JP2018178197A - 無方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
・無方向性電磁鋼板にSi及びAl等を含有する。
・無方向性電磁鋼板の結晶粒径を制御する。
・無方向性電磁鋼板の板厚を薄くする。
本発明による無方向性電磁鋼板の化学組成は、次の元素を含有する。なお、無方向性電磁鋼板の化学組成における「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
炭素(C)は鋼中に固溶Cとして存在し、温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織を改善する。これにより、無方向性電磁鋼板の磁束密度が高まる。C含有量が0.001%未満であれば、この効果が得られない。一方、C含有量が0.005%を超えれば、鋼中に微細な炭化物が析出して磁気特性が低下する。したがって、C含有量は0.001〜0.005%である。C含有量の好ましい下限は0.0015%であり、さらに好ましくは0.002%である。C含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
シリコン(Si)は、鋼板の固有抵抗を高め、渦電流損を低減する。Siはさらに、ヒステリシス損を低減する。Si含有量が2.0%未満であれば、上記効果が得られない。また、Si含有量が2.0%未満であれば、仕上げ焼鈍時に相変態が生じる場合があり、本発明の効果が損なわれる場合がある。一方、Si含有量が5.0%を超えれば、後述の温間圧延での圧延性、及び、無方向性電磁鋼板の打ち抜き加工性が低下する。したがって、Si含有量は2.0〜5.0%である。Si含有量の好ましい下限は2.5%であり、さらに好ましくは3.0%である。Si含有量の好ましい上限は4.5%であり、さらに好ましくは4.0%である。
マンガン(Mn)は、鋼の固有抵抗を高める。Mnはさらに、硫化物を粗大化して無害化する。Mn含有量が0.1%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が1.5%を超えれば、鋼の磁束密度が低下する。さらに、焼鈍時に相変態が生じ、本発明の効果が損なわれる。したがって、Mn含有量は0.1〜1.5%である。Mn含有量のこのましい下限は0.2%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mn含有量の好ましい上限は1.2%であり、さらに好ましくは1.0%ある。
リン(P)は不純物である。Pは鋼の加工性を低下し、冷間圧延時に鋼板に割れを発生させ得る。したがって、P含有量は0.02%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量の下限は特に制限されない。脱リンのコスト及び生産性の観点から、P含有量の好ましい下限は0.01%である。
硫黄(S)は不純物である。Sは、MnSを生成して鉄損を増加する。したがって、S含有量は0.005%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。S含有量の下限は特に制限されない。脱硫のコスト及び生産性の観点から、S含有量の好ましい下限は0.001%である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはさらに、窒化物を粗大化して無害化する。Alはさらに、Siと同様に鋼の固有抵抗を増加させて鉄損を低減する。Alはさらに、相変態を抑制するため、相変態させないことにより、本発明の効果が得られる。Al含有量が0.001%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が2.0%を超えれば、酸洗の能率が低下し、さらに、ヒステリシス損が増加する。したがって、Al含有量は0.001〜2.0%である。Al含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.1%である。Al含有量の好ましい上限は1.5%であり、さらに好ましくは1.2%である。
窒素(N)はCと同様に、鋼中に固溶Nとして存在し、温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織を改善する。これにより、無方向性電磁鋼板の磁束密度が高まる。N含有量が0.001%未満であれば、この効果が得られない。一方、N含有量が0.005%を超えれば、微細なAlNが析出して、磁気特性が低下する。したがって、N含有量は0.001〜0.005%である。N含有量の好ましい下限は0.0015%であり、さらに好ましくは0.002%である。N含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
本発明の無方向性電磁鋼板の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ti、V及びNbからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素を含有する場合、化学組成は式(A)を満たす。
V:0.01%以下
Nb:0.01%以下
チタン(Ti)、バナジウム(V)及びニオブ(Nb)は任意元素である。これらの元素は炭窒化物を形成して、C及びNを固定する。冷間圧延前にこれらの炭窒化物が存在すれば、固溶C、固溶Nによる動的ひずみ時効が得られない。Ti含有量が0.01%以下、V含有量が0.01%以下、Nb含有量が0.01%以下であり、さらに、Ti、V及びNbの合計含有量が式(A)を満たせば、固溶C及び固溶Nによる動的ひずみ時効が活用できる。本明細書において、Ti含有量が0.004%以下の場合、Ti含有量は不純物レベルと解釈される。同様に、V含有量が0.004%以下の場合、V含有量は不純物レベルと解釈される。Nb含有量が0.004%以下の場合、Nb含有量は不純物レベルと解釈される。
スズ(Sn)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Snは鋼板の集合組織を改善し、磁束密度を高める。Snはさらに、仕上げ焼鈍時の窒化を抑制し、磁気特性の低下を抑制する。一方、Sn含有量が0.2%を超えれば、鋼板の加工性を低下して、冷間圧延時に鋼板に割れを発生させ得る。したがって、Sn含有量は0.2%以下とする。Sn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Sn含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.1%である。
銅(Cu)任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Cuは、飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を下げる。Cuはさらに、CuSを形成して鉄損を劣化する。Cuはさらに、Niとともに含有されると鋼板表面に内部酸化層が形成されやすく、その結果、高周波鉄損が劣化する。したがって、Cu含有量は0.1%以下である。Cu含有量の下限値は、特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは磁束密度B50を高め、さらに、鋼板強度を高める。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、原料コストが高くなる。Niはさらに、Cuとともに含有されると、鋼板表面に内部酸化層が形成されやすく、その結果、高周波鉄損が劣化する。したがって、Ni含有量は0.1%以下である。Ni含有量の下限値は、特に制限はないが、磁束密度B50及び鋼板強度の観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
クロム(Cr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Crは飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を低下させる。したがって、Cr含有量は0.2%以下である。Cr含有量の下限値は特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Bは、飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を低下させる。したがって、B含有量は0.001%以下である。B含有量の下限値は、特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.0001%以上であるのが好ましい。
本発明の無方向性電磁鋼板の板厚をt(mm)と定義したとき、無方向性電磁鋼板の集合組織は、下記(特徴A)及び(特徴B)を有する。
(I)鋼板表面からt/10深さ位置(表層)での集合組織において、{111}<112>方位の集積度I(s)が6.0以上である。
(II)鋼板表面からt/2深さ位置(板厚中心層)での集合組織において、{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上である。
表層での{111}<112>方位の集積度I(s)が高ければ、無方向性電磁鋼板の表層の剛性率が高まる。その結果、後述の板厚中心層での集合組織との組み合わせにより、打ち抜き加工時のダレの発生を抑制できる。集積度I(s)が6.0以上であれば、この効果が有効に得られる。集積度I(s)の好ましい下限値は7.0であり、さらに好ましくは8.0である。
{100}<012>方位は、磁気特性を高める。板厚中心層での{100}<012>方位はさらに、上述の{111}<112>方位との相互作用により、打ち抜き加工時のダレの発生を抑制する。{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上であれば、この効果が有効に得られる。集積度I(c)の好ましい下限は4.5であり、さらに好ましくは5.0である。
本発明で規定される、{111}<112>方位は、既にダレ抑制効果が知られている{011}方位よりも剛性率が非常に高い。一方、{100}<012>方位は剛性率が非常に低い。本発明の無方向性電磁鋼板では、表層では{111}<112>方位の集積度を高め、内層では{100}<012>方位の集積度を高める。つまり、本発明の無方向性電磁鋼板では、表層を高剛性率とし、内層を低剛性率とする。これにより、いわゆるスプリングバックのような、塑性変形領域での変形応力を除荷した場合の弾性変形の戻りが大きくなる。その結果、ダレの発生が顕著に抑制されると考えられる。
I(s)及びI(c)は次の方法で測定できる。無方向性電磁鋼板を圧延方向に垂直な断面で切断し、板厚tの粗試料片を複数採取する。粗試料片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/10減厚したI(s)測定用試験片を作製する。また、粗試験片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/2減厚したI(c)測定用試験片を作製する。
本発明において、平均結晶粒径は特に限定されない。好ましくは、本発明の無方向性電磁鋼板の平均結晶粒径は、50μm以下である。無方向性電磁鋼板において、結晶方位は結晶粒径とは全く独立に制御することが可能である。ただし、化学組成を固定すれば、例えば熱処理温度を高めることで結晶粒を成長させた場合、特定の方位が連続的に発達することも事実である。これを前提とすると、本発明鋼板の表層においては、結晶粒成長に伴い、{111}方位は、{100}方位に蚕食されやすい。平均結晶粒径が粗大になれば、{111}方位が{100}方位に蚕食されるため、{111}<112>方位の集積度I(s)が低下する。そのため、集積度I(s)が低下し、本発明効果が損なわれる場合がある。これを回避する目安の粒径の上限として、50μmを設定する。平均結晶粒径の好ましい上限は35μmであり、さらに好ましくは20μmである。ただし、上述のとおり、平均結晶粒径が50μmを超えても、集積度I(s)が6.0以上であり、集積度I(c)が4.0以上であれば、ダレの発生は抑制できる。
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法の一例を説明する。本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する工程(熱間圧延工程)と、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施して、さらに、1パス目の温間圧延を特定条件で実施して薄鋼板を製造する工程(仕上げ圧延工程)と、薄鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施して再結晶させる工程(仕上げ焼鈍工程)とを含む。以下、各工程について詳述する。
熱間圧延工程では、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。スラブは、上述の化学組成を有する。スラブは周知の方法で製造される。たとえば、上述の化学組成の溶湯を用いて、連続鋳造法によりスラブを製造する。上述の化学組成の溶湯を用いて、造塊法によりインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延してスラブを製造してもよい。連続鋳造法により製造されたスラブに対して分塊圧延を実施してもよい。
仕上げ圧延工程では、熱延工程により製造された熱延鋼板に対して、少なくとも最初の1パス目の圧延を温間圧延で実施する。そして、2パス目以降の圧延を温間圧延又は冷間圧延で実施して、薄鋼板を製造する。ここで、「パス」とは、一対のワークロールを有する1つの圧延スタンドを鋼板が通過して圧下を受けることを意味する。
仕上げ圧延工程での累積圧下率は75〜95%である。なお、累積圧下率(%)は次のとおり定義される。
累積圧下率=(1−仕上げ圧延工程の最終パス後の薄鋼板の板厚/1パス目の温間圧延前の熱延鋼板の板厚)×100
上述のとおり、熱延鋼板に対する1パス目の圧延を、温間圧延で行う。1パス目の温間圧延における条件は次のとおりである。
温間圧延を実施する圧延スタンドのワークロールの直径は、鋼板表層での剪断変形量に影響する因子である。初期圧延スタンドのワークロール直径が大きすぎれば、鋼板表層において圧延素材の粒界近傍への剪断変形を伴うひずみの蓄積が不十分となる。この場合、{111}<112>方位の発生が十分に促進されず、集積度I(s)が6.0未満となる。一方、初期圧延スタンドのワークロール直径が小さすぎれば、剪断変形が板厚中心層にまで及ぶ。この場合、板厚中心層において、{100}<012>方位の発生が不十分となり、集積度I(c)が4.0未満となる。初期圧延スタンドのワークロール直径が400〜1000mmであれば、後述の式(1)〜式(3)が満たされることを条件に、表層の{111}<112>方位の発生を促進しつつ、板厚中心層の{100}<012>方位の発生も促進できる。その結果、集積I(s)が6.0以上になり、集積I(c)が4.0以上になる。初期圧延スタンドのワークロールの直径の好ましい上限は600mmである。
1パス目の温間圧延ではさらに、式(1)〜式(3)を満たす条件で圧延を実施する。
初期圧延温度Tは、動的ひずみ時効の発生程度を制御する因子である。動的ひずみ時効が発生することにより、圧延中の鋼板において、粒界近傍へのひずみの蓄積が高まる。特に表層近傍において、剪断変形成分が存在する状況下で動的ひずみ時効が発生すると、その後の再結晶焼鈍において、表層での{111}方位の発生が促進される。
初期ひずみ速度εドットは、初期圧延温度Tと関連して、動的ひずみ時効の発生に影響を及ぼす因子である。初期ひずみ速度εドットはさらに、結晶のすべり変形による不均一変形組織の発生頻度を制御する因子である。初期ひずみ速度εドットが高くなれば、変形に対し転位の移動速度が追随できず、変形帯のような不均一変形が発生する。このような不均一変形は、剪断変形が発生しにくく変形が単純な板厚中心層の変形挙動に強く影響し、その後の再結晶焼鈍において、板厚中心層において{100}方位の発生を促進する。
初期圧下率rは、初期圧延温度Tと関連して、動的ひずみ時効の発生に影響を及ぼす因子である。初期圧下率rはまた、結晶のすべり変形による不均一変形組織の発生頻度を制御する因子である。
無方向性電磁鋼板の磁気特性向上の観点では,少なくとも1パス目圧延から温間圧延を実施することにより、変形帯のような不均一変形が発生する頻度を十分に高くでき、その結果、板厚中心層において{100}<012>方位の再結晶を最大化できる。2パス目以降の圧延(初期圧延スタンドの下流側に配置された圧延スタンドでの圧延)では板厚が薄くなっているため、十分な圧延形状比(ロール接触弧長さ/平均板厚)をとることが難しい。このため、本発明にとって必要な変形状態としにくく、発明効果の大幅な向上は期待できない。また圧延工程の後段は、本発明が注目する変形状態とは無関係に、最終的な製品の板厚精度を確保するために圧延形状比を小さくする必要がある。また、板厚精度の観点では十分な潤滑が可能となる冷間圧延が有利という側面もある。
圧延の1パス目を含む前段での温間圧延のために、熱延鋼板を加熱する。温間圧延工程における加熱方法は、電磁誘導加熱、通電加熱、ヒーター加熱、雰囲気ガス中での加熱等を含め、公知の加熱方法を適用できる。
仕上げ圧延工程を実施して製造された冷延鋼板に対して、仕上げ焼鈍を実施して、無方向性電磁鋼板を製造する。仕上げ焼鈍では、最終の板厚に仕上げられた冷延鋼板を焼鈍して再結晶させる。
上述の製造方法において、仕上焼鈍工程後にコーティング工程を実施してもよい。コーティング工程では、仕上焼鈍後の無方向性電磁鋼板の表面に、絶縁コーティングを施す。絶縁コーティングの種類は特に限定されない。絶縁コーティングは有機成分であってもよいし、無機成分であってもよい、絶縁コーティングは、有機成分と無機成分とを含有してもよい。無機成分はたとえば、重クロム酸−ホウ酸系、リン酸系、シリカ系等である。有機成分はたとえば、一般的なアクリル系、アクリルスチレン系、アクリルシリコン系、シリコン系、ポリエステル系、エポキシ系、フッ素系の樹脂である。塗装性を考慮した場合、好ましい樹脂は、エマルジョンタイプの樹脂である。加熱及び/又は加圧することにより接着能を発揮する絶縁コーティングを施してもよい。接着能を有する絶縁コーティングはたとえば、アクリル系、フエノール系、エポキシ系、メラミン系の樹脂である。
I(s)及びI(c)は次の方法で測定できる。無方向性電磁鋼板を圧延方向に垂直な断面で切断し、板厚tの粗試料片を複数採取した。粗試料片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/10減厚したI(s)測定用試験片を作製した。また、粗試験片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/2減厚したI(c)測定用試験片を作製した。
無方向性電磁鋼板の表面からt/2深さ位置において、圧延方向の板厚方向断面を表面に含むサンプルを採取した。採取したサンプルの表面(圧延方向の板厚方向断面)を機械研磨した後、ナイタル液にてエッチングした。100倍の光学顕微鏡にて組織観察して、上述の方法(切断法)により、平均結晶粒径を求めた。
各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、55mm角磁気測定試験により、5000A/mにおける磁束密度B50を測定した。磁束密度B50は、L方向(圧延方向)及びC方向(圧延方向に直交する方向)の平均値として求めた。
製造された無方向性電磁鋼板に対して、打ち抜き加工を実施した。打ち抜き方向と平行であって、打ち抜き刃と垂直な断面となるように、無方向性電磁鋼板を切断した。そして、切断面のうち、無方向性電磁鋼板の端部を樹脂に埋め込み、研磨した。研磨後の無方向性電磁鋼板の端部を光学顕微鏡で撮影して写真画像を生成した。写真画像を用いて、打ち抜き加工により鋼板端部に形成されたダレ量を測定した。図4は、ダレ量測定試験における、鋼板端部の写真画像の模式図である。図4を参照して、鋼板端部100には、打ち抜き方向PUから順に、ダレ部101、せん断面102、破断面103、かえり104が形成されている。打ち抜き加工後の任意の5箇所の鋼板端部において、ダレ部101のダレ量D101を測定する。測定されたダレ量D101の平均を、ダレ量と定義した。
評価結果を表2に示す。表2を参照して、試験番号1〜11、17、20〜22、34及び35では、化学組成が適切であり、製造条件も適切であった。そのため、集積度I(s)が6.0以上であり、集積度I(c)が4.0以上であった。その結果、ダレ量は15μm以下と少なく、打ち抜き加工時のダレ発生を十分に抑制できた。また、磁束密度B50が1.65T以上であり、優れた磁気特性が得られた。
結果を表3に示す、試験番号1〜4では、化学組成が適切であり、製造条件も適切であった。そのため、集積度I(s)が6.0以上であり、集積度I(c)が4.0以上であった。その結果、ダレ量は15μm以下と少なく、打ち抜き加工時のダレ発生を十分に抑制できた。また、磁束密度B50が1.65T以上であり、優れた磁気特性が得られた。
Claims (7)
- 無方向性電磁鋼板であって、
化学組成が、
質量%で、
C:0.001〜0.005%、
Si:2.0〜5.0%、
Mn:0.1〜1.5%、
P:0.02%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.001〜2.0%、及び、
N:0.001〜0.005%、
を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
前記無方向性電磁鋼板の板厚をtと定義したとき、
前記無方向性電磁鋼板の表面からt/10深さ位置での{111}<112>方位の集積度I(s)が6.0以上であり、
前記無方向性電磁鋼板の表面からt/2深さ位置での{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上である、無方向性電磁鋼板。 - 請求項1に記載の無方向性電磁鋼板であって、
前記化学組成はさらに、Feの一部に代えて、
Ti:0.01%以下、
V:0.01%以下、及び、
Nb:0.01%以下からなる群から選択された1種又は2種以上を含有し、
前記化学組成は式(A)を満たす、無方向性電磁鋼板。
- 請求項1又は請求項2に記載の無方向性電磁鋼板であって、
前記化学組成はさらに、Feの一部に代えて、
Sn:0.2%以下、
Cu:0.1%以下、
Ni:0.1%以下
Cr:0.2%以下、及び、
B:0.001%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、無方向性電磁鋼板。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の化学組成を有する素材に対して熱間圧延を実施して熱延鋼板を製造する熱間圧延工程と、
前記熱延鋼板に対して、400〜1000mmの直径を有する一対のワークロールを有する圧延スタンドを用いて、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施して、0.10〜0.50mmの板厚を有する薄鋼板を製造する仕上げ圧延工程と、
前記薄鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施する仕上げ焼鈍工程とを備え、
前記仕上げ圧延工程では、
前記1パス目の圧延において、圧延温度をT(℃)、ひずみ速度をεドット(s-1)、圧下率をr(%)と定義したとき、式(1)〜式(3)を満たす条件で前記熱延鋼板に対して温間圧延を実施し、
前記仕上げ圧延工程での累積圧下率を75〜95%とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 請求項4に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記冷間圧延では、
前記圧延温度を150℃以下とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項4又は請求項5に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記仕上げ圧延工程では、
各々が一対のワークロールを有し、一列に並んだ複数の圧延スタンドを含むタンデム圧延機を用い、
少なくとも前記1パス目の圧延を実施する前記圧延スタンド、又は、前記圧延スタンド及びその下流に配列された圧延スタンドにて前記温間圧延を実施し、
前記温間圧延を実施する前記圧延スタンドの下流に配列された圧延スタンドにて冷間圧延で実施する、無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記仕上焼鈍工程では、
最高到達温度を800〜900℃とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
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