JP2019049032A - 浸窒処理用鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】低歪かつ有効硬化層を深くでき、浸炭材同等の曲げ疲労強度を有することが可能な浸窒処理に適した鋼材を提供。【解決手段】C、Si、Mn、P、S、Cr、Al、Nを特定含有率で含有し、Cu、Ni、Mo、V、Nbを特定含有率で含有してもよく、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、式1=−0.225×Si+0.083×Mn+0.091×Cr+0.035×Cu+0.047×Ni+0.092×Moと定義した場合に、式1≧0.04を満たし、式2=−20+74×C+7×Si+15×Mn+26×Cr+10×Cu+12Ni+30×Moと定義した場合に、式2≦(60×C+31)/2を満たし、式3=25.4×Si+20.3×Cr+32.8×Si×Mnと定義した場合に、式3≦22を満たす、浸窒処理用鋼材。【選択図】なし

Description

本発明は鋼材、浸窒処理用鋼材に関する。
リングギアを代表とする自動車のトランスミッションの中の遊星ギヤの一部品である薄物部品の表面硬化処理法として、高炭素マルテンサイトの形成を利用した浸炭処理や合金窒化物による析出強化を利用した窒化処理が広く用いられている。ここで、浸炭処理では処理ひずみの大きさが、窒化処理では処理時間が長い事や硬化層が浅い事が問題となっており改善が求められている。そのため浸炭処理に比べ処理ひずみが小さく、窒化処理より短時間で比較的厚い硬化層が得られる新たな表面硬化処理法として浸窒焼入れ処理法が開発され、工業的に利用され始めている。
浸窒焼入れ処理法はA1点(863K)以上の温度域で鋼表面から窒素を拡散浸透させて高窒素オーステナイトを表層部で得た後に、焼入れて硬質な高窒素マルテンサイトを生成させる表面硬化法である。浸窒焼入れ処理法は浸炭処理に比べ低温で処理を行うため熱ひずみが小さく、母材がオーステナイト化しない温度域では変態ひずみも小さい。また窒化に比べて高温で処理を行うため処理時間が短くなることが期待される。
このような浸窒処理に関する従来法として、例えば特許文献1〜6に記載の方法が提案されている。
特開2009−102733号公報 特開2004−285474号公報 特開2003−027211号公報 特開2000−204464号公報 特開平11−222627号公報 特開平10−147814号公報
しかしながら、従来の浸窒処理は、浸炭に比べると温度が低いため、有効硬化層を深くすることが困難であった。
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明の目的は、低歪かつ有効硬化層を深くでき、かつ、浸窒処理時に発生する窒化物の制御を考慮することで、浸炭材同等の曲げ疲労強度を有することが可能な浸窒処理に適した鋼材を提供することである。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明の鋼材を完成させた。
本発明の鋼材は、
C:0.05〜0.25質量%、
Si:0.30質量%以下、
Mn:0.61〜2.0質量%、
P:0.1質量%以下、
S:0.1質量%以下、
Cr:0.7質量%以下、
Al:10〜800ppm、
N:10〜300ppm、
で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
式1=−0.225×Si+0.083×Mn+0.091×Cr+0.035×Cu+0.047×Ni+0.092×Mo
と定義した場合に、式1≧0.04を満たし、
式2=−20+74×C+7×Si+15×Mn+26×Cr+10×Cu+12Ni+30×Mo
と定義した場合に、式2≦(60×C+31)/2を満たし、
式3=25.4×Si+20.3×Cr+32.8×Si×Mn
と定義した場合に、式3≦22を満たす、浸窒処理用鋼材である。
本発明の鋼材は、
C:0.05〜0.25質量%、
Si:0.30質量%以下、
Mn:0.61〜2.0質量%、
P:0.1質量%以下、
S:0.1質量%以下、
Cr:0.7質量%以下、
Al:10〜800ppm、
N:10〜300ppm、
で含有し、
さらに、
Cu:0.3質量%以下、および/または、
Ni:0.5質量%以下、および/または、
Mo:0.6質量%以下、および/または、
V:0.3質量%以下、および/または、
Nb:0.1質量%以下
含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
式1≧0.04を満たし、
式2≦(60×C+31)/2を満たし、
式3≦22を満たす、浸窒処理用鋼材であることが好ましい。
本発明によれば、低歪かつ有効硬化層を深くでき、浸炭材同等の曲げ疲労強度を有することが可能な浸窒処理に適した鋼材を提供することができる。
疲労強度の測定において用いた試験片の概略側面図である。 実施例および比較例(比較例14、15を除く)において適用した浸窒処理を説明する図である。 比較例14、15において適用した浸窒処理を説明する図である。 歪みの測定において用いた試験片の概略斜視図である。 有効硬化深さと式1の計算結果との関係を示すグラフである。 ロックウェル硬さ(J5)と真円からの変形量(歪み)との関係を示すグラフである。 窒化物析出割合と疲労強度との関係を示すグラフである。 比較例2についての組織写真(SEM、2000倍)である。 比較例2についての組織写真(FE−EPMA、2000倍)である。
本発明の発明者は、(1)有効硬化層深さ、(2)焼入れ性、(3)窒化物生成量に関して、低歪かつ有効硬化層を深くでき、浸炭材同等の曲げ疲労強度を有することが可能な浸窒処理に適した鋼材の成分について調査した。
(1)有効硬化層
実用部品への負荷応力を想定した場合、内部でも破損しない程度に硬化層の深さが必要となってくる。よって、内部起点で破損する部位にとって有効硬化深さの増加は、そのまま高強度化につながる。
有効硬化層を深くするための手段として、I.処理温度を高くする、II.処理時間を長くする、III.鋼材の焼入れ性を上げる、の三種類が挙げられる。
ここでI.は温度上昇により歪が増大するため、なるべく低温で処理を実施したい。
II.生産性の観点からなるべく短時間で処理を実施したい。
III.について、これまで有効硬化深さの増加に対する鋼材成分の影響についての検討は、ほぼされていない。
(2)焼入れ性
焼入れ性は有効硬化層の深さを増大するために必要に応じて高くする必要がある。一般的に焼入れ性を向上させるためにはSi、Cr、Mn、Cu、Ni、Moなどの元素を添加する。また、添加元素の量を増やせば増やすほど焼入れ性は向上するといわれている。一方で、焼入れ性が高すぎるとマルテンサイト変態量が多くなり、歪が増大する。そのため歪軽減の観点から言えば、焼入れ性は低い方がよい。ここで、焼入れ性のジョミニー試験で測定される各水冷端からの距離はそれぞれ違う冷却速度を持っており、水冷端から遠くなるほど冷却速度は遅くなる。
(3)窒化物割合
浸窒処理中に窒化物が生成すると、焼入れ性を担保するために添加していた元素が母相から奪われるため、不完全焼入れ組織が形成されたり、Nの固溶による焼入れ性の向上効果が十分に得られなかったりするため、疲労強度が低下するものと予想される。そのため、窒化物量は少ない方がよい。しかし、添加元素量と窒化物の生成量の関係および、それが疲労強度に与える影響についてはこれまでに明らかにされていない。
<式1について>
本発明の発明者は、JISのS15Cの中央成分対比1.4倍の有効硬化層を得る成分系を検討した。NやCの拡散深さは、処理時間に対して平方根でしか増えない。つまり、処理時間を2倍に増やすと有効硬化深さは1.4倍となる。鋼成分を制御し有効硬化深さを1.4倍に増加させるとS15C対比処理時間が半分になることに対応する。
本発明の発明者が検討したところ、I.合金元素添加量により、Nの侵入深さが変化することを明らかにした。具体的にはSiとCrは窒化物を生成するため、侵入N深さが減少する。MnはNの活量を低下させ、鋼材中のNの安定度が上がるため、侵入N深さが増加する。II.さらに同一N濃度の場合でも鋼材の焼入れ性の変化により、硬さは変化する。I.、II.の影響を考慮し、鋼材成分が有効硬化深さに与える影響を検討した。そして、式1=−0.225×Si+0.083×Mn+0.091×Cr+0.035×Cu+0.047×Ni+0.092×Moと定義した場合に、式1≧0.04を満たすと、JIS S15C対比1.4倍となる鋼材が得られることがわかった。
なお、Si、Mn、Cr、Cu、Ni、Moは、Si含有率(質量%)、Mn含有率(質量%)、Cr含有率(質量%)、Cu含有率(質量%)、Ni含有率(質量%)、Mo含有率(質量%)を意味する。また、後述するように、Si、Cr、Cu、Ni、Moは含有率がゼロである場合がある。この場合は、式1の該当する項にゼロを代入すればよい。後述する式2、式3においても同様である。
<式2について>
薄肉部品を想定した場合、薄物部品の芯部の冷却速度はおよそジョミニー値のJ3〜J5程度であり、本発明の鋼材はこれらの冷却速度でのマルテンサイト量を減らすことで歪が大きく低減できる。
フルマルテンサイトの硬さは炭素量で整理でき、0.05〜0.3%の範囲では(60C+31)HRCと表わせる。J5値がフルマルテンサイトとなる硬さの半分(60C+31)/2以下となれば、歪に影響が大きいマルテンサイト組織が発生せず、フェライト+パーライト+少量のベイナイト組織となり、歪を十分に小さくすることができる。
このような知見に基づき、鋼材のジョミニー値J5に対する合金元素の影響を検討し、後述する式2が、式2≦(60×C+31)/2を満たす場合に、歪を小さくできることを見出した。
<式3について>
曲げ疲労強度に対して、侵入した表層Nのうち窒化物となるN量が一定割合(22%以上)を超えると不完全焼入れ組織が形成されたり、Nの固溶による焼入れ性の向上効果が十分に得られなかったりするため、疲労強度が大きくばらつくことを明らかにし、合金成分添加量を規定した。また、SiとMnを同時添加すると、Mnも窒化物として生成することを明らかにした。
そして、式3=25.4×Si+20.3×Cr+32.8×Si×Mnとすると、式3≦22を満たす必要があることを見出した。
本発明の鋼材の組成について説明する。
C成分の含有率は0.05〜0.25質量%であり、0.07〜0.20質量%であることが好ましい。
C成分の含有率が低すぎると、浸窒焼入後の芯部硬さが低下する傾向がある。
また、逆にC成分の含有率が高すぎると、冷間鍛造性、芯部の靭性、加工性が低下する傾向がある。また、C成分の含有率が高くなると、焼入時の膨張量が増え、歪が増加する傾向がある。
Si成分の含有率は0.30質量%以下であり、0.01〜0.15質量%であることが好ましい。
Siは微量でも窒化物が生成するため、Si成分の含有率が高すぎると、窒化物が形成され、疲労強度を低下する傾向があるからである。
Mn成分の含有率は0.61〜2.0質量%であり、0.65〜1.5質量%であることが好ましい。
Mnは浸窒処理時の有効硬化深さを向上させるために有効である。Mn成分の含有率が低すぎると、浸窒焼入時の芯部の焼入れ性が低下する傾向がある。
また、逆にMn成分の含有率が高すぎると、被削性や加工性が低下し、焼入性が上昇しすぎる傾向がある。
P成分の含有率は0.1質量%以下であり、0.05質量%以下であることが好ましい。
P成分の含有率が高すぎると、粒界割れが生じやすくなる傾向があるからである。
S成分の含有率は0.1質量%以下であり、0.05質量%以下であることが好ましい。
S成分の含有率が高すぎると、MnS系介在物が生成し、疲労強度が低下する傾向があるからである。
Cr成分の含有率は0.7質量%以下であり、0.01〜0.5質量%であることが好ましい。
Crは、浸窒処理後の有効硬化深さを増加させるのに有効な元素である。Cr成分の含有率が高すぎると、窒化物が形成されやすくなり、疲労強度がばらつきが多くなる。
Al成分の含有率は10〜800ppmであり、50〜500ppmであることが好ましい。
Al成分の含有率が低すぎると結晶粒粗大化を防止するAlNが十分な量が析出せず、結晶粒粗大化を発生しやすくなるからである。
逆にAl成分の含有率が高すぎると、粗大なAl23系介在物が生じて強度低下を招く傾向があるからである。
N成分の含有率は10〜300ppmであり、10〜250ppmであることが好ましい。
N成分の含有率が低すぎると結晶粒粗大化を防止するAlNが十分な量が析出せず、結晶粒粗大化を発生しやすくなるからである。
逆にN成分の含有率が高すぎると、鋳造時に空隙(密に埋まっていない部分)が発生する傾向があるからである。
Cu成分の含有率は0.3質量%以下であり、0.01〜0.25質量%であることが好ましい。
Cu成分の含有率が高すぎると、熱間鍛造性が低下する傾向があるからである。
Ni成分の含有率は0.5質量%以下であり、0.4質量%以下であることが好ましい。
Ni成分の含有率が高すぎると、加工性が低下する傾向があるからである。
Mo成分の含有率は0.6質量%以下であり、0.5質量%以下であることが好ましい。
Mo成分の含有率が高すぎると、加工性および切削性が低下し、焼入性が上昇しすぎる傾向があるからである。
V成分の含有率は0.3質量%以下であり、0.25質量%以下であることが好ましい。
V成分の含有率が高すぎると、被削性が低下する傾向があるからである。
Nb成分の含有率は0.1質量%以下であり、0.05質量%以下であることが好ましい。
Nb成分の含有率が高すぎると、加工性が低下する傾向があるからである。
本発明の鋼材は、上記のような特定比率でC、Si、Mn、P、S、Cr、Al、N、Cu、Ni、Mo、V、Nbを含む鋼材であり(ただし、Si、P、S、Cr、Cu、Ni、Mo、V、Nbは含まない場合がある)、残部は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明の鋼材は、浸窒処理を施すことで、薄肉部品として好ましく利用できる。
ここで薄肉とは、概ね、最も薄い部位の厚みが1〜15mmの厚さの部品をいう。また、薄肉部品としては、例えばオートマチックトランスミッションに組み込まれているプラネタリギア中のリングギアなどが挙げられる。
<試験片の製造>
以下、本発明の実施例について説明する。
第1表に示す実施例1〜38および比較例1〜15の各々について、第1表に示す組成(残部はFe及び不可避不純物)となるように原料を混合し、150kg高周波誘導炉を用いて溶製し、鋳造して鋼塊Aを得た。
<疲労強度の測定>
鋼塊Aを熱間圧延または熱間鍛造し、断面直径が105mmの丸棒を得た後、さらに熱間鍛造して、断面直径が22mmの丸棒を得た。そして、焼きならし処理後(925℃×1HrAC)、この丸棒から、断面直径15mmの丸棒(長さ210mm)を切り出し、さらに加工して、図1に示すような、平行部の径がφ12mmであり、切欠部の径が8mmであり、ノッチ底が0.5R(半径0.5mm)である鋼片を得た。
次に、鋼片に浸窒処理Xを施して、試験片Bを得た。
なお、以下において浸窒処理Xとは、次のような処理を意味するものとする。
ガス浸炭窒化炉へ鋼片を載置し、浸窒ガスとしてアンモニアを供給し、浸炭ガスとしてプロパンガスを供給し、800℃で180分間の浸窒処理を施した。この時、一酸化炭素と二酸化炭素の分圧を調整することでCPを0.3に制御した。このような浸窒処理を施すことで、最表面のC濃度を0.3質量%とし、母材に含まれているC量の変化が有効硬化深さに影響しない様にした。
このような浸窒処理を施した後、試験片を150℃のホット油内へ浸漬することで焼入れし、その後、加熱炉を用いて180℃で120分間の焼戻し処理を施して、試験片を得る。
ただし、比較例14および比較例15の場合は、CPを0.7とし、880℃で60分間のガス浸炭処理を施した。
実施例および比較例(ただし比較例14、15は除く)における浸窒処理の概要を図2に示す。比較例14、15における浸炭処理の概要を図3に示す。
このようにして得た試験片Bを用いてJIS Z 2274に準拠した方法で小野式回転曲げ疲労試験を行い、疲労強度を調査した。試験条件は回転数3500rpm、試験温度は室温の条件である。また、疲労強度の値は、繰返し数107回で破断しない最大応力である疲労限度を意味している。
結果を第2表に示す。
<ジョミニー試験>
鋼塊Aを熱間圧延または熱間鍛造し、断面直径が105mmの丸棒を得た後、さらに熱間鍛造して、断面直径が30mmの丸棒を得た。そして、焼きならし処理(925℃×1HrAC)を実施した。この丸棒から断面直径が25mm、長さ100mmの試験片Cを得た。
そして、このような試験片Cを、JIS G0561に規定されるジョミニー式一端焼入れ試験(925℃、30分)に供した。そして、焼入れ端から5mmにおけるロックウェル硬さ(J5)を測定した。
結果を第2表に示す。
<歪み(真円からの変形量)の測定>
鋼塊Aを熱間圧延または熱間鍛造し、断面直径が105mmの丸棒を得て、焼きならし処理後(925℃×1HrAC)、この丸棒を加工して、図4に示すような外径100mm、内径90mm、厚さ20mmのリング状の試験片素材を得た。
次に、このリング状の試験片素材に浸窒処理Xを施して、試験片Dを得た。そして、浸窒前および後の各々において試験片Dの内径部分の長さを3点測定し、その平均値を算出し、その平均値から内周長さを求め、浸窒前後の内径長さの平均値の差を計算することで真円からの変形量(歪み)を測定した。
結果を第2表に示す。
<表面C濃度>
鋼塊Aを熱間圧延により断面直径が105mmの丸棒を得た後、熱間鍛造により断面直径を30mmとし、さらに焼きならし処理(925℃×1HrAC)を施した後、この丸棒から断面直径25mmの丸棒(長さ100mm)を切り出して得た試験片素材に浸窒処理Xを施し、試験片Eを得た。
そして、試験片Eについて、その表面から0.05mmの位置までを削り、得られた切り屑(ダライ粉)におけるC濃度を測定した。測定には燃焼−赤外線吸収法を用いた。
結果を第2表に示す。
<表面N濃度>
試験片Eの表面から0.05mmの位置までを削って得られた切り屑(ダライ粉)におけるN濃度を測定した。測定には融解−熱伝導度測定を用いた。
結果を第2表に示す。
<窒化物析出量>
試験片Eの表面から0.05mmの位置までを削って得られた切り屑(ダライ粉)を臭化メタノールによって溶解し、0.2μmのフィルターを使い析出物を抽出し、窒化物析出量を測定した。測定には蒸留分離−窒素分析法を用いた。
結果を第2表に示す。
<有効硬化層深さ測定>
鋼塊Aを熱間圧延または熱間鍛造し、断面直径が105mmの丸棒を得た後、さらに熱間鍛造して、断面直径が30mmの丸棒を得て、焼きならし処理後(925℃×1HrAC)、この丸棒から、断面直径25mmの丸棒(長さ10mm)を切り出して得た鋼片に浸窒処理Xを施し、試験片Fを得た。
そして、試験片Fについて、その一方端面から厚さ方向へ表層からビッカース硬さ測定を試験力2.94Nで試験を実施した。ここで表層から0.5mmまでは0.025mmピッチで進み、それ以降は0.1mmピッチで1mm位置まで硬さを求めた。そして、得られた各位置での硬さを連続的に結び、有効硬化層深さを求めた。なお、表層硬さとは0.05mmの位置の硬さとし、有効硬化層深さは513HVとなる表面からの深さとする。具体的には513HVに最も近く、513HVの前後の2点の硬さから計算し、513HVにおける有効硬化層深さを算出した。
結果を第2表に示す。
<ミクロ組織観察>
試験片Fについてミクロ組織観察を行った。試験片を半円状に二等分に割り、切断面を被検面となるように樹脂埋めし、鏡面研磨した。研磨された面をナイタールで腐食し、倍率100〜400倍で光学顕微鏡および倍率2000倍でSEMを用い組織観察をした。また、鏡面研磨後の試料を使ってFE−EPMAを用い、倍率2,000倍で表層の窒化物の析出状態を確認した。
第2表に示した有効硬化深さと式1の計算結果との関係を図5に示す。
図5から、式1の値が0.04以上であると、S15Cの1.4倍の有効硬化深さとなることが理解される。なお、1.4倍は処理時間にすると、同一有効硬化深さを得るためにJIS 15C対比処理時間が半分になることに相当する。
したがって本発明の鋼材は、短時間(3〜4h程度)で、必要な有効硬化深さを得ることができる鋼材といえる。
第1表に示したロックウェル硬さ(J5)と真円からの変形量(歪み)との関係を、図6に示す。
図6からロックウェル硬さ(J5)がおよそ20HRC以下であると変形量が少ないことが分かる。フルマルテンサイトの硬さは炭素量で整理でき、0.05〜0.3%の範囲では(60C+31)HRCと表すことができる。一般的に、ロックウェル硬さ(J5)がフルマルテンサイトとなる半分((60C+31)/2)以下(0.15%の場合は20HRC)であれば歪(変形量)に影響が大きいマルテンサイト組織が生成せず、フェライト+パーライト+少量のベイナイト組織となる。すなわち、式2≦((60C+31)/2)を満たすのであれば、マルテンサイト量を減らすことができ、歪を大幅に低下させることができる。また、比較例14と15は、それぞれ汎用肌焼鋼であるSCR415とSCR420であるが、それらに対して大幅に歪が低下していることがわかる。
実機の薄肉部品を想定した場合、薄物部品の芯部の冷却速度はおよそジョミニー値のJ3〜J5程度であり、本発明の鋼材はこれらの冷却速度でのマルテンサイト量を減らすことで歪が大きく低減できる。
第2表に示した表面N濃度および窒化物析出量から、窒化物析出割合(=窒化物析出量/表面N濃度×100(%))を求めた。求められた窒化物析出割合と疲労強度との関係を、図7に示す。
図7から、表層Nのうち窒化物となったNの割合が22%以上となると、疲労強度のばらつきが大きくなっていることが分かる。組織写真(SEM2000倍、図8)から、窒化物の生成により、焼入れ性を担保するために添加していた元素が母相から奪われ、固溶Nの低減により形成された不完全焼入れ組織が確認される。さらにFE−EPMA(2000倍、図9)から窒化物の生成を見てとることができる。疲労強度が低下した試験片は、すべてはこの様な不完全焼入組織と多量の窒化物生成が確認され、疲労強度との因果関係が明らかになった。
本発明の鋼材は、窒化物析出量を抑制しているため、疲労強度のばらつきや低下が起こらない鋼材であるといえる。

Claims (2)

  1. C:0.05〜0.25質量%、
    Si:0.30質量%以下、
    Mn:0.61〜2.0質量%、
    P:0.1質量%以下、
    S:0.1質量%以下、
    Cr:0.7質量%以下、
    Al:10〜800ppm、
    N:10〜300ppm、
    で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
    式1=−0.225×Si+0.083×Mn+0.091×Cr+0.035×Cu+0.047×Ni+0.092×Mo
    と定義した場合に、式1≧0.04を満たし、
    式2=−20+74×C+7×Si+15×Mn+26×Cr+10×Cu+12Ni+30×Mo
    と定義した場合に、式2≦(60×C+31)/2を満たし、
    式3=25.4×Si+20.3×Cr+32.8×Si×Mn
    と定義した場合に、式3≦22を満たす、浸窒処理用鋼材。
  2. Cu:0.3質量%以下、
    Ni:0.5質量%以下、
    Mo:0.6質量%以下、
    V:0.3質量%以下、
    Nb:0.1質量%以下、
    からなる群から選ばれる一種または二種以上をさらに含有する、請求項1に記載の浸窒処理用鋼材。
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