JP2019117795A - 電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法、及び電池 - Google Patents

電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法、及び電池 Download PDF

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Abstract

【課題】耐酸性皮膜を備えたバリア層の密着性に優れた電池用包装材料を提供する。【解決手段】 本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、前記バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えており、前記耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4-に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3-に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内にある。【選択図】なし

Description

本発明は、電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法、及び電池に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されている。これらの電池において、電極、電解質などにより構成される電池素子は、包装材料などにより封止される必要がある。電池用包装材料としては、金属製の包装材料が多用されている。
近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パーソナルコンピュータ、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、多様な形状を有する電池が求められている。また、電池には、薄型化、軽量化なども求められている。しかしながら、従来多用されている金属製の包装材料では、電池形状の多様化に追従することが困難である。また、金属製であるため、包装材料の軽量化にも限界がある。
そこで、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
このようなフィルム状の電池用包装材料においては、一般的に、成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの電池素子を配し、熱融着性樹脂層同士を熱融着させることにより、電池用包装材料の内部に電池素子が収容された電池が得られる。
特開2008−287971号公報
電池の内部に水分が侵入すると、水分と電解質などとが反応して、酸性物質を生成することがある。例えば、リチウムイオン電池などに使用されている電解液には、電解質となるフッ素化合物(LiPF6、LiBF4など)が含まれており、フッ素化合物が水と反応すると、フッ化水素を発生することが知られている。
フィルム状の積層体によって形成された電池用包装材料のバリア層は、通常、金属箔などによって構成されており、バリア層に酸が接触すると腐食しやすいという問題がある。このような電池用包装材料の耐酸性を高める技術としては、化成処理によって表面に耐酸性皮膜を形成したバリア層を用いる技術が知られている。
従来、耐酸性皮膜を形成する化成処理としては、酸化クロムなどのクロム化合物を用いたクロメート処理、リン酸化合物を用いたリン酸処理など種々の方法が知られている。
しかしながら、本発明者らが検討を重ねたところ、耐酸性皮膜を備えた従来のバリア層は、耐酸性皮膜を設けた側に隣接する層との密着性(すなわち、耐酸性皮膜と、これに接する層との界面における密着性)が不十分になることが明らかとなった。より具体的には、電池用包装材料に電解液が付着することによって、当該密着性が不十分になる場合がある。
また、電池の中でも、特に、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン、ゲーム機器、ドローンなど)に使用される電池は、小型であり、比較的使用期間が短いため、短期間での高い密着性の保持が求められている。なお、本明細書において、短期間とは、通常のモバイル機器に求められる電池の寿命程度の期間であり、例えば2〜5年程度である。
このような状況下、本発明は、耐酸性皮膜を備えたバリア層の短期間での密着性に優れた電池用包装材料を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えており、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内にある電池用包装材料は、電解液が付着した際の短期間での密着性に優れることを見出した。
さらに、本発明者らは、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えており、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4が、90〜150の範囲内にある電池用包装材料についても、バリア層の表面に耐酸性皮膜を備えているにも拘わらず、電解液が付着した際の短期間での密着性に優れることを見出した。
特に、本発明者らは、これらの耐酸性皮膜を備えるバリア層は、比較的短期間における高い密着性を保持することができ、例えばモバイル機器などに使用される小型の電池の包装材料として、特に有用であることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えており、
前記耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内にある、電池用包装材料。
項2. 前記バリア層の少なくとも前記熱融着性樹脂層側の表面に、前記耐酸性皮膜を備えている、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記耐酸性皮膜と前記熱融着性樹脂層とが、接着層を介して積層されている、項2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記接着層を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を有している、項3に記載の電池用包装材料。
項5. 前記接着層が、酸変性ポリオレフィンを含む、項3又は4に記載の電池用包装材料。
項6. 前記接着層を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出される、項3〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 前記接着層の前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、
前記熱融着性樹脂層が、ポリプロピレンを含む、項6に記載の電池用包装材料。
項8. 前記接着層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、項3〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
項9. 前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、項3〜8のいずれかに記載の電池用包装材料。
項10. 前記接着層が、ウレタン樹脂、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項3〜9のいずれかに記載の電池用包装材料。
項11. 前記バリア層が、アルミニウム箔により構成されている、項1〜10のいずれかに記載の電池用包装材料。
項12. 前記熱融着性樹脂層を構成している樹脂が、ポリオレフィン骨格を含んでいる、項1〜11のいずれかに記載の電池用包装材料。
項13. モバイル機器の電池に使用される包装材料である、項1〜12のいずれかに記載の電池用包装材料。
項14. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層を積層する際に、前記バリア層の少なくとも一方側の表面に、耐酸性皮膜を備えており、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内である、電池用包装材料の製造方法。
項15. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜13のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
項16. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体の電池用包装材料への使用であって、
前記バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えており、
前記耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内にある、前記積層体の電池用包装材料への使用。
本発明によれば、耐酸性皮膜を備えたバリア層の短期間での密着性に優れた電池用包装材料を提供することができる。また、本発明によれば、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池を提供することもできる。
本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。 本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す模式図である。
本発明の第1の態様の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えており、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内にあることを特徴とする。
また、本発明の第2の態様の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えており、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4が、90〜150の範囲内にあることを特徴とする。
以下、図1から図5を参照しながら、本発明の電池用包装材料、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料を用いた電池について、詳述する。
なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料は、例えば図1に示すように、少なくとも、基材層1、バリア層3、熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体から構成されている。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
バリア層3の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えている。当該耐酸性皮膜は、セリウムを含んでいる。図1には、本発明の電池用包装材料が、バリア層3の熱融着性樹脂層4側の表面に、耐酸性皮膜3aを備える場合の模式図を示している。また、図2には、本発明の電池用包装材料が、バリア層3の両面に、それぞれ、耐酸性皮膜3a,3bを備える場合の模式図を示している。なお、後述の通り、本発明の電池用包装材料においては、バリア層3の熱融着性樹脂層4側の表面のみに、耐酸性皮膜3aを備えていてもよいし、バリア層3の基材層1側の表面のみに、耐酸性皮膜3bを備えていてもよいし、バリア層3の両面に、それぞれ、耐酸性皮膜3a,3bを備えていてもよい。
本発明の電池用包装材料は、図3に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて、接着剤層2を備えていてもよい。また、図4に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて、接着層5を備えていてもよい。また、本発明の電池用包装材料は、図5に示すように、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1のバリア層3とは反対側に、必要に応じて、表面被覆層6を備えていてもよい。
本発明の電池用包装材料10を構成する積層体の厚さとしては、特に制限されないが、電池用包装材料の厚さを薄くして電池のエネルギー密度を高めつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点からは、例えば約180μm以下、好ましくは約150μm以下、より好ましくは60〜180μm程度、さらに好ましくは60〜150μm程度が挙げられる。
なお、電池用包装材料において、後述のバリア層3については、通常、その製造過程におけるMDとTDを判別することができる。例えば、バリア層3がアルミニウム箔により構成されている場合、アルミニウム箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、アルミニウム箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、アルミニウム箔の表面を観察することによって、アルミニウム箔の圧延方向を把握することができる。また、積層体の製造過程においては、通常、積層体のMDと、アルミニウム箔のRDとが一致するため、積層体のアルミニウム箔の表面を観察し、アルミニウム箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMDを特定することができる。また、積層体のTDは、積層体のMDとは垂直方向であるため、積層体のTDについても特定することができる。
2.電池用包装材料を形成する各層
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂及びこれらの混合物や共重合物などの樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステルなどが挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6とナイロン66との共重合体、ナイロン6,10、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などが挙げられる。
基材層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造、ナイロンフィルムを複数積層させた多層構造、ポリエステルフィルムを複数積層させた多層構造などが挙げられる。基材層1が多層構造である場合、2軸延伸ナイロンフィルムと2軸延伸ポリエステルフィルムの積層体、2軸延伸ナイロンフィルムを複数積層させた積層体、2軸延伸ポリエステルフィルムを複数積層させた積層体が好ましい。例えば、基材層1を2層の樹脂フィルムから形成する場合、ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂を積層する構成、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂を積層する構成、又はポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を積層する構成にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを積層する構成、ナイロンとナイロンを積層する構成、又はポリエチレンテレフタレートとナイロンを積層する構成にすることがより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、当該積層構成においては、ポリエステル樹脂が最外層に位置するように基材層1を積層することが好ましい。基材層1を多層構造とする場合、各層の厚さとして、好ましくは2〜25μm程度が挙げられる。
基材層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤又は接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量などについては、後述する接着剤層2の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚さとしては、例えば2〜5μm程度が挙げられる。
本発明において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、後述の熱融着性樹脂層4で例示したものと同じものが挙げられる。
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、温度24℃、相対湿度60%の環境において、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
基材層1の中には、滑剤が含まれていてもよい。また、基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
基材層1の厚さについては、基材層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、3〜50μm程度、好ましくは10〜35μm程度が挙げられる。
[接着剤層2]
本発明の電池用包装材料10において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3を強固に接着させるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのいずれであってもよい。
接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエーテル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。これらの接着成分と硬化剤として、好ましくは各種ポリオールとポリイソシアネートからなるポリウレタン系接着剤が挙げられる。さらに好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。
接着剤層2の厚さについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μm程度が挙げられる。
[バリア層3]
電池用包装材料において、バリア層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層3は、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層3は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム合金箔により形成することがさらに好ましい。電池用包装材料の製造時に、バリア層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H−O、JIS H4160:1994 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、JIS H4000:2014 A8079P−O)など軟質アルミニウム合金箔により形成することがより好ましい。
バリア層3の厚さは、水蒸気などのバリア層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、電池用包装材料の厚さを薄くする観点からは、好ましくは約100μm以下、より好ましくは10〜100μm程度、さらに好ましくは10〜80μm程度が挙げられる。
[耐酸性皮膜3a、3b]
本発明の電池用包装材料においては、バリア層3の少なくとも一方側の表面に耐酸性皮膜を備えている。本発明の電池用包装材料においては、バリア層3の熱融着性樹脂層4側の表面のみに、耐酸性皮膜3aを備えていてもよいし、バリア層3の基材層1側の表面のみに、耐酸性皮膜3bを備えていてもよいし、バリア層3の両面に、それぞれ、耐酸性皮膜3a,3bを備えていてもよい。
また、本発明の第1の態様の電池用包装材料においては、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内にあることを特徴としている。当該ピーク強度比PPO3/CePO4がこのような特定の範囲内にあることにより、電池用包装材料に電解液が付着した場合にも、バリア層3の耐酸性皮膜を設けた側に隣接する層との短期間での密着性に優れている。また、本発明の電池用包装材料において、当該耐酸性皮膜を備えるバリア層は、比較的短期間(例えば2〜5年程度)において、高い密着性を保持できるため、例えばモバイル機器などに使用される小型の電池の包装材料として、特に有用である。
また、本発明の第2の態様の電池用包装材料においては、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4が、90〜150の範囲内にあることを特徴としている。当該ピーク強度比PPO2/CePO4がこのような特定の範囲内にあることにより、電池用包装材料に電解液が付着した場合にも、バリア層3の耐酸性皮膜を設けた側に隣接する層との短期間での密着性に優れている。また、本発明の第2の態様の電池用包装材料においても、当該耐酸性皮膜を備えるバリア層は、比較的短期間において、高い密着性を保持できるため、例えばモバイル機器などに使用される小型の電池の包装材料として、特に有用である。
なお、本発明の第1の態様及び第2の態様において、バリア層3の両面に耐酸性皮膜3a,3bを備えている場合、いずれか一方の面の耐酸性皮膜における前記ピーク強度比PPO3/CePO4又はPPO2/CePO4が、それぞれ、上記の範囲内にあればよい(すなわち、第1の態様の電池用包装材料であれば、ピーク強度比PPO3/CePO4が上記の範囲内であればよく、第2の態様の電池用包装材料であれば、ピーク強度比PPO2/CePO4が上記の範囲内であればよい)が、耐酸性皮膜3a,3bのいずれについても、前記ピーク強度比PPO3/CePO4又はPPO2/CePO4が、それぞれ、上記の範囲内にあることが好ましい。特に、バリア層の熱融着性樹脂層側に位置している耐酸性皮膜と、これに隣接する層(例えば、必要に応じて設けられる接着層5、熱融着性樹脂層4など)とは、電解液の浸透によって短期間で密着性が低下しやすいため、本発明の電池用包装材料においては、バリア層3の少なくとも熱融着性樹脂層4側の表面に、耐酸性皮膜3aを備えていることが好ましく、耐酸性皮膜3aについての前記ピーク強度比PPO3/CePO4又はPPO2/CePO4が、それぞれ、上記の範囲内にあることが好ましい。これらの点については、以下に示す各ピーク強度比についても、同様である。
第1の態様において、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4は、80〜120の範囲にあればよいが、耐酸性皮膜を備えたバリア層の短期間での密着性をより高める観点から、比PPO3/CePO4としては、下限は、好ましくは約85以上、より好ましくは約92以上が挙げられ、上限は、好ましくは約110以下、より好ましくは約105以下、さらに好ましくは約98以下が挙げられる。また、当該ピーク強度比PPO3/CePO4の範囲としては、好ましくは、80〜110程度、80〜105程度、80〜98程度、85〜120程度、85〜110程度、85〜105程度、85〜98程度、92〜120程度、92〜110程度、92〜105程度、92〜98程度が挙げられる。
また、第2の態様において、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4は、90〜150の範囲にあればよいが、耐酸性皮膜を備えたバリア層の短期間での密着性をより高める観点から、比PPO2/CePO4としては、下限は、好ましくは約110以上が挙げられ、上限は、好ましくは約130以下、より好ましくは約116以下が挙げられる。また、当該ピーク強度比PPO2/CePO4の範囲としては、好ましくは90〜130程度、90〜116程度、110〜150程度、110〜130程度、110〜116程度が挙げられる。
さらに、第1の態様においても、第2の態様と同様、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4としては、下限は、好ましくは約90以上が挙げられ、上限は、好ましくは約150以下、より好ましくは130以下が挙げられる。また、第1の態様における当該ピーク強度比PPO2/CePO4の範囲としては、好ましくは90〜150程度、より好ましくは90〜130程度が挙げられる。
耐酸性皮膜3a,3bについて、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析する方法は、具体的には、飛行時間型2次イオン質量分析装置を用いて、次の測定条件で行うことができる。
(測定条件)
1次イオン:ビスマスクラスターのダブルチャージイオン(Bi3 ++
1次イオン加速電圧:30 kV
質量範囲(m/z):0〜1500
測定範囲:100μm×100μm
スキャン数:16 scan/cycle
ピクセル数(1辺):256 pixel
エッチングイオン:Arガスクラスターイオンビーム(Ar−GCIB)
エッチングイオン加速電圧:5.0 kV
また、耐酸性皮膜にセリウムが含まれていることは、X線光電子分光を用いて確認することができる。具体的には、まず、電池用包装材料において、バリア層に積層されている層(接着剤層、熱融着性樹脂層、接着層など)を物理的に剥離する。次に、バリア層を電気炉に入れ、約300℃、約30分間で、バリア層の表面に存在している有機成分を除去する。その後、バリア層の表面のX線光電子分光を用いて、セリウムが含まれることを確認する。
耐酸性皮膜3a,3bは、バリア層3の表面を、酸化セリウムなどのセリウム化合物を含む処理液で化成処理することにより形成することができる。
セリウム化合物を含む処理液を用いた化成処理としては、例えば、リン酸及び/またはその塩中に、酸化セリウムなどのセリウム化合物を分散させたものをバリア層3の表面に塗布し、焼付け処理を行うことにより、バリア層3の表面に耐酸性皮膜を形成する方法が挙げられる。
耐酸性皮膜3a,3bのピーク強度比PPO3/CePO4又はPPO2/CePO4は、例えば、耐酸性皮膜3a,3bを形成する処理液の組成、処理後の焼付け処理の温度や時間等の製造条件などによって調整することができる。
セリウム化合物を含む処理液におけるセリウム化合物とリン酸及び/またはその塩との割合としては、特に制限されないが、上記ピーク強度比PPO3/CePO4又はPPO2/CePO4のそれぞれを上記の範囲内に設定する観点からは、セリウム化合物100質量部に対するリン酸及び/またはその塩の割合としては、好ましくは12〜28程度、より好ましくは15〜25質量部程度が挙げられる。リン酸及びその塩としては、例えば、縮合リン酸及びその塩を使用することもできる。
また、セリウム化合物を含む処理液には、アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーを架橋させる架橋剤をさらに含んでいてもよい。アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体などが挙げられる。また、架橋剤としては、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物や、シランカップリング剤などが挙げられる。アニオン性ポリマー及び架橋剤は、それぞれ、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
また、優れた耐酸性を発揮しつつ、耐酸性皮膜を備えたバリア層の短期間での密着性を高める観点から、セリウム化合物を含む処理液には、アミノ化フェノール重合体が含まれることが好ましい。セリウム化合物を含む処理液において、アミノ化フェノール重合体の含有量としては、セリウム化合物100質量部に対して、好ましくは100〜400質量部程度、より好ましくは200〜300質量部程度が挙げられる。また、アミノ化フェノール重合体の重量平均分子量としては、好ましくは5000〜20000程度が挙げられる。なお、アミノ化フェノール重合体の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
セリウム化合物を含む処理液の溶媒としては、処理液に含まれる成分を分散させ、その後の加熱により蒸発させられるものであれば特に制限されないが、好ましくは水が挙げられる。セリウム化合物を含む処理液の固形分濃度としては、例えば、8〜30質量%程度が挙げられる。また、処理液をバリア層の表面に塗布し、加熱して耐酸性皮膜を形成する際のバリア層の表面温度としては、好ましくは190〜220℃程度が挙げられ、加熱時間としては3〜6秒間程度が挙げられる。このような温度及び加熱時間を採用することにより、溶媒を適切に蒸発させて、耐酸性皮膜層を好適に形成することができる。
耐酸性皮膜を形成する処理液に含まれるセリウム化合物の固形分濃度としては、特に制限されないが、上記ピーク強度比PPO3/CePO4又はPPO2/CePO4をそれぞれ上記所定の範囲に設定して、優れた耐酸性を発揮しつつ、耐酸性皮膜を備えたバリア層の短期間での密着性を高める観点から、溶媒(水など)100質量部に対して、9.0〜10.0質量部程度とすることが好ましく、9.1〜9.5質量部程度とすることがより好ましい。
耐酸性皮膜の厚さとしては、特に制限されないが、優れた耐酸性を発揮しつつ、耐酸性皮膜を備えたバリア層の短期間での密着性を高める観点から、好ましくは1nm〜10μm程度、より好ましくは1〜100nm程度、さらに好ましくは1〜50nm程度が挙げられる。なお、耐酸性皮膜の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
同様の観点から、バリア層3の表面1m2当たりの耐酸性皮膜の量としては、好ましくは2〜100mg程度、より好ましくは2〜70mg程度、さらに好ましくは2〜40mg程度が挙げられる。
処理液をバリア層3の表面に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などが挙げられる。
上記ピーク強度比PPO3/CePO4又はPPO2/CePO4をそれぞれ上記所定の範囲に設定して、優れた耐酸性を発揮しつつ、耐酸性皮膜を備えたバリア層の短期間での密着性を高める観点から、処理液を焼付けして耐酸性皮膜にする際の加熱温度としては、好ましくは170〜250℃程度、より好ましくは180〜220℃程度が挙げられる。また、同様の観点から、焼付けする時間としては、好ましくは2〜10秒程度、より好ましくは3〜6秒程度が挙げられる。
バリア層の表面の化成処理をより効率的に行う観点から、バリア層3の表面に耐酸性皮膜を設ける前には、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの公知の処理方法で脱脂処理を行うことが好ましい。
[熱融着性樹脂層4]
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層である。
熱融着性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネンなどの環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック共重合又はグラフト共重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
前記酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック共重合又はグラフト共重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記ポリオレフィンの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、熱融着性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
本発明において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、熱融着性樹脂層の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N'−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、温度24℃、相対湿度60%の環境において、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の中には、滑剤が含まれていてもよい。また、熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
また、熱融着性樹脂層4の厚さとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましくは約60μm以下、より好ましくは15〜60μm程度、さらに好ましくは15〜40μm程度が挙げられる。
[接着層5]
本発明の電池用包装材料において、接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。接着層5は、単層により構成されていてもよいし、同一又は異なる複数層により構成されていてもよい。
一般に、バリア層と熱融着性樹脂層との密着性を高める観点からは、これらの間に接着層を有していることが好ましいが、バリア層の熱融着性樹脂層側の表面に耐酸性皮膜を備えている場合には、耐酸性皮膜と接着層との間で密着性が低下しやすいという問題がある。これに対して、本発明の電池用包装材料においては、耐酸性皮膜が前述の特定のピーク強度比を有しているため、密着性に優れており、耐酸性皮膜3aと接着層5との間の密着性も効果的に高められている。すなわち、本発明の電池用包装材料において、バリア層3の表面の耐酸性皮膜3aと熱融着性樹脂層4とが、接着層5を介して積層されている態様において、耐酸性皮膜を備えたバリア層の密着性に優れるという効果を特に有効に発揮することができる。
接着層5は、バリア層3(さらには、耐酸性皮膜3a)と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、その接着機構、接着剤成分の種類などは、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。また、接着層5の形成に使用される樹脂としては、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も使用できる。バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性に優れる観点から、ポリオレフィンとしては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましく、カルボン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。すなわち、接着層5を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
さらに、電池用包装材料の厚さを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた電池用包装材料とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、熱融着性樹脂層4で例示したカルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンと同じものが例示できる。
また、硬化剤としては、酸変性ポリオレフィンを硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、エポキシ系硬化剤、多官能イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤などが挙げられる。
エポキシ系硬化剤は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
多官能イソシアネート系硬化剤は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド系硬化剤としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
オキサゾリン系硬化剤は、オキサゾリン骨格(オキサゾリン基)を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。オキサゾリン系硬化剤としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5によるバリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるなどの観点から、硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
接着層5を形成する樹脂組成物における硬化剤の含有量は、0.1〜50質量%程度の範囲にあることが好ましく、0.1〜30質量%程度の範囲にあることがより好ましく、0.1〜10質量%程度の範囲にあることがさらに好ましい。
また、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層5は、ウレタン樹脂、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。エステル樹脂としては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層5は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層5に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
また、耐酸性皮膜3aと接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C−O−C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ウレタン樹脂などが挙げられる。接着層5がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、耐酸性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、前記のものが挙げられる。
接着層5における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐酸性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、前記のものなどが挙げられる。
接着層5における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐酸性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50〜2000程度、より好ましくは100〜1000程度、さらに好ましくは200〜800程度が挙げられる。なお、本発明において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐酸性皮膜3aと接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
なお、本発明において、接着層5が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂は、それぞれ、硬化剤として機能する。
接着層5の厚さについては、接着する層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、接着剤層2で例示した接着剤を用いる場合であれば、好ましくは1〜10μm程度、より好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2〜50μm程度、より好ましくは10〜40μm程度が挙げられる。また、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合であれば、好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1〜20μm程度、さらに好ましくは0.5〜5μm程度が挙げられる。なお、接着層5が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱などにより硬化させることにより、接着層5を形成することができる。
[表面被覆層6]
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の外側(基材層1のバリア層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層6を設けてもよい。表面被覆層6を設ける場合、表面被覆層6は、電池用包装材料の最外層となる。
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。表面被覆層6は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層6を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、表面被覆層には、添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物などが挙げられる。また、添加剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状などが挙げられる。添加剤として、具体的には、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施しておいてもよい。
表面被覆層6中の添加剤の含有量としては、特に制限されないが、好ましくは0.05〜1.0質量%程度、より好ましくは0.1〜0.5質量%程度が挙げられる。
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、表面被覆層を形成する2液硬化型樹脂を基材層1の外側の表面に塗布する方法が挙げられる。添加剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂に添加剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
表面被覆層6の厚さとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、第1の態様の電池用包装材料については、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、バリア層を積層する際に、前記バリア層の少なくとも一方側の表面に、耐酸性皮膜を備えており、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内である方法が挙げられる。
また、第2の態様の電池用包装材料については、少なくとも、基材層1と、バリア層3と、熱融着性樹脂層4とをこの順に備える積層する工程を備えており、バリア層を積層する際に、バリア層の少なくとも一方側の表面に、耐酸性皮膜を備えており、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4が、90〜150の範囲内にあるものを用いる方法が挙げられる。
本発明の電池用包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1またはバリア層3(耐酸性皮膜3aを備える場合には、耐酸性皮膜3a、以下省略)に、接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。このとき、バリア層3を積層する際に、バリア層3の少なくとも一方の表面には、予め前述の耐酸性皮膜が形成されたものを用いる。なお、耐酸性皮膜3a,3bの形成方法は、前述の通りである。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法などの方法により塗布すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)などが挙げられる。
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層を積層する。表面被覆層は、例えば表面被覆層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層を形成した後、基材層1の表面被覆層とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層6/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/少なくとも一方の表面に耐酸性皮膜を備えるバリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2及び接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式などの加熱処理に供してもよい。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施していてもよい。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質などの電池素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本発明の電池用包装材料によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を収容して、電池とすることができる。なお、本発明の電池用包装材料において、前記のピーク強度などは、電池から電池用包装材料を切り出して分析することができる。電池から電池用包装材料を切り出す場合には、電池の天面、底面など、熱融着性樹脂層同士が熱融着されていない部分からサンプルを取得して分析に供する。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料により形成された包装体中に電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料の熱融着性樹脂部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシターなどが挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、当該耐酸性皮膜を備えるバリア層は、比較的短期間における高い密着性を保持することができる。このため、本発明の電池用包装材料は、例えばモバイル機器などに使用される小型の電池の包装材料として、特に有用である。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<電池用包装材料の製造>
実施例1
基材層として、ポリエチレンテレフタレートとナイロンとが共押出しにより積層され、2軸延伸した積層フィルムを用意した。当該積層フィルムにおいて、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ5μm)と2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ20μm)との間は、不飽和カルボン酸誘導体成分でグラフト変性した変性熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を用いた接着剤層(接着剤、厚さ1μm)により接着されている。次に、後述の方法で両面に化成処理を施して、耐酸性皮膜(厚さ20nm)を備えたアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)から構成されるバリア層を、2軸延伸ナイロンフィルム側の表面にドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐酸性皮膜を備えたアルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、耐酸性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層の2軸延伸ナイロンフィルム側を積層した後、エージング処理を実施することにより、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/接着剤/2軸延伸ナイロンフィルム/接着剤層/両面に耐酸性皮膜を備えたバリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体の耐酸性皮膜の表面に、接着層として、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネート化合物からなる接着剤(硬化後の厚さが3μm)を塗布し、乾燥させた。その積層体の接着剤側に、熱融着性樹脂層として、未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(ランダムポリプロピレン(厚さ5μm)/ブロックポリプロピレン(厚さ30μm)/ランダムポリプロピレン(厚さ5μm)、合計厚さ40μm)を積層し、加熱した2つのロール間を通過させて接着することにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体を硬化(エージング)することにより、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(5μm)/接着剤(1μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐酸性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(40μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。
バリア層の表面における耐酸性皮膜は、酸化セリウム100質量部に対して、無機リン化合物(リン酸ナトリウム塩)が20質量部配合された処理液(溶媒として水が含まれており、固形分濃度が10質量%程度)を用意し、バリア層の両面に当該処理液を塗布し(乾燥後の膜厚が20nm)、バリア層の表面温度が190〜230℃程度となる温度で、3〜6秒間程度、加熱乾燥させることにより形成した。
実施例2
熱融着性樹脂層として、前記未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)の代わりに、未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(ランダムポリプロピレン(厚さ10μm)/ブロックポリプロピレン(厚さ60μm)/ランダムポリプロピレン(厚さ10μm)、合計厚さ80μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(5μm)/接着剤(1μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐酸性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(80μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。なお、バリア層としてのアルミニウム箔は、実施例1と同じ耐酸性皮膜を備えるものを用いた。
比較例1
基材層としての2軸延伸ナイロンフィルム(25μm)の表面に、後述の方法で両面に化成処理を施して、クロムを含む耐酸性皮膜(厚さ20nm)を備えたアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)から構成されるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐酸性皮膜を備えたアルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、耐酸性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層として2軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、2軸延伸ナイロンフィルム/接着剤層/両面に耐酸性皮膜を備えたバリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体の耐酸性皮膜の表面に、接着層として、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネート化合物からなる接着剤(硬化後の厚さが3μm)を塗布し、乾燥させた。その積層体の接着剤側に、第1の熱溶着性樹脂層として未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(ランダムポリプロピレン(厚さ4μm)/ブロックポリプロピレン(厚さ22μm)/ランダムポリプロピレン(厚さ4μm)、合計厚さ30μm)を積層し、加熱した2つのロール間を通過させて接着した。さらに、その上から、第2の熱溶着性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(厚さ50μm)を押出すことにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層(2層)を積層させた。次に、得られた積層体をエージングすることにより、2軸延伸ナイロンフィルム(25μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐酸性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(30μm)/ランダムポリプロピレン(50μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。
バリア層の表面における耐酸性皮膜の形成は、次のようにして行った。水100質量に対して、アミノ化フェノール重合体43質量部、フッ化クロム16質量部、リン酸13質量部を含む処理液を容易し、バリア層の両面に当該処理液を塗布し(乾燥後の膜厚が20nm)、バリア層の表面温度が190〜230℃程度となる温度で、3〜6秒間程度、加熱乾燥させた。
比較例2
熱融着性樹脂層として、ランダムポリプロピレン(厚さ50μm)の代わりに、ランダムポリプロピレン(厚さ20μm)を押出したこと以外は、比較例1と同様にして、2軸延伸ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐酸性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(30μm)/ランダムポリプロピレン(20μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。なお、バリア層としてのアルミニウム箔は、比較例1と同じ耐酸性皮膜を備えるものを用いた。
比較例3,4
実施例1において、バリア層の表面における耐酸性皮膜の形成を、比較例3では、リン酸が実施例1の半分(質量比)程度、比較例4では、リン酸が実施例の1.5倍(質量比)程度となるようにして行ったこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、電池用包装材料を得た。
<飛行時間型2次イオン質量分析>
耐酸性皮膜の分析は、次のようにして行った。まず、バリア層と接着層との間を引き剥がした。この際、水や有機溶剤、酸やアルカリの水溶液などを利用せずに、物理的に剥離させた。バリア層と接着層との間を剥離した後には、バリア層の表面に接着層が残存していたため、残存している接着層をAr−GCIBによるエッチングで除去した。このようにして得られたバリア層の表面について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて、耐酸性皮膜の分析を行った。それぞれ、CePO4 -、PO2 -、及びPO3 -に由来するピーク強度PCePO4、PPO2、PPO3と、ピーク強度PCePO4に対するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4と、ピーク強度PCePO4に対するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4を、それぞれ、表1に示す。なお、比較例1,2においては、化成処理の処理液にクロムが使用されており、セリウムは使用されていないため、表1には、CePO4 -のピーク強度PCePO4に関する項目について「−」で示した。
飛行時間型2次イオン質量分析法の測定装置及び測定条件の詳細は次の通りである。
測定装置:ION−TOF社製 飛行時間型2次イオン質量分析装置TOF.SIMS5(測定条件)
1次イオン:ビスマスクラスターのダブルチャージイオン(Bi3 ++
1次イオン加速電圧:30 kV
質量範囲(m/z):0〜1500
測定範囲:100μm×100μm
スキャン数:16 scan/cycle
ピクセル数(1辺):256 pixel
エッチングイオン:Arガスクラスターイオンビーム(Ar−GCIB)
エッチングイオン加速電圧:5.0 kV
<密着性の評価>
以下の方法により、電池用包装材料に電解液が付着した場合のバリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性の評価を、剥離強度(N/15mm)を測定することにより行った。
まず、上記で得られた各電池用包装材料をそれぞれ、15mm(TD:Transverse Direction、横方向)、100mm(MD:Machine Direction、縦方向)のサイズに裁断して試験片とした。ガラス瓶に試験片を入れ、さらに電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウム(溶液中濃度1×103mol/m3))を入れて、試験片の全体が電解液に浸漬されるようにした。この状態でガラス瓶に蓋をして密封した。密封したガラス瓶を、85℃に設定されたオーブン内に入れ、24時間静置した。次に、ガラス瓶をオーブンから取り出し、さらに試験片をガラス瓶から取り出して水洗し、試験片の表面の水分をタオルで拭き取った。
次に、試験片の熱融着性樹脂層とバリア層間を剥離させ、試験片の熱融着性樹脂層側とバリア層側とを引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−XPlus)を用いて、標線間距離50mm、50mm/分の速度で180°の方向に引張り、試験片の剥離強度(N/15mm)を測定した。なお、試験片の剥離強度の測定は、試験片の表面の水分をタオルで拭き取ってから10分以内に行った。標線間距離が57mmに達した際の強度を試験片の剥離強度とした。
一方、初期密着性を次のようにして評価した。まず、実施例1,2及び比較例1〜4で得られた各電池用包装材料を15mm(TD)、100mm(MD)のサイズに裁断して試験片とした。次に、試験片の熱融着性樹脂層とバリア層間を剥離させ、熱融着性樹脂層とバリア層とを引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−XPlus)を用いて、標線間距離50mm、50mm/分の速度で180°の方向に引張り、試験片の剥離強度(N/15mm)を測定し、初期密着性とした。結果を表1に示す。なお、熱融着性樹脂層とバリア層間を剥離させた際、これらの層の間に位置する接着層は、熱融着性樹脂層とバリア層のいずれか一方又は両層に積層された状態となる。
Figure 2019117795
表1に示される結果から明らかなとおり、バリア層の表面に耐酸性皮膜を備えており、耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内にある実施例1、2の電池用包装材料は、バリア層の表面に耐酸性皮膜を備えているにも拘わらず、電解液浸漬後において、バリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性に優れることが分かる。また、実施例1、2の電池用包装材料は、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4は、90〜150の範囲内にあり、バリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性が優れていた。
1…基材層
2…接着剤層
3…バリア層
3a,3b…耐酸性皮膜
4…熱融着性樹脂層
5…接着層
6…表面被覆層
10…電池用包装材料

Claims (1)

  1. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
    前記バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐酸性皮膜を備えており、
    前記耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3 -に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80〜120の範囲内にある、電池用包装材料。
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