以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明はそれらの例示に限定されない。なお、以下の説明において、部材等の方向(たとえば上下)について説明する場合、本発明の水素ガス生成装置を使用状態の配置においたときの方向について説明する。
(水素ガス生成装置)
本発明の水素ガス生成装置について以下に説明する。以下では、本発明の水素ガス生成装置を単に本発明の装置と称する場合がある。本発明の水素ガス生成装置は、少なくとも1つの電気分解ユニット、槽、第1の流路、および、水素ガス放出機構を含む。電気分解ユニットは、陽極と陰極とを含み、水を電気分解するためのユニットである。槽は、電気分解ユニットに供給される水性液体を保持する槽である。第1の流路は、陰極で生成された水素ガスが流れる流路であって、水素ガスが流れる水素ガス流路が下流に接続される流路である。水素ガス流路は、第1の流路に直接接続されていてもよいし、他の部材を介して第1の流路の下流に接続されてもよい。槽は、槽内のガスを水素ガス生成装置の外部へ放出するためのガス放出口を有する。水素ガス放出機構(水素ガス放出部材)は、上記水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制(たとえば遮断)されたときに、水素ガスを上記槽内に流すことによってガス放出口から水素ガスを放出する機構(部材)である。
水素ガス流路における水素ガスの流れが不適切に抑制されていない状態(たとえば遮断されていない状態)における駆動を、以下では「通常駆動」と称する場合がある。通常駆動時においては、陰極で生成された水素ガスは、第1の流路を通って水素ガス流路に流れる。しかし、水素ガス流路における水素ガスの流れが過剰に抑制された場合、第1の流路を通って流れるガスは、水素ガス放出機構によって槽内に流される。槽内に流された水素ガスは、ガス放出口から装置外部へ放出される。そのため、水素ガス流路における水素ガスの流れが過剰に抑制された場合でも、装置内の水素ガスの圧力が過剰に高くなることを防止できる。
本発明の装置において、槽は、陽極に供給される水性液体を保持する第1の槽を含んでもよい。第1の槽は、第1の槽内のガスを水素ガス生成装置の外部へ放出するためのガス放出口を有してもよい。この場合の一例では、水素ガス放出機構は、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制されたときに、第1の流路を通って流れる水素ガスを第1の槽内に流す。槽は、第1の槽のみからなるものであってもよい。あるいは、槽は、陽極に供給される水性液体を保持する第1の槽と、陰極に供給される水性液体を保持する第2の槽と含んでもよい。
本発明の装置の典型的な一例は、電気分解ユニットと、陽極が配置される陽極室と、陰極が配置される陰極室と、を含む電気分解セルを含み、電気分解ユニットは、陽極と陰極とを含む膜電極接合体であり、第1の流路は陰極室に接続されている。この一例のように、電気分解ユニットは膜電極接合体であってもよい。膜電極接合体を用いる本発明の水素ガス生成装置を、以下では、装置(Da)という場合がある。装置(Da)において、槽(第1の槽)は、陽極室に供給される水性液体を保持する水タンクであってもよい。以下では、装置(Da)における第1の槽を、「水タンク」と称する場合がある。以下の記載において、趣旨に反しない限り、第1の槽を水タンクと読み替えることができ、水タンクを第1の槽と読み替えることができる。
装置(Da)の一例は、水を電気分解するための膜電極接合体を含み陰極室と陽極室とを備える電気分解セルと、陽極室に供給される水を保持する水タンクと、陰極室に接続され、陰極室で生成された水素ガスが流れる第1の流路であって水素ガスが流れるガス流路が下流に接続される第1の流路と、を含み、水タンクは、水タンク内のガスを水素ガス生成装置の外部へ放出するためのガス放出口を有する。当該一例の装置(Da)は、ガス流路における水素ガスの流れが抑制されたときに、第1の流路を通って流れる水素ガスを水タンク内に流すガス放出機構を有する。
装置(Da)において、陽極室は、流路によって水タンクに接続されていてもよいし、水タンクに直結されていてもよいし、水タンク内に配置されていてもよい。いずれの場合も、水タンクの内部と陽極室とが接続されているとみなすことが可能である。
装置(Da)において、第1の流路は、陰極室のうち下方に接続されることが好ましい。陽極室に水を供給すると、供給された水の一部は、膜電極接合体を通って陰極室に移動する。陰極室に水が溜まると、陰極において生成された水素ガスが陰極室から放出されるときに水を押し出す抵抗が高くなる。その結果、陰極室内に水が残りやすく水素ガスが抜けにくくなり、反応速度が低下する可能性がある。そのため、陰極室内の水を陰極室から随時排出することが好ましい。陰極室の下部に第1の流路を接続することによって、陰極室で生成された水素ガスと共に、陰極室内の水を陰極室の外部に排出することができる。すなわち、水素ガスおよび水が、第1の流路を流れてもよい。水素ガスとともに水が第1の流路を流れやすくするために、第1の流路の内部の断面積(流れに垂直な断面積)をある程度小さくしてもよい。たとえば、第1の流路の内部の断面積を3mm2〜80mm2の範囲としてもよい。
本発明の装置は、第1の流路の下流に接続される水素ガス流路を含んでもよいし含まなくてもよい。すなわち、水素ガス流路は、本発明の装置に接続されるものであってもよい。本発明の装置は、水素ガス流路が接続される接続具を含んでもよいし含まなくてもよい。水素ガス流路または水素ガス流路の接続具は、第1の流路に直接接続されてもよいし、間接的に接続されてもよい。
水性液体の例には、水および水溶液が含まれる。水タンク(第1の槽)は、水性液体を保持できるものであればよく、たとえば樹脂製の水タンクを用いてもよい。水タンクには、水タンクに水を供給するための供給口が設けられていてもよい。供給口は、水が入ったボトル(容器)の接続部(開口部を有する端部)が嵌合するものであってもよい。その場合、供給口は、水タンクの水が減ったときにボトルから自動的に水が供給される水供給機構を有してもよい。水供給機構は、たとえば、水タンク内の水が減ったときに水タンクとボトルとの間を結ぶ流路を開口させる機構を有してもよい。そのような水供給機構の一例は、水タンク内の水位に連動して変位するフロートを含む。このフロートは、水タンクとボトルとの間を結ぶ流路を開閉する弁として機能してもよい。あるいは、水供給機構は、フロートの位置に応じて流路を開閉する弁をさらに含んでもよい。
槽(たとえば第1の槽)には、槽内のガスを装置の外部に放出するためのガス放出口が設けられている。装置が傾いたときや装置が揺れたときに槽内の水がガス放出口から漏れないように、ガス放出口またはそれに接続されたガス放出路には、水漏れ防止のための機構が設けられてもよい。たとえば、ガス放出口またはガス放出路には、水タンク内の圧力が所定値以上となったときに開きそれ以外のときには閉じている弁(圧力逃がし弁)が設けられていてもよい。ガス放出口またはガス放出路には、気体は透過させるが液体の透過を抑制する部材(撥水性濾紙、気液分離膜、多孔質体など)を配置してもよい。槽の内側に向かって突出する凸部(縦壁)が、ガス放出口の周囲を囲むように設けられていてもよい。
装置(Da)において、膜電極接合体の劣化を抑制するために、水タンク(第1の槽)から陽極室に供給される水性液体は、金属イオンを含まない水であることが好ましく、脱イオン水であってもよい。脱イオン水としては、一般的な脱イオン水や純水を用いてもよい。たとえば、電気伝導率を1.3μS/cm以下とした水(脱イオン水)を用いることが好ましい。H+で置換された陽イオン交換樹脂と、OH-で置換された陰イオン交換樹脂とを、それぞれ適当量準備し、それらを混合して袋に詰めて水タンク内に入れておいてもよい。これによって、水タンク内のイオン濃度(電気伝導率)を低下させることが可能である。
装置(Da)においてイオン交換樹脂を用いない場合、槽(たとえば第1の槽)の中の水を長期間交換せずに装置を使用すると、装置内の部材の不純物などが水に溶出する。このような不純物が過剰になると、水の汚染や電気分解セル(膜電極接合体)の劣化をもたらす可能性もある。そのため、定期的に、槽内の水を廃棄して新しい脱イオン水に交換することが好ましい。このような交換を定期的に行うことによって、イオン交換樹脂を用いなくても、槽内の水の金属イオン濃度および不純物濃度の上昇を抑制できる。すなわち、本発明の装置は、イオン交換樹脂を含まなくてもよい。イオン交換樹脂を含まない場合、イオン交換樹脂のメンテナンスが不要となるとともに、装置を小型化することが可能である。
装置(Da)において、電気分解セル(膜電極接合体)の内部を殺菌するために、任意の時期に、次亜塩素酸を含む水(洗浄水)で電気分解セル内部を洗浄してもよい。膜電極接合体の劣化を抑制するために、洗浄水は金属イオンを含まないことが好ましい。洗浄水の好ましい一例には、塩素ガスを脱イオン水に溶解させることによって調製された洗浄水が含まれる。塩素ガスを水に溶解させることによって、次亜塩素酸が生じる。たとえば、有効塩素濃度が1ppm〜10ppmの洗浄水を用いる場合、電気分解を行うことなく洗浄水で電気分解セルの内部を洗浄してもよい。洗浄後は、洗浄水を排出し、脱イオン水で電気分解セルの内部を洗浄してもよい。あるいは、有効塩素濃度が0.1〜0.5ppmの洗浄水を用いる場合、当該洗浄水を電気分解セルで電気分解する洗浄運転を、任意の時期(たとえば月に1回程度)に行ってもよい。あるいは、より低濃度の洗浄水を、通常の運転時に電気分解する水として用いてもよい。
装置(Da)において、陽極室は、流路によって水タンクに接続されてもよい。好ましい一例では、陽極室の下部と水タンクとを結ぶ第2の流路と、陽極室の上部と水タンクとを結ぶ第3の流路とによって、陽極室と水タンクとが接続される。この場合、第2の流路を通じて、水タンクから陽極室に水が供給される。通常、水タンクは、電気分解セルと同じかそれ以上の高さに配置される。第3の流路は、陽極室で生成された酸素ガスが、その浮力によって自然に水タンク内に移動するように配置されてもよい。たとえば、第3の流路は、水タンクに向かって上昇するように配置されていてもよい。電気分解セルで水が電気分解されると、陽極室では酸素ガスが生成される。その酸素ガスは、第3の流路を通って水タンク内に流れる。このとき、酸素ガスと共に、陽極室内の水も第3の流路を通じて水タンクに流れる。その結果、水タンク、第2の流路、陽極室、および第3の流路という順に水が流れる循環流が生じる。すなわち、好ましい一例では、電気分解セル、水タンク、第2および第3の流路は、陽極室で生成された酸素ガスの浮力によって上記循環流が生じるように配置される。
生成された水素ガスを液体に溶解させることによって、溶存水素濃度が高い液体(たとえば水)が得られる。また、生成された水素ガスを吸入その他の用途に用いてもよい。たとえば、水素ガスを液体に溶解させ、溶解しなかった水素ガスを吸入その他の用途に用いてもよい。
本発明の装置を使用している際に、何らかの理由によって水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制される場合がある。たとえば、水素ガス流路であるチューブが折れ曲がったときには、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制される。そのような場合に、生成される水素ガスを、上述した水素ガス放出機構によって放出することが可能である。
本発明の装置は、複数の電気分解セルを含んでもよい。それらの陰極室に接続される複数の第1の流路は、下流で結合されていてもよいし、結合されていなくてもよい。
膜電極接合体の典型的な一例は、陽極と陰極との間に配置された高分子電解質層を含む。陽極および陰極はそれぞれ、陽極室および陰極室に配置される。膜電極接合体に特に限定はなく、燃料電池(たとえば固体高分子形燃料電池)に用いられている膜電極接合体を用いることができる。すなわち、電気分解セルとして、燃料電池(たとえば固体高分子形燃料電池)を用いることができ、市販の固体高分子形燃料電池を用いてもよい。膜電極接合体(燃料電池)を用いることによって、装置を大幅に小型化することが可能である。
燃料電池を電気分解セルとして用いる場合、燃料電池の正極となる側の電極(空気極)を電気分解セルの陽極として用い、燃料電池の負極となる側の電極(燃料極)を電気分解セルの陰極として用いる。固体高分子形燃料電池では、空気極(正極)において酸素と水素イオンと電子とが反応して水が生成され、燃料極(負極)において水素分子から水素イオンと電子とが生成される。本発明では、空気極が陽極となり燃料極が陰極となるように両者の間に電圧を印加することによって、水を電気分解する。すなわち、空気極(陽極)には電源の正極が接続され、陰極(燃料極)には電源の負極が接続される。このようにして水を電気分解することによって、陽極において酸素ガスが生成され、陰極において水素ガスが生成される。
電気分解ユニットが膜電極接合体である装置(Da)の一例について以下に説明する。この一例の装置において、槽は、陽極に供給される水性液体を保持する第1の槽と、陰極に供給される水性液体を保持する第2の槽とを含む。さらに、この一例の装置において、電気分解ユニットは、陽極と陰極とを含む膜電極接合体であり、第1の槽と第2の槽とが膜電極接合体で仕切られている。第1および第2の槽には、上述したように、金属イオンを含まない水(脱イオン水など)が配置されることが好ましい。なお、膜電極接合体として、複数の膜電極接合体が積層されたものを用いてもよい。
本発明の典型的な他の一例は、装置(Da)とは異なり、膜電極接合体を用いない。この一例の電気分解ユニットは、陽極と陰極との間に配置されたセパレータを含む。この電気分解ユニットを用いる本発明の水素ガス生成装置を、「装置(Db)」と称する場合がある。本発明の装置の一例(装置(Db)の一例)において、槽は、陽極に供給される水性液体を保持する第1の槽と、陰極に供給される水性液体を保持する第2の槽とを含み、電気分解ユニットは、陽極と陰極との間に配置されたセパレータを含み、第1の槽と第2の槽とがセパレータで仕切られている。
装置(Db)の電気分解ユニットの電極(陽極および陰極)には、水の電気分解が可能な電極が用いられる。電極は金属電極であってもよい。電極に用いられる金属の例には、チタン、ニッケル、白金、および電極に用いることが可能なその他の金属が含まれる。水の電気分解を容易にするために、電極の表面には白金が存在することが好ましい。好ましい電極の一例は、白金でコートされた金属(たとえばチタン)で構成された電極である。第1の電極と第2の電極とは、同じであってもよいし、異なってもよい。
装置(Db)の電極の形状に特に限定はないが、2次元状に広がる形状を有していることが好ましい。電極の形状の好ましい例には、複数の線状の電極がストライプ状に配置された形状、エキスパンドメタルの形状、およびメッシュ形状が含まれる。陽極と陰極とは、セパレータを挟んで対向するように配置される。
装置(Db)の電気分解ユニットのセパレータには、絶縁性のセパレータを用いることができる。セパレータは、水性液体を通過させる一方で、水性液体に浸漬された状態において気泡の通過を抑制するセパレータであることが好ましい。そのようなセパレータの例には、布状のセパレータが含まれ、たとえば、親水性の布(織布、不織布、その他の布)からなるセパレータが含まれる。親水性の布の例には、綿からなる布や、親水性樹脂の繊維からなる布が含まれる。セパレータは、イオン交換能を有さない材料で形成される。すなわち、セパレータはイオン交換膜ではない。ガスの通過を抑制するセパレータを用いることによって、陽極で生成された酸素ガスの気泡と陰極で生成された水素ガスの気泡とが混合されることを抑制できる。
装置(Db)において電解槽(第1の槽および第2の槽)に配置される水性液体は、電解液であり、たとえば塩が溶解された水溶液である。塩化物イオンを含む水溶液を電気分解すると、塩素ガスが発生することがある。塩素ガスの発生を避けるために、陰イオンとして硫酸イオン(SO4 2-)や燐酸イオン(PO4 3-)を含有する塩を溶解させた水溶液を用いてもよい。そのような水溶液の例には、リン酸塩水溶液(リン酸ナトリウム水溶液やリン酸カリウム水溶液、炭酸カリウムなど)が含まれる。
第1および第2の槽を有する本発明の装置において、第1の槽は、第1の槽内のガスを水素ガス生成装置の外部へ放出するためのガス放出口を有してもよい。この場合、水素ガス放出機構は、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制されたときに、水素ガスを第1の槽内に流すことによってガス放出口から水素ガスを放出できる。
第1および第2の槽を有する本発明の装置において、第2の槽は、第2の槽内のガスを水素ガス生成装置の外部へ放出するためのガス放出口を有してもよく、第1の槽は、陽極で生成された酸素ガスを水素ガス生成装置の外部へ放出するための酸素ガス放出口を有してもよい。この場合、水素ガス放出機構は、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制されたときに、水素ガスを第2の槽内に流すことによってガス放出口から水素ガスを放出できる。
上記本発明の装置において、水素ガス放出機構は、下部に開口部を有する管を含んでもよい。当該管を、以下では「管(T)」と称する場合がある。管(T)には、水素タンクを仕切って一部を管状としたものも含まれる。管(T)には、第1の流路と水素ガス流路とが接続される。なお、第1の流路と管(T)とは、第1の流路から管(T)にガスが流れるように接続されていればよく、直接接続されていてもよいし直接接続されていなくてもよい。同様に、管(T)と水素ガス流路とは、管(T)から水素ガス流路にガスが流れるように接続されていればよく、直接接続されていてもよいし直接接続されていなくてもよい。管(T)の内部と槽(たとえば第1の槽)の内部とは、管(T)の開口部を介して接続されている。当該開口部を、以下では「開口部(O)」と称する場合がある。この構成の一例では、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制されたときに、第1の流路を通って流れる水素ガスが開口部(O)を通って槽内に流れる。槽内に流れた水素ガスは、ガス放出口から放出される。
水素ガス流路が遮断された場合には、酸素ガスと水素ガスとが共に槽(たとえば第1の槽)内を流れる。このとき、酸素ガスと水素ガスとが異なるガス放出口から放出されるようにしてもよい。たとえば、槽内の少なくとも一部(たとえば上部)を区切って、酸素ガスと水素ガスとが異なるガス放出口から放出されるようにしてもよい。たとえば、酸素ガスを装置外部に放出するための酸素ガス放出口を第1の槽に形成し、水素ガスを装置外部に放出するための水素ガス放出口を第2の槽に形成してもよい。
この明細書において、管(T)の下部とは、管(T)の全体の高さをhとしたときに、管(T)の下端から上方に向かって高さh/2未満の領域を意味し、たとえば管(T)の下端から上方に向かって高さh/3以下の領域を意味する。一方、管(T)の上部とは、管(T)の上端から下方に向かって高さh/2未満の領域を意味し、たとえば管(T)の上端から下方に向かって高さh/3以下の領域を意味する。
管(T)の下部(管(T)の少なくとも下部)は、槽(たとえば第1の槽)の内部に配置されていてもよい。あるいは、管(T)の下部と槽(たとえば第1の槽)の内部とは、流路によって接続されていてもよい。これらの場合の2つの例の装置(第1および第2の例の装置)について、後述する。管(T)に特に限定はなく、管として機能するものであればよい。管(T)は、槽の一部を仕切って管状にしたものであってもよい。すなわち、管(T)は槽と一体となっていてもよいし、一体となっていなくてもよい。管(T)の断面形状は特に限定されない。一例の管(T)は、水素ガス放出機構および水トラップとして機能する。第1の流路を通って管(T)に到達した水が管(T)の下方に溜まりやすいように、管(T)を太めの管にしてもよく、たとえば第1の流路よりも太くしてもよい。管(T)を太くすることによって、管(T)内の上部にある水が、管(T)内の下部にある気体と置き換わって管(T)内を落下しやすくなる。
本発明の第1の例の装置では、第1の流路および水素ガス流路が共に管(T)の上部に接続されてもよい。この場合、第1の流路から流れてくる水を管(T)内に落下させ、実質的に水素ガスのみを水素ガス流路に流すことが可能である。すなわち、管(T)を水トラップとして利用することが可能である。管(T)の開口部(O)は槽と接続されているため、管(T)内を落下した水を、電気分解に利用することが可能である。この構成によれば、水を効率よく利用できる。なお、陽極では酸化分解が生じるため、陽極に接している液体(水や電解液など)を殺菌することが可能である。
本発明の第2の例の装置では、水素ガス流路が管(T)の上部に接続されてもよく、さらに、水素ガス流路と管(T)との接続部よりも下方の位置において第1の流路が管(T)に接続されていてもよい。この場合、第1の流路から流れてくる水を管(T)の下部に溜め、実質的に水素ガスのみを水素ガス流路に流すことが可能である。すなわち、管(T)を水トラップとして利用することが可能である。管(T)の開口部(O)は槽と接続されているため、管(T)内を落下した水を、電気分解に利用することが可能である。この場合、第1の流路は、管(T)の下部に接続されていてもよい。
管(T)に接続される水素ガス流路に気体のみが流れるように、水素ガス流路の断面積(内部空間の断面積)を、第1の流路の断面積よりも大きくしてもよい。
本発明の装置では、水素ガス放出機構が、槽(たとえば第1の槽)内に配置され下部に開口部(O)を有する管(T)を含み、当該管(T)(たとえば管(T)の上部)には水素ガス流路が接続されていてもよい。この場合、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制(たとえば遮断)されていないときに、第1の流路を通って流れる水素ガスが管(T)の開口部(O)を通って管(T)を流れるように、管(T)と第1の流路とが配置されていてもよい。この装置では、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制されたときに、管(T)内を水素ガスが流れなくなり、管(T)内が水素ガスで満たされる。その結果、水素ガスは、管(T)内を流れることなく槽内に流れる。
通常、管(T)の少なくとも下部は槽内の水性液体に浸かっている。そのため、第1の流路の開口部(端部)から放出された水素ガスは、水性液体の中において気泡となって管(T)を上昇する。このとき、水素ガスの気泡が目視しやすい大きさになるように、第1の流路の開口部の断面積を調整してもよい。たとえば、第1の流路の開口部の断面積は、1〜20mm2の範囲にあってもよい。
開口部(O)は、槽(たとえば第1の槽)内の液面(水位)の設定された下限よりも下に配置されていてもよい。以下では、設定された下限の液面(水位)を、「下限水位」と称する場合がある。開口部(O)を下限水位よりも下に配置することによって、通常駆動時に水素ガスが開口部(O)から槽に流れることを抑制できる。
本発明の装置は、槽(たとえば第1の槽)内の液面(水位)が上記下限水位に到達したことを検知する水位センサをさらに含んでもよい。そして、槽内の液面が下限水位に到達したことが検知されたときに、電気分解を停止してもよいし、液面が下限水位に到達したことを使用者に知らせる表示や音を出してもよい。
本発明の装置(Da)では、第1の槽(たとえば水タンク)と陽極室とが直結されていてもよい。その場合、第1の槽の内部と陽極室の内部とが、第1の槽の側壁に形成された貫通孔と陽極室の側壁に形成された貫通孔とを介して接続されていてもよい。本発明の装置では、電気分解セルが第1の槽内に配置されていてもよい。
本発明の装置は、電気分解を制御するためのコントローラを含んでもよい。コントローラは、公知のコントローラと同様に、演算処理装置と記憶装置とを含んでもよい。記憶装置には、本発明の装置を制御するためのプログラムが格納される。本発明の装置は、電源、各種のセンサ(水位センサなど)、スイッチ、表示装置、入力装置、弁(バルブ)等を含んでもよい。そして、それらはコントローラと接続されていてもよい。電気分解が可能である限り電源に特に限定はなく、コンセントから出力される交流を直流に変換するAC−DCコンバータであってもよい。
本発明の装置は、使用回数や使用時間(電気分解の時間)をモニタする機構を備えてもよい。その場合、コントローラは、使用回数や使用時間を積算し、その結果に基づいて、メンテナンス時期を使用者に知らせてもよい。
本発明の装置は、直列接続された複数の電気分解ユニットを含んでもよい。その場合、本発明の装置は、複数のツェナーダイオードを含んでもよい。そして、複数の電気分解ユニットのそれぞれには、ツェナーダイオードが並列接続されていてもよい。1つの水素ガス生成装置に含まれる電気分解ユニットの数は、2つ、3つ、またはそれ以上であってもよい。ツェナーダイオードは、電気分解ユニットに電流が流れないときにツェナーダイオードを電流が流れるように、選択および配置される。
本発明の装置は、水素ガスの気泡が流れる部分の少なくとも一部が目視可能な構成を有してもよい。たとえば、第1の流路の内部の少なくとも一部が装置の外部から目視可能であってもよいし、管(T)の内部の少なくとも一部が装置の外部から目視可能であってもよいし、槽の内部の少なくとも一部が装置の外部から目視可能であってもよい。それらの構成は、目視される部分を透明な材料(透明なガラスや樹脂など)で形成することによって実現できる。水素ガスの気泡が流れる部分を目視可能とすることによって、水素ガスの生成状況を目視で確認できる。
装置(Da)の第1の槽内には、水分を吸収して維持する保湿部材が配置されていてもよい。長期間使用しない場合などに、第1の槽内の水がほぼなくなることがある。第1の槽内の湿度が低下して電気分解セルの内部が乾燥すると、電気分解セルの性能が低下する場合がある。保湿部材を第1の槽内に配置することによって、電気分解セル内部の乾燥を抑制できる。保湿部材に特に限定はない。保湿部材の例には、多孔質体(スポンジなど)が含まれる。
水素ガス流路には、水素ガスを吸入するためのガス吸入器具がとりつけられてもよい。ガス吸入器具の例には、鼻カニューラやガス吸入用のネックセットが含まれる。ガス吸入器具は、大気よりも水素ガス濃度が高い空間を形成する器具であってもよい。たとえば、ガス吸入器具は、大気よりも水素ガス濃度が高い空間を形成するための囲いであってもよい。そのような囲いを用いることによって、ガス吸入器具を顔につけることなく水素ガスを吸入できる。そのような囲いを用いることによって、動物など(たとえばペットなどの小動物)に水素ガスを容易に吸入させることができる。
囲いとしては、密閉されていない囲い(すなわち大気に開放されている囲い)を用いることができる。囲いの中の水素ガス濃度が4体積%未満(たとえば3体積%以下)となるように、囲いを構成することが好ましい。
囲い内で静電気の放電が発生しないように、囲いの内側に導電体を配置することによって静電気の蓄積を抑制してもよい。また、静電気の放電が発生しないように、囲い内部を高湿とすることによって、静電気の放電を抑制してもよい。たとえば、囲い内部の相対湿度を60%以上(たとえば65%以上や70%以上)としてもよい。
水素ガス流路には、水蒸気を除去する水蒸気トラップや、液体をトラップする液トラップが配置されてもよい。液トラップおよび水蒸気トラップに特に限定はなく、公知のものを用いてもよい。水蒸気トラップを用いることによって、水素ガス流路における結露を抑制できる。
本発明の装置に接続された水素ガス流路が柔軟性を有するチューブである場合、チューブが折れ曲がったときに水素ガスの流れが抑制される場合がある。そのような場合でも水素ガスの流れが完全に遮断されないことが好ましい。そのために、チューブ内に、細い糸(釣り糸などの樹脂製の糸など)を配置してもよい。あるいは、内部に凹凸が形成されたチューブを用いてもよい。
(水素ガス吸入装置)
本発明の水素ガス生成装置は、水素ガス吸入装置に用いることができる。本発明の水素ガス吸入装置は、本発明の水素ガス生成装置と、第1の流路の下流(水素ガス流路の下流)に接続されたガス吸入器具とを含む。ガス吸入器具の例には、上述したガス吸入器具が含まれる。
本発明の装置について、図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下の説明では、同様の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。本発明の効果が得られる限り、以下の実施形態の装置の構成は、上述した構成に置き換えることが可能である。以下の実施形態の装置の構成のうち、本発明の効果を奏するために必要でない構成は省略してもよい。1つの実施形態の装置について説明した事項は、他の実施形態の装置の構成に反しない限り他の実施形態の装置にも適用できる。そのため、1つの実施形態で説明した事項は、他の実施形態の説明において説明を省略する場合がある。
(実施形態1)
実施形態1では、装置(Da)の一例について説明する。実施形態1の水素ガス生成装置100の構成を、図1に模式的に示す。装置100は、ケース11、直流電源(AC−DCコンバータ)12、電気分解セル20、水タンク(第1の槽)30、第1の流路41、第2の流路42、第3の流路43、水素ガス流路44、および管50(管(T))を含む。なお、装置100はコントローラを含むが、図1では図示を省略する。当該コントローラは、装置内の機器(水位センサ61、直流電源12など)に接続される。
電気分解セル20は、燃料電池セルであり、陰極室21、陽極室22、およびそれらによって囲まれた膜電極接合体(電気分解ユニット)23を含む。膜電極接合体23は、陽極、陰極、および、高分子電解質層(たとえば、陽イオン交換膜などのイオン交換膜)を含むが、それらの図示は省略する。膜電極接合体23の2つの電極間には、直流電源12から直流電圧が印加される。膜電極接合体23の陰極は陰極室21によって囲まれており、膜電極接合体23の陽極は陽極室22によって囲まれている。一例の電気分解セル20の電解槽は、膜電極接合体23によって、陰極室21と陽極室22とに二分されている。
水タンク30の上方には、ケース11の外部と水タンク30とを結ぶ水供給路31が接続されている。水タンク30と水供給路31との接続部は、水タンク30内のガスを装置の外部に放出するためのガス放出口30hとして機能する。すなわち、水供給路31は、ガスを放出するためのガス放出路として機能する。なお、水供給路31とは別個にガス放出口(ガス放出路)を設けてもよい。水タンク30には、水位センサ61が配置されている。水位センサ61によって、水タンク30内の水Wが下限水位WLに到達したことが検知される。図1に示すように、水タンク30の一部30aを細くして、その一部30aと電気分解セル20とを流路で接続してもよい。
第1の流路41の一端(第1の端部41a)は、陰極室21の下部に接続されている。第1の流路41の他端(第2の端部41b)は、管50に接続されている。第1の流路41の少なくとも一部およびケース11の少なくとも一部を透明にして、第1の流路41内を装置100の外部から目視できるようにしてもよい。そのようにすることによって、第1の流路41中を移動する水素ガスの気泡を目視で確認できる。図1に示すように、第1の流路41の一部41cを太く且つ透明にしてもよい。そして、その一部41cを装置100の外部から目視できるようにしてもよい。
第2の流路42は、陽極室22の下部と水タンク30とを結ぶように両者に接続されている。第3の流路43は、陽極室22の上部と水タンク30とを結ぶように両者に接続されている。水タンク(第1の槽)30は、陽極(陽極室22)に供給される水性液体を保持する。
管50の上端には、第1の流路41の下流側の端部41bと水素ガス流路44の上流側の一端(第1の端部44a)とが接続されている。それらの結合部分において、それらは、図1に示すようにY字状に配置されていてもよい。管50のうちの少なくとも下部は、水タンク30内に配置されている。管50の下方の開口部50aは、下限水位WLよりも下方に配置され、水素ガスの流路が遮断されたときの水素ガスの排出口として機能する。開口部50aから放出された水素ガスがガス放出口30hに到達可能なように、開口部50aは配置される。すなわち、水素ガス放出機構(管50)は、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制されたときに、ガス放出口30hに到達するように水素ガスを槽(水タンク30)内に流す。
水素ガス流路44の他端(第2の端部44b)は、接続具45に接続されている。接続具45は、水素ガス流路201を接続可能な接続具である。水素ガス流路201は、容器200内に差し込まれている。容器200は蓋200aを有し、内部空間と外部との気体の移動が制限されている。蓋200aには、さらに水素ガス流路202が接続されていてもよい。
水の電気分解を行う際には、まず、水供給路31から水タンク30に水(脱イオン水)を供給する。水タンク30に供給された水Wは、流路42および43を介して陽極室22に供給される。次に、直流電源12によって、電気分解セル20の2つの電極間に直流電圧を印加し、水を電気分解する。この電気分解によって、陰極において水素ガスが生成され、陽極において酸素ガスが生成される。陽極室22で生成された酸素ガスは、第3の流路43を通って水タンク30に流れ、さらにガス放出口30hおよび水供給路31を通って装置の外部に放出される。酸素ガスが第3の流路43を通る際に、陽極室22内の水も水タンク30側に流れる。その結果、水タンク30と陽極室22との間を循環する水の流れが生じる。水タンク30から陽極室22へ水が流れやすくするため、第2の流路42を第3の流路43より太くしてもよい。通常、流路43から放出される酸素ガスが開口部50aを通って水素ガス流路44に流れることがないように、装置は構成される。たとえば、流路43と水タンク30との接続部の直上に開口部50aが配置されないようにしてもよい。
陰極室21で生成された水素ガスは、第1の流路41を通って管50の上部に流れる。陽極室22に供給された水の一部は、膜電極接合体23を通って陰極室21に流れる。好ましい一例では、陰極室21に流れた水は、水素ガスの移動に伴って第1の流路41を流れ、管50に到達する。たとえば、第1の流路41を細くすることによって、水素ガスと共に水を移動させることが可能である。
管50に到達した水は、管50を落下し、水タンク30に戻される。その結果、第1の流路41の下流の水素ガス流路44には、実質的に水素ガスのみが流れる。このように、管50は、水トラップとして機能する。ここで、水タンク30内の水位にかかわらず水素ガス流路44に水が流れないようにする必要がある。そのため、通常、水タンク30内の最高水位よりも高い位置で水素ガス流路44と管50とを接続する。なお、水トラップとして機能しやすくするために、管50の全体を太くしたり、第1の流路41が接続されている部分を太くしたりしてもよい。
水素ガス流路44に流れた水素ガスは、水素ガス流路201を通って容器200内の液体210内に吹き込まれる。液体210は、たとえば飲用の液体(水など)である。水素ガスが吹き込まれた液体は、溶存水素濃度が高い液体(たとえば水素水)として利用できる。液体210に溶解しなかった水素ガスは、水素ガス流路202を通って容器200の外部に流れる。この水素ガスは、吸入用の水素ガスとして用いることが可能である。その場合、水素ガス流路202の端部には、吸入用の器具(たとえば鼻カニューラ等)が接続されてもよい。
水素ガスの生成を開始する前(管50内の内圧が上昇する前)は、管50内の水位(水の表面の位置)と水タンク30内の水位とは同じである。すなわち、管50内のうち開口部50aから水タンク30内の水面の位置までは、水で満たされる。一方、水素ガスを生成している際には、図1に示すように、容器200内の水位と水素ガス流路201の先端(開放端)との高低差L1と同じだけ、管50内の水位が低下する。なお、理解を容易にするため、図1では、管50内の水に、水タンク30内の水Wのハッチングとは異なるハッチングを付している。また、流路内の水および電気分解セル20内の水については、ハッチングを省略する。
通常、下限水位WLは、下限水位WLと開口部(ガス排出口)50aとの間の高低差L2が、容器200内における水位と水素ガス流路201の開放端との間の高低差L1の最大値よりも大きくなるように設定される。この場合、通常駆動時において、管50内の水位は、開口部50aよりも上方に位置する。開口部50aをできるだけ下方に配置するために、開口部50aを、水タンク30の細い部分(たとえば一部30a)に配置してもよい。ただし、開口部50aから放出される水素ガスが、第2の流路42に流れないようにすることが好ましい。
なお、水タンク30内の水位が下限水位WLに到達したことが水位センサ61で検知されたときに、水の電気分解を停止してもよい。また、水タンク30内の水位が下限水位WLに到達したときに圧力の関係で水素ガス流路201の先端から水素ガスの気泡が放出されなくなるような位置に、開口部50aを設けてもよい。この場合には、水位センサ61を省略することが可能である。いずれの場合でも、水タンク30内の水位が下限水位WLに到達したときに、水素ガス流路201の先端から水素ガスの気泡が放出されなくなる。そのため、使用者は、水素ガス流路201の先端からの水素ガスの放出の有無を、水の補給の目安として用いることができる。
ここで、水素ガス流路201が何らかの原因によって意図せずに折れ曲がった場合について検討する。この場合、水素ガス流路201における水素ガスの流れが過剰に抑制(遮断)される。一方で、陰極室21で水素ガスが生成され続けた場合、第1の流路41およびその下流(管50および水素ガス流路44)における内圧が高まる。その結果、管50内の水位は、管50の開口部50aに到達するまで下がる。そして、生成された水素ガスは、開口部50aから水タンク30内に排出される。排出された水素ガスは、ガス放出口30hおよび水供給路31を通って装置の外部に放出される。以上のように、管50は、水素ガス放出機構として機能する。すなわち、管50は、水素ガス流路における水素ガスの流れが抑制されたときに水素ガスを迂回させて放出する。このような水素ガス放出機構を用いることによって、水素ガス流路が遮断されたときでも、電気的な制御をすることなく水素ガスを装置外部に簡単に放出できる。
本発明の装置は、水素ガス流路におけるガスの流れが不適切に抑制(たとえば遮断)されたことを検知するためのセンサを備えてもよい。そして、水素ガス流路が不適切に抑制されたことが検知された場合に、水の電気分解を停止してもよい。たとえば、管50内の水位が所定の位置に到達したことを検知するためのセンサを用いてもよい。水素ガス流路において水素ガスの流れが遮断されたときには管50内の水位が大きく低下する。また、酸素ガスの放出経路(たとえば水供給路31)が遮断されたときには管50内の水位が大きく上昇する。そのような状況をセンサで検知して電気分解を停止することによって、通常駆動ではない状態で電気分解を続けることを防止できる。このようなセンサと上述した水素ガス放出機構とを共に用いることによって、センサがうまく機能しなかった場合でも、水素ガスを装置外部に簡単に放出できる。なお、センサとして、管50内にフロートスイッチを配置して、ガスや液体の流れを制御してもよい。
本発明の装置では、水タンクへの水の供給を容易にするため、ペットボトル等の容器を水タンクに直結できるようにしてもよい。その場合には、図1で示した構成とは異なり、ガス放出口を単独で設けることが好ましい。ペットボトル等の容器を水タンクに直結可能にする場合の構成の一例を、図2A〜図2Cに示す。なお、図2A〜図2Cでは、該当する部分のみを図示する。
図2Aの装置では、容器70内の水が水タンク30に供給される。この場合、水タンク30は、容器70を接続するための受け部33を有する。また、水タンク30には、水タンク内のガスを装置の外部に放出するためのガス放出路32が接続される。ガス放出路32と水タンク30との接続部が、ガス放出口30hとなる。
受け部33は、容器70の接続部71を保持するための形状を有する。受け部33は、ピン33aと、ピン33aを支持する板33bと、接続部71を受ける受け台33cとを含む。板33bには、水を流すための貫通孔が形成されている。接続部71は、筒状部71aと、筒状部71a内に配置されたリング状のフロート71bおよび球状部材71cとを含む。球状部材71cは弁として機能する。
水タンク30内の水が不足している状態で水が入った容器70を受け部33にセットすると、図2Bに示すように、フロート71bおよび球状部材71cが下がり、筒状部71aが塞がれない。そのため、筒状部71aから水が水タンク30に供給される。水の供給に伴って水タンク30の水位が上昇すると、図2Cに示すように、フロート71bが上昇し、それによって球状部材71cも上昇する。その結果、球状部材71cによって筒状部71aが塞がれ、水の供給がストップする。そのため、水タンク30内の水Wが所定の水位に到達した時点で、容器70からの水の供給を自動的にストップできる。さらに、水タンク30の水が所定の水位よりも低下すると、フロート71bが下がって水が供給される。このように、水タンク30の水位を自動的に一定に保つことが可能である。なお、図2Aに示す構成は一例であり、他の構成によっても図2Aに示す構成と同様の機能を発揮させることが可能である。
(実施形態2)
実施形態2では、装置(Da)の他の一例について説明する。実施形態2の装置は、実施形態1の装置と比較して、流路の接続方法が異なる。実施形態2の装置の構成を、図3に模式的に示す。
実施形態2の装置100では、第1の流路41の他端(第2の端部41b)は管50の下部に接続されている。また、水素ガス流路44の一端(第1の端部44a)が管50の上部に接続されている。すなわち、第1の端部44aと管50との接続部よりも下方の位置において、第2の端部41bと管50とが接続されている。管50の下端には、ガス排出口として機能する開口部50aが形成されている。
図3では、水タンク30の一部を仕切って管50を形成している一例を示しているが、水タンク30とは別個の管50を用いてもよい。さらに、開口部50aが開口されている限り、管50と陰極室21とを直結してもよい。その場合、管50の下部の一部を第1の流路41とみなすことが可能である。
水の電気分解を行う際には、実施形態1の装置100と同様に、水タンク30に水(脱イオン水)を供給する。次に、直流電源12によって、電気分解セル20の2つの電極間に直流電圧を印加し、水を電気分解する。この電気分解によって、陰極室21で水素ガスが生成され、陽極室22で酸素ガスが生成される。酸素ガスは、水タンク30を通って放出される。
陰極室21で生成された水素ガスは、第1の流路41を通って管50に流れる。通常駆動時において、第1の流路41を通って流れる水素ガスが開口部50aを通って管50を流れるように、管50と第1の流路41とが配置されている。図3に示す一例では、通常駆動時において、端部41bから放出される水素ガスの気泡が開口部50aから外部に流れないようにする必要がある。たとえば、端部41bの上方を覆うように、管50または開口部50aを配置してもよい。図3に示すように、端部41bの開口端より下に開口部50aを配置してもよい。
実施形態1で説明したように、第1の流路41を、水および水素ガスが流れる。管50に到達した水は管50に溜まり、水素ガス流路44には実質的に水素ガスのみが流れる。すなわち、実施形態2の構成でも、管50が水トラップとして機能する。管50の形状(たとえば太さ)は、水トラップとして機能する形状とする。水素ガス流路44に流れた水素ガスは、実施形態1で説明したように利用できる。
(実施形態3)
実施形態3では、装置(Da)の他の一例について説明する。実施形態3の装置は、実施形態1の装置と比較して、電気分解セル20と水タンク30との接続方法が異なる。実施形態3の装置の構成を、図4に模式的に示す。
実施形態3の装置100では、電気分解セル20と水タンク30とが、直結されている。電気分解セル20の陽極室22と水タンク30とは、それらの壁に形成された貫通孔を介して接続されている。なお、それらの貫通孔を流路とみなすことが可能である。
実施形態3の装置100は、実施形態1の装置100と同様の機能を有する。なお、実施形態2の装置においても、電気分解セル20と水タンク30とを直結することが可能である。
(実施形態4)
実施形態4では、装置(Da)の他の一例について説明する。実施形態4の装置は、実施形態2の装置と比較して、電気分解セルの配置が異なる。実施形態4の装置の構成を、図5に模式的に示す。
実施形態4の装置100では、電気分解セル20が水タンク30内の下部に配置されている。陽極室22の壁には貫通孔が形成されているか、あるいは陽極室22の壁が除去されている。水タンク30内に水が配置されることによって、膜電極接合体23の陽極側に水が供給される。なお、図1の一部30aのように水タンク30の一部の細くし、その部分に電気分解セル20を配置してもよい。
水の電気分解によって陰極室21で生成された水素ガスは、第1の流路41および管50を通って水素ガス流路44に流れる。実施形態4の装置100は、実施形態2の装置100と同様の機能を有する。なお、実施形態1の装置においても、電気分解セル20を水タンク30内の下部に配置することが可能である。
(実施形態5)
実施形態5では、装置(Db)の一例について説明する。実施形態5の水素ガス生成装置100aの構成を、図6に模式的に示す。装置100aは、ケース11、直流電源(AC−DCコンバータ)12、電気分解ユニット110、電解槽120、第1の流路41、水素ガス流路44、および管50(管(T))を含む。装置100aはコントローラを含むが、図6では図示を省略する。当該コントローラは、装置内の機器(水位センサ61、直流電源12など)に接続される。装置100と同様の部分については、重複する説明を省略する場合がある。
電気分解ユニット110は、陽極111、陰極112、およびそれらの間に配置されたセパレータ113を含む。セパレータ113は、たとえば絶縁性の不織布からなり、液体およびイオンは透過させるが気泡の透過を抑制する。電解槽120は、セパレータ113によって、陽極側の第1の槽121と、陰極側の第2の槽122とに仕切られている。なお、第1の槽121と第2の槽122とは、セパレータ113の上方において、液体および気体を透過させない仕切り板120aによって仕切られている。第1の槽121に配置された水溶液ASは陽極111と接触し、第2の槽122に配置された水溶液ASは陰極112と接触する。すなわち、第1の槽121は陽極111に供給される水性液体を保持し、第2の槽122は、陰極112に供給される水性液体を保持する。装置(Db)は、電解槽120の内部(特に、第1の槽121の内部)が、装置外部から見える構成を有してもよい。当該構成によれば、水が電気分解されることによって発生する気泡を目視で確認できる。
第2の槽122の上部には、陰極112で生成された水素ガスが流れる第1の流路41が接続されている。少なくとも通常駆動時において、第2の槽122は大気に開放されていない。この構成によれば、水素ガス流路内の水素ガスの内圧を高めることが可能である。
第1の槽121には、第1の槽121内のガスを装置の外部に放出するためのガス放出口120hが形成されており、ガス放出口120hには、ガス放出路となる水供給路31が接続されている。上述したように、水供給路31とガス放出路とは別に形成されてもよい。
管50の上部には、第1の流路41の一端と水素ガス流路44の一端とが接続されている。それらの結合部分において、それらは、図6に示すようにY字状に配置されていてもよい。管50のうちの少なくとも下部は、第1の槽121内に配置されている。管50の下方の開口部50aは、下限水位WLよりも下方に配置され、水素ガスの流路が遮断されたときの水素ガスの排出口として機能する。
水素ガス流路44は、接続具45を介して水素ガス流路201に接続されている。水素ガス流路201には、実施形態1で説明したように、水素ガスを利用するための器具が接続される。
水の電気分解を行う際には、まず、電解槽120に水溶液ASを供給する。次に、直流電源12によって、電気分解ユニット110の2つの電極間に直流電圧を印加し、水を電気分解する。この電気分解によって、陰極112において水素ガスが生成され、陽極111において酸素ガスが生成される。陽極111で生成された酸素ガスは、ガス放出口120hおよびガス放出路(水供給路31)を通って装置の外部に放出される。なお、本発明の装置において、放出される酸素ガスを何らかの用途に利用してもよい。
陰極112で生成された水素ガスは、第1の流路41を通って管50の上部に流れる。管50内の液面は、実施形態1で説明したように、水素ガス流路44の内圧に応じて上下する。管50が水溶液ASに浸漬される深さは、通常駆動時において水素ガスが開口部50aから放出されないように選択される。
通常駆動時において、第1の流路41を通った水素ガスは、管50を介して水素ガス流路44および水素ガス流路201を流れる。一方、水素ガス流路201における水素ガスの流れが遮断されたときには、管50内の液面が低下して開口部50aに到達する。その結果、第1の流路41を通った水素ガスは、開口部50aから第1の槽121内に放出される。放出された水素ガスは、ガス放出口120hおよびガス放出路(水供給路31)を通って装置の外部に放出される。その結果、水素ガス流路201が遮断されたときでも、水素ガス流路201内の圧力が過剰に高くなったり、水溶液ASが電解槽120から漏れたりすることを防止できる。
(実施形態6)
実施形態5では、陰極に供給される水性液体を保持する第2の槽にガス放出口が設けられていない例について図示した。しかし、本発明の装置では、第1の槽および第2の槽のそれぞれにガス放出口が形成されていてもよい。そのような装置の一例として、実施形態6の装置100bを図7に示す。なお、図6で説明した事項と同様の事項については重複する説明を省略する場合がある。図7では、水素ガス流路201の下流側の図示を省略する。図7では、管50内の水溶液ASに、電解槽120内の水溶液ASのハッチングとは異なるハッチングを付している。
図7に示す水素ガス生成装置100bでは、ガス放出口120hが第2の槽122に形成されている。ガス放出口120hは、ガス放出路32に接続されている。第1の槽121には、酸素ガス放出口121hが形成されている。酸素ガス放出口121hは、ガス放出路として機能する水供給路31に接続されている。なお、ガス放出路32を水供給路として利用してもよい。
装置100bでは、第1の流路41の上流側に管50が配置されている。第1の流路41と管50とは一体であってもよい。すなわち、1つの管の下方の部分を管50とみなし、上方の部分を第1の流路41とみなしてもよい。管50は、陰極112で生成された水素ガスが開口部50aを通って流れるように配置されている。なお、図7に示すように、水素ガスが開口部50aを流れるように開口部50a近傍を広げてもよい。あるいは、陰極112の上部を覆うように管50を配置してもよい。
装置100bにおいて水を電気分解すると、陰極112において水素ガスが生成され、陽極111において酸素ガスが生成される。陽極111で生成された酸素ガスは、酸素ガス放出口121hを通って装置100bの外部に放出される。陰極で生成された水素ガスは、開口部50a、管50、第1の流路41、および水素ガス流路201を流れる。
一方、水素ガス流路201における水素ガスの流れが遮断されたときには、管50内に水素ガスが溜まって管50内の水位が下がる。そして、水位が開口部50aに到達すると、生成された水素ガスは、管50の外部およびガス放出口120hを通って装置100bの外部に放出される。
装置100aまたは装置100bの電気分解ユニット110を膜電極接合体に置き換えることによって、装置(Da)としてもよい。この場合、第1の槽121と第2の槽122とは、膜電極接合体によって仕切られる。さらに、この場合、電解槽120には、脱イオン水など、金属イオン濃度が低い水が配置される。第1の槽121には膜電極接合体の陽極が配置され、第2の槽122には膜電極接合体の陰極が配置される。
本発明の水素ガス生成装置では、ガス放出口(ガス放出口30h、120h、121h)の周囲を囲むように、水タンクの内側に向かって突出する凸部(縦壁)が形成されていてもよい。そのような凸部30cの一例を図8に示す。凸部30cを形成することによって、水素ガス生成装置が揺れた時でも、水がガス放出口から漏れることを抑制できる。
本発明の水素ガス生成装置は、複数の電気分解ユニットを含んでもよい。それら複数の電気分解ユニットは直列に接続されていてもよい。その場合、複数の電気分解ユニットのそれぞれに1つずつツェナーダイオードが並列接続されていてもよい。その場合の接続の一例を、図9に模式的に示す。
図9には、一例として、3つの膜電極接合体23が直列接続されている一例を模式的に示す。膜電極接合体23は、陽極23a、陰極23b、および高分子電解質層23cを含む。複数の膜電極接合体23は、図9に示すように直列接続されている。各膜電極接合体23には、ツェナーダイオード24が並列に接続されている。ツェナーダイオード24の降伏電圧は、膜電極接合体23に応じて選択される。具体的には、膜電極接合体23に正常に電流が流れているときにはツェナーダイオード24に電流が流れず、膜電極接合体23に電流が流れなくなったときにツェナーダイオード24に電流が流れるツェナーダイオードがツェナーダイオード24として選択される。
複数の電気分解ユニット(たとえば膜電極接合体23)のうちの1つが、劣化等によって電流が流れなくなる場合がある。その場合、ツェナーダイオードがないと、他の電気分解ユニットにも電流が流れなくなり、水素ガスの生成が行われなくなる。一方、ツェナーダイオードが並列に接続されていると、1つの電気分解ユニットに電流が流れなくなっても、それに並列接続されているツェナーダイオードを介して電流が流れ、他の電気分解ユニットで水素ガス生成が行われる。そのため、複数の電気分解ユニットのうちの1つに不具合が生じても、水素ガス生成を継続することが可能である。
上記実施形態の水素ガス生成装置において、第1の流路の下流には、ガス吸入器具が接続されてもよい。そのようなガス吸入器具を含む水素ガス吸入装置300の一例を、図10に示す。水素ガス吸入装置300は、水素ガス生成装置100と、ガス吸入器具310を含む。図10には、図3で説明した水素ガス生成装置100とほぼ同じ構成を有する装置100を示すが、本発明の他の水素ガス生成装置を用いてもよい。
ガス吸入器具310は、水素ガス流路201に接続される。図10では、ガス吸入器具の一例として、鼻カニューラを示す。
吸入のみを行う場合、図1に示した高低差L1を考慮する必要がない。そのため、その場合には、水タンクの高さをL1よりも高くする必要がない。その結果、吸入のみを行う場合の水素ガス生成装置100は、より小型化が可能である。
ケース11のうち管50の下部に面する部分は、透明な材料からなる透明部11aとなっている。さらに、管50の少なくとも下部は透明な材料からなる。これらの構成によれば、透明部11aを通して、管50の内部を上昇する水素ガスの気泡を目視できる。なお、水タンク30のうち管50の部分がケース11の一部を構成してもよい。本発明の他の水素ガス生成装置においても同様に、管50の内部の少なくとも一部が目視できるように装置が構成されていてもよい。
図10に示す一例では、第1の流路41を通って流れる水素ガスが開口部50aを通って管50を流れるように管50と第1の流路41とが配置されている。具体的には、第1の流路41は、管50の内部まで侵入しておらず、管50の開口部50aの下方に位置している。第1の流路41から放出される水素ガスの気泡は、そのまま上昇して開口部50aを通り、管50内を上昇する。この場合でも、第1の流路41と管50とは、水素ガスの流路として接続されているといえる。
ガス吸入器具310の水素ガス流路201が何らかの理由で閉じられた場合、第1の流路41を流れた水素ガスが管50内に溜まり、管50内の水位が低下する。そして、管50内が水素ガスで満たされて水位が開口部50aまで低下すると、水素ガスは管50内を流れることなく水タンク30内の水W中を上昇し、ガス放出口30hを通って装置の外部に放出される。そのため、水素ガス流路201が意図に反して閉じられた場合でも、水素ガスが高分子電解質層を通過することを防止できる。すなわち、水素ガスが高分子電解質層を通過することによる高分子電解質層の劣化を抑制できる。
ガス吸入器具は、水素ガス濃度が高い空間を形成する器具であってもよい。そのような器具の一例を図11に示す。図11の器具は、吸入用の囲い321を含む。囲い321は、密閉されてはいない(すなわち大気に開放されている)が、空気の流れをある程度遮断する囲いである。たとえば、囲い321は、上方が開放されている囲いであってもよいし、換気口が形成されているボックスであってもよい。囲い321には、水素ガス流路が接続される。囲い321に接続される水素ガス流路は、水素ガス流路201であってもよいし、水素ガス流路202(水素水の調製に利用された後の水素ガスの流路)であってもよい。囲い321に水素ガスを流入させる経路は、図11に示すように、囲い321の側面からであってもよいし、囲い321の底面からであってもよいし、他の部分からであってもよい。水素ガスは軽いため、囲い321の下方から囲い321に流入した水素ガスは、囲い321内を上昇する。水素ガスを吸入する主体が囲い321内に入ることによって、水素ガスを容易に吸入できる。たとえば、ペットなどの動物を囲い321内に配置することによって、当該動物に水素ガスを容易に吸入させることができる。なお、このような吸入用の囲いは、本発明の水素ガス生成装置以外の水素ガス生成装置につなげて使用することも可能である。