JP2018168344A - 内燃機関用潤滑油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐水性及び水分混入時の耐久性に優れる内燃機関用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】基油と、過塩基性カルシウムスルホネート(A)と、過塩基性マグネシウム清浄剤(B)とを含有し、成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下である、内燃機関用潤滑油組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、内燃機関用潤滑油組成物に関する。
近年、地球規模での環境規制はますます厳しくなり、特に自動車を取り巻く状況は、燃費規制、排出ガス規制等厳しくなる一方である。この背景には地球温暖化等の環境問題と、石油資源の枯渇に対する懸念からの資源保護がある。このような近年の状況から、自動車の排気ガスによる大気汚染を低減させるために、ハイブリッド自動車の生産比率が向上している。
また、同様に石油資源の枯渇に対する懸念からの資源保護の観点から、バイオマス由来の燃料、例えば、バイオマスメタノール、バイオマスエタノール等のアルコール燃料を用いる内燃機関の開発も進められている。
ところで、ハイブリッド自動車の内燃機関又は前述のアルコール燃料を用いる内燃機関の潤滑油には、従来の内燃機関のみで駆動する自動車の内燃機関用潤滑油と同じエンジン油が用いられているが、ハイブリッド自動車の内燃機関又は前述のアルコール燃料を用いる内燃機関の使用環境に適応した内燃機関用潤滑油の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、特定の潤滑油基油に、それぞれ特定の含有量で、金属系清浄剤、ホウ素含有コハク酸イミド系無灰分散剤、及びリン含有酸の金属塩を含有することを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。
また、特許文献2には、潤滑油基油に、それぞれ特定の含有量で、サリシレート系清浄剤、ホウ素を含有しないコハク酸イミド系無灰分散剤のみからなるコハク酸イミド系無灰分散剤、リン含有有機酸の金属塩を含有することを特徴とするハイブリッド自動車の内燃機関用潤滑油組成物、並びに当該内燃機関用潤滑油組成物に、更に、特定の含有量でホウ素含有コハク酸イミド系無灰分散剤を含有することを特徴とするハイブリッド自動車の内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。
特開2008−144018号公報 特開2008−144019号公報
ところで、ハイブリッド自動車は、内燃機関(例えば、エンジン)及び電動機(例えば、電気モーター)の2つの動力源を有している。そして、走行時の状況によって、内燃機関のみ、電動機のみ、又はこれらを同時に利用して走行している。従来の内燃機関のみを有する自動車では、駆動時に常に内燃機関の動力を用いる必要があったが、ハイブリッド自動車では内燃機関の動力を用いずに電動機により得られる電力を用いて駆動することができる。このように、ハイブリッド自動車の内燃機関は、従来の自動車の内燃機関に比べて、自動車を使用している際であっても停止している時間が長い。そのため、クランク室内で結露が生じ、内燃機関用潤滑油に水分が混入しやすい。その結果、内燃機関用潤滑油をハイブリッド自動車の内燃機関で使用する場合、従来の内燃機関のみを有する自動車に使用される場合と比べて、当該潤滑油が早期に劣化し易いという問題を抱えている。
また、エタノール等のアルコール燃料やバイオエタノール等のバイオ燃料を用いる内燃機関も同様に、燃料中で水分が発生又は混入し易いため、同様の問題を抱えている。
このように、ハイブリッド自動車や、アルコール燃料又はバイオ燃料を使用する車両等では、内燃機関用潤滑油中に水分が混入しやすく、耐水性の高い内燃機関用潤滑油が求められている。
また、内燃機関用潤滑油には、耐久性が要求されるため、前述した環境下での使用時には、水分が混入した状態で長期間清浄作用を維持する必要があり、水分混入時の耐久性も求められている。
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、耐水性及び水分混入時の耐久性に優れる内燃機関用潤滑油組成物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のカルシウム系清浄剤と特定のマグネシウム系清浄剤とを含有する内燃機関用潤滑油組成物が、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明の各実施形態はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明の各実施形態によれば、以下の[1]〜[4]が提供される。
[1]基油と、
過塩基性カルシウムスルホネート(A)と、
過塩基性マグネシウム清浄剤(B)とを含有し、
成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下である、内燃機関用潤滑油組成物。
[2]基油と、
過塩基性カルシウムスルホネート(A)と、
過塩基性マグネシウム清浄剤(B)とを配合する、内燃機関用潤滑油組成物の製造方法であって、
成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下である、内燃機関用潤滑油組成物の製造方法。
[3]前記[1]に記載の内燃機関用潤滑油組成物を用いることを特徴とする、潤滑方法。
[4]前記[2]に記載の製造方法で得られる内燃機関用潤滑油組成物を用いることを特徴とする、潤滑方法。
[5]前記[1]に記載の内燃機関用潤滑油組成物を用いた内燃機関。
[6]前記[2]に記載の製造方法で得られる内燃機関用潤滑油組成物を用いた内燃機関。
本発明によれば、耐水性及び水分混入時の耐久性に優れる内燃機関用潤滑油組成物を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[内燃機関用潤滑油組成物]
本発明の一実施形態である内燃機関用潤滑油組成物(以下、単に「潤滑油組成物」ともいう。)は、基油と、過塩基性カルシウムスルホネート(A)と、過塩基性マグネシウム清浄剤(B)とを含有し、成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下である、内燃機関用潤滑油組成物である。
成分(B)の塩素原子含有量が成分(B)全量基準で400質量ppm超であると、イオン化傾向が高くなり、当該潤滑油組成物の耐水性及び水分混入時の耐久性が低下する。一方で、当該潤滑油組成物は、成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下と低いことで、イオン化傾向が低くなり、耐水性及び水分混入時の耐久性が向上する。
なお、成分(B)を2種以上含有する場合、前記成分(B)の塩素原子含有量とは、それらの成分の塩素原子含有量の合計量を表す。
以下、当該潤滑油組成物に含有される各成分について説明する。
<基油>
前記潤滑油組成物に用いる基油としては、特に制限はなく、従来、潤滑油の基油として使用されている鉱油及び合成油の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1種以上の処理を行って精製した鉱油やワックスやGTL WAX(ガストゥリキッド ワックス)を異性化することによって製造される鉱油等が挙げられるが、これらのうち水素化精製により処理した鉱油やGTL WAXを異性化することによって製造される鉱油が好ましい。これらの鉱油は、後述する%C、粘度指数を良好にしやすくなる。
合成油としては、例えば、ポリブテン;α−オレフィン単独重合体、α−オレフィン共重合体(例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体)等のポリα−オレフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等の各種のエステル;ポリフェニルエーテル等の各種のエーテル;ポリグリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;等が挙げられる。これらの合成油のうち、ポリα−オレフィン、エステルが好ましく、これら2種を組み合わせたものも合成油として好適に使用される。
本発明の一実施形態においては、前記基油として、前記鉱油を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記合成油を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。更には、前記鉱油1種以上と前記合成油1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
また、前記基油の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
前記基油の粘度については特に制限はないが、100℃における動粘度が、好ましくは2mm/s以上、より好ましくは3mm/s以上、更に好ましくは4mm/s以上であり、また、好ましくは30mm/s以下、より好ましくは15mm/s以下、更に好ましくは10mm/s以下である。100℃における動粘度が2mm/s以上であると、蒸発損失が少なく、また、30mm/s以下であると、粘性抵抗による動力損失が抑制され、燃費改善効果が得られる。
また、特に制限はないが、40℃における動粘度が、好ましくは5mm/s以上、より好ましくは8mm/s以上、更に好ましくは10mm/s以上であり、また、好ましくは65mm/s以下、より好ましくは40mm/s以下、更に好ましくは25mm/s以下である。
また、前記基油の粘度指数は、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上、より更に好ましくは125以上である。当該粘度指数が100以上の基油は、温度の変化による粘度変化が小さい。
前記基油の粘度指数が当該範囲であることで、潤滑油組成物の粘度特性を良好にしやすくなる。
当該40℃における動粘度、100℃における動粘度及び粘度指数の値は、後述する実施例に記載された方法により測定されるものである。
また、前記基油としては、環分析による芳香族分(%C)が3.0以下で硫黄分の含有量が10質量ppm以下のものが好ましく用いられる。ここで、環分析による%Cとは、環分析n−d−M法にて算出した芳香族分の割合(百分率)を示す。
当該%Cが3.0以下で、硫黄分が10質量ppm以下の基油は、良好な酸化安定性を有し、酸価の上昇やスラッジの生成を抑制しうる潤滑油組成物を提供することができる。より好ましい%Cは1.0以下、更に好ましくは0.5以下であり、また、より好ましい硫黄分は5質量ppm以下である。
また、前記基油は、環分析によるパラフィン分(%C)が好ましくは70以上で、より好ましくは75以上、更に好ましくは79以上である。当該%Cを75以上とすることで、基油の酸化安定性が良好になる。ここで、環分析による%Cとは、環分析n−d−M法にて算出したパラフィン分の割合(百分率)を示す。
また、前記基油のNOACK蒸発量は、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは14.0質量%以下である。
前記環分析による芳香族分(%C)、パラフィン分(%C)、硫黄分(硫黄原子含有量)及びNOACK蒸発量は、それぞれ、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
<成分(A):過塩基性カルシウムスルホネート>
前記潤滑油組成物は、成分(A)として過塩基性カルシウムスルホネート(以下、単に「成分(A)」ともいう。)を含有する。成分(A)を含有することで、NOxガス混入時の塩基価の低下を抑制できる。
成分(A)としては、例えば、好ましくは分子量300以上1,500以下、より好ましくは分子量400以上700以下のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸を、直接、カルシウムの酸化物や水酸化物等の塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからカルシウムと置換させること等により得られるカルシウム塩(中性カルシウムスルホネート)を用い、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で当該中性カルシウムスルホネートを過剰の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムと反応させることにより得られるものなどが挙げられる。
成分(A)を構成する石けん基がアルキル基を有する場合、当該アルキル基は、炭素数4以上30以下のものが好ましく、より好ましくは炭素数6以上24以下の直鎖又は分枝状アルキル基であり、更に好ましくは炭素数10以上24以下の直鎖又は分岐状アルキル基である。
成分(A)は、同一の分子内において、複数のアルキル基を有するため、同一の炭素数であるアルキル基を有するものもあれば、異なる炭素数であるアルキル基を有するものもある。また、成分(A)は、前記したものを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。成分(A)として2種以上を組み合わせて用いる場合、又は、単独で用いる場合であっても同一分子内に複数のアルキル基を有する場合、それらの中で最も多数を占める成分(A)を構成するアルキル基の炭素数(以下、「成分(A)が有するアルキル基の主炭素数」ともいう。)が、10以上24以下であることが好ましい。成分(A)が有するアルキル基の主炭素数が、当該範囲であることで、良好な油溶性が得られる。
本明細書で使用される「油溶性」なる用語は、必ずしも化合物や添加物が完全に油に溶解することを示すものではなく、それらが使用時、輸送時、及び保存時に油に溶解、分散することを意味する。
成分(A)の塩基価(塩酸法)は、好ましくは200mgKOH/g以上、より好ましくは250mgKOH/g以上、更に好ましくは300mgKOH/g以上であり、また、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。成分(A)の塩基価(塩酸法)が200mgKOH/g以上であると、潤滑油組成物の清浄性がより向上する。また、500mgKOH/g以下であると、成分(A)の潤滑油組成物への溶解性が良好となる。
当該塩基価の値は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
成分(A)の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.50質量%以上であり、また、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。当該成分(A)の含有量が0.05質量%以上であると、潤滑油組成物の清浄性がより向上する。また、当該成分(A)の含有量が3.0質量%以下であると、潤滑油組成物の灰分を低くすることができる。
なお、本明細書中、「灰分」とは、例えば、JIS K 2272:1998に記載の方法により測定される「硫酸灰分」を意味する。
また、成分(A)由来のカルシウム原子含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは500質量ppm以上、より好ましくは800質量ppm以上、更に好ましくは1,000質量ppm以上であり、また、好ましくは2,000質量ppm以下、より好ましくは1,800質量ppm以下、更に好ましくは1,600質量ppm以下である。当該含有量が500質量ppm以上であると、潤滑油組成物の清浄性がより向上する。また、当該含有量が2,000質量ppm以下であると、潤滑油組成物の灰分を低くすることができる。
なお、成分(A)としては、前記したものを単独で用いてもよく、前記した性状又は構造の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。前記石けん基のアルキル基の炭素数、塩基価(塩酸法)、潤滑油組成物中の成分(A)の含有量及び成分(A)由来のカルシウム含有量の好適範囲は、2種以上の成分(A)を組み合わせた場合の合計値としても同様である。
<成分(B):過塩基性マグネシウム清浄剤>
前記潤滑油組成物は、過塩基性マグネシウム清浄剤であって、当該過塩基性マグネシウム清浄剤全量基準での塩素原子含有量が400質量ppm以下である過塩基性マグネシウム清浄剤(以下、単に「成分(B)」ともいう。)を含有する。
前述のとおり、成分(B)の塩素原子含有量が成分(B)全量基準で400質量ppm超であると、イオン化傾向が高くなり、潤滑油組成物の耐水性及び水分混入時の耐久性が低下する。一方で、前記潤滑油組成物は、成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下と低いことで、イオン化傾向が低くなり、水分混入時の耐久性が向上する。
このような観点から、成分(B)中の塩素原子含有量は、成分(B)全量基準で、好ましくは350質量ppm以下、より好ましくは300質量ppm以下、更に好ましくは150質量ppm以下、より更に好ましくは100質量ppm以下である。
また、当該成分(B)中の塩素原子含有量の下限値としては、特に制限はないが、成分(B)全量基準で、0質量ppm以上、好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは60質量ppm以上、更に好ましくは70質量ppm以上である。
なお、成分(B)を2種以上含有する場合、前記成分(B)の塩素原子含有量とは、2種以上の成分(B)中の塩素原子含有量の合計量を表す。
ここで、「成分(B)中の塩素原子」とは、成分(B)中の石けん基に由来する塩素原子を指す。
成分(B)を構成する当該石けん基としては、例えば、アルキル芳香族スルホン酸(例:アルキルベンゼンスルホン酸)、アルキルフェノール、アルキルサリチル酸等のアルキルベンゼンの誘導体が挙げられる。
アルキルベンゼンは、主として、原油から精製又は合成されたn−パラフィンを塩素化して得た塩素化パラフィンと、ベンゼンとを、塩化アルミニウム(AlCl)を触媒として反応させて得られる。その後、アルキルベンゼンスルホン酸は、アルキルベンゼンをスルホン化して得ることができる。
また、アルキルサリチル酸は、例えば、アルキルフェノールと金属水酸化物から得たアルキルサリチル酸の金属塩を、塩酸と反応させて得ることができる。
これらのアルキルベンゼン及びその誘導体は、適宜、精製されて塩素原子が除去されるが、精製度の違いにより、塩素原子の含有量は変化する。
また、例えば、アルキルフェノールをフェノールから合成する場合であっても、ベンゼンスルホン酸やクロロベンゼンをアルカリ融解して得る方法や、ジアゾニウム塩を経る方法、クメンを酸素で酸化・分解するクメン法等各種の合成方法が選択でき、アルキルフェノールを得る過程の違いによっても成分(B)中の塩素原子含有量は変化する。
したがって、成分(B)の原料となるアルキルベンゼン及びその誘導体中に塩素原子が混入しているため、前記成分(B)中にも、少量の塩素原子が含まれることになる。
そのため、成分(B)中の塩素原子含有量には、例えば、アルキルベンゼン及びその誘導体中の塩素原子含有量の違いが影響を与える。
また、例えば、成分(B)が過塩基性マグネシウムスルホネートであれば、アルキル芳香族スルホン酸を得るために、アルキルベンゼンをスルホン化する際の中和の程度や、マグネシウム塩とする際に除去される塩素原子の量によっても成分(B)中の塩素原子含有量は変化する。
前述のとおり、成分(B)中の塩素原子含有量は、用いる原料中の塩素原子含有量、原料の合成方法及び成分(B)の合成方法の選択によって調整することができ、過塩基性マグネシウム清浄剤全量基準での塩素原子含有量が400質量ppm以下である成分(B)を得ることができる。
成分(B)としては、前記塩素原子含有量を満たす限り、潤滑油に用いられる過塩基性マグネシウム清浄剤が使用可能であり、好ましくは過塩基性マグネシウムスルホネート、過塩基性マグネシウムフェネート、及び過塩基性マグネシウムサリシレートからなる群より選ばれる1種以上の過塩基性マグネシウム清浄剤が挙げられ、より好ましくは過塩基性マグネシウムスルホネート及び過塩基性マグネシウムサリシレートからなる群より選ばれる1種以上、更に好ましくは過塩基性マグネシウムサリシレートである。
前記成分(A)と共に当該成分(B)を含有することで、低灰分と優れた耐水性とを両立する潤滑油組成物を得ることができる。
成分(B)を構成するスルホン酸基、フェノール基及びサリチル酸基等の石けん基が有するアルキル基としては、直鎖アルキル基又は分枝アルキル基が挙げられ、炭素数4以上30以下の直鎖アルキル基又は分枝アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数6以上24以下の直鎖アルキル基又は分枝アルキル基であり、更に好ましくは炭素数10以上24以下の直鎖アルキル基又は分枝アルキル基である。
また、これらのアルキル基は、1級アルキル基でもよく、2級アルキル基でもよく、又は3級アルキル基でもよい。
成分(B)は、同一の分子内において、複数のアルキル基を有するため、同一の炭素数であるアルキル基を有するものもあれば、異なる炭素数であるアルキル基を有するものもある。そして、成分(B)は、前記したものを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いる場合、又は、単独で用いる場合であっても同一分子内に複数のアルキル基を有する場合、それらの中で最も多数を占める成分(B)を構成するアルキル基の炭素数(以下、「成分(B)が有するアルキル基の主炭素数」ともいう。)が、10以上24以下であることが好ましい。成分(B)が有するアルキル基の主炭素数が、当該範囲であることで、良好な油溶性が得られる。
前記過塩基性マグネシウムスルホネートとしては、例えば、好ましくは分子量300以上1,500以下、より好ましくは分子量400以上700以下のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸を、直接、マグネシウムの酸化物や水酸化物等の塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからマグネシウムと置換させること等により得られるマグネシウム塩(中性マグネシウムスルホネート)を用い、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で当該中性マグネシウムスルホネートを過剰の酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムと反応させることにより得られるもの、又は、炭化水素溶媒、アルコール等の溶媒中に酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド等のマグネシウム供給源を混合し、そこに前記アルキル芳香族スルホン酸を混合して、更に有機モノカルボン酸や炭化水素置換コハク酸無水物若しくはその誘導体等の炭酸塩化の促進のための促進剤を混合した混合物に対して、更に二酸化炭素を導入することによっても得られるものなどが挙げられる。
前記過塩基性マグネシウムフェネートとしては、例えば、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物を、直接、マグネシウムの酸化物や水酸化物等の塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからマグネシウムと置換させること等により得られるマグネシウム塩(中性マグネシウムフェネート)を用い、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で当該中性マグネシウムフェネートを過剰の酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムと反応させることにより得られるもの、又は、炭化水素溶媒、アルコール等の溶媒中に酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド等のマグネシウム供給源を混合し、そこに前記アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、又はアルキルフェノールのマンニッヒ反応物を混合して、更に有機モノカルボン酸や炭化水素置換コハク酸無水物若しくはその誘導体等の炭酸塩化の促進のための促進剤を混合した混合物に対して、更に二酸化炭素を導入することによっても得られるものなどが挙げられる。
前記過塩基性マグネシウムサリシレートとしては、例えば、ジアルキルサリチル酸等のアルキルサリチル酸を、直接、マグネシウムの酸化物や水酸化物等の塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからマグネシウムと置換させること等により得られるサリチル酸のマグネシウム塩(中性マグネシウムサリシレート)を用い、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で当該中性マグネシウムサリシレートを過剰の酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムと反応させることにより得られるもの、又は、炭化水素溶媒、アルコール等の溶媒中に酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド等のマグネシウム供給源を混合し、そこに前記アルキルサリチル酸を混合して、更に有機モノカルボン酸や炭化水素置換コハク酸無水物若しくはその誘導体等の炭酸塩化の促進のための促進剤を混合した混合物に対して、更に二酸化炭素を導入することによっても得られるものなどが挙げられる。
成分(B)の塩基価(塩酸法)は、好ましくは200mgKOH/g以上、より好ましくは250mgKOH/g以上、更に好ましくは300mgKOH/g以上であり、また、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは380mgKOH/g以下、より更に好ましくは360mgKOH/g以下である。成分(B)の塩基価(塩酸法)が200mgKOH/g以上であると、潤滑油組成物の清浄性がより向上する。また、500mgKOH/g以下であると、成分(B)の潤滑油組成物への溶解性及び潤滑油組成物の耐久性が良好となる。
当該塩基価の値は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
成分(B)の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上であり、また、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。当該含有量が0.05質量%以上であると、潤滑油組成物の清浄性がより向上する。また、3.0質量%以下であると、潤滑油組成物の灰分を低減することができる。
また、成分(B)由来の塩素原子含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは2.00質量ppm以下、より好ましくは1.50質量ppm以下、更に好ましくは1.40質量ppm以下、より更に好ましくは1.00質量ppm以下である。当該含有量が2.00質量ppm以下であると、潤滑油組成物の耐水性及び水分混入時の耐久性が良好となる。
また、当該成分(B)由来の塩素原子含有量の下限値としては、特に制限はなく、例えば、塩素原子を含有しないことが好ましく、塩素原子を含有する場合は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.1質量ppm以上である。
また、成分(B)由来のマグネシウム原子含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは300質量ppm以上、より好ましくは350質量ppm以上、更に好ましくは400質量ppm以上であり、また、好ましくは1,000質量ppm以下、より好ましくは800質量ppm以下、更に好ましくは700質量ppm以下、より更に好ましくは600質量ppm以下である。当該含有量が300質量ppm以上であると、潤滑油組成物の清浄性がより向上する。また、当該含有量が1,000質量ppm以下であると、潤滑油組成物の灰分を低減することができる。
なお、成分(B)としては、前記したものを単独で用いてもよく、前記した性状又は構造の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。前述した成分(B)中の塩素原子含有量、石けん基のアルキル基の炭素数、塩基価(塩酸法)、並びに潤滑油組成物中の成分(B)の含有量、成分(B)由来の塩素原子含有量及び成分(B)由来のマグネシウム含有量の好適範囲は、2種以上の成分(B)を組み合わせた場合の合計値としても同様である。
<成分(C):有機モリブデン化合物>
前記潤滑油組成物は、更に、成分(C)として、有機モリブデン化合物(以下、単に「成分(C)」ともいう。)を含有することが好ましい。
成分(C)を含有することで、潤滑油組成物の摩擦低減作用がより向上する。
成分(C)の含有量は、成分(C)由来のモリブデン原子含有量(Mo)として換算でき、成分(C)のモリブデン原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは30質量ppm以上、より好ましくは40質量ppm以上、より更に好ましくは50質量ppm以上であり、また、好ましくは400質量ppm以下、より好ましくは300質量ppm以下、更に好ましくは200質量ppm以下、より更に好ましくは150質量ppm以下である。当該含有量が30質量ppm以上であると、潤滑油組成物の摩擦低減作用がより向上する。また、当該含有量が400質量ppm以下であると、潤滑油組成物の清浄性が良好となる。
なお、成分(C)の含有量としては、モリブデン原子換算での前記含有量が前記範囲となることが好ましいが、成分(C)の含有量としては、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上であり、また、好ましくは1.50質量%以下、より好ましくは0.80質量%以下、更に好ましくは0.20質量%以下である。成分(C)の含有量が0.05質量%以上であると、潤滑油組成物の摩擦低減作用がより向上する。また、成分(C)の含有量が1.50質量%以下であると、潤滑油組成物のへのモリブデンの沈殿を抑制することができる。
成分(C)としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、モリブデン酸アミン塩等の有機モリブデン化合物が挙げられる。
これらの中でも、成分(C)としては、好ましくは、以下に示すジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)(C1)及びジチオリン酸モリブデン(MoDTP)(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、より好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)(C1)を含有する。
ジチオカルバミン酸モリブデン(C1)としては、一分子中に2つのモリブデン原子を含む二核のジチオカルバミン酸モリブデン(C11)、及び、一分子中に3つのモリブデン原子を含む三核のジチオカルバミン酸モリブデン(C12)が挙げられる。
ジチオカルバミン酸モリブデン(C1)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
二核のジチオカルバミン酸モリブデン(C11)としては、好ましくは次の一般式(c11−1)で表される化合物及び一般式(c11−2)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上である。
一般式(c11−1)及び(c11−2)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
11〜X18は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、一般式(c11−1)中のX11〜X18の少なくとも2つは硫黄原子である。
(C)成分として一般式(c11−2)を用いる場合、一般式(c11−2)中のX11〜X14が酸素原子であることが好ましい。
一般式(c11−1)中、基油に対する溶解性を向上させる観点から、X11〜X18中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/4以上4/1以下、より好ましくは1/3以上3/1以下である。
また、一般式(c11−2)中、前記と同様の観点から、X11〜X14中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/3以上3/1以下、より好ましくは1.5/2.5以上2.5/1.5以下である。
11〜R14として選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは7以上22以下、より好ましくは7以上18以下、更に好ましくは7以上14以下、より更に好ましくは8以上13以下である。
一般式(c11−1)及び(c11−2)中のR11〜R14として選択し得る炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
三核のジチオカルバミン酸モリブデン(C12)としては、次の一般式(c12−1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(c12−1)中、kは1以上の整数、mは0以上の整数であり、k+mは4以上10以下の整数であり、4以上7以下の整数であることが好ましい。nは1以上4以下の整数、pは0以上の整数である。zは0以上5以下の整数であって、非化学量論の値を含む。
Moはモリブデン原子であり、Sは硫黄原子である。
Eは、それぞれ独立に、酸素原子又はセレン原子であり、例えば、後述するコアにおいて硫黄を置換し得るものである。
Lは、それぞれ独立に、炭素原子を含有する有機基を有するアニオン性リガンドであり、各リガンドにおける該有機基の炭素原子数の合計が14個以上であり、各リガンドは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
Uは、それぞれ独立に、L以外のアニオンである。
Qは、それぞれ独立に、中性電子を供与する化合物であり、三核モリブデン化合物上における空の配位を満たすために存在する。
Lで表されるアニオン性リガンドにおける有機基の炭素原子数の合計としては、好ましくは14個以上50個以下、より好ましくは16個以上30個以下、更に好ましくは18個以上24個以下である。
Lとしては、1価のアニオン性リガンドであるモノアニオン性リガンドであることが好ましく、具体的には、下記一般式(i)〜(iv)で表されるリガンドであることがより好ましい。
なお、前記一般式(c12−1)中、Lとして選択されるアニオン性リガンドとしては、下記一般式(iv)で表されるリガンドであることが更に好ましい。
また、前記一般式(c12−1)において、Lとして選択されるアニオン性リガンドは、すべて同一であることが好ましく、すべて下記一般式(iv)で表されるリガンドであることがより好ましい。
一般式(i)〜(iv)中、X31〜X37、及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子であり、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
一般式(i)〜(iv)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、有機基であり、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、R31、R32、及びR33として選択し得るそれぞれの有機基の炭素数は、好ましくは14個以上50個以下、より好ましくは16個以上30個以下、更に好ましくは18個以上24個以下である。
一般式(iv)中のR34及びR35として選択し得る2つの有機基の合計炭素数としては、好ましくは14個以上50個以下、より好ましくは16個以上30個以下、更に好ましくは18個以上24個以下である。
34及びR35として選択し得るそれぞれの有機基の炭素数は、好ましくは7個以上30個以下、より好ましくは7個以上20個以下、更に好ましくは8個以上13個以下である。
なお、R34の有機基と、R35の有機基とは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、互いに異なることが好ましい。また、R34の有機基の炭素数と、R35の有機基の炭素数とは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、互いに異なることが好ましい。
31〜R35として選択される有機基としては、アルキル基、アリール基、置換アリール基等のヒドロカルビル基及びアルコキシ基が挙げられる。
なお、ヒドロカルビル基とは、炭化水素から1個の水素原子を取り去ることにより形成される1価の置換基である。当該置換基としては、以下のものが挙げられる。
1.炭化水素置換基
炭化水素置換基としては、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族の置換基;シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の脂環式の置換基;フェニル基等の芳香族炭化水素基(芳香族基);芳香族基、脂肪族基及び脂環式基に置換されたこれらの基等が挙げられる。
2.置換された炭化水素置換基
置換された炭化水素置換基としては、非炭化水素基を置換基として有する前記炭化水素置換基が挙げられる。非炭化水素基としては、例えば、クロロ基、フルオロ基等のハロゲン基、アミノ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホキシ基等が挙げられる。
また、R31〜R35として選択される有機基としてのヒドロカルビル基は、それぞれ独立に、他のヒドロカルビル基から選ばれる少なくとも1つと互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(c12−1)中、Lとして選択されるアニオン性リガンドとしては、アルキルキサントゲン酸塩、カルボン酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、及びこれらの混合物に由来のものが好ましく、ジアルキルジチオカルバミン酸塩に由来のものがより好ましい。
一般式(c12−1)中、Uとして選択し得るアニオンは、1価のアニオンであってもよく、2価のアニオンであってもよい。Uとして選択し得るアニオンとしては、例えば、ジスルフィド、ヒドロキシド、アルコキシド、アミド及びチオシアネート又はそれらの誘導体等が挙げられる。
一般式(c12−1)中、Qとしては、水、アミン、アルコール、エーテル及びホスフィン等が挙げられる。Qは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
三核のジチオカルバミン酸モリブデン(C12)としては、一般式(c12−1)中、kが4以上7以下の整数、nが1又は2、Lがモノアニオン性リガンドであり、pがUにおけるアニオン電荷をベースとする化合物に電気的中性を付与する整数であり、且つ、m及びzのそれぞれが0である化合物が好ましく、kが4以上7以下の整数であり、Lがモノアニオン性リガンドであり、nが4であり、且つ、p、m及びzのそれぞれが0である化合物がより好ましい。
また、三核のジチオカルバミン酸モリブデン(C12)としては、例えば、下記式(I)又は(II)で表されるコアを有する化合物であることが好ましい。各コアは、+4の実効電荷(net electrical charge)を有する。これらのコアは、アニオン性リガンド、及び必要に応じて存在するアニオン性リガンド以外のアニオンによって囲まれている。
三核モリブデン−硫黄化合物の形成には、例えば、コア中に存在する硫黄及びE原子数に依存して、適切なアニオン性リガンド(L)及び他のアニオン(U)を選択することが必要であること、即ち、硫黄原子、存在するならE原子、L及び存在するならUにより構成される全アニオン電荷が−4でなければならない。
三核モリブデン−硫黄化合物は、また、アニオン電荷が−4を超える場合、モリブデン以外のカチオン、例えば、(アルキル)アンモニウム、アミン又はナトリウムを含んでいてもよい。アニオン性リガンド(L)及び他のアニオン(U)の好ましい実施形態は、4個のモノアニオン性のリガンドを有する構成である。
モリブデン−硫黄コア、例えば、前記式(I)及び(II)で表される構造体は、1又は2以上の多座リガンド、即ち、モリブデン原子に結合して、オリゴマーを形成することが可能な官能基を1つより多く有するリガンドにより相互接続(interconnect)させることができる。
ジチオリン酸モリブデン(C2)としては、下記一般式(c2−1)で表される化合物及び/又は下記一般式(c2−2)で表される化合物が好ましい。
なお、本発明において、ジチオリン酸モリブデン(C2)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(c2−1)及び(c2−2)中、R21〜R24は、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
21〜X28は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、一般式(c2−1)中のX21〜X28の少なくとも2つは硫黄原子である。
一般式(c2−1)において、基油に対する溶解性を向上させる観点から、X21〜X28中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/4以上4/1以下、より好ましくは1/3以上3/1以下である。
また、一般式(c2−2)において、同様の観点から、X21〜X24中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/3以上3/1以下、より好ましくは1.5/2.5以上2.5/1.5以下である。
21〜R24として選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上20以下、より好ましくは5以上18以下、更に好ましくは5以上16以下、より更に好ましくは5以上12以下である。
なお、一般式(c2−1)及び(c2−2)中のR21〜R24として選択し得る炭化水素基としては、前述の一般式(c11−1)又は(c11−2)中のR11〜R14として選択し得る炭化水素基と同じものが挙げられる。
前記潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ジチオカルバミン酸モリブデン(C1)及びジチオリン酸モリブデン(C2)以外の他のモリブデン系化合物(C3)を含有してもよい。
このような他のモリブデン系化合物(C3)としては、例えば、モリブテン酸のアミン塩、三酸化モリブデン及び/又はモリブデン酸とアミン化合物とを反応させてなるモリブデンアミン錯体等が挙げられる。
成分(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、成分(C)は、前記各一般式で表される各化合物からなる群より選ばれる1種を単独で用いてもよく、又は前記各一般式で表される各化合物からなる群より選ばれる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(C)を2種以上組み合わせた場合の合計含有量の好適範囲も、前述した成分(C)を単独で用いる場合の好適範囲と同様である。
<その他成分>
前記内燃機関用潤滑油組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、上記成分(A)〜(C)以外のその他成分を、更に含有したものであってもよい。その他成分としては、例えば、粘度指数向上剤、酸化防止剤、有機ジチオリン酸亜鉛等の酸化防止剤としての機能も兼ね備える成分(C)以外の摩擦調整剤、無灰系分散剤、無灰系摩擦調整剤、極圧剤、防錆剤、流動点降下剤、金属不活性化剤、消泡剤等が挙げられる。
前記粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート、分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート等のPMA系;オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体等のOCP系;スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体など)などが挙げられる。
なお、本明細書中、「アルキル(メタ)アクリレート」とは、アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートの両方を含む意味で用いられる。
これらの粘度指数向上剤は、好ましくは、重量平均分子量(Mw)が5,000以上1,500,000以下であり、PMA系の場合、好ましくは20,000以上、より好ましくは100,000以上であり、また、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下である。また、OCP系の場合、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、また、好ましくは800,000以下、より好ましくは500,000以下である。
なお、当該重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載の方法にて測定される。
なお、粘度指数向上剤の構造としては、直鎖であってもよく、分岐鎖を有するものであってもよい。また、高分子量の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有する櫛形ポリマーや、分岐高分子の一種であり1点で3本以上の鎖状高分子が結合している構造を有する星形ポリマー等といった特定の構造を有するポリマーであってもよい。
また、前記粘度指数向上剤としては、前述のとおり、線状の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有するポリマー(以下、「櫛形ポリマー」という。)を含有してもよい。このような櫛形ポリマーとしては、例えば、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エテニル基、ビニルエーテル基、アリル基等の重合性官能基を有するマクロモノマーに由来する構成単位を少なくとも有する重合体が好ましく挙げられる。ここで、該構成単位が「線状の側鎖」に該当するものである。
より具体的には、アルキル(メタ)アクリレートや、窒素原子含有系、ハロゲン元素含有系、水酸基含有系、脂肪族炭化水素系、脂環式炭化水素系、芳香族炭化水素系等の各種ビニル単量体に由来する構成単位を含む主鎖に対して、前記重合性官能基を有するマクロモノマーに由来する構成単位を含む側鎖を有する共重合体が好ましく挙げられる。
マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上であり、また、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは10,000以下である。
また、当該櫛形ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、省燃費性を向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは50,000以上であり、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、更に好ましくは700,000以下である。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは6以下、より好ましくは5.6以下、更に好ましくは5以下であり、下限値としては特に制限されないが、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.05以上、更に好ましくは1.10以上、より更に好ましくは1.50以上である。
当該櫛形ポリマーを含有する場合の当該櫛形ポリマーの含有量は、省燃費性を向上させる観点から、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上、更に好ましくは1.00質量%以上であり、そして、好ましくは20.00質量%以下、より好ましくは10.00質量%以下、更に好ましくは8.00質量%以下である。ここで、櫛形ポリマーの含有量は、櫛形ポリマーからなる樹脂分のみの含有量を意味し、例えば、該櫛形ポリマーとともに含有する希釈油等の質量は含まれない、固形分基準の含有量である。
また、前記粘度指数向上剤としては、好ましくはSSI30以下のポリアルキル(メタ)アクリレートである。ここで、SSIとは、せん断安定性指数(Shear Stability Index)を意味し、ポリマー(ポリアルキル(メタ)アクリレート)の分解に抵抗する能力を示す。SSIが大きいほど、ポリマーはせん断に対して不安定で、より分解されやすい。SSIは、ポリマーに由来するせん断による粘度低下をパーセンテージで示すもので、下記計算式により算出される。
当該計算式中、Kvは、基油にポリアルキル(メタ)アクリレートを加えた混合物の100℃動粘度の値である。Kv1は、基油にポリアルキル(メタ)アクリレートを加えた混合物を、ASTM D6278の手順にしたがって、30サイクル高剪断ボッシュ・ディーゼルインジェクターに通過させた後の100℃動粘度の値である。また、Kvoilは、基油の100℃動粘度の値である。なお、基油としては、100℃動粘度5.35mm/s、粘度指数105のGroupIIの基油を使用する。
SSIが30以下のポリアルキル(メタ)アクリレートを使用することで、潤滑油組成物の摩耗防止性をより高めることができる。当該SSIは、より好ましくは1以上25以下である。SSIを25以下とすることで、潤滑油組成物の摩耗防止性をより高めることができる。
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートを構成するモノマーはアルキル(メタ)アクリレートであり、好ましくは炭素数1以上18以下の直鎖アルキル基又は炭素数3以上34以下の分岐アルキル基のアルキル(メタ)アクリレートである。
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上100万以下、より好ましくは3万以上50万以下である。当該ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量を、この範囲とすることで、前記SSIの値を30以下に調整しやすくなる。
なお、当該重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載の方法にて測定される。
これらの粘度指数向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記粘度指数向上剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは1.00質量%以上、更に好ましくは2.00質量%以上であり、そして、好ましくは20.00質量%以下、より好ましくは15.00質量%以下、更に好ましくは10.00質量%以下である。当該含有量をこれら範囲とすることで、潤滑油組成物の粘度を所望の値にしやすくなる。
また、前記粘度指数向上剤は、樹脂分として、例えば、前述のポリマーを含むものであるが、通常はハンドリング性や前述の基油への溶解性を考慮し、ポリマーを含む樹脂分が鉱油等の希釈油により希釈された溶液の状態で市販されていることが多い。当該粘度指数向上剤の樹脂分濃度としては、粘度指数向上剤の全量基準で、通常10質量%以上50質量%以下である。
この場合、粘度指数向上剤の含有量は、樹脂分換算での含有量として、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、そして、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.50質量%以下、更に好ましくは1.30質量%以下である。
前記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−アミル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、n−オクチル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−チオ[ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−,C7−C9側鎖アルキルエステルが挙げられる。
これらの中では、好ましくはビスフェノール系又はエステル基含有フェノール系であり、より好ましくはエステル基含有フェノール系であり、更に好ましくはベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−,C7−C9側鎖アルキルエステルである。また、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記フェノール系酸化防止剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上であり、そして、好ましくは3.00質量%以下、より好ましくは2.50質量%以下、更に好ましくは2.00質量%以下である。
前記アミン系酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3以上20以下のアルキル基を有するモノアルキルジフェニルアミン若しくは炭素数3以上20以下のアルキル基を有するジアルキルジフェニルアミン等のジフェニルアミン系のもの;α−ナフチルアミン、炭素数3以上20以下のアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系のものが挙げられる。具体的には、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系;ジブチルジフェニルアミン、ジペンチルジフェニルアミン、ジヘキシルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン;テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系;及びα−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、更にはブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン;等が挙げられる。
これらの中では、好ましくはジアルキルジフェニルアミン系又はナフチルアミン系、より好ましくはジアルキルジフェニルアミン系、更に好ましくは4,4’−ジノニルジフェニルアミンである。また、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記アミン系酸化防止剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上、更に好ましくは0.50質量%以上であり、そして、好ましくは3.00質量%以下、より好ましくは2.50質量%以下、更に好ましくは2.00質量%以下である。
なお、前記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤とを併用することで、フェノール系酸化防止剤は主として酸化の初期に対してより効果的に作用し、アミン系酸化防止剤と併用することで、相乗効果によって、各々を単独で使用する場合よりも、より長い期間、酸化安定性及び摩擦低減効果を保つことが可能となる。
また、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤以外の酸化防止剤としては、モリブデンアミン錯体系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤、ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、潤滑油の酸化防止剤として使用されている公知の酸化防止剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記有機ジチオリン酸亜鉛としては、特に制限されないが、例えば、下記の一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
一般式(III)中、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立に、炭素数1以上24以下のヒドロカルビル基を表す。
当該炭素数1以上24以下のヒドロカルビル基としては、炭素数1以上24以下の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3以上24以下の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5以上13以下のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6以上18以下のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、及び炭素数7以上19以下のアリールアルキル基のいずれかであるが、これらの中ではアルキル基が好ましく、炭素数3以上22以下の第1級又は第2級のアルキル基がより好ましい。
前記有機ジチオリン酸塩としては、好ましくはジアルキルジチオリン酸亜鉛であり、より好ましくは第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記有機ジチオリン酸亜鉛の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.50質量%以上、より更に好ましくは0.80質量%以上であり、また、好ましくは20.00質量%以下、より好ましくは15.00質量%以下、更に好ましくは10.00質量%以下、より更に好ましくは5.00質量%以下である。
前記有機ジチオリン酸亜鉛は、酸化防止剤としての機能も兼ね備えている。当該有機ジチオリン酸亜鉛が酸化を防止する作用機構の一部が、前述の酸化防止剤とは異なる作用機構であることから、前記酸化防止剤とともに当該有機ジチオリン酸亜鉛を併用することが好ましい。具体的には、前述のフェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤は、連鎖停止型の酸化防止剤であるが、当該有機ジチオリン酸亜鉛は、連鎖停止型の作用も有しつつ、主としてパーオキサイドを分解することにより酸化を防止する作用を有している。連鎖停止型の酸化防止剤は、ハイドロパーオキサイドの生成を抑制するが、生成したハイドロパーオキサイドに対しては効果を奏しないことから、当該有機ジチオリン酸亜鉛と前記酸化防止剤とを併用することによって、相乗効果が得られ、より優れた酸化防止性能を奏することができる。
前記無灰分散剤としては、数平均分子量(Mn)が900以上3,500以下のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド(ポリブテニルコハク酸モノイミド、ポリブテニルコハク酸ビスイミド等)、ポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、及びこれらのホウ酸変性物(ポリブテニルコハク酸モノイミドホウ素化物等)等の誘導体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該無灰分散剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは1.00質量%以上、更に好ましくは2.00質量%以上であり、そして、好ましくは15.00質量%以下、より好ましくは12.00質量%以下、更に好ましくは10.00質量%以下である。
前記無灰系摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸と脂肪族多価アルコールとの反応により得られる部分エステル化合物等のエステル系摩擦調整剤を使用する。前記脂肪酸は好ましくは炭素数6以上30以下の直鎖状又は分岐状炭化水素基を有する脂肪酸であり、該炭化水素基の炭素数はより好ましくは8以上24以下、更に好ましくは10以上20以下である。また、前記脂肪族多価アルコールは2価以上6価以下のアルコールであり、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該無灰系摩擦調整剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
前記極圧剤としては、例えば、硫化オレフィン、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィド等の硫黄系化合物、リン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該極圧剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
前記防錆剤としては、例えば、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミド等のアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエート等の多価アルコール部分エステル、ロジンアミン、N−オレイルザルコシン等のアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が使用可能である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該防錆剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは5.0質量%、より好ましくは2.0質量%以下である。
前記金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体が挙げられる。これらの金属不活性化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該金属不活性化剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上であり、そして、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
前記流動点降下剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート系(PMA系;ポリアルキル(メタ)アクリレート等)、ポリビニルアセテート、ポリブテン、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、ポリメタクリレート系が好ましく用いられる。これらの流動点降下剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該流動点降下剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
前記消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン、ポリアクリレート等が挙げられる。これらの消泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該消泡剤の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.0002質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.0500質量%以上であり、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.13質量%以下、更に好ましくは0.10質量%以下である。
<内燃機関用潤滑油組成物の性状等>
前記潤滑油組成物中の塩素原子(Cl)含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは2.00質量ppm以下、より好ましくは1.50質量ppm以下、更に好ましくは1.40質量ppm以下、より更に好ましくは1.00質量ppm以下である。また、当該含有量が2.00質量ppm以下であると、潤滑油組成物の耐水性及び水分混入時の耐久性が良好となる。
また、当該塩素原子含有量の下限値としては、特に制限はなく、例えば、塩素原子を含有しないことが好ましく、塩素原子を含有する場合は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.1質量ppm以上である。
また、前記潤滑油組成物中の成分(B)の含有量と塩素原子(Cl)含有量と、成分(B)との比〔成分(B)/(Cl)〕は、質量比で、好ましくは3,000以上、より好ましくは4,000以上、更に好ましくは8,000以上であり、より更に好ましくは10,000以上であり、また、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、更に好ましく13,000以下である。当該比が3,000以上であると、潤滑油組成物の水分混入時の耐久性がより向上する。また、当該比が20,000以下であると、潤滑油組成物の水分混入時の耐久性が良好となる。
前記潤滑油組成物中のカルシウム原子(Ca)含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは500質量ppm以上、より好ましくは800質量ppm以上、更に好ましくは1,000質量ppm以上であり、また、好ましくは2,000質量ppm以下、より好ましくは1,800質量ppm以下、更に好ましくは1,500質量ppm以下である。当該含有量が500質量ppm以上であると、潤滑油組成物の清浄性がより向上する。また、当該含有量が2,000質量ppm以下であると、潤滑油組成物の灰分を低減することができる。
前記潤滑油組成物中のマグネシウム原子(Mg)含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは200質量ppm以上、より好ましくは300質量ppm以上、更に好ましくは400質量ppm以上であり、また、好ましくは1,000質量ppm以下、より好ましくは800質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下である。当該含有量が200質量ppm以上であると、潤滑油組成物の清浄性がより向上する。また、当該含有量が1,000質量ppm以下であると、潤滑油組成物の灰分を低減することができる。
前記潤滑油組成物中のモリブデン原子(Mo)含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは30質量ppm以上、より好ましくは40質量ppm以上、より更に好ましくは50質量ppm以上であり、また、好ましくは800質量ppm以下、より好ましくは400質量ppm以下、更に好ましくは200質量ppm以下、より更に好ましくは150質量ppm以下である。当該含有量が30質量ppm以上であると、潤滑油組成物の摩擦低減作用がより向上する。また、当該含有量が800質量ppm以下であると、潤滑油組成物の清浄性が良好となる。
前記潤滑油組成物中の硫黄原子(S)含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.15質量ppm以上であり、また、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下、更に好ましくは0.30質量%以下である。当該含有量が0.05質量%以上であると、潤滑油組成物の摩擦低減作用がより向上する。
また、前記潤滑油組成物中、カルシウム原子(Ca)含有量とモリブデン原子(Mo)含有量との比〔(Ca)/(Mo)〕は、質量比で、好ましくは2.00以上、より好ましくは2.30以上、更に好ましくは2.50以上であり、また、好ましくは3.50以下、より好ましくは3.20以下、更に好ましくは2.90以下である。
前記潤滑油組成物中、マグネシウム原子(Mg)含有量とモリブデン原子(Mo)含有量との比〔(Mg)/(Mo)〕は、質量比で、好ましくは3.50以上、より好ましくは4.00以上、更に好ましくは4.30以上であり、また、好ましくは5.50以下、より好ましくは5.20以下、更に好ましく4.90以下である。
また、前記潤滑油組成物の塩基価(塩酸法)は、好ましくは4.80mgKOH/g以上、より好ましくは5.00mgKOH/g以上、更に好ましくは5.30mgKOH/g以上、より更に好ましくは5.50mgKOH/g以上であり、また、好ましくは10.0mgKOH/g以下、より好ましくは9.00mgKOH/g以下、更に好ましくは8.00mgKOH/g以下、より更に好ましくは7.00mgKOH/g以下である。当該塩基価が4.80mgKOH/g以上であると、清浄性に優れる。
当該塩基価の値は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
また、後述する実施例に記載の耐水性試験後の前記潤滑油組成物の塩基価(塩酸法)は、好ましくは4.70mgKOH/g以上、より好ましくは4.80mgKOH/g以上、更に好ましくは5.00mgKOH/g以上、より更に好ましくは5.40mgKOH/g以上であり、また、好ましくは9.00mgKOH/g以下、より好ましくは8.00mgKOH/g以下、更に好ましくは7.00mgKOH/g以下、より更に好ましくは6.00mgKOH/g以下である。当該塩基価が4.70mgKOH/g以上であると、水分混入時の清浄性に優れる。
また、後述する実施例に記載の方法で評価される前記潤滑油組成物の塩基価維持率は、好ましくは5.0%以上、より好ましくは6.0%以上、更に好ましくは6.5%以上、より更に好ましくは7.0%以上、より更に好ましくは8.0%以上である。当該塩基価維持率が5.0%以上であると、前記潤滑油組成物の水分混入時の耐久性が優れる。
[内燃機関用潤滑油組成物の製造方法]
本発明の一実施形態である内燃機関用潤滑油組成物の製造方法は、基油と、過塩基性カルシウムスルホネート(A)と、過塩基性マグネシウム清浄剤(B)とを配合する、内燃機関用潤滑油組成物の製造方法であって、成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下である。
また、当該製造方法では、基油に成分(A)及び成分(B)以外の成分を更に配合してもよく、好ましくは、更に成分(C)を配合する。また、当該製造方法では、基油に成分(A)〜(C)以外のその他成分を更に配合してもよい。
基油、成分(A)〜(C)、及びその他成分のそれぞれは、前記潤滑油組成物について説明したものと同様であるとともに、それぞれの好適な態様も同様であり、当該製造方法で得られる潤滑油組成物も前述した通りであるため、それらの記載は省略する。
当該製造方法では、前記成分(A)〜(C)及びその他成分は、いかなる方法で基油に配合されてもよく、その手法は限定されない。
[内燃機関用潤滑油組成物の用途]
前記潤滑油組成物は、好ましくは二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として使用することができ、当該内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する潤滑する潤滑油として使用されるものである。
前記潤滑油組成物は、より好ましくは後述するハイブリッドシステムを採用した車両に搭載される内燃機関に用いることができ、更に好ましくは後述するハイブリッドシステムを採用した車両及び船舶等に搭載される内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する潤滑油として使用されるものである。
また、前記潤滑油組成物は、より好ましくは、メタノール、エタノール等のアルコール燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に用いることができ、更に好ましくはメタノール、エタノール等のアルコール燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する潤滑油として使用されるものである。
なお、アルコール燃料を含有する燃料中、当該アルコールの含有量は、好ましくは40体積%以上、より好ましくは70体積%以上、更に好ましくは90体積%以上である。
また、前記内燃機関用潤滑油組成物は、より好ましくは、バイオ燃料及び/又はバイオディーゼル燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に用いることができ、更に好ましくはバイオ燃料及び/又はバイオディーゼル燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する潤滑油として使用されるものである。
なお、バイオ燃料及び/又はバイオディーゼル燃料を含有する燃料中、当該バイオ燃料及び/又はバイオディーゼル燃料の合計含有量は、好ましくは40体積%以上、より好ましくは70体積%以上、更に好ましくは90体積%以上である。
なお、バイオ燃料としては、例えば、バイオメタノール、バイオエタノール、バイオエチル−tert−ブチルエーテル、及びセルロース系エタノールが挙げられる。
また、バイオディーゼル燃料としては、例えば、脂肪酸メチルエステル、植物及び獣脂等の原料油脂を石油精製の水素化処理技術を応用して分解・精製した水素化処理油、又はバイオマスの熱分解ガスをフィッシャートロプシュ法による一酸化炭素と水素とから触媒反応を用いて液体炭化水素を合成させてつくる合成油を配合した燃料が挙げられる。
[内燃機関用潤滑油組成物を用いる潤滑方法]
したがって、本発明の一実施形態である内燃機関用潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、前記潤滑油組成物を、例えば、二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関、後述するハイブリッドシステムを採用した車両及び船舶等に搭載される内燃機関、又はエタノール等のアルコール燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられ、好ましくは後述するハイブリッドシステムを採用した車両及び船舶等に搭載される内燃機関、エタノール等のアルコール燃料を含有する燃料を用いる内燃機関、又は前記バイオ燃料若しくは前記バイオディーゼル燃料を用いる内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
[内燃機関用潤滑油組成物を用いる内燃機関]
本発明の他の実施形態としては、前記潤滑油組成物を用いた内燃機関であり、好ましくは前記潤滑油組成物をエンジン油として用いた内燃機関(エンジン)である。当該内燃機関としては、例えば、二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等に搭載されるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等が挙げられる。
本発明の他の実施形態としては、前記潤滑油組成物を用いた内燃機関及び電動機を動力源として有するハイブリッドシステムであり、好ましくは前記潤滑油組成物をエンジン油として用いたエンジン及び電気モーターを有するハイブリッドシステムである。当該ハイブリッドシステムを有するものとしては、例えば、ハイブリッド自動車、ハイブリッド2輪車、ハイブリッドトレイン、ハイブリッド船舶等が挙げられる。
また、本発明の他の実施形態としては、前記潤滑油組成物を用いた内燃機関であって、アルコール燃料を使用する内燃機関である。当該内燃機関は、好ましくは前記潤滑油組成物をエンジン油として用い、アルコール燃料を使用するエンジンである。当該アルコール燃料を使用するエンジンとしては、例えば、自動車、2輪車、トレイン、船舶等に搭載されるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等が挙げられる。
また、本発明の他の実施形態としては、前記潤滑油組成物を用いた内燃機関であって、前記バイオ燃料若しくは前記バイオディーゼル燃料を使用する内燃機関である。当該内燃機関は、好ましくは前記潤滑油組成物をエンジン油として用い、前記バイオ燃料若しくは前記バイオディーゼル燃料を用いる内燃機関を使用するエンジンである。当該前記バイオ燃料若しくは前記バイオディーゼル燃料を用いる内燃機関を使用するエンジンとしては、例えば、自動車、2輪車、トレイン、船舶等に搭載されるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等が挙げられる。
以下に、本発明を、実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
本明細書において、各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の各物性の測定は、以下に示す要領に従って求めたものである。
<動粘度(40℃動粘度、100℃動粘度)>
JIS K2283:2000に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定した値である。
<粘度指数>
JIS K2283:2000に準拠して測定した値である。
<NOACK蒸発量>
ASTM D5800(250℃、1時間)に規定の方法に従って測定した値である。
<環分析(%C及び%C)>
環分析n−d−M法にて算出した芳香族(アロマティック)分の割合(百分率)を%C、パラフィン分の割合(百分率)を%Cとして示し、ASTM D−3238に従って測定したものである。
<塩基価(塩酸法)>
JIS K2501:2003に準拠して、電位差滴定法(塩基価・塩酸法)により測定した。
<塩素原子(Cl)の含有量>
JPI−5S−64−2002に準拠して測定した値である。
<金属分:カルシウム原子(Ca)、マグネシウム原子(Mg)、モリブデン原子(Mo)、リン原子(P)、亜鉛原子(Zn)、及びホウ素原子(B)の含有量>
JPI−5S−38−2003に準拠して測定した。
<硫黄原子(S)の含有量>
JIS K2541−6に準拠して測定した値である。
<窒素原子(N)の含有量>
JIS K2609:1998に準拠して、化学発光法により測定した値である。
<SSI(せん断安定性指数)>
ASTM D6278に準拠して測定した。
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(アジレント社製、「1260型HPLC」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「Shodex LF404」を2本、順次連結したもの
・カラム温度:35℃
・展開溶媒:クロロホルム
・流速:0.3mL/min
各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の評価方法は、以下の通りである。
[耐水性試験]
試料油130g、蒸留水3.3gと秤量した銅板をガラス瓶に入れ密閉した。このガラス瓶を62℃に保った恒温槽に入れ、一回転中に一度逆さまになる方向に5rpmで24時間回転させた。当該操作後の試料油の塩基価(塩酸法)を前記方法と同様の方法を用いて測定した。銅板の材質はC1100P、サイズは51mm(長さ)×13mm(幅)×1mm(厚さ)の物を新生面が出るまで研磨して用いた。
[耐久性評価:耐水NOx試験]
ガラス管に耐水性試験後の試料油100gを入れ、油温を140℃に調整した。空気流量:100mL/分と、一酸化窒素(NO)を窒素で希釈したもの(NO濃度:8,000体積ppm)流量100mL/分とを混合して、油温140℃の当該試料油中に導入し、20時間かけてNOx劣化油を作成した。
当該NOx劣化油の塩基価(塩酸法)を前記方法と同様の方法を用いて測定した。
得られた結果から、下記式に基づいて、塩基価維持率を算出した。
塩基価維持率(%)=(耐水NOx試験後のNOx劣化油の塩基価/耐水性試験前の試料油の塩基価)×100
[実施例1〜3、比較例1及び2]
下記の表2に示す組成となるように、基油に各成分を配合して、内燃機関用潤滑油組成物を調製後、前記評価方法に従って、各実施例及び各比較例の組成物を評価した。得られた結果を下記表2に示す。
なお、下記表2に示す各成分は、それぞれ以下の化合物を表す。
<基油>
・潤滑油基油:水素化精製基油(鉱油)、40℃動粘度19.2mm/s、100℃動粘度4.2mm/s、粘度指数126、硫黄含有量2質量ppm未満、NOACK蒸発量13.9質量%、n−d−M環分析;%C79.6、%C=0
<過塩基性カルシウムスルホネート:成分(A)>
・過塩基性カルシウムスルホネート:塩基価(塩酸法)304mgKOH/g、カルシウム含有量11.7質量%、硫黄含有量1.6質量%、石けん基のアルキル基構造が分岐状アルキル基(アルキル基の主炭素数16)
<マグネシウム清浄剤:成分(B)及びその他マグネシウム清浄剤>
(成分(B))
・マグネシウム清浄剤(1):過塩基性マグネシウムサリシレート
・マグネシウム清浄剤(2):過塩基性マグネシウムスルホネート
・マグネシウム清浄剤(3):過塩基性マグネシウムスルホネート
(その他マグネシウム清浄剤)
・マグネシウム清浄剤(4):過塩基性マグネシウムサリシレート
・マグネシウム清浄剤(5):過塩基性マグネシウムサリシレート
なお、前記各マグネシウム清浄剤の性状を、下記表1に示す。
<有機モリブデン化合物:成分(C)>
・有機モリブデン化合物:「Infineum C9455B」(商品名、Infineum社製)、一般式(c12−1)で示される三核モリブデンジチオカルバメート、モリブデン含有量5.5質量%、硫黄含有量9.9質量%
<その他成分>
・粘度指数向上剤:ポリアルキル(メタ)アクリレート、重量平均分子量(Mw)38万、SSI=20(潤滑油組成物全量基準で樹脂分として1.16質量%配合)
・ジアルキルジチオリン酸亜鉛:一般式(III)中のR41〜R44が、第2級プロピル基と第2級ヘキシル基の混合物〔亜鉛含有量7.85質量%、リン含有量7.2質量%、硫黄含有量14.4質量%〕(潤滑油組成物全量基準で1.10質量%配合)
・ポリブテニルコハク酸モノイミドホウ素化物:ポリブテニル基の数平均分子量(Mn)1,000、窒素原子含有量1.23質量%、ホウ素含有量1.30質量%、塩素原子含有量0.06質量%(潤滑油組成物全量基準で2.00質量%配合)
・ポリブテニルコハク酸ビスイミド:ポリブテニル基の数平均分子量(Mn)1,300、窒素原子含有量0.99質量%、塩素原子含有量0.01質量%以下(潤滑油組成物全量基準で2.50質量%配合)
・消泡剤:ジメチルシリコーン(潤滑油組成物全量基準で0.10質量%配合)
・流動点降下剤:ポリアルキル(メタ)アクリレート(潤滑油組成物全量基準で0.20質量%配合)
・フェノール系酸化防止剤(潤滑油組成物全量基準で0.50質量%配合)
・アミン系酸化防止剤(潤滑油組成物全量基準で0.80質量%配合)
・金属不活性化剤:ベンゾトリアゾール(潤滑油組成物全量基準で0.20質量%配合)
・希釈油(潤滑油組成物全量基準で0.37質量%配合)
表3に示すとおり、実施例1〜3の潤滑油組成物は、塩素原子含有量が成分(B)全量基準で400質量ppm以下である成分(B)を含むため、比較例1又は2に記載の潤滑油組成物に対して、耐水性試験後の塩基価の値が高く、また、耐水NOx試験後の塩基価維持率が高いことが確認された。
前記本発明の一実施形態である内燃機関用潤滑油組成物は、耐水性及び水分混入時の耐久性に優れる。そのため、ハイブリッドシステムを採用した車両に搭載される内燃機関に好適に用いることができ、より好ましくはハイブリッドシステムを採用した車両及び船舶等に搭載される内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する潤滑油として使用されるものである。
また、前記内燃機関用潤滑油組成物は、メタノール、エタノール等のアルコール燃料を含有する燃料を用いる内燃機関にも好適に用いることができ、より好ましくはメタノール、エタノール等のアルコール燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する潤滑油として使用されるものである。
また、前記内燃機関用潤滑油組成物は、バイオ燃料及び/又はバイオディーゼル燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に好適に用いることができ、より好ましくはバイオ燃料及び/又はバイオディーゼル燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する潤滑油として使用されるものである。

Claims (10)

  1. 基油と、
    過塩基性カルシウムスルホネート(A)と、
    過塩基性マグネシウム清浄剤(B)とを含有し、
    成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下である、内燃機関用潤滑油組成物。
  2. 成分(B)が、過塩基性マグネシウムスルホネート、過塩基性マグネシウムサリシレート、及び過塩基性マグネシウムフェネートからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  3. 成分(A)の塩酸法により測定される塩基価が、200mgKOH/g以上である、請求項1又は2に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  4. 成分(B)の塩酸法により測定される塩基価が、200mgKOH/g以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  5. 成分(B)が直鎖アルキル基又は分岐アルキル基を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  6. 更に、成分(C)として、有機モリブデン化合物を含み、モリブデン原子換算での成分(C)の含有量が潤滑油組成物全量基準で50質量ppm以上400質量ppm未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  7. 塩基価維持率が5.0%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  8. ハイブリッドシステムを採用した車両に搭載される内燃機関に用いられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  9. アルコール燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に用いられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  10. 潤滑油組成物中の塩素原子含有量(Cl)と、潤滑油組成物中の成分(B)の含有量との比〔成分(B)/(Cl)〕が、質量比で、3,000以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
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