JP2019064433A - 空気入りタイヤ、空気入りタイヤの製造方法、及び空気入りタイヤの摩耗状態判定方法 - Google Patents

空気入りタイヤ、空気入りタイヤの製造方法、及び空気入りタイヤの摩耗状態判定方法 Download PDF

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南方 伸之
Nobuyuki Namikata
伸之 南方
福田 武司
Takeshi Fukuda
武司 福田
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Abstract

【課題】トラクション性能等の走行性能を損なうことなく、タイヤ又は路面の状態をセンシング可能な空気入りタイヤを提供する。【解決手段】タイヤ又は路面の状態をセンシング可能な空気入りタイヤ1であって、路面に接する陸部(ブロック部)12と、当該陸部12に隣接して配置された強磁性体部材13とを有するトレッド部100aを備え、強磁性体部材13は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが、前記陸部の硬さより小さくなるように構成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤ又は路面の状態をセンシング可能な空気入りタイヤ、当該空気入りタイヤの製造方法、及び当該空気入りタイヤの摩耗状態判定方法に関する。
空気入りタイヤにおいて、その機能や性能を十分に発揮させるためには、タイヤの摩耗状態を常に把握しておくことが望まれる。例えば、空気入りタイヤでは、路面が濡れた状態でのトラクション性能を向上するために、トレッド部にグルーブが形成されている。十分なトラクション性能を維持するためには、ある程度のグルーブの深さが必要であるが、空気入りタイヤの使用によりトレッド部を構成するゴムの摩耗が進行することで、グルーブは次第に浅くなる。そこで、タイヤの摩耗状態を把握するために、グルーブの底部にスリップサインが設けられている。ドライバーや車両管理者等は、トレッド部の表面にスリップサインが出現しているかを目視により確認することで、タイヤの摩耗状態を把握し、タイヤの交換時期を判断することができる。
しかしながら、目視による確認が習慣付いていないドライバーや車両管理者等は、タイヤの交換時期に気付くのが遅れる虞がある。また、使用状況によっては、トレッド部の表面にスリップサインが出現するまでの期間が非常に長くなる場合がある。このような場合、目視による確認を長期間にわたって繰り返す必要があり、その手間が大きいと言える。また、タイヤの使用期間が長くなると、たとえスリップサインが出現していなくてもトレッド部が経年劣化し、安全性を確保できない虞がある。そこで、目視に頼らずにタイヤ又は路面の状態をセンシングしようとする試みがなされている。
例えば、走行中のトレッドの踏面部の温度上昇を用いて、タイヤの摩耗予測を行う装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1では、タイヤをドラムに接触させて走行させ、そのときのトレッドの踏面部の温度をサーモグラフィーによって測定している。
また、車両の走行状態に応じた摩耗状態を示す摩耗データを予め作成しておき、摩耗データと、実走行中に取得した走行状態及び摩耗状態の情報とから摩耗速度を予測する装置が開発されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の装置では、実走行中の摩耗状態の情報を取得するために、円筒形状に形成した磁性粉末ゴムを、円筒形の軸方向がタイヤ径方向に沿うようにタイヤトレッド内に埋設し、磁性粉末ゴムが摩耗することによる磁界の変化を、実走行中の摩耗状態の情報とする手法を用いている。
特開2001−264041号公報 特開2006−327368号公報
しかしながら、特許文献1の装置は、タイヤをドラムに接触させて試験走行させたときの踏面部の温度上昇を全て摩擦熱によると仮定して摩耗を予測するものである。そのため、路面温度の影響を受ける一般道路での実走行時の摩耗予測に適用することは困難である。
また、特許文献2の装置は、レースタイヤの摩耗予測を行うものであり、一般道路での走行を想定したものではない。タイヤトレッドに円筒形状に形成した磁性粉末ゴムを埋設する手法は、タイヤ表面を溶かして高い粘着性を得るレースタイヤ(スリックタイヤ)に用いることを想定した技術であり、乗用車、トラック、バス等に装着され、一般道路での走行に使用される空気入りタイヤに適用した場合に、トラクション性能等の走行性能へ及ぼす影響は考慮されていない。そのため、特許文献2の手法を、一般道路での走行に使用される空気入りタイヤに適用することは困難である。
このように、従来の装置では、空気入りタイヤにおいて、トラクション性能等の走行性能を損なうことなく、精度よくタイヤ又は路面の状態をセンシングする技術は未だ充分に確立されていない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、トラクション性能等の走行性能を損なうことなく、タイヤ又は路面の状態をセンシング可能な空気入りタイヤを提供することを目的とする。さらに、当該空気入りタイヤの製造方法、及び空気入りタイヤの摩耗状態判定方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る空気入りタイヤの特徴構成は、
タイヤ又は路面の状態をセンシング可能な空気入りタイヤであって、
路面に接する陸部と、当該陸部に隣接して配置された強磁性体部材とを有するトレッド部を備え、
前記強磁性体部材は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが、前記陸部の硬さより小さくなるように構成されていることにある。
本構成の空気入りタイヤによれば、路面からの力及び温度等の直接的な影響は路面に接する陸部が受けるが、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが陸部の硬さより小さい強磁性体部材が隣接して配置されているため、路面の状態に応じて陸部に生じる変形、及び陸部自体の摩耗等の状態が、強磁性体部材の形状変化に反映される。また、タイヤの経年劣化が進行すると、陸部の弾性や復元力が低下し、強磁性体部材が陸部に引っ張られて変形し易くなる。そのため、強磁性体部材近傍の磁界変化を磁気センサ等により検出することで、タイヤ又は路面の状態をセンシングすることが可能となる。また、タイヤ又は路面の状態を陸部から直接センシングしないため、従来のタイヤから陸部の構成を変更する必要がなく、陸部によって実現されるトラクション性能等の走行性能を損なうことがない。さらに、強磁性体部材の硬さが陸部の硬さより小さいため、摩耗の進行により強磁性体部材がトレッド面に露出した場合、路面からの力により強磁性体部材が陸部よりも大きく変形し、磁界の変化が顕著になる。そのため、タイヤ交換が必要な摩耗状態に達したことを、磁気センサ等により容易に検知することができる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、JIS K 6253に準拠して測定される前記強磁性体部材の硬さ(a)と、前記陸部の硬さ(b)との硬度比(a/b)が、0.1875以上、1未満であることが好ましい。
本構成の空気入りタイヤによれば、JIS K 6253に準拠して測定される前記強磁性体部材の硬さ(a)と、前記陸部の硬さ(b)との硬度比(a/b)が、適切な範囲に設定されているため、タイヤ又は路面の状態に応じて陸部に生じる変形及び振動等が、強磁性体部材の変形及び振動等に強く反映される。そのため、強磁性体部材近傍の磁界変化を磁気センサ等により検出することで、タイヤ又は路面の状態を高い精度でセンシングすることが可能となる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部は、磁化方向が互いに異なる複数の前記強磁性体部材を有することが好ましい。
本構成の空気入りタイヤによれば、磁化方向が互いに異なる複数の強磁性体部材間に磁気回路が形成されるため、磁気回路により磁束が集中する位置の磁界変化を磁気センサ等で検出することで、センシング精度を向上させることが可能となる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記強磁性体部材は、前記陸部の接触面よりタイヤ径方向中心側に配置されていることが好ましい。
本構成の空気入りタイヤによれば、強磁性体部材が陸部の接触面よりタイヤ径方向中心側に配置されているため、タイヤの使用開始当初には強磁性体部材が直接路面に接することがなく、トラクション性能等の走行性能に影響を及ぼすことがない。また、タイヤの摩耗が進行して、例えば、タイヤ交換が必要な摩耗状態に達して強磁性体部材がトレッド部の表面に露出すると、走行中に強磁性体部材が路面から直接力及び温度等を受けて大きく変形するとともに、強磁性体部材自体の摩耗が生じる。そのため、この時期は強磁性体部材近傍の磁界変化が極めて大きなものになる。このような極めて大きな磁界変化を磁気センサ等により検出することで、タイヤ交換が必要な摩耗状態になったことを、目視に頼らずに容易に検知することが可能となる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記強磁性体部材は、前記トレッド部に周方向に形成された縦グルーブの底部に配置されていることが好ましい。
本構成の空気入りタイヤによれば、強磁性体部材が縦グルーブの底部に配置されているため、摩耗によってタイヤの交換が必要な程度に縦グルーブが浅くなった場合に、トレッド部の表面に強磁性体部材が露出するように構成することができる。そのため、タイヤ交換が必要となる摩耗状態を、磁気センサ等により容易に検知することが可能となる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記強磁性体部材を複数有し、当該複数の強磁性体部材は、タイヤ周方向及び/又はタイヤ幅方向に沿って配列されていることが好ましい。
本構成の空気入りタイヤによれば、強磁性体部材がタイヤ周方向に沿って配列されていることで、タイヤの全体的な摩耗状態を、磁気センサ等により検知することが可能となる。また、強磁性体部材がタイヤ幅方向に沿って配列されていることで、幅方向の何れかの位置で強磁性体部材がトレッド部の表面に露出した場合に、磁気センサ等により偏摩耗を検知することが可能となる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記強磁性体部材を複数有し、当該複数の強磁性体部材のうちの少なくとも2つは、タイヤ径方向に沿った前記陸部の接触面からの深さが互いに異なるように構成されていることが好ましい。
タイヤ径方向に沿った陸部の接触面(トレッド面)からの深さの違いにより、トレッド面に露出する時期にずれが生じるため、本構成の空気入りタイヤの使用期間は、全ての強磁性体部材近傍の磁界変化が同程度である期間、トレッド面からの深さが浅い強磁性体部材近傍のみ磁界変化が極めて大きくなる期間、及び両方の強磁性体部材近傍の磁界変化が極めて大きくなる期間の3つの期間に区分される。そこで、夫々の強磁性体部材のトレッド面からの深さを適切に設定しておくことで、タイヤの交換が必要となる状態だけでなく、例えば、その少し前の状態等を目視に頼らずに磁気センサ等により検知することが可能となる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記強磁性体部材に対向して前記トレッド部の裏側に配置され、磁界の変化を検出する検出部をさらに備えることが好ましい。
本構成の空気入りタイヤによれば、検出部が強磁性体部材に近接した位置に配置されているため、強磁性体部材の変形による磁界の変化を精度よく検出することができる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記強磁性体部材に対向して前記トレッド部の裏側に配置され、前記強磁性体部材との間に磁気回路を形成する磁気結合部材をさらに備えることが好ましい。
本構成の空気入りタイヤによれば、磁気結合部材が強磁性体部材と協働して検出部の配置位置の近傍で磁気回路が形成されるため、検出部の検出精度をより向上することができる。
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記磁気結合部材は、前記検出部よりタイヤ径方向中心側に配置されていることが好ましい。
本構成の空気入りタイヤによれば、検出部が強磁性体部材と磁気結合部材との間に位置することで、検出部の位置で磁束が集中するため、検出部の検出精度を更に向上することができる。
上記課題を解決するための本発明に係る空気入りタイヤの製造方法の特徴構成は、
モールドに充填した材料を加硫してタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法であって、
前記モールドにおいてタイヤの陸部の接触面が形成される位置よりタイヤ径方向中心側の位置に、強磁性体ゴム材料を配置する第1工程と、
前記強磁性体ゴム材料が配置された前記モールドに、未加硫ゴムを含むグリーンタイヤを充填する第2工程と、
前記モールド内で加熱することにより、前記グリーンタイヤ及び前記強磁性体ゴム材料を一体化させる第3工程と、
を包含し、
前記強磁性体ゴム材料は、前記第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定される硬さが、前記第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定される前記グリーンタイヤの陸部の接触面の硬さより小さくなるように選択されることにある。
本構成の空気入りタイヤの製造方法によれば、従来のタイヤ製造工程を大きく変更することなく、モールドにおいてタイヤの陸部の接触面が形成される位置よりタイヤ径方向中心側位置に、第3工程において一体化された後にJIS K 6253に準拠して測定される硬さが、第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定されるグリーンタイヤの陸部の接触面の硬さより小さい強磁性体ゴム材料を配置する工程を実施するだけで、路面に接する陸部と、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが陸部の硬さより小さい強磁性体部材とが、トレッド部において隣接して配置される空気入りタイヤを製造することができる。
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法において、
前記強磁性体ゴム材料は、未加硫ゴムを含み、
前記第3工程における加熱によって、前記グリーンタイヤ及び前記強磁性体ゴム材料を加硫することが好ましい。
本構成の空気入りタイヤの製造方法によれば、加硫成型後に空気入りタイヤのゴムと強磁性体ゴム材料とを強固に一体化させることができる。
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法において、
前記強磁性体ゴム材料は、前記グリーンタイヤが配される側に、接着剤が塗布されており、
前記第3工程における加熱によって、前記グリーンタイヤ及び前記強磁性体ゴム材料が前記接着剤で接着することが好ましい。
本構成の空気入りタイヤの製造方法によれば、架橋反応に硫黄を用いないゴム材料、及び非架橋性のゴム材料等の加硫しないゴム材料で構成した強磁性体ゴム材料を、グリーンタイヤの加硫時に接着剤で接着して一体化することができる。
上記課題を解決するための本発明に係る空気入りタイヤの製造方法の特徴構成は、
モールドに充填した材料を加硫してタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法であって、
未加硫ゴムを含むグリーンタイヤのトレッド面の縦グルーブが形成される位置に、強磁性体ゴム材料を配置する第1工程と、
前記強磁性体ゴム材料が配置された前記グリーンタイヤを、前記モールドに充填する第2工程と、
前記モールド内で加熱することにより、前記グリーンタイヤ及び前記強磁性体ゴム材料を一体化させる第3工程と、
を包含し、
前記強磁性体ゴム材料は、前記第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定される硬さが、前記第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定される前記グリーンタイヤの陸部の接触面の硬さより小さくなるように選択されることにある。
本構成の空気入りタイヤの製造方法によれば、グリーンタイヤのトレッド面の縦グルーブが形成される位置に、第3工程において一体化された後にJIS K 6253に準拠して測定される硬さが、第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定されるグリーンタイヤの陸部の接触面の硬さより小さい強磁性体ゴム材料を配置する工程を実施するだけで、路面に接する陸部と、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが陸部の硬さより小さい強磁性体部材とが、トレッド部において隣接して配置される空気入りタイヤを製造することができる。
上記課題を解決するための本発明に係る空気入りタイヤの摩耗状態判定方法の特徴構成は、
空気入りタイヤの摩耗状態判定方法であって、
路面に接する陸部と、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが前記陸部の硬さより小さい強磁性体部材とが、トレッド部において隣接して配置されている空気入りタイヤにおいて、
前記強磁性体部材近傍の磁界の変化を検出する検出ステップと、
検出した磁界の変化に応じて前記トレッド部の摩耗状態を判定する判定ステップと、
を包含する
ことにある。
空気入りタイヤの使用開始当初には強磁性体部材が直接路面の影響を受けることがなく、陸部から間接的に影響を受けることで、走行中の強磁性体部材の変形が抑えられるため、この時期に検出される強磁性体部材近傍の磁界変化が過度に大きくなることはない。しかし、空気入りタイヤの摩耗が進行して、強磁性体部材がトレッド部の表面に露出すると、あるいは空気入りタイヤの経年劣化により、トレッド部の弾性や復元力が低下すると、その後は走行中に強磁性体部材の変形、又は強磁性体部材自体の摩耗が生じるため、この時期に検出される強磁性体部材近傍の磁界変化は極めて大きなものになる。このように、空気入りタイヤの使用期間は、検出ステップにおいて検出される磁界変化が顕著に異なる2つの期間に区分される。そのため、本構成の空気入りタイヤの摩耗状態判定方法によれば、タイヤ交換が必要な摩耗状態になったことを、目視に頼らずに、強磁性体部材近傍の磁界の変化に基づいて判定することが可能となる。
本発明に係る空気入りタイヤの摩耗状態判定方法において、前記空気入りタイヤにはタイヤ径方向に沿った前記陸部の接触面からの深さが互いに異なるように構成された複数の前記強磁性体部材が配置されており、前記検出ステップでは、前記複数の強磁性体部材のそれぞれについて近傍の磁界の変化を検出し、前記判定ステップでは、前記複数の強磁性体部材のうち、検出した磁界の変化が所定量を超えたものに応じて前記トレッド部の摩耗状態を判定することが好ましい。
空気入りタイヤのトレッド部の摩耗が進行すると、陸部(トレッド部)の接触面(トレッド面)からの深さが浅い強磁性体部材から順にトレッド面に露出し、近傍での磁界の変化が所定量を超えて大きくなる。つまり、どの強磁性体部材の近傍での磁界の変化が所定量を超えたかによって、現在の摩耗量を判定することができる。そのため、本構成の空気入りタイヤの摩耗状態判定方法によれば、トレッド部の摩耗状態を適切に判定することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの一部切り欠き斜視図である。 図2は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの周方向に沿った断面図である。 図3は、強磁性体部材の説明図である。 図4は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部の幅方向に沿った断面図である。 図5は、本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部の幅方向に沿った断面図である。 図6は、本発明の第3実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部の幅方向に沿った断面図である。 図7は、本発明の第5実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の幅方向に沿った断面図である。 図8は、本発明の第6実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の幅方向に沿った断面図である。 図9は、第1磁気センサ及び第2磁気センサでの検出結果の時間変化を示すグラフである。 図10は、本発明の第7実施形態に係る空気入りタイヤの摩耗状態判定方法の処理手順を示すフローチャートである。 図11は、別実施形態に関する説明図である。 図12は、別実施形態に関する説明図である。
本発明の空気入りタイヤは、従来公知の各種空気入りタイヤ(空気入りラジアルタイヤ、空気入りバイアスタイヤ等)のトレッド部に、トレッド面よりタイヤ径方向中心側に強磁性体部材を配置したものである。
以下、本発明について、図1〜図12を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、乗用車、トラック、バス、二輪車等に装着される空気入りラジアルタイヤ(以下、単に「タイヤ」と称する場合がある。)を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ1の一部切り欠き斜視図である。図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接するトレッド部100a、トレッド部100aの両側に位置するショルダー部100b、空気入りタイヤ1の側面を形成するサイドウォール部100c、及びサイドウォール部100cの内周側(リム側)に位置するビード部100dを備えている。
トレッド部100aは、タイヤ径方向外側の表面に縦グルーブ11、ブロック部12、及び強磁性体部材13を有する。縦グルーブ11は、周方向に延在する溝であり、図1では、タイヤ幅方向Wに4本が並んでいる例が示されている。陸部であるブロック部12は、縦グルーブ11を挟むように複数形成され、その頂部が路面に接する接触面としてのトレッド面12aを形成する。強磁性体部材13は、タイヤ径方向の中心側がN極となり、外側がS極となるように着磁されている強磁性体を含む部材であり、縦グルーブ11の底部に複数配置されている。トレッド部100aのタイヤ径方向中心側(以下、「トレッド部100aの裏側」と称する。)の表面には、縦グルーブ11を挟んで夫々の強磁性体部材13と対向する位置に複数の磁気センサ14が装着されている。磁気センサ14は、強磁性体部材13の近傍の磁界を検出する。このような磁気センサ14としては、リードスイッチ、磁気抵抗素子、ホール素子、コイル、インダクタ、MI素子(磁気インピーダンス素子)、及びフラックスゲートセンサ等が挙げられる。このうち好ましいのはホール素子であり、これは広範囲にわたって高い感度を有し、磁気センサ14として有用なためである。
図2は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ1の周方向に沿った断面図である。図2では、縦グルーブ11を含む断面を図示している。強磁性体部材13は、路面Gに接するトレッド面12aより、その頂部がタイヤ径方向中心側に位置するように、縦グルーブ11の底部に形成されている。図2では、1本の縦グルーブ11の底部に9個の強磁性体部材13が配され、空気入りタイヤ1の回転中心Oに対して40°間隔で並ぶ例が示されている。なお、1本の縦グルーブ11の底部に配される強磁性体部材13の数は、2個以上であればよく、4〜9個であることがより好ましい。空気入りタイヤ1では、路面Gに接するトレッド面12aから強磁性体部材13の頂部までのタイヤ径方向に沿った深さΔdに応じて、摩耗によって強磁性体部材13がトレッド部100aの表面に露出するまでの期間が定まる。
図3は、強磁性体部材13の説明図である。図3(a)は、トレッド部100aの一部を切り出した斜視図である。強磁性体部材13は、縦グルーブ11の底部において、縦グルーブ11をタイヤ幅方向に横断するように配置されており、ブロック部12の側面と接する。強磁性体部材13は、タイヤ幅方向の両側面でブロック部12と一体に形成されていることが好ましい。図3(b)は、空気入りタイヤ1が未使用状態であるときのトレッド部100aのタイヤ周方向に沿う断面図である。未使用状態では、縦グルーブ11の深さd1が、縦グルーブ11の底部から強磁性体部材13の頂部13aまでの高さh(以下、単に「高さh」と称する。)よりも大きい。そのため、タイヤの使用開始当初には強磁性体部材13が路面に接することがなく、従来のタイヤと同様にブロック部12が路面に接することによって十分なトラクション性能等の走行性能が得られる。
図3(c)は、空気入りタイヤ1の摩耗が進行した状態にあるときのトレッド部100aのタイヤ周方向に沿う断面図である。図3(c)に示す状態では、ブロック部12の摩耗により縦グルーブ11の深さd2と、高さhとが一致し、強磁性体部材13の頂部13aがトレッド部100aの表面に露出している。そのため、強磁性体部材13が路面に接することになり、走行中の強磁性体部材13の変形が、図3(b)の状態よりも大きくなる。この結果、磁気センサ14による検出値には、走行中に強磁性体部材13が路面に接触する周期で磁界が増減する波形(以下、「接触波形」と称する。)が出現する。
このように、図3(b)に示す状態と、図3(c)に示す状態とでは、磁気センサ14による検出結果が相違する。そのため、磁気センサ14の検出値を参照することで、空気入りタイヤ1の目視に頼らずに、摩耗による空気入りタイヤ1の状態変化を検知することができる。特に、磁気センサ14の検出値における接触波形の出現を、空気入りタイヤ1のタイヤ交換が必要な状態(以下、「要交換状態」と称する。)となったときと一致させるために、高さhは、タイヤ交換が推奨される縦グルーブ11の深さ(すなわち、スリップサインの位置と同じ深さ)に設定することが好ましい。具体的には、1〜10mmであることが好ましく、1.5〜5mmであることがより好ましい。高さhが1mmより低いと、摩耗の検知が遅れる虞がある。このような場合、濡れた路面でのトラクション性能が不十分な状態となり、安全性に問題が生じる虞がある。高さhが10mmより高いと、縦グルーブ11がまだ十分に深く、空気入りタイヤ1のトラクション性能に問題が生じていない状態で、磁気センサ14の検出値に接触波形が出現することになる。このような場合、ドライバーや車両管理者等が、接触波形の出現後もタイヤ交換を見合わせ、結果的に適切なタイヤ交換時期を逸する虞がある。
強磁性体部材13は、タイヤ周方向に沿う断面の形状が、頂部13a側を上底とした台形状であることが好ましい。このような断面形状であれば、路面に接する頂部13aの面積が小さいため、図3(c)に示す状態になった場合に、路面からの力を捉えて強磁性体部材13が圧縮変形しやすくなる。これにより、接触波形を発生させやすくできる。また、一般に磁石は、磁化方向の長さが短いほど表面磁束密度が小さくなる。強磁性体部材13は、図3(c)に示す状態になった後に更に摩耗が進行した場合に、磁化方向に沿った高さhが減少するため、表面磁束密度が大幅に減少することになる。表面磁束密度の顕著な減少は、磁気センサ14において検出する磁束密度の減少として比較的容易に検知可能であるため、強磁性体部材13がトレッド部100aの表面に露出したか否かの判定に用いることができる。また、表面磁束密度の顕著な減少の検知を、接触波形の検知と併用することで、摩耗による空気入りタイヤ1の状態変化をより詳細にセンシングすることができる。なお、強磁性体部材13は、タイヤ周方向に沿う断面の形状が台形状のものに限定されないが、図3(c)に示す状態になった場合に、路面に効率よく接触して路面からの力により圧縮変形しやすい形状であることが好ましい。例えば、強磁性体部材13の形状は、円柱状、円錐状、円錐台状、多角柱状、多角錐状、多角錐台状、球状、又は楕円球状等であってもよい。
強磁性体部材13は、磁性フィラーを分散させたゴム材料からなる。磁性フィラーとしては、希土類系、鉄系、コバルト系、ニッケル系、酸化物系などが挙げられるが、より高い磁力が得られるネオジム、又は熱に強いフェライトの使用が好ましい。磁性フィラーの形状は、特に限定されるものではなく、球状、扁平状、針状、柱状、及び不定形のいずれであってよい。磁性フィラーは、着磁後にゴム材料に導入しても構わないが、ゴム材料に導入した後に着磁することが好ましい。導入した後に着磁することで磁石の極性の制御が容易となり、磁界の検出が容易になる。強磁性体部材13に用いるゴム材料としては、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、又はそれらの混合物を用いることができる。熱硬化性エラストマーとしては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、及び天然ゴム等を挙げることができるが、ブロック部12の材料と同じゴム材料を用いることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
強磁性体部材13は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さ(以下、単に「硬さ」と称する場合がある。)が、強磁性体部材13と接するブロック部12の硬さより小さくなるように構成される。ブロック部12は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さ(b)が50〜80であることが好ましく、60〜70であることがより好ましい。ブロック部12の硬さ(b)が50〜80であれば、十分な走行性能が得られる。
強磁性体部材13は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さ(a)が15〜60であることが好ましく、30〜50がより好ましい。強磁性体部材13の硬さ(a)が15〜60であれば、強磁性体部材13が十分な柔軟性を有し、路面に直接接するブロック部12を介して走行中のタイヤの状態及び/又は路面の状態に応じた力を受けることによって、強磁性体部材13の形状がセンシング可能な程度に変形する。強磁性体部材13の硬さが15未満の場合、強磁性体部材13の強度が不足し、強磁性体部材13が過剰に変形することで、正確なセンシングが困難になる虞がある。また、強磁性体部材13の硬さは、磁性フィラーの配合量が多いほど大きくなる。そのため、強磁性体部材13の硬さが15未満の場合、充填可能な磁性フィラーの量が少なく、センシングに必要な磁力が得られない虞がある。強磁性体部材13の硬さが60を超える場合、強磁性体部材13に十分な柔軟性が得られず、路面に直接接するブロック部12を介して力がかかった場合でも、強磁性体部材13が十分に変形しない虞がある。
強磁性体部材13の硬さ(a)と、ブロック部12の硬さ(b)との硬度比(a/b)は、0.1875以上、1未満であることが好ましく、0.45以上、0.7未満がより好ましい。硬度比(a/b)が0.1875以上、1未満であれば、ブロック部12の適切な硬さによって十分な走行性能が維持され、走行中にブロック部12から受ける力により強磁性体部材13が十分に変形する。そのため、強磁性体部材13の変形による磁界変化を磁気センサ14で検出することで、タイヤの使用開始当初からタイヤの摩耗状態及び/又は路面の状態をセンシングすることができる。硬度比(a/b)が0.1875未満の場合、ブロック部12が硬すぎるために強磁性体部材13へ十分な力が伝えられない虞や、強磁性体部材13が軟らかすぎるために過剰に変形することで、正確なセンシングが困難になる虞がある。硬度比(a/b)が1以上である場合、強磁性体部材13に十分な柔軟性が得られず、ブロック部12を介して力を受けた場合でも、強磁性体部材13が変形しない虞がある。この結果、強磁性体部材13がトレッド部100aの表面に露出していない状態で、タイヤの摩耗状態及び/又は路面の状態をセンシングすることが困難になる。
図4は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部100aの一部の幅方向に沿った断面図である。図4では、強磁性体部材13近傍の磁界を磁力線により示している。強磁性体部材13の変形による磁界の変化を磁気センサ14において検知するためには、トレッド部100aを構成するゴム、プライ、インナーライナー等を挟んで配置された磁気センサ14の位置で、十分な磁束密度が必要になる。そこで、強磁性体部材13の表面磁束密度は、0.3〜50mTであることが好ましく、0.6〜20mTであることがより好ましい。強磁性体部材13の表面磁束密度が0.3〜50mTであれば、トレッド部100a内側に装着された磁気センサ14において、強磁性体部材13が磁界に及ぼす影響を十分に検出できる。表面磁束密度が0.3mTより低い値であれば、磁気センサ14の位置で強磁性体部材13が磁界に及ぼす影響が弱く、強磁性体部材13の変形により生じる磁界の変化を磁気センサ14において十分に検出できない虞がある。50mTより高い値であれば、走行中に鉄粉等の吸着量が多くなり、走行性能へ影響を及ぼす虞がある。
空気入りタイヤ1は、タイヤ材料をモールド内に充填して加硫成型することにより製造される。特に、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法では、加硫金型であるモールドにグリーンタイヤをセットする前に、ゴム材料に磁性フィラーを分散させた強磁性体ゴム材料をモールドに配置しておき、加硫工程でグリーンタイヤと一体化させるだけで、従来のタイヤ製造工程を大きく変更することなく、空気入りタイヤ1を製造することができる。
より詳細には、先ず、ゴム材料に磁性フィラーを分散させた強磁性体ゴム材料を製造する。ここで天然ゴム、ジエン系合成ゴム等の架橋反応に硫黄を用いるゴム材料を使用する場合は、未加硫のゴム材料とフェライト粉等の強磁性体である磁性フィラーとを混錬したものを強磁性体ゴム材料とすることができる。塩素系アクリルゴム、エポキシ系アクリルゴム、及びシリコーンゴム等の架橋反応に硫黄を用いないゴム材料、又は熱可塑性エラストマー等の非架橋性のゴム材料を使用する場合は、ゴム材料とフェライト粉等の強磁性体である磁性フィラーとの混錬物の表面の一部に加硫接着剤を塗布したものを強磁性体ゴム材料とすることができる。なお、強磁性体ゴム材料は、ゴム材料及び磁性フィラーの種類の選択や配合比の調整により、加硫工程後にJIS K 6253に準拠して測定される硬さが、加硫後のグリーンタイヤのトレッド面の硬さより小さくなるように構成する。次に、製造した強磁性体ゴム材料を着磁する。このとき、架橋反応に硫黄を用いないゴム材料又は非架橋性のゴム材料を使用した強磁性体ゴム材料は、加硫接着剤を塗布した面がN極となるように着磁する。
次に、スリップサインを有する空気入りタイヤを製造するためのモールドと同様の形状のモールドにおいて、従来、スリップサインを形成していた位置に、強磁性体ゴム材料を配置する。この位置は、モールドにおいてタイヤのトレッド面が形成される位置よりタイヤ径方向中心側の位置であり、且つモールドにおいてタイヤのブロック部12が形成される位置と隣接する位置である。このとき、強磁性体ゴム材料は、タイヤ径方向の中心側にN極を向け、外側にS極を向けて配置する。また、架橋反応に硫黄を用いないゴム材料、又は非架橋性のゴム材料を使用した強磁性体ゴム材料は、加硫接着剤を塗布した面を、タイヤ径方向中心側に向けて配置する。モールドへの強磁性体ゴム材料の配置では、モールドの外側に磁石を設けておくことで、強磁性体ゴム材料を所望の位置に固定することができる。その後、強磁性体ゴム材料が配置されたモールドに、未加硫ゴムを含むグリーンタイヤを充填し、モールド内で加熱してグリーンタイヤと、強磁性体ゴム材料又は加硫接着剤に含まれる未加硫ゴムとを加硫し、成型することで、グリーンタイヤ及び強磁性体ゴム材料を一体化させる。この結果、トレッド部100aに強磁性体部材13が一体に設けられた空気入りタイヤ1が得られる。
なお、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法では、グリーンタイヤをモールドにセットする前に、グリーンタイヤの表面に強磁性体ゴム材料を配置することでも、空気入りタイヤ1を製造することができる。具体的には、先ず、未加硫ゴムを含むグリーンタイヤのトレッド面の縦グルーブが形成される位置に、強磁性体ゴム材料を配置する。グリーンタイヤの表面に強磁性体ゴム材料を配置する工程では、例えば、グリーンタイヤを一定角度回転させる毎に、強磁性体ゴム材料を配置することで、図2に示す空気入りタイヤ1のように、タイヤ周方向に等間隔に強磁性体部材13を設けることができる。次に、表面に強磁性体ゴム材料が配置されたグリーンタイヤをモールドに充填する。ここでモールドには、タイヤのトレッド面が形成される位置よりタイヤ径方向中心側の位置に凹部が形成されているものを用い、強磁性体ゴム材料が凹部に収容されるように、グリーンタイヤを位置決めする。その後、モールド内で加熱してグリーンタイヤと、強磁性体ゴム材料又は加硫接着剤に含まれる未加硫ゴムとを加硫成型することで、グリーンタイヤ及び強磁性体ゴム材料を一体化させる。この結果、トレッド部100aに強磁性体部材13が一体に設けられた空気入りタイヤ1が得られる。
なお、モールドにグリーンタイヤをセットする前に強磁性体ゴム材料をモールドに配置しておく製造方法では、強磁性体ゴム材料は、モールドに配置する前に着磁しなくてもよい。また、モールドにグリーンタイヤをセットする前にグリーンタイヤの表面に強磁性体ゴム材料を配置しておく製造方法では、強磁性体ゴム材料は、グリーンタイヤの表面に配置する前に着磁しなくてもよい。これらの場合、加硫形成後に得られた空気入りタイヤにおいて、強磁性体部材13に相当する部位を着磁することで、空気入りタイヤ1が得られる。また、強磁性体ゴム材料の製造に、着磁済みの磁性フィラーを用いてもよい。
また、モールドにグリーンタイヤをセットする前に強磁性体ゴム材料をモールドに配置しておく製造方法では、架橋反応に硫黄を用いないゴム材料、又は非架橋性のゴム材料を使用した場合に、強磁性体ゴム材料への加硫接着剤の塗布は、強磁性体ゴム材料をモールドへ配置した後に行ってもよい。
また、モールドにグリーンタイヤをセットする前に強磁性体ゴム材料をモールドに配置しておく製造方法、及びモールドにグリーンタイヤをセットする前にグリーンタイヤの表面に強磁性体ゴム材料を配置しておく製造方法の何れの製造方法においても、架橋反応に硫黄を用いるゴム材料で強磁性体ゴム材料を構成する場合、グリーンタイヤと強磁性体ゴム材料とは、未加硫の同じゴム材料を含むことが好ましい。架橋反応に硫黄を用いないゴム材料又は非架橋性のゴム材料で強磁性体ゴム材料を構成する場合、グリーンタイヤと強磁性体ゴム材料に塗布する加硫接着剤とは、未加硫の同じゴム材料を含むことが好ましい。これらの場合、加硫成型後にトレッド部100aのゴムと強磁性体部材13とが強固に一体化する。さらに、架橋反応に硫黄を用いないゴム材料又は非架橋性のゴム材料で強磁性体ゴム材料を構成する場合に、加硫接着剤に替えて、溶剤に基材を溶解させた溶剤型接着剤等を用いることも可能である。溶剤型接着剤を用いる場合、グリーンタイヤを加硫する工程における加熱によって溶剤を気化させ、グリーンタイヤと磁性体ゴム材料とを接着して一体化することができる。
以上、説明したように、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1は、路面からの力及び温度等の直接的な影響は路面に接するブロック部12が受けるが、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが、ブロック部12の硬さより小さくなるよう構成された強磁性体部材13が隣接して配置されているため、路面の状態に応じてブロック部12に生じる変形、及びブロック部12自体の摩耗等の状態等が、強磁性体部材13の形状変化に反映される。また、タイヤの経年劣化が進行すると、ブロック部12の弾性や復元力が低下し、強磁性体部材13がブロック部12に引っ張られて変形し易くなる。そのため、強磁性体部材13近傍の磁界変化を磁気センサ14により検出することで、タイヤ又は路面の状態をセンシングすることが可能となる。
例えば、ブロック部12が路面からの力によりタイヤ径方向に押しつぶされるように変形した場合、強磁性体部材13は、両側面に隣接するブロック部12から圧力を受けて圧縮変形する。強磁性体部材13の側方からの圧縮変形により、強磁性体部材13のゴム材料中に分散する磁性フィラーの粒子は、凝集、拡散、又は回転することになる。磁性フィラーの粒子が凝集、拡散を繰り返すことで磁界パルスが形成され、磁性フィラーの粒子が回転することで磁極の集中又は相殺が生じるため、これらを磁気センサ14で容易に検出することができる。さらに、強磁性体部材13は、ブロック部12と一体に形成されていることで、ブロック部12が路面からの力によりタイヤ径方向に押しつぶされるように変形した場合、ブロック部12の変形に引きずられてタイヤ径方向にも変形する。このような変形により、強磁性体部材13のゴム材料中に分散する磁性フィラーの位置をタイヤ径方向に変位させることができる。磁性フィラーのタイヤ径方向の変位により、磁気センサ14との距離変化が生じるため、これを磁気センサ14で容易に検出することができる。このように強磁性体部材13の形状変化を、磁気センサ14で検出することで、その強度、周期等から空気入りタイヤ1の路面に対する滑り、加速度、躍度、及び振動等をセンシングすることが可能となる。また、路面接触により空気入りタイヤ1が変形することによっても、強磁性体部材13は、両側面に隣接するブロック部12から圧力を受けて圧縮変形する。そのため、強磁性体部材13の形状変化を磁気センサ14で検出することで、空気入りタイヤ1の空気圧をセンシングすることが可能となる。
また、タイヤ又は路面の状態をブロック部12から直接センシングしないため、従来のタイヤからブロック部12の構成を変更する必要がなく、ブロック部12によって実現されるトラクション性能等の走行性能を損なうことがない。さらに、強磁性体部材13の硬さがブロック部12の硬さより小さいため、摩耗の進行により強磁性体部材13がトレッド面12aに露出した場合、路面からの力により強磁性体部材13がブロック部12よりも大きく変形し、磁界の変化が顕著になる。そのため、タイヤ交換が必要な摩耗状態に達したことを、磁気センサ14により容易に検知することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態では、ヨーク(継鉄)を有する空気入りタイヤ1について説明する。ここでは、第1実施形態における空気入りタイヤ1と同様の構成については説明を省略する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部100aの一部の幅方向に沿った断面図である。図5では、強磁性体部材13近傍の磁界を磁力線により示している。第2実施形態に係る空気入りタイヤ1では、磁気センサ14のタイヤ径方向中心側の表面に、磁気結合部材であるヨーク15が設けられている。図5に示すように、ヨーク15は、強磁性体部材13と協働して磁気回路を形成する。
このような構成を有する第2実施形態に係る空気入りタイヤ1では、強磁性体部材13とヨーク15との間に位置する磁気センサ14に磁束が集中するため、磁気センサ14の検出精度を向上させることができる。この結果、接触波形をより精度よく検出することが可能になるため、空気入りタイヤ1が要交換状態になったことを、目視に頼らずに磁気センサ14の検出値により検知することがさらに容易になる。
<第3実施形態>
第3実施形態では、強磁性体部材が軟磁性体である空気入りタイヤ1について説明する。ここでは、第1実施形態における空気入りタイヤ1と同様の構成については説明を省略する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部100aの一部の幅方向に沿った断面図である。図6では、強磁性体部材13近傍の磁界を磁力線により示している。第3実施形態に係る空気入りタイヤ1では、縦グルーブ11の底部に強磁性体部材16が設けられ、磁気センサ14のタイヤ径方向中心側の表面に、磁気結合部材であるバイアス磁石17が設けられている。図6に示すように、強磁性体部材16は、バイアス磁石17と協働して磁気回路を形成する。
強磁性体部材16は、軟磁性体の磁性フィラーを分散させたゴム材料からなる。軟磁性の磁性フィラーとしては、純鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、ソフトフェライト、鉄−ケイ素系合金、鉄−ニッケル系合金、及び鉄−コバルト系合金等の軟質磁性材料の粉末が挙げられるが、特に、炭素鋼の使用が好ましい。軟質磁性材料の粉末は、表面処理をしてもしなくても良いが、耐食性などの観点から表面処理することが好ましい。強磁性体部材16に用いるゴム材料としては、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、又はそれらの混合物を用いることができる。熱硬化性エラストマーとしては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、及び天然ゴム等を挙げることができるが、ブロック部12の材料と同じゴム材料を用いることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。バイアス磁石17は、タイヤ径方向の中心側がN極となり、外側がS極となるように配されたフェライト磁石等の永久磁石である。
このような構成を有する第3実施形態に係る空気入りタイヤ1では、強磁性体部材16とバイアス磁石17との間に位置する磁気センサ14に磁束が集中するため、磁気センサ14の検出精度を向上させることができる。この結果、接触波形をより精度よく検出することが可能になるため、空気入りタイヤ1が要交換状態になったことを、目視に頼らずに磁気センサ14の検出値により容易に検知することができる。また、トレッド部100aの表側に設けられた強磁性体部材13が軟磁性体であるため、走行中に鉄粉等の吸着が少なく、走行性能へ影響を及ぼすことがない。
<第4実施形態>
第4実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ交換時期を検知する用途を想定したタイヤである。本実施形態では、強磁性体部材13が路面に直接接するまで強磁性体部材13の変形を抑えることで、路面に直接接した後の強磁性体部材13の変形を明確に検知できるように空気入りタイヤ1を構成する。このような構成は、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1と同様の構成において、JIS K 6253に準拠して測定される強磁性体部材13の硬さを適切な値に変更することで、実現することができる。
第4実施形態に係る空気入りタイヤ1では、強磁性体部材13は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが、強磁性体部材13と接するブロック部12のJIS K 6253に準拠して測定される硬さより小さいことが好ましい。具体的には、ブロック部12は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが50〜80であることが好ましく、60〜70であることがより好ましい。ブロック部12の硬さが50〜80であれば、十分な走行性能が得られる。強磁性体部材13は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが35〜79であることが好ましく、50〜69がより好ましい。強磁性体部材13の硬さが35〜79であれば、強磁性体部材13がトレッド部100aの表面に露出する前は、強磁性体部材13の変形を抑制することができる。強磁性体部材13の硬さが35未満の場合、強磁性体部材13の強度が不足し、トレッド部100aの表面に露出していない状態であっても、路面に直接接するブロック部12を介して力がかかることによって、走行中に強磁性体部材13が変形する虞がある。この場合、要交換状態となる前後で、磁界変化の違いを正確に検知するためには、センシングに高い精度が必要となる。高精度の磁気センサの使用は、コスト面でのデメリットとなりえる。強磁性体部材13の硬さが79を超える場合、強磁性体部材13が空気入りタイヤ11の形状変化にうまく追随することができず、走行性に影響を及ぼす虞や、強磁性体部材13が空気入りタイヤ1から脱落してしまう虞がある。
第4実施形態に係る空気入りタイヤ1では、強磁性体部材13がトレッド部100aよりタイヤ径方向中心側に配置され、タイヤの使用開始当初には強磁性体部材13が接路面の影響を受けることがなく、走行中の強磁性体部材の変形が抑えられる。そのため、この時期は強磁性体部材13近傍の磁界変化が微小なものになる。しかし、タイヤの摩耗が進行して、強磁性体部材13がトレッド部100aの表面に露出すると、その後は走行中に強磁性体部材13の変形、及び強磁性体部材13自体の摩耗が生じる。また、タイヤの経年劣化が進行すると、トレッド部100aの弾性や復元力が低下し、強磁性体部材13がトレッド部100aに引っ張られて変形し易くなる。そのため、この時期は強磁性体部材13近傍の磁界変化が比較的大きなものになる。このように、第4実施形態に係る空気入りタイヤ1の使用期間は、磁界変化の様相が顕著に異なる2つの期間に区分される。そこで、強磁性体部材13の高さhを適切に設定しておくことで、タイヤの使用条件に関わらず、要交換状態になったことを、目視に頼らずに磁気センサ14の検出値により容易に検知することが可能となる。
<第5実施形態>
第5実施形態では、磁化方向が互いに異なるように配置された複数の強磁性体部材を有する空気入りタイヤ1について説明する。ここでは、第4実施形態における空気入りタイヤ1と同様の構成については説明を省略する。
図7は、本発明の第5実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部100aの幅方向に沿った断面図である。図7では、トレッド部100aの幅方向の断面における強磁性体部材113a〜113d近傍の磁界を磁力線により示している。
第5実施形態に係る空気入りタイヤ1では、タイヤ幅方向に並ぶ4本の縦グルーブ11a〜11dがトレッド部100aに形成され、夫々の底部には、強磁性体部材113a〜113dが配されている。縦グルーブ11aの底部に配された強磁性体部材113aは、タイヤ径方向中心側がS極であり、縦グルーブ11bの底部に配された強磁性体部材113bは、タイヤ径方向中心側がN極である。このような配置により、互いに隣接する強磁性体部材113aと強磁性体部材113bとは、磁気回路を形成している。また、縦グルーブ11cの底部に配された強磁性体部材113cは、タイヤ径方向中心側がN極であり、縦グルーブ11dの底部に配された強磁性体部材113dは、タイヤ径方向中心側がS極であり、強磁性体部材113cと強磁性体部材113dとは、磁気回路を形成している。一方、強磁性体部材113bと強磁性体部材113cとは隣接しているが、磁化方向が同じであるため、磁気回路を形成していない。
トレッド部100aの内側では、強磁性体部材113aと強磁性体部材113bとの間に対応する位置、及び強磁性体部材113cと強磁性体部材113dとの間に対応する位置に、磁気センサ14が装着されている。それぞれの磁気センサ14の位置では、強磁性体部材113aと強磁性体部材113bとが形成する磁気回路、及び強磁性体部材113cと強磁性体部材113dとが形成する磁気回路により磁束が集中するため、磁気センサ14の検出精度を向上させることができる。そのため、第5実施形態に係る空気入りタイヤ1では、強磁性体部材113a〜113dの変形による磁界変化を、磁気センサ14において高精度に検出することができる。これにより、タイヤの使用開始当初からタイヤの状態及び/又は路面の状態を高精度にセンシングすることができる。
<第6実施形態>
第6実施形態では、タイヤ径方向に沿ったトレッド面からの深さが互いに異なる2種類の強磁性体部材を有する空気入りタイヤ1について説明する。ここでは、第1実施形態における空気入りタイヤ1と同様の構成については説明を省略する。
図8は、本発明の第6実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部100aの幅方向に沿った断面図である。図8(a)、及び(b)は、それぞれ空気入りタイヤ1の回転中心Oに対し周方向に異なる角度での断面を示している。
図8(a)に示す位置では、縦グルーブ11の底部に強磁性体部材13Lが配されている。強磁性体部材13Lは、縦グルーブ11の底部からの高さh1が、タイヤ交換が推奨される縦グルーブ11の深さと一致するように構成されており、空気入りタイヤ1が要交換状態となったときにトレッド部100aの表面に露出する。そのため、強磁性体部材13Lに対向する第1磁気センサ14aは、タイヤが要交換状態となった後に接触波形を検知し、これを出力する。
図8(b)に示す位置では、縦グルーブ11の底部に強磁性体部材13Hが配されている。強磁性体部材13Hは、縦グルーブ11の底部からの高さh2が、強磁性体部材13Lの高さh1より高く構成されており、空気入りタイヤ1が要交換状態となる前にトレッド部100aの表面に露出する。そのため、強磁性体部材13Hに対向する第2磁気センサ14bは、タイヤが要交換状態となる前に接触波形を検知し、これを出力する。
図9は、第1磁気センサ14a及び第2磁気センサ14bでの検出結果の時間変化を示すグラフである。ホール素子等の磁気センサの出力は、磁束密度(T)に応じた電圧(V)であるが、図9では説明の簡易化のために、タイヤ使用開始時での夫々の磁気センサの出力を基準とした任意単位(a.u.)を用いている。また、磁気センサの出力には、接触波形が出現していない状態であっても微小な変動が生じるが、その振幅は接触波形の振幅と比較して極めて小さく、接触波形との識別は容易である。そのため、図9では、接触波形が出現していない状態での磁気センサの出力をフラットに描いている。
タイヤ使用開始から、強磁性体部材13Hがトレッド部100aの表面に露出するまでの期間(第1期)は、第1磁気センサ14a、及び第2磁気センサ14bの何れの出力にも、接触波形は出現しない。
しかし、ブロック部12の摩耗が進行すると、縦グルーブ11の底部からの高さの違いにより、強磁性体部材13Hはトレッド部100aの表面に露出し、強磁性体部材13Lはトレッド部100aの表面に露出していない状態(以下、「要注意状態」と称する。)となる。要注意状態となった時点から更にブロック部12の摩耗が進行し、強磁性体部材13Lもトレッド部100aの表面に露出するまでの期間(第2期)は、第2磁気センサ14bの出力にのみ接触波形が出現し、第1磁気センサ14aの出力には接触波形が出現しない。また、第2期では、強磁性体部材13Hも摩耗するため、強磁性体部材13Hの摩耗とともに第2磁気センサ14bの位置での磁束密度が減衰し、その検出値も低下していく。
強磁性体部材13Lがトレッド部100aの表面に露出した要交換状態となった後の期間(第3期)は、第1磁気センサ14a、及び第2磁気センサ14bの両方の出力に接触波形が出現する。また、第3期では、強磁性体部材13H、及び13Lも摩耗するため、強磁性体部材13H、及び13Lの摩耗とともに第1磁気センサ14a、及び第2磁気センサ14bの位置での磁束密度が減衰し、それらの検出値も低下していく。
このように、第6実施形態に係る空気入りタイヤ1では、強磁性体部材13H、及び13Lの高さの違いにより、トレッド部100aの表面に露出する時期に時間的なずれが生じるため、空気入りタイヤ1の使用期間は、第1磁気センサ14a、及び第2磁気センサ14bの何れの出力にも接触波形が出現しない第1期、第2磁気センサ14bの出力にのみ接触波形が出現する第2期、及び両方の出力に接触波形が出現する第3期の3つの期間に区分される。そのため、タイヤの交換が必要となる状態だけでなく、例えば、その少し前の状態等を、目視に頼らずに磁気センサの検出結果により検知することが可能となる。
<第7実施形態>
第7実施形態では、車両においてドライバーにタイヤの摩耗状態を警告する空気入りタイヤの摩耗状態判定方法について説明する。図10は、本発明の第7実施形態に係る空気入りタイヤの摩耗状態判定方法の処理手順を示すフローチャートである。第7実施形態に係る空気入りタイヤの摩耗状態判定方法は、第6実施形態に係る空気入りタイヤ1を判定対象として、第1磁気センサ14a、及び第2磁気センサ14bの出力を車両側で取得して摩耗状態の判定に用いる。
第7実施形態に係る空気入りタイヤの摩耗状態判定方法では、先ず、第1磁気センサ14aの単位時間(例えば、1秒)の出力を連続データとして取得し(ステップ1)、接触波形が出現しているかを判定する(ステップ2)。接触波形の出現の判定は、例えば、単位時間の連続データにおいて出力値の振幅が閾値を超えるか否かで判定することができる。第1磁気センサ14aの出力に接触波形が出現している場合(ステップ2:Yes)、空気入りタイヤ1が要交換状態であるため、タイヤ交換信号を発報する(ステップ3)。
第1磁気センサ14aの出力に接触波形が出現していない場合(ステップ2:No)、第2磁気センサ14bの単位時間の出力を連続データとして取得し(ステップ4)、接触波形が出現しているかを判定する(ステップ5)。第2磁気センサ14bの出力に接触波形が出現している場合(ステップ5:Yes)、空気入りタイヤ1が要交換状態に近づいて要注意状態となっているため、注意信号を発報する(ステップ6)。第2磁気センサ14bの出力に接触波形が出現していない場合(ステップ5:No)、判定を終了する。
このように、第7実施形態に係る空気入りタイヤの摩耗状態判定方法の処理手順では、タイヤが要交換状態になったことを、目視に頼らずに、強磁性体部材13L近傍の磁界の変化に基づいて判定することが可能となる。また、タイヤの交換が必要となる状態だけでなく、例えば、その少し前の要注意状態を、目視に頼らずに強磁性体部材13H近傍の磁界の変化に基づいて判定することが可能となる。
なお、空気入りタイヤの摩耗状態判定方法において、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1を判定対象とする場合は、図10に示すフローチャートのうちステップ1〜ステップ3までの手順のみを実施することで、タイヤが要交換状態になったことを、目視に頼らずに、強磁性体部材13近傍の磁界の変化に基づいて判定することが可能となる。
また、第7実施形態に係る空気入りタイヤの摩耗状態判定方法は、例えば、車両にコンピュータを設け、図10に示すフローチャートの処理手順をプログラミング言語で記述したコンピュータプログラムを、コンピュータに実行させることでも実施可能である。
〔別実施形態〕
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ交換が必要な摩耗状態になったことを、目視に頼らずに磁気センサにより検知するという本発明の効果を奏するものであれば、上記の第1実施形態〜第7実施形態で説明した構成を変更することも可能である。そのような幾つかの変更例を別実施形態として説明する。図11及び図12は、別実施形態に関する説明図である。
<別実施形態1>
上記の第1実施形態に係る空気入りタイヤ1において、図11(a)に示すように、トレッド部100aの裏側の表面(インナーライナー)と、センサ部品14との間に、フィルム状の可撓性部材700を設けることが可能である。この構成では、空気入りタイヤ1の製造において、成型後のタイヤの内側に複数の磁気センサ14を一つずつ取り付ける必要がなく、上面に複数の磁気センサ14を固定した状態の可撓性部材700を、トレッド部100aの裏側に貼り付けることで、複数の磁気センサ14を一括してタイヤに取り付けることができる。そのため、空気入りタイヤ1の製造における作業性を向上させることが可能である。さらに、磁気センサ14への給電回路、磁気センサ14の検出結果を空気入りタイヤ1の外部へ送信する送信回路等を可撓性部材700上に形成する構成としてもよい。
また、可撓性部材700は、図11(b)に示すように、トレッド部100aの中央又はその付近を通ってタイヤ周方向に沿う長尺形状の第1部位700aと、第1部位700aの長手方向に直交して第1部位700aから側方に延出する第2部位700bとを有する形状に構成することも可能である。この構成では、トレッド部100aの裏側に貼り付ける際に、可撓性部材700にシワや重なりが生じにくく、磁気センサ14をより正確に取り付けることが可能となる。
<別実施形態2>
磁気センサ14は、必ずしも空気入りタイヤ1に設ける必要はない。例えば、図12に示すように、空気入りタイヤ1を取り付けた車両のタイヤハウスに磁気センサ14を設けることで、強磁性体部材13近傍の磁界を検出可能である。このような構成では、磁気センサ14の検出結果を空気入りタイヤ1の外部へ送信するための送信回路等を空気入りタイヤ1に設ける必要がない。例えば、磁気センサ14の検出値を、車両に搭載したコンピュータ20へ直接出力することが可能である。コンピュータ20に図10に示すフローチャートの処理手順を含むプログラムを実行させ、判定結果をモニタ30に表示させることで、ドライバーへタイヤ交換が必要であることを注意喚起することができる。
本発明の空気入りタイヤ1は、車両(乗用車、トラック、バス、二輪車等)においてタイヤ又は路面の状態をセンシングする用途に有用であり、運転者によって操作される従来の車両の他、運転支援機能又は自動運転機能が備わった車両においても利用可能である。
1 空気入りタイヤ
11、11a〜d 縦グルーブ
12 ブロック部(陸部)
12a トレッド面(接触面)
13、13L、13H、113a〜d、16 強磁性体部材
14 磁気センサ(検出部)
15 ヨーク(磁気結合部材)
17 バイアス磁石(磁気結合部材)
100a トレッド部

Claims (16)

  1. タイヤ又は路面の状態をセンシング可能な空気入りタイヤであって、
    路面に接する陸部と、当該陸部に隣接して配置された強磁性体部材とを有するトレッド部を備え、
    前記強磁性体部材は、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが、前記陸部の硬さより小さくなるように構成されている空気入りタイヤ。
  2. JIS K 6253に準拠して測定される前記強磁性体部材の硬さ(a)と、前記陸部の硬さ(b)との硬度比(a/b)が、0.1875以上、1未満である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記トレッド部は、磁化方向が互いに異なる複数の前記強磁性体部材を有する請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記強磁性体部材は、前記陸部の接触面よりタイヤ径方向中心側に配置されている請求項1〜3の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記強磁性体部材は、前記トレッド部に周方向に形成された縦グルーブの底部に配置されている請求項1〜4の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記トレッド部は、前記強磁性体部材を複数有し、
    当該複数の強磁性体部材は、タイヤ周方向及び/又はタイヤ幅方向に沿って配列されている請求項1〜5の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記トレッド部は、前記強磁性体部材を複数有し、
    当該複数の強磁性体部材のうちの少なくとも2つは、タイヤ径方向に沿った前記陸部の接触面からの深さが互いに異なるように構成されている請求項1〜6の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記強磁性体部材に対向して前記トレッド部の裏側に配置され、磁界の変化を検出する検出部をさらに備える請求項1〜7の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記強磁性体部材に対向して前記トレッド部の裏側に配置され、前記強磁性体部材との間に磁気回路を形成する磁気結合部材をさらに備える請求項8に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記磁気結合部材は、前記検出部よりタイヤ径方向中心側に配置されている請求項9に記載の空気入りタイヤ。
  11. モールドに充填した材料を加硫してタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法であって、
    前記モールドにおいてタイヤの陸部の接触面が形成される位置よりタイヤ径方向中心側の位置に、強磁性体ゴム材料を配置する第1工程と、
    前記強磁性体ゴム材料が配置された前記モールドに、未加硫ゴムを含むグリーンタイヤを充填する第2工程と、
    前記モールド内で加熱することにより、前記グリーンタイヤ及び前記強磁性体ゴム材料を一体化させる第3工程と、
    を包含し、
    前記強磁性体ゴム材料は、前記第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定される硬さが、前記第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定される前記グリーンタイヤの陸部の接触面の硬さより小さくなるように選択される空気入りタイヤの製造方法。
  12. 前記強磁性体ゴム材料は、未加硫ゴムを含み、
    前記第3工程における加熱によって、前記グリーンタイヤ及び前記強磁性体ゴム材料を加硫する請求項11に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  13. 前記強磁性体ゴム材料は、前記グリーンタイヤが配される側に、接着剤が塗布されており、
    前記第3工程における加熱によって、前記グリーンタイヤ及び前記強磁性体ゴム材料が前記接着剤で接着する請求項11に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  14. モールドに充填した材料を加硫してタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法であって、
    未加硫ゴムを含むグリーンタイヤのトレッド面の縦グルーブが形成される位置に、強磁性体ゴム材料を配置する第1工程と、
    前記強磁性体ゴム材料が配置された前記グリーンタイヤを、前記モールドに充填する第2工程と、
    前記モールド内で加熱することにより、前記グリーンタイヤ及び前記強磁性体ゴム材料を一体化させる第3工程と、
    を包含し、
    前記強磁性体ゴム材料は、前記第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定される硬さが、前記第3工程の後にJIS K 6253に準拠して測定される前記グリーンタイヤの陸部の接触面の硬さより小さくなるように選択される空気入りタイヤの製造方法。
  15. 空気入りタイヤの摩耗状態判定方法であって、
    路面に接する陸部と、JIS K 6253に準拠して測定される硬さが前記陸部の硬さより小さい強磁性体部材とが、トレッド部において隣接して配置されている空気入りタイヤにおいて、
    前記強磁性体部材近傍の磁界の変化を検出する検出ステップと、
    検出した磁界の変化に応じて前記トレッド部の摩耗状態を判定する判定ステップと、
    を包含する空気入りタイヤの摩耗状態判定方法。
  16. 前記空気入りタイヤにはタイヤ径方向に沿った前記陸部の接触面からの深さが互いに異なるように構成された複数の前記強磁性体部材が配置されており、
    前記検出ステップでは、前記複数の強磁性体部材のそれぞれについて近傍の磁界の変化を検出し、
    前記判定ステップでは、前記複数の強磁性体部材のうち、検出した磁界の変化が所定量を超えたものに応じて前記トレッド部の摩耗状態を判定する請求項15に記載の空気入りタイヤの摩耗状態判定方法。
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