JP2019099550A - スクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤およびその利用 - Google Patents

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晴彦 崎山
Haruhiko Sakiyama
晴彦 崎山
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Abstract

【課題】新規なスクロース吸収阻害剤およびその利用技術を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係るスクロース吸収阻害剤は、ChREBPの機能を阻害する物質を有効成分として含んでいる。【選択図】図8

Description

本発明は、スクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤およびその利用技術に関する。
ChREBP(Carbohydrate Response Element-Binding Protein)は、糖・脂質代謝に関連する酵素群の遺伝子発現を調節する、転写因子である。ChREBPは全身で発現しているタンパク質であるが、特に肝臓、小腸、骨格筋、脂肪組織などでの発現量が多い。その機能としては、肝臓における脂肪の生合成の促進などが報告されている(例えば、非特許文献1を参照)。
Iizua K et al. (2004) "Deficiency of carbohydrate response element-binding protein (ChREBP) reduces lipogenesis as well as glycolysis", Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, Vol.101 (No.19), pp.7281-7296
しかしながら、ChREBPの有する機能は十全に解明されているとは言えず、新たに産業上利用可能な応用が見出される余地が残されていた。
本発明の一態様は、新たに見出されたChREBPの機能に基づいた、新規なスクロース吸収阻害剤およびその利用技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した。その結果、ChREBP遺伝子の発現をノックアウトし、当該タンパク質の機能を抑制したマウス(以下、ChREBPノックアウトマウスと表記する)では、スクロース吸収(特に、腸管におけるスクロース吸収吸収)が特異的に阻害されるという新規知見を見出し、本願発明を完成させた。具体的には、本願発明は、以下の態様を含むものである。
本発明の一態様に係るスクロース吸収阻害剤(好ましくは、小腸粘膜におけるスクロースの吸収阻害剤)は、ChREBPの機能を阻害する物質を有効成分として含んでいる。
また、本発明の一態様に係るChREBP阻害剤は、以下の化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩を有効成分として含んでいる。
また、本発明の一態様に係るUCP1の機能促進剤は、ChREBPの機能を阻害する物質を有効成分として含んでいる。
さらに、本発明の一態様に係るスクロース阻害剤のスクリーニング方法は、採取された細胞に、被検物質を接触させる工程と;上記細胞におけるChREBPの機能阻害を検出する工程と;を含む。
さらにまた、本発明の一態様に係る物質のスクロース吸収阻害能を評価するためのキットは、ChREBPの機能阻害を検出する手段を備えている。
本発明の一態様によれば、新規なスクロース吸収阻害剤およびその利用技術を提供することができる。
ChREBPノックアウトマウスおよび野生型マウスに、普通食または高ショ糖食を摂取させ、それぞれのマウスにおける生理的変化を検討した実験結果を表す図である。(a)は、同実験において、高ショ糖食群の摂食量を表すグラフである。(b)は、同実験において、それぞれのマウスの体重増加の経過を表すグラフである。 上記実験において、それぞれのマウスの随時血糖値の変化を表すグラフである。 上記実験において、それぞれのマウスの血中コレステロール値を表すグラフである。(a)は20週齢(実験開始から16週間後)の普通食群、(b)は20週齢(実験開始から16週間後)の高ショ糖食群における値である。 上記実験において、それぞれのマウスの血中における脂質代謝関連物質の値を表すグラフである。(a)は20週齢(実験開始から16週間後)の普通食群、(b)は20週齢(実験開始から16週間後)の高ショ糖食群の時点における値である。 上記実験において、マウスの血中フルクトース濃度を表すグラフである。(a)は10週齢(実験開始から6週間後)の普通食群、(b)は20週齢(実験開始から16週間後)の普通食および高ショ糖食群における値である。 高ショ糖食群のマウスの小腸組織を表す、顕微鏡像である。 野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスの小腸における、糖輸送体の発現量を表す図である。(a)はGlut2、(b)はGlut5、(c)はSGLT1の発現量を、それぞれ表している。 野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスの小腸における、スクロースの吸収を表す図である。(a)は、普通食群および高ショ糖食群における、スクラーゼの発現を表すウェスタン・ブロット像である。(b)は、高ショ糖食群におけるスクラーゼ活性を表すグラフである。 化合物(1)により、ChREBPの有する転写活性が阻害されることを表すグラフである。 野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスにおける、UCP1の発現量を表す図である。(a)は、UCP1のmRNAの発現量を比較したグラフである。(b)は、UCP1のタンパク質の発現量を比較した電気泳動像である。 (a)は、ChREBPによってUCP1の発現が調節される推定機構を表す模式図である。(b)は、野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスにおける、PGC−1の発現量を表すグラフである。 ChREBPにより、UCP1の活性が抑制されることを表すグラフである。 野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスにおける、糖輸送体の発現量を表すグラフである。(a)は褐色脂肪細胞、(b)は白色脂肪細胞における発現量を表している。 野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスの、褐色脂肪細胞を表す顕微鏡像である。 野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスの、褐色脂肪細胞中のミトコンドリアを表す電子顕微鏡像である。 野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスの、褐色脂肪細胞中におけるミトコンドリア複合体の発現量を表す図である。(a)は、各複合体タンパク質の発現量を表す電気泳動像である。(b)は、(a)の電気泳動像を定量化したグラフである。
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、別途特記している場合または文脈上別の意味であることが明らかである場合を除いて、「ChREBP」とは、(i)ChREBPタンパク質(ChREBPαおよびChREBPβを含む)、ならびに(ii)ChREBP遺伝子(DNAおよびR
NAを含む)、を総称する。
〔1.スクロース吸収阻害剤〕
[1−1.ChREBPの機能阻害物質]
本発明の一態様に係るスクロース吸収阻害剤は、ChREBPの機能を阻害する物質(以下、「機能阻害物質」と略記する。)を有効成分として含むものであればよい。一例において、上記スクロース吸収阻害剤は、小腸の細胞(例えば、粘膜上皮細胞)において、ChREBPの機能を阻害する機能阻害物質を含むものを例示できる。
ChREBPの機能阻害物質が、ChREBPの機能を阻害する程度は、特に限定されない。例えば、機能阻害物質の非存在下での機能を100%とした場合、当該機能阻害物質によって、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または、10%以下にまで機能が阻害され得る。なお、ChREBPの機能(例えば、スクラーゼの発現量および活性。より具体的な例は実施例を参照。)は、適宜公知の手段によって定量され得る。
「スクロースの吸収阻害」の具体的な態様としては、例えば、(i)スクラーゼの発現および/または活性を阻害すること、(ii)糖輸送体であるGlut2・Glut5の発現および/または活性の阻害等が挙げられる。
一例において、「ChREBPの機能を阻害する」とは、ChREBPの発現および/または活性を阻害することである。
「ChREBPの発現を阻害する」とは、例えば、ChREBP遺伝子からmRNAへの転写を阻害すること、当該mRNAからChREBPの翻訳を阻害することである。具体的な阻害の態様としては、(i)ChREBP遺伝子の塩基配列を改変し、ChREBP遺伝子をノックアウトする、(ii)ChREBP遺伝子またはそのプロモーターなどに結合し、当該遺伝子の転写を阻害する、(iii)ChREBP遺伝子の分解を促進する、などが挙げられる。
「ChREBPの活性を阻害する」とは、例えば、ChREBPタンパク質の有する転写活性(ChREBPが標的遺伝子と結合し、当該標的遺伝子の転写を促進する活性)を阻害することである。具体的な阻害の態様としては、(i)ChREBPタンパク質に結合して、当該タンパク質の機能を阻害する、(ii)ChREBPタンパク質の核移行を阻
害する(ChREBPは転写因子であるため、機能するためには核内に移動する必要がある)、(iii)ChREBPタンパク質を中和抗体で中和する、などが挙げられる。
以上に例示した阻害態様の中では、ChREBPタンパク質の核移行を阻害する態様が好ましい。この態様は、ChREBPタンパク質の発現自体には影響を及ぼさないため、他の様式による阻害よりもオフターゲット効果を低減できる。また、阻害の程度が緩やかであるため、生体に対して応用しやすい(生命維持に対する重大な欠陥が発生しにくい)という利点も有している。
ChREBPの機能阻害物質は、ChREBP機能を少なくとも1つ阻害すれば充分である。このような機能阻害物質は、公知の手法により作製することができるし、市販の物質を機能阻害物質として用いてもよい。
一実施形態において、上記ChREBPの機能阻害物質は、上記化合物(1)である。
上記化合物(1)は、IUPAC名:2-(furan-2-yl)-N-[4-(1,3-thiazol-2ylsulfamoyl)phenyl]quinoline-4-carboxamide、CAS番号:380310-48-5で特定される化合物である。
本発明者らは、後述する実施例に示すように、上記化合物(1)が、ChREBPの核移行を阻害する物質であることを見出した。つまり、上述した理由により、上記化合物は、ChREBPの機能阻害物質として(すなわち、本発明の一実施形態に係るスクロース阻害剤の主成分として)好ましい性質を有している。
一実施形態において、上記ChREBPの機能阻害物質は、上記化合物(1)の誘導体または塩であってよい。上記化合物(1)の誘導体または塩を機能阻害物質として用いることにより、(i)スクロース吸収阻害効果が増大する、(ii)被験体に対する安全性が増大する、(iii)製剤に当たって扱いやすい物性を得る、などの利点が得られる場合がある。
本明細書において、「誘導体」とは、特定の化合物に対して、当該化合物の分子内の一部が、他の官能基または他の原子と置換されることにより生じる化合物群を意図する。他の官能基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルフォニルオキシ基、アルキルスルフォニルオキシ基、ニトロ基などが挙げられる。他の原子の例としては、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子などが挙げられる。
本明細書において、「塩」とは、医薬品として被験体に投与することが生理学的に許容され得る塩であるならば、限定されない。塩の例としては、アルカリ金属塩(カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、有機塩基塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩など)、有機酸塩(酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、蟻酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩など)、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩など)を挙げられる。
上記化合物(1)の誘導体または塩は、公知の手法により合成することができる。また、市販の物質を利用してもよい。
[1−2.その他の機能阻害物質]
以下、上述した以外の機能阻害物質について説明する。このような機能阻害物質は、公知の手段(例えば、核酸合成技術、抗体産生技術)によって設計・合成され得る。
(1)ChREBP遺伝子をノックアウトする物質
このような機能阻害物質の具体例としては、CRISPR−Casシステムが挙げられる。このシステムによれば、適切なガイドRNAを設計することで、ChREBP遺伝子に含まれる塩基配列を切除したり、ChREBP遺伝子内に他の塩基配列を挿入したりすることができる(遺伝子編集)。その結果、ChREBP遺伝子は、正常なChREBPタンパク質を発現させることができなくなる。
(2)ChREBP遺伝子の転写を阻害する物質
このような機能阻害物質の具体例としては、ChREBP遺伝子の塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸が挙げられる。このような核酸は、ChREBP遺伝子と二重鎖を形成して、ChREBP遺伝子の転写および/または翻訳を阻害することができる。
(3)ChREBP遺伝子の分解を促進する物質
このような機能阻害物質の具体例としては、RNAi(RNA interference)を誘導するRNA(siRNAなど)が挙げられる。
(4)ChREBPタンパク質の機能を阻害する物質
このような機能阻害物質の具体例としては、ChREBPタンパク質に作用して、当該タンパク質の立体構造を変化させる物質が挙げられる。
(5)ChREBPタンパク質の中和抗体
ChREBPタンパク質の中和抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または、これらの断片(例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、または、Fv)であり得る。また、上記中和抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、または、これらの断片であってもよい。
このような抗体は、周知の方法に従って作製することができる(例えば[Harlow (Ed.), "Antibodies: a laboratory manual", New York: Cold Spring Harbor Laboratory, 1988]、[岩崎辰夫 他『単クローン抗体: ハイブリドーマとELISA』、講談社、1991年]を参照)。もちろん、市販の抗体を用いることも可能である。
モノクローナル抗体は、当該分野において周知の方法に従って作製することができる。モノクローナル抗体の作製方法の例としては、
(i)ハイブリドーマ法(例えば[Koehler G & Milstein C (1975) "Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity", Nature, Vol.256 (No.5517), pp.447-518]を参照)
(ii)トリオーマ法
(iii)ヒトB細胞ハイブリドーマ法(例えば[Kozbor D & Roder JC (1983) "The production of monoclonal antibodies from human lymphocytes", Immunology Today, Vol.4 (Issue 3), pp.72-79]を参照)
(iv)EBV−ハイブリドーマ法(例えば[Cole SPC et al., "The EBV-hybridoma technique and its application to human lung cancer" In: Reisfeld RA & Sell S (Eds.), "Monoclonal antibodies and cancer therapy", New York: Alan R. Liss, Inc., 1985, pp.77-96 (UCLA symposia on molecular and cellular biology, Vol.27)]を参照)
を挙げることができる。
キメラ抗体とは、定常領域がヒトの抗体の定常領域に置き換えられている抗体を意図する。キメラ抗体は、周知方法に従って作製され得る(例えば、欧州特許公開公報第EP0125023号を参照)。
ヒト化抗体とは、H鎖およびL鎖の相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)以外が、ヒトの抗体の構造に置き換えられている抗体を意図する。
ヒト抗体とは、ヒトの抗体生産に関与する遺伝子が導入されたトランスジェニック動物を用いて作製された抗体を意図する(例えば、欧州特許公開公報第EP0546073号を参照)。
抗体断片は、完全な抗体をプロテアーゼ(例えば、パパイン、ペプシン)によって分解することによって作製できる。この手法を用いる場合、必要に応じて、分解物を還元してもよい。また、抗体を生産するハイブリドーマから抗体断片のcDNAを単離して、当該cDNAを挿入した発現ベクターを宿主に導入することによっても、抗体断片を作製できる。この手法を用いる場合、抗体断片と別のタンパク質との融合タンパク質を作製することもできる。
[1−3.従来技術との差異]
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤は、糖類の中でもスクロース(ショ糖)の吸収を選択的に阻害することができる。逆に、スクロース以外の糖類(例えば、デンプン)を摂取している限りは、糖類の吸収量に対する影響は緩やかである。これは、従来の糖吸収阻害剤がグリコシダーゼ阻害剤であり、二糖類(および多糖類)の吸収を一律に阻害していることとは対照的である。
この点を応用すると、例えば、食生活の偏りに起因してスクロースが過剰摂取された場合に、その吸収を選択的に阻害することができる。その一方で、糖類一般の吸収を阻害することによる危険性を、低減させることもできる。
また、上述した通り、本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤は、ChREBPの核移行を阻害する物質を含んでいることが好ましい。このようなスクロース吸収阻害剤は、オフターゲット効果が低減されており、生体に対して応用しやすいためである。
〔2.ChREBP阻害剤〕
上述したように、上記化合物(1)は、ChREBPの核移行を阻害することによって、ChREBPの機能を阻害する物質である。以上の知見は、本発明者らが初めて見出した事項である。
したがって、本発明の他の態様は、上記化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩を有効成分として含んでいる、ChREBP阻害剤である。上記化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩については、上述した通りである。上記ChREBP阻害剤は、例えば、本明細書に記載のスクロース阻害剤および/または生活習慣病の処置用組成物として、応用できる。あるいは、ChREBPの機能に関しては種々の研究の成果が存在するため、上記ChREBP阻害剤を、これらの研究の成果と組み合わせて応用することもできる。
上記化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩は、ChREBPの核移行を阻害することによって、ChREBPの機能を阻害するから、上述した好ましい効果(オフターゲット効果の低減、生体への応用が容易、など)が期待できる。
〔3.生活習慣病の処置用組成物〕
本発明のさらに他の態様は、上述のスクロース吸収阻害剤またはChREBP阻害剤を含む、生活習慣病の処置用組成物である。
本明細書において、「生活習慣病」とは、生活習慣上の要因(食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒など)が、発症および/または進行に関与する疾患、ならびに当該疾患に伴う症状、合併症を意図する。生活習慣病の例としては、糖尿病、脂質代謝異常(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、高尿酸血症(通風)、循環器病(動脈硬化性疾患、心臓病(心筋梗塞、狭心症など)など)、肥満症、メタボリックシンドローム、高血圧、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)、脂肪肝、アルコール性肝炎、慢性腎臓病、肺がん、大腸がんなどが挙げられる。
一実施形態において、本発明の一実施形態に係る生活習慣病の処置用組成物が処置の対象とする生活習慣病は、スクロースの摂取によって誘導される生活習慣病(例えば、糖尿病、脂質代謝異常(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、肥満症、メタボリックシンドローム、脂肪肝)である。
一実施形態において、上記組成物が処置の対象とする生活習慣病は、糖尿病、脂質代謝異常(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)、肥満症、メタボリックシンドローム、脂肪肝、心臓病、脳卒中、動脈硬化性疾患である。
本明細書において「処置」とは、処置効果をもたらす行為を意味する。処置効果とは、予防効果および治療効果を包含する概念である。それゆえ、「生活習慣病の処置用組成物」には、「生活習慣病の予防用組成物」および「生活習慣病の治療用組成物」が含まれる。
処置効果とは、例えば、以下の類型に含まれる効果である。
(1)処置用組成物を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の発症を防止する、または発症のリスクを低減する。
(2)処置用組成物を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の再発を防止する、または再発のリスクを低減する。
(3)処置用組成物を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の徴候の発生を防止する、または徴候が発生するリスクを低減する。
(4)処置用組成物を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重篤度を低減する。
(5)処置用組成物を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重篤度の上昇、または進行を防止する。
(6)処置用組成物を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重篤度の上昇速度、または進行速度を低減する。
〔4.製剤、剤型および処方〕
[4−1.製剤]
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物は、常法に則り製剤され得る。より具体的には、ChREBPの機能阻害物質と、医薬品添加物を調合することによって製剤され得る。
ChREBPの機能阻害物質(例えば上記化合物(1))については、上記に説明した通りである。
本明細書において医薬品添加物とは、製剤に含まれる有効成分以外の物質を意図する。医薬品添加物は、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、有用性を高めるなどの目的のため、製剤に含まれている。一例において、上記医薬品添加物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤(固形防止剤)、着色剤、カプセル被膜、コーティング剤、可塑剤、矯味剤、甘味剤、着香剤、溶剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤(粘着剤)、粘稠剤、pH調整剤(酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤)、湿潤剤(可溶化剤)、抗菌性保存剤、キレート剤、坐剤基材、軟膏基剤、硬化剤、軟化剤、医療用水、噴射剤、安定剤、保存剤、であり得る。これらの医薬品添加物は、意図された剤型および投与経路、ならびに標準的な薬学的慣行に従って、当業者によって容易に選択され得る。
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物は、ChREBPの機能阻害物質以外にも有効成分を含んでいてよい。このような有効成分は、スクロースの吸収阻害、ChREBPの機能阻害または生活習慣病の処置に関連する効果を有していてもよいし、他の効果を有していてもよい。
以上に説明した有効成分および医薬品添加物の具体例は、例えば、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、日本国厚生労働省などが策定している基準により、知ることができる。
[4−2.剤型]
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物は、任意の剤型を取り得る。一例において、上記剤型は、錠剤、カプセル剤、内用剤、外用剤、坐剤、注射剤、吸入剤であり得る。
[4−3.処方]
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物は、医師または医療従事者の判断により、適宜処方され得る。
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物の投与経路は、処置しようとする疾患の種類および重篤度などの要素により、適宜選択される。一例において、上記投与経路は、非経口投与、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、経口投与、舌下投与、鼻腔内投与、脳内投与、膣内投与、経皮投与、直腸内投与、吸入、局所投与であり得る。
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物を投与する場合、投与回数1回当たりに含まれているChREBPの機能阻害物質の下限値は、0.001mg、0.002mg、0.005mg、0.007mg、0.01mg、0.02mg、0.05mg、0.07mg、0.1mg、0.2mg、0.5mg、0.7mg、1mg、2mg、5mg、7mg、10mgであり得る。
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物を投与する場合、投与回数1回当たりに含まれているChREBPの機能阻害物質の上限値は、1mg、2mg、5mg、7mg、10mg、20mg、50mg、70mg、100mg、1g、2g、5g、7g、10gであり得る。
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物を投与する場合、所望の効果が得られるならば、投与間隔に制限はない。上記投与間隔は、通常1時間〜6箇月間に1回であり、好ましくは1時間に1回、2時間に1回、3時間に1回、6時間に1回、12時間に1回、1日間に1回、2日間に1回、3日間に1回、4日間に1回、5日間に1回、6日間に1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1箇月間に1回、2箇月間に1回、3箇月間に1回、4箇月間に1回、5箇月間に1回、6箇月間に1回であり、より好ましくは少なくとも1日に1回、少なくとも2日間に1回、少なくとも3日間に1回、少なくとも4日間に1回、少なくとも5日間に1回、少なくとも6日間に1回、少なくとも1週間に1回である。
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物を投与する「被験体」は、ヒトに限定されない。その他に、非ヒト哺乳動物に対しても適用することができる。上記非ヒト哺乳動物としては、偶蹄類(ウシ、イノシシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、奇蹄類(ウマなど)、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター、リスなど)、ウサギ目(ウサギなど)、食肉類(イヌ、ネコ、フェレットなど)などが挙げられる。上述した非ヒト哺乳動物には、家畜またはコンパニオンアニマル(愛玩動物)に加えて、野生動物も包含される。
本発明の一実施形態に係るスクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤または生活習慣病の処置用組成物はまた、生物体以外にも用いることができる。例えば、生物体に由来する系(摘出された組織、培養細胞、細胞抽出液など)にも用いることができる。
〔5.スクリーニング方法〕
本発明の一態様に係るスクロース吸収阻害剤のスクリーニング方法は、(i)採取された細胞に被検物質を接触させる工程と、(ii)上記細胞におけるChREBPの機能阻害
を検出する工程と、を含む。
[5−1.採取された細胞に被験物質を接触させる工程]
被検物質は、スクロース吸収阻害剤に含まれる有効成分の候補となる物質であって、具体的な構成は特に限定されない。被検物質は、低分子化合物、または、高分子化合物であってもよい。また、被検物質は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、糖、または、これらの複合体であってもよい。
採取された細胞は、ChREBPを発現している細胞であれば、特に限定されない。上記細胞は、生体から採取された細胞をそのまま用いてもよいし、培養細胞(初代培養細胞または細胞株)を用いてもよい。一例において、上記細胞は、小腸の粘膜上皮細胞である。
採取された細胞に被検物質を接触させる工程は、例えば、液体培地中で培養されている細胞に対して、当該液体培地に被検物質を添加することによって行うことができる。このとき、液体培地の種類は特に限定されず、用いる細胞の種類などに応じて、適宜選択することができる。また、液体培地中の被検物質の濃度は特に限定されず、被検物質に応じて、適宜選択することができる。
[5−2.ChREBPの機能阻害を検出する工程]
本発明の一態様に係るスクロース吸収阻害剤のスクリーニング方法では、採取された細胞に被検物質を接触させた後、当該細胞におけるChREBPの機能阻害を検出する工程を行う。必要に応じて、細胞に被験物質を接触させた後、ChREBPの機能阻害を検出するまでに、当該細胞をさらに培養してもよい。
ChREBPの機能阻害を検出する工程で検出される、ChREBPの機能阻害の指標は、特に限定されない。例えば、スクラーゼの発現の減少、スクラーゼの活性の低下、糖輸送体(Glut2、Glut5など)の発現の減少が挙げられる。その他にも、ChREBPの核移行の減少、ChREBPとインポーチンとの結合の減少を、検出すべきChREBPの機能阻害の指標としてもよい。
さらに、ChREBPタンパク質の発現減少や、ChREBPのmRNAの発現減少を、検出すべきChREBPの機能阻害の指標としてもよい。ChREBPタンパク質の発現を検出する方法としては、ウエスタンブロッティング法、ELISA法(enzyme-linked immunosorbent assay)、免疫組織化学、または、免疫蛍光抗体法などの周知の方法が挙げられる。ChREBPのmRNAの発現を検出する方法としては、PCR法(polymerase chain reaction)、ノーザンブロッティング法、または、in situ hybridization法などの周知の方法が挙げられる。
ChREBPの機能が阻害される場合、スクロース吸収も阻害されると考えられる。それゆえ、ChREBPの機能を阻害させ得る被検物質は、スクロース吸収阻害剤の有効成分としての用途が期待される。
本工程において、被検物質と接触していない細胞におけるChREBPの機能を100%とした場合、被検物質と接触させた細胞におけChREBPの機能が、95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下にまで低下していれば、当該被検物質は、スクロース吸収阻害剤の有効成分として選択され得る。
〔6.キット〕
本発明の一態様は、ChREBPの機能阻害を検出する手段を備えている、物質のスクロース吸収阻害能を評価するためのキットである。このような手段としては、[5−2]節で説明した「ChREBPの機能阻害を検出する工程」で採用できる方法に用いられる手段を、適宜用いることができる。このような手段としては、例えば、(i)ChREBPタンパク質、ChREBP遺伝子(DNAおよびRNA)、ChREBPに関連する物質(糖輸送体、スクラーゼ、およびこれらをコードする遺伝子)を特異的に認識する抗体、(ii)ChREBP遺伝子およびChREBPに関連するタンパク質をコードする遺伝子を増幅するためのプライマー、などが挙げられる。その他にも、例えば、実施例に記載の実験方法を遂行するための手段およびその均等物も、上記手段に含まれる。
また、上記キットは、キットの使用に必要となる薬剤、器具、容器、説明書などをさらに備えていてよい。また、上述した薬剤、器具、容器、説明書などを、市場または通信回線などを通じて別途使用者に入手させる形態で、上記キットを頒布してもよい。
〔7.本発明のその他の態様〕
一態様において、本発明は、被験体のChREBPの機能を阻害する工程を含む、上記被験体のスクロース吸収を阻害する方法である。ChREBPの機能を阻害する方法は、〔1〕節に例示した通りである。上記阻害は、ChREBPの核移行を阻害することによって行われることが好ましい。また、上記阻害は、上記化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩を被験体に投与することによって行われることも好ましい。
他の態様において、本発明は、上記化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩を被験体に投与する工程を含む、上記被験体のChREBPを阻害する方法である。
さらに他の態様において、本発明は、被験体のChREBPの機能を阻害する工程を含む、生活習慣病を処置する方法である。上記阻害は、ChREBPの核移行を阻害することによって行われることが好ましい。また、上記阻害は、上記化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩を被験体に投与することによって行われることも好ましい。
上述の態様のそれぞれにおいて、上記被験体は、ヒトであってもよいし、ヒト以外の動物(例えば、非ヒト哺乳類)であってもよい。また、上記投与は、in vivoに行ってもよいし、ex vivoに行ってもよい。つまり、上述の態様には、物質を生体に投与する方法に加えて、培養細胞などに投与する方法も包含される。
一態様において、本発明は、ChREBPを阻害する物質を有効成分として含む、UCP1(uncoupling protein 1)の機能促進剤である。上記機能促進剤は、UCP1の発現を促進することが好ましい。上記機能促進剤は、脂肪を減少させるために用いられることが好ましい。すなわち、本発明には、ChREBPを阻害する物質を有効成分として含む、脂肪を減少させるための組成物が含まれる。
他の態様において、本発明は、被験体のChREBPの機能を阻害する工程を含む、上記被験体のUCP1の機能を促進する方法である。ChREBPの機能を阻害する方法は、〔1〕節に例示した通りである。UCP1の機能の促進は、UCP1の発現を促進することによって行うことが好ましい。上記方法は、被験体の脂肪を減少させることが好ましい。すなわち、本発明には、ChREBPを阻害する物質を被験体に投与し、被験体のChREBPの機能を阻害し、脂肪を減少させる方法が含まれる。
〔まとめ〕
本発明には、以下の構成が包含されている。
<1>ChREBPの機能を阻害する物質を有効成分として含む、スクロース吸収阻害剤。
<2>上記有効成分は、ChREBPの核移行を阻害する物質である、<1>に記載のスクロース吸収阻害剤。
<3>上記有効成分は、上記化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩である、<1>または<2>に記載のスクロース吸収阻害剤。
<4>上記化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩を有効成分として含む、ChREBP阻害剤。
<5>ChREBPの機能を阻害する物質を有効成分として含む、UCP1の機能促進剤。
<6><1>〜<5>のいずれか1つに記載の剤を含む、生活習慣病の処置用組成物。
<7>採取された細胞に、被検物質を接触させる工程と;上記細胞におけるChREBPの機能阻害を検出する工程と;を含む、スクロース吸収阻害剤のスクリーニング方法。
<8>ChREBPの機能阻害を検出する手段を備えている、物質のスクロース吸収阻害能を評価するためのキット。
上記各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を、適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
〔1〕ChREBPノックアウトマウスの解析
4週齢のChREBPノックアウトマウスおよび野生型マウスを、普通食群および高ショ糖食群に分けて飼育し、それぞれのマウスにおける生理的変化を追跡した。
使用した実験材料は、以下の通りである。
<マウス>
・野生型マウス(C57BL/6J、オリエンタル酵母工業より購入)
・ChREBPノックアウトマウス(ChREBP-/-、Kosaku Uyeda (The University of Texas Southwestern Medical Center)より提供)
※野生型×普通食:8匹、野生型×高ショ糖食8匹、KOマウス×普通食8匹、KOマウス×高ショ糖食8匹の4群に分けて飼育した。
<飼料>
・普通食:オリエンタル酵母工業製 MF(360kcal、タンパク質:23.1g、脂質5.1g、糖質55.3g(100g当たり))
・高ショ糖食:オリエンタル酵母製 F2HScD(370kcal、タンパク質12g、脂質3g、糖質35g、ショ糖50g(100g当たり))。
上記〔1〕における、各種生理的パラメータの測定方法は、以下の通りである。
・摂食量:高ショ糖食を与えた野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスについて、1週間の摂食量から1日当たりの摂食量を算出した。測定は、各マウスが12週齢および20週齢のときに行った。
・体重:5〜20週齢のマウスについて、各週齢に達した時点から2〜3日目の体重を測定した。
・随時血糖値:6、8、10、12、14、16、18、20週齢のマウスについて、毎日定時に血糖値を測定した。測定には、LAB Gluco(フォラケア・ジャパン製)を用いた。
・コレステロール値:(i)20週齢の普通食マウス、および(ii)20週齢の高ショ糖食マウスについて、各週齢に達した時点から2〜3日目の総コレステロール(T−CHO)、遊離コレステロール(F−CHO)およびエステル型コレステロール(E−CHO)の値を測定した。測定に用いたキットまたは算出方法は、以下の通りである。
総コレステロール:Lタイプワコー CHO・M(和光純薬工業製)
遊離コレステロール:Lタイプワコー 遊離コレステロール(和光純薬工業製)
エステル型コレステロール:総コレステロール値から遊離コレステロール値を減じた値をエステル型コレステロール値とした。
・脂質代謝関連物質:(i)20週齢の普通食マウス、および(ii)20週齢の高ショ糖食マウスについて、各週齢に達した時点から2〜3日目の中性脂肪(TG)、LDL−コレステロール(LDL−C)およびHDL−コレステロール(HDL−C)の値を測定した。測定に用いたキットは、以下の通りである。
中性脂肪:Lタイプワコー TG・M(和光純薬工業製)
LDL−コレステロール:コレステスト(登録商標)LDL(積水メディカル製)
HDL−コレステロール:コレステスト(登録商標)N HDL(積水メディカル製)
・血中フルクトース濃度:(i)10週齢の普通食マウス、および(ii)20週齢の高ショ糖食マウスについて、毎日定時に採血し、血中フルクトース濃度を測定した。測定には、ショ糖/グルコース/果糖測定キット(R-Biopharm製)を用いた。
(結果)
図1は、(a)摂食量および(b)体重変化を表すグラフである。図1の(a)から判るように、高ショ糖食群の間では、摂食量に大きな違いは認められない。しかし、図1の(b)から判るように、高ショ糖食を与えた野生型マウスでは体重増加が促進されている(上の矢印)のに対し、高ショ糖食を与えたChREBPノックアウトマウスでは逆に体重増加が抑制されている(下の矢印)。また、普通食群の間では、体重の増加傾向に違いは認められなかった。
この結果から、高ショ糖食群の間における体重変化の違いは、飼料中のショ糖に由来すると考えられる。つまり、ChREBPノックアウトマウスにおいては、スクロースの吸収が阻害されている(例えば、体内への取り込みが阻害されている、代謝経路への取り込みが阻害されている、など)ことが示唆される。また、普通食を与える限りにおいては、ChREBPノックアウトマウスの体重増加は正常に近い。この点において、ChREBPの機能を阻害することによりスクロースの吸収を阻害する戦略は、ある程度の安全性を有していると言える。
図2は、随時血糖値の変化を表すグラフである。このグラフから、以下の事項が読み取れる。(i)普通食群においては、野生型マウスもChREBPノックアウトマウスも、概ね同様の血糖値を示す。(ii)高ショ糖食を与えた野生型マウスは、普通食を与えた野生型マウスよりも、高い血糖値を示す傾向にある。(iii)逆に、高ショ糖食を与えたChREBPノックアウトマウスは、普通食を与えたChREBPノックアウトマウスよりも、低い血糖値を示す傾向にある。
図3は、野生型マウスとChREBPノックアウトマウスの間で、コレステロール値を比較したグラフである。このグラフから、以下の事項が読み取れる。(i)普通食群において、ChREBPノックアウトマウスは、野生型マウスよりもコレステロール値が低い傾向にある(図3の(a))。(ii)高ショ糖食群において、ChREBPノックアウトマウスは、野生型マウスよりもコレステロール値が顕著に低い(図3の(b))。
図4は、野生型マウスとChREBPノックアウトマウスの間で、脂質代謝関連物質の値を比較したグラフである。このグラフから、以下の事項が読み取れる。(i)普通食群では、野生型マウスとChREBPノックアウトマウスとの間に、大きな違いは認められない(図4の(a))。(ii)高ショ糖食群において、ChREBPノックアウトマウスは、野生型マウスよりもHDL−コレステロール値が顕著に低い(図4の(b))。
図5は、野生型マウスとChREBPノックアウトマウスの間で、血中フルクトース濃度を比較したグラフである。このグラフから、以下の事項が読み取れる。(i)普通食群において、ChREBPノックアウトマウスは、野生型マウスよりも血中フルクトース濃度が低い傾向にある(図5の(a)、および図5の(b)左側)。(ii)高ショ糖食群において、ChREBPノックアウトマウスは、野生型マウスよりも血中フルクトース濃度が顕著に低い(図5の(b)右側)。
図2〜5に示された結果からも、ChREBPノックアウトマウスにおけるスクロースの吸収阻害が示唆される。同様に、図2〜5に示された生理的パラメータに関しても、普通食を与える限りは、ChREBPのノックアウトによる生理機能への大きな影響は認められない。このことより、ChREBPの機能を阻害する戦略によって、ショ糖の過剰摂取に起因する生活習慣病の代表的症状(肥満、高血糖、高コレステロール、脂質異常など)を、比較的安全に緩和できることが示唆される。
〔2〕スクロース吸収阻害能の詳細な解析
上記〔1〕で観察されたスクロース吸収阻害能を詳細に追究するため、ChREBPノックアウトマウスの小腸組織およびその機能を検討した。具体的には、以下の4点を検討した。
[小腸組織の観察]
上記〔1〕における高ショ糖食群のマウス(20週齢)から小腸組織の切片を作製し、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)を行った。染色に使用したマイヤーのヘマトキシリンおよびエオシンは、いずれも和光純薬工業製であった。
[糖輸送体の発現]
上記〔1〕におけるそれぞれのマウス(20週齢)について、糖輸送体であるGlut2、Glut5およびSGLT1の発現を比較した。具体的には、以下の手順に従った。(1)小腸組織50mgを、Sepasol(登録商標)RNA I super G(ナカライテスク製)を用いてホモジナイズした。
(2)フェノール/クロロホルム抽出法により、RNAを抽出・精製した。
(3)次に、Glut2、Glut5およびSGLT1をコードするmRNAの量を、qRT−PCRによって定量した(測定値は、βアクチンの発現量で較正した)。PCR装置はQuantStudio(登録商標)12K Flex(Thermo Fisher Scientific製)を使用した。また、プライマーの合成はThermo Fisher Scientificに委託し、具体的な配列は下記表の通りである。
[スクラーゼの発現]
上記〔1〕におけるそれぞれのマウス(20週齢)について、スクラーゼの発現をウェスタン・ブロットによって比較した。具体的には、マウスの小腸組織を、SDSを含有しないRIPAバッファー(ナカライテスク製)でホモジナイズした。次に、1レーン当たり50μgのタンパク質を、7.5%SDSゲルで電気泳動させた。その後、セミドライ式ブロッターによって、PVDF膜状にタンパク質を転写した。
得られたPVDF膜に、iBind(Thermo Fisher Scientific製)を使用して、抗体を反応させた。PVDF膜の発色にはELC-plus(GE Healthcare Life Science製)を使用し、ImageQuant LAS4000(GE Healthcare Life Science製)によって可視化させた。抗スクラーゼ抗体にはSanta Cruz製の製品を、抗βアクチン抗体にはCell Signaling製の製品を、それぞれ用いた。
[スクラーゼの活性]
上記〔1〕における高ショ糖食群のマウス(20週齢)について、スクラーゼ活性を測定した。具体的には、以下の手順に従った。
(1)適量の小腸組織を、0.9%NaCl水溶液でホモジュネートした。その後、10,000×g、20分間の条件で遠心分離し、上清を分取した。
(2)上記上清に含まれるタンパク質濃度を測定した。測定には、Pierce BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific製)を用いた。
(3)タンパク質濃度が既知の試料(上記上清)50μLに、50mMのショ糖溶液を50μL加え、合計100μLとした。得られた反応液を、37℃にて1時間反応させた。(4)上記反応液にTris−HCl(pH7.0)を25μL加え、反応を停止させた。得られた停止反応液中の、フルクトース濃度およびグルコース濃度を測定した。測定には、ショ糖/グルコース/果糖測定キット(R-Biopharm製)を用いた。
上記の測定において、スクラーゼの酵素活性1ユニットは、1分間に1μmolのショ糖をフルクトースおよびグルコースへ分解する酵素量とする(U/mg protein/min)。スクラーゼ活性の測定方法に関しては、以下の文献も参照。
1. Leforestier G, Blais A, Blachier F, Marsset-Baglieri A, Davila-Gay AM, Perrin E, Tome D. Effects of galacto-oligosaccharide ingestion on the mucosa-associated mucins and sucrase activity in the small intestine of mice. Eur J Nutr. 2009, 48(8):457-64.
2. Kim SH1, Hyun SH, Choung SY. Anti-diabetic effect of cinnamon extract on blood glucose in db/db mice. J Ethnopharmacol. 2006,104(1-2):119-23.。
(結果)
図6は、高ショ糖食を与えた野生型マウス(左側)およびChREBPノックアウトマウス(右側)の小腸組織を表す顕微鏡像である。同図から判るように、両者の小腸組織には、外形的な変化は生じていない。
図7は、上記〔1〕のそれぞれのマウスにおける、糖輸送体の発現を表すグラフである。Glut2の発現は、普通食群および高ショ糖食群のいずれでも、ChREBPノックアウトマウスの方が野生型マウスよりも低かった(図7の(a))。Glut5の発現は、(i)普通食群では変化が見られず、(ii)高ショ糖食群では野生型のみが発現量の増加を示した一方で、ChREBPノックアウトマウスは発現量が変化しなかった。つまり、ChREBPノックアウトマウスでは、高ショ糖食に起因するGlut5の発現量増加が、強力に抑制されていることが示唆される(図7の(b))。SGLT1の発現は、普通食群、高ショ糖食群のいずれでも、野生型マウスとChREBPノックアウトマウスとの間に違いは認められなかった(図7の(c))。
ここで、Glut2は、フルクトース、グルコースおよびガラクトースを、小腸の粘膜上皮細胞から毛細血管へ輸送する輸送体である。Glut5は、フルクトースを、小腸管腔から小腸の粘膜上皮細胞へ輸送する輸送体である。SGLT1は、グルコースおよびガラクトースを、小腸管腔から小腸の粘膜上皮細胞へ輸送する輸送体である。これらの事実と上記の実験結果とを併せて考慮すると、ChREBPノックアウトマウスは、Glut5の発現が抑制されるために、高ショ糖食を与えた際の生理的パラメータの挙動が異なる、と推定される。
図8の(a)は、上記〔1〕のそれぞれのマウスにおける、スクラーゼの発現を表すウェスタン・ブロット像である。同図から判るように、普通食群および高ショ糖食群のいずれにおいても、ChREBPノックアウトマウスのスクラーゼ発現は抑制されていた図8の(b)は、上記〔1〕の高ショ糖食群のマウスにおける、スクラーゼ活性を表すグラフである。同図から判るように、ChREBPノックアウトマウスのスクラーゼ活性は、野生型マウスの1/4程度であった。
図7、8の結果を総合すると、ChREBPノックアウトマウスでは、(i)スクラーゼによるスクロースの分解、ならびに(ii)Glut2およびGlut5によるフルクトースの取り込み(特にGlut5の取り込み)のいずれもが抑制される結果、スクロースの吸収が阻害されるものと考えられる。一方で、他の二糖類(マルトース、ラクトースなど)の吸収が阻害される程度は、スクロースよりは緩やかであると推定される。これは、グルコースおよびラクトース(マルトースおよびガラクトースの分解産物)の吸収は、Glut2の発現減少の影響を受けるに過ぎないからである(図7を参照)。
以上の推論から、ChREBPの阻害により、スクロースの吸収を選択的に阻害できる可能性が指摘される。これは、従来の糖吸収阻害剤がグリコシダーゼ阻害剤であり、二糖類(および多糖類)の吸収を阻害することにより、小腸による糖類の吸収を一律に阻害していることとは対照的である。つまり、食生活の偏りによって過剰摂取されがちであるスクロースの吸収を選択的に阻害して、生活習慣病を処置するという戦略が、ChREBPの阻害によれば可能である。そしてこの戦略は、糖類一般の吸収を阻害することに起因する危険性を、回避することが可能である。
〔3〕化合物(1)の機能の解析
化合物(1)により、ChREBPの有する転写活性が阻害されることを、ルシフェラーゼアッセイにより確認した。具体的には、以下の操作によった。
(1)HEK293A細胞を、DMTM(Low glucose; Sigma Aldrich製)中、37℃にて、密度5×10個となるまで培養した。
(2)上記細胞に、(i)0.2μgのpRL-TKプラスミド(ウミシイタケルシフェラーゼを内在性コントロール遺伝子として含む;Promega製)、(ii)2.0μgののpGL3-LPKプラスミド(ホタルルシフェラーゼをレポーター遺伝子として含む;Promega製)、および(iii)1.0μgのHis-ChREBP発現用ベクターをトランスフェクションした。トランスフェクションには、Lipofectamine(登録商標)2000(Invitrogen製)を用いた。
(3)2時間後、培養液を新しいDMTMと交換し、さらに12時間培養した。
(4)培地に各種物質を添加し、培養条件を以下の5群に分けた。その後、さらに20時間培養した。
・5.5mMグルコース
・27.5mMグルコース
・5.5mMグルコース+DMSO(終濃度0.1%)
・27.5mMグルコース+DMSO(終濃度0.1%)
・27.5mMグルコース+10μM化合物(1)(10mMに調整した化合物(1)のストックを、培養液に1000分の1量添加した)
(5)培養上清を除去した後、Dual-luciferase(登録商標)Reporter Assay System(Promega製)を用いてレポーターアッセイを行った。測定には、GloMax(登録商標)20/20n(Promega製)を用いた。このアッセイにおいて、ChREBPの転写活性は、発光強度として測定される。
(結果)
図9は上記アッセイの結果を表すグラフである。通常、ChREBPのターゲット遺伝子への結合は、高濃度のグルコースによって誘導される。しかし、化合物(1)によって上記結合が阻害されることが、同図から示された(p<0.05)。
ChREBPは、グルコースに応答して脱リン酸化され、インポーチンと結合することが知られている。このことを鑑みると、上記の実験結果から推定される化合物(1)の作用機序の一例は、以下の通りである。すなわち、脱リン酸化したChREBPに化合物(1)が結合することによって、インポーチンとChREBPとの結合を阻害する。その結果、ChREBPの核移行が阻害される。つまり、化合物(1)は、ChREBPの核移行を阻害する物質と考えられる。
このような様式による阻害は、ChREBPタンパク質の発現自体には影響を及ぼさないため、他の様式による阻害(例えば、遺伝子編集、RNAi、中和抗体など)よりもオフターゲット効果を低減できる。また、阻害の程度が緩やかであるため、生体に対して応用しやすい(生命維持に対する重大な欠陥が発生しにくい)という利点を有している。
〔4〕ChREBPによるUCP1発現の調節
ChREBPが、UCP1(uncoupling protein 1)の発現を抑制することを確認した。具体的には、野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスにおける、UCP1の発現量を比較した。その結果、ChREBPノックアウトマウスは、UCP1のmRNAの発現量も(図10の(a))、UCP1のタンパク質の発現量も(図10の(b))、いずれも野生型マウスより多かった。この事実から、ChREBPはUCP1の発現を抑制する機能を有していると推定される。
ChREBPによってUCP1の発現が調節される推定機構を、図11の(a)に示す。同図に示されているように、ChREBPが結合する遺伝子配列が存在するのは、LXR/RXR/PPAR複合体およびRXR/TR複合体の結合箇所よりも上流であると考えられる(LXR/RXR/PPAR複合体およびRXR/TR複合体は、PGC−1による制御を受けることが既に報告されている複合体である)。この推定機構を支持する傍証として、以下の3点を挙げる。
1.野生型マウスにおいてもChREBPノックアウトマウスにおいても、PGC−1の発現量には違いがなかった(図11の(b))。つまり、PGC−1自体には、野生型マウスとChREBPノックアウトマウスとの間に変化はないと考えられる。
2.UCP1遺伝子の46bp上流に、ChREBPが結合する配列が発見された。この配列は、RXR/TR複合体が結合するDNA上の部位とも近いので、PGC−1/RXR/TR複合体とChREBPとが結合しうることは、充分な蓋然性があると言える。
3.ルシフェラーゼアッセイによると、ChREBPを強発現した場合のほうが、レチノイン酸(RXRのリガンド)添加に応答するUCP1転写活性が向上していた(図12)。この事実から、ChREBPによるUCP1の発現抑制は、LXR/RXR/PPAR複合体およびRXR/TR複合体による制御の上流にあることが示唆される。
〔5〕ChREBPが脂肪細胞に及ぼす効果
野生型マウスおよびChREBPノックアウトマウスに通常食を与え、ChREBPが脂肪細胞に及ぼす効果を検討した。その結果、ChREBPノックアウトマウスでは、褐色脂肪細胞および白色脂肪細胞のいずれにおいても、Glut5遺伝子が全く発現しておらず、Glut4の発現も抑制されていた(それぞれ、図13の(a)、(b))。つまり、ChREBPノックアウトマウスでは、脂肪細胞へのスクロースの取り込みが抑制されていると考えられる。このことは、組織学的にも検証された(図14)。同図によると、野生型マウスの褐色脂肪細胞には多くの脂肪滴が確認されるのに対し、ChREBPノックアウトマウスの褐色脂肪細胞では確認される脂肪滴が数量ともに少なかった。
また、ChREBPノックアウトマウスでは、ミトコンドリアの構造に変化が見られた(図15)。同図によると、ChREBPノックアウトマウスのミトコンドリアには、マトリックスの消失が確認された。また、ChREBPノックアウトマウスでは、褐色脂肪細胞中のミトコンドリアにおける、ミトコンドリア複合体の発現量の増加も確認された(図16の(a)および(b))。とりわけ、複合体Iおよび複合体IVの発現量が顕著に増加していた。
(考察)
〔4〕および〔5〕の実験結果から、ChREBPと脂肪との関係が示唆される。ChREBPには、UCP1遺伝子の転写を抑制する機能があると考えられる。それゆえ、ChREBPノックアウトマウスでは、UCP1の発現量が増加する。その結果、ミトコンドリアでの脱共役が発生し、ミトコンドリアの機能がATPの合成ではなく熱産生に傾く。個体全体の観点からは、体組織中の脂肪量が減少する。このことから、ChREBPを阻害することにより、脂肪の減少効果が得られることが期待される。
本発明は、例えば、生活習慣病の処置に利用することができる。

Claims (8)

  1. ChREBPの機能を阻害する物質を有効成分として含む、スクロース吸収阻害剤。
  2. 上記有効成分は、ChREBPの核移行を阻害する物質である、請求項1に記載のスクロース吸収阻害剤。
  3. 上記有効成分は、以下の化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩である、請求項1または2に記載のスクロース吸収阻害剤。
  4. 以下の化合物(1)もしくはその誘導体、またはそれらの塩を有効成分として含む、ChREBP阻害剤。
  5. ChREBPの機能を阻害する物質を有効成分として含む、UCP1の機能促進剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤を含む、生活習慣病の処置用組成物。
  7. 採取された細胞に、被検物質を接触させる工程と、
    上記細胞におけるChREBPの機能阻害を検出する工程と、を含む、スクロース吸収阻害剤のスクリーニング方法。
  8. ChREBPの機能阻害を検出する手段を備えている、物質のスクロース吸収阻害能を評価するためのキット。
JP2018093097A 2017-12-07 2018-05-14 スクロース吸収阻害剤、ChREBP阻害剤およびその利用 Pending JP2019099550A (ja)

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