JP2019021653A - 圧電素子およびその製造方法、ならびに圧電素子応用デバイス - Google Patents

圧電素子およびその製造方法、ならびに圧電素子応用デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】リーク電流が少ない圧電素子を提供する。【解決手段】第1電極60と、第1電極の上方に設けられ、カリウム、ナトリウム、ニオブ、チタン、および酸素を含む圧電体層70と、圧電体層の上方に設けられた第2電極80と、を含む、圧電素子。圧電素子において、下記一般式を満たす、圧電体層におけるチタンの不均一性を示すU値は、140%以下であってもよい。U={2×(IMAX−IMIN)/(IMAX+IMIN)}×100(式中、IMAXは、二次イオン質量分析法で前記第2電極側から深さ方向分析を行った場合に、圧電体層の所定区間におけるチタンの信号の最大強度であり、IMINは、二次イオン質量分析法で第2電極側から深さ方向分析を行った場合に、圧電体層の所定区間におけるチタンの信号の最小強度である。)【選択図】図4

Description

本発明は、圧電素子およびその製造方法、ならびに圧電素子応用デバイスに関する。
圧電素子は、一般に、電気機械変換特性を有する圧電体層と、圧電体層を挟持する2つの電極と、を有している。このような圧電素子を駆動源として用いたデバイス(圧電素子応用デバイス)の開発が、近年、盛んに行われている。圧電素子応用デバイスの一つとして、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッド、圧電MEMS(Micro Electro Mechanical System)素子に代表されるMEMS要素、超音波センサー等に代表される超音波測定装置、さらには、圧電アクチュエーター装置等がある。
圧電素子の圧電体層の材料(圧電材料)として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が知られているが、環境負荷低減の観点から、鉛の含有量を抑えた非鉛系の圧電材料の開発が進められている。そのような非鉛系の圧電材料の1つとして、例えば、特許文献1のように、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN:(K,Na)NbO)を主成分としたKNN系圧電体が提案されている。
特開2014−36035号公報
しかしながら、上記のようなKNN系圧電体層を備えた圧電素子は、リーク電流が多いという問題がある。
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、リーク電流が少ない圧電素子を提供することにある。本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、リーク電流が少ない圧電素子の製造方法を提供することにある。本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記圧電素子を含む圧電素子応用デバイスを提供することにある。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様として実現することができる。
本発明に係る圧電素子の一態様は、
第1電極と、
前記第1電極の上方に設けられ、カリウム、ナトリウム、ニオブ、チタン、および酸素を含む圧電体層と、
前記圧電体層の上方に設けられた第2電極と、
を含む。
このような圧電素子では、圧電体層が、チタンを含まず、かつ、カリウム、ナトリウム、ニオブ、および酸素を含む場合に比べて、リーク電流が少ない(詳細は、後述する「3. 実験例」参照)。
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層に電界強度が200kV/cmである電界を印加したときのリーク電流の電流密度は、1×10−6A/cm以下であってもよい。
このような圧電素子では、リーク電流による実効電位の低下を、より確実に抑制することができる。さらに、リーク電流による発熱、および発熱による破壊を、より確実に抑制することができる。
本発明に係る圧電素子において、
下記一般式を満たす、前記圧電体層における前記チタンの不均一性を示すU値は、140%以下であってもよい。
U={2×(IMAX−IMIN)/(IMAX+IMIN)}×100
(式中、IMAXは、二次イオン質量分析法で前記第2電極側から深さ方向分析を行った場合に、前記圧電体層の所定区間における前記チタンの信号の最大強度であり、IMINは、二次イオン質量分析法で前記第2電極側から深さ方向分析を行った場合に、前記圧電体層の所定区間における前記チタンの信号の最小強度である。)
このような圧電素子では、リーク電流の電流密度(リーク電流密度)を、1×10−6A/cm以下にすることができる(詳細は、後述する「3. 実験例」参照)。
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層の前記カリウム、前記ナトリウム、前記ニオブ、および前記酸素の組成は、
(K,Na1−xNbO (0.1≦x≦0.9、0.85≦A≦1.15)の関係を満たしてもよい。
このような圧電素子では、カリウムやナトリウムがペロブスカイト構造の化学量論の組成に対してずれていたとしても、良好な特性を有することができる。
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層は、リチウムを含み、
前記リチウムの含有量は、前記カリウムと前記ナトリウムとのモル数の和に対して、20モル%以下であってもよい。
このような圧電素子では、圧電体層がリチウムを含まない場合に比べて、例えば、リーク電流が少ない。さらに、リチウムの含有量がカリウムとナトリウムとのモル数の和に対して20モル%より多い場合に比べて、KNNに由来する特性を十分に発揮することができる。
本発明に係る圧電素子の製造方法の一態様は、
第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上方に、カリウム、ナトリウム、ニオブ、チタン、および酸素を含む圧電体層を形成する工程と、
前記圧電体層の上方に第2電極を形成する工程と、
を含む。
このような圧電素子の製造方法では、リーク電流が少ない圧電素子を製造することができる。
本発明に係る圧電素子の製造方法において、
前記第1電極を形成する工程の前に、チタンを含む層を形成する工程と、
前記第1電極を形成する工程の後であって、前記圧電体層を形成する工程の前に、650℃以上750℃以下で熱処理する工程と、
を含み、
前記圧電体層を形成する工程は、焼成する工程を含んでもよい。
このような圧電素子の製造方法では、均一性よくチタンを圧電体層中に拡散させることができる(詳細は、後述する「3. 実験例」参照)。
本発明に係る圧電素子応用デバイスの一態様は、
本発明に係る圧電素子を含む。
このような圧電素子応用デバイスでは、リーク電流の少ない圧電素子を含むことができる。
本実施形態に係るインクジェット式記録装置を模式的に示す斜視図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドを模式的に示す分解斜視図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドを模式的に示す平面図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドを模式的に示す断面図。 圧電体層の所定区間について説明するための図。 圧電体層の所定区間について説明するための図。 圧電体層の所定区間について説明するための図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。 SIMSの結果を示すグラフ。 SIMSの結果を示すグラフ。 SIMSの結果を示すグラフ。 SIMSの結果を示すグラフ。 SIMSの結果を示すグラフ。 U値およびリーク電流密度を示す表。 U値とリーク電流密度との関係を示すグラフ。 電界強度とリーク電流密度との関係を示すグラフ。 熱処理の温度、U値、およびリーク電流密度を示す表。 熱処理の温度とU値との関係を示すグラフ。 熱処理の温度とリーク電流密度との関係を示すグラフ。 STEM−EDS結果。 STEM−EDS結果。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 圧電素子応用デバイス
1.1. 構成
まず、本実施形態に係る圧電素子応用デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る圧電素子応用デバイスである記録ヘッドを備えた液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置1000を模式的に示す斜視図である。
インクジェット式記録装置1000では、図1に示すように、複数のインクジェット式記録ヘッドを有するインクジェット式記録ヘッドユニット(ヘッドユニット)2000を含む。ヘッドユニット2000は、インク供給手段を構成するカートリッジ2A,2Bが着脱可能に設けられている。ヘッドユニット2000を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられており、例えば、各々ブラックインク組成物およびカラーインク組成物を吐出する。
インクジェット式記録装置1000では、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット2000を搭載したキャリッジ3は、キャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られず、ベルトやドラム等であってもよい。
インクジェット式記録装置1000では、インクジェット式記録ヘッド(以下、単に「記録ヘッド」とも称する)を具備するため、安価に製造できる。また、後述する圧電素子を用いることによって、圧電アクチュエーターを構成する圧電素子の変位特性の向上も期待されるため、噴射特性の向上を図ることができる。
以上、説明したインクジェット式記録装置1000に搭載される記録ヘッド1の一例について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例である記録ヘッド1を模式的に示す分解斜視図である。図3は、本実施形態に係る記録ヘッド1の平面図である。図4は、本実施形態に係る記録ヘッド1を模式的に示す図3のA−A線断面図である。なお、図2〜図4では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
記録ヘッド1は、図2〜図4に示すように、例えば、流路形成基板10と、ノズルプレート20と、保護基板30と、コンプライアンス基板40と、振動板50と、リード電極90と、マニホールド100と、駆動回路120と、プリンターコントローラー200と、本発明に係る圧電素子(例えば圧電素子300)と、を含む。
流路形成基板10(以下、単に「基板10」ともいう)は、例えば、シリコン単結晶基板である。基板10には、圧力発生室12が形成されている。圧力発生室12は、複数の
隔壁11によって区画されている。
基板10のうち、圧力発生室12のY軸方向の一端部側には、インク供給路13と連通路14とが形成されている。インク供給路13は、圧力発生室12の片側をX軸方向から絞ることで、その開口面積が小さくなるように構成されている。連通路14は、X軸方向において圧力発生室12と略同じ幅を有している。連通路14の外側(+Y軸方向側)には、連通部15が形成されている。連通部15は、マニホールド100の一部を構成する。マニホールド100は、各圧力発生室12の共通のインク室となる。このように、基板10には、圧力発生室12、インク供給路13、連通路14、および連通部15からなる液体流路が形成されている。
基板10の一方の面(−Z軸方向側の面)には、例えばSUS製のノズルプレート20が接合されている。ノズルプレート20には、X軸方向に沿ってノズル開口21が並設されている。ノズル開口21は、各圧力発生室12に連通している。ノズルプレート20は、例えば、接着剤や熱溶着フィルム等によって基板10に接合されている。
基板10の他方の面(+Z軸方向側の面)には、振動板50が形成されている。振動板50は、例えば、基板10上に形成された弾性層51と、弾性層51上に形成された絶縁体層52と、により構成されている。弾性層51は、例えば、二酸化シリコン(SiO)層である。絶縁体層52は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)層である。弾性層51は、基板10とは別部材でなくてもよい。基板10の一部を薄く加工し、これを弾性層として使用してもよい。
酸化ジルコニウムからなる絶縁体層52は曲げ強さに優れるため、たわみ振動をする振動板の構成部材として好適である。酸化ジルコニウムと同様に曲げ強さに優れた材料、例えば窒化ケイ素(SiN)を酸化ジルコニウムの代わりに使用することができる。窒化ケイ素のような窒化物は耐熱性が高く、また原子の拡散防止効果が良好であるから、圧電体にアルカリ金属を含み且つプロセスで高温熱処理を伴うデバイスの構成部材として有用である。窒化ケイ素と同じ窒化物である窒化ジルコニウム(ZrN)はZrOとSiOとの結合力が優れるから、絶縁体層52の構造をZrO/ZrN(ZrN層と、ZrN層上に設けられたZrO層と、の積層構造)とすることで、振動板にさらに高い機械的耐久性を付与することができる。
絶縁体層52上には、密着層56を介して、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、を含む圧電素子300が形成されている。密着層56は、第1電極60と下地との密着性を向上させるためのものであり、密着層56は、例えば、チタン(Ti)層、酸化チタン(TiO)層、炭化チタン(TiC)層、または窒化チタン(TiN)層等である。このような層である密着層56を設けた場合、密着層56は、絶縁体層52と同様に、後述する圧電体層70を形成する際に、圧電体層70の構成元素であるカリウムおよびナトリウムが第1電極60を透過して基板10に到達するのを防ぐストッパーとしての機能を有する。
記録ヘッド1では、電気機械変換特性を有する圧電体層70の変位によって、振動板50および第1電極60が変位する。すなわち、記録ヘッド1では、振動板50および第1電極60が、実質的に振動板としての機能を有している。弾性層51および絶縁体層52を省略して、第1電極60のみが振動板として機能するようにしてもよい。基板10上に第1電極60を直接設ける場合には、第1電極60にインクが接触しないように、第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護することが好ましい。
第1電極60は、圧力発生室12ごとに切り分けられている。すなわち、第1電極60
は、圧力発生室12ごとに独立する個別電極として構成されている。第1電極60は、X軸方向において、圧力発生室12の幅よりも狭い幅で形成されている。第1電極60は、Y軸方向において、圧力発生室12よりも広い幅で形成されている。すなわち、Y軸方向において、第1電極60の両端部は、圧力発生室12に対向する領域より外側まで形成されている。Y軸方向において、第1電極60の一端部側(連通路14とは反対側)には、リード電極90が接続されている。
圧電体層70は、第1電極60と第2電極80との間に形成されている。圧電体層70は、X軸方向において、第1電極60よりも広い幅で形成されている。圧電体層70は、Y軸方向において、圧力発生室12のY軸方向の長さよりも広い幅で形成されている。Y軸方向において、圧電体層70のインク供給路13側の端部(+Y軸方向の端部)は、第1電極60の端部よりも外側まで形成されている。すなわち、第1電極60の他方の端部(+Y軸方向側の端部)は、圧電体層70によって覆われている。一方、圧電体層70の一方の端部(−Y軸方向側の端部)は、第1電極60の一方の端部(−Y軸方向側の端部)よりも内側にある。すなわち、第1電極60の一方の端部(−Y軸方向側の端部)は、圧電体層70によって覆われていない。
第2電極80は、圧電体層70、第1電極60、および振動板50上に連続して設けられている。第2電極80は、複数の圧電体層70に共通する共通電極として構成されている。なお、図示はしないが、第2電極80ではなく、第1電極60を共通電極としてもよい。
圧電素子300が形成された基板10上には、保護基板30が接着剤35により接合されている。保護基板30は、マニホールド部32を有している。マニホールド部32により、マニホールド100の少なくとも一部が構成されている。図示の例では、マニホールド部32は、保護基板30を厚さ方向(Z軸方向)に貫通しており、さらに圧力発生室12の幅方向(X軸方向)に亘って形成されている。マニホールド部32は、基板10の連通部15と連通している。これらの構成により、各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100が構成されている。
保護基板30には、圧電素子300を含む領域に、圧電素子保持部31が形成されている。圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有している。この空間は、密封されていてもよいし、密封されていなくてもよい。圧電素子300に含まれるアルカリ金属原子が素子外部に拡散し、デバイス機能を阻害する懸念がある場合は、保護基板30が密閉空間を形成する時は保護基板表面かあるいは第2電極80の表面に拡散防止膜(図示しない)を設けてもよい。保護基板30が密閉空間を形成しない場合は、第2電極80の表面に拡散防止膜(図示しない)を設けてもよい。拡散防止膜としては、アルカリ金属原子の拡散を抑制できる、ZrO膜、SiO膜、窒化膜(例えば窒化ケイ素(SiN))が適している。さらには導電性窒化膜である窒化ジルコニウム(ZrN)や窒化チタン(TiN)を第2電極80の表面に形成することも有効である。保護基板30には、保護基板30を厚さ方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔33が設けられている。貫通孔33内には、リード電極90の端部が露出している。
保護基板30上には、信号処理部として機能する駆動回路120が固定されている。駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)を用いることができる。駆動回路120およびリード電極90は、接続配線121を介して電気的に接続されている。駆動回路120は、プリンターコントローラー200に電気的に接続可能である。駆動回路120は、本実施形態に係る制御手段として機能する。
保護基板30上には、封止層41および固定板42からなるコンプライアンス基板40
が接合されている。固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向であるZ軸方向に完全に除去された開口部43となっている。マニホールド100の一方の面(+Z軸方向側の面)は、可撓性を有する封止層41のみで封止されている。
1.2. 圧電素子
次に、圧電素子300の詳細について説明する。圧電素子300は、第1電極60と、第1電極60の上方に(図示の例では第1電極60上に)設けられた圧電体層70と、圧電体層70の上方に(図示の例では圧電体層70上に)設けられた第2電極80と、を含む。第1電極60の厚さは、例えば、約50nmである。圧電体層70の厚さは、例えば、50nm以上2000nm以下であり、圧電体層70は、いわゆる薄膜の圧電体からなる層である。第2電極80の厚さは、約50nmである。
第1電極60および第2電極80の材質は、例えば、白金(Pt)やイリジウム(Ir)等の貴金属である。第1電極60のおよび第2電極80の材質は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
圧電体層70は、第1電極60と第2電極80との間に設けられている。圧電体層70は、例えば、溶液法によって形成される。圧電体層70は、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、および酸素(O)を含む。圧電体層70は、例えば、KNN系の複合酸化物からなる圧電材料から構成されている。圧電体層70は、例えば、チタンが添加されたニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)層である。KNN層は、一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物である。KNN層の組成(圧電体層70のカリウム、ナトリウム、ニオブ、酸素の組成)は、下記式(1)の関係を見たす。
(K,Na1−X)NbO、0.1≦X≦0.9 ・・・ (1)
KNN系の複合酸化物は、鉛(Pb)等の含有量を抑えた非鉛系圧電材料であるため、生体適合性に優れ、また環境負荷も少ない。しかも、KNN系の複合酸化物は、非鉛系圧電材料の中でも圧電特性に優れているため、各種の特性向上に有利である。その上、KNN系の複合酸化物は、他の非鉛系圧電材料(例えば、BNT−BKT−BT;[(Bi,Na)TiO]−[(Bi,K)TiO ]−[BaTiO ])に比べてキュリー温度が比較的高く、また温度上昇による脱分極も生じ難いため、高温での使用が可能である。
上記式(1)において、Kの含有量は、Aサイトを構成する金属元素の総量に対して30モル%以上70モル%以下である(言い換えると、Naの含有量が、Aサイトを構成する金属元素の総量に対して30モル%以上70モル%以下である)ことが好ましい。すなわち、上記式(1)において、0.3≦x≦ 0.7であることが好ましい。これによれば、圧電特性に有利な組成を有する複合酸化物となる。また、Kの含有量は、Aサイトを構成する金属元素の総量に対して35モル%以上55モル%以下である(言い換えると、Naの含有量が、Aサイトを構成する金属元素の総量に対して35モル%以上55モル%以下である)ことが、より好ましい。すなわち、上記式(1)において、0.35≦ x≦ 0.55であることが、より好ましい。これによれば、より圧電特性に有利な組成を有する複合酸化物となる。
圧電体層70では、Tiは、添加物としてKNN層に添加されている。Tiは、例えば、KNN層のBサイトに含まれている。Tiの含有量は、Nbのモル数に対して、例えば、20モル%以下、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10%以下である。Tiの含有量をNbのモル数に対して20モル%以下とすることにより、圧電体層70は、K
NNに由来する特性を十分に発揮することができる。
圧電体層70におけるTiの不均一性を示すU値は、例えば、140%以下であり、好ましくは130%以下である。U値は、下記式(2)で表される。
U={2×(IMAX−IMIN)/(IMAX+IMIN)}×100 ・・・ (2)
ただし、上記式(2)において、IMAXは、二次イオン質量分析法(SIMS)で第2電極80側から深さ方向分析を行った場合に、圧電体層70の所定区間におけるTiの信号の最大強度である。IMINは、SIMSで第2電極80側から深さ方向分析を行った場合に、圧電体層70の所定区間におけるTiの信号の最小強度である。
SIMSでは、イオンを圧電素子の表面に照射することにより、圧電素子を構成している原子が真空中に放出されて二次イオンが生成する。この二次イオンを質量分離・検出することで、圧電素子中に存在する深さ方向(厚さ方向)の元素およびその濃度を知ることができる。
本発明では、SIMSにおいて、Nbを用いて、圧電体層70の区間を規定する。Nbは、圧電体層70を構成している主要元素、K、Na、Nbのうち最も拡散しない元素であって、かつ深さ方向における濃度の均一性が高い元素だからである。
本発明では、SIMSにおける圧電体層の所定区間αにおけるTiの信号の最大強度をIMAXとし、所定区間αにおけるTiの信号の最小強度をIMINとしている。
以下、SIMSにおける圧電体層の所定区間αについて、詳細に説明する。図5〜図7は、圧電素子におけるNbおよびTiに対してのSIMSの結果を示すグラフであり、所定区間αを説明するための図である。図5〜図7では、横軸は、第2電極側からの圧電素子の深さを示している。すなわち、横軸の「0」は、圧電素子の上面(第2電極の上面)の位置を示している。図6は、図5の深さ方向0nm近傍の拡大図である。図7は、図5の深さ方向600nm近傍の拡大図である。縦軸は、各原子の信号の強度を示しており、信号の強度は元素の濃度と相関がある。なお、図5〜図7は、CAMECA社製の「2次イオン質量分析計 IMS7F」で測定したものである。
SIMSにおいて、圧電体層が占める領域(圧電体層の区間)βを以下の様に定義する。図5〜図7に示すように、Nbの信号の最大強度を通り、横軸に平行な直線をL1とする。Tiの信号を示す曲線(信号強度を対数表示した場合の曲線)において、直線L1の1/1000の強度を有する点における接線をL2,L3とする。接線L2は、圧電体層の上層部において、Nbの強度の立ち上がりを示す曲線の接線である。L1とL2との交点P1を圧電体層の表面(すなわち圧電体層と第2電極との界面)の位置と定義する。接線L3は、圧電体層の下層部において、Nbの強度の立下りを示す曲線の接線である。L1とL3との交点P2を圧電体層の最下層部(すなわち圧電体層と第1電極との界面)の位置と定義する。
図5に示すように、圧電体層の区間βにおいて、交点P1から区間βの10%の深さを除いた部分、および交点P2から区間βの10%の深さを除いた部分を、所定区間αとする。異質の材質からなる境界(界面)近傍では、原子の検出精度が損なわれ、信号を正確に測定することができないためである。本発明では、上記のように、所定区間αにおけるTiの信号の最大強度をIMAXとし、所定区間αにおけるTiの信号の最小強度をIMINとしている。
圧電体層70は、リチウム(Li)を含んでいてもよい。圧電体層70は、Tiに加えてLiが添加されたKNN層であってもよい。Liは、多くはAサイトに位置してLiNbOを形成するが、一部は結晶粒界に偏析する。この場合はK、Naの粒界拡散を抑制し、電気特性の向上に寄与する。Liの含有量は、KとNaとのモル数の和に対して、例えば、20モル%以下、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10%以下である。Liの含有量をKとNaとのモル数に対して20モル%以下とすることにより、圧電体層70は、KNNに由来する特性を十分に発揮することができる。
Aサイトのアルカリ金属は、ペロブスカイト構造の化学量論の組成に対して過剰に加えられてもよい。また、Aサイトのアルカリ金属は、ペロブスカイト構造の化学量論の組成に対して不足していてもよい。したがって、本実施形態の複合酸化物の組成は、下記式(3)の組成を満たすことができる。下記式(3)において、Aは、過剰に加えられてもよいKおよびNaの量、または不足していてもよいKおよびNaの量を表している。KおよびNaの量が過剰である場合は1.0<Aである。KおよびNaの量が不足している場合は、A<1.0である。例えば、A=1.1であれば、化学量論の組成におけるKおよびNaの量を100モル%としたときに、110モル%のKおよびNaが含まれていることを表す。A=0.9であれば、化学量論の組成におけるKおよびNaの量を100モル%としたときに、90モル%のKおよびNaが含まれていることを表す。なお、Aサイトのアルカリ金属が化学量論の組成に対して過剰でなく不足もしていない場合は、A=1である。
(K,Na(1−X)NbO 、0.1≦X≦ 0.9、0.85≦ A≦ 1.15
・・・ (3)
特性向上の観点から、好ましくは0.90≦ A≦ 1.10、より好ましくは0.95≦ A≦ 1.05である。また、好ましくは0.3≦X≦ 0.7、より好ましくは0.35≦ X≦ 0.55である。
圧電材料には、元素の一部欠損した組成を有する材料、元素の一部が過剰である組成を有する材料、および元素の一部が他の元素に置換された組成を有する材料も含まれる。圧電体層70の基本的な特性が変わらない限り、欠損・過剰により化学量論の組成からずれた材料や、元素の一部が他の元素に置換された材料も、本実施形態に係る圧電材料に含まれる。
圧電体層70は、K、Na、およびNbを含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物(KNN系の複合酸化物)と、ABO 型ペロブスカイト構造を有する他の複合酸化物と、を含む混晶として表される圧電材料を含んでもよい。他の複合酸化物は、鉛(Pb)を含有しない非鉛系圧電材料であることが好ましい。また、他の複合酸化物は、鉛(Pb)およびビスマス(Bi)を含有しない非鉛系圧電材料であることがより好ましい。これらによれば、生体適合性に優れ、また環境負荷も少ない圧電素子300となることができる。
圧電体層70は、例えば、所定の結晶面に対して優先配向している。例えば、KNN系の複合酸化物は(100)面に自然配向しやすいため、圧電体層70も(100)面に自然配向しやすい。この他、必要に応じて設けられる所定の配向制御層によっては、圧電体層70は、(110)面や(111)面に優先配向する場合もある。所定の結晶面に優先配向した圧電体層70は、ランダム配向した圧電体層に比べて、各種の特性の向上を図りやすい。なお、本明細書において、優先配向とは、50%以上、好ましくは80%以上の
結晶が、所定の結晶面に配向していることを示すものとする。例えば「(100)面に優先配向している」とは、圧電体層70の全ての結晶が(100)面に配向している場合と、半分以上の結晶(50%以上、好ましくは80%以上)が(100)面に配向している場合を含む。
また、圧電体層70は、多結晶であるから、面内における応力が分散して均等になるので、圧電素子300の応力破壊が生じ難く、信頼性が高い。
また、圧電体層70は、比誘電率の温度変化をみたとき、キュリー温度より低い温度域に変化点を有するものである。KNNのキュリー温度は約420℃であるから、変化点は420℃以下に存在する。また、変化点の前の比誘電率の温度変化と、変化点の後の比誘電率の温度変化と、を直線で近似した場合、変化点の前の直線の傾きの方が大きい。すなわち、圧電体層70は、より低い温度域で比誘電率が高くなるため、圧電特性の向上が見込める。この変化点は、例えば、インピーダンスアナライザーを用いてホットプレートで加熱しながら比誘電率と温度との関係を測定することによって確認できる。変化点は、好ましくは、250℃以下に存在することが好ましい。室温により近い温度で変化点を有することにより、圧電特性の向上がより一層見込めるからである。なお、変化点とは、比誘電率と温度との関係をグラフにした際に、両者の関係が直線的に変化すると仮定した際に、その傾きが変化する点である。
圧電体層70に電界強度が200kV/cmである電界を印加したときのリーク電流密度は、例えば、1×10−6A/cm以下であり、好ましくは8×10−7A/cm以下である。このようなリーク電流密度を有することにより、圧電素子300を、リーク電流による発熱が少ない、すなわち熱による圧電特性の変動が小さい、または、リーク電流による充電電荷の減少が小さい、すなわち圧電特性の低下が小さい圧電素子とすることができる。リーク電流密度は、第1電極60と第2電極80との間に電界を印加し、電界を印加してから5秒以上経過した後の、いわゆる漏れ電流をリーク電流として計測した。リーク電流密度は、例えば、Agilent社製の「4140B pA Meter」を用いて測定することができる。
圧電素子300は、例えば、以下の特徴を有する。
圧電素子300では、圧電体層70は、カリウム、ナトリウム、ニオブ、チタン、および酸素を含む。そのため、圧電素子300は、圧電体層が、チタンを含まず、カリウム、ナトリウム、ニオブ、および酸素を含む場合に比べて、リーク電流が少ない(詳細は、後述する「3. 実験例」参照)。
圧電素子300では、圧電体層70に電界強度が200kV/cmである電界を印加したときのリーク電流密度は、1×10−6A/cm以下である。リーク電流密度は、1×10−6A/cm以下であれば、リーク電流による実効電位の低下を、より確実に抑制することができる。さらに、リーク電流による発熱、および発熱による破壊を、より確実に抑制することができる。
圧電素子300では、圧電体層70のチタンの不均一性を示すU値は、140%以下である。これにより、圧電素子300のリーク電流密度を、1×10−6A/cm以下にすることができる(詳細は、後述する「3. 実験例」参照)。
圧電素子300では、圧電体層70のカリウム、ナトリウム、ニオブ、および酸素の組成は、上記式(3)の関係を満たす。圧電素子300において、Aの範囲が0.85≦A≦1.15であれば、カリウムやナトリウムがペロブスカイト構造の化学量論の組成に対
してずれていたとしても、圧電素子300は、良好な特性を有することができる。
圧電素子300では、圧電体層70は、リチウムを含み、リチウムの含有量は、カリウムとナトリウムとのモル数の和に対して、20モル%以下である。そのため、圧電素子300では、圧電体層がリチウムを含まない場合に比べて、例えば、リーク電流が少ない。さらに、圧電素子300では、リチウムの含有量がカリウムとナトリウムとのモル数の和に対して20モル%より多い場合に比べて、KNNに由来する特性を十分に発揮することができる。
2. 圧電素子の製造方法
次に、本実施形態に係る圧電素子300の製造方法について、記録ヘッド1の製造方法と合わせて、図面を参照しながら説明する。図8〜図14は、本実施形態に係る記録ヘッド1の製造工程を模式的に示す断面図である。なお、図8〜図14は、図3のB−B線断面図である。
図8に示すように、シリコン基板(以下ウェハーともいう)110を準備する。次に、シリコン基板110を熱酸化することによって、その表面に、二酸化シリコンからなる弾性層51を形成する。さらに、弾性層51上にスパッタリング法でジルコニウム層を形成し、これを熱酸化することによって絶縁体層52を形成する。このようにして、弾性層51と絶縁体層52とからなる振動板50を得る。
次に、絶縁体層52上に、チタンを含む密着層56を例えばスパッタリング法等により形成する。
次に、密着層56上に、第1電極60を、例えばスパッタリング法や蒸着法等により形成する。
次に、振動板50、密着層56、および第1電極60が形成されたウェハー110を、窒素雰囲気中で熱処理する。熱処理は、赤外線ランプ装置であるRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて行われる。熱処理の到達温度は、例えば500℃以上800℃以下、好ましくは650℃以上750℃以下である。熱処理の処理時間は、例えば、1分以上5分以下である。当該熱処理によって、密着層56のチタン(密着層56を構成しているチタン)を、第1電極60中に均一性よく拡散させることができる。これにより、圧電体層70を形成する工程において、チタンが均一性よく圧電体層70中に拡散することを促進させることができる。窒素雰囲気中で熱処理を行うことにより、チタンが酸化されて酸化チタンとなることを抑制し、さらに酸化チタンが高分子化することを抑制することができる。これにより、チタンの拡散を容易にすることができる。
なお、第1電極と振動板50との密着性を考慮すると、上記の熱処理によって、密着層56のチタンの一部は、密着層56中に残っていることが好ましい。
また、第1電極60の材質を白金とすることにより、上記の熱処理によって第1電極60が酸化されること、および第1電極60の結晶構造が変化することを、抑制することができる。
次に、図9に示すように、第1電極60上に所定形状のレジスト(図示なし)をマスクとして形成し、密着層56および第1電極60を同時にパターニングする。
次に、図10に示すように、第1電極60、密着層56、および振動板50に重なるように圧電体膜74を複数層形成する。圧電体層70は、これら複数層の圧電体膜74によ
って構成される。圧電体層70は、例えば、MOD(Metal Organic Decomposition)法やゾルゲル法等の溶液法(化学溶液法)により形成される。このように溶液法によって圧電体層70を形成することで、圧電体層70の生産性を高めることができる。このように溶液法によって形成された圧電体層70は、前駆体溶液を塗布する工程(塗布工程)から前駆体膜を焼成する工程(焼成工程)までの一連の工程を複数回繰り返すことによって形成される。
圧電体層70を溶液法で形成する場合の具体的な手順は、例えば次のとおりである。まず、所定の金属錯体を含む前駆体溶液を調整する。前駆体溶液は、焼成によりカリウム、ナトリウム、およびニオブを含む複合酸化物を形成しうる金属錯体を、有機溶媒に溶解または分散させたものである。このとき、Li等の添加物を含む金属錯体をさらに混合してもよい。
カリウムを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。ナトリウムを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。ニオブを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ニオブ、ペンタエトキシニオブ等が挙げられる。なお、2種以上の金属錯体を併用してもよい。例えば、カリウムを含む金属錯体として、2−エチルへキサン酸カリウムと酢酸カリウムとを併用してもよい。
溶媒としては、2−nブトキシエタノール、n−オクタン、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。前駆体溶液は、カリウム、ナトリウム、ニオブを含む金属錯体の分散を安定化する添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。
振動板50、密着層56、および第1電極60が形成されたウェハー110上に、上記の前駆体溶液を塗布して、前駆体膜を形成する(塗布工程)。次に、この前駆体膜を所定温度、例えば130℃以上250℃以下で熱処理して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥させた前駆体膜を所定温度、例えば300℃以上450℃以下で熱処理し、この温度で一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。次に、脱脂した前駆体膜をより高い温度、例えば650℃以上800℃以下で熱処理し、この温度で一定時間保持することによって結晶化させると、圧電体膜74が完成する(焼成工程)。
乾燥工程、脱脂工程、および焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA装置やホットプレート等が挙げられる。上記の工程を複数回繰り返して、複数層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成する。なお、塗布工程から焼成工程までの一連の工程において、塗布工程から脱脂工程までを複数回繰り返した後に、焼成工程を実施してもよい。RTAの昇温レートは、30℃/sec以上350℃/sec以下に設定することが好ましい。なお、「昇温レート」とは、350℃から目的とする焼成温度に達するまでの温度の時間変化率を規定する。
焼成工程において、第1電極60に拡散されたチタンを、圧電体層70中に均一性よく拡散させることができる。これにより、圧電体層70は、チタンを含むことができる。
圧電体層70上に第2電極80を形成する前後で、必要に応じて600℃以上800℃以下の温度域で再加熱処理(ポストアニール)を行ってもよい。このようにポストアニールを行うことで、圧電体層70と第1電極60との界面、および圧電体層70と第2電極80との界面を、良好に(平坦性の高い面に)することができる。さらに、圧電体層70の結晶性を改善することができる。さらに、第1電極60と圧電体層70との密着性、および第2電極80と圧電体層70との密着性を高めることができる。
本実施形態では、圧電材料にアルカリ金属(カリウムやナトリウム)が含まれる。アルカリ金属は、上記の焼成工程で第1電極60中や密着層56中に拡散しやすい。仮に、アルカリ金属が第1電極60および密着層56を通り越してウェハー110に達すると、そのウェハー110と反応を起こしてしまう。しかし、本実施形態では、上記の酸化ジルコニウムからなる絶縁体層52が、カリウムやナトリウムのストッパー機能を果たしている。したがって、アルカリ金属がシリコン基板であるウェハー110に到達することを抑制することができる。
次に、図11に示すように、複数の圧電体膜74からなる圧電体層70をパターニングして、所定の形状にする。パターニングは、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングや、エッチング液を用いたウェットエッチングによって行う。
次に、圧電体層70上に第2電極80を形成する。第2電極80は、第1電極60と同様の方法により形成できる。
以上の工程により、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを備えた圧電素子300を形成することできる。
次に、図12に示すように、ウェハー110の圧電素子300側の面に、接着剤35(図4参照)を介して保護基板用ウェハー130を接合する。次に、保護基板用ウェハー130の表面を削って薄くする。次に、保護基板用ウェハー130に、マニホールド部32および貫通孔33(図4参照)を形成する。
次いで、図13に示すように、ウェハー110の圧電素子300とは反対側の面に、マスク層53を形成し、これを所定形状にパターニングする。
次に、図14に示すように、マスク層53を介して、ウェハー110に対してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)を実施する。これにより、個々の圧電素子300に対応する圧力発生室12の他、インク供給路13、連通路14、および連通部15(図4参照)を形成する。
次に、ウェハー110および保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分をダイシング等により切断・除去する。次に、ウェハー110の圧電素子300とは反対側の面に、ノズルプレート20を接合する(図4参照)。次に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合する(図4参照)。
以上の工程により、記録ヘッド1のチップの集合体を製造することができる。この集合体を個々のチップに分割することにより、記録ヘッド1を製造することができる。
圧電素子300の製造方法では、例えば、以下の特徴を有する。
圧電素子300の製造方法では、第1電極60を形成する工程の前に、チタンを含む密着層56を形成する工程と、第1電極60を形成する工程の後に、密着層56を、650℃以上750℃以下で熱処理して、密着層56のチタンを第1電極60中に拡散させる工程と、を含み、圧電体層70を形成する工程は、第1電極60中に拡散されたチタンを、熱処理によって、圧電体層70中に拡散させる工程を有する。そのため、圧電素子300の製造方法では、均一性よくチタンを圧電体層70中に拡散させることができる(詳細は、後述する「3. 実験例」参照)。
なお、密着層56のチタンが第1電極中60および圧電体層中70へ拡散すると、第1電極60と絶縁体層52との密着性が懸念される。しかし、第1電極60と絶縁体層52との化学結合を形成するチタンを含む密着層56は、チタン原子1個分の単層であれば、第1電極60と絶縁体層52とを、十分に密着させることができる。したがって、密着層56のチタンが拡散しても、第1電極60と絶縁体層52と密着性を確保することができる。
また、上記では、第1電極60を形成した後に窒素雰囲気中で熱処理を行うことにより、密着層56のチタンを第1電極60中に拡散させ、さらに、第1電極60中に拡散されたチタンを、焼成工程において圧電体層70(圧電体膜74)に拡散させることにより、チタンを含む圧電体層70を形成する例について説明した。しかし、本発明に係る圧電素子の製造方法では、予め、前駆体溶液として、焼成によりカリウム、ナトリウム、ニオブ、およびチタンを含む複合酸化物を形成しうる金属錯体を、有機溶媒に溶解または分散させた前駆体溶液を用いて、チタンを含む圧電体層70を形成してもよい。この場合、第1電極60を形成した後の窒素雰囲気中で熱処理は、行われなくてもよい。チタンを含む金属錯体としては、例えば、チタニウムイソプロポキシド等が挙げられる。
また、圧電体層70は、スパッタリング法によって形成されてもよい。この場合、スパッタターゲットは、チタンを含んでいてもよい。
また、圧電体層70は、リチウムを含んでいてもよい。この場合、前駆体溶液は、リチウムを含む金属錯体を含んでいてもよい。リチウムを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸リチウム等が挙げられる。
3. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
3.1. 試料の作製
以下の方法で、実施例1〜5の圧電素子を作製した。
3.1.1. 実施例1
シリコン基板の表面を熱酸化することで、シリコン基板上に二酸化シリコンからなる弾性層(厚さ1000nm)を形成した。次に、弾性層上にジルコニウム層をスパッタリング法によって成膜し、ジルコニウム層を熱酸化することで酸化ジルコニウムからなる絶縁体層(厚さ400nm)を形成した。次に、絶縁体層上に、厚さ20nmのチタン層をスパッタリング法によって成膜し、密着層を形成した。そして、密着層上に白金層をスパッタリング法によって成膜した後、RTAを用いて、窒素雰囲気中、温度700℃、昇温レート100℃/secで3分間、熱処理を行った。その後、白金層を所定形状にパターニングすることで、厚さ50nmの第1電極を形成した。
次に、以下の手順で圧電体層を形成した。
まず、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、および2−エチルヘキサン酸ニオブからなる溶液を準備し、これを用いて、(K0.4,Na0.6)NbOの組成となるように前駆体溶液を調合した。
前駆体溶液をスピンコート法によりシリコン基板上に塗布した(塗布工程)。その後、ホットプレート上にシリコン基板を載せ、180℃で4分間乾燥させた(乾燥工程)。次に、380℃で4分間の脱脂を行った(脱脂工程)。そして、RTAを用いて、酸素雰囲
気中、温度500℃、昇温レート100℃/secで3分間、熱処理を行った(第1焼成工程)。この塗布工程〜第1焼成工程を7回繰り返した後、電気炉を用いて700℃で、さらに追加で熱処理をする(第2焼成工程)ことで、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)から成る圧電体層を作製した。
この圧電体層70上に白金をスパッタリング法によって成膜することで第2電極を形成した。その後、ホットプレート上にシリコン基板を載せ、650℃で3分間の再加熱(ポストアニール)を行った。
3.1.2. 実施例2
実施例2では、絶縁体層上に、厚さ10nmのチタン層をスパッタリング法によって成膜し、密着層を形成した。上記のこと以外は、実施例2は、実施例1と同様の方法で作製した。
3.1.3. 実施例3
実施例3では、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ニオブ、および2−エチルヘキサン酸リチウムからなる溶液を準備し、これを用いて、(K0.4,Na0.6)NbOの組成の化合物にLiが添加された前駆体溶液を調合した。Liの含有量は、KとNaとのモル数の和に対して、10モル%とした。上記のこと以外は、実施例3は、実施例2と同様の方法で作製した。
3.1.4. 実施例4
実施例4では、密着層上に白金層をスパッタリング法によって成膜した後、熱処理を行わずに、第1電極を形成した。さらに、実施例4では、第1焼成工程では、電気炉を用いたFA(Furnace Annealing)で酸素雰囲気中、温度700℃、昇温レート5℃/sec未満で2時間、熱処理した。上記のこと以外は、実施例4は、実施例1と同様の方法で作製した。
3.1.5. 実施例5
実施例5では、第1焼成工程では、電気炉を用いたFAで酸素雰囲気中、温度800℃、昇温レート5℃/sec未満で2時間、熱処理した。上記のこと以外は、実施例5は、実施例4と同様の方法で作製した。
3.2. SIMS評価
実施例1〜5において、SIMSを行い、圧電体層におけるTiの不均一性を示すU値を求めた。SIMSは、CAMECA社製の「2次イオン質量分析計 IMS7F」を用いて行った。図15〜図19は、それぞれ実施例1〜5におけるSIMSの結果を示すグラフである。図20は、実施例1〜5におけるU値を示す表である。なお、図20では、リーク電流の電流密度(リーク電流密度)についても表している(詳細は後述する「3.3. リーク電流評価」参照)。
図15〜図20に示すように、実施例1〜3では、実施例4,5と比べて、U値が低く、圧電体層中にチタンが均一性よく拡散していることがわかった。特に、圧電体層と第1電極との界面近傍において、チタンの滞留が確認されなかった。これは、白金層を成膜した後であって圧電体層を成膜する前に行った昇温レートの速いRTAによる熱処理、および第1焼成工程のRTAによる熱処理によって、チタンが、酸化またはKNNと結合を完了する前に、第1電極側から第2電極側に拡散したためである。
図15〜図17に示すように、実施例2,3が実施例1と比べて、圧電体層中のチタンの信号強度が低いのは、実施例2,3は実施例1と比べて成膜したチタン層の厚さが小さ
いためである。
実施例4,5は、第1焼成工程において、昇温レートが5℃/sec未満と小さかった。そのため、チタンの拡散速度が小さくなる。さらに、第1焼成工程では、酸素雰囲気中で熱処理するため、拡散が十分に進まないうちに、チタンの酸化、および酸化チタンの高分子化が進行し、また、酸化チタンがKNNと結合し始める。これにより、チタンの拡散が抑制される。その結果、実施例4,5は、実施例1〜3に比べて、U値が高くなった。
なお、第1焼成工程を、酸素雰囲気中ではなく、窒素雰囲気中で行うと、圧電体層の酸素濃度が低下し、圧電特性および誘電特性が劣化する。
また、本実験では、密着層をチタン層としたが、密着層を酸化チタン層、炭化チタン層、窒化チタン層としても、密着層のチタンは、圧電体層中に拡散する。酸化チタン、炭化チタン、窒化チタンは、何れもチタン原子単体よりは分子サイズが大きく、拡散係数は、チタン単体よりも大きくない。しかし、チタンの自己拡散係数は、鉛と同等で、かつ、チタンは、カリウム、ナトリウムについで大きな原子である。さらに、圧電体層に含まれるカリウム、ナトリウムが密着層に移動し、酸化チタン、炭化チタン、窒化チタンをチタンに還元する。そのため、密着層を酸化チタン層、炭化チタン層、窒化チタン層としても、密着層のチタンは、圧電体層中に拡散する。
3.3. リーク電流評価
実施例1〜5のリーク電流密度を測定した。具体的には、圧電体層に(第1電極と第2電極との間に)電界強度が200kV/cmである電界を印加したときのリーク電流密度を測定した。リーク電流密度の測定は、Agilent社製の「4140B pA Meter」を用いて行った。図20は、実施例1〜5の圧電素子のリーク電流密度を示す表である。図21は、U値とリーク電流密度との関係を示すグラフである。なお、200kV/cmの電界強度は、圧電素子を駆動させるための代表的な電界強度である。
図20および図21に示すように、U値が小さい程、リーク電流密度が小さいことがわかった。すなわち、圧電体層中にチタンが均一性よく拡散しているほど、リーク電流が小さいことがわかった。U値が140%以下であれば、リーク電流密度を1×10−6A/cm以下にすることができることがわかった。実施例1〜3は、リーク電流密度が1×10−6A/cmよりも小さいことがわかった。
さらに、圧電体層がリチウムを含む実施例3の方は、リチウムを含まない実施例2に比べて、リーク電流密度が低かった。したがって、圧電体層がリチウムを含むことにより、リーク電流を低減できることがわかった。
図22は、実施例2,3および比較例1の圧電素子における電界強度とリーク電流密度との関係を示すグラフである。
比較例1では、密着層(チタン層)を形成せず、第1電極を形成する前のRTAを用いた熱処理を行わなかった。さらに、比較例1では、第1電極の厚さを100nmとした。上記のこと以外は、比較例1は、実施例1と同様の方法で作製した。
図22に示すように、圧電体層がTiを含む実施例2,3は、圧電体層がTiを含まない比較例1に比べて、リーク電流密度が低かった。したがって、圧電体層がTiを含むことにより、リーク電流を低減できることがわかった。
図22において、電界強度が正である領域は第1電極の電位が第2電極の電位に対して
高い場合を、電界強度が負である領域は第1電極の電位が第2電極の電位より低い場合を指す。圧電素子の駆動は電位の正負に依らないが、本実験例では、第1電位が正である時のリーク電流密度に着目した。第1電位の極性(正か負か)による非対象性すなわちリーク電流値の相違は、圧電体と電極とが作る界面構造の相違に由来する。厳密には界面構造の差異による相違は見られるが、圧電体層の構造すなわち圧電体層の組成に起因するリーク電流値にはほとんど差異はない。本実験例では、電流値の評価はセグメント電位が正である場合を採用した。
3.4. 第1電極成膜後の熱処理の影響
第1電極製膜後の熱処理(密着層上に白金層をスパッタリング法によって成膜した後、白金層をパターニングする前の熱処理)の影響を調査した。実施例6〜10では、熱処理の温度を、それぞれ、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製した。実施例11では、熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で作製した。
上記のような実施例6〜11において、「3.2. SIMS評価」と同様に、U値を求めた。さらに、実施例6〜11において、「3.3. リーク電流評価」と同様に、電界強度が200kV/cmである電界を印加したときのリーク電流密度を求めた。図23は、熱処理の温度、U値、およびリーク電流密度を示す表である。図24は、熱処理の温度とU値との関係を示すグラフである。図25は、熱処理の温度とリーク電流密度との関係を示すグラフである。
図23〜図25に示すように、実施例6〜11では、熱処理の温度が700℃の場合に、最もU値が小さく、最もリーク電流密度が低いがことがわかった。図23および図25に示すように、熱処理の温度を、650℃以上750℃以下とすることで、リーク電流密度を1×10−6A/cm以下に抑えられることがわかった。
3.5. STEM−EDS評価
走査型透過電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析(STEM−EDS)によって、実施例3および実施例12のチタンの分布を調査した。
実施例12では、密着層上に白金層をスパッタリング法によって成膜した後、熱処理を行わずに、第1電極を形成した。さらに、実施例12では、第1焼成工程では、電気炉を用いたFAで酸素雰囲気中、温度700℃、昇温レート5℃/sec未満で2時間、熱処理した。上記のこと以外は、実施例12は、実施例3と同様の方法で作製した。
図26は、実施例3のSTEM−EDS結果である。図27は、実施例12のSTEM−EDS結果である。図26および図27では、チタンを白色で示している。図26および図27より、実施例3は、実施例12よりも圧電体層中にチタンが拡散していることがわかった。このように、STEM−EDSの結果からも、密着層上に白金層をスパッタリング法によって成膜した後、白金層をパターニングする前の熱処理、および第1焼成工程におけるRTAを用いた熱処理によって、チタンが圧電体層中に拡散することがわかった。
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実
施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…記録ヘッド、2A,2B…カートリッジ、3…キャリッジ、4…装置本体、5…キャリッジ軸、6…駆動モーター、7…タイミングベルト、8…搬送ローラー、10…流路形成基板、11…隔壁、12…圧力発生室、13…インク供給路、14…連通路、15…連通部、20…ノズルプレート、21…ノズル開口、30…保護基板、31…圧電素子保持部、32…マニホールド部、33…貫通孔、35…接着剤、40…コンプライアンス基板、41…封止層、42…固定板、43…開口部、50…振動板、51…弾性層、52…絶縁体層、53…マスク層、56…密着層、60…第1電極、70…圧電体層、74…圧電体膜、80…第2電極、90…リード電極、100…マニホールド、110…シリコン基板、120…駆動回路、121…接続配線、130…保護基板用ウェハー、200…プリンターコントローラー、300…圧電素子、1000…インクジェット式記録装置、2000…ヘッドユニット

Claims (8)

  1. 第1電極と、
    前記第1電極の上方に設けられ、カリウム、ナトリウム、ニオブ、チタン、および酸素を含む圧電体層と、
    前記圧電体層の上方に設けられた第2電極と、
    を含む、圧電素子。
  2. 請求項1において、
    前記圧電体層に電界強度が200kV/cmである電界を印加したときのリーク電流の電流密度は、1×10−6A/cm以下である、圧電素子。
  3. 請求項1または2において、
    下記一般式を満たす、前記圧電体層における前記チタンの不均一性を示すU値は、140%以下である、圧電素子。
    U={2×(IMAX−IMIN)/(IMAX+IMIN)}×100
    (式中、IMAXは、二次イオン質量分析法で前記第2電極側から深さ方向分析を行った場合に、前記圧電体層の所定区間における前記チタンの信号の最大強度であり、IMINは、二次イオン質量分析法で前記第2電極側から深さ方向分析を行った場合に、前記圧電体層の所定区間における前記チタンの信号の最小強度である。)
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記圧電体層の前記カリウム、前記ナトリウム、前記ニオブ、および前記酸素の組成は、
    (K,Na1−xNbO (0.1≦x≦0.9、0.85≦A≦1.15)の関係を満たす、圧電素子。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、
    前記圧電体層は、リチウムを含み、
    前記リチウムの含有量は、前記カリウムと前記ナトリウムとのモル数の和に対して、20モル%以下である、圧電素子。
  6. 第1電極を形成する工程と、
    前記第1電極の上方に、カリウム、ナトリウム、ニオブ、チタン、および酸素を含む圧電体層を形成する工程と、
    前記圧電体層の上方に第2電極を形成する工程と、
    を含む、圧電素子の製造方法。
  7. 請求項6において、
    前記第1電極を形成する工程の前に、チタンを含む層を形成する工程と、
    前記第1電極を形成する工程の後であって、前記圧電体層を形成する工程の前に、650℃以上750℃以下で熱処理する工程と、
    を含み、
    前記圧電体層を形成する工程は、焼成する工程を含む、圧電素子の製造方法。
  8. 請求項1ないし5のいずか1項に記載の圧電素子を含む、圧電素子応用デバイス。
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