JP2019024409A - がん細胞を標的とした高機能タンパク質ナノ粒子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 がん細胞標的能及びがん組織浸透性を持つDDSキャリアを提供する。
【解決手段】 エラスチン様ポリペプチド、ポリ酸性アミノ酸、及びiRGDペプチドを含む融合タンパク質が集合して形成される粒子であって、融合タンパク質が、エラスチン様ポリペプチド部分をコアとし、ポリ酸性アミノ酸部分を外殻とするミセルを形成していることを特徴とする粒子。
【選択図】 図1
【解決手段】 エラスチン様ポリペプチド、ポリ酸性アミノ酸、及びiRGDペプチドを含む融合タンパク質が集合して形成される粒子であって、融合タンパク質が、エラスチン様ポリペプチド部分をコアとし、ポリ酸性アミノ酸部分を外殻とするミセルを形成していることを特徴とする粒子。
【選択図】 図1
Description
本発明は、がん細胞標的能及びがん組織浸透性を持つタンパク質ナノ粒子に関する。また、本発明は、前記タンパク質ナノ粒子を作製するための融合タンパク質及びその融合タンパク質をコードする核酸に関する。更に、本発明は、前記タンパク質ナノ粒子を含むがん治療用組成物に関する。
DDS(Drug Delivery System、薬剤送達システム)とは、薬剤に適切な処理を施し、体内での動態を制御することをいい、薬剤の安全かつ効果的な使用のために重要である。特に抗がん剤においては、副作用の影響が大きいことから、DDSの果たす役割は極めて大きい。
本発明者は、以前から、エラスチン様ポリペプチドにポリアスパラギン酸を付加した融合タンパク質を利用したDDSを提案している(Fujita, Y. et al., Biomaterials, 30: 3450-3457, (2009))。この融合タンパク質を加熱すると、エラスチン様ポリペプチド部分をコアとし、ポリアスパラギン酸部分を外殻とするナノメートルサイズのミセルを形成する。このミセルは、内部に疎水場を形成するので、そこに疎水性の抗がん剤などを包含させることにより、DDSキャリアとして使用することができる。
また、本発明者は、上記融合タンパク質に更にEGF(上皮成長因子)を付加した融合タンパク質を作製し、EGFを提示するミセルも作製している(非特許文献1)。EGFは、がん細胞において過剰発現するEGFRのリガンドであることから、このミセルは、がん細胞を標的にすることが可能である。
Matsumoto, R. et al., J. Biomed. Mater. Res. B Appl. Biomater., 102(8): 1792-1798, (2014)
DDSキャリアが、がん細胞への標的能だけでなく、がん組織への浸透性も併せ持てば、がん細胞をより効率的に死滅させることができる。本発明は、このような背景の下になされたものであり、がん細胞標的能及びがん組織浸透性を持つDDSキャリアを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、エラスチン様ポリペプチドにポリアスパラギン酸を付加した融合タンパク質に、更にiRGDペプチドを付加した融合タンパク質を作製し、この融合タンパク質から形成される粒子が、がん細胞標的能及びがん組織浸透性の両方を持つDDSキャリアとなり得ることを見出した。iRGDを利用したDDSキャリアは既に報告されているが(例えば、Jin Z. et al., Sci Rep. 2016; 6: 27559)、上記のようなタンパク質からなるDDSキャリアは、本発明者によって初めて作製されたものである。
また、iRGDペプチドは、融合タンパク質から形成される粒子にがん細胞標的能及びがん組織浸透性を持たせるために付加したものであるが、意外にも、このペプチドを付加することにより、粒子の薬剤内包能が著しく向上することも見出した。
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供するものである。
(1)エラスチン様ポリペプチド、ポリ酸性アミノ酸、及びiRGDペプチドを含むことを特徴とする融合タンパク質であって、エラスチン様ポリペプチドはポリ酸性アミノ酸のN末端側に配置され、ポリ酸性アミノ酸はiRGDペプチドのN末端側に配置されている融合タンパク質。
(1)エラスチン様ポリペプチド、ポリ酸性アミノ酸、及びiRGDペプチドを含むことを特徴とする融合タンパク質であって、エラスチン様ポリペプチドはポリ酸性アミノ酸のN末端側に配置され、ポリ酸性アミノ酸はiRGDペプチドのN末端側に配置されている融合タンパク質。
(2)エラスチン様ポリペプチドが、Ala-Val-Gly-Val-Proの繰り返し配列からなることを特徴とする(1)に記載の融合タンパク質。
(3)ポリ酸性アミノ酸が、ポリアスパラギン酸であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の融合タンパク質。
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の融合タンパク質をコードすることを特徴とする核酸。
(5)(1)乃至(3)のいずれかに記載の融合タンパク質が集合して形成される粒子であって、融合タンパク質が、エラスチン様ポリペプチド部分をコアとし、ポリ酸性アミノ酸部分を外殻とするミセルを形成していることを特徴とする粒子。
(6)(5)に記載の粒子、及びこの粒子に内包される抗がん剤を含むことを特徴とするがん治療用組成物。
本発明は、がん細胞標的能及びがん組織浸透性を持つタンパク質ナノ粒子を提供する。このタンパク質ナノ粒子は、薬剤をがん細胞内部へ特異的に送達するためのキャリアとして有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)融合タンパク質
本発明の融合タンパク質は、エラスチン様ポリペプチド、ポリ酸性アミノ酸、及びiRGDペプチドを含むことを特徴とするものである。この融合タンパク質では、エラスチン様ポリペプチドがポリ酸性アミノ酸のN末端側に配置され、ポリ酸性アミノ酸がiRGDペプチドのN末端側に配置されている。
(1)融合タンパク質
本発明の融合タンパク質は、エラスチン様ポリペプチド、ポリ酸性アミノ酸、及びiRGDペプチドを含むことを特徴とするものである。この融合タンパク質では、エラスチン様ポリペプチドがポリ酸性アミノ酸のN末端側に配置され、ポリ酸性アミノ酸がiRGDペプチドのN末端側に配置されている。
エラスチン様ポリペプチドとポリ酸性アミノ酸、及びポリ酸性アミノ酸とiRGDペプチドは、直接つながっていてもよいが、他のペプチドを介してつながっていてもよい。このような他のペプチドとしては、後述する生理活性ペプチドのほか、リンカーなどを挙げることができる。このような他のペプチドの長さは、融合タンパク質の集合及びミセル形成を阻害しない限り制限はないが、30アミノ酸残基以下であることが好ましい。
エラスチン様ポリペプチドやiRGDペプチドの末端に他のペプチドが付加していてもよい。このような他のペプチドとしては、ヒスチジンタグなどを挙げることができる。
エラスチン様ポリペプチドとは、エラスチンのように一定温度以上になると凝集する性質を持つポリペプチドをいう。「エラスチン様ポリペプチド(Elastin-like polypeptide)」という用語は多くの文献において使用されている用語であり、また、どのようなアミノ酸配列を持てば、前記した性質を示すようになるかも、多くの文献において報告されている(Urry, D. W., et al., J. Am. Chem. Soc. 113, 4346-4348 (1991)、H Reiersen, et al., J. Mol. Biol., 283, 255-264 (1998)、K. Trabbic-Carlson, et al., Protein Engineering, Design and Selection 17, 57-66 (2004) 、R. Machado, et al., Journal of Nano Research 6, 133-145, (2009))。従って、当業者は、本発明において使用する適切なエラスチン様ポリペプチドを選択することができる。
エラスチン様ポリペプチドの具体例としては、式(I): Xaa1-Xaa2-Gly-Val-Pro〔式中、Xaa1はGly又はAlaを表し、Xaa2は任意のアミノ酸を表す。〕で表されるアミノ酸配列の繰り返し配列からなるペプチドを挙げることができる。式(I)におけるXaa1及びXaa2は繰り返しごとに異なるアミノ酸を表してもよいが、同じアミノ酸を表すことが好ましい。式(I)においてXaa1はGly又はAlaであればよいが、Alaであることが好ましい式(I)においてXaa2は任意のアミノ酸でよいが、Valであることが好ましい。式(I)で表されるアミノ酸配列の好ましい具体例としては、Ala-Val-Gly-Val-Pro(AVGVP、配列番号1)を挙げることができる。式(I)で表されるアミノ酸配列の繰り返し回数は特に制限はないが、繰り返し回数が多いと巨大な凝集体を形成し、また、繰り返し回数が少ないと粒子サイズが小さく温度応答性が著しく減少する。このため、繰り返し回数は、30〜60とするのが好ましく、40〜50とするのがより好ましい。
ポリ酸性アミノ酸としては、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸を挙げることができ、これらの中でもポリアスパラギン酸が好ましい。ポリ酸性アミノ酸は、酸性アミノ酸のみからなっていてもよいが、一部に酸性アミノ酸ではないアミノ酸(非酸性アミノ酸)が含まれていてもよい。非酸性アミノ酸は、ポリ酸性アミノ酸の電荷に著しい影響を与えないものであればどのようなものでもよく、例えば、ロイシンなどを挙げることができる。ポリ酸性アミノ酸の全残基数に占める非酸性アミノ酸の残基数の割合は、ポリ酸性アミノ酸の電荷に著しい影響を与えない限り特に制限はないが、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。ポリ酸性アミノ酸中に含まれる酸性アミノ酸の数は、特に制限はないが、数が多いと静電的な反発が強まり粒子サイズが小さくなってしまい、数が少ないと静電反発が十分でなく巨大な凝集体を形成してしまう。このため酸性アミノ酸の数は、20〜100とするのが好ましく、40〜80とするのがより好ましい。
iRGD(internalizing RGD)ペプチドは、RGD配列(配列番号2)とCendR配列(RXXK、配列番号3)を併せ持ち、これらの配列を利用することにより、がん細胞内部へ侵入することができる。即ち、iRGDペプチドは、RGD配列を利用して、がん細胞表面のインテグリンと結合し、ここでプロテアーゼの作用により、CendR配列を露出し、このCendR配列を利用し、ニューロピリンを介して、がん細胞内部へ侵入する。iRGDペプチドのアミノ酸配列は、Cys-Arg-Gly-Asp-Lys-Gly-Pro-Asp-Cys(CRGDKGPDC、配列番号4)であり、このうち1番目と9番目のCysはジスルフィド結合をする。
生理活性ペプチドは、生体内で何らかの生理機能を発揮するペプチドであればどのようなものでもよく、例えば、上皮成長因子(EGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などを挙げることができる。
生理活性ペプチドは、融合タンパク質中のどこに配置されていてもよいが、エラスチン様ポリペプチドとポリ酸性アミノ酸の間、又はポリ酸性アミノ酸とiRGDペプチド間に配置されることが好ましい。
本発明の融合タンパク質は、エラスチン様ポリペプチドをコードする遺伝子、ポリ酸性アミノ酸をコードする遺伝子、及びiRGDペプチドをコードする遺伝子を含む融合遺伝子を作製し、それを大腸菌などの微生物で発現させ、その発現産物を回収し、精製することにより得ることができる。融合遺伝子の作製は、制限酵素などを用い、常法に従って行うことができる。発現産物(融合タンパク質)の精製は、クロマトグラフィーなどを用いて行うことができる。
本発明の融合タンパク質には、以下のような利点がある。
1)タンパク質であることから、遺伝子工学的手法により容易に製造することができる。
2)遺伝子工学的手法により、容易に生理活性ペプチドを付加することができる。
3)エラスチン様ポリペプチドを含むので、発現産物をITC法により精製できる。
1)タンパク質であることから、遺伝子工学的手法により容易に製造することができる。
2)遺伝子工学的手法により、容易に生理活性ペプチドを付加することができる。
3)エラスチン様ポリペプチドを含むので、発現産物をITC法により精製できる。
(2)粒子及びがん治療用組成物
本発明の粒子は、本発明の融合タンパク質が集合して形成される粒子であって、融合タンパク質が、エラスチン様ポリペプチド部分をコアとし、ポリ酸性アミノ酸部分を外殻とするミセルを形成していることを特徴とするものである。
本発明の粒子は、本発明の融合タンパク質が集合して形成される粒子であって、融合タンパク質が、エラスチン様ポリペプチド部分をコアとし、ポリ酸性アミノ酸部分を外殻とするミセルを形成していることを特徴とするものである。
本発明の粒子は、本発明の融合タンパク質を適当な緩衝液に溶解させ、特定の温度で一定時間静置することにより、作製できる。ここで使用する緩衝液は、粒子の形成を妨げないものであればどのようなものでもよく、例えば、PBS、TBS、細胞用培地などを用いることができる。緩衝液中の本発明の融合タンパク質の濃度は、粒子の形成を妨げない範囲であれば特に制限されないが、50〜1000μg/mlとするのが好ましく、100〜500μg/mlとするのがより好ましい。粒子が形成されるまでの時間は、融合タンパク質の構造、融合タンパク質の濃度、緩衝液の塩濃度などの条件によって異なるが、通常、10〜20分程度である。粒子形成のための特定温度は、融合タンパク質の構造、融合タンパク質の濃度、緩衝液の塩濃度などの条件によって異なるが、通常、37〜45℃程度である。
本発明の粒子は、エラスチン様ポリペプチドからなるコアを有している。このコア部分は疎水場となるので、そこに疎水性の薬剤を内包させることができる。また、iRGDペプチドはポリ酸性アミノ酸のC末端側に配置されているので、このペプチドは粒子の表面に提示されることになる。このため、この粒子は、がん細胞を標的とし、また、がん細胞内部へ侵入することができる。以上のような性質から、この粒子は、DDSキャリア、特にがん細胞内部へ薬剤を特異的に送達するためのキャリアとして使用することができる。
本発明の粒子に抗がん剤を内包させることにより、がん治療用組成物とすることができる。抗がん剤としては、例えば、パクリタキセル、カンプトテシン、ドキソルビシン、
クルクミンなどを挙げることができる。
クルクミンなどを挙げることができる。
本発明の粒子に内包させる薬剤は、抗がん剤に限定されるわけではなく、がん細胞内部へ特異的に送達させたい薬剤であればどのようなものでよい。また、一般的には「薬剤」と認識されない物質であってもよい。このような薬剤や物質としては、例えば、がん細胞を標識する物質(蛍光物質、放射性物質など)、ホルモン剤、免疫賦活剤、鎮痛剤などを挙げることができる。
薬剤を内包させる粒子の粒子径は、EPR効果(Enhanced Permeation and Retention effect)による腫瘍集積性を発現させ得る範囲であることが好ましく、具体的には、10〜200nmである。粒子径は、ポリ酸性アミノ酸中の酸性アミノ酸の数によって調製することができる。具体的には、酸性アミノ酸の数を多くすれば、ポリ酸性アミノ酸同士の電気的反発力が強くなり、粒子径は小さくなり、逆に酸性アミノ酸の数を少なくすれば、ポリ酸性アミノ酸同士の電気的反発力が弱くなり、粒子径は大きくなる。
薬剤を内包させた本発明の粒子が、がん細胞内部へ特異的に送達される仕組みを、図1を用いて説明する。がん細胞周辺の血管内皮細胞間には、本発明の粒子が通過できるような大きな隙間があるのに対し、正常細胞周辺の血管内皮細胞間にはそのような隙間はない。このため、血管内に投与された本発明の粒子は、正常細胞へは集積せず、がん細胞に特異的に集積する。がん細胞に集積した本発明の粒子は、その表面に提示されるiRGDペプチド中のRGD配列により、がん細胞表面に発現するインテグリンと結合する。ここで、iRGDペプチドはプロテアーゼに切断され、CendR配列を露出する。次に、本発明の粒子は、CendR配列により、がん細胞表面に発現するニューロピリンと結合し、このニューロピリンを介してがん細胞内へ侵入する。細胞内へ侵入した本発明の粒子は、薬剤を放出する。
本発明の粒子には、以下のような利点がある。
1)がん細胞内部へ薬剤を特異的に送達することができる。
2)多くの薬剤を内包できると考えられる。実施例4に示すように、ADiR粒子(iRGDペプチドを含む)は、AD粒子(iRGDペプチドを含まない)の約2倍の蛍光物質(1,8-ANS)内包能を示した。この結果から、本発明の粒子は、エラスチン様ポリペプチドとポリ酸性アミノ酸を含む融合タンパク質から形成される粒子(AD粒子)の約2倍の薬剤内包能を有すると考えられる。また、本発明者は、エラスチン様ポリペプチドとポリ酸性アミノ酸とEGFを含む融合タンパク質から形成される粒子についても、同様の薬剤内包能評価実験を行っているが、この粒子は、エラスチン様ポリペプチドとポリ酸性アミノ酸を含む融合タンパク質から形成される粒子と同程度の薬剤内包能しか示さなかった(Matsumoto, R. et al., J. Biomed. Mater. Res. B Appl. Biomater., 102(8): 1792-1798, (2014), FIGURE 5)。従って、上記の薬剤内包能向上効果は、iRGDペプチドに特有の効果であると考えられる。
3)ポリ酸性アミノ酸中の酸性アミノ酸の数により、容易に粒子サイズを調節できる。
4)温度に応答して粒子化するので、粒子化の制御が容易である。通常、室温(20℃付近)では粒子化せず、ヒトの体温(36℃付近)で粒子化するので、粒子化していない状態でヒトに投与し、ヒト体内で粒子化させることが可能である。
5)タンパク質からなるので、生体適合性に優れ、また生分解性を有する。
1)がん細胞内部へ薬剤を特異的に送達することができる。
2)多くの薬剤を内包できると考えられる。実施例4に示すように、ADiR粒子(iRGDペプチドを含む)は、AD粒子(iRGDペプチドを含まない)の約2倍の蛍光物質(1,8-ANS)内包能を示した。この結果から、本発明の粒子は、エラスチン様ポリペプチドとポリ酸性アミノ酸を含む融合タンパク質から形成される粒子(AD粒子)の約2倍の薬剤内包能を有すると考えられる。また、本発明者は、エラスチン様ポリペプチドとポリ酸性アミノ酸とEGFを含む融合タンパク質から形成される粒子についても、同様の薬剤内包能評価実験を行っているが、この粒子は、エラスチン様ポリペプチドとポリ酸性アミノ酸を含む融合タンパク質から形成される粒子と同程度の薬剤内包能しか示さなかった(Matsumoto, R. et al., J. Biomed. Mater. Res. B Appl. Biomater., 102(8): 1792-1798, (2014), FIGURE 5)。従って、上記の薬剤内包能向上効果は、iRGDペプチドに特有の効果であると考えられる。
3)ポリ酸性アミノ酸中の酸性アミノ酸の数により、容易に粒子サイズを調節できる。
4)温度に応答して粒子化するので、粒子化の制御が容易である。通常、室温(20℃付近)では粒子化せず、ヒトの体温(36℃付近)で粒子化するので、粒子化していない状態でヒトに投与し、ヒト体内で粒子化させることが可能である。
5)タンパク質からなるので、生体適合性に優れ、また生分解性を有する。
(3)核酸
本発明には、上述した融合タンパク質、粒子、がん治療用組成物のほか、融合タンパク質をコードする核酸も含まれる。ここで、「核酸」とは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、又は前記核酸の修飾体をも含む。
本発明には、上述した融合タンパク質、粒子、がん治療用組成物のほか、融合タンパク質をコードする核酸も含まれる。ここで、「核酸」とは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、又は前記核酸の修飾体をも含む。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 プラスミドDNA構築・タンパク質発現確認
(1)プラスミドの構築
プラスミドDNAの設計には、本発明者の属する研究室で作製されたプラスミドpET28b-(AVGVP)42-D44-Chisを用いた。pET28b-(AVGVP)42-D44-ChisをXho Iで切断し、アニーリングした合成オリゴヌクレオチド(5’-TCGACGAATT CCATATGC-3’(配列番号5)、5’-GCTTAAGGTA TACGAGCT-3’(配列番号6))を導入することでEcoR IとNde Iの制限酵素サイトを付加した。得られたpET28b-(AVGVP)42-D44-Oligo-ChisをXho IとEcoR Iで切断し、アニーリングした合成オリゴ(5’-AATTCACTAG TGGCGGTGGA TCTGGCGGTG GATCTTGCCG TGGAGATAAA GGACCGGATT GCAAGCTTC-3’ (配列番号7), 5’-TCGAGAAGCT TGCAATCCGG TCCTTTATCT CCACGGCAAG ATCCACCGCC AGATCCACCG CCACTAGTG-3’ (配列番号8))(iRGD配列CRGDKGPDCとスペーサーのGGGS2がコードされている)を導入することでpET28b-(AVGVP)42-D44-iRGD-Chisを作製した。
(1)プラスミドの構築
プラスミドDNAの設計には、本発明者の属する研究室で作製されたプラスミドpET28b-(AVGVP)42-D44-Chisを用いた。pET28b-(AVGVP)42-D44-ChisをXho Iで切断し、アニーリングした合成オリゴヌクレオチド(5’-TCGACGAATT CCATATGC-3’(配列番号5)、5’-GCTTAAGGTA TACGAGCT-3’(配列番号6))を導入することでEcoR IとNde Iの制限酵素サイトを付加した。得られたpET28b-(AVGVP)42-D44-Oligo-ChisをXho IとEcoR Iで切断し、アニーリングした合成オリゴ(5’-AATTCACTAG TGGCGGTGGA TCTGGCGGTG GATCTTGCCG TGGAGATAAA GGACCGGATT GCAAGCTTC-3’ (配列番号7), 5’-TCGAGAAGCT TGCAATCCGG TCCTTTATCT CCACGGCAAG ATCCACCGCC AGATCCACCG CCACTAGTG-3’ (配列番号8))(iRGD配列CRGDKGPDCとスペーサーのGGGS2がコードされている)を導入することでpET28b-(AVGVP)42-D44-iRGD-Chisを作製した。
このpET28b-(AVGVP)42-D44-iRGD-Chisの塩基配列を配列番号9に示す。また、このプラスミドから発現するタンパク質(AdiR)のアミノ酸配列を配列番号10に示す。配列番号9における5089-5748、5761-5901、5920-5943、5944-5970、及び5983-6000が、それぞれ(AVGVP)42部分、D44部分、スペーサー(GGGS2)部分、iRGD部分、及びC末端ヒスチジンタグ(Chis)部分をコードしている。また、配列番号10における7-226、231-277、284-291、292-300、及び305-310が、それぞれ(AVGVP)42部分、D44部分、スペーサー(GGGS2)部分、iRGD部分、及びC末端ヒスチジンタグ(Chis)部分である。
(2)融合タンパク質の発現・精製
大腸菌内においてタンパク質を発現させるために、作製したプラスミドpET28b-(AVGVP)42-D44-Chis、pET28b-(AVGVP)42-D44-iRGD-Chisで形質転換した大腸菌BLR(DE3)株を、kanamycin 0.1 mg / ml、Tetracycline 20 μg/mLを含むLB培地にて37℃で振とう培養を行った。その後、O.D.660=0.6に達した時点で終濃度1mMのIPTGを加え、25℃、Overnightで培養を行い、タンパク質を発現させた。回収した大腸菌のペレットをPBSで懸濁し、超音波処理により破砕した。そして破砕された大腸菌ライセートを17,000 gにて15分間の遠心を行い、上清を分取することにより可溶画分ライセートを得た。
大腸菌内においてタンパク質を発現させるために、作製したプラスミドpET28b-(AVGVP)42-D44-Chis、pET28b-(AVGVP)42-D44-iRGD-Chisで形質転換した大腸菌BLR(DE3)株を、kanamycin 0.1 mg / ml、Tetracycline 20 μg/mLを含むLB培地にて37℃で振とう培養を行った。その後、O.D.660=0.6に達した時点で終濃度1mMのIPTGを加え、25℃、Overnightで培養を行い、タンパク質を発現させた。回収した大腸菌のペレットをPBSで懸濁し、超音波処理により破砕した。そして破砕された大腸菌ライセートを17,000 gにて15分間の遠心を行い、上清を分取することにより可溶画分ライセートを得た。
可溶画分中に含まれる目的タンパク質は、ニッケルイオンを配位したHis-Select Nickel Affinity Gel (Sigma)とヒスチジンタグとの配位結合を利用して精製を行った。レジンを充填したポリプレップエンプティカラム(BioRad)をPBSで平衡化し、そこに可溶画分を添加した。4℃において1時間ローテーションを行い、目的のタンパク質をレジンに吸着させた。フロースルーを除去し、非特異的に吸着したタンパク質を除去するために、レジンの3倍量のWash buffer (20 mM リン酸Buffer、0.5 M NaCl、pH 8.0)で5回洗浄を行った。さらにレジンの3倍量の20 mM Imidazoleを含むWash buffer(20 mM リン酸Buffer、0.5 M NaCl、pH 8.0)で5回洗浄を行った。その後、100 mM Imidazoleを含むElution buffer(20 mM リン酸Buffer、0.5 M NaCl、pH 7.4)をレジンと等量加え、室温で15分間インキュベートしたのち、目的タンパク質を溶出した。同様の手順でさらに4回、計5回溶出を行った。
精製したタンパク質はSlide-A-lyzer (Pierce)を用い、100倍以上のPBSで4℃において1時間以上の透析を3回行った。精製したタンパク質は、12%ポリアクリルアミドを用いたSDS-PAGEに展開したあと、CBB染色液(ナカライテスク)に浸して染色し、目的タンパク質が得られたことを確認した。タンパク質濃度はBCA protein assay kit (Pierce)により決定した。精製したタンパク質は-80℃で保存した。
(3)結果と考察
pET28b-(AVGVP)42-D44-ChisはN末端側から温度に応答して凝集体を形成する配列(AVGVP)の42回繰り返し、凝集体のサイズを制御するためのアスパラギン酸(D44)、精製用tagであるHis tagが付加されたタンパク質(AD)を発現するように設計されている(図1A)。pET28b-(AVGVP)42-D44-iRGD-Chisはポリアスパラギン酸の末端にがん細胞接着能とがん組織浸透性を有するiRGDを融合したタンパク質(ADiR)を発現するように設計した(図1B)。iRGDを融合することで、インテグリンα5β3を過剰発現するがん細胞表面に特異的に結合し、プロテアーゼによる切断後に露出するRXXK配列(CendRモチーフ)がニューロピリン-1に結合し、がん組織への浸透性が向上することを期待した。
pET28b-(AVGVP)42-D44-ChisはN末端側から温度に応答して凝集体を形成する配列(AVGVP)の42回繰り返し、凝集体のサイズを制御するためのアスパラギン酸(D44)、精製用tagであるHis tagが付加されたタンパク質(AD)を発現するように設計されている(図1A)。pET28b-(AVGVP)42-D44-iRGD-Chisはポリアスパラギン酸の末端にがん細胞接着能とがん組織浸透性を有するiRGDを融合したタンパク質(ADiR)を発現するように設計した(図1B)。iRGDを融合することで、インテグリンα5β3を過剰発現するがん細胞表面に特異的に結合し、プロテアーゼによる切断後に露出するRXXK配列(CendRモチーフ)がニューロピリン-1に結合し、がん組織への浸透性が向上することを期待した。
作製したpET28b-(AVGVP)44-D42-iRGD -Chisで形質転換したBLR(DE3)株を用いてタンパク質を発現誘導したところ、ADiRは可溶性のタンパク質として発現した。発現したタンパク質は、可溶画分からニッケルアフィニティーレジンを用いて単離精製を行い、アミノ酸配列から予測される分子量(27.4 k)付近に単一のバンドを確認した(図1C)。精製後、透析を行いPBS中に溶解した目的タンパク質を最終生成物とした。
〔実施例2〕 iRGD部位の環状形成評価
(1)メルカプトエタノールによる環状化確認(分子間or分子内結合)
透析後のサンプルをSDS-PAGE展開した。サンプルは還元処理の有無でADiRの構造を比較するため、ジスルフィド結合の生成を防止する2-メルカプトエタノール(2-Me)を加えたサンプルと、加えていないサンプルを用意し、電気泳動を行った。
(1)メルカプトエタノールによる環状化確認(分子間or分子内結合)
透析後のサンプルをSDS-PAGE展開した。サンプルは還元処理の有無でADiRの構造を比較するため、ジスルフィド結合の生成を防止する2-メルカプトエタノール(2-Me)を加えたサンプルと、加えていないサンプルを用意し、電気泳動を行った。
(2)Oregon greenマレイミド標識による環状化確認(環状or非環状)
ADiRナノ粒子のiRGD部位が2つのシステイン(Cys)のジスルフィド結合によって環状構造を形成しているか否かを確認するため、蛍光試薬であるOregon Green(登録商標) 488 Maleimideを標識して蛍光測定をおこなった。この試薬は、マレイミド基がチオール基(-SH)の求核攻撃を受けて結合を形成するため、SH基を有した化合物にOregon Greenを標識することができる。そこでこの性質を利用して、iRGD部位の環状形成を評価した。ADiRのiRGD部位が環状構造を形成していると仮定すれば、2つのシステインのチオール基はジスルフィド基となり、Oregon Green 488 Maleimideが標識されず、蛍光を発さないと考えられる。コントロールとして、iRGD部位を欠いたAD、還元剤(ジスルフィド結合を切断し、チオール基へ戻す)のDTTを加えたADiRに対しても同様の実験を行った。実験手順は以下の通りである。
ADiRナノ粒子のiRGD部位が2つのシステイン(Cys)のジスルフィド結合によって環状構造を形成しているか否かを確認するため、蛍光試薬であるOregon Green(登録商標) 488 Maleimideを標識して蛍光測定をおこなった。この試薬は、マレイミド基がチオール基(-SH)の求核攻撃を受けて結合を形成するため、SH基を有した化合物にOregon Greenを標識することができる。そこでこの性質を利用して、iRGD部位の環状形成を評価した。ADiRのiRGD部位が環状構造を形成していると仮定すれば、2つのシステインのチオール基はジスルフィド基となり、Oregon Green 488 Maleimideが標識されず、蛍光を発さないと考えられる。コントロールとして、iRGD部位を欠いたAD、還元剤(ジスルフィド結合を切断し、チオール基へ戻す)のDTTを加えたADiRに対しても同様の実験を行った。実験手順は以下の通りである。
1. 300 μg/mlに調製したADiR (29.1kDa, SH基数2)タンパク質のPBS溶液100μlを1.5mlマイクロチューブに入れ、100 mMのDTT (ジチオトレイトール, PBS) 溶液10μlを加え、よく混合した。
2. 操作1のチューブを37℃で30分間インキュベートした後、溶液全量をMWCO 10K フィルトレーションチューブに移し、10000 rpm で15分間遠心した。
3. PBS 500μlを操作2のチューブに加えて混合し、10000rpmで15分間遠心し、濾液を除去した。
4. 操作3をもう2回行った。
5. PBS 100μlを操作4のチューブに加え、よく混合した。
6. 操作5の300 μg/ml AD, ADiR溶液を1.5mlマイクロチューブに移し、20 mM Oregon Green 488 Maleimide 溶液を1.5μl加え、よく混合した (終濃度 300 μmol/l )。
7. 操作6のチューブを37℃で30分インキュベートした。
8. 溶液全量をMWCO 10K フィルトレーションチューブに移し、10000 rpm で15分間遠心した。
9. PBS 500μlを操作2のチューブに加えて混合し、10000rpmで15分間遠心し、濾液を除去した。
10. 操作9をもう3回行った。
11. PBS 100μlを操作10のチューブに加え、よく混合した。
12. 操作11の300 μg/ml ADiR溶液を1.5mlマイクロチューブに移した。
13. サンプルを25μg/mlまでPBSで希釈し、FP-6500蛍光分光光度計で波長494 nmの励起光を照射し、500nm〜600nmにおける蛍光スペクトルを測定した。
2. 操作1のチューブを37℃で30分間インキュベートした後、溶液全量をMWCO 10K フィルトレーションチューブに移し、10000 rpm で15分間遠心した。
3. PBS 500μlを操作2のチューブに加えて混合し、10000rpmで15分間遠心し、濾液を除去した。
4. 操作3をもう2回行った。
5. PBS 100μlを操作4のチューブに加え、よく混合した。
6. 操作5の300 μg/ml AD, ADiR溶液を1.5mlマイクロチューブに移し、20 mM Oregon Green 488 Maleimide 溶液を1.5μl加え、よく混合した (終濃度 300 μmol/l )。
7. 操作6のチューブを37℃で30分インキュベートした。
8. 溶液全量をMWCO 10K フィルトレーションチューブに移し、10000 rpm で15分間遠心した。
9. PBS 500μlを操作2のチューブに加えて混合し、10000rpmで15分間遠心し、濾液を除去した。
10. 操作9をもう3回行った。
11. PBS 100μlを操作10のチューブに加え、よく混合した。
12. 操作11の300 μg/ml ADiR溶液を1.5mlマイクロチューブに移した。
13. サンプルを25μg/mlまでPBSで希釈し、FP-6500蛍光分光光度計で波長494 nmの励起光を照射し、500nm〜600nmにおける蛍光スペクトルを測定した。
(3)結果と考察
SDS−PAGEの結果、還元処理の有無で、バンドがシフトしていなかった(図3A)。このことから、ADiRのチオール基同士での分子間結合による二量体以上の形成は起こっていないと考えられる。よって、分子間結合の可能性は消され、分子内結合によってiRGDが環状構造を取っている、もしくはフリーの状態の2択に絞られた。
SDS−PAGEの結果、還元処理の有無で、バンドがシフトしていなかった(図3A)。このことから、ADiRのチオール基同士での分子間結合による二量体以上の形成は起こっていないと考えられる。よって、分子間結合の可能性は消され、分子内結合によってiRGDが環状構造を取っている、もしくはフリーの状態の2択に絞られた。
また、Oregon Green 488 Maleimideによる蛍光測定の結果より、還元型ADiRのサンプルは、Oregon Green の蛍光スペクトル520nm付近において強い蛍光が見られた(図3C)。それに対して酸化型ADiRは520nm付近において、コントロールであるiRGDを有していないADと同様の結果となった(図3C)。この結果は、ADiRは分子間のジスルフィド結合によって、フリーなチオール基を有していないため、Oregon Green 488 Maleimideが結合できなかった一方で、DTTによって強制的にジスルフィド結合を開裂することで、Oregon Green 488 Maleimideが結合し、蛍光を発したことを示唆している。コントロールと酸化型ADiRで見られるわずかな蛍光が観測されたのは、フィルター濾過の際に融合タンパク質に結合していないフリーなOregon Green 488 Maleimideが完全に除去できていなかったためだと考えている。
よって、今回作製したADiRは、狙い通りiRGDドメインにおいて、チオール基のジスルフィド結合によって環状構造を形成していると考えられる。
〔実施例3〕 動的光散乱法による粒子径測定
(1)動的光散乱法による粒子径計測
作製したとADiRがサイズを制限された粒子を形成するかを、動的光散乱法(DLS)を用いて測定した。PBS中に300μg/mlとなるようタンパク質溶液を調整し、温度を変化させながら粒子径の測定を行った。
(1)動的光散乱法による粒子径計測
作製したとADiRがサイズを制限された粒子を形成するかを、動的光散乱法(DLS)を用いて測定した。PBS中に300μg/mlとなるようタンパク質溶液を調整し、温度を変化させながら粒子径の測定を行った。
試薬及びバッファーはすべて0.22μmのフィルターに通して、ダストを除去した。データはNano-ZS (Malvern)を用いて、633 nmのレーザー光の90°の方向の散乱を10秒間以上、複数回測定し、収集することで1セットとした。これを15セット行った。セルの温度を変化させた場合、10分間平衡化した。粒子径分布の散乱強度表示から体積表示への換算はNano-ZS付属のソフトウェアを用いた。
(2)結果と考察
ADiRの25℃における粒子径は約10nmであったのに対し、45℃における粒子径は約30nmであった(図4)。この結果から、ADiRは、ADと同様に、加熱によりナノサイズの粒子を形成できると考えられる。また、45℃に加熱した後、20℃まで冷却した場合でも、粒子径はほとんど低下しなかったことから、加熱により一度形成された粒子は、温度低下後も維持されると考えられる。
ADiRの25℃における粒子径は約10nmであったのに対し、45℃における粒子径は約30nmであった(図4)。この結果から、ADiRは、ADと同様に、加熱によりナノサイズの粒子を形成できると考えられる。また、45℃に加熱した後、20℃まで冷却した場合でも、粒子径はほとんど低下しなかったことから、加熱により一度形成された粒子は、温度低下後も維持されると考えられる。
〔実施例4〕 蛍光プローブによる薬剤内包能確認
(1)薬剤内包能評価
ADiRナノ粒子内部への薬剤内包能評価を、1-アニリノナフタレン-8-スルホン酸(1,8-ANS)の蛍光測定により検討した。1,8-ANSは疎水性ポケットや脂質の疎水性部位へ蓄積し、蛍光を発する。この性質によりELPにも結合し、加熱による集合に伴い蛍光を発することが知られている。そこで、この性質を利用して各温度における蛍光強度を測定し、薬剤内包能を評価した。ADiR 300 μg/mlに1,8-ANS 100 μMを混合し、25℃で10分間インキュベートした。その後、波長370 nmの励起光を照射し、蛍光スペクトルを測定した。測定にはFP-6500蛍光分光光度計を用いた。次に、40℃で10分間インキュベートし、同様に測定を行った。コントロールとして、PBSのみ、BSA(300μg/ml)、(AVGVP)42-D44-Chis(AD) (300μg/ml)に対しても同様の実験を行った。光増倍管の印加電圧は290 Vで行った。
(1)薬剤内包能評価
ADiRナノ粒子内部への薬剤内包能評価を、1-アニリノナフタレン-8-スルホン酸(1,8-ANS)の蛍光測定により検討した。1,8-ANSは疎水性ポケットや脂質の疎水性部位へ蓄積し、蛍光を発する。この性質によりELPにも結合し、加熱による集合に伴い蛍光を発することが知られている。そこで、この性質を利用して各温度における蛍光強度を測定し、薬剤内包能を評価した。ADiR 300 μg/mlに1,8-ANS 100 μMを混合し、25℃で10分間インキュベートした。その後、波長370 nmの励起光を照射し、蛍光スペクトルを測定した。測定にはFP-6500蛍光分光光度計を用いた。次に、40℃で10分間インキュベートし、同様に測定を行った。コントロールとして、PBSのみ、BSA(300μg/ml)、(AVGVP)42-D44-Chis(AD) (300μg/ml)に対しても同様の実験を行った。光増倍管の印加電圧は290 Vで行った。
(2)結果と考察
1,8-ANSを含むPBS中でADiRを粒子化させたところ、ADと似たような著しい蛍光の増大が観察された(図5E)。これは加熱により(AVGVP)nが疎水性コアを形成したためだと考えられる。また興味深いことに、ADiRの粒子形成後の蛍光強度は、ADと比較して2倍高い値を示した。一方、BSAは温度に関わらず蛍光値がほぼ一定であり(図5C)、PBSはほとんど蛍光を発していない(図5B)。このことからも、蛍光強度の増加は粒子化によるものであると考えられ、ADとADiRは粒子化の際、ポリアスパラギン酸部位が外側を向き負電荷の層を、(AVGVP)n部位が内側を向き疎水性環境を形成していることが示唆された。また疎水性化合物とともに加熱することで粒子化の際それらを取り込み、粒子内に内包可能であることが示された。
1,8-ANSを含むPBS中でADiRを粒子化させたところ、ADと似たような著しい蛍光の増大が観察された(図5E)。これは加熱により(AVGVP)nが疎水性コアを形成したためだと考えられる。また興味深いことに、ADiRの粒子形成後の蛍光強度は、ADと比較して2倍高い値を示した。一方、BSAは温度に関わらず蛍光値がほぼ一定であり(図5C)、PBSはほとんど蛍光を発していない(図5B)。このことからも、蛍光強度の増加は粒子化によるものであると考えられ、ADとADiRは粒子化の際、ポリアスパラギン酸部位が外側を向き負電荷の層を、(AVGVP)n部位が内側を向き疎水性環境を形成していることが示唆された。また疎水性化合物とともに加熱することで粒子化の際それらを取り込み、粒子内に内包可能であることが示された。
〔実施例5〕 ナノ粒子のインテグリン接着活性評価
(1)ナノ粒子のインテグリン接着活性評価
ナノ粒子のインテグリン接着活性評価実験を行った。実験手順は以下の通りである。
(1)ナノ粒子のインテグリン接着活性評価
ナノ粒子のインテグリン接着活性評価実験を行った。実験手順は以下の通りである。
1. 0, 1, 10, 100, 1000nMのAD, ADiRナノ粒子をnon-coatingの96wellプレートに100μl添加し、37℃で1時間インキュベートすることで固相表面にコーティングした。
2. PBSで1回洗浄した。
3. 1%BSAを200μl添加し、37℃で1時間インキュベートすることでブロッキングした。
4. PBSで3回洗浄した。
5. 無血清培地中のA549 (4×104 cell/100μl) を添加し、37℃で2時間インキュベートした。
6. PBSで3回洗浄した。
7. Cell counting kit-8 (Dojindo)を用いて生細胞数を計測した。DMEM:Cell counting kit=10:1とした混合液を110 μl添加して37℃で3時間インキュベートした。そして450 nmの吸光を測定することにより生細胞数を評価した。測定値は3 wellの平均値とした。
2. PBSで1回洗浄した。
3. 1%BSAを200μl添加し、37℃で1時間インキュベートすることでブロッキングした。
4. PBSで3回洗浄した。
5. 無血清培地中のA549 (4×104 cell/100μl) を添加し、37℃で2時間インキュベートした。
6. PBSで3回洗浄した。
7. Cell counting kit-8 (Dojindo)を用いて生細胞数を計測した。DMEM:Cell counting kit=10:1とした混合液を110 μl添加して37℃で3時間インキュベートした。そして450 nmの吸光を測定することにより生細胞数を評価した。測定値は3 wellの平均値とした。
(2)インテグリン-RGD結合阻害時の接着活性評価
インテグリン-RGD結合阻害時の接着活性評価実験を行った。実験手順は以下の通りである。
インテグリン-RGD結合阻害時の接着活性評価実験を行った。実験手順は以下の通りである。
1. 1000 nMのAD, ADiRナノ粒子をnon-coatingの96wellプレートに100μl添加し、37℃で1時間インキュベートすることで固相表面にコーティングした。
2. PBSで1回洗浄した。
3. 1%BSAを200μl添加し、37℃で1時間インキュベートすることでブロッキングした。
4. PBSで3回洗浄した。
5. 無血清培地中のA549 (4×104 cell/100μl) にRGDペプチドを終濃度0, 10, 100, 1000, 10000 nM となるように細胞と混合し、10分間インキュベートした。
6. 96wellプレートに添加し37℃で2時間インキュベートした。
7. PBSで3回洗浄した。
8. Cell counting kit-8 (Dojindo)を用いて生細胞数を計測した。DMEM:Cell counting kit=10:1とした混合液を110 μl添加して37℃で3時間インキュベートした。そして450 nmの吸光を測定することにより生細胞数を評価した。測定値は3 wellの平均値とした。
2. PBSで1回洗浄した。
3. 1%BSAを200μl添加し、37℃で1時間インキュベートすることでブロッキングした。
4. PBSで3回洗浄した。
5. 無血清培地中のA549 (4×104 cell/100μl) にRGDペプチドを終濃度0, 10, 100, 1000, 10000 nM となるように細胞と混合し、10分間インキュベートした。
6. 96wellプレートに添加し37℃で2時間インキュベートした。
7. PBSで3回洗浄した。
8. Cell counting kit-8 (Dojindo)を用いて生細胞数を計測した。DMEM:Cell counting kit=10:1とした混合液を110 μl添加して37℃で3時間インキュベートした。そして450 nmの吸光を測定することにより生細胞数を評価した。測定値は3 wellの平均値とした。
(3)結果と考察
ADiRがコーティングされたサンプルにおいて、コントロールのRGDを持たないナノ粒子ADと比較して、ADiR濃度依存的に生細胞数が上昇している結果を示した(図6D)。一方、ADiRがコーティングされたプレートに、A549とRGDペプチドとを添加した場合には、RGDペプチド濃度依存的に生細胞数が減少した(図7)。これらの結果から、iRGDのRGDドメインによりA549が接着したことが示唆される。
ADiRがコーティングされたサンプルにおいて、コントロールのRGDを持たないナノ粒子ADと比較して、ADiR濃度依存的に生細胞数が上昇している結果を示した(図6D)。一方、ADiRがコーティングされたプレートに、A549とRGDペプチドとを添加した場合には、RGDペプチド濃度依存的に生細胞数が減少した(図7)。これらの結果から、iRGDのRGDドメインによりA549が接着したことが示唆される。
〔実施例6〕 蛍光内包ナノ粒子のがん細胞内導入能評価
薬剤モデルとして疎水性蛍光色素(Coumarin-6)を内包したADiRナノ粒子を作製し、その細胞内移行をC-6の蛍光により確認した(励起波長:444nm蛍光波長:505nm)。ADiR融合タンパク質と混合し加熱することで、AVGVPとの疎水性相互作用により、C-6が内包された形でナノ粒子が形成される。
薬剤モデルとして疎水性蛍光色素(Coumarin-6)を内包したADiRナノ粒子を作製し、その細胞内移行をC-6の蛍光により確認した(励起波長:444nm蛍光波長:505nm)。ADiR融合タンパク質と混合し加熱することで、AVGVPとの疎水性相互作用により、C-6が内包された形でナノ粒子が形成される。
(1)C-6内包ADiRナノ粒子調製
融合タンパク質ADiRが3μM、C-6が30 μMとなるようにPBSで調製し、混合液を作製した。混合液に対して超音波処理を行い、現時点でのC-6同士の疎水性相互作用による凝集を抑制した。サンプルを42℃で15minインキュベートし、蛍光色素を取り込んだナノ粒子を形成させた。その後タンパク質溶液をSlide-A-lyzer (Pierce)を用いて、100倍以上のPBSで42℃において1時間以上の透析を3回行い、未内包のC-6を除去した。最後にフィルター滅菌(0.22μm)を行うことでC-6内包ADiR粒子を調製した。
融合タンパク質ADiRが3μM、C-6が30 μMとなるようにPBSで調製し、混合液を作製した。混合液に対して超音波処理を行い、現時点でのC-6同士の疎水性相互作用による凝集を抑制した。サンプルを42℃で15minインキュベートし、蛍光色素を取り込んだナノ粒子を形成させた。その後タンパク質溶液をSlide-A-lyzer (Pierce)を用いて、100倍以上のPBSで42℃において1時間以上の透析を3回行い、未内包のC-6を除去した。最後にフィルター滅菌(0.22μm)を行うことでC-6内包ADiR粒子を調製した。
また、ADiRの代わりに、AD、ADiR-RGD(-)、又はAD、ADiR-CendR(-)を用い、上記と同様にC-6内包ADiR粒子を調製した。なお、ADiR-RGD(-)はADiR中のiRGD配列(CRGDKGPDC)中のRGDをRGEへと変異させたものであり、ADiR-CendR(-)は、ADiR中のiRGD配列中のRGDKをRGDEへと変異させたものである。
(2)細胞内薬剤導入能評価
DMEM (1% Penicillin/Streptomycin、10% FBS含有)中で培養したA549を、細胞培養用35 mm dish plates に1.0×104 cells /wellの密度で播種し、37℃で一晩培養した。その後無血清培地へ交換しさらに一晩培養し、調製したC-6内包ADiR粒子を6nMとなるようにそれぞれ添加した。1時間後PBSで2回洗浄し、再度培地を添加し、レーザー走査顕微鏡を用いて観察した。
DMEM (1% Penicillin/Streptomycin、10% FBS含有)中で培養したA549を、細胞培養用35 mm dish plates に1.0×104 cells /wellの密度で播種し、37℃で一晩培養した。その後無血清培地へ交換しさらに一晩培養し、調製したC-6内包ADiR粒子を6nMとなるようにそれぞれ添加した。1時間後PBSで2回洗浄し、再度培地を添加し、レーザー走査顕微鏡を用いて観察した。
また、ADiRの代わりに、AD、ADiR-RGD(-)、又はAD、ADiR-CendR(-)を用い、上記と同様に、レーザー走査顕微鏡を用いてA549を観察した。
(3)結果と考察
C-6内包AD粒子を添加したA549では蛍光が観察されなかったのに対し(図8A及びB)、C-6内包ADiR粒子を添加したA549では蛍光が観察された(図8C及びD)。この結果から、ADiR粒子はがん細胞内に取り込まれることが確認された。また、ADiR-RGD(-)やADiR-CendR(-)を添加した場合も蛍光が観察されなったことから(図9A、B、C、及びD)、がん細胞への取り込みにはRGD配列及びCendR配列が重要な役割を果たしていると考えられる。
C-6内包AD粒子を添加したA549では蛍光が観察されなかったのに対し(図8A及びB)、C-6内包ADiR粒子を添加したA549では蛍光が観察された(図8C及びD)。この結果から、ADiR粒子はがん細胞内に取り込まれることが確認された。また、ADiR-RGD(-)やADiR-CendR(-)を添加した場合も蛍光が観察されなったことから(図9A、B、C、及びD)、がん細胞への取り込みにはRGD配列及びCendR配列が重要な役割を果たしていると考えられる。
〔実施例7〕 蛍光内包ナノ粒子の細胞内追跡
(1)C-6内包ADiRナノ粒子調製
融合タンパク質ADiRが3 μM、C-6が30 μMとなるようにPBSで調製し、混合液を作製した。混合液に対して超音波処理を行い、現時点でのC-6同士の疎水性相互作用による凝集を抑制した。サンプルを42℃で15minインキュベートし、蛍光色素を取り込んだナノ粒子を形成させた。その後タンパク質溶液をSlide-A-lyzer (Pierce)を用いて、100倍以上のPBSで42℃において1時間以上の透析を3回行い、未内包のC-6を除去した。最後にフィルター滅菌(0.22μm)を行うことでC-6内包ADiR粒子を調製した。
(1)C-6内包ADiRナノ粒子調製
融合タンパク質ADiRが3 μM、C-6が30 μMとなるようにPBSで調製し、混合液を作製した。混合液に対して超音波処理を行い、現時点でのC-6同士の疎水性相互作用による凝集を抑制した。サンプルを42℃で15minインキュベートし、蛍光色素を取り込んだナノ粒子を形成させた。その後タンパク質溶液をSlide-A-lyzer (Pierce)を用いて、100倍以上のPBSで42℃において1時間以上の透析を3回行い、未内包のC-6を除去した。最後にフィルター滅菌(0.22μm)を行うことでC-6内包ADiR粒子を調製した。
(2)細胞内薬剤導入能評価
DMEM (1% Penicillin/Streptomycin、10% FBS含有)中で培養したA549を、細胞培養用35 mm dish plates に1.0×104 cells /wellの密度で播種し、37℃で一晩培養した。その後無血清培地へ交換しさらに一晩培養し、調製したC-6内包AD粒子とADiR粒子を6nMとなるようにそれぞれ添加した。インキュベート15 min、30min、60min後にPBSで2回洗浄した。再度無血清培地を添加し、共焦点顕微鏡を用いて観察した。
DMEM (1% Penicillin/Streptomycin、10% FBS含有)中で培養したA549を、細胞培養用35 mm dish plates に1.0×104 cells /wellの密度で播種し、37℃で一晩培養した。その後無血清培地へ交換しさらに一晩培養し、調製したC-6内包AD粒子とADiR粒子を6nMとなるようにそれぞれ添加した。インキュベート15 min、30min、60min後にPBSで2回洗浄した。再度無血清培地を添加し、共焦点顕微鏡を用いて観察した。
(3)結果と考察
インキュベート30min後に弱い蛍光が(図10B)、60min後に強い蛍光が観察された(図10C)。この結果から、1hの時間スケールで、ADiR粒子はがん細胞内に取り込まれることが確認された。
インキュベート30min後に弱い蛍光が(図10B)、60min後に強い蛍光が観察された(図10C)。この結果から、1hの時間スケールで、ADiR粒子はがん細胞内に取り込まれることが確認された。
〔実施例8〕 PTX内包ADiR粒子の細胞死誘導能評価
(1)PTX内包ナノ粒子の作製
パクリタキセル(PTX)内包ナノ粒子を以下の手順で作製した。
(1)PTX内包ナノ粒子の作製
パクリタキセル(PTX)内包ナノ粒子を以下の手順で作製した。
1. 融合タンパク質AD, ADiRが3 μM、PTXが30 μMとなるようにPBSで調製し、混合液を作製した。
2. 破砕機によって超音波処理を行い、凝集体を解離( 5 min, Level Low, Interval 20 sec×20 sec )した。
3. 42℃で15minインキュベートし、PTXを取り込んだナノ粒子を形成させた。
4. タンパク質溶液をSlide-A-lyzer (Pierce)を用いて、100倍以上のPBSで37℃においてオーバーナイトの透析を3回行い、未内包のPTXを除去した。
5. フィルター滅菌(0.22μm)を行い、再度タンパク質の濃度を測り、サンプルを調製した。
2. 破砕機によって超音波処理を行い、凝集体を解離( 5 min, Level Low, Interval 20 sec×20 sec )した。
3. 42℃で15minインキュベートし、PTXを取り込んだナノ粒子を形成させた。
4. タンパク質溶液をSlide-A-lyzer (Pierce)を用いて、100倍以上のPBSで37℃においてオーバーナイトの透析を3回行い、未内包のPTXを除去した。
5. フィルター滅菌(0.22μm)を行い、再度タンパク質の濃度を測り、サンプルを調製した。
(2)PTX内包ナノ粒子の細胞死誘導評価
DMEM (1% Penicillin/Streptomycin、10% FBS含有)中で培養したA549を、細胞培養用96 well plates (BD Bioscience)に1.0×104 cells /wellの密度で播種し、37℃で一晩培養した。その後無血清培地へ交換しさらに一晩培養し、調製したPTX内包ナノ粒子を200 nMとなるように添加し、PTX(-)には何も添加せず、PTX(+)にはPTXを1 μMとなるように添加し37℃でインキュベートした。インキュベート24時間後、もしくは72時間後にCCK-8溶液を含んだ培地に交換し1時間インキュベーター内で呈色反応を行った。その後マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度により生細胞数を測定した。
DMEM (1% Penicillin/Streptomycin、10% FBS含有)中で培養したA549を、細胞培養用96 well plates (BD Bioscience)に1.0×104 cells /wellの密度で播種し、37℃で一晩培養した。その後無血清培地へ交換しさらに一晩培養し、調製したPTX内包ナノ粒子を200 nMとなるように添加し、PTX(-)には何も添加せず、PTX(+)にはPTXを1 μMとなるように添加し37℃でインキュベートした。インキュベート24時間後、もしくは72時間後にCCK-8溶液を含んだ培地に交換し1時間インキュベーター内で呈色反応を行った。その後マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度により生細胞数を測定した。
(3)非腫瘍性細胞への細胞死誘導評価
A549の代わりに、非腫瘍性細胞であるHEK293を用いて、上記と同様に細胞死誘導評価を行った。
A549の代わりに、非腫瘍性細胞であるHEK293を用いて、上記と同様に細胞死誘導評価を行った。
(4)結果と考察
PTX内包ADiRを添加したA549は、PTXを直接添加したA549と同様に、時間の経過に伴い生細胞数が減少した(図11E)。この結果から、PTX内包ADiRは、がん細胞に対して顕著な細胞死誘導効果を持つと考えられる。一方、非腫瘍性細胞であるHEK293に対しては、A549にみられたような顕著な細胞死誘導効果は観察されなかった(図12)。
PTX内包ADiRを添加したA549は、PTXを直接添加したA549と同様に、時間の経過に伴い生細胞数が減少した(図11E)。この結果から、PTX内包ADiRは、がん細胞に対して顕著な細胞死誘導効果を持つと考えられる。一方、非腫瘍性細胞であるHEK293に対しては、A549にみられたような顕著な細胞死誘導効果は観察されなかった(図12)。
〔実施例9〕 機能欠損粒子の細胞死誘導能評価
(1)PTX内包ナノ粒子の作製
パクリタキセル(PTX)内包ナノ粒子を以下の手順で作製した。
(1)PTX内包ナノ粒子の作製
パクリタキセル(PTX)内包ナノ粒子を以下の手順で作製した。
1. 融合タンパク質AD, ADiR、ADiR-RGD(-)、ADiR-CendR(-)が3 μM、PTXが30 μMとなるようにPBSで調製し、混合液を作製した。
2. 破砕機によって超音波処理を行い、凝集体を解離( 5 min, Level Low, Interval 20 sec×20 sec ) した。
3. 42℃で15minインキュベートし、PTXを取り込んだナノ粒子を形成させた。
4. タンパク質溶液をSlide-A-lyzer (Pierce)を用いて、100倍以上のPBSで37℃においてオーバーナイトの透析を3回行い、未内包のPTXを除去した。
5. フィルター滅菌(0.22μm)を行い、再度タンパク質の濃度を測り、サンプルを調製した。
2. 破砕機によって超音波処理を行い、凝集体を解離( 5 min, Level Low, Interval 20 sec×20 sec ) した。
3. 42℃で15minインキュベートし、PTXを取り込んだナノ粒子を形成させた。
4. タンパク質溶液をSlide-A-lyzer (Pierce)を用いて、100倍以上のPBSで37℃においてオーバーナイトの透析を3回行い、未内包のPTXを除去した。
5. フィルター滅菌(0.22μm)を行い、再度タンパク質の濃度を測り、サンプルを調製した。
(2)PTX内包ナノ粒子の細胞死誘導評価
DMEM (1% Penicillin/Streptomycin、10% FBS含有)中で培養したA549を、細胞培養用96 well plates (BD Bioscience)に1.0×104 cells /wellの密度で播種し、37℃で一晩培養した。その後無血清培地へ交換しさらに一晩培養し、調製したPTX内包ナノ粒子を200 nMとなるように添加し、PTX(-)には何も添加せず、PTX(+)にはPTXを1 μMとなるように添加し37℃でインキュベートした。インキュベート24時間後、もしくは72時間後にCCK-8溶液を含んだ培地に交換し1時間インキュベーター内で呈色反応を行った。その後マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度により生細胞数を測定した。
DMEM (1% Penicillin/Streptomycin、10% FBS含有)中で培養したA549を、細胞培養用96 well plates (BD Bioscience)に1.0×104 cells /wellの密度で播種し、37℃で一晩培養した。その後無血清培地へ交換しさらに一晩培養し、調製したPTX内包ナノ粒子を200 nMとなるように添加し、PTX(-)には何も添加せず、PTX(+)にはPTXを1 μMとなるように添加し37℃でインキュベートした。インキュベート24時間後、もしくは72時間後にCCK-8溶液を含んだ培地に交換し1時間インキュベーター内で呈色反応を行った。その後マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度により生細胞数を測定した。
(3)結果と考察
PTX内包ADiRを添加したA549は、PTXを直接添加したA549と同様に、時間の経過に伴い生細胞数が減少した(図13E)。また、iRGD配列の一部を欠損させたADiR-RGD(-)やADiR-CendR(-)を用いた場合も、細胞死誘導効果が観察されたが、ADiRを用いた場合、3日目において最も顕著な細胞死誘導効果が認められた。一方、PTXを内包しないADiR-PTX(-)を用いた場合には、細胞死誘導効果は観察されなかった。
PTX内包ADiRを添加したA549は、PTXを直接添加したA549と同様に、時間の経過に伴い生細胞数が減少した(図13E)。また、iRGD配列の一部を欠損させたADiR-RGD(-)やADiR-CendR(-)を用いた場合も、細胞死誘導効果が観察されたが、ADiRを用いた場合、3日目において最も顕著な細胞死誘導効果が認められた。一方、PTXを内包しないADiR-PTX(-)を用いた場合には、細胞死誘導効果は観察されなかった。
本発明の粒子は、DDSキャリアとして有用なので、製薬産業などの産業分野において利用可能である。
Claims (6)
- エラスチン様ポリペプチド、ポリ酸性アミノ酸、及びiRGDペプチドを含むことを特徴とする融合タンパク質であって、エラスチン様ポリペプチドはポリ酸性アミノ酸のN末端側に配置され、ポリ酸性アミノ酸はiRGDペプチドのN末端側に配置されている融合タンパク質。
- エラスチン様ポリペプチドが、Ala-Val-Gly-Val-Proの繰り返し配列からなることを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
- ポリ酸性アミノ酸が、ポリアスパラギン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードすることを特徴とする核酸。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の融合タンパク質が集合して形成される粒子であって、融合タンパク質が、エラスチン様ポリペプチド部分をコアとし、ポリ酸性アミノ酸部分を外殻とするミセルを形成していることを特徴とする粒子。
- 請求項5に記載の粒子、及びこの粒子に内包される抗がん剤を含むことを特徴とするがん治療用組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017147471A JP2019024409A (ja) | 2017-07-31 | 2017-07-31 | がん細胞を標的とした高機能タンパク質ナノ粒子 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2017147471A JP2019024409A (ja) | 2017-07-31 | 2017-07-31 | がん細胞を標的とした高機能タンパク質ナノ粒子 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2019024409A true JP2019024409A (ja) | 2019-02-21 |
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ID=65476867
Family Applications (1)
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JP2017147471A Pending JP2019024409A (ja) | 2017-07-31 | 2017-07-31 | がん細胞を標的とした高機能タンパク質ナノ粒子 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2019024409A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020166421A1 (ja) | 2019-02-14 | 2020-08-20 | 株式会社Moldino | エンドミル |
CN114106108A (zh) * | 2021-11-25 | 2022-03-01 | 中国石油大学(华东) | 一种多肽-金纳米颗粒复合物、其制备方法及应用 |
-
2017
- 2017-07-31 JP JP2017147471A patent/JP2019024409A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020166421A1 (ja) | 2019-02-14 | 2020-08-20 | 株式会社Moldino | エンドミル |
CN114106108A (zh) * | 2021-11-25 | 2022-03-01 | 中国石油大学(华东) | 一种多肽-金纳米颗粒复合物、其制备方法及应用 |
CN114106108B (zh) * | 2021-11-25 | 2023-07-14 | 中国石油大学(华东) | 一种多肽-金纳米颗粒复合物、其制备方法及应用 |
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