本開示をさらに記述する前に、この開示が、本明細書で説明される特定の実施形態に限定されないことを理解され、及び本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記述する目的だけのためであり、限定を意図していないことを理解されたい。
値の範囲が与えられる場合、各中間に在る値、その文脈が明確に指示しない限り下限単位の10倍まで、その範囲の上限と下限の間、及びその記載範囲において示された任意のその他の値または中間値が、本発明に包含される。これら小範囲の上限及び下限は、その小範囲に独立して含まれて良いし、及びまた本発明に包含され、その記載範囲における任意の特別な除外制限を受ける。その記載範囲が、限定の1つまたは両方を含んでいる場合、それらの包含された限定のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者による一般的な理解と同じ意味を有する。
本明細書及び付帯の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その文脈が明確に指示しない限り複数指示対象をも含むことに、留意する必要がある。本請求項は、いかなる任意要素をも除外するように起草されていることに留意されたい。このように、本明細書は、「solely(もっぱら)」、「only(のみ)」及び請求項要素の記述に関連したものなどの、排他的な用語の使用、または「negative(否定的)」限定の使用が、先行詞としての役割を果たすことを意図している。
本明細書で考察される出版物は、本出願の出願日前の開示に対して、もっぱら提供される。さらに、出版物の公開日は、実際の公開日と異なっている可能性があり、個別に確認する必要がある場合がある。
要旨
本開示は、タンパク質の再フォールディングの最適化を含む、サイトカイン(例えば、IL−10)の大規模生産(例えば、商業規模)を増進する方法を企図する。このサイトカイン(例えば、IL−10)は、がん及び免疫性の、炎症性の、及びウイルス関連の障害を含む、広い範囲の疾患、障害ならびに症状、及び/またはそれらの兆候の治療及び/または予防での使用が見出されている。
本明細書で説明される実施形態及び記述のいくつかは、IL−10物質(例えば、PEG−IL−10物質)との関連で記述される。それが使用される状況が、適切に考慮される場合、IL−10物質の記述は、サイトカイン物質に対するより、より広範囲に参照されて良い。
本開示のポリペプチド及び核酸分子が関連する「human(ヒト)」の任意の参照は、そのポリペプチドまたは核酸を取得する方法またはその供給源に対しての限定を意味せず、むしろ天然由来のヒトのポリペプチドまたは核酸分子の配列に対応する、配列のみに関連している。それらをコードするヒトのポリペプチド及び核酸分子に加えて、本開示は、その他の種からのIL−10関連ポリペプチド及び対応する核酸分子(ならびに、特定の例では、サイトカイン・ポリペプチド及び対応する核酸分子)を企図する。
定義
特に指示が無い限り、以下の用語は、以下に説明される意味を有することを意図している。その他の用語は、本明細書の全体を通してその他の場所で定められる。
用語「patient(患者)」または「subject(対象者)」は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳類)を指して、互換的に使用される。
用語「administration(投与)」、「administer(投与する)」などの、例えば、対象者、細胞、組織、臓器、または生体液への適用は、例えば、IL−10またはPEG−IL−10、核酸(例えば、天然のヒトIL−10をコードする核酸)、前述のものを含む薬学的に許容される組成物または診断用薬剤の、その対象者、細胞、組織、臓器、または生体液への接触を指す。細胞との関連において、投与は、その細胞への試薬の接触(例えば、インビトロまたは生体外)、同様にその液体が細胞と接触している場合、液体への試薬の接触を含む。
用語「treat(治療する)」、「treating(治療している)」、「treatment(治療)」などは、疾患、障害、または症状、もしくはそれらの兆候が、診断され、観察された後で開始される、及び一時的であれ恒久的であれ、対象者を苦しめている疾患、障害、または症状の背後にある要因の少なくとも1つ、または対象者を苦しめている疾患、障害、または症状に関連する兆候の少なくとも1つを、排除、低減、抑制、軽減するためなどの、一連の行為(IL−10またはIL−10を含む医薬組成物の投与など)を指す。したがって、治療には、活性疾患を阻害すること(例えば、病気、傷害または症状もしくは臨床兆候との関連の発達またはさらなる発達を阻止する)を含む。当該用語はまた、IL−10またはPEG−IL−10が、例えば、液相またはコロイダル相内のIL−10受容体に接触する場合の状況などの、その他の関連性において使用されて良い。
本明細書で使用する用語「in need of treatment(治療を必要として)」は、対象者が必要とする、または治療の恩恵を受けることができる医師またはその他の介護者によって行われる判断を指す。この判断は、その医師または介護者の専門知識の領域における、多様な要因に基づいて行われる。
用語「prevent(予防する)」、「preventing(予防している)」、「prevention(予防)」などは、疾患、障害、症状などを発達させるなどの、対象者のリスク(例えば、臨床兆候の欠乏によって決定されるなど)を、一時的であれ恒久的であれ、予防し、抑制し、阻害または低減するための、または一般的には特定の疾患、障害または症状を有する傾向がある対象者に関連して、それらの発症を遅らせる方法(例えば、疾患、障害、症状またはそれらの兆候の発症前に)で開始される、一連の行為(IL−10またはIL−10を含む医薬組成物の投与など)を指す。特定の例示において、当該用語はまた、その疾患、障害または症状の進行を遅らせ、または有害な、さもなければ望ましくない状況へのそれらの進行を阻害することを指す。
本明細書で使用する用語「in need of prevention(予防を必要として)」は、対象者が必要とする、または予防手当の恩恵を受けることができる医師またはその他の介護者によって行われる判断を指す。この判断は、その医師または介護者の専門知識の領域における、多様な要因に基づいて行われる。
語句「therapeutically effective amount(治療に効果的な量)」は、医薬組成物の単独または一部分のいずれかで、及び単一用量または連続用量の一部のいずれかで、任意に検出可能で、その対象者へ投与された場合の疾患、障害または症状の任意の兆候、容体、または特徴における、肯定的な効果を有することが可能な量での、対象者への物質の投与を指す。この治療に効果的な量は、関連する生理学的効果を測定することによって確認でき、及びその投薬計画ならびにその対象者の症状の診断分析などとの関連で、調整できる。例を挙げると、以下の投与によって産生される炎症性サイトカインの量の測定は、治療に効果的な量が使用されたかどうかを示すものであってもよい。
語句「in a sufficient amount to effect a change(変化をもたらすのに十分な量で)」は、特定治療の投与前(例えば、基準レベル)と後で測定された指標レベルの間に、検出可能な差異があることを意味する。指標には、任意の客観的なパラメーター(例えば、IL−10の血清濃度)、または主観的なパラメーター(例えば、良好であるとの対象者の感覚)を含む。
用語「small molecules(小分子)」は、10kDa未満の、2kDa未満の、または1kDa未満の分子量を有する化合物を指す。小分子には、非限定的に、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射性原子を含む分子、及び合成分子を含む。治療上、小分子は、大分子に比べて、細胞への浸透性がより高く、分解の影響を受けにくく、及び免疫応答を誘発する可能性が低い。
用語「ligand(配位子)」は、例えば、受容体の作動物質または拮抗物質として作用できる、ペプチド、ポリペプチド、膜関連または膜結合分子、もしくはそれらの複合体を指す。「ligand(配位子)」は、天然及び合成の配位子、例えば、サイトカイン、サイトカイン変異体、類似体、突然変異タンパク質、及び抗体から誘導される結合成分を包含する。「ligand(配位子)」はまた、小分子、例えば、サイトカインのペプチド模倣薬、及び抗体のペプチド模倣薬を包含する。この用語はまた、作動物質もしくは拮抗物質でもなく、その生物学的特性(例えば、シグナル伝達性または接着性)に著しい影響を与えずに、受容体と結合できる物質を包含する。さらに、当該用語は、例えば、化学的にまたは組換えによる方法で、その膜結合配位子の可溶性版へと変化させ得る、膜結合配位子を含む。配位子または受容体は、完全に細胞内にあって良く、すなわち、細胞質ゾル、核、またはその他の細胞内コンパートメントに存在して良い。配位子と受容体の複合体は、「ligand−receptor complex(配位子−受容体複合体)」と呼ばれる。
用語「inhibitors(阻害剤)」及び「antagonists(拮抗物質)」、または「activators(活性剤)」ならびに「agonists(作動物質)」は、例えば、配位子、受容体、補因子、遺伝子、細胞、組織、または臓器などの活性化に対応して、阻害化するまたは活性化する分子の各々を指す。阻害剤は、例えば、遺伝子、タンパク質、配位子、受容体、または細胞などを減らし、ブロックし、防ぎ、活性化を遅らせ、不活性化し、感度を下げ、または下方調整する分子である。活性剤は、例えば、遺伝子、タンパク質、配位子、受容体、または細胞などを増加させ、活性化し、促進させ、活性化を強化し、感度を上げ、または上方調整する分子である。阻害剤はまた、恒常活性を減らし、ブロックし、または不活性化する分子であると定義される。「agonists(作動物質)」は、その標的活性の増加を引き出しまたは促進するために、標的と相互作用する分子である。「antagonists(拮抗物質)」は、作動物質の作用を押しとどめる分子である。拮抗物質は、作動物質の活性を予防し、減らし、阻害し、または中和し、及び拮抗物質はまた、たとえ該当する作動物質がなくとも、標的の、例えば、標的受容体の恒常活性を予防し、阻害し、または減らすことができる。
用語「modulate(調節する)」、「modulation(調節)」などは、物質(例えば、IL−10物質)(またはそれらをコードする核酸分子)の官能性または活性を、直接的または間接的のいずれかで、増加させるもしくは減少させる分子(例えば、活性剤または阻害剤)の能力、または物質(例えば、IL−10物質)の活性に匹敵する効果を生み出す分子の能力を、高めることを指す。用語「modulator(調節因子)」は、前述の活性に効果を及ぼし得る分子に対する、広い意味を指す。例を挙げると、遺伝子、受容体、配位子、または細胞などの分子は、遺伝子、受容体、配位子、または細胞の活性を変化させる分子であり、ここで活性は、その調節特性によって、活性化され、阻害され、または変化させられる。調節因子は、単独で作用して良く、または例えば、タンパク質、金属イオン、または小分子などの補因子を利用しても良い。用語「modulator(調節因子)」には、物質(例えば、IL−10物質)(すなわち、それらへの類似体としてやり方で、物質(例えば、IL−10物質)と同じシグナル伝達経路を調節する物質)と、同じ機構の作用を通して作動し、及び物質(例えば、IL−10物質)の生体反応に匹敵する(またはより大きい)、生体反応を誘発することができる物質を含む。
調節因子の例示には、小分子化合物及びその他の生体有機分子を含む。小分子化合物の多数のライブラリー(例えば、組合せライブラリー)が、市販されており、及び調節因子を識別するための出発点として使用することができる。当業者は、そのような化合物ライブラリーが、望ましい特性を持つ1つ以上の化合物を、識別するために選別され得るような、1つ以上のアッセイ(例えば、生化学または細胞依存アッセイ)を開発でき、その後、専門の医薬品化学者が、例えば、それらの類似体及び誘導体を合成しならびに評価することによって、そのような1つ以上の化合物を最適化できる。合成及び/または分子モデリング研究がまた、活性剤の識別に利用可能である。
分子の「activity(活性)」は、配位子へ、または受容体へ、触媒活性へ、遺伝子発現または細胞のシグナル伝達、分化、もしくは成熟を刺激する能力へ、抗原活性へ、その他の分子の活性調節などへ、分子を結合することを記述しまたはそれらを指してよい。当該用語はまた、細胞と細胞の相互作用(例えば、接着)を調節しまたは維持する活性、もしくは細胞の構造(例えば、細胞膜)を維持する活性を指して良い。「Activity(活性)」はまた、特定の活性、例えば[触媒活性]/[mgタンパク質]、または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、生体コンパートメントにおける濃度などを意味することができる。用語「proliferative activity(増殖活性)」は、例えば、正常な細胞***、同様にがん、腫瘍、異形成、細胞の形質転換、転移、及び血管新生などを促進し、それらに対して不可欠であり、またはそれらと特に関連する活性を包含する。
本明細書で使用する、「comparable(匹敵する)」、「comparable activity(匹敵する活性)」、「activity comparable to(に匹敵する活性)」、「comparable effect(匹敵する効果)」、「effect comparable to(に匹敵する効果)」などは、定量的及び/または定性的と見なすことができる相対的用語である。当該用語の意味は、それらが使用される状況に、たびたび依存する。例を挙げると、両者が受容体を活性化する2つの物質は、定性的な見方からは、匹敵する効果を有するとみなされるが、しかし、仮に1つの物質が、当技術分野で認知されたアッセイ(例えば、用量−応答アッセイ)または当技術分野で認知された動物試験において決定される、その他の物質の活性の20%しか達成できない場合、定量的な見方からは、その2つの物質は、匹敵する効果を欠いている、とみることができる。1つの結果を他の結果と比較する場合(例えば、1つの結果を参照標準と比較)、「comparable(匹敵する)」は、しばしば1つの結果が、参照標準から35%未満で、30%未満で、25%未満で、20%未満で、15%未満で、10%未満で、7%未満で、5%未満で、4%未満で、3%未満で、2%未満で、または1%未満で逸脱することを意味する。特定の実施形態において、1つの結果は、仮にそれが、参照標準から15%未満で、10%未満で、または5%未満で逸脱する場合、参照標準に匹敵する。例を挙げると、非限定的に、当該活性または効果は、有効性、安定性、溶解性、または免疫原性を指して良い。
用語の、例えば、細胞、組織、臓器、または有機体の「response(応答)」は、生化学的または生理的挙動、例えば、濃度、密度、接着、または生物コンパートメント内の移行、遺伝子発現率、もしくは分化の状態における変化を包含し、ここでその変化は、活性化、刺激、または治療、もしくは遺伝的プログラミングなどの内部メカニズムと相関関係がある。特定の文脈において、用語「activation(活性化)」、「stimulation(刺激)」などは、内部メカニズム、ならびに外部のまたは環境要因によって制御される細胞の活性化を指し、一方で用語「inhibition(阻害)」、「down−regulation(下方制御)」などは、その反対の効果を指す。
本明細書で互換的に使用する用語「polypeptide(ポリペプチド)」、「peptide(ペプチド)」、及び「protein(タンパク質)」は、任意鎖長のアミノ酸のポリマー形態を指し、遺伝子的にコード化された及び非遺伝子的にコード化されたアミノ酸、化学的または生化学に修飾または誘導されたアミノ酸、及び修飾されたポリペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことができる。当該用語は、非限定的に、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種及び相同のリーダー配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基の有無にかかわらない融合タンパク質、免疫的にタグ化されたタンパク質を有する融合タンパク質などを含む、融合タンパク質を含む。
この開示の全体を通して、1文字または3文字で表記されるアミノ酸が参照されることは理解されよう。読み手への便宜上、1文字及び3文字表記のアミノ酸を、以下に提供する。
本明細書で使用する用語「variant(変異体)」は、天然由来の変異体及び非天然由来の変異体を包含する。天然由来の変異体には、同族体(アミノ酸またはヌクレオチド配列のそれぞれで、1種から他種へと異なる、ポリペプチド及び核酸)、及び対立変異体(アミノ酸ヌクレオチド配列のそれぞれで、種内の1固体から他個体へと異なる、ポリペプチドおよび核酸)を含む。非天然由来の変異体には、アミノ酸またはヌクレオチド配列のそれぞれでの変化を含む、ポリペプチドおよび核酸を含み、ここでその配列の変化が、人為的に導入され(例えば、突然変異タンパク質)、例えば、その変化が、ヒトの介在(「hand of man(人間の手)」)によって実験室で生み出される。したがって、本明細書の「mutein(突然変異タンパク質)」は、通常は、単一または複数のアミノ酸置換が行われ、及びサイト指向またはランダム変異誘発に供せられたクローン遺伝子から、もしくは完全に合成遺伝子から誘導される、幅広い突然変異を起こした組み換えタンパク質を指す。
用語「DNA」、「nucleic acid(核酸)」、「nucleic acid molecule(核酸分子)」、「polynucleotide(ポリヌクレオチド)」などは、任意鎖長のヌクレオチドのポリマー形態、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれか、もしくはそれらの類似体を指して、本明細書では互換的に使用される。ポリヌクレオチドの非限定的な例示には、直鎖状及び環状核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、プライマーなどを含む。
ポリペプチドの構造に関連して本明細書で使用する「N−terminus(or「amino terminus」)(N終末端(または「アミノ終末端」))」及び「C−terminus(または「carboxyl terminus」)(C終末端(または「カルボキシ終末端」))」は、各々ポリペプチドの、完全に端のアミノ及びカルボキシ末端を指し、一方で用語「N−terminal(N末端)」及び「C−terminal(C末端)」は、各々そのN終末端及びC終末端方向のポリペプチドのアミノ酸配列における相対位置を指し、及び各々そのN終末端及びC終末端での残基を含む。「Immediately N−terminal(直N末端)」または「Immediately C−terminal(直C末端)」は、第二アミノ酸残基と比べた第一アミノ酸残基の位置を指し、ここでその第一及び第二アミノ酸残基は、連続したアミノ酸配列を与えるために共有結合している。
アミノ酸配列またはポリペプチド配列(例えば、IL−10ポリペプチド「Derived from(から誘導された)」アミノ酸配列)との関連における、「Derived from(から誘導された)」は、そのポリペプチドまたは核酸が、参照されるポリペプチドまたは核酸(例えば、天然由来のIL−10ポリペプチドまたはIL−10をコードする核酸)に基づく配列を有することを示す意味であり、及びそのタンパク質または核酸が作られた供給源または方法を限定することを意味してはいない。例を挙げると、用語「Derived from(から誘導された)」には、参照されるアミノ酸またはDNA配列の同族体もしくは変異体を含む。
ポリペプチドとの関連において、用語「isolated(単離された)」は、仮に天然由来であれば、それが天然に由来する可能性のある環境とは異なる環境にある、対象となるポリペプチドを指す。「isolated(単離された)」には、その対象となるポリペプチドが、実質的に濃縮された、及び/またはその対象となるポリペプチドが、部分的にまたは実質的に精製されているサンプル内のポリペプチドを含む。当該ポリペプチドが、天然由来では無い場合、「isolated(単離された)」には、そのポリペプチドが、それが合成または組み換え手段のいずれかで作られた際の環境から、分離されていることを示す。
「Enriched(濃縮された)」は、サンプルが、非天然由来的に操作され(例えば、科学的に)、そのため対象のポリペプチドが、a)生体サンプル(例えば、そのポリペプチドが、天然に由来した状態の、またはそれが、投与後に存在するサンプル)などの、開始サンプル内のポリペプチド濃度に比べ、より高い濃度(例えば、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも64倍高い、またはそれ以上)、またはb)そのポリペプチドが作られた(例えば、細菌細胞内で)環境での濃度に比べて、より高い濃度で存在することを意味する。
「Substantially pure(実質的に純粋)」は、ある成分(例えば、ポリペプチド)が、その組成物の総含有量の約50%を上回り、及び通常はその総ポリペプチド含有量の約60%を上回って構成されていることを示す。より一般的には、「Substantially pure(実質的に純粋)」は、その総組成物の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、またはそれ以上が、その対象となる成分である組成物を指す。いくつかのケースにおいて、当該ポリペプチドは、その組成物の総含有量の約90%を超えて、または約95%を超えて構成される。
配位子/受容体、抗体/抗原、またはその他の結合対を指す場合の、用語「specifically binds(特異的に結合する)」、または「selectively binds(選択的に結合する)」は、タンパク質及びその他の生物製剤の不均一な集団における、そのタンパク質の存在を決定する結合反応を示す。したがって、指定された条件下では、特異的な配位子は、特定の受容体に結合し、及びそのサンプルに存在するその他タンパク質へは、多量には結合はしない。予定した方法の抗体、または抗体の抗原結合部位から誘導された結合成分は、任意のその他の抗体、またはそれから誘導された結合成分の親和性と比べて、少なくとも2倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも20倍高い、または少なくとも100倍高い親和性を伴って、その抗原、またはその変異体もしくは突然変異タンパク質に結合する。特定の実施形態において、当該抗体は、例えば、Scatchard analysis(スキャッチャード分析)(Munsen,et al.1980 Analyt.Biochem.107:220−239)によって決定されるように、約109リッター/モルを上回る親和性を有するであろう。
IL−10及びPEG−IL−10
ヒトサイトカイン合成阻害因子(CSIF)として知られる、抗炎症性サイトカインIL−10は、2型(クラス)サイトカインとして分類され、IL−19、IL−20、IL−22、IL−24(Mda−7)、及びIL−26、インターフェロン(IFN−α、−β、−γ、−δ、−ε、−κ、−Ω、及び−τ)、及びインターフェロン様分子(リミチン、IL−28A、IL−28B、及びIL−29)を含む、一連のサイトカインである。
IL−10は、免疫調整及び炎症において、多面的な効果を持つサイトカインである。主としてマクロファージに発現するが、IL−10発現はまた、活性化されたT細胞、B細胞、肥満細胞、及び単球においても検出されている。これは、肥満細胞によって産生され、これら細胞が、アレルギー反応の部位に有する炎症作用を弱める。IL−10は主に、toll様受容体の作動物質に応答して、炎症性サイトカインの産生及び分泌を制限する一方で、それはまた、特定のT細胞及び肥満細胞に対して刺激性であり、及びB細胞の成熟、増殖、及び抗体の産生を刺激する。IL−10は、NF−κB活性をブロックでき、及びJAK−STATのシグナル伝達経路の調節に関与する。それはまた、CD8+T細胞の細胞毒性、及びB細胞の抗体産生を誘発し、及びマクロファージ活性ならびに腫瘍が促進する炎症を抑制する。CD8+T細胞の調節は、用量依存であり、より高い用量がより強い細胞毒性応答を誘発する。
この多面的な活性の結果として、IL−10は、炎症症状、免疫関連疾患、線維障害、コレステロールの調節を含む代謝障害、及びがんを含む、幅広い疾患、障害及び症状に関係している。多数のそのような疾患、障害及び症状に対する、IL−10を伴う臨床及び前臨床評価が、その治療薬として潜在性を確固たるものにしている。
ヒトIL−10は、37kDaの分子量をもつホモダイマーであり、18.5kDaの各モノマーは、178のアミノ酸を含み、その第18アミノ酸が、シグナルペプチドを含む。各モノマーは、2つの分子内ジスルフィド結合を形成する4つのシステイン残基を含む。このIL−10ダイマーは、2つのモノマーの二次単位間の非共有相互作用の崩壊により、生物学的に不活性となる。IL−10の、公開されているシステイン構造から得たデータは、その官能性ダイマーが、IFN−γに対し特定の類似性を表わすことを示している(Zdanov et al,(1995)Structure(Lond)3:591−601)。本明細書での記述は一般に、そのホモダイマーを指すが、しかしながら、本考察の特定のケースでは、モノマーへの適用も可能であり、その文脈から明確になるであろう。
本開示の多様な実施形態では、ヒトIL−10(NP_000563)及び、80%の相同を示す、マウスIL−10(NP_034678)を企図し、及びそれらを使用する。さらに、本開示範囲には、ラット(登録NP_036986.2、GI 148747382)、牛(登録NP_776513.1、GI 41386772)、羊(登録NP_001009327.1、GI 57164347)、犬(登録ABY86619.1、GI 166244598)、及びウサギ(登録AAC23839.1、GI 3242896)を含む、その他の哺乳類種からの、IL−10相同体、及びそれらの変成形態を含む。
前述のように、用語「IL−10」、「IL−10 polypeptide(s)(IL−10ポリペプチド(複数可))」、「IL−10 molecule(s)(IL−10分子(複数可))」、「IL−10 agent(s)(IL−10物質(複数可))」などは、幅広く構成されることを意図しており、及び、例えば、同族体、変異体(突然変異タンパク質を含む)、ならびにそれらの断片を含む、ヒト及び非ヒトIL−10関連ポリペプチド、同様に、例えば、リーダー配列(例えば、シグナルペプチド)、及び上記の変成版を有するIL−10ポリペプチドを含む。さらに特定の実施形態において、IL−10、IL−10ポリペプチド(複数可)、及びIL−10物質(複数可)は、作動物質である。
当該IL−10受容体、II型サイトカイン受容体は、アルファ及びベータの二次単位から構成され、また各々R1及びR2と呼ばれる。受容体の活性化には、アルファ及びベータの両方への結合が必要である。IL−10ポリペプチドの1つのホモダイマーは、アルファに結合し、及び同じIL−10ポリペプチドのその他のホモダイマーは、ベータに結合する。
組み換えヒトIL−10の有用性は、しばしば、例えば、腎臓のクリアランス、血流内でのタンパク質分解及びモノマー化に起因している可能性がある、その比較的短い血清半減期によって制約される。その結果として、ダイマー構造を破壊し、及びその活性に悪影響を及ぼすこと無しに、IL−10の薬物動態プロファイルを改善する、種々のアプローチが検討されている。IL−10のペグ化は、特定の薬物動態パラメーター(例えば、血清半減期)の改善及び/または活性増進をもたらす。
本明細書で使用する用語「pegylated IL−10(ペグ化IL−10)」及び「PEG−IL−10」は、そのIL−10タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基に、一般的にはその結合が安定しているリンカーを介して、共有結合した1つ以上のポリエチレングリコール分子を有するIL−10分子を指す。用語「monopegylated IL−10(モノペグ化IL−10)」及び「mono−PEG−IL−10(モノPEG−IL−10)」は、1つのポリエチレングリコール分子が、そのIL−10ダイマーの1つの二次単位上の単一アミノ酸残基へ、一般的にはリンカーを介して、共有結合していることを示す。用語「dipegylated IL−10(ジペグ化IL−10)」及び「di−PEG−IL−10(ジPEG−IL−10)」は、1つのポリエチレングリコール分子が、そのIL−10ダイマーの各々の二次単位上の単一残基へ、一般的にはリンカーを介して、結合していることを示す。
特定の実施形態において、本開示に使用されるPEG−IL−10は、1つから9つのPEG分子が、そのIL−10ダイマーの1つの二次単位のN終末端で、そのアミノ酸残基のアルファアミノ基へ、リンカーを介して共有結合している、モノPEG−IL−10である。1つのIL−10二次単位上のモノペグ化は一般に、二次単位のシャッフルに起因する、非ペグ化、モノペグ化及びジペグ化IL−10の非相同混合物をもたらす。さらに、ペグ化反応が完了に進むに従い、一般的に、非特異的かつ多ペグ化IL−10をもたらす結果となり、したがって、その活性を低下させる。したがって、本開示の特定の実施形態には、本明細書で記述される方法によって生産されるモノ及びジペグ化IL−10の混合物の投与を含む。
いくつかの実施形態において、N末端ペグ化の化学戦略は、定められた時間(例えば、18時間未満)において、約99%同一であるN終末端のペグ化をもたらす場合に、利用可能である。その時間を超えて継続する化学反応を可能にすると、リシン側鎖のペグ化が増加する結果となる。複数のペグ化のアプローチが、実施例の節で記述される。
特定の実施形態において、当該PEGモイエティーの平均分子量は、約5kDaから約50kDaの間である。IL−10へのPEG結合の方法または部位は、重要ではないが、特定の実施形態において、そのペグ化は、IL−10物質の活性を変化させず、または最小限に変化させるのみである。特定の実施形態において、半減期の増加は、生物活性の減少に比べてより大きい。PEG−IL−10の生物活性は、通常、米国特許第7,052,686号に記述されるように、細菌抗原(リポ多糖(LPS))を投与され、及びPEG−IL−10で治療された対象者の、血清中の炎症性サイトカイン(例えば、TNF−αまたはIFN−γ)のレベルを評価することによって測定される。
IL−10変異体(ペグ化などによって、修飾されていない)は、血清半減期を増加すること、IL−10に対する免疫応答を減らすこと、精製または調合を促進させること、モノマー二次単位へのIL−10の変換を減少させること、治療効果を向上させること、及び治療中の副作用の重症度や発生を軽減することを含む、多様な目的を念頭に置いて調合され得る。アミノ酸配列の変異体は、通常自然には見出されない、予め考えられた変異体であり、あるものは、例えば、グリコシル化変異体などの、翻訳後変異体であり得る。IL−10の任意の変異体は、もし適切なレベルのIL−10活性を保持していれば、利用可能である。野生型IL−10と同様に、これらのIL−10変異体は、本明細書に記述されるように修飾(例えば、ペグ化またはFc融合)され得る。
語句「conservative amino acid substitution(保護アミノ酸置換)」は、タンパク質のアミノ酸を、類似した酸性、塩基性、電荷、極性、または大きさの側鎖を持つアミノ酸で置き換えることによって、そのタンパク質の活性を保存する置換を指す。保護アミノ酸置換は一般に、1)L、I、M、V、F、2)R、K、3)F、Y、H、W、R、4)G、A、T、S、5)Q、N、及び6)D、Eの基を持つアミノ酸残基の置換を必要とする。置換、挿入、または欠失の導入は、異なる変異体タンパク質、または異なる種からのタンパク質のアミノ酸配列の配置に基づいて可能になる。したがって、任意の天然由来のIL−10ポリペプチドに加えて、本開示は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の、通常は20、10、または5を超えたアミノ酸置換を有することを企図し、ここで通常は、その置換が、保護アミノ酸置換である。
本開示はまた、成熟したIL−10から誘導される連続したアミノ酸残基を含む、成熟IL−10の活性断片(例えば、部分配列)を企図する。ペプチドまたはポリペプチド部分配列の連続したアミノ酸残基の鎖長は、その部分配列が誘導された、特定の天然由来のアミノ酸配列に依存して変動する。一般に、ペプチド及びポリペプチドは、約20のアミノ酸から約40のアミノ酸、約40のアミノ酸から約60のアミノ酸、約60のアミノ酸から約80のアミノ酸、約80のアミノ酸から約100のアミノ酸、約100のアミノ酸から約120のアミノ酸、約120のアミノ酸から約140のアミノ酸、約140のアミノ酸から約150のアミノ酸、約150のアミノ酸から約155のアミノ酸、約155のアミノ酸から最大で完全長のそのペプチドまたはポリペプチドまであり得る。
さらに、IL−10ポリペプチドは、特定の連続したアミノ酸鎖長の基準配列と同一の、特定配列を持つことができる(例えば、「comparison whindow(比較一覧)」)。比較のための配列配置法は、当技術分野では公知である。最適な比較のための配列配置は、例えば、the local homology algorithm of Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)によって、the homology alignment algorithm of Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)によって、the search for similarity method of Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)によって、computerized implementations of these algorithms(GAP,BESTFIT,FASTA,and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Madison,Wis.)によって、または手動配置及び目視検査(Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995 supplement)を参照)によって、実施され得る。
例示として、適切なIL−10ポリペプチドには、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%が、約20のアミノ酸から約40のアミノ酸、約40のアミノ酸から約60のアミノ酸、約60のアミノ酸から約80のアミノ酸、約80のアミノ酸から約100のアミノ酸、約100のアミノ酸から約120のアミノ酸、約120のアミノ酸から約140のアミノ酸、約140のアミノ酸から約150のアミノ酸、約150のアミノ酸から約155のアミノ酸、約155のアミノ酸から完全長のペプチドまたはポリペプチドまでの連続鎖と同一のアミノ酸を有する、アミノ酸配列を含むことができる。
さらに以下で考察するように、当該IL−10ポリペプチドは、非天然由来の供給源(例えば、その天然由来環境以外の環境)から単離され得て、及びまた組み換えで作成でき(例えば、細菌、酵母、ピキア属、昆虫細胞などの、遺伝子的に変成された宿主細胞において)、ここでその遺伝子的に変成された宿主細胞は、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸で修飾される。当該IL−10ポリペプチドはまた、合成で製造され得る(例えば、無細胞の化学合成によって)。
当該IL−10物質をコードする核酸分子が、それらの天然由来及び非天然由来のアイソフォーム、対立遺伝子多型及びスプライス変異体を含んで、本開示により企図される。本開示はまた、天然由来DNA配列から1つ以上の塩基で変動し、しかし依然としてその遺伝子コードの縮退によって、IL−10ポリペプチドに相当するアミノ酸配列に翻訳をする、核酸配列を包含する。
本開示はまた、本明細書での教示と併せて、遺伝子治療の利用を企図する。遺伝子治療は、新規遺伝子を導入するために、既存の遺伝子の追加複製を導入するために、既存遺伝子の機能を損なわせるために、または既存の、しかし非機能的遺伝子を修復するために、対象者の内因性細胞へ、普通はベクターと一体となった遺伝物質を送達することによって、効果を発揮する。一旦細胞内に入ると、その核酸が、その細胞機構によって発現し、対象となるタンパク質の産生をもたらす。本開示との関連において、遺伝子治療は、疾患、障害または症状の治療または予防における利用に対応した、IL−10物質をコードする核酸を送達するための治療法として利用できる。
前述で言及したように、遺伝子治療の利用及び方法に対応して、対象者の細胞が、インビボで、本明細書で説明されるIL−10関連ポリペプチドをコードする核酸で、形質転換され得る。あるいは、細胞が、インビトロで、導入遺伝子またはポリヌクレオチドで形質転換され得て、及び次いで、治療効果を発揮するために、対象者の組織に移植され得る。さらに、初期の細胞単離体または形成された細胞株は、IL−10関連ポリペプチドをコードする導入遺伝子またはポリヌクレオチドで形質転換され得て、及び次いで、任意で対象者の組織に移植され得る。
IL−10の産出法
本開示のポリペプチドは、非組み換え(例えば、化学合成)及び組み換え法を含む、任意の適切な方法によって産出され得る。
A.化学合成
ポリペプチドを化学的に合成する場合、その合成は、液相または固相を介して進められて良い。固相のポリペプチド合成(SPPS)は、非天然アミノ酸の組み込み及び/またはペプチド/タンパク質の骨格の変成を可能にする。9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、及びt−ブチルオキシカルボニル(Boc)などの、SPPSの多様な形態は、本開示のポリペプチドの合成を可能にする。当該化学合成の詳細は、当技術分野では公知である(例えば、Ganesan A.(2006)Mini Rev.Med.Chem.6:3−10、及びCamarero J.A.et al.,(2005)Protein Pept Lett.12:723−8)。
固相ペプチド合成は、以下のように実施されて良い。アルファ官能性(Nα)及び任意の反応性側鎖は、酸−不安定または塩基−不安定な基によって保護される。この保護基は、アミノ酸を結合する条件下では安定であるが、しかし形成されたそのペプチド鎖を損なわずに、容易に開裂され得る。α−アミノ官能性に対する適切な保護基には、非限定期に、Boc、ベンジルオキシカルボニル(Z)、o−クロロベンジロキシカルボニル、bi−フェニルイソプロピロキシカルボニル、tert−アミロキシカルボニル(Amoc)、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシ−ベンジルオキシカルボニル、o−ニトロスルフェニル、2−シアノ−t−ブトキシ−カルボニル、Fmoc、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキサ−1−イリデン)エチル(Dde)などを含む。
適切な側鎖保護基には、非限定的に、アセチル、アリル(All)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジル(Bzl)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジロキシメチル(Bom)、o−ブロモベンジロキシカルボニル、t−ブチル(tBu)、t−ブチルジメチルシリル、2−クロロベンジル、2−クロロベンジロキシカルボニル、2,6−ジクロロベンジル、シクロヘキシル、シクロペンチル、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキサ−1−イリデン)エチル(Dde)、イソプロピル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンジルスルホニル(Mtr)、2,3,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)、ピバリル、テトラヒドロピラン−2−イル、トシル(Tos)、2,4,6−トリメトキシベンジル、トリメチルシリル及びトリチル(Trt)を含む。
この固相合成において、C末端アミノ酸は、適切な支持物質に結合する。適切な支持物質とは、その合成過程の段階的縮合及び開裂反応に対する試薬及び反応条件に対して不活性化であり、及び使用されている反応媒体に溶解されないものである。市販の支持物質の例示には、反応基及び/またはポリエチレングリコールで修飾された、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、クロロメチル化スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ヒロドキシメチル化またはアミノメチル化スチレン/ジビニルベンゼン共重合体などを含む。ペプチド酸の調合が望まれる場合には、ポリスチレン(1%)−ジビニルベンゼンまたは4−ベンジロキシベンジル−アルコール(Wang−アンカー)もしくは2−クロロトリチルクロライドで誘導されたTentaGel(登録商標)が使用できる。ペプチドアミドのケースにおいて、ポリスチレン(1%)ジビニルベンゼンまたは5−(4′−アミノエチル)−3′,5′−ジメトキシフェノキシ)吉草酸(PAL−アンカー)、またはp−(2,4−ジメトキシフェノキシ−アミノメチル)−フェノキシ基(Rink アミドアンカー)で誘導されたTentaGel(登録商標)が使用できる。
ポリマー支持体への結合は、C末端のFmoc保護アミノ酸と、エタノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、または類似の溶剤に活性化剤を添加したその支持体との、室温または高温(例えば、40℃から60℃の間)での、例えば、2から72時間の反応によって達成できる。
Nα保護アミノ酸(例えば、Fmocアミノ酸)とPAL、WangまたはRinkアンカーとの結合は、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールの存在または不在の下で、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、もしくはその他のカルボジイミド、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロホウ酸塩(TBTU)またはその他のウロニウム塩、O−アシル−尿素、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス−ピロリジノ−ヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)もしくはその他のリン酸塩、N−ヒドロキシスクシンイミド、その他のN−ヒドロキシイミド又はオキシムなどのカップリング剤の手助けによって、例えば、HOBtを加えたTBTUの助けを借りて、例えば、ジイソプロピルエチルアミン(IDEA)、トリエチルアミンまたはN−メチルモルホリンなどの塩基の添加が有りまたは無しで、例えば、ジイソプロピルエチルアミンの2〜72時間の反応で、(例えば、1.5〜3倍過剰のアミノ酸及びカップリング剤においては3時間で、例えば、2倍過剰及び温度が約10℃から50℃で、例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンまたはジクロロメタンなどの溶剤の場合は25℃で、例えばジメチルホルムアミドで)実行できる。
カップリング剤の代わりに、活性エステル(例えば、ペンタフルオロフェニル、p−ニトロフェニルなど)Nα−Fmoc−アミノ酸の対称無水物、その酸塩化物または酸フッ化物が、前述の条件下で使用できる。当該Nα保護アミノ酸(例えば、Fmocアミノ酸)は、DIEAを添加したジクロロメタン中で、10から120分、例えば20分の反応時間で、しかしこの溶媒及びこの塩基の使用には限定されずに、2−クロロトリチルレジンと結合できる。
当該保護アミノ酸の連続カップリング反応は、従来からのペプチド合成法に従って、通常は自動化のペプチド合成装置で、実行できる。固相上での結合アミノ酸のNα−Fmoc保護基の開裂後に、例えば、ジメチルホルムアミド中のピペリジン(10%から50%)で5から20分間の、例えば、DMF中に50%のピペリジンで2分間を2回の、及びDMF中に20%のピペリジンで15分間を1回の処理によって、3倍から10倍過剰の、例えば、10倍過剰の次の保護アミノ酸を、ジクロロメタン、DMFまたはそれら2つの混合物などの不活性、非水系、極性溶媒中で、約10℃から50℃の間の温度、例えば25℃で、前のアミノ酸と結合させる。そのNα−Fmocアミノ酸のPAL、WangまたはRinkアンカーへのカップリング反応に対する前述の試薬は、カップリング剤として適切である。この保護アミノ酸、または塩化物もしくはフッ化物、またはそれらの対称無水物の活性エステルもまた、互換的に使用できる。
固相合成の最後に、ペプチドを、支持物質から開裂させ、一方同時に側鎖の保護基を開裂させる。開裂は、硫化ジメチル、硫化エチルメチル、チオアニソール、チオクレゾール、m−クレゾール、アニソールエタンジチオール、フェノールまたは水、などの5%〜20%V/Vのスカベンジャー、例えば、15%V/Vの硫化ジメチル/エタンジチオール/m−クレゾールの1対1対1を伴う、トリフルオロ酢酸またはその他の強酸媒体で、0.5〜3時間、例えば2時間以内で実行できる。完全に保護された側鎖を持つペプチドは、2対2対6の氷酢酸/トリフルオロエタノール/ジクロロメタンで、その2−クロロトリチル・アンカーを開裂することによって取得する。この保護されたペプチドは、シリカゲル上のクロマトグラフィーによって精製できる。仮に当該ペプチドが、Wangアンカーを介した固相上で結合されている場合には、及び仮に、C末端のアルキルアミド化を伴うペプチドを取得したいのであれば、開裂は、アルキルアミンまたはフルオロアルキルアミンを伴ったアミノ分解によって、実行できる。このアミノ分解は、約−10℃から50℃の間の温度(例えば、約25℃)で、及び約12から24時間(例えば、約18時間)で実行する。さらに、このペプチドは、例えば、メタノールを伴った、再エステル化の支援によって開裂可能である。
当該ペプチドを沈殿させ、及びしたがってそのスカベンジャーを分離し、ならびにそのエーテルに残っている保護基を開裂させるためには、得られるその酸性溶液は、3から20倍量の冷エーテルまたはn−ヘキサン、例えば、10倍過剰のジエチルエーテルと混和されて良い。さらに精製は、そのペプチドを、氷酢酸から数回再沈殿させることによって、実行できる。得られる沈殿物は、水またはtert−ブタノール、もしくはその2つの溶媒の混合物、例えば、tert−ブタノール/水の1対1混合物中に取り出し、及び凍結乾燥させる。
得られたペプチドは、酢酸形態での弱塩基性レジンによるイオン交換、非誘導体ポリスチレン/ジビニルベンゼン共重合体の疎水性吸着クロマトグラフィー(例えば、Amberlite(登録商標)XAD)、シリカゲル上での吸着クロマトグラフィー、例えば、カルボキシメチルセルロース上での、イオン交換クロマトグラフィー、例えば、Sephadex(登録商標)G−25上での、分配クロマトグラフィー、向流分配クロマトグラフィー、または高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、例えば、オクチルまたは オクタデシルシリルシリカ(ODS)相上での、逆相HPLCを含む、多様なクロマトグラフィー法によって精製できる。
B.組み換え生産
ヒト及びマウスIL−10の調合を記述する方法は、例えば、米国特許第5,231,012号に見出され得て、そこでは、組み換え及びその他の合成技術を含む、IL−10活性を有するタンパク質の合成法を教示している。IL−10は、ウイルス由来であり得て、及びEpstein Barrウイルス(BCRF1タンパク質)からのウイルスIL−10のクローン化及び発現が、Moore et al.,(1990)Science 248:1230に開示されている。IL−10は、本明細書に記述されるものなどの、当技術分野で公知の標準的技術を利用した多数の方法で、取得され得る。組み換えヒトIL−10はまた、例えば、PeproTech,Inc.、Rocky Hill、N.J.から市販されている。
ポリペプチドが、組み換え技術を利用して産出される場合、そのポリペプチドは、それぞれ細菌(例えば、E.coli)または酵母宿主細胞などの原核生物または真核細胞であり得る、任意の適切な構成体及び任意の適切な宿主細胞を利用して、細胞内タンパク質または分泌タンパク質として産生されて良い。宿主細胞として使用されて良い真核細胞のその他の例示には、昆虫細胞、哺乳類細胞、及び/または植物細胞を含む。哺乳類の宿主細胞を使用する場合、それらには、ヒト細胞 (例えば、HeLa、293、H9及びJurkat細胞)、マウス細胞(例えば、NIH3T3、L 細胞、及びC127細胞)、霊長類細胞(例えば、COS1、COS7及びCV1)、及びハムスター細胞(例えば、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞)を含んで良い。
ポリペプチドの発現に適した、多様な宿主ベクター系は、当技術分野で公知の標準手順に従って取り入れられて良い。例えば、Sambrook et al.,1989 Current Protocols in Molecular Biology Cold Spring Harbor Press,New York、及びAusubel et al.1995 Current Protocols in Molecular Biology,Eds.Wiley and Sonsが参照される。遺伝子物質の宿主細胞への導入法には、例えば、形質転換、エレクトロポレーション、接合、リン酸カルシウム法などを含む。導入されたポリペプチドをコードする核酸の安定発現を与えるために、転写の方法が選択され得る。このポリペプチドをコードする核酸は、遺伝性のエピゾーム要素(例えば、プラスミド)として与えられ得て、またはゲノム的に統合され得る。対象となるポリペプチドの産出に使用する多様な適切なベクターが、商業的に入手可能である。
ベクターは、宿主細胞における染色体外維持に対して提供でき、またはその宿主細胞ゲノムへの統合に対して提供できる。発現ベクターは、転写及び翻訳制御配列を提供し、及びそのコード領域が、その転写開始領域、及び転写ならびに翻訳終了領域の転写制御条件の下で、動作可能に連結している場所での、誘導可能なまたは構成可能な発現を与える。一般に、転写及び翻訳制御配列には、非限定的に、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、及びエンハンサーまたは活性化因子配列を含んで良い。プロモーターは、構成可能または誘導可能のいずれかであり得て、及び強力な構成可能プロモーターであり得る(例えば、T7)。
発現構造体は一般に、対象となるタンパク質をコードする、核酸配列の挿入をもたらすために、そのプロモーター配列の近くに位置する簡便な制限部位を有する。その発現宿主において動作可能な選択的マーカーが、そのベクターを含む細胞の選択を促進するために存在して良い。さらに、その発現構造体は、追加要素を含んで良い。例えば、当該発現ベクターは、1つまたは2つの複製システムを有して良く、したがって、それが、発現に対応して、有機体、例えば、哺乳類または昆虫細胞において、及びクローン化ならびに増幅に対応した原核生物宿主において、維持されることが可能になる。さらに、その発現構造体は、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする、選択的マーカー遺伝子を含んで良い。選択的遺伝子は、当技術分野では公知であり、及び使用される宿主によって変化する。
タンパク質の単離及び精製は、当技術分野で公知の方法に従って達成できる。例えば、タンパク質は、恒常的に及び/または誘導時にタンパク質を発現するように、一般には修飾された細胞の溶解液から、または一般に、サンプルの抗原−タンパク質抗体との接触、非特異的結合物質の洗浄、及び特異的結合タンパク質の溶出を取り込む、合成反応の混合物から免疫親和性精製によって単離できる。この単離されたタンパク質をさらに、透析及びタンパク質の精製に通常採用されるその他の方法によって、精製できる。1つの実施形態において、当該タンパク質は、金属キレート・クロマトグラフィー法を利用して単離されて良い。タンパク質には、単離を促進する修飾を含んで良い。
当該ポリペプチドは、実質的に純粋なまたは単離された形態(例えば、その他のポリペプチドを含まない)で調合されて良い。当該ポリペプチドは、存在する可能性があるその他成分(例えば、その他ポリペプチドまたはその他宿主細胞成分)と関連するポリペプチドを濃縮した組成物中に、存在して良い。例えば、精製されたポリペプチドは、そのポリペプチドが、実質的にその他の発現タンパク質が無い、例えば、約90%未満で、約60%未満で、約50%未満で、約40%未満で、約30%未満で、約20%未満で、約10%未満で、約5%未満で、または約1%未満である組成物中に存在するように提供されて良い。
IL−10ポリペプチドは、そのIL−10ポリペプチドをコードできる構造体を提供するための、当技術分野で公知の異なるIL−10関連核酸を操作する、組み換え技術を使用して生成されて良い。特定のアミノ酸配列が与えられる場合、当業者は、例えば、分子生物学における背景及び経験を考慮して、そのようなアミノ酸配列をコードする多様な異なる核酸分子を認識していることは、理解されよう。
アミド結合置換
いくつかのケースにおいて、IL−10には、ペプチド結合以外の1つ以上の結合を含み、例えば、少なくとも2つの隣接するアミノ酸が、アミド結合以外の結合を介して、接合している。例えば、望ましくないタンパク質分解またはその他の分解手段を減らす、もしくは排除するために、及び/または結成の安定性を増加させるために、及び/または構造の柔軟性を制限または減らすために、IL−10の骨格内の1つ以上のアミド結合が、置換され得る。
他の例示において、IL−10における1つ以上のアミド連結(−CO−NH−)が、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2CH2−、−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−または−CH2SO−などの、アミド連結の等量式である連結で置き換えられる。IL−10における1つ以上のアミド連結はまた、例えば、還元された等量式の擬ペプチド結合で、置き換えられる。Couder et al.(1993)Int.J.Peptide Protein Res.41:181−184が参照される。そのような置換及びそれがどのように影響するのかについては、当業者には公知である。
アミノ酸置換
IL−10ポリペプチドにおいて、1つ以上のアミノ酸置換が行われる。以下は、非限定的な例示である。
a)アルキル置換疎水性アミノ酸の置換であり、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ノルロイシン、(S)−2−アミノ酪酸、(S)−シクロヘキシルアラニン、または分岐状、環状及び直鎖状アルキル、アルケニルもしくはアルキニル置換を含む、C1−C10炭素からの脂肪族側鎖によって置換されたその他の単純なアルファアミノ酸を含む。
b)芳香族置換疎水性アミノ酸の置換であり、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、スルホチロシン、ビフェニルアラニン、1−ナフチルアラニン、2−ナフチルアラニン、2−ベンゾチエニルアラニン、3−ベンゾチエニルアラニン、ヒスチジンを含み、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アザ、ハロゲン化(フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)もしくはアルコキシ(C1−C4から)―上記の芳香族アミノ酸の置換形態を含み、実例としては、2−,3−または4−アミノフェニルアラニン、2−,3−または4−クロロフェニルアラニン、2−,3−または4−メチルフェニルアラニン、2−,3−または4−メトキシフェニルアラニン、5−アミ−、5−クロロ−、5−メチル−または5−メトキシトリプトファン、2′−,3′−,または4′−アミノ−、2′−,3′−,または4′−クロロ−、2,3,または4−ビフェニルアラニン、2′−,3′−,または4′−メチル−、2−,3−または4−ビフェニルアラニン、及び2−または3−ピリジルアラニンである。
c)塩基性側鎖を含むアミノ酸の置換であり、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸、ホモアルギニンを含み、前述のアミノ酸のアルキル、アルケニル、またはアリール置換(C1−C10分岐、直鎖、または環状)誘導体を含み、その置換が、例えば、プロR位における、ヘテロ原子(アルファ窒素、または遠位窒素もしくは複数窒素など)上にあるか、またはアルファ炭素上にある。実例として役立つ化合物には、N−イプシロン−イソプロピルリジン、3−(4−テトラヒドロピリジル)−グリシン、3−(4−テトラヒドロピリジル)−アラニン、N,N−ガンマ、ガンマ′−ジエチル−ホモアルギニンを含む。アルファ−メチル−アルギニン、アルファ−2,3−ジアミノプロピオン酸、アルファ−メチル−ヒスチジン、アルファ−メチル−オルニチンなどの化合物もまた含まれ、ここで、そのアルキル基は、そのアルファ炭素のプロR位を占める。アルキル、芳香族、ヘテロ芳香族(ここでそのヘテロ芳香族基が、1つ以上の窒素、酸素または硫黄原子を単独または組み合わせで有する)、カルボン酸または酸塩化物、活性エステル、活性アザライド、及び関連誘導体、ならびにリジン、オルニチン、または 2,3−ジアミノプロピオン酸などの、多数の公知の活性化誘導体のいずれかから形成される、アミドもまた含まれる。
d)酸性アミノ酸の置換であり、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、2,4−ジアミノプロピオン酸のチロシン、アルキル、アリール、アリールアルキル、及びヘテロアリール・スルホンアミド、オルニチンまたはリジン及びテトラゾール置換アルキルアミノ酸を含む。
e)側鎖のアミノ酸残基の置換であり、アスパラギンまたはグルタミン酸の、アスパラギン、グルタミン、及びアルキル又は芳香族置換誘導体を含む。
及び、f)ヒドロキシル含有アミノ酸の置換であり、セリン又はスレオニンの、セリン、スレオニン、ホモセリン、2,3−ジアミノプロピオン酸、及びアルキル又は芳香族置換誘導体である。
いくつかのケースにおいて、IL−10は、1つ以上の天然由来の非遺伝子的にコードされたL−アミノ酸、合成L−アミノ酸、またはアミノ酸のD−光学異性体を含む。例えば、IL−10は、D−アミノ酸だけを含むことができる。例えば、IL−10は、ヒドロキシプロリン、β−アラニン、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、m−アミノメチル安息香酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、α−アミノイソ酪酸、N−メチルグリシン(サルコシン)、オルニチン、シトルリン、t−ブチルアラニン、t−ブシルグリシン、N−メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン3−ベンゾチエニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、2−フルオロフェニルアラニン、3−フルオロフェニルアラニン、4−フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、β−2−チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、ホモアルギニン、N−アセチルリジン、2,4−ジアミノ酪酸、rho−アミノフェニルアラニン、N−メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン、ε−アミノヘキサン酸、ω−アミノヘキサン酸、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノオクタン酸、ω−アミノデカン酸、ω−アミノテトラデカン酸、シクロヘキシルアラニン、α,γ−ジアミノ酪酸、α,β−ジアミノプロピオン酸、δ−アミノ吉草酸、及び2,3−ジアミノ酪酸の残基の1つ以上を含むことができる。
追加の修飾
システイン残基またはシステイン類似体は、ジスルフィド連結を介した、他のペプチドへの連結を提供するために、またはIL−10ポリペプチドの環化を提供するために、IL−10ポリペプチドに導入され得る。システインまたはシステイン類似体の導入法は、当技術分野で公知であり、米国特許第8,067,532号が参照される。
IL−10ポリペプチドは、環化され得る。1つ以上のシステインまたはシステイン類似体は、IL−10ポリペプチドに導入され得て、ここでその導入されたシステインまたはシステイン類似体は、2番目に導入されたシステインまたはシステイン類似体と、ジスルフィド結合を形成できる。環化のその他の手段には、オキシムリンカーまたはランチオニンリンカーの導入を含み、米国特許第8,044,175号が参照される。環化結合を形成できるアミノ酸(または非アミノ酸モイエティー)の任意の組み合わせが、使用され及び/または導入され得る。環化結合は、架橋の導入を可能にする官能基を持つ、アミノ酸(または(CH2)n−CO−もしくは−(CH2)n−C6H4−CO−を持つアミノ酸)の任意の組み合わせを伴って生成され得る。いくつかの例示は、ジスルフィド、−(CH2)n−カルバ架橋などのジスルフィド模倣体、チオアセタール、チオエーテル架橋(シスタチオニンまたはランチオニン)及びエステルならびにエーテルを含む架橋である。これらの例示において、nは任意の整数であり得るが、しばしば10未満である。
その他の修飾には、例えば、N−アルキル(またはアリール)置換(Ψ[CONR])、またはラクタム及びその他の環状構造を構築するためのバックボーン架橋を含む。その他の誘導体には、C末端ヒドロキシメチル誘導体、o−変成誘導体(例えば、C末端ヒドロキシメチルベンジルエーテル)、アルキルアミド及びヒドラジドなどの置換アミドを含むN末端変成誘導体を含む。
いくつかのケースにおいて、IL−10ポリペプチドにおける1つ以上のL−アミノ酸が、1つ以上のDアミノ酸に置き換えられる。
いくつかのケースにおいて、IL−10ポリペプチドは、レトロインベルソ類似体である(Sela and Zisman(1997)FASEB J.11:449を参照)。レトロ−インベルソペプチド類似体は、そのアミノ酸配列の方向が逆転して(逆になって)おり、及びその場所の1つ以上のアミノ酸のキラリティー、D−またはL−が、例えば、L−アミノ酸よりむしろD−アミノ酸を使用して、反転(上下がさかさま)している。Jameson et al.(1994)Nature 368:744、及びBrady et al.(1994)Nature 368:692が参照される。
IL−10ポリペプチドには、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、または脂質二分子、ミセル、細胞膜、細胞小器官膜、もしくは小胞膜の横断を容易にする有機または無機分子を指す、「Protein Transduction Domain(タンパク質形質導入ドメイン)」(PTD)を含む。他の分子に結合したPTDは、その分子が膜を横断する、例えば、細胞外空間から細胞内空間へ、細胞質ゾルから細胞小器官へ移動することを容易にする。いくつかの実施形態において、PTDは、IL−10ポリペプチドのアミノ末端へ共有結合する一方で、いくつかの実施形態において、PTDは、IL−10ポリペプチドのカルボキシ末端へ共有結合する。例示的なタンパク質形質導入ドメインには、非限定的に、最小ウンデカペプチド・タンパク質形質導入ドメイン(YGRKKRRQRRRを含む、HIV−1 TATの47〜57残基に相当する。SEQ ID番号1)、細胞に直接侵入するのに十分な数のアルギニン残基を含むポリアルギニン配列(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、または10〜50のアルギニン)、VP22ドメイン(Zender et al.(2002)Cancer Gene Ther.9(6):489−96)、Drosophila Antennapedia(ショウジョウバエ属アンテナペディア)のタンパク質形質導入ドメイン(Noguchi et al.(2003)Diabetes 52(7):1732−1737)、切り捨てられたヒトカルシトニンペプチド(Trehin et al.(2004)Pharm.Research 21:1248−1256)、ポリリジン(Wender et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:13003−13008)、RRQRRTSKLMKR(SEQ ID番号2)、トランスポータンGWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(SEQ ID番号3)、KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(SEQ ID番号4)、及びRQIKIWFQNRRMKWKK(SEQ ID番号5)を含む。例示的なPTDsには、非限定的に、YGRKKRRQRRR(SEQ ID番号1)、RKKRRQRRR(SEQ ID番号6)、3アルギニン残基から50アルギニン残基までのアルギニンホモポリマーを含み、例示的なPTDドメインのアミノ酸配列には、非限定的に、YGRKKRRQRRR(SEQ ID番号1)、RKKRRQRR(SEQ ID番号7)、YARAAARQARA(SEQ ID番号8)、THRLPRRRRRR(SEQ ID番号9)、GGRRARRRRRR(SEQ ID番号10)のいずれかを含む。
IL−10ポリペプチドのC末端アミノ酸のカルボキシ基COR3は、遊離形態(R3=OH)、または生理的に容認されるアルカリまたはアルカリ土類塩、例えば、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩の形態で、存在できる。このカルボキシ基はまた、例えば、メタノール、分岐または非分岐状C1−C6アルキルアルコール、例えば、エチルアルコールまたはtert−ブチルアルコールなどの、第一級、第二級または第三級アルコールでエステル化され得る。このカルボキシ基はまた、アンモニア、分岐または非分岐状C1−C6アルキルアミンまたはC1−C6ジアルキルアミン、例えば、メチルアミンまたはジメチルアミンなどの、第一級または第二級アミンでアミド化され得る。
IL−10ポリペプチドのN末端アミノ酸NR1R2のアミノ基は、遊離形態(R1=H、及びR2=H)、または例えば、塩化物または酢酸塩などの生理的に容認される塩の形態で存在できる。このアミノ基はまた、R1=H及びR2=アセチル、トリフルオロアセチル、またはアダマンチルなどの酸で、アセチル化され得る。このアミノ基は、前述したものなど(例えば、Fmoc、ベンジロキシ−アルボニル(Z)、Boc、及びAlloc)の、ペプチド合成に慣例的に使用されるアミノ保護基によって保護される形態で存在できる。このアミノ基は、R1及び/またはR2=C1−C6アルキルまたはC2−C8アルケニルもしくはC7−C9アラルキルで、N−アルキル化され得る。アルキル残基は、直鎖状、分岐状または環状(例えば、各々エチル、イソプロピル及びシクロヘキシル)であり得る。
IL−10生産の考察
仮に、細菌(例えば、E.coli)発現システムにおいて、封入体を産生するならば、それは、変成され、フォールドを解かれ、及び混入物質から精製される必要がある。そのような混入物質には、宿主タンパク質、IL−10の修飾された変異体(例えば、1つ以上のリジン残基でアセチル化されたIL−10モノマー)、変異体を持つヘテロダイマー(例えば、非アセチル化IL−10モノマーに結合したアセチル化IL−10モノマー)、及び共有結合したIL−10ホモダイマーを含む。したがって、アセチル化ホモダイマー、ヘテロダイマー変異体及び共有結合ダイマーを含まない、実質的に純粋な非共有結合ダイマーのIL−10を取得するには、IL−10の精製が必要である。米国特許第5,710,251号は、細菌発現システムにおいて、封入体を産生したIL−10を、変成及び再フォールドの後で取り入れて良い、精製プロセスを記述している。
首尾よく目的を達成するためには、精製プロセスが、生物活性及び/または可溶性タンパク質の回収を、部分的に、高収量にするはずである。これは、その封入体中のタンパク質を投入した、可溶化及び/または再フォールディングプロセスを最適化することによって達成される。封入体からのタンパク質の再フォールディングは、変成による封入体の可溶化、変成体の除去、及び特定小分子の添加物による再フォールディングの支援を含む、複数の要因に影響される。当該可溶化及び再フォールディングプロセスに関連する多様な方法論を、例えば、Rudolph R.and Lilie,H.(1996)FASEB 10:49−56、Lilie,H.,et al.(1998)Current Opinion Biotechnol.9:497−501、Middelberg,A.(2002)Trends Biotechnol.20(10):437−443、Hevehan,D.L.and Clark,E.D.B.(1997)Biotechnol.Bioeng.54(3):221−30、De Bernardez Clark,E.(1998)Current Opinion Biotechnol.9:157−63、Tsumoto,K.et al.(2003)Protein Expression & Purification 28:1−8に見出すことができる。
当該可溶化及び再フォールディングプロセスは、3段階で実施されて良い。
1)封入体の単離。封入体は、比較的高密度であり、そのため遠心分離によってペレット化できる。細胞は通常、高圧均質化(任意で、リゾチーム処理に続く)によって破壊される。細胞溶解は、堆積物の形態で共に蓄積したものから、無傷細胞が、封入体を含有することを防ぐために、完全に行う必要がある。遠心分離に続いて、ペレットからの混入物を除去するために、低濃度のカオトロピック剤(例えば、0.5〜1Mのグアニジン−HClまたは尿素)または洗浄剤(例えば、1%のTriton X−100または1mg/mLのナトリウムデオキシコール)のいずれかを含む、緩衝液で洗浄して良い。
2)凝集したタンパク質の可溶化。可溶化は、単分子分散をもたらし及び非天然由来の鎖内または鎖間相互作用を最小にする必要がある。可溶化剤、例えば、尿素、グアニジンHCl、または洗浄剤の選択は、可溶化効果において、変成状態のそのタンパク質構造において、及びその後の再フォールディングにおいて、鍵となる役割を果たす。
1つの実施形態において、前述の洗浄された封入体は、再懸濁され、及び強力な変成剤及び還元剤(例えば、20mMのDTTまたはb−メルカプトエタノール)を含む緩衝液内で培養されて良い。その還元剤は、全てのシステインを還元状態に保ち、及びその調合時に形成されたジスルフィド結合を開裂する。通常、30℃を上回る培養温度が、その可溶化プロセスを促進するために使用される。可溶化の最適条件は、タンパク質に特異的であり、及びしたがって、例えば、異なる変異体を選別するための小規模実験(1〜2mL)を実施することによって、各タンパク質に対応して決定される必要がある。潜在的な開始量(カッコ内に網羅)を持つ、可溶化に対する特別変数には、a)pH及びイオン強度などの緩衝組成(50mMのトリス−HCl、pH7.5)、b)培養温度(30℃)、c)培養時間(60分)、d)可溶化剤の濃度(6Mのグアニジン−HClまたは8Mの尿素)、e)総タンパク質濃度(1〜2mg/mL)、及びf)多様化剤対対象タンパク質の比率を含む。
可溶化に続いて、再フォールディング時の凝集をもたらす核として作用する、残った凝集物を除去するために、その溶液を遠心分離(例えば、>100,000gで30分)して良い。通常、超遠心分離法が、最良の結果を与える。
3)可溶化されたタンパク質の再フォールディング。タンパク質の再フォールディングは、単一反応ではなく、及び誤フォールディング、凝集などの、不活性タンパク質へと導くその他の反応と競合する。再フォールディングとその他反応との割合は、変成濃度を減らすための手順及びその溶媒条件の両方によって決定される。複数のタンパク質の再フォールディング・キット及び関連技術が、市販されており(例えば、Pierce Protein Refolding Kit(ピアス・タンパク質再フォールディング・キット)(Thermo Fisher Scientific、Rockford,IL)及び FoldIt(商標登録)タンパク質フォールディング・スクリーン(Hampton Research Inc.、Aliso Viejo,CA))、及び当業者には公知である。
可溶化されたタンパク質の再フォールディングが、その変成剤を除去することによって開始される。再フォールディングの効率は、正しいフォールディングと凝集の間の競合に依存する。その凝集プロセスを減速するために、再フォールディングは通常、低いタンパク質濃度で行われる(例えば、10〜100mg/mL)。緩衝液組成(例えば、pH及びイオン強度)、温度、及び添加成分を含む、再フォールディングに使用する条件には、個別のタンパク質に対して最適化される必要がある。特定の小分子添加剤は、フォールディングの促進及びタンパク質の安定化、またはインビトロならびにインビボの両方での可溶性の増加に効果的である。したがって、小分子の添加は、しばしば化学シャペロンと呼ばれるが、活性タンパク質の回収及びタンパク質フォールディングの効率を増加させ得る。
仮にタンパク質が、ジスルフィド結合を含む場合、その再フォールディング緩衝液を、酸化還元系で補強する必要がある。例を挙げると、低分子量のチオール試薬の還元及び酸化形態(1〜3mMの還元チオール及び5対1から1対1の還元対酸化チオール比率)の混合物の添加が、ジスルフィド結合の形成及びリシャッフルを可能にする適切な酸化還元の潜在性を与える。最も一般的に使用される酸化還元シャッフル剤は、グルタチオンを還元及び酸化し、その他には、システイン及びシステアミンを含む。あるいは、タンパク質は、大過剰の酸化グルタチオンの存在下では、完全に酸化され得て、次いで還元グルタチオンの触媒量を含む再フォールディング緩衝液に希釈される。
当業者は、以下を含む、タンパク質の再フォールディングに対応する異なる方法に精通している。
(a)透析:透析の間、可溶化剤の除去に最も一般的に利用される方法は、その可溶化剤濃度を、ゆっくりと減らすことであり、タンパク質の、適切な再フォールドを可能にする。サンプルと透析緩衝液の容積比は、その可溶化剤の平衡濃度において、タンパク質が完全に再フォールドされるようにする必要がある。
(b)緩慢希釈:このプロセスに伴って、可溶化剤の濃度は、希釈によって減らされ、タンパク質の再フォールド可能になる。この希釈プロセスは通常、緩衝液の段階的な添加で、またはポンプを使用した連続的な添加で、ゆっくりと実施される。
(c)急速希釈:一般に、透析及び緩慢希釈プロセスの間は、タンパク質が、まだ折り畳まれず、しかしもはや変成しない、その可溶化剤の中間濃度に長時間暴露され(例えば、2〜4Mの尿素またはグアニジン−HCl)、及びしたがって、非常に凝集する傾向にある。この凝集傾向はしばしば、その再フォールディング緩衝液への、可溶化タンパク質溶液の急速希釈によって防ぐことができる。凝集はまた、再フォールディング緩衝液への緩慢な可溶化剤、非洗浄スルホベタインなどの添加によって限定され得る。
(d)パルス再生:フォールドを解かれたタンパク質を低濃度に維持し、及びしたがって凝集を制約するには、変成タンパク質の一定分量(「pulses(パルス)」)が、その再フォールディング緩衝液に、定められた時間で添加され得る。2つのパルス間の時間は、個別のタンパク質によって最適化される必要がある。このプロセスは、変成濃度が、その特定タンパク質の再フォールディングを予想させる臨界値に到達したら、停止され得る。
(e)クロマトグラフィー:この方法の利用は、その可溶化剤を、クロマトグラフィー法のステップを利用して除去することである。サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び親和性クロマトグラフィーを含む、異なるクロマトグラフィー法が利用されて良い。この変成体は、当該タンパク質が、そのカラムを通してゆっくりと移行している間に除去され、またはその基材に結合される。この方法は通常、たとえタンパク質濃度がmg/mLの領域であったとしても、高収量の活性タンパク質を与える。もしくは、クロマトグラフィーは、タンパク質の再フォールディング前の変成条件下で、実施され得る。
アミノ酸
当該再フォールディング緩衝液への特定アミノ酸の添加が、その再フォールディングプロセス中に、タンパク質の相溶性を改善すること、及びタンパク質の凝集を抑制することを含む、複数の有益な効果を持つことが観察されている。例示的なアミノ酸は、プロリン、アルギニン塩酸塩(ArgHCl)、アルギニン(Arg)、アルギニンアミド、及びグリシンアミドを含む。一方、これらの効果を生むアミノ酸による作用の背後にある機構は、全体が明らかにはなってはいないが、その機構の理解は、本開示の実践に必要ではない[Yamaguchi,H.et al.,Biomolecules 2014,4:235−51を参照]。
封入体から多数のタンパク質を再フォールディングするために、カゼインキナーゼII、ガンマインターフェロン、p53腫瘍抑制タンパク質、及びインターロイキン−21を含む、アルギニンが応用されてきた。一般的には、増量剤と考えられているアルギニンは、タンパク質へのその適度な結合のために、凝集を抑制することによって効果を発揮できる。アルギニンアミド及びグリシンアミドは、アルギニン以上に異なる部位へ結合する、適度なカオトロピック剤であると報告されており、異なる阻害能力へと導く。対照的に、プロリンは、タンパク質の、プロリンを伴った超分子集合体における、そのフォールディング中間体への結合、及びフォールディング中間体の捕捉を介して、タンパク質の凝集を抑制することによって、それら本来の構造に再フォールドすることを可能にする、と提案されている(Samuel,D.et al.,Protein Sci.2000,9:344−52)。
実施例の節で詳述するが、アルギニンは、透析または希釈によってタンパク質を再フォールディングする際の溶媒に、しばしば使用されるという事実にもかかわらず、IL−10の生産で使用される再フォールド緩衝液へのアルギニンの添加に関しては、科学及び特許文献にほとんど考察が無い(Tsumoto,K.et al.,(2004)Biotechnol.Prog.20:1301−08が参照される)。実施例2のデータは、低濃度のL−アルギニンが、IL−10の収量に良い影響を与えることを見出したことを示す。特に、0.15mg/mLのフォールドを解かれたrHuIL−10を含む、再フォールド緩衝液への、0.01〜0.1Mのアルギニンの添加は、適切に折り畳まれた、ダイマーのIL−10を少なくとも2倍増加に導いた。
IL−10機能を強化及び/または模倣するための特定変成
本明細書に開示する治療様式(例えば、IL−10)の1つ以上の物理的特徴及び/またはそれらが投与される方法を改善することは、しばしば有益であり、及び時には必須である。物理的特徴の改善には、例えば、免疫性を調節すること、水溶性、生物学的利用能、血清半減期、及び/または治療の半減期を増加させる方法、及び/または生物活性を調節することを含む。特定の変成もまた、例えば、検出アッセイ(例えば、エピトープタグ)に使用する抗体を活性化すること、及びタンパク質精製の簡便性を与えるために、有用なことがある。そのような改善は、その治療様式の生物活性に悪影響を与えずに、及び/またはその免疫性を高まるように付与される必要がある。
IL−10のペグ化は、本開示によって意図された、1つの特徴的な変成であり、一方その他の変成には、非限定的に、グリコシル化(N−及びO−連結)、ポリシアル化、血清アルブミンを含むアルブミン融合分子(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、犬血清アルブミン、またはウシ血清アルブミン(BSA))、例えば、共役脂肪酸鎖を介したアルブミン結合(アシル化)、及びFc−融合タンパク質を含む。
ペグ化:タンパク質治療の臨床効果は、短い血漿半減期、及びプロテアーゼ分解に対する脆弱性のために、しばしば制約される。多数の治療用タンパク質(例えば、好中球)の研究は、そのような困難は、ポリペプチド配列を、多様な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンのいずれかへ共役または連結させることを含む、多様な変成によって克服される可能性があることを示している。これは、連結モイエティーを、タンパク質及び非タンパク質性ポリマー、例えば、PEG、の両方へ、共有結合させることによって、しばしば効果を発揮する。そのようなPEG共役生体分子は、良好な物理的及び熱安定性、酵素分解に対する脆弱性からの保護、溶解性の向上、より長いインビボ循環半減期及び減少したクリアランス、低下した免疫原性及び抗原性、ならびに低下した毒性を含む、臨床的に有益な特徴を保持することが示されている。
薬物動態パラメーターにおける、ペグ化の有益な効果に加えて、ペグ化それ自身が、活性を高める可能性がある。例えば、PEG−IL−10は、非ペグ化IL−10に比べて、特定のがんに対してより効果的であることが示されている(欧州特許第206636A2号、を参照)。本開示の特定の実施形態は、厄介な副作用を引き起こすこと無く、当該IL−10分子の薬物動態プロファイルを改善する、相対的に小さなPEG(例えば、5kDa)の使用を意図しており、例えば、PEG−IL−10分子が、慢性使用に対して、特に効果がある。
ポリペプチド配列への共役に適しているPEGsは一般に、室温の水に可溶性であり、及び一般式R(O−CH2−CH2)nO−Rを有し、ここでRは、水素またはアルキルもしくはアルカノール基などの保護基であり、及びここでnは、1から1000の整数である。Rが保護基の場合、一般に1から8の炭素を有する。このポリペプチド配列に共役したPEGは、直鎖状または分岐状であり得る。分岐状PEG誘導体、「star−PEGs」及び複数アームPEGsが、本開示により企図される。本開示に使用されるPEGの分子量は、いかなる特定範囲にも制約されず、及び例示は、本明細書の他の場所で説明されるが、例を挙げれば、特定の実施形態は、5kDaから20kDaの間の分子量を有し、一方その他の実施形態は、4kDaから10kDaの間の分子量を有する。
本開示はまた、当該PEGsが、異なるn値を持し、及び多様に異なったPEGsが、特定の比率で存在する、共役体の組成物を意図している。例えば、いくつかの組成物は、n=1、2、3及び4の共役体の混合物を含む。いくつかの実施形態において、n=1である共役体のパーセンテージは、18〜25%、n=2である共役体のパーセンテーは、50〜66%、n=3である共役体のパーセンテージは、12〜16%、及びn=4である共役体のパーセンテーは、最大で5%である。そのような組成物は、当技術分野で公知の反応条件及び精製法によって、生産され得る。例示的な反応条件は、本明細書全体で記述される。陽イオン交換クロマトグラフィーが、共役体の分離に使用可能であり、及び次いで留分が、例えば、結合した望ましい数のPEGsを有する共役体を含むことが特定されて、非変成タンパク質配列、及び結合したその他の数のPEGsを有する共役体が無いように精製される。
ペグ化は、ポリペプチドのN終末端のアルファアミノ基、リジン残基の側鎖のイプシロンアミノ基、及びヒスチジン残基の側鎖のイミダゾール基において最も頻繁に起こる。ほとんどの組み換えポリペプチドは、単一のアルファ及び多数のイプシロンアミノ及びイミダゾール基を保有するので、多数の位置異性体が、そのリンカー化学に依存して生成され得る。当技術分野で公知の一般的なペグ化戦略が、本明細書では適用され得る。PEGは、当該ポリペプチド配列の1つ以上の遊離アミノまたはカルボキシ基と、ポリエチレングリコール間の結合を調節する末端反応基(「spacer(スペーサー)」)を介して、本開示のポリペプチドに結合される。その遊離アミノ基へ結合されるスペーサーを有するPEGには、ポリエチレングリコールのコハク酸エステルを、N−ヒドロキシスクシンイミドで活性化することによって調合され得る、N−ヒドロキシスクシンイミド・ポリエチレングリコールを含む。他の、遊離アミノ基と結合する活性化ポリエチレングリコールは、2,4−ビス(O−メトキシポリエチレングリコール)−6−クロロ−s−トリアジンであり、ポリエチレングリコール・モノメチルエステルと塩化シアヌルを反応させることによって調合され得る。当該遊離アミノ基と結合する活性化ポリエチレングリコールには、ポリオキシエチレンジアミンを含む。
スペーサーを有するPEGへの、本開示のポリペプチド配列の1つ以上の共役は、多様な従来の方法によって実行されて良い。例えば、当該共役反応は、pH5から10の溶液内で、4℃から室温までの温度で、30分から20時間で、4対1から30対1の試薬とタンパク質の比率を活用して、実施され得る。反応条件は、支配的に望ましい度合いの置換が生成される反応を指向して、選択されて良い。一般に、低温、低pH(例えば、pH=5)、及び短い反応時間は、PEGs結合の数を減らす傾向にある一方で、高温、中性から高pH(例えば、pH≧7)、及び長い反応時間は、PEGs結合の数を増やす傾向にある。当技術分野で公知の多様な手段が、当該反応を終結させるために使用されて良い。いくつかの実施形態において、当該反応を、その反応混合物を酸性化し、及び例えば、−20℃で凍結することによって、終結させる。多様な分子のペグ化は、例えば、米国特許第5,252,714号、第5,643,575号、第5,919,455号、第5,932,462号、及び第5,985,263号で考察されている。PEG−IL−10は、例えば、米国特許第7,052,686号に記述されている。本明細書で使用する特定の反応条件は、実施例の節で説明される。
本開示はまた、PEG模倣剤の使用を意図している。組み換えのPEG模倣剤は、いくつかの追加の有益な特徴を与えながら、PEGの属性(例えば、強化された血清半減期)を保持するように開発されている。例を挙げると、PEGと類似した拡張構成を形成することができる、単純なポリペプチド鎖(例えば、Ala、Glu、Gly、Pro、Ser及びThrを含む)は、対象となるペプチドまたはタンパク質へ、事前に組み換え的に融合されて、生産され得る(例えば、Amunix′XTEN technology、Mountain View,CA)。これは、その製造工程での追加の共役ステップの必要性を取り除く。さらに、確立された分子生物学の技術は、そのポリペプチド鎖の側鎖組成物の制御を可能にし、免疫性及び製造特性の最適化を可能にする。
グリコシル化:本開示の目的に対して、「glycosylation(グリコシル化)」は、タンパク質、脂質またはその他の有機分子に糖鎖を結合する酵素プロセスを、幅広く指すことを意味する。本開示に連動した用語「glycosylation(グリコシル化)」の使用は一般に、1つ以上の炭水化物部分を追加または削除することを意味する(基になるグリコシル化部位を除去するか、または化学的及び/また酵素的手段によってグリコシル化を削除するかのいずれかで)、及び/または天然配列には存在しないかもしれない、1つ以上のグリコシル化を追加することを意味することを意図している。さらに、この語句には、存在する多様な炭水化物モイエティーの性質及び特徴における変化を取り込む、天然タンパク質のグリコシル化における定性的な変化を含む。
グリコシル化は、IL−10などのポリペプチドの物理的特徴(例えば、溶解性)に劇的に影響を与えることができ、及びまたタンパク質の安定性、分泌、ならびに細胞内局在化にとって重要であり得る。グリコシル化されたポリペプチドはまた、高められた安定性を示す可能性があり、または半減期などの、1つ以上の薬物動態特性を改善することもある。さらに、溶解性改善は、例えば、非グリコシル化ポリペプチドを含む処方物に比べて、医薬品投与に対してより適切な処方物の生成を可能とする。
グリコシル化部位の追加は、そのアミノ酸配列を変更して達成され得る。当該ポリペプチドの変成は、例えば、1つ以上のセリンまたはスレオニン残基(O−連結のグリコシル化部位に対して)、もしくはアスパラギン残基(N−連結のグリコシル化部位に対して)の添加のよって、またはそれらによる置換で、行われて良い。N−連結及びO−連結オリゴ糖及び各タイプに見出される糖残基の構造は、異なっていてよい。両方に通常見出される糖の1つのタイプは、N−アセチルノイラミン酸(以降、シアル酸と呼ぶ)である。シアル酸は通常、N−連結及びO−連結オリゴ糖の両方の末端残基であり、及びその負電荷のおかげで、その糖タンパク質に酸性の特徴を与えることがある。本開示の特定の実施形態は、N−グリコシル化変異体の生成及び利用を含む。
本開示のポリペプチド配列は、その核酸レベルにおける変化を介して、特に、コドンが、その望ましいアミノ酸に翻訳されて生成されるように、予め選択された塩基で、そのポリペプチドをコードする核酸を変異させることによって、任意で変更されて良い。
ポリシアル化:本開示はまた、ポリペプチドの安定性及びインビボ薬物動態を改善するために、天然由来の、生分解性α−(2→8)連結のポリシアル酸(「PSA」)へのポリペプチドの共役である、ポリシアル化の利用を企図する。
アルブミン融合:さらに、共役に対応した適切な成分及び分子には、ヒト血清アルブミン(HSA)、犬血清アルブミン、及びウシ血清アルブミン(BSA)などのアルブミンを含む。
本開示において、アルブミンは、薬剤分子(例えば、本明細書で記述のポリペプチド)と、そのカルボキシ終末端、そのアミノ終末端、そのカルボキシ及びアミノの両終末端で、及び互換的に、共役結合されて良い(米国特許第5,876,969号、及び米国特許第7,056,701号を参照)。
本開示によって企図される、HSA−薬剤分子共役体において、アルブミン分泌プレ配列及びその変異体、断片及びその変異体、ならびにHSA変異体などの、アルブミンの多様な形態が使用されて良い。そのような形態は一般に、1つ以上の望ましいアルブミン活性を保持する。さらなる実施形態において、本開示は、アルブミン、アルブミン断片、及びアルブミン変異体などへ、直接的または間接的に融合されたポリペプチドの薬剤分子を含む、融合タンパク質を取り込み、ここでその融合タンパク質が、非融合薬剤分子より高い血漿安定性を有し、及び/またはその融合タンパク質が、非融合薬剤分子の治療活性を保有している。いくつかの実施形態において、間接的融合は、ペプチドリンカー、またはそれらの改変版などの、リンカーによって効果的になる。
前述のように、アルブミンの、本開示の1つ以上のポリペプチドへの融合は、例えば、遺伝子的操作によって達成され得て、そのためHSA、またはその断片をコードする核酸が、1つ以上のポリペプチド配列をコードする核酸と結合する。
互換的な、アルブミン結合戦略:複数のアルブミン結合戦略が、直接的融合と互換的に開発され、及び本明細書に記述のIL−10と共に使用されて良い。例を挙げると、本開示は、共役結合した脂肪酸鎖(アシル化)、及びアルブミン結合ドメイン(ABD)のペプチド配列、及び本明細書に記述のポリペプチドの1つ以上の配列を含む、融合タンパク質を介して結合している、アルブミンを企図する。
その他分子との共役:共役に対して適切な追加の成分及び分子には、例えば、チログロブリン、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、ポリ(D−リジン、D−グルタミン酸)などのポリアミノ酸、ロタウイルスのVP6ポリペプチド、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン、インフルエンザウイルス核タンパク質、Keyhole Limpet Hemocyanin(キーホールリンペットヘモシアニン(KLH))、及びB型肝炎ウイルスコアタンパク質ならびに表面抗原、または上記の任意の組み合わせを含む。
したがって、本開示は、他のポリペプチド(例えば、対象となるポリペプチドに非相同なアミノ酸配列を有するポリペプチド)またはキャリアー分子などの、ポリペプチド配列のN−及び/またはC終末端での1つ以上の追加の成分または分子の共役を企図する。したがって、例示的なポリペプチド配列は、他の成分または分子との共役体として提供され得る。
IL−10ポリペプチドはまた、タンパク質、セファロース、アガロース、セルロース、セルロースビーズなどの多糖類、ポリグルタミン酸、またはポリリジンなどの高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、不活化ウイルス粒子、ジフテリア、破傷風、コレラ、または白血球毒素分子からの毒素などの不活化細菌毒素、不活化細菌、及び樹状細胞などの、大きな、ゆっくり代謝されるマクロ分子と共役結合して良い。そのような共役結合形態が、仮に望ましいなら、本開示のポリペプチドに対する抗体を産生するために使用され得る。
共役に対する追加の候補成分及び分子には、単離または精製に適したものを含む。特定の非限定的な例示には、ビオチン(ビオチン−アビジン特異の結合対)、抗体、受容体、配位子、レクチン、または、例えば、プラスチックまたはポリスチレンビーズ、プレートまたはビーズ、磁気ビーズ、試験紙、及び膜を含む、固体支持体を構成する分子などの、結合分子を含む。
Fc融合分子:特定の実施形態において、本開示のポリペプチド配列のアミノまたはカルボキシ終末端は、融合共役体(または融合分子)を形成するために、免疫グロブリンのFc領域(例えば、ヒトFc)と融合され得る。Fc融合共役体は、生物薬剤の体内半減期を増加することが示されており、及びしたがってこの生物薬剤産物は、頻繁な投与を控える必要がある。
Fcは、血管を並べた内皮細胞で、胎児性Fc受容体(FcRn)に結合し、及び結合によって、そのFc融合分子は、分解及びその循環への再放出から保護され、その細胞を、循環に長く保持する。このFc結合は、内因性IgGを、その長い血漿半減期に留める機構であると考えられている。より最近のFc融合技術は、生物薬剤の単一複製を抗体のFc領域に連結し、その薬物動態、及び古典的なFc融合共役体に比べて、生物薬剤の薬理学的特性を最適化する。
その他の変成:本開示は、最近公知になった、または将来開発される、1つ以上の特徴を改善するための、IL−10のその他の変成の利用を企図する。そのような1つの方法は、hes化によるポリペプチド配列の変成を取り込み、そのポリペプチド配列の性質を改変するために、その他分子に連結させたヒドロキシル澱粉誘導体を活用する。Hes化の多様な態様が、例えば、米国特許出願番号2007/0134197及び2006/0258607に記述されている。
本開示はまた、融合タグとしてのSmall Ubiquitin−like Modifier(小ユビキチン様修飾因子(SUMO))(LifeSensors,Inc.、Malvern,PA)を含む融合分子を企図する。本明細書に記述のポリペプチドのSUMOへの融合は、発現の増進、溶解性の向上、及び/または精製法の開発支援を含む、複数の有益な効果を媒介することが可能である。SUMOプロテアーゼは、SUMOの第三構造を認識し、及びSUMOのC終末端における融合タンパク質を開裂し、したがって望ましいN末端アミノ酸を伴った、本明細書に記述のポリペプチドを放出する。
本開示はまた、PAS化(商標)(XL−Protein GmbH(Freising,Germany))の利用を企図する。この技術は、そのタンパク質治療の生物活性に悪影響を与えること無しに、腎臓の糸球体の細孔サイズを超えて、対象となるタンパク質の見掛けの分子サイズを拡大し、その結果そのタンパク質の腎臓のクリアランスを減少させる。
リンカー:本開示のポリペプチド配列を、変成をするために使用される、前述の成分及び分子のいずれも、任意でリンカーを介して共役結合されて良い。適切なリンカーには、一般的に、変成されたポリペプチド配列と連結された成分及び分子の間での動きを可能にするのに十分な鎖長である、「flelible linkers(可動性リンカー)」を含む。このリンカー分子は一般に、約6〜50原子の鎖長である。このリンカー分子はまた、例えば、アリールアセチレン、2〜10モノマー単位を含むエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二塩基酸、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであって良い。適切なリンカーは、容易に選択され得て、及び1つのアミノ酸(例えば、Gly)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10〜20、20〜30、30〜50、またはそれ以上のアミノ酸などの、任意の適切な鎖長であり得る。
可動性リンカーの例示には、グリシンポリマー(G)n、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、グリシン−セリンポリマー(例えば、(GmSo)n、(GSGGS)n(SEQ ID番号11)、(GmSoGm)n、(GmSoGmSoGm)n(SEQ ID番号12)、(GSGGSm)n(SEQ ID番号13)、(GSGSmG)n(SEQ ID番号14)、及び(GGGSm)n(SEQ ID番号15)、ならびにそれらの組み合わせを含み、ここで、m、n及びoは、それぞれ独立して、少なくとも1から20、例えば、1〜18、2〜16、3〜14、4〜12、5〜10、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の整数から選ばれ)、及びその他の可動性リンカーを含む。グリシン、及びグリシン−セリンポリマーは、相対的に非構造性であり、及びそれ故、成分間の中間的な鎖としての役割を果たすことがある。可動性リンカーの例示には、非限定的に、GGSG(SEQ ID番号16)、GGSGG(SEQ ID番号17)、GSGSG(SEQ ID番号14)、GSGGG(SEQ ID番号18)、GGGSG(SEQ ID番号19)、及びGSSSG(SEQ ID番号20)を含む。
可動性リンカーの追加の例示には、グリシンポリマー(G)nまたはグリシン−セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID番号11)、(GGGS)n(SEQ ID番号21)、及び(GGGGS)n(SEQ ID番号22)を含み、ここでn=1から50、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10〜20、20〜30、30〜50である)。例示的な可動性リンカーには、非限定的に、GGGS(SEQ ID番号21)、GGGGS(SEQ ID番号22)、GGSG(SEQ ID番号16)、GGSGG(SEQ ID番号17)、GSGSG(SEQ ID番号12)、GSGGG(SEQ ID番号18)、GGGSG(SEQ ID番号19)、及びGSSSG(SEQ ID番号20)を含む。これらリンカー配列のマルチマー(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10〜20、20〜30、または30〜50)は、本明細書に記述のポリペプチドへ、非相同のアミノ酸を共役結合させるために使用される可動性リンカーを与えるために、一緒に連結されて良い。本明細書で記述のように、非相同のアミノ酸配列は、単一配列及び/またはアルブミン、Fc配列などの、融合パートナーであって良い。
治療及び予防の用途
本開示は、広範囲の疾患、障害及び/または症状、及び/またはそれらの兆候の治療または予防において、本明細書に記述の当該IL−10ポリペプチド(例えば、PEG−IL−10)の利用を企図する。特定の利用が、本明細書で記述される一方で、本開示が、制約を受けないことは、理解されよう。さらに、特定の疾患、障害及び症状の一般的な分類が、これ以降に説明されるが、疾患、障害及び症状のいくつかは、1つ以上の分類の構成体(例えば、がんならびに線維性関連疾患)であって良く、及びその他が、公開されている分類のいずれの構成体でなくても良い。
線維性疾患及びがん。本開示において、IL−10分子は、例えば、子宮、子宮頸部、胸部、前立腺、精巣、消化管(例えば、食道、咽頭、胃、小腸、大腸、または直腸)、腎臓、腎細胞、膀胱、骨、骨髄、皮膚、頭部または頸部、肝臓、胆嚢、心臓、肺、膵臓、唾液腺、副腎、甲状腺、脳(例えば、神経膠腫)、神経節、中枢神経系(CNS)及び末梢神経系(PNS)のがん、及び造血系ならびに免疫系(例えば脾臓や胸腺)のがんを含む、増殖性の症状または障害を治療または予防するために、使用され得る。本開示はまた、例えば、免疫腫瘍、非免疫腫瘍、休眠腫瘍、ウイルスによるがん(例えば、上皮細胞がん、内皮細胞がん、扁平上皮がんおよび乳頭腫)、腺がん、リンパ腫、上皮性悪性腫瘍、黒色腫、白血病、骨髄腫、肉腫、奇形がん、化学的誘発のがん、転移がん、及び血管新生を含む、その他のがん関連疾患、障害または症状を治療しもしくは予防する方法を提供する。この開示は、例えば、制御性T細胞及び/またはCD8+T細胞の活性を調節することによって、腫瘍細胞またはがん細胞の耐性を低下させることを企図する(例えば、Ramirez−Montagut,et al.(2003)Oncogene 22:3180−87、及びSawaya,et al.(2003)New Engl.J.Med.349:1501−09が参照される)。特定の実施形態において、当該腫瘍またはがんは、大腸がん、卵巣がん、乳がん、黒色腫、肺がん、膠芽細胞腫、または白血病である。用語(複数可)のがん関連疾患、障害及び症状の使用は、例えば、血管新生及び形成異常などの前がん症状を含む、がんに直接的または間接的に関連する、広範囲の症状を指すことを意味している。
いくつかの実施形態において、本開示は、増殖的な症状、がん、腫瘍、または前がん的症状を、IL−10分子、及び本明細書の他の場所で説明される例示にある、少なくとも1つの追加の治療用また診断用薬剤で、治療する方法を提供する。
循環器疾患。特定の実施形態において、本開示は、高コレステロール血症及び異常脂質プロファイルに起因する、循環器疾患、障害及び症状、ならびにそれらに付随する障害を治療し及び/または予防するために、本明細書に記述のIL−10ポリペプチド(例えば、PEG−IL−10)の使用を企図する。
本明細書で使用する用語「cardiovascular disease(循環器疾患)」、「heart disease(心疾患)」などは、循環器系、主に心疾患、脳及び腎臓の血管疾患、ならびに末梢動脈疾患に影響を及ぼす、任意の疾患を指す。循環器疾患は、冠状動脈性心疾患(例えば、虚血性心疾患または冠血管疾患)、アテローム性動脈硬化症、心筋症、高血圧症、高血圧性心疾患、肺性心、不整脈、心内膜炎、脳血管疾患、及び末梢動脈疾患を含む、一連の疾患である。循環器疾患は、世界的に死亡の主原因であり、及び一方で、それは通常、高齢者、循環器疾患の前歴者、若年期に始まる、特にアテローム性動脈硬化症に影響を与える。
本開示で特に企図されるのは、当該循環器疾患が、高脂血症(または高リポタンパク血症)、血液内の異常に上昇したレベルの脂質及び/またはリポタンパク質によって特徴付けられる症状を含む場合の実施形態である。高脂血症の非限定的な例示には、脂質異常症、高コレステロール血症(例えば、家族性高コレステロール血症)、高グリセリド血症、高トリグリセリド血症、高リポタンパク血症、高カイロミクロン血症、及び高脂血症との組み合わせを含む。高リポタンパク血症には、例えば、高リポタンパク血症Ia型、高リポタンパク血症Ib型、高リポタンパク血症Ic型、高リポタンパク血症IIa型、高リポタンパク血症IIb型、高リポタンパク血症タイプIII型、高リポタンパク血症タイプIV型、及び高リポタンパク血症タイプV型を含む。
血栓症及び血栓症状。その他の実施形態において、本開示は、高コレステロール血症及び異常脂質プロファイルに起因する、血栓症及び血栓症疾患、障害ならびに症状、同時にそれらに付随する障害を治療し及び/または予防するために、本明細書に記述のIL−10ポリペプチド(例えば、PEG−IL−10)の使用を企図する。
血栓症は一般に、静脈または動脈によって分類され、その各々は、複数の亜類型で示され得る。静脈血栓症には、深部静脈血栓症(DVT)、門脈血栓症、腎静脈血栓症、頚静脈血栓症、バッド−キアリ症候群、パジェット−シュロッター病、及び脳静脈洞血栓症を含む。動脈血栓症には、脳卒中及び心筋梗塞を含む。
免疫性及び炎症性症状。本明細書で使用する用語「immune disease(免疫性疾患)」、「immune condition(免疫性症状)」、「immune disorder(免疫性障害)」、「inflammatory disease(炎症性疾患)」、「inflammatory condition(炎症性症状)」、「inflammatory disorder(炎症性障害)」などは、任意の免疫または炎症関連症状(例えば、病理学的炎症及び自己免疫疾患)を幅広く含むことを意味する。そのような症状はしばしば、その他の疾患、障害及び症状と密接に絡み合っている。例を挙げると、「immune condition(免疫性症状)」が、感染症(急性および慢性)、腫瘍、及び免疫系による根絶に抵抗するがんを含む、がん、腫瘍、及び血管新生などの、増殖的症状を指して良い。
例えば、炎症性サイトカインによって引き起こされることがある、免疫及び炎症関連疾患、障害及び症状の非限定的な一覧には、関節炎(例えば、関節リウマチ)、腎不全、紅斑性狼瘡、エリテマトーデス、喘息、乾癬、大腸炎、膵炎、アレルギー、線維症、外科的合併症 (例えば、炎症性サイトカインが治癒を妨げる)、貧血、及び線維筋痛症を含む。慢性炎症と関連していることがあるその他の疾患及び障害には、うっ血性心不全、脳卒中、大動脈弁狭窄、動脈硬化症、骨粗鬆症、感染症、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍大腸炎)、アレルギー性接触皮膚炎及びその他の湿疹、全身性硬化症、移植手術、多発性硬化症及び神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病ならびにパーキンソン病)を含む。
本開示には、本明細書に記述のIL−10物質(例えば、PEG−IL−10)が、非限定的に、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、脳血管炎(中枢神経系血管炎)、チャーグ −シュトラウス動脈炎、クリオグロブリン血症、本態クリオグロブリン血管炎、巨大細胞(時間的)動脈炎、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、過敏性血管炎(アレルギー性血管炎)、川崎病、顕微鏡的多発動脈炎/血管炎、結節性多発動脈炎、多発リウマチ(PMR)、リウマチ性血管炎、高安動脈炎、血栓性静脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、及び全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、再発軟骨、ベーチェット病、または他の結合組織傷害のような、結合組織障害に続発する血管炎、ならびにウイルス感染に続発する血管炎を含む、血管炎症の治療及び/または予防に使用される場合の実施形態を含む。
その他の実施形態は、心内膜炎、炎症性心肥大、及び心筋炎を含む、炎症性心疾患を指向する。
ウイルス疾患。本開示は、IL−10を伴う治療が有益な可能性がある、任意のウイルス疾患、障害または症状の治療及び/または予防に、当該IL−10ポリペプチドの使用を企図する。企図されるウイルス疾患、障害及び症状の例示には、B型肝炎、C型肝炎、HIV、ヘルペスウイルス及びサイトメガロウイルス(CMV)を含む。
多数のウイルス疾患(例えば、HIV)の治療には、異なる作用機構を介して作用する薬剤を含んで、薬剤の組み合わせの投与を含み、及び本開示は、そのような組み合わせ治療の成分として、当該IL−10ポリペプチドの使用を企図する。
線維性疾患:本開示はまた、線維性疾患、傷害及び症状を治療または予防する方法を提供する。本明細書で使用する語句「fibrotic diseases, disorders and conditions(線維性疾患、傷害及び症状)」、及び同様の用語(例えば、「fibrotic disorders(線維性障害)」及び語句は、それが線維状組織または瘢痕組織(例えば、1つ以上の組織における線維症)をもたらす可能性がある任意の症状を含むように、広範囲に構成される。例を挙げると、瘢痕組織になる可能性のある損傷(例えば、傷)には、皮膚、目、肺、腎臓、肝臓、中枢神経系、及び心血管系の傷を含む。この語句にはまた、脳卒中に起因する瘢痕組織形成、及び、例えば、傷害や手術の結果もたらされる組織密着を包含する。
本明細書で使用する用語「fibrosis(線維症)」は、臓器または組織の通常の構成要素としてではなく、修復または反応性プロセスとしての繊維状組織の形成を指す。線維症は、任意の特定組織における、通常の沈着を超えた、線維芽細胞の蓄積及びコラーゲン沈着によって、特徴付けられる。
線維性疾患には、非限定的に、創傷治癒から生じる線維症、全身及び局所強皮症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺の炎症及び線維症、特発性肺線維症、間質性肺疾患、肝臓の肝硬変、慢性B型またはC型肝炎の感染結果としての線維症、腎臓病(例えば、糸球体腎炎)、瘢痕組織に起因する心臓病、ケロイド及び肥大傷跡、ならびに黄斑変性症などの眼病、及び網膜ならびにガラス質の網膜症を含む。追加の線維性疾患には、化学療法薬による線維症、放射線誘起線維症、及び怪我や火傷を含む。
線維性疾患は、しばしば肝臓に関連し、及びしばしばこのような疾患間の結合体、ならびに肝細胞及びクッパー細胞内に、肝臓コレステロールおよびトリグリセリドの不適当な蓄積がある。この蓄積は、肝臓を線維症及び肝硬変に導く、プロ炎症反応をもたらすように思われる。線維状成分を有する肝疾患には、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む。NAFLDは、脂肪症(肝臓における脂肪蓄積)が、アルコールの過剰摂取によらないで、存在する場合に、引き起こされる。それは、インシュリン耐性及びメタボリック症候群に関連している。NASHは、NAFLDの最も極端な形態であり、及び原因不明の肝臓の肝硬変の主要因であるとみなされている。
医薬組成物
本開示のIL−10ポリペプチドは、対象者への投与に適した組成物の形態であって良い。一般に、そのような組成物は、IL−10、及び1つ以上の薬学的に許容される、または生理的に許容される希釈剤、キャリアーもしくは賦形剤を含む、「pharmaceutical compositions(医薬組成物)」である。特定の実施形態において、当該IL−10ポリペプチドは、治療に許容される量で存在する。この医薬組成物は、本開示の方法に使用されて良く、したがって、例えば、当該医薬組成物は、本明細書に記述される治療及び予防法を実践するために、対象者へインビトロまたはインビボで投与され得る。
本開示の医薬組成物は、意図する方法または投与経路に適合するように処方化され得て、投与の例示的な経路が、本明細書で説明される。さらに、当該医薬組成物は、本開示で企図される疾患、傷害及び症状を治療または予防するために、その他の治療用の活性薬剤または本明細書に記述の成分と組み合わせて使用されて良い。
当該医薬組成物には、通常本開示で企図されるIL−10ポリペプチド、及び1つ以上の薬学的及び生理学的に許容される処方薬剤の、治療に効果的な量を含む。適切な薬学的に許容され及び生理学的に許容される希釈剤、キャリアーまたは賦形剤には、非限定的に、酸化防止剤(アスコルビン酸及び硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルまたはn−プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸)、乳化剤、懸濁剤、分散剤、溶剤、充填剤、増量剤、洗浄剤、緩衝液、担持体、希釈剤、及び/または補助剤を含む。例えば、適切な担持体には、非経口投与のための医薬組成物に普通に使用される、その他材料で可能な限り補充された、生理食塩液またはクエン酸緩衝生理食塩水を含む。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンを混合した生理食塩水は、さらに模範的な担持体である。当業者は、当該医薬組成物及び本明細書で企図される投薬形態で使用が可能な、多様な緩衝剤を容易に認めるであろう。典型的な緩衝剤には、非限定的に、薬学的に許容される弱酸、弱塩基、またはそれらの混合物を含む。例示として、当該緩衝剤成分は、リン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びそれらの塩などの、水溶性物質であり得る。許容される緩衝剤には、例えば、トリス緩衝液、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N′−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、及びN−トリス[ヒドロキシメチル]メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)を含む。
医薬組成物が、処方化された後に、それは、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体、または脱水もしくは凍結乾燥粉末として、無菌のバイアル瓶内で保管されて良い。そのような処方物は、すぐに使える形態、使用前に再構成が必要な凍結乾燥形態、使用する前に希釈を必要とする液体形態、または他の許容される形態での、いずれかで保管されて良い。いくつかの実施形態において、当該医薬組成物は、1回使用の容器(例えば、1回使用のバイアル瓶、アンプル、注射器、または自己注射器(例えば、EpiPen(登録商標)に類似のもの))で提供される一方で、複数回使用の容器(例えば、複数回使用のバイアル瓶)が、その他の実施形態において提供される。インプラント(例えば、埋込ポンプ)、及びカテーテルシステム、低速の注入ポンプおよび装置を含む、任意の薬剤送達装置が、IL−10の送達に使用されて良く、それらの全ては、当業者には公知である。デポ注射は、一般的に皮下または筋肉投与されるが、一定期間にわたって、本明細書に開示されたポリペプチドを放出するために利用することも可能である。デポ注射は通常、固体またはオイルベースのいずれかであり、及び一般的には、本明細書で説明される処方成分の少なくとも1つを含む。当業者は、デポ注射に可能な処方物及び応用に精通している。
当該医薬組成物は、無菌の注入可能な水性または油性懸濁液であって良い。この懸濁液は、本明細書に記載の、分散または湿潤剤及び懸濁剤として適切なものを使用して、公知の技術に従って処方化されて良い。無菌の注射可能な調合物はまた、無毒性の非経口用に許容される希釈剤または溶媒、例えば、1,3−ブタンジオールの溶液内における、滅菌注射液または懸濁液であっても良い。取り入れられ可能性のある、許容される希釈剤、溶媒及び分散液媒体には、水、リンガー溶液、等張性ナトリウム塩化物溶液、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコール)、及びそれらの適切な混合物を含む。さらに、滅菌の固定油は、従来、溶剤又は懸濁媒体として採用されている。この目的に対しては、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意ブランドの固定油が、取り入れられて良い。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調合に適用されていることが見出せる。特定の注射処方物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を含むことによって達成することができる。
有効成分を含む当該医薬組成物は、経口利用、例えば、錠剤、カプセル、トローチ、のど飴、水性または油性懸濁液、分散性の粉または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル、またはシロップ、溶液、微小粒子もしくはエリキシル剤に適した形態であって良い。特定の実施形態において、本明細書に記述のIL−10物質と一緒に投与される薬剤の有効成分は、経口利用に適した形態である。経口利用を意図した医薬組成物は、医薬組成物の製造に対応した、当技術分野で公知の任意の方法に従って調合されて良く、及びそのような組成物は、薬学的に洗練されていて、ならびに口当たりの良い調合物を提供するために、例えば、甘味料、香料、着色剤、及び保存料などの、1つ以上の薬剤を含んで良い。錠剤、カプセルなどは、錠剤の製造に適した、無毒の薬学的に許容される賦形剤との混和物内に、その有効成分を含む。これら賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム、例えば、トウモロコシ澱粉、またはアルギン酸などの造粒および崩壊剤、例えば、澱粉、ゼラチンまたはアカシアなどの結合剤、及び例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの潤滑剤であって良い。
経口投与に適した錠剤、カプセルなどは、消化管での崩壊と吸収を遅らせ、及びそれによって持続的な作用を提供するために、既存技術によって無被覆または被覆されて良い。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの遅延剤が、取り入れられて良い。それらはまた、制御された放出に対応した、浸透性の治療用錠剤を形成するために、当技術分野で公知の技術で被覆されて良い。追加の薬剤には、投与された組成物の送達を制御するために、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、ポリ無水物、グリコール酸、エチレン−ビニル酢酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、またはラクチド/グリコリド共重合体、乳酸/グリコリド共重合体、もしくはエチレンビニル酢酸共重合体などの、生分解性または生体適合性粒子もしくは高分子物質を含む。例えば、当該経口薬剤は、液滴形成技術によって、または界面重合により、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルもしくはポリ(methylmethacrolate(メチルメタクロレート))マイクロカプセルをそれぞれ使用することによって、またはコロイド薬剤送達システムで調合されたマイクロカプセルに、封入することができる。コロイド分散系には、マクロ分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、マイクロビーズ、及び水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質系を含む。上記処方物の調合法は、当業者には明確であろう。
経口利用に対応した処方物はまた、その有効成分が、不活性な固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリンまたは微結晶セルロースと混合されて、硬質ゼラチンカプセルとして、またはその有効成分が、水またはオイル媒体、例えば、ピーナッツオイル、流動パラフィン、またはオリーブオイルと混合されて、軟質ゼラチンカプセルとして存在して良い。
水性懸濁液は、その製造に適した賦形剤を伴った混和物内に、その有効成分を含む。そのような賦形剤には、懸濁剤として、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガムを、分散または湿潤剤として、例えば、天然由来するリン脂質(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドの、脂肪酸との縮合物(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸)、またはエチレンオキサイドの、長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、もしくはエチレンオキサイドの、脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトール・モノオレート)、またはエチレンオキシドの、脂肪酸及びエキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合物(例えば、ポリエチレンソルビタン・モノオレート)を含む。この水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤を含んで良い。
油性懸濁液は、その有効成分を植物油中で、例えば、ラッカセイ油、オリーブオイル、ごま油またはココナッツオイル、もしくは液状パラフィンなどの鉱物油中で懸濁されて、処方化されて良い。当該油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、ハードパラフィン、またはセチルアルコールを含んで良い。前述で説明されたものなどの甘味料、及び香料は、口当たりの良い経口調合物を提供するために添加されて良い。
水の添加による水性懸濁液の調合に適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤及び1つ以上の防腐剤を伴う混和物内に、有効成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤、及び懸濁剤が、本明細書に例示される。
本開示の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であって良い。油性相は、植物油、例えばオリーブ油やラッカセイ油、又は鉱油、例えば、液状パラフィン、又はそれらの混合物であって良い。適切な乳化剤は、天然由来のガム、例えば、ガムアカシアやトラガントガム、天然由来のリン脂質、例えば、大豆、レシチン、及び脂肪酸から得られるエステルまたは部分エステル、ヘキシトール無水物、例えば、ソルビタンモノオレート、エチレンオキサイドと部分エステルの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートであって良い。
処方物はまた、インプラント、リポソーム、ハイドロゲル、プロドラッグ及びマイクロカプセル化送達システムを含む、放出制御処方物などの、急速な分解または体内からの排除から、その組成物を保護するキャリアーを含むことができる。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質が、単独で、又はワックスと組み合わせて、採用されて良い。
本開示は、直腸投与用座薬の形態における当該IL−10ポリペプチドの投与を企図する。この座薬は、常温で固体であるが、直腸温度では液体であり、及びしたがって、薬を解放するために直腸で溶ける、適切な非刺激性の賦形剤と、この薬剤を混合することによって調合され得る。そのような物質には、非限定的に、ココアバター及びポリエチレングリコールを含む。
本開示により企図される、当該IL−10ポリペプチドは、現在公知の、または将来開発される、その他の適当な医薬組成物(例えば、鼻または吸入用スプレー)の形態であって良い。
処方物内のポリペプチドまたはその断片の濃度は、幅広く(例えば、重量で約0.1%未満から、通常、少なくとも約2%より多く、20%から50%またはそれ以上)変動でき、通常、主に液体容積、粘度、及び、例えば、選択される特定の投与モードに従って、対象者に応じた要因に基づいて選択される。
投与の経路
本開示は、任意の適切な方法で行う、IL−10(例えば、IL−10ポリペプチド)の投与、及びそれらの組成物を企図する。適切な投与経路には、非経口(例えば、筋肉内、静脈内、皮下(例えば、注射またはインプラント)、腹腔内、嚢内、関節内、腹腔内、脳内(実質内)及び脳室内)、経口、鼻口、膣内、舌下、眼球内、直腸内、局所(例えば、経皮吸収)、舌下及び吸入を含む。デポ注射は、一般的に皮下または筋肉投与されるが、本明細書に開示される当該IL−10ポリペプチドを、一定期間にわたって放出するために利用されて良い。
本開示の特定の具体的な実施形態は、非経口投与を企図する。いくつかの特定の実施形態において、この非経口投与は、静脈内であり、及びその他の特定の実施形態において、当該非経口投与は、皮下である。
併用療法
本開示は、1つ以上の活性治療薬剤(例えば、サイトカイン)またはその他の予防または治療用手段(例えば、放射線)との組み合わせで、IL−10分子の使用を企図する。このような併用療法において、多様な活性薬剤は、しばしば相補的な作用機構を有する。このような併用療法は、1つ以上の薬剤の用量低減を可能にするために特に有利であり、その結果、1つ以上の薬剤に関連する悪影響を、低減または排除することができる。さらに、このような併用療法は、基礎疾患、障害、または病態に対する、相乗的な治療または予防効果を有することがある。
本明細書で使用する「combination(併用)」とは、別々に投与することができる、例えば、分別投与(例えば、キットで与えられて良い)に対して、別々に処方化されたと治療、及び1つの処方物(すなわち、「co−formulation(共処方物)」で一緒に投与することができる療法を含むこと意味する。
特定の実施形態において、当該IL−10ポリペプチド及び1つ以上の活性治療薬剤、またはその他の予防もしくは治療用手段が、順次に投与または適用され、例えば、ここで1つの薬剤が、1つ以上のその他の薬剤に先立って投与される。その他の実施形態において、当該IL−10ポリペプチド及び1つ以上の活性治療薬剤、またはその他の予防または治療的手段が、同時に投与され、例えば、ここで2つ以上の薬剤が、同時にまたはほぼ同時に投与され、その2つ以上の薬剤が、2つ以上の別個の処方物に、または1つの処方物(すなわち、共消泡製剤)に組み合わされて、存在して良い。2つ以上の薬剤が順次又は同時に投与されるか否かにかかわらず、それらは、本開示の目的に対応して、併用での投与が考慮される。
本開示の当該IL−10ポリペプチドは、その状況に適した任意の方法で、少なくとも1つのその他の(活性)薬剤との併用で、使用されて良い。1つの実施態様において、少なくとも1つの活性薬剤、及び少なくとも1つの本開示のIL−10ポリペプチドによる治療が、一定期間にわたって維持される。別の実施形態において、少なくとも1つの活性薬剤を用いた治療が、減少または中止され(例えば、対象者が安定した場合)、一方で本開示の当該IL−10ポリペプチドを用いた治療が、一定した投薬計画で維持される。さらなる実施形態において、少なくとも1つの活性薬剤を用いた治療が、低減または中止され(例えば、対象者が安定した場合)、一方で本開示の当該IL−10ポリペプチドを用いた治療が、低減される(例えば、より低い用量、頻度の少ない投薬または短い治療計画)。さらに別の実施形態において、少なくとも1つの活性薬剤を用いた治療が、低減または中止され(例えば、対象者が安定した場合)、一方で本開示の当該IL−10ポリペプチドを用いた治療が、増加される(例えば、より高い用量、より頻繁な投薬または長期の治療計画)。さらに別の実施形態において、少なくとも1つの活性薬剤を用いた治療が維持され、一方で本開示の当該IL−10ポリペプチドを用いた治療が、低減または中止される(例えば、より低い用量、頻度の少ない投薬または短い治療計画)。さらに別の実施形態において、少なくとも1つの活性薬剤を用いた治療、及び少なくとも1つの本開示のIL−10ポリペプチドを用いた治療が、低減または中止される(例えば、より低い用量、頻度の少ない投薬または短い治療計画)。
本明細書に開示された当該IL−10ポリペプチド(例えば、PEG−IL−10)との併用で使用するのに適した特定の薬剤は、以下のとおりであるが、本開示は、それらに限定されないことは理解されよう。これ以降、特定の薬剤が、例示的な疾患、疾患および症状の特定分類で説明されるが、しかしならが、1つ以上の分類(例えば、特定の薬剤は、心血管と抗炎症作用の両方を持っている可能性がある)の間で、しばしば重複があることは、理解されよう。
線維性疾患及びがん。本開示は、増殖症状、線維状疾患、障害、または症状、がん、腫瘍、または前がん疾患、障害または症状を、IL−10分子、及び少なくとも1つの追加の治療または診断薬剤で、治療及び/または予防するための方法を提供する。
化学療法薬の例示には、非限定的に、アルキル化剤、アルキルスルホン酸塩、アジリジン、エチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamines)、窒素マスタード、ニトロソウレア、抗生物質、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、アンドロゲン、抗アドレナル、葉酸補充剤、ヒドロキシウレア、デシン、ダカルバジン、マンノムスチン、アラビノシド(Ara−C)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル、クロランブシル、ゲムシタビン、6−チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、プラチナおよびプラチナ調整錯体、ビンブラスチン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、CPT11、トポイソメラーゼ阻害剤、カペシタビン及び抗ホルモン剤、抗アンドロゲン、ホルモン及び関連したホルモン剤、及び上記のいずれかの、薬学的に許容される塩、酸または誘導体を含む。
当該IL−10ポリペプチドとの併用で使用されて良い、追加の治療手段には、IL−12などの、サイトカインまたはサイトカイン拮抗剤、INFα、または抗表皮成長因子受容体、放射線治療、別の腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体と毒素の複合体、T細胞補助剤、骨髄移植、または抗原提示細胞(例えば、樹状細胞療法)を含む。本明細書には、ワクチン(例えば、可溶性タンパク質として、またはそのタンパク質をコードする核酸として)も提供される。本開示は、上記のいずれかの、薬学的に許容される塩、酸又はその誘導体を包含する。
コレステロール恒常性剤。本開示の特定の実施形態は、コレステロール恒常性に関連する薬剤とIL−10ポリペプチドとの併用を含む。これらの薬剤の多くは、吸収、合成、輸送、貯蔵、異化、及びコレステロールの***に関わる異なる経路を標的とし、及び併用療法に対して特に有用な候補である。
高コレステロール血症(及びしたがって、例えば、しばしばアテローム性動脈硬化症)の治療に対応する、併用療法に有用な治療薬の例示には、スタチン、胆汁酸レジン(金属イオン封鎖剤)、エゼチミブ(ZETIA)、フィブリン酸(例えば、TRICOR)及びフィブラート系薬剤、ナイアシン(例えば、NIACOR)、コレステロール吸収阻害剤、脂肪吸収阻害剤、PCSK9調整因子、及び/または前述したものの組み合わせ(例えば、VYTORIN(シンバスタチンを伴うエゼチミブ)を含む。本明細書に記述する当該IL−10ポリペプチドとの併用で使用する、候補となる可能性のある代替コレステロール治療法には、様々な栄養補助食品及びハーブ(例えば、ニンニク、ポリコサノール、グックル)を含む。
本開示は、前述の任意の、薬学的に許容される塩、酸または誘導体を包含する。
免疫性及び炎症性症状。本開示は、免疫及び/または炎症関連疾患、傷害及び症状を治療、ならびにそれらに関連する障害を、IL−10ポリペプチド(例えば、PEG−IL−10)及び免疫及び/または炎症関連特性を有する、少なくとも1つの追加の薬剤で、治療及び/または予防するための方法を提供する。例を挙げると、IL−10ポリペプチドは、炎症性成分を有する心血管障害において、薬効を有する薬剤と共に、投与されて良い。
併用療法に有用な治療薬の例示には、非限定的に、非ステロイド性抗炎症薬、酢酸誘導体、フェナム酸誘導体、ビフェニルカルボン酸誘導体、オキシカム、サリチル酸塩、及びピラゾロンを含む。その他の組み合わせには、選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、選択的シクロオキシゲナーゼ1(COX1)阻害剤、および非選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤を含む。
併用に対応するその他の活性薬剤には、本IL−10ポリペプチドとの併用で患者を治療する際に必要な用量の、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ベータメタゾン、デキサメタゾン、またはヒドロコルチゾンなどの、ステロイドを含む。
例えば、リウマチ性関節炎の治療に対して併用される活性薬剤の追加の例示には、サイトカイン抑制抗炎症薬(複数可)(CSAIDs)、その他のヒトサイトカインまたは増殖因子への抗体またはその拮抗薬、例えば、TNF、LT、IL−1β、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGF、またはPDGFを含む。
活性薬剤の特定の組み合わせは、自己免疫及びその後の炎症カスケードにおいて、異なる時点で干渉して良く、及びTNF拮抗薬様キメラ、ヒト化またはヒトTNF抗体、REMICADE、抗TNF抗体断片(例えば、CDP870)、及び可溶性p55またはp75TNF受容体、それらの誘導体、p75TNFRIgG(ENBREL.)またはp55TNFR1gG(LENERCEPT)、可溶性IL−13受容体(sIL−13)、及びまた、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤を含み、同様にIL−1阻害剤(例えば、インターロイキン−1−変換酵素阻害剤)が有効である可能性がある。その他の組み合わせには、インターロイキン11、抗−p7sおよびP−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)を含む。本明細書に記載の当該IL−10ポリペプチドとの併用に有用な薬剤のその他の例示には、インターフェロン-β1a(AVONEX)、インターフェロン−β1b(BETASERON)、コパキソン、高圧酸素、静脈内免疫グロブリン、クラドリビン、及びその他のヒトサイトカインまたは増殖因子への抗体またはその拮抗薬(例えば、cd40リガンド及びCD80への抗体)を含む。
本開示は、上記のいずれかの、薬学的に許容される塩、酸またはその誘導体を包含する。
抗糖尿病及び抗肥満剤。コレステロール関連疾患(複数可)の薬理治療を必要とする一部の患者はまた、抗糖尿病及び/または抗肥満用の薬剤を服用している。本開示は、1)インスリン、インスリン模倣薬及びインスリン分泌の刺激を引き起こす薬剤、2)グルコース利用の促進、肝グルコース産生量の減少、及び/または腸でのブドウ糖出力の減少に作用する、ビグアニド及びその他の薬剤、3)腸から炭水化物の消化及びその結果吸収を遅くし、ならびに食後の高血糖を低減する、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤及びその他の薬剤、4)チアゾリジン、5)DPP−IV阻害剤、GLP−1及びGLP−1作動薬ならびに類似体を含む、グルカゴン様ペプチド、及び6)DPP−IV−耐性類似体(インクレチン模倣体)、PPARガンマ作動薬、二面作用PPAR作動薬、汎作用PPAR作動薬、PTP1B阻害剤、SGLT阻害剤、インスリン分泌促進剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害剤、免疫調整因子、ベータ−3アドレナリン受容体作動薬、11ベータ−HSD1阻害剤、アミリン類似体、及び核受容体結合剤(例えば、レチノイン酸受容体(RAR)結合剤、レチノイドX受容体(RXR)結合剤、肝臓 X受容体(LXR)結合剤、及びビタミンD結合剤)を含む、多数の抗糖尿病剤 (及びそれらの分類)を伴う、併用療法を熟考する。
さらに、本開示は、代謝を刺激し、または食欲を減退させる薬剤、及び減量を促進するための食事療法及び/または運動療法を改良した、減量促進のための薬剤及び方法を伴った併用療法を企図する。
本開示は、上記のいずれかの、薬学的に許容される塩、酸又はその誘導体を包含する。
投薬
本開示のIL−10ポリペプチドは、例えば、その投与の目的(例えば、望ましい解決の程度)、対象者の年齢、体重、性別、健康及び体調、投与経路、及びその疾患、障害、症状またはそれらの兆候の性質に応じた量で、対象者へ投与されて良い。この投薬計画はまた、その薬剤の投与に関連したいかなる悪影響の存在、性質、及び範囲をも考慮に入れて良い。効果的な投薬量及び投薬計画は、例えば、 安全性及び用量増加試験、インビボ研究(例えば、動物モデル)、ならびに当業者に公知のその他の方法から、容易に決定され得る。
一般的に、投薬パラメーターは、その投薬量が、その対象者にとって不可逆的な毒性になる可能性がある量(すなわち、最大許容用量、「MTD」)未満であって、及びその対象者における測定可能な効果を生み出すために必要な量よりも少なくない、投薬量であることを指示する。そのような量は、例えば、投与の経路及びその他の要因を考慮に入れている、ADMEに関連する、薬物動態的及び薬学的パラメーターによって決定される。
有効用量(ED)は、その投与を受けている対象者の一部において、治療応答または望ましい効果を生み出す薬剤の用量または分量である。薬剤の「median effective dose(平均有効用量)」またはED50は、それが投与されている対象者集団の50%において、治療応答または望ましい効果を生み出す薬剤の用量または分量である。このED50は、一般的に薬剤効果の合理的な予期値の尺度として使用されるが、それは必ずしも、臨床医が、すべての関連する要因を考慮して適切とみなす可能性のある用量ではない。したがって、いくつかの状況においては、その有効量は、算出されたED50を上回り、その他の状況においては、その有効量は、算出されたED50未満であり、及びさらにその他の状況においては、その有効量は、算出されたED50と同じである。
さらに、本開示のIL−10ポリペプチドの有効用量は、対照者に対して1回以上投与した場合、健常者と比べて望ましい結果を生じる量であって良い。例えば、特定の障害を経験している対象者に対しては、有効用量は、その障害の診断パラメーター、尺度、マーカーなどを、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%以上、改善させるものであって良く、ここで100%が、正常な対象者によって表される、診断パラメーター、尺度、マーカーなどとして定義される。
IL−10ポリペプチドがPEG−IL−10である場合、本明細書に記載される疾患、障害または症状を治療するために必要なPEG−IL−10の量は、共役タンパク質のIL−10活性に基づき、前述のように、当技術分野で公知のIL−10活性アッセイによって決定することができる。例を挙げると、腫瘍との関連においては、適切なIL−10活性には、例えば、CD8+T細胞の腫瘍部位への浸潤、例えばIFN−γ、IL−4、IL−6、IL−10、及びRANK−Lなど、これらの浸潤細胞からの炎症性サイトカインの発現、生体サンプル中のTNF−αまたはIFN−γの上昇したレベルを含む。
多くの薬剤のように、静脈内へのIL−10投与は、2コンパートメント運動モデルと関連付けられる(Rachmawati,H.et al.(2004)Pharm.Res.21(11):2072−78を参照)。血漿中の薬物濃度は、多段階の指数関数的方法で減少する。静脈内投与直後は、薬剤は、急速に初期空間全体に分散し(最小血漿量として定義されている)、及び次いで、血管空間(例えば、特定組織)へのゆっくりとした、平衡的な分布が発生する。皮下での組み換えhIL−10の薬物動態についてもまた、検討された(Radwanski,E.et al.(1998)Pharm.Res.15(12):1895−1901)。適切なIL−10投薬関連パラメーターを評価する場合、体積分布及びその他の薬物動態学的な考慮が適している。さらに、IL−10薬物動態及び投薬原則の活用は、特定の細胞種へのIL−10物質を標的とする効果の達成にとって、貴重な証明となることがある(例えば、Rachmawati,H.(May 2007)Drug Met.Dist.35(5):814−21を参照)。
本開示は、望ましい治療結果をもたらす、任意の用量および投薬計画の投与を企図する。例を挙げると、非限定的に、その対象者がヒトの場合、非ペグ化hIL−10は、0.5μg/kg/日を上回る用量で、1.0μg/kg/日を上回る用量で、2.5μg/kg/日を上回る用量で、5μg/kg/日を上回る用量で、7.5μg/kg/日を上回る用量で、10.0μg/kg/日を上回る用量で、12.5μg/kg/日を上回る用量で、15μg/kg/日を上回る用量で、17.5μg/kg/日を上回る用量で、20μg/kg/日を上回る用量で、22.5μg/kg/日を上回る用量で、25μg/kg/日を上回る用量で、30μg/kg/日を上回る用量で、または35μg/kg/日を上回る用量で、投与されて良い。さらに、例を挙げると、非限定的に、その対象者がヒトの場合、比較的小さなPEG(例えば、5kDAのモノ−ジ−PEG−hIL−10)を含む、非ペグ化hIL−10は、0.5μg/kg/日を上回る用量で、0.75μg/kg/日を上回る用量で、1.0μg/kg/日を上回る用量で、1.25μg/kg/日を上回る用量で、1.5μg/kg/日を上回る用量で、1.75μg/kg/日を上回る用量で、2.0μg/kg/日を上回る用量で、2.25μg/kg/日を上回る用量で、2.5μg/kg/日を上回る用量で、2.75μg/kg/日を上回る用量で、3.0μg/kg/日を上回る用量で、3.25μg/kg/日を上回る用量で、3.5μg/kg/日を上回る用量で、3.75μg/kg/日を上回る用量で、4.0μg/kg/日を上回る用量で、4.25μg/kg/日を上回る用量で、4.5μg/kg/日を上回る用量で、4.75μg/kg/日を上回る用量で、または5.0μg/kg/日を上回る用量で、投与されて良い。
PEG−IL−10の治療に効果的な量は、約0.01から約100μgのタンパク質/kg体重/日の、約0.1から約20μgのタンパク質/kg体重/日の、約0.5から約10μgのタンパク質/kg体重/日の、約1から約4μgのタンパク質/kg体重/日の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、PEG−IL−10は、約50から800μgのタンパク質/kg体重/日(例えば、約1から16μgのタンパク質/kg体重/日のPEG−IL−10)を送り届ける、継続した点滴によって投与される。この点液速度は、例えば、悪影響や血球数の評価に基づいて変動して良い。
経口剤の投与のため、当該組成物は、その有効成分の1.0から1000ミリグラムを、特にその有効成分の1.0、3.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0、及び1000.0ミリグラムを含む、錠剤、カプセルなどの形態で提供することができる。
特定の実施形態において、開示されたIL−10ポリペプチドの投与量(例えば、PEG−IL−10)は、「unit dosage form(単位投与形態)」に含まれる。語句「unit dosage form(単位投与形態)」は、物理的な離散単位であり、単独でまたは1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて、望ましい効果を生み出すのに十分な、本開示の所定量のIL−10ポリペプチド含む各単位を指す。単位投与形態のパラメーターは、その特定薬剤及び達成される効果に依存するであろうことは、理解されよう。
キット
本開示はまた、IL−10ポリペプチド(例えば、PEG−IL−10)、及びその薬学的に許容される組成物を含むキットを企図する。このキットは一般に、以下の記述する各種成分を収容した物理的構造の形態であり、及び例えば、前述した方法(例えば、コレステロール恒常性の回復を必要とする対象者へのIL−10ポリペプチドの投与)を実施する際に利用されて良い。
キットは、本明細書に開示された1つ以上のIL−10ポリペプチド(例えば、無菌容器で提供される)を含むことができ、これは対象者への投与に適した医薬組成物の形態であって良い。当該IL−10ポリペプチドは、使用の準備ができている形態で、または投与前に、例えば、再構成もしくは希釈などに必要な形態にして、提供され得る。当該IL−10ポリペプチドが、ユーザーによって再構成される必要がある形態の場合には、キットには、当該IL−10ポリペプチドと一緒にして、または分けて包装された、緩衝液、薬学的に許容される賦形剤などが含まれていて良い。併用療法が考慮される場合、当該キットには、複数の薬剤が別々に含まれて良く、またはそれらは、そのキットで事前に組み合わされて良い。当該キットの各成分は、個々の容器内に包含されて良く、及び多様な容器の全てが、1つの包装内にあって良い。本開示のキットは、そこに収容されている(例えば、冷蔵または凍結で)成分を、適切に維持するために必要な条件に対応して、設計されて良い。
キットには、そこに入っている成分、及びその使用説明書(例えば、投薬パラメーター、作用機構、薬物動態及び薬理学、副作用、禁忌を含む、有効成分(複数可)の臨床薬理学など)に対して、識別された情報を含んだ、ラベルまたは添付文書が含まれていて良い。ラベルまたは添付文書には、ロット番号及び有効期限などのメーカー情報を含めることができる。ラベルまたは包装用の添付文書は、例えば、物理的な構造内に別々に含まれ、またはそのキットの成分(例えば、アンプル、試験管またはバイアル瓶)に貼られて、その成分を収容する物理的構造体に統合されていて良い。
ラベルまたは添付文書は、さらにディスク(例えば、ハードディスク、カード、メモリディスクなど)、CDまたはDVD−ROM/RAM、DVDなどの光ディスク、MP3、磁気テープ、またはRAM及びROMなどの電子記憶媒体、もしくは磁気/光ストレージメディア、フラッシュメディアまたはメモリタイプカードなどのハイブリッド媒体などの、コンピュータ読み込み可能媒体を含むことができ、またはそれらに組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、実際の説明書が、そのキットには存在せずに、遠隔供給地からの指示を得るための手段が、例えば、インターネットを介して、提供される。
実験用例示
以下の例示は、本開示をどのように実行及び使用するかの完全な開示ならびに記述を伴って、当業者にそれらを提供するための説明であり、及び発明者らが、かれらの発明であると見なすものの範囲を限定する意図はなく、以下の実験が、実施されたこと、及び実施される可能性のある全ての実験であるとして、それらを代表する意図はない。現在時制で書かれた例示的な記述が、必ずしも実行されたわけではなく、その記述が、そこに記載されたデータなどを生み出すために、実行され得ることを、理解される必要がある。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して、精度を確保するための努力がなされたが、しかしいくらかの実験誤差及び偏差を考慮する必要がある。
特に示さない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は摂氏(℃)であり、気圧は、大気またはその近傍である。次に含まれる、標準的な略語を使用する。bp=塩基対(複数可)、kb=キロベース(複数可)、pl=ピコリットル(複数可)、sまたはsec=秒(複数可)、min=分(複数可)、hまたはhr=時間(複数可)、aa=アミノ酸(複数可)、kb=キロベース(複数可)、nt=ヌクレオチド(複数可)、pg=ピコグラム、ng=ナノグラム、μg=マイクログラム、mg=ミリグラム、g=グラム、kg=キログラム、dlまたはdL=デシリットル、μlまたはμL=マイクロリットル、mlまたはmL=ミリリットル、lまたはL=リットル、μM=マイクロモル、mM=ミリモル、M=モル、kDa=キロダルトン、IB=封入体、HPLC=高性能液体クロマトグラフィー、BW=体重、U=単位、ns=統計的に有意ではない、PBS=リン酸緩衝生理食塩水、IHC=免疫組織化学、EDTA=エチレンジアミン四酢酸、SDS−PAGE=ナトリウムドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動、RLU=相対光単位、nm=ナノメートル、LOD=検出限界、LOQ=定量限界。
材料及び方法
次の一般材料及び方法が、それが示された場所で使用され、または以下の実施例で使用される。
分子生物学の手順。分子生物学における標準的な方法が、化学文献に記述されている(例えば、Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、及びAusubel,et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1−4,John Wiley and Sons,Inc.New York,N.Y.が参照され、それらは、細菌細胞及びDNA突然変異誘発のクローニング(第1巻)、哺乳類細胞及び酵母のクローニング(第2巻)、糖質及び蛋白質の発現(第3巻)、及び生物情報学(第4巻)に記述されている)。
抗体関連プロセス。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の製造、精製、ならびに断片化が、記述されており(例えば、Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)、配位子/受容体相互作用を特徴付けるための標準技術が、利用可能であり(例えば、Coligan et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,NYを参照)、蛍光活性化細胞ソーティングを含む、フローサイトメトリーに対応した方法が、利用可能であり(例えば、Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照)、及び例えば、診断用試薬として使用するための、核酸プライマー及びプローブ、ポリペプチド、ならびに抗体を含む、核酸の改変に適した蛍光試薬が、利用可能である(Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc., Eugene,OR.;Sigma−Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MO.)。抗体のさらなる考察は、本明細書の別の場所で示される。
ソフトウェア。例えば、抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能性ドメイン、グリコシル化部位、及び配列アラインメントなどを決定するための、ソフトウェアパッケージ及びデータベースが利用可能である(例えば、GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA)、及びDeCypher(商標)(TimeLogic Corp.,CrystalBay,NV)を参照)。
ペグ化。本明細書に記載のペグ化IL−10は、当業者に公知の任意の手段により合成されて良い。モノ−PEG−IL−10及びモノ−/ジ−PEG−IL−10の混合物の生産に対応する、例示的な合成スキームが、記載されている(例えば、米国特許番号第7,052,686号、米国特許公開番号2011/0250163、WO 2010/077853を参照)。本開示の特定の実施形態には、選択的にペグ化された、モノ及びジ−PEG−IL−10の混合物を含む。本開示の実践に適したPEGs(及びその他の薬物送達技術)の生産及び使用における当業者技能の活用に加えて、当業者は、PEG関連技術の多くの商業サプライヤーに精通している(例えば、NOF America Corp(Irvine,CA)及びParchem(New Rochelle,NY)。
インビトロアッセイにおけるMC/9。本明細書に記載された当該IL−10分子の相対効力(生物活性)は、MC/9生物検定などの、任意の当分野で認められたアッセイまたは方法論を用いて決定されて良い(一般論は、Gomi,K.,et al.,J.Immuno.165(11):6545−52(Dec.1,2000)を参照)。MC/9は、内在性MuIL−10受容体(R1及びR2)を発現するマウスの肥満細胞株である。rMuIL−10及びrHuIL−10での刺激に応答して、MC/9細胞の増殖が起こる。アッセイ用試薬及び材料は、多くの供給元から販売されている(例えば、R&D Systems,USA、及びCell Signaling Technology,Danvers,MA)。
本明細書で使用されるMC/9生物検定において、1×104細胞/ウェルを、rHuIL−10の標準及び試験サンプルの3倍希釈液に安置し及び培養した。細胞を、37℃、5%CO2で、40〜56時間培養した。培養後、100μLのCellTiter GLO(Promega Corp、Madison,WI)を、全てのウェルに添加した後、プレートを、室温で20〜40分間、平衡化した。20〜40分間振とうしながら、室温で培養したプレートを、その後、395nm波長の発光プレートリーダーで読み取った。各群について、各濃度に対する平均RLUを決定した。対数濃度対平均RLUを用いて、一連の各サンプルに対する、適合−制約及び独立の4パラメーターのロジスティック応答曲線を生み出した。参照基準が、100%の効力を有する場合の、%参照効力として、参照効力基準を比較した結果が得られた。報告された値は、少なくとも3つの測定(例えば、3プレート)の平均から得た。
組換えhIL−10のタンパク質活性はまた、MC/9細胞線を利用した短期増殖生物検定によって、評価されても良い。増殖は、代謝活性の検出に基づいて、Alamar Blue、成長指標色素を用いた比色手法により測定されて良い。組換えのhIL−10の生物活性は、EC50値、または半極大刺激が、用量反応曲線において観察されるタンパク質の濃度によって、評価されて良い。
文献に記述される、例示的なIL−10精製法。科学的文献には、免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、及び結晶化、同様に、化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、及びタンパク質のグリコシル化を含む、タンパク質の精製方法が、記述されている(例えば、Coligan,et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vols.1−2,John Wiley and Sons,Inc.,NYを参照)。本開示の方法において使用される、または使用されて良い特定の方法が、本明細書で説明される。
科学的及び特許文献は、IL−10の精製方法を記述し、及びそのような方法は、当業者に公知である。例を挙げると、米国特許第5,710,251号は、CHO細胞株培地からのhIl−10の精製方法について記述する。簡潔に説明すると、この方法は、CHO細胞培養上清を、カチオン交換クロマトグラフィー(S−Sepharose(登録商標)カラムを利用)、アニオン交換クロマトグラフィー(Q−Sepharose(登録商標)カラムを利用)、ハイドロキシアパタイト・クロマトグラフィー、及びゲルろ過クロマトグラフィー(Sephacryl(登録商標)カラムを利用)を含む、一連のクロマトグラフィー工程に供する。
さらに、米国特許第5,710,251号は、E.coliからのhIL−10の精製を記述している。簡潔に説明すると、E.coliは、hIL−10が細胞内に産生されるような発現構造体で形質転換され、及び不溶性の封入体の1成分として存在している。発酵後、IL−10を含む封入体ペレットは、遠心分離によって、細胞物質の残りの部分から単離される。その封入体ペレットは次いで、洗浄浄化及び変性タンパク質への可溶化に供される。IL−10と同様の性質を有するタンパク質に対して一般的に用いられる手順を利用して、再フォールディングが行われる。その後、カチオン交換クロマトグラフィー(S−Sepharose(登録商標)カタムを利用)、アニオン交換クロマトグラフィー(Q−Sepharose(登録商標)カタムを利用)、ハイドロキシアパタイト・クロマトグラフィー、及びゲルろ過クロマトグラフィー(Sephacryl(登録商標)カタムを利用)を含む、一連のクロマトグラフィー工程(前述のCHO細胞培養上清から精製したIL−10に類似する)を実施する。以下に記述するように、本開示の実施形態は、前述の工程の一部の修正及び最適化を含む。
SDS−PAGE電気泳動。タンパク質のサンプルを、200ボルトで37分間、1倍MES SDS実行緩衝液(Invitrogen社)内の、12%ビス−トリスゲル(Invitrogen社)上で、電気泳動で、試験した。電気泳動のためのサンプルを準備するために、16μLの再フォールドされた物質を、6μLの4倍LDSサンプル緩衝液(Invitrogen社)、及び2.4μlの10倍NuPageサンプル還元剤(Invitrogen社)と混合した。電気泳動のためのフォールドを解かれたサンプルを準備するために、1μLのフォールドを解かれた物質を、15μLの水、6μLの4倍LDSサンプル緩衝液、及び2.4μLの10倍NuPageサンプル還元剤と混合した。電気泳動後、分離したタンパク質を染色するために、Simply Blueを使用し、及び画像を、GE′s ImageQuant LAS 500撮像装置(GE Healthcare Bio−sciences,Pittsburgh,PA)を使用して、捉えた。光学濃度測定を、濃度基準として、1μg、0.5μg、及び0.25μgの市販IL−10を用いて実施した。手順は、製造元のプロトコルに従った。
実施例1:再フォールド緩衝液内のIL−10濃度
この実施例は、再フォールディングは、容量依存性であり、及びIL−10濃度は不定であるとする、従来から記述されてきた方法とは対照的に、実際にはタンパク質の再フォールディングは、IL−10濃度に依存することを示す。
封入体を、常温で解凍し、及び10mLの封入体懸濁緩衝液(50mMのトリス緩衝液、4mMのDTT(Acro Biotech、Rancho Cucamonga,CA)、7Mのグアニジン、及びpH8.25)に対して、2gの封入体の密度で懸濁した。可溶化した封入体を、ロッキングプラットフォーム上で3〜20時間、室温に保ち、及びIL−10を含むその可溶化物質を、常温で15分間、最大速度(16000g)の遠心分離によって、不溶性破片から分離した。その上清は、自然状態でフォールドを解かれたIL−10を含んでいた。再フォールディング処理を開始する前に、その可溶化封入体懸濁液の1μLを、SDS−PAGEを介して分析し、その可溶化物質中の封入体の純度、及びIL−10の量を求めた(データは図示せず)。可溶化物質の吸光度を測定するために、波長260nm、280nm及び320nm(データは図示せず)で、分光光度計による測定を実施した。
洗浄浄化後に、封入体を変性タンパク質に可溶化し、次いで再フォールディング処理を行った。簡潔に説明すると、Dynamax社の蠕動ポンプを使用し、そのフォールドを解かれたIL−10を、17cmの内径管を通して、約1/15thの再循環速度の再フォールディング緩衝液に添加した。この再フォールディング装置を使用し、そのフォールドを解かれたIL−10中のグアニジン濃度を、7Mのグアニジンから0.45Mのグアニジンへと徐々に希釈した。さらに、フォールドを解かれたIL−10を、それが、バルクの再フォールドチャンバーに完全に加えられた後の6秒間、中間のグアニジン濃度に置き、そのグアニジンの最終濃度を、0.45Mとした。当該再フォールディング緩衝液を、Masterflex社のL/S Easy−Load IIポンプで、10分毎に1体積の割合で循環させた。この再フォールディング混合物を、Corning攪拌プレート上で、約6の速度で、攪拌棒でゆっくり攪拌した。
マトリックスを形成する複数の実験を行い、及び条件を評価し、最適なIL−10再フォールディング環境を決定した。簡潔に説明すると、4℃、25℃及び37℃の温度を評価し、再フォールディング緩衝液内の、0.05から10mgのIL−10/Lの濃度範囲を評価し、その再フォールディング緩衝液内の、酸化と還元グルタチオンとの異なる比率を試験することによって、酸化還元能を評価し、及び異なるアミノ酸の特定の範囲(0mM〜2M)を実験して、その再フォールディング緩衝成分を同定した。
再フォールディング装置を使用して、フォールドを解かれたIL−10の適切な量を、IL−10の適切なフォールディングを濃縮する、再フォールディング緩衝液及び酸化還元環境下で、逐次的にパルス希釈した。350mLの再フォールディング緩衝液での、変成IL−10の1mg、4mg、及び11mgの再フォールディングは、同じ量の適切にフォールドされた物質をもたらした。さらに、0.15mg/mL濃度でのフォールドを解かれたrHuIL−10モノマーの添加は、3mg/mLまたはそれより高いIL−10濃度での再フォールディングに比べて、1.5から3倍に、適切にフォールドされたIL−10ダイマーの収量を増加させた、と判断した。特に、より高いIL−10濃度で再フォールディングを行った場合、IL−10の大半は不溶性の凝集体として消失し、及びより低いIL−10濃度で再フォールディングを行った場合、適切にフォールドされたIL−10の最終的な収量が低下し、ならびに以降の処理時間が増加した。
再フォールディング緩衝液内のIL−10濃度と総収量との関係は、表1に示すように、cGMPの製造規模において、最も明らかである。
表1に示すように、再フォールディング緩衝液内のIL−10の高濃度が、最も低い収量につながり、一方で0.15mg/mlの近似濃度が、最大の回収量につながる。本実施例で記述した知見は、より大きな生産規模でも観察された(データは図示せず)。
実施例2:再フォールド緩衝液へのアルギニンの添加
この事例は、再フォールド緩衝液へのL−アルギニンの添加が、適切にフォールドされたIL−10の収量に、好ましい効果を有することを示す。
封入体から得られた組換えタンパク質の再フォールディングを容易にするために、0.1〜1Mのアルギニンを、透析または希釈によって、再フォールディングタンパク質の溶媒に、しばしば使用する(例えば、Tsumoto,K.et al.,(2004)Biotechnol. Prog.20:1301−08を参照)。しかしながら、IL−10の生産に使用する再フォールド緩衝液へのアルギニンの添加に関する、科学的及び特許文献での考察はほとんど無い。例えば、米国特許第5,710,251号に開示されるIL−10の製造工程は、再フォールド緩衝液にアルギニンを利用していない。IL−10の再フォールド緩衝液の成分として、アルギニンの使用が考察される場合、0.5MのL−アルギニン及び100mMの尿素を、再フォールド緩衝液として使用することが示唆されている(Arora et al.,REFOLDデータベース)。
低濃度のL−アルギニンの添加は、IL−10の収量に好ましい影響を与えることがわかった。表2に示すように、0.15mg/mLのフォールドを解かれたrHuIL−10を含む、再フォールド緩衝液への、0.01〜0.1Mのアルギニンの添加が、正常にフォールドされたIL−10ダイマーを、少なくとも2倍の増加に導いた。アルギニンのこの濃度は、Arora et al.によって報告されたよりもはるかに少ない。
したがって、0.1Mのアルギニン添加が、アルギニンの不在下で行われる再フォールドの収量に対して、再フォールドされたIL−10の収量を、約2倍に高めるのに有用であることが観察された。
実施例3:UFDF緩衝液の最適化
製造工程中での、IL−10タンパク質の実質的な損失は、再フォールディングの直後に発生することが見出され、ここで、フォールドされたものとフォールドされていないタンパク質の混合物が、SP Sepharose(登録商標)カラムを介して、精製を促す緩衝液内に濃縮され、及び交換される。このステップは、しばしば限外ろ過/透析(UFDF)と呼ばれる。
タンパク質の溶解度を高め、及び濃度依存沈殿による、IL−10の実質的な損失を防ぐために、UFDF緩衝液、またはその再フォールド緩衝液が交換された緩衝液に、アルギニン及び塩化ナトリウムを添加することによる影響を評価した。UFDF緩衝液内の0.1Mのアルギニンの存在(20mMのビス−トリス緩衝液、pH6.5)は、推定で2倍に収量を高めることがわかった。
全体として、本明細書に記載の実験は、最適なIL−10の再フォールド条件をもたらし、ここでrHuIL−10濃度は、0.01から0.1Mの間のアルギニン濃度を伴って、0.05〜0.3mg/mLの間である。事実、再フォールド緩衝液及びUFDF緩衝液内の0.1Mのアルギニンの存在が、再フォールドされ及び回収された総IL−10を、2から4倍に、一貫して増加させた。最終的な再フォールド環境は、20%ショ糖(Amesco社)、0.1MのL−アルギニン(Sigma社)、50mMのトリス緩衝液(Corning社)、0.45mMの酸化グルタチオン(Sigma社)、及び0.05mMの還元グルタチオン(Sigma社)の存在下において、pH8.3で、最適に維持された。
実施例4:商業生産工程からのIL−10の回収
この事例は、市販のcGMP製造工程で回収される再フォールドされたIL−10の量が、そのIL−10の投入量の影響を受けることを示す。
実施例1に記載の一般的な方法論を本明細書に利用した。簡潔に説明すると、懸濁緩衝液内で封入体を可溶化し、及び直鎖状で、フォールドを解かれたIL−10を含む可溶化物質を、遠心分離によって不溶性の破片から分離し、その結果、その自然な、フォールドを解かれた状態での、フォールドを解かれたIL−10を含む上清を得た。再フォールディング処理を開始する前に、その可溶化封入体の懸濁液を、SDS−PAGEを介して分析し、その可溶物中のIL−10の量を求めた。また、280nmを含む複数の波長で、可溶化物質の吸光度を測定するために、分光光度計による評価を実施した。その後、洗浄浄化工程を実施し、及びその封入体を変性タンパク質に可溶化し、次いで、再フォールディング処理を行った。
実施例1に示すように、この製造工程の間で、IL−10タンパク質の実質的な損失が、一般的にはその再フォールディング直後に発生し、ここで、フォールドされたもの及びフォールドされていないタンパク質の混合物が、SP Sepharose(登録商標)カラムを介して、精製を促す緩衝液内に濃縮され、及び交換される(前述のように、このステップは、限外ろ過/透析(UFDF)と呼ばれることがある)。前に示したように、rHuIL−10濃度が0.05〜0.3mg/mLの間にある場合、最適なIL−10の再フォールド条件が観察され、その再フォールディング緩衝液内のIL−10が高濃度の場合は、フォールドを解かれた及び凝集したモノマーIL−10の沈殿によって、低い収量が導かれる。
表3は、商業生産工程の各ステップにおけるIL−10の収量を説明する。表3を参照して、6ロットのIL−10物質を、フォールドの解消、再フォールド、UFDF−1のステップを実行し、及びSP Sepharose(登録商標)カラム上で精製した。6ロットの各々を、別々の日に、本明細書に記述の処理ステップを実施し、及び6ロットの内の2ロットの収量を、さらに下流工程のために、組み合わせ、すなわち、ロット番号15−0540−Aと15−0540−Bの収量を組み合わせ(結合再フォールド1)、ロット番号15−0751−Aと15−0751−Bの収量を組み合わせ(結合再フォールド2)、ロット番号15−1069−Aと15−1069−Bの収量を組み合わせた(結合再フォールド3)。
表3において、「IB Input(IB投入量)」は、洗浄した封入体の総重量(キログラム単位)を表し、「IL−10 Input from IBs(IBsからのIL−10投入量)」は、ダイマーのrHuIL−10を再フォールディングする目的で、約1000リッターの再フォールディング緩衝液に添加した、非フォールディングステップから得たrHuIL−10量(グラム単位)を表し、「“UFDF−1”Recovery(UFDF−1の回収)」は、第1ろ過及び濃縮ステップから回収されたrHuIL−10量(グラム単位)を表し、「SP Recovery(SP回収)」は、初期の捕捉カラムから回収されたrHuIL−10量(グラム単位)を表す。
ロット番号15−0540−Aを参照して、非再フォールディングステップから得た64.47gが、再フォールディングステップからの174.63gを生み出した。その再フォールディングステップから回収されたIL−10の推定量が、その非フォールディングステップからのものより過剰であるのは、その再フォールディングステップからの推定量が、その封入体からの非IL−10タンパク質、及びその精製ステップ中に除去されて得た、280nmの吸収分子を含むからである。
これらのデータは、当該IL−10の投入量が、合計で約80グラムまたは約0.09mg/mLを超える場合、沈殿のために、その回収が大幅に減少することを示している。この結果は、最後の列に示すことができ、93.68グラムのIL−10投入量は、その他のIL−10投入重量のいずれに比べても、より低いSP回収量(11.54g)を生み出した。これらのデータは、rHuIL−10濃度が、0.05から0.3mg/mLの間にある場合、最適なIL−10の再フォールド条件が観察された、との本明細書の他の場所(例えば、実施例3)で記述されたデータと一致している。
本発明の特定の実施形態は、本発明を実施するために、発明者に公知の最良の態様を含んで、本明細書に記載されている。これまでの記載を読めば、本開示の実施形態の多様な変更が、当業者には明らかになるであろうし、及び当業者は、適宜そのような変更を取り入れることが可能である、と予期される。その結果、別段の記載がない限り、本発明は、本明細書に記載のように実践されるべきものであり、及び本発明が、適用法により認められるように、本明細書に付帯された請求項に記載される対象事項の、全ての変更及び同等物を含む、ことを意図している。さらに、本明細書に示されない限り、または文脈と明確に矛盾していない限り、すべての可能なそれらの変更における、先に記述された要素の任意の組み合わせが、包含される。
本明細書に記載されているすべての出版物、特許出願、受入番号、及びその他の参照は、あたかも、個々の出版物または特許出願が、参照によって援用されたと、特別に及び個別に示されたかのように、参照により、本明細書に組み入れられる。
特定の実施形態において、本開示は、a)フォールドを解かれたIL−10モノマーを含む混合物を得ること、及びb)その混合物を再フォールド緩衝液と接触させて、再フォールドされたIL−10を含む混合物を生み出すことを含んで、再フォールドされたIL−10の生成法を企図し、ここでそのフォールドを解かれたIL−10モノマーの濃度が、0.05mg/ml〜0.3mg/mlである。いくつかの実施形態において、当該再フォールド緩衝液内のフォールドを解かれたIL−10モノマーの当該濃度は、0.1mg/mLから0.25mg/mL、0.1mg/mLから0.2mg/mL、または約0.15mg/mLである。当該IL−10は、特定の実施形態において、組み換え的に産生されるヒトIL−10(rhIL−10)である。このrhIL−10は、細菌(例えば、E.coli)内で発現され得る。いくつかの実施形態において、前述の混合物は、懸濁緩衝液を伴うIL−10を含む、多数の封入体を含んで製造される。追加の実施形態はさらに、酸化及び還元されたグルタチオンを含む酸化還元系などの、酸化還元系を、その再フォールド緩衝液に添加することを含む。
本開示は、少なくとも1つの天然由来のまたは非天然由来のアミノ酸を、当該再フォールド緩衝液に添加する実施形態を企図する。いくつかの実施形態において、当該アミノ酸は、アルギニンである。特定の実施形態において、0.005から0.3Mのアルギニンが、当該再フォールド緩衝液に添加され、0.0075から0.25Mのアルギニンが、当該再フォールド緩衝液に添加され、0.005Mから0.2Mのアルギニンが、当該再フォールド緩衝液に添加され、または0.001Mから0.15Mのアルギニンが、当該再フォールド緩衝液に添加される。追加の実施形態において、本開示は、約0.1Mのアルギニン及び約0.15mg/mLのフォールドを解かれたIL−10モノマーの、当該再フォールド緩衝液への添加を企図する。
マトリックスを形成する複数の実験を行い、及び条件を評価し、最適なIL−10再フォールディング環境を決定した。簡潔に説明すると、4℃、25℃及び37℃の温度を評価し、再フォールディング緩衝液内の、0.05から10gのIL−10/Lの濃度範囲を評価し、その再フォールディング緩衝液内の、酸化と還元グルタチオンとの異なる比率を試験することによって、酸化還元能を評価し、及び異なるアミノ酸の特定の範囲(0mM〜2M)を実験して、その再フォールディング緩衝成分を同定した。