以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態にかかる光分配装置100の全体構成を模式的に示す斜視図である。光分配装置100は入射光L1を2つの出射光L2、及び出射光L4に分配するための光学系を備えている。具体的には、光分配装置100は、1/2波長板1と、シャッタ2と、ミラー3と、シャッタ4と、第1のグランテーラープリズム10と、第2のグランテーラープリズム20と、ミラー5と、集光レンズ6と、光検出器7と、を備えている。
なお、本実施の形態では、光分配装置100によって分配された2つの光が、第1の光学装置と第2の光学装置に使用される例について説明する。ここで、第1の光学装置に利用される用途を第1の用途とし、第2の光学装置に利用される用途を第2の用途とする。第1の光学装置、及び第2の光学装置は、例えば、光学顕微鏡等である。
光分配装置100には、レーザ光源(図示せず)からの入射光L1が供給される。入射光L1は、所定の方向に偏光した直線偏光となっている。また、入射光L1は平行光束となっている。入射光L1は、例えば、チタンサファイアレーザ等のレーザ光である。また、入射光L1は、フェムト秒レーザ光などのパルスレーザであってもよい。もちろん、入射光L1は、連続発振のCW(Continuous Wave)レーザ光であってもよい。光分配装置100に供給される光はレーザ光に限られるものではない。すなわち、レーザ光源以外の光源からの光を光分配装置100に供給してもよい。
入射光L1は、1/2波長板1に入射する。1/2波長板1は、回転可能に設けられている。1/2波長板1の回転軸は、1/2波長板1の表面と直交する中心軸と一致している。1/2波長板1の回転角度に応じて、入射光L1の偏光方向が変化する。すなわち、入射光L1は、1/2波長板1の回転角度に応じた偏光方向を有する直線偏光となる。
1/2波長板1を透過した入射光L1は、第1のグランテーラープリズム10に入射する。第1のグランテーラープリズム10は、異常光を透過し、常光を反射する。第1のグランテーラープリズム10は、入射光L1の偏光方向に応じた割合で、入射光L1を分岐する。1/2波長板1の回転角度を調整することにより、L1の偏光比が変化するため、光の分配割合を制御することができる。
このように、第1のグランテーラープリズム10は、光の偏光状態に応じて、光を分岐するビームスプリッタとなる。第1のグランテーラープリズム10の構成については後述する。第1のグランテーラープリズム10を透過した光を透過側の出射光L2とする。一方、第1のグランテーラープリズム10で反射した光を反射側の出射光L3とする。
シャッタ2は、フリップマウント等に搭載された可動シャッタである。シャッタ2は、出射光L2の光路に、挿脱可能に配置されている。出射光L2を利用する場合は、シャッタ2は、出射光L2の光路から取り除かれる。これにより、出射光L2が第1の光学装置に供給される。出射光L2を利用しない場合は、シャッタ2は、出射光L2の光路に挿入される。これにより、出射光L2を遮光することができる。なお、出射光L2を完全に遮光する必要がない場合、シャッタ2を省略することができる。
第1のグランテーラープリズム10からの出射光L3は、第2のグランテーラープリズム20に入射する。厳密には、反射側の出射光L3には常光だけではなく、一部の異常光も含まれる。したがって、反射側の出射光L3の消光比は、透過側の出射光L2の消光比よりも低くなる。このため、本実施の形態では、反射側の出射光L3の光路中に、第2のグランテーラープリズム20を配置している。反射側の出射光L3は、第2のグランテーラープリズム20に入射する。第2のグランテーラープリズム20は、反射側の出射光Lの消光比を高くするために配置されている。すなわち、反射側の出射光L3が第2のグランテーラープリズム20の異常光となるように、結晶方位が調整されている。これにより、出射光L3の異常光成分のみが、第2のグランテーラープリズム20を通過する。よって、不要な偏光成分を除去することができ、消光比を高くすることができる。
第2のグランテーラープリズム20を透過した出射光L4は、ミラー3で反射する。ミラー3は、出射光L4をシャッタ4の方向に反射する。シャッタ4は、フリップマウント等に搭載された可動シャッタである。シャッタ4は、出射光L4の光路中に、挿脱可能に配置されている。出射光L4を利用する場合は、シャッタ4は、出射光L4の光路から取り除かれる。これにより、出射光L4が第2の光学顕微鏡に供給される。出射光L4を利用しない場合は、シャッタ4は、出射光L4の光路に挿入される。これにより、出射光L4を遮光することができる。なお、出射光L4を完全に遮光する必要がない場合、シャッタ4を省略することができる
なお、シャッタ4を配置する位置は、ミラー3の後段に限られるものではない。例えば、第1のグランテーラープリズム10と第2のグランテーラープリズム20との間に、シャッタ4が配置されていてもよい。あるいは、ミラー3と第2のグランテーラープリズム20との間にシャッタ4が配置されていてもよい。
出射光L2と出射光L4とを同時に利用する場合、シャッタ2とシャッタ4とが光路中から取り除かれる。さらに、出射光L2と出射光L4との割合を変更する場合、1/2波長板1の回転角度を制御する。これにより、第1のグランテーラープリズム10に入射する直線偏光の方向が変わるため、第1のグランテーラープリズム10における透過光と反射光との割合を変更することができる。したがって、第1の用途と第2の用途とに供給する光を任意の割合とすることができる。
さらに、光分配装置100がシャッタ2、及びシャッタ4を備えているため、使用しない出射光を遮断することができる。よって、出射光L2、L4が1つの試料に対する透過照明と落射照明の用途に用いられる場合、試料に入射する迷光を低減することができる。
次に、グランテーラープリズムの構成について、図2、及び図3を用いて説明する。図2は、第1のグランテーラープリズム10の構成を示す図である。図3は、一般的なグランテーラープリズム310の構成を示す図である。なお、図3に示すグランテーラープリズム310は、第2のグランテーラープリズム20として用いられていてもよい。
第1のグランテーラープリズム10は、第1の結晶素子11と第2の結晶素子12とを備えている。第1の結晶素子11と第2の結晶素子12との間には、ギャップ18が設けられている。すなわち、第2の結晶素子12はギャップ18を隔てて、第1の結晶素子11に対向配置されている。ギャップ18はほぼ一定の間隔を有するエアギャップである。第1の結晶素子11と第2の結晶素子12とは図示しないホルダによって保持されている。また、入射光L1、出射光L2、及び出射光L3が通過するための窓がホルダに形成されている。
第1の結晶素子11は、例えば、方解石等の複屈折素子である。第1の結晶素子11の結晶方位は、図2の破線矢印に示すように、紙面内における上下方向となっている。図2では、第1の結晶素子11は、紙面と平行な上面及び底面を有する三角柱状になっている。第1の結晶素子11は、第1の面S1と、第2の面S2と、第3の面S3とを備えている。同様に、第2の結晶素子12は、紙面と平行な上面及び底面を有する三角柱状になっている。第2の結晶素子12は、第4の面S5と、第5の面S5と、第6の面S6とを備えている。第1の面S1〜第6の面S6は平面となっている。
第1の面S1は、1/2波長板1からの入射光L1が入射する入射面となる。第1の面S1は、入射光L1の光軸と直交する平面となっている。第1の面S1から第1の結晶素子11内に入射した入射光L1を入射光L1aとする。入射光L1aは、第1の結晶素子11内を伝搬する。
第2の面S2は、ギャップ18に面した平面となる。すなわち、第2の面S2は、ギャップ18と第1の結晶素子11との界面となっている。第2の面S2は、入射光L1aの光軸に対して傾いている。第1の結晶素子11は、エア(空気)よりも屈折率の高い材料により形成されている。第2の面S2に対する入射光L1aの入射角θ1は、常光に対する臨界角よりも大きくなっており、異常光に対する臨界角よりも小さくなっている。よって、第2の面S2において、常光成分が全反射し、異常光成分が透過する。
入射光L1aの常光成分は、第2の面S2で全反射して、反射光L1bとなる。図2に示すθ1とθ2は第2の面S2において、常光線の全反射角よりわずかに大きく、異常光線の全反射角より小さい。反射光L1bは、入射光L1aと異なる角度の光軸となって、第1の結晶素子11内を伝搬する。そして、反射光L1bは、第3の面S3に入射する。反射光L1bは、第3の面S3から第1の結晶素子11の外側に出射する。
第3の面S3と第1の面S1との成す角度は鈍角になっている。第2の面S2と第1の面S1との成す角度は鋭角になっている。第3の面S3は、反射光L1bの光軸と直交する平面となっている。光軸上の反射光L1bは、第3の面S3において屈折せずに、第1の結晶素子11の外側に出射する。第3の面S3は、反射光L1bが出射する出射面となる。第3の面S3から第1の結晶素子11の外側に出射した光が出射光L3となる。反射光L1bの光軸と出射光L3の光軸とが平行になっている。
一方、入射光L1aの異常光成分は、第2の面S2を透過して、透過光L1cとなる。透過光L1cはギャップ18を通過して、第4の面S4に入射する。第4の面S4は、ギャップ18に面した平面である。第4の面S4は、第2の面S2と平行になっている。そして、透過光L1cは、第4の面S4から第2の結晶素子12内に入射する。透過光L1cの光軸は、入射光L1aの光軸と平行となっている。第2の結晶素子12内を伝搬した透過光L1cは、第5の面S5に入射する。透過光L1cは、第5の面S5から、第2の結晶素子12の外側に出射する。第2の結晶素子12の外側に出射した透過光L1cが出射光L2となる。
図3に示す一般的なグランテーラープリズム310について、図2の第1のグランテーラープリズム10と対比して説明する.グランテーラープリズム310は、第1の結晶素子311、及び第2の結晶素子312を備えている。第1の結晶素子311は、第1の面S301、第2の面S302、及び第3の面S303を備えている。第2の結晶素子312は、第4の面S304、第5の面S305、及び第6の面S306を備えている。第1の結晶素子311と第2の結晶素子312との間には、ギャップ318が配置されている。
第2の結晶素子312の第4の面S304、第5の面S305、及び第6の面S306は、それぞれ第2の結晶素子12の第4の面S4、第5の面S5、及び第6の面S6と同様の構成となっている。第1の結晶素子311の第1の面S301、及び第2の面S302は、第1の結晶素子11の第1の面S1、第5の面S5、及び第6の面S6と同様の構成となっている。
第1の結晶素子311の第3の面S303の角度が、第1の結晶素子11の第3の面S3の角度と異なっている。具体的には、第1の結晶素子311の第1の面S301と第3の面S303との成す角度が直角となっている。第2の面S302で全反射した反射光L1bは、第3の面S303に入射する。反射光L1bの光軸は第3の面S303に対して直交していないため、第3の面S303で光が屈折する(図3の破線の丸A)。すなわち、反射光L1bの光軸と出射光L3の光軸とが異なる方向となっている。第3の面S303で光が屈折する場合、出射光L3に波長分散が生じる。したがって、波長に応じて出射光L3の入射位置がずれてしまう。特に、ブロードな波長のレーザ、例えば、フェムト秒レーザ光を入射光L1とした場合、屈折角に波長分散が生じてしまう。
本実施の形態では、第1のグランテーラープリズム10を用いているため、透過側の出射光L2の消光比を高くすることができる。さらに、反射面として誘電体多層膜を用いていないため、レーザ耐力が高い。よって、高パワーのレーザ光を入射光L1として用いることが可能となる。また、第3の面S3において、反射側の出射光L3が屈折しないため、屈折による色分散が生じない。したがって、光分配装置は、フェムト秒レーザ光などの短パルスレーザ光の分配に好適である。第1のグランテーラープリズム10を用いることで、適切に入射光L1を2つの出射光L2、L3に分配することができる。
なお、上記の説明では、出射光L2、及び出射光L4が異なる光学装置に使用される例について説明したが、出射光L2、及び出射光L4が同じ光学装置の異なる用途に使用されてもよい。例えば、出射光L2を光学顕微鏡の透過照明光として、出射光L4を落射照明光として供給することが可能である。光分配装置100が分配した2つの出射光が試料を上側から照明する落射照明光と、試料を下側から照明する透過照明光との2つの用途に使用される。試料を上側から照明する落射照明が第1の用途となり、試料を下側から照明する透過照明が第2の用途となる。
図1の説明に戻る。図1に示すように、光分配装置100は、パルスタイミングを検出するために、ミラー5、集光レンズ6,及び光検出器7を備えている。上記のように、1/2波長板1は、入射光L1の光軸に対して、わずかに傾いている。例えば、1/2波長板1の表面と入射光L1の光軸との成す角は、1°〜2°程度とすることができる。したがって、1/2波長板1の表面で反射した光(以下、検出光L5とする)は、ミラー5に入射する。よって、検出光L5の光軸は、入射光L1の光軸から傾いている。ミラー5は、入射光L1を遮らない位置に配置された小型ミラーである。
ミラー5で反射した検出光L5は、集光レンズ6で集光される。集光レンズ6は、検出光L5を光検出器7の受光面に集光する。光検出器7は、高速フォトダイオードなどであり、検出光L5を検出する。よって,光検出器7からの検出信号により、入射光L1のパルスタイミングを検出することができる。なお、パルスタイミングを検出する必要がない場合、ミラー5、集光レンズ6、光検出器7を省略することもできる。
本実施の形態では、1/2波長板1が入射光L1の光軸に対して傾いている。そして、入射光L1が入射しない位置にミラー5が配置されている。したがって、分配強度に影響を与えることなく、また影響を受けることもなく、パルスタイミングを検出することができる。
なお、入射光L1の光軸を1/2波長板1の中心軸からずらしてもよい。この場合、1/2波長板1を回転させると、1/2波長板1における入射光L1の入射位置が変化する。これにより、レーザ光による1/2波長板1の損傷が集中することを避けられる。
図2に示す構成の第1のグランテーラープリズム10を用いて、入射光L1を出射光L2と出射光L3に分岐する。これにより、1/2波長板1の角度を回転させることで、分配比率を変えることができる。また、反射側の出射光L3が、第3の面S3の界面において屈折しない。よって、波長分散を抑制することができ、高品質の光ビームを第2の光学顕微鏡に供給することができる。また、機械的な動作部分がシャッタ2、4と1/2波長板1のみであり、1/2波長板1は透過使用であるから平行度を高く保てば、位置精度の低下を防ぐことができる。さらに、反射面に誘電体多層膜が設けられていないため、高パワーの入射光L1を分配することが可能となる。このように、第1のグランテーラープリズム10を用いることで、適切に光を分配することができる。
第1のグランテーラープリズム10の反射側の消光比は、通常、透過側の消光比よりも低くなっている。第1のグランテーラープリズム10の反射側の出射光L3の光路中に、第2のグランテーラープリズム20を配置することで、反射側の出射光L4の消光比を高くすることができる。よって、所望の偏光成分のみの照明光で試料を照明することができる。
1つの光源からの入射光を任意の分配割合で2つの用途に用いることができる。例えば、高価な高出力レーザ光源を2つの用途に共用することが可能である。例えば、2台の光学顕微鏡で照明光源を共用したい場合、光分配装置100により光を2つの出射光に分配することができる。よって、それぞれの用途において、適切な光量で試料を照明することができる。もちろん、
光分配装置100の動作例について図4〜図9を用いて説明する。図4、図6、図8は、光分配装置100の構成を示す斜視図であり、図5、図7、図9は、光分配装置100の構成を示す上面図である。図5、図7、図9では、シャッタ2、4が省略されている。
なお、図4〜図9に示す光分配装置100では、図1の構成に加えて、ミラー9が追加されている。さらに、図4、図6、図8に示すように、光分配装置100は、各光学素子を移動させるための可動ステージ30を備えている。具体的には、可動ステージ30には、1/2波長板1、第1のグランテーラープリズム10、第2のグランテーラープリズム20、ミラー5、集光レンズ6、光検出器7、及びミラー9が固定されている。よって、可動ステージ30は、1/2波長板1、第1のグランテーラープリズム10、第2のグランテーラープリズム20、ミラー5、集光レンズ6、光検出器7、及びミラー9を水平に移動させる。
図4、及び図5は、レーザ光を第1の用途と第2の用途とに同時に使用する状態(以下、同時使用状態、又は第3の使用状態とする)を示している。図6、及び図7は、第1の用途のみに使用する状態(以下、第1の使用状態とする)を示している。図8、及び図9は、レーザ光を第2の用途のみに使用する状態(以下、第2の使用状態とする)を示している。可動ステージ30は、第1の使用状態と、第2の使用状態と、同時使用状態とを切替えるよう、第1のグランテーラープリズム10等を移動させる。
同時使用状態では、図4、図5に示すように、入射光L1は、1/2波長板1に入射する。そして、図1、図2で示したように、第1のグランテーラープリズム10によって、入射光L1が2つの出射光L2,L4に分配される。よって、出射光L2を第1の用途に、出射光L4を第2の用途に用いることができる。
可動ステージ30は、第1のグランテーラープリズム10のギャップ18の方向に沿って移動する。すなわち、可動ステージ30は、第2の面S2と平行な方向に直進移動する。なお、可動ステージ30によって、ミラー3は移動しない。
同時使用状態から第1の使用状態に切替える場合、可動ステージ30が第1のグランテーラープリズム10、及び第2のグランテーラープリズム20等を移動させる。これにより、第1のグランテーラープリズム10等が移動して、図6、及び図7に示すように、入射光L1が第1のグランテーラープリズム10に入射しないようになる。
具体的には、図6、及び図7に示すように、入射光L1が第1のグランテーラープリズム10と第2のグランテーラープリズム20との間を通る。よって、入射光L1が、第1のグランテーラープリズム10、及び第2のグランテーラープリズム20を通過せずに、光分配装置100から出射する(出射光L7)。よって、1/2波長板1、第1のグランテーラープリズム10、第2のグランテーラープリズム20による光の損失を避けることができる。よって、入射光L1の100%を第1の用途に用いることができる。
第2の使用状態とする場合、可動ステージ30が移動方向にさらに移動する。可動ステージ30が第1のグランテーラープリズム10、及び第2のグランテーラープリズム20等を移動させると、図8、及び図9に示すようになる。第2の使用状態では、入射光L1が第1のグランテーラープリズム10と第2のグランテーラープリズム20との間を通って、ミラー9に入射する。すなわち、ミラー9が入射光L1の光路中に配置されるように可動ステージ30が各素子を移動させる。ミラー9の反射面は、第2の面S2と平行になっている。すなわち、ミラー9の反射面は、可動ステージ30の移動方向と平行になっている。ミラー9は、入射光L1をミラー3の方向に反射する。ミラー9で反射した入射光L1はミラー3で反射され、出射光L6となる。
ミラー9で反射した出射光L6は、ミラー3に入射する。ミラー3で反射した出射光L6が第2の用途に使用される。よって、入射光L1が、第1のグランテーラープリズム10、及び第2のグランテーラープリズム20を通過せずに、光分配装置100から出射する。よって、1/2波長板1、第1のグランテーラープリズム10、第2のグランテーラープリズム20による光の損失を避けることができる。よって、入射光L1の100%を第2の用途に用いることができる。
一方、図1に示す構成では、出射光L2又は出射光L4のみを用いる場合であっても、第1のグランテーラープリズム10を透過又は反射した光を用いている。1/2波長板1、及第1のグランテーラープリズム10を通過した場合、光の損失が生じてしまう。例えば、無コーティング状態の方解石は、コーティングを施した方解石よりもレーザ耐性が高いが、無コーティング状態の方解石でのレーザ損失は10%となってしまう(非特許文献2)。このように、第1のグランテーラープリズム10、及び第2のグランテーラープリズム20等を移動する可動ステージを可動手段として用いることで、損失なく光を利用することが可能となる。
また、図4、及び図5に示す出射光L2と、図6、及び図7に示す出射光L7とは実質的に同じ位置を伝搬する。これにより、光学系の調整を経ずに、第1の使用状態と同時使用状態とを切替えることができる。よって、光学系の調整時間を短縮することができ、利便性を向上することができる。さらに、第1の使用状態では、100%を利用することができる。よって、光の利用効率を高くすることができ、高い光量での使用が可能となる。
同様に、図4、及び図5に示す出射光L2と、図8、及び図9に示す出射光L6は実質的に同じ位置を伝搬する。これにより、光学系の調整を経ずに、第2の使用状態と同時使用状態とを切替えることができる。よって、光学系の調整時間を短縮することができ、利便性を向上することができる。さらに、第2の使用状態では、100%を利用することができる。よって、光の利用効率を高くすることができ、高い光量での使用が可能となる。
さらに、可動ステージ30が、第1のグランテーラープリズム10を第2の面S2の方向に沿って移動させている。このため、可動ステージ30の位置精度が低い場合であっても、適切に光を利用することができる。すなわち、第1のグランテーラープリズム10の停止位置が移動方向に多少ずれていたとしても、同時使用状態における出射光L2、出射光L4の光路に影響はない。また、可動ステージ30がミラー9の反射面に沿って移動する。ミラー9の停止移動方向に多少ずれていたとしても、第2の使用状態における出射光L6の光路に影響はない。
図10に第1の結晶素子11と第2の結晶素子12として使用される方解石(カルサイト)の屈折率と臨界角を示す。図10では、常光の屈折率n(o)とその臨界角θcritical(o)、異常光の屈折率n(e)とその臨界角θcritical(e)が示されている。また、図10は、波長700nm〜1300nmにおけるデータを示している。図2のθ1=38°程度に設計しておけば、700nm〜1300nmの波長全体に対して、光分配装置100を用いることができる。よって、広帯域の光分配装置100を実現することができる。
なお、上記の説明では、入射光L1として直線偏光を用いているため、第1のグランテーラープリズム10の前段に1/2波長板1が配置されているが、第1のグランテーラープリズム10の前段に配置される光学素子は、1/2波長板1に限られるものではない。すなわち、第1のグランテーラープリズム10の前段に配置される光学素子は、入射光L1の偏光状態を変えることができるものであればよい。例えば、第1のグランテーラープリズム10の前段に回転可能に設けられた偏光子を配置してもよい。この場合、光源から光学素子に入射する光を無偏光(ランダム偏光)とする。偏光子を回転させることで、所望の方向を偏光方向する直線偏光を第1のグランテーラープリズム10に入射させることができる。偏光子の回転角度により、分配割合を調整することができる。
実施の形態2.
以下、本実施の形態2と実施の形態1との相違点を中心に説明する。本実施の形態では、エバネッセント波の結合に応じて、分配割合を変更している。本実施の形態にかかる光分配装置の基本的な概念について、図11、及び図12を用い説明する。図11、図12は、分配割合を変えるための基本的な概念を説明するための図である。具体的には、図11は、反射側の出射光L3を利用する場合の構成を示し、図12は、透過側の出射光L2を利用する場合の構成を示している。
光分配装置110は第1のプリズム素子111と第2のプリズム素子112とを備えている。第1のプリズム素子111、及び第2のプリズム素子112は、光学的異方性の無い媒体で形成されている。例えば、第1のプリズム素子111、及び第2のプリズム素子112は、溶融石英によって形成されている。なお、本実施の形態にかかる光分配装置110では、偏光に基づいて光を分配していないため、実施の形態1で示した1/2波長板1は不要である。
第1のプリズム素子111は、第1の面S101と、第2の面S102と、第3面S103とを備えている。第2のプリズム素子112は、第4の面S104と第5の面S105と第6の面S106とを備えている。第1の面S101は、入射光L1の入射面となる。第2の面S102は、ギャップ118に面した平面となる。第3の面S103は、出射光L3が出射する出射面となる。
第4の面S104は、ギャップ118に面した平面となる。第4の面S104は、第2の面S102を透過した透過光L1cが入射する入射面となる。第5の面S105は出射光L2が出射する出射面となる。第1の面S101〜第6の面S106は、図3の第1の面S301〜S306とほぼ同様の構成となっている。
第1のプリズム素子111と第2のプリズム素子112との間にはギャップ118が存在している。すなわち、第2の面S102と第4の面S104とはギャップ118を隔てて対向配置されている。なお、図11、図12ではギャップ118の幅が異なっている。具体的には、図12では、ギャップ118の間隔が入射光L1の波長λよりも大きくなっている。図11ではギャップ118の間隔が(λ/100)よりも小さくなっている。
エバネッセント波は、全反射をしている第2の面S102の外側、すなわち屈折率の小さい媒質(ここでは空気)中に、光がしみ出し、境界面に沿って伝わる。第2の面S102の外側に光の波長程度の間隔を置いて屈折率の高い媒質(第2のプリズム素子112)を置くことで、エバネッセント波を介して光は透過し、境界面(第2の面S102)での反射は全反射でなくなる。ここで、屈折率の小さい媒質の間隔(つまり、ギャップ118の間隔)を調整することで、第2の面S102で全反射する反射光と、第2の面S102を透過する透過光の割合を変更することができる。
図11に示すように、ギャップ118の間隔を波長λよりも大きくすると、入射光L1aが面S102で全反射する。よって、入射光L1aのほぼ全てが全反射して、反射光L1bとなる。図12に示すように、ギャップ118の間隔を(λ/100)よりも小さくと、入射光L1aが全反射せずに第2の面S102を透過する。よって、入射光L1aのほぼ全てが透過光L1cとなる。ギャップ118の幅を高精度で制御することにより、透過光と反射光との割合を変更することができる。
例えば、図13に示すように、第2のプリズム素子112にアクチュエータ120を取り付ける。アクチュエータ120は、例えば、圧電素子などであり、第2のプリズム素子112を移動させる。アクチュエータ120は、第2のプリズム素子112を第1のプリズム素子111に近接離間させている。これにより、ギャップ118の間隔が変化する。
アクチュエータ120が、第2のプリズム素子112に近づけるように第1のプリズム素子111を移動する。これにより、ギャップ118が小さくなり、透過光L1cの割合が高くなっていく。また、アクチュエータ120が、第2のプリズム素子112から遠ざけるように第1のプリズム素子111を移動する。これにより、ギャップ118が大きくなり、反射光L1bの割合が高くなっていく。アクチュエータ120がギャップ118の間隔を変えることで、出射光L2と出射光L3との分配割合を調整することができる。
また、アクチュエータ120が第2のプリズム素子112のみを移動させている。すなわち、第1のプリズム素子111が固定されている。よって、反射側の出射光L3の光軸を変えずに、分配割合を変化させることが可能となる。アクチュエータ120が第2のプリズム素子112のみを移動させることで、反射側の出射光L3の光軸を一定にすることができる。また、方解石のような複屈折素子を用いていないため、部品コストを抑制することができる。
もちろん、アクチュエータ120が第2のプリズム素子112の代わりに、第1のプリズム素子111を移動させてもよい。アクチュエータ120は、第1のプリズム素子111、及び第2のプリズム素子112の両方を移動させてもよい。アクチュエータ120は、入射光L1aの入射位置におけるギャップの間隔を変更するように、第1のプリズム素子111、及び第2のプリズム素子112の少なくとも一方を移動させるものであればよい。
さらに、本実施の形態では、図14に示す構成を用いることができる。図14に示す構成はギャップ118の間隔を精度よく調整することができる。
図14に示す構成では、ギャップ118の間隔が一定となっていない。すなわち、第2の面S102と第4の面S104とが平行になっていない。具体的には、ギャップ118の一端から他端に向かうにつれて、ギャップ118の間隔が徐々に広くなっていく。図14中の左下側の端でギャップ118が最も狭くなっており、右上側の端でギャップ118が最も広くなっている。よって、第2の面S102の位置に応じて、ギャップ118の間隔が変わる。
アクチュエータ120が第2の面S102に沿って、光分配装置100を移動させる。このようにすることで、第2の面S102における入射光L1aの位置が異なっていくアクチュエータ120が第2の面S102に沿って、光分配装置100を移動させる。
このようにすることで、第2の面S102における入射光L1aの入射位置が変化する。アクチュエータ120は、第2の面S102における入射光L1aの入射位置を移動する。このようにすることで、第2の面S102では、入射光L1aの入射位置におけるギャップ118の間隔が変化する。
この構成によれば、エバネッセント波の結合割合を変えることができるため、光の分配割合を変更することができる。さらに、第2の面S2と第4の面S4とを非平行とするとともに、アクチュエータ120が第2の面S2に沿って、第1のプリズム素子111と第2のプリズム素子112とを移動している。精度の低いアクチュエータ120を用いた場合でも、高い精度でギャップ118の間隔を調整することが可能となる。
例えば、第1のプリズム素子111と第2のプリズム素子112とのサイズが20mm程度であり、ギャップの118の間隔の差が300nmであるとする。この場合、第1のプリズム素子111及び第2のプリズム素子112の移動距離20mmに対して、ギャップ118の間隔が300nm調整することができる。よって、図13に示したように、第1のプリズム素子111と第2のプリズム素子112の一方を近づけたり、遠ざけたりするアクチュエータ120よりも位置調整を容易に行うことができる。また、図14に示す構成では第1のプリズム素子111と第2のプリズム素子112をホルダなどで固定できるため、光路調整が容易になる。
なお、実施の形態2と実施の形態1とを組み合わせることが可能である。例えば、第3の面S103が反射光L1bと直交するような平面となっていてもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。