要であるイオン液体との相溶性が低くなる場合があるため、加電圧による繰り返しの使用で耐久性の低下などによる電気特性の劣化が現れ得る。使用されるプロセスによって要求される電気特性が異なるため一概には言えないが、発色感度と繰り返し特性との両特性のバランスを考慮すると、30質量%以上90質量%以下がより好ましい。
[重合開始剤]
前記エレクトロクロミック組成物は、前記本発明のエレクトロクロミックポリマーと、前記本発明のエレクトロクロミックポリマーとは異なる他の重合性化合物との重合・架橋反応を効率よく進行させるため、必要に応じて重合開始剤を含有することが好ましい。
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられるが、重合効率の観点からは光重合開始剤が好ましく、硬化プロセスが簡便である観点からは熱重合開始剤が好ましい。
前記熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−2−ベンジル−1−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2―モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;IRGACURE184等のヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の実施形態において用いることができるその他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられるが、これらに限定されない。
前記重合開始剤の含有量は、前記重合性化合物の全量100質量部に対して、0.5質量部以上40質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。
[フィラー]
本発明のエレクトロクロミック組成物は、フィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機フィラー、無機フィラーなどが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;酸化ケイ素(シリカ)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、スズをドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化銅、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性、安定性、及び表面処理の容易性などの点から、金属酸化物が好ましく、シリカ、アルミナ、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)が特に好ましい。
前記有機フィラーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリオレフィン、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂、脂肪酸等の低分子化合物、フタロシアニン等の顔料が挙げられるが、これらに限定されない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性及び不溶性の点から、樹脂が好ましい。
前記フィラーの一次粒径は、1μm以下が好ましく、10nm以上1μm以下がより好ましい。前記フィラーの一次粒径が、1μm以下であると、粗大粒子が存在せず、得られる膜の表面状態が良好であり、表面平滑性に優れている。
前記フィラーの含有量は、前記重合性化合物の全量100質量部に対して、固形分濃度で、0.3質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.6質量部以上0.9質量部以下がより好ましい。
前記含有量が、0.3質量部以上であると、フィラー添加効果が充分に得られ、成膜性が良好であり、1.5質量部以下であると、フィラーの割合が適切であり作製したエレクトロクロミック表示素子の良好な電気化学特性が得られる。
[その他の任意成分]
本発明のエレクトロクロミック組成物は、その他の成分を更に含有してもよく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒、可塑剤、レベリング剤、増感剤、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
<エレクトロクロミック表示素子>
本発明にエレクトロクロミック表示素子は、第一の電極と、第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に充填されている電解質とを有し、前記第一の電極上であって前記第二の電極側に前記エレクトロクロミックポリマー、前記エレクトロクロミック材料、及び/又は前記エレクトロクロミック組成物を含むエレクトロクロミック層を有し、必要に応じてその他の成分や部材を有する。
前記エレクトロクロミック層の平均厚みは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.4μm以上10μm以下がより好ましい。
[第一の電極、及び第二の電極]
前記第一の電極、及び前記第二の電極を構成する材料としては、例えば、透明導電基板などが挙げられる。前記透明導電基板としては、例えば、ガラス、プラスチックフィルムに透明導電薄膜をコーティングしたものが好ましい。
前記透明導電薄膜の材料としては、導電性を有する透明材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スズをドープした酸化インジウム(以下)、「ITO」ともいう)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」ともいう)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」ともいう)、酸化亜鉛等の無機材料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnOが好ましい。
さらに、前記透明導電薄膜の材料としては、透明性を有するカーボンナノチューブや、他のAu、Ag、Pt、Cuなど高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して、透明度を保持したまま、導電性を改善した電極を用いてもよい。
前記第一の電極、及び前記の第二の電極の各々の平均厚みは、エレクトロクロミック層の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように適宜調整される。
前記第一の電極、及び前記第二の電極の材料としてITOを用いた場合、第一の電極、及び第二の電極の各々の平均厚みは、例えば、50nm以上500nm以下が好ましい。ITO電極の各々の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
前記第一の電極、及び第二の電極のその他の形成方法として、塗布法があり、塗布形成できるものあれば特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
[電解質]
前記電解質は、前記第一の電極と前記第二の電極との間に充填されている。電解質としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩、酸類、アルカリ類等の支持塩などが挙げられ、具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BFなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電解質の材料としては、イオン液体を用いることもできる。これらの中でも、有機のイオン液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有しているため、好ましく用いられる。
前記室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩などが挙げられる。また、アニオン成分としては、大気中で安定性の点から、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF 、CFSO 、PF 、(CFSOなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電解質の材料としては、前記カチオン成分と前記アニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体を用いることが好ましい。
前記イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー、及び液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、溶解性が悪い場合は、少量の溶媒に溶解させた溶液を光重合性モノマー、オリゴマー、及び液晶材料のいずれかと混合して用いることができる。
[溶媒]
前記溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;その他、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
前記電解質としては、低粘性の液体である必要はなく、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型などの様々な形態をとることができる。電解質は、ゲル状、固体状に形成することで、素子強度向上、信頼性向上などの点から有利である。
固体化手法としては、高いイオン伝道度と固体強度が得られる点から、電解質と溶媒とをポリマー樹脂中に担持することが好ましい。
前記ポリマー樹脂としては、低温かつ短時間で素子を製造できる点からは、光硬化可能な樹脂が好ましく、プロセスが簡便であることから、熱硬化可能な樹脂、あるいは溶媒を蒸発させる方法を利用することもできる。
[その他の部材]
本発明のエレクトロクロミック表示素子は、その他の部材を有していてもよく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明のエレクトロクロミック表示素子に用いることができるその他の部材としては、例えば、支持体、絶縁性多孔質層、劣化防止層、担体、保護層などが挙げられるが、これらに限定されない。
(支持体)
前記支持体としては、各層を支持できる透明材料であれば、既知の有機材料や無機材料をそのまま用いることができる。
前記支持体としては、例えば、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、フロートガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス基板;ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基板などが挙げられるが、これらに限定されない。
前記支持体の表面に、水蒸気バリア性、ガスバリア性、紫外線耐性、及び視認性を高めるために透明絶縁層、UVカット層、反射防止層等がコーティングされていてもよい。
前記支持体の形状としては、特に制限はなく、長方形であっても、丸型であってもよい。
前記支持体としては、複数の基板の重ねあわせでもよく、例えば、2枚のガラス基板でエレクトロクロミック表示素子を挟持する構造にすることで、水蒸気バリア性、及びガスバリア性を高めることができる。
(絶縁性多孔質層)
前記絶縁性多孔質層としては、第一の電極と第二の電極とが電気的に絶縁されるように隔離すると共に、電解質を保持する機能を有する。
前記絶縁性多孔質層の材料としては、多孔質であれば特に制限はなく、絶縁性、及び耐久性が高く成膜性に優れた有機材料、無機材料、及びそれらの複合体が好ましい。
前記絶縁性多孔質層の形成方法としては、例えば、焼結琺(バインダ等を添加することにより、高分子微粒子や無機粒子を部分的に融着させ、粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物類又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、発泡させる発泡法、相転換法(良溶媒と貧溶媒とを操作して高分子類の混合物を相分離させる)、放射線照射法(各種放射線を輻射して細孔を形成させる)などが挙げられる。
(劣化防止層)
前記劣化防止層は、エレクトロクロミック組成物からなるエレクトロクロミック層と逆の化学反応をし、電荷のバランスをとって第一の電極、及び第二の電極が不可逆的な酸化還元反応により腐食や劣化することを抑制することができる。なお、前記逆の化学反応とは、劣化防止層が酸化還元反応する場合に加え、キャパシタとして作用することも含む意味である。
前記劣化防止層の材料としては、第一の電極、及び第二の電極の不可逆的な酸化還元反応による腐食を防止する役割を担う材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化アンチモン錫、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、又はそれらを複数含む導電性金属酸化物、又は半導体性金属酸化物を用いることができる。
前記劣化防止層は、電解質の注入を阻害しない程度の多孔質薄膜から構成することができる。例えば、酸化アンチモン錫、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の導電性金属酸化物微粒子又は半導体性金属酸化物微粒子を、例えば、アクリル系、アルキド系、イソシアネート系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系等のバインダにより第二の電極に固定化することで、電解質の浸透性、及び劣化防止層としての機能を満たす、好適な多孔質薄膜を得ることができる。
前記劣化防止層として、エレクトロクロミック組成物を構成する導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体と同じものを用いると、第一の電極及びエレクトロクロミック組成物の製造工程と、第二の電極及び劣化防止層の製造工程とを一部共有化できるため好ましい。
(担体)
他のエレクトロクロミック材料と本発明のエレクトロクロミックポリマーを組み合わせる場合、担持粒子を用いることができる。
例えば、本発明のエレクトロクロミックポリマー以外のエレクトロクロミック化合物が、結合又は吸着構造としてホスホン酸、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基等を有するとき、前記エレクトロクロミック化合物は前記ナノ構造体と容易に複合化し、発色画像保持性に優れるエレクトロクロミック組成物となる。前記ホスホン酸基、前記スルホン酸基、前記リン酸基、及び前記カルボキシル基は、エレクトロクロミック化合物中に複数存在していてもよい。また、本発明にエレクトロクロミックポリマーが、シリル基、シラノール基等を有するとき、シロキサン結合を介して前記ナノ構造体と結合されることにより、その結合は強固なものとなり、安定なエレクトロクロミック組成物を得ることができる。前記シロキサン結合とは、ケイ素原子及び酸素原子を介した化学結合をいう。また、前記エレクトロクロミック組成物は、前記エレクトロクロミックポリマー及び/又はエレクトロクロミック化合物と前記ナノ構造体とがシロキサン結合を介して結合した構造をしていればよく、特にその結合方法・形態は限定されない。
前記導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体とは、ナノ粒子又はナノポーラス構造体等のナノスケールの凹凸を有する構造体をいう。
前記導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体を構成する材質としては、透明性や導電性の点から、例えば、金属酸化物が挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケートなどを主成分とするものが挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電気伝導性等の電気的特性、光学的性質等の物理的特性の点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステンが好ましく、酸化チタンがより好ましい。前記金属酸化物、又は前記金属酸化物の混合物が用いられたとき、発消色の応答速度に優れる。
前記金属酸化物の形状としては、平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物微粒子が好ましい。前記平均一次粒子径が小さいほど金属酸化物に対する光の透過率が向上でき、単位体積あたりの表面積(以下、「比表面積」という。)が大きい形状が用いられる。大きな比表面積を有することで、より効率的にエレクトロクロミックポリマー及び/又はエレクトロクロミック組成物が担持され、発消色の表示コントラスト比に優れた多色カラー表示をすることができる。ナノ構造の比表面積は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100m/g以上が好ましい。
(保護層)
前記保護層は、外的応力、及び洗浄工程において用いられる薬品からエレクトロクロミック表示素子を守ることができ、また、前記電解質の漏洩を防ぐことができ、さらに大気中の水分や酸素などのエレクトロクロミック表示素子が安定的に動作するために不要なものの侵入を防ぐことができる。
前記保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上200μm以下が好ましい。
前記保護層の材料としては、例えば、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などを用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
<エレクトロクロミック表示素子の製造方法>
本発明のエレクトロクロミック表示素子の製造方法は、第一の電極上に、本発明のエレクトロクロミックポリマー及び/又はエレクトロクロミック組成物を塗布する塗布工程と、塗布したエレクトロクロミックポリマー及び/又はエレクトロクロミック組成物に対し加熱又は光エネルギーを付与して架橋する架橋工程とを含む。
[塗布工程]
前記塗布工程は、前記第一の電極上に、前記本発明のエレクトロクロミックポリマー及び/又は前記本発明のエレクトロクロミック組成物を塗布する工程である。塗布液は、必要に応じて溶媒により希釈して塗布する。溶媒としては、前記溶媒を用いることができる。
[架橋工程]
前記架橋工程は、塗布したエレクトロクロミックポリマー及び/又はエレクトロクロミック組成物に対し加熱するか又は光エネルギーを付与して架橋する工程である。
前記第一の電極上にエレクトロクロミックポリマー及び/又はエレクトロクロミック組成物を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させて、エレクトロクロミック層を形成する。前記外部エネルギーとしては、例えば、熱、光、放射線などが挙げられる。前記熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気、又は各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。前記加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上170℃以下が好ましい。
前記光のエネルギーとしては、主に紫外光(UV)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。
UVの照射光量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mW/cm以上15,000mW/cm以下が好ましい。
[その他の工程]
その他の工程としては、例えば、第一の電極を形成する工程、第二の電極を形成する工程、絶縁性多孔質層形成工程、劣化防止層形成工程、保護層形成工程、貼り合わせ工程、などが挙げられる。
<用途>
本発明のエレクトロクロミック表示素子は、安定動作が可能であり、かつ応答速度と光耐久性に優れているので、例えば、エレクトロクロミックディスプレイ、株価の表示板等の大型表示板、防眩ミラー、調光ガラス等の調光素子、タッチパネル式キースイッチ等の低電圧駆動素子、光スイッチ、光メモリー、電子ペーパー、電子アルバムなどに好適に使用することができる。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<I>モノマーの合成
(N−フェニルフェノチアジン構造を有するモノマー(PT−1)の合成)
三口フラスコにフェノチアジン(19.8g、0.1mol)、4−ブロモブチルベンゼン(21.3g、0.1mol)、酢酸パラジウム(II)(0.225g、1mmol)、NaOtBu(14.4g、0.15mol)、o−キシレン(300mL)を加え、グローブボックス内にフラスコを移動した。溶液を窒素ガスで20分間バブリングし、脱気した。P(t−Bu)(0.606g、3mmol)を加え、密栓した。フラスコをグローブボックスから取り出し、冷却管を取り付け窒素フロー下、150℃で加熱還流を5時間行った。溶液を冷却後、溶液をセライトろ過し、エバポレーターで濃縮し、黒色固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解し、ヘキサン:酢酸エチル(9:1)を展開液に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−(4−ブチルフェニル)フェノチアジンの淡黄色固体を25.3g得た。収率76.3%。
Figure 2019172724
三口フラスコにN−(4−ブチルフェニル)フェノチアジン(2.14g、6.46mmol)を加え、N,N−ジメチルホルムアミド(100mL)に溶解した。攪拌下でN−ブロモスクシンイミド(4.02g、22.6mmol)を少量ずつ加えた後、6時間攪拌した。反応溶液をエバポレーターで濃縮した後、酢酸エチルと純水を加えて、抽出及び水洗を行った。得られた有機層をエバポレーターで濃縮し、濃赤色固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解し、ヘキサン:酢酸エチル(4:1)を展開液に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−フェニルフェノチアジン構造を有するモノマー(PT−1)2.68gを得た。収率84.7%。
Figure 2019172724
(N−フェニルフェノチアジン構造を有するモノマー(PT−2)の合成)
三口フラスコにフェノチアジン(19.8g、0.1mol)、ブロモベンゼン(15.7g、0.1mol)、酢酸パラジウム(II)(0.225g、1mmol)、NaOtBu(14.4g、0.15mol)、o−キシレン(300mL)を加え、グローブボックス内にフラスコを移動した。溶液を窒素ガスで20分間バブリングし、脱気した。P(t−Bu)(0.606g、3mmol)を加え、密栓した。フラスコをグローブボックスから取り出し、冷却管を取り付け窒素フロー下、150℃で加熱還流を5時間行った。溶液を冷却後、溶液をセライトろ過し、エバポレーターで濃縮し、黒色固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解し、ヘキサン:酢酸エチル(9:1)を展開液に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−フェニルフェノチアジンの淡黄色固体を17.3g得た。収率63.0%。
Figure 2019172724
三口フラスコにN−フェニルフェノチアジン(1.07g、3.88mmol)を加え、N,N−ジメチルホルムアミド(100mL)に溶解させた。攪拌下でN−ブロモスクシンイミド(3.45g、19.4mmol)を少量ずつ加えた後、6時間攪拌した。反応溶液をエバポレーターで濃縮した後、酢酸エチルと純水を加えて、抽出及び水洗を行った。得られた有機層をエバポレーターで濃縮し、濃赤色固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解し、ヘキサン:酢酸エチル(2:1)を展開液に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−フェニルフェノチアジン構造を有するモノマー(PT−2)1.45gを得た。収率73.2%。
Figure 2019172724
(N−フェニルフェノチアジン構造を有するモノマー(PT−3)の合成)
三口フラスコにPT−1(48.9g、0.1mol)、ビスピナコラトジボロン(55.9g、0.22mol)、Pd(dppf)Cl(2.2g、3mmol)、酢酸カリウム(39.3g、0.4mol)、ジメトキシエタン(500mL)を加え、グローブボックス内にフラスコを移動した。溶液を窒素ガスで20分間バブリングし、脱気した後、密栓した。フラスコをグローブボックスから取り出し、冷却管を取り付け窒素フロー下、加熱還流を24時間行った。溶液を冷却後、水(500mL)、酢酸エチル(500mL)を加え、溶液をろ過した。ろ過した溶液を酢酸エチル(200mL×2)で抽出後、有機層を飽和食塩水(400mL×2)で洗浄後、硫酸マグネシウムを加えてしばらく静置し、乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過後、エバポレーターで濃縮し、黒色固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解し、ヘキサン:酢酸エチル(9:1)を展開液に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、PT−3の淡黄色固体を30.9g得た。収率53.0%。
Figure 2019172724
<II>エレクトロクロミックポリマーの調製
(Pd触媒の調製)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセン)ジパラジウム(73.2mg、80μmol)を秤取り、アニソール(15mL)を加え、30分間攪拌した。同様に、サンプル管にトリス(t−ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を秤取り、アニソール(5mL)を加え、5分間攪拌した。これらの溶液を混合し、室温で30分間攪拌した後、Pd触媒溶液として使用した。すべての溶媒は30分間以上、窒素バブルにより脱気した後、使用した。
(N−フェニルフェノチアジン構造を有するエレクトロクロミックポリマー1)
三口丸底フラスコに、下記モノマーPT−1(4.0mmol)、下記モノマーL2−1(5.0mmol)、下記モノマーT2−1(2.0mmol)及びアニソール(20mL)を加え、更に、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。この反応液を30分間攪拌した後、上記反応液に10質量%テトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液(20mL)を加えた。すべての原料は30分間以上、窒素バブルにより脱気した後に使用した。この混合物を2時間、加熱還流した。ここまでの操作は窒素気流下で行った。
Figure 2019172724
反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール−水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過によって回収し、メタノール−水(9:1)で洗浄した。得られた沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿した。得られた沈殿を吸引ろ過により回収し、トルエンに溶解し、金属吸着剤(Strem Chemicals社製「Triphenylphosphine,polymer−bound on styrene−divinylbenzene copolymer」、沈殿物100mgに対して200mg)を加えて、一晩攪拌した。攪拌終了後、金属吸着剤及び不溶物をろ過によって取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮液をトルエンに溶解した後、メタノール−アセトン(8:3)から再沈殿した。生じた沈殿を吸引ろ過によって回収し、メタノール−アセトン(8:3)で洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、エレクトロクロミックポリマー1を得た。
得られたエレクトロクロミックポリマー1の数平均分子量は5,300であり、重量平均分子量は8,600であった。
数平均分子量及び重量平均分子量は、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。測定条件は以下のとおりである。
送液ポンプ :L−6050 株式会社日立ハイテクノロジーズ
UV−Vis検出器:L−3000 株式会社日立ハイテクノロジーズ
カラム :Gelpack(登録商標) GL−A160S/GL−A150S 日立化成株式会社
溶離液 :THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業株式会社
流速 :1mL/min
カラム温度 :室温
分子量標準物質 :標準ポリスチレン
(N−フェニルフェノチアジン構造を有するエレクトロクロミックポリマー2)
三口丸底フラスコに、下記モノマーPT−2(2.0mmol)、下記モノマーL2−1(5.0mmol)、下記モノマーT2−1(4.0mmol)及びアニソール(20mL)を加え、更に、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、エレクトロクロミックポリマー1の合成と同様にして、エレクトロクロミックポリマー2の合成を行った。
得られたエレクトロクロミックポリマー2の数平均分子量は15,800であり、重量平均分子量は78,200であった。
Figure 2019172724
(N−フェニルフェノチアジン構造を有するエレクトロクロミックポリマー3)
三口丸底フラスコに、下記モノマーPT−1(5.0mmol)、下記モノマーL2−2(4.0mmol)、下記モノマーT2−1(2.0mmol)及びアニソール(20mL)を加え、更に、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、エレクトロクロミックポリマー1の合成と同様にして、エレクトロクロミックポリマー3の合成を行った。
得られたエレクトロクロミックポリマー3の数平均分子量は5,600であり、重量平均分子量は10,400であった。
Figure 2019172724
(N−フェニルフェノチアジン構造を有するエレクトロクロミックポリマー4)
三口丸底フラスコに、前記モノマーPT−2(2.0mmol)、下記モノマーL2−3(5.0mmol)、前記モノマーT2−1(4.0mmol)及びアニソール(20mL)を加え、更に、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、エレクトロクロミックポリマー1の合成と同様にして、エレクトロクロミックポリマー4の合成を行った。
得られたエレクトロクロミックポリマー4の数平均分子量は12,500であり、重量平均分子量は63,900であった。
Figure 2019172724
(N−フェニルフェニチアジン構造を有するエレクトロクロミックポリマー5)
三口丸底フラスコに、下記モノマーPT−3(5.0mmol)、下記モノマーT2−2(4.0mmol)、下記モノマーPT−2(2.0mmol)及びアニソール(20mL)を加え、更に、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、エレクトロクロミックポリマー1の合成と同様にして、エレクトロクロミックポリマー5の合成を行った。
得られたエレクトロクロミックポリマー5の数平均分子量は10,700であり、重量平均分子量は59,400であった。
Figure 2019172724
(N−フェニルフェニチアジン構造を有するエレクトロクロミックポリマー6)
三口丸底フラスコに、下記モノマーPT−3(5.0mmol)、下記モノマーPT−1(4.0mmol)、下記モノマーT2−2(2.0mmol)及びアニソール(20mL)を加え、更に、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、エレクトロクロミックポリマー1の合成と同様にして、エレクトロクロミックポリマー6の合成を行った。
Figure 2019172724
得られたエレクトロクロミックポリマー6の数平均分子量は6,600であり、重量平均分子量は12,800であった。
エレクトロクロミックポリマー1〜6の調製に使用したモノマーを以下の表にまとめて示す。
Figure 2019172724
(実施例1)
<エレクトロクロミック表示素子1の作製>
<第一の電極上へのエレクトロクロミック層の形成>
第一の電極上にエレクトロクロミック層を形成するために、以下に示す組成のエレクトロクロミック組成物を調製した。
<組成>
・N−フェニルフェニチアジン構造を有するエレクトロクロミックポリマー5:50質量部
・α−ヒドロキシアルキルフェノン(IRGACURE184、BASFジャパン株式会社):5質量部
・2官能アクリレートを有するPEG400ジアクリレート(以下PEG400DA、日本化薬株式会社製):50質量部
・メチルエチルケトン:900質量部
得られたエレクトロクロミック組成物を、第一の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7nm、ITO膜厚:約100nm)上にスピンコート法により塗布し、得られた塗布膜をUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間照射し、60℃で10分間アニール処理を行うことにより、平均厚み400μmの架橋したエレクトロクロミック層を形成した。
<第二の電極上への劣化防止層の形成>
第二の電極としてITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)に、劣化防止層として酸化チタンナノ粒子分散液をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、厚み1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
<電解質の充填>
以下に示す組成の電解質液を調製した。
・α−ヒドロキシアルキルフェノン(IRGACURE183、BASFジャパン株式会社製):5質量部
・PEG400DA(日本化薬株式会社製):100質量部
・1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(メルク社製):50質量部
得られた電解質液をマイクロピペットで30mg測り取り、前記劣化防止層を有するITOガラス基板に対して滴下した。その上に、電極の引き出し部分があるように、架橋したエレクトロクロミック層を有するITOガラス基板を貼り合わせ、貼り合わせ素子を作製した。
得られた貼り合わせ素子をUV(波長250nm)照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間照射した。以上により、エレクトロクロミック表示素子1を作製した。
<発消色駆動>
作製したエレクトロクロミック表示素子1の発消色を確認した。具体的には、第一の電極層の引き出し部分と第二の電極層の引き出し部分との間に、−2Vの電圧を5秒間印加させたところ、前記第一の電極層と前記第二の電極層の重なった部分に、エレクトロクロミック架橋層の本発明のエレクトロクロミックポリマーに由来する赤色の発色が確認できた。
次いで、前記第一の電極層の引き出し部分と前記第二の電極層の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を5秒間印加させたところ、前記第一の電極層と前記第二の電極層の重なった部分が消色し、透明になることが確認できた。
<試験1:繰り返し耐久性試験>
作製したエレクトロクロミック表示素子1について、上記−2V、5s、上記+2V、5sの発消色駆動を500回繰り返した。そのときの可視領域(400〜800nm)の吸収極大をλmax(この場合550nm)とした。その時の吸光度変化をOcean Optics社製USB4000で測定し、下記基準で評価した。
<評価基準>
◎:λmaxの吸光度が初期状態に比べて90%以上である場合
○:λmaxの吸光度が初期状態に比べて80%以上90%未満である場合
△:λmaxの吸光度が初期状態に比べて50%以上80%未満である場合
×:λmaxの吸光度が初期状態に比べて50%未満である場合
<試験2:メモリー性評価>
作製したエレクトロクロミック表示素子1について、−2V、5s印加して発色させ、開放回路にした。回路開放時の可視領域の透過率をOcean Optics社製USB4000で測定し、下記基準でメモリー性を評価した。
<評価基準>
◎:λmaxの吸光度が初期状態に比べて90%以上である場合
○:λmaxの吸光度が初期状態に比べて80%以上90%未満である場合
△:λmaxの吸光度が初期状態に比べて50%以上80%未満である場合
×:λmaxの吸光度が初期状態に比べて50%未満である場合
<試験3:ヘイズ値測定>
作製したエレクトロクロミック表示素子1について、日本電色製NDH5000を用い、JIS規格に則って消色状態のヘイズ値測定を行った。下記基準でヘイズ値を評価した。
<評価基準>
○:ヘイズ値が2%以下の場合
×:ヘイズ値が2%より大きい場合
試験1〜3の結果を表に示した。
(実施例2)
実施例1におけるエレクトロクロミックポリマー5をエレクトロクロミックポリマー6に変えた以外は同様にして、エレクトロクロミック表示素子2を作製した。実施例1と同様にして、繰り返し耐久性、メモリー性、ヘイズ値を評価した。
(比較例1)
非特許文献1に記載の、下記式で示される化合物を用いてエレクトロクロミック表示素子を作製した。第一の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)に、酸化スズナノ粒子分散液をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、厚み1.0μmの酸化スズ粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。ここに、2質量%の下記化合物水溶液を0.15mL滴下し、スピンコート(1500rpm(1500min−1))で色素を吸着させ、純水0.15mLを同時にスピンコートしてリンスした。これ以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック表示素子3を作製した。実施例1と同様にして、繰り返し耐久性、メモリー性、ヘイズ値を評価した。
Figure 2019172724
(比較例2)
下記構造式で示される化合物を用いて、非特許文献2記載の方法でエレクトロクロミック表示素子を作製した。実施例1と同様にして、繰り返し耐久性、メモリー性、ヘイズ値を評価した。
Figure 2019172724
Figure 2019172724
以上、表より、従来の比較化合物を用いた場合では、繰り返し耐久性、メモリー性、透明性を満足するエレクトロクロミック表示素子が提供されないのに対して、本発明のエレクトロクロミックポリマー及び/又はエレクトロクロミック組成物を用いることで、上記特性を兼ね備えたエレクトロクロミック表示素子を提供できることがわかった。

Claims (5)

  1. 置換又は非置換のN−フェニルフェノチアジン構造を含む構造単位を少なくとも1つ有するエレクトロクロミックポリマー。
  2. 重合性官能基をさらに有する、請求項1に記載のエレクトロクロミックポリマー。
  3. 請求項1又は2記載のエレクトロクロミックポリマーを少なくとも1つ含むエレクトロクロミック材料。
  4. 請求項3記載のエレクトロクロミック材料と、
    前記エレクトロクロミック材料とは異なる他の重合性化合物
    とを含む、エレクトロクロミック組成物。
  5. 第一の電極と、
    第二の電極と、
    前記第一の電極及び前記第二の電極の間に充填されている電解質と、
    前記第一の電極上であって前記第二の電極側に位置する、請求項1又は2に記載のエレクトロクロミックポリマー、請求項3に記載のエレクトロクロミック材料、及び請求項4に記載のエレクトロクロミック組成物からなる群より選択される1つ以上を含むエレクトロクロミック層
    とを有する、エレクトロクロミック表示素子。
JP2018059357A 2018-03-27 2018-03-27 エレクトロクロミックポリマー、エレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミック表示素子 Pending JP2019172724A (ja)

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