JP2019027885A - 妊娠糖尿病の発症リスクの診断用バイオマーカー - Google Patents

妊娠糖尿病の発症リスクの診断用バイオマーカー Download PDF

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哲史 江口
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Abstract

【課題】被験者である妊婦に対する負担が比較的少ない方法により採取可能な生体試料中で検出され、かつ、妊娠後、比較的初期の段階の妊婦が、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いか否かを精度よく判定できる、妊娠糖尿病の発症リスクの判定用バイオマーカーを提供すること。【解決手段】妊娠糖尿病を発症していない妊婦から採取された尿中のエタノールアミン又はメチオニンの濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者と比べ、低いか否かや、前記尿中の1,3−ジホスホグリセリン酸、シキミ酸−3−リン酸、又はN−アセチル−L−アラニンの濃度が、前記対照者と比べ、高いか否かを解析することにより、前記妊婦が、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いか否かを判定することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、妊娠糖尿病を発症していない妊娠女性から採取された尿中の、後述する[Aグループ]及び[Bグループ]の代謝物質群(以下、これらを総称して「本件代謝物質群」ということがある)から選択される1又は2種以上の代謝物質の濃度を測定する工程(a)を含む、妊娠糖尿病の発症リスクの判定方法や、本件代謝物質群から選択される1又は2種以上の代謝物質からなる、妊娠糖尿病の発症リスクの判定用バイオマーカーに関する。
妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus;GDM)は、妊娠中に発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常を呈した状態である。GDMは、巨大児、早期産、子癇前症等の母体や胎芽又は胎児における様々な合併症のリスクと関連していることが報告されている(非特許文献1)。またGDMは、出産後の子供の成長にも影響を及ぼし、例えば、肥満や代謝異常を引き起こすことが報告されている(非特許文献2〜4)。このため、日本では、ほぼ全員の妊娠女性に対して、GDMスクリーニング、すなわち、妊娠初期に、ランダム血糖値検査と、妊娠24〜28週の50gグルコースチャレンジテスト(GCT)、又は2回目のランダム血糖値検査との実施が推奨されている。GDMスクリーニングにおいて陽性の妊娠女性に対しては、さらに、75g経口糖負荷試験(OGTT)を行い、GDMの診断が行われる(非特許文献5)。
妊娠女性の母体及び胎児の健康管理をする上で、GDMを早期発見することに加えて、GDMの発症リスクを判定し、GDMの発症を予防することも重要である。近年、メタボローム解析を用いて、糖尿病やグルコース代謝異常を、早期検出することが報告されている(非特許文献6、7)。また、GDMと関連する代謝産物を同定するために、妊婦から羊水、尿、又は血液を採取し、メタボリックプロファイリング解析が行われたことが報告されている(非特許文献8〜10)。また、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)と胎盤性成長因子(PIGF)は、子癇前症、妊娠糖尿病等の妊娠性疾患の発症リスクを判定できるバイオマーカーであることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、本件代謝物質群が、GDMの発症リスクを判定できるバイオマーカーであることについては、これまで知られていなかった。
特表2007−506979号公報
HAPO Study Cooperative Research Group et al. N Engl J Med. 2008;358(19):1991-2002. Ouyang F. et al. Obesity (Silver Spring). 2016;24(4):938-46. Kim SY. et al. Exp Diabetes Res. 2011;2011:541308. Boney CM. et al. Pediatrics. 2005;115(3):e290-6. Minakami H. et al. J Obstet Gynaecol Res. 2011;37(9):1174-97. Wang TJ. et al. Nat Med. 2011;17(4):448-53. Menni C. et al. Diabetes. 2013;62(12):4270-6. Graca G. et al. J Proteome Res. 2010;9(11):6016-24. Graca G. et al. Mol Biosyst. 2012;8(4):1243-54. Diaz SO. et al. J Proteome Res. 2011;10(8):3732-42.
本発明の課題は、被験者である妊婦に対する負担が比較的少ない方法により採取可能な生体試料中で検出され、かつ、妊娠後、比較的初期の段階の妊婦が、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いか否かを精度よく判定できる、妊娠糖尿病の発症リスクの判定用バイオマーカーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、出産時点で妊娠糖尿病を発症していた妊婦(preGDM群)と、発症していなかった妊婦(対照群)のそれぞれについて、妊娠糖尿病未発症の妊娠初期に、予め採取された尿を用いてメタボローム解析を行ったところ、本件代謝物質群が、妊娠糖尿病の発症リスクを精度よく判定できるバイオマーカーであることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕以下の工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする妊娠糖尿病の発症リスクの判定方法。
(a)妊娠糖尿病を発症していない妊婦から採取された尿中の、以下の[Aグループ]及び[Bグループ]から選択される1又は2種以上の代謝物質の濃度を測定する工程;
[Aグループ]
エタノールアミン、メチオニン
[Bグループ]
1,3−ジホスホグリセリン酸、シキミ酸−3−リン酸、N−アセチル−L−アラニン
(b)工程(a)で測定した代謝物質の濃度を、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比較する工程;
(c)工程(a)で測定した代謝物質が[Aグループ]の代謝物質である場合、工程(a)で測定した代謝物質の濃度が、対照者における代謝物質の濃度よりも低いとき、前記妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
工程(a)で測定した代謝物質が[Bグループ]の代謝物質である場合、工程(a)で測定した代謝物質の濃度が、対照者における代謝物質の濃度よりも高いとき、前記妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価する工程;
〔2〕妊婦が、妊娠13〜22週の妊婦であることを特徴とする上記〔1〕に記載の判定方法。
〔3〕工程(c)において、
工程(a)で測定したエタノールアミンの濃度が、対照者におけるエタノールアミンの濃度と比べ、少なくとも44%減少したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
工程(a)で測定したメチオニンの濃度が、対照者におけるメチオニンの濃度と比べ、少なくとも51%減少したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
工程(a)で測定した1,3−ジホスホグリセリン酸の濃度が、対照者における1,3−ジホスホグリセリン酸の濃度と比べ、少なくとも2.5倍増加したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
工程(a)で測定したシキミ酸−3−リン酸の濃度が、対照者におけるシキミ酸−3−リン酸の濃度と比べ、少なくとも1.5倍増加したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
工程(a)で測定したN−アセチル−L−アラニンの濃度が、対照者におけるN−アセチル−L−アラニンの濃度と比べ、少なくとも1.5倍増加したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価する
ことを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の判定方法。
〔4〕代謝物質が、エタノールアミン又は1,3−ジホスホグリセリン酸を含む代謝物質であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の判定方法。
〔5〕以下の[Aグループ]及び[Bグループ]から選択される1又は2種以上の代謝物質からなることを特徴とする妊娠糖尿病の発症リスクの判定用バイオマーカーであって、
代謝物質が[Aグループ]の代謝物質である場合、妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の前記代謝物質の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比べ、低く、
代謝物質が[Bグループ]の代謝物質である場合、妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の前記代謝物質の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比べ、高い、
前記判定用バイオマーカー。
[Aグループ]
エタノールアミン、メチオニン
[Bグループ]
1,3−ジホスホグリセリン酸、シキミ酸−3−リン酸、N−アセチル−L−アラニン
〔6〕妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中のエタノールアミンの濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者におけるエタノールアミンの濃度と比べ、44%減少し、
妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中のメチオニンの濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者におけるメチオニンの濃度と比べ、51%減少し、
妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の1,3−ジホスホグリセリン酸の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における1,3−ジホスホグリセリン酸の濃度と比べ、2.5倍増加し、
妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中のシキミ酸−3−リン酸の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者におけるシキミ酸−3−リン酸の濃度と比べ、1.5倍増加し、
妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中のN−アセチル−L−アラニンの濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者におけるN−アセチル−L−アラニンの濃度と比べ、1.5倍増加することを特徴とする
上記〔5〕に記載の判定用バイオマーカー。
〔7〕代謝物質が、エタノールアミン又は1,3−ジホスホグリセリン酸を含む代謝物質であることを特徴とする上記〔5〕又は〔6〕に記載の判定用バイオマーカー。
また本発明の実施の他の形態として、
上記工程(a)〜(c)を含む、妊娠糖尿病の発症リスクを診断するためのデータを収集する方法;や、
上記工程(a)〜(c)を含み、さらに、工程(c)において、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価(診断)された妊婦に対して、妊娠糖尿病の発症を予防する処置(例えば、食事療法や運動等)を施す工程(p)を任意で含む、妊娠糖尿病の発症リスクの診断方法;や、
妊娠糖尿病の発症リスクの判定(診断)方法におけるバイオマーカーとして使用するための、本件代謝物質群から選択される1又は2種以上の代謝物質であって、代謝物質が上記[Aグループ]の代謝物質である場合、妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の前記代謝物質の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比べ、低く、代謝物質が上記[Bグループ]の代謝物質である場合、妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の前記代謝物質の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比べ、高い、前記代謝物質;
を挙げることができる。
本発明によると、妊娠糖尿病未発症の妊婦が、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いか低いかを診断する上で有用な、精度の高い診断用データを取得できるため、例えば、妊娠糖尿病の発症リスクの高い妊婦に対して、妊娠糖尿病発症前にその発症を予防する処置(例えば、食事療法や運動等)を施すことにより、妊娠糖尿病の発症を予防することができる。さらに、妊娠糖尿病の発症を予防することは、妊娠糖尿病による合併症(例えば、子癇前症、低血糖、不妊症、妊娠高血圧症候群、早期産、羊水過多症等の母体における合併症;流産、奇形、巨大児、肥厚性心筋症等の胎芽又は胎児における合併症;呼吸窮迫症候群、低血糖、高カルシウム血症、高マグネシウム多血症、高ビリルビン血症等の新生児における合併症)のリスクや、出産後の妊婦がその後2型糖尿病に罹患するリスクの低減にもつながる。
preGDM群及び対照群における尿中のエタノールアミン濃度(図1A)並びに1,3−DPG濃度(図1B)を測定した結果を示す図である。 preGDM群及び対照群における尿中のシキミ酸−3−リン酸濃度(図2A)、N−アセチル−L−アラニン濃度(図2B)、並びにメチオニン濃度(図2C)を測定した結果を示す図である。
本発明の妊娠糖尿病の発症リスクの判定方法としては、被験者である妊娠糖尿病未発症の妊婦(以下、「被験者」ということがある)から採取された尿中の、以下の[Aグループ]及び[Bグループ]から選択される1又は2種以上の代謝物質の濃度(以下、「被験者における代謝物質濃度」ということがある)を測定し、必要に応じて定量する工程(a);工程(a)で測定した「被験者における代謝物質濃度」を、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度(以下、「対照者における代謝物質濃度」ということがある)と比較する工程(b);及び、工程(a)で測定した代謝物質が以下の[Aグループ]の代謝物質である場合、工程(a)で測定した「被験者における代謝物質濃度」が、「対照者における代謝物質濃度」よりも低いとき、前記被験者(妊婦)は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、工程(a)で測定した代謝物質が以下の[Bグループ]の代謝物質である場合、工程(a)で測定した「被験者における代謝物質濃度」が、「対照者における代謝物質濃度」よりも高いとき、前記被験者(妊婦)は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価する工程(c);の工程(a)〜(c)を含む方法(以下、「本件判定方法」ということがある)であれば特に制限されず、本件判定方法は、医師による妊娠糖尿病の発症リスクの診断を補助する方法であって、医師による診断行為を含まない。
[Aグループ]
エタノールアミン(ethanolamine)、メチオニン(methionine)
[Bグループ]
1,3−ジホスホグリセリン酸(1,3-diphosphoglycerate;1,3−DPG)、シキミ酸−3−リン酸(shikimate-3-phosphate)、N−アセチル−L−アラニン(N-Acetyl-L-alanine)
また、本発明の妊娠糖尿病の発症リスクの判定用バイオマーカーとしては、上記[Aグループ]及び[Bグループ]から選択される1又は2種以上の代謝物質からなる、妊娠糖尿病の発症リスクの判定(診断)に用いるためのバイオマーカーであって、代謝物質が上記[Aグループ]の代謝物質である場合、妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の前記代謝物質の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比べ、低く、代謝物質が上記[Bグループ]の代謝物質である場合、妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の前記代謝物質の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比べ、高い、前記判定用バイオマーカー(以下、「本件判定用バイオマーカー」ということがある)であれば特に制限されない。
上記被験者としては、妊娠糖尿病を発症していない妊娠女性であればよく、妊娠初期(通常、妊娠0〜15週)、妊娠中期(通常、妊娠16〜27週)、及び妊娠後期(通常、妊娠28〜39週)のいずれの妊娠女性であってもよいが、妊娠糖尿病は、妊娠中期に発症することが多いため、妊娠初期又は妊娠中期の妊娠女性が好ましい。かかる妊娠初期としては、妊娠4〜15週が好ましく、妊娠8〜15週がより好ましく、妊娠13〜15週がさらに好ましい。また、上記妊娠中期としては、妊娠16〜25週が好ましく、妊娠16〜24週がより好ましく、妊娠16〜22週がさらに好ましい。したがって、上記被験者としては、妊娠4〜25週の妊婦が好ましく、妊娠8〜24週の妊婦がより好ましく、妊娠13〜22週の妊婦がさらに好ましい。
本明細書において、「妊娠糖尿病」とは、妊娠中に発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常を呈した状態を意味し、より具体的には、妊娠中の空腹時の血糖値が92mg/dL以上126mg/dL未満を呈する状態;或いは、妊娠中に、75gのブドウ糖(Glucose;Glc)又はデンプン部分加水分解産物(partial hydrolysate of starch;PHS)を用いた経口糖負荷試験(OGTT)を実施した場合、実施後2時間において、血糖値が153mg/dL以上200mg/dL未満を呈する状態;を意味する。したがって、妊娠糖尿病には、妊娠前又は妊娠中に発症した糖尿病や糖尿病合併妊娠は含まれない。かかる糖尿病とは、具体的に、妊娠前又は妊娠中の空腹時の血糖値が126mg/dL以上を呈する状態;妊娠前又は妊娠中に、上記OGTTを実施した場合、実施後2時間において、血糖値が200mg/dL以上を呈する状態;或いは、妊娠前又は妊娠中の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が6.5%以上を呈する状態;を意味する。また、上記糖尿病合併妊娠とは、妊娠前に糖尿病に罹患したことがあり、かつ妊娠中に糖尿病網膜症を罹患した状態を意味する。
本件判定方法及び本件判定用バイオマーカーにおいて、尿中の本件代謝物質群の濃度は、採取された尿から尿試料(サンプル)を調製し、本件代謝物質群を特異的に検出できる公知の方法、例えば、質量分析法を用いて測定することができる。かかる質量分析法とは、尿試料を、イオン源を用いて気体状のイオンとし(イオン化)、分析部において、真空中で運動させ電磁気力を用いて、或いは飛行時間差によりイオン化した尿試料を質量電荷比に応じて分離し、検出できる質量分析計を用いた測定方法のことをいい、イオン源を用いてイオン化する方法としては、電子イオン化(EI)法、化学イオン化(CI)法、電界脱離イオン化(FD)法、高速原子衝撃(FAB)法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法等の方法を適宜選択することができ、また、分析部において、イオン化した尿試料を分離する方法としては、磁場偏向型、四重極型、イオントラップ型、飛行時間(TOF)型、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型等の分離方法を適宜選択することができる。また、2以上の質量分析法を組み合わせたタンデム型質量分析(MS/MS)を利用することができる。また、ガスクロマトグラフィー(GC)や液体クロマトグラフィー(LC)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、本件代謝物質群を夾雑物から分離・精製して分析することができる。
本件判定方法及び本件判定用バイオマーカーにおいて、尿中の本件代謝物質群の濃度は、絶対値であっても、相対値であってもよく、相対値とする場合、例えば、濃度が既知の本件代謝物質群(内部標準)を基準とした相対値を挙げることができる。
本件判定方法及び本件判定用バイオマーカーにおいて、「妊娠糖尿病を発症しない対照者における代謝物質の濃度」は、比較対象である「被験者における代謝物質濃度」や、「妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の代謝物質の濃度」に対応するものを用いる。このため、「被験者における代謝物質濃度」や、「妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の代謝物質の濃度」が、絶対値又は相対値である場合、「妊娠糖尿病を発症しない対照者における代謝物質の濃度」は、それぞれ絶対値、相対値である。上記「妊娠糖尿病を発症しない対照者における代謝物質の濃度」は、本件判定方法を実施する際、対照者から採取された尿から尿試料を調製し、その都度測定してもよいが、予め測定したものを用いてもよい。また、上記対照者から採取・調製した尿試料は、被験者由来の尿試料と実質的に同じ方法により調製されたものが好ましい。また、「妊娠糖尿病を発症しない対照者における代謝物質の濃度」の測定に用いる方法は、比較対象である「被験者における代謝物質濃度」や、「妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の代謝物質の濃度」の測定に用いた方法と実質的に同じものが好ましい。
上記対照者としては、妊娠糖尿病を発症しないことが明らかな対照者であればよく、通常、妊娠糖尿病を発症しないことが明らかな女性であり、妊娠糖尿病を発症しないことが明らかな妊娠女性が好ましい。また、上記対照者としては、被験者と年齢、BMI(Body Mass Index)、及び/又は出産回数(Parity)が類似した者(統計学的な有意差が無い状態の者)が好ましい。
本件判定方法の工程(c)において、工程(a)で測定した代謝物質が上記[Aグループ]の代謝物質である場合、工程(a)で測定した「被験者における代謝物質濃度」が、「対照者における代謝物質濃度」よりも低いとき、被験者(妊婦)は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価(判定)し、工程(a)で測定した「被験者における代謝物質濃度」が、「対照者における代謝物質濃度」よりも低くないとき、被験者(妊婦)は、妊娠糖尿病を発症するリスクが低いと評価(判定)する。また、本件判定方法の工程(c)において、工程(a)で測定した代謝物質が上記[Bグループ]の代謝物質である場合、工程(a)で測定した「被験者における代謝物質濃度」が、「対照者における代謝物質濃度」よりも高いとき、被験者(妊婦)は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価(判定)し、工程(a)で測定した「被験者における代謝物質濃度」が、「対照者における代謝物質濃度」よりも高くないとき、被験者(妊婦)は、妊娠糖尿病を発症するリスクが低いと評価(判定)する。
「被験者における代謝物質濃度」が、「対照者における代謝物質濃度」よりも低いか否か、或いは高いか否かを判定するために、閾値(カットオフ値)は任意のものを設定することができ、かかる閾値としては、例えば、「対照者における代謝物質濃度」の平均値、「平均値+標準偏差(SD)」、「平均値+2SD」、「平均値+3SD」、中央値、「中央値+SD」、「中央値+2SD」、「中央値+3SD」等を挙げることができる。また、閾値は、感度(妊娠糖尿病をその後発症する者を、正しく陽性と判定できる割合)及び特異度(妊娠糖尿病をその後発症しない者を、正しく陰性と判定できる割合)が高くなるように、「被験者における代謝物質濃度」のデータと、「対照者における代謝物質濃度」のデータを基に、統計解析ソフトウェアを用いたROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を用いて算出することもできる。
本件判定方法及び本件判定用バイオマーカーにおいて、「妊娠糖尿病を発症しない対照者に対する被験者」又は「妊娠糖尿病を発症しない対照者に対する妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦」の、上記[Aグループ]の代謝物質(エタノールアミン又はメチオニン)濃度の低下レベルは、「妊娠糖尿病を発症しない対照者」、「被験者」、及び「妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦」の特徴、測定方法等により異なるため、一概に特定することはできないが、エタノールアミンの場合、例えば、少なくとも28%の減少であり、好ましくは少なくとも30%の減少、より好ましくは少なくとも32%の減少、さらに好ましくは少なくとも34%の減少、さらにより好ましくは少なくとも35%の減少、特に好ましくは少なくとも37%の減少、特により好ましくは少なくとも39%の減少、特にさらに好ましくは少なくとも41%の減少、特にさらにより好ましくは少なくとも43%の減少、最も好ましくは少なくとも44%の減少である。また、メチオニンの場合、上記低下レベルは、例えば、少なくとも20%の減少であり、好ましくは少なくとも23%の減少、より好ましくは少なくとも26%の減少、さらに好ましくは少なくとも30%の減少、さらにより好ましくは少なくとも33%の減少、特に好ましくは少なくとも36%の減少、特により好ましくは少なくとも40%の減少、特にさらに好ましくは少なくとも42%の減少、特により好ましくは少なくとも44%の減少、特にさらに好ましくは少なくとも46%の減少、特にさらにより好ましくは少なくとも48%の減少、また特に好ましくは少なくとも50%の減少、最も好ましくは少なくとも51%の減少である。
本件判定方法及び本件判定用バイオマーカーにおいて、「妊娠糖尿病を発症しない対照者に対する被験者」又は「妊娠糖尿病を発症しない対照者に対する妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦」の、上記[Bグループ]の代謝物質(1,3−DPG、シキミ酸−3−リン酸、又はN−アセチル−L−アラニン)濃度の増加レベルは、「妊娠糖尿病を発症しない対照者」、「被験者」、及び「妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦」の特徴、測定方法等により異なるため、一概に特定することはできないが、1,3−DPGの場合、例えば、少なくとも1.1倍の増加であり、好ましくは少なくとも1.2倍の増加、より好ましくは少なくとも1.4倍の増加、さらに好ましくは少なくとも1.6倍、さらにより好ましくは少なくとも1.8倍の増加、特に好ましくは少なくとも2.0倍の増加、特により好ましくは少なくとも2.1倍の増加、特にさらに好ましくは少なくとも2.2倍の増加、特にさらにより好ましくは少なくとも2.3倍の増加、また特に好ましくは少なくとも2.4倍の増加、最も好ましくは少なくとも2.5倍の増加である。また、シキミ酸−3−リン酸又はN−アセチル−L−アラニンの場合、上記増加レベルは、例えば、少なくとも1.1倍の増加であり、好ましくは少なくとも1.2倍の増加、より好ましくは少なくとも1.3倍の増加、さらに好ましくは少なくとも1.4倍の増加、さらにより好ましくは少なくとも1.5倍の増加、特に好ましくは少なくとも最も好ましくは少なくとも1.6倍の増加である。
本件判定方法及び本件判定用バイオマーカーにおいて、代謝物質としては、本件代謝物質群から選択される1又は2種以上の代謝物質であればよく、具体的に、エタノールアミン、メチオニン、1,3−DPG、シキミ酸−3−リン酸、及びN−アセチル−L−アラニンからなる群から選択される1種;エタノールアミンとメチオニンとの2種の組合せ;エタノールアミンと1,3−DPGとの2種の組合せ;エタノールアミンとシキミ酸−3−リン酸との2種の組合せ;エタノールアミンとN−アセチル−L−アラニンとの2種の組合せ;メチオニンと1,3−DPGとの2種の組合せ;メチオニンとシキミ酸−3−リン酸との2種の組合せ;メチオニンとN−アセチル−L−アラニンとの2種の組合せ;1,3−DPGとシキミ酸−3−リン酸との2種の組合せ;1,3−DPGとN−アセチル−L−アラニンとの2種の組合せ;シキミ酸−3−リン酸とN−アセチル−L−アラニンとの2種の組合せ;エタノールアミンと、メチオニンと、1,3−DPGとの3種の組合せ;エタノールアミンと、メチオニンと、シキミ酸−3−リン酸との3種の組合せ;エタノールアミンと、メチオニンと、N−アセチル−L−アラニンとの3種の組合せ;エタノールアミンと、1,3−DPGと、シキミ酸−3−リン酸との3種の組合せ;エタノールアミンと、1,3−DPGと、N−アセチル−L−アラニンとの3種の組合せ;エタノールアミンと、シキミ酸−3−リン酸と、N−アセチル−L−アラニンとの3種の組合せ;エタノールアミンと、メチオニンと、1,3−DPGと、シキミ酸−3−リン酸との4種の組合せ;エタノールアミンと、メチオニンと、1,3−DPGと、N−アセチル−L−アラニンとの4種の組合せ;エタノールアミンと、1,3−DPGと、シキミ酸−3−リン酸と、N−アセチル−L−アラニンとの4種の組合せ;エタノールアミンと、メチオニンと、1,3−DPGと、シキミ酸−3−リン酸と、N−アセチル−L−アラニンとの5種の組合せ;を挙げることができ、これらの中でもエタノールアミン又は1,3−DPGを含むものが好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
1.方法
[尿試料の調製]
子供の健康と環境に関する全国調査(JECS)の千葉ユニットセンターの参加者の中から、妊娠初期(14〜21週)の女性を3年間(2011〜2014)募集し、参加に同意した者から尿を採取し、−20℃で保存した。また、妊娠女性参加者のうち、妊娠初期の診療(T1アンケート)では、GDMを発症しておらず、かつ、その後の出産時においてGDMを発症していると診断された者をGDM発症前群(preGDM群)とした。さらに、preGDM群121名の年齢、BMI(Body Mass Index)、及び出産回数(Parity)を調べ、これら値とマッチングした者であって、妊娠初期の診療を含めてGDMを発症しなかった者を対照群とした(表1参照)。なお、本実施例は、ヘルシンキ宣言にしたがって行われ、プロトコールは、千葉大学大学院医学研究院、及び医学研究院生命倫理委員会によって承認された。さらに、妊娠女性参加者からは、書面によるインフォームドコンセントを得た。
Figure 2019027885
[親水性相互作用クロマトグラフィタンデム質量分析(HILIC−MS/MS)によるメタボローム解析]
尿の保存条件(−20℃)下で安定と考えられている263種類の代謝産物について、尿中の濃度を調べるために、preGDM群67名及び対照群67名の尿を用いて、文献「Soga T. et al. Anal Chem. 2009;81(15):6165-74.」及び文献「Yuan M. et al. Nat Protoc. 2012;7(5):872-81.」記載の方法に従って、HILIC−MS/MSによるメタボローム解析を行った。すなわち、尿60μLを、14,000gで10分間遠心分離した後、40μLの上清と、前処置手順で目減りした試料を調整するための60μLの内部標準を含むメタノール(1nMのリドカイン、及び正イオンモードにはN,N−ジエチル−2−フェニルアセタミド、負イオンモードにはD−camphor−10−スルホン酸)とを、Amicon Ultra-0.5 3k フィルターカラム(Merck Millipore社製)に置いた後、14,000gで1時間遠心分離し、濾過物(残渣)を尿試料とし用い、Prominence UFLCシステム(Shimadzu社製)及びQTRAP 4500システム(AB SCIEX社製)を用いて分析した。すなわち、濾過物を、3.5−μmXBridge BEHアミドカラム(Waters 社製)を用いて、4.6mm(内径)×100mm、流速350μL/分でHILICクロマトグラフィを介して質量分析計(QTRAP 4500システム)に送達した。本実施例では、移動相A(20mMの水酸化アンモニウム/20mMの酢酸アンモニウム[pH=9.5]超高純度の水:アセトニトリル[95:5])及び移動相B(高速液体クロマトグラフィ−グレードアセトニトリル)の勾配を使用して標的メタボロームを解析した。各代謝産物SRM遷移のトータルイオンカレントからのピーク領域は、MultiQuant v3.0ソフトウェア(AB SCIEX社製)を使用して積分(integrated)した。使用したピーク積分設定値は、文献「Yuan M. et al. Nat Protoc. 2012;7(5):872-81.」に記載のとおりである。
[統計分析]
preGDM群の測定値と、対照群の測定値との統計学的有意差は、その分布に従ってunpaired t-test又はMann-Whitney testを使用して分析した。潜在構造に対する直交射影判別分析(orthogonal projections to latent structures Discriminant Analysis;OPLS−DA)を行い、Microsoft R open 3.3.0 (R Core Team, 2016, R Core Team R:A Language and Environment for Statistical Computing R Foundation for Statistical Computing, Vienna 2016)において、パッケージropls(文献「Thevenot EA., et al. J Proteome Res. 2015;14(8):3322-35.」参照)を使用して、両群のメタボロームプロファイルを解析した。Variable importance of projection(VIP)値が1.5を超える代謝物質を、GDM発症リスクの診断用バイオマーカーの候補物質として同定した。また、各代謝物質の感度及び特異度は、ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線及び対応領域を使用して、ROCRパッケージで行ったROC曲線(AUC)の下で分析した。
2.結果
preGDM群と対照群における尿中の263種類の代謝産物の濃度を測定したところ、187種類の代謝物質が検出された。そのうち、VIP値が1.5を超えるGDM発症リスクの診断用バイオマーカーの候補物質は、20種類あることが示された。さらに、ROCRパッケージで行ったROC曲線を用いて、感度及び特異度を検討したところ、5種類の物質(エタノールアミン、1,3−ジホスホグリセリン酸[1,3−DPG]、シキミ酸−3−リン酸、N−アセチル−L−アラニン、及びメチオニン)が同定された。
[エタノールアミン]
preGDM群において、尿中のエタノールアミン濃度は、0.039(中央値)であり、対照者群の値(0.070)と比べ、約44%減少し、有意差が認められた(P=0.00000247)(図1A参照)。この結果は、GDMを(将来)発症する者由来の尿中のエタノールアミン濃度は、GDMを発症しない者と比べ、低いことを示している。
また、preGDM群及び対照者群の尿中のエタノールアミン濃度を基に、ROC曲線を作成したところ、AUC値は、0.821と高い値を示した。また、preGDM群と対照群とを区別するためのカットオフ値として、0.056を設定したところ、GDMを発症する者の感度(GDMを発症する者の中で検査陽性者の割合)及び特異度(GDMを発症しない者の中で検査陰性の割合)は、それぞれ74%及び81%であった。
この結果は、GDM発症前の妊婦から採取された尿中のエタノールアミン濃度を測定し、適切なカットオフ値を設定すると、エタノールアミン濃度を指標として、GDMの発症リスクを判定できることを示している。
[1,3−DPG]
preGDM群において、尿中の1,3−DPG濃度は、0.037(中央値)であり、対照者群の値(0.015)と比べ、約2.5倍増加し、有意差が認められた(P=0.000000238)(図1B参照)。この結果は、GDMを(将来)発症する者由来の尿中の1,3−DPG濃度は、GDMを発症しない者と比べ、高いことを示している。
また、preGDM群及び対照者群の尿中の1,3−DPG濃度を基に、ROC曲線を作成したところ、AUC値は、0.848と高い値を示した。また、preGDM群と対照群とを区別するためのカットオフ値として、0.030を設定したところ、GDMを発症する者の感度(GDMを発症する者の中で検査陽性者の割合)及び特異度(GDMを発症しない者の中で検査陰性の割合)は、それぞれ61%及び100%であった。
この結果は、GDM発症前の妊婦から採取された尿中の1,3−DPG濃度を測定し、適切なカットオフ値を設定すると、1,3−DPG濃度を指標として、GDMの発症リスクを判定できることを示している。
[シキミ酸−3−リン酸]
preGDM群において、尿中のシキミ酸−3−リン酸濃度は、0.047(中央値)であり、対照者群の値(0.032)と比べ、約1.5倍増加し、有意差が認められた(P=0.000113)(図2A参照)。この結果は、GDMを(将来)発症する者由来の尿中のシキミ酸−3−リン酸濃度は、GDMを発症しない者と比べ、高いことを示している。
また、preGDM群及び対照者群の尿中のシキミ酸−3−リン酸濃度を基に、ROC曲線を作成したところ、AUC値は、0.768と高い値を示した。また、preGDM群と対照群とを区別するためのカットオフ値として、0.039を設定したところ、GDMを発症する者の感度(GDMを発症する者の中で検査陽性者の割合)及び特異度(GDMを発症しない者の中で検査陰性の割合)は、それぞれ67%及び74%であった。
この結果は、GDM発症前の妊婦から採取された尿中のシキミ酸−3−リン酸濃度を測定し、適切なカットオフ値を設定すると、シキミ酸−3−リン酸濃度を指標として、GDMの発症リスクを判定できることを示している。
[N−アセチル−L−アラニン]
preGDM群において、尿中のN−アセチル−L−アラニン濃度は、0.071(中央値)であり、対照者群の値(0.046)と比べ、約1.5倍増加し、有意差が認められた(P=0.0008)(図2B参照)。この結果は、GDMを(将来)発症する者由来の尿中のN−アセチル−L−アラニン濃度は、GDMを発症しない者と比べ、高いことを示している。
また、preGDM群及び対照者群の尿中のN−アセチル−L−アラニン濃度を基に、ROC曲線を作成したところ、AUC値は、0.735と高い値を示した。また、preGDM群と対照群とを区別するためのカットオフ値として、0.05を設定したところ、GDMを発症する者の感度(GDMを発症する者の中で検査陽性者の割合)及び特異度(GDMを発症しない者の中で検査陰性の割合)は、それぞれ78%及び58%であった。
この結果は、GDM発症前の妊婦から採取された尿中のN−アセチル−L−アラニン濃度を測定し、適切なカットオフ値を設定すると、N−アセチル−L−アラニン濃度を指標として、GDMの発症リスクを判定できることを示している。
[メチオニン]
preGDM群において、尿中のメチオニン濃度は、0.0064(中央値)であり、対照者群の値(0.013)と比べ、約51%減少し、有意差が認められた(P=0.00229)(図2C参照)。この結果は、GDMを(将来)発症する者由来の尿中のメチオニン濃度は、GDMを発症しない者と比べ、低いことを示している。
また、preGDM群及び対照者群の尿中のメチオニン濃度を基に、ROC曲線を作成したところ、AUC値は、0.718と高い値を示した。また、preGDM群と対照群とを区別するためのカットオフ値として、0.0082を設定したところ、GDMを発症する者の感度(GDMを発症する者の中で検査陽性者の割合)及び特異度(GDMを発症しない者の中で検査陰性の割合)は、それぞれ68%及び72%であった。
この結果は、GDM発症前の妊婦から採取された尿中のメチオニン濃度を測定し、適切なカットオフ値を設定すると、メチオニン濃度を指標として、GDMの発症リスクを判定できることを示している。
本発明は、妊婦における、妊娠糖尿病の発症リスクの診断及び治療の他、妊娠糖尿病合併症妊娠による胎児の奇形(例えば、心肥大、心室中隔欠損等の心奇形;小頭症等の骨角奇形;腎形成不全、尿管重複等の腎奇形;十二指腸閉鎖、直腸閉鎖等の消化管奇形など)の予防や、出産後に2型糖尿病に罹患するリスクを予防することに資するものである。

Claims (7)

  1. 以下の工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする妊娠糖尿病の発症リスクの判定方法。
    (a)妊娠糖尿病を発症していない妊婦から採取された尿中の、以下の[Aグループ]及び[Bグループ]から選択される1又は2種以上の代謝物質の濃度を測定する工程;
    [Aグループ]
    エタノールアミン、メチオニン
    [Bグループ]
    1,3−ジホスホグリセリン酸、シキミ酸−3−リン酸、N−アセチル−L−アラニン
    (b)工程(a)で測定した代謝物質の濃度を、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比較する工程;
    (c)工程(a)で測定した代謝物質が[Aグループ]の代謝物質である場合、工程(a)で測定した代謝物質の濃度が、対照者における代謝物質の濃度よりも低いとき、前記妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
    工程(a)で測定した代謝物質が[Bグループ]の代謝物質である場合、工程(a)で測定した代謝物質の濃度が、対照者における代謝物質の濃度よりも高いとき、前記妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価する工程;
  2. 妊婦が、妊娠13〜22週の妊婦であることを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
  3. 工程(c)において、
    工程(a)で測定したエタノールアミンの濃度が、対照者におけるエタノールアミンの濃度と比べ、少なくとも44%減少したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
    工程(a)で測定したメチオニンの濃度が、対照者におけるメチオニンの濃度と比べ、少なくとも51%減少したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
    工程(a)で測定した1,3−ジホスホグリセリン酸の濃度が、対照者における1,3−ジホスホグリセリン酸の濃度と比べ、少なくとも2.5倍増加したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
    工程(a)で測定したシキミ酸−3−リン酸の濃度が、対照者におけるシキミ酸−3−リン酸の濃度と比べ、少なくとも1.5倍増加したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価し、
    工程(a)で測定したN−アセチル−L−アラニンの濃度が、対照者におけるN−アセチル−L−アラニンの濃度と比べ、少なくとも1.5倍増加したとき、妊婦は、妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと評価する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の判定方法。
  4. 代謝物質が、エタノールアミン又は1,3−ジホスホグリセリン酸を含む代謝物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の判定方法。
  5. 以下の[Aグループ]及び[Bグループ]から選択される1又は2種以上の代謝物質からなることを特徴とする妊娠糖尿病の発症リスクの判定用バイオマーカーであって、
    代謝物質が[Aグループ]の代謝物質である場合、妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の前記代謝物質の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比べ、低く、
    代謝物質が[Bグループ]の代謝物質である場合、妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の前記代謝物質の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における前記代謝物質の濃度と比べ、高い、
    前記判定用バイオマーカー。
    [Aグループ]
    エタノールアミン、メチオニン
    [Bグループ]
    1,3−ジホスホグリセリン酸、シキミ酸−3−リン酸、N−アセチル−L−アラニン
  6. 妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中のエタノールアミンの濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者におけるエタノールアミンの濃度と比べ、44%減少し、
    妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中のメチオニンの濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者におけるメチオニンの濃度と比べ、51%減少し、
    妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中の1,3−ジホスホグリセリン酸の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者における1,3−ジホスホグリセリン酸の濃度と比べ、2.5倍増加し、
    妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中のシキミ酸−3−リン酸の濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者におけるシキミ酸−3−リン酸の濃度と比べ、1.5倍増加し、
    妊娠糖尿病を発症するリスクが高い妊婦から採取された尿中のN−アセチル−L−アラニンの濃度が、妊娠糖尿病を発症しない対照者におけるN−アセチル−L−アラニンの濃度と比べ、1.5倍増加することを特徴とする
    請求項5に記載の判定用バイオマーカー。
  7. 代謝物質が、エタノールアミン又は1,3−ジホスホグリセリン酸を含む代謝物質であることを特徴とする請求項5又は6に記載の判定用バイオマーカー。
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