JP2019169289A - 燃料電池用空気極触媒及びその製造方法並びに燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池 - Google Patents

燃料電池用空気極触媒及びその製造方法並びに燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池 Download PDF

Info

Publication number
JP2019169289A
JP2019169289A JP2018054783A JP2018054783A JP2019169289A JP 2019169289 A JP2019169289 A JP 2019169289A JP 2018054783 A JP2018054783 A JP 2018054783A JP 2018054783 A JP2018054783 A JP 2018054783A JP 2019169289 A JP2019169289 A JP 2019169289A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fuel cell
nitrogen
air electrode
mwcnt
catalyst
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018054783A
Other languages
English (en)
Inventor
慶子 脇
Keiko Waki
慶子 脇
中西 暢
Noboru Nakanishi
暢 中西
テキ チン
Tae Qi Qin
テキ チン
九廷 陳
Jiu Ting Chen
九廷 陳
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shin Etsu Chemical Co Ltd
Tokyo Institute of Technology NUC
Original Assignee
Shin Etsu Chemical Co Ltd
Tokyo Institute of Technology NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shin Etsu Chemical Co Ltd, Tokyo Institute of Technology NUC filed Critical Shin Etsu Chemical Co Ltd
Priority to JP2018054783A priority Critical patent/JP2019169289A/ja
Publication of JP2019169289A publication Critical patent/JP2019169289A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Abstract

【課題】優れた活性を示すMWCNT燃料電池用空気極触媒を、より効率的でエネルギー投入量が少ない工程で提供する。【解決手段】多層カーボンナノチューブから成る燃料電池用空気極触媒を製造する方法であって、原料となる多層カーボンナノチューブを準備する工程と、前記原料となる多層カーボンナノチューブの表面に金属酸化物又は金属硝酸塩の微粒子を担持させる工程と、前記表面に金属酸化物又は金属硝酸塩の微粒子を担持させた多層カーボンナノチューブを、酸素を含む雰囲気中で100〜500℃の温度で加熱する酸素処理工程と、前記酸素処理工程を行った後の前記多層カーボンナノチューブを、窒素原子を含むガス雰囲気中で100〜1500℃の温度で0.5〜10分間加熱する窒素処理工程とを含むことを特徴とする燃料電池用空気極触媒の製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は燃料電池用空気極触媒及びその製造方法並びに燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池に関する。
従来、高分子固体電解質燃料電池の正極(空気極)触媒としては白金材料が使用されてきた。白金触媒は、燃料電池用空気極触媒として高い酸素還元触媒活性を示すものの、白金は非常に高価で資源量が限られることから、白金触媒を使用した燃料電池を普及させることは困難である。そこで、白金を使用しない燃料電池用空気極触媒の開発が長く望まれてきた。
代替の非白金触媒として、ポリビニルコバルトフタロシアニン、鉄フタロシアニン、ポルフィリンなどを原料に高温で炭化した鉄、コバルト等の金属を含有するカーボンアロイ材料が検討されてきたが、白金触媒の特性を超える材料は開発されていない。
非白金触媒候補となる金属成分を含有しないカーボン系材料としては、カーボンナノチューブ(以下、CNTとも称する)も盛んに研究されている。多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTとも称する)は、その構造的特徴から種々の触媒活性を発現することが知られており、単層カーボンナノチューブに比べて製造コストが安いことから、白金代替材料として広く検討されてきた。
特許文献1(特開2012−164492号公報)では、側壁に側壁を貫通し或いは貫通しない細孔(欠陥)を有するMWCNTが燃料電池空気極用酸素還元触媒としてカーボンアロイ材料に迫る活性を示すことを見出している。
また、CNTに対して窒素ドープすることで燃料電池空気極用酸素還元触媒としての活性が向上することが広く知られている。非特許文献1(Science, 323, 760-764 (2009))には、窒素ドープした垂直配向単層CNTは、アルカリ電解液を用いた高分子固体電解質燃料電池システムにおける酸素還元電極触媒として優れた電気化学的活性、長期の作動安定性を示すことが報告されている。
また、非特許文献2(J. Phys. Chem. Lett., 1 (18), 2622-2627 (2010))及び非特許文献3(J. Am. Chem. Soc., 132 (43), 15127-15129 (2010))では、酸性電解液中においても、垂直配向単層CNTに窒素ドープした材料が、炭素材料に担持した白金触媒には及ばないものの、窒素ドープしていない垂直配向単層CNTに比べ優れた酸素還元触媒活性を示すことが報告されている。非特許文献2では、アルミナテンプレートにおけるN含有ポリマーの熱分解によって窒素ドープCNTを作製している。また、非特許文献3では、アンモニア雰囲気中でCVD成長させることによって窒素ドープCNTを作製している。
特開2012−164492号公報
Science, 323, 760-764 (2009) J. Phys. Chem. Lett., 1(18), 2622-2627 (2010) J. Am. Chem. Soc., 132 (43), 15127-15129 (2010)
本発明の目的は、優れた活性を示す多層カーボンナノチューブ(MWCNT)から成る燃料電池用空気極触媒(MWCNT燃料電池用空気極触媒)を、より効率的でエネルギー投入量が少ない工程で提供することである。また、本発明は優れた活性を示すMWCNT燃料電池用空気極触媒及びMWCNT燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池を提供することも目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するために、多層カーボンナノチューブから成る燃料電池用空気極触媒を製造する方法であって、原料となる多層カーボンナノチューブを準備する工程と、前記原料となる多層カーボンナノチューブの表面に金属酸化物又は金属硝酸塩の微粒子を担持させる工程と、前記表面に金属酸化物又は金属硝酸塩の微粒子を担持させた多層カーボンナノチューブを、酸素を含む雰囲気中で100〜500℃の温度で加熱する酸素処理工程と、前記酸素処理工程を行った後の前記多層カーボンナノチューブを、窒素原子を含むガス雰囲気中で100〜1500℃の温度で0.5〜10分間加熱する窒素処理工程とを含むことを特徴とする燃料電池用空気極触媒の製造方法を提供する。
このような多層カーボンナノチューブから成る燃料電池用空気極触媒を製造する方法であれば、従来の白金触媒の性能に迫る酸素還元特性を有する改質MWCNT燃料電池用空気極触媒を、従来の改質CNT燃料電池用空気極触媒に比較して、より短時間、省エネルギーのプロセスで提供することができる。
このとき、前記酸素処理工程の後、前記窒素処理工程よりも前に、前記金属酸化物の微粒子又は前記金属硝酸塩の微粒子が化学変化した金属酸化物の微粒子を酸処理により除去する工程を含むことが好ましい。
このように、金属酸化物の微粒子又は金属硝酸塩の微粒子が化学変化した金属酸化物の微粒子は、酸処理により除去することができる。
また、前記金属酸化物は、酸化コバルト、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化スズ及び酸化ニッケルの少なくともいずれか一種であり、前記金属硝酸塩は、硝酸コバルト、硝酸鉄、硝酸バナジウム、硝酸スズ及び硝酸ニッケルの少なくともいずれか一種であることが好ましい。
上記のような金属酸化物であれば、多層カーボンナノチューブの炭素の酸化反応と、炭素による還元で生成した金属酸化物の酸化反応をより効果的に繰り返すことができる。また、上記のような金属硝酸塩であれば、該金属硝酸塩が金属酸化物に容易に変化するため、上記金属硝酸塩も同様に用いることができる。
また、前記窒素原子を含むガスを、窒素及びアンモニアの少なくともいずれか一種とすることが好ましい。
窒素原子を含むガスとしてこれらの種のガスを用いることにより、より効率的に窒素ドープを実現することが可能である。
また、本発明は、多層カーボンナノチューブから成る燃料電池用空気極触媒であって、前記多層カーボンナノチューブは、側壁に細孔を有し、前記多層カーボンナノチューブは、0.3〜5.0原子%の窒素原子を含有することを特徴とする燃料電池用空気極触媒を提供する。
このような本発明の燃料電池用空気極触媒であれば、従来の白金触媒の性能に迫る酸素還元特性を有する改質MWCNTから成る燃料電池用空気極触媒を提供することが可能である。
また、本発明は、前記燃料電池用空気極触媒を具備することを特徴とする燃料電池を提供する。
このような本発明の燃料電池用空気極触媒であれば、従来の白金触媒を空気極用酸素還元触媒に用いた燃料電池の性能に迫る改質MWCNTを空気極用酸素還元触媒に用いた燃料電池を提供することができる。
本発明の多層カーボンナノチューブから成る燃料電池用空気極触媒を製造する方法により、従来の白金触媒の性能に迫る酸素還元特性を有する改質MWCNT燃料電池用空気極触媒を提供することができる。さらに、本発明によれば従来の改質CNTに比較して、より短時間、省エネルギーのプロセスで改質MWCNT燃料電池用空気極触媒を提供することが可能となる。さらに、本発明の多層カーボンナノチューブから成る燃料電池用空気極触媒は、燃料電池に用いることにより、従来の白金触媒の性能に迫る酸素還元特性を有する空気極触媒とすることができる。
(A)は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)にCoIIO微粒子(●で示す)を担持させた状態を示すMWCNT断面の模式図であり、(B)はCoIIO微粒子が酸化されCoIICoIII 微粒子(○で示す)となり、MWCNTを開孔することを示す模式図であり、(C)は前記(B)でMWCNTに生じた開孔にCoIICoIII 微粒子が存在する状態を示す模式図であり、(D)は前記(C)を酸処理してCoIICoIII 微粒子を除去して得られた有孔(欠陥)MWCNT(DMWCNT)を示す模式図である。 CoIIOが酸素(O)による酸化でCoIICoIII を生成する酸化反応と、生成したCoIICoIII がMWCNTを構成する炭素(C)による還元でCoIIOを生成する還元反応からなる酸化・還元サイクル反応の模式図である。 実施例1で得られた窒素ドープされたDMWCNT(細孔を有するMWCNT)の透過型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた窒素ドープされたDMWCNTを酸素還元触媒として用いたテスト電極のLSV(リニアスイープボルタンメトリー)特性を示す図である。 実施例1において窒素ドープされたDMWCNTの代わりに従来から使用されている白金系触媒を酸素還元触媒として用いて得られたテスト電極のLSV特性を示す図である(比較例1)。 実施例1において窒素ドープされたDMWCNTを酸素還元触媒としたテスト電極のアルカリ電解液中でのLSV特性を示す図である。 実施例1において窒素ドープされたDMWCNTの代わりに従来から使用されている白金系触媒を用いて得られたテスト電極のアルカリ電解液中での特性を示す図である(比較例1)。 実施例1で得られた窒素ドープされたDMWCNTを用いて得られた空気極(カソード電極)を用いて作製した燃料電池特性評価を示す図である。 実施例1で得られた窒素ドープされたDMWCNTの代わりに白金系触媒を用いて得られた空気極(カソード電極)を用いて作製した燃料電池特性評価を示す図である(比較例1)。 実施例2で得られた窒素ドープされたDMWCNTの透過型電子顕微鏡写真(その1)である。 実施例2で得られた窒素ドープされたDMWCNTの透過型電子顕微鏡写真(その2)である。 実施例2で得られた窒素ドープされたDMWCNTを酸素還元触媒としたテスト電極のLSV特性を示す図である。 実施例2で得られた窒素ドープされたDMWCNTを酸素還元触媒としたテスト電極のアルカリ電解液中におけるLSV特性を示す図である。 実施例2で得られた窒素ドープされたDMWCNTを用いて得られた空気極(カソード電極)を用いて作製した燃料電池の特性評価を示す図である。 比較例2で作製した、窒素ドープされていないDMWCNTを酸素還元触媒としたテスト電極のLSVデータを示す図である。 比較例2で作製した、窒素ドープされていないDMWCNTを用いて得られた空気極(カソード電極)を用いた燃料電池の特性を示す図である。 比較例3で作製した、DMWCNTに長時間(1時間)の窒素ドープを行って得られたDMWCNTを酸素還元触媒としたテスト電極の酸性溶液中でのLSVデータを示す図である。 比較例4で作製した、細孔のないMWCNTに本発明の短時間の窒素ドープを行って得られたMWCNTを酸素還元触媒としたテスト電極の酸性溶液中でのLSVデータを示す図である。
従来の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の酸素還元触媒活性は白金系触媒に比べ未だ不十分であり、燃料電池の普及、利用拡大に向けて、さらなる触媒活性の向上、触媒生産コストの低減が求められている。
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上述のように、本発明の燃料電池用空気極触媒の製造方法は、原料となる多層カーボンナノチューブを準備する工程と、前記原料となる多層カーボンナノチューブの表面に金属酸化物又は金属硝酸塩の微粒子を担持させる工程と、前記表面に金属酸化物又は金属硝酸塩の微粒子を担持させた多層カーボンナノチューブを、酸素を含む雰囲気中で100〜500℃の温度で加熱する酸素処理工程と、前記酸素処理工程を行った後の前記多層カーボンナノチューブを、窒素原子を含むガス雰囲気中で100〜1500℃の温度で0.5〜10分間加熱する窒素処理工程とを含むことを特徴とする燃料電池用空気極触媒の製造方法である。
本発明の燃料電池用空気極触媒の製造方法は、前記酸素処理工程と前記酸素処理工程後の前記窒素処理工程を含むことで、優れた活性を示すMWCNT燃料電池用空気触媒を、より効率的でエネルギー投入量が少ない工程で提供することが可能である。
以下、本発明の燃料電池用空気極触媒の製造方法をより具体的に説明する。本発明では、まずMWCNTを準備し、準備したMWCNTの表面に金属酸化物または金属硝酸塩微粒子を担持させる。
本発明では原料として多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いる。このMWCNTは、単層カーボンナノチューブよりも価格面で有利である。MWCNTとして、竹様の節がみられる、いわゆるバンブー型MWCNTを用いることもできる。MWCNTは、所望により、これを前処理により精製して用いてもよい。MWCNTの精製は、熱処理または酸処理により行うことができる。MWCNTの純度が十分に高い場合には精製は不要であるが、表面のアモルファスカーボン等の炭素屑を除去したいときは、500〜600℃程度で熱処理することが好ましい。この加熱温度は500℃以上とするとアモルファスカーボンを除去しやすく、600℃以下であるとCNTが過度に酸化されることがない。
また、MWCNT製造時に含まれる金属触媒等の不純物を除去したい場合は、酸処理によってこれを除去することができる。酸としては硫酸や硝酸等の金属触媒を溶解する酸を用いることができる。MWCNTが過度に酸化されることを防止するため、濃硫酸を使用するよりも濃硝酸に硫酸を混合したものなどを使用することが好ましい。
MWCNT表面に金属酸化物微粒子又は金属硝酸塩微粒子を担持させる方法は特に制限されない。金属酸化物微粒子又は金属硝酸塩微粒子の基材への担持方法として一般的な方法を用いることができる。例えば、酸化コバルト及び硝酸コバルトについては、次の手順に従えばよい。
[酸化コバルトの担持]
必要に応じて熱処理及び/または酸処理したMWCNTに、メタノール、エタノール等の溶剤を加え、超音波洗浄機で分散撹拌する。さらにスターラーで撹拌後、混合溶液に塩化コバルトCoCl・6HO水溶液を加える。これに、メタノール、エタノール等の溶剤、1Mのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を加え、混合溶液をスターラーで撹拌、ろ過後、メタノール、エタノール等の溶剤で洗浄し、約60℃の真空乾燥炉で乾燥させ塩化コバルト担持CNTを得た後、この塩化コバルト担持CNTを空気中、あるいは必要に応じてAr等の不活性気体雰囲気下に、100℃から300℃で加熱することにより酸化コバルト(CoIIO)微粒子を担持したCNTを得ることができる。
[硝酸コバルトの担持]
硝酸コバルト6水和物Co(NO)・6HOとメタノール、エタノール等の溶剤を混合撹拌、溶解させる。この混合物に、MWCNTを投入し、超音波洗浄機で分散させる。この混合分散液を100℃に加熱して溶剤を蒸発させ、乾燥させる。乾燥後の試料を粉砕することにより硝酸コバルトCo(NO)・6HOを担持させたMWCNT粉末を得ることができる。
MWCNT表面に担持させる金属酸化物および金属硝酸塩微粒子の粒子サイズは特に制限されない。担持後の粒子サイズは条件により異なるが0.5nm〜数nm程度である。特に酸素を含む雰囲気中で熱処理を行うことで反応後の粒子サイズは1nm〜数十nm程度とすることができる。
表面に金属酸化物または金属硝酸塩の微粒子を担持させたMWCNTを、酸素を含む雰囲気中で100〜500℃の温度で加熱する。この工程によって、金属酸化物の2つの状態、すなわち酸化状態と還元状態がサイクルする金属酸化物とMWCNTの炭素の固相反応によりMWCNT表面に細孔(欠陥)を形成、導入する。
このサイクル反応では、表面に金属酸化物微粒子を担持させたMWCNT内の炭素による金属酸化物の還元と酸素による酸化反応が繰り返されて炭素が削られることにより細孔が形成されて、すなわち、金属酸化物が炭素と酸素の反応触媒として作用することによって、表面が改質された新たな物性を持つMWCNTが得られる。
本発明で使用される金属酸化物は、カーボンナノチューブの炭素の酸化反応と、炭素による還元で生成した金属酸化物の酸化反応が繰り返される金属酸化物であればよい。また金属酸化物に容易に変化する金属硝酸塩を用いることもできる。このような金属酸化物としては、酸化コバルト、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化ニッケル等が挙げられる。この中でも、反応性が高く、より低温での反応が可能な酸化コバルトが好ましい。一方、金属硝酸塩としては、硝酸コバルト、硝酸鉄、硝酸バナジウム、硝酸スズ、硝酸ニッケル等が挙げられる。この中でも、反応性が高く、より低温での反応が可能な硝酸コバルトが好ましい。
金属酸化物が酸化コバルトの場合の反応模式図を図1に示し、その酸化・還元サイクル反応の反応式を図2に示す。図1(A)は、MWCNTにCoIIO微粒子を担持させた模式図であり、図1(B)はCoIIO微粒子が酸化されCoIICoIII 微粒子となり、MWCNTを開孔することを示す模式図である。(A)において ● はCoIIO微粒子を(B)において ○ はCoIICoIII 微粒子を示す。
図1(C)は、(B)でMWCNTに生じた開孔にCoIICoIII 微粒子が存在するMWCNT(CoIICoIII /MWCNT)を示し、(D)は、(C)のCoIICoIII /MWCNTを酸処理してCoIICoIII 微粒子を除去することにより得られた、細孔を有するMWCNT(DMWCNT)を示している。
図2は、金属酸化物微粒子がCoIIO微粒子であり、MWCNTに担持させたCoIIO微粒子表面で起きる、酸素(O)によるCoIIOの酸化反応とMWCNTの炭素(C)によるCoIICoIII の還元反応からなる酸化・還元サイクル反応を示している。
この酸化・還元サイクル反応には、酸素の存在が必要であり、酸素を含む雰囲気中で加熱することにより、目的の反応を進行させることができる。酸素濃度を変えることによって、反応を制御することができ、改質の程度を調整できる。通常は、大気圧下、空気雰囲気中で反応させればよい。反応温度は、100〜500℃、好ましくは200〜300℃である。反応温度が100℃より低いと反応に長時間を要し実際的でなく、500℃を超えるとMWCNTの消失が激しくなるので好ましくない。
[細孔(欠陥)の形成]
金属酸化物微粒子や金属硝酸塩微粒子を担持したMWCNTを空気中で熱処理することにより細孔を導入することができる。酸化コバルト、あるいは硝酸コバルトなどを担持したMWCNTを空気中で電気炉、赤外線加熱装置等を用いて比較的低温度で細孔を導入できる。なお、金属硝酸塩微粒子については、MWCNTに担持させた状態で金属酸化物微粒子に化学変化させ、炭素と酸素の反応触媒として作用させる。特に、硝酸コバルトを用いた場合は、空気中300℃、1時間処理で、硝酸コバルトを酸化コバルトに変換、MWCNTに担持させた後、空気雰囲気下、100℃〜270℃で約1分間の加熱により目的の細孔を有するMWCNTを得ることができる。なお、硝酸コバルトが酸化コバルトに変化するときの反応式は以下の通りである。
前記酸素処理工程後は、前記窒素処理工程よりも前に、金属酸化物微粒子を酸処理により除去することができる。酸としては上述のように硫酸や硝酸等の金属酸化物を溶解する酸を用いることができる。
上記の方法によれば、MWCNT骨格の結晶性を維持しながら、MWCNT表面に多数の細孔を形成することができる。この細孔は、六員環配列構造を主体とする炭素環構造(グラフェン層、グラファイト層)を有するMWCNTの炭素(壁)が部分的に失われて細孔を生じることにより形成されるものである。更に、この細孔は、MWCNTの炭素層(側壁)を部分的に、或いは完全に貫通して形成されるものである。
上記の細孔を形成する方法は、固体間で起きる固相反応を利用したものであり、細孔を生じさせる部分の制御が容易である。気相反応や液相反応では、MWCNTの全表面に均一に反応が起こるため制御しにくいが、固相反応を利用する本発明では、酸化物微粒子を担持したMWCNT表面部(局部)で反応を行うので制御が容易である。
すなわち、MWCNTに担持させる金属酸化物或いは金属硝酸塩の微粒子サイズ、担持密度(濃度)及び反応雰囲気等の制御によって、細孔径、細孔の深さ、細孔の数や密度を変えることができ、様々な性質及び用途を持つDMWCNTを作り出すことができる。例えば、酸化・還元サイクル反応の回数を増やすこと(反応時間を長くすること)によってMWCNTの壁の垂直方向に孔を開けることができ、さらにはその孔を利用して酸化物微粒子をMWCNTの内壁にも担持させて更に酸化・還元サイクル反応を行うことによって内壁にも孔をあけることができる。また、金属酸化物微粒子の担持密度を上げて、酸化・還元サイクル反応を行えば金属酸化物微粒子と酸素の反応方向がMWCNTの壁と平行方向に制御されMWCNTの薄層化も可能である。このように酸素処理工程の反応時間は適宜調整することができるが、例えば3秒〜10時間とすることができる。
本発明では、さらに窒素原子を含むガス雰囲気中で100〜1500℃の温度で0.5〜10分間加熱する工程を含む。この工程によって、細孔表面に形成された官能基を適宜に除去、制御し、さらに窒素原子をドープすることにより、燃料電池用空気極触媒にさらに好適な活性点を形成することができ、高い酸素還元触媒活性を示す材料を得ることが可能となる。高活性化のメカニズムについては、窒素に隣接する炭素の電子密度が窒素の存在によって減少するためとの報告がある(非特許文献1)。
[窒素ドープ]
細孔を形成したMWCNTは既存の細孔のないMWCNTに比べて高い酸素還元活性を示すが、窒素原子をドープすることで従来の白金系触媒に迫る触媒活性を得ることが可能となる。具体的にはArガスに窒素源となる化合物(又は窒素分子)を配合した混合ガスを用い100〜1500℃の温度で0.5〜10分間加熱することで窒素ドープされた細孔を形成したMWCNTを得ることができる。この工程により、具体的には窒素原子を0.3〜5.0原子%ドープすることができる。窒素源となるガスの選択、混合ガスの構成、温度、加熱時間により窒素ドープ量を制御することが可能である。窒素源となるガスとしては窒素(窒素分子)、アンモニア等が使用できるがアンモニアが好適に用いられる。加熱温度は100℃より低い場合は窒素ドープが進行せず、1500℃より高い場合は細孔を形成したMWCNTの損傷が激しくなり好ましくない。この窒素処理工程の温度範囲は、好ましくは、800〜1200℃である。この場合、例えば、窒素源となるガスとして窒素分子を用いる場合は、窒素が混合ガス全体の物質量比の1モル%〜25モル%とすることが好ましく、残部をAr等の不活性ガスとすることができる。また、窒素源となるガスとしてアンモニアを用いる場合は、アンモニアが混合ガス全体の物質量比の1モル%〜50モル%とすることが好ましく、残部をAr等の不活性ガスとすることができる。
本発明の製造方法では、加熱時間が0.5〜10分間と従来のガスドープによる処理時間に比べ短時間で効率的に0.3〜5原子%の窒素ドープを実現することが可能である。加熱温度等の諸条件にもよるが、0.5〜1分間のごく短時間で0.3〜5原子%の窒素ドープを行うことも可能である。
なお、窒素ドープ量が0.3原子%未満の場合は触媒活性の向上は不十分であり、5原子%を超えてドープしようとすると、より多くの細孔形成が必要となり、MWCNTの導電性や耐久性の低下によって性能向上が望めなくなる。窒素ドープ量は、好ましくは、0.3〜3原子%である。
本発明のMWCNTから成る燃料電池用空気極触媒は、MWCNTが側壁に細孔を有し、かつ0.3〜5.0原子%の窒素原子を含有するものであるが、その細孔の細孔径分布は0.1nm〜30nmの範囲であることが好ましく、0.1nm〜10nmの範囲であることがより好ましい。
また、MWCNT燃料電池用空気極触媒は、BET比表面積100〜4000m/gであることが好ましく、200〜1500m/gであることが実用的に好ましい。さらに、250〜500m/gであることが好ましく、300〜400m/gであることがより好ましい。細孔を有するMWCNTは、未改質のMWCNTに比して、比表面積の増大をもたらし、多量の窒素ドープを短時間の処理で実現し得る。
本発明の燃料電池用酸素還元空気極触媒は、常法により燃料電池の空気極として使用され、形状、大きさ等も特に制限されない。例えば、燃料極を対極として、高分子固体電解質膜を挟んだ構造のセルを形成し、セパレータがそのセルを挟んで配置され、このセルとセパレータが積み重ねられて、セルスタックを構成する。
電解液としては通常、過塩素酸、硫酸、リン酸等の強酸系の水溶液が用いられるが、KOH等の強アルカリ系の水溶液を電解液として用いることも可能である。
なお、高分子固体電解質燃料電池の酸素還元空気電極触媒の活性を示す指標としては、燃料電池セルを組んだ場合の起電力、及び酸素還元反応の開始電位が挙げられる。従来の白金系触媒を用いた燃料電池セル(酸性電解液系)では、例えば起電力0.98V、酸素還元反応開始電位0.96V(vs.RHE)の値を示す。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
〈比較例1〉
[MWCNTの精製前処理]
MWCNT(昭和電工(株)製、VGCF‐X)を500℃で1時間、大気中で加熱して精製した。精製したMWCNTを1g秤量し、濃硝酸(和光純薬工業製 硝酸含量69%)を40mLと2M硫酸(和光純薬工業製 硫酸含量97%)を40mLからなる混合溶液を蓄えた処理槽に投入した。オイルバスを使用し、処理槽中のMWCNTを含む混合分散液を、120℃で4時間、撹拌しながら沸騰させ加熱した。1時間冷却後、MWCNTを含む混合分散液を400mLになるように超純水で希釈し、さらに3時間撹拌した。MWCNTを含む混合分散液をろ過して、ろ紙上に残されたMWCNTを、200mLの超純水を使用して2回洗浄し、乾燥させ粉砕した。以下、上記の酸溶液による処理を施した後のMWCNTを、精製前処理済MWCNTとして参照する。
[酸化コバルトの担持]
0.05482gの硝酸コバルト(II)・六水和物Co(NO・6HO(和光純薬工業製、純度99.5%)と10mLのエタノールをビーカーに入れ、5分間程度撹拌し溶解させた。精製前処理済MWCNT0.1mgを上記の溶液に投入しホモジナイザーにて超音波振動処理を20分間行い分散させた。分散液を70℃に加熱しエタノールを蒸発、乾燥させた試料を粉砕した。得られた粉末をAr雰囲気下、300℃で1時間加熱することによってコバルト酸化物微粒子をMWCNTに担持させた(CoIIO/MWCNT)。
[細孔(欠陥)形成]
このコバルト酸化物微粒子を担持させたMWCNT(CoIIO/MWCNT)を適量取り、空気雰囲気下、100℃〜270℃で約1分間加熱した。温度プログラムとしては室温から270℃まで3秒で昇温後、1分で100℃まで降温させた。本発明における分単位の短時間加熱処理は全てサーモ理工(株)赤外線加熱装置IVF‐298Wを用いて行った。
[酸化コバルトの除去]
酸化コバルト微粒子がついた細孔のあるCoIIO/MWCNTを2M硫酸40mLに溶解し、25℃にてスターラーで4時間攪拌した。その後、ろ過精度0.5μm、直径47mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブレンフィルターでろ過し、超純水400mLで洗浄した後、温度60℃で一晩乾燥した。この乾燥の後、乳鉢ですりつぶすことで、酸化コバルトを除去した細孔のあるMWCNT(DMWCNT)を得た。
上記のDMWCNT及びMWCNTについてBET比表面積を測定した。前処理を行っていないMWCNTのBET比表面積は217m/gであるのに対し、DMWCNTのBET比表面積は300m/gであった。
[テスト電極の作製]
上記のDMWCNTを10mg秤量し、超純水800μLとエタノール200μLを混合した分散溶液1mLに投入した。分散溶液を超音波で30分間攪拌し、DMWCNTを分散させた。事前に鏡面となるまで研磨したグラッシーカーボン(GC)電極上に、マイクロシリンジを用いて、DMWCNT分散液を10μL量り取り、GC電極上に滴下、室温でエタノールを蒸発させた後、温度60℃で30分間、乾燥させてテスト電極を作製した。
[テスト電極を構成するDMWCNTへの窒素ドープ]
上記のテスト電極について、分子数比10%のアンモニアを配合したArガス雰囲気にて100℃〜900℃で約3分間加熱処理することでテスト電極を構成するDMWCNTへの窒素ドープを行った。温度プログラムとしては室温から900℃まで32秒で昇温後、2.5分で100℃まで降温させる加熱処理を行った。
ULVAC‐PHI製、XPS装置、PHI 5000 Versa Probe IIIにて窒素ドープされたDMWCNTの窒素ドープ量を測定したところ1.1原子%であった。またBET比表面積は358m/gであった。
図3に上記条件により作製した窒素ドープしたDMWCNTの透過電子顕微鏡(日立製 H8100)写真を示す。図中、丸印で示したようにMWCNTの側壁に直径が0.1nmから10nmの側壁を貫通しない細孔が生成していることがわかる。
[電極のクリーニング及び酸素還元電流の測定]
電解液に0.1M過塩素酸150mL、カウンター電極にグラファイト、参照電極に銀−塩化銀電極(vs.Ag/AgCl)を使用し、テスト電極を用いてセルを組み立てた後、溶液中にArガスを30分間流し、溶存ガスを除去した。Arガス置換後、CV(サイクリックボルタンメトリ)を0.05から0.8Vの電位幅で、スキャン速度を10mV/s、サイクル数を5サイクルとし電極クリーニングを行った。クリーニング後、0.05Vから0.8Vの電位幅で、スキャン速度を5mV/s、電極の回転数を1600rpmの条件でリニアスイープボルタンメトリー(LSV)測定を行った。その後、酸素ガスを30分間流し、溶液中に酸素を溶存させた。酸素ガスに置換後、0.05〜0.8Vの電位幅、スキャン速度5mV/s、電極の回転数1600rpmで以下のLSV測定を行った。
[還元電流のバックグランドの測定]
再び溶液中にArガスを流し、溶存酸素ガスを除去した。Arガス置換後、0.05 〜0.8Vの電位幅、スキャン速度5mV/sでLSV測定を3回行った。
[酸素還元電流の算出]
酸素雰囲気下で測定した酸素還元電流からArガス雰囲気下で測定した還元電流(バックグランド)を引いて、正味の酸素還元電流を算出した。正味の酸素還元電流を用いて得られたLSVのチャートを図4に示す(実施例1)。LSVチャートの電位の値は以下、全てRHEに変換して表示した。
また、窒素ドープされたDMWCNTの代わりに従来から使用されているPt/C触媒(田中貴金属社製、TEC10V30E(Pt28.7%))を酸素還元触媒とし、その他の触媒作製条件は全て実施例1に準じて作製した電極を用いた場合のLSVデータを図5に示した(比較例1)。本発明の窒素ドープされたDMWCNTは従来から使用されている白金系触媒を用いた場合と比較して、0.1V程、過電圧が高いものの、ほぼ同様の電位領域(0.87V)から酸素還元電流が発生していることが認められた(従来から使用されている白金系触媒を用いた場合の酸素還元電流発生電位は0.96Vであった)。酸素還元反応開始電位は発生する電流密度が−0.005mA/cmに到達したときの電位と定義して評価する。
LSV測定において電解液を0.1M過塩素酸の代わりに0.1M KOHを用いた場合の測定結果を図6に示した(実施例1)。同様に本発明の窒素ドープされたDMWCNTの代わりに従来から使用されているPt/C触媒(田中貴金属社製、TEC10V30E(Pt28.7%))を酸素還元触媒として用いたテスト電極において電解液を0.1M KOHとした場合のLSV測定結果を図7に示した(比較例1)。本発明の窒素ドープされたDMWCNTはアルカリ電解液中においては従来から用いられているPt/C触媒を用いたテスト電極と同様に1.01V付近から酸素還元電流が発生していることが認められ、アルカリ電解液中では、ほぼ同等の触媒活性を示すと考えられる。
[アノード電極作製]
0.9gのPt/C触媒(田中貴金属社製、TEC10V30E(Pt28.7%))、25mLの純水、5.0gのNafion(登録商標)溶液(Aldrich社製、5wt%)、および25mLのイソプロピルアルコールを予備混合した後にスターラーにて1時間撹拌し、アノード触媒スラリーを得た。その後、面積1cmのカーボンペーパー(東レ株式会社製、TGP‐H‐060)上に、アノード触媒スラリーをスプレー方式でPt/C触媒が1mg/cmになるように均一に塗布し、減圧下80℃で乾燥させた。
[カソード(酸素還元)電極作製]
上記の細孔を形成した後に窒素ドープを行ったDMWCNT15mg、900mgのイソプロピルアルコール、及び600mgのNafion(登録商標)溶液(Aldrich社製、5wt%)を予備混合し、混錬器を用いて混錬し、カソード触媒スラリーを得た。その後、面積1cmのカーボンペーパー(東レ株式会社製、TGP‐H‐060)上に、バーコーターを用いて、窒素ドープを行ったDMWCNT触媒が1mg/cmなるようにカソード触媒スラリーを均一に塗布し、80℃の減圧下で乾燥させた。
[膜−電極接合体(MEA)の作製]
上記のアノード電極とカソード電極及び電解質膜(DuPont社製、Nafion(登録商標) 212)を、アノード電極/電解質膜/カソード電極の順番に積層し、プレス装置を用いて130℃で120秒間、0.5MPaの圧力を印加し接合体を得た。
[燃料電池特性評価]
得られたMEAの両側を溝つきセパレータで挟みこみ評価セルを作成し、そのセルを特性評価用燃料電池に組み込んだ。アノード側には純水素ガスを背圧100kPa、流量50L/分で、カソード側には純酸素ガスを背圧100kPa、流量100L/分で供給し、運転温度80℃、相対湿度100%で燃料電池を運転し、電池特性評価を行った。得られた結果を図8に示す(実施例1)。
また、図9にカソード電極触媒を本発明の窒素ドープしたDWCNTの代わりに白金系触媒Pt/C触媒(田中貴金属社製、TEC10V30E(Pt28.7%))を用い、Pt量が1mg/cmとなるようにカソード電極を作製したした他は全て実施例1と同じ条件で作製した燃料電池の特性を示した(比較例1)。
実施例1の細孔を形成した後に窒素ドープを行ったDMWCNTをカソード電極触媒とした燃料電池の起電力は0.89Vであり、従来から用いられている白金系触媒(比較例1)を用いた燃料電池の起電力よりも若干低いものの、白金を全く用いない電極触媒としては良好な発電性能を有することがわかった。図9に示すように従来から用いられている白金系触媒をカソード電極とした燃料電池の起電力は0.98Vであった。燃料電池の出力に関しては同じ触媒量で比較した場合(図8と図9)には従来から用いられているPtの方が出力密度は10倍程度高くなるが、実際にはPt触媒は単独で用いることは不可能であり比較例1のように炭素上に分散担持させて用いられる(Pt比率は28.7%)。分散担持させる理由はPt触媒が凝集しやすく、そのことによってPt粒子の表面積が低下し触媒性能が大きく低下してしまうことが知られている。従って担持材料を含めたPt/C全体を触媒と考えれば、図9の燃料電池の実効的な出力密度は約3.5分の1と考えられる。一方、本発明の窒素ドープしたDMWCNTではMWCNT表面に均一に形成させた細孔部分に触媒活性点があると考えられる。従って触媒の二次凝集による活性低下はPtに比べ少ないことが期待され、実施例1のように他の材料に担持させることなく用いることができる。
〈実施例2〉
[細孔を有するMWCNT及びテスト電極の作製と窒素ドープ]
MWCNT(VGCF‐X 昭和電工株式会社製)を1g計量し、実施例1と同様に精製前処理、酸化コバルト担持、細孔形成、酸処理を行った。ただし細孔形成においては100〜270℃、25分の加熱条件で行った。
上記の細孔を形成したMWCNT(DMWCNT)について、実施例1と同じ条件で電極を形成した後、窒素ドープを行った。
ULVAC‐PHI製、XPS装置、PHI 5000 VersaProbe IIIにて窒素ドープ量を測定したところ1.3%であった。またBET表面積は379cmとなった。
上記条件で作製した窒素ドープしたDMWCNTの透過電子顕微鏡(日立製 H8100)写真を図10に示す。この図より窒素ドープされたDMWCNTの側壁に0.1nmから10nmの側壁を貫通しない細孔が生成していることがわかる。さらに図11には図10とは別の個所の透過電子顕微鏡写真を示す。DMWCNTの側壁を貫通した直径が15nmから20nmの細孔(○印で囲った)が存在していることが認められた。
[窒素ドープされたDMWCNTを用いたテスト電極のLSV測定]
実施例1と同様の条件で、作製したDMWCNTを酸素還元触媒に用いたテスト電極を作製し、窒素ドープ処理を行った後、LSVを測定した(図12)。本発明の窒素ドープされたDMWCNTは従来から使用されている白金系触媒を用いた場合(図5)と比較して、若干、過電圧が大きいものの、ほぼ同様の電位領域(0.83V)から酸素還元電流が発生していることが認められた。
また、上記評価において電解液を0.1M KOHとした以外はすべて同じ条件で、作製した窒素ドープされたDMWCNTを用いたテスト電極のLSVを測定した(図13)。アルカリ電解液中においても、作製した窒素ドープされたDMWCNTは従来から用いられている白金系触媒(図7)に若干劣るものの、ほぼ同程度の電位(0.98V)付近から酸素還元反応が始まっており、ほぼ同等の酸素還元触媒活性を示すことが認められた。
[窒素ドープされたDMWCNTをカソード電極に用いた燃料電池の評価]
実施例1と同様の条件で、作製した窒素ドープされたDMWCNTを酸素還元触媒として用いたカソード電極を作製し燃料電池評価を実施した。得られた電流−電圧曲線を図14に示す。起電力は0.77Vであり本発明の、細孔のあるMWCNTを窒素ドープした触媒をカソードに備えた燃料電池は、白金を全く用いない電極触媒としては良好な発電性能を有すると認められる。
〈比較例2〉
窒素ドープを行わないDMWCNTを酸素還元触媒として用いた以外は全て実施例1と同じ条件により作製したテスト電極によるLSVデータを図15に、窒素ドープを行っていないDMWCNTを酸素還元触媒として用いた以外は全て実施例1と同じ条件により作製したカソード電極を用いた燃料電池の評価結果を図16に示した。ULVAC‐PHI製、XPS装置、PHI 5000 Versa Probe IIIにて窒素ドープ量を測定したところ窒素ドープを行わないDMWCNTの窒素原子濃度は検出限界以下であった。
図15より窒素ドープを行わないDMWCNTが酸素還元活性を示す電位は約0.55Vであり、本発明の窒素ドープを行ったDMWCNT(実施例1、実施例2)が示す酸素還元活性電位に比べて低く、従って酸素還元触媒活性が低い事が認められた。また図16より窒素ドープを行わないDMWCNTをカソード電極に用いた燃料電池の起電力は0.79Vと本発明の窒素ドープされたDMWCNTと同程度であったものの、本発明の窒素ドープを行ったDMWCNTをカソードに用いた燃料電池に比べ出力を上げた際の出力低下が大きいことが認められた。
〈比較例3〉
窒素ドープの処理時間を実施例1の32秒から1時間に伸ばしたDMWCNTを酸素還元触媒として用いた以外は全て実施例1と同じ条件により作製したテスト電極による酸性電解液中でのLSVデータを図17に示した。
図17より窒素ドープ処理時間を1時間に伸ばしたDMWCNTを酸素還元触媒として用いたテスト電極が示す酸性電解液中での酸素還元開始電位は0.83Vであり、実施例1の32秒で900℃まで昇温し2.5分で100℃まで降温する短時間の窒素ドープを行ったDMWCNTが示す酸素還元活性電位(図4、0.87V)に比べて若干低く、従って酸素還元触媒活性が若干劣ることが認められた。
〈比較例4〉
細孔を生成させていないMWCNTを実施例1と同じ条件で窒素ドープして酸素還元触媒として用いたテスト電極による酸性電解液中でのLSVデータを図18に示した。
図18より、細孔を生成させていないMWCNTを実施例1と同じ条件で窒素ドープして酸素還元触媒として用いたテスト電極が示す酸性電解液中での酸素還元開始電位は約0.80Vであり、本発明、実施例1の窒素ドープを行ったDMWCNTが示す酸素還元活性電位に比べて低く、従って酸素還元触媒活性がより低いことが認められた。
〈比較例5〉
窒素ドープの処理時間を比較例4の32秒から1時間に伸ばしたMWCNTを酸素還元触媒として用いた以外は全て比較例4と同じ条件により作製したテスト電極による酸性電解液中でのLSV測定を行った。
その結果、窒素ドープ処理時間を1時間に伸ばしたMWCNTを酸素還元触媒として用いたテスト電極が示す酸性電解液中での酸素還元開始電位は0.83Vであり、比較例4の32秒で900℃まで昇温し2.5分で100℃まで降温する短時間の窒素ドープを行ったMWCNTが示す酸素還元活性電位に比べて若干高く、従って酸素還元触媒活性が若干優れていることが認められた。
DMWCNTの場合、実施例1と比較例3から窒素ドープの処理時間が短い方が酸素還元活性電位が高く、酸素還元触媒活性が優れている。一方、通常のMWCNTの場合、比較例4と比較例5から窒素ドープの処理時間が長い方が酸素還元活性電位が高く、酸素還元触媒活性が優れている。
すなわち、DMWCNTでは、実施例1のように短時間の窒素ドープで高い触媒活性を発現することが可能である。
以上のように、本発明の燃料電池用空気極触媒の製造方法により燃料電池用空気極北倍を製造することで、優れた活性を示すMWCNT燃料電池用空気極触媒を、より効率的でエネルギー投入量が少ない工程で提供することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (6)

  1. 多層カーボンナノチューブから成る燃料電池用空気極触媒を製造する方法であって、
    原料となる多層カーボンナノチューブを準備する工程と、
    前記原料となる多層カーボンナノチューブの表面に金属酸化物又は金属硝酸塩の微粒子を担持させる工程と、
    前記表面に金属酸化物又は金属硝酸塩の微粒子を担持させた多層カーボンナノチューブを、酸素を含む雰囲気中で100〜500℃の温度で加熱する酸素処理工程と、
    前記酸素処理工程を行った後の前記多層カーボンナノチューブを、窒素原子を含むガス雰囲気中で100〜1500℃の温度で0.5〜10分間加熱する窒素処理工程とを含むことを特徴とする燃料電池用空気極触媒の製造方法。
  2. 前記酸素処理工程の後、前記窒素処理工程よりも前に、前記金属酸化物の微粒子又は前記金属硝酸塩の微粒子が化学変化した金属酸化物の微粒子を酸処理により除去する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用空気極触媒の製造方法。
  3. 前記金属酸化物は、酸化コバルト、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化スズ及び酸化ニッケルの少なくともいずれか一種であり、前記金属硝酸塩は、硝酸コバルト、硝酸鉄、硝酸バナジウム、硝酸スズ及び硝酸ニッケルの少なくともいずれか一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用空気極触媒の製造方法。
  4. 前記窒素原子を含むガスを、窒素及びアンモニアの少なくともいずれか一種とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池用空気極触媒の製造方法。
  5. 多層カーボンナノチューブから成る燃料電池用空気極触媒であって、
    前記多層カーボンナノチューブは、側壁に細孔を有し、
    前記多層カーボンナノチューブは、0.3〜5.0原子%の窒素原子を含有することを特徴とする燃料電池用空気極触媒。
  6. 請求項5に記載の燃料電池用空気極触媒を具備することを特徴とする燃料電池。
JP2018054783A 2018-03-22 2018-03-22 燃料電池用空気極触媒及びその製造方法並びに燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池 Pending JP2019169289A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018054783A JP2019169289A (ja) 2018-03-22 2018-03-22 燃料電池用空気極触媒及びその製造方法並びに燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018054783A JP2019169289A (ja) 2018-03-22 2018-03-22 燃料電池用空気極触媒及びその製造方法並びに燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019169289A true JP2019169289A (ja) 2019-10-03

Family

ID=68108489

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018054783A Pending JP2019169289A (ja) 2018-03-22 2018-03-22 燃料電池用空気極触媒及びその製造方法並びに燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019169289A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111785971A (zh) * 2020-07-17 2020-10-16 扬州大学 一种MWCNT/PCN/Co3O4复合纳米材料的制备方法及锂硫电池正极材料
CN115020718A (zh) * 2022-06-14 2022-09-06 太原理工大学 用于甲醇氧化反应的非贵金属纳米催化剂及其制备方法
WO2023139862A1 (ja) * 2022-01-18 2023-07-27 恒林日本株式会社 燃料電池カソード用多層カーボンナノチューブ触媒及びその調製方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111785971A (zh) * 2020-07-17 2020-10-16 扬州大学 一种MWCNT/PCN/Co3O4复合纳米材料的制备方法及锂硫电池正极材料
CN111785971B (zh) * 2020-07-17 2023-05-02 扬州大学 一种MWCNT/PCN/Co3O4复合纳米材料的制备方法及锂硫电池正极材料
WO2023139862A1 (ja) * 2022-01-18 2023-07-27 恒林日本株式会社 燃料電池カソード用多層カーボンナノチューブ触媒及びその調製方法
CN115020718A (zh) * 2022-06-14 2022-09-06 太原理工大学 用于甲醇氧化反应的非贵金属纳米催化剂及其制备方法
CN115020718B (zh) * 2022-06-14 2024-02-13 太原理工大学 用于甲醇氧化反应的非贵金属纳米催化剂及其制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Sha et al. Hierarchical NiCo2O4 nanowire array supported on Ni foam for efficient urea electrooxidation in alkaline medium
JP5660917B2 (ja) 燃料電池用空気極触媒とその製造方法
Zhao et al. Activation and stabilization of nitrogen-doped carbon nanotubes as electrocatalysts in the oxygen reduction reaction at strongly alkaline conditions
Yan et al. Metal-free mesoporous carbon with higher contents of active N and S codoping by template method for superior ORR efficiency to Pt/C
JP5411123B2 (ja) 燃料電池用触媒およびその製造方法ならびにその用途
KR100728611B1 (ko) 연료전지용 전극 촉매 및 그의 제조 방법
WO2009098812A1 (ja) 炭素触媒及びこの炭素触媒を含むスラリー、炭素触媒の製造方法、ならびに、炭素触媒を用いた燃料電池、蓄電装置及び環境触媒
Gautam et al. Electrocatalyst materials for oxygen reduction reaction in microbial fuel cell
Zhang et al. A facile synthesis of nitrogen-doped highly porous carbon nanoplatelets: efficient catalysts for oxygen electroreduction
Hosseini et al. Preparation of Pt/G and PtNi/G nanocatalysts with high electrocatalytic activity for borohydride oxidation and investigation of different operation condition on the performance of direct borohydride-hydrogen peroxide fuel cell
Xiao et al. Oxygen-doped carbonaceous polypyrrole nanotubes-supported Ag nanoparticle as electrocatalyst for oxygen reduction reaction in alkaline solution
Thomas et al. Carbon nanotubes as catalyst supports for ethanol oxidation
Sayed et al. Enhancing the performance of direct urea fuel cells using Co dendrites
Rezaei et al. Porous magnetic iron-manganese oxide nanocubes derived from metal organic framework deposited on reduced graphene oxide nanoflake as a bi-functional electrocatalyst for hydrogen evolution and oxygen reduction reaction
JP2019169289A (ja) 燃料電池用空気極触媒及びその製造方法並びに燃料電池用空気極触媒を用いた燃料電池
JP2008290062A (ja) 触媒担体、触媒、触媒担体の製造方法、および触媒の製造方法
Al‐Dhaifallah et al. Co‐decorated reduced graphene/titanium nitride composite as an active oxygen reduction reaction catalyst with superior stability
Sudarsono et al. Sengon wood-derived RGO supported Fe-based electrocatalyst with stabilized graphitic N-bond for oxygen reduction reaction in acidic medium
Sarkar et al. Manganese oxide nanoparticles supported nitrogen-doped graphene: a durable alkaline oxygen reduction electrocatalyst
Chandran et al. 1D-2D integrated hybrid carbon nanostructure supported bimetallic alloy catalyst for ethanol oxidation and oxygen reduction reactions
Habibi et al. Ni@ Pt core-shell nanoparticles as an improved electrocatalyst for ethanol electrooxidation in alkaline media
Zou et al. Investigation of perovskite oxide SrFe0. 8Cu0. 1Nb0. 1O3-δ as cathode for a room temperature direct ammonia fuel cell
Jiang et al. Zn, S, N self-doped carbon material derived from waste tires for electrocatalytic hydrogen evolution
Zhang et al. Electro-oxidation of methanol based on electrospun PdO–Co3O4 nanofiber modified electrode
JP5252776B2 (ja) 燃料電池用電極触媒及びその製造方法