発明の詳細な説明
本発明は、様々な改変および代替形態を受容するが、これらの詳細については、図面に例として示し詳しくに説明される。しかし、その意図するところは、本発明を、記載されている特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。それどころか、その意図するところは、本発明の思想および範囲内に収まるあらゆる改変、均等物および代替物を網羅することである。例えば、本発明の特定のナノポアの種類および数、特定の標識、FRETペア、検出スキーム、製作アプローチが、説明目的で示されている。しかし、他の種類のナノポア、ナノポアのアレイおよび他の製作技術を利用して、本明細書に記述されているシステムの様々な態様を実行することができるため、本開示が、この点における限定を意図しないことを認められたい。本発明の態様に関するガイダンスは、当業者に周知の多くの利用できる参考文献および専門書に見出すことができ、そのようなものとして、例えば、Cao、Nanostructures & Nanomaterials(Imperial College Press、2004年);Levinson、Principles of Lithography、第2版(SPIE Press、2005年);DoeringおよびNishi編、Handbook of Semiconductor Manufacturing Technology、第2版(CRC Press、2007年);Sawyerら、Electrochemistry for Chemists、第2版(Wiley Interscience、1995年);BardおよびFaulkner、Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications、第2版(Wiley、2000年);Lakowicz、Principles of Fluorescence Spectroscopy、第3版(Springer、2006年);Hermanson、Bioconjugate Techniques、第2版(Academic Press、2008年);その他が挙げられ、これらの関連部分は、参照により本明細書に組み込む。
本発明は、ナノポア移動スピードを制御するために調製された核酸分析物のデュプレックス結合エネルギーを使用する、核酸のナノポアに基づく分析の方法を対象にする。一部の実施形態では、本発明の特色は、(i)一本鎖核酸の通過を許すが、二本鎖核酸の通過を許さないことにより、一本鎖核酸および二本鎖核酸の間を(操作条件下で)識別し得る、穿孔または開口部を有するナノポアの使用、ならびに(ii)操作条件下でナノポアによる捕捉を可能にする、一本鎖テイルまたはオーバーハングを有する二本鎖産物の形態の核酸分析物の調製を含む。一部の実施形態では、一本鎖テイルは、一本鎖ポリヌクレオチド等、荷電ポリマーであってもよく、操作条件は、電解質溶液におけるナノポアへの二本鎖産物の曝露と、荷電ポリマーテイルが、捕捉後にナノポアを通った電界によって駆動されるような、ナノポアを横切る電場または電圧勾配の確立とを含む。一本鎖テイルがポリヌクレオチドである実施形態では、ナノポアによって捕捉された二本鎖産物の一本鎖テイルは、二本鎖産物の3’オーバーハングまたは二本鎖産物の5’オーバーハングであってもよい。
本発明の一部の実施形態は、図1Aによって図解されている。プライマー(102)の鋳型特異的部分(106)が鋳型(100)にアニールすることを可能にする、プライマーアニーリング条件下で、鋳型核酸(100)は、プライマー(102)と組み合わされる。プライマー(102)は、DNAポリメラーゼ等、核酸ポリメラーゼによって伸長され得る鋳型特異的部分(106)と、操作条件下で荷電ポリマーであるテイル(104)とを含む。鋳型特異的部分(106)は、プライマー(102)の3’末端に存在し、核酸ポリメラーゼによって伸長可能である。テイル(104)は、プライマー(102)の5’末端に存在する。一部の実施形態では、図1Aに示す通り、鋳型特異的部分(106)の結合部位は、3’オーバーハングが存在しないように、鋳型(100)の3’末端を含むことができる。他の実施形態では、鋳型特異的部分(106)の結合部位は、小さな3’オーバーハング(すなわち、他方の鎖の5’オーバーハングのサイズと比べて「小さい」)が存在するように、鋳型(100)の3’末端から挿入されることができる(図示せず)。一部の実施形態では、鋳型鎖のこのような3’オーバーハング(106)は、1〜5ヌクレオチドまたは1〜3ヌクレオチドの範囲内であってもよい。理論による制約を意図するものではないが、鋳型鎖の小さな3’オーバーハングは、二本鎖産物の5’テイルがナノポアによって捕捉された後に、二本鎖を開く(unzipping)事象の開始を容易にすることができると考えられる。鋳型特異的部分(106)の長さは、従来的であり、「プライマー」定義セクションにおいて指定された範囲内で選択することができる。他の実施形態では、鋳型特異的部分(106)の結合部位は、後述する通り、鋳型(100)の内部位置に存在することができる。一部の実施形態では、例えば、鋳型(100)は、鋳型特異的部分(106)のためのプライマー結合部位を含有するアダプタ配列を使用して先に増幅されたため、鋳型特異的部分(106)の配列は、予め決定されている。他の実施形態では、それぞれ予め決定され、それぞれ別々の鋳型配列(106)に特異的な、複数の鋳型特異的部分が存在し得る。斯かる後者の実施形態では、異なる鋳型特異的部分を有する複数のプライマーは、広く変動し得る;例えば、斯かる複数は、2〜1000の範囲内または2〜500の範囲内または10〜1000の範囲内であり得る。
一部の実施形態では、例えば、プライマー(102)の配列が、式:3’−NNN...NN−nnn...nn−5’(式中、各Nは、A、C、GまたはTであり、各nは、T等のテイルモノマーである)を有するように、鋳型特異的部分(106)の配列は、ランダム配列であってもよい。一部の実施形態では、プライマー(102)の配列は、式:3’−NNN...NN−αnnn...nn−5’(式中、各Nは、A、C、GまたはTであり、αは、脱塩基ヌクレオチド等の1個または複数の伸長遮断モノマーであり、nは、T等のテイルモノマーである)を有する。一部の実施形態では、αは、1〜6個の伸長遮断モノマーを含む。
テイル(104)は、好ましくは、他方の鋳型配列と相補的でないか、または自己相補的である、一本鎖ヌクレオチド鎖を含むことができる。あるいは、テイル(102)は、ホスホジエステル連結によって接続された脱塩基リボースモノマー等、全体的にまたは部分的に、非ヌクレオシドモノマーの鎖である、荷電ポリマーを含むことができる。一部の実施形態では、テイル(104)の正味電荷は、負である。一部の実施形態では、テイル(104)の正味電荷は、一本鎖移動に対するナノポアによる抵抗を克服するため、また、二本鎖産物(110)の二本鎖部分を開くために十分に高い。テイル(104)が、ホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチドまたはモノマーを含む場合は常に、テイル(104)の長さは、広く変動することができ、一方では(より短い長さで)、移動および二本鎖を開くのに必要な電荷の量によって、また、他方では(長い方の長さでは)、合成の便利さおよび費用によって制約される。一部の実施形態では、テイル(104)は、少なくとも10個のモノマーの長さを有する;他の実施形態では、テイル(104)は、10〜120個のモノマーの範囲内の長さを有する。プライマー(102)が、鋳型(100)にアニールした後に、鋳型(100)に相補的な伸長された鎖(108)が合成され、二本鎖産物(110)が作製されるように、プライマー伸長条件が確立される(アニーリングの際に既に存在していない場合)。一部の実施形態では、プライマー伸長条件は、従来のポリメラーゼ反応条件を含む;すなわち、プライマー(102)の鋳型特異的部分(106)から開始する伸長された鎖(108)の鋳型に基づく合成のための、妥当なpH、塩濃度その他における、核酸ポリメラーゼおよび適切なヌクレオシド三リン酸モノマーの存在である。斯かる合成は、伸長された鎖(108)および鋳型特異的部分(106)とデュプレックス形成した当初の鋳型鎖(100)を含むデュプレックス部分ならびに一本鎖テイル(104)を含む二本鎖産物(110)をもたらす。
図1Bに示される通り、伸長された鎖(108)は、直接的に、例えば、前駆物質に既に付着された蛍光部分によって、または間接的に、例えば、相補基を有する標識を付着するために後に使用される(例えば、プライマー伸長反応後に)反応基によって、標識(120)をもたらす改変されたヌクレオチド前駆物質の取り込みにより標識され得る。一部の実施形態では、改変されたヌクレオチド前駆物質は、伸長された鎖(stand)(108)のあらゆる取り込まれたヌクレオチドが、直接的にまたは間接的に標識されるように用いられる。一部の実施形態では、少なくとも2種の直接的または間接的標識が使用される。さらに他の実施形態では、平均して4セットの伸長された鎖(108)が産生されるように、少なくとも4種の標識反応が行われ、それによると、第1のセットにおいて、標識は、「A」または「非A」の存在を表し、第2のセットにおいて、標識は、「C」または「非C」の存在を表し、第3のセットにおいて、標識は、「G」または「非G」の存在を表し、第4のセットにおいて、標識は、「T」または「非T」の存在を表す。一部の実施形態では、4つの異なる種類のヌクレオチドのうち3つが標識されていてよく;一部の実施形態では、ピリミジンであるTおよびCの全てまたは実質的に全て(そして実質的に全プリンが標識されていない)等、4つの異なる種類のヌクレオチドのうち2つが標識されていてよい。
鋳型(100)は、試料から直接的に得られた後に、本発明の方法において使用され得る;または、一部の実施形態では、本方法のステップは、in situで行うことができ、その後、二本鎖産物が分析のために抽出される。他の実施形態では、鋳型(100)は、試料からの核酸の抽出、試料からの核酸の増幅その他等、本発明のステップの実行前に行われる追加的な手順の産物であってもよい。一部の実施形態では、鋳型(100)は、複数の選択された標的核酸のマルチプレックスPCRによって産生される;他の実施形態では、鋳型(100)は、全ゲノム増幅によって産生される。
図1Aまたは図1Bに図解される伸長反応が完了した後に、二本鎖産物(110)は、ナノポア配列決定デバイス内で、移動反応混合物において、1個または複数のナノポアに曝露される。一部の実施形態では、斯かる移動反応混合物は、ナノポアを通した核酸鎖の移動に使用される従来の電解質であり、第1のチャンバにおけるイオン強度(一価および/または二価カチオン濃度)は、標的ポリヌクレオチドが、その中に置かれた後に二本鎖のままであり、選択された電場強度下で移動の際に開かれるように(ナノポアを横切る電場強度と共に)選択される。簡潔に説明するのであって、限定を意図するものではないが、斯かるデバイスは、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の流体連通が、1個または複数のナノポアだけを通して為されるように、1個または複数のナノポアを含有する不透過性膜によって分離された第1のチャンバおよび第2のチャンバを含む。斯かるデバイスは典型的に、膜およびナノポア(単数または複数)を横切る電界を確立するための1セットの電極も含む。電界は、ナノポアを通した第1のチャンバから第2のチャンバへのポリヌクレオチド(これは、選択された電解質反応混合物において負に荷電している)を動かすか、または移動するために使用される。一部の実施形態では、膜は、アレイとして配置された複数のナノポアを含む。例えば、図1Cにおいて、タンパク質ナノポア(134)は、膜(130)の表面に配置された脂質二重層(132)における開口部(131)に位置する。二本鎖産物(110)は、チャンバに負電極(図示せず)を置くことにより膜(130)の「シス」側として構成された第1のチャンバ(135)における電解質中に置くことにより、ナノポア(134)に曝露される。電界を印加することにより、ナノポア(134)によって捕捉された負に荷電したテイル(104)は、ナノポア(134)を通して、チャンバに正電極を置くことにより膜(130)の「トランス」側として構成された第2のチャンバ(137)に移動(136)する。移動が続けられ、移動しているテイル(104)によって発揮された力は、伸長された鎖(108)から鋳型鎖(100)を開くこと(138)を開始する。移動のスピードは、第1および第2のチャンバ中の電解質のイオン強度、ならびにナノポアを横切って印加された電圧に部分的に依存する。光学に基づく検出において、移動スピードは、例えば、異なる電圧に対してナノポアにつき異なる予想速度でシグナルを生成する二本鎖産物の予め決定された標準を使用した、予備的較正測定によって選択され得る。よって、DNA配列決定適用のため、移動スピードは、斯かる較正測定からのシグナル速度に基づき選択され得る。結果的に、斯かる測定から、例えば、ナノポアのアレイに対する、信頼できるヌクレオチド識別を可能にするか、または最大化する、電圧および/またはイオン強度が選択され得る。一部の実施形態では、斯かる較正は、分析されている鋳型の試料由来の二本鎖産物を使用して為すことができる(予め決定された標準配列の代わりにまたはこれに加えて)。一部の実施形態では、斯かる較正は、配列決定ランの際にリアルタイムで行うことができ、印加された電圧は、斯かる測定に基づき、例えば、ヌクレオチド特異的シグナルの取得を最大化するように、リアルタイムで改変することができる。
上に記す通り、一部の実施形態では、図1Dに図解されている通り、プライマー(102)の鋳型特異的部分(106)の結合部位は、鋳型(100)の内部に存在することができる。よって、アニールされたプライマー(102)が伸長して伸長された鎖(108)を形成した後に、一本鎖5’テイル(104)および一本鎖3’テイル(142)を有する初期二本鎖産物(140)が形成される。一部の実施形態では、斯かる初期二本鎖産物(140)は、本発明に従って使用することができる;すなわち、これは、その5’テイル(104)またはその3’テイル(142)のいずれかを介した、ナノポアによる捕捉のために第1のチャンバに配置されてよく、その後、移動および二本鎖を開くことが起こる。他の実施形態では、3’テイル(142)は、T4 DNAポリメラーゼ等、一本鎖3’エキソヌクレアーゼで消化(144)されて、その単独のオーバーハングが5’テイル(104)である二本鎖産物(146)を産生してもよい。
一部の実施形態では、図1Eに図解される通り、伸長された鎖(108)は、鋳型(152)の末端まで伸長せず、鋳型(152)の5’一本鎖オーバーハング(150)を残してもよい。そのような場合、鋳型の望まれない5’末端(150)は、マングビーンヌクレアーゼ等、5’一本鎖エキソヌクレアーゼで処理されて、二本鎖産物(146)を産生してもよい。伸長された鎖(108)の所望の5’テイルは、ホスホロチオエート等、ヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドアナログを取り込むことにより、消化から保護され得る。
一部の実施形態では、図1Fに図解される通り、二本鎖産物は、3’一本鎖オーバーハングを有することができる。3’一本鎖オーバーハングを有する二本鎖産物は、標識された鎖が、その3’末端によって捕捉され、3’が最初の配向性でナノポアを移動することを可能にし、これは、使用されているナノポアに応じて、5’が最初の配向性での移動とは異なるスピードで進行する。例えば、一部の実施形態では、α−ヘモリジンナノポアを用いると、3’が最初の移動スピードは、5’が最初の移動スピードの50パーセント未満であるか、またはこれに等しくなることができる。簡潔に説明すると、この実施形態では、3’一本鎖オーバーハングは、末端転移酵素(TdT)活性を使用した鋳型なしでの伸長によって作製される。一実行では、アダプタ(174)は、平滑末端の標的ポリヌクレオチド(170)にライゲート(172)されて、二本鎖産物(176)を産生する。アダプタ(174)は、平滑末端ライゲーション反応に関与することができる一端と、ライゲーションも末端転移酵素による伸長もできない別の一端とを含む。一部の実施形態では、これらの能力は、5’リン酸基(図1Fにおいて「p」で示す)をアダプタ(174)の同じ鎖の一端に、3’リン酸基(図1Fにおいて「p」で示す)を他端に提供することにより実行される。3’および5’リン酸の両方を有する鎖は、市販のホスホラミダイト化学を使用して容易に合成される。任意選択で、サイズ分離のステップが、自己ライゲートしたアダプタ−アダプタ副生物から産物(176)を分離するために含まれてよい。ライゲーション反応の大型の二本鎖産物が変性され、プライマー(180)が、3’−ブロック端を有するアダプタ鎖に位置付けられたプライマー結合部位にアニール(178)する。斯かるアニーリングの後に、プライマー(180)は、選択され標識された、そして/または標識されていないdNTPアナログ(182)の存在下で伸長されて、標識された(例えば、186)二本鎖産物を形成する。別々の反応または同じ反応のいずれかにおいて、標識された二本鎖産物の遊離(ブロックされていない)3’末端は、末端転移酵素によってさらに伸長される。二色配列決定が使用される一部の実施形態では(後述を参照)、3’一本鎖オーバーハングのヌクレオチドが標識されないように、末端転移酵素伸長は、別々の反応において起こることができる。末端転移酵素伸長は、一本鎖オーバーハング(それぞれ184aおよび184b)を有する標識された二本鎖産物(188a)および(188b)を産生する。一本鎖伸長(184aおよび184b)の長さは、広く変動し得る。一部の実施形態では、一本鎖伸長(184aおよび/または184b)の長さはそれぞれ、少なくとも10ヌクレオチドであり;他の実施形態では、一本鎖伸長(184aおよび/または184b)の長さはそれぞれ、少なくとも20ヌクレオチドであり;他の実施形態では、一本鎖伸長(184aおよび/または184b)の長さはそれぞれ、10〜120ヌクレオチドの範囲内である。
上述の通り、上述の実施形態のいずれかは、ナノポアまたはナノポアのアレイに曝露する前に、二本鎖産物を単離または精製または分離する(伸長反応混合物から)さらに別のステップを含むことができる。斯かる単離または分離は、PCR産物の単離に用いられるもの、例えば、QIAquick PCR精製キット(Qiagen,Inc.、Valencia、CA)等、従来の二本鎖DNA単離技法またはキットを使用して行うことができる。
上述の通り、移動スピードは、ナノポアを横切る電圧差(または電場強度)、および二本鎖産物がナノポアに曝露される第1のチャンバの反応混合物における条件に部分的に依存する。二本鎖産物捕捉速度は、斯かる産物の濃度に依存する。一部の実施形態では、ナノポア配列決定のための従来の反応混合物条件、例えば、1M KCl(またはNaCl、LiCl2その他等、均等な塩)およびpH緩衝系(これは例えば、使用されているタンパク質、例えば、タンパク質ナノポア、ヌクレアーゼその他が変性されないことを確実にする)を、本発明により用いることができる。一部の実施形態では、pH緩衝系を使用して、6.8〜8.8の範囲内の値に実質的に一定にpHを維持することができる。一部の実施形態では、ナノポアを横切る電圧差は、70〜200mVの範囲内であってもよい。他の実施形態では、ナノポアを横切る電圧差は、80〜150mVの範囲内であってもよい。操作に適切な電圧は、図5に図解されている通り、従来の測定技法を使用して選択することができる。ナノポアを横切る電流(または電圧)は、市販の機器を使用して容易に測定することができる。チャート(579)は、二本鎖産物(586)が捕捉されて開かれ、伸長された鎖がナノポアを通して移動されたときの、ナノポアを横切る電流の電流値、対、時間を示す。検査二本鎖産物を使用して、示されているデータを作成し、これは、ほとんど等しい比率のA、C、GおよびTのおよそ510塩基対の二本鎖部分、ならびに40ヌクレオチドの5’ポリTテイルからなった(二本鎖産物の鋳型鎖は、参照により本明細書に組み込む国際特許公開WO2014/190322に開示されているものと同じであった)。電流降下(580)の突発(Blow-up)(581)は、その関連する電流レベルと共に、捕捉および移動の異なる相(a、b、cおよびd)であると考えられるものを示す。電流レベルまたは相(a)は、非占有ナノポア(582)に対応する。電流レベルまたは相(b)は、鎖によって捕捉された(588)が未だ鎖開きを行っていない二本鎖産物(586)によって占有されたナノポア(583)に対応する。電流レベルまたは相(c)は、鎖の放出(590)により鎖開きを行っている二本鎖産物(586)に対応する。電流レベルまたは相(d)は、非占有状態に戻るナノポア(582)に対応する。二本鎖産物の予め決定された標準によるもの等、測定を使用して、相(c)に対応する時間間隔から、毎秒ヌクレオチド移動スピードを決定することができる。移動スピードが所望の範囲内となるように、電圧差を選択することができる。一部の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒1000ヌクレオチド未満のスピードを含む。他の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒10〜800ヌクレオチドであり;他の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒10〜600ヌクレオチドであり;他の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒200〜800ヌクレオチドであり;他の実施形態では、移動スピードの範囲は、毎秒200〜500ヌクレオチドである。
ナノポアおよびナノポアアレイ
本発明により使用されるナノポアは、固体状態(solid−state)の膜または同様のフレームワークにおいて構成された、固体状態ナノポア、タンパク質ナノポア、またはタンパク質ナノポア、もしくはカーボンもしくはグラフェンナノチューブ等の有機ナノチューブを含むハイブリッドナノポアであってもよい。ナノポアの重要な特色は、(i)そのモノマーが、順次検出ゾーンを通過するように(すなわち、ヌクレオチドが、一度に1つずつまたは1列縦隊で検出ゾーンを通過するような)、ポリヌクレオチド等のポリマー分析物を制約すること、および(ii)二本鎖核酸または等しくかさばった分子を通過させずに、一本鎖核酸を通過させることを含む。
一部の実施形態では、本発明の方法およびデバイスに関連して使用されるナノポアは、平面状の表面に規則的に配置され得る、ナノポアのクラスターのアレイ等、アレイの形態で提供される。一部の実施形態では、異なるクラスターのナノポア由来の光学的シグナルが、用いられる光学的検出システムによって鑑別可能となるように、クラスターはそれぞれ、別々の分解能限界区域に存在するが、同じクラスター内のナノポア由来の光学的シグナルは、用いられる光学的検出システムによって斯かるクラスター内の特異的ナノポアに必ずしも割り当てられなくてもよい。
固体状態ナノポアは、窒化ケイ素(Si3N4)、二酸化ケイ素(SiO2)その他が挙げられるがこれらに限定されない、種々の材料において製作することができる。DNA配列決定等、分析的印加のためのナノポアの製作および操作は、参照により本明細書に組み込む次の例示的な参考文献に開示されている:Ling、米国特許第7,678,562号;Huら、米国特許第7,397,232号;Golovchenkoら、米国特許第6,464,842号;Chuら、米国特許第5,798,042号;Sauerら、米国特許第7,001,792号;Suら、米国特許第7,744,816号;Churchら、米国特許第5,795,782号;Bayleyら、米国特許第6,426,231号;Akesonら、米国特許第7,189,503号;Bayleyら、米国特許第6,916,665号;Akesonら、米国特許第6,267,872号;Mellerら、米国特許出願公開第2009/0029477号;Howorkaら、国際特許公開WO2009/007743;Brownら、国際特許公開WO2011/067559;Mellerら、国際特許公開WO2009/020682;Polonskyら、国際特許公開WO2008/092760;Van der Zaagら、国際特許公開WO2010/007537;Yanら、Nano Letters、5巻(6号):1129〜1134頁(2005年);Iqbalら、Nature Nanotechnology、2巻:243〜248頁(2007年);Wanunuら、Nano Letters、7巻(6号):1580〜1585頁(2007年);Dekker、Nature Nanotechnology、2巻:209〜215頁(2007年);Stormら、Nature Materials、2巻:537〜540頁(2003年);Wuら、Electrophoresis、29巻(13号):2754〜2759頁(2008年);Nakaneら、Electrophoresis、23巻:2592〜2601頁(2002年);Zheら、J. Micromech. Microeng.、17巻:304〜313頁(2007年);Henriquezら、The Analyst、129巻:478〜482頁(2004年);Jagtianiら、J. Micromech. Microeng.、16巻:1530〜1539頁(2006年);Nakaneら、J. Phys. Condens. Matter、15巻、R1365〜R1393頁(2003年);DeBloisら、Rev. Sci. Instruments、41巻(7号):909〜916頁(1970年);Clarkeら、Nature Nanotechnology、4巻(4号):265〜270頁(2009年);Bayleyら、米国特許出願公開第2003/0215881号;その他。
簡潔に説明すると、一部の実施形態では、1〜100nmチャネルまたは開口部が、膜等、基板、通常、平面状基板を通して形成され、これを通して、一本鎖DNA等の分析物が、移動するように誘導される。他の実施形態では、2〜50nmチャネルまたは開口部が、基板を通して形成され;さらに他の実施形態では、2〜30nmまたは2〜20nmまたは3〜30nmまたは3〜20nmまたは3〜10nmチャネルまたは開口部が、基板を通して形成される。ナノポアを生成する固体状態アプローチは、頑強性および耐久性、ならびにナノポアのサイズおよび形状を調整する能力、ウエハスケールでナノポアの高密度アレイを製作する能力、脂質に基づくシステムと比較して優れた機械的、化学的および熱的特徴、ならびに電子的または光学的読み取り技法と統合する可能性を提案する。他方では、生物学的ナノポアは、特に、1〜10ナノメートル範囲内の、再現性のある狭い穿孔または管腔を提供すると共に、ナノポアの物理的および/または化学的特性を仕立てるため、ならびに従来のタンパク質工学方法によってFRETドナーまたはアクセプターとなり得る蛍光標識等の基または要素を直接的にまたは間接的に付着するための技法を提供する。タンパク質ナノポアは典型的に、機械的支持のために繊細な脂質二重層に頼り、正確な寸法を有する固体状態ナノポアの製作は、依然として難易度が高い。一部の実施形態では、固体状態ナノポアは、生物学的ナノポアと組み合わせて、これらの弱点のいくつかを克服する、いわゆる「ハイブリッド」ナノポアを形成し、これにより、生物学的ポアタンパク質の正確さに、固体状態ナノポアの安定性を付与することができる。光学的読み取り技法のため、ハイブリッドナノポアは、ナノポアの正確な位置を提供し、これは、データ取得を大幅に単純化する。
一部の実施形態では、クラスターは、開口部のアレイを含有する固相膜によって支持された脂質二重層にタンパク質ナノポアを配置することによって形成することもできる。例えば、斯かるアレイは、固相支持体(図2A中の2102)に製作された(例えば、穿孔された、エッチングされたその他)開口部を含むことができる。斯かる開口部の幾何学的形状は、用いられた製作技法に応じて変動し得る。一部の実施形態では、斯かる開口部のそれぞれは、別々の分解能限界区域に関連付けられるまたはこれによって包含される;しかし、他の実施形態では、複数の開口部が、同じ分解能限界区域内に存在してもよい。開口部の断面積は、広く変動することができ、異なるクラスター間と同じであっても同じでなくてもよいが、斯かる面積は通常、従来の製作アプローチの結果として実質的に同じである。一部の実施形態では、開口部は、10〜200nmの範囲内の最小線寸法(2103)(例えば、円形開口部の場合は直径)を有するか、または約100〜3×104nm2の範囲内の面積を有する。開口部を横切り、図2A〜図2D中の断面に図解される脂質二重層が配置される。一部の実施形態では、斯かる脂質二重層(2120)は、固相膜(2100)の一方の表面上に配置される。一部の実施形態では、タンパク質ナノポア(図2A〜図2D中の2104)は、開口部に及ぶ脂質二重層(2120)の部分に挿入され、描写されているもの等、一部の実施形態では、タンパク質ナノポアは、例えば、FRETドナーで直接的に標識されていてよい(2127)。一部の実施形態では、斯かるタンパク質ナノポアは、固相膜(2100)の一方の側のチャンバ内の溶液から挿入され、これにより、0、1、2または3個のタンパク質ナノポアを有する開口部が示されている図2A〜図2Dに図解されている通り、異なる開口部が、異なる数のタンパク質ナノポアを受け取ることができるように、開口部にタンパク質ナノポアがランダムに置かれる。開口部毎のタンパク質ナノポアの分布は、例えば、挿入ステップの際にタンパク質ナノポアの濃度を制御することにより変動され得る。斯かる実施形態では、ナノポアのクラスターは、ランダムな数のナノポアを含むことができる。タンパク質ナノポアが開口部にランダムに挿入される一部の実施形態では、平均して1個または複数の開口部を含有するクラスターは、ゼロを超える多数のタンパク質ナノポアを有し;他の実施形態では、斯かるクラスターは、0.25を超える多数のタンパク質ナノポアを有し;他の実施形態では、斯かるクラスターは、0.5を超える多数のタンパク質ナノポアを有し;他の実施形態では、斯かるクラスターは、0.75を超える多数のタンパク質ナノポアを有し;他の実施形態では、斯かるクラスターは、1.0を超える多数のタンパク質ナノポアを有する。
一部の実施形態では、本発明の方法およびデバイスは、第1のチャンバおよび第2のチャンバ(「シスチャンバ」および「トランスチャンバ」と称される場合もある)の間に連通を提供し、第2のまたはトランスチャンバに面する表面に脂質二重層を支持する、それを通る開口部のアレイを有するSiN膜等の固相膜を含む。一部の実施形態では、斯かる固相膜における開口部の直径は、10〜200nmの範囲内または20〜100nmの範囲内であってもよい。一部の実施形態では、斯かる固相膜は、斯かる二重層が、トランスチャンバに面する表面における開口部に及ぶ領域において脂質二重層に挿入されたタンパク質ナノポアをさらに含む。一部の実施形態では、斯かるタンパク質ナノポアは、本明細書に記載されている技法を使用して、固相膜のシス側から挿入される。一部の実施形態では、斯かるタンパク質ナノポアは、軸に沿ってバレルまたは穿孔を、一端に「キャップ」構造を、そして他端に「ステム」構造を含むという点において、α−ヘモリジンと同一または同様の構造を有する(Songら、Science、274巻:1859〜1866頁(1996年)の用語法を使用)。一部の実施形態では、斯かるタンパク質ナノポアを使用すると、脂質二重層への挿入は、そのキャップ構造がシスチャンバに曝露され、そのステム構造がトランスチャンバに曝露されるように配向されたタンパク質ナノポアをもたらす。
一部の実施形態では、例えば、参照により本明細書に組み込むBayleyら、米国特許出願公開第2014/0356289号;Huangら、Nature Nanotechnology、10.1038/nnano.2015.189.[印刷に先立つEpub公開];または同様の参考文献に開示されている通り、本発明の方法およびデバイスは、単一の液滴または液滴のアレイのいずれかとして、液滴界面二重層を含む。簡潔に説明すると、タンパク質ナノポア(1.2nM)は、200〜350nl液滴(例えば、1.32M KCl、8.8mM HEPES、0.4mM EDTA、pH7.0(αHL)または8.0(MspA))中に置かれ、例えば、ヘキサデカン中の3mM 1,2−ジフタノイル(diphytanoyl)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPhPC)中でインキュベートされて、脂質単層コーティングを形成する。次に、液滴は、ピペッティングによって、例えば、分析物移動のための電圧の印加、そして例えばTIRFによる光学的検出を可能にする測定チャンバ内のカバーガラス上に移されてよい。カバーガラスは、薄層(ほぼ200nm)のアガロース(0.66M CaCl2、8.8mM HEPES、pH7.0(αHL)/8.0(MspA))でスピンコーティングされて(3,000r.p.m.、30秒)、その後、ヘキサデカン中3mM DPhPCと共にインキュベートされてよい。アガロースにおける単層との接触の際に、脂質コーティングされた液滴は、液滴界面二重層を自発的に形成する。接地電極(Ag/AgCl)は、基板アガロースにおける対応する活性電極(Ag/AgCl)により液滴に挿入されてよい。パッチクランプ増幅器(例えば、Axopatch 200B、Molecular Devices)により電圧プロトコールが印加されてよい。液滴中に存在するナノポアは、液滴界面二重層に自発的に挿入し、イオンフラックスが、電気的におよび/または光学的に(例えば、Fluo−8その他等、イオン感受性色素として)の両方で検出され得る。
一部の実施形態では、本発明は、特に、ポリヌクレオチドの光学に基づくナノポア配列決定のために、クラスターにおけるハイブリッドナノポアを用いることができる。斯かるナノポアは、タンパク質ナノポア等のタンパク質バイオセンサが安定的に挿入された、固体状態オリフィスまたは開口部を含む。荷電ポリマーは、従来のタンパク質工学技法によってタンパク質ナノポア(例えば、アルファヘモリジン)に付着することができ、その後、印加された電界を使用して、固体状態膜における開口部にタンパク質ナノポアをガイドすることができる。一部の実施形態では、固体状態基板における開口部は、タンパク質よりも僅かに小さくなるように選択され、これにより、これが開口部を通して移動することを防止する。その代わりに、タンパク質は、固体状態オリフィスに包埋され得る。
一部の実施形態では、ドナーフルオロフォアは、タンパク質ナノポアに付着される。次に、この複合体は、タンパク質ナノポアが固体状態ナノホールに輸送されてハイブリッドナノポアを形成するまで、固体状態ナノホールまたは開口部を横切って電界を印加することにより、固体状態開口部またはナノホール(例えば、3〜10nmの直径)に挿入される。ハイブリッドナノポアの形成は、(a)固体状態ナノホールの部分的遮断に基づく電流の降下を引き起こす挿入されたタンパク質ナノポア、および(b)ドナーフルオロフォアの光学的検出によって検証することができる。
固体状態または合成のナノポアは、上に引用されている参考文献において例証される通り、種々の仕方で調製することができる。一部の実施形態では、ヘリウムイオン顕微鏡を使用して、例えば、参照により本明細書に組み込むYangら、Nanotechnolgy、22巻:285310頁(2011年)によって開示される通り、種々の材料における合成ナノポアを穿孔することができる。独立した膜となるように加工された薄膜材料、例えば、窒化ケイ素の1個または複数の領域を支持するチップが、ヘリウムイオン顕微鏡(HIM)チャンバに導入される。顕微鏡は、低拡大率のために設定されつつ、HIMモーター制御が使用されて、イオンビームの通路内に独立した膜を届ける。焦点および非点収差(stigmation)を含むビームパラメータが、独立した膜に隣接する領域において、ただし、固体基板上で調整される。パラメータが妥当に固定されたら、独立した膜領域がイオンビーム走査領域の中央に置かれ、ビームがブランクにされるように、チップ位置が移動される。HIM視野は、予期されるナノポアパターン全体を含有するのに十分であり、将来的な光学的読み取りにおいて有用となるのに十分な(すなわち、光学的拡大率、カメラ分解能等に依存する)寸法(μm単位の)に設定される。次に、イオンビームは、ピクセル滞留時間において視野全体にわたって1回ラスターされ、これは、膜自己蛍光の全てまたは大部分の除去に十分な総イオン線量をもたらす。次に、視野は、単一のナノポアまたはナノポアのアレイのいずれかのリソグラフィーにより画定されたミリングの実行に妥当な値(上で使用されるものよりも小さい)に設定される。パターンのピクセル滞留時間は、試料加工に先立つ較正試料の使用により決定される、1個または複数の予め決定された直径のナノポアをもたらすように設定される。このプロセス全体は、単一のチップにおける所望の領域毎に、および/またはHIMチャンバ内に導入されたチップ毎に反復される。
一部の実施形態では、ナノポアは、光学に基づくナノポア配列決定方法における使用のために付着された1個または複数の標識を有することができる。標識は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)ペアのメンバーであってもよい。斯かる標識は、有機フルオロフォア、化学発光標識、量子ドット、金属性ナノ粒子および/または蛍光タンパク質を含むことができる。標的核酸は、ヌクレオチドにつき1個の別個の標識を有することができる。ヌクレオチドに付着された標識は、有機フルオロフォアからなる群から選択され得る。ポアタンパク質における標識付着部位は、従来のタンパク質工学方法によって生成することができ、例えば、標識の特異的結合を可能にする突然変異体タンパク質を構築することができる。例として、タンパク質の所望の位置にシステイン残基を挿入することができ、これは、標識の付着に使用することができるチオール(SH)基を挿入する。システインは、天然に存在するアミノ酸を置き換えてもよく、または追加のアミノ酸として取り込まれてもよい。次に、マレイミド活性化標識は、タンパク質ナノポアのチオール残基に共有結合により付着される。好まれる実施形態では、タンパク質ナノポアへの標識の付着または核酸における標識は、可逆的である。切断可能クロスリンカーを実行することにより、容易に破壊できる化学結合(例えば、S−S結合またはpHに不安定な結合)が導入され、対応する条件が満たされたときに、標識を除去することができる。
一部の実施形態では、ナノポアアレイは、1個または複数の遮光層、すなわち、1個または複数の不透明層を含む。典型的には、ナノポアアレイは、ケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウムその他等の材料の薄いシートにおいて製作され、これは特に、使用される厚さ、例えば、50〜100nm未満の厚さでは光を容易に透過する。分析物の電気的検出のため、これは問題とならない。しかし、ナノポアを移動する標識された分子の光学に基づく検出において、アレイを透過する光は、意図される反応部位の外側で材料を一定に励起し、これにより、例えば、非特異的バックグラウンド蛍光、ナノポアに未だ進入していない分子の標識由来の蛍光その他から光学的ノイズを生成する。一部の実施形態では、励起ビームからの光を反射および/または吸収する1個または複数の遮光層をナノポアアレイに与え、これにより、アレイのナノポア(例えば、トランスチャンバへのナノポア出口またはナノポアオリフィス開口における)に関連する意図される反応部位において生成された光学的シグナルのバックグラウンドノイズを低下させることにより、この問題に取り組むことができる。一部の実施形態では、これは、意図される反応部位における光学的標識が、直接的照射によって励起されることを可能にする。一部の実施形態では、不透明層は、金属層であってもよい。斯かる金属層は、Sn、Al、V、Ti、Ni、Mo、Ta、W、Au、AgまたはCuを含むことができる。一部の実施形態では、斯かる金属層は、Al、Au、AgまたはCuを含むことができる。さらに他の実施形態では、斯かる金属層は、アルミニウムもしくは金を含むことができるか、またはアルミニウムを唯一含むことができる。不透明層の厚さは、広く変動することができ、層を構成する材料の物理的および化学的特性に依存する。一部の実施形態では、不透明層の厚さは、少なくとも5nmまたは少なくとも10nmまたは少なくとも40nmであってもよい。他の実施形態では、不透明層の厚さは、5〜100nmの範囲内であってもよい;他の実施形態では、不透明層の厚さは、10〜80nmの範囲内であってもよい。不透明層は、励起ビームからの光の100パーセントを遮断(すなわち、反射または吸収)する必要はない。一部の実施形態では、不透明層は、励起ビームからの入射光の少なくとも10パーセントを遮断することができ;他の実施形態では、不透明層は、励起ビームからの入射光の少なくとも50パーセントを遮断することができる。
不透明層またはコーティングは、本技術分野で公知の種々の技法によって固体状態膜に製作することができる。化学的蒸着、電着、エピタキシー、熱酸化、蒸発およびスパッタリングを含む物理的蒸着、鋳造その他を含む、材料沈着技法を使用することができる。一部の実施形態では、原子層堆積を使用することができ、例えば、参照により組み込む、米国特許第6,464,842号;Weiら、Small、6巻(13号):1406〜1414頁(2010年)を参照。
ナノポアおよび分析物のための標識
一部の実施形態では、ナノポアは、1種または複数の量子ドットで標識することができる。特に、一部の実施形態では、1種または複数の量子ドットは、ナノポアに付着することができる、またはナノポアに隣接する(およびナノポアの入口または出口のFRET距離内の)固相支持体体に付着することができ、分析物におけるアクセプターとのFRET反応におけるドナーとして用いられる。量子ドットの斯かる使用は、周知であり、参照により本明細書に組み込む、米国特許第6,252,303号;同第6,855,551号;同第7,235,361号;その他等、科学および特許文献に広く記載されている。
ポア標識として利用され得る量子ドットの一例は、水溶液において合成され得るCdTe量子ドットである。CdTe量子ドットは、一級アミン、チオール等の求核基またはカルボン酸等の官能基を官能化され得る。CdTe量子ドットは、タンパク質ポアの外部における一級アミンへの量子ドットの共有結合による連結に利用され得るカルボン酸官能基を有するメルカプトプロピオン酸キャッピングリガンドを含むことができる。架橋反応は、バイオコンジュゲーション技術分野の当業者に公知の標準架橋試薬(ホモ二官能性およびヘテロ二官能性)を使用して達成することができる。改変が、ナノポアを通した核酸の移動を損なわないか、または実質的に損なわないことを確実にするためには注意を要する。これは、ナノポアへのドナー標識の付着に使用される、用いられているクロスリンカー分子の長さを変動させることにより達成することができる。
例えば、天然アルファヘモリジンタンパク質のリシン残基131の一級アミン(Song, L.ら、Science 274巻(1996年):1859〜1866頁)を使用して、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩/N−ヒドロキシスルホサクシニミド(EDC/NHS)カップリング化学により、カルボキシ改変CdTe量子ドットを共有結合により結合することができる。あるいは、アミノ酸129(スレオニン)を、システインへと交換することができる。天然アルファヘモリジンタンパク質には他のシステイン残基が存在しないため、新たに挿入されたシステインのチオール側鎖を使用して、他の化学部分を共有結合により付着することができる。
生物学的ポリマー、例えば、核酸分子またはポリマーは、1種または複数のアクセプター標識で標識することができる。核酸分子のため、核酸分子の4種のヌクレオチドまたは構成要素のそれぞれをアクセプター標識で標識し、これにより、各天然に存在するヌクレオチドに対する標識された(例えば、蛍光)対応物を作製することができる。アクセプター標識は、変換された核酸の部分または鎖全体における1個または複数のヌクレオチドに付着することができる、エネルギー受容分子の形態であってもよい。
種々の方法を利用して、核酸分子またはポリマーのモノマーまたはヌクレオチドを標識することができる。標識されたヌクレオチドは、鋳型として当初の試料を使用した新たな核酸の合成の際に核酸に取り込むことができる(「合成による標識」)。例えば、核酸の標識は、PCR、全ゲノム増幅、ローリングサークル増幅、プライマー伸長その他により、または当業者に公知の上述の方法の様々な組合せおよび拡張により達成することができる。
標識は、求核剤(アミン、チオール等)等の反応基を含むことができる。次に、天然の核酸には存在しない斯かる求核剤を使用して、NHSエステル、マレイミド、エポキシ環、イソシアネート等、アミンまたはチオール反応性化学により蛍光標識を付着することができる。斯かる求核剤反応性蛍光色素(すなわち、NHS−色素)は、異なる市販の供給源から容易に商業的に入手することができる。小さな求核剤で核酸を標識する利点は、「合成による標識」アプローチが使用される際の、斯かる標識されたヌクレオチドの取り込みの高い効率にある。かさばる蛍光標識された核酸構成要素は、新たに合成されたDNAへの重合プロセスの際の標識の立体障害のために、ポリメラーゼによる取り込みが不十分な場合がある。
2種またはそれよりも多い相互にクエンチする色素が使用される場合は常に、斯かる色素は、直交性付着化学を使用してDNAに付着することができる。例えば、NHSエステルを使用して、一級アミンと非常に特異的に反応させることができるか、またはマレイミドは、チオール基と反応し得る。一級アミン(NH2)またはチオール(SH)改変ヌクレオチドのどちらも市販されている。これらの相対的に小さい改変は、ポリメラーゼ媒介性DNA合成において容易に取り込まれ、NHSまたはマレイミド改変色素のいずれかを使用して、その後の標識反応に使用することができる。斯かる直交性リンカー化学を選択および使用するためのガイダンスは、Hermanson(上に引用)に見出すことができる。
典型的な付着位置のための追加的な直交性付着化学は、銅触媒反応および無触媒反応のためのヒュスゲン型環化付加;例えば、Gutsmiedlら、Org. Lett.、11巻:2405〜2408頁(2009年)に開示されているアルケンプラスニトリル酸化物環化付加;例えば、Seeligら、Tetrahedron Lett.、38巻:7729〜7732頁(1997年)に開示されているディールスアルダー環化付加;例えば、Casiら、J. Am. Chem. Soc.、134巻:5887〜5892頁(2012年);Shaoら、J. Am. Chem. Soc.、117巻:3893〜3899頁(1995年);Rideout、Science、233巻:561〜563頁(1986年)に開示されているカルボニルライゲーション;例えば、Brinkley、Bioconjugate Chemistry、3巻:2〜13頁(1992年)に開示されているマイケル付加;例えば、Schulerら、Bioconjugate Chemistry、13巻:1039〜1043頁(2002年);Dawsonら、Science、266巻:776〜779頁(1994年)に開示されているネイティブ化学的ライゲーション;または例えば、Hermanson(上に引用)に開示されている活性エステルを介したアミド形成を含む。
核酸鎖における1、2、3または4種のヌクレオチドの組合せは、その標識された対応物と交換することができる。標識されたヌクレオチドの様々な組合せは、並行して配列決定することができ、例えば、供給源核酸またはDNAを、4種の単一の標識された試料に加えて2種の標識されたヌクレオチドの組合せで標識すると、総計10種の異なって標識された試料核酸分子またはDNA(G、A、T、C、GA、GT、GC、AT、AC、TC)をもたらし得る。その結果得られる配列パターンは、冗長配列読み取りにおける重複するヌクレオチド位置に起因して、より的確な配列整列を可能にする場合がある。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド等、ポリマーは、単一の種類のモノマーに付着された単一の蛍光標識で標識することができ、例えば、ポリヌクレオチドの全T(または実質的に全T)は、蛍光標識、例えば、シアニン色素で標識される。斯かる実施形態では、ポリマー由来の蛍光シグナルの収集物または配列は、特定のポリマーのシグネチャーまたはフィンガープリントを形成することができる。一部の斯かる実施形態では、斯かるフィンガープリントは、決定されるべきモノマーの配列に十分な情報を提供しても提供しなくてもよい。
一部の実施形態では、本発明の特色は、相互にクエンチするセットのメンバーである蛍光色素または標識による、ポリマー分析物の実質的にあらゆるモノマーの標識である。ポリマー分析物の標識を参照した用語「実質的にあらゆる」の使用は、化学的および酵素的標識技法が、典型的に、100パーセント未満の効率であることを了承する。一部の実施形態では、「実質的にあらゆる」は、あらゆるモノマーの少なくとも80パーセントが蛍光標識を付着されていることを意味する。他の実施形態では、「実質的にあらゆる」は、あらゆるモノマーの少なくとも90パーセントが蛍光標識を付着されていることを意味する。他の実施形態では、「実質的にあらゆる」は、あらゆるモノマーの少なくとも95パーセントが蛍光標識を付着されていることを意味する。
核酸分子等、ポリマーを配列決定するための方法は、膜または膜様構造または他の基板に挿入されたナノポアまたはポアタンパク質(または合成ポア)を提供するステップを含む。ポアの底部または他の部分は、1種または複数のポア標識で改変されていてよい。底部は、ポアのトランス側を指すことができる。任意選択で、ポアのシスおよび/またはトランス側は、1種または複数のポア標識で改変されていてよい。分析または配列決定されるべき核酸ポリマーは、その結果得られるポリマーにおける4種のヌクレオチドのうち1種または最大全4種のヌクレオチドが、ヌクレオチドの標識アナログ(単数または複数)に置き換えられた、標識されたバージョンの核酸ポリマーを産生するための鋳型として使用することができる。電界がナノポアに印加され、これにより、標識された核酸ポリマーがナノポアを通るように押し進められつつ、外部の単色または他の光源を使用してナノポアを照射し、これにより、ポア標識を励起することができる。核酸の標識されたヌクレオチドが、ナノポアを通過、退出または進入する際に、その後にまたはその前に、エネルギーは、ポア標識からヌクレオチド標識に移動され、これにより、より低いエネルギー放射の放出がもたらされる。次に、ヌクレオチド標識放射が、当業者に公知の単一分子検出が可能な、共焦点顕微鏡装置または他の光学的検出システムもしくは光学顕微鏡システムによって検出される。斯かる検出システムの例として、共焦点顕微鏡、落射蛍光顕微鏡および全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記載されている方法に従って、標識されたモノマーを有する他のポリマー(例えば、タンパク質、および核酸以外のポリマー)を配列決定することもできる。一部の実施形態では、蛍光標識またはドナー分子は、TIRFシステムにおいてエバネセント波により励起され、これは本明細書において、「エバネセント波励起」と称されることがある。
標識されたモノマーが、ナノポアを退出、進入または通過する際に、その後にまたはその前に、ポリマーのアクセプター標識されたモノマー(例えば、ヌクレオチド)のアクセプター標識が、ドナー標識と相互作用すると、エネルギーは、ポアまたはナノポアドナー標識(例えば、量子ドット)からポリマー(例えば、核酸)におけるアクセプター標識へと移動され得る。例えば、標識されたモノマーがナノポアを退出し、ナノポアチャネルまたは開口の外側のドナー標識の近傍または近接に来るまで、ドナー標識およびアクセプター標識の間の相互作用またはエネルギー移動が起こらないように、ドナー標識は、シスもしくはトランス側におけるナノポアまたはナノポアの表面に位置付けるか、またはこれに付着することができる。結果として、標識間の相互作用、ドナー標識からアクセプター標識へのエネルギー移動、アクセプター標識からのエネルギーの放出、および/またはアクセプター標識からのエネルギーの放出の測定もしくは検出は、ナノポアを通って生じる通過、チャネルまたは開口の外側で、例えば、ナノポアのシスまたはトランス側におけるシスまたはトランスチャンバ内で起こることがある。モノマーのアクセプター標識から放出されたエネルギーの測定または検出を利用して、モノマーを識別することができる。
標識が可視化または露出されて、標識の励起または照射を容易にするように、ナノポア標識は、ナノポアの通路、チャネルまたは開口の外側に位置することができる。ドナー標識およびアクセプター標識間の相互作用およびエネルギー移動、ならびにエネルギー移動の結果としてのアクセプター標識からのエネルギーの放出は、ナノポアの通路、チャネルまたは開口の外側で起こることができる。これは、例えば、光学的検出または測定デバイスによる、アクセプター標識からのエネルギーまたは光放出の検出または測定の容易さおよび精度を容易にすることができる。
ドナー標識は、様々な様式でおよび/またはナノポアの様々な部位に付着することができる。例えば、ドナー標識は、ナノポアの部分または単位に直接的にまたは間接的に付着または接続することができる。あるいは、ドナー標識は、ナノポアに隣接して位置することができる。
ポリマー(例えば、核酸)の各アクセプターが標識されたモノマー(例えば、ヌクレオチド)は、それを通ってポリマーが移動されるナノポアまたはチャネルの出口に位置するか、またはその隣のまたはこれに直接的もしくは間接的に付着された、ドナー標識と逐次に相互作用することができる。例えば、アクセプターが標識されたモノマーがナノポアを退出した後に、またはモノマーがナノポアに進入する前に、ドナーおよびアクセプター標識の間の相互作用は、ナノポアチャネルまたは開口の外側で起こることができる。例えば、アクセプターが標識されたモノマーがナノポアを通過、進入または退出している間に、相互作用は、ナノポアチャネルまたは開口の中でまたは部分的にその中で起こることができる。
核酸の4種のヌクレオチドのうち1種が標識される場合、単一のヌクレオチド標識放出から生じる時間依存性シグナルは、核酸配列における標識されたヌクレオチドの位置に対応する配列に変換される。次に、別々の試料において4種のヌクレオチドのそれぞれについて、このプロセスが反復され、次いで4種の部分的配列が整列されて、核酸配列全体をアセンブルする。
多色標識された核酸(DNA)配列が分析される場合、1個または複数のドナー標識から、核酸分子に存在し得る4種の別個のアクセプター標識のそれぞれへのエネルギー移動は、4種の別個の波長または色(それぞれ、4種のヌクレオチドのうちの1種に関連付けられる)での光放出をもたらすことができ、これは、直接的配列読み取りを可能にする。
ドナー標識(本明細書において、「ポア標識」と称されることもある)は、ナノポアを通した核酸の移動を損なう閉塞を引き起こすことなく、ナノポアの開口部(例えば、出口)に可能な限り近くに置くことができる。ポア標識は、種々の適した特性および/または特徴を有することができる。例えば、ポア標識は、特定の要件を満たすエネルギー吸収特性を有することができる。ポア標識は、例えば、約0〜1000nmまたは約200〜500nmに及ぶ、大きい放射エネルギー吸収断面を有することができる。ポア標識は、アクセプター標識等、核酸標識のエネルギー吸収よりも高い特異的エネルギー範囲内の放射を吸収することができる。2種の標識の間でエネルギー移動が発生し得る距離を制御するために、ポア標識の吸収エネルギーは、核酸標識の吸収エネルギーに対して調整することができる。ポア標識は、少なくとも106〜109回の励起およびエネルギー移動サイクルの間、安定的かつ機能的であってもよい。
一部の実施形態では、モノマーの配列に付着された光学的標識をそれぞれ有するポリマーを分析するためのデバイスは、次の要素を含むことができる:(a)第1のチャンバおよび第2のチャンバを分離する固相膜におけるナノポアアレイであって、ナノポアアレイのナノポアがそれぞれ、第1のチャンバおよび第2のチャンバの間に流体連通をもたらし、ナノポアの各異なるクラスターが異なる分解能限界区域内に配置されるように、また、各クラスターが、1を超える、またはゼロを超える平均値を有するランダム変数である多数のナノポアを含むように、クラスターに配置される、ナノポアアレイ;(b)ナノポアアレイのナノポアを通して、第1のチャンバにおけるポリマーを第2のチャンバに移動させるためのポリマー移動システム;ならびに(c)光学的標識が分解能限界区域内のナノポアを退出するときは常に、ポリマーに付着された光学的標識によって生成される光学的シグナルを収集するための検出システム。
二色配列決定
一部の実施形態では、本発明は、二色の光学に基づくナノポア配列決定において使用される。光学に基づくナノポア配列決定は、異なる光学的標識で標識された僅か2種の異なる種類のヌクレオチドを用いて実行することができる。斯かるアプローチにおいて、2種の光学的標識は、標的ポリヌクレオチドのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方において、選択された種類のヌクレオチドに対し鑑別可能な光学的シグナルを生成する。例えば、各標的ポリヌクレオチドの相補的な鎖のCおよびTは、標識されたアナログによって置き換えることができ、CおよびTアナログの標識は、別個の光学的シグナルを生成することができる。次いで、ナノポアを通った標識された鎖の移動によって光学的シグネチャーが生成され、このナノポアにおいて、鎖のヌクレオチドは、その標識が光学的シグナルを生成する原因となる光学的検出領域を逐次に通過するように制約されている。センスおよびアンチセンス鎖の両方に由来する光学的シグネチャーからの情報が組み合わされて、標的ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する。
一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチドの選択された種類のヌクレオチドは、核酸ポリメラーゼを使用した伸長反応において、標識されたヌクレオチドアナログによって置き換えられる。標的ポリヌクレオチドの標識された鎖は、光学的検出領域を通って1列縦隊で移動するように鎖のヌクレオチドを制約するナノポアを通して移動され、この光学的検出領域において、標識された鎖は、光学的シグナルを産生できるように励起される。個々の鎖の光学的シグナルの収集物は、本明細書において、鎖の光学的シグネチャーと称される。例えば、ヘアピンアダプタを介して鎖およびその相補体(すなわち、センスおよびアンチセンス鎖)が連結された一部の実施形態では、単一の光学的シグネチャーは、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方に由来するヌクレオチドにおける光学的標識からの光学的シグナルを含むことができる。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチドの異なる鎖は、上述の通り、分析のために組み合わせることができるか、または共に使用することができる、2種の異なる光学的シグネチャーを別々に生成することができる。斯かる別々に分析された鎖は、例えば、分子タグ(これは、例えば、迅速な関連付けを可能にする、公知の位置、長さならびに配列パターンおよび多様性の、標的ポリヌクレオチドに付着されたオリゴヌクレオチドセグメントであってもよい)を使用することにより、光学的シグネチャーの生成後に関連付けることができる。光学的シグネチャーは、各検出間隔で検出されたシグナルが、分解能限界区域または容量内で放出する複数の光学的標識からの寄与を含むことができるという点において、混合された光学的シグナルを含むことができる;すなわち、これは(例えば)、参照により本明細書に組み込むHuberら、米国特許出願公開US20160076091によって記載されるような、混合されたFRETシグナルであってもよい。
一部の実施形態では、斯かる二色の光学に基づくナノポア配列決定は、次のステップにより実行することができる:(a)鎖において5’非相補的テイルを有するプライマーを伸長して、一本鎖オーバーハングとしての5’非相補的テイルを有する標識された鎖を含む二本鎖産物を産生することにより、二本鎖ポリヌクレオチドの鎖をコピーするステップであって、別個の光学的標識を有するヌクレオチドアナログが、少なくとも2種類のヌクレオチドの代わりになって、標識された鎖を形成する、ステップ;(b)鎖の相補体において5’非相補的テイルを有するプライマーを伸長して、一本鎖オーバーハングとしての5’非相補的テイルを有する標識された相補体を含む二本鎖産物を産生することにより、鎖の相補体をコピーするステップであって、別個の光学的標識を有するヌクレオチドアナログが、少なくとも2種類のヌクレオチドの代わりになって、標識された相補体を形成する、ステップ;(c)ナノポアを横切って電場を印加することにより、標識された鎖を含む二本鎖産物の5’非相補的テイルをナノポアによって捕捉するステップ;(d)標識された鎖のヌクレオチドが、毎秒1000ヌクレオチド(nt/秒)未満の速度で励起ゾーンを1列縦隊で通過できるように、標識された鎖を、ナノポアを通して移動させるステップであって、光学的標識が励起されて光学的シグナルを生成し、二本鎖産物の移動する鎖が、ナノポアに進入するにつれて開かれる、ステップ;(e)標識された鎖がナノポアを通して移動するときの光学的標識からの光学的シグナルの時系列を検出して、鎖光学的シグネチャーを産生するステップ;(f)ナノポアを横切って電場を印加することにより、標識された相補体を含む二本鎖産物の5’非相補的テイルをナノポアによって捕捉するステップ;(g)毎秒1000ヌクレオチド(nt/秒)未満の速度で、標識された相補体を、ナノポアを通して移動させるステップであって、光学的標識が励起されて光学的シグナルを生成し、二本鎖産物の移動する鎖が、ナノポアに進入するにつれて開かれる、ステップ;(h)標識された相補体がナノポアを通して移動する際に、光学的標識からの光学的シグナルの時系列を検出して、相補体光学的シグネチャーを産生するステップ;(i)鎖光学的シグネチャーおよび相補体光学的シグネチャーから、二本鎖ポリヌクレオチドの配列を決定するステップ。
一部の実施形態では、2種類のヌクレオチドが標識されて、これは、CおよびT、CおよびG、CおよびA、TおよびG、TおよびA、またはGおよびAであってもよい。一部の実施形態では、ピリミジンヌクレオチドが標識される。他の実施形態では、プリンヌクレオチドが標識される。一部の実施形態では、核酸ポリメラーゼを使用したプライマー伸長反応において、選択された種類のヌクレオチドの標識されたアナログdNTPを取り込むことにより、鎖の選択された種類のヌクレオチドが標識される。他の実施形態では、伸長反応において選択された種類のヌクレオチドのアナログdNTPを取り込むことにより、鎖の選択された種類のヌクレオチドが標識され、アナログdNTPは、その後の反応において異なる種類のヌクレオチドへの異なる標識の付着を可能にする直交反応性の官能基により誘導体化される。この後者の標識アプローチは、参照により本明細書に組み込むJettら、米国特許第5,405,747号に開示されている。
一部の実施形態では、3種類のヌクレオチドが標識され、これは、Cを第1の光学的標識で、Tを第2の光学的標識で、GおよびAを第3の光学的標識で標識することを含むことができる。他の実施形態では、次の群のヌクレオチドを、示されている通りに標識することができる:CおよびGをそれぞれ第1の光学的標識および第2の光学的標識で、TおよびAを第3の光学的標識で;CおよびAをそれぞれ第1の光学的標識および第2の光学的標識で、TおよびGを第3の光学的標識で;TおよびGをそれぞれ第1の光学的標識および第2の光学的標識で、CおよびAを第3の光学的標識で;AおよびGをそれぞれ第1の光学的標識および第2の光学的標識で、TおよびCを第3の光学的標識で標識。
一部の実施形態では、光学的標識は、ナノポアに会合したドナーからのエネルギー移動後に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)シグナルを生成する、蛍光アクセプター分子である。一部の実施形態では、さらに後述する通り、ドナーは、量子ドット、ナノダイアモンドその他等、光学的に活性なナノ粒子であってもよい。アクセプター分子およびドナーの特定の組合せの選択は、当業者の設計選択である。そのうちのいくつかについてより詳しく後述する一部の実施形態では、単一の量子ドットが、ナノポアに付着され、励起ビームを使用して蛍光を発するように励起され、この励起ビームの波長は、アクセプターによって生成されるFRETシグナルに寄与しないように、十分に分離されており、通常、より短い(すなわち、より青色である(bluer))。同様に、その放出波長が、両方のアクセプター分子の吸収バンドに重複する量子ドットが選択されて、FRET相互作用を容易にする。一部の実施形態では、ナノポアの励起ゾーン毎に2種のドナーを使用することができ、それぞれの放出波長は、アクセプター分子の異なる一方の吸収バンドに最適に重複するように選択される。
図3Aにおいて、二本鎖標的ポリヌクレオチド(300)は、センス鎖(301)および相補的アンチセンス鎖(302)からなり、これに、従来方法、例えば、参照により本明細書に組み込むWeissmanら、米国特許第6,287,825号;Schmittら、米国特許出願公開US2015/004468を使用して、「Y」アダプタ(304)および(306)がライゲートされる(303)。アダプタ(それぞれ304および306)のアーム(Arm)(308)および(310)は、プライマー(316)および(318)がアニールする(305)プライマー結合部位を含む。二本鎖部分(312)および(314)は、タグ配列を含むことができ、例えば、一方または両方が、予め決定された長さおよび組成のランダマー(randomer)を含むことができ、これを、鎖の後の再会合に使用して、例えば、鎖のそれぞれの光学的シグネチャーから配列情報を得ることができる。プライマー(316)および(318)がアニーリングした後に、(例えば、図解されている通り)標識されたdUTPアナログ(標識は、取り込まれたヌクレオチドにおける白丸として示す)および標識されたdCTPアナログ(標識は、取り込まれたヌクレオチドにおける黒丸として示す)ならびに天然の標識されていないdGTPおよびdATPの存在下、核酸ポリメラーゼによってこれらを伸長させることができる(307)(伸長された鎖においてアナログが完全に置換されるように、標識されていないdTTPも標識されていないdCTPも存在しない)。GおよびAにおける標識の非存在は、取り込まれたヌクレオチドの上のダッシュ記号として図解されている。ノイズがない理想的な検出システムにおいて、白丸、黒丸およびダッシュ記号の配列は、ナノポアの励起ゾーンを通過する際に示されているセンスおよびアンチセンス鎖によって生成された光学的シグネチャーの優れた表現であってもよい。
図3Bにおいて、3種の標識を用いる代替的な実施形態に関する、伸長産物(320)および(322)が図解されている。上述の通り、取り込まれた標識dUTPアナログを白丸として示し、取り込まれた標識dCTPアナログを黒丸として示す。取り込まれた標識dATPおよびdGTPアナログを黒菱形として示す。
標識するためのヌクレオチドの種類、標識およびこれを塩基に付着するためのリンカーの種類、ならびにdNTPアナログの存在下での伸長反応のための核酸ポリメラーゼの選択におけるガイダンスは、参照により組み込む次の参考文献に見出すことができる:Goodmanら、米国特許第5,945,312号;Jettら、米国特許第5,405,747号;Muehleggerら、米国特許出願公開US2004/0214221;Gillerら、Nucleic Acids Research、31巻(10号):2630〜2635頁(2003年);Tasaraら、Nucleic Acids Research、31巻(10号):2636〜2646頁(2003年);Augustinら、J. Biotechnology、86巻:289〜301頁(2001年);Brakmann、Current Pharmacuetical Biotechnology、5巻(1号):119〜126頁(2004年);その他。本発明による使用のための例示的な核酸ポリメラーゼとして、Vent exo−、Taq、E.coli Pol I、Tgo exo−、クレノウ断片exo−、Deep Vent exo−その他が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、例示的な核酸ポリメラーゼとして、Vent exo−およびクレノウ断片exo−が挙げられるがこれらに限定されない。dNTPアナログのための例示的な蛍光標識として、Alexa 488、AMCA、Atto 655、Cy3、Cy5、Evoblue 30、フルオレセイン、Gnothis blue 1、Gnothis blue 2、Gnothis blue 3、Dy630、Dy635、MR121、ローダミン、ローダミングリーン、オレゴングリーン(Oregon Green)、TAMRAその他が挙げられるがこれらに限定されない。dUTPアナログのための例示的な蛍光標識として、Alexa 488、AMCA、Atto 655、Cy3、Cy5、Dy630、Dy665、Evoblue 30、Evoblue 90、フルオレセイン、Gnothis blue 1、Gnothis blue 2、Gnothis blue 3、MR121、オレゴングリーン、ローダミン、ローダミングリーン、TAMRAその他が挙げられるがこれらに限定されない。dCTPアナログのための例示的な蛍光標識として、Atto 655、Cy5、Evoblue 30、Gnothis blue 3、ローダミン、ローダミングリーン、TAMRAその他が挙げられるがこれらに限定されない。dATPアナログのための例示的な蛍光標識として、Atto 655、Cy5、Evoblue 30、Gnothis blue 3、ローダミングリーンその他が挙げられるがこれらに限定されない。dGTPアナログのための例示的な蛍光標識として、Evoblue 30、Gnothis blue 3、ローダミングリーンその他が挙げられるがこれらに限定されない。dUTPアナログおよびdCTPアナログのための蛍光標識の例示的なペアとして、(TAMRA、ローダミングリーン)、(Atto 655、Evoblue 30)、(Evoblue 30、Atto 655)、(Evoblue 30、Gnothis blue 3)、(Evoblue 30、ローダミングリーン)、(Gnothis blue 1、ローダミングリーン)、(Gnothis blue 2、Atto 655)、(Gnothis blue 3、Cy5)その他が挙げられるがこれらに限定されない。
図3Cは、例えば、参照により本明細書に組み込む米国特許出願公開US2015/0152492およびUS2012/0058468に教示されている通り、2種の標識が使用され、ヘアピンアダプタ(330)を用いてセンスおよびアンチセンス鎖が連結される実施形態を図解する。テイルアダプタ(332)およびヘアピンアダプタ(330)は、標的ポリヌクレオチド(300)にライゲートされる。変性およびプライマー(334)のアニーリング後に、伸長反応は、鎖(301)の標識された相補体であるセグメント(336)と、鎖(301)の標識された逆相補体であるセグメント(338)とを含む伸長産物(335)を産生する。ナノポアを通した伸長産物(335)の移動および光学的シグネチャーの生成後に、標的ポリヌクレオチド(300)の配列を決定することができる。任意選択で、ヘアピン(330)の配列は、伸長反応において標識の予め決定されたパターンが取り込まれるように選択することができ、これは、例えば、セグメント(336)が終わる場所およびセグメント(338)が始まる場所その他を示すことにより、光学的シグネチャーの分析に役立つように使用することができる。
光学に基づくナノポア配列決定方法における標的ポリヌクレオチドの移動
本実施例において、本発明は、例示的な光学に基づくナノポア配列決定方法と併せて使用される。例示的な光学に基づくナノポア配列決定方法において、標的ポリヌクレオチドのヌクレオチドは、少なくとも3種の状態が可能な蛍光標識で標識される:(i)付着された蛍光標識の蛍光が、直接隣接するヌクレオチドにおける蛍光標識によってクエンチされる、クエンチされた状態;例えば、標識されたポリヌクレオチドが水溶液中で自由であると、ポリヌクレオチドに付着された蛍光標識は、クエンチされる。(ii)付着された蛍光標識の自由溶液移動または整列が撹乱または限定されて、蛍光標識からの検出可能シグナルがほとんどまたは全く生成されないように、標識されたポリヌクレオチドが、ナノポアを通って移動している、立体的に制約された状態。(iii)ポリヌクレオチドがナノポアを通って移動する際に蛍光標識がナノポアを退出するにつれて(「遷移間隔」において)、ポリヌクレオチドに付着された蛍光標識が、立体的に制約された状態からクエンチされた状態へと遷移する、遷移状態。ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチドがナノポアを移動する際に、一度に1つずつナノポアを退出するにつれて、付着された蛍光標識によって生成されたシグナルを記録することにより決定される。退出の際に、各付着された蛍光標識は、ナノポア中における制約された状態から自由溶液中のポリヌクレオチドにおけるクエンチされた状態へと、遷移間隔の間に遷移する。この遷移間隔の間に、蛍光標識は、これが付着されたヌクレオチドを示す検出可能蛍光シグナルを放出することができる。
一部の実施形態では、本発明は、次のステップを使用した斯かるナノポア配列決定方法とともに使用することができる:(a)反応混合物中の鋳型上で5’非相補的テイルを有するプライマーを伸長するステップであって、伸長された鎖および一本鎖オーバーハングとしての5’非相補的テイルを含む二本鎖産物を産生するステップ;(b)第1のチャンバおよび第2のチャンバを分離し、それらの間に流体連通を提供する、ナノポア(またはナノポアのアレイ)を提供するステップであって、ナノポアが、一本鎖核酸を通過させることができるが、二本鎖核酸を通過させることはできない、ステップ;(c)第1のチャンバに二本鎖産物を配置するステップ;(d)ナノポアを横切って電場を印加することにより、単離された二本鎖産物の5’非相補的テイルをナノポアによって捕捉するステップ;(e)穿孔および出口を有するナノポアを通してポリマー分析物を移動させるステップであって、ポリマー分析物が、モノマーの配列を含み、隣接するモノマーの蛍光標識が、ナノポアの外側では、互いに自己クエンチすることによりクエンチされた状態であり、蛍光標識が、ナノポアの内側では、立体的に制約された状態であり、検出可能蛍光シグナルを生成できないように、実質的に各モノマーが、蛍光標識で標識されているステップ;(f)それが付着されたモノマーを示す蛍光シグナルが生成されるように、立体的に制約された状態からクエンチされた状態へと遷移する際に、ナノポアの出口において各蛍光標識を励起する、ステップ;(g)蛍光シグナルを検出して、モノマーを識別するステップ。本明細書において、モノマー、特に、ヌクレオチドの標識を参照した「実質的に全ての」、「実質的にあらゆる」または同様の用語は、化学的標識手順が、全モノマーの完全標識をもたらさない場合があることを了承する;実行可能な程度まで、この用語は、本発明に関連した標識反応が、完了まで続けられることを包含する;一部の実施形態では、斯かる完了された標識反応は、モノマーの少なくとも50パーセントの標識を含み;他の実施形態では、斯かる標識反応は、モノマーの少なくとも80パーセントの標識を含み;他の実施形態では、斯かる標識反応は、モノマーの少なくとも95パーセントの標識を含み;他の実施形態では、斯かる標識反応は、モノマーの少なくとも99パーセントの標識を含む。
一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、4種の別々の反応を行うことにより決定され、この反応において、標的ポリヌクレオチドのコピーは、単一の蛍光標識で標識された、その4つの異なる種類のヌクレオチド(A、C、GおよびT)のそれぞれを有する。斯かる実施形態のバリアントでは、標的ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、4種の別々の反応を行うことにより決定され、この反応において、標的ポリヌクレオチドのコピーは、1種の蛍光標識で標識された、その4つの異なる種類のヌクレオチド(A、C、GおよびT)のそれぞれを有するが、同時に、同じ標的ポリヌクレオチドにおける他のヌクレオチドは、第2の蛍光標識で標識されている。例えば、第1の蛍光標識が、第1の反応において標的ポリヌクレオチドのAに付着される場合、第2の蛍光標識は、第1の反応において標的ポリヌクレオチドのC、GおよびT(すなわち、「非A」ヌクレオチド)に付着される。同様に、この例を続けると、第2の反応において、第1の標識は、標的ポリヌクレオチドのCに付着され、第2の蛍光標識は、標的ポリヌクレオチドのA、GおよびT(すなわち、「非C」ヌクレオチド)に付着される。ヌクレオチドGおよびTについても、同様である。
同じ標識スキームは、ヌクレオチド型のサブセットに関する従来の用語法の観点から表現することができる;よって、上述の例では、第1の反応において、第1の蛍光標識は、Aに付着され、第2の蛍光標識は、Bに付着される;第2の反応において、第1の蛍光標識は、Cに付着され、第2の蛍光標識は、Dに付着される;第3の反応において、第1の蛍光標識は、Gに付着され、第2の蛍光標識は、Hに付着される;第4の反応において、第1の蛍光標識は、Tに付着され、第2の蛍光標識は、Vに付着される。
一部の実施形態では、配列決定方法の特色は、相互にクエンチするセットのメンバーである蛍光色素または標識による、ポリマー分析物の実質的にすべてのモノマーの標識である。蛍光色素の斯かるセットは、次の特性を有する:(i)各メンバーは、全メンバーの蛍光をクエンチする(例えば、FRETまたは静的もしくは接触機構によって)、および(ii)各メンバーは、励起され、非クエンチ状態であると、別個の蛍光シグナルを生成する。すなわち、相互にクエンチするセットが、2種の色素、D1およびD2からなる場合、(i)D1は、自己クエンチされ(例えば、別のD1分子との接触クエンチにより)、それは、D2によってクエンチされ(例えば、接触クエンチにより)、(ii)D2は、自己クエンチされ(例えば、別のD2分子との接触クエンチにより)、それは、D1によってクエンチされる(例えば、接触クエンチにより)。相互にクエンチするセットのための蛍光色素または標識を選択するためのガイダンスは、参照により本明細書に組み込む次の参考文献に見出すことができる:Johansson、Methods in Molecular Biology、335巻:17〜29頁(2006年);Marrasら、Nucleic Acids Research、30巻:e122頁(2002年);その他。蛍光色素または標識の例示的な相互にクエンチするセットは、ローダミン色素、フルオレセイン色素およびシアニン色素から選択することができる。一実施形態では、相互にクエンチするセットは、ローダミン色素、TAMRAおよびフルオレセイン色素、FAMを含むことができる。別の実施形態では、蛍光色素の相互にクエンチするセットは、オレゴングリーン488、フルオレセイン−EX、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンRed−X、リサミンローダミンB、カルセイン、フルオレセイン、ローダミン、1種または複数のBODIPY色素、テキサスレッド、オレゴングリーン514、および1種または複数のAlexa Fluorからなる群から2種またはそれよりも多い色素を選択することにより形成することができる。代表的なBODIPY色素は、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY 581/591、BODIPY TR、BODIPY 630/650およびBODIPY 650/665を含む。代表的なAlexa Fluorは、Alexa Fluor 350、405、430、488、500、514、532、546、555、568、594、610、633、635、647、660、680、700、750および790を含む。
上述の方法の一部の実施形態では、蛍光標識は、FRETペアのメンバーである。FRETペアは一般に、1種または複数のFRETドナーおよび1種または複数のFRETアクセプターであり、各ドナーは、各アクセプターとのFRET反応が可能である。一態様では、これは、FRETペアのドナーが、アクセプターの吸収スペクトルと実質的に重複する放出スペクトルを有することを意味する。別の態様では、ドナーおよびアクセプターの遷移双極子は、効率的なエネルギー移動を可能にする仕方で整列される必要がある。一部の態様では、本発明は、部分的に、ナノポアの蛍光、特にFRET抑制特性、およびナノポアを通して移動する標識されたポリマーの検出を可能にするこの特性の用途の発見および認識に基づく。本発明は、これによって限定されることを意図しないが、FRETペア標識が、ナノポアを通って移動しながら、FRET相互作用に携わるように配向できないような寸法の穿孔によりナノポアを選択することができると考えられる。ナノポアの穿孔におけるポリヌクレオチド(polynucleoide)の標識の双極子は、ナノポアの限定された直径に基づき、それらの回転自由が制約される。ナノポアに付着された対応するFRETペアの整列による双極子整列のこのような低下は、FRET効率を劇的に限定する。標識されたポリヌクレオチドは、ナノポア退出後にFRET相互作用に携わることができ、この時点で、ポリマー(例えば、ポリヌクレオチド)におけるFRETアクセプターまたはドナーは、FRET事象を可能にする回転自由を回復する。
上述の方法の上述の態様および実施形態の一部は、図4において図表を用いて説明されている。ポリヌクレオチド等、ポリマー分析物(4000)は、ナノポア(4002)によって捕捉され、次いでこれを通るよう例えば電気泳動的に駆動され、これにより、そのモノマー単位が、ポリマーにおけるその一次配列と同じ順序で、ナノポアを通して移動するように、ポリマー(4000)の立体構造が制約される。図4において、蛍光標識は、FRETペアのメンバーであると仮定される;蛍光標識は、例えば、適切な波長で放出するレーザーにより直接的に励起されて、蛍光シグナルを生成する蛍光標識を含むこともできる。
上述の通り、アクセプター標識されたモノマー単位が、ナノポア(4002)の穿孔内にあるときは常に、斯かるアクセプターおよびそのFRETペアのドナーの間のFRET相互作用は、アクセプターが制約された状態(4014)であるため抑制される。斯かる抑制は典型的に、例えば、アクセプターおよびドナー双極子の好ましくない配向性により、斯かるアクセプターがドナーのFRET距離内にあったとしても、検出可能FRETシグナルが産生されないことを意味する。他方では、アクセプター標識されたモノマー単位が、ナノポアの穿孔から遷移ゾーン(4008)へと出現するまたは退出するときに、FRET相互作用(4010)が発生し、FRET放出(4016)が産生され、アクセプターが、隣接するアクセプターとの自己クエンチ状態(4011)に入るまで、また、FRET相互作用距離から抜け出るポリマー(4000)の移動に伴いアクセプターおよびドナー間の距離が増加するまで、検出器(4018)によって検出される。シグナル(4022)は、遷移ゾーン(4008)を通って移動する際に、単一のアクセプターによって産生される。ナノポア(4002)の出口(4015)に直接隣接する空間的領域である、遷移ゾーン(4008)は、ナノポア(4002)を通るポリマー(4000)の移動のスピード、蛍光標識の振動および回転移動度、蛍光標識の生理化学的性質その他を含むいくつかの因子によって画定される。図4において、黒色の丸(4004)として図解される1種類のモノマー単位のみが、第1の蛍光標識(「a」と命名)を保有し;斑点のついた丸(4006)として図解されるモノマー単位の残りは、第2の蛍光標識(「b」と命名)を保有する。この実施形態では、第1の蛍光標識は、隣接する第1の蛍光標識および隣接する第2の蛍光標識をクエンチする;同様に、第2の蛍光標識は、隣接する第1の蛍光標識および隣接する第2の蛍光標識をクエンチする;さらに、検出器(4018)によって検出されたシグナルによって各蛍光標識(したがって、モノマー)を識別することができるように、第1および第2の蛍光標識は、互いに鑑別可能なFRETシグナル、例えば、図4における標識「a」のための記録されたシグナル(4022)および標識「b」のための記録されたシグナル(4023)を生成する。
定義
「FRET」または「フェルスターまたは蛍光共鳴エネルギー移動」は、励起されたドナーフルオロフォアから基底状態のアクセプターフルオロフォアへの、無放射双極子−双極子エネルギー移動機構を意味する。FRET相互作用におけるエネルギー移動の速度は、アクセプターの吸収スペクトルとドナーの放出スペクトルとのスペクトル重複の程度、ドナーの量子収量、ドナーおよびアクセプター遷移双極子の相対的配向性、ならびにドナーおよびアクセプター分子の間の距離に依存する;Lakowitz、Principles of Fluorescence Spectroscopy、第3版(Springer、2006年)。特に興味深いFRET相互作用は、アクセプターに移動され、次いで、そのドナーを励起する光(すなわち、「FRETシグナル」)よりも低い周波数を有する光子としてアクセプターによって放出されるエネルギーの部分を生じる相互作用である。「FRET距離」は、FRET相互作用が起こり得、FRETアクセプターによって産生される検出可能FRETシグナルが生じ得る、FRETドナーおよびFRETアクセプターの間の距離を意味する。
「キット」は、本発明の方法を行うための材料または試薬を送達するためのいずれかの送達システムを指す。反応アッセイの文脈において、斯かる送達システムは、ある位置から別の位置への、反応試薬(例えば、適切な容器内の、相互にクエンチする蛍光標識等の蛍光標識、蛍光標識連結剤、酵素等)および/または支持材料(例えば、バッファー、アッセイを行うための書面の説明書等)の貯蔵、輸送または送達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または支持材料を含有する1個または複数の同封物(例えば、箱)を含む。斯かる内容物は、一緒にまたは別々に、意図される受取人に送達することができる。例えば、第1の容器は、アッセイにおける使用のための酵素を含有することができ、一方、第2またはそれよりも多い容器は、相互にクエンチする蛍光標識を含有する。
「ナノポア」は、予め決定されたまたは識別できる順序での基板を通した分析物の通過を可能にする、あるいはポリマー分析物の場合は、予め決定されたまたは識別可能な順序での基板を通したそのモノマー単位の通過を可能にする、基板に位置するいずれかの開口を意味する。後者の場合、予め決定されたまたは識別可能な順序は、ポリマーにおけるモノマー単位の一次配列であってもよい。ナノポアの例として、タンパク質性またはタンパク質に基づくナノポア、合成または固体状態(solid state)ナノポア、およびタンパク質ナノポアが包埋された固体状態ナノポアを含むハイブリッドナノポアが挙げられる。ナノポアは、1〜10nmまたは1〜5nmまたは1〜3nmの内径を有することができる。タンパク質ナノポアの例として、例えば、参照により本明細書に組み込むRhee, M.ら、Trends in Biotechnology、25巻(4号)(2007年):174〜181頁;Bayleyら(上に引用);Gundlachら、米国特許出願公開第2012/0055792号;その他に開示されている、アルファ−ヘモリジン、電位依存性ミトコンドリアポリン(VDAC)、OmpF、OmpC、MspAおよびLamB(マルトポリン)が挙げられるがこれらに限定されない。単一の核酸分子の移動を可能にするいずれかのタンパク質ポアを用いることができる。ナノポアタンパク質は、ポア外部の特異的部位において、またはポア形成タンパク質を構成する1個もしくは複数のモノマー単位外部の特異的部位において、標識することができる。ポアタンパク質は、アルファ−ヘモリジン、MspA、電位依存性ミトコンドリアポリン(VDAC)、炭疽ポリン、OmpF、OmpCおよびLamB(マルトポリン)等が挙げられるがこれらに限定されない、タンパク質の群から選択される。固体状態の孔へのポアタンパク質の統合は、荷電ポリマーをポアタンパク質に付着することにより達成される。電界を印加した後に、荷電複合体は、固体状態の孔内に電気泳動的に引き寄せられる。合成ナノポアまたは固体状態ナノポアは、様々な形態の固体基板に作製することができ、その例として、シリコーン(例えば、Si3N4、SiO2)、金属、金属酸化物(例えば、Al2O3)、プラスチック、ガラス、半導体材料およびこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。合成ナノポアは、脂質二重層膜に位置する生物学的タンパク質ポアよりも安定的であってもよい。合成ナノポアは、重合エポキシ等が挙げられるがこれに限定されない、適した基板に包埋されたカーボンナノチューブを使用することにより作製することもできる。カーボンナノチューブは、均一かつ明確に定義された化学的および構造的特性を有することができる。1〜数百ナノメートルに及ぶ、様々なサイズのカーボンナノチューブを得ることができる。カーボンナノチューブの表面電荷は、約ゼロであることが公知であり、結果として、ナノポアを通した核酸の電気泳動的輸送は、単純かつ予測可能になる(Ito, T.ら、Chem. Commun.12巻(2003年):1482〜83頁)。合成ナノポアの基板表面は、タンパク質ポアの共有結合による付着を可能にするために、または表面特性を光学的ナノポア配列決定に適したものにするために化学的に改変されていてよい。斯かる表面改変は、共有結合または非共有結合であってもよい。大部分の共有結合による改変は、オルガノシラン沈着を含み、これに関する最も一般的なプロトコールについて記載する:1)水性アルコールからの沈着。これは、シリル化表面を調製するための最も手軽な方法である。95%エタノール−5%水の溶液は、pH4.5〜5.5となるように酢酸で調整される。撹拌しつつシランを添加して、2%最終濃度を得る。加水分解およびシラノール基形成後に、基板を2〜5分間添加する。エタノールに短時間浸漬することにより過剰な材料をすすぎ出した。シラン層の硬化は、5〜10分間、セ氏110度で為される。2)気相沈着。シランは、化学的蒸着方法によって乾燥非プロトン性条件下で基板に印加することができる。このような方法は、単層沈着を好む。閉鎖チャンバ設計において、基板は、5mm蒸気圧の達成に十分な温度まで加熱される。あるいは、シラン蒸発が観察されるまで真空状態にすることができる。3)スピンオン沈着。スピンオン印加は、最大の官能基付与および多層沈着を好む加水分解性条件下で、または単層沈着を好む乾燥条件下で為すことができる。一部の実施形態では、本発明の方法により単一のナノポアが用いられる。他の実施形態では、複数のナノポアが用いられる。後者の実施形態の一部では、複数のナノポアは、通常、固相膜等の平面状基板に配置された、ナノポアのアレイとして用いられる。ナノポアアレイのナノポアは、例えば、直線的パターンで、規則的に間隔をあけていてよい、またはランダムに間隔をあけていてよい。好まれる実施形態では、ナノポアは、平面状固相基板において直線的パターンで規則的に間隔をあける。
「ナノ構造」(「ナノスケール構造」および「ナノスケール特色」と互換的に使用される)は、数ナノメートル〜数百ナノメートル、例えば、1〜1000ナノメートルの範囲内の少なくとも一寸法を有する構造を意味する。一部の印加では、斯かる範囲は、2〜500ナノメートルであり;他の印加では、斯かる範囲は、3〜500ナノメートルである。ナノ構造の形状および幾何学的配置は、広く変動することができ、ナノポア、ナノウェル、ナノ粒子、および一連の反応の実行に特に適した他のいずれかの簡便な形状が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、ナノ構造は、固相膜と操作的に会合したタンパク質ナノポアであってもよい。ナノポアおよびナノウェル等、一部のナノ構造は、固相膜または他の固体等、より大型の一般的な基板に形成されて、ナノポアまたはナノウェルのアレイを形成することができる。特に興味深いナノ構造は、化学的、物理的(例えば、FRET)、酵素的および/または結合反応、または一連の斯かる反応を支持または含有することができるナノ構造である。一部の実施形態では、ナノウェル等、ナノ構造は、1ナノリットル未満の(10×−9リットル)、1ピコリットル未満のまたは1フェムトリットル未満の容量を封入する。他の実施形態では、個々のナノウェルのそれぞれは、1000ゼプトリットル未満の、100ゼプトリットル、80ゼプトリットルまたは50ゼプトリットル未満のまたは1ゼプトリットル未満の、またはさらには100ヨクトリットル未満の容量を提供する。一部の実施形態では、ナノウェルは、ゼロモード導波を含む。
「ペプチド」、「ペプチド断片」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」またはペプチドを参照した「断片」は、本明細書において同義に使用されており、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の単一の分枝していない鎖で構成されている化合物を指す。ペプチドまたはポリペプチドにおけるアミノ酸は、ポリエチレングリコール、色素、ビオチン、ハプテンまたは同様の部分が挙げられるがこれらに限定されない、様々な部分により誘導体化されていてよい。タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドにおけるアミノ酸残基の数は、広く変動し得る;しかし、一部の実施形態では、本明細書で参照されているタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、2〜70個のアミノ酸残基を有することができ;他の実施形態では、2〜50個のアミノ酸残基を有することができる。他の実施形態では、本明細書で参照されているタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、数十個のアミノ酸残基、例えば、20個から、最大で千個またはそれよりも多いアミノ酸残基、例えば、1200個を有することができる。さらに他の実施形態では、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはこれらの断片は、10〜1000個のアミノ酸残基を有することができる;または20〜500個のアミノ酸残基を有することができる;または20〜200個のアミノ酸残基を有することができる。
「ポリマー」は、線状の鎖となるよう接続された複数のモノマーを意味する。通常、ポリマーは、例えば、A、C、GおよびTを含むポリヌクレオチドとして、または2種類以上のアミノ酸を含むポリペプチドとして、2型以上のモノマーを含む。モノマーは、ヌクレオシドおよびその誘導体またはアナログ、ならびにアミノ酸ならびにその誘導体およびアナログを限定することなく含むことができる。一部の実施形態では、ポリマーは、ホスホジエステル連結またはそのアナログによってヌクレオシドモノマーが接続されたポリヌクレオチドである。
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用されており、それぞれ、ヌクレオチドモノマーの線状ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを構成するモノマーは、ワトソンクリック型の塩基対形成、塩基の積み重ね、フーグスティーンまたはリバースフーグスティーン型の塩基対形成その他等、モノマー対モノマーの相互作用の規則的パターンとして天然ポリヌクレオチドに特異的に結合することができる。斯かるモノマーおよびそのヌクレオシド間連結は、天然に存在するか、またはそのアナログ、例えば、天然に存在するか、または天然に存在しないアナログであってもよい。天然に存在しないアナログは、PNA、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結、フルオロフォアまたはハプテン等の標識の付着を可能にする連結基を含有する塩基その他を含むことができる。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの使用が、ポリメラーゼによる伸長、リガーゼによるライゲーションその他等、酵素による処理を要求する場合は常に、当業者は、これらの事例におけるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、いずれかまたは一部の位置に、ヌクレオシド間連結、糖部分または塩基のある特定のアナログを含有しないであろうことを理解し得る。ポリヌクレオチドは典型的に、「オリゴヌクレオチド」と通常称される場合の数個のモノマー単位、例えば、5〜40個から、数千個のモノマー単位へと、サイズに幅がある。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが、「ATGCCTG」等、文字(大文字または小文字)配列によって表される場合は常に、ヌクレオチドが、左から右へ5’→3’順序であり、他に示されていなければ、または文脈から明らかでなければ、「A」が、デオキシアデノシンを表示し、「C」が、デオキシシチジンを表示し、「G」が、デオキシグアノシンを表示し、「T」が、チミジンを表示し、「I」が、デオキシイノシンを表示し、「U」が、ウリジンを表示することが理解される。他に記されていなければ、用語法および原子番号付けの慣習は、StrachanおよびRead、Human Molecular Genetics 2(Wiley-Liss、New York、1999年)に開示されているものに従うであろう。通常、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル連結によって連結された4種の天然ヌクレオシド(例えば、DNAはデオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはRNAはこれらのリボース対応物)を含む;しかし、これは、例えば、改変された塩基、糖またはヌクレオシド間連結を含む、非天然ヌクレオチドアナログを含むこともできる。当業者には、酵素が、活性のために特異的なオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質要件を有する場合(例えば、一本鎖DNA、RNA/DNAデュプレックスその他)、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質に適切な組成の選択は、十分に、当業者の知識範囲内、特に、Sambrookら、Molecular Cloning、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1989年)および同様の参考文献等、専門書からのガイダンス内であることが明らかである。同様に、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、一本鎖型または二本鎖型(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドおよびそれぞれの相補体のデュプレックス)のいずれかを指すことができる。当業者には、用語使用の文脈から、いずれの型が、または両方の型が意図されているか明らかになると予想される。
「プライマー」は、ポリヌクレオチド鋳型とデュプレックスを形成した後に、核酸合成の開始点として作用することができ、伸長されたデュプレックスが形成されるように鋳型に沿ってその3’末端から伸長されることができる、天然または合成のいずれかのオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーの伸長は通常、DNAまたはRNAポリメラーゼ等、核酸ポリメラーゼにより行われる。伸長プロセスにおいて付加されたヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列によって決定される。通常、プライマーは、DNAポリメラーゼによって伸長される。プライマーは通常、14〜40ヌクレオチドの範囲内または18〜36ヌクレオチドの範囲内の長さを有する。プライマーは、種々の核酸増幅反応、例えば、単一のプライマーを使用した線状増幅反応、または2種またはそれよりも多いプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応において用いられる。特定の印加のためのプライマーの長さおよび配列を選択するためのガイダンスは、参照により組み込む次の参考文献によって証明される通り、当業者に周知のものである:Dieffenbach編、PCR Primer: A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Press、New York、2003年)。
ポリヌクレオチドを参照した「配列の決定」、「配列決定」または「ヌクレオチド配列の決定」または同様の用語は、ポリヌクレオチドの部分的および完全配列情報の決定を含む。すなわち、この用語は、例えば、標的ポリヌクレオチドの単にAおよびCの配列等、4種の天然ヌクレオチド、A、C、GおよびTの完全セットのサブセットの配列を含む。すなわち、この用語は、標的ポリヌクレオチド内における4種類のヌクレオチドのうち1、2、3または全種の同一性、順序付けおよび位置の決定を含む。一部の実施形態では、この用語は、標的ポリヌクレオチド内における4種類のヌクレオチドのうち2、3または全種の同一性、順序付けおよび位置の決定を含む。一部の実施形態では、配列の決定は、その配列が、2進コード、例えば、「c−(非c)(非c)c−(非c)−c...」を表す「100101...」その他として表されるような、標的ポリヌクレオチド「catcgc...」内における単一の種類のヌクレオチド、例えば、シトシンの順序付けおよび位置を識別することにより達成することができる。一部の実施形態では、この用語は、標的ポリヌクレオチドのためのフィンガープリントとして機能する標的ポリヌクレオチドの部分列を含むこともできる;すなわち、ポリヌクレオチドのセット、例えば、細胞によって発現される全て異なるRNA配列内で、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチドのクラスを独特に識別する部分列。
本開示は、明記されている特定の形態の範囲に限定されることを意図しないが、本明細書に記載されている変種の代替物、改変および均等物を網羅することを意図する。さらに、本開示の範囲は、本開示を考慮することにより当業者にとって明らかとなり得る他の変種を完全に包含する。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。