JP2019058139A - 乳酸菌の生残性向上方法 - Google Patents
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Abstract
Description
非特許文献1には、システイン、ホエイ粉末、WPC、カゼイン水和物、又はトリプトンを添加することで、ビフィズス菌やアシドフィラス菌を含むヨーグルトで、保存中における菌数維持が改善されたことが報告されている。
また、非特許文献2には、活性酸素除去剤としてのアスコルビン酸を添加することで、プロバイオティクス菌であるアシドフィラス菌の菌数消長が改善されたことが報告されている。
1.20℃〜50℃の発酵乳ミックス中で乳酸菌を保持する、乳酸菌の生残性向上方法。
2.前記乳酸菌を発酵乳ミックス中で保持後、前記発酵乳ミックスを0℃〜10℃に冷却する、前記1に記載の乳酸菌の生残性向上方法。
3.前記乳酸菌が、ラクトバシルス属(Lactobacillus)である、前記1または2に記載の乳酸菌の生残性向上方法。
4.前記乳酸菌が、ラクトバシルス・ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)である、前記1または2に記載の乳酸菌の生残性向上方法。
5.前記乳酸菌が、ラクトバシルス・ガセリOLL2716(Lactobacillus gasseri OLL2716:FERM BP−6999)である、前記1または2に記載の乳酸菌の生残性向上方法。
6.(1)乳原料を用いて発酵乳ミックスを調製する工程
(2)前記発酵乳ミックスに乳酸菌を添加し、20℃〜50℃の発酵乳ミックス中で前記乳酸菌を保持する、保持工程
(3)前記乳酸菌を含有する発酵乳ミックスにスターターを添加して発酵させる、発酵工程
を有する、発酵乳の製造方法。
7.前記保持工程と発酵工程の間に、乳酸菌を含有する発酵乳ミックスを0℃〜10℃に冷却する冷却工程を含む、前記6に記載の発酵乳の製造方法。
本発明は、20℃〜50℃の発酵乳ミックス中で乳酸菌を保持する、乳酸菌の生残性向上方法に関する。乳酸菌を20℃〜50℃の発酵乳ミックス中で保持することにより、当該発酵乳ミックスを発酵して得られる発酵乳中の乳酸菌の生残性を向上できる。
本発明における乳酸菌は、資化した乳糖に対し、乳酸の産生量が50%以上となるものをいう。その種類は特に制限されるものではないが、プロバイオティクス乳酸菌であることが好ましい。ここで、プロバイオティクス乳酸菌とは、消化管内の細菌叢を改善するなど、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な乳酸菌を意味する。
本発明における乳酸菌は、単独あるいは2種以上が組み合わされている場合であってもよい。
本発明において好ましい乳酸菌は、例えば、ラクトバシルス属(Lactobacillus)に属する微生物が例示できる。
(1)寄託機関名:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
(現寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター)
(2)連絡先:〒305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番3号
電話番号029−861−6029
(現連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室
電話番号0438−20−5910)
(3)受託番号:FERM BP−6999
(4)識別のための表示:Lactobacillus gasseri OLL2716
(5)原寄託日:平成11年5月24日
(6)ブタペスト条約に基づく寄託への移管日:平成12年1月14日
本発明における発酵乳ミックスは、ヨーグルトなどの発酵乳の原料となるもので、乳原料等を用いて調製される。本発明では、公知の発酵乳ミックスを適宜用いることができる。
乳原料は、例えば、生乳(未殺菌乳)、殺菌処理した乳(殺菌乳)、脱脂乳、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バター(無塩バター)、バターミルク、クリーム、ホエー蛋白質濃縮物(WPC)、ホエー蛋白質単離物(WPI)、α−ラクトアルブミン(α−La)、及びβ−ラクトグロブリン(β−Lg)などから、実際に製造する発酵乳の種類に応じて、適宜選択することができる。これらは2種以上を組み合わせて用いることができ、例えば、ヨーグルトの場合、エネルギーを低く抑えた状態で、無脂乳固形分を8%以上にするために、生乳及び/又は殺菌処理した乳(殺菌乳)に脱脂乳及び/又は脱脂粉乳を組み合わせることもできる。このとき、乳原料として、風味の良好さなどの観点から、生乳(未殺菌乳)及びその加工物を用いることが好ましい。
本発明は、また、
(1)乳原料を用いて発酵乳ミックスを調製する工程
(2)前記発酵乳ミックスに乳酸菌を添加し、20℃〜50℃の発酵乳ミックス中で前記乳酸菌を保持する、保持工程
(3)前記乳酸菌を含有する発酵乳ミックスにスターターを添加して発酵させる、発酵工程
を有する、発酵乳の製造方法を提供する。前記工程を経て発酵乳を製造することにより、得られる発酵乳中の乳酸菌の生残性を向上できる。
本工程で使用する「乳原料」は、前述したとおりであり、発酵乳の原料として使用される乳製品を意味し、例えば、生乳(未殺菌乳)、殺菌処理した乳(殺菌乳)、脱脂乳、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バター(無塩バター)、バターミルク、クリーム、ホエー蛋白質濃縮物(WPC)、ホエー蛋白質単離物(WPI)、α−ラクトアルブミン(α−La)、及びβ−ラクトグロブリン(β−Lg)などから、実際に製造する発酵乳の種類に応じて、適宜選択することができる。これらは2種以上を組み合わせて用いることができ、例えば、ヨーグルトの場合、エネルギーを低く抑えた状態で、無脂乳固形分を8%以上にするために、生乳及び/又は殺菌処理した乳(殺菌乳)に脱脂乳及び/又は脱脂粉乳を組み合わせることもできる。このとき、乳原料として、風味の良好さなどの観点から、生乳(未殺菌乳)及びその加工物を用いることが好ましい。
(2)の工程で保持した乳酸菌を含有する発酵乳ミックスは、次いで発酵処理に供される。
本発明の乳酸菌を含有する発酵乳は、前述の発酵乳の製造方法で得られるものであり、発酵乳中の乳酸菌の生残性が従来よりも向上したものである。
乳酸菌の生残性は、例えば、保存に用いた発酵乳を適宜希釈し、BL培地に塗沫して、37℃で72時間嫌気的に培養した後の培地上のコロニーを測定することによって評価することができる。保存に用いた培養液や発酵乳の保存前の生菌数に対する保存後の生菌数の割合によって、生残率を示すことができる。
具体的には、実施例で後述するように、121℃、15分間のオートクレーブ殺菌したBL培地(栄研化学株式会社):380gに馬脱繊維血液(株式会社日本バイオテスト研究所):20gを混釈し平板培地を作製し、そこに、生菌乳酸菌含有培養液を生理食塩水にて105倍希釈したサンプル100μmを表面塗抹し、37℃で72時間培養後、出現したラフ型コロニーを生菌乳酸菌として計測できる。
生残率(%)={乳酸菌を含む飲食品組成物の製造X日後の乳酸菌生残数(cfu/g)/乳酸菌を含む飲食品組成物の製造1日後の乳酸菌生残数(cfu/g)}×100
前記乳酸菌の生残率(%)は、X=16のとき、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
前記乳酸菌の生残率(%)は、X=25のとき、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。
(ヨーグルトの作製)
生乳:610g、脱脂粉乳:20g、砂糖:36g、水道水:107gを混合して、発酵乳ミックスを調製した。調製した発酵乳ミックスを95℃、5分間で加熱・殺菌した後に38℃に冷却した。その後、ラクトバシルス・ガセリOLL2716(FERM BP−6999)凍結濃縮菌を0.24g(発酵乳ミックスの合計の0.03質量%)を15℃にて流水解凍した後、前記で調製した発酵乳ミックスに添加し、38℃で5時間保持した。その後、この発酵乳ミックスを43℃に加温してから、スターター(明治十勝ヨーグルト(商品名)、株式会社明治製から分離した乳酸菌スターター)を24g(発酵乳ミックスの合計の3質量%)接種した後に、紙カップ容器(容量:100g)に分注し、43℃の発酵室に静置して発酵させた。乳酸酸度が0.7%に到達した時点で冷蔵室にて5℃に冷却して発酵を終了し、ヨーグルトが得られた。得られたヨーグルトを5℃の冷蔵庫で保存した。
前述の方法で作製したヨーグルトを5℃で保存し、製造後の保存日数1日、8日、16日、25日の時点でのラクトバシルス・ガセリOLL2716株の菌数を計測した。菌数計測は下記方法で実施した。
121℃、15分間のオートクレーブ殺菌したBL培地(栄研化学株式会社):380gに馬脱繊維血液(株式会社日本バイオテスト研究所):20gを混釈し平板培地を作製した。そこに、前記作製したヨーグルトを生理食塩水にて105倍希釈したサンプル100μLを表面塗抹し、37℃で72時間培養後、出現したラフ型コロニーをラクトバシルス・ガセリOLL2716株として計測した。
前記計測したラクトバシルス・ガセリOLL2716株をもとに、下記式で表される生残率を計算した。
生残率(%)={乳酸菌を含む飲食品組成物の製造X日後の乳酸菌生残数(cfu/g)/乳酸菌を含む飲食品組成物の製造1日後の乳酸菌生残数(cfu/g)}×100
上記式において、Xは、8、16、25のいずれかである。
結果を下記表1に示す。
発酵乳ミックスを43℃に加温する代わりに、一旦5℃に冷却して1日冷蔵保管後に43℃に加温したことを除いては実施例1と同様にヨーグルトを作製し、菌数計測及び生残率を計算した。
結果を下記表1に示す。
[実施例3]
発酵乳ミックスを95℃、5分間で加熱(殺菌)した後に30℃で5時間保存し、かつ、発酵乳ミックスに濃縮菌を添加後30℃で5時間保存したことを除いては実施例1と同様にヨーグルトを作製し、菌数計測及び生残率を計算した。
結果を下記表1に示す。
[実施例4]
発酵乳ミックスを43℃に加温する代わりに、一旦5℃に冷却して1日冷蔵保管後に43℃に加温したことを除いては実施例3と同様にヨーグルトを作製し、菌数計測及び生残率を計算した。
結果を下記表1に示す。
[実施例5]
発酵乳ミックスを95℃、5分間で加熱(殺菌)した後に25℃で5時間保存し、かつ、発酵乳ミックスに濃縮菌を添加後25℃で5時間保存したことを除いては実施例1と同様にヨーグルトを作製し、菌数計測及び生残率を計算した。
結果を下記表1に示す。
[実施例6]
発酵乳ミックスを43℃に加温する代わりに、一旦5℃に冷却して1日冷蔵保管後に43℃に加温したことを除いては実施例5と同様にヨーグルトを作製し、菌数計測及び生残率を計算した。
結果を下記表1に示す。
(ヨーグルトの作製)
生乳:610g、脱脂粉乳:20g、砂糖:36g、水道水:107gを混合して、発酵乳ミックスを調製した。調製した発酵乳ミックスを95℃、5分間で加熱・殺菌した後に43℃に冷却した。その後、ラクトバシルス・ガセリOLL2716(FERM BP−6999)凍結濃縮菌を0.24g(発酵乳ミックスの合計の0.03質量%)を15℃にて流水解凍した。解凍した前記乳酸菌とスターター(明治十勝ヨーグルト(商品名)、株式会社明治製から分離した乳酸菌スターター)24g(発酵乳ミックスの合計の3質量%)とを、前記発酵乳ミックスに接種後、紙カップ容器(容量:100g)に分注し、43℃の発酵室に静置して発酵させた。乳酸酸度が0.7%に到達した時点で冷蔵室にて5℃に冷却して発酵を終了し、ヨーグルトが得られた。得られたヨーグルトを5℃の冷蔵庫で保存した。
作製したヨーグルトについて、実施例1と同様に菌数計測及び生残率を計算した。
結果を下記表1に示す。
また、20℃〜50℃の発酵乳ミックス中で乳酸菌を保持後、発酵乳ミックスを5℃にまで冷却することによって(実施例2、4、6)、ヨーグルト中の乳酸菌の生残性の生残性の低下をより抑制できた。
Claims (7)
- 20℃〜50℃の発酵乳ミックス中で乳酸菌を保持する、乳酸菌の生残性向上方法。
- 前記乳酸菌を発酵乳ミックス中で保持後、前記発酵乳ミックスを0℃〜10℃に冷却する、請求項1に記載の乳酸菌の生残性向上方法。
- 前記乳酸菌が、ラクトバシルス属(Lactobacillus)である、請求項1または2に記載の乳酸菌の生残性向上方法。
- 前記乳酸菌が、ラクトバシルス・ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)である、請求項1または2に記載の乳酸菌の生残性向上方法。
- 前記乳酸菌が、ラクトバシルス・ガセリOLL2716(Lactobacillus
gasseri OLL2716:FERM BP−6999)である、請求項1または2に記載の乳酸菌の生残性向上方法。 - (1)乳原料を用いて発酵乳ミックスを調製する工程
(2)前記発酵乳ミックスに乳酸菌を添加し、20℃〜50℃の発酵乳ミックス中で前記乳酸菌を保持する、保持工程
(3)前記乳酸菌を含有する発酵乳ミックスにスターターを添加して発酵させる、発酵工程
を有する、発酵乳の製造方法。 - 前記保持工程と発酵工程の間に、乳酸菌を含有する発酵乳ミックスを0℃〜10℃に冷却する冷却工程を含む、請求項6に記載の発酵乳の製造方法。
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