JP2018181677A - 透明導電配線パターン、透明導電配線基板及びその製造方法 - Google Patents

透明導電配線パターン、透明導電配線基板及びその製造方法 Download PDF

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Teppei Araki
徹平 荒木
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毅 関谷
明寿也 竹本
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明寿也 竹本
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英樹 大籏
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Abstract

【課題】金属ナノワイヤを導電材料として用いた微細な透明導電配線パターン、透明導電配線パターンが形成された透明導電配線基板及びその製造方法の提供。【解決手段】透明な基材の少なくとも一方の主面の全部又は一部に、金属ナノワイヤを含む懸濁液に対する撥液層を形成する第一の工程、撥液層表面の所定の配線パターン形成用領域を懸濁液に対して親液性に変化させる親液化処理を行い、親液化処理前後の撥液層と懸濁液との接触角の差を10〜35°とする第二の工程、親液化処理した所定の領域を含む撥液層表面に金属ナノワイヤを含む懸濁液を塗布する第三の工程、前記懸濁液の塗布後に懸濁液中の分散媒を乾燥、除去し、懸濁液中の金属ナノワイヤを所定の配線パターン形成用領域に選択的に堆積して配線パターンを形成する第四の工程、を含む方法。好ましくは、金属ナノワイヤを構成する金属が銀又は銅である透明導電配線パターン。【選択図】図5

Description

本発明は、金属ナノワイヤを用いた透明導電配線パターン、透明導電配線パターンが形成された透明導電配線基板及びその製造方法に関する。
金属ナノワイヤは、従来のITOに代表される透明導電膜材料に比べて透明性や導電性が優れた透明導電体を形成しうる材料であるだけでなく、曲げや伸縮などの機械的耐久性に優れるため、可撓性を有するフィルム基材等を用いた透明導電膜の形成等に使用されている。
金属ナノワイヤを含有する導電材料を用いてパターンを形成する方法の一例として、非特許文献1には以下の工程が記載されている。
(1)金属ナノワイヤを含有する導電性インクを基板に塗布する工程。
(2)焼成を行い、透明導電層を形成する工程。
(3)感光性を有するレジストを上記透明導電層上に形成する工程。
(4)微細パターンに相当する適当な遮光マスクを通じてレジストに光エネルギーを付与する工程。
(5)得られたレジストの潜像を、適当な現像用溶液による溶出によって現像する工程。
(6)適当なエッチング方法を用いて露出した被パターニング膜(透明導電層)を除去する工程。
(7)残存したレジストを適当な方法を用いて除去する工程。
上記非特許文献1に開示されているようなサブトラクティブなフォトリソグラフィーを用いたパターニングは、パターン形成のための、露光、現像、洗浄を含む複雑な工程が必要であり、除去される領域の金属ナノワイヤを無駄に消費してしまう上に、現像液の廃液処理が必要となる場合もあった。また、現像、洗浄時等に基板に形成したナノワイヤの導電ネットワークを崩壊させる不具合の発生が避けられず、導電層として期待される低い抵抗値を維持し難いという課題がある。
サブトラクティブ法を用いたパターン形成方法における上記課題のないアディティブな製造方法として、湿式プロセスであるインクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷のような印刷法により、直接微細なパターンを形成する技術の確立が望まれている。
例えば、下記非特許文献2においては、パターニング手法としてインクジェット印刷を用い、配線幅が約1mm程度の銀ナノワイヤ配線パターンの形成技術が開示されている。
また、下記非特許文献3においては、スクリーン印刷技術を用い、配線幅が約50μm、また隣の配線との距離(配線間距離)が約50μmの状態で銀ナノワイヤの配線パターンが形成される配線形成技術が開示されている。
更に、非特許文献4においては、グラビア印刷の手法を用い、配線幅が約450μm、配線間距離が約100μmの銀ナノワイヤ配線パターン形成技術が開示されている。
また下記特許文献1においては、主として非極性溶媒をベースとする導電性材料を含む機能性液体を紫外光照射及びオゾン処理などのエネルギーにより部分的に前処理を行った基板上へ塗布形成し、処理部分へ配線形成を行う技術により、導電性高分子系の配線として、ライン幅が41μm、ライン間隔(配線間距離)が39μmの配線パターンが可能であることが開示されている。同様に、トルエン溶媒の有機銀を用いた配線形成においては、ライン幅が10.4μm、ライン間隔が9.6μmの配線パターンが形成されている。
特開2008−6565号公報
Shih-Hsiang Lai, Chun-Yao Ou, Chia-Hao Tsai, Bor-Chuan Chuang, Ming-Ying Ma, and Shuo-Wei Liang; SID Symposium Digest of Technical Papers, Vol.39, Issue 1, pp. 1200-1202 (2008) ACS Appl. Mater. Interfaces 7, 9254(2015) Adv. Mater. 28 (28), 5986 (2016) Thin Solid Films 586, 70 (2015)
しかしながら、非特許文献2〜4に示されるいずれのアディティブ手法においても、全光線透過率が50%以上の透明性と配線幅が50μm以下の微細性を両立できていない。また特許文献1における技術においては、配線のライン幅(配線幅)、ライン間隔ともに、10μm程度のパターンが形成されているものの、配線パターンを形成させるための工程が、撥液層の高撥水化のため基板全面にエキシマランプによってエネルギーを与える必要があるなど、工程が複雑であり、また、銀ナノワイヤのような異方性の高い導電材料を用いた配線パターンについては言及がない。
上記従来技術の課題に鑑み、本発明は工業的に有用な柔軟ディスプレイ、タッチパネル、柔軟トランジスタ用電極、ウェアラブルセンサ、インプラントセンサ、マイクロチャネル、MEMS、電気化学測定用電極など、微細なパターニングが必要とされるデバイスに適用できる、金属ナノワイヤを導電材料として用いた微細な透明導電配線パターン、透明導電配線パターンが形成された透明導電配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の実施形態を有する。
[1]導電材料として金属ナノワイヤを含む配線を構成する金属ナノワイヤの、前記配線の長手方向に対する配線中央部の配向度の絶対値が35°以上65°以下であり、配線端(エッジ)部の配向度の絶対値が20°以上45°以下であることを特徴とする透明導電配線パターン。
[2]前記金属ナノワイヤを構成する金属が銀または銅である前記[1]に記載の透明導電配線パターン。
[3]前記配線の幅が20〜50μmである請求項[1]または[2]に記載の透明導電配線パターン。
[4]ガラス、ポリウレタン、シリコーン、飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリパラキシリレン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルからなる群から選択されるいずれか一種又は複数種の組合せで構成された透明な基材と、前記基材の表面に形成された、前記[1]〜[3]のいずれか一に記載の透明導電配線パターンと、を備える透明導電配線基板。
[5]透明な基材の少なくとも一方の主面の全部または一部に、金属ナノワイヤを含む懸濁液に対する撥液層を形成する第一の工程、前記撥液層表面の所定の配線パターン形成用領域を前記懸濁液に対して親液性に変化させる親液化処理を行い、前記親液化処理前後の前記撥液層と前記懸濁液との接触角の差を10°以上35°以下とする第二の工程、前記親液化処理された所定の配線パターン形成用領域を含む撥液層表面に前記金属ナノワイヤを含む懸濁液を塗布する第三の工程、前記金属ナノワイヤを含む懸濁液の塗布後に前記懸濁液中の分散媒を乾燥、除去し、前記懸濁液中の金属ナノワイヤを前記所定の配線パターン形成用領域に選択的に堆積して配線パターンを形成する第四の工程、を含む前記[4]に記載の透明導電配線基板の製造方法。
[6]前記親液化処理が紫外光照射である前記[5]に記載の透明導電配線基板の製造方法。
[7]前記金属ナノワイヤを含む懸濁液の25℃での粘度が0.5〜50mPa・sである前記[5]又は[6]に記載の透明導電配線基板の製造方法。
[8]前記金属ナノワイヤを含む懸濁液が、バインダー樹脂を含まない前記[5]〜[7]のいずれか一に記載の透明導電配線基板の製造方法。
本発明によれば、工業的に有用でかつ簡便なアディティブ手法により、透明性を有する微細な配線パターンを形成でき、工業的に有用な柔軟ディスプレイ、タッチパネル、柔軟トランジスタ用電極、ウェアラブルセンサ、インプラントセンサ、マイクロチャネル、MEMS、電気化学測定用電極など、微細なパターニングが必要とされるデバイスに適用可能となる。
実施形態にかかる透明導電配線パターンにおける端(エッジ)部と中央部の説明図である。 実施形態にかかる透明導電配線パターンの配向度の定義及び画像処理データから算出したガウシアンフィッティングとその計算条件を示す図である。 実施形態にかかる透明導電配線パターンにおける配線の画像処理写真(a)、及びこれに基づく画像処理データから得られた金属ナノワイヤの角度分布を示す図(b)である。 実施形態にかかる透明導電配線パターンにおいて配線幅の異なる配線における金属ナノワイヤの配向度を示す図である。 実施形態にかかる透明導電配線パターンにおける配線端(エッジ)部、配線中央部及び配線全体における金属ナノワイヤの配向度の差を示す図である。 実施例1における真空紫外光照射前後での撥液層表面のX線光電分光法(XPS)による測定結果を示す図である。 実施例1〜4で得られた銀ナノワイヤを含む直線状パターンの配線の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
図1(a)、(b)には、実施形態にかかる透明導電配線パターンにおける端(エッジ)部と中央部の説明図が示される。図1(a)が直線パターンの配線の場合であり、図1(b)が曲線パターンの配線の場合である。
ここで、実施形態にかかる透明導電配線パターンは、導電材料として金属ナノワイヤを含む配線により構成され、この配線を構成する金属ナノワイヤの、配線の長手方向に対する配向度が、配線中央部より配線端(エッジ)部で小さいことを特徴とする。
本明細書において、「透明」とは、透明導電配線パターンにおいては、配線パターン面積中の金属ナノワイヤで占有されていない領域が60%以上であることを意味し、透明導電配線基板とは、全光線透過率が80%以上の基材表面に前記透明導電配線パターンが形成されていることを意味する。
また、配線端(エッジ)部E(以後、配線端部Eということがある)とは、図1(a)に示されるように、配線幅全体をAとしたときの端部(配線の長手方向に直交する方向における配線の端部)から10μmまでの領域であり、配線中央部Cとは、配線の幅方向の中央から、それぞれ±5μmまでの領域であって、金属ナノワイヤの配向度を評価する領域である。このため、配線幅が30μmより狭い場合は、上記配線端(エッジ)部Eと配線中央部Cとの一部が互いに重なり合う状態が生じる。本実施形態は配線幅が20μm以上の配線パターンに適用できる。
配線の形状は、図1(a)に示された直線パターン、図1(b)に示された曲線パターンの他、折れ線パターン(屈曲部を有する)、ハニカムパターン、リングパターン等が挙げられ、導電材料として種々の用途に必要な抵抗値を有する配線パターンであればどのような形状でもよい。曲線パターンの場合、図1(b)に示されるように、配線端(エッジ)部Eとは、配線幅全体をAとしたときの外周側及び内周側の端部から10μmまでの領域であり、配線中央部Cとは、配線の幅方向の中間から、それぞれ±5μmまでの領域と定義することにより、配向性の評価が可能となる。なお、配線端(エッジ)部Eは、直線状の配線では両側部、曲線状の配線では内外周の両方を意味する。
金属ナノワイヤの配向度については、配線の拡大写真から配線端部E、配線中央部C及び配線全体の画像を指定し、市販の画像解析ソフト、例えばオープンソースでパブリックドメインであるImageJのOrientation J Distributionソフトを利用して配線の長手方向に対する金属ナノワイヤの角度(配線の長手方向と金属ナノワイヤとがなす角度の内、絶対値が大きくない方の角度であって、−90°〜+90°の範囲の値)の分布を得ることが可能である。更に、例えばLight Stone(登録商標)社製のデータ分析ツールとして市販されているOriginを使用し、上記画像解析にて得られた配線の長手方向に対する金属ナノワイヤの角度分布データを用いてガウシアンフィッティング(Gaussian fitting)を実施し、図2に示す基礎式(1)及び定義により、近似式から得られる標準偏差σの値を用いて、配向度を定義する半値全幅(Full width at half maximum、FWHM)を求めることができる。
ここで、図2中のカウント(Y軸 Countsと表記)は、所定の配向度を有する金属ナノワイヤ数に略対応する値であり、画像解析を行った所定の配線パターン領域内の金属ナノワイヤに基づく同程度の明度を有する近接する2点の画素間の一つの連結を1カウントとしている。なお、図2の横軸(X軸)は、配線の長手方向に対する金属ナノワイヤの角度である。角度分布を求める画像解析方法としては、背景を暗色、金属ナノワイヤを明色(灰色〜白色)のグレースケールに処理し、明色の画素を中心にして、同レベルの明るさの隣り合う画素を探し、見つかった2点で方向と基軸(配線の長手方向)との角度を算出してそれぞれの角度における頻度を積算している。例えば、近接する明色の画素方向が10°であれば10°のカウントが1となる。基礎式(1)中Aは図2の分布曲線のベースライン、Bはピークトップを示す。σは、角度分布(X軸:角度、Y軸:カウント)のガウシアンフィッティングにより得られる標準偏差であり、下記計算式(2)により表されるFWHM(分布曲線上のAとBの中間値(Y軸値)に対応する角度範囲(X軸値)の長さ(単位は「°」)であり、図2に記載された「配向度と定義」の図を参照)の1/2の絶対値(FWHM/2)を配向度と定義する。
FWHM=2×σ×(2×ln2)0.5≒2.35482×σ・・・(2)
配向度(FWHM/2)が小さいほど金属ナノワイヤの配向性が高く、金属ナノワイヤの方向がそろっている(配線の長手方向に対して平行に近い)ことを意味する。
図3(a)、(b)には、実施形態にかかる透明導電配線パターンにおける配線の画像処理写真の一例、及びこれに基づく画像処理データから得られた金属ナノワイヤの角度分布が示される。図3(a)が画像処理写真であり、図3(b)が配線全幅における金属ナノワイヤの角度分布である。
図3(a)の画像処理写真に示された配線における金属ナノワイヤの配向度は、図3(b)に示された金属ナノワイヤの角度分布から、上述の通り、図2に示されるアルゴリズムを用いて計算することができる。図4には、実施形態にかかる透明導電配線パターンにおいて配線幅の異なる配線における金属ナノワイヤの配向度(FWHM/2)が示される。配線幅を、20μm、50μm、100μm及び150μmとして配線を形成した場合の、図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)に示された方法により求められる金属ナノワイヤの配向度である。配線幅が狭くなるほど配向度の値が小さくなり、配線全体の金属ナノワイヤの配向性が増している(方向がより揃っている)ことがわかる。
金属ナノワイヤを含む配線としては、金属ナノワイヤ同士が交差し、交点が連結していることが導電性を維持する点で望ましい。金属ナノワイヤを含む配線全体の長手方向を0℃としたときの金属ナノワイヤの配向度(FWHM/2)としては、その絶対値が30°以上60°以下(30°〜60°、または−60°〜−30°)であることが好ましく、35°以上55°以下がより好ましい。配向度の絶対値が30°未満では導電性の発現に必要な金属ナノワイヤ間の交点の形成が困難になる。また、60°超では、金属ナノワイヤが配線の長手方向と垂直な方向に近い方向に配向した金属ナノワイヤの割合が多くなることを意味し、金属ナノワイヤの異方性を利用した効率的な導電パスの形成が困難になる。
図5には、配線幅を20μm、50μm、100μm及び150μmとして配線を形成した透明導電配線パターンにおける配線端(エッジ)部E、配線中央部C及び配線全体における金属ナノワイヤの配向度(FWHM/2)が示される。いずれの配線幅の透明導電配線パターンにおいても、配線端(エッジ)部Eの配向度は、配線中央部Cの配向度よりも小さくなっている。これは配線端部Eの配向度が配線の長手方向に揃っていることを示し、また配線中央部Cは金属ナノワイヤの交点(交差部)形成に都合の良い配向をしていることを示している。このように、配線端部Eでの配向度が、配線の長手方向に揃うことによって配線間の短絡防止に有利な構造となり、また配線全体の配向度の絶対値を配線の長手方向に対して30°以上60°未満とすることで、金属ナノワイヤの交点(交差部)が形成される確率が向上し、導電パス形成に有用な構造となる。
配線端部Eの配向度の絶対値は、20°以上45°以下が好ましく、25°以上40°以下がより好ましい。配線端部Eの配向度の絶対値が20°未満であると、配線端部Eに存在する金属ナノワイヤの交点(交差部)が連結することによる抵抗値低下への寄与度が小さくなる。また、配線端部Eの配向度の絶対値が45°超であると、配線方向に対して垂直な方向を向いている金属ナノワイヤ配線が多いことを意味し、配線の長手方向に対して垂直な方向に近い方向を向く金属ナノワイヤの確率が高くなるため、マイグレーションなどの好ましくない現象を誘発する。
配線中央部Cの配向度の絶対値は、35°以上65°以下が好ましく、40°以上60°以下がより好ましい。配線中央部Cの配向度の絶対値が35°未満であると、交点(交差部)の形成確率が下がり、65°超では配線の長手方向の導電性が低下するなどの影響が生じる。
また、後述する製造方法を用いることにより、配線に占める金属ナノワイヤの配向度および占有率は、配線中央部Cより配線端部Eで高くなる。
本発明の他の実施形態にかかる透明導電配線基板は、透明な基材と、この基材の表面に形成された上記透明導電配線パターンとを備えている。上記透明導電配線パターンが表面に形成される基材は、透明導電配線パターンの機能を妨げない基材であればよいが、金属ナノワイヤを含む配線との密着性がより良い基材が好ましく、熱可塑性樹脂材料よりなるフィルムがさらに好ましい。熱可塑性樹脂材料よりなるフィルムを用い、その軟化点以上で熱処理することにより金属ナノワイヤが基板に埋め込まれ、更に密着性を向上させることができる。なお、熱硬化性樹脂やガラス等の透明基材を用いることもできる。
透明な基材は着色していてもよいが、全光線透過率(可視光の透明性)は高い方が好ましく、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。例えばガラス、ポリウレタン、シリコーン、ポリパラキシリレン(パリレン(登録商標))、飽和ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂(PMMA等)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムが好適な例として挙げられ、これらから選択されるいずれか一種又は複数種の組合せで構成された基材を用いることができる。これらの中でも工業的汎用性や耐熱性、あるいは金属ナノワイヤとの密着性や基材の伸縮性の観点でガラス、ポリウレタン、シリコーン、ポリパラキシリレン(パリレン(登録商標))を含む基材が好ましい。
透明導電配線基板は、基材の少なくとも一方の主面の全部または一部に、金属ナノワイヤを含む懸濁液に対する撥液性を有する撥液層を形成する工程(以下、第一の工程)と、上記撥液層表面の所定の配線パターン形成用領域を、上記金属ナノワイヤを含む懸濁液に対して親液性に変化させる親液化処理を行い、この親液化処理前後の撥液層と上記懸濁液との接触角の差を10°以上35°以下とする工程(以下、第二の工程)と、上記親液化処理された所定の配線パターン形成用領域を含む撥液層表面に上記金属ナノワイヤを含む懸濁液を塗布する工程(以下、第三の工程)と、上記金属ナノワイヤを含む懸濁液の塗布後に上記懸濁液中の分散媒を乾燥除去し、上記懸濁液中の金属ナノワイヤを所定の配線パターン形成用領域に選択的に堆積して配線パターンを形成する工程(以下、第四の工程)と、を含むことを特徴とする。すなわち、基材表面に基材に対する金属ナノワイヤを含む懸濁液の濡れ性(接触角)が異なる領域を形成し、基材に対する金属ナノワイヤを含む懸濁液の濡れ性(接触角)が良好な領域に選択的に金属ナノワイヤを含む懸濁液を付着させ、分散媒を乾燥除去することで金属ナノワイヤを堆積させる。
第一の工程は、上記基材の少なくとも一方の主面の全部または一部に金属ナノワイヤを含む懸濁液に対する撥液性を有する撥液層を形成する工程である。撥液層は、金属ナノワイヤを含む懸濁液の濡れ性が小さい(接触角が大きい)ため、撥液層上に金属ナノワイヤを含む懸濁液を塗布するとはじく性質を有する。撥液層としては、後述する第二の工程にて、撥液層表面の化学反応を生起させ、撥液性領域を親液性領域に変換可能な材料であればよく、好ましくはフッ素系コーティング膜が挙げられる。
第二の工程は、第一の工程で形成された撥液層の一部を、上記懸濁液に対して親液性に変化させる工程である。親液性に変化させた一部の領域(親液性領域)が後述の第四の工程により金属ナノワイヤが選択的に堆積し配線パターンが形成される配線パターン形成用領域である。本実施形態において、撥液層の一部を親液化する(親液化処理)ことにより、親液化処理前後の撥液層の接触角の差が10°以上35°以下となるように処理する。親液化処理後の撥液層の接触角が親液化処理前の撥液層の接触角よりも10°以上35°以下小さくなるように撥液層上の所定の配線パターン形成用領域を処理する方法としては、紫外光を照射する方法が好適である。紫外光としては、真空紫外光(波長:10〜200nm)が好適に用いられる。紫外光を照射すると撥液層が分解し、下地の基材が露出することで親液化する。また、プラズマ処理も有効な手段として挙げられる。酸素プラズマ処理をすることにより、基材表面に親水性官能基が生成し、それに伴い親液化させることができる。
紫外光等の照射後の接触角については、撥液性領域(非配線領域)と親液性領域(配線パターン形成用領域)の接触角の差が10°以上35°以下であればよい。好適な接触角の差は用いる基材及び基材表面に形成される撥液層に依存するため、実験にて決められるものであるが、例えば、撥液層として、フッ素系コーティング剤を用いた場合は、10°以上35°以下であることが好ましく、15°以上30°未満であることがより好ましい。接触角の差が10°未満であると、撥液性領域と親液性領域の接触角差が小さく、パターンの境界領域が不明瞭となる。また35°超では撥液性領域と親液性領域との境界領域差が大きくなり、金属ナノワイヤを含む懸濁液との濡れ性の差が大きくなり、金属ナノワイヤの適度な配向性を有する配線の形成が困難になる。
また、上記紫外光は、紫外光源と基材との間に光透過部を有するフォトマスクを介して照射するが、この光透過部の幅により、後述する第四の工程において得られる透明導電配線基板に形成される金属ナノワイヤを含む配線の配線幅が決定される。本発明では、配線幅が20μm以上である、金属ナノワイヤを含む配線を作製することが可能であり、配線幅は使用する用途に応じて変更が可能である。配線幅が20μm未満の配線は、透明性などの諸特性は優れるものの、上記配向度によっては、金属ナノワイヤの交点が形成される頻度が少なくなることによる導電性低下を招くという問題が生じることがある。
第三の工程は、第二の工程で親液化処理された所定の配線パターン形成用領域を含む撥液層表面に上記金属ナノワイヤを含む懸濁液を塗布する工程である。第二の工程を経た撥液層表面全面に上記金属ナノワイヤを含む懸濁液を塗布した場合、親液化処理されていない撥液層表面に塗布された金属ナノワイヤを含む懸濁液ははじかれ、親液化処理された所定の配線パターン形成用領域に移動する。この移動により親液化処理されていない撥液層表面に塗布された金属ナノワイヤを含む懸濁液中の金属ナノワイヤは、親液化処理された所定の配線パターン形成用領域の端(エッジ)部(配線端部E)に押し流される。その結果、所定の配線パターン形成用領域の端(エッジ)部における金属ナノワイヤの密度(占有面積率)が、配線パターン形成用領域の中央部(配線中央部C)の金属ナノワイヤの密度(占有面積率)よりも相対的に高くなるとともに、端(エッジ)部での金属ナノワイヤの配線長手方向に対する配向度が相対的に高くなる。
上記金属ナノワイヤは、径がナノメーターオーダーのサイズである金属であり、ワイヤ状の形状を有する導電性材料である。なお、本実施形態では、金属ナノワイヤとともに(混合して)、または金属ナノワイヤに代えて、ポーラスあるいはノンポーラスのチューブ状の形状を有する導電性材料である金属ナノチューブを使用してもよい。本明細書において、「ワイヤ状」と「チューブ状」はいずれも線状であるが、前者は中央が中空ではないもの、後者は中央が中空であるものを意図する。性状は、柔軟であってもよく、剛直であってもよい。以下、本明細書において「金属ナノワイヤ」と「金属ナノチューブ」とを続けて表記しない場合、「金属ナノワイヤ」は金属ナノワイヤと金属ナノチューブとを包括する意味で用いる。
金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの径の太さの平均は、1〜500nmが好ましく、5〜200nmがより好ましく、5〜100nmがさらに好ましく、10〜100nmが特に好ましい。また、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの長軸の長さの平均は、1〜100μmが好ましく、1〜80μmがより好ましく、2〜70μmがさらに好ましく、5〜50μmが特に好ましい。金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブは、径の太さの平均および長軸の長さの平均が上記範囲を満たすとともに、アスペクト比の平均が5より大きいことが好ましく、10以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましく、200以上であることが特に好ましい。ここで、アスペクト比は、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの平均径をb、長軸の平均的な長さをaと近似した場合、a/bで求められる値である。a及びbは、走査型電子顕微鏡(SEM)及び光学顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、金属ナノワイヤの10本以上の径をSEM(日立ハイテク株式会社製 FE−SEM S−5200)で各々測長し、金属ナノワイヤの100本以上の長さを、光学顕微鏡(キーエンス社製VHX−600)を用いて各々測長し、それらの相加平均値により平均径及び平均長さを求めることができる。
このような金属ナノワイヤの材料としては、材料自体が導電性を有する金属であれば特に制限はないが、導電性が高い点で銀、銅等が好適である。
金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブの製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤは、ポリオール(Poly−ol)法を用いて、ポリビニルピロリドン存在下で硝酸銀を還元することによって合成することができる(Chem.Mater.,2002,14,4736参照)。金ナノワイヤも同様に、ポリビニルピロリドン存在下で塩化金酸水和物を還元することによって合成することができる(J.Am.Chem.Soc.,2007,129,1733参照)。銀ナノワイヤおよび金ナノワイヤの大規模な合成および精製の技術に関しては国際公開公報WO2008/073143パンフレットと国際公開第2008/046058号パンフレットに詳細な記述がある。ポーラス構造を有する金ナノチューブは、銀ナノワイヤを鋳型にして、塩化金酸溶液を還元することにより合成することができる。ここで、鋳型に用いた銀ナノワイヤは塩化金酸との酸化還元反応により溶液中に溶け出し、結果としてポーラス構造を有する金ナノチューブができる(J.Am.Chem.Soc.,2004,126,3892−3901参照)。
上記金属ナノワイヤを含む懸濁液は、主たる組成が金属ナノワイヤと親水性有機溶媒とからなる分散液であり、上記第三の工程で撥液性表面に塗布された金属ナノワイヤを含む懸濁液の親液化処理された配線パターン形成用領域への移動のし易さという観点からは粘度は低い方が好ましく、25℃での粘度が0.5〜50mPa・sであることが好ましく、0.8〜30mPa・sであることがより好ましい。そのため、レベリング性を向上させ、均一塗膜になるように粘度を調整する機能を有するバインダー樹脂の含有量は少ない方が好ましく、バインダー樹脂を含有しないことがより好ましい。バインダー樹脂を含有しない金属ナノワイヤを含む懸濁液を塗布し、所定の乾燥処理をした後の配線は、金属ナノワイヤのみで形成されるため、バインダー樹脂を含有することによる抵抗値上昇を抑えることが可能となる。粘度は、例えば一般的なB型粘度計を用いて測定することができる。
金属ナノワイヤを含む懸濁液の分散媒としては、工業的プロセスの簡便性を重視して、揮発性が高く、粘性の低い親水性の有機溶剤から選択されることが好ましく、アルコール類が好適である。より好ましくは、炭素原子数が1〜4の1価の飽和アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができるが、これらの中でもメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールの1種または2種以上を混合して用いることが工業的な入手容易性の点でさらに好ましい。
上記金属ナノワイヤを含む懸濁液の基材への塗布方法については、親液化処理された配線パターン形成用領域に均一に塗布できる方法であればよく、好ましくはスピンコート塗布、バーコート塗布、アプリケータ塗布などのキャスト法、スクリーン印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷法が挙げられるが、工業的に容易な方法であるキャスト法が好ましい。
第四の工程は、第三の工程後の基板を静置し、金属ナノワイヤを含む懸濁液中の金属ナノワイヤを所定の配線パターン形成用領域に選択的に堆積する工程である。第三の工程後の基板を所定の雰囲気下で保持することにより、配線パターン形成用領域上に保持された金属ナノワイヤを含む懸濁液の分散媒を乾燥、除去することにより、金属ナノワイヤが配線パターン形状に選択的に堆積した配線が形成された透明導電配線基板が得られる。このとき、上述したように、金属ナノワイヤの配線の長手方向に対する配向度は、配線中央部より配線端(エッジ)部で小さくなっている。本実施形態の透明導電配線基板の製造方法は、狭い配線幅の配線パターンの製造により有効であり、配線幅が20〜50μmの配線パターンの製造に好適である。
上記金属ナノワイヤは、その一部が基材に埋め込まれた状態となっていてもよい。金属ナノワイヤの一部とは、金属ナノワイヤの長手方向のいずれかの一部であり、両端部の一方または両方、両端部の間の部分等が挙げられる。金属ナノワイヤの一部が基材に埋め込まれた状態であることにより、基材に形成された金属ナノワイヤ層が、基材の曲げや伸縮に対して高い機械的強度を得ることができる。基材に埋め込まれた金属ナノワイヤは、その表面積の5〜95%が露出していることが好ましい。なお、基材中に完全に埋められた金属ナノワイヤが存在してもよい。また、基材中に埋めこまれた部分を有さない金属ナノワイヤを含んでもよい。その場合基材中に埋めこまれた部分を有さない金属ナノワイヤは全体の5%以上95%以下とすることが好ましく、10%以上85%以下とすることがより好ましく、15%以上75%以下とすることがさらに好ましい。第四の工程における乾燥を基材が軟化する温度(ガラス転移温度または軟化点)以上の温度で行う、あるいは第四の工程後に別に基材が軟化する温度(ガラス転移温度または軟化点)以上の温度で熱処理をする、この際必要に応じて基板を加圧することにより、金属ナノワイヤの一部が基材に埋め込まれた状態を形成できる。
また、上記金属ナノワイヤは、基材から露出している部分、すなわち基材に埋め込まれた状態ではない部分の一部または全部がめっきされていてもよい。特に無電解めっき工程において、触媒液に浸漬した後に熱処理を実施することにより、金属ナノワイヤ上に形成されためっき層が安定化し、剥離耐性向上などの耐久性に優れたメッキ層が得られ、これにより、マイグレーションの発生や硫化・酸化などによる劣化を抑制することができる。熱処理条件は、基材の耐熱温度にも依存するため、一概には決められないが、基材の耐熱温度の範囲内であればよく、好ましくは30℃〜180℃、より好ましくは40℃〜150℃の範囲である。また処理時間についても、基材へのダメージを与えない範囲で、触媒液の溶媒が揮発する条件であれば制約を受けないが、好ましくは1秒〜1時間、更に好ましくは30秒〜30分の範囲である。
以上に述べた本実施形態にかかる金属ナノワイヤを含む透明導電配線パターンが透明な基材表面に形成された透明導電配線基板は、例えば金属マイグレーションを促進する溶液(水や食塩水など)に接触する部材内や部材外において信頼性が必要とされる導電性部材に対して適用が可能である。その例として、湿気や水などと接触するデバイス中の可撓性を有する基材に形成された透明導電膜、汗や生体液と接するウェアラブルデバイスや埋込型センサ、ケミカルセンサ、マイクロ流路デバイス、雨や海水にさらされるインフラや農林用のセンサ等のセンサ部材として使用することが可能である。センサ以外にもマイグレーション耐性が必要とされる機能素子の導電部材、例えば有機または無機半導体を用いた太陽電池、LED、及びトランジスタ等の導電部材に使用することができる。
上記第一の工程〜第四の工程に加えて、金属ナノワイヤを含む配線を構成する金属ナノワイヤの少なくとも一部を連結する工程を設けてもよい。ここで、金属ナノワイヤの少なくとも一部を連結する工程とは、基板表面に存在する金属ナノワイヤの複数の交差部の少なくとも一部を熔融一体化する工程を意味する。連結させる方法としては、金属ナノワイヤが溶融切断することなく相互に連結するのに必要なエネルギーが付与できる方法であれば制限はなく、オーブン等の加熱、マイクロ波照射、パルス光照射が好適である。
パルス光照射とは、光照射時間(照射時間)が短時間の光の照射であり、光照射を複数回繰り返す場合には第一の照射時間と第二の照射時間との間に光が照射されない期間を有する光照射を意味する。光照射時間内で光強度が変化してもよい。上記パルス光はキセノンフラッシュランプ等のフラッシュランプを備える光源から照射される。
上記パルス光としては1pm〜1mの波長範囲の電磁波を使用することができ、好ましくは10nm〜1000μmの波長範囲の電磁波、さらに好ましくは100nm〜2000nmの波長範囲の電磁波を使用することができる。このような電磁波の例としてはガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波、マイクロ波より長波長側の電磁波等が挙げられる。熱エネルギーへの変換を考えた場合にはあまりに波長が短いときには樹脂基板へのダメージが大きく好ましくない。また、波長が長すぎる場合には効率的に吸収して発熱することができないので好ましくない。波長の範囲としては上述の波長の中でも特に紫外から赤外の範囲が好ましく、より好ましくは100nm〜2000nmの範囲の波長である。パルス光を照射する雰囲気に特に制限はない。大気雰囲気下で実施することができる。必要に応じて不活性雰囲気下で実施することもできる。
パルス光の1回の照射時間は光強度にもよるが、20マイクロ秒〜50ミリ秒の範囲が好ましい。20マイクロ秒よりも短いと金属ナノワイヤの焼結が進み難く、また50ミリ秒よりも長いと光劣化、熱劣化により基板へ悪影響を及ぼすことがある。より好ましくは40マイクロ秒〜10ミリ秒である。
パルス光の照射は単発で実施しても効果はあるが、上記の通り繰り返し実施することもできる。繰り返し実施する場合、照射間隔は生産性を考慮すると20マイクロ秒〜5秒の範囲とすることが好ましく、2ミリ秒〜2秒の範囲とすることがより好ましい。20マイクロ秒よりも短いと連続光に近くなってしまい、1回の照射後に放冷されるまもなく照射されるので基板が加熱され温度が高くなって劣化する可能性がある。また、5秒よりも長いとプロセス時間が長くなる。
マイクロ波加熱する場合に使用するマイクロ波は、波長範囲が1m〜1mm(周波数が300MHz〜300GHz)の電磁波である。マイクロ波の照射は、金属ナノワイヤ層が形成された基板の面をマイクロ波の電気力線方向(電界の方向)と略平行に維持した状態で行う。ここで、略平行とは、基板の面とマイクロ波の電気力線方向とが平行又は電気力線方向に対して30度以内の角度を維持した状態をいう。なお、上記30度以内の角度とは、基板の面に立てた法線と電気力線方向とが60度以上の角度をなしている状態をいう。これにより、基板上に形成された金属ナノワイヤを含む配線を貫通する電気力線の本数が制限され、スパークの発生を抑制できる。マイクロ波を照射する雰囲気に特に制限はない。大気雰囲気下で実施することができる。必要に応じて不活性雰囲気下で実施することもできる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<実施例1>
{パターニングに用いるフォトマスクの作製方法}
基材上に金属ナノワイヤを含む懸濁液を所定の配線パターン形状に塗布するための基材表面親液化処理用のフォトマスクを作製した。使用した装置を以下に列挙する。
装置は、PLS−1000(LED描画装置PLS−1000、ピーエムティー社製)を使用、マスクブランクスとして、CS HARDMASK BLANKS(クリーンサアフェイス技術(株)製 合成石英/CrO(8nm)/Cr(62nm)/CrO(30nm)、板厚1.5mm)、大きさは、実施例に応じて、2.5inch〜4inchのものを適宜使用した。
まず、スピンコーター(MS−A100、ミカサ社製)にCrO(厚み8nm)/Cr(厚み62nm)/CrO(厚み30nm)層が形成された面が上側となるようにマスクブランクスをセットし、CrO(厚み8nm)/Cr(厚み62nm)/CrO(厚み30nm)層の略中心部上にAZプロモータ(メルクパフォーマンスマテリアルズ社製)を1〜10ml滴下し、3000rpmで10秒スピンコートし、その上にレジスト材料(AZ5206E、メルクパフォーマンスマテリアル社製)を4000rpmで60秒スピンコートし、95℃3分間ホットプレートで加熱してレジスト膜を作製した。
このマスクブランクスを、PLS−1000にセットし、露光を実施して、それぞれ幅20μm、50μm、100μm、150μmの直線パターンを描画した。終了後に現像液(NMD−W2.38%、東京応化工業社製)10〜50ml中に、2〜5min浸漬して現像し、レジスト層に直線パターンに対応する開口部を形成した。
現像後のマスクブランクスを超純水に浸漬洗浄後、ホットプレートで乾燥させた後、混酸クロムエッチング液(関東化学社製)で10秒以上レジスト層の開口部に位置するCrO(厚み8nm)/Cr(厚み62nm)/CrO(厚み30nm)層をエッチングし、更に、超純水に浸漬洗浄後、レジスト除去剤(AZリムーバー200、メルクパフォーマンスマテリアルズ社製)10〜50mlに30分以上含浸させ、レジストを除去し、CrO(厚み8nm)/Cr(厚み62nm)/CrO(厚み30nm)層に直線パターンに対応する開口部を有するマスクブランクス(フォトマスク)を得た。
{金属ナノワイヤの合成及び金属ナノワイヤ懸濁液の調製}
200mLガラス容器にプロピレングリコール100g(和光純薬工業社製)を秤量し、金属塩として硝酸銀2.3g(13mmol)(東洋化学工業社製)を加えて室温で2時間撹拌することで硝酸銀溶液(第二溶液)を調製した。
1L四つ口フラスコ(メカニカルスターラー、滴下漏斗、還流管、温度計、窒素ガス導入管)に、窒素ガス雰囲気下、プロピレングリコール600g、イオン性誘導体としての塩化テトラエチルアンモニウム0.052g(0.32mmol)(ライオンスペシャリティケミカルズ社製)および臭化ナトリウム0.008g(0.08mmol)(マナック社製)、構造規定剤としてポリビニルピロリドンK−90(PVP)7.2g(和光純薬工業社製、重量平均分子量35万)を仕込み、200rpmの回転数で150℃にて1時間撹拌することで完全に溶解させ、第一溶液を得た。先に調製した硝酸銀溶液(第二溶液)を滴下漏斗に入れ、上記第一溶液の温度150℃にて2.5時間かけて滴下(硝酸銀の供給モル数が0.087mmol/min)することで銀ナノワイヤを合成した。この場合、第一溶液中のイオン性誘導体のハロゲン原子の総モル数(0.40mmol)と1分間に供給される硝酸銀の銀原子のモル数(0.087mmol)から演算したモル比(金属塩/イオン性誘導体)は0.22となっている。また、反応中に第一溶液中の銀イオン濃度を測定したところ、イオン性誘導体のハロゲン原子と金属塩の金属原子とのモル比(金属塩の金属原子のモル数/イオン性誘導体のハロゲン原子の総モル数)は0.2〜6.7の範囲であった。滴下終了後さらに1時間加熱撹拌を継続し反応を完結させた。
反応混合物をエタノール(和光純薬社製)で5倍に希釈し、遠心分離機を用いて6000rpmの回転数で5分間遠心力をかけることで銀ナノワイヤを沈降させた。上澄み液を除去後除去した上澄み液と略同等の新たなエタノールを添加し6000rpmで5分間処理する操作をさらに2回行い、系中に残存するPVP及び溶媒を洗浄した。
得られた精製後の銀ナノワイヤ/エタノール分散液に、分散液と同容量のIPA(和光純薬社製)を加えて希釈(エタノール/IPA=50/50[容量])し、分散液中の銀ナノワイヤの組成が1.5質量%になるように金属ナノワイヤ懸濁液(金属ナノワイヤを含む懸濁液)を作製した。
{懸濁液の粘度}
上記の通り作製した金属ナノワイヤ懸濁液の25℃での粘度をVISCOMETER DV−II+Pro(BROOKFIELD社製、CPE−40使用)により求めた。その結果1.6mPa・sであった。
{パターニング}
2〜3cm角で厚さ1mmのガラス基板にdiX(登録商標)−SR(KISCO社製)をラボコータ(PDS−2010、日本パリレン社製)により化学蒸着成膜し、厚さ3μmのパリレン(登録商標)のコーティング膜を得た。その上にフッ素系コーティング剤(WP−100、ダイキン工業(株)製)を0.1〜1ml滴下し、スピンコーターを用いて6000rpmで20secの条件で成膜し、撥液層を形成した。撥液層における金属ナノワイヤを含む懸濁液の接触角は43°であった。
次に、エキシマランプ(FLAT EXIMER EX−min、浜松ホトニクス(株)製)を用いて、前述の20μmの直線パターン用に作製したフォトマスクを介して、真空紫外光(172nm)を窒素雰囲気下15秒間、フッ素系コーティング膜(撥液層)に照射して、親液性領域(配線パターン形成用領域)を形成した。親液性領域における金属ナノワイヤを含む懸濁液の接触角は26°であった。なお、接触角は親液性領域(配線パターン形成用領域)とは別に設けた親液性領域(ベタ状パターン領域)における親液化処理前後での測定値(5点平均値)であり、DM−500(協和界面化学社製)を用いて測定した。
真空紫外光の照射前後、すなわちフッ素系コーティング膜の親液化処理前後の表面をX線光電分光法(XPS)により測定した結果を図6に示す。
この結果より、172nmの真空紫外光を照射した領域には、フッ素系コーティング膜が有するアルキレン基に結合したフッ素原子のF1sピークが消失していることがわかり、短時間の真空紫外光照射により、効果的に表面撥液性を変化させられる(撥液層が除去されている)ことがわかる。
{銀ナノワイヤ懸濁液塗布}
上記撥液層の一部に親液性領域が形成された基板上に、上述の手法で調製した1.5質量%の銀ナノワイヤ懸濁液を6〜9μL滴下し、滴下したインクが基板上の親液領域全体を通過するように、基板上端部に置いた直径8mmのガラス棒を基板表面に沿って、ステッピングモータ(OSMS(CS) 26−100(X)、シグマ光機社製)を用いて速度を1mm/secで水平に動かし(基材とガラス棒とのギャップは30μmに調整)、銀ナノワイヤ懸濁液が、親液性領域が形成された撥液層表面に塗布された基板を作製した。上記基板の作製後、120℃1時間、真空乾燥器(AVD−200NS、アズワン社製)で真空乾燥させ、銀ナノワイヤ懸濁液の溶剤(分散媒)を揮発させて乾燥、除去し、所定の直線状パターンの配線(透明導電配線パターン)を得た。
{透明導電配線パターンの透明度算出}
上述のOrientation J Distributionソフトを使用して得られたグレースケールの処理画像から、配線中のワイヤが占める面積を計算し、下記の計算式(3)より透明導電配線パターンの透明度を算出した。
暗色部分/(明色部分+暗色部分) = (S−SAgNW)/S・・・(3)
AgNWは、配線中に銀ナノワイヤが占有する面積を意味し、Sは、画像解析に用いた配線の面積を示す。計算結果を表1に示す。
{基材の全光線透過率測定}
実施例で作製した撥液層を形成した基板(撥液層/コーティング層(パリレン)/ガラス基板)の全光線透過率をHaze Meter NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定したところ全光線透過率は93%であった。
{抵抗値測定}
作製した銀ナノワイヤを含む直線状パターンの配線の抵抗値は、B2900A(Keysight社製)で測定した。測定結果(5点平均値)を表1に示す。
{サンプルのSEM観察}
作製した銀ナノワイヤを含む直線状パターンの配線を、走査型電子顕微鏡(FE−SEM SU8020、日立ハイテクノロジーズ社製)で観察した。図7(a)に、得られた線幅20μmの銀ナノワイヤを含む直線状パターンの配線の電子顕微鏡写真を示す。
{配向度算出}
前述の方法にて、作製した配線を構成する銀ナノワイヤの配向度を求めた。尚、配線端部Eの配向度は、配線幅の端部から10μmの領域の画像処理により算出し、配線中央部Cの配向度は、配線幅の中央からそれぞれ±5μmまでの領域の画像処理により算出し、配線全体の配向度はそのまま処理対象の幅を規定せず、全体の配向度を求めた。結果を表1に示す。なお、表1においては、配線端部Eをエッジ部と表記し、配線中央部Cを中央部と表記している。
<実施例2>
フォトマスクとして線幅を50μmのものを使用した以外は、実施例1と同様に、銀ナノワイヤを含む直線状パターンの配線を得た。測定値結果を表1に、電子顕微鏡写真を図7(b)にそれぞれ示す。
<実施例3>
フォトマスクとして線幅を100μmのものを使用した以外は、実施例1と同様に、銀ナノワイヤを含む直線状パターンの配線を得た。測定値結果を表1に、電子顕微鏡写真を図7(c)にそれぞれ示す。
<実施例4>
フォトマスクとして線幅を150μmのものを使用した以外は、実施例1と同様に、銀ナノワイヤを含む直線状パターンの配線を得た。測定値結果を表1に、電子顕微鏡写真を図7(d)にそれぞれ示す。
<比較例1>
実施例1で用いた金属ナノワイヤを含む懸濁液を用いて、実施例1で用いたパリレン(登録商標)コーティング膜形成基板のコーティング膜上にフッ素系コーティング層を形成したフッ素系コーティング層を親液化処理することなく、配線幅20μmの直線状配線パターンのグラビア印刷を試みたが、いずれも隣接配線間に金属ナノワイヤが堆積する不具合が発生した。

Claims (8)

  1. 導電材料として金属ナノワイヤを含む配線を構成する金属ナノワイヤの、前記配線の長手方向に対する配線中央部の配向度の絶対値が35°以上65°以下であり、配線端(エッジ)部の配向度の絶対値が20°以上45°以下であることを特徴とする透明導電配線パターン。
  2. 前記金属ナノワイヤを構成する金属が銀または銅である請求項1に記載の透明導電配線パターン。
  3. 前記配線の幅が20〜50μmである請求項1または2に記載の透明導電配線パターン。
  4. ガラス、ポリウレタン、シリコーン、飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリパラキシリレン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルからなる群から選択されるいずれか一種又は複数種の組合せで構成された透明な基材と、
    前記基材の表面に形成された、請求項1〜3のいずれか一に記載の透明導電配線パターンと、
    を備える透明導電配線基板。
  5. 透明な基材の少なくとも一方の主面の全部または一部に、金属ナノワイヤを含む懸濁液に対する撥液層を形成する第一の工程、
    前記撥液層表面の所定の配線パターン形成用領域を前記懸濁液に対して親液性に変化させる親液化処理を行い、前記親液化処理前後の前記撥液層と前記懸濁液との接触角の差を10°以上35°以下とする第二の工程、
    前記親液化処理された所定の配線パターン形成用領域を含む撥液層表面に前記金属ナノワイヤを含む懸濁液を塗布する第三の工程、
    前記金属ナノワイヤを含む懸濁液の塗布後に前記懸濁液の分散媒を乾燥、除去し、前記懸濁液中の金属ナノワイヤを前記所定の配線パターン形成用領域に選択的に堆積して配線パターンを形成する第四の工程、
    を含む請求項4に記載の透明導電配線基板の製造方法。
  6. 前記親液化処理が紫外光照射である請求項5に記載の透明導電配線基板の製造方法。
  7. 前記金属ナノワイヤを含む懸濁液の25℃での粘度が、0.5〜50mPa・sである請求項5又は6に記載の透明導電配線基板の製造方法。
  8. 前記金属ナノワイヤを含む懸濁液が、バインダー樹脂を含まない請求項5〜7のいずれか一に記載の透明導電配線基板の製造方法。

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