JP2019073765A - Al−Fe−Ca系アルミニウム合金、アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

Al−Fe−Ca系アルミニウム合金、アルミニウム合金板及びその製造方法 Download PDF

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【課題】高い冷間加工度での成形性に優れたAl−Fe−Ca系アルミニウム合金、このアルミニウム合金から構成されたアルミニウム合金板及びその製造方法を提供する。【解決手段】Al−Fe−Ca系アルミニウム合金は、Fe:0.80〜2.0質量%、Ca:0.010〜1.0質量%、Si:0.0050〜0.10質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物から構成されている。Al−Fe−Ca系アルミニウム合金からアルミニウム合金板を作製するに当たっては、まず、前記特定の化学成分を備えた鋳塊を準備する。この鋳塊に均質化処理および熱間圧延を施して熱延板を作製した後、熱延板に80%以上の圧下率で冷間圧延を施すことによりアルミニウム合金板を得ることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、Al−Fe−Ca系アルミニウム合金、このアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
アルミニウム材(アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。以下同じ。)を最終製品の形状に成形する際には、通常、冷間加工が施される。例えば、Al−Fe(アルミニウム−鉄)系アルミニウム合金は、Fe含有量が比較的低い場合に、冷間加工度を高くするほど強度が高くなる性質を有している。そのため、冷間加工度を高くすることにより、最終製品の強度を高くすることができる。
しかし、Al−Fe系アルミニウム合金の冷間加工度を高くすると、強度が高くなる一方で延性が低下し、成形性の悪化を招くという問題がある。そのため、Al−Fe系アルミニウム合金を最終製品の形状に成形する過程においては、通常、焼鈍等の熱処理を施して組織を回復させ、あるいは再結晶させることにより、Al−Fe系アルミニウム合金の成形性を回復させている(例えば、特許文献1)。
特開2017−128758号公報
前述したように、Al−Fe系アルミニウム合金を最終製品の形状に成形する過程においては、加工途中で焼鈍等の熱処理を施して組織を回復させる必要がある。しかし、熱処理を行う場合には、Al−Fe系アルミニウム合金の加熱を比較的長い時間に亘って行う必要があるため、製造コストの増大が避けられない。そのため、焼鈍等の熱処理によらず、冷間加工度を高くした場合にAl−Fe系アルミニウム合金の成形性を向上させる技術が求められている。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、高い冷間加工度での成形性に優れたAl−Fe−Ca系アルミニウム合金、このアルミニウム合金から構成されたアルミニウム合金板及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、Fe(鉄):0.80〜2.0質量%、Ca(カルシウム):0.010〜1.0質量%、Si(ケイ素):0.0050〜0.10質量%を含有し、残部がAl(アルミニウム)及び不可避的不純物からなる、Al−Fe−Ca系アルミニウム合金にある。
本発明の他の態様は、前記の態様のAl−Fe−Ca系アルミニウム合金からなり、冷間加工組織を備えたアルミニウム合金板であって、
更に冷間加工を施した場合に引張強さが低下する特性を有する、
アルミニウム合金板にある。
本発明の更に他の態様は、前記の態様のアルミニウム合金板の製造方法であって、
Fe:0.80〜2.0質量%、Ca:0.010〜1.0質量%、Si:0.0050〜0.10質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる鋳塊を準備し、
前記鋳塊に熱間圧延を施して熱延板を作製し、
前記熱延板に80%以上の圧下率で冷間圧延を施す、
アルミニウム合金板の製造方法にある。
前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金は、前記特定の範囲のFe、Ca及びSiを含んでいる。これにより、冷間加工度がある程度以上になった場合に、更に冷間加工を行うことによりAl−Fe−Ca系アルミニウム合金の強度が低下する、いわゆる加工軟化現象を発現することができる。
従来の成分範囲を有するAl−Fe系アルミニウム合金は、加工軟化現象を発現しないか、または、加工軟化現象を発現したとしても加工軟化による強度の低下量が小さい。そのため、加工軟化現象を利用してAl−Fe系アルミニウム合金の成形性を向上させることは困難であった。
これに対し、前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金は、Feに加えて、Feと同様に加工軟化現象を発現させる作用を有するCaを含んでいる。そして、Feの含有量とCaの含有量とを前記特定の範囲とすることにより、FeとCaとを相乗的に作用させ、Feを単独で添加した場合及びCaを単独で添加した場合に比べて加工軟化による強度の低下量を格段に大きくすることができる。その結果、高い冷間加工度での成形性に優れた前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金を得ることができる。
また、前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金からアルミニウム合金板を作製するに当たっては、例えば、前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金の鋳塊に均質化処理および熱間圧延を施した後、圧下率80%以上の冷間圧延を施せばよい。前記熱延板に圧下率80%以上の冷間圧延を施すことにより、前記アルミニウム合金板の冷間加工度を十分に高めることができる。それ故、かかる製造方法により作製された前記アルミニウム合金板は、最終製品の形状へ成形するための冷間加工を施す際に加工軟化現象を発現し、当該冷間加工における加工性を向上することができる。
このように、前記アルミニウム合金板は、焼鈍等の熱処理によらず、最終製品の形状へ成形する際の成形性を向上することができる。
実施例における、縦軸に引張強さ及び耐力を取った場合の加工硬化曲線を示す説明図である。 実施例における、縦軸に伸びを取った場合の加工硬化曲線を示す説明図である。
前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金における化学成分の限定理由を以下に説明する。
・Fe(鉄):0.80〜2.0質量%
Feは、比較的冷間加工度が低い場合には加工硬化を促進する作用を有し、比較的冷間加工度が高い場合には加工軟化を促進する作用を有している。通常、Feの一部はAl母相中に固溶している。また、Feの残部はAl−Fe−Si系化合物やAl−Fe系化合物等からなる第二相粒子としてAl母相中に分散している。いずれの形態のFeも、比較的冷間加工度が低い場合には、冷間加工によって生じた転位を捕捉することにより転位の運動を妨げることができる。このように、比較的冷間加工度が低い場合には、Feによって転位の運動が妨げられるため、加工硬化が促進される。
一方、冷間加工度が高くなると、Al−Fe系化合物等の第二相粒子とAl母相との界面における転位密度が高くなる。この界面における転位密度がある閾値を超えると、転位を捕捉することができなくなり、かえって第二相粒子とAl母相との界面において転位が消失するようになる。それ故、比較的冷間加工度が高い場合には、第二相粒子とAl母相との界面において転位が消失するため、加工軟化が促進される。
Feの含有量を前記特定の範囲とすることにより、加工軟化によるAl−Fe−Ca系アルミニウム合金の強度の低下量を十分に大きくすることができる。その結果、高い冷間加工度において優れた成形性を有するAl−Fe−Ca系アルミニウム合金を得ることができる。Al−Fe−Ca系アルミニウム合金中に十分な量の前記第二相粒子を形成し、成形性をより向上させる観点からは、Feの含有量を1.0質量以上とすることが好ましい。
Feの含有量が0.80質量%未満の場合には、Al−Fe−Ca系アルミニウム合金中に存在する前記第二相粒子の数が不足するため、加工軟化による強度の低下量が小さくなり、場合によっては加工軟化現象が発現しなくなるおそれもある。Feの含有量が2.0質量%を超える場合には、Al母相中に粗大なAl−Fe系化合物が析出しやすくなる。そして、粗大なAl−Fe系化合物が破断の起点となり、冷間加工を施した際の成形性の低下を招くおそれがある。
・Ca(カルシウム):0.010〜1.0質量%
Caは、Al母相中に固溶しているFe等の固溶原子の析出を促進し、Al母相のAl純度を高くする作用を有している。Al母相のAl純度が高くなると、再結晶温度が低下するため、冷間加工によって集積された転位を駆動力として、組織の回復や再結晶が促進される。その結果、加工軟化を促進することができる。
Caの含有量を前記特定の範囲とすることにより、加工軟化によるAl−Fe−Ca系アルミニウム合金の強度の低下量を十分に大きくすることができる。その結果、高い冷間加工度において優れた成形性を有するAl−Fe−Ca系アルミニウム合金を得ることができる。
Caの含有量が0.010質量%未満の場合には、Al母相中の固溶原子を析出させる効果が低下する。その結果、加工軟化による強度の低下量が小さくなり、場合によっては加工軟化現象が発現しなくなるおそれもある。Caの含有量が1.0質量%を超える場合には、Al母相からのFeの析出が促進され、Al母相中に粗大なAl−Fe系化合物を形成しやすくなる。そして、粗大なAl−Fe系化合物が破断の起点となり、冷間加工を施した際の成形性の低下を招くおそれがある。
・Si(ケイ素):0.0050〜0.10質量%
Siは、Feと同様に、Al母相中に固溶している固溶原子、または、Al−Fe−Si系化合物等の第二相粒子のいずれかの形態で存在している。いずれの形態のSiも、冷間加工によって生じた転位を捕捉することにより転位の運動を妨げ、加工硬化を促進する作用を有している。
Siの含有量を前記特定の範囲とすることにより、前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金に加工軟化現象を発現させることができる。Siの含有量が0.10質量%を超える場合には、Siによる加工硬化が促進されるため、加工軟化による強度の低下量が小さくなるおそれがある。また、場合によっては加工軟化現象が発現しなくなるおそれもある。Siによる加工硬化をより効果的に抑制する観点からは、Siの含有量を0.040質量%以下とすることが好ましい。
なお、Al−Fe−Ca系アルミニウム合金に加工軟化現象を発現させるためには、Siの含有量は、0.10質量%以下であればよい。しかし、Si:0.0050質量%未満のAl−Fe−Ca系アルミニウム合金を作製する場合には、Al純度の高い母合金を用いてAl−Fe−Ca系アルミニウム合金を作製する必要がある。そのため、材料コストの増大を招くおそれがある。Siの含有量を0.0050質量%以上とすることにより、材料コストの増大を回避することができる。
・その他の元素
前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金中には、必須成分としてのFe及びCaの他に、例えば、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Mg(マグネシウム)、Cr(クロム)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)等の元素が含まれ得る。これらの元素は、いずれも転位の運動を妨げ、加工硬化を促進する作用を有している。そのため、これらの元素の含有量が過度に多くなると、加工軟化による強度の低下量が小さくなり、場合によっては加工軟化現象が発現しなくなるおそれもある。かかる問題を回避する観点から、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Tiの含有量は、それぞれ0.050質量%以下であることが好ましい。
・加工軟化特性
前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金は、前記特定の範囲の化学成分を有することにより、加工軟化現象を発現することができる。前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金は、冷間加工度が0〜80%の範囲内における引張強さの最大値をσB maxとし、冷間加工度が80%超え100%未満の範囲内における引張強さの最小値をσB minとした場合に、σB max>σB minの関係を満たしていることが好ましい。
この場合には、例えば、前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金に予め80%程度の冷間加工度で冷間加工を施しておき、当該Al−Fe−Ca系アルミニウム合金に最終製品の形状に成形するための冷間加工を施すことにより、最終製品の形状に成形する過程で加工軟化現象を発現させることができる。これにより、焼鈍等によらず、最終製品の形状へ成形する際のAl−Fe−Ca系アルミニウム合金の成形性を向上させることができる。
冷間加工度80%以上の領域における加工軟化の程度は、例えば、(σB max−σB min)/σB minの値に基づいて評価することができる。すなわち、加工軟化現象が発現している場合には、冷間加工度80%以上の領域における引張強さの最小値σB minが冷間加工度80%未満の領域における引張強さの最大値σB maxよりも小さくなる。その結果、(σB max−σB min)/σB minの値が0よりも大きくなる。また、加工軟化による強度の低下量が大きくなるほど、(σB max−σB min)/σB minの値が大きくなる。
(σB max−σB min)/σB minの値は、0.2以上であることがより好ましい。前述したように、(σB max−σB min)/σB minの値が大きいAl−Fe−Ca系アルミニウム合金は、加工軟化現象がより顕著に発現するため、成形性に優れている。(σB max−σB min)/σB minの値を0.2以上とすることにより、加工軟化現象による強度の低下量をより大きくし、最終製品の形状へ成形する際のAl−Fe−Ca系アルミニウム合金の成形性をより向上させることができる。
ここで、冷間加工度とは、冷間加工前におけるAl−Fe−Ca系アルミニウム合金の断面積を100%とした場合の、冷間加工後におけるAl−Fe−Ca系アルミニウム合金の断面積の減少率をいう。例えば、Al−Fe−Ca系アルミニウム合金に冷間加工としての冷間圧延を施す場合には、冷間圧延による板厚の減少量を冷間圧延前の板厚で除した後、100倍した値が冷間加工度(%)となる。
前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金からアルミニウム合金板を製造するに当たっては、例えば、前記特定の化学成分を有する鋳塊を作製した後、当該鋳塊に均質化処理、熱間圧延及び冷間圧延を施せばよい。
前記鋳塊は、連続鋳造や半連続鋳造等の公知の方法により作製することができる。均質化処理においては、例えば、鋳塊を450〜600℃の温度まで加熱したのち、当該温度を1〜10時間保持する条件を採用することができる。
鋳塊に均質化処理を施した後、鋳塊に熱間圧延を施して熱延板を作製する。熱間圧延における圧延時の鋳塊の温度は、例えば、200〜450℃とすることができる。熱間圧延時の鋳塊の温度が200℃未満の場合には、圧延抵抗が高くなり、圧延中に鋳塊の割れが生じるおそれがある。一方、熱間圧延時の鋳塊の温度が450℃を超える場合には、結晶粒が粗大となり、板表面にスジ状の模様が生じる等の外観不良の発生を招くおそれがある。
熱間圧延を行った後、必要に応じて、熱延板を250〜350℃の温度に1〜5時間保持する中間焼鈍を行ってもよい。なお、中間焼鈍を省略することも可能である。
以上により得られた熱延板に、80%以上の圧下率で冷間圧延を施すことにより、直ちに加工軟化現象を発現可能なアルミニウム合金板を得ることができる。冷間圧延における圧下率が80%未満の場合には、冷間圧延によって集積された転位の密度が不足する。そのため、得られるアルミニウム合金板に更に冷間加工を施した場合に組織の回復や再結晶を起こすための駆動力が不足し、加工軟化現象が直ちに発現しなくなるおそれがある。
前記製造方法によって得られたアルミニウム合金板は、前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金からなるとともに、冷間加工組織を備えている。また、前記アルミニウム合金板は、更に冷間加工を施した場合に加工軟化現象を発現し、引張強さが低下する特性を有している。
前記アルミニウム合金板には、前述したように、冷間圧延によって十分に転位が集積されている。そのため、前記アルミニウム合金板に更に冷間加工を施した場合に、組織の回復や再結晶が起こりやすい。それ故、前記アルミニウム合金板は、更なる冷間加工によって直ちに加工軟化現象を発現することができ、最終製品の形状に成形する際の成形性に優れている。
前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金、このアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板及びその製造方法の実施例を、以下に説明する。なお、本発明に係るAl−Fe−Ca系アルミニウム合金、アルミニウム合金板及びその製造方法の態様は、実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
本例においては、まず、半連続鋳造法により、表1に示す化学成分を有するアルミニウム合金のスラブを作製した。なお、表1には記載していないが、スラブ中には、Fe、Si及びCaの他に、0.050質量%未満の不可避的不純物が含まれており、残部はAlから構成されている。
得られたスラブを500℃の温度に8時間保持して均質化処理を行った。次いで、スラブの温度が200〜450℃の範囲内にある状態で熱間圧延を施し、板厚3mmの熱延板を作製した。
次いで、熱延板を300℃の温度に3時間保持して中間焼鈍を行った。その後、熱延板に複数パスの冷間圧延を施し、板厚0.15mmのアルミニウム合金板(表1、試験材1〜8)を得た。なお、試験材2〜4及び試験材6〜8については、冷間圧延の途中において、板厚0.60mmの冷延板及び板厚0.30mmの冷延板を採取し、後述する引張試験に供した。また、試験材1及び試験材5については、板厚0.60mm及び板厚0.30mmの冷延板に加えて、これら以外の板厚を有する複数の冷延板を採取し、後述する引張試験に供した。
以上により得られた試験材の冷間加工度は、以下の式により算出することができる。
冷間加工度[%]=(中間焼鈍後の板厚[mm]−試験材の板厚[mm])/中間焼鈍後の板厚[mm]×100
本例における試験材の冷間加工度は95%である。
また、冷延板の冷間加工度も、前述した試験材の冷間加工度と同様にして算出することができる。例えば、板厚0.60mmの冷延板の冷間加工度は80%であり、板厚0.30mmの冷延板の冷間加工度は90%である。
以上により得られた試験材及び冷延板から、圧延方向と長手方向とが平行になるようにしてJIS Z2241に規定する5号試験片を採取した。そして、JIS Z2241の規定に準じた方法により、引張試験を実施した。試験材及び冷延板の引張強さは、表1に示した通りであった。
本例においては、この引張試験の結果に基づいて、加工軟化現象を発現しているか否かの判定を行った。具体的には、まず、引張試験により、板厚0.60mmの冷延板の引張強さσB 80[MPa]、板厚0.30mmの冷延板の引張強さσB 90[MPa]、板厚0.15mmの冷延板の引張強さσB 95[MPa]を測定した。そして、σB 80をσB maxとし、σB 90及びσB 95のうち値の小さい方の引張強さをσB minとして、(σB max−σB min)/σB minの値を計算した。これにより得られた(σB max−σB min)/σB minの値が0.2以上の場合には、加工軟化現象を十分に発現していると判断し、表1中の「判定」欄に記号「A」を記載した。また、(σB max−σB min)/σB minの値が0以上0.2未満の場合には加工軟化が不十分であると判断し、同欄に記号「B」を記載した。そして、(σB max−σB min)/σB minの値が0未満であった場合には加工軟化現象を発現していないと判断し、同欄に記号「C」を記載した。
Figure 2019073765
表1に示したように、試験材1〜4は、前記特定の化学成分を有するAl−Fe−Ca系アルミニウム合金から構成されているため、加工軟化現象が十分に発現し、加工軟化による強度の低下量を大きくすることができた。
これに対し、試験材5には、Caが添加されていないため、加工軟化による強度の低下量が小さくなった。
試験材6のSiの含有量は前記特定の範囲よりも多かったため、加工軟化現象が発現せず、冷間加工度80%以上の領域において強度が低下しなかった。
試験材7のFeの含有量は前記特定の範囲よりも少なかったため、加工軟化現象が発現せず、冷間加工度80%以上の領域において強度が低下しなかった。
試験材8のFeの含有量は前記特定の範囲よりも少なかった。また、試験材8のSiの含有量は前記特定の範囲よりも多かった。これらの結果、それ故、試験材8については、加工軟化現象が発現せず、冷間加工度80%以上の領域において強度が低下しなかった。
加工軟化の程度について更に詳細な評価を行うため、試験材1及び試験材5の引張試験結果に基づいて、図1及び図2に示す加工硬化曲線を作成した。なお、図1の横軸は冷間加工度(%)であり、縦軸は引張強さ(MPa)または耐力(MPa)である。また、図2の横軸は冷間加工度(%)であり、縦軸は伸び(%)である。
前記特定の範囲の化学成分を備えた試験材1は、図1に示すように、冷間加工度が0〜80%の範囲内において、冷間加工度が高くなるほど引張強さ及び耐力が増加する傾向を示した。また、試験材1は、図2に示すように、冷間加工度が0〜40%の範囲内において冷間加工度が高くなるほど伸びが低下する傾向を示し、40〜80%の範囲内において伸びが概ね一定となった。これらの結果から、試験材1については、冷間加工度が0〜80%の範囲内において加工硬化が起きていることが理解できる。
また、試験材1の冷間加工度が80%を超えると、図1に示したように、引張強さ及び耐力が急激に減少するとともに、図2に示したように伸びが急激に増加した。これらの結果から、試験材1については、冷間加工度が80%を超える範囲内において加工軟化が起きていることが理解できる。
これに対し、試験材5については、図1に示すように、冷間加工度が80%を超えても引張強さ及び耐力が減少せず、冷間加工度が93〜95%の範囲内において引張強さ及び耐力がわずかに減少した。また、試験材5については、図2に示すように、冷間加工度が0〜40%の範囲内において冷間加工度が高くなるほど伸びが低下し、40%を超える範囲内において伸びが概ね一定となった。これらの結果から、試験材5については、加工軟化がほとんど起きておらず、加工軟化による強度の低下量も小さいことが理解できる。
以上のように、Fe、Ca及びSiの含有量が前記特定の範囲内であるAl−Fe−Ca系アルミニウム合金は、冷間加工度がある程度以上になった場合に、加工軟化現象を発現することができる。また、Feの含有量とCaの含有量とを前記特定の範囲とすることにより、FeとCaとを相乗的に作用させ、Feを単独で添加した場合及びCaを単独で添加した場合に比べて加工軟化による強度の低下量を格段に大きくすることができる。その結果、高い冷間加工度での成形性に優れた前記Al−Fe−Ca系アルミニウム合金を得ることができる。

Claims (5)

  1. Fe:0.80〜2.0質量%、Ca:0.010〜1.0質量%、Si:0.0050〜0.10質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる、Al−Fe−Ca系アルミニウム合金。
  2. 冷間加工度が0〜80%の範囲内における引張強さの最大値をσB maxとし、冷間加工度が80%超え100%未満の範囲内における引張強さの最小値をσB minとした場合に、σB max>σB minの関係を満たす、請求項1に記載のAl−Fe−Ca系アルミニウム合金。
  3. 冷間加工度が0〜80%の範囲内における引張強さの最大値をσB maxとし、冷間加工度が80%超え100%未満の範囲内における引張強さの最小値をσB minとした場合に、(σB max−σB min)/σB minの値が0.2以上である、請求項2に記載のAl−Fe−Ca系アルミニウム合金。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のAl−Fe−Ca系アルミニウム合金からなり、冷間加工組織を備えたアルミニウム合金板であって、
    更に冷間加工を施した場合に引張強さが低下する特性を有する、
    アルミニウム合金板。
  5. 請求項4に記載のアルミニウム合金板の製造方法であって、
    Fe:0.80〜2.0質量%、Ca:0.010〜1.0質量%、Si:0.0050〜0.10質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる鋳塊を準備し、
    前記鋳塊に均質化処理および熱間圧延を施して熱延板を作製し、
    前記熱延板に80%以上の圧下率で冷間圧延を施す、
    アルミニウム合金板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023176679A1 (ja) * 2022-03-18 2023-09-21 東洋アルミニウム株式会社 アルミニウム合金箔、及びその製造方法

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