本発明の車両用座席は、脱着交換可能なパッドと当該パッドと同形状の凹部を有する車両用座席である。そしてこの脱着可能なパットにおいて、ナノファイバーから構成される繊維地組織とマイクロファイバーからなる立毛を有する繊維組織とから構成された面ファスナーが、パッドと凹部の接触面に配置されている車両用座席である。
そしてこの本発明にて用いられている、脱着交換可能なパッドと座席本体に設けられた凹部の接触面に配置されている面ファスナーは、雌材となる地組織部と、雄材となる立毛部とで構成される。地組織部を構成するナノファイバーの単繊維径としては1000nm以下のフィラメント糸が含まれるものであることが好ましい。そして地組織部側表面には、このフィラメント糸が露出していることが好ましい。また立毛部のマイクロファイバーとしては、単繊維繊度が1μm以上、特には7μm以上の立毛糸が含まれることが好ましい。
さらに本発明の車両用座席を構成する面ファスナーの主要部材である雌材となる地組織部に用いられるナノファイバー(以下、「フィラメント糸A」と称する。)について、まず最初に述べる。
フィラメント糸A(ナノファイバー)の単繊維径(単繊維の直径)としては1000nm以下であるが、好ましくは100〜900nm、特に好ましくは550〜900nm、の範囲内であることが好ましい。かかる単繊維径を単繊維繊度に換算するとたとえばポリエステル繊維では0.01dtex以下に相当する。該単繊維径が大きすぎる場合は、十分な係合性が得られないおそれがあり好ましくない。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。また、単繊維繊度のばらつきが−20%〜+20%の範囲内であることが好ましい。
前記フィラメント糸Aにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、優れた係合性を得る上で500本以上、より好ましくは2000〜10000本であることが好ましい。また、フィラメント糸Aの総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、5〜150dtexの範囲内であることが好ましい。
前記フィラメント糸Aの繊維形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
前記フィラメント糸Aを形成するポリマーの種類としては特に限定されないが、ポリエステル系ポリマーが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、リン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
本発明に用いられる面ファスナーにおいて、雌材となる布帛は上記のフィラメント糸Aのみで構成されることが好ましいが、布帛重量に対して70重量%以下であれば、他の糸条が1種類または複数種類含まれていてもよい。その際、かかる他の糸条としては、単繊維径が1000nmより大の、前記のようなポリエステルからなるポリエスエテル糸条や弾性繊維糸が好ましい。
ここで、かかる弾性繊維糸としては、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなる吸水性ポリエーテルエステル弾性繊維糸、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリテトラメチレンオキシドグリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなる非吸水性ポリエーテルエステル弾性繊維糸、ポリウレタン弾性繊維糸、ポリトリメチレンテレフタレート糸、合成ゴム系弾性繊維糸、天然ゴム系弾性繊維糸などが好適に例示される。
この弾性繊維糸の総繊度としては、5〜100dtex、より好ましくは10〜40dtexの範囲内であることが好ましい。
本発明で用いられる面ファスナーにおいて上記のような雌材となる布帛は例えば以下の製造方法により製造することができる。まず、海成分と、その径が1000nm以下である島成分とで形成される海島型複合繊維(フィラメント糸A用繊維)を用意する。かかる海島型複合繊維としては、海島型複合繊維マルチフィラメント、さらに好ましくは島数100〜1500の海島型複合繊維、が好ましく用いられる。
ここで、海成分ポリマーとしては、各種の易溶解性ポリマーであることが好ましく、溶解性を確保できるのであれば、繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどを主とするものであることも好ましい。また、例えばアルカリ水溶液易溶解性ポリマーを用いるのであれば、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。
一方、島成分ポリマーは、繊維形成性のポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。また、島成分の径は、10〜1000nmの範囲とする必要がある。その際、該径が真円でない場合は外接円の直径を求める。前記の海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。
かかる海島型複合繊維マルチフィラメント糸は、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーとを用い溶融紡糸する。溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。吐出された海島型断面複合繊維マルチフィラメント糸は、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。さらに、仮撚捲縮加工を施してもよい。かかる海島型複合繊維マルチフ
ィラメント糸において、単糸繊維繊度、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれ単糸繊維繊度7μm〜32μm、フィラメント数5〜75本、総繊度30〜170dtex(好ましくは30〜100dtex)の範囲内であることが好ましい。
次いで、かかる海島型複合繊維マルチフィラメント糸を単独で用いるか、必要に応じて単繊維径が1000nmより大の弾性繊維糸など他の糸とともに用いて、布帛を製編または製織する。その際、布帛の組織は特に限定されず、通常の方法で得られた、織物、編物または不織布でよい。なかでも織物または編物が好ましく、編物が特に好ましい。編物の場合、編物のループにより雄材の立毛糸を強固に係合でき好ましい。特に編物のニードル面を、雄材と係合する面として用いると優れた係合性が得られ好ましい。
ここで、織物の織組織は、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロード、タオル、ベロア等のたてパイル織、別珍、よこビロード、ベルベット、コール天等のよこパイル織などが例示される。なお、これらの織組織を有する織物は、レピア織機やエアージェット織機など通常の織機を用いて通常の方法により製織することができる。層数も特に限定されず単層でもよいし2層以上の多層構造を有する織物でもよい。
編物の種類は、よこ編物であっても良いしたて編物であってもよい。よこ編組織としては、天竺、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。天竺の編組織で2種の糸条で複合ループを形成したプレーテイング天竺、その際、一方の糸条を弾性繊維糸条としたベア天竺などが好適に例示される。たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、裏毛編、ジャガード編等が好ましく例示される。なお、製編は、丸編機、横編機、トリコット編機、ラッシェル編機等など通常の編機を用いて通常の方法により製編することができる。層数も特に限定されず単層でもよいし2層以上の多層構造を有する編物でもよい。
次いで、該布帛にアルカリ水溶液処理を施し、前記海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維フィラメント糸を単繊維径が10〜1000nmのマルチフィラメント糸Aとする。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度1〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜70℃の温度で処理するとよい。
また、常法の染色加工、起毛加工、撥水加工、吸水加工、バッフィング加工、さらには、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
かくして得られた布帛には、超極細繊維である前記フィラメント糸Aが含まれているので、面ファスナーの雌材として好適に使用することができる。ここで、前記布帛において、表面および裏面のうち少なくともどちらか一方の面に前記フィラメント糸Aが露出していることが好ましい。表面および裏面のどちらにも前記フィラメント糸Aが露出していない場合には、雄材の立毛糸を係合できないおそれがある。
また、前記布帛において、布帛の厚さが1mm以下、好ましくは0.1〜0.8mm、であることが好ましい。布帛の厚さが大きすぎると、面ファスナーとしての柔軟性が損われるおそれがある。また、かかる布帛において、布帛の目付けとしては30〜500g/m2の範囲内であることが好ましい。
本発明において、雌材は前記布帛のみで構成してもよいし、布帛の周囲がほつれないよう飾り縫いしてもよいし、適宜装飾品等を付加してもさしつかえない。
本発明の車両用座席は、上記のようなナノファイバーから構成される繊維地組織を雌材として有する面ファスナーを、脱着交換可能なパッドと当該パッドと同形状の座席本体側の凹部との接触面に配置されているのであるが、この面ファスナーには雄材としてマイクロファイバーからなる立毛を有する繊維組織(以下、「立毛布帛」という)を有することが必要である。
かかる立毛布帛の好ましい態様としては、有機繊維糸条からなる編織組織を有する組織部と、前記地組織部に編みこまれ、または織りこまれ、前記地組織部から、その少なくとも1面側に伸び出ている複数の立毛糸からなる立毛部とを有するものであることが好ましい。かかる立毛糸としては、ループパイルでもよいが、強固な係合性を得る上で、カットパイルであることが好ましい。
前記立毛糸は、その単糸繊度が5μm以上、好ましくは7〜23μm、であることが好ましい。該単糸繊度が小さすぎると、立毛状態を保持することが困難となり、立毛布帛を雄材として用いて雌材と係合させる際に強固な係合性が得られないおそれがある。
また、前記立毛糸の立毛長としては、0.1〜10mmの範囲内であることが好ましい。該立毛長が小さすぎると、立毛布帛を雄材として用いて雌材と係合させる際に強固な係合性が得られないおそれがある。逆に、該立毛長が大きすいと、立毛状態を保持することが困難となり、立毛布帛を雄材として用いて雌材と係合させる際に強固な係合性が得られないおそれがある。なお、本明細書において、立毛長は図1に示すLの高さとする。
かかる立毛糸で形成される立毛部の立毛糸密度としては、3000dtex/cm2以上、好ましくは5000〜100000dtex/cm2、であることが好ましい。該立毛糸密度が小さすぎると立毛糸が毛倒れしやすくなるため、立毛状態を保持することが困難となり、立毛布帛を雄材として用いて雌材と係合させる際に強固な係合性が得られないおそれがある。なお、かかる立毛糸密度は以下の方法により測定することができる。すなわち、キーエンス(株)製マイクロスコープ(型式:VHX−900)を用いて、立毛布帛の表面を撮影(倍率200倍)し、1cm2(1cm×1cm)あたりの立毛糸本数を測定し次式により算出する。
立毛糸密度(dtex/cm2)=単糸繊度(dtex)×立毛糸本数(本/cm2)。
前記立毛糸を形成する繊維の種類としては特に限定されず、綿、羊毛、麻、ビスコースレーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリエーテルエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、セルロースアセテート繊維、アラミド繊維などの通常の繊維でもよい。なかでも、リサイクル性や剛直性の点で前述のようなポリエステルからなるポリエステル系繊維が特に好ましい。
繊維を形成する樹脂中には、必要に応じて、艶消し剤(二酸化チタン)、微細孔形成剤(有機スルホン酸金属塩)、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤(三酸化二アンチモン)、蛍光増白剤、着色顔料、帯電防止剤(スルホン酸金属塩)、吸湿剤(ポリオキシアルキレングリコール)、抗菌剤、その他の無機粒子の1種以上が含まれていてもよい。
立毛糸の形状としては、非捲縮立毛糸でもよいし、仮撚捲縮加工法や機械捲縮加工法、さらにはサイバイサイド型潜在捲縮性複合繊維を熱処理して得られた捲縮立毛糸でもよく特には限定されないが、強固な係合性を得る上で非捲縮立毛糸であることが好ましい。
立毛糸の単繊維横断面形状としては特に制限はなく、通常の円形断面のほか、三角、扁平、くびれ付扁平、十字形、六様形、あるいは中空形の断面形状でもよい。
前記立毛布帛において、地組織部は有機繊維糸条からなり編織組織を有する。かかる有機繊維糸条を構成する繊維としては、前記の立毛糸用として例示した繊維と同様のものでよい。特に、リサイクル性の点でポリエステル系繊維が好ましい。
地組織部を構成する有機繊維糸条の形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸条)であることが好ましい。該有機繊維糸条の単糸繊維繊度および総繊度は、布帛の風合いを損なわない上で、単糸繊維繊度7〜23μm、総繊度30〜300dtexであることが好ましい。また、単糸繊維の断面形状には制限はなく、通常の円形断面のほかに三角、扁平、くびれ付扁平、十字形、六様形、あるいは中空形の断面形状であってもよい。さらに、かかる有機繊維糸条は、仮撚捲縮加工糸や2種以上の構成糸条を空気混繊加工や複合仮撚加工させた複合糸、さらには芯部に弾性糸、鞘部に非弾性糸が位置するカバリング糸であってもよい。
前記立毛布帛は、例えば、下記の製造方法により容易に得ることができる。
まず、立毛糸用糸条として単糸繊度が5μm以上、好ましくは7〜23μm、の前述の繊維からなる糸条と、地組織部用有機繊維糸条として前述の繊維からなる糸条とを用いて通常の立毛布帛(ループパイル布帛)を製編織した後、必要に応じてループパイルの先端部をカットしてカットパイルにするとよい。
ここで、地組織部が編組織を有する立毛布帛を得る場合には、地組織を製編し、その上に伸び出るシンカーパイル、ポールトリコットパイル、ダブルラッセルパイルなどのループパイル組織を形成し、このループパイルをシャーリングする方法などが用いられる。ポールトリコットパイルは、トリコット編組織のパイル編み部分を、起毛機を用いてループパイルに形成することによって得られる。
一方、地組織部が織物組織を有する立毛布帛を得る場合には、経パイル織物又は緯パイル織物を製織し、そのループパイルをカットするか、あるいはモケット織物を製織し、そのパイル糸をセンターカットする方法が用いられる。
かくして得られた立毛布帛には、常法の染色加工、撥水加工、吸水加工、バッフィング加工、さらには、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
本発明に用いる面ファスナーにおいて、雄材は前記立毛布帛のみで構成してもよいし、立毛布帛の周囲がほつれないよう飾り縫いしてもよいし、適宜装飾品等を付加してもさしつかえない。また、立毛布帛の立毛部とは反対側表面にバックコーテング等を施してもさしつかえない。
本発明の車両用座席は、これまで述べたように、ナノファイバーから構成される繊維地組織(布帛)を雌材として有し、さらに上記のようなマイクロファイバーからなる立毛を有する繊維組織(立毛布帛)を雄材として有する面ファスナーを、脱着交換可能なパッドと当該パッドと同形状の凹部との接触面に配置されているものである。さらには取り換え交換や洗浄を行う交換可能なパッド側に、雌材となるナノファイバーから構成される繊維地組織(布帛)配置し、座席本体の凹部側に、雄材となるマイクロファイバーからなる立毛を有する繊維組織(立毛布帛)を配置し、面ファスナーとすることが好ましい。雌材となる繊維地組織(布帛)の方が、洗濯時等において綿が付着しにくく、傷みにくいからである。
さらに、脱着式パッドに配置されている面ファスナーは、その面積として4cm2以上、さらに好ましくは10〜300cm2の範囲内であることが好ましい。また、面ファスナーの配置として柔軟性に優れているため、パッドの端面及びまたは裏面に使用することが可能である。さらには側面のみに上記の面ファスナーを配置することが、脱着可能なパッドの両面に、異なった繊維を配置することができ、リバーシブルに利用できるためにより好ましい。
さらに本発明においては、脱着交換可能なパッドとして繊維構造体と繊維シートから構成されたものであることが好ましい。従来のウレタン等の発泡体に代わって繊維構造体を用いることによって、蒸れ感もなく軽量であるばかりでなく、交換もより容易となる。
そしてさらに繊維構造体を構成する繊維の縦方向/横方向比(T/W比)が1.5以上であることが好ましい。さらには縦方向/横方向比(T/W比)が2.0〜8.0の範囲にあることが好ましい。このような繊維構造体、特に縦方向に繊維が配向されている繊維構造体を用いることによって、脱着交換可能なパッドと座席本体の凹部との接触面に適度な圧力がかかることによって、上記のナノファイバーとマイクロファイバーとからなる面ファスナーのずれが少なく、にも関わらず脱着性が容易になる。また、このように繊維の縦方向/横方向の比が高いことによって、3次元形状を有することが多い座席の凹部に対してもより一体感のある座席となる。
さらにこの繊維構造体は、短繊維と熱接着性複合短繊維とが混綿され、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または該熱接着性複合短繊維と前記短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在しているものであることが好ましい。
このように本発明の車両用座席では、脱着交換可能なパッドに繊維構造体を用いることが好ましい。
この繊維構造体に用いられる繊維としては、綿、ウール等の天然繊維やカーボン繊維等の無機繊維、セルロース系繊維、アラミド系、ポリオレフィン系、ポリエステル系の合成繊維等、さらには雑綿又は反毛とよばれるリサイクル繊維等も使用できる。なかでも、取り扱い性及びリサイクル性、洗濯性の点より合成繊維が好ましい。さらに、リサイクル性や繊維形成性等の観点からポリエチレンテレフタレートからなる繊維であることが、特に好ましい。
また繊維構造体の嵩高さや反発弾性を得るためには、繊維が捲縮していることが好ましい。この場合の、捲縮付与方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与したり、通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。さらにその捲縮数としては、3〜40個/2.54cm、より好ましくは7〜15個/2.54cm、であることが好ましい。
またここで、繊維の単繊維径としては、9〜50μmの範囲内であることが好ましい。単繊維径が小さすぎると充分な剛性が得られず取り扱いが難しくなる傾向にある。逆に単繊維径が大きすぎても、繊維構造体が硬くなり、クッション感が低下する傾向にある。
このような繊維の単繊維横断面形状は、通常の丸断面でもよいし、三角、四角、扁平、中空などの異型断面であってもよい。なお、単繊維横断面形状が異型の場合、前記の単繊維の直径としては、その外接円の直径を使用するものとする。また、丸中空断面の場合は外径寸法を測定してその直径とする。
このような繊維構造体としては、不織布構造体であることが好ましいが、さらには短繊維からなる不織布構造体であることがより好ましい。
短繊維として用いる場合の繊維長としては、30〜100mmの範囲内であることが好ましい。該繊維長が小さすぎると充分な剛性が得られないおそれがある。逆に該繊維長が大きすぎても、工程安定性が損われる傾向にある。
またパッド中の繊維構造体としては、熱接着性繊維を含むことが好ましい。座席は繰り返し圧縮を受けるが、熱接着性繊維を含むことによってその変形、いわゆる「へたり」を有効に防止することが可能となる。
熱接着性繊維としては、熱融着性成分を一部に含む複合繊維であることが好ましい。そのような熱接着性複合繊維の熱融着成分としては、上記の繊維を構成するポリマー成分より、40℃以上低い融点を有することが好ましい。この温度差が小さい場合には、繊維間の接着性が不十分となる上、腰のない取り扱いにくい繊維構造体となる傾向にある。また、繊維構造体を製造する際の熱処理温度の細かな制御が必要となるため、生産性に劣るものとなる。
ここで、熱融着成分として配されるポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコ−ル系ポリマー等を挙げることができる。
中でも、特に接着性や温度特性、強度の面からすれば、ポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。
熱接着性繊維としては、熱接着性の複合繊維であることも好ましく、さらにはその際、熱融着成分が、複合繊維の少なくとも1/2の表面積を占めるものであることが好ましい。重量割合は、熱融着成分とその他の相手側成分が、複合比率で10/90〜70/30の範囲にあることが好ましい。このような熱接着性複合繊維の形態としては、特に限定されないが、熱融着成分と相手側成分とが、サイドバイサイド、あるいは芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。この芯鞘型の熱接着性複合繊維では、熱融着成分が鞘部となり、相手側成分が芯部となるが、この芯部は同心円状、または偏心状にあってもよい。
かかる熱接着性複合繊維において、単繊維径としては15〜30μmの範囲内であることが好ましい。かかる熱接着性複合繊維も短繊維であって、繊維長が3〜100mmに裁断されていることが好ましい。
本発明にて用いられる繊維構造体は、例えば上記のような短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、加熱処理することにより得られる物であることが好ましい。この繊維構造体には、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または該熱接着性複合短繊維と該短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在している。
繊維構造体中の短繊維と熱接着複合短繊維との重量比率は90/10〜10/90であることが好ましい。熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より少ない場合は、固着点が少なくなり、繊維構造体の腰がなく、均一性に劣り、表面の割れが発生する傾向にあり、外観が低下する。一方、熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より多い場合は、固着点が多くなり過ぎ、熱処理工程での取扱い性が低下する。
さらに、パッド用の繊維構造体としては、図2に模式的に示すように、前記熱接着性複合短繊維と前記短繊維とが繊維構造体の厚さ方向に縦に配列していることが好ましい。ここで、「厚さ方向に縦に配列している」とは、繊維構造体の厚さ方向に対して平行に縦に配列されている繊維の総本数を(T)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に横に配列されている繊維の総本数を(W)とするとき、Tの本数が多いことであって、本発明では縦方向/横方向比(T/W比)が1.5以上であることが好ましい。また、繊維構造体を使用する際には、繊維の方向はパッドの厚さ方向、縦方向を主とするものであることが好ましい。構成繊維が繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されていることで、前記構造体は、繊維が厚み方向に配向しているため、蒸気の通気に優れ、蒸れ感を防止する。さらには、洗濯時液通り性がよく、短時間で洗濯が可能であり、乾きも早い。
このような繊維構造体を得る方法には特に限定はなく、従来公知の方法を任意に採用すれば良いが、例えば短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、ローラーカードにより均一なウェッブとして紡出した後、公知の熱処理機を用いて、ウェッブをアコーディオン状に折りたたみながら加熱処理し、熱融着による固着点を形成させる方法などが好ましく例示される。通常不織布の製造工程においては、工程の流れる方向、及び平面方向に繊維が配向する。通常のクロスレイ等の工程では、そのように主に一方向に繊維が配向した複数の層を直角方向に重ねあわせるのであるが、本発明では工程の流れる方向に配向したままの層を用いることが好ましい。また厚さ方向に針や水流を用いて交絡させて不織布の強度を高めることも多いが、本発明では厚さ方向には交絡させず、熱接着で強度を高めた不織布を用いることが好ましい。
本発明で用いるパッドは、上記のような繊維構造体を繊維シートで被覆したものであることが好ましく、繊維からなるバッドの厚みが10〜80mmであることがさらに好ましい。薄すぎると、クッション性が乏しく、厚すぎると、本体の座席より突き出やすくなったり、洗濯が非常に困難になる傾向にある。
さらに、本発明で用いるパッドは、カンチレバー法による、縦方向/横方向の比率が、70%〜120%である繊維パッドを用いることが好ましい。この比率から外れると、繊維パッドとしての縦方向、横方向の等方性が低下する傾向にある。さらに三次元構造をした座席に装着する場合、装着が難しい物となる。
さて、本発明において好ましく用いられる繊維構造体を被覆する繊維シートとしては、通常の繊維を用いた織物や編物等の布帛に限られるものではなく、座席に使用することができるシート状物であれば、ポリウレタン等でコーティングされた人工皮革や合成皮革なども用いることが可能である。また、繊維構造体と繊維シートは脱着可能であることが好ましい。脱着することにより、最表面の繊維シートのみを、洗濯、洗浄することが容易となる。
また、脱着可能なパッド表面を被覆する繊維シートは、各種の機能性を有する繊維を用いることが好ましい。さらには、パッドの表面と裏面で、機能の異なった繊維シートを使用することが好ましい。
たとえば、脱着交換繊維パッドにおいて、表面を冷感を感じる布帛、裏面を吸湿により温感を感じる布帛を使用することで、夏、冬で使い分けることが可能となる。また、織編みの形状や色、柄を、パッドの表裏で変更したり、異なる機能性を有する繊維シートや布帛を使用することで、好みに対応することが可能となる。なお、繊維シートとしては、織物、編物等の布帛や、車で使用できる人工皮革や、合成皮革なども好ましく用いることができる。
本発明で用いる脱着可能なパッドとしては、すべてをポリエステル繊維から構成することも好ましく、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル等が容易となり、環境負荷を低減しうるものとなる。また、パッドを洗濯及び乾かすこともポリエステル繊維は、公定水分率が低いため作業が容易となる。
また本発明の車両用座席は、脱着交換可能なパッドと同形状の凹部を有するのであるが、刃物や、NC加工機によるドリル等で、凹部を形成することができる。さらに凹部表面に、フィルム、シートまたは樹脂成形体を張り付けることも好ましく、表面の均一性を向上させることができる。またこの凹部は、座面及び/又は背面に形成することが好ましく、特に座席の被使用者の人体と接することとなる部分に凹設部を形成することが好ましい。座席にはウレタンパッドを使用することが多く、この場合は、刃物や、NC加工機によるドリル等の加工がより容易となる。
座席の凹部を形成する面としては、座席本体の座席面やシートバックの背当て面であることが好ましい。
本発明の座席は、着脱式のバッドを洗濯することによって、長期にわたり常に清潔な状態で使用することが出来る。また脱着して圧力を解放することにより、繊維構造体の厚み方向のへたりを改善し、高いレベルのクッション性を保つことが可能となった。
このような本発明の座席では、パッドはナノファイバーから構成される繊維地組織とマイクロファイバーからなる立毛を有する繊維組織とから構成された面ファスナーを用いることにより、強固に固定される。
このような本発明の車両用座席は、必要に応じ、着座部分等のシートを容易に交換することができるため、局部的に不衛生になったり劣化したりすることを防止することが可能となった。また、シートを容易に交換することができるため、カーシェアリング等においても有効である。局部的に不衛生にならないように取り外して洗浄したり、劣化した場合に交換することも容易であって、常に優れた快適性を発揮する車両用座席となる。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(1)繊維成分の溶解速度
海・島ポリマーの各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1,000〜2,000m/分の紡糸速度で糸を巻き取りし、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製した。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
(2)単繊維径
透過型電子顕微鏡(TEM)で繊維の横断面を撮影することにより測定した。
(3)繊維の伸度
JIS L 1096 8.12に従って測定した。
(4)布帛の厚み
JIS L 1096 8.5に従って測定した。
(5)布帛の目付
JIS L 1096 8.4.2に従って測定した。
(6)引張りせん断強力
水平方向に長さ10cm 幅4cmにカットした試料を長さ方向に5cm、長さ方向と平行に幅全体を重ね合わせた後、接圧用ローラーで9.8N/cm(1kg/cm)の荷重を掛けながら2往復させて試料を接着させたのち、引張試験機に装着し、引張速度30cm/min、荷重19.6N(2.0kg)にて、試料の長さ方向と平行に引張り、試料が分離するまでの間の最大引張せん断強力を測定後、以下の式によって単位面積あたりの引張せん断強力を求め、n数5での平均値を算出した。
F1=S/(L×B)
ただし、F1は引張りせん断強力(cN/cm2)、Sは最大引張りせん断荷重(cN)、Lは重ね合わせ長さ(cm)、Bは試料の幅(cm)である。
(7)立毛糸の立毛長(パイル高さ)
キーエンス(株)製マイクロスコープ(型式:VH−6300)を用いて、立毛布帛の断面を撮影(倍率50倍)し、全体厚みおよび地組織部の厚みを測定して、下記式により立毛糸の立毛長を算出した。なお、全体厚みは地組織部の最底部から立毛糸の最高部までの距離を測定した。n数は5でその平均値を求めた。パイル高さについても同様に測定した。
L=全体厚み(mm)−地組織部厚み(mm)
(8)立毛糸密度
キーエンス(株)製マイクロスコープ(型式:VHX−900)を用いて、立毛布帛の表面を撮影(倍率200倍)し、1cm2(1cm×1cm)あたりの立毛糸本数を測定し次式により算出した。なお、n数は5でその平均値を求めた。
立毛糸密度(dtex/cm2)=単糸繊度(dtex)×立毛糸本数(本/cm2)
(9)融点
Du Pont社製 熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。なお、n数5でその平均値を求めた。
(10)繊維の縦方向/横方向比(T/W比)
繊維構造体を厚さ方向に切断し、その断面において、厚さ方向に対して平行に配列されている、短繊維と熱接着性複合短繊維(図2において0°≦θ≦45°)の総本数を縦方向の数(T)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている短繊維と熱接着性複合短繊維(図2において45°<θ≦90°)の総本数を横方向の数(W)として、繊維の縦方向/横方向比(T/W比)を算出した。なお、本数の測定は、任意の10ヶ所について各々30本の繊維を透過型光学顕微鏡で観察し、その数を数えた。
(11)繊維構造体の厚さ、目付、密度
JIS K6401に準じて測定した。
(12)カンチレバー
JIS L 1913:2010により測定した。なお、サンプルを25mm×250mmの試験片をたて方向及びよこ方向からそれぞれ6枚裁断した。なお、厚みは、スライサー設備を使用し、厚みを5mmとして測定した。なお、厚みが10mm以下の場合は、片面のみスライサー設備を利用し厚み調整を実施。10mmを越える物は、両面をスライスして測定サンプルとした。
(13)25%硬さ(N)
直径100mmの真円状の加圧板を使用し、JIS K6401により測定した。
[実施例1]
(面ファスナーの準備)
交換可能なパッドと座席本体の凹部の接触面に配置する面ファスナーを用意した。
まずナノファイバーを形成する海島型複合延伸糸(フィラメント糸A用繊維)を作成した。すなわち島成分としてポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1200ポイズ)、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1750ポイズ)を用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=30:70、島数=836の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合延伸糸は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は700nmであった。
次いで、この海島型複合延伸糸(フィラメント糸A用繊維)だけを用いて、28G90インチの経編機(カールマイヤー(株)製KS4SU)を用いてハーフ組織(バック:10/12、ミドル:23/10、フロント:10/23による編方)の経編生機(布帛用生機)を製編した。その後、得られた編地の海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、2.5%NaOH水溶液で、70℃にて30%アルカリ減量した。その後、130℃にて高圧染色を行い、最終セットとして170℃の乾熱セットを行った。
得られた編地を走査型電子顕微鏡SEMで生地表面および断面を観察したところ、該編
地は、平均単繊維径が700nmのフィラメント糸Aのみで構成され、均一に開繊されて
いることを確認した。また、該編地(布帛)の厚みは0.4mm、目付は150g/m
2であった。これを面ファスナーの雌材となるナノファイバーから構成される繊維地組織とした。
一方、面ファスナーの雄材となるマイクロファイバーからなる立毛を有する繊維組織として、地組織用の糸条となる通常のポリエステルフィラメント糸(167dtex/48fil)と、立毛糸用糸条となるマイクロファイバー糸(ポリエステルフィラメント糸、84dtex/36fil)とを用いて28G、130インチの経編機(カールマイヤー株式会社製「KS4」)を使用してパイル組織(フロント:10/45、バック:10/12)の経編生機(立毛布帛用生機)を製編した。その後シャーリング加工を施したのち、プレセットとして160℃にて乾熱セットを行い、130℃にて高圧染色を行い、最終セットとして170℃の乾熱セットを行った。
得られた立毛編地(立毛布帛、立毛糸の単糸繊維繊度21μm)は、マイクロファイバーのカットパイルからなる立毛部と地組織部とで構成され、立毛長が1.2mmであった。
(交換可能なパッドの準備)
脱着交換可能なパッドを、準備した。
すなわち、テレフタル酸とイソフタル酸とを80/20(モル%)で混合した酸成分と、ブチレングリコールとを重合し、得られたポリブチレン系テレフタレート38重量%をさらにポリテトラメチレングリコール(分子量2000)62重量%と加熱反応させ、ブロック共重合ポリエーテルポリエステルエラストマー(熱可塑性エラストマー)を得た。この熱可塑性エラストマーの融点は155℃であった。
この熱可塑性エラストマーを鞘(シース)に、ポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を芯(コア)に、シース/コアの重量比で50/50なるように紡糸して偏心シース・コア型複合繊維を得た。
得られた複合繊維を2.0倍に延伸したのち、80℃で乾燥し捲縮を発現させたのち、油剤を付与し、51mmに切断することにより、熱接着性短繊維を得た。該熱接着性短繊維において、単糸繊度は6.6dtex、捲縮数は13個/2.54cm、捲縮率は30%であった。
次いで、この熱接着性短繊維40重量%と、ポリエチレンテレフタレート短繊維(単糸繊度6.6dtex、繊維長64mm、捲縮数9個/2.54cm、捲縮率34%、断面形状は丸中空、融点256℃)60重量%とを混綿し、カード機でウェブを作製した。その後、ローラ表面速度2.5m/分の駆動ローラにより、熱風サクション式熱処理機(熱処理ゾーンの長さ5m、移動速度1m/分)内へ得られたウェブを押し込むことにより、アコーディオン式に折り畳み、そして熱風200℃×5分間処理して、繊維構造体となる繊維クッション材を得た。この繊維構造体は、T/W比が1.5以上と繊維が厚み方向に林立しており、熱接着性複合短繊維と短繊維とが繊維構造体の厚さ方向に配列していた。この繊維構造体の重量は700g/m2、厚みは30mmであった。また、熱接着性複合短繊維の単繊維径は26μm、その他の短繊維の単繊維径は26μmであった。
得られた繊維構造体は、座席の座面及び背側の凹部のサイズに合うように、裁断した。なお、この繊維構造体において縦方向及び横方向のサンプルを取り出し、カンチレバー法により剛性を測定したところ、縦方向/横方向の比率は、84%であった。また、25%圧縮硬さは、248Nであった。
一方、繊維構造体の表地用の繊維シートとなる布帛として、車用丸編み布帛を縫製した。そして繊維構造体(繊維クッション)を包み込むようにこの布帛を使用して縫製し、繊維からなるパッドとした。
最後にパッドのサイド左右厚み面に、幅30mm、長さ100mmの前記面ファスナーの雌材となるナノファイバーから構成される繊維地組織を各1箇所縫製し、交換可能なパッドとした。
(車両用座席)
一方、座席本体のウレタンパッドには、上記の脱着交換可能な繊維パッドが入るサイズに、ナイフで凹部を作成した。そしてこの座席本体の凹部に上記の面ファスナーの雄材となるマイクロファイバーからなる立毛を有する繊維組織をアクリル系接着剤で設置した。また、座席本体の表皮も、繊維パッドが入るサイズに裁断し、周辺を縫製処理した。
得られた座席本体のウレタンパッドの凹部に、繊維パッドを挿入したところ、面ファスナーの効果により、容易に位置決め及び設置が可能であった。
また繊維パッド内部の繊維構造体中の繊維の縦方向/横方向の比率が高いため、座席の三次元形状を有する凹部にきれいに収まり、一体感のある物であった。なお、繊維構造体を構成する不織布がアコーディオン状であるため、アコーディオン状方向には、容易に手作業で圧縮ができ、繊維パッドの挿入が容易であった。
実際に図1のように繊維パッドを座席本体の座席面と座席のシートバックの背当て面に使用し、座席として使用したところ、交換パッドは、ずれることが無かった。さらに、運転を終了し交換パッドを垂直に脱着したが、脱着時に耳障りな音が発生することもなく、非常に楽に取り外すことができた。
また繰返し使用した後、着脱交換な繊維パッドを取り外した。これをネットに入れて大型洗濯機で洗濯し、天日干しをしたところ、汚れも取れ、かつ、クッション感も当初に近いレベルまで回復した。
[実施例2]
実施例1と同様の面ファスナー、繊維パッドを使用し、ただし面ファスナーの設置面を側面の一部のみから、繊維パッドの側面と裏面全面に配置するようにした。
このようにして作成した、脱着交換パッドを座席にセットとしたところ、若干抵抗が高くはなったものの、容易に位置決め及び設置が可能であった、このような状態で、実際に運転を実施したが、交換パッドは全くずれることが無かった。また、長時間の運転においてもずれが無く、着座の痛みもなかった。運転を終了し交換パッドを垂直に脱着したが、脱着時に耳障りな音が発生することもなく、非常に楽に取り外すことができた。
[比較例1]
実施例1と同様の繊維パッドを使用し、ただし実施例1の面ファスナーの代わりに、通常の硬い面ファスナー(クラレ株式会社製「マジックテープ(登録商標)」、本体の接合面にはナイロン繊維を使用し、アクリル系接着剤にて固定した)を用いて、座席本体に設置した。
しかし脱着交換な繊維パッドを座席にセットする際に、繊維パッドと座席本体凹部の接着力強すぎ、設置が簡単ではなく、特に位置決めが困難であった。
このような状態で、実際に運転を実施したところ、交換パッド自体はずれることが無かったものの、運転着座時に面ファスナーの部分の硬さを感じた。さらに、運転を終了し交換パッドを垂直に脱着したが、簡単に取り外すことができず、また脱着時には大きな音が発生した。
[比較例2]
実施例1の繊維パッドに代えて、実施例1の繊維構造体と同様な硬さの発泡ウレタンを準備して、実施例1と同様に布帛を被せた脱着式パッドを作成し、実施例1と同様に座席として使用した。
しかし脱着式のパッドと座席本体の凹部の接合面のわずかな歪みによっても、交換パッドがずれやすいものであった。そこで比較例1記載の従来の面ファスナーを用いたところ固定こそされたものの、比較例1と同様に設置のしやすさや、着席時のフィット感に劣るものであった。
またさらに繰返し使用した後、実施例1と同様に洗濯し、天日に干したが、水分が気泡内に度止まり、濡れた感じがいつまでも続き、重量も重い物であった。