JP2019100308A - 鞍乗型車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速機のギアの切り替え時における走行フィーリングの低下を抑制する鞍乗型車両を提供する。【解決手段】クラッチレバー105aが操作されることなくシフトぺダル210が操作されると、エンジン107のクランク軸に発生するトルクが0または0に近い第1の目標値に調整される。それにより、変速機において、係合状態にある2つのギアの係合力が低下し、当該2つのギアが係合状態から非係合状態に移行する。次に、クランク軸に発生するトルクが第1の目標値とは異なる第2の目標値に調整される。それにより、変速機において、係合状態に移行すべき2つのギアの回転速度に差が生じ、当該2つのギアが短時間で係合状態に移行する。その後、クランク軸2に発生するトルクが第1の目標値と同じかまたはほぼ同じ第3の目標値に調整される。【選択図】図1

Description

本発明は、変速機のギア比を切り替えるためにエンジンの出力を調整することが可能な鞍乗型車両に関する。
レース等においては、迅速なギアシフトが求められる。そのため、運転者は、クラッチ操作を行わずにギアシフト(以下、クラッチレスシフトと呼ぶ。)を行う場合がある。この場合、クランクシャフトからメインシャフトへ動力が伝達されている状態でギアシフトが行われるので、ギアの切り離しが困難である。そこで、クラッチレスシフトにおいてギアを容易に切り離すことができるように、エンジンの出力調整を行うシステムが開発されている。
例えば、特許文献1に記載された駆動力制御装置においては、クラッチが接続された状態でドグ式トランスミッションの変速動作が検出される。変速動作の検出に応答して、エンジンの目標スロットル開度が、イニシャル開度に設定される。ここで、イニシャル開度は、例えばドグ同士が互いに離間または押圧せずに単に当接している状態を実現する開度である。その後、ドグ式トランスミッションのギア比が切り替えられることにより、エンジンのスロットル開度が、鞍乗型車両のアクセル操作によって要求されるスロットル開度に漸次近づくように調整される。
特開2016−98728号公報
上記の駆動力制御装置によれば、エンジンの目標スロットル開度がイニシャル開度に設定されることにより、係合状態にある2つのギアを容易に離間させることができる。しかしながら、エンジンのスロットル開度がイニシャル開度で維持されると、非係合状態から係合状態に移行すべき2つのギアが、略等しい回転速度で回転することにより非係合状態で維持される可能性がある。この場合、エンジンのトルクが変速機により駆動輪へ伝達されない状態で、車両の走行が維持される。このときの車両の走行状態は、運転者のアクセル操作によるものではない。したがって、運転者の走行フィーリングが低下する。
本発明の目的は、変速機のギアの切り替え時における走行フィーリングの低下を抑制する鞍乗型車両を提供することである。
(1)本発明に係る鞍乗型車両は、エンジンと、駆動輪と、エンジンにより発生されるトルクを駆動輪に伝達する変速機と、変速機においてドグによる係合状態からドグによる非係合状態に移行すべき第1および第2のギアの係合力が低下するようにエンジンのクランク軸に発生するトルクを第1の目標値に調整し、第1および第2のギアが非係合状態に移行した後、変速機においてドグによる非係合状態からドグによる係合状態に移行すべき第3および第4のギアが係合状態に移行可能となるようにエンジンのクランク軸に発生するトルクを第1の目標値とは異なる第2の目標値に調整するトルク調整部とを備える。
その鞍乗型車両においては、クランク軸に発生するトルクが第1の目標値に調整される。それにより、第1および第2のギアの係合力が低下し、第1および第2のギアが係合状態から非係合状態に移行する。その後、クランク軸に発生するトルクが第1の目標値とは異なる第2の目標値に調整される。この場合、第3および第4のギアの回転速度に差が生じることにより、第3および第4のギアを短時間で係合状態に移行させることができる。それにより、エンジンのトルクが変速機により駆動輪へ伝達されない状態で車両の走行が維持されることが抑制される。その結果、変速機のギアの切り替え時における走行フィーリングの低下が抑制される。
なお、第3および第4のギアのうち一方のギアは、第1および第2のギアのうちいずれか一方のギアであってもよい。この場合、第3および第4のギアのうち他方のギアは、第1および第2のギアとは異なるギアとなる。
(2)トルク調整部は、第3および第4のギアが係合状態に移行した後にエンジンのクランク軸に発生するトルクを第1の目標値に近づくように第3の目標値に調整してもよい。
この場合、第3および第4のギアが係合状態に移行した後に、第3および第4のギアの間に大きな係合力が瞬間的に発生することが抑制される。したがって、第3および第4のギアの係合時における運転者の走行フィーリングの低下が抑制される。
(3)鞍乗型車両は、エンジンの回転速度に対応してエンジンのクランク軸に発生されるべき要求トルクを取得する要求トルク取得部をさらに備え、トルク調整部は、クランク軸に発生するトルクが第3の目標値から要求トルク取得部により取得された要求トルクに漸次近づくように、エンジンのクランク軸に発生するトルクを調整してもよい。
この場合、第3および第4のギアの間に発生する係合力が要求トルクに対応する係合力に到達するまで緩やかに変化する。したがって、第3および第4のギアの係合後における運転者の走行フィーリングの低下が抑制される。
(4)鞍乗型車両は、変速機のギア比の切り替えのためのシフト操作に応答して、要求トルク取得部により取得された要求トルクが第1の目標値を含む予め定められた範囲内にあるか否かを判定する判定部をさらに備え、トルク調整部は、取得された要求トルクが予め定められた範囲内にないと判定された場合にエンジンのクランク軸に発生するトルクの調整を行い、取得された要求トルクが予め定められた範囲内にあると判定された場合にエンジンのクランク軸に発生するトルクの調整を行わなくてもよい。
要求トルクが予め定められた範囲内にない場合には、クランク軸に発生するトルクと第1の目標値との差は比較的大きい。したがって、クランク軸に発生するトルクを第1の目標値に調整することにより、第1および第2のギアを非係合状態に容易に移行させることができる。一方、要求トルクが予め定められた範囲内にある場合には、クランク軸に発生するトルクは第1の目標値にほぼ等しい。そのため、クランク軸に発生するトルクの調整を行うことなく第1および第2のギアを非係合状態に容易に移行させることができる。
このように、運転者のアクセル操作によりクランク軸に発生するトルクが変速機の切り替えに適切な値に調整されている場合には、トルク調整部によるトルクの調整は行われない。それにより、運転者の技能によるギア比の切り替えが可能となる。
(5)トルク調整部は、取得された要求トルクが正の値である場合に第2の目標値を正の値に設定し、取得された要求トルクが負の値である場合に第2の目標値を負の値に設定してもよい。
第3および第4のギア間に発生する係合力の向きは、クランク軸に発生するトルクが正の値である場合と負の値である場合とで逆になる。上記の構成によれば、第2の目標値の符号が要求トルクの符号に一致するように設定される。したがって、第3および第4のギアが係合した後に、第3および第4のギア間に適切な向きの係合力を発生させることができる。
(6)トルク調整部は、第2の目標値を要求トルク取得部により取得された要求トルクに設定してもよい。
この場合、第3のギアの回転速度と第4のギアの回転速度との間に比較的大きな差を生じさせることができるので、第3および第4のギアをより短時間で係合状態に移行させることができる。
本発明によれば、変速機のギアの切り替え時における走行フィーリングの低下を抑制することが可能となる。
本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の側面図である。 図1のミッションケース内に設けられる変速機およびシフト機構の概略構成を説明するための図である。 メイン軸に伝達されたトルクがドライブ軸に伝達されるメカニズムを説明するための概略図である。 図1の第1のリンク機構、シフトペダルおよびそれらの周辺部材を示す自動二輪車の左側面図である。 (a)〜(c)は、変速機におけるフィックスギアのドグ穴とスライドギアのドグとの関係を示す図である。 (a),(b)は、クラッチレスシフトが行われる際にエンジンが境界状態で維持されることにより運転者の走行フィーリングが低下する理由を説明するための図である。 エンジンが被駆動状態にあるときにクラッチレバーが操作されることなくシフトダウンのためのシフト操作が行われた場合の実トルクの調整例を示す図である。 エンジンが駆動状態にあるときにクラッチレバーが操作されることなくシフトアップのためのシフト操作が行われた場合の実トルクの調整例を示す図である。 エンジンおよびその周辺部材と自動二輪車の制御系の概略構成を示す図である。 ECUにおける制御動作の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の一実施の形態に係る鞍乗型車両について図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、鞍乗型車両の一例として自動二輪車を説明する。
[1]自動二輪車の概略構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の側面図である。図1の自動二輪車100においては、本体フレーム101の前端にヘッドパイプ102が設けられる。ヘッドパイプ102にフロントフォーク103が左右方向に揺動可能に設けられる。フロントフォーク103の下端に前輪104が回転可能に支持される。ヘッドパイプ102の上端にはハンドル105が設けられる。
ハンドル105には、クラッチレバー105a、アクセルグリップ(図示せず)およびアクセルセンサSE1が設けられる。アクセルセンサSE1は、運転者によるアクセルグリップの操作量(以下、アクセル開度と呼ぶ。)を検出する。ハンドル105には、運転者によるクラッチレバー105aの操作量を検出するクラッチセンサ(図示せず)がさらに設けられている。
図1に示すように、本体フレーム101はエンジン107を支持する。エンジン107には、吸気管79および排気管118が取り付けられる。エンジン107の下部には、クランクケース109が設けられている。クランクケース109内には、クランクセンサSE2が設けられる。クランクセンサSE2は、エンジン107のクランク軸2(図2)の回転角度を検出する。
また、吸気管79内には、スロットルセンサSE3が設けられる。スロットルセンサSE3は、後述するETV(Electronic Throttle Valve;電子制御式スロットルバルブ)82(図9)の開度(以下、スロットル開度と呼ぶ。)を検出する。
クランクケース109の後部にミッションケース110が取り付けられる。ミッションケース110内には、シフトカムセンサSE4、後述する変速機5(図2)および後述するシフト機構7(図2)が設けられる。シフトカムセンサSE4は、後述するシフトカム7b(図2)の回転角度を検出する。
ミッションケース110の側部には、シフトペダル210が設けられる。シフトペダル210は、後述するペダルアーム211(図2)に一体的に取り付けられる。シフトペダル210の後方にはバックステップ120が設けられる。バックステップ120は、本体フレーム101により支持される。
さらに、ミッションケース110の側部には、第1のリンク機構220が設けられる。第1のリンク機構220には、荷重センサSE5が設けられる。運転者は、シフトペダル210に荷重を加えることによりシフトペダル210を操作する。荷重センサSE5は、運転者がシフトペダル210を操作することにより後述する第1のリンク軸221(図4)に加えられた荷重を検出する。
エンジン107の上方に燃料タンク112が設けられる。燃料タンク112の後方には、2つのシート113が前後に並ぶように設けられる。前方のシート113の下方には、ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)50が設けられる。
ECU50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)を含む。ROMは、例えば不揮発性メモリからなり、システムプログラムおよびCPUの制御プログラム等を記憶する。RAMは、例えば揮発性メモリからなり、CPUの作業領域として用いられるとともに、各種データを一時的に記憶する。CPUは、ROMに記憶された制御プログラムを実行することにより種々の機能を実現する。CPUにより実現される各種機能の詳細は後述する。
エンジン107の後方に延びるように、本体フレーム101にリアアーム114が接続される。リアアーム114は、後輪115および後輪ドリブンスプロケット116を回転可能に支持する。後輪ドリブンスプロケット116と後述する後輪ドライブスプロケット5e(図2)との間にチェーン117が架け渡される。
[2]変速機およびシフト機構
図2は、図1のミッションケース110内に設けられる変速機5およびシフト機構7の概略構成を説明するための図である。図2に示すように、変速機5は、メイン軸5aおよびドライブ軸5bを備える。メイン軸5aは、クラッチ3に接続されている。メイン軸5aには複数のギア5cが取り付けられており、ドライブ軸5bには複数のギア5dおよび後輪ドライブスプロケット5eが取り付けられている。
例えば、図1のエンジン107により発生されるクランク軸2のトルクはクラッチ3に伝達される。クラッチ3が接続状態にある場合、クラッチ3に伝達されたトルクは変速機5のメイン軸5aに伝達される。メイン軸5aに伝達されたトルクは、ギア5c,5dを介してドライブ軸5bに伝達される。ドライブ軸5bに伝達されたトルクは、後輪ドライブスプロケット5e、チェーン117(図1)および後輪ドリブンスプロケット116(図1)を介して後輪115(図1)に伝達される。それにより、後輪115が回転する。エンジン107の作動時においては、クランクセンサSE2により検出されたクランク軸2の回転角度がECU50に出力される。
図3は、メイン軸5aに伝達されたトルクがドライブ軸5bに伝達されるメカニズムを説明するための概略図である。図3(a)および図3(b)においては、複数のギア5cのうちの2つのギア5c1,5c2が示され、複数のギア5dのうちの2つのギア5d1,5d2が示されている。
ギア5c1は、メイン軸5aの軸方向においては移動可能であるが、メイン軸5aの回転方向においてはメイン軸5aに固定されている。ギア5c2は、メイン軸5aの軸方向における移動が禁止された状態でメイン軸5aに回転可能に取り付けられている。
ギア5d1は、ドライブ軸5bの軸方向における移動が禁止された状態でドライブ軸5bに回転可能に取り付けられている。ギア5c1とギア5d1とが係合している場合には、メイン軸5aが回転することによりギア5d1が回転する。
ギア5d2は、ドライブ軸5bの軸方向においては移動可能であるが、ドライブ軸5bの回転方向においてはドライブ軸5bに固定されている。そのため、ドライブ軸5bは、ギア5d2が回転することにより回転する。
図3(a)に示すように、ギア5d2がギア5d1から離間している場合には、ギア5d1は、ドライブ軸5bの回転方向においてドライブ軸5bに固定されていない。この場合、メイン軸5aが回転することにより、ギア5d1がメイン軸5aの回転に連動して回転するが、ドライブ軸5bはメイン軸5aの回転に連動することなく回転するかまたは停止する。すなわち、変速機5はエンジン107と後輪115との間でトルクを伝達しない。
一方、図3(b)に示すように、ギア5d2がギア5d1に近づくように軸方向に移動する。これにより、ギア5d2の側面に設けられた凸状のドグ5fが、ギア5d1の側面に設けられた凹状のドグ穴(図示せず)に嵌め込まれると、ギア5d1とギア5d2とが固定される。この場合、メイン軸5aが回転することにより、ギア5d1とともにギア5d2がメイン軸5aの回転に連動して回転する。それにより、ドライブ軸5bがギア5d2とともにメイン軸5aの回転に連動して回転する。
なお、図3(a)の状態から、ギア5c1をギア5c2に近接させ、ギア5c1とギア5c2とを固定した場合には、ギア5c2はギア5c1とともに回転する。この場合、ギア5d2は、メイン軸5aおよびギア5c2の回転に連動して回転する。それにより、ドライブ軸5bがギア5d2とともにメイン軸5aの回転に連動して回転する。以下、ギア5c1,5d2のように、メイン軸5aまたはドライブ軸5b上を軸方向に移動するギアをスライドギアと称する。また、ギア5c2,5d1のように、メイン軸5aまたはドライブ軸5bの軸方向における移動が禁止されたギアをフィックスギアと称する。
このように、変速機5においては、1または複数のスライドギアを移動させ、1または複数のスライドギアと1または複数のフィックスギアとの組み合わせを変更することにより、メイン軸5aからドライブ軸5bへのトルクの伝達経路を変更することができる。それにより、メイン軸5aの回転速度に対してドライブ軸5bの回転速度を相対的に変更することができる。
変速機5において、1または複数のスライドギアを移動させるために、図2のシフト機構7が用いられる。図2に示すように、シフト機構7は、シフトペダル210、ペダルアーム211、第1のリンク機構220、シフト軸250、第2のリンク機構260、ストッパープレート300、シフトカム7bおよびシフトフォークc1〜c3を含む。
後述するように、運転者はシフトペダル210を押し下げるかまたは押し上げる。この場合、図2に太い矢印で示すように、シフトペダル210に加わる荷重は、ペダルアーム211および第1のリンク機構220を通してシフト軸250に伝達される。これにより、シフト軸250が回転する。さらに、シフト軸250において発生するトルクは、第2のリンク機構260を通してシフトカム7bに伝達される。それにより、シフトカム7bが回転する。
シフトカム7bには、カム溝d1〜d3が形成されている。シフトフォークc1〜c3は、摺動ピンe1〜e3によりカム溝d1〜d3にそれぞれ連結される。シフトカム7bの一端には、ストッパープレート300が取り付けられる。さらに、シフトカム7bの一端部近傍には、ストッパープレート300に近接してシフトカムセンサSE4が設けられる。エンジン107の作動時には、シフトカムセンサSE4により検出されたシフトカム7bの回転角度がECU50に出力される。
運転者によるシフトペダル210の操作によりシフトカム7bが回転すると、シフトフォークc1〜c3に連結される摺動ピンe1〜e3が各カム溝d1〜d3内を移動する。この場合、シフトフォークc1〜c3のいずれかがシフトカム7bの軸方向に移動し、1または複数のスライドギアが移動される。
本例の変速機5は、ニュートラルポジションおよび1〜6速のギアポジションを有する。シフトカム7b(図2)が一方向に回転する場合、変速機5のギアポジションが1速、2速、3速、4速、5速および6速の順に切り替えられる。それにより、変速機5のギア比が順に高くなる(シフトアップ)。一方、シフトカム7b(図2)が逆方向に回転すると、変速機5のギアポジションが6速、5速、4速、3速、2速および1速の順に切り替えられる。それにより、変速機5のギア比が順に低くなる(シフトダウン)。
ここで、運転者は、図1のクラッチレバー105aを操作することなく変速機5のギア比を切り替える、いわゆるクラッチレスシフトの意図を持ってシフトペダル210を操作する場合がある。以下の説明では、運転者が変速機5のギア比を切り替える意図を持って行うシフトペダル210の操作をシフト操作と呼ぶ。本実施の形態では、シフト操作が行われたか否かが図2の荷重センサSE5からの出力信号に基づいて判定される。クラッチレバー105aが操作されることなくシフト操作が行われると、変速機5のギア比を切り替えるためのエンジン107の出力調整が適宜行われる。
なお、シフト操作が行われたか否かの判定は、クラッチ3が接続状態にあるときに行われる。クラッチ3が接続状態にあるか否かは、例えば上記のクラッチセンサの検出値が予め定められた値を超えたか否かに基づいて判定することができる。
[3]運転者によるシフトペダルの操作例と荷重センサによる荷重の検出
図4は、図1の第1のリンク機構220、シフトペダル210およびそれらの周辺部材を示す自動二輪車100の左側面図である。図4に示すように、自動二輪車100の左側面においては、前後方向に延びるようにペダルアーム211が設けられている。シフトペダル210は、ペダルアーム211の後端に取り付けられる。
ペダルアーム211のうち、中央部よりもやや前端に近い部分に取付部212が設けられている。ペダルアーム211の取付部212は、本体フレーム101(図1)から左方へ水平に延びる図示しない支持軸に回転可能に支持される。
ペダルアーム211の上方にシフト軸250が配置されている。ペダルアーム211とシフト軸250とを接続するように第1のリンク機構220が設けられる。具体的には、第1のリンク機構220は、第1のリンク軸221および第2のリンク軸222を含む。第2のリンク軸222の一端は、当該第2のリンク軸222がシフト軸250とともに回転可能となるようにかつシフト軸250から車両前方に延びるように、シフト軸250に固定される。第1のリンク軸221の一端はペダルアーム211の前端に回転可能に接続されている。第1のリンク軸221の他端は第2のリンク軸222の他端に回転可能に接続されている。
第1のリンク軸221の略中央部に荷重センサSE5が設けられている。荷重センサSE5は例えば弾性式(歪ゲージ式、静電容量式等)または磁歪式のロードセルからなり、第1のリンク軸221に加えられた引張荷重および圧縮荷重を検出可能に構成される。
運転者は、バックステップ120に左足を乗せた状態で、バックステップ120を支点としてシフトペダル210を押し下げまたは押し上げることによりシフトペダル210を操作する。
図2のシフト機構7には、リターン式の変速方式が適用される。そのシフト機構7においては、シフトペダル210が押し上げられることにより、1速から6速までのシフトアップのための動作が行われる。また、シフトペダル210が押し下げられることにより、ニュートラルポジションから1速へギアポジションを切り替えるための動作または6速から1速までのシフトダウンのための動作が行われる。
ここで、図4に太い一点鎖線の矢印SU1で示すように、運転者の左足FLによりシフトペダル210が押し上げられると、ペダルアーム211が反時計回りに回転する。これにより、太い一点鎖線の矢印SU2で示すように、第1のリンク軸221の一端(下端)が下方へ引き下げられる。また、太い一点鎖線の矢印SU3で示すように、第2のリンク軸222がシフト軸250を中心として反時計回りに回転する。このとき、第1のリンク軸221には引張荷重が加わる。引張荷重は荷重センサSE5により検出され、図2のECU50に出力される。本例の荷重センサSE5においては、引張荷重の検出値(電圧値)は0または正の値となる。
一方、図4に太い点線の矢印SD1で示すように、運転者の左足FLによりシフトペダル210が押し下げられると、ペダルアーム211が時計回りに回転する。これにより、太い点線の矢印SD2で示すように、第1のリンク軸221の一端(下端)が上方へ押し上げられる。また、太い点線の矢印SD3で示すように、第2のリンク軸222がシフト軸250を中心として時計回りに回転する。このとき、第1のリンク軸221には圧縮荷重が加わる。圧縮荷重は荷重センサSE5により検出され、図2のECU50に出力される。本例の荷重センサSE5においては、圧縮荷重の検出値(電圧値)は0または負の値となる。
本実施の形態では、荷重センサSE5による荷重の検出値の絶対値が予め定められた荷重しきい値を超えた場合に、シフト操作が行われたと判定される。一方、荷重センサSE5による荷重の検出値の絶対値が荷重しきい値以下である場合に、シフト操作が行われていないと判定される。また、シフト操作が行われたと判定される場合には、荷重の検出値が正の値である場合に、当該シフト操作がシフトアップのためのシフト操作であることがさらに判定される。一方、荷重の検出値が負の値である場合に、当該シフト操作がシフトダウンのためのシフト操作であることがさらに判定される。
なお、シフト操作が行われているか否かは、荷重センサSE5の出力信号に代えて、例えばシフトカムセンサSE4の出力信号に基づいて判定されてもよい。この場合、シフトカム7b(図2)の回転角度の変化に基づいてシフト操作が行われているか否かを判定することができる。また、シフト操作が行われている場合に、当該シフト操作がシフトダウンおよびシフトアップのいずれのためのシフト操作であるかが判定される。
あるいは、シフト操作が行われているか否かを判定するために自動二輪車100にシフトペダル210の変位量を検出する変位センサを設けてもよい。この場合、当該変位センサの出力信号に基づいてシフト操作が行われているか否かが判定されてもよい。
[4]エンジン107の状態
ここで、エンジン107の作動中の状態について、変速機5におけるフィックスギアのドグ穴とスライドギアのドグとの関係とともに説明する。変速機5におけるフィックスギアのドグ穴とスライドギアのドグとの関係は、エンジン107の状態に応じて変化する。図5(a)〜(c)は、変速機5におけるフィックスギアのドグ穴とスライドギアのドグとの関係を示す図である。図5(a)〜(c)においては、スライドギア91におけるドグ92の形成部分およびフィックスギア93におけるドグ穴94の形成部分の断面図が模式的に示される。本例のスライドギア91およびフィックスギア93は、図3のギア5c1およびギア5c2にそれぞれ対応する。また、スライドギア91およびフィックスギア93の図5(a)〜(c)に示される部分は、太い矢印で示す方向に移動(回転)しているものとする。さらに、図2のクラッチ3は接続状態にあるものとする。
自動二輪車100が例えば上りの路面上で加速して走行している場合には、クランク軸2(図3)のトルクがドライブ軸5b(図3)に伝達される。具体的には、クランク軸2からメイン軸5aを通してスライドギア91に伝達されるトルクが、ドグ92によりフィックスギア93およびドライブ軸5bにさらに伝達される。この場合、図5(a)に示すように、ドグ92の移動方向における前方側の側面がドグ穴94の移動方向における前方側の側面に当接するとともに、ドグ92とドグ穴94との間に大きな係合力が発生する。このように、クランク軸2から変速機5を通して後輪115にトルクが伝達される状態をエンジン107の駆動状態と呼ぶ。
一方、自動二輪車100が例えば下りの路面上でブレーキを用いることなく減速している場合には、ドライブ軸5bのトルクがクランク軸2に伝達される。具体的には、ドライブ軸5bからフィックスギア93に伝達されるトルクが、ドグ92によりスライドギア91およびメイン軸5aにさらに伝達される。この場合、図5(b)に示すように、ドグ92の移動方向における後方側の側面がドグ穴94の移動方向における後方側の側面に当接するとともに、ドグ92とドグ穴94との間に大きな係合力が発生する。このように、後輪115から変速機5を通してクランク軸2にトルクが伝達される状態をエンジン107の被駆動状態と呼ぶ。エンジン107の被駆動状態は、いわゆるエンジンブレーキが作用しているときのエンジン107の状態である。
エンジン107の状態が駆動状態および被駆動状態のいずれにも該当しない場合には、クランク軸2とドライブ軸5bとの間でトルクがほとんど伝達されない。この場合、ドグ92の回転速度とドグ穴94の回転速度とがほぼ等しくなることにより、ドグ92とドグ穴94との間に大きな係合力が発生しない。それにより、図5(c)に白抜きの矢印で示すように、ドグ92がドグ穴94に対して回転方向およびメイン軸5aの軸方向に移動可能となる。このように、クランク軸2と後輪115との間でトルクが伝達されない状態をエンジン107の境界状態と呼ぶ。
[5]シフト操作時の運転者の走行フィーリング
図5(a)〜(c)に示すように、ドグ92とドグ穴94とが係合している場合に、エンジン107が駆動状態または被駆動状態から境界状態に移行すると、ドグ92とドグ穴94との間に発生する係合力が小さくなる。それにより、スライドギア91をフィックスギア93から離間するように移動させることにより、ドグ92をドグ穴94から容易に引き抜くことができる。そこで、本実施の形態では、クラッチレバー105aが操作されることなくシフト操作が行われると、駆動状態または被駆動状態にあるエンジン107が境界状態に近づくように、エンジン107の出力が適宜調整される。
シフト操作の開始後にエンジン107が境界状態に近づけられることによりドグ92がドグ穴94から引き抜かれると、スライドギア91とフィックスギア93とが離間する。その後、エンジン107の出力調整によりエンジン107が継続して境界状態で維持されると、運転者の走行フィーリングが低下する場合がある。この理由について、シフト操作により係合状態に移行すべきフィックスギアおよびスライドギアの関係とともに説明する。
図6(a),(b)は、クラッチレスシフトが行われる際にエンジン107が境界状態で維持されることにより運転者の走行フィーリングが低下する理由を説明するための図である。図6(a),(b)には、シフト操作により係合状態に移行すべきフィックスギア95およびスライドギア97が示される。より具体的には、図6(a),(b)においては、フィックスギア95におけるドグ穴96の形成部分およびスライドギア97におけるドグ98の形成部分の断面図が模式的に示される。本例のフィックスギア95およびスライドギア97は、図3のギア5d1およびギア5d2にそれぞれ対応する。ここで、フィックスギア95およびスライドギア97の図6(a),(b)に示される部分は、太い矢印で示す方向に移動(回転)しているものとする。さらに、図2のクラッチ3は接続状態にあるものとする。
上記のように、駆動状態または被駆動状態にあるエンジン107が境界状態に移行すると、シフト操作により非係合状態に移行すべき図5のスライドギア91およびフィックスギア93の回転速度がほぼ等しくなる。それにより、シフト操作により係合状態に移行すべきフィックスギア95およびスライドギア97の回転速度もほぼ等しくなる。
そのため、図6(a)に示すように、ドグ98がドグ穴96からずれていると、フィックスギア95の回転速度とスライドギア97の回転速度との間に差が生じるまでの間、ドグ98がドグ穴96に挿入されない。この場合、ギア比の切り替えに要する時間が長くなる。それにより、エンジン107が境界状態で維持されると、運転者はアクセル開度に対して期待される加速または減速の感覚を得られない。その結果、運転者の走行フィーリングが低下する。
一方、シフト操作の開始後に比較的短時間でドグ98がドグ穴96に挿入される場合でも、図6(b)に示すように、ドグ98の前後の側面がドグ穴96の前後の側面のいずれにも当接しない状態が維持される可能性がある。この場合においても、エンジン107が境界状態で維持されると、運転者はアクセル開度に対して期待される加速または減速の感覚を得られない。その結果、運転者の走行フィーリングが低下する。
そこで、本実施の形態においては、駆動状態または被駆動状態にあるエンジン107が境界状態に近づけられた後、運転者の走行フィーリングの低下が抑制されるようにさらにエンジン107の出力調整が行われる。
[6]クランク軸2に発生するトルクの調整
エンジン107のクランク軸2には、当該エンジン107の状態に応じたトルクが発生する。本実施の形態では、エンジン107の出力調整により、クランク軸2に発生するトルクが調整される。
ここで、クランク軸2に実際に発生するトルクを実トルクと呼ぶ。実トルクは、例えばエンジン107の回転速度、スロットル開度、後述するインジェクタ108(図9)の燃料噴射量、および後述する燃焼室73(図9)内の混合気の点火時期によって定まる。実トルクに関する複数の情報の関係を示すデータが予め生成され、図1のECU50に記憶される。それにより、当該データと自動二輪車100に設けられた各種センサの出力信号とに基づいて、実トルクを取得することができる。
以下の説明では、実トルクを取得するために予め生成されるデータを実トルク取得データと呼ぶ。実トルク取得データは、例えば自動二輪車100の種類ごとに、実験またはシミュレーション等に基づいて生成される。実トルク取得データには、例えば無負荷時のエンジン107の回転速度とスロットル開度との関係を示すデータが含まれる。
本実施の形態では、実トルクは、実トルク取得データとクランクセンサSE2およびスロットルセンサSE3の出力信号とに基づいて取得される。実トルクとして取得される値は、エンジン107が境界状態にあるときに0を含みかつ0を中心とする一定幅の範囲(以下、境界範囲と呼ぶ。)内の値となる。また、実トルクとして取得される値は、エンジン107が駆動状態にあるときに境界範囲を除く正の値となり、エンジン107が被駆動状態にあるときに境界範囲を除く負の値となる。
また、自動二輪車100の走行時に、運転者は、所望の加速状態または減速状態を得るためにアクセルグリップを操作する。このとき、運転者が要求する加速状態または減速状態を得るためにクランク軸2に発生すべきトルクを要求トルクと呼ぶ。要求トルクは、例えばアクセルグリップの操作量およびエンジン107の回転速度によって定まる。要求トルクに関する複数の情報の関係を示すデータが予め生成され、図1のECU50に記憶される。それにより、当該データと自動二輪車100に設けられた各種センサの出力信号とに基づいて、要求トルクを取得することができる。
以下の説明では、要求トルクを取得するために予め生成されるデータを要求トルク取得データと呼ぶ。要求トルク取得データは、例えば自動二輪車100の種類ごとに、実験またはシミュレーション等に基づいて生成される。要求トルク取得データには、例えば無負荷時のエンジン107の回転速度とアクセル開度との関係を示すデータが含まれる。
本実施の形態では、要求トルクは、要求トルク取得データとアクセルセンサSE1およびクランクセンサSE2の出力信号とに基づいて取得される。要求トルクとして取得される値は、エンジン107を駆動状態に移行または維持すべき要求があるときに上記の境界範囲を除く正の値となり、エンジン107を被駆動状態に移行または維持すべき運転者の要求があるときに境界範囲を除く負の値となる。また、要求トルクの値は、エンジン107を境界状態に移行または維持すべき運転者の要求があるときに境界範囲内の値となる。
図7は、エンジン107が被駆動状態にあるときにクラッチレバー105aが操作されることなくシフトダウンのためのシフト操作が行われた場合の実トルクの調整例を示す図である。図7では、縦軸がトルクを表し、横軸が時間を表す。また、実トルクが太い実線で示されるとともに、要求トルクが太い一点鎖線で示される。
時点t0〜t1にかけて、エンジン107はアクセル開度に応じた回転速度で動作する。このとき、実トルクおよび要求トルクは、ともに負の値を示し、互いに等しいかまたはほぼ等しい状態で維持される。時点t1で、運転者によりシフトダウンのためのシフト操作が開始される。この場合、実トルクが予め定められた第1の目標値TV1まで上昇するように、エンジン107の出力調整が行われる。図7の例では、第1の目標値TV1は0に設定されている。なお、第1の目標値TV1は、図7にハッチングで示すように、境界範囲BA内の値に設定されてもよい。境界範囲BAは、例えばエンジン107が境界状態にあるときにクランク軸2に発生する実トルクの値を実験またはシミュレーション等により算出することにより取得することができる。
実トルクが第1の目標値TV1に調整されることにより、要求トルクとは無関係にエンジン107が被駆動状態から境界状態に移行する。それにより、時点t2で、係合状態にある2つのギアの間でドグがドグ穴から引き抜かれ、変速機5がトルクを伝達しない状態に切り替えられる。この状態でエンジン107が継続して境界状態で維持されると、上記のように運転者の走行フィーリングが低下する。そこで、本実施の形態では、変速機5がトルクを伝達しない状態に切り替えられると、実トルクが第1の目標値TV1とは異なる第2の目標値TV2となるように、エンジン107の出力調整が行われる。
第2の目標値TV2は、境界範囲BAから外れた値に設定される。また、第2の目標値TV2は、変速機5がトルクを伝達しない状態に移行したときの要求トルクの値が正の値である場合に正の値に設定され、要求トルクの値が負の値である場合に負の値に設定される。
図7の例では、第2の目標値TV2は、負の値でありかつ境界範囲BAの下限値よりも小さい値αに設定される。値αは、時点t2における要求トルクの値である。なお、図7の例において、第2の目標値TV2は、時点t2の要求トルクの値よりも小さい値に設定されてもよい。
実トルクが第1の目標値TV1から第2の目標値TV2に調整されると、係合状態に移行すべき2つのギアの回転速度に差が生じる。それにより、係合状態に移行すべき2つのギアの間では、一方のギアが他方のギアに近づけられることによりドグがドグ穴に短時間で挿入される。また、ドグの前後の側面のうち一方がドグ穴の前後の側面のうち一方に短時間で当接する。それにより、エンジン107が、境界状態から被駆動状態に短時間で移行する。
これにより、時点t3で係合状態に移行すべき2つのギアの係合が完了すると、実トルクが第2の目標値TV2よりも第1の目標値TV1に近い第3の目標値TV3まで上昇するように、エンジン107の出力調整が行われる。
図7の例では、第3の目標値TV3は、第1の目標値TV1と同じ0に設定されている。なお、第3の目標値TV3は、第1の目標値TV1とは異なる値に設定されてもよい。この場合、第3の目標値TV3は、境界範囲BA内の値に設定されることが好ましい。このように、係合状態に移行すべき2つのギアの係合が完了するとともに、実トルクが第3の目標値TV3に調整されることにより、エンジン107が再度境界状態へ移行する。
それにより、係合の完了とともに係合状態に移行した2つのギアの間に大きな係合力が瞬間的に発生することが抑制される。したがって、変速ショックが発生することが防止され、運転者の走行フィーリングの低下が抑制される。
続いて、実トルクが要求トルクに漸次近づくように、エンジン107の出力調整が行われる。図7の例では、時点t3から時点t4にかけて実トルクが要求トルクに近づくように緩やかに下降している。時点t4で、実トルクが要求トルクとほぼ等しくなる。これにより、ギアポジションの切り替え動作完了直後の運転者の走行フィーリングの低下が抑制される。その後、実トルクおよび要求トルクは、クラッチレスシフト前の状態と同様に、互いに等しいかまたはほぼ等しい状態で維持される。
図8は、エンジン107が駆動状態にあるときにクラッチレバー105aが操作されることなくシフトアップのためのシフト操作が行われた場合の実トルクの調整例を示す図である。図8では、図7の例と同様に、縦軸がトルクを表し、横軸が時間を表す。また、実トルクが太い実線で示されるとともに、要求トルクが太い一点鎖線で示される。
図8の例では、実トルクの値および要求トルクの値が正の値を示す点を除いて、図7の例とほぼ同様にエンジン107の出力調整が行われている。具体的には、時点u0〜u1にかけて、エンジン107はアクセル開度に応じた回転速度で動作する。このとき、実トルクおよび要求トルクは、ともに正の値を示し、互いに等しいかまたはほぼ等しい状態で維持される。時点u1で、運転者によりシフトアップのためのシフト操作が開始されると、実トルクが第1の目標値TV1まで下降するように、エンジン107の出力調整が行われる。それにより、要求トルクとは無関係にエンジン107が被駆動状態から境界状態に移行する。
時点u2で、変速機5がトルクを伝達しない状態に切り替えられることにより、実トルクが第1の目標値TV1とは異なる第2の目標値TV2となるように、エンジン107の出力調整が行われる。図8の例では、第2の目標値TV2は、正の値でありかつ境界範囲BAの上限値よりも大きい値βに設定される。値βは、時点u2における要求トルクの値である。なお、図8の例において、第2の目標値TV2は、時点u2の要求トルクの値よりも大きい値に設定されてもよい。
実トルクが第1の目標値TV1から第2の目標値TV2に調整されることにより、エンジン107が、境界状態から駆動状態に短時間で移行する。時点u3で係合状態に移行すべき2つのギアの係合が完了することにより、実トルクが第3の目標値TV3まで下降するように、エンジン107の出力調整が行われる。それにより、係合の完了とともに2つのギアの間に大きな係合力が瞬間的に発生することが抑制される。したがって、変速ショックが発生することが防止され、運転者の走行フィーリングの低下が抑制される。
続いて、実トルクが要求トルクに漸次近づくように、エンジン107の出力調整が行われる。図8の例では、時点u3から時点u4にかけて実トルクが要求トルクに近づくように緩やかに上昇している。時点u4で、実トルクが要求トルクとほぼ等しくなる。これにより、ギアポジションの切り替え動作完了直後の運転者の走行フィーリングの低下が抑制される。その後、実トルクおよび要求トルクは、クラッチレスシフト前の状態と同様に、互いにほぼ等しい状態で維持される。
[7]エンジン107の出力調整を行うための条件
クラッチレスシフトに熟練した運転者は、アクセル開度を調整することにより、クランク軸2に変速機5のギア比の切り替えに適した実トルクが発生するように手動でエンジン107の出力を調整することができる。このように、熟練した運転者がシフト操作を行う場合に自動でエンジン107の出力調整が行われると、その運転者の走行フィーリングが低下する可能性がある。
そこで、本実施の形態に係る自動二輪車100においては、自動的なエンジン107の出力調整を行うか否かが、シフト操作が行われた時点での要求トルクの値に応じて決定される。
具体的には、シフト操作が開始された時点で要求トルクの値が上記の境界範囲BA内にあるときにエンジン107の出力調整が行われない。この場合、要求トルクの値が第1の目標値TV1に近いので、実トルクの値も第1の目標値TV1に近くなる。それにより、エンジン107の出力調整が行われない場合でも、変速機5がトルクを伝達しない状態に円滑に切り替えられる。
一方、要求トルクの値が境界範囲BA内にない場合には、エンジン107の出力調整を行うか否かが、シフト操作の種類と実トルクの値との組み合わせに応じてさらに決定される。
具体的には、シフトダウンのためのシフト操作が行われた場合に、エンジン107の出力調整は、実トルクが負の値であるときに行われ、実トルクが正の値であるときに行われない。すなわち、シフトダウンのためのエンジン107の出力調整は、エンジン107が被駆動状態にあるときに行われ、エンジン107が駆動状態にあるときに行われない。それにより、シフトダウン直後における駆動状態から被駆動状態への急激な切り替わりの発生が低減されるので、変速機5に過剰な負荷が加わることが低減される。したがって、変速機5の長寿命化が実現される。
また、シフトアップのためのシフト操作が行われた場合に、エンジン107の出力調整は、実トルクが正の値であるときに行われ、実トルクが負の値であるときに行われない。すなわち、シフトアップのためのエンジン107の出力調整は、エンジン107が駆動状態にあるときに行われ、エンジン107が被駆動状態にあるときに行われない。それにより、エンジン107が被駆動状態にあるときに、自動二輪車100の速度が急激に上昇することが防止される。
[8]エンジン107およびその周辺部材と自動二輪車100の制御系
図9は、エンジン107およびその周辺部材と自動二輪車100の制御系の概略構成を示す図である。図9に示すように、エンジン107はシリンダ71を有し、シリンダ71内には、ピストン72が往復動可能に設けられる。また、シリンダ71内の上部には燃焼室73が形成される。燃焼室73は吸気ポート74および排気ポート75を介してエンジン107の外部に連通する。
吸気ポート74の下流側の開口端74aに吸気弁76が開閉自在に設けられ、排気ポート75の上流側の開口端75aに排気弁77が開閉自在に設けられる。吸気弁76および排気弁77は、通常のカム機構により駆動される。燃焼室73の上部には、点火プラグ78が設けられる。
エンジン107には、吸気ポート74と連通するように吸気管79が取り付けられ、排気ポート75と連通するように排気管118が取り付けられる。吸気管79には、シリンダ71内に燃料を供給するためのインジェクタ108が設けられる。また、吸気管79内には、ETV82が設けられる。
エンジン107の作動時には、空気が吸気管79を通して吸気ポート74から燃焼室73内に吸入されるとともに、インジェクタ108により燃焼室73内に燃料が供給される。それにより、燃焼室73内で混合気が生成され、点火プラグ78により混合気に火花点火が行われる。燃焼室73内において混合気の燃焼により生じた既燃ガスは、排気ポート75から排気管118を通して排出される。
ECU50においては、上記のようにCPUがROMに記憶された制御プログラムを実行する。それにより、記憶部51、操作判定部52、ドグ判定部53、要求トルク取得部54、トルク判定部55、実トルク取得部56および調整部57の機能が実現される。なお、ECU50において実現される各機能部の構成の一部または全てが電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
記憶部51は、例えばROMおよびRAMの記憶領域の一部で構成され、第1〜第3の目標値TV1〜TV3に関する情報、実トルク取得データ、および要求トルク取得データを記憶する。本例の第1および第3の目標値TV1,TV3に関する情報は、第1および第3の目標値TV1,TV3の値(例えば0)である。第2の目標値TV2に関する情報は、第2の目標値TV2を要求トルクの値とすべき旨の情報を含む。さらに、記憶部51は、荷重しきい値を記憶するとともに、変速機5のギアの複数のギアポジションにそれぞれ対応するシフトカム7bの複数の基準角度値を記憶する。
操作判定部52は、荷重センサSE5からの出力信号と荷重しきい値とに基づいて、シフトアップのためのシフト操作およびシフトダウンのためのシフト操作のいずれかが行われたか否かを判定する。具体的には、操作判定部52は、荷重の検出値の絶対値が荷重しきい値を超えかつその検出値が正の値を示す場合にシフトアップのためのシフト操作が行われたことを判定する。一方、操作判定部52は、荷重の検出値の絶対値が荷重しきい値を超えかつその検出値が負の値を示す場合にシフトダウンのためのシフト操作が行われたことを判定する。他方、操作判定部52は、荷重の検出値が荷重しきい値を超えない場合に、シフト操作が行われていないと判定する。
ドグ判定部53は、シフト操作が行われた場合に、シフトカムセンサSE4からの出力信号と複数の基準角度値とに基づいて、非係合状態に移行すべき2つのギアの間におけるドグとドグ穴との関係がどのような状態にあるのかを判定する。また、ドグ判定部53は、係合状態に移行すべき2つのギアの間におけるドグとドグ穴との関係がどのような状態にあるのかを判定する。
具体的には、ドグ判定部53は、シフトカム7bの回転角度の検出値(電圧値)が一の基準角度値から所定角度変化した場合に、非係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴から引き抜かれたと判定する。一方、ドグ判定部53は、回転角度の検出値が一の基準角度値から所定角度変化していない場合に、非係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴から引き抜かれていないと判定する。
また、ドグ判定部53は、シフトカム7bの回転角度の検出値が一の基準角度値から所定角度変化した後、他の基準角度値に到達した場合に、係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴に挿入されたと判定する。一方、ドグ判定部53は、回転角度の検出値が一の基準角度値から所定角度変化した後、他の基準角度値に到達していない場合に、係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴に挿入されていないと判定する。
要求トルク取得部54は、アクセルセンサSE1およびクランクセンサSE2からの出力信号と要求トルク取得データとに基づいて要求トルクを取得する。トルク判定部55は、要求トルク取得部54により取得された要求トルクが予め定められた境界範囲BA内にあるか否かを判定する。
実トルク取得部56は、クランクセンサSE2およびスロットルセンサSE3からの出力信号と実トルク取得データとに基づいて実トルクを取得する。なお、実トルク取得部56は、それらのセンサの出力信号および実トルク取得データに加えて、インジェクタ108の燃料噴射量および混合気の点火時期に基づいて実トルクを取得してもよい。この場合、実トルク取得部56は、インジェクタ108の燃料噴射量および混合気の点火時期を後述する調整部57から取得する。
調整部57は、シフト操作が行われていない場合に、実トルクが要求トルクに一致するかまたはほぼ一致するように、ETV82のスロットル開度を調整する。一方、調整部57は、クラッチレバー105aが操作されることなくシフト操作が行われた場合に、当該シフト操作の種類、要求トルクが予め定められた境界範囲BA内にあるか否かの判定結果、および実トルクの値に基づいて、エンジン107の出力調整を行うか否かを判定する。
また、調整部57は、エンジン107の出力調整により実トルクを調整する。具体的には、調整部57は、シフト操作により非係合状態に移行すべき2つのギアの間の係合力が低下するように、実トルクを第1の目標値TV1に調整する。また、調整部57は、シフト操作により係合状態に移行すべき2つのギアが係合するように実トルクを第2の目標値TV2に調整する。さらに、調整部57は、係合状態に移行すべき2つのギアが係合した後、実トルクを第3の目標値TV3に調整する。最後に、調整部57は、第3の目標値TV3から要求トルクに漸次近づくように実トルクを調整する。
[9]ECU50における制御動作
図10は、ECU50における制御動作の一例を示すフローチャートである。以下に説明する制御動作は、停止状態にあるエンジン107が作動することにより開始され、作動状態にあるエンジン107が停止することにより終了する。
以下に説明する制御動作時には、図9の要求トルク取得部54および実トルク取得部56は、例えば10msec程度の一定周期で要求トルクおよび実トルクをそれぞれ取得しているものとする。
制御動作が開始されると、調整部57は、通常時の制御処理として、アクセルセンサSE1により検出されたアクセル開度に応じてETV82のスロットル開度を調整する(ステップS101)。それにより、エンジン107の出力がアクセル開度に応じた値に調整される。
次に、操作判定部52は、シフトダウンのためのシフト操作が行われたか否かを判定する(ステップS102)。シフトダウンのためのシフト操作が行われた場合、トルク判定部55は要求トルク取得部54により取得される最新の要求トルクの値が境界範囲BA内にあるか否かを判定する(ステップS103)。要求トルクの値が境界範囲BA内にない場合、調整部57は実トルク取得部56により取得される最新の実トルクの値が負の値であるか否かを判定する(ステップS104)。この処理は、エンジン107が被駆動状態であるか否かを判定する処理に相当する。
ステップS102において、シフトダウンのためのシフト操作が行われていない場合、操作判定部52は、シフトアップのためのシフト操作が行われたか否かを判定する(ステップS121)。シフトアップのためのシフト操作が行われていない場合、調整部57は、ステップS101の処理に戻る。シフトアップのためのシフト操作が行われた場合、トルク判定部55は要求トルク取得部54により取得される最新の要求トルクの値が境界範囲BA内にあるか否かを判定する(ステップS122)。要求トルクの値が境界範囲BA内にない場合、調整部57は実トルク取得部56により取得される最新の実トルクの値が正の値であるか否かを判定する(ステップS123)。この処理は、エンジン107が駆動状態であるか否かを判定する処理に相当する。
ステップS104において実トルクが負の値である場合、またはステップS123において実トルクが正の値である場合、調整部57は、エンジン107の出力調整により実トルクを第1の目標値TV1に調整する(ステップS105)。第1の目標値TV1は例えば0に設定されるが、境界範囲BA内の0以外の値に設定されてもよい。
次に、ドグ判定部53は、シフト操作により非係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴から引き抜かれたか否かを判定する(ステップS106)。ドグ判定部53は、非係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴から引き抜かれていない場合、ステップS106の処理を繰り返す。一方、ドグがドグ穴から引き抜かれた場合、調整部57は、第2の目標値TV2を要求トルク取得部54により取得される最新の要求トルクの値に設定する(ステップS107)。なお、第2の目標値TV2は、要求トルクの値に代えて境界範囲BAから外れた予め定められた値に基づいて設定されてもよい。この場合、予め定められた値は、第2の目標値TV2として記憶部51に記憶されていてもよい。
第2の目標値TV2として予め定められた値が記憶部51に記憶されている場合、調整部57は、最新の要求トルクが負の値であるときに、予め定められた値を負の値として第2の目標値TV2に設定する。または、調整部57は、最新の要求トルクが正の値であるときに、予め定められた値を正の値として第2の目標値TV2に設定する。
次に、調整部57は、エンジン107の出力調整により実トルクを第2の目標値TV2に調整する(ステップS108)。その後、ドグ判定部53は、シフト操作により係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴に挿入されたか否かを判定する(ステップS109)。ドグ判定部53は、係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴に挿入されていない場合、ステップS107の処理を繰り返す。一方、ドグがドグ穴に挿入された場合、シフト操作により係合状態に移行すべき2つのギアが互いに係合したと考えられる。
そこで、調整部57は、エンジン107の出力調整により実トルクを第3の目標値TV3に調整する(ステップS110)。上記のように、第3の目標値TV3は例えば第1の目標値TV1と同じ値に設定されるが、境界範囲BA内の第1の目標値TV1以外の値に設定されてもよい。
その後、調整部57は、エンジン107の出力調整により実トルクを要求トルクに漸次近づくように調整し(ステップS111)、ステップS101の処理に戻る。
上記のステップS103,S122において、要求トルクの値が境界範囲BA内にある場合、調整部57はステップS101の処理に戻る。それにより、シフト操作時にエンジン107が境界状態にあるときに、自動でエンジン107の出力調整が行われることが防止される。
また、上記のステップS104において実トルクが正の値である場合、またはステップS123において実トルクが負の値である場合、調整部57はステップS101の処理に戻る。これらの場合、エンジン107の出力調整は行われない。すなわち、エンジン107が駆動状態にあるときにシフトダウンのためのエンジン107の出力調整は行われない。また、エンジン107が被駆動状態にあるときにシフトアップのためのエンジン107の出力調整は行われない。
上記の例では、要求トルク取得部54は一定周期で要求トルクを取得しているが、要求トルク取得部54は要求トルクが必要となる処理が行われるごとに要求トルクを取得してもよい。また、実トルク取得部56は一定周期で実トルクを取得しているが、実トルク取得部56は実トルクが必要となる処理が行われるごとに実トルクを取得してもよい。
[10]実施の形態の効果
(a)上記の自動二輪車100においては、クラッチレバー105aが操作されることなくシフト操作が行われると、実トルクが第1の目標値TV1に調整される。それにより、シフト操作時に係合状態にある2つのギアの係合力が低下し、当該2つのギアが非係合状態に移行する。その後、実トルクが第2の目標値TV2に調整される。この場合、係合状態に移行すべき2つのギアの回転速度に差が生じることにより、当該2つのギアが短時間で係合する。それにより、エンジン107のトルクが変速機5により後輪115へ伝達されない状態で車両の走行が維持されることが抑制される。その結果、変速機5のギアの切り替え時における走行フィーリングの低下が抑制される。
(b)上記の例では、要求トルクが正の値である場合には第2の目標値TV2が正の値に設定され、要求トルクが負の値である場合には第2の目標値TV2が負の値に設定される。
シフト操作により係合状態に移行すべき2つのギアの係合時に、それらの2つのギアの間に発生する係合力の向きは、実トルクが正の値である場合と負の値である場合とで逆になる。上記の構成によれば、第2の目標値TV2の符号が要求トルクの符号に一致するように設定される。したがって、係合状態に移行すべき2つのギアが係合した後に、それらの2つのギア間に適切な向きの係合力を発生させることができる。したがって、変速機5のギアに加わる負荷を低減することができる。
(c)上記の例では、第2の目標値TV2が要求トルクに設定されている。この場合、シフト操作前に係合状態にあった2つのギアが互いに離間した後、係合状態に移行すべき2つのギアの間で比較的大きな回転速度差を生じさせることができる。したがって、係合状態に移行すべき2つのギアを短時間で係合させることができる。
[11]他の実施の形態
(a)上記実施の形態では、操作判定部52はシフトアップのためのシフト操作およびシフトダウンのためのシフト操作をそれぞれ判定対象としているが、本発明はこれに限定されない。操作判定部52は、シフトアップおよびシフトダウンのうち一方のためのシフト操作のみを判定対象としてもよい。この場合、図10の制御動作においては、ステップS102〜S104の処理、およびステップS121〜S123の処理のうち一方の処理を行う必要がなくなる。
(b)上記実施の形態では、シフトペダル210が押し上げられることによりシフトアップが行われ、シフトペダル210が押し下げられることによりシフトダウンが行われるが、本発明はこれに限定されない。
シフト機構7は、シフトペダル210が押し下げられることによりシフトアップが行われ、シフトペダル210が押し上げられることによりシフトダウンが行われるように構成されてもよい。
(c)上記実施の形態では、シフト操作時に要求トルクの値が境界範囲BA内にあるときにエンジン107の出力調整が行われないが、本発明はこれに限定されない。シフト操作の開始時点で要求トルクの値が境界範囲BA内にある場合であってもエンジン107の出力調整が行われてもよい。
また、上記実施の形態では、シフトダウンのためのエンジン107の出力調整は、実トルクが負の値であるときに行われ、実トルクが正の値であるときに行われないが、本発明はこれに限定されない。シフトダウンのためのエンジン107の出力調整は、実トルクが正の値であるときに行われてもよい。換言すれば、シフトダウンのためのエンジン107の出力調整は、エンジン107が被駆動状態にあるときに限らず、エンジン107が駆動状態にあるときに行われてもよい。
さらに、上記実施の形態では、シフトアップのためのエンジン107の出力調整は、実トルクが正の値であるときに行われ、実トルクが負の値であるときに行われないが、本発明はこれに限定されない。シフトアップのためのエンジン107の出力調整は、実トルクが負の値であるときに行われてもよい。換言すれば、シフトアップのためのエンジン107の出力調整は、エンジン107が駆動状態にあるときに限らず、エンジン107が被駆動状態にあるときに行われてもよい。
(d)上記実施の形態では、実トルクが第1の目標値TV1に調整された後、シフトカムセンサSE4からの出力信号と複数の基準角度値とに基づいてドグがドグ穴から引き抜かれたか否かが判定されるが、本発明はこれに限定されない。
実トルクを第1の目標値TV1に調整する処理が開始された後、非係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴から引き抜かれるまでの時間(以下、引抜時間と呼ぶ。)は、実験またはシミュレーション等に基づいてある程度推定することが可能である。
そこで、図9の記憶部51には、予め推定された引抜時間が記憶されていてもよい。この場合、図9のドグ判定部53は、図10のステップS106の処理において、実トルクを第1の目標値TV1に調整する処理が開始された時点から引抜時間が経過した時点でドグがドグ穴から引き抜かれたと判定することができる。
なお、上記の引抜時間は、実トルクを第1の目標値TV1に調整する制御を開始する時点の実トルクの値に応じて定められてもよい。例えば、引抜時間は、実トルクの絶対値が大きいほど長く、実トルクの絶対値が小さいほど短く設定されてもよい。この場合、記憶部51には、実トルクと引抜時間との関係を示すデータが記憶される。
(e)上記実施の形態では、実トルクが第2の目標値TV2に調整された後、シフトカムセンサSE4からの出力信号と複数の基準角度値とに基づいてドグがドグ穴に挿入されたか否かが判定されるが、本発明はこれに限定されない。
実トルクを第2の目標値TV2に調整する処理が開始された後、係合状態に移行すべき2つのギアの間でドグがドグ穴に挿入されるまでの時間(以下、挿入時間と呼ぶ。)は、実験またはシミュレーション等に基づいてある程度推定することが可能である。
そこで、図9の記憶部51には、予め推定された挿入時間が記憶されていてもよい。この場合、図9のドグ判定部53は、図10のステップS109の処理において、実トルクを第2の目標値TV2に調整する直前の処理が開始された時点から挿入時間が経過した時点でドグがドグ穴から引き抜かれたと判定することができる。
なお、上記の挿入時間は、実トルクを第2の目標値TV2に調整する制御を開始する時点の実トルクの値に応じて定められてもよい。例えば、挿入時間は、実トルクの絶対値が大きいほど短く、実トルクの絶対値が小さいほど長く設定されてもよい。この場合、記憶部51には、実トルクと挿入時間との関係を示すデータが記憶される。
(f)上記実施の形態では、要求トルクは、アクセルグリップの操作量およびエンジン107の回転速度と要求トルク取得データとに基づいて取得されるが、本発明はこれに限定されない。要求トルクは基本的にエンジン107の回転速度に対応する。したがって、要求トルクは、エンジン107の回転速度と要求トルク取得データとに基づいて取得されてもよい。この場合、要求トルク取得データには、例えば無負荷時のエンジン107の回転速度と要求トルクとの関係を示すデータが含まれる。これにより、要求トルクを取得するための処理が単純化する。
(g)上記実施の形態は、本発明を上記実施の形態は、本発明を自動二輪車に適用した例であるが、これに限らず、自動四輪車、自動三輪車もしくはATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)等の他の鞍乗型車両に本発明を適用してもよい。
[12]実施の形態の各部と請求項の各構成要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記の実施の形態においては、自動二輪車100が鞍乗型車両の例であり、エンジン107がエンジンの例であり、後輪115が駆動輪の例であり、変速機5が変速機の例である。
また、変速機5の複数のギアのうちシフト操作により非係合状態に移行すべき2つのギア(ギア5c1,5c2、スライドギア91およびフィックスギア93)が第1および第2のギアの例であり、変速機5の複数のギアのうちシフト操作により係合状態に移行すべき2つのギア(ギア5d1,5d2、フィックスギア95およびスライドギア97)が第3および第4のギアの例である。
また、第1の目標値TV1が第1の目標値の例であり、第2の目標値TV2が第2の目標値の例であり、第3の目標値TV3が第3の目標値の例であり、調整部57がトルク調整部の例であり、要求トルク取得部54が要求トルク取得部の例であり、境界範囲BAが第1の目標値を含む予め定められた範囲の例であり、トルク判定部55が判定部の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
2…クランク軸,3…クラッチ,5…変速機,5a…メイン軸,5b…ドライブ軸,5c,5c1,5c2,5d,5d1,5d2…ギア,5e…後輪ドライブスプロケット,5f,92,98…ドグ,7…シフト機構,7b…シフトカム,50…ECU,51…記憶部,52…操作判定部,53…ドグ判定部,54…要求トルク取得部,55…トルク判定部,56…実トルク取得部,57…調整部…71,シリンダ…72,ピストン…73,燃焼室…74,吸気ポート,74a,75a…開口端,75…排気ポート,76…吸気弁,77…排気弁,78…点火プラグ,79…吸気管,82…ETV,91,97…スライドギア,93,95…フィックスギア,94,96…ドグ穴,100…自動二輪車,101…本体フレーム,102…ヘッドパイプ,103…フロントフォーク,104…前輪,105…ハンドル,105a…クラッチレバー,107…エンジン,108…インジェクタ,109…クランクケース,110…ミッションケース,112…燃料タンク,113…シート,114…リアアーム,115…後輪,116…後輪ドリブンスプロケット,117…チェーン,118…排気管,120…バックステップ,210…シフトペダル,211…ペダルアーム,212…取付部,220…第1のリンク機構,221…第1のリンク軸,222…第2のリンク軸,250…シフト軸,260…リンク機構,300…ストッパープレート,BA…境界範囲,SE1…アクセルセンサ,SE2…クランクセンサ,SE3…スロットルセンサ,SE4…シフトカムセンサ,SE5…荷重センサ,TV1…第1の目標値,TV2…第2の目標値,TV3…第3の目標値,c1〜c3…シフトフォーク,d1〜d3…カム溝,e1〜e3…摺動ピン

Claims (6)

  1. エンジンと、
    駆動輪と、
    前記エンジンにより発生されるトルクを前記駆動輪に伝達する変速機と、
    前記変速機においてドグによる係合状態からドグによる非係合状態に移行すべき第1および第2のギアの係合力が低下するように前記エンジンのクランク軸に発生するトルクを第1の目標値に調整し、前記第1および第2のギアが非係合状態に移行した後、前記変速機においてドグによる非係合状態からドグによる係合状態に移行すべき第3および第4のギアが係合状態に移行可能となるように前記エンジンのクランク軸に発生するトルクを前記第1の目標値とは異なる第2の目標値に調整するトルク調整部とを備える、鞍乗型車両。
  2. 前記トルク調整部は、前記第3および第4のギアが係合状態に移行した後に前記エンジンのクランク軸に発生するトルクを前記第1の目標値に近づくように第3の目標値に調整する、請求項1記載の鞍乗型車両。
  3. 前記エンジンの回転速度に対応して前記エンジンのクランク軸に発生されるべき要求トルクを取得する要求トルク取得部をさらに備え、
    前記トルク調整部は、
    前記クランク軸に発生するトルクが前記第3の目標値から前記要求トルク取得部により取得された要求トルクに漸次近づくように、前記エンジンのクランク軸に発生するトルクを調整する、請求項2記載の鞍乗型車両。
  4. 前記変速機のギア比の切り替えのためのシフト操作に応答して、前記要求トルク取得部により取得された要求トルクが前記第1の目標値を含む予め定められた範囲内にあるか否かを判定する判定部をさらに備え、
    前記トルク調整部は、前記取得された要求トルクが前記予め定められた範囲内にないと判定された場合に前記エンジンのクランク軸に発生するトルクの調整を行い、前記取得された要求トルクが前記予め定められた範囲内にあると判定された場合に前記エンジンのクランク軸に発生するトルクの調整を行わない、請求項3記載の鞍乗型車両。
  5. 前記トルク調整部は、前記取得された要求トルクが正の値である場合に前記第2の目標値を正の値に設定し、前記取得された要求トルクが負の値である場合に前記第2の目標値を負の値に設定する、請求項3または4記載の鞍乗型車両。
  6. 前記トルク調整部は、前記第2の目標値を前記要求トルク取得部により取得された要求トルクに設定する、請求項4または5記載の鞍乗型車両。
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