JP2019145402A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】新しいシリコン材料を具備し、かつ、熱安定性に優れるリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】正極活物質及びリチウムドープ剤を具備する正極と、Al含有シリコン材料を具備する負極と、を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。【選択図】なし
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、携帯情報端末などの携帯機器や車両の電源として使用されている。そして、リチウムイオン二次電池の高容量化を図る目的で、理論容量に優れるシリコンを含有するシリコン材料を負極活物質として採用することが研究されている。
例えば、特許文献1及び特許文献2には、負極活物質がシリコンであるリチウムイオン二次電池が記載されている。
特許文献3及び特許文献4には、負極活物質がSiOであるリチウムイオン二次電池が記載されている。
特許文献3及び特許文献4には、負極活物質がSiOであるリチウムイオン二次電池が記載されている。
特許文献5には、CaSi2を酸と反応させて層状ポリシランを合成することが記載されており、当該層状ポリシランを負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池が好適な容量を示すことが記載されている。
特許文献6には、CaSi2を酸と反応させて層状ポリシランを合成し、当該層状ポリシランを300℃以上で加熱して水素を離脱させたナノシリコン材料を製造したこと、及び、当該ナノシリコン材料を負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池が好適な容量維持率を示すことが記載されている。
上述したように、シリコン材料の研究が熱心に行われており、二次電池の負極活物質として採用し得る、新しいシリコン材料の提供が熱望されている。また、安全性の観点から、熱安定性に優れるリチウムイオン二次電池が求められている。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、新しいシリコン材料を具備し、かつ、熱安定性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、新しいシリコン材料を提供すべく、試行錯誤を繰り返して鋭意検討した。シリコン自体は半導体であるため、シリコン材料を二次電池の負極活物質として利用する場合、何らかの方法でシリコン材料の導電性を高くするのが好ましいと本発明者は考えた。そこで、若干量のAlを添加してシリコン材料を製造し、当該シリコン材料を具備する二次電池の抵抗を測定したところ、Al無添加のシリコン材料を具備する二次電池と比較して、低抵抗であることを知見した。
また、シリコン材料には、不可逆容量が存在することが知られている。不可逆容量とは、初回充電時に正極から負極へ移動したリチウムのうち、負極活物質にトラップされて、通常の充放電反応への関与が出来なくなるリチウム量に関する容量を意味する。
本発明者は、シリコン材料の不可逆容量に相当するリチウム量を補填するために、負極の表面に金属リチウム箔を貼付する手段を試みた。かかる手段は、特開平6−325765号公報の実施例10に開示される方法である。実際に、金属リチウム箔を貼付した負極を用いてリチウムイオン二次電池を製造し、その熱安定性を評価したところ、熱安定性に改善の余地があることに本発明者は気が付いた。
本発明者は、シリコン材料の不可逆容量に相当するリチウム量を補填する手段として、正極にリチウムドープ剤を添加する手段を想起した。そして、実際に、リチウムドープ剤が添加された正極を用いてリチウムイオン二次電池を製造し、その熱安定性を評価したところ、熱安定性が著しく改善したことを知見した。
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極活物質及びリチウムドープ剤を具備する正極と、Al含有シリコン材料を具備する負極と、を備えることを特徴とする。
本発明により、新しいシリコン材料を具備し、かつ、熱安定性に優れるリチウムイオン二次電池を提供できる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極活物質及びリチウムドープ剤を具備する正極と、Al含有シリコン材料(以下、本発明のAl含有シリコン材料ということがある。)を具備する負極と、を備えることを特徴とする。本発明のリチウムイオン二次電池を充電することにより、リチウムドープ剤のリチウムが負極に導入される。
正極は正極活物質及びリチウムドープ剤を具備する。正極は、集電体と、集電体の表面に結着させた、正極活物質を含有する正極活物質層を有する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
正極活物質層は正極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。正極活物質層にはリチウムドープ剤が添加されているのが好ましい。
正極活物質としては、層状岩塩構造のLiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、LiaNibCocAldDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、Li2MnO3を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn2O4等のスピネル構造の化合物、及びスピネル構造の化合物と層状岩塩構造の化合物との混合物で構成される固溶体、LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePO4FなどのLiMPO4F(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO3などのLiMBO3(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の各組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも正極活物質として使用可能である。また、正極活物質として、充放電に寄与するリチウムイオンを含まない正極活物質材料、たとえば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiS2などの金属硫化物、V2O5、MnO2などの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。
前段落のLiaNibCocMndDeOf又はLiaNibCocAldDeOfにおいて、b、c、dの値は、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが30/100<b<95/100、1/100<c<70/100、1/100<d<50/100の範囲であることが好ましく、50/100<b<90/100、5/100<c<50/100、1/100<d<30/100の範囲であることがより好ましく、80/100<b<90/100、5/100<c<20/100、1/100<d<10/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1を例示することができる。
a、e、fについては、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1を例示することができる。
また、LiMPO4としては、オリビン構造のLi(Mnx,Fe1−x)PO4(xは0≦x<1である。)が特に好ましい。リチウムイオン二次電池の正極活物質層にLi(Mnx,Fe1−x)PO4が存在すると、電池の正極と負極の短絡時であっても、電池の発熱をある程度抑制することができる。なお、LiMPO4としては、その表面をカーボンコートしたものを採用するのが好ましい。
正極活物質層における正極活物質の配合量は、70〜97質量%の範囲内が好ましく、75〜96質量%の範囲内がより好ましく、80〜95質量%の範囲内がさらに好ましく、85〜95質量%の範囲内が特に好ましい。
正極活物質は1種類でもよいが、複数の種類であってもよい。例えば、前記正極活物質が、第1正極活物質と、前記第1正極活物質よりも配合量の少ない第2正極活物質とを含む場合には、その配合質量比は、第1正極活物質:第2正極活物質=95:5〜60:40の範囲内が好ましく、90:10〜65:35の範囲内がより好ましく、85:15〜70:30の範囲内がさらに好ましい。
リチウムイオン二次電池の充放電の主体となる第1正極活物質としては、LiaNibCocMndDeOf又はLiaNibCocAldDeOfが好ましく、第2正極活物質としては、LiMPO4が好ましい。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
正極活物質層における導電助剤の配合量は、0.5〜10質量%の範囲内が好ましく、1〜5質量%の範囲内がより好ましく、1〜3質量%の範囲内がさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると正極活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
結着剤は、活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸やその誘導体を包含するポリ(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
また、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーをジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを、結着剤として用いてもよい。当該架橋ポリマーはポリ(メタ)アクリル系樹脂の一態様である。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
正極活物質層における結着剤の配合量は、0.5〜10質量%の範囲内が好ましく、1〜7質量%の範囲内がより好ましく、2〜5質量%の範囲内がさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
リチウムドープ剤は、負極のAl含有シリコン材料の不可逆容量に相当するリチウム量を補填するために添加される物質である。リチウムドープ剤は、本発明のリチウムイオン二次電池の初回充電時に、リチウムイオンを放出する。そして、放出されたリチウムイオンは負極に導入される。
リチウムドープ剤は、正極活物質層に添加されていてもよく、また、正極活物質層の表面にリチウムドープ剤含有層として結着剤と共に配置されてもよい。製造工程短縮の観点から、リチウムドープ剤は、正極活物質層に添加されているのが好ましい。
正極におけるリチウムドープ剤の量としては、負極の不可逆容量に対応する量とするのが好ましい。すなわち、正極におけるリチウムドープ剤の量は、負極の不可逆容量に応じて、適宜決定されるのが好ましい。
正極活物質層におけるリチウムドープ剤の量としては、0.5〜10質量%の範囲内、1〜7質量%の範囲内、2〜6質量%の範囲内を例示できる。
正極活物質層におけるリチウムドープ剤の量としては、0.5〜10質量%の範囲内、1〜7質量%の範囲内、2〜6質量%の範囲内を例示できる。
リチウムドープ剤としては、リチウムイオン二次電池の初回充電時にリチウムイオンを放出する物質であれば制限されない。1モルあたりのリチウムの割合が高い点から、リチウムドープ剤としては、Li5FeO4、Li6MnO4、Li6CoO4、Li6ZnO4、Li5AlO4及びLi5GaO4が好ましい。
リチウムドープ剤としては、炭素で被覆されているものが好ましい。炭素被覆に因りリチウムドープ剤の導電性が向上するため、炭素被覆リチウムドープ剤は、リチウムイオン二次電池の初回充電時に、電子及びリチウムイオンを円滑に放出できる。炭素被覆リチウムドープ剤における炭素含有量は0.5〜8質量%が好ましく、1〜6質量%がより好ましく、2〜5質量%がさらに好ましい。
本発明のAl含有シリコン材料は、Alの存在に因り、導電性が向上するため、低抵抗な二次電池用の負極活物質として有用であるといえる。ただし、Al含有シリコン材料を具備する負極にて電荷担体の授受を行うのは、シリコンであるので、Al質量%が高すぎるAl含有シリコン材料は、負極活物質として好ましいとはいえない。
本発明のAl含有シリコン材料は、Al質量%(WAl%)が0<WAl<1を満足するのが好ましく、0<WAl≦0.9を満足するのがより好ましく、0.01≦WAl≦0.8を満足するのがさらに好ましく、0.05≦WAl≦0.7を満足するのがさらにより好ましく、0.1≦WAl≦0.7を満足するのが特に好ましく、0.15≦WAl≦0.7を満足するのが最も好ましい。
リチウムイオン二次電池の充放電条件下においては、電解液の構成成分が分解して、負極活物質の表面に酸素を含むSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜が形成することが知られている。ここで、負極活物質がシリコンを含有するシリコン材料の場合、シリコン材料のシリコンがSEI被膜に含まれる酸素によって酸化されて劣化することが懸念される。
しかしながら、本発明のAl含有シリコン材料は、Alを含有するので、シリコンの酸化劣化が抑制されると考えられる。その理由は、Alはシリコンよりも電気陰性度が低いため酸素と優先的にかつ安定に結合すると考えられる点、Alと酸素とのAl−O結合がSi−O結合よりも安定である点、及び、安定なAl−O結合を形成した酸素はAlよりも電気陰性度の高いシリコンの酸化には関与し難いといえる点にある。
したがって、本発明のAl含有シリコン材料を負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池は、長寿命であることが期待できる。
しかしながら、本発明のAl含有シリコン材料は、Alを含有するので、シリコンの酸化劣化が抑制されると考えられる。その理由は、Alはシリコンよりも電気陰性度が低いため酸素と優先的にかつ安定に結合すると考えられる点、Alと酸素とのAl−O結合がSi−O結合よりも安定である点、及び、安定なAl−O結合を形成した酸素はAlよりも電気陰性度の高いシリコンの酸化には関与し難いといえる点にある。
したがって、本発明のAl含有シリコン材料を負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池は、長寿命であることが期待できる。
本明細書において、シリコン材料とは、シリコンを主な構成成分とする材料を意味する。本発明のAl含有シリコン材料におけるSi質量%(WSi%)は、60≦WSi≦90を満足するのが好ましく、65≦WSi≦85を満足するのがより好ましく、67≦WSi≦85を満足するのがさらに好ましい。
Si質量%が低すぎると、本発明のAl含有シリコン材料の単位質量あたりの容量が低くなるため、負極活物質としての能力が不十分となる場合がある。Si質量%が高すぎると、充放電時の本発明のAl含有シリコン材料の膨張及び収縮の程度が大きくなりすぎて、本発明のAl含有シリコン材料が破損する懸念がある。
Si質量%が低すぎると、本発明のAl含有シリコン材料の単位質量あたりの容量が低くなるため、負極活物質としての能力が不十分となる場合がある。Si質量%が高すぎると、充放電時の本発明のAl含有シリコン材料の膨張及び収縮の程度が大きくなりすぎて、本発明のAl含有シリコン材料が破損する懸念がある。
本発明のAl含有シリコン材料には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、他の元素が存在してもよい。他の元素としては、原料や製造工程に由来するものが挙げられる。他の元素として具体的に、Fe、O、Ca、C、ハロゲンを例示できる。
本発明のAl含有シリコン材料におけるFe質量%(WFe%)は、0≦WFe≦3を満足するのが好ましく、0≦WFe≦1を満足するのがより好ましく、0≦WFe≦0.5を満足するのがさらに好ましく、0≦WFe≦0.3を満足するのが特に好ましく、0≦WFe≦0.1を満足するのが最も好ましい。Feの混入容易性及び除去困難性を鑑みると、本発明のAl含有シリコン材料におけるFe質量%(WFe%)は、0<WFeとなる場合が想定される。
また、Al質量%(WAl%)とFe質量%(WFe%)の関係が、WAl>WFeを満足するのが好ましく、WAl>2×WFeを満足するのがより好ましい。
また、Al質量%(WAl%)とFe質量%(WFe%)の関係が、WAl>WFeを満足するのが好ましく、WAl>2×WFeを満足するのがより好ましい。
本発明のAl含有シリコン材料におけるO質量%(WO%)は、5≦WO≦30を満足するのが好ましく、10≦WO≦25を満足するのがより好ましく、12≦WO≦22を満足するのがさらに好ましく、13≦WO≦21を満足するのが特に好ましい。
本発明のAl含有シリコン材料が一定程度の酸素を含有することで、本発明のAl含有シリコン材料を負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池の寿命が長くなる。
本発明のAl含有シリコン材料が一定程度の酸素を含有することで、本発明のAl含有シリコン材料を負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池の寿命が長くなる。
本発明のAl含有シリコン材料におけるCa質量%(WCa%)は、0≦WCa≦3を満足するのが好ましく、0≦WCa≦1を満足するのがより好ましく、0≦WCa≦0.5を満足するのがさらに好ましく、0≦WCa≦0.3を満足するのが特に好ましい。Caの混入容易性及び除去困難性を鑑みると、本発明のAl含有シリコン材料におけるCa質量%(WCa%)は、0<WCaとなる場合が想定される。
本発明のAl含有シリコン材料におけるハロゲン質量%(WX%)は、0≦WX≦3を満足するのが好ましく、0≦WX≦2を満足するのがより好ましく、0≦WX≦1を満足するのがさらに好ましく、0≦WX≦0.5を満足するのが特に好ましい。ハロゲンの混入容易性及び除去困難性を鑑みると、本発明のAl含有シリコン材料におけるハロゲン質量%(WX%)は、0<WXとなる場合が想定される。
本発明のAl含有シリコン材料を構造の面から述べると、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものが好ましい。本発明のAl含有シリコン材料をリチウムイオン二次電池の活物質として使用することを考慮すると、リチウムイオンなどの電荷担体の効率的な挿入及び脱離反応のためには、上記板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。また、板状シリコン体の長軸方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長軸方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。
本発明のAl含有シリコン材料は、アモルファスシリコンやシリコン結晶子を含有するものが好ましい。シリコン結晶子のサイズとしては、ナノサイズのものが好ましい。具体的には、シリコン結晶子サイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。シリコン結晶子サイズは、本発明のAl含有シリコン材料に対してX線回折測定(XRD測定)を行い、得られたXRDチャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
本発明のAl含有シリコン材料は、粒子状のものが好ましい。本発明のAl含有シリコン材料の平均粒子径としては、1〜30μmの範囲内が好ましく、2〜20μmの範囲内がより好ましく、3〜10μmの範囲内がさらに好ましい。なお、明細書において、平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した場合における、D50を意味する。
次に、本発明のAl含有シリコン材料の製造方法の一態様を説明する。
本発明のAl含有シリコン材料の製造方法の一態様は、
a)Ca、Al及びSiを含む溶湯を冷却して、固体とする工程、
b)前記固体を酸と反応させて、Al含有シリコン材料の前駆体を得る工程、
c)前記前駆体を300℃以上で加熱する工程、
を含むことを特徴とする。
本発明のAl含有シリコン材料の製造方法の一態様は、
a)Ca、Al及びSiを含む溶湯を冷却して、固体とする工程、
b)前記固体を酸と反応させて、Al含有シリコン材料の前駆体を得る工程、
c)前記前駆体を300℃以上で加熱する工程、
を含むことを特徴とする。
上記製造方法は、本発明のAl含有シリコン材料として、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものを製造するのに好適である。上記製造方法のa)工程、b)工程及びc)工程における、化学変化の一例を、Alを無視して、理想的な反応式で示すと、以下のとおりとなる。
a)工程:Ca+2Si→CaSi2
b)工程:3CaSi2+6HCl→Si6H6+3CaCl2
c)工程:Si6H6→6Si+3H2↑
a)工程:Ca+2Si→CaSi2
b)工程:3CaSi2+6HCl→Si6H6+3CaCl2
c)工程:Si6H6→6Si+3H2↑
複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する本発明のAl含有シリコン材料の積層構造は、CaSi2やSi6H6におけるSi層に由来すると考えられる。
a)工程について説明する。a)工程で用いられるCa、Al及びSiとしては、元素単体又はこれら元素の合金が好ましい。CaSi2を原料の一部として用いてもよい。溶湯におけるCa及びSiの元素組成比は、1:1.5〜1:2.5の範囲内が好ましく、1:1.8〜1:2.2の範囲内がより好ましく、1:1.9〜1:2.1の範囲内がさらに好ましい。
溶湯におけるAlの量としては、製造しようとする本発明のAl含有シリコン材料におけるAl質量比に応じて適宜決定すればよい。ただし、Alは酸に溶解し得るため、次工程のb)工程において、前駆体中のAl量が減少する場合がある。そのため、溶湯には、やや多めのAlを添加しておくことが好ましい。
本発明者は、a)工程にて、AlがCaSi2のSiと置換してなる置換型固溶体CaSi2−xAlxが製造されると考えた。そこで、当該固溶体の状態図を、熱力学平衡計算ソフト(FactSage、株式会社計算力学研究センター)を用いて算出した。図1に状態図を示す。
図1の状態図からみて、xは、0<x<0.16の範囲内である。x=0.16の場合の置換型固溶体の組成式は、CaSi2−0.16Al0.16となる。当該置換型固溶体に対するAlの質量%は、100×26.98×0.16/(40.08+28.09×1.84+26.98×0.16)=4.5と計算される。ただし、図1の状態図からみて、常温での置換型固溶体の組成式におけるAlの量は著しく低い。
よって、溶湯における、Ca、Si及びAlの合計質量に対するAlの質量%は、4.5%未満が好ましく、0.01〜3%の範囲内がより好ましく、0.05〜2%の範囲内がさらに好ましく、0.1〜1%の範囲内が特により好ましいと考えられる。なお、過剰にAlを添加すると、CaAl2Si2も生成すると考えられるが、CaAl2Si2は次工程のb)工程において分解して消失する。
よって、溶湯における、Ca、Si及びAlの合計質量に対するAlの質量%は、4.5%未満が好ましく、0.01〜3%の範囲内がより好ましく、0.05〜2%の範囲内がさらに好ましく、0.1〜1%の範囲内が特により好ましいと考えられる。なお、過剰にAlを添加すると、CaAl2Si2も生成すると考えられるが、CaAl2Si2は次工程のb)工程において分解して消失する。
a)工程の溶湯温度としては、Ca、Al及びSiの混合物が溶湯となり得る温度であればよい。ここで、溶湯とは、Ca、Al及びSiの混合物の液体様の状態を意味する。溶湯温度としては1050℃〜1800℃の範囲内が好ましく、1100℃〜1500℃の範囲内がより好ましく、1200℃〜1400℃の範囲内がさらに好ましい。
a)工程で用いる加熱装置としては、例えば、高周波誘導加熱装置、電気炉、ガス炉を使用することができる。a)工程は、加圧又は減圧条件下としてもよいし、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気下としてもよい。
溶湯の冷却は、できるだけ早い速度で温度を低下させるのが好ましい。置換型固溶体の生成と共に、侵入型固溶体の生成も期待できるためである。溶湯を冷却する方法としては、所定の型に溶湯を注いで室温で放置する方法でもよいが、急速冷却装置を用いた冷却方法でもよい。
本明細書で述べる急速冷却装置とは、溶湯を放置して冷却する装置は含まれず、溶湯を強制的に冷却する装置を意味する。急速冷却装置としては、回転する冷却ロール上に溶湯を噴射する冷却手段(いわゆるメルトスパン法、ストリップキャスト法、又は、メルトスピニング法)や、細流化した溶湯に対して流体を吹き付けるアトマイズ法などの冷却手段を用いた冷却装置を例示できる。アトマイズ法としては、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、遠心力アトマイズ法、プラズマアトマイズ法を例示できる。具体的な急速冷却装置としては、液体急冷凝固装置、急冷薄片製造装置、液中紡糸装置、ガスアトマイズ装置、水アトマイズ装置、回転ディスク装置、回転電極法装置(以上、日新技研株式会社)、液体急冷装置、ガスアトマイズ装置(以上、株式会社真壁技研)を例示できる。好ましい冷却速度として、1000〜100000℃/秒を例示できる。
また、冷却して得られた固体の固体状態を維持しつつ加熱する、アニール工程を追加してもよい。図1の状態図から、900℃付近において、置換型固溶体CaSi2−xAlxが最も生成しやすいと考えられる。そのため、アニール工程の加熱温度としては、800〜1000℃が好ましく、850〜950℃がより好ましい。加熱時間としては、1〜50時間、5〜30時間を例示できる。アニール工程後には、当然に、固体を冷却する。
冷却して得られた固体を粉砕してもよく、さらに分級してもよい。
次に、b)工程について説明する。b)工程は、a)工程で得られた固体を酸と反応させて、Al含有シリコン材料の前駆体を得る工程である。Al含有シリコン材料の前駆体は、CaSi2−xAlxやCaSi2によるSi層の基本骨格が維持されているため、層状をなす。
酸としては、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロヒ素酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロゲルマン酸、ヘキサフルオロスズ(IV)酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸が例示される。これらの酸を単独又は併用して使用すれば良い。
b)工程において、酸は、モル比にて、a)工程で得られた固体に含まれるCaよりも過剰に用いるのが好ましい。同工程は無溶媒で行ってもよいが、目的物の分離やCaCl2などの副生物の除去の観点から溶媒として水を採用するのが好ましい。同工程の反応条件は、真空などの減圧条件又は不活性ガス雰囲気下とすることが好ましく、また、氷浴などの室温以下の温度条件とするのが好ましい。同工程の反応時間は適宜設定すれば良い。
b)工程は、水存在下で行われるのが好ましく、そしてSi6H6は水と反応し得る。そのため、b)工程においては、例えば、以下の反応も進行すると考えられる。
Si6H6+3H2O→Si6H3(OH)3+3H2↑
したがって、Al含有シリコン材料の前駆体には、酸素が含まれ得る。また、使用した酸のアニオン由来の元素も含まれ得る。
Si6H6+3H2O→Si6H3(OH)3+3H2↑
したがって、Al含有シリコン材料の前駆体には、酸素が含まれ得る。また、使用した酸のアニオン由来の元素も含まれ得る。
次に、c)工程について説明する。c)工程は、Al含有シリコン材料の前駆体を300℃以上で加熱し、水素や水などを離脱させ、Al含有シリコン材料を得る工程である。
c)工程は、通常の大気下よりも酸素含有量の少ない非酸化性雰囲気下で行われるのが好ましい。非酸化性雰囲気としては、真空を含む減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気を例示できる。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。加熱温度が低すぎると水素の離脱が十分でない場合があり、また、加熱温度が高すぎるとエネルギーの無駄になる。加熱時間は加熱温度に応じて適宜設定すれば良い。反応系外に抜けていく水素などの量を測定しながら加熱時間を決定するのが好ましい。加熱温度及び加熱時間を適宜選択することにより、製造されるAl含有シリコン材料に含まれるアモルファスシリコン及びシリコン結晶子の割合、並びに、シリコン結晶子の大きさを調製することもできる。加熱温度及び加熱時間を適宜選択することにより、製造されるAl含有シリコン材料に含まれるアモルファスシリコン及びシリコン結晶子を含むナノ水準の厚みの層の形状を調製することもできる。
得られたAl含有シリコン材料を粉砕してもよく、さらに分級してもよい。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。集電体については、正極で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
負極活物質としては、本発明のAl含有シリコン材料のみを採用してもよいし、本発明のAl含有シリコン材料と公知の負極活物質を併用してもよい。本発明のAl含有シリコン材料を炭素で被覆したものを負極活物質として用いてもよい。
本発明のAl含有シリコン材料の一態様である炭素被覆したAl含有シリコン材料において、C質量%(WC%)は、0<WC≦30を満足するのが好ましく、1≦WC≦20を満足するのがより好ましく、2≦WC≦15を満足するのがさらに好ましく、5≦WC≦10を満足するのが特に好ましい。
負極活物質層における負極活物質の配合量は、70〜97質量%の範囲内が好ましく、75〜93質量%の範囲内がより好ましく、80〜90質量%の範囲内がさらに好ましい。負極活物質層におけるAl含有シリコン材料の配合量は、50〜97質量%の範囲内が好ましく、60〜93質量%の範囲内がより好ましく、70〜90質量%の範囲内がさらに好ましい。
負極に用いる導電助剤については、正極で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。負極活物質層における導電助剤の配合量は、1〜20質量%の範囲内が好ましく、3〜15質量%の範囲内がより好ましく、5〜11質量%の範囲内がさらに好ましい。
負極に用いる結着剤については、正極で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。後述する評価例Eの結果からみて、初回充電後の本発明のリチウムイオン二次電池の負極は、水素発生抑制効果を奏する。そのため、負極に用いる結着剤として水素発生可能なものを選択したとしても、その水素発生は抑制されるといえる。この点と結着力が強力である点から、負極の結着剤としては、ポリアミド、ポリアミドイミド又はポリ(メタ)アクリル系樹脂を選択するのが好ましい。
負極活物質層における結着剤の配合量は、3〜20質量%の範囲内が好ましく、5〜15質量%の範囲内がより好ましく、7〜13質量%の範囲内がさらに好ましい。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を混合し、スラリーを調製する。上記溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル類等が使用できる。環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートを例示でき、環状エステルとしては、ガンマブチロラクトン、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネートを例示でき、鎖状エステルとしては、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、フルオロエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒に、リチウム塩を0.5mol/Lから3mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
後述する評価例Dの結果からみて、負極表面のLiFの生成が、熱安定性の鍵となる要素であると考えられる。そのため、電解液としては、フッ素を含有するものが好ましいといえる。電解液の非水溶媒としてフッ素を含有するものを選択してもよいし、電解液の電解質としてフッ素を含有するリチウム塩を選択してもよい。フッ素を含有する非水溶媒は還元分解されやすいので、充電時に負極表面で分解してフッ素を供給しやすいといえる。
また、評価例Dで詳細に考察するように、LiFの生成を促進させるために、電解液におけるフッ素を含有するリチウム塩の濃度は、高濃度であるのが好ましいといえる。電解液におけるフッ素を含有するリチウム塩の濃度としては、1〜3mol/Lが好ましく、1.5〜2.7mol/Lがより好ましく、2〜2.5mol/Lがさらに好ましい。
また、評価例Dで詳細に考察するように、LiFの生成を促進させるために、電解液におけるフッ素を含有するリチウム塩の濃度は、高濃度であるのが好ましいといえる。電解液におけるフッ素を含有するリチウム塩の濃度としては、1〜3mol/Lが好ましく、1.5〜2.7mol/Lがより好ましく、2〜2.5mol/Lがさらに好ましい。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
正極および負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から、外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、電極に含まれる活物質の種類に適した電圧範囲で充放電を実行されればよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例および比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
以下のとおり、実施例1のAl含有シリコン材料及びリチウムイオン二次電池を製造した。
以下のとおり、実施例1のAl含有シリコン材料及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程
Ca、Al及びSiを炭素坩堝に秤量した。Ca及びSiの元素組成比は1:2であり、Alの添加量はCa、Al及びSiの全体の質量に対して1%とした。アルゴンガス雰囲気下の高周波誘導加熱装置にて、炭素坩堝を1300℃付近で加熱してCa、Al及びSiを含む溶湯とした。前記溶湯を所定の鋳型に注湯することで冷却して固体とした。当該固体を粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
Ca、Al及びSiを炭素坩堝に秤量した。Ca及びSiの元素組成比は1:2であり、Alの添加量はCa、Al及びSiの全体の質量に対して1%とした。アルゴンガス雰囲気下の高周波誘導加熱装置にて、炭素坩堝を1300℃付近で加熱してCa、Al及びSiを含む溶湯とした。前記溶湯を所定の鋳型に注湯することで冷却して固体とした。当該固体を粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
b)工程
窒素ガス雰囲気下にて、0℃の17wt%塩酸に、a)工程で得られた粉末状の固体を加え、撹拌した。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びメタノールで洗浄し、さらに、室温で減圧乾燥してAl含有シリコン材料の前駆体を得た。
窒素ガス雰囲気下にて、0℃の17wt%塩酸に、a)工程で得られた粉末状の固体を加え、撹拌した。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びメタノールで洗浄し、さらに、室温で減圧乾燥してAl含有シリコン材料の前駆体を得た。
c)工程
Al含有シリコン材料の前駆体を、窒素ガス雰囲気下、900℃で1時間加熱して、実施例1のAl含有シリコン材料を製造した。
Al含有シリコン材料の前駆体を、窒素ガス雰囲気下、900℃で1時間加熱して、実施例1のAl含有シリコン材料を製造した。
実施例1のAl含有シリコン材料を用いて、以下のとおり、実施例1の負極及び実施例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
重量平均分子量80万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタン0.2g(1.0mmol)を0.4mLのN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液7mL(アクリル酸モノマー換算で、9.5mmolに該当する。)に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液の全量を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を130℃で3時間撹拌して脱水反応を進行させることで、結着剤溶液を製造した。
負極活物質として実施例1のAl含有シリコン材料72.5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13.5質量部、結着剤として固形分が14質量部となる量の上記結着剤溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を80℃、15分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスし、真空ポンプによる減圧雰囲気で180℃、30分加熱することで、負極活物質層が形成された実施例1の負極を製造した。
正極活物質としてLiNi82/100Co15/100Al3/100O2を96質量部、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン2質量部、及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。正極用集電体としてアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスし、真空ポンプによる減圧雰囲気で120℃、6時間加熱することで、正極活物質層が集電体の表面に形成された正極を製造した。
セパレータとして、ポリエチレン製多孔質膜を準備した。また、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比19:81で混合した混合溶媒に、LiPF6を濃度2mol/Lで溶解した溶液を、電解液とした。
実施例1の負極、セパレータ、正極の順に積層して、積層体とした。この積層体及び電解液をラミネートフィルム製の袋に収容して、袋を密閉し、実施例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
a)工程において、Alを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のシリコン材料、比較例1の負極、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程において、Alを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のシリコン材料、比較例1の負極、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例1)
誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)を用いて、実施例1のAl含有シリコン材料と、比較例1のシリコン材料の元素分析を行った。元素分析の結果、実施例1のAl含有シリコン材料におけるAl質量%は0.25%、Fe質量%は0%であり、比較例1のシリコン材料におけるAl質量%は0%、Fe質量%は0%であった。
誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)を用いて、実施例1のAl含有シリコン材料と、比較例1のシリコン材料の元素分析を行った。元素分析の結果、実施例1のAl含有シリコン材料におけるAl質量%は0.25%、Fe質量%は0%であり、比較例1のシリコン材料におけるAl質量%は0%、Fe質量%は0%であった。
(評価例2)
25℃の恒温層中で、実施例1のリチウムイオン二次電池をSOC(State of Charge)15%に調整した。そして、1Cレートの一定電流で、当該リチウムイオン二次電池を10秒間放電させた。放電前後の電圧の変化量を、電流値で除して、抵抗を算出した。比較例1のリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
実施例1のリチウムイオン二次電池の抵抗は3.3Ωであり、比較例1のリチウムイオン二次電池の抵抗は3.6Ωであった。Al含有シリコン材料を用いることで、リチウムイオン二次電池の抵抗が低下することが裏付けられた。
25℃の恒温層中で、実施例1のリチウムイオン二次電池をSOC(State of Charge)15%に調整した。そして、1Cレートの一定電流で、当該リチウムイオン二次電池を10秒間放電させた。放電前後の電圧の変化量を、電流値で除して、抵抗を算出した。比較例1のリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
実施例1のリチウムイオン二次電池の抵抗は3.3Ωであり、比較例1のリチウムイオン二次電池の抵抗は3.6Ωであった。Al含有シリコン材料を用いることで、リチウムイオン二次電池の抵抗が低下することが裏付けられた。
(実施例2)
以下のとおり、実施例2のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
以下のとおり、実施例2のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程
Ca、Al及びSiを炭素坩堝に秤量した。Ca及びSiの元素組成比は1:2であり、Alの添加量はCa、Al及びSiの全体の質量に対して1%とした。アルゴンガス雰囲気下の高周波誘導加熱装置にて、炭素坩堝を1300℃付近で加熱してCa、Al及びSiを含む溶湯とした。前記溶湯を所定の鋳型に注湯して冷却して固体とした。当該固体を粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
Ca、Al及びSiを炭素坩堝に秤量した。Ca及びSiの元素組成比は1:2であり、Alの添加量はCa、Al及びSiの全体の質量に対して1%とした。アルゴンガス雰囲気下の高周波誘導加熱装置にて、炭素坩堝を1300℃付近で加熱してCa、Al及びSiを含む溶湯とした。前記溶湯を所定の鋳型に注湯して冷却して固体とした。当該固体を粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
b)工程
窒素ガス雰囲気下にて、0℃の17wt%塩酸に、a)工程で得られた粉末状の固体を加え、撹拌した。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びメタノールで洗浄し、さらに、室温で減圧乾燥してAl含有シリコン材料の前駆体を得た。
窒素ガス雰囲気下にて、0℃の17wt%塩酸に、a)工程で得られた粉末状の固体を加え、撹拌した。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びメタノールで洗浄し、さらに、室温で減圧乾燥してAl含有シリコン材料の前駆体を得た。
c)工程
Al含有シリコン材料の前駆体を、窒素ガス雰囲気下、900℃で1時間加熱して、実施例2のAl含有シリコン材料を製造した。
Al含有シリコン材料の前駆体を、窒素ガス雰囲気下、900℃で1時間加熱して、実施例2のAl含有シリコン材料を製造した。
実施例2のAl含有シリコン材料を用いて、以下のとおり、実施例2の負極及び実施例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
重量平均分子量80万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタン0.2g(1.0mmol)を0.4mLのN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液7mL(アクリル酸モノマー換算で、9.5mmolに該当する。)に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液の全量を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を130℃で3時間撹拌して脱水反応を進行させることで、結着剤溶液を製造した。
負極活物質として実施例2のAl含有シリコン材料72.5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13.5質量部、結着剤として固形分が14質量部となる量の上記結着剤溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を80℃、15分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスし、真空ポンプによる減圧雰囲気で180℃、30分加熱することで、負極活物質層が形成された実施例2の負極を製造した。
実施例2の負極を径11mmに裁断し、評価極とした。厚さ500μmの金属リチウム箔を径13mmに裁断し対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)及び単層ポリプロピレンであるcelgard2400(ポリポア株式会社)を準備した。また、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:1で混合した混合溶媒にLiPF6を濃度1mol/Lで溶解した電解液を準備した。対極、ガラスフィルター、celgard2400、評価極の順に、2種のセパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに電解液を注入して、コイン型電池を得た。これを実施例2のリチウムイオン二次電池とした。
(実施例3)
製造スケールを大きくした点、及び、c)工程の後に以下の炭素被覆工程を加えて、炭素被覆されたAl含有シリコン材料を実施例3のAl含有シリコン材料とし、これを負極活物質として用いた点以外は、実施例2と同様の方法で、実施例3のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
製造スケールを大きくした点、及び、c)工程の後に以下の炭素被覆工程を加えて、炭素被覆されたAl含有シリコン材料を実施例3のAl含有シリコン材料とし、これを負極活物質として用いた点以外は、実施例2と同様の方法で、実施例3のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
・炭素被覆工程
c)工程を経たAl含有シリコン材料をロータリーキルン型の反応器に入れ、プロパン−アルゴン混合ガスの通気下にて880℃、滞留時間60分間の条件で熱CVDを行い、炭素被覆されたAl含有シリコン材料を得た。
c)工程を経たAl含有シリコン材料をロータリーキルン型の反応器に入れ、プロパン−アルゴン混合ガスの通気下にて880℃、滞留時間60分間の条件で熱CVDを行い、炭素被覆されたAl含有シリコン材料を得た。
(実施例4)
不純物としてAl及びFeを含有する粉末状のCaSi2を準備した。ICP−AESを用いて当該CaSi2の元素分析を行ったところ、Ca:38質量%、Si:57質量%、Fe:4質量%、Al:1質量%であった。
当該CaSi2を用いてb)工程以下を実施した以外は、実施例3と同様の方法で、実施例4のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
不純物としてAl及びFeを含有する粉末状のCaSi2を準備した。ICP−AESを用いて当該CaSi2の元素分析を行ったところ、Ca:38質量%、Si:57質量%、Fe:4質量%、Al:1質量%であった。
当該CaSi2を用いてb)工程以下を実施した以外は、実施例3と同様の方法で、実施例4のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例2)
a)工程において、Alを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で、比較例2のシリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程において、Alを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で、比較例2のシリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例3)
a)工程において、Alを添加せず、Feを添加したこと以外は、実施例2と同様の方法で、比較例3のシリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、a)工程のFeは、Ca、Fe及びSiの全体の質量に対して4%となる量で添加した。
a)工程において、Alを添加せず、Feを添加したこと以外は、実施例2と同様の方法で、比較例3のシリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、a)工程のFeは、Ca、Fe及びSiの全体の質量に対して4%となる量で添加した。
(評価例3)
蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、実施例2〜実施例4のAl含有シリコン材料と、比較例2及び比較例3のシリコン材料の元素分析を行った。また、酸素・窒素・水素分析装置を用いて、実施例2〜実施例4のAl含有シリコン材料と、比較例2及び比較例3のシリコン材料に対して、酸素を対象とした元素分析を行った。さらに、炭素・硫黄分析装置を用いて、炭素被覆された実施例3及び実施例4のAl含有シリコン材料に対して、炭素を対象とした元素分析を行った。
蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、実施例2〜実施例4のAl含有シリコン材料と、比較例2及び比較例3のシリコン材料の元素分析を行った。また、酸素・窒素・水素分析装置を用いて、実施例2〜実施例4のAl含有シリコン材料と、比較例2及び比較例3のシリコン材料に対して、酸素を対象とした元素分析を行った。さらに、炭素・硫黄分析装置を用いて、炭素被覆された実施例3及び実施例4のAl含有シリコン材料に対して、炭素を対象とした元素分析を行った。
これらの元素分析の結果を、質量%として、表1に示す。実施例2、実施例3、比較例2に若干量のFeが存在するのは、原料の金属にFeが不純物として含まれていたためである。また、すべてのシリコン材料に含まれているO、Ca及びClは、製造で使用した溶媒(水)、原料、酸のアニオンなどに由来する。
(評価例4)
粉末X線回折装置にて、実施例2のAl含有シリコン材料のX線回折を測定した。
その結果、実施例2のAl含有シリコン材料のX線回折チャートから、シリコン結晶子に由来するピークが確認できた。
粉末X線回折装置にて、実施例2のAl含有シリコン材料のX線回折を測定した。
その結果、実施例2のAl含有シリコン材料のX線回折チャートから、シリコン結晶子に由来するピークが確認できた。
(評価例5)
実施例2〜実施例4、比較例2及び比較例3のリチウムイオン二次電池に対して、電流0.2mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.2mAで0.8Vまで充電を行うとの初回充放電を行った。
さらに、初回充放電後の実施例2、比較例2及び比較例3のリチウムイオン二次電池につき、電流0.5mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.5mAで1.0Vまで充電を行うとの充放電サイクルを複数回行った。
実施例2〜実施例4、比較例2及び比較例3のリチウムイオン二次電池に対して、電流0.2mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.2mAで0.8Vまで充電を行うとの初回充放電を行った。
さらに、初回充放電後の実施例2、比較例2及び比較例3のリチウムイオン二次電池につき、電流0.5mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.5mAで1.0Vまで充電を行うとの充放電サイクルを複数回行った。
初期効率及び容量維持率を以下の各式で算出した。
初期効率(%)=100×(初回充電容量)/(初回放電容量)
容量維持率(%)=100×(各サイクル時の充電容量)/(1サイクル目の充電容量)
初回放電容量、初回充電容量及び初期効率の結果を、元素分析の結果の一部とともに表2に示す。また、容量維持率の結果(N=2)を図2に示す。
初期効率(%)=100×(初回充電容量)/(初回放電容量)
容量維持率(%)=100×(各サイクル時の充電容量)/(1サイクル目の充電容量)
初回放電容量、初回充電容量及び初期効率の結果を、元素分析の結果の一部とともに表2に示す。また、容量維持率の結果(N=2)を図2に示す。
表2の結果から、Feの存在に因り、初回放電容量、初回充電容量及び初期効率が低くなるといえる。また、図2の結果から、容量維持率の点からは、AlやFeの存在が好ましいといえる。これらの結果から総合的に考察すると、本発明のAl含有シリコン材料において、Feの存在量は少ない方が好ましく、Alの存在量は多い方が好ましいと考えられる。
(実施例5)
以下のとおり、実施例5のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
以下のとおり、実施例5のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程
Ca、Al及びSiを炭素坩堝に秤量した。Ca及びSiの元素組成比は1:2であり、Alの添加量はCa、Al及びSiの全体の質量に対して0.1%とした。アルゴンガス雰囲気下の高周波誘導加熱装置にて、炭素坩堝を1300℃付近で加熱してCa、Al及びSiを含む溶湯とした。前記溶湯を所定の鋳型に注湯して冷却して固体とした。当該固体を粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
Ca、Al及びSiを炭素坩堝に秤量した。Ca及びSiの元素組成比は1:2であり、Alの添加量はCa、Al及びSiの全体の質量に対して0.1%とした。アルゴンガス雰囲気下の高周波誘導加熱装置にて、炭素坩堝を1300℃付近で加熱してCa、Al及びSiを含む溶湯とした。前記溶湯を所定の鋳型に注湯して冷却して固体とした。当該固体を粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
b)工程
窒素ンガス雰囲気下にて、0℃の17wt%塩酸に、a)工程で得られた粉末状の固体を加え、撹拌した。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びメタノールで洗浄し、さらに、室温で減圧乾燥してAl含有シリコン材料の前駆体を得た。
窒素ンガス雰囲気下にて、0℃の17wt%塩酸に、a)工程で得られた粉末状の固体を加え、撹拌した。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びメタノールで洗浄し、さらに、室温で減圧乾燥してAl含有シリコン材料の前駆体を得た。
c)工程
Al含有シリコン材料の前駆体を、窒素ガス雰囲気下、900℃で1時間加熱し、実施例5のAl含有シリコン材料を製造した。
Al含有シリコン材料の前駆体を、窒素ガス雰囲気下、900℃で1時間加熱し、実施例5のAl含有シリコン材料を製造した。
実施例5のAl含有シリコン材料を用いて、以下のとおり、実施例5の負極及び実施例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
重量平均分子量80万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタン0.2g(1.0mmol)を0.4mLのN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液7mL(アクリル酸モノマー換算で、9.5mmolに該当する。)に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液の全量を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を130℃で3時間撹拌して脱水反応を進行させることで、結着剤溶液を製造した。
負極活物質として実施例5のAl含有シリコン材料72.5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13.5質量部、結着剤として固形分が14質量部となる量の上記結着剤溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を80℃、15分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスし、真空ポンプによる減圧雰囲気で180℃、30分加熱することで、負極活物質層が形成された実施例5の負極を製造した。
実施例5の負極を径11mmに裁断し、評価極とした。厚さ500μmの金属リチウム箔を径13mmに裁断し対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)及び単層ポリプロピレンであるcelgard2400(ポリポア株式会社)を準備した。また、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:1で混合した混合溶媒にLiPF6を濃度1mol/Lで溶解した電解液を準備した。対極、ガラスフィルター、celgard2400、評価極の順に、2種のセパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに電解液を注入して、コイン型電池を得た。これを実施例5のリチウムイオン二次電池とした。
(実施例6)
a)工程において、Alの添加量をCa、Al及びSiの全体の質量に対して0.3%とした以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程において、Alの添加量をCa、Al及びSiの全体の質量に対して0.3%とした以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例7)
a)工程において、Alの添加量をCa、Al及びSiの全体の質量に対して0.5%とした以外は、実施例5と同様の方法で、実施例7のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程において、Alの添加量をCa、Al及びSiの全体の質量に対して0.5%とした以外は、実施例5と同様の方法で、実施例7のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例8)
a)工程において、Alの添加量をCa、Al及びSiの全体の質量に対して1%とした以外は、実施例5と同様の方法で、実施例8のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程において、Alの添加量をCa、Al及びSiの全体の質量に対して1%とした以外は、実施例5と同様の方法で、実施例8のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例9)
a)工程に以下のアニール工程を加えた以外は、実施例8と同様の方法で、実施例9のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程に以下のアニール工程を加えた以外は、実施例8と同様の方法で、実施例9のAl含有シリコン材料、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
・アニール工程
冷却されたCa、Al及びSiを含有する固体を、窒素雰囲気下、900℃で24時間加熱し、その後、冷却した。冷却後のCa、Al及びSiを含有する固体を、粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
冷却されたCa、Al及びSiを含有する固体を、窒素雰囲気下、900℃で24時間加熱し、その後、冷却した。冷却後のCa、Al及びSiを含有する固体を、粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
(評価例6)
評価例3と同様の方法で、実施例5〜実施例9のAl含有シリコン材料の元素分析を行った。これらの元素分析の結果を、質量%として、表3に示す。各実施例のAl含有シリコン材料に若干量のFeが存在するのは、原料の金属にFeが不純物として含まれていたためである。また、各実施例のAl含有シリコン材料に含まれているCl、Ca、C及びOは、製造で使用した酸のアニオン、原料、炭素坩堝、溶媒(水)などに由来する。
評価例3と同様の方法で、実施例5〜実施例9のAl含有シリコン材料の元素分析を行った。これらの元素分析の結果を、質量%として、表3に示す。各実施例のAl含有シリコン材料に若干量のFeが存在するのは、原料の金属にFeが不純物として含まれていたためである。また、各実施例のAl含有シリコン材料に含まれているCl、Ca、C及びOは、製造で使用した酸のアニオン、原料、炭素坩堝、溶媒(水)などに由来する。
表3から、a)工程でのAlの添加量が増加するに従い、Al含有シリコン材料におけるAl含有量も増加するのが確認できる。ただし、a)工程でのAlの添加量の増加割合に対して、Al含有シリコン材料におけるAl含有量の増加割合は、低いことがわかる。これらの結果から、a)工程で添加したAlの一部は、b)工程での酸処理において、酸溶液に溶解して除去されたと考えられる。
また、実施例8と実施例9の結果から、a)工程にアニール工程を加えることで、Al含有シリコン材料におけるAl含有量が増加するのがわかる。アニール工程により、比較的多くのAlが、CaSi2のSiと置換するCaSi2−xAlxなる置換型固溶体を形成したために、b)工程での酸処理において除去されるのを免れたと推察される。
また、実施例8と実施例9の結果から、a)工程にアニール工程を加えることで、Al含有シリコン材料におけるAl含有量が増加するのがわかる。アニール工程により、比較的多くのAlが、CaSi2のSiと置換するCaSi2−xAlxなる置換型固溶体を形成したために、b)工程での酸処理において除去されるのを免れたと推察される。
(評価例7)
実施例5〜実施例9のリチウムイオン二次電池に対して、電流0.2mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.2mAで1.0Vまで充電を行うとの初回充放電を行った。
さらに、初回充放電後の実施例5〜実施例9のリチウムイオン二次電池につき、電流0.5mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.5mAで1.0Vまで充電を行うとの充放電サイクルを50回行った。
また、実施例5〜実施例9のリチウムイオン二次電池に対して、電流0.2mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.2mAで0.8Vまで充電を行うとの初回充放電を行った。
実施例5〜実施例9のリチウムイオン二次電池に対して、電流0.2mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.2mAで1.0Vまで充電を行うとの初回充放電を行った。
さらに、初回充放電後の実施例5〜実施例9のリチウムイオン二次電池につき、電流0.5mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.5mAで1.0Vまで充電を行うとの充放電サイクルを50回行った。
また、実施例5〜実施例9のリチウムイオン二次電池に対して、電流0.2mAで0.01Vまで放電を行い、その後、電流0.2mAで0.8Vまで充電を行うとの初回充放電を行った。
初期効率及び容量維持率を以下の各式で算出した。
初期効率(%)=100×(初回充電容量)/(初回放電容量)
容量維持率(%)=100×(50サイクル時の充電容量)/(1サイクル目の充電容量)
初回放電容量、初回充電容量(1.0V及び0.8V)、初期効率(1.0V及び0.8V)、容量維持率の結果を、Al質量%の結果とともに表4及び表5に示す。
初期効率(%)=100×(初回充電容量)/(初回放電容量)
容量維持率(%)=100×(50サイクル時の充電容量)/(1サイクル目の充電容量)
初回放電容量、初回充電容量(1.0V及び0.8V)、初期効率(1.0V及び0.8V)、容量維持率の結果を、Al質量%の結果とともに表4及び表5に示す。
表4から、特に、実施例7〜実施例9のリチウムイオン二次電池は、優れた初回充放電容量を示したといえる。表5から、実施例5〜実施例9のリチウムイオン二次電池は、同等の初期効率を示し、同等の容量維持率を示したといえる。容量維持率の観点からは、特に、実施例7〜実施例9のリチウムイオン二次電池が優れているといえる。
以上の結果から、本発明のAl含有シリコン材料における、Al質量%(WAl%)は、0.25%以上が特に好適といえる。
以上の結果から、本発明のAl含有シリコン材料における、Al質量%(WAl%)は、0.25%以上が特に好適といえる。
(実施例10)
以下のとおり、実施例10のAl含有シリコン材料を製造した。
以下のとおり、実施例10のAl含有シリコン材料を製造した。
a)工程
Ca、Al及びSiを炭素坩堝に秤量した。Ca及びSiの元素組成比は1:2であり、Alの添加量はCa、Al及びSiの全体の質量に対して1%とした。アルゴンガス雰囲気下の高周波誘導加熱装置にて、炭素坩堝を1300℃付近で加熱してCa、Al及びSiを含む溶湯とした。前記溶湯を所定の鋳型に注湯することで冷却して固体とした。当該固体を粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
Ca、Al及びSiを炭素坩堝に秤量した。Ca及びSiの元素組成比は1:2であり、Alの添加量はCa、Al及びSiの全体の質量に対して1%とした。アルゴンガス雰囲気下の高周波誘導加熱装置にて、炭素坩堝を1300℃付近で加熱してCa、Al及びSiを含む溶湯とした。前記溶湯を所定の鋳型に注湯することで冷却して固体とした。当該固体を粉砕して粉末状にした後に、b)工程に供した。
b)工程
窒素ガス雰囲気下にて、0℃の17wt%塩酸に、a)工程で得られた粉末状の固体を加え、撹拌した。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びアセトンで洗浄し、さらに、室温で減圧乾燥してAl含有シリコン材料の前駆体を得た。
窒素ガス雰囲気下にて、0℃の17wt%塩酸に、a)工程で得られた粉末状の固体を加え、撹拌した。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びアセトンで洗浄し、さらに、室温で減圧乾燥してAl含有シリコン材料の前駆体を得た。
c)工程
Al含有シリコン材料の前駆体を、窒素ガス雰囲気下、900℃で1時間加熱して、Al含有シリコン材料を製造した。
Al含有シリコン材料の前駆体を、窒素ガス雰囲気下、900℃で1時間加熱して、Al含有シリコン材料を製造した。
・炭素被覆工程
c)工程を経たAl含有シリコン材料をロータリーキルン型の反応器に入れ、プロパン−アルゴン混合ガスの通気下にて880℃、滞留時間60分間の条件で熱CVDを行い、炭素被覆されたAl含有シリコン材料を得た。この炭素被覆されたAl含有シリコン材料を実施例10のAl含有シリコン材料とした。
c)工程を経たAl含有シリコン材料をロータリーキルン型の反応器に入れ、プロパン−アルゴン混合ガスの通気下にて880℃、滞留時間60分間の条件で熱CVDを行い、炭素被覆されたAl含有シリコン材料を得た。この炭素被覆されたAl含有シリコン材料を実施例10のAl含有シリコン材料とした。
実施例10のAl含有シリコン材料を用いて、以下のとおり、実施例10の負極及び実施例10のリチウムイオン二次電池を製造した。
負極活物質として実施例10のAl含有シリコン材料80.8質量部、導電助剤としてアセチレンブラック10.2質量部、結着剤としてポリアミドイミド9質量部、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を80℃、15分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスし、真空ポンプによる減圧雰囲気で180℃、30分加熱することで、負極活物質層が形成された実施例10の負極を製造した。
正極活物質としてLiNi82/100Co15/100Al3/100O2を69質量部、正極活物質としてLiFePO4を26質量部、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。正極用集電体としてアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスし、真空ポンプによる減圧雰囲気で120℃、6時間加熱することで、正極活物質層が集電体の表面に形成された正極を製造した。
セパレータとして、ポリエチレン製多孔質膜を準備した。また、ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを体積比81:19で混合した混合溶媒に、LiPF6を濃度2mol/Lで溶解した溶液を、電解液とした。
実施例10の負極、セパレータ、正極の順に積層して、積層体とした。この積層体及び電解液をラミネートフィルム製の袋に収容して、袋を密閉し、実施例10のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例4)
a)工程において、Alを添加しなかったこと以外は、実施例10と同様の方法で、比較例4の炭素被覆シリコン材料、比較例4の負極、比較例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
a)工程において、Alを添加しなかったこと以外は、実施例10と同様の方法で、比較例4の炭素被覆シリコン材料、比較例4の負極、比較例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例8)
評価例3と同様の方法で、実施例10のAl含有シリコン材料及び比較例4の炭素被覆シリコン材料の元素分析を行った。これらの元素分析の結果を、質量%として、表6に示す。
評価例3と同様の方法で、実施例10のAl含有シリコン材料及び比較例4の炭素被覆シリコン材料の元素分析を行った。これらの元素分析の結果を、質量%として、表6に示す。
(評価例9)
実施例10のリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vで充電状態の実施例10のリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の実施例10の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極を大気下に曝した状態で、10℃/分の昇温速度で550℃まで加熱して、負極の温度変化を観測した。
比較例4のリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
実施例10のリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vで充電状態の実施例10のリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の実施例10の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極を大気下に曝した状態で、10℃/分の昇温速度で550℃まで加熱して、負極の温度変化を観測した。
比較例4のリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
実施例10の負極については、10℃/分での昇温に追従する温度変化が観測された。他方、比較例4の負極については、263℃に達した時点で、10℃/分での昇温から逸脱する急激な昇温が観測された。
以上の結果から、本発明のAl含有シリコン材料は、Alの存在に因り、充電状態での熱安定性に優れるといえる。
以上の結果から、本発明のAl含有シリコン材料は、Alの存在に因り、充電状態での熱安定性に優れるといえる。
(実施例A)
以下のとおり、実施例Aのリチウムイオン二次電池を製造した。
以下のとおり、実施例Aのリチウムイオン二次電池を製造した。
正極活物質としてLiNi82/100Co15/100Al3/100O2を69質量部、正極活物質として3質量%で炭素被覆されたLiFe1/3Mn2/3PO4を21質量部、リチウムドープ剤として3質量%で炭素被覆されたLi5FeO4を5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。正極用集電体としてアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスし、真空ポンプによる減圧雰囲気で120℃、6時間加熱することで、正極活物質層が集電体の表面に形成された正極を製造した。
負極としては、実施例10の負極を用いた。
セパレータとして、ポリエチレン製多孔質膜を準備した。また、ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを体積比81:19で混合した混合溶媒に、LiPF6を濃度2mol/Lで溶解した溶液を、電解液とした。
実施例10の負極、セパレータ、正極の順に積層して、積層体とした。この積層体及び電解液をラミネートフィルム製の袋に収容して、袋を密閉し、実施例Aのリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例A)
以下のとおり、正極にリチウムドープ剤を具備せず、負極表面に金属リチウム箔を貼付した比較例Aのリチウムイオン二次電池を製造した。
以下のとおり、正極にリチウムドープ剤を具備せず、負極表面に金属リチウム箔を貼付した比較例Aのリチウムイオン二次電池を製造した。
正極活物質としてLiNi82/100Co15/100Al3/100O2を69質量部、正極活物質として3質量%で炭素被覆されたLiFe1/3Mn2/3PO4を26質量部、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。正極用集電体としてアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスし、真空ポンプによる減圧雰囲気で120℃、6時間加熱することで、正極活物質層が集電体の表面に形成された正極を製造した。
実施例10の負極における負極活物質層の表面に、厚さ5μmの金属リチウム箔を貼付した。セパレータ及び電解液は実施例Aと同様のものを用いた。
金属リチウム箔を貼付した負極、セパレータ、正極の順に積層して、積層体とした。この積層体及び電解液をラミネートフィルム製の袋に収容して、袋を密閉し、比較例Aのリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、実施例Aのリチウムイオン二次電池及び比較例Aのリチウムイオン二次電池においては、負極に補填される、リチウムドープ剤由来のリチウム量及び金属リチウム箔由来のリチウム量が、同等となるように設計されている。
(比較例B)
負極表面への金属リチウム箔の貼付を行わなかったこと以外は、比較例Aと同様の方法で、正極にリチウムドープ剤を具備せず、負極表面に金属リチウム箔を貼付しない比較例Bのリチウムイオン二次電池を製造した。
負極表面への金属リチウム箔の貼付を行わなかったこと以外は、比較例Aと同様の方法で、正極にリチウムドープ剤を具備せず、負極表面に金属リチウム箔を貼付しない比較例Bのリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例A)
実施例A及び比較例Aのリチウムイオン二次電池につき、以下の方法で強制短絡試験としての釘刺し試験を行った。
実施例A及び比較例Aのリチウムイオン二次電池につき、以下の方法で強制短絡試験としての釘刺し試験を行った。
リチウムイオン二次電池を径10mmの孔を有する拘束板で挟んだ。次に、拘束板で挟んだリチウムイオン二次電池に対して充電を行い、電圧4.1Vとした。上部に釘が取り付けられたプレス機に、拘束板で挟んだ充電後のリチウムイオン二次電池を配置した。そして、釘を上部から下部に移動させて、釘で電池を貫通させた。貫通状態の釘の温度を経時的に測定した。なお、使用した釘の形状は径5mm、先端角度60°であり、貫通前の釘の温度は25℃であった。
実施例Aのリチウムイオン二次電池を貫通させた釘の最高温度は、29℃であった。他方、比較例Aのリチウムイオン二次電池を貫通させた釘の最高温度は、316℃であった。実施例Aのリチウムイオン二次電池は、強制短絡時において、著しい発熱抑制効果を示すといえる。
(評価例B)
実施例Aのリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vの実施例Aのリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極を大気下に曝した状態で、10℃/分の昇温速度で550℃まで加熱して、負極の温度変化を観測した。
比較例Aのリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
実施例Aのリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vの実施例Aのリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極を大気下に曝した状態で、10℃/分の昇温速度で550℃まで加熱して、負極の温度変化を観測した。
比較例Aのリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
実施例Aのリチウムイオン二次電池の負極については、10℃/分での昇温に追従する温度変化が観測された。他方、比較例Aのリチウムイオン二次電池の負極については、350℃に達した時点で、10℃/分での昇温から逸脱する急激な昇温が観測された。
(評価例C)
実施例Aのリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vの実施例Aのリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極について、以下のとおり、示差走査熱量計(DSC)にて、熱分析を行った。
実施例Aのリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vの実施例Aのリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極について、以下のとおり、示差走査熱量計(DSC)にて、熱分析を行った。
アルゴンガス雰囲気下、ステンレス製のDSC容器に乾燥後の負極を配置して、さらに、負極上に電解液を滴下した。その後、DSC容器に蓋をして、気密状態にした。そして、窒素ガス雰囲気下、5℃/分の速度で昇温し、250℃までの熱分析を行った。
比較例Aのリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
比較例Aのリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
分析の結果、実施例Aのリチウムイオン二次電池の負極及び電解液の発熱量は、2500J/gであり、比較例Aのリチウムイオン二次電池の負極及び電解液の発熱量は、2750J/gであった。
以上の評価例B及び評価例Cの結果から、負極表面の金属リチウム箔からリチウムをドープさせたリチウムイオン二次電池の負極よりも、正極のリチウムドープ剤からリチウムをドープさせたリチウムイオン二次電池の負極の方が、充電状態での熱安定性に優れるといえる。
(評価例D)
実施例Aのリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vの実施例Aのリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極をX線光電子分光法(XPS)で分析した。
比較例Aのリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
実施例Aのリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vの実施例Aのリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極をX線光電子分光法(XPS)で分析した。
比較例Aのリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
その結果、両負極の表面からLi−F結合に由来するピークが観測された。また、当該ピークの強度は、実施例Aのリチウムイオン二次電池の負極の方が強かった。以上の結果から、負極表面のLiFの存在が熱安定性などの効果に寄与していたと考えられる
実施例A及び比較例Aのリチウムイオン二次電池における負極表面のLiFは、以下の反応式で示されるとおり、リチウム塩の分解に因り、生じたものと考えられる。
式1: LiPF6 → Li+ + PF6 −
式2: Li+ + PF6 − ←→ LiF + PF5
式1: LiPF6 → Li+ + PF6 −
式2: Li+ + PF6 − ←→ LiF + PF5
ここで、実施例Aのリチウムイオン二次電池においては、初回充電時に、リチウムドープ剤から大量のリチウムイオンが電解液に放出される。そうすると、Li+の濃度が増加するので、式2における平衡反応において、右側に進行する反応が有利となる。かかるメカニズムに因り、実施例Aのリチウムイオン二次電池の負極表面においては、多くのLiFが生成したと考えられる。
式2における平衡反応において、右側に進行する反応を有利とするためには、電解液におけるリチウム塩濃度が高い方が有利となる。この点を鑑みると、本発明のリチウムイオン二次電池においては、高濃度のリチウム塩を含有する電解液を具備するものが好ましいと考えられる。
(評価例E)
実施例Aのリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vの実施例Aのリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極を昇温脱離ガス分析装置(TPD−MS)に供して、室温から500℃までの間に発生するガスを分析した。
比較例Bのリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
実施例Aのリチウムイオン二次電池を電圧4.1Vまで充電した。電圧4.1Vの実施例Aのリチウムイオン二次電池を解体して、充電状態の負極を取り出した。取り出した負極を、ジメチルカーボネートで洗浄し、次いで乾燥した。以上の作業は、不活性ガス雰囲気下で行った。乾燥後の負極を昇温脱離ガス分析装置(TPD−MS)に供して、室温から500℃までの間に発生するガスを分析した。
比較例Bのリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
分析の結果、実施例A及び比較例Bのリチウムイオン二次電池の負極から、加熱時に水素ガスが発生することが判明した。表7に、200℃及び500℃における各負極からの水素発生量について、MSで検出されたイオン強度で示す。
比較例Bの水素発生量と比較して、実施例Aの水素発生量が少ないことがわかる。負極における水素発生源は、主に結着剤のポリアミドイミドと考えられる。本発明のリチウムイオン二次電池の負極において、水素発生量を抑制できたことから、本発明のリチウムイオン二次電池の負極には、水素発生の可能性が有る結着剤を好適に用いることができる。
Claims (6)
- 正極活物質及びリチウムドープ剤を具備する正極と、
Al含有シリコン材料を具備する負極と、
を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。 - 前記リチウムドープ剤がLi5FeO4、Li6MnO4、Li6CoO4、Li6ZnO4、Li5AlO4及びLi5GaO4から選択される請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
- フッ素を含有する電解液を備える請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記負極がポリアミド、ポリアミドイミド又はポリ(メタ)アクリル系樹脂を具備する請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記Al含有シリコン材料において、Al質量%(WAl%)が0<WAl<1を満足し、Si質量%(WSi%)が60≦WSi≦90を満足する請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池を充電して、前記リチウムドープ剤のリチウムを前記負極に導入することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
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2018
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