JP2019145964A - イヤホン - Google Patents
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Abstract
【課題】 再生する音波の出口がユーザーの外耳道入り口に挿入されるカナル型のイヤホンに関し、スピーカーユニットを取り付けた場合に適切な音圧周波数特性を得るハウジングを構成して、明瞭で好ましい音声再生を実現するイヤホンを提供する。【解決手段】 ハウジングが、第1音響空間に連通して音波をユーザーの外耳道に導く主音響通路を形成するノズル部と、第1音響空間に連通して音波を外部空間に導く第1音響通路を形成し、かつ、第2音響空間に連通して音波を外部空間に導く第2音響通路を形成するリークポート部と、を備え、リークポート部が、第1音響通路並びに第2音響通路のそれぞれの外部空間側の開口を、スピーカーユニットを間に置く位置関係になるハウジングのノズル部とは反対側のハウジング背面部に設ける。【選択図】 図1
Description
本発明は、ユーザーの耳に装着されて音声再生するイヤホンに関して、特に、再生する音波の出口がユーザーの外耳道入り口に挿入されるイヤホンに関する。
ヘッドホン並びにイヤホンは、ユーザーの耳に当接するように近接配置されるスピーカーユニットに音声信号を印加することにより音を再生する。ユーザーの耳に装着されるイヤホンの中には、様々な形態のものがある。
例えば、イヤホンの中には、ヘッドホンのように比較的に大きなスピーカーユニットを備えて、耳介に本体を載せるように装着する耳掛部を備えるものがある。また、本体部を耳介の内側に収めるように装着し、本体部の放音面から外耳道に向け音を放出して使用するインナーイヤー型がある。また、本体部を耳介の内側に収めるように装着し、さらに本体部から突出する音筒部をそれに装着されたイヤピースと共に外耳道内に挿入して使用するカナル型と称されるタイプのイヤホンが普及している。
スピーカーユニットは、小型なものになるほど、高い音圧レベルを得て、かつ、音声再生周波数帯域を十分に広げて良好な再生音質を確保するのが難しくなる。ユーザーの耳に装着されるインナーイヤー型またはカナル型のイヤホンにおけるスピーカーユニットでも、同様の問題が生じる。特に、再生する音波の出口がユーザーの外耳道入り口に挿入されるカナル型のイヤホンでは、スピーカーユニットを取り付けるハウジングが小さく、必要十分な音声再生能力を有する振動板口径が大きいスピーカーユニットを採用するのが難しく、ハウジングの構造による影響を受けやすいという問題がある。
従来の特に低周波音を調整可能なイヤホンに関しては、前チャンバ、調音体、後チャンバ及び前チャンバと後チャンバ内に取り付けられたスピーカーユニットを包含し、前チャンバは出音筒体を包含し、出音筒体の後端が径方向に沿って外向きに突伸してクローズカバーを形成し、クローズカバーの側縁が垂直に後方に延伸されてクローズ筒が形成され、クローズカバーの前表面の一側に円形を呈する開放溝が開設され、開放溝の底壁にクローズカバーを貫通する調音孔が開設され、前チャンバのクローズ筒に調音孔と連通する洩気孔が開設される。上述の調音体は回転可能に前チャンバに取付けられ、柱状を呈するベースブロックを包含し、ベースブロックの後表面より後方に、横断面積がベースブロックより小さい調音柱が延伸され、且つ調音柱の一側に、洩気孔に対応する切欠きが内向きに形成される。前述の後チャンバと前チャンバが相互に組み合わされて接続され、スピーカーユニットが前チャンバと後チャンバが組み合わされて形成するチャンバ内に収容されるものがある(特許文献1)。
また、従来には、内部に音響空間が形成され、前面に筒状の導音部が突設された筐体と、前記導音部に装着され、外耳道に挿入されるイヤーパッドと、第1通気孔を有し、前記筐体内に設けられて前記音響空間を第1音響空間と第2音響空間とに分離するフレームと、前記フレームに取り付けられ、電気信号を第1音波に変換して前記導音部へ出力する電気音波変換部と、前記フレームに取り付けられた音圧調整部と、を備え、前記音圧調整部は、前記第1通気孔に連通する第3音響空間と、前記第2音響空間及び前記第3音響空間に連通する筒状の第2通気孔と、前記第2通気孔内に挿入され、この挿入位置の調整によって所定の周波数帯域の音圧を低減する第1音響抵抗と、を有することを特徴とするカナル型イヤホンがある(特許文献2)。
例えば、カナル型イヤホンのハウジングにおいて、振動板の前側の音響空間に連通するノズル以外のリークポートが無い場合には低音域の再生能力が高くなりやすいので、適切なリークポートを設けて、メッシュなどの音響抵抗材を組み合わせて、低音域の音圧再生レベルを下げるように音響的な性能を設計する場合がある。また、リークポートを有さないようなカナル型のイヤホンでは、イヤピースが外耳道を密閉するので、聴取者がイヤホンを外耳道に挿脱する際に動電型スピーカーユニットの振動板に高い圧力がかかり、振動板並びにボイスコイルからなる振動系を損傷するなどの不具合が発生する場合がある。外耳道内空間の密閉度が高いので、イヤピースを聴取者の外耳道に挿脱する際に外耳道内空間の気圧の変化が大きくなり、聴取者の鼓膜にも大きな気圧変化が加わるという問題がある。
ただし、従来のイヤホンは、更に改良が望まれる。特に、再生する音波の出口がユーザーの外耳道入り口に挿入されるカナル型のイヤホンでは、極めて小さい内部空間を形成するハウジングの構成が、再生する音波の音圧周波数特性に影響を与えるので、低音域の音圧を適切に調整して再生音声を明瞭に聞こえるようにしなければ、自然で好ましい音声再生を実現するのが難しいという問題がある。
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、再生する音波の出口がユーザーの外耳道入り口に挿入されるカナル型のイヤホンに関し、スピーカーユニットを取り付けた場合に適切な音圧周波数特性を得るハウジングを構成して、明瞭で好ましい音声再生を実現するイヤホンを提供することにある。
本発明のイヤホンは、音声信号を音波に電気音響変換するスピーカーユニットと、その内部にスピーカーユニットを取り付けて、スピーカーユニットの振動板の一方側と他方側とにそれぞれ第1音響空間と第2音響空間とを規定するハウジングと、を備えるイヤホンであって、ハウジングが、第1音響空間に連通して音波をユーザーの外耳道に導く主音響通路を形成するノズル部と、第1音響空間に連通して音波を外部空間に導く第1音響通路を形成し、かつ、第2音響空間に連通して音波を外部空間に導く第2音響通路を形成するリークポート部と、を備え、リークポート部が、第1音響通路並びに第2音響通路のそれぞれの外部空間側の開口を、スピーカーユニットを間に置く位置関係になるハウジングのノズル部とは反対側のハウジング背面部に設ける。
好ましくは、本発明のイヤホンは、リークポート部において、第1音響通路の太さが第2音響通路の太さよりも細く形成され、第1音響通路の長さが第2音響通路の長さよりも長く形成される。
また、好ましくは、本発明のイヤホンは、リークポート部において、第1音響通路および第2音響通路が、それぞれ曲がりのない直管状の管として、互いに平行に形成される。
また、好ましくは、本発明のイヤホンは、リークポート部において、第1音響通路および/または第2音響通路が、柔軟性を有する筒状材と、筒状体を屈曲させることなくハウジングの内壁部に添って固定する溝部と、により形成される。
また、好ましくは、本発明のイヤホンは、リークポート部が、ハウジング背面部の第1音響通路並びに第2音響通路のそれぞれの開口に蓋をして、第1音響通路および/または第2音響通路を開閉する蓋開閉機構を有する。
また、好ましくは、本発明のイヤホンは、リークポート部の蓋開閉機構が、ハウジング背面部の第1音響通路並びに第2音響通路のそれぞれの開口に対応する複数の孔を有する蓋板を有し、蓋板には、第1音響通路および第2音響通路が共に開状態になる孔の組み合わせと、第1音響通路または第2音響通路のいずれか一方が開状態になり他方が閉状態になる孔および蓋の組み合わせと、第1音響通路および第2音響通路が共に閉状態になる蓋の組み合わせと、の内で少なくとも2つの組み合わせが選択可能になるように孔および蓋が形成されている。
また、好ましくは、本発明のイヤホンは、リークポート部において、第1音響通路および/または第2音響通路が、開口に通気性を有する保護部材を更に備える。
また、好ましくは、本発明のイヤホンは、ハウジングが、ノズル部の先端にユーザーの外耳道に挿入されるイヤピースを取り付けるイヤピース取付部を備え、イヤピース取付部に取り付けるイヤピースをさらに備える。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明のイヤホンは、音声信号を音波に電気音響変換するスピーカーユニットと、その内部にスピーカーユニットを取り付けて、スピーカーユニットの振動板の一方側と他方側とにそれぞれ第1音響空間と第2音響空間とを規定するハウジングと、を備える。ハウジングは、第1音響空間に連通して音波をユーザーの外耳道に導く第1音響通路を形成するノズル部を備える。したがって、ハウジングのノズル部が、ユーザーの外耳道に挿入されるイヤピースを取り付けるイヤピース取付部をさらに有していれば、イヤピースが外耳道に密着するカナル型のイヤホンを実現できる。
このイヤホンのハウジングは、第1音響空間に連通して音波を外部空間に導く第1音響通路を形成し、かつ、第2音響空間に連通して音波を外部空間に導く第2音響通路を形成するリークポート部を備える。リークポート部は、第1音響通路並びに第2音響通路のそれぞれの外部空間側の開口を、スピーカーユニットを間に置く位置関係になるハウジングのノズル部とは反対側のハウジング背面部に設ける。したがって、リークポート部から外耳道に近いところへの音漏れが発生しないので、イヤホンの再生音質が劣化せずに、良好で好ましい音声再生を実現することができる。
イヤホンのリークポート部は、第1音響通路の太さが第2音響通路の太さよりも細く形成され、第1音響通路の長さが第2音響通路の長さよりも長く形成されるようにするのが好ましい。上記の条件を満たして第1音響通路の開口をハウジング背面部に設けることで、適切な音圧周波数特性を得ることができる。また、第1音響通路および第2音響通路が、それぞれ曲がりのない直管状の管として、互いに平行に形成することができる。また、リークポート部においては、第1音響通路および/または第2音響通路が、開口に通気性を有する保護部材を更に備えるようにしてもよい。開口端部に通気性を有する保護部材を更に備える場合には、開口端部から筒状材の内部に異物が混入して第1音響通路および/または第2音響通路が閉じてしまう、または、狭くなるといった不具合を防止することができる。
また、第1音響通路および/または第2音響通路は、柔軟性を有する筒状材と、筒状体を屈曲させることなくハウジングの内壁部に添って固定する溝部と、により形成することができる。カナル型のイヤホンにおいて、適切な音圧周波数特性を得るのに細くて長い寸法の第1音響通路並びに第2音響通路を形成しなければならない場合であっても、柔軟性を有する筒状材がハウジングに添って固定されているので、ハウジングからリークポート部が著しく突出するようなことがなく、ハウジング全体を小型化できる。その結果、自然で好ましい音声再生を実現することができる。
好ましくは、イヤホンのリークポート部が、ハウジング背面部の第1音響通路並びに第2音響通路のそれぞれの開口に蓋をして、第1音響通路および/または第2音響通路を開閉する蓋開閉機構を有していれば、低音域の音圧周波数特性を適切に調整することができる。例えば、リークポート部の蓋開閉機構は、ハウジング背面部の第1音響通路並びに第2音響通路のそれぞれの開口に対応する複数の孔を有する蓋板を有するようにすればよい。蓋板には、第1音響通路および第2音響通路が共に開状態になる孔の組み合わせと、第1音響通路または第2音響通路のいずれか一方が開状態になり他方が閉状態になる孔および蓋の組み合わせと、第1音響通路および第2音響通路が共に閉状態になる蓋の組み合わせと、の内で少なくとも2つの組み合わせが選択可能になるように孔および蓋が形成されていれば、少なくとも複数の音圧周波数特性で定まる再生音質を、使用者が選ぶことができる。
本発明のイヤホンは、スピーカーユニットを取り付けた場合に適切な音圧周波数特性を得るリークポート部を含むハウジングを構成して、明瞭で好ましい音声再生を実現するカナル型のイヤホンを提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態によるイヤホンについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
図1は、本発明の好ましい実施形態によるイヤホン1について説明する図である。具体的には、図1(a)は、ユーザーの片耳に装着するイヤホン1をその背面側から見た背面図を示し、図1(b)は、図1(a)のA−A’断面の断面図である。なお、本発明の説明に不要な他のイヤホン1の構成については、図示及び説明を省略する。
本実施例のイヤホン1は、再生する音波の出口がユーザーの耳介の外耳道孔に挿入されるカナル型のイヤホンである。イヤホン1は、ユーザーの左右耳にそれぞれ装着する略左右対称形状のイヤホンを備えて、ステレオ再生に対応することができる。以下では、イヤホン1の片方の耳に対応する構成を説明する。もちろん、イヤホン1の形態は、本実施例の場合に限定されない。
イヤホン1は、そのハウジング2に、コード5を介して音声信号を供給することで音を再生するスピーカーユニット3が取り付けられている。スピーカーユニット3は、磁気空隙を有する磁気回路を備え、磁気空隙に挿入されて音声信号が供給されるボイスコイルに連結した振動板を振動させる動電型の電気音響変換器である。スピーカーユニット3は、(図示しない)振動板の前面側および背面側に、逆位相の関係となる音波を放射する。したがって、ハウジング2は、スピーカーユニット3の振動板の一方側と他方側とを分離するように、スピーカーユニット3を取り付ける必要がある。
本実施例のハウジング2は、ユーザーの耳介の外耳道孔の大きさに相当するような口径のスピーカーユニット3を取り付けることができる。ハウジング2は、ノズル部を含む略円筒形状のベース部材11と、ベース部材11の後方側に連結してキャビティを構成するハウジング部材12を含む。ハウジング2のベース部材11およびハウジング部材12は、スピーカーユニット3の振動板の前方側に音響空間17を規定し、スピーカーユニット3の磁気回路が存在する後方側に、音響空間17とは分離した音響空間18を形成する。
ベース部材11は、金属材料又は樹脂材料から構成され、スピーカーユニット3を内壁部に取り付けるスピーカーユニット取付部を備える。スピーカーユニット3の外径フレームは、略円筒形状のベース部材11のスピーカーユニット取付部の内径寸法にほぼ一致する外形寸法を有する。ベース部材11は、ユーザーの耳介の外耳道孔に挿入されるように、スピーカーユニット取付部よりも先端側が細く形成されるノズル部を含む。ノズル部は、音響空間17に連通して音波をユーザーの外耳道に導く音響通路を、その内部側に形成する。
ベース部材11のノズル部には、イヤピース6を取り付けるイヤピース取付部が、外周面に形成されている。弾性を有する笠形状のイヤピース6を取り付ければ、イヤピース6が外耳道孔に密着するカナル型のイヤホンを実現できる。イヤピース6は、ベース部材11のノズル部のイヤピース取付部に取り付けられる筒状固定部と、筒状固定部の先端から外側に開くように形成されて外耳道に挿入される笠部と、を有する。イヤピース6により、ユーザーは耳介にイヤホン1を安定して装着することができる。なお、ノズル部の開口端部には、通気性を有する保護部材としての保護ネット7が取り付けられている。保護ネット7は、ノズル部の開口端部から内部に異物が混入して音響通路が閉じてしまう、などの不具合を防止する。
一方で、ハウジング部材12は、金属材料又は樹脂材料から構成され、スピーカーユニット3に音声信号を供給するコード5を固定するコードブッシュ4が連結される。コードブッシュ4は、内部にコード5を含むように柔軟なゴム材料で形成されて、その一方側がハウジング部材12の取付孔に取り付けられている。ハウジング2にプラグ接続用のジャックを設けるイヤホン1の場合には、ハウジング部材12には、スピーカーユニット3に音声信号を供給するコード5を接続するコード接続部として、コードブッシュ4に代えてコード5の先端のプラグが差し込まれるジャックを備えていてもよい。
ハウジング部材12は、音響空間17とは分離して形成される音響空間18を規定する。ハウジング部材12は、ベース部材11のノズル部とはスピーカーユニット3を間に置く位置関係になる反対側に、ハウジング背面部20を備える。本実施例のハウジング背面部20は、略円筒形のハウジング部材12の端面を形成する平面として構成されている。ハウジング背面部20には、後述するリークポート部の第1音響通路の開口15と、第2音響通路の開口16と、が出現する。
つまり、ベース部材11およびハウジング部材12は、音響空間17に連通して音波を外部空間に導く第1音響通路であるリークポート13と、音響空間18に連通して音波を外部空間に導く第2音響通路であるリークポート14とを含むリークポート部を備える。本実施例では、リークポート13およびリークポート14は、図1(a)の断面図で示すように、それぞれ曲がりのない直管状の管として、互いに平行に形成される。リークポート13の太さは、リークポート14の太さよりも細く形成され、リークポート13の長さは、リークポート14の長さよりも長く形成されている。
このイヤホン1のハウジング2では、上記の条件を満たしてリークポート13の開口15およびリークポート14の開口16をハウジング背面部20に設けることで、カナル型のイヤホンで増加しやすい低音域の音圧再生レベルを下げるように適切な音圧周波数特性を実現することができ、その結果、明瞭で好ましい音声再生を実現することができる。また、リークポート13およびリークポート14は、ハウジング2の側面側にそれらの開口15および16が出現しないように、ハウジング背面部20に引き出される。リークポート13の開口15およびリークポート14の開口16から外耳道に近いところへの音漏れが発生しないので、イヤホン1の再生音質が劣化せずに、良好で好ましい音声再生を実現することができる。
また、本実施例のカナル型のイヤホン1においては、ハウジング2の第1音響空間17に連通するリークポート13がその開口15をハウジング背面部20に設けているので、聴取者がイヤホン1を外耳道に挿脱する際にイヤピース6が外耳道を密閉しても、リークポート13を通じて通気する。したがって、イヤホン1のイヤピース6を挿脱する際にスピーカーユニット3の振動板に高い圧力がかかり、振動板並びにボイスコイルからなる振動系を損傷するなどの不具合が発生するのを防ぐことができる。もちろん、イヤピース6を聴取者の外耳道に挿脱する際に外耳道内空間の気圧の大きな変化が無くなるので、聴取者の鼓膜にも大きな気圧変化が加わらなくなる利点がある。
リークポート13およびリークポート14は、それぞれ柔軟性を有するシリコン樹脂を材料とする中空の筒状材であるチューブを用いて直管状ではない音響通路を構成してもよい。その場合には、ベース部材11およびハウジング部材12の内壁部に溝部を設けて、筒状体を屈曲させることなくハウジング2の内壁部に添って固定して、リークポート13およびリークポート14を形成し、それらの開口15並びに16をハウジング背面部20に設ければよい。筒状体をハウジング2の内壁部に固定するには、接着剤、あるいは、両面テープなどの接着材料を用いてもよい。
リークポート13およびリークポート14の長さ並びに内径は、音響空間17および音響空間18の空気室容積に合わせて調整するのが好ましい。また、リークポート13およびリークポート14に用いる筒状材は、必要な内径寸法を得られる柔軟性を有する中空のチューブ材であればよく、その材料はシリコン樹脂に限らない。筒状材は、シリコン樹脂以外であってもよく、例えば、ゴム系材料、エラストマー樹脂材料、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂材料であってもよい。
なお、リークポート13の開口15と、リークポート14の開口16と、には、通気性を有する保護部材としての(図示しない)保護ネットを取り付けてもよい。保護ネットは、リークポート部のそれぞれの開口15および16から内部に異物が混入して音響通路が閉じてしまう、などの不具合を防止する。また、これらの保護ネットを音響抵抗材として組み合わせることで、低音域の音圧再生レベルを適切に下げるように音響的な性能を設計することができる。また、ハウジング背面部20には、リークポート13の開口15と、リークポート14の開口16と、を覆って固定する(図示しない)カバーを設けてもよい。カバーに意匠性を与えてイヤホン1の外観の美観を改善することができる。
図2は、本発明の他の好ましい実施形態によるイヤホン1aについて説明する図である。具体的には、図2(a)は、ユーザーの片耳に装着するイヤホン1aをその背面側から見た背面図を示し、図2(b)は、図2(a)のA−A’断面の断面図である。なお、上記実施例のイヤホン1と共通する構成、ならびに、本発明の説明に不要な他のイヤホン1aの構成については、説明を省略する。
上記実施例のイヤホン1と本実施例のイヤホン1aの相違点は、イヤホン1aが、ハウジング背面部20にリークポート13の開口15並びにリークポート14の開口16に蓋をして、第1音響通路および/または第2音響通路の開閉を制御する蓋開閉機構をさらに有している点である。
イヤホン1aにおける蓋開閉機構は、略円形状のハウジング背面部20のほぼ中央に、略円盤状の蓋体21を軸22により軸支して回転可能に取り付けて構成されている。蓋体21は、所定の厚みの金属材料又は樹脂材料から構成され、その中心に軸22が位置する。蓋体21には、軸22を中心として回転する場合に、ハウジング背面部20のリークポート13の開口15並びにリークポート14の開口16の位置に対応する所定の位置に、複数の貫通孔25a、25c、26b、26cが設けられている。したがって、イヤホン1aを使用する聴取者は、蓋体21の外周縁部を指で回転させるように操作すれば、リークポート13および/またはリークポート14の開閉状態を調整することができ、その結果、低音域の音圧周波数特性を適切に調整することができる。
例えば、本実施例のイヤホン1aは、図2に図示する場合には、リークポート13の開口15の位置に蓋体21に設けられた貫通孔25aが位置しているので、リークポート13が通気可能な開状態になっている。ここで、蓋体21において、軸22および貫通孔25aを通過する仮想直線23上には、他の貫通孔は設けられていない。したがって、図2(b)に図示するように、リークポート14の開口16は蓋体21によって塞がれて通気しない閉状態になる。このように、イヤホン1aは、一方のリークポート13を開状態にして、他方のリークポート14を閉状態にすることができる。
同様に、蓋体21においては、リークポート14の開口16の位置に他の貫通孔26bが位置するように設けられている。また、軸22および貫通孔26bを通過する仮想直線上には、他の貫通孔は設けられていない。したがって、開口16と蓋体21の貫通孔26bを一致させるようにしてリークポート14を開状態にすると、もう一方のリークポート13の開口15は蓋体21によって塞がれて通気しない閉状態になる。このように、イヤホン1aは、一方のリークポート13を閉状態にして、他方のリークポート14を開状態にすることができる。
さらに、蓋体21においては、リークポート13の開口15の位置に他の貫通孔25cが位置するように設けられ、かつ、リークポート14の開口16の位置に他の貫通孔26cが位置するように設けられている。つまり、貫通孔25c、軸22および貫通孔26cは、これらを通過する仮想直線上に配置されている。したがって、リークポート13の開口15と蓋体21の貫通孔25cを一致させるようにしてリークポート13を開状態にすると、もう一方のリークポート14の開口16も貫通孔26cと連通して開状態になる。このように、イヤホン1aは、一方のリークポート13を開状態にして、他方のリークポート14も開状態にすることができる。
また、本実施例のイヤホン1aは、例えば蓋体21を図2(a)に図示する場合から約90度回転させて、図示する仮想直線24を垂直にするように位置させると、軸22を通過する仮想直線24上には貫通孔が設けられていないので、蓋体21は、リークポート13の開口15とリークポート14の開口16とを、共に塞いで通気しない閉状態にすることができる。
本実施例の蓋開閉機構は、略円形状のハウジング背面部20のほぼ中央に、略円盤状の蓋体21を軸22により軸支して回転可能に取り付けて構成されているので、蓋体21に設ける複数の貫通孔の組み合わせをさらに変えることで、リークポート13および/またはリークポート14の開閉状態を調整することができる。複数の貫通孔の径の大きさ、長さ、位置、数量は、組み合わせ自在である。蓋開閉機構における開閉状態の組み合わせは、少なくとも2つの組み合わせが選択可能になればよい。イヤホン1aの低音域の音圧周波数特性を適切に選択することができる。
図3は、本発明の他の好ましい実施形態によるイヤホン1bについて説明する図である。具体的には、図3(a)は、ユーザーの片耳に装着するイヤホン1bをその背面側から見た背面図を示し、図3(b)は、図3(a)のA−A’断面の断面図である。なお、上記実施例のイヤホン1、または、イヤホン1aと共通する構成、ならびに、本発明の説明に不要な他のイヤホン1bの構成については、説明を省略する。
上記実施例のイヤホン1と本実施例のイヤホン1bの相違点は、イヤホン1bが上記実施例のイヤホン1aと同様に、ハウジング背面部20にリークポート13の開口15並びにリークポート14の開口16に蓋をして、第1音響通路および/または第2音響通路の開閉を制御する蓋開閉機構をさらに有している点である。
イヤホン1bにおける蓋開閉機構は、略円形状のハウジング背面部20にスライド蓋機構を有する蓋体31が取り付けられて構成されている。蓋体31は、所定の厚みの金属材料又は樹脂材料から構成され、その中央付近に長い溝32が形成されている。蓋体31の溝32の内側には、ハウジング背面部20のリークポート13の開口15並びにリークポート14の開口16の位置に対応する所定の位置に、貫通孔35および36がそれぞれ設けられている。また、蓋体31の溝32の内側には、スライドする蓋部材33および34が取り付けられている。したがって、イヤホン1bを使用する聴取者は、蓋部材33並びに34を指でスライドさせるように操作すれば、リークポート13および/またはリークポート14の開閉状態を調整することができ、その結果、低音域の音圧周波数特性を適切に調整することができる。
例えば、本実施例のイヤホン1bは、図3に図示する場合には、蓋体31においては、蓋部材33がリークポート13の開口15を塞がず、かつ、蓋部材34がリークポート14の開口16を塞がない位置にスライドされている。したがって、一方のリークポート13を開状態にして、他方のリークポート14も開状態にすることができる。
本実施例のイヤホン1bでは、聴取者は、蓋部材33と蓋部材34をそれぞれ独立にスライド操作できる。したがって、蓋部材33がリークポート13の開口15を塞ぐようにすれば、リークポート14の開閉状態に関わらず、リークポート13を閉状態にすることができる。同様に、蓋部材34がリークポート14の開口16を塞ぐようにすれば、リークポート13の開閉状態に関わらず、リークポート14を閉状態にすることができる。蓋開閉機構における開閉状態の組み合わせは、少なくとも2つの組み合わせが選択可能になればよい。イヤホン1bの低音域の音圧周波数特性を適切に選択することができる。
図4は、本実施例のイヤホン1bの音圧周波数特性について説明するグラフであり、横軸は入力音声信号の周波数を示し、縦軸は測定治具である耳型に装着した場合の外耳道での音圧レベルを示す。本実施例のイヤホン1bにおいて、蓋体31の蓋部材33と蓋部材34をそれぞれスライド操作させて、リークポート13並びにリークポート14の開閉状態を変更させた場合を図示している。したがって、図4は、カナル型のイヤホン1bにおける低音域の音圧周波数特性を選択可能な範囲の一例を表している。図4に示すように、リークポート13並びにリークポート14の開閉状態を変更させることにより、イヤホン1bの音圧周波数特性は大きく変化する。
図4の(A)のグラフは、蓋体31を操作してリークポート13を閉状態にして、かつ、リークポート14を開状態とした場合の音圧周波数特性である。スピーカーユニット3の振動板の前方側に規定される音響空間17に連通するリークポート13を閉状態にすると、低音域の音圧再生レベルがかなり大きくなる。したがって、低音域の音圧を適切に調整して再生音声を明瞭に聞こえるようにすることが望まれる可能性がある。
図4の(B)のグラフは、蓋体31を操作してリークポート13を開状態にして、かつ、リークポート14を開状態とした場合の音圧周波数特性である。スピーカーユニット3の振動板の前方側に規定される音響空間17に連通するリークポート13を開状態にすると、閉状態に比較して低音域の音圧再生レベルが低下する。その結果、約300Hz〜1kHzがおおよそフラットな特性となるように改善されて、自然で好ましい音声再生を実現することができる。したがって、低音域の音圧を適切に調整して再生音声を明瞭に聞こえるようにすることができる。
図4の(C)のグラフは、蓋体31を操作してリークポート13を開状態にして、かつ、リークポート14を閉状態とした場合の音圧周波数特性である。スピーカーユニット3の振動板の後方側に規定される音響空間18に連通するリークポート14を閉状態にすると、開状態に比較して低音域の音圧再生レベルが極めて低下する。したがって、低音域の音圧を抑制することで、再生音声を明瞭に聞こえるようにすることができる。
第1音響通路(リークポート13)および/または第2音響通路(リークポート14)の開閉を制御する蓋開閉機構は、上記実施例のような蓋体21または31に限られない。蓋開閉機構は、それぞれの開口に対して独立に、また、連動して蓋をして開閉を制御するものであればよい。また、蓋開閉機構において、リークポート13および14に連通する開口に通気性を有する保護部材、制動部材を設けてもよい。異物が混入してリークポート13および14が閉じてしまう、または、狭くなるといった不具合を防止することができる。
本発明のイヤホンは、図示するようなカナル型のイヤホンに限らず、さらに別の耳掛け部を備えるイヤホンであってもよい。また、イヤホンに限らず、ヘッドバンドにより左右両耳に対応するイヤホンを連結して、オーバーヘッドタイプのイヤホンを構成してもよい。イヤホンは、家庭用のステレオ再生、もしくはマルチチャンネルサラウンド再生に限られず、車載用のオーディオ機器や、映画館等の音響再生設備にも適用が可能である。
1、1a、1b イヤホン
2 ハウジング
3 スピーカーユニット
4 コードブッシュ
5 コード
6 イヤピース
7 保護ネット
11 ベース部材
12 ハウジング部材
13、14 リークポート
15,16 開口
17、18 音響空間
20 ハウジング背面部
21、31 蓋部材
2 ハウジング
3 スピーカーユニット
4 コードブッシュ
5 コード
6 イヤピース
7 保護ネット
11 ベース部材
12 ハウジング部材
13、14 リークポート
15,16 開口
17、18 音響空間
20 ハウジング背面部
21、31 蓋部材
Claims (8)
- 音声信号を音波に電気音響変換するスピーカーユニットと、
その内部に該スピーカーユニットを取り付けて、該スピーカーユニットの振動板の一方側と他方側とにそれぞれ第1音響空間と第2音響空間とを規定するハウジングと、を備えるイヤホンであって、
該ハウジングが、該第1音響空間に連通して音波をユーザーの外耳道に導く主音響通路を形成するノズル部と、該第1音響空間に連通して音波を外部空間に導く第1音響通路を形成し、かつ、該第2音響空間に連通して音波を該外部空間に導く第2音響通路を形成するリークポート部と、を備え、
該リークポート部が、該第1音響通路並びに該第2音響通路のそれぞれの該外部空間側の開口を、該スピーカーユニットを間に置く位置関係になる該ハウジングの該ノズル部とは反対側のハウジング背面部に設ける、
イヤホン。 - 前記リークポート部において、前記第1音響通路の太さが前記第2音響通路の太さよりも細く形成され、該第1音響通路の長さが該第2音響通路の長さよりも長く形成される、
請求項1に記載のイヤホン。 - 前記リークポート部において、前記第1音響通路および前記第2音響通路が、それぞれ曲がりのない直管状の管として、互いに平行に形成される、
請求項1または2に記載のイヤホン。 - 前記リークポート部において、前記第1音響通路および/または前記第2音響通路が、柔軟性を有する筒状材と、該筒状体を屈曲させることなく該ハウジングの内壁部に添って固定する溝部と、により形成される、
請求項1または2に記載のイヤホン。 - 前記リークポート部が、前記ハウジング背面部の前記第1音響通路並びに前記第2音響通路のそれぞれの前記開口に蓋をして、該第1音響通路および/または該第2音響通路を開閉する蓋開閉機構を有する、
請求項1から4のいずれかに記載のイヤホン。 - 前記リークポート部の前記蓋開閉機構が、前記ハウジング背面部の前記第1音響通路並びに前記第2音響通路のそれぞれの前記開口に対応する複数の孔を有する蓋板を有し、
該蓋板には、該第1音響通路および該第2音響通路が共に開状態になる該孔の組み合わせと、該第1音響通路または該第2音響通路のいずれか一方が該開状態になり他方が閉状態になる該孔および前記蓋の組み合わせと、該第1音響通路および該第2音響通路が共に該閉状態になる該蓋の組み合わせと、の内で少なくとも2つの該組み合わせが選択可能になるように該孔および該蓋が形成されている、
請求項5に記載のイヤホン。 - 前記リークポート部において、前記第1音響通路および/または前記第2音響通路が、前記開口に通気性を有する保護部材を更に備える、
請求項1から6のいずれかに記載のイヤホン。 - 前記ハウジングが、前記ノズル部の先端に前記ユーザーの前記外耳道に挿入されるイヤピースを取り付けるイヤピース取付部を備え、
該イヤピース取付部に取り付ける該イヤピースをさらに備える、
請求項1から7のいずれかに記載のイヤホン。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018027335A JP2019145964A (ja) | 2018-02-19 | 2018-02-19 | イヤホン |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018027335A JP2019145964A (ja) | 2018-02-19 | 2018-02-19 | イヤホン |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019145964A true JP2019145964A (ja) | 2019-08-29 |
Family
ID=67772768
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018027335A Pending JP2019145964A (ja) | 2018-02-19 | 2018-02-19 | イヤホン |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2019145964A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2021064867A (ja) * | 2019-10-11 | 2021-04-22 | リオン株式会社 | 聴取装置、及びイヤホン |
US11039236B2 (en) * | 2017-05-23 | 2021-06-15 | Nec Platforms, Ltd. | Ear pad and earphone using the same |
-
2018
- 2018-02-19 JP JP2018027335A patent/JP2019145964A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US11039236B2 (en) * | 2017-05-23 | 2021-06-15 | Nec Platforms, Ltd. | Ear pad and earphone using the same |
JP2021064867A (ja) * | 2019-10-11 | 2021-04-22 | リオン株式会社 | 聴取装置、及びイヤホン |
JP7502010B2 (ja) | 2019-10-11 | 2024-06-18 | リオン株式会社 | 聴取装置、及びイヤホン |
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