以下、本発明の実施の形態による絶縁監視装置を、変圧器の二次側電線を含んだ電気設備に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1〜図15に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図12は本発明の第1の実施の形態を示している。図において、変圧器1は二次側回路2を有し、この二次側回路2は、R相、S相、T相の3つの相からなる三相三線デルタ結線であり、後述の二次側電線3、抑制抵抗4およびB種接地線5等を含んで構成されている。変圧器1の二次側電線3は、例えばR相電線3R,S相電線3SおよびT相電線3Tからなる三相三線デルタ結線である。
これらのR相電線3R,S相電線3SおよびT相電線3Tのうち、S相電線3SのS相が中性相とされており、変圧器1の二次側電線3は、抑制抵抗4が接続されたB種接地線5を経由してグランドに接地されている。抑制抵抗4は、漏電が発生したときに変圧器1のB種接地線5に流れる電流を抑制するために、B種接地線5に挿入されている。抑制抵抗4は、図1に示すように、抵抗Ryの値に設定されている。
B種接地線5には、絶縁監視用の信号として商用周波数(50Hz 、60Hz )とは異なる特定周波数の監視信号(例えば、20Hz の重畳電圧)を重畳する監視信号発生器6と、B種接地線5に流れる電流を検出する電流センサであるカレントトランス(以下、CT7という)と、が接続されている。監視信号発生器6とCT7とは、後述の漏電監視ユニット8に接続されている。漏電監視ユニット8は、B種接地線5に流れる電流に含まれる前記特定周波数の電流を検出する電流検出手段をCT7と共に構成している。
図2に示すように、漏電監視ユニット8は、その入力側(即ち、A/Dコンバータ8A側)に、CT7、第1の電圧センサ9および第2の電圧センサ10等が接続され、出力側には報知装置11が接続されている。報知装置11は、漏電の検出時に、早期に電路を遮断するために警報を発する装置であり、例えば警報機器、表示器または音声合成装置等で構成されている。
第1の電圧センサ9は、図1に示すR相電線3R,S相電線3SおよびT相電線3Tのうち、接地相となるS相電線3Sとグランドとの間の地電圧Vne′を振幅と位相情報として検出する電圧検出器である。第2の電圧センサ10は、前記接地相とは別の相(例えば、R相電線3R)と前記接地相(S相電線3S)との間の線間電圧Vx′(即ち、線間電圧Vr′)を振幅と位相情報として検出する電圧検出器である。
漏電監視ユニット8は、図2に示すように、A/Dコンバータ8Aと演算部8Bと記憶部8Cとを備えている。この記憶部8Cは、例えばROM,RAMおよび/または不揮発性メモリ等によって構成されている。記憶部8Cには、後述の図8に示す地絡相判別マップ、図10に示す地絡相判別マップ作成処理用のプログラム、図11に示す漏電監視処理用のプログラム、図12に示す地絡相判別処理用のプログラムと、地絡点電流Iaが警報を発すべき電流値まで過大になっているか否かを判定するための閾値電流Ith等とが格納されている。
漏電監視ユニット8の演算部8Bは、CT7で検出される電流から前記重畳電圧と同一周波数(前記特定周波数)の電流を検出し、この電流に基づいてIgr方式により変圧器1の二次側電線3(R相電線3R,S相電線3SまたはT相電線3T)とグランドとの間の地絡抵抗Rおよび静電容量Cを後述の如く算出する機能を備えている。即ち、漏電監視ユニット8の演算部8Bは、特定周波数の電流の有効成分および無効成分に基づき、変圧器1の二次側電線3(R相電線3R,S相電線3SまたはT相電線3T)の地絡抵抗Rを求める抵抗算出手段としての機能を備える。
また、漏電監視ユニット8の演算部8Bは、後述の地絡相判別手段による地絡相での静電容量Cを、前記地絡相での地絡抵抗R、線間電圧Vxおよび地電圧信号Vneに基づいて、下記の数10式により算出する静電容量算出手段としての機能を備えている。さらに、漏電監視ユニット8の演算部8Bは、前記静電容量算出手段による静電容量C等に基づいて漏電電流(地絡点電流Ia)を、下記の数12〜数14式により演算する漏電電流演算手段としての機能も備えている。
漏電監視ユニット8の前記地絡相判別手段は、前記接地相とグランドとの間の電位差に含まれる前記商用周波数と、変圧器1の1つの相の前記商用周波数に基づいて、前記一線地絡が生じた相を判別する機能(例えば、図12に示す地絡相判別処理参照)を有している。前記漏電電流演算手段(例えば、図11のステップ15参照)は、前記地絡抵抗Rに流れる漏電電流(地絡点電流Ia)を算出する。なお、漏電監視ユニット8は、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、不揮発性メモリおよび/またはハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
図1に示すように、二次側電線3に接続された負荷設備12とグランドとの間に存在する抵抗と静電容量は、R相電線3R,S相電線3S,T相電線3Tとグランドとの間にそれぞれ存在する抵抗Rr,Rs,Rtと静電容量Cr、Cs、Ctとして表される。R相電線3Rとグランドとの間には、抵抗Rrと静電容量Crとが並列に配置されている。S相電線3Sとグランドとの間には、抵抗Rsと静電容量Csとが並列に配置され、T相電線3Tとグランドとの間には、抵抗Rtと静電容量Ctとが並列に配置されている。
図3に示すように、第1の電圧センサ9で検出される地電圧Vne′は、X−Y座標上での電圧(Xb′,Yb′)としてベクトル表示される。第2の電圧センサ10で検出される線間電圧Vr′は、X−Y座標上での電圧(Xc′,Yc′)としてベクトル表示される。地電圧Vne′と線間電圧Vr′とは同一時間(同一時刻)の信号特性を表している。地電圧Vne′は、線間電圧Vr′に対して位相差θの位置にあり、地電圧Vne′と線間電圧Vr′の振幅は、下記の数1式でそれぞれ求められる。
ここで、線間電圧Vr′の位相を、図3に示す角度θ1だけ変位させて、図4に示すように、線間電圧Vr(Xc,Yc)、Yc=0とすると、地電圧Vne′は、線間電圧Vr(Xc,0)を基準とした地電圧信号Vne(Xb,Yb)に補正できる。補正された地電圧信号Vneは、補正後の線間電圧Vrに対して位相差θの位置にあり、地電圧信号Vneの振幅は、下記の数2で求められる。線間電圧Vrの振幅は、Yc=0であるため、Vr=Xcとなる。
R相電線3RとS相電線3Sとの電位差は線間電圧Vrであり、T相電線3TとR相電線3Rとの電位差は線間電圧Vtであり、S相電線3SとT相電線3Tとの電位差は線間電圧Vsである。そして、二次側電線3は、R相電線3R,S相電線3SおよびT相電線3Tからなる三相三線デルタ結線(三相三線環境)であるから、線間電圧Vrと線間電圧Vtと線間電圧Vsとは、一般にそれぞれが120度の位相差となる。このため、線間電圧Vr=Xc=200ボルトとした場合、線間電圧Vtと線間電圧Vsとは、下記の数3で表される。
次に、図5は、R相、S相、T相の三相で地絡成分(抵抗、静電容量)を合成した図1の等価回路図である。R相電線3Rでの地絡成分(抵抗Rr、静電容量Cr)を合成したインピーダンスZr、T相電線3Tでの地絡成分(抵抗Rt、静電容量Ct)を合成したインピーダンスZt、S相電線3Sでの地絡成分(抵抗Rs、静電容量Cs)を合成したインピーダンスZsは、下記の数4式を満たす関係となる。
ここで、図5中の抑制抵抗4(抵抗Ry)をS相の地絡成分(インピーダンスZs)と合成したインピーダンスZs′は、図6の等価回路として表される。このインピーダンスZs′は、S相のインピーダンスZsと抑制抵抗4の抵抗Ryとに対して下記の数5式を満たす関係となる。
図6の等価回路は、例えば図7のように書き換えることができ、それぞれの閉路電流をI1,I2と仮定し、キルヒホッフの法則を適用すると、インピーダンスZt,Zr,Zs′と線間電圧Vt,Vrの関係は、下記の数6式を満たす関係となる。そして、閉路電流I2は、数6式から下記の数7式のように求められる。
また、地電圧信号Vneは、インピーダンスZs′と閉路電流I2とを乗算して下記の数8式で求められる。閉路電流I2は、前記数7式によって求められるので、これを下記の数8式に代入することにより、地電圧信号Vneは、下記の数9式として求められる。
三相三線の環境では、前記数3式のように、線間電圧Vrと線間電圧Vtとを求めることができる。地電圧信号Vneは第1の電圧センサ9で検出され、線間電圧Vrは第2の電圧センサ10で検出される。インピーダンスZr,Zs′,Ztと、抵抗Rr,Rt,Rs,Ry、静電容量Cr,Ct,Csとの関係は、前記数4式、数5式により求めることができる。
漏電監視ユニット8は、変圧器1の二次側電線3に一線地絡が発生した場合に、二次側電線3(R相電線3R、S相電線3S、T相電線3T)のうちいずれの相で地絡が発生しているかを地絡相判別手段により判別する。そして、静電容量算出手段は、地絡相での静電容量C(Fはファラド)を前記地絡相での地絡抵抗R、線間電圧Vx(本実施の形態では、線間電圧Vr)および地電圧信号Vneに基づいて下記の数10式により算出する。数10式による静電容量Cは、各相の静電容量成分を同一(Cは各相の静電容量となり、C=Cr=Ct=Cs)と仮定し、角周波数ωとしたとき、下記の計算式により算出できる。
ここで、地電圧信号Vneは第1の電圧センサ9で検出され、線間電圧Vrは第2の電圧センサ10で検出される。抑制抵抗4の抵抗Ryは既知の値であり、線間電圧Vtは、前記数3式のように求めることができる。抵抗Rr,Rs,Rtは、地絡相の抵抗であるか否かによって抵抗値が決められる。即ち、地絡相の抵抗でない場合は、抵抗値を無限に大きな値として数10式に代入する。例えば、抵抗Rrが地絡相の抵抗でない場合、数10式中の値(1/Rr)は零と見做すことができる。他の抵抗Rs,Rtの値についても同様である。
一方、抵抗Rr,Rs,Rtのうちいずれか一の抵抗が、後述の地絡相判別手段により地絡相での地絡抵抗と判定された場合、漏電監視ユニット8の演算部8Bは、前記抵抗算出手段として前記特定周波数の電流の有効成分および無効成分に基づいて地絡抵抗Rを算出する。この地絡抵抗Rは、従来の漏電監視装置と同様な手法により抵抗値を測定し算出することができる。
一例として、R相で地絡が発生していると判別される場合は、図1中に示す抵抗Rrが地絡抵抗Rとして算出される。この場合、数10式中の値(1/Rs),(1/Rt)は零と見做して演算を行うことができる。一方、S相またはT相で地絡が発生していると判別された場合は、図1中に示す抵抗RsまたはRtが地絡抵抗Rとして算出される。
次に、図8〜図10を参照して地絡相を判別する処理について説明する。
図10は地絡相判別マップ作成処理の手順を示している。まず、ステップ1では、前述した数1〜数9式のように、地電圧信号VneをインピーダンスZr,Zs′,Zt(即ち、前記数4式、数5式による抵抗Rr,Rt,Rs,Ryと静電容量Cr,Ct,Cs)および線間電圧Vr,Vtにより求めるようにする。三相三線の環境では、線間電圧Vrと線間電圧Vtとを、前記数3式のように求めることができる。
次のステップ2では、例えば抵抗値0〜1000Ωの範囲で地絡抵抗Rを順次異なる値に変更して前記数9式中に代入すると共に、静電容量Cを0〜30μF(各相合計)の範囲で順次異なる値に変更して前記数9式中に代入し、これにより、それぞれの代入値に従った地電圧信号Vneを求める。次のステップ3では、このように求められた地電圧信号Vneを、例えば図9に示すX−Y座標のように「X+jY」の形に解き、実数(X)と虚数(Y)のベクトル図を描く。
次のステップ4では、図9に示すベクトル分布図の作成が完了したか否かを判定する。ステップ4で「NO」と判定する間は、前記ステップ2に戻り、これ位以降の処理を繰返す。そして、ステップ4で「YES」と判定したときには、図9に示すベクトル分布図の作成が完了した場合であり、次のステップ5においては、図9のベクトル分布図を、例えば図8に示す地絡相判別マップとして漏電監視ユニット8の記憶部8Cに記憶させる。
ここで、図9に示す特性線13〜15は、T相で地絡が発生していると仮定して地絡抵抗R(即ち、抵抗Rt)を抵抗値0〜1000Ωの範囲で順次変更して前記数9式に代入し、かつ静電容量C(即ち、静電容量Ct)を0〜30μFの範囲で順次変更して代入した場合の地電圧信号Vneを、「X+jY」の形に解いた実数(X)と虚数(Y)のベクトル図で表している。特性線13(実質的には1つの点)は、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rt)が抵抗値0Ωの場合で、この場合は、静電容量C(即ち、静電容量Ct)を0〜30μFの範囲で変更しても、地電圧信号Vneは一つの点にほぼ収束する特性として表わされる。
特性線14は、例えば地絡抵抗R(即ち、抵抗Rt)が抵抗値125Ωの場合で、静電容量C(即ち、静電容量Ct)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線14に沿って変化する特性となる。その後、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rt)を抵抗値125〜1000Ωまで順次変更し、抵抗値1000Ωとした場合には、静電容量C(即ち、静電容量Ct)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線15に沿って変化する特性となる。
次に、図9に示す特性線16〜18は、R相で地絡が発生していると仮定して地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr)を抵抗値0〜1000Ωの範囲で順次変更して前記数9式に代入し、かつ静電容量C(即ち、静電容量Cr)を0〜30μFの範囲で順次変更して代入した場合の地電圧信号Vneを、「X+jY」の形に解いた実数(X)と虚数(Y)のベクトル図で表している。特性線16(実質的には1つの点)は、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr)が抵抗値0Ωの場合で、この場合は、静電容量C(即ち、静電容量Cr)を0〜30μFの範囲で変更しても、地電圧信号Vneは一つの点にほぼ収束する特性として表わされる。
特性線17は、例えば地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr)が抵抗値125Ωの場合で、静電容量C(即ち、静電容量Cr)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線17に沿って変化する特性となる。その後、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr)を抵抗値125〜1000Ωまで順次変更し、抵抗値1000Ωとした場合には、静電容量C(即ち、静電容量Cr)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線18に沿って変化する特性となる。
次に、図9に示す特性線19〜21は、S相で地絡が発生していると仮定して地絡抵抗R(即ち、抵抗Rs)を抵抗値0〜1000Ωの範囲で順次変更して前記数9式に代入し、かつ静電容量C(即ち、静電容量Cs)を0〜30μFの範囲で順次変更して代入した場合の地電圧信号Vneを、「X+jY」の形に解いた実数(X)と虚数(Y)のベクトル図で表している。特性線19(実質的には1つの点)は、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rs)が抵抗値0Ωの場合で、この場合は、静電容量C(即ち、静電容量Cs)を0〜30μFの範囲で変更しても、地電圧信号Vneは一つの点にほぼ収束する特性として表わされる。
特性線20は、例えば地絡抵抗R(即ち、抵抗Rs)が抵抗値125Ωの場合で、静電容量C(即ち、静電容量Cs)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線20に沿って変化する特性となる。その後、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rs)を抵抗値125〜1000Ωまで順次変更し、抵抗値1000Ωとした場合には、静電容量C(即ち、静電容量Cs)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線21に沿って変化する特性となる。
地電圧信号Vneの特性線13〜15(T相で地絡が発生した場合)と、地電圧信号Vneの特性線16〜18(R相で地絡が発生した場合)と、地電圧信号Vneの特性線19〜21(S相で地絡が発生した場合)とから判断すると、地電圧信号Vneを図9に示すX−Y座標のように「X+jY」の形に解き、実数(X)と虚数(Y)のベクトル分布図として作成した特性は、特定のパターンを有していることが分かる。
この特定のパターンは、静電容量C(即ち、静電容量Cr、Ct,Cs)を0〜30μFの範囲で順次大きくし、さらに、これ以上に大きくすればするほど、地電圧信号Vneは、図9に示すX−Y座標上でのオフセット位置「Xo+jYo」に近付くパターンであることが確認された。なお、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr,Rt,Rs)を抵抗値1000Ω以下に設定したのは、1000Ω以上に抵抗値を大きくしたら、地絡相(R相、S相、T相のいずれで地絡が発生しているか)を判別するのが難しくなるからである。地絡抵抗Rが1000Ωを超えた場合は、漏電電流(地絡点電流Ia)が微弱な電流となり、例えば図11に示すステップ16では「NO」、即ち閾値電流Ithよりも小さいと判定される。
地電圧信号Vneは、図9に示すX−Y座標上でのオフセット位置「Xo+jYo」に近付くパターンのベクトル分布図で表される。この場合のオフセット位置「Xo+jYo」は、例えば下記の数11式によるオフセット位置であることが確認された。
図9に示すx−y座標は、X−Y座標上でのオフセット位置「Xo+jYo」を座標の原点(0,0)としたオフセット後の座標である。図9のベクトル分布図は、x−y座標にオフセットされた図8に示す地絡相判別マップとして漏電監視ユニット8の記憶部8Cに記憶される。図8に示す地絡相判別マップは、x−y座標の原点(0,0)からx軸に沿って正方向に延びる境界線22と、x−y座標の原点(0,0)から第2象限を斜めに延びる境界線23と、x−y座標の原点(0,0)から第3象限を斜めに延びる境界線24とにより地絡相が、T相(境界線22,23の間)と、S相(境界線23,24の間)と、R相(境界線22,24の間)とに区分されている。
境界線22は、x軸に対して角度が零であり、境界線23は、例えば130度前,後の角度でx軸に対して斜めに傾斜している。境界線24は、例えば210度前,後の角度でx軸に対して斜めに傾斜している。T相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、境界線22,23の間の位相範囲となる。また、S相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、境界線23,24の間の位相範囲となる。一方、R相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、境界線22,24の間の位相範囲となる。
第1の実施の形態による絶縁監視装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、漏電監視ユニット8による漏電監視処理を、図11の処理手順に従って説明する。
図11の処理が開始されると、漏電監視ユニット8はCT7で検出される電流から前記重畳電圧と同一周波数(前記特定周波数)の電流を検出し、この電流に基づいて二次側電線3に一線地絡(漏電)が発生しているか否かをステップ11で判定する。ステップ11で「NO」と判定する間は、この判定処理を続ける。ステップ11で「YES」と判定したときには、次のステップ12で地絡相判別処理を後述の図12に示す手順に沿って行う。
次のステップ13では、変圧器1の二次側電線3(R相電線3R,S相電線3SまたはT相電線3T)とグランドとの間の地絡抵抗Rを算出する。即ち、漏電監視ユニット8の演算部8Bは、抵抗算出手段として前記特定周波数の電流の有効成分および無効成分に基づいて地絡抵抗Rを、従来の漏電監視装置と同様な手法により算出することができる。ステップ13の処理は、地絡抵抗Rを求める抵抗算出手段の具体例を示している。
次のステップ14では、変圧器1の二次側電線3(R相電線3R,S相電線3SまたはT相電線3T)とグランドとの間の地絡相での静電容量Cを前記数10式により算出する。即ち、漏電監視ユニット8は、後述の図12に示す地絡相判別処理による地絡相での静電容量Cを、前記地絡相での地絡抵抗R、線間電圧Vrおよび地電圧信号Vneに基づいて数10式により算出する。ステップ14の処理は、静電容量算出手段の具体例を示している。
次のステップ15では、二次側電線3に一線地絡が生じた場合に、二次側電線3(R相電線3R,S相電線3SまたはT相電線3T)とグランドとの間の静電容量が同一(即ち、C=Cr=Ct=Cs)であると仮定して、前記一線地絡による漏電電流(地絡点電流Ia)を前記地絡相での静電容量Cに基づいて算出する。ステップ15の処理は、漏電電流演算手段の具体例を示している。
例えば、S相で地絡が発生している場合の地絡点電流Iaを漏電電流Iasとすると、この漏電電流Iasは下記の数12式により演算して求めることができる。また、R相で地絡が発生している場合の地絡点電流Iaを漏電電流Iarとすると、この漏電電流Iarは下記の数13式により演算して求めることができる。T相で地絡が発生している場合の地絡点電流Iaを漏電電流Iatとすると、この漏電電流Iatは下記の数14式により演算して求めることができる。
次のステップ16では、漏電電流(地絡点電流Ia)が予め決められた閾値電流Ith以上となっているか否かを判定する。ステップ16で「NO」と判定する間は、地絡点電流Iaが閾値電流Ithよりも小さく、微弱な電流値と判断できるので、前記ステップ11に戻り、これ以降の処理を繰返す。一方、ステップ16で「YES」と判定したときには、次のステップ17で報知装置11を作動させて警報を発し、二次側電線3(即ち、R相電線3R,S相電線3SまたはT相電線3Tのいずれか)に一線地絡による漏電が生じていることを警告するための報知を行う。
次に、図12を参照して地絡相判別処理について説明する。
図12の処理がスタートとすると、ステップ21で地電圧Vne′と線間電圧Vr′の振幅と位相情報を、第1,第2の電圧センサ9,10から同一時間の信号として読み込む。次のステップ22では、前記地電圧Vne′の位相情報を前記線間電圧Vr′の位相情報を基準にして補正し、位相が補正された地電圧信号Vneと線間電圧Vrとを算出する。このステップ22は、信号算出手段の具体例を示している。
次のステップ23では、漏電監視ユニット8の記憶部8Cから図8に例示する地絡相判別マップを読み出す。次のステップ24では、位相が補正された地電圧信号Vneに、オフセット「Xo+jYo」(例えば、Xo=100,Yo=100√3)を加算する。これにより、地電圧信号Vneは、例えば図8に示す原点(0,0)と基準としたx−y座標上の位置、即ちオフセット後の座標位置に座標変換される。
次のステップ25では、オフセット後の地電圧信号Vneが図8に示す地絡相判別マップのうち、いずれの位相範囲(R相、S相またはT相のいずれ)に位置しているかを判別する。T相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、境界線22,23の間の位相範囲となる。また、S相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、境界線23,24の間の位相範囲となる。一方、R相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、境界線22,24の間の位相範囲となる。
かくして、第1の実施の形態によると、漏電監視ユニット8は、第1の電圧センサ9で検出した地電圧Vne′の位相情報を、第2の電圧センサ10で検出した線間電圧Vr′の位相情報を基準にして補正し、位相が補正された地電圧信号Vneと線間電圧Vrとを算出する信号算出手段(図12中のステップ22)と、前記信号算出手段で算出した前記地電圧信号Vneの振幅と位相情報に基づいてR相、S相、T相の三相からなる変圧器の二次側電線3のうち、いずれの相で地絡が発生しているかを判別する地絡相判別手段(図12中のステップ25)と、特定周波数の電流の有効成分および無効成分に基づいて前記地絡相判別手段による地絡相での地絡抵抗Rを求める抵抗算出手段(図11中のステップ13)と、前記地絡相判別手段による地絡相での静電容量Cを前記地絡相での地絡抵抗R、前記線間電圧Vrおよび前記地電圧信号Vneに基づいて算出する静電容量算出手段(図11中のステップ14)と、該静電容量算出手段による静電容量Cに基づいて漏電電流(地絡点電流Ia)を演算する漏電電流演算手段(図11中のステップ15)と、を含んで構成されている。
このように構成することにより、漏電監視ユニット8は、変圧器1の二次側電線3に一線地絡が発生した場合に、R相、S相、T相の三相からなる二次側電線3(R相電線3R,S相電線3S、T相電線3T)のうちいずれの相で地絡が発生しているかを地絡相判別手段により判別することができる。このため、地絡相判別手段で判別した地絡相での静電容量Cを前記地絡抵抗R、線間電圧Vrおよび地電圧信号Vneに基づいて算出することができ、算出した静電容量Cに基づいて演算する漏電電流(地絡点電流Ia)の算出精度を向上することができる。
これに対し、例えば特許文献1の従来技術では、漏電が発生したときに変圧器のB種接地線に流れる電流を抑制するために設けた抑制抵抗により、B種接地線に重畳される監視信号が減衰されることがあり、漏電電流(地絡点電流)を正確に算出することが難しい。しかも、従来技術では、R相、S相、T相の三相からなる変圧器の二次側電線のうち、いずれの相で地絡が発生しているかを判別する地絡相判別が不十分であり、これによっても、漏電電流(地絡点電流)の算出精度が低下するという問題がある。
そこで、第1の実施の形態によれば、上述の如き構成を採用することにより、B種接地線5に流れる電流を抑制する抑制抵抗4を設置した場合でも、漏電電流(地絡点電流Ia)の算出精度を向上することができ、電気設備の絶縁状態を高精度に監視することができる。また、本実施の形態によれば、電源設備が発するノイズ成分の影響を受けにくくなり、地絡相での静電容量Cの算出をより正確に行うことができる。しかも、地絡抵抗Rのある相がR相、S相、T相のいずれであるかを判別しているために、地絡点電流Iaを正確に算出することができる。
次に、図13ないし図15は第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、変圧器の二次側電線を単相三線結線とした電気設備に、絶縁監視装置を適用する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態で採用した変圧器31は二次側回路32を有し、この二次側回路32は、単相三線結線からなる二次側電線33を有している。変圧器31の二次側電線33は、例えばR相電線33R,S相電線33SおよびT相電線33T(即ち、R相、S相、T相)からなる単相三線結線である。変圧器31を単相三線電源とした場合、二次側電線33は、単相交流電力を3本のケーブル(R相電線33R,S相電線33SおよびT相電線33T)により供給する配電方式となる。
R相電線33R,S相電線33SおよびT相電線33Tのうち、S相電線33S(S相)は中性相とされており、変圧器1の二次側電線33は、抑制抵抗34が接続されたB種接地線35を経由してグランドに接地されている。抑制抵抗34は、第1の実施の形態で述べた抑制抵抗4とほぼ同様に構成され、B種接地線35の途中に配置(挿入)されている。B種接地線35には、第1の実施の形態と同様に、監視信号発生器6とCT7とが接続されている。
第1の電圧センサ9は、図13に示すR相電線33R,S相電線33SおよびT相電線33Tのうち、接地相となるS相電線33Sとグランドとの間の地電圧Vne′を振幅と位相情報として検出する。第2の電圧センサ10は、前記接地相とは別の相(例えば、R相電線33R)と前記接地相(S相電線33S)との間の線間電圧Vx′(即ち、線間電圧Vr′)を振幅と位相情報として検出する。
単相交流においては、線間電圧Vrと線間電圧Vsは同位相となり、これに対し線間電圧Vtは180度異なる逆位相となる。このため、線間電圧Vr=100ボルトとした場合、線間電圧Vtは、Vt=−Vr−Vs=−200ボルトとなり、線間電圧Vs=100ボルトとなる。なお、第1の実施の形態(三相三線環境)では、線間電圧Vr,Vt,Vsが前記数3式で求められ、単相三線環境とは異なっている。
図13に示すように、二次側電線33に接続された負荷設備36とグランドとの間に存在する抵抗と静電容量は、R相電線33R,S相電線33S,T相電線33Tとグランドとの間にそれぞれ存在する抵抗Rr,Rs,Rtと静電容量Cr、Cs、Ctとして表される。R相電線33Rとグランドとの間には、抵抗Rrと静電容量Crとが並列に配置されている。S相電線33Sとグランドとの間には、抵抗Rsと静電容量Csとが並列に配置され、T相電線33Tとグランドとの間には、抵抗Rtと静電容量Ctとが並列に配置されている。
次に、変圧器31の二次側電線33を単相三線結線とした場合の地絡相判別マップ作成処理について説明する。
単相三線の場合も、図10に示す処理手順に従って地絡相判別マップを作成することができる。即ち、この場合も前記数9式のように、地電圧信号VneをインピーダンスZr,Zs′,Ztおよび線間電圧Vr,Vtにより求めるようにする。単相三線の環境では、線間電圧Vrを100ボルトとし、線間電圧Vtを−200ボルトとして演算を行うことができる。
次に、図10中のステップ2において、例えば抵抗値0〜1000Ωの範囲で地絡抵抗Rを順次異なる値に変更して前記数9式中に代入すると共に、静電容量Cを0〜30μF(各相合計)の範囲で順次異なる値に変更して前記数9式中に代入し、これにより、それぞれの代入値に従った地電圧信号Vneを求める。次のステップ3では、このように求められた地電圧信号Vneを、例えば図14に示すX−Y座標のように「X+jY」の形に解き、実数(X)と虚数(Y)のベクトル図を描く。図14に示すベクトル分布図の作成が完了した場合(例えば、図10のステップ15)において、図14のベクトル分布図を地絡相判別マップとして漏電監視ユニット8の記憶部8Bに記憶させる。
ここで、図14に示す特性線37〜39は、R相で地絡が発生していると仮定して地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr)を抵抗値0〜1000Ωの範囲で順次変更して前記数9式に代入し、かつ静電容量C(即ち、静電容量Cr)を0〜30μFの範囲で順次変更して代入した場合の地電圧信号Vneを、「X+jY」の形に解いた実数(X)と虚数(Y)のベクトル図で表している。特性線37(実質的には1つの点)は、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr)が抵抗値0Ωの場合で、この場合は、静電容量C(即ち、静電容量Cr)を0〜30μFの範囲で変更しても、地電圧信号Vneは一つの点にほぼ収束する特性として表わされる。
特性線38は、例えば地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr)が抵抗値125Ωの場合で、静電容量C(即ち、静電容量Cr)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線38に沿って変化する特性となる。その後、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rr)を抵抗値125〜1000Ωまで順次変更し、抵抗値1000Ωとした場合には、静電容量C(即ち、静電容量Cr)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線39に沿って変化する特性となる。
次に、図14に示す特性線40〜42は、T相で地絡が発生していると仮定して地絡抵抗R(即ち、抵抗Rt)を抵抗値0〜1000Ωの範囲で順次変更して前記数9式に代入し、かつ静電容量C(即ち、静電容量Ct)を0〜30μFの範囲で順次変更して代入した場合の地電圧信号Vneを、「X+jY」の形に解いた実数(X)と虚数(Y)のベクトル図で表している。特性線40(実質的には1つの点)は、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rt)が抵抗値0Ωの場合で、この場合は、静電容量C(即ち、静電容量Ct)を0〜30μFの範囲で変更しても、地電圧信号Vneは一つの点にほぼ収束する特性として表わされる。
特性線41は、例えば地絡抵抗R(即ち、抵抗Rt)が抵抗値125Ωの場合で、静電容量C(即ち、静電容量Ct)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線41に沿って変化する特性となる。その後、地絡抵抗R(即ち、抵抗Rt)を抵抗値125〜1000Ωまで順次変更し、抵抗値1000Ωとした場合には、静電容量C(即ち、静電容量Ct)を0〜30μFの範囲で変更することにより、地電圧信号Vneは特性線42に沿って変化する特性となる。
一方、S相で地絡が発生していると仮定して地絡抵抗R(即ち、抵抗Rs)を抵抗値0〜1000Ωの範囲で順次変更して前記数9式に代入し、かつ静電容量C(即ち、静電容量Cs)を0〜30μFの範囲で順次変更して代入しても、単相三線の場合は地電圧信号Vneが0ボルト(値が零)になる。これにより、S相で地絡が発生した場合は、地電圧信号Vneの振幅が所定値の電圧(例えば、10ボルト)未満になると判断することができる。これに対し、地絡相がR相またはT相の場合は、地電圧信号Vneの振幅が所定値の電圧(例えば、10ボルト)以上であると判断することができる。
地電圧信号Vneの特性線37〜39(R相で地絡が発生した場合)と、地電圧信号Vneの特性線40〜42(T相で地絡が発生した場合)と、地電圧信号Vneが実質的に零(S相で地絡が発生した場合)とから判断すると、地電圧信号Vneを図14に示すX−Y座標のように「X+jY」の形に解き、実数(X)と虚数(Y)のベクトル分布図として作成した特性は、特定のパターンを有していることが分かる。
この特定のパターンは、静電容量C(即ち、静電容量Cr、Ct,Cs)を0〜30μFの範囲で順次大きくし、さらに、これ以上に大きくすればするほど、地電圧信号Vneは、図14に示すX−Y座標上での原点(0,0)に近付いてゆくパターンであることが確認された。単相三線の場合は、図14のベクトル分布図をオフセット変換することなく、地絡相判別マップとして漏電監視ユニット8の記憶部8Bに記憶される。
図14に示す地絡相判別マップにおいては、地電圧信号Vneの振幅が所定値の電圧未満か否か、地電圧信号Vneの振幅がX−Y座標の原点(0,0)に対して第2象限に位置するか、第4象限に位置するかによって、地絡相がR相(第4象限)とT相(第2象限)とに区分される。即ち、R相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、その振幅が前記所定値以上となり、位相が図14に示すX−Y座標上で第4象限の位相範囲となる。
また、T相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、その振幅が前記所定値以上となり、地電圧信号Vneの位相は、図14に示すX−Y座標上で第2象限の位相範囲となる。一方、S相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、その振幅(電圧)が前記所定値未満で、実質的に零に近い値となる。このように、図14に示す地絡相判別マップを参照することにより、漏電発生時の地絡相がR相、T相またはS相のいずれであるかを判別することができる。
ここで、第2の実施の形態においては、地絡相判別処理を図15に示す処理手順に従って行う。図15に示すステップ31,32は、第1の実施の形態(図12のステップ21,22)と同様に行い、位相が補正された地電圧信号Vneと線間電圧Vxとを算出する。このステップ32は、信号算出手段の具体例を示している。次のステップ33では、漏電監視ユニット8の記憶部8Cから図14に例示する地絡相判別マップを読み出す。
次のステップ34では、位相が補正された地電圧信号Vneの振幅が所定値(例えば、10ボルト)未満であるか否かを判定する。ステップ34で「YES」と判定したときには、S相で地絡が発生していると判別する。一方、ステップ34で「NO」と判定したときには、次のステップ36で、地電圧信号Vneが14に示す地絡相判別マップのうち、いずれの位相範囲(R相またはT相のいずれ)に位置しているかを判別する。R相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、図14のX−Y座標において第4象限の位相範囲となる。一方、T相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、図14のX−Y座標において第2象限の位相範囲となる。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、前記第1の実施の形態と同様に、漏電監視ユニット8による漏電監視処理を、図11の処理手順に従って行うことができ、地絡相判別手段で判別した地絡相(R相またはT相)での静電容量Cを地絡抵抗R、線間電圧Vrおよび地電圧信号Vneに基づいて算出することができる。この上で、算出した静電容量Cに基づいて演算する漏電電流(地絡点電流Ia)の算出精度を向上することができる。
しかし、第2の実施の形態では、図14に示す地絡相判別マップを参照することにより、漏電発生時の地絡相がR相、T相またはS相のいずれであるかを判別することができる。即ち、R相で地絡が発生した場合は、地電圧信号Vneの振幅が前記所定値以上となり、位相が図14に示すX−Y座標上で第4象限の位相範囲にあるとして判別できる。また、T相で地絡が発生した場合は、地電圧信号Vneの振幅が前記所定値以上となり、地電圧信号Vneの位相は、図14に示すX−Y座標上で第2象限の位相範囲になるとして判別することができる。
一方、S相で地絡が発生した場合の地電圧信号Vneは、その振幅(電圧)が前記所定値未満で、実質的に零に近い値となる。これにより、単相三線の場合でも漏電発生時の地絡相が、R相、T相またはS相のいずれであるかを判別することができ、漏電電流(地絡点電流Ia)の算出精度を向上することができる。但し、単相三線の場合は、S相地絡で地電圧信号Vneが発生しないので、静電容量Cの算出は行わない。
なお、前記第1の実施の形態では、R相電線3RとS相電線3Sとの間の線間電圧Vr′を、第2の電圧センサ10により検出する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばT相電線3TとS相電線3Sとの間の線間電圧Vs′を、第2の電圧センサ10により線間電圧Vx′として検出する構成としてもよい。また、例えばT相電線3TとR相電線3Rとの間の線間電圧Vt′を、第2の電圧センサ10により線間電圧Vx′として検出する構成としてもよい。この点は第2の実施の形態についても同様である。
また、前記各実施の形態では、監視信号発生器6から、例えば20Hzの重畳電圧(特定周波数の監視信号)を流す場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、商用周波数と異なる特定周波数(例えば、12.5Hzまたは15Hz)の監視信号を監視信号発生器6からB種接地線に流す構成としてもよい。