JP2019073754A - 熱処理鋼板の製造方法及び鋼板冷却装置 - Google Patents

熱処理鋼板の製造方法及び鋼板冷却装置 Download PDF

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Abstract

【課題】熱処理時における鋼板の変形を十分に抑制することが可能な熱処理鋼板の製造方法、及び、鋼板冷却装置を提供する。【解決手段】加熱された鋼板Wを搬送し、通過する冷却帯で冷却を行う冷却工程を備えた熱処理鋼板の製造方法であって、前記冷却工程では、鋼板Wが所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を150℃/m以下として冷却を実施する。このとき、鋼板Wの通板速度及び冷却帯の冷却能力のいずれか一方または両方を制御することが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、加熱された鋼板を搬送しながら冷却を行うことにより、所定の材質特性を有する熱処理鋼板を製造する熱処理鋼板の製造方法、及び、この熱処理鋼板の製造方法に適した鋼板冷却装置に関するものである。
上述の熱処理鋼板は、鋼板を加熱した後、所定の冷却速度で冷却することによって製造されることになる。例えば、ある炭素鋼板を900℃程度に加熱し、適正な冷却速度(例えば50℃/sec以上)で冷却すれば、所望されるマルテンサイト組織を有する高強度の熱処理鋼板を得ることが可能となる。
ここで、鋼板(特に厚さ3mm以上の厚鋼板)の熱処理には、非特許文献1、2に開示されている熱処理設備が用いられている。この非特許文献1,2においては、加熱炉で鋼板を加熱し、ローラクエンチ装置によって鋼板の冷却を行う構成とされている。
ローラクエンチ装置は、加熱炉において所定の温度にまで加熱された鋼板を、複数対のローラで挟持して拘束するとともに搬送し、スプレー等から噴射される冷却水によって鋼板を急速冷却する装置である。このローラクエンチ装置においては、加熱炉側に配置されたHiQ帯と、このHiQ帯の後段側に配設されたLoQ帯と、を備えており、HiQ帯では、多量の冷却水を高圧で噴射して強冷却を行い、LoQ帯では、比較的少量の冷却水を噴射して弱冷却を行う構成とされている。
ここで、ローラクエンチ装置等によって鋼板を冷却した場合には、熱歪みによって鋼板が変形し、耳波や中波が発生することがある。特に、厚さ12mm以下の鋼板では、鋼板自体の剛性が不足することから、高温時に熱歪みによって座屈変形しやすい。
また、非特許文献1に開示された熱処理設備においては、ローラクエンチ装置の後段側に、ローラレベラ装置を配置し、鋼板の形状を矯正している。しかしながら、上述のようなマルテンサイト組織からなる高強度の熱処理鋼板等においては、形状矯正を効率的に行うことができなかった。また、板厚が薄いものでは、十分に形状矯正を行うことができないといった問題があった。
そこで、特許文献1には、ローラクエンチ装置において、鋼板の通板速度、鋼板の押し付け力またはロール締込み量を規定することによって、熱処理後の鋼板の変形防止を図る方法が提案されている。
特開2008−231476号公報
片岡ら;日本ステンレス技報,No.18(1983),p.153−162 竹内ら;石川島播磨技報,第22巻第4号(1982),245−249
ところで、特許文献1においては、鋼板の厚さに応じて鋼板の通板速度を規定しているが、鋼板の通板速度のみを規定しても冷却時における鋼板の変形を抑制することは不可能であった。また、ロールの締め込み量を規定しているが、締め込んだ状態で冷却開始直後に鋼板が変形した場合には、ロール締め込みによって変形を防止及び矯正することはできなかった。
このように、従来のローラクエンチ装置等を用いて鋼板を冷却した場合には、鋼板の変形を十分に抑制することはできなかった。
また、従来は、冷却時の鋼板の変形を抑制するためには、鋼板の幅方向の温度分布を均一化することが重要であると考えられており、種々の対策が提案されているが、鋼板の変形を十分に抑制することはできなかった。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、熱処理時における鋼板の変形を十分に抑制することが可能な熱処理鋼板の製造方法、及び、鋼板冷却装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが、鋭意研究した結果、鋼板の幅方向における温度分布を均一にした場合であっても、鋼板の通板方向に一定以上の温度勾配が生じると、鋼板に変形が生じるとの知見を得た。詳述すると、図1に示すように、鋼板の通板方向では温度勾配が生じるので、熱収縮によって低温側の鋼板の幅が小さくなる。このとき、鋼板の幅端部では通板方向に大きな熱歪みが発生し、幅中央部では幅方向に大きな熱歪みが発生する。すなわち、鋼板の幅端部では熱収縮しながらも斜めに引っ張られるため通板方向に伸ばされ、この伸ばされた分が冷却終了後、幅中央部に対しての歪差となって残存する。このため、鋼板の幅方向における温度分布を均一にした場合であっても、鋼板に端伸びの変形が生じることになる。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、本発明に係る熱処理鋼板の製造方法は、加熱された鋼板を搬送し、通過する冷却帯で冷却を行う冷却工程を備えた熱処理鋼板の製造方法であって、前記冷却工程では、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに、前記鋼板の通板方向の温度勾配を150℃/m以下として冷却を実施することを特徴としている。
温度勾配は、複数の鋼板温度計を通板方向に間隔を開けて配置して鋼板温度を測定し、その鋼板温度差を前記鋼板温度計の設置間隔で除すことによって測定することができる。すなわち、上流の鋼板温度計の検出温度をT1、下流側の鋼板温度計の検出温度をT2とし、その間隔をDとすると、温度勾配gは、g=(T1−T2)/Dで簡単に求めることができる。
この構成の熱処理鋼板の製造方法によれば、冷却工程における鋼板の通板方向の温度勾配が150℃/m以下に設定されているので、鋼板における通板方向の熱分布による熱歪みを小さく抑えることが可能となり、鋼板の変形を抑制することができる。この温度勾配が150℃/m以下であれば鋼板の変形を抑制することができる理由は後述する。
ところで、冷却速度と温度勾配は、通板速度を介して比例関係がある。すなわち、冷却速度をCRとし、通板速度をvとすると、温度勾配gは、g=CR/vで表される。ここで、非特許文献2では、図13に示すように板厚10mm時で冷却速度が約90℃/sとなっている。通板速度は非特許文献2の表2に示すように15mpmとすると、温度勾配は、90÷(15÷60)=360℃/mとなり、変形の抑制が難しいことが分かる。
一方、前記鋼板の通板方向の温度勾配は、所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するものでなければならない。例えば、所定の材質特性を得るための最低の冷却速度が25℃/sであり、その時の通板速度が1.0m/sであったと仮定する。このとき、25[℃/s]/1.0[m/s]=25[℃/m]となるので、温度勾配が25℃/m未満の場合には、所定の材質特性を得るために必要な冷却速度を確保することが困難となる。
上述の通り、前記鋼板の通板方向の温度勾配が150℃/mを超える場合には、熱歪みが大きくなって鋼板の変形を抑制することができなくなるおそれがある。このため、前記鋼板の通板方向の温度勾配を、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するのに必要となる温度勾配以上、150℃/m以下の範囲内に設定している。
ここで、本発明の熱処理鋼板の製造方法においては、前記冷却工程では、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに、前記鋼板の通板方向の温度勾配を150℃/m以下となるように、前記鋼板の通板速度及び前記冷却帯の冷却能力のいずれか一方または両方を制御することが好ましい。冷却能力の制御とは、具体的に例示すると、冷却水量、冷却水の衝突圧力、冷却水温度等のいずれか1つ又は2つ以上を制御することである。
この場合、鋼板の通板速度及び冷却帯の冷却能力のいずれか一方または両方を制御しているので、所定の材質特性を得ることができる冷却速度を確保するとともに、冷却時の鋼板の通板方向の温度勾配を150℃/m以下とすることができ、冷却時の鋼板の変形を抑制することができる。
また、本発明の熱処理鋼板の製造方法においては、前記冷却工程では、前記鋼板の通板方向下流側に向かうにしたがい、前記鋼板の冷却速度を漸次大きくすることが好ましい。
この場合、鋼板の通板方向上流側における鋼板の冷却速度を小さくしていることから、冷却開始直後の鋼板の通板方向の温度勾配が小さくなり、熱歪みを小さく抑えることができる。これにより、冷却開始直後の鋼板の変形を抑制することができる。また、前記鋼板の通板方向下流側に向かうにしたがい、前記鋼板の冷却速度を漸次大きくしているので、所定の材質特性を得るために必要な冷却速度で鋼板を冷却することが可能となる。
すなわち、鋼板においては、図2に示すように、温度が低くなるとヤング率が高くなり、変形が抑制されることになる。よって、ヤング率が比較的低く変形しやすい高温領域で冷却速度を低くすることで変形を抑制でき、ヤング率が比較的高く変形し難い低温領域で冷却速度を高くすることで、冷却工程全体での冷却速度を確保することが可能となる。
さらに、本発明の熱処理鋼板の製造方法においては、前記冷却工程では、前記鋼板の通板方向下流側に向かうにしたがい、前記鋼板の冷却速度の変化率を漸次大きくすることが好ましい。
この場合、冷却開始領域において、冷却速度が小さくなり、冷却開始直後の鋼板の変形を抑制することができる。また、通板方向下流側においては、冷却速度が大きく変化するように構成されているので、所定の材質特性を得るために必要な冷却速度で鋼板を冷却することが可能となる。
すなわち、本発明は、ヤング率の比較的低い冷却前半の冷却速度あるいは冷却速度の変化率は小さくして冷却前半での鋼板の変形を抑制し、その分、ヤング率が比較的高い冷却鋼板の冷却速度あるいは冷却速度の変化率を大きくして、最終的な鋼板の変形を抑制するものである。
なお、冷却開始温度〜550℃の温度域では図2に示すようにヤング率が低くなるので、熱歪による変形が生じやすく、この領域では温度勾配が大きすぎないことが必要である。本発明者らは、この点について鋭意研究の末、前記鋼板の通板方向の温度勾配が150℃/mを超える場合には、熱歪みが大きくなって鋼板の変形を抑制することができなくなる恐れがあることを知見した。このため、冷却開始温度〜550℃の温度域で前記鋼板の通板方向の温度勾配を150℃/m以下の範囲内に設定することが好ましい。
このとき、通板速度を上げて温度勾配を小さくすることも可能であるが、通板速度を上げた上で必要な冷却速度を確保するためには、冷却設備の設備長を長くする必要があり、実用上困難である。
ところで、温度勾配の制御の性向は550℃付近で大きく切り替わる。550℃〜冷却終了温度の温度域ではオーステナイトからパーライトへの相変態やオーステナイトからマルテンサイトへの相変態が進むので、冷却速度が十分とれていなければならず、これに伴い、温度勾配も小さすぎないことが必要となる。
したがって、上記した「前記鋼板の通板方向の温度勾配を150℃/m以下の範囲内」という条件を満たした上で、冷却開始温度から冷却終了温度までの温度域で所定の材質特性を得る冷却速度を確保することが必要であり、この冷却速度を確保するためには温度勾配も必要となる。
所定の材質特性を得る冷却速度は成分によって、また、要求される機械的特性によって大きく変化し、さらに、操業条件によって通板速度も大きく変化するので、温度勾配の下限値は数値として特定することはできない。逆に、冷却速度及び温度勾配は所望される所定の組織や機械的特性が決まれば適宜決めることができる。
なお、冷却終了温度は本発明の対象とする鋼種の多くがマルテンサイト組織を含むので、マルテンサイト変態開始温度以下であることが望ましい。
さらに、本発明者等は、鋼板の幅端部から所定の範囲にエッジマスクを設けることで、鋼板の幅端部の変形(端伸び)をさら抑制できるとの知見を得た。
この知見に基づくと、本発明の熱処理鋼板の製造方法においては、前記鋼板の幅端部にエッジマスクを設け、前記エッジマスクが設けられた領域の冷却能力を、前記エッジマスクが設けられていない領域よりも低くすることが好ましい。なお、本発明においてエッジマスクとは、冷却水が直接鋼板に衝突しないように遮蔽板を設けたり、ノズルの水量を絞ったりして、マスキングを掛けていない範囲に比べて冷却能力を低くする手段の総称である。
ここで、上述のエッジマスクは、鋼板の幅端部から板半幅の5%以上40%以下の範囲に設けることが望ましい。
今回、板厚4.5mm×板幅2350mm×板長7000mmの厚鋼板を、ローラクエンチ装置に通板速度50mpmにて通板した。ここで、臨界冷却曲線以内で焼き入れを行った際の冷却開始直後の冷却装置(通称、HiQ帯:HiQ1の上下ノズル)に、鋼板の幅端部の冷却能力が幅中央部の冷却能力よりも低くなるようにマスキングをした。そして、焼き入れ後の形状データから、換算した鋼板の幅中央部基準で幅端部の伸び歪差を測定した結果(マスキング幅0の場合を1として規格化した基準化伸びひずみ差)を図3に示す。なお、図3において、HiQ1は加熱炉出側の最初のノズル、HiQ2は2番目、HiQ3は3番目のノズルであり、その位置は図6中に示す。
上述の試験においては、エッジマスクを設ける範囲が鋼板の幅端部から板半幅の5%未満であると、冷却水の鋼板への衝突後の板上流れの影響で効果が小さくなる。また、板半幅の40%を超える範囲にエッジマスクを設けてもエッジマスクによる形状改善の効果が少ない傾向となる。
そこで、エッジマスクを設ける場合には、鋼板の幅端部から板半幅の5%以上40%以下の範囲とすることが望ましい。
また、エッジマスクは、上部、下部、冷却区間毎に設置した冷却ノズル毎に設定することが望ましい。図4に、HiQ帯の各区間のマスキング効果をマスキング箇所毎に示す。なお、この場合の(板最エッジからのマスキング幅)/(板半幅)は0.15である。
このようにマスキングの制御区分を細分化することで,きめ細やかなマスキング設定が可能となる。
なお、これは一例であり、板厚、板幅、冷却速度によって、エッジマスクによる伸び歪差改善代が変化する。これらマスキング幅やマスキングの制御区分の細分化は,各操業に対して感度が異なるため、操業条件を所定の範囲内で調整して、センターとエッジ部の伸び歪差が基準値(例えば急峻度0.5%や0.25%)以下となるように決定することが好ましい。
また、本発明の熱処理鋼板の製造方法においては、CCT線図を用いて、前記鋼板が所定の材質特性を得るように、前記冷却工程における平均冷却速度を決定し、これに基づいて前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するのに必要な温度勾配を設定することが好ましい。
この場合、CCT線図に基づいているので、冷却工程の平均冷却速度を確保することができ、熱処理鋼板を要求された特性とすることができる。
例えば、所定の材質特性を得るためにマルテンサイト組織を含む組織とする必要がある場合、その組織を得るための冷却速度は図5に示すように25℃/s以上であることがわかる。その時の通板速度が1.0m/sであったと仮定すれば、必要な温度勾配は、25[℃/s]/1.0[m/s]=25[℃/m]以上となる。この場合、鋼板の通板方向の温度勾配を、25℃/m以上150℃/m以下の範囲内としても、冷却工程の平均冷却速度を確保することができ、熱処理鋼板の特性を確保することができる。
ここで、上述の例では、温度勾配の下限値は25℃/m以上と計算されたが、所定の材質特性を得るための冷却速度は成分によって、また、要求される機械的特性によって変化し、さらに、操業条件によって通板速度も変化する。例えば、所定の材質特性を得るためにマルテンサイト組織を含む組織を狙って冷却速度を25℃/sとしたが、このような組織を得るためであっても、その成分でこの冷却速度は50℃/s程度にも10℃/s程度にも容易に変化する。また、成分が同じであっても要求される機械的特性によって組織も変化し、必要となる冷却速度は変化する。さらに、通板速度v=1.0m/sの例を挙げたが、0.7m/s、0.5m/sのように変更することがある。なお、通板速度を速くすると冷却終了温度を十分に低くすることができなくなったり、設備長を長くしてコストが高くなったりするのであまり望ましくない。このように、温度勾配の下限値は、鋼材の成分、必要とされる材質特性により異なるため、特定の値として決定することはできない。
これに対し、温度勾配の上限値は後述の説明のように大きく変化するものではなく、150℃/m以下となる。
さらに、本発明の熱処理鋼板の製造方法においては、CCT線図を用いて、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度以上で、かつ、150℃/m以下の温度勾配を得られる冷却速度以下の範囲内で、冷却開始温度を低く設定することが好ましい。
この場合、冷却開始温度と冷却終了温度との温度差が小さくなるため、前記鋼板の通板方向の温度勾配を緩やかにすることができ、鋼板の変形を抑制することができる。
また、本発明の熱処理鋼板の製造方法においては、CCT線図を用いて、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度以上で、かつ、150℃/m以下の温度勾配を得られる冷却速度以下の範囲内で、冷却速度を小さくすることが好ましい。
この場合、冷却速度を小さくしているので、前記鋼板の通板方向の温度勾配を緩やかにすることができ、鋼板の変形を抑制することができる。
本発明に係る鋼板冷却装置は、加熱された鋼板を搬送しながら冷却を行う鋼板冷却装置であって、前記鋼板を搬送する搬送手段と、搬送される前記鋼板を冷却する冷却帯と、前記搬送手段及び前記冷却帯の動作を制御する制御部と、通板方向の複数の箇所の鋼板温度を求めて温度勾配を推定する温度勾配推定手段と、を有し、前記制御部は、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに、前記鋼板の通板方向の温度勾配が150℃/m以下となるように、前記鋼板の通板速度または前記冷却帯の冷却能力のいずれか一方または両方を制御することを特徴としている。
この構成の鋼板冷却装置によれば、搬送される前記鋼板を冷却する冷却帯と、前記搬送手段及び前記冷却帯の動作を制御する制御部と、温度勾配推定手段とを有し、この制御部が、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を有するとともに、前記鋼板の通板方向の温度勾配が150℃/m以下となるように、前記鋼板の通板速度または前記冷却帯の冷却能力のいずれか一方または両方を制御するので、鋼板における通板方向の熱分布による熱歪みを小さく抑えることが可能となり、冷却後の鋼板の変形を抑制することができる。
ここで、本発明に係る鋼板冷却装置においては、前記冷却帯は、前記鋼板の通板方向に複数に分割され、分割された冷却帯毎に冷却能力が独立して設定される構成とされており、分割された前記冷却帯では、前記通板方向下流側に向かうにしたがい前記冷却帯の冷却能力が漸次大きくなるように構成してもよい。なお、冷却能力の制御因子は具体的に例示すると、冷却水量、冷却水圧力、冷却水温度等であり、これらのいずれか1つ又は2つ以上を制御することにより、冷却能力が制御される。この冷却能力は熱伝達率として評価できる。
この場合、前記鋼板の通板方向に複数に分割された冷却帯毎に冷却能力が独立して設定される構成とされており、前記通板方向下流側に向かうにしたがい前記冷却帯の冷却能力が漸次大きくなる構成とされているので、前記鋼板の通板方向下流側に向かうにしたがい、前記鋼板の冷却速度を漸次大きくすることができる。
よって、冷却開始直後の鋼板の変形を抑制することができるとともに、所定の材質特性を得るために必要な冷却速度で鋼板を冷却することが可能となる。
また、本発明の鋼板冷却装置においては、分割された前記冷却帯に配設される冷却ノズルは、冷却帯ごとにその仕様が定められる構成としてもよい。
この場合、分割された前記冷却帯に配設される冷却ノズルが、冷却帯ごとにその仕様が定められるので、分割された冷却帯毎に冷却能力を独立に設定することができる。
また、本発明の鋼板冷却装置においては、前記冷却帯毎に前記温度勾配推定手段が設けられていることが好ましい。
前記温度勾配推定手段は、例えば冷却帯の前後に鋼板温度計を備え、上流側の鋼板温度計の検出温度をT1、下流側の鋼板温度の検出温度をT2とし、その冷却帯の長さであるこれらの間隔をDとし、温度勾配gを、g=(T1−T2)/Dで求めるものである。
その際に、温度T1を最初の冷却ノズル(HiQ1)近傍の温度、温度T2を最終の冷却ノズル近傍の温度としても良い。
さらに、本発明に係る鋼板冷却装置においては、前記鋼板の幅端部に、前記鋼板の端幅部の冷却能力を前記鋼板の幅中央部の冷却能力よりも小さくするエッジマスクが設けられていることが好ましい。
この場合、前記鋼板の端部にエッジマスクを設けることで、鋼板の幅端部の変形(端伸び)をさら抑制することができる。
上述のように、本発明によれば、所望とする材質を確保しつつ、熱処理時における鋼板の変形を十分に抑制することが可能な熱処理鋼板の製造方法、及び、鋼板冷却装置を提供することが可能となる。
熱処理鋼板の変形メカニズムを示す説明図である。 鋼の温度とヤング率との関係を示すグラフである。 エッジマスクを設けた場合において、エッジ部伸び歪差を測定した結果を示すグラフである。 ロールクエンチ装置の各箇所毎のエッジマスクの効果を示す図である。 本実施形態における熱処理鋼板の連続冷却変態線図(CCT線図)である。 本発明の一実施形態に係る鋼板冷却装置の概略構成を示す図である。 通板方向の温度勾配と歪量との関係を示すグラフである。 マスクキング装置を備えた鋼板冷却装置の概略説明図である。 マスクキング装置を備えた鋼板冷却装置の一例を示す説明図である。 マスクキング装置を備えた鋼板冷却装置の一例を示す説明図である。 冷却開始温度と鋼板の変形(急峻度)との関係を示すグラフである。 鋼板温度と鋼板の通板方向の温度勾配との関係を示すグラフである。 非特許文献2の冷却速度と板厚との関係を示すグラフである。
以下に、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図6は一実施形態に係る鋼板冷却装置の概略構成を示す図であり、符号1は、鋼板冷却装置を示している。
この鋼板冷却装置1は、加熱炉10によって所定温度に加熱された鋼板Wを冷却して、所定の材質特性の熱処理鋼板を製造するものである。
鋼板冷却装置1は、図6に示すように、鋼板Wを上下に挟み込んで通板方向Fに向けて搬送する複数の搬送ローラ2と、搬送ローラ2によって搬送される鋼板Wを冷却する冷却帯3と、この搬送ローラ2及び冷却帯3の動作を制御する制御部(図示なし)と、を備えている。
冷却帯3は、通板方向Fに隣接する搬送ローラ2間に配置された複数の冷却ノズル4によって構成されている。
このとき、通板方向Fに間隔を開けて長手方向に複数の鋼板温度計が配置され、これらは同時に温度を検知するのが望ましい。あるいは、鋼板温度の測定の代替手段として、あらかじめ測定した冷却能力の推定値から、鋼板Wの温度推移を数値計差により求めてその結果から、距離間隔Dの2地点間の温度T1,T2を求めて温度勾配gを算出しても良い。上流側の推定温度をT1、下流側の推定温度をT2とし、その間隔をDとすると、温度勾配gは、g=(T1−T2)/Dで求められる。
本実施形態では、冷却帯3は、鋼板Wの通板方向Fにおいて複数に分割されており、本実施形態では、冷却帯3は、第1冷却帯3a,第2冷却帯3b,第3冷却帯3c,第4冷却帯3d,第5冷却帯3eの5つに分割されている。
また、この分割された冷却帯3において、それぞれ冷却ノズル4が配設されている。すなわち、第1冷却帯3aは第1冷却ノズル4aによって構成され、第2冷却帯3bは第2冷却ノズル4bによって構成され、第3冷却帯3cは第3冷却ノズル4cによって構成され、第4冷却帯3dは第4冷却ノズル4dによって構成され、第5冷却帯3eは第5冷却ノズル4eによって構成されているのである。なお、各冷却帯の冷却ノズルは異なっていてもよい。
これらの各冷却帯3については温度勾配推定手段が設けられていることが望ましい。また、冷却速度CRと温度勾配gとでは通板速度を介して比例関係が有り、冷却速度をCRとし、通板速度をvとすると、冷却速度CRはCR=g・vで表される。
本実施形態では、分割された冷却帯3毎に冷却能力が独立して設定される構成とされており、分割された冷却帯3では、通板方向F下流側に向かうにしたがい冷却帯3の冷却能力が漸次大きくなるように構成されている。具体的には、通板方向F下流側に向かうにしたがい冷却ノズル4の口径を大きくする、あるいは冷却水圧を高くすることにより、冷却能力が確保できるように構成されている。
制御部は、搬送ローラ2に対して指令を与えて鋼板Wの通板速度vを設定するとともに、複数の冷却帯3(3a,3b,3c,3d、3e)に対して指令を与え、それぞれの冷却帯3a,3b,3c,3d,3eにおける冷却能力を制御する構成とされている。
そして、制御部は、推定された鋼板温度から通板方向Fの温度勾配を求め、この温度勾配に基づき、鋼板Wの通板速度vとそれぞれの冷却帯3a,3b,3c,3d,3eにおける冷却能力を制御することにより、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を、鋼板Wが所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するために必要な温度勾配以上、かつ、150℃/m以下の範囲内とする。
具体的には、制御部は、鋼板Wの材質、板厚、要求特性等に応じて、通板速度vを設定し、各冷却帯3a,3b,3c,3d,3eにおける冷却能力を予め作成しておいたテーブルに記憶しており、このテーブルから条件を選択するように構成されている。
さらに、本実施形態においては、制御部は、鋼板Wの通板速度vとそれぞれの冷却帯3a,3b,3c,3d,3eにおける冷却能力を制御することによって、各冷却帯3a,3b,3c,3d,3eにおける温度勾配、冷却速度を制御するように構成されている。
具体的には、制御部は、鋼板Wの材質、板厚、要求特性等に応じて、通板速度vと各冷却帯3a,3b,3c,3d,3eにおける冷却能力を予め設定したテーブルを記憶しており、このテーブルから条件を選択するように構成されている。ここで、冷却能力の制御とは、具体的に例示すると、冷却水量、冷却水圧力、冷却水温度等のいずれか又は2つ以上を制御することであり、熱伝達率を制御することを意味する。
次に、上述の鋼板冷却装置1を用いた本実施形態である熱処理鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態である熱処理鋼板の製造方法においては、加熱時においてフェライトがオーステナイトに変態するAC3変態点以上に加熱された鋼板Wを急速冷却することによって、マルテンサイト組織などを有する熱処理鋼板を製造するものである。また、本発明が対象とする鋼板Wの板厚は、3mm以上12mm以下とし、通板速度を0.5m/s、加熱炉からの抽出温度を900℃、冷却開始温度を850℃、冷却終了温度を150℃として、冷却を実施した。
図5に、本実施形態における鋼板Wの連続冷却変態線図(CCT線図)の一例を示す。この連続冷却変態線図(CCT線図)によれば、冷却工程における平均冷却速度が25℃/sよりも小さい場合には、ほぼ全面がパーライト組織となり、冷却工程における平均冷却速度が140℃/sよりも大きい場合には、ほぼ全面がマルテンサイト組織となる。
製造される熱処理鋼板の成分などにより所定の材質特性を有するための冷却速度は変化するが、本実施形態では、所定の材質特性を得る冷却速度をマルテンサイト組織が生じるのに必要な25℃/sとし、冷却工程における平均冷却速度が50℃/sとなるように設定する。また、適当なマルテンサイト組織の分率となるように、冷却開始から冷却終了までの冷却工程における平均冷却速度が35℃/sとなるように設定してもよい。このように、要求される特性等に応じて、CCT線図を元に、冷却工程における平均冷却速度を設定する。例えばこのとき通板速度を0.5m/sとすると、温度勾配は約100℃/mとなり、所定の材質特性を確保するのに必要となる温度勾配は50℃/mとなる。
ここで、通板方向Fの温度勾配を小さくして鋼板の変形を効果的に抑制するためには、冷却工程における平均冷却速度を、製造される熱処理鋼板が所定の材質特性を有する範囲内で小さくなるように設定することが好ましい。すなわち、CCT線図において、製造される熱処理鋼板が所定の材質特性を有する範囲内で冷却曲線が緩やかになるように設定することが好ましい。
なお、本実施形態では、冷却開始当初の冷却速度を25℃/sとして冷却を開始し、550℃までは温度勾配がたとえば50℃/m(すなわち、ここでは25℃/sの冷却速度)を越えないように漸次冷却速度を上げて行き、冷却開始から冷却終了までの平均冷却速度が35℃/s(すなわち、平均の温度勾配が70℃/m)となるように、550℃以下では35℃/sをオーバーシュートして冷却すれば所望の材質を得ることができる。
また、冷却工程における冷却開始温度は、製造される熱処理鋼板が所定の材質特性を有する範囲内で設定する。本実施形態では、図5の連続冷却変態線図(CCT線図)から、冷却開始温度を600〜950℃、好ましくは、600〜800℃に設定している。このように、要求される特性等に応じて、CCT線図を元に、冷却工程における冷却開始温度を設定することになる。ここで、通板方向Fの温度勾配を小さくして鋼板Wの変形を効果的に抑制するためには、冷却工程における冷却開始温度を、製造される熱処理鋼板が所定の材質特性を有する範囲内で低く設定することが好ましい。すなわち、冷却開始温度まで空冷等によって徐冷された場合であっても、冷却工程における冷却開始温度をたとえばオーステナイトからパーライトへの変態を開始しない温度範囲(冷却曲線がCCT線図のPs線に交差する点以上の温度)で、冷却工程における冷却開始温度を低く設定することが好ましい。
なお、加熱炉から抽出された鋼板の温度が、上述の範囲の冷却開始温度となるまでは、空冷しても良い。
そして、上述の鋼板冷却装置1においては、あらかじめ、制御部によって、鋼板Wが所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに,通板方向Fの温度勾配が150℃/m以下の範囲内となるように推定された温度勾配に基づいて鋼板Wの通板速度vを設定し、各冷却帯3a,3b,3c,3d,3eの冷却能力を制御することにより、調整される。加熱炉10から抽出された鋼板Wを搬送ローラ2によって通板方向Fに向けて搬送する。そして、各冷却帯3a,3b,3c,3d,3eにおいて、各冷却ノズル4a,4b,4c,4d,4eによって、鋼板Wの冷却を実施する。
なお、上述のように、加熱炉10から抽出された鋼板Wの温度が、冷却工程における冷却開始温度となるまでは、冷却ノズル4による冷却を実施せず、空冷とする。例えば、上述の鋼板冷却装置1において、第1冷却帯3aでは、第1冷却ノズル4aによる強制冷却を実施せず、第2冷却帯3bの入側で鋼板Wの温度が冷却開始温度(600〜950℃)となっていた場合には、第2冷却帯3bにおいて、第2冷却ノズル4bによる冷却を実施し、冷却工程を開始することになる。このとき、第1冷却帯3a(加熱炉10から抽出された後冷却工程を開始する前の間)では、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配は、所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するために必要な温度勾配よりも小さくなっている。
そして、第2冷却帯3b以降において、鋼板Wが所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を150℃/m以下として、冷却開始温度から冷却終了温度まで冷却を行い、熱処理鋼板を製造する。
また、本実施形態においては、制御部によって、鋼板Wの通板速度vと各冷却帯3a,3b,3c,3d,3eの冷却能力を制御し、各冷却帯3a,3b,3c,3d,3eにおける冷却速度を設定することになる。
通板方向F上流側に位置する第1冷却帯3aにおける冷却速度が最も小さく、第2冷却帯3b、第3冷却帯3c、第4冷却帯3d、第5冷却帯3eと、通板方向F下流側に向かうにしたがい、冷却速度が漸次大きくなるように、各冷却帯3における冷却速度が設定されている。
また、第1冷却帯3aにおける冷却速度と第2冷却帯3bにおける冷却速度の変化率が最も小さく、通板方向F下流側に向かうにしたがい、冷却速度の変化率が漸次大きくなるように、各冷却帯3における冷却速度が設定されている。
さらに、各冷却帯3a,3b,3c,3d,3eの前後の温度を推定し、その温度差を当該冷却帯3a,3b,3c,3d,3eの長さで除してその冷却帯3a,3b,3c,3d,3eの温度勾配とし、この推定された温度勾配に基づいて、それぞれの冷却帯3a,3b,3c,3d,3eの冷却能力の制御がなされる。
さらに、本実施形態においては、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配が150℃/m以下であり、冷却開始から冷却終了までで70℃/mとなるように調整される。
なお、上述のように、加熱炉10から抽出された鋼板Wの温度が、冷却工程における冷却開始温度となるまでは、冷却ノズル4による冷却を実施せず、空冷とする。このとき、加熱炉10から抽出された後冷却工程を開始する前の間では、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配が70℃/mよりも小さく(例えば40℃/m)なっている。
そして、冷却開始温度から冷却終了温度(Mf:マルテンサイト変態終了温度以下)まで冷却を行い、熱処理鋼板を製造する。
以上のような構成とされた本実施形態である熱処理鋼板の製造方法によれば、冷却工程における鋼板Wの通板方向Fの温度勾配が150℃/m以下に設定されているので、鋼板Wにおける通板方向Fの熱分布による熱歪みを小さく抑えることが可能となり、鋼板Wの変形を抑制することができる。温度勾配を150℃/m以下に設定されなければならない理由を以下に説明する。
図7には、従来の鋼板冷却装置によって冷却開始から冷却終了まで冷却能力を一定として冷却した場合で、温度勾配250℃/mのときに発生する波形状(急峻度)から算出した幅端部と幅中央部との間の歪差を1とした場合の、温度勾配に対する変化を示す。急峻度λとは鋼板の波高さを波のピッチで除した値であり、下記のように容易に歪差に変換できる。この歪差とは図1で端伸びを生じさせた歪量であり、
[歪差]=([幅端部での長手方向の長さ]−[幅中央部での長手方向長さ])/[幅中央部での長手方向長さ]、
[歪差]=([幅中央部での収縮量]−[幅端部での収縮量])/[幅中央部での収縮量]、
あるいは、
[歪差]=[幅中央部での熱収縮歪]−[幅端部での熱収縮歪]
などで(全て同じ意味)定義することができる。
図7に示すように、鋼板の通板方向Fの温度勾配が大きくなると、鋼板の内部に大きな歪みが発生することが確認される。このとき、温度勾配250℃/mのときは冷却開始温度にもよるが、大きく端伸びが生じることが多い。
本発明者らは、鋭意試行錯誤の末、この歪み差の相対比は150℃/m以下では温度勾配に対して漸増するのに対し、150℃/m超では急増することを明らかにした。また、150℃/m超で生じる歪差(図7の相対値で約0.3以上)では多くの鋼板で端伸びが発生したのに対し、150℃/m以下で生じる歪差(図7の相対値で約0.3以下)では鋼板自体の剛性により端伸びがほとんど発生しないことも明らかにした。
さらに、検討を進めると、150℃/mという閾値は板厚3〜12mmの間で大きく変化することが無いこと、波形状をもたらす歪差のうちの熱歪はほとんど550℃以上で生じていること、が判った。
したがって、冷却中の鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を、特に550℃以上の範囲において、150℃/m以下にすることによって、鋼板の変形(特に端伸び)を抑えることができる。
ところで、この歪み差の相対比は150℃/m以下でも漸増しており、この歪みは製品中に残留するので少ないことが望ましい。したがって、可能な限り温度勾配は小さい方が望ましい。
このことより、鋼板の変形を効果的に抑制するためには、冷却工程における平均冷却速度を、製造される熱処理鋼板が所定の材質特性を有する範囲内で小さくなるように設定することが好ましい。すなわち、CCT線図において、製造される熱処理鋼板が所定の材質特性を有する範囲内で冷却曲線が緩やかになるように設定することが好ましい。
また、冷却開始温度を低くすることができれば温度勾配も小さくすることができるので、この理由からも、可能な限り冷却開始温度を低くすることが望ましい。
一方、冷却工程における鋼板Wの通板方向Fの温度勾配が100℃/mに設定されているので、冷却工程における平均冷却速度を確保することができ、本実施形態では、通板速度を0.5m/sとしたので、冷却工程における平均冷却速度を50℃/sとすることができ、所定の材質特性を有する熱処理鋼板を製造することが可能となる。
また、本実施形態では、製出される熱処理鋼板がマルテンサイト組織を有して所定の材質特性を得るように、冷却工程における平均冷却速度を50℃/sとしているので、所定の材質特性の熱処理鋼板を確実に製造することが可能となる。なお、冷却工程における平均冷却速度を35℃/s以上に設定してもよい。
さらに、本実施形態では、製造される熱処理鋼板がマルテンサイト組織を有して所定の材質特性を得る範囲内で、冷却速度を小さく設定しているので、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を緩やかにすることができ、鋼板Wの変形を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、鋼板Wの通板速度v及び冷却帯3の冷却能力を調整しているので、冷却工程における鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を所定の材質特性を得る冷却速度を確保するのに必要となる温度勾配である50℃/m以上でかつ、150℃/m以下の範囲内とすることができ、鋼板Wの変形を抑制することができる。
また、本実施形態では、冷却帯3を複数に分割しているので、鋼板Wの通板方向Fにおいて、複数の冷却帯3の冷却能力をそれぞれ設定することにより、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を精度良く調整することができる。
また、本実施形態では、通板方向Fに分割された複数の冷却帯3において、鋼板Wの通板方向F上流側における鋼板Wの冷却速度を小さくしていることから、ヤング率が比較的低く変形しやすい高温領域で通板方向Fの温度勾配が小さくなり、鋼板Wの変形を抑制することが可能となる。また、ヤング率が比較的高く変形し難い低温領域で冷却速度を大きくすることで、冷却工程全体での冷却速度を確保することができ、マルテンサイト組織とされた所定の材質特性の熱処理鋼板を製造することが可能となる。
また、本実施形態では、通板方向Fに分割された複数の冷却帯3において、鋼板Wの通板方向F下流側に向かうにしたがい、鋼板Wの冷却速度の変化率を漸次大きくするように構成されているので、ヤング率が比較的低く変形しやすい高温領域において、冷却速度が小さい状態が維持されることになり、鋼板Wの変形を抑制することができる。また、通板方向F下流側においては、冷却速度が大きく変化するように構成されているので、所定の材質特性を得るために必要な冷却速度で鋼板Wを冷却することが可能となる。
なお、本実施形態において、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配が70℃/m以上となるように、各冷却帯3での冷却能力を制御した場合には、冷却工程における平均冷却速度を確保することができ、本実施形態では、冷却工程における平均冷却速度を35℃/s以上とすることができ、所定の材質特性を有する熱処理鋼板を製出することが可能となる。
また、本実施形態では、製出される熱処理鋼板がマルテンサイト組織を有して所定の材質特性を得るように、冷却工程における平均冷却速度を35℃/s以上に設定しているので、所定の材質特性の熱処理鋼板を確実に製造することが可能となる。
さらに、本実施形態では、製出される熱処理鋼板がマルテンサイト組織を有して所定の材質特性を得る範囲内で、冷却速度を低く設定しているので、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を緩やかにすることができ、鋼板Wの変形を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、所定の材質特性を得る範囲内で、冷却開始温度を低く設定する構成とされており、本実施形態では、図5の連続冷却変態線図(CCT曲線)から、冷却開始温度が、600〜950℃、好ましくは、600〜800℃に設定されているので、冷却工程において、冷却開始温度と冷却終了温度(Mf:マルテンサイト変態終了温度以下)との温度差が小さくなり、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を緩やかにすることができ、鋼板Wの変形を抑制することができる。
また、冷却開始温度が比較的低く設定されているので、図2に示すように、鋼板のヤング率が比較的高くなり、鋼板自体の剛性が高まり、鋼板Wの変形が抑制されることになる。
本実施形態である鋼板冷却装置1によれば、冷却帯3は、鋼板Wの通板方向Fにおいて複数に分割されているので、各冷却帯3において、冷却能力を制御することによって、鋼板Wの通板方向Fの温度勾配を調整することが可能となる。
また、鋼板Wの通板速度v及び冷却帯3の冷却能力を制御する制御部を備えているので、鋼板の通板方向Fの温度勾配が所定の材質特性を得る冷却速度を確保するのに必要となる温度勾配である50℃/m以上150℃/m以下の範囲内となるように、精度良く調整することができ、鋼板Wの変形を抑制することができる。
また、本実施形態である鋼板冷却装置1によれば、鋼板Wの通板方向Fに複数に分割された冷却帯3毎に冷却能力が独立して設定される構成とされており、通板方向F下流側に向かうにしたがい冷却帯3の冷却能力が漸次大きくなる構成とされているので、鋼板Wの通板方向F下流側に向かうにしたがい、鋼板Wの冷却速度を漸次大きくすることができる。よって、冷却開始直後で高温領域における鋼板Wの変形を抑制することができるとともに、所定の材質特性を得るために必要な冷却速度で鋼板Wを冷却することが可能となる。
また、本実施形態では、分割された冷却帯3に配設される冷却ノズル4は、冷却帯3ごとにその仕様が定められる構成とされているので、分割された冷却帯3毎に冷却能力を独立に設定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、図5に示す連続冷却変態線図(CCT線図)を有する熱処理鋼板を対象として説明したが、これに限定されることはなく、他の材質の熱処理鋼板を対象としてもよい。この場合、対象となる熱処理鋼板の連続冷却変態線図(CCT線図)を用いて、平均冷却速度、冷却開始温度等を設定することになる。
また、本実施形態では、鋼板の板厚を、3mm以上12mm以下とされたものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の板厚の鋼板を対象としてもよい。なお、鋼板の板厚によって、鋼板の変形し易さが異なることになるため、板厚が12mm超と厚い場合は、通板方向における温度勾配を比較的大きく設定しても、変形を抑制することが可能となる。
さらに、本実施形態では、図6に示す鋼板冷却装置を用いたもので説明したが、これに限定されることはなく、他の構成の鋼板冷却装置を用いてもよい。
また、鋼板Wの幅端部を幅中央部に比べて冷却能力を低くするように、エッジマスクを設けてもよい。エッジマスクを用いた操業及び装置について図8から図10を用いて説明する。
図8は、マスキング装置50を備えた鋼板冷却装置30の概要を示す図である。加熱炉10で所定の温度例えば900℃に鋼板Wを加熱し、加熱された鋼板Wを払い出す。そしてテーブルロールで搬送されながら鋼板冷却装置30に搬送される。
加熱炉10と鋼板冷却装置30の間に設置した板幅計32で鋼板Wの幅方向位置(板幅方向中心からのオフセンター量)と板長位置を測定し、その結果を計算機33に送信する。計算機33は、予め実験等によって求めた最適なマスキング幅とマスキング箇所を指令値としてマスキング装置50に送信し、マスキング量が設定される。マスキング装置50の個数は1か所以上で拘束ロール35毎に設置された冷却ノズル毎に設置しても良い。なお、鋼板センターからのオフセンター量が小さい或いは変動が小さいなら、板幅計32を用いなくてもマスキングの設定は可能である。
図9(a)はマスキング装置50の一例について詳細に記述した正面図であり、図9(b)は側面図である。鋼板Wに対し、ノズルヘッダー41を経由してスリットノズル42より冷却水が噴出され、鋼板Wを上下から冷やす。鋼板Wは、拘束ロール35で拘束されながら搬送冷却される。その際、全幅に渡って冷却水で鋼板Wを冷やすのではなく、板幅方向に自在に変位する遮蔽板51を持つマスキング装置50によって冷却水を遮断する。
図10(a)は、遮蔽板を使用しないマスキング方法であって、冷却水を吐出するノズル61毎に流量を調整することで幅方向に見掛けのエッジマスク効果を保有した鋼板冷却装置を詳細に記述した正面図で、図10(b)は側面図である。
この方式におけるエッジマスクとは、鋼板Wの幅端部から板半幅の5%以上の範囲の鋼板単位面積当たりに供給される水量(水量密度)を、鋼板の幅中央部の水量密度に対して5%以上減らしたものをいう。このようにすることで、上述したエッジマスクの効果を得ることができる。
鋼板Wに対して、ヘッダー63に取り付けられた流量調整機能付きのノズルより冷却水が噴出され,鋼板Wを上下から冷やす。鋼板Wは、拘束ロール35で拘束されながら、搬送冷却される。その際,全幅に渡って冷却水で鋼板Wを冷やすのではなく、ノズル流量で板幅方向に自在に冷却水を噴射させて冷却する。幅方向の流量調整された冷却水量の分布のイメージを図10(c)に示す。
このようにエッジマスクを設けた場合には、図3及び図4に示したマスキングの効果によってエッジ−センター伸びひずみ差を調節して、鋼板の端伸びを更に小さくすることが可能となる。
図6に示す鋼板冷却装置を用いて、板厚8mmの鋼板の冷却を実施して、熱処理鋼板を製造した。このとき、加熱炉からの抽出温度を900℃、冷却開始温度を850℃、冷却終了温度を150℃として、冷却を実施した。このときの鋼板は図5のCCT線図の鋼種と異なり、所定の機械的特性を得るために必要となる最低の冷却速度は20℃/sで十分であるものに変更し、この本発明例及び比較例においてはその基準を平均冷却速度25℃/sに設定した。また、通板速度は1.0m/sと設定した。これにより目標とする温度勾配は、25[℃/s]/1.0[m/s]=25[℃/m]となる。また、通板速度をこの1.0[m/s]とした場合、所定の材質特性を得る冷却速度を確保するのに必要となる温度勾配は、20[℃/s]/1.0[m/s]=20[℃/m]となる。すなわち、温度勾配が20[℃/m]以上、150[℃/m]以下であれば本発明の範囲になる。
この条件を基準として鋼板の通板速度と冷却帯の冷却能力を制御することにより、鋼板の冷却速度と通板方向の温度勾配を、表1に示すように変更し、得られた熱処理鋼板の形状を、急峻度λ=端部波高さ(h)/端部波ピッチ(l)として評価した。急峻度λが1%超え2%以下を「A」、2%超え3%以下を「B」、3%超えを「C」とした。結果を表1に示す。なお、急峻度λが3%以下であれば、熱処理鋼板の形状としては合格となる。
Figure 2019073754
通板速度は、必要以上に速くすると、冷却長が長くなり,冷却終了温度を確保するのが難しくなり、材質的に特に硬度が所望されるものを得にくくなる。
冷却速度は、冷却能力を上げることで速くできるが、冷却速度を速くして通板速度を遅くすると、比較例1に示すように、温度勾配が160℃/mと大きくなりすぎて良好な形状が得られなくなることが確認される。
次に、図6に示す鋼板冷却装置を用いて、板厚8mmの鋼板の冷却を実施して、熱処理鋼板を製造した。このとき、加熱炉からの抽出温度を900℃、冷却終了温度を150℃、鋼板の通板方向の温度勾配を40℃/mとし、冷却開始温度を変更した。このときの鋼板の変形を急峻度λ=端部波高さ(h)/端部波ピッチ(l)として評価した。評価結果を図11に示す。
図11に示すように、この急峻度は冷却開始温度が低いものほど小さく、冷却開始温度を低く設定することにより、鋼板の変形の原因となる歪が抑制されることが確認される。
これは、冷却工程における冷却開始温度と冷却終了温度との温度差が小さくなることで、鋼板の通板方向の温度勾配を小さくすることが可能となったためと推測される。また、図2に示すように、鋼板の温度が低い方が、ヤング率が高く変形し難いため、変形が抑制されるためと推測される。
図8に示すエッジマスクを使用した鋼板冷却装置を用いて、鋼板の冷却を実施して、熱処理鋼板を製造した。
このとき、加熱炉からの抽出温度を900℃、冷却開始温度を850℃、冷却終了温度を150℃として、冷却を実施した。
対象鋼板は、変態温度Ms点410℃、サイズ(厚み)8mm×(板幅)2350mmのものを使用し、通板速度は60mpmとした。
本発明例1に対してエッジマスクを板半幅の13%設けたものが本発明例7である。
また、本発明例1に対してエッジマスクを設ける範囲を冷却区間毎に決定したもの(結果として設けた範囲の平均は板半幅の21%)が本発明例8である。
本発明例2に対して同様の条件でエッジマスクを設けたものが本発明例9である。
形状評価として、急峻度λが0.5%超え1%以下を「S」、1%超え2%以下を「A」、2%超え3%以下を「B」とした。
結果を表2に示す。
Figure 2019073754
エッジマスクを使用した本発明例7、8は、本発明例1に比べて急峻度λが小さく、形状が良好であった。
同様に、エッジマスクを使用した本発明例9は、本発明例2に比べて急峻度λが小さく、形状が良好であった。
以上のことから、エッジマスクを使用することで、熱処理時における鋼板の変形をさらに抑制できることが確認された。
図6に示す鋼板冷却装置を用いて、上記の実施形態で示した鋼板の冷却条件を基準(発明例11)に、製造条件の一部を表3に示すように変更して、熱処理鋼板を製造した。すなわち、鋼板の通板速度と冷却帯の冷却能力を制御することにより、鋼板の通板方向の温度勾配等を変更し、得られた熱処理鋼板の形状を、急峻度λ=端部波高さ(h)/端部波ピッチ(l)として評価した。急峻度λが1〜2%以下を「A」、2%超え3%以下を「B」、3%超えを「C」とした。また、材質特性として材料硬さを測定した。結果を表3に示す。
Figure 2019073754
本発明例12は、本発明例11に比べて冷却能力を落としたものである。冷却能力を落とした分、機械的特性である材料硬さが落ちている。
本発明例13は、本発明例11に比べて冷却開始温度を下げて、その分550℃以降の冷却速度を上げたものである。冷却開始温度を下げると温度勾配を小さくするのと同じ効果があり、形状の良いものが得られている。550℃以下の温度で温度勾配が大きくなったが、550℃より高い温度で大きいわけではないので特に形状に問題は出なかった。
本発明例14は、通板速度を落としたものである。通板速度を落とした分、温度勾配が大きくなるので形状は本発明例11に比べて良くはない。
本発明例15は、本発明例11に比べて全体的に冷却速度を高めたものである。冷却速度が高い分温度勾配が大きくなり、本発明例11に比べて形状は劣る。
本発明例16は、本発明例11に比べて冷却開始当初の冷却速度を上げて、550℃以下の冷却速度を下げたものである。この条件でも冷却開始当初の温度勾配が150℃/m以下で、かつ、冷却速度が漸次大きくなるので、形状はそれなりに良好である。
比較例11は、冷却開始から冷却終了まで温度勾配が大きく、冷却速度又は冷却能力が下流側へ向かって大きくなるわけではないので、形状不良が生じた。
比較例12は、冷却開始から冷却終了まで冷却能力を漸次小さくしたものであるので、550℃超で温度勾配が大きく、高温域で熱ひずみが生じ、形状が圧下した。
比較例13は、冷却開始当初の温度勾配が大きく、高温域で熱ひずみが生じ、形状が悪化した。
次に、通板方向の温度分布状態について評価した。
本発明例11では、鋼板の通板方向下流側に向かうにしたがい、漸次冷却速度が大きくなるように、鋼板の通板速度と冷却帯の冷却能力を制御した。
従来例では、鋼板の通板方向において、冷却速度が一定となるように、鋼板の通板速度と冷却帯の冷却能力を制御した。本発明例及び従来例における通板方向の温度分布状態を図12に示す。
図12に示すように、鋼板の通板方向において冷却速度を一定とした従来例では、通板方向に冷却能力(熱伝達率)が一定になるように設定される。
一方、鋼板の通板方向下流側に向かうにしたがい、漸次、各冷却帯での平均の冷却速度が大きくなるように、鋼板の通板速度と冷却帯の冷却能力を制御した本発明例では、高温領域における通板方向の温度勾配が小さく抑えられている。
図8に示すエッジマスクを使用した鋼板冷却装置を用いて、鋼板の冷却を実施して、熱処理鋼板を製造した。
本発明例11に対してエッジマスクを板半幅の13%設けたものが本発明例17である。
また、本発明例11に対してエッジマスクを設ける範囲を冷却区間毎に決定したもの(結果として設けた範囲の平均は板半幅の20%)が本発明例18である。
また、本発明例12に対してエッジマスクを板半幅の13%設けたものが本発明例19である。
また、本発明例12に対してエッジマスクを設ける範囲を冷却区間毎に決定したもの(結果として設けた範囲の平均は板半幅の20%)が本発明例20である。
形状評価として、急峻度λが0.5%以下を「SS」、0.5%超え1%以下を「S」、1%超え2%以下を「A」、2%超え3%以下を「B」とした。
結果を表4に示す。
Figure 2019073754
エッジマスクを使用した本発明例17,18は、本発明例11に比べて急峻度λが小さく、形状が良好であった。
同様に、エッジマスクを使用した本発明例19,20は、本発明例12に比べて急峻度λが小さく、形状が良好であった。
以上のことから、エッジマスクを使用することで、熱処理時における鋼板の変形をさらに抑制できることが確認された。
この発明に係る熱処理鋼板の製造方法、鋼板冷却装置によれば、熱処理鋼板を冷却する際の鋼板の変形を抑制できるので、産業上利用可能である。
1 鋼板冷却装置
2 搬送ローラ
3 冷却帯
4 冷却ノズル
10 加熱炉
W 鋼板

Claims (13)

  1. 加熱された鋼板を搬送し、通過する冷却帯で冷却を行う冷却工程を備えた熱処理鋼板の製造方法であって、
    前記冷却工程では、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに、前記鋼板の通板方向の温度勾配を150℃/m以下として冷却を実施することを特徴とする熱処理鋼板の製造方法。
  2. 前記冷却工程では、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに、前記鋼板の通板方向の温度勾配を150℃/m以下となるように、前記鋼板の通板速度及び前記冷却帯の冷却能力のいずれか一方または両方を制御することを特徴とする請求項1に記載の熱処理鋼板の製造方法。
  3. 前記冷却工程では、前記鋼板の通板方向下流側に向かうにしたがい、前記鋼板の冷却速度を漸次大きくすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱処理鋼板の製造方法。
  4. 前記冷却工程では、前記鋼板の通板方向下流側に向かうにしたがい、前記鋼板の冷却速度の変化率を漸次大きくすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱処理鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼板の幅端部にエッジマスクを設け、前記エッジマスクが設けられた領域の冷却能力を、前記エッジマスクが設けられていない領域よりも低くすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱処理鋼板の製造方法。
  6. CCT線図を用いて、前記鋼板が所定の材質特性を得るように、前記冷却工程における平均冷却速度を決定し、これに基づいて前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するのに必要な温度勾配を設定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の熱処理鋼板の製造方法。
  7. CCT線図を用いて、前記鋼板が所定の材質特性を得る冷却速度以上で、かつ、150℃/m以下の温度勾配を得られる冷却速度以下の範囲内で、冷却開始温度を低く設定することを特徴とする請求項6に記載の熱処理鋼板の製造方法。
  8. CCT線図を用いて、前記鋼板が所定の材質特性を得る冷却速度以上で、かつ、150℃/m以下の温度勾配を得られる冷却速度以下の範囲内で、冷却速度を小さくすることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の熱処理鋼板の製造方法。
  9. 加熱された鋼板を搬送しながら冷却を行う鋼板冷却装置であって、
    前記鋼板を搬送する搬送手段と、搬送される前記鋼板を冷却する冷却帯と、前記搬送手段及び前記冷却帯の動作を制御する制御部と、通板方向の複数の箇所の鋼板温度求めて温度勾配を推定する温度勾配推定手段と、を有し、
    前記制御部は、前記鋼板が所定の材質特性を得ることが可能な冷却速度を確保するとともに、前記鋼板の通板方向の温度勾配が150℃/m以下となるように、前記鋼板の通板速度及び前記冷却帯の冷却能力のいずれか一方または両方を制御することを特徴とする鋼板冷却装置。
  10. 前記冷却帯は、前記鋼板の通板方向に複数に分割され、分割された冷却帯毎に冷却能力が独立して設定される構成とされており、分割された前記冷却帯では、前記通板方向下流側に向かうにしたがい前記冷却帯の冷却能力が漸次大きくなることを特徴とする請求項9に記載の鋼板冷却装置。
  11. 分割された前記冷却帯に配設される冷却ノズルは、冷却帯ごとにその仕様が定められることを特徴とする請求項10に記載の鋼板冷却装置。
  12. 前記冷却帯毎に前記温度勾配推定手段が設けられていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の鋼板冷却装置。
  13. 前記鋼板の幅端部に、前記鋼板の幅端部の冷却能力を前記鋼板の幅中央部の冷却能力よりも小さくするエッジマスクが設けられていることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の鋼板冷却装置。
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