JP2018184351A - ヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体、それを構成単位として含むrna誘導体、核酸医薬、及びrna誘導体若しくはrnaの製造方法 - Google Patents

ヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体、それを構成単位として含むrna誘導体、核酸医薬、及びrna誘導体若しくはrnaの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】RNA合成効率が良好で温和な条件で脱保護することができ、かつ脱保護後の精製の容易な、2’位の水酸基が保護されたヌクレオシド又はそのヌクレオチド誘導体の提供。
【解決手段】式(1)で表すヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体。

(X及びXは夫々独立にH、置換/非置換のシリル基、4−メトキシトリチル基、4,4’−ジメトキシトリチル基等;Bは修飾/非修飾の核酸塩基;Rとしては式(P1)が例示される;Rはメトキシ基等の電子供与性を有する置換基;R及びRは夫々独立にH又はアルキル基)
【選択図】図2

Description

本発明は、ヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体、それを構成単位として含むRNA誘導体、核酸医薬、及びRNA誘導体若しくはRNAの製造方法に関する。
核酸医薬は、合成されたオリゴヌクレオチドを基盤構造とする医薬品である。核酸医薬は、特定のタンパクの発現を抑制する等の作用を持ち、これまで治療の難しかった疾病に対する新たな治療方法を提供するものとして期待されている。こうした核酸医薬として応用可能性のある技術として、アンチセンス法、RNA干渉法、デコイ法等が提案されてきた。これらの中でも、RNA干渉法は、siRNAと呼ばれ21〜23量体という比較的短鎖のRNAを用いる手法であり、化学合成したRNAでもこれを実現できることから注目を集めている。
しかしながら、RNAの化学合成は、DNAのそれと比べて合成効率が十分とはいえず、困難なのも事実である。RNAを構成するヌクレオシドは、DNAの場合と異なり、2’位に水酸基を持つのでこれに保護基を導入しなければならないが、その保護基の導入効率が悪く、また2’位に導入した保護基の立体障害により鎖伸長の反応効率が悪いこと等がその原因として挙げられる。
そのような背景から、例えば特許文献1には、RNA合成のために、2’位の水酸基をシアノエチル基で保護したヌクレオシド又はそのヌクレオチドが提案されている。特許文献1によれば、保護基であるシアノエチル基は、温和な条件で効率良くヌクレオシド又はそのヌクレオチドにおける2’位の水酸基に導入できるとされている。また、特許文献2によれば、2’位に保護基として導入されたシアノエチル基は、テトラブチルアンモニウムフロリド(TBAF)を用いることにより、容易に脱保護できるとされる。
また、非特許文献1には、4−ニトロベンジルオキシメチレン基で2’位の水酸基を保護することが提案されている。このような保護基の導入されたリボヌクレオシドホスホロアミダイトを用いることで、DNA合成の際に用いられるデオキシリボヌクレオシドのホスホロアミダイトと同等の鎖伸長速度と鎖伸長効率が実現できるとされる。
国際公開第2005/085271号 特開2006−248929号公報
Jacek Cieslak et al.,Org.Lett.,2007,9,671−674
特許文献1及び2や非特許文献1に記載された手法によれば、2’位の水酸基が保護されたRNAを効率的に合成することが可能である。しかしながら、これを脱保護する場合、2’位の水酸基の保護基としてシアノエチル基を用いた場合には、水溶液中でTBAFを用いるので脱保護されたRNAの精製が難しく、同じく保護基として4−ニトロベンジルオキシメチレン基を用いた場合には、ニトロ基の還元操作に続いて、0.1M酢酸水溶液中90℃の加熱を行うという過酷な条件を用いなければならなかった。また、核酸医薬では、体内での分解を避けつつ作用部位まで薬剤を送達するために、薬剤となるRNAを適切な保護基で修飾する必要があるが、上記のように、脱保護するために必要な90℃の加熱を人体内で行うことはできない。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、RNA合成効率が良好で温和な条件で脱保護することができ、かつ脱保護後の精製の容易な、2’位の水酸基が保護されたヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体を提供することを目的とする。
本発明者らは、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、非特許文献1に記載された4−ニトロベンジルオキシメチレン基を初めとするニトロアリールメトキシメチレンを2’位の水酸基のための保護基とする場合において、芳香環にメトキシ基のような電子供与性基を導入することにより、ニトロ基の還元操作を行った後、37℃程度の温度条件で脱保護が完了するばかりでなく、脱保護した後に得られたRNAについても極めて容易に精製できることを見出した。このような温度条件で脱保護が可能であれば、RNA合成の際に有用であることは勿論、体温での脱保護も可能なので、核酸医薬としても有用である。本発明は、以上の知見によりなされたものであり、以下のようなものを提供する。
(1)本発明は、下記一般式(1)で表すヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体である。
(上記一般式(1)中、X及びXはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいシリル基、4−メトキシトリチル基、4,4’−ジメトキシトリチル基、又は下記一般式(2)を表し、Bは修飾されていてもよい核酸塩基を表し、Rは下記一般式(P1)、(P2)又は(P3)を表す。)
(上記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rはリン酸の保護基を表し、R及びRは互いに連結して環構造を形成してもよい。)
(上記一般式(P1)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、p、q及びrはそれぞれ独立に0又は1で(p+q+r)は1以上であり、nは1以上(5−p−q−r)以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
(上記一般式(P2)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、XはO又はSであり、p及びqはそれぞれ独立に0又は1で(p+q)は1以上であり、nは1以上(3−p−q)以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
(上記一般式(P3)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、p及びqはそれぞれ独立に0又は1で(p+q)は1であり、nは1であるが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよく、nが0の場合には(p+q)は2でもよい。)
(2)また本発明は、下記一般式(1a)で表す(1)項記載のヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体である。
(一般式(1a)中、X及びXはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいシリル基、4−メトキシトリチル基、4,4’−ジメトキシトリチル基、又は下記一般式(2)を表し、Bは修飾されていてもよい核酸塩基を表す。)
(上記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rはリン酸の保護基を表し、R及びRは互いに連結して環構造を形成してもよい。)
(3)本発明は、下記一般式(3)で表すヌクレオシド誘導体を構成単位として含むRNA誘導体でもある。
(上記一般式(3)中、波線を付した単結合はそれぞれRNA誘導体のホスホジエステル結合を形成するリン原子(RNA誘導体の末端である場合には末端の水素原子)へ結合し、Bは修飾されていてもよい核酸塩基を表し、Rは下記一般式(P1)、(P2)又は(P3)を表す。)
(上記一般式(P1)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、p、q及びrはそれぞれ独立に0又は1で(p+q+r)は1以上であり、nは1以上(5−p−q−r)以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
(上記一般式(P2)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、XはO又はSであり、p及びqはそれぞれ独立に0又は1で(p+q)は1以上であり、nは1以上(3−p−q)以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
(上記一般式(P3)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、p及びqはそれぞれ独立に0又は1で(p+q)は1であり、nは1であるが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよく、nが0の場合には(p+q)は2でもよい。)
(4)また本発明は、下記一般式(3a)で表すリボヌクレオシド誘導体を構成単位として含む(3)項記載のRNA誘導体である。
(上記一般式(3a)中、波線を付した単結合はそれぞれRNAのホスホジエステル結合を形成するリン原子(RNAの末端である場合には末端の水素原子)へ結合し、Bは修飾されていてもよい核酸塩基を表す。)
(5)本発明は、(3)項又は(4)項記載のRNA誘導体を含むことを特徴とする核酸医薬でもある。
(6)本発明は、(1)項又は(2)項記載のヌクレオチドの誘導体を用いてRNA鎖を伸長させる工程を備えることを特徴とする、RNA誘導体の製造方法でもある。
(7)本発明は、(6)項記載のRNA誘導体製造方法で得たRNA誘導体に対して、還元操作を行うことでRNAの2’位水酸基に施した保護基Rを脱保護する工程を備えることを特徴とするRNAの製造方法でもある。
本発明によれば、RNA合成効率が良好で温和な条件で脱保護することができ、かつ脱保護後の精製の容易な、2’位の水酸基が保護されたヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体が提供される。
図1は、三塩化チタンによるON2の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。 図2は、三塩化チタンによるON3の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。 図3は、ニトロレダクターゼによるON1の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。 図4は、ニトロレダクターゼによるON2の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。 図5は、ニトロレダクターゼによるON3の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。 図6は、ニトロレダクターゼによるON4の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。
以下、本発明のヌクレオシド又はヌクレオチドの誘導体の一実施形態、RNA誘導体の一実施形態、核酸医薬の一実施形態、RNA誘導体の製造方法の一実施態様、及びRNAの製造方法の一実施態様について説明を行うが、本発明は以下の実施形態及び実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することが可能である。
[ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体]
本発明のヌクレオシド又はヌクレオチドの誘導体(以下、単にヌクレオシドの誘導体とも呼ぶ。)は、下記一般式(1)で表す化合物である。この化合物は、RNA合成のために好ましく用いられ、特にホスホロアミダイトである場合には、固相合成法による鎖伸長反応において高い反応速度と反応効率を実現できる。
本発明は、上記一般式(1)に示すリボヌクレオシドの2’位に特有の保護基(R)を備える点に特徴がある。そこでまずは、保護基となるRについて説明する。上記一般式Rは、下記一般式(P1)、(P2)又は(P3)で表す1価の基である。
上記一般式(P1)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表す。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。炭素数1〜5のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基等が挙げられる。各Rはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である。この炭素数1〜5のアルキル基としては、上記で例示したものと同じものを挙げることができる。これらの中でも、Rとしては、メトキシ基が好ましい。p、q及びrは、それぞれ独立に0又は1で、(p+q+r)は、1以上である。つまり、上記の芳香環(すなわち、ベンゼン環)において、ニトロ基は、少なくとも1個存在し、メチレン炭素に結合した、芳香環上の炭素原子から1原子離れた(すなわち隣接する)又は3原子離れた炭素原子に結合することになる。nは、1以上(5−p−q−r)以下の整数であるが、後述するR及びRの少なくとも一つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。
上記に示すように、各Rは、いずれも電子供与性基である。本発明は、ニトロ基及びこうした電子供与性基が芳香環に結合していることがポイントである。次にそのことを説明する。下記スキーム1及び2は、上記一般式(P1)を説明のための一例として具体化したものである。下記スキーム1及び2に示すように、本発明のヌクレオシドの誘導体は、還元操作によりニトロ基がアミノ基に変換されると、アミノ基に含まれる窒素原子上の孤立電子対が芳香環へ移動し、酸素原子とメチレン炭素間の結合を切断する。このとき、アミノ基に含まれる窒素原子は正電荷を帯びることになるが、芳香環に電子供与性基が結合していることにより、この正電荷を帯びている構造が安定化される。その結果、この反応が進行しやすくなると考えられる。下記スキーム1を参照するとわかるように、この反応は、脱離基に含まれるメチレン炭素に結合した、芳香環上の炭素原子から3原子離れた炭素原子にニトロ基(還元されてアミノ基になる。)が結合していれば進行することになる。また、下記スキーム2を参照するとわかるように、脱離基に含まれるメチレン炭素に結合した、芳香環上の炭素原子から1原子離れた(すなわち隣接する)炭素原子にニトロ基が結合していても同様に反応が進行することになる。下記スキーム1及び2では芳香環がベンゼン環だが、芳香環がどのような構造であっても、このような条件が満たされることにより同じような共鳴構造を書くことができるので、例えば、芳香環がフラン環やチオフェン環やイミダゾール環であっても、芳香環に電子供与性基が結合していることにより、脱保護反応が同じように促進されることになる。後述の一般式(P2)及び一般式(P3)はそのような例となる。
なお、下記スキーム1及び2に示すように、芳香環が脱離した後、Rの一部である−CHが2’位の水酸基に結合したままとなるが、この−CHは速やかにホルムアルデヒドとなって脱離する。
上記一般式(P1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。R及びRは、芳香環に結合する炭素原子(芳香環がベンゼン環ならばベンジル位になる。)に結合しており、これらがアルキル基であれば芳香環との間で超共役を生じて、上記の電子供与性基と同様に、窒素原子上の正電荷を安定化することができる。このため、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であれば、電子供与性基であるRが芳香環に結合していなくても脱保護反応が促進される。上記「R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。」とは、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であれば、超共役により脱保護反応が促進されるので、必ずしも芳香環にRが結合していなくてもよい、という意味である。このことは、以下に説明する一般式(P2)及び(P3)でも同様である。
上記一般式(P1)のより具体的な例として、下記一般式(P1a)及び(P1b)を挙げることができる。勿論、上記一般式(P1)はこれら一般式(P1a)及び(P1b)に限定されるものではない。
(上記一般式(P1a)中、各R、R及びRは、上記一般式(P1)におけるものと同様であり、nは、1以上4以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。上記一般式(P1b)中、各R、R及びRは、上記一般式(P1)におけるものと同様であり、nは、1以上3以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
上記一般式(P2)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表す。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。炭素数1〜5のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基等が挙げられる。各Rはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である。この炭素数1〜5のアルキル基としては、上記で例示したものと同じものを挙げることができる。これらの中でも、Rとしては、メトキシ基が好ましい。p及びqは、それぞれ独立に0又は1で、(p+q)は、1以上である。つまり、上記の五員環において、ニトロ基は、少なくとも1個存在し、メチレン炭素に結合した、五員環上の炭素原子から1原子離れた(すなわち隣接する)又は3原子離れた炭素原子に結合することになる。nは、1以上(3−p−q)以下の整数だが、後述するR及びRの少なくとも一つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。
上記一般式(P2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。Xは、O又はSである。Xがこれらのヘテロ原子であることにより、一般式(P2)における五員環が芳香族性を備えるようになる。このような芳香族性を備えることにより、一般式(P2)におけるニトロ基が還元された際に脱保護されることは、上記一般式(P1)の場合と同様である。
上記一般式(P2)のより具体的な例として、下記一般式(P2a)及び(P2b)を挙げることができる。勿論、上記一般式(P2)はこれら一般式(P2a)及び(P2b)に限定されるものではない。
(上記一般式(P2a)中、各R、X、R及びRは、上記(P2)におけるものと同様であり、nは、1又は2だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。
上記一般式(P3)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表す。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。炭素数1〜5のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基等が挙げられる。各Rはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である。この炭素数1〜5のアルキル基としては、上記で例示したものと同じものを挙げることができる。これらの中でも、Rとしては、メトキシ基が好ましい。p及びqは、それぞれ独立に0又は1で、(p+q)は1である。つまり、上記のイミダゾール環において、ニトロ基は1個存在し、メチレン炭素に結合した、イミダゾール環上の炭素原子から1原子離れた(すなわち隣接する)又は3原子離れた炭素原子に結合することになる。nは1であるが、後述するR及びRの少なくとも一つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。また、nが0の場合には、(p+q)、すなわちイミダゾール環におけるニトロ基の数は2でもよい。
上記一般式(P3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。一般式(P3)におけるイミダゾール環もまた芳香族性を備えるので、一般式(P3)におけるニトロ基が還元された際に脱保護されることは、上記一般式(P1)の場合と同様である。
上記一般式(P3)のより具体的な例として、下記一般式(P3a)を挙げることができる。勿論、上記一般式(P3)はこの一般式(P3a)に限定されるものではない。
(上記一般式(P3a)中、R、R及びRは、上記一般式(P3)におけるものと同様であるが、R及びRの少なくとも一つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、Rは水素原子でもよい。)
上記一般式(1)中、X及びXはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいシリル基、4−メトキシトリチル基、4,4’−ジメトキシトリチル基、又は下記一般式(2)を表す。X及びXは、本発明のヌクレオシドの誘導体における5’位の酸素原子と3’位の酸素原子にそれぞれ結合する。水素原子及び下記一般式(2)で表す置換基を除くこれらの置換基は、5’位の水酸基の保護基としてよく用いられるものであるし、下記一般式(2)で表す置換基はホスホロアミダイトである。この一般式(2)で表す置換基が3’位に結合されるとRNAの固相合成にて鎖伸長反応に用いられる材料となる。
上記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基を表す。このような置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプシル基等が挙げられる。これらの中でもイソプロピル基が好ましく挙げられ、R及びRの両方がイソプロピル基であることが特に好ましく挙げられる。なお、R及びRは、互いに連結して環構造を形成してもよい。
はリン酸の保護基である。このような保護基としては、RNA合成の鎖伸長反応における各化学処理により脱離することがなく、鎖伸長反応終了後のRNA切り出しの際の脱保護プロセスで容易に脱離するものが選択される。このような保護基としては、シアノエチル基が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
上記一般式(1)中、Bは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。ここで、「核酸塩基」とは、生物の染色体DNA、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、リボソーマルRNA、トランスファーRNA、核内小分子RNA等、天然に存在する核酸に見出される全ての核酸塩基、及び核酸の合成に使用可能な、置換基を有してもよいヘテロ芳香環全般を含む。これには天然に見出されないものも含まれる。代表的な核酸塩基としては、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、核酸塩基には保護基を有するものも含まれる。
上記一般式(1)で表す本発明のヌクレオシドの誘導体のうち、特にRをより具体化した例として下記の一般式(1a)を挙げることができる。もちろん、本発明はこれに限定されるものではない。
上記一般式(1a)中、X、X、Bは、上記一般式(1)におけるものと同じである。
次に、本発明のヌクレオシドの誘導体の合成方法を説明するために、一例としてウリジンの2’位水酸基に本発明の特徴となる保護基を導入する方法を説明する。その合成経路の一例を下記のスキーム3に示す。スキーム3に示すように、まず、市販のウリジン1を出発原料とし、3’及び5’位の水酸基をシリル基で保護して化合物2を得る。次いで、化合物2を無水酢酸及び酢酸の共存下にて反応させ化合物3とする。その後、化合物3にベンジルアルコール類化合物(2−メトキシ−4−ニトロベンジルアルコール、又は化合物8)をトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)及びN−ヨードスクシンイミド(NIS)と共に加え、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(EtN−3HF)を用いて3’及び5’位のシリル保護基を除去し、2’位水酸基が保護されたウリジン4、9を得る。化合物4のウリジンは、上記一般式(P1)において、ベンゼン環にメトキシ基が1個導入されたものであり、化合物9のウリジンは、上記一般式(P1)において、ベンゼン環にメトキシ基が2個導入されたものである。
また、上記化合物4及び9のヌクレオシド誘導体から、RNA合成のためのモノマー化合物を得るための合成経路の一例を下記スキーム4に示す。スキーム4は、上記化合物4及び9のヌクレオシド誘導体の5’位水酸基をトリチル化し、3’位水酸基を亜リン酸化してホスホロアミダイト(化合物13及び15)を得る経路の一例である。
本発明のヌクレオシドの誘導体は、2’位の水酸基が保護されているものの、RNA合成の際の鎖伸長反応において、従来見られたような立体障害による効率低下がなく、高い効率で反応を進行させることが可能である。また、2’位に導入された保護基は、保護基中のニトロ基をアミノ基に還元する還元操作を行うことで、弱酸性〜中性の水溶液中で容易に脱離させることが可能であり、かつ、脱離した保護基が、逆相カラムクロマトグラフィー等による処理で容易に取り除かれるという特徴を備える。この脱保護は、ヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体の状態で行うことが可能なのは勿論、RNA合成して得たRNA誘導体の状態で行うことも可能なので、必要に応じて所望のタイミングで行うことが可能である。
脱保護を行うための還元操作で用いる還元剤としては、ニトロ基の還元において通常用いられる還元剤を用いることができる。このような還元剤としては、三塩化チタン、アジチオン酸、ヨウ化サマリウム、Znダスト等を挙げることができるが、中でも三塩化チタンを好ましく挙げることができる。また、この還元処理は、上記に挙げた還元剤のみならず、NADH(還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の存在下、ニトロレダクターゼのような細胞内酵素によっても進行させることが可能である。そのため、2’位の水酸基が保護されたRNA誘導体を本発明のヌクレオシド誘導体から合成し、これを核酸医薬として人体に投与して所望の細胞まで送達させた後に、細胞内酵素により脱保護させて機能を発現させるような使い方も可能である。特に、癌細胞のように、還元環境に置かれた細胞内では上記の脱保護が速やかに進行する。
[RNA誘導体]
下記一般式(3)で表すリボヌクレオシド誘導体を構成単位として含むRNA誘導体も本発明の一つである。このRNA誘導体は、上記で説明した本発明のヌクレオシド誘導体をもとにRNA合成して得られるものであり、構成単位となるヌクレオチドの少なくとも一部において、2’位の水酸基が上述の保護基で保護されている。本発明のRNA誘導体は、全ての構成単位において2’位に上述の保護基を備えていてもよいし、一部の構成単位においてのみ2’位に上述の保護基を備えていてもよい。なお、RNA誘導体の構成単位とは、RNA誘導体を構成する重合鎖に含まれる一つ一つのヌクレオチドからリン酸部分を取り除いた断片部分(すなわち、下記一般式(3)で表す部分)をいう。
上記一般式(3)中、波線を付した単結合はそれぞれRNA誘導体のホスホジエステル結合を形成するリン原子へ結合する。なお、RNA誘導体の末端に上記一般式(3)で表す構成単位が存在する場合、一般式(3)において波線を付した単結合は、末端に存在する水素原子に結合する。
上記一般式(3)において、B及びRは、上記一般式(1)におけるB及びRと同じものである。そのため、上記一般式(3)におけるB及びRについてのここでの説明を省略する。
本発明のRNA誘導体は、2’位の水酸基が、上記一般式(P1)〜(P3)で表す保護基で保護されており、この保護基は、一般式(P1)〜(P3)に示すニトロ基が還元されることで、弱酸性〜中性の水溶液中、37℃付近の温度で容易に脱保護される。そして、脱保護反応を行った水溶液をそのまま逆相カラムクロマトグラフィーで処理することにより、脱離した保護基由来の化合物と目的のRNAとを容易に分離することができる。この脱保護は、RNA誘導体に対する還元操作を行うことで進行する。還元操作に用いる還元剤は、既に説明したように、ニトロ基の還元において通常用いられる還元剤に加えて、NADHの存在下、ニトロレダクターゼのような細胞内酵素によっても進行させることができる。
このため、本発明のRNA誘導体は、RNA合成における中間体として有用であるばかりでなく、核酸医薬としても有用である。すなわち、2’位の水酸基が保護された、本発明のRNA誘導体を核酸医薬として人体に投与して所望の細胞まで送達させた後に、細胞内酵素により脱保護させて機能を発現させるような使い方も可能である。特に、癌細胞のように、還元環境に置かれた細胞内では上記の脱保護が速やかに進行する。
[核酸医薬]
上記本発明のRNA誘導体を含むことを特徴とする核酸医薬もまた、本発明の一つである。これについては上記RNA誘導体で説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
[RNA誘導体の製造方法]
上記本発明のヌクレオチドの誘導体を用いてRNA鎖を伸長させる工程を備えることを特徴とするRNA誘導体の合成方法もまた、本発明の一つである。既に説明したように、本発明のヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体は、2’位の水酸基に特定の保護基R(すなわち、上記一般式(P1)〜(P3)で表す基)を備えたRNA誘導体の合成に用いることができる。このとき、RNA鎖を伸長させる工程を行うことになるが、そのような工程としてはホスホロアミダイトを用いた固相合成法を初めとして各種のものが公知なので、目的に合った方法を適宜選択して行えばよい。
[RNAの製造方法]
上記本発明のRNA誘導体の製造方法で得たRNA誘導体に対して、還元操作を行うことでRNAの2’位水酸基に施した保護基Rを脱保護する工程を備えることを特徴とするRNAの製造方法もまた、本発明の一つである。既に説明したように、本発明のRNA誘導体は、2’位の水酸基に導入された保護基R(すなわち、上記一般式(P1)〜(P3)で表す基)を備え、この保護基Rは、弱酸性〜中性の水溶液中で還元操作を行うことで容易に脱離させることが可能である。そして、この還元操作を行った水溶液を逆相カラムクロマトグラフィー等で処理することにより、保護基が脱離して生じた化合物と目的物であるRNAとを容易に分離することができる。これらのことについては既に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、下記の合成例における化合物番号は、上記スキーム3及び4にて化合物に付した番号に対応する。
・化合物2の合成
ウリジン(10.49g、42.59mmol)を無水ピリジンで三回共沸脱水した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、ピリジン(200mL)に溶解した。これに、1,3−ジクロロ−1,1,3,3,−テトライソプロピルジシロキサン(TIPDSCl、16.35μL、51.11mmol)を加え、氷浴上で7時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により原料消失を確認し、水(20mL)を加え、減圧下濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解させ、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜0:100で展開、87.5:12.5〜75:25で溶出)で精製し、化合物2を白色泡状固体(18.39g、37.78mmol、収率89%)として得た。
・化合物3の合成
化合物2(4.02g、8.26mmol)を無水ピリジンで3回共沸脱水し、無水トルエンで3回共沸除去した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、ジメチルスルホキシド(DMSO、7mL)に溶解した。酢酸(AcOH、11mL、189.98mmol)、及び無水酢酸(AcO、7mL、74.34mmol)を順次加え、室温で3日間撹拌した。TLCにより原料消失を確認し、氷浴上で飽和炭酸ナトリウム水溶液を加えた。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、及び飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜0:100で展開、75:25で溶出)で精製し、化合物3を白色粉末固体(3.42g、6.25mmol、収率75.7%)として得た。
・化合物4の合成
化合物3(276mg、0.5mmol)及び2−メトキシ−4−ニトロベンジルアルコール(103mg、0.55mmol)を無水ピリジンで3回共沸脱水し、無水トルエンで3回共沸除去した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、テトラヒドロフラン(THF、1.7mL)に溶解させた。N−ヨードスクシンイミド(NIS、126mg、0.55mmol)、モレキュラーシーブス4A(497mg)、及びトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH、50μL、0.55mmol)を順次加え、ドライアイス+アセトニトリル上で40分撹拌した。TLCにより原料消失を確認し、トリエチルアミン(EtN、285μL)を加え、セライト濾過し、減圧下濃縮した。酢酸エチルに溶解させ、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えた。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。これを無水ピリジンで3回共沸脱水し、無水トルエンで3回共沸除去した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、THF(5mL)に溶解させた。トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(EtN−3HF、285μL、1.75mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。TLCにより原料消失を確認し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0〜97:3で展開、98:2で溶出)で精製し、化合物4を黄色粉末固体(0.129g、0.294mmol、収率58.6%)として得た。化合物4は本発明のヌクレオシド誘導体に相当し、2’位水酸基の保護基に含まれる芳香環にメトキシ基が1個導入されたものになる。
・化合物6の合成
3−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸(化合物5、5g、27.3mmol)を2M水酸化ナトリウム水溶液(100mL)に溶解させた。K(7.4g)を水(150mL)に溶解させたものを加え、室温で1週間撹拌した。その後、濃硫酸をpH1〜2になるまで加え、吸引濾過した。濾液を1時間熱還流させ、放冷した。その後、吸引濾過し、化合物6を茶色固体(1.52g、7.64mmol、収率28%)として得た。
・化合物7の合成
化合物6(1.079g、5.42mmol)を反応容器に入れてアルゴン置換し、ジメチルホルムアミド(DMF、20mL)に溶解させた。CHI(934μL、81.3mmol)、及びKCO(2.07g、108.4mmol)を順次加え、室温で3日間撹拌した。TLCにより原料消失を確認し、水で2回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜70:30で展開、90:10で溶出)で精製し、化合物7を黄色粉末固体(0.778g、3.23mmol、収率60%)として得た。
・化合物8の合成
化合物7(502mg、2.08mmol)を反応容器に入れてアルゴン置換し、THF(5mL)に溶解させた。氷浴上で1.0M水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H、6.24mL、6.24mmol)を加え、氷浴上で2時間撹拌した。TLCにより原料消失を確認し、アセトン(4mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(12mL)を順次加え、セライト濾過をした。その後、減圧下濃縮をし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜40:60で展開、60:40で溶出)で精製し、化合物8を黄色粉末固体(0.307g、1.44mmol、収率69.2%)として得た。
・化合物9の合成
・化合物9の合成
化合物3(0.672g、1.2mmol)及び化合物8(283mg、1.32mmol)を無水ピリジンで3回共沸脱水し、無水トルエンで2回共沸除去した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、THF(4mL)に溶解させた。N−ヨードスクシンイミド(NIS、326mg、1.45mmol)、モレキュラーシーブス4A(496mg)、及びトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH、120μL、1.36mmol)を順次加え、ドライアイス+アセトニトリル上で3.5時間撹拌した。TLCにより原料消失を確認し、トリエチルアミン(EtN、1mL)を加え、セライト濾過し、減圧下濃縮した。その後、飽和炭酸ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。これを無水ピリジンで3回共沸脱水し、無水トルエンで2回共沸除去した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、THF(15mL)に溶解させた。トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(EtN−3HF、855μL、4.2mmol)を加え、室温で20時間撹拌した。TLCにより原料消失を確認し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0〜94:6で展開、98:2で溶出)で精製し、化合物9を黄色粉末固体(0.332g、0.71mmol、収率59%)として得た。化合物9は本発明のヌクレオシド誘導体に相当し、2’位水酸基の保護基に含まれる芳香環にメトキシ基が2個導入されたものになる。
・化合物11の合成
上記非特許文献1に記載された手順にて化合物10を合成した。化合物10は、2’位の水酸基に導入された保護基における芳香環に電子供与性基が導入されておらず、本発明のヌクレオシド誘導体に該当しない。なお、化合物10の5’位の水酸基はジメトキシトリチル基(DMTr)で保護されている。化合物10(300mg、0.42mmol)を無水ピリジンで5回共沸脱水し、無水トルエンで3回共沸除去した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、ジクロロメタン(4.0mL)に溶解した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、219μL、1.26mmol)、及び2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(206μL、0.92mmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。TLCにより反応の進行を確認し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜20:80で展開、50:50で溶出)で精製し、化合物11を白色泡状固体(185mg、0.20mmol、48.3%)として得た。化合物11は、本発明に該当せず、比較用のホスホロアミダイトである。
・化合物12の合成
化合物4(316mg、0.719mmol)を無水ピリジンで3回共沸脱水し、反応容器に入れてアルゴン置換した後、ピリジン(7.0mL)に溶解した。4,4’−ジメトキシトリチルクロライド(DMTr−Cl、268mg、0.791mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。TLCにより原料消失を確認し、水を少量加え、溶液を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0〜97:3で展開、98:2で溶出)で精製し、化合物12を白色粉末固体(0.404g、0.639mmol、収率89.0%)として得た。
・化合物13の合成
化合物12(352mg、0.47mmol)を無水ピリジンで5回共沸脱水し、無水トルエンで3回共沸除去した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、ジクロロメタン(4.0mL)に溶解した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、246μL、1.41mmol)、及び2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(230μL、1.03mmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。TLCにより反応の進行を確認し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜40:60で展開、50:50〜40:60で溶出)で精製し、化合物13を白色泡状固体(287mg、0.305mmol、収率64.8%)として得た。
・化合物14の合成
化合物9(272mg、0.58mmol)を無水ピリジンで3回共沸脱水し、反応容器に入れてアルゴン置換した後、ピリジン(6.0mL)に溶解した。4,4’−ジメトキシトリチルクロライド(DMTr−Cl、266mg、0.754mmol)を加え、室温で4時間静置した。TLCにより原料消失を確認し、水を少量加え、溶液を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0〜96:4で展開、99:1で溶出)で精製し、化合物14を黄色泡状固体(0.394g、0.51mmol、収率88%)として得た。
・化合物15の合成
化合物14(344mg、0.45mmol)を無水ピリジンで7回共沸脱水し、無水トルエンで5回共沸除去した後、反応容器に入れてアルゴン置換し、ジクロロメタン(4.0mL)に溶解した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、235μL、1.35mmol)、及び2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(221μL、0.99mmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。TLCにより反応の進行を確認し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。水層に目的物が含まれていた為、ジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を集めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜40:60で展開、40:60で溶出)で精製し、化合物15を黄色泡状固体(267mg、0.27mmol、収率61%)として得た。
[化合物4の化学的還元]
2’位水酸基の保護基にメトキシ基が1個導入された化合物4(10mg、0.0228mmol)をメタノール(1mL)に溶解させ、NHCl(3mg、0.0912mmol)及びZn(5mg、0.1596mmol)を順次加え、室温で2時間撹拌した。TLCにより反応の進行を確認したところ、原料のスポットの消失と新たなスポットの出現を確認した。新たなスポットはニトロ基が還元されて生成した中間体と考えられ、遊離の(すなわち、脱保護された)ウリジンのスポットは現れなかった。セライト濾過を行い、濾液を減圧下濃縮した。残渣をメタノール(1mL)に溶解させ、そこから50μLとり、pH6.0の100mMリン酸緩衝液を50μL加え、37℃で静置した。TLCにより、遊離のウリジンと同じRf値のスポットが新たに出現したことが確認された。このことから、2’位水酸基の保護基にメトキシ基が1個導入された化合物4では、還元操作を行った後、緩衝液を加えて弱酸性を維持することで脱保護されることがわかった。なお、2’位水酸基の保護基にメトキシ基が導入されていない化合物(非特許文献1に記載された化合物)では、同様の操作を行っても遊離のウリジンは生成せず、脱保護されなかった。
[化合物9の化学的還元]
化合物9(10mg、0.0213mmol)をメタノール(1mL)に溶解させ、NHCl(8.4mg、0.256mmol)及びZn(14mg、0.447mmol)を順次加え、室温で撹拌した。TLCにより、ウリジンと同じRf値のスポットが新たに出現したことが確認された。このことから、2’位水酸基の保護基にメトキシ基が2個導入された化合物9では、還元操作を行うだけで脱保護されることがわかった。
以上の結果から、メトキシ基が1個である化合物4、及びメトキシ基が2個である化合物9は、いずれも還元操作を行うことにより常温にて脱保護が可能だったが、メトキシ基が2個の化合物9は、メトキシ基が1個の化合物4よりも脱保護されやすかった。なお、メトキシ基が0個だと還元操作を行っても常温では脱保護されなかった。
[オリゴヌクレオチドの合成]
2’位水酸基の保護基に導入されたメトキシ基が0個のホスホロアミダイトである化合物11、同じくメトキシ基が1個のホスホロアミダイトである化合物13、及び同じくメトキシ基が2個のホスホロアミダイトである化合物15をそれぞれ用いて、DNA/RNA合成機を用いた固相ホスホロアミダイト法により、表1に示す配列を有するオリゴヌクレオチド(ON1〜ON4)を合成した。なお、表1に示した配列において、Tはチミン、U(MeO)は2’位水酸基に保護基を持ち、この保護基に導入されたメトキシ基が0個のウラシル、U(MeO)は同じくメトキシ基が1個のウラシル、U(MeO)は同じくメトキシ基が2個のウラシルを意味する。
[三塩化チタンによるON2の脱保護反応]
マイクロチューブにON2溶液(5.0μL)を測り取り、内部標準として1mMチミジン溶液(4.8μL)を加え、乾固させた。2Mクエン酸緩衝液(20μL)、純水(179.6μL)、及び1M三塩化チタン(0.2μL)を順次加え、脱保護反応を行った。経時毎に10μLずつサンプリングし、逆相シリカゲルカラムを用いるHPLCで分析した。その結果を図1に示す。図1は、三塩化チタンによるON2の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。
[三塩化チタンによるON3の脱保護反応]
マイクロチューブにON3溶液(4.3μL)を測り取り、内部標準として1mMチミジン溶液(2.4μL)を加え、乾固させた。2Mクエン酸緩衝液(20μL)、純水(172.9μL)、及び1M三塩化チタン(0.4μL)を順次加え、脱保護反応を行った。経時毎に10μLずつサンプリングし、逆相シリカゲルカラムを用いるHPLCで分析した。その結果を図2に示す。図2は、三塩化チタンによるON3の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。
図1に示すように、ON2では、1時間後には出発物質のピークが消失し、ニトロ基がアミノ基に還元された中間体と、脱保護体である5’−TTTTU−3’のピークが確認された。図2に示すように、ON3では、1時間後に出発物質のピークが消失し、ON2の結果と同様に中間体と思われる保持時間24分付近のピークと、5’−TTTTU−3’のピークが確認された。図1と図2のそれぞれについて12時間後の結果を比較すると、12時間後では、メトキシ基が2個導入されたON3のほうが、メトキシ基が1個導入されたON2よりも脱保護反応が進んでいることがわかる。
[ニトロレダクターゼによるON1の脱保護反応]
マイクロチューブにON1溶液(10.8μL)を測り取り、内部標準として500μM N−Benzoyl−2’−dA−Hydrate溶液(7.2μL)、100mMリン酸緩衝液(pH6.0、90μL)、100mM NADH水溶液(30μL)、及び純水(42μL)を順次加え、37℃の恒温槽に20分間静置した。そこから60μLを別のマイクロチューブに取り、100mMリン酸緩衝液(pH6.0、20μL)、及び純水20μLを加え、これを反応前とした。原液に100mMリン酸緩衝液(pH6.0、40μL)、純水30μL、及びニトロレダクターゼ水溶液(10μL)を加え、酵素反応を行った。経時毎に10μLずつ取り、逆相シリカゲルカラムを用いるHPLCで分析した。その結果を図3に示す。図3は、ニトロレダクターゼによるON1の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。
[ニトロレダクターゼによるON2の脱保護反応]
マイクロチューブにON2溶液(3.75μL)を測り取り、内部標準として500μM N−Benzoyl−2’−dA−Hydrate溶液(7.2μL)、100mMリン酸緩衝液(pH6.0、90μL)、100mM NADH水溶液(30μL)、及び純水(49.05μL)を順次加え、37℃の恒温槽に20分間静置した。そこから60μLを別のマイクロチューブに取り、100mMリン酸緩衝液(pH6.0、20μL)、及び純水20μLを加え、これを反応前とした。原液に100mMリン酸緩衝液(pH6.0、40μL)、純水30μL、及びニトロレダクターゼ水溶液(10μL)を加え、酵素反応を行った。経時毎に10μLずつ取り、逆相シリカゲルカラムを用いるHPLCで分析した。その結果を図4に示す。図4は、ニトロレダクターゼによるON2の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。
[ニトロレダクターゼによるON3の脱保護反応]
マイクロチューブにON3溶液(6.5μL)を測り取り、内部標準として500μM N−Benzoyl−2’−dA−Hydrate溶液(7.2μL)、100mMリン酸緩衝液(pH6.0、90μL)、100mM NADH水溶液(30μL)、及び純水(46.3μL)を順次加え、37℃の恒温槽に20分間静置した。そこから60μLを別のマイクロチューブに取り、100mMリン酸緩衝液(pH6.0、20μL)、及び純水20μLを加え、これを反応前とした。原液に100mMリン酸緩衝液(pH6.0、40μL)、純水30μL、及びニトロレダクターゼ水溶液(10μL)を加え、酵素反応を行った。経時毎に10μLずつ取り、逆相シリカゲルカラムを用いるHPLCで分析した。その結果を図5に示す。図5は、ニトロレダクターゼによるON3の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。
[ニトロレダクターゼによるON4の脱保護反応]
マイクロチューブにON4溶液(4.0μL)を測り取り、内部標準として500μM N−Benzoyl−2’−dA−Hydrate溶液(7.2μL)、100mMリン酸緩衝液(pH6.0、90μL)、100mM NADH水溶液(30μL)、及び純水(48.8μL)を順次加え、37℃の恒温槽に20分間静置した。そこから60μLを別のマイクロチューブに取り、100mMリン酸緩衝液(pH6.0、20μL)、及び純水20μLを加え、これを反応前とした。原液に100mMリン酸緩衝液(pH6.0、40μL)、純水30μL、及びニトロレダクターゼ水溶液(10μL)を加え、酵素反応を行った。経時毎に10μLずつ取り、逆相シリカゲルカラムを用いるHPLCで分析した。その結果を図6に示す。図6は、ニトロレダクターゼによるON4の脱保護反応を行ったときの経時変化を示すHPLCチャートである。
図3に示すように、2’位水酸基の保護基がメトキシ基を持たないON1は、出発物質のピークは消失したものの、脱保護された5’−TTTTU−3’のピークが観察されることはなかった。また、図4及び図5に示すように、ON2(メトキシ基1個)及びON3(メトキシ基2個)のいずれも出発物質が消失し、徐々に5’−TTTTU−3’のピークが増加するのが確認されたが、ON3(メトキシ基2個)のほうが脱保護速度が速いことが確認された。これら三種類(ON1〜ON3)の脱保護実験の結果より、保護基上のニトロ基のアミノ基への還元反応は、どの保護基でも生じていることが確認された。しかし、保護基上にメトキシ基が無い場合には、ニトロ基が還元されてアミノ基に変換されても、その後の脱保護反応が進まないことが確認された。また、保護基上のメトキシ基が増えるのに伴って、還元された後の脱保護反応の速度が大きくなることも確認された。
さらに、図6に示すように、2’位水酸基保護ウリジンを中央部に導入したON4(5’−TTU(MeO)TT−3’)を用いて脱保護反応を行った場合にも、ON3のときと同様に、時間経過とともに脱保護反応が進行して5’−TTUTT−3’のピークが増加し、48時間後には反応が完結した。この結果から、本発明のヌクレオシド誘導体は、RNA合成後の脱保護を温和な条件で、かつ速やかに行えることが示された。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表すヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体。
    (上記一般式(1)中、X及びXはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいシリル基、4−メトキシトリチル基、4,4’−ジメトキシトリチル基、又は下記一般式(2)を表し、Bは修飾されていてもよい核酸塩基を表し、Rは下記一般式(P1)、(P2)又は(P3)を表す。)
    (上記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rはリン酸の保護基を表し、R及びRは互いに連結して環構造を形成してもよい。)
    (上記一般式(P1)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、p、q及びrはそれぞれ独立に0又は1で(p+q+r)は1以上であり、nは1以上(5−p−q−r)以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
    (上記一般式(P2)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、XはO又はSであり、p及びqはそれぞれ独立に0又は1で(p+q)は1以上であり、nは1以上(3−p−q)以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
    (上記一般式(P3)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、p及びqはそれぞれ独立に0又は1で(p+q)は1であり、nは1であるが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよく、nが0の場合には(p+q)は2でもよい。)
  2. 下記一般式(1a)で表す請求項1記載のヌクレオシド又はそのヌクレオチドの誘導体。
    (一般式(1a)中、X及びXはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいシリル基、4−メトキシトリチル基、4,4’−ジメトキシトリチル基、又は下記一般式(2)を表し、Bは修飾されていてもよい核酸塩基を表す。)
    (上記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rはリン酸の保護基を表し、R及びRは互いに連結して環構造を形成してもよい。)
  3. 下記一般式(3)で表すヌクレオシド誘導体を構成単位として含むRNA誘導体。
    (上記一般式(3)中、波線を付した単結合はそれぞれRNAのホスホジエステル結合を形成するリン原子(RNAの末端である場合には末端の水素原子)へ結合し、Bは修飾されていてもよい核酸塩基を表し、Rは下記一般式(P1)、(P2)又は(P3)を表す。)
    (上記一般式(P1)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、p、q及びrはそれぞれ独立に0又は1で(p+q+r)は1以上であり、nは1以上(5−p−q−r)以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
    (上記一般式(P2)中、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、XはO又はSであり、p及びqはそれぞれ独立に0又は1で(p+q)が1以上であり、nは1以上(3−p−q)以下の整数だが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよい。)
    (上記一般式(P3)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、−Si(OR、−SiR(OR、−SiR (OR)、−SiR 、又は−NR を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、p及びqはそれぞれ独立に0又は1で(p+q)は1であり、nは1であるが、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜5のアルキル基であることを条件に、nは0でもよく、nが0の場合には(p+q)は2でもよい。)
  4. 下記一般式(3a)で表すリボヌクレオシド誘導体を構成単位として含む請求項3記載のRNA誘導体。
    (上記一般式(3a)中、波線を付した単結合はそれぞれRNAのホスホジエステル結合を形成するリン原子(RNAの末端である場合には末端の水素原子)へ結合し、Bは修飾されていてもよい核酸塩基を表す。)
  5. 請求項3又は4記載のRNA誘導体を含むことを特徴とする核酸医薬。
  6. 請求項1又は2記載のヌクレオチドの誘導体を用いてRNA鎖を伸長させる工程を備えることを特徴とする、RNA誘導体の製造方法。
  7. 請求項6記載のRNA誘導体製造方法で得たRNA誘導体に対して、還元操作を行うことでRNAの2’位水酸基に施した保護基Rを脱保護する工程を備えることを特徴とするRNAの製造方法。
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