JP2018165235A - 微粒炭化タングステン粉末 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規なナノレベルの微粒炭化タングステン粉末の提供。【解決手段】BET比表面積が、6.41m2/g以上であり、BET法による平均粒径が60nm以下、さらには、BET比表面積が、9.50m2/g以上であり、BET法による平均粒径が40nm以下である、微粒炭化タングステン粉末。また、前記微粒炭化タングステン粉末は、Fe含有量が30ppm以下である、高純度微粒炭化タングステン粉末。【選択図】なし

Description

本発明は、切削工具や、金型などの塑性加工用耐摩工具として用いられる炭化タングステン基超硬合金などの分野においてその製造原料となり、また、その他、燃料電池用触媒などの分野においても用いられる、ナノレベルの粒径を有する微粒炭化タングステン(WC)粉末に関するものである。
従来より、例えば、炭化タングステン焼結体を用いた切削工具用超硬材料において、強度や硬度等の特性は、焼結後の炭化タングステン相を微粒化することにより向上することが知られており、そのために、原料粉末としての炭化タングステン粉末の微粒子化が要求されている。
このような要求に対し、例えば、特許文献1では、5μm以下の粒径を有するWO粉に1.0μm以下の粒径を有する炭素粉を混合し、還元工程を省略し、窒素ガス中、続いて、水素ガス中にて加熱し、その後の粉砕により、直接粒子径0.5μm以下の超微粒WC粉が得られることが提案されており、具体的には、150メッシュ篩にて粒度0.22μmであって、鉄の含有量が0.004%(40ppm)である超微粒WC粉が得られている。
また、特許文献2では、粉砕工程を必要とすることなく、1)原料粉末としてメタタングステン酸アンモニウム(AMT)またはタングステン酸アンモニウム(AT)を用い、AMTまたはATの水溶液に炭素粉末を、AMTまたはATのタングステン成分に対して一定比率の原子比(C/W:3〜4)にて添加混合しスラリー化し、2)前記スラリーを350℃以下の温度にて低温乾燥を行い、炭素粉末により前記原料粉末を担持させ、3)前記原料粉末を窒素雰囲気中、900〜1600℃の温度にて還元処理を施し、組成式でWCを主体とし、残部をWCと金属タングステンからなり、酸化物を含有しない還元反応生成物を形成し(一次炭化工程)、4)ついで、前記還元反応生成物に炭素粉末を、前記還元反応生成物中のタングステン成分に対し、原子比にて1:1のWCに炭化する割合にて配合・混合し、水素雰囲気中、900〜1600℃にて加熱すること(二次炭化工程)により、0.5μm以下の平均粒径(フィッシャー・サブ・シーブ・サイザー法(以下、「FSSS法」という。)基準)を有する高純度微粒炭化タングステン粉末を得ることが提案されており、具体的には、平均粒径0.30μm、純度99.997%の炭化タングステン粉末が得られている。
また、特許文献3では、第1の熱処理工程において、超微粒の酸化タングステンと炭素粉との混合物を不活性雰囲気中にて加熱し、中間生成物がW、WC、WCとなるまで還元および炭化した後、粉砕工程にて、該中間生成物の凝集およびネッキングを粉砕し、次の第2の熱処理工程において、粉砕された前記中間生成物を水素中にて加熱炭化し、ナノ粒径の炭化タングステン粉末を得た後、粉砕機により、機械的な微粉砕を行うことにより、BET比表面積が4.81m/g以上であり、平均粒径が79nm以下である、超微粒の炭化タングステン粉末を得ることが提案されている。
そして、具体的には、BET比表面積が5.73m/gであり、BET法換算にて平均粒径が67nmであって、鉄の含有量が29ppmである超微粒WC粉が得られている。
さらに、特許文献4では、例えば、APT(パラタングステン酸アンモニウム)を大気中600〜800℃にて加熱して得られた三酸化タングステンを原料粉とし、この三酸化タングステン粉とC粉末とを有機溶媒を用いて湿式混合した後、750℃以下、水素雰囲気にて、水素還元によりタングステン粉末とC粉末を含む混合粉末を得て、次いで、1000℃以上に加熱し、水素雰囲気中にて、W粉末とC粉末を反応させることにより、FSSS法基準にて0.8μm以下の炭化タングステン粉末を得ることが提案されている。
そして、具体的には、FSSS法基準にて、0.6μmの平均粒子径を有し、Si、Ca、Feを含む不純物元素の総含有量が200ppmである微粒WC粉が得られている。
特許第2617140号公報 特許第4023711号公報 特許第4647244号公報 特許第5443757号公報
前記したとおり、種々の製造方法により製造された、微粒炭化タングステン粉末、さらには、高純度の微粒炭化タングステン粉末が提案されているが、近年の切削工具や耐摩耗工具に対しては、さらなる軽量化、小型化、薄肉化の要求が強く、また、その形状についても多様化、複雑化しており、これらを構成する超硬合金についてはさらに一層の強度及び硬度の向上が求められている。
したがって、本発明は、炭化タングステン粉末の一層の微粒化や高純度化への検討を行うことにより、前記した従来の微粒炭化タングステン粉末、具体的には、BET比表面積は最大で5.7m/gレベル、すなわち、BET法換算による平均粒径では、最小で67nmレベルの微粒炭化タングステン粉末に対して、さらなる超微粒化、加えて、さらなる高純度化を進め、特に、高硬度、高密度の切削工具や耐摩耗工具を製造する際に用いられる超硬合金やセラミックス焼結体の原料粉となる新規な超微粒炭化タングステン粉末を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、微粒炭化タングステン粉末自体の特性および製法に着目し、原料から炭化タングステンが得られるまでの全プロセスを見直し、微粒化した炭化タングステン粉末、さらには、高純度化した微粒炭化タングステン粉末を得るべく、鋭意研究を行なった結果、以下の二つの知見(知見1および知見2)に基づき前記課題を解決したものである。
A.知見1
本発明者らは、前記課題を解決すべく、従来の微粒炭化タングステン粉末の製造方法、例えば、前記特許文献2に記載した従来の微粒炭化タングステン粉の製造方法において、その製造工程を見直し、調製した原料粉末を低温乾燥した後、引き続き行っていた窒素雰囲気下における還元炭化処理に先立ち、新たにアンモニア(NH)雰囲気下にて還元窒化処理を行い、その後、窒素、Ar等の不活性雰囲気(以下、「不活性雰囲気」という。)下における還元炭化処理、次いで、水素雰囲気下における炭化処理を行うことにより、より微細化した新規な炭化タングステン粉末を得ることができることを見出したものである。(以下、「知見1」という。)
すなわち、本発明者らは、アンモニア(NH)雰囲気での還元窒化処理後の反応生成物についてXRDスペクトルにより確認を行ったところ、還元窒化反応生成物として、酸窒化タングステン(WON)が生成していることが明らかとなり、しかも、生成した酸窒化タングステン(WON)粉のBET比表面積は10〜50m/gと極めて高いものであり、きわめて微粒のものであった。
そして、前記微粒の酸窒化タングステン(WON)が生成することにより、最終生成物である炭化タングステンの微粒化が進むため、アンモニア(NH)雰囲気での還元窒化処理温度を、例えば600〜800℃とすることにより、還元窒化反応生成物に占める酸窒化タングステン(WON)の比率が高まり、最終生成物として、BET比表面積が6.41m/g以上、BET法換算による平均粒径が60nm以下、さらには、BET比表面積が9.50m/g以上、BET法換算による平均粒径が40nm以下である微粒炭化タングステン粉末が得られることを見出した。
また、その際に、原料として高純度のものを用いることにより、不純物として含有されるFeの含有量を30ppm以下、さらには、20ppm以下とした、高純度微粒炭化タングステン粉末が得られることを見出したものである。
ここで、この知見1に基づいて製造された微粒炭化タングステン粉を、以下、「微粒炭化タングステン粉A」という。
なお、本発明に係る炭化タングステン粉末が、従来の微粒炭化タングステン粉末に対してきわめて微粒となる理由については、まず、アンモニア(NH)雰囲気での還元窒化工程にて、炭化タングステン粉末の前駆体としてきわめて微細な酸窒化タングステンを製造することができたことに加え、それ以降の工程である、窒素中での還元炭化工程、および、水素中での炭化工程において、前記酸窒化タングステンが、粒成長を伴わず還元炭化が進行する製造条件を見出したことよるものと推定される。
そして、このような製造工程にて得られた、本発明にかかる超微粒炭化タングステン粉末は、従来の製造法にては製造することのできない超微粒レベルのものである。
B.知見2
また、本発明者らは、前記特許文献4などに記載された、従来の、例えば、原料であるパラタングステン酸アンモニウム(APT)等から三酸化タングステンを得た後、これを金属タングステンに還元し、これをさらに炭素と混合加熱し、炭化タングステン粉末を得るという還元・炭化法による微粒炭化タングステンの製造方法について、新たな知見による新規な製造プロセスの検討を行い、従来の微粒炭化タングステン粉末に比べ、より微粒の新規な炭化タングステン粉末が得られることを知見した。(以下、「知見2」という。)
すなわち、
(ア)炭化タングステン粉末の製造法において、まず、微粒の炭化タングステン粉末を製
造するためには、その原料粉となる三酸化タングステンの微粒粉を得ることが求められるが、この三酸化タングステンの製造に際して、現状では、出発原料として、例えば、APT等を用い、これをか焼することにより、三酸化タングステンを得ている。
しかしながら、APTのか焼温度は、500℃未満ではか焼が不十分であることから、一般的には500℃〜900℃の範囲であり、得られる三酸化タングステン(WO)粉の平均粒子径も18〜20μm(FSSS法)と大きく、BET比表面積は最大値となる500℃でも高々9.6m/g程度であった。
これに対し、本発明者らは、出発原料としてタングステン酸(WO・HO)を用い、大気雰囲気、または、窒素、Ar等の不活性雰囲気(以下、「不活性雰囲気」という。)にて、か焼を行う場合には、か焼温度を350℃から900℃までの範囲まで拡大できることができ、特に500℃以下の低温域においても十分なか焼が行えるため、熱効率の面からきわめて有利であることに加え、得られる三酸化タングステン(WO)粉の平均粒子径は、フィッシャー法において3〜4μmとAPTを原料としたものに比較し極めて小粒径のものであって、しかも、低温でのか焼ほど微粒化でき、例えば、窒素雰囲気下350℃にてか焼が行われた場合には、平均粒子径が3〜4μm(さらに解砕後は0.22μm)、BET比表面積が34m/gを超える微粒の三酸化タングステン(WO)粉が得られることを見出した。
(イ)次に、微粒炭化タングステン粉末の製造法において、三酸化タングステンから微粒炭化タングステンを得る方法としては、種々の方法が知られており、その一つとして、三酸化タングステンを還元し金属タングステンとする還元工程と、得られた金属タングステンと炭素とを混合加熱により炭化し、炭化タングステンを得る炭化工程からなる、還元・炭化法が知られている。
この還元工程においては、通常、600〜800℃において還元し、WO→WO2.9→WO2.72→WOを経て金属タングステンを得ており、ここで得られる金属タングステンの粒径は、BET法による測定ではBET比表面積は、7〜10m/gであり、平均粒径はBET法基準にて31〜44nmであるのに対し、本発明者らは、この三酸化タングステンの還元工程を500℃以下の温度にて行うことにより、従来よりも微粒であり、BET比表面積が15〜35m/g、平均粒径がBET法基準にて12〜27nmである微粒のβ-W(WO)が得られ、かかる微粒のβ-W(WO)を炭素粉末と混合し、加熱炭化することにより、従来より微粒の炭化タングステン粉末が製造できることを見出した。
(ウ)ついで、本発明者らは、前記(イ)にて示した還元・炭化法は、優れた微粒炭化タングステン粉末を得るものではあるが、WO、WOの還元工程において得られる金属タングステン粉及びβ-W(WO)粉は、酸素と反応し発火し易く、粉末の取り扱いにおいて安全面でのリスクがあることから、不活性ガス雰囲気にて炭素粉末との混合、取り出し、炭化炉への装入という複数の面倒な工程を経る必要があったため、さらに、安全面での考慮を含む新たな製造プロセスについて検討を行った。
すなわち、三酸化タングステンから微粒炭化タングステンを製造する方法としては、三酸化タングステン粉末と所定量の炭素粉末を混合・加熱し、三酸化タングステンから金属タングステンへの還元と炭化タングステン(WC、WC)への炭化を同時に進める炭化法が知られているが、本発明者らは、出発原料となるタングステン酸から得られた三酸化タングステンについて、添加する炭素粉末の種類やタングステン量に対する添加量、反応温度、反応時間等の条件を変更し、得られる反応生成物をXRDにて確認したところ、500℃以下での還元処理では、金属タングステン粉及びβ-W(WO)粉への還元反応は進行するものの、得られた金属タングステン粉及びβ-W(WO)粉からの炭化物生成は行われないことを新たに見出した。
そこで、本発明者らは、水素還元炉にて、500℃以下の温度にて、所定時間、水素還元を行うことにより、三酸化タングステンから微細なβ-W(WO)を得て、その後、異なる還元炉にて、もしくは、引き続き同じ還元炉にて、水素雰囲気下、または不活性雰囲気下にて、1000℃以上にて炭化を行うことにより、発火等を伴わない、より安全な工程により、微粒炭化タングステン粉末を製造することができることを見出し、しかも、処理温度や処理時間を調整することにより、炭化工程後には、BET比表面積が6.41m/g以上、BET法基準の平均粒径が60nm以下のナノレベルの炭化タングステン粉末、さらには、BET比表面積が9.50m/g以上、BET法基準の平均粒径が40nm以下のナノレベルの炭化タングステン粉末を製造できることを見出した。
また、その際に、原料として高純度のものを用いることにより、不純物として含有されるFeの含有量を30ppm以下とした、高純度微粒炭化タングステン粉末が得られることを見出したものである。
ここで、知見2に基づいて製造された新規な微粒炭化タングステン粉を、以下、「微粒炭化タングステン粉B」という。
なお、本発明において、得られる炭化タングステン粉末が、従来の微粒炭化タングステン粉末に対してきわめて微粒となる理由については、原料粉として、きわめて微粒の三酸化タングステン(WO)粉を得て、これを用いたことに加え、水素還元工程において炭化タングステン粉の前駆体となる微粒のβ-W(WO)を製造し、以降の工程においても粒成長を伴わない製造条件を見出したことによるものと推定される。
そして、このような製造工程にて得られた、本発明にかかる超微粒炭化タングステン粉末は、従来の製造法にては製造することのできない超微粒レベルのものである。
以上のとおり、本発明は、前記の知見1、知見2に基づいてなされたものであって、
「(1)BET比表面積が、6.41m/g以上であり、BET法による平均粒径が60nm以下であることを特徴とする微粒炭化タングステン粉末。
(2)BET比表面積が、9.50m/g以上であり、BET法による平均粒径が40nm以下であることを特徴とする微粒炭化タングステン粉末。
(3) (1)または(2)に記載された微粒炭化タングステン粉末において、Fe含有量が30ppm以下であることを特徴とする高純度微粒炭化タングステン粉末。
(4) (1)乃至(3)のいずれか一つに記載された超硬質材料用の微粒炭化タングステン粉末。」
に特徴を有するものである。
特に、本発明にかかる微粒炭化タングステン粉末は、その製造工程において、炭化タングステン粉の前駆体として、きわめて微粒の中間生成物である、酸窒化タングステン(WON)、または、β-W(WO)を新規に生成させることにより、従来法においては、達成することができなかったナノレベルの新規な超微粒炭化タングステン粉末を提供するものであり、従来の微粒炭化タングステン粉末を用いた焼結工具などに対し、より高強度、高硬度、高密度であって、抗折力に優れた焼結製品を提供することができるものである。
以下では、本発明について、より詳細に説明する。
A.微粒炭化タングステン粉A
A−1.原料粉末
<原料の種類>
原料粉としては、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)、タングステン酸アンモニウム(AT)、パラタングステン酸アンモニウム(APT)、タングステン酸、三酸化タングステンなど炭化タングステン粉末を製造する際に通常原料となるタングステン含有化合物粉末を用いることができる。
また、炭素粉末としては、カーボンブラックや活性炭など炭化タングステン粉末を製造する際に通常原料として用いる炭素粉末を用いることができる。
<原料の純度>
原料として用いるタングステン含有化合物および炭素粉末の純度を99.9質量%以上、あるいは、99.99質量%以上とすることにより高純度の炭化タングステン粉末を製造することができる。
A−2.原料粉末の混合
<タングステン含有化合物粉末と炭素粉末の混合比率>
タングステン含有化合物粉末中のW量に対する炭素粉末の炭素量の割合(C/W)が、原子比で1未満では、還元反応生成物中に酸化物が残存する一方、原子比にて2を超えると、還元反応生成物中に占める炭素の割合が多くなり、還元炭化処理後の遊離炭素が多量に残存するおそれがあるため、その割合を1〜2とした。
<原料粉末の混合方法>
タングステン含有化合物粉末と炭素粉末の混合方式は、乾式法および湿式法のいずれの方式でもよく、湿式法を用いる場合の分散媒は、水溶液、有機溶媒のいずれでもよい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、アセトン、ヘキサンなどが一般的であるが、乾燥性、環境負荷等を考慮するとエタノールが好ましい。
A−3.乾燥温度
湿式法により混合されたタングステン含有化合物粉末と炭素粉末は、低温乾燥され、炭素粉末がタングステン含有化合物を担持してなる原料粉末となる。
この乾燥温度が350℃を超えると、タングステン含有化合物の分解反応が起こり、分解後に生成されるタングステン化合物の粗大化により、次工程での加熱還元処理において生成される還元反応生成物の微細化が困難となるおそれがあるため、乾燥温度を350℃以下とした。
A−4.アンモニア(NH)雰囲気中での還元窒化温度
タングステン含有化合物粉末と炭素粉末が混合されて得られた原料粉末は、還元窒化工程において、アンモニア(NH)雰囲気中で還元窒化され、X-ray回折法により立方晶の結晶構造を有する微粒炭化タングステン粉の前駆体である酸窒化タングステン(WON)粉と炭素粉末を混合して含む還元窒化反応生成物を生成する。
アンモニア(NH)雰囲気中での還元窒化温度は、600℃未満では、還元反応および窒化反応が十分には行われないため、前駆体である酸窒化タングステン(WON)の生成が満足に行われず、未反応のタングステン化合物が、次工程での還元炭化反応において、粒成長や粗粒子化の原因となるおそれがあり、また、800℃を超えるとアンモニアによる還元反応が進行し、生成するW粉の粒成長が生じるおそれがあるため、還元窒化温度は600℃〜800℃とした。
アンモニア(NH)雰囲気中での還元窒化は、例えば、原料粉末が配置された還元窒化装置内にアンモニア(NH)気流を導入し、所定温度に加熱することにより行うことができるが、その際の還元窒化装置内へのアンモニア(NH)流量については、特に上限を規定する必要はない。
ただし、流量が少なすぎると還元反応および窒化反応が十分ではなく、前駆体である酸窒化タングステン(WON)の生成が満足に行われず、未反応のタングステン化合物が、次工程での還元炭化反応において、粒成長や粗粒子化の原因となるおそれがあるため、流量は10リットル/分以上が望ましく、処理時間についても同様の理由から未反応のタングステン化合物が生成されず、しかも、長時間処理での粒成長や粗粒子化が起こらない1〜2時間程度が望ましい。
なお、上記では、炭素粉末の分散性の観点から、タングステン含有化合物粉末と炭素粉末を初期の段階で混合し、その後、アンモニア雰囲気中での還元窒化処理を行うことにより、微粒炭化タングステン粉を製造するものとしたが、タングステン含有化合物粉末について、まず還元窒化処理を行い、生成される微粒酸窒化タングステン(WON)粉を炭素粉末と混合し、その後、還元炭化処理、炭化処理を行うことによっても微粒炭化タングステン粉を生成することができる。
A−5.不活性雰囲気中での還元炭化温度
前記還元窒化反応生成物は、還元炭化工程において、窒素、Ar等の不活性雰囲気中で還元炭化され、炭化タングステン(WC)を主体とし、残部をWCと金属タングステン、および、炭素粉末からなり、酸化物や酸窒化物を実質的に含有しない還元炭化反応生成物を生成する。
なお、前述したとおり、本件明細書では、不活性雰囲気とは、窒素、Ar等の不活性雰囲気をいう。
不活性雰囲気中での還元炭化温度が、1000℃未満では、還元反応および炭化反応が十分に進行せず、金属タングステンへの還元が十分に行われないおそれがあるため、不活性雰囲気中での還元炭化温度を1000℃以上とした。
不活性雰囲気中での還元炭化は、例えば、装置内への導入ガスを窒素気流に換えることにより行うことができる。その際の装置内への窒素流量については、流量が少なすぎると未反応のタングステン化合物が、次工程での炭化反応において、粒成長や粗粒子化の原因となるおそれがあるため10リットル/分以上とした。
また、処理時間は、短すぎると未反応のタングステン化合物が、次工程での炭化反応において、粒成長や粗粒子化の原因となるおそれがあり、長すぎると粒成長や粗粒子化が進み、微粒の炭化タングステン粒子が得られなくなるおそれがあるため1〜2時間程度が望ましい。
なお、還元炭化温度の上限は、特に規定していないが、高温での炭化処理は、WC粒子の粒成長や粗粒子化が進み、微粒の炭化タングステン粒子が得られなくなるため、1300℃以下が好ましい。
A−6.水素雰囲気中での炭化温度
前記炭化反応生成物は、炭化工程において、水素雰囲気にて炭化され、微粒炭化タングステン粉が生成する。
水素雰囲気中での炭化温度が、1000℃未満では、炭化反応が十分に進行せず、金属タングステンおよびWCの炭化タングステン(WC)への炭化が十分に行われないおそれがあるため、水素雰囲気中での炭化温度を1000℃以上とする。
また、炭化温度の上限については、WC粒子の粒成長による粗粒子化が進まないよう、1300℃以下が好ましい。
なお、処理時間は、短すぎると未反応のタングステン化合物が残存するおそれがあり、長すぎると粒成長や粗粒子化が進み、微粒の炭化タングステン粒子が得られなくなるおそれがあるため1〜2時間程度が望ましい。
A−7.炭化タングステン粉末
得られた炭化タングステン粉末の比表面積は、ガス吸着法により測定を行い、BET比表面積として示した。また、炭化タングステン粉末の平均粒径については、BET比表面積から算出されるBET法基準の平均粒径として示す。
なお、BET法による平均粒径とは、粒子を球体と見なし比表面積より算出するものであり、以下の式により求めることができる。
平均粒径(nm)={6/(理論密度(g/cm)×比表面積(m/g))}×1000
ここで、理論密度は、炭化タングステンWCについては、15.7(g/cm)であり、酸窒化タングステン(WON)については、12.1(g/cm)である。
B.微粒炭化タングステン粉B
B−1.原料粉末
<原料の種類>
超微粒炭化タングステンを製造するためには、原料となる三酸化タングステンや中間処理により得られるタングステン粉及びタングステン酸化物が微粒であることが求められる。
三酸化タングステンは、種々のタングステン含有化合物を出発原料として、か焼等により製造することができるが、出発原料となるタングステン含有化合物により得られる三酸化タングステンの粒径が相違するため、前述したとおり、出発原料としては、か焼後の三酸化タングステン粒径が微粒であって、BET比表面積の大きい、タングステン酸を用いることとした。また、炭化剤として用いるカーボンブラックなどの炭素粉末についても微粒のものを用いることが望ましく、粒径1.0μm以下のものを用いる。
<原料の純度>
出発原料であるタングステン酸や、カーボンブラックや活性炭などの炭素粉末として、たとえば、99.9質量%以上の高純度のものを用いることにより、99.9質量%以上、さらには、99.99質量%以上の高純度の炭化タングステン粉末を製造することができる。
B−2.製造条件
<か焼による酸化タングステン粉末の製造>
三酸化タングステン粉末の原料として用いられるタングステン酸(WO・HO)のか焼は、熱効率や安全性の面や、三酸化タングステン粉末は低温か焼により粗粒化が抑制される等の特性により、350℃から500℃の温度域にて実施することが好ましく、粒径が3〜4μm(FSSS法基準)、BET比表面積が20m/gを超えるタングステン酸由来の三酸化タングステン粉末を得ることができる。特に、大気雰囲気または不活性雰囲気における低温か焼により微粒化でき、350℃では、BET値が30m/g以上のものが得られた。特に、大気雰囲気または窒素雰囲気における低温か焼により微粒化でき、350℃では、BET値が30m/g以上のものが得られた。
前記タングステン酸を出発原料とする三酸化タングステン粉末は、か焼により高BET値の粒子が得られるものの、凝集が生じるため、ジェットミルなどにより解砕することにより、凝集のない300nm以下の微粒粒子を得ることができる。
なお、前述したとおり、本件明細書および特許請求の範囲では、不活性雰囲気とは、窒素、Ar等の不活性雰囲気をいう。
<原料粉末の混合>
(1)三酸化タングステン粉末と炭素粉末の混合比率
三酸化タングステン粉末中のW量に対する炭素粉末の炭素量の割合(C/W)が、原子比で1未満では、還元反応生成物中に酸化物が残存する一方、原子比にて2を超えると、還元反応生成物中に占めるWCの割合が多くなり、還元炭化処理後の遊離炭素が多量に残存することになるため、その割合を1〜2とした。
(2)原料粉末の混合方法
三酸化タングステン粉末と炭素粉末の混合方式は、乾式法および湿式法のいずれの方式でもよく、湿式法を用いる場合の分散媒は、水溶液、有機溶媒のいずれでもよい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、アセトン、ヘキサンなどが一般的であるが、乾燥性、環境負荷等を考慮するとエタノールが好ましい。
<三酸化タングステン粉末のβ-W(WO)粉末への還元>
本直接還元・炭化法においては、タングステン酸から得られた三酸化タングステンに対し、炭素粉末を混合した後、処理炉において、水素還元雰囲気、たとえば、水素気流中にて、500℃以下、たとえば、特に、450〜500℃にて2時間以上保持することにより、三酸化タングステンから微粒のβ-W(WO)粉末への還元を、炭素と反応させることなく、炭素を残存させた状態にて行うことができ、大気(酸化雰囲気)中に暴露することなく次工程(炭化処理)へ進めることができるため、一部、金属タングステンが生成する場合も含めて、きわめて安全に微粒のβ-W(WO)粉末を製造し、また、取り扱うことができる。
なお、処理炉における水素流量は、特に上限を規定する必要はないが、流量が少なすぎると還元反応が十分でなく、前駆体であるβ-W(WO)の生成が満足に行われないので、10リットル/分以上が望ましい。
<β-W(WO)粉末の炭化による炭化タングステン粉末の製造>
本直接還元・炭化法においては、還元された微粒のβ-W(WO)粉末と残存する炭素粉末について、異なる還元炉にて、もしくは、引き続き同じ還元炉において、水素雰囲気下または不活性雰囲気下にて、1000℃以上まで昇温し、30〜120分間保持する炭化工程を経ることにより、BET比表面積が6.41m/g以上、BET法基準の粒径が60nm以下、さらには、BET比表面積が9.50m/g以上、BET法基準の粒径が40nm以下のナノレベルの炭化タングステン粉末を製造することができた。
なお、段落0020の前記A−7にても説明したとおり、BET法による平均粒径とは、粒子を球体と見なし比表面積より算出するものであり、以下の式により求めることができる。
平均粒径(nm)={6/(理論密度(g/cm)×比表面積(m/g))}×1000
ここで、理論密度は、炭化タングステンWCについては、15.7(g/cm)を、β-W(WO)については、14.6(g/cm)を、三酸化タングステン(WO)については、7.16(g/cm)を、金属タングステンについては、19.3(g/cm)を用いた。
本発明は、従来の超微粒炭化タングステン粉末、特に、従来の超硬質材料用として知られた微粒炭化タングステン粉末よりも一層微粒化された超微粒炭化タングステン粉末を提供するものであり、本発明に係る超微粒炭化タングステン粉末を用いて製造される焼結体や切削工具は、強度や硬度などの特性において一段と優れたものとなることから、極めて有用なものである。
つぎに、本発明に係る超微粒炭化タングステン粉末について、実施例により具体的に説明する。
表1には、実施例1として、知見1に基づいて製造された、微粒炭化タングステン粉Aの実施例である本発明例1〜11を示すとともに、あわせて、前記先行技術文献に記載された中で、硬質材料用原料として知られた超微粒の炭化タングステン粉であって従来法により製造された超微粒炭化タングステン粉を従来例1として示す。
そして、具体的に、表1には、本発明例1〜11、および、従来例1について、原料として用いたW含有化合物原料の種類とFSSS平均粒径(μm)、炭素原料粉の種類とBET値(m/g)、C/Wの原子比、及び、W含有化合物原料と炭素原料粉との混合方式を示す。
また、合わせて、還元窒化工程における、還元窒化温度、処理時間、雰囲気ガスおよびその流量、還元窒化反応生成物の生成相の種類、BET値(m/g)、N%、O%、C%について示すとともに、還元炭化工程における、還元温度、処理時間、雰囲気ガスおよび流量、還元炭化反応生成物の生成相の種類とBET値(m/g)、および、炭化工程における、処理温度、処理時間、雰囲気ガス、および、得られた炭化タングステン粉の特性値(BET比表面積、BET換算粒径、炭素量、Fe含有量)を示す。
表1に示すように、本発明例1〜11では、タングステン含有化合物原料として、AMT、APT、三酸化タングステン、および、タングステン酸を用意し、炭素原料粉としては、平均粒径が0.1μm以下のカーボンブラック、または、活性炭を用意し、湿式混合においては、純水、または、エタノールまたはメタノールを溶媒として攪拌機、またはアトライター等の混合装置にて混合しスラリーとし、350℃にて低温乾燥を行い、原料粉末を得た。また、乾式混合においても同様の混合装置を乾式で用いて混合し、原料粉末を得た。
次いで、前記原料粉末を、アンモニア(NH)雰囲気中にて、600〜800℃の温度にて、還元窒化を行い、還元窒化反応生成物の一部を取り出し、XRD(X線回折)法により確認したところ、本発明例のものでは、いずれも、立方晶の結晶構造を有する酸窒化タングステン(WON)が生成していることを確認した。
なお、酸窒化タングステン(WON)のBET比表面積に関して、酸窒化タングステン(WON)は、炭素微粒粉と混合した状態で微粒化しているため、炭素微粒粉を除いた状態での酸窒化タングステン(WON)のみでのBET比表面積として求めた。
次いで、不活性雰囲気としては窒素雰囲気を用い、前記還元窒化反応生成物を窒素雰囲気中1000℃以上にて所定時間保持し、還元および炭化して得られた還元炭化反応生成物の一部を取り出しXRD(X線回折)法にて確認したところ、本発明例のものはいずれも、炭化タングステン(WC)を主体とし、残部をWCと金属タングステンからなるものであった。
次いで、還元炭化反応生成物を水素雰囲気中1000℃以上にて所定時間保持し、炭化を行い、得られた炭化反応生成物をX線回折にて確認したところ、本発明例のものでは、還元炭化反応生成物はいずれも、炭化タングステン(WC)となっていた。
また、BET法により得られたBET比表面積はいずれも6.41m/g以上を有するものであり、BET換算の平均粒径は、60nm以下のナノレベルの炭化タングステンが得られていた。
これに対し、従来例1では、還元窒化工程を経ておらず、微粒の酸窒化タングステン(WON)が中間生成物として得られていないため、従来例1では、製造された炭化タングステン粉は、BET比表面積は3.20m/gと小さく、BET換算粒径は119nmであり、サブミクロンオーダーの粒径を有するものであった。
また、表2には、本発明例1〜11、および、従来例1にて得られた炭化タングステン粉末を用い、1800℃、加圧力30MPaの条件にてホットプレス焼結を行うことによって得られた焼結体について、その硬度、抗折力および密度を示す。本発明例1〜11の炭化タングステン粉末を用いて製造されたWC焼結体は、いずれも、ビッカース硬度2100kg/mm以上、抗折力120kg/mm以上、および、密度は98.1%以上であり、従来品である従来例1に対し、硬度、抗折力、および、密度のいずれにおいてもはるかに優れたものとなっていた。

表3には、実施例2として、知見2に基づいて製造された、微粒炭化タングステン粉Bの実施例である本発明例21〜26を示し、あわせて、比較例である炭化タングステン粉として、本発明例に係る製造方法において、一部の製造条件を変更して得られた、比較例21および比較例22を示し、さらに、従来例の炭化タングステン粉として、前記先行技術文献に記載された中で、硬質材料用原料として知られた超微粒の炭化タングステン粉である従来例2を示す。
比較例21は、本発明例に対し、還元工程における還元温度範囲が外れているものであって、従来の超微粒炭化タングステン粉である従来例2と同等レベルの比表面積、および、BET法換算粒径を有するものである。
また、比較例22は、本発明例に対して、炭化工程における炭化温度範囲が外れているものである。
そして、表3において、具体的には、本発明例21〜26、および、比較例21、22については、直接還元・炭化法を用いて炭化タングステン粉末を製造した際のか焼工程、還元工程、炭化工程における製造条件、および、出発原料粉末の特性や各工程で生成する三酸化タングステン粉末、β-W(WO)粉末、炭化後の炭化タングステン粉末、および、金属タングステン粉末の特性値を測定、整理したものを示し、従来例2においては、従来法の各工程における製造条件、および、原料粉末の特性値や得られた炭化タングステン粉末の特性値を示す。
本発明の実施例である本発明例21〜26では、か焼工程においては、純度99.9質量%のタングステン酸を原料粉末として、大気雰囲気下または窒素雰囲気下350℃〜500℃にてか焼を行うことにより、粒径が3〜4μm(FSSS法基準)、BET比表面積が20m/gを超えるタングステン酸由来の三酸化タングステン粉末を得た。
次いで、混合工程において、前記三酸化タングステン粉末と粒径が0.1μm以下であって、純度99.9質量%のカーボンブラックとを混合した後、還元工程において、水素雰囲気下500℃以下にて還元を行い、得られた反応生成物をXRD(X線回折)法により確認したところ、立方晶の結晶構造を有するβ-W(WO)とカーボンブラックとの微細な混合粉が得られていることを確認した。
さらに、得られた微粒のβ−W(WO)とカーボンブラックとの混合粉を、炭化工程において、水素還元雰囲気下、1000℃以上に加熱し炭化処理を行うことにより、BET比表面積が6.41m/g以上、BET法による平均粒径が60nm以下であり、Fe含有量が30ppm以下の高純度微粒炭化タングステン粉末を得ることができた。
そして、ここで得られた本発明に係る微粒炭化タングステン粉末は、従来より硬質材料用原料として知られた微粒炭化タングステン粉末、すなわち、BET比表面積が5.38m/g、BET法換算による平均粒径は71nmである、従来例2の微粒炭化タングステン粉末に対し、更なる微粒化を実現したものである。
なお、従来例2は、三酸化タングステン粉を原料とし、これをアセチレンブラックと混合し、窒素中1100℃にて還元処理を行なった後、水素中1100℃にて炭化処理を行い、炭化タングステン粉末を製造するものであるが、還元工程における還元温度が高く、雰囲気も異なり、XRDにてβ-W(WO)粉の生成については確認できなかった。
また、比較例21は、原料の純度およびか焼条件において、本発明例21〜26と一致するものの、還元工程における還元温度が600℃であって、本発明の還元温度範囲を超えているため、構成相としてβ-W(WO)が生成しておらず、炭化工程を経て得られる炭化タングステン粉のBET比表面積は5.70m/g、BET法換算による平均粒径は67nmであり、ほぼ従来例2の炭化タングステン粉末と同等レベルのBET換算粒径にとどまるものであった。
また、比較例22は、原料の純度およびか焼条件、還元工程での還元条件において、本発明例21〜26と一致し、さらに、β-W(WO)粉が生成しているものの、炭化工程における炭化温度が低いため、炭化タングステン(WC)の生成が十分ではなく、WCが残存する結果、目的とする炭化タングステン(WC)粉を得ることはできなかった。
なお、表3のβ-W(WO)のBET比表面積については、β-W(WO)が、炭素の微粒粉と混合した状態で微粒化しており、単独で直接測定することができないため、原料として、炭素の微粒粉を含まない、β-W(WO)のみを還元生成した場合の値を記す。
次に、本発明例21〜26および比較例21として得られた微粒炭化タングステン粉末について、超硬製ボールミルにて解砕を行った後、解砕粉を金型に充填し、ホットプレスにて30MPaで加圧しながら、1800℃まで昇温し、30分保持することにより焼結を行い、WC焼結体を得た。
表4に、本発明例21〜26、および、比較例21にて得られたWC焼結体について、測定された硬度、密度および抗折力値を示す。
本発明例21〜26にて得られた超微粒炭化タングステン粉末を用いて製造されたWC焼結体は、いずれも、ビッカース硬度2300kg/mm以上、抗折力170kg/mm以上、密度は99.5%以上であり、高硬度、高密度、高抗折力という優れた特性を有する、炭化タングステン焼結体であった。これに対して、比較例21の炭化タングステン粉末を用いて製造される、炭化タングステン焼結体は、ビッカース硬度1850kg/mm、抗折力130kg/mm、密度は98.7%レベルであり、本発明例21〜26にて得られる炭化タングステン焼結体に比較し、硬度、抗折力、および、密度のいずれにおいても、著しく劣ったものとなっていた。
そして、かかる点は、本発明例21〜26にて得られた超微粒炭化タングステン粉末を用いて製造されるWC焼結体と、比較例21のタングステン粉末と同程度のBET比表面積、および、BET法換算の平均粒径を有する従来例2の炭化タングステン粉末を用いて製造されるWC焼結体との対比においても同様であることが推定される。


本発明は、炭化タングステン粉末の製造過程において、微粒の中間生成物、あるいは、炭化タングステン粉の前駆体として、従来得られなかった、微粒の酸窒化タングステン(WON)、あるいは、β-W(WO)を生成させ、これらを経由させることにより得られた、超微粒の炭化タングステン粉であり、例えば、6.41m/g以上の高BET比表面積を有し、BET法換算の平均粒径が60nm以下である、ナノレベルの超微粒炭化タングステン粉、さらには、9.50m/g以上の高BET比表面積を有し、BET法換算の平均粒径が40nm以下である、従来法では得られなかった、新規なナノレベルの超微粒炭化タングステン粉を提供するものである。
しかも、本発明に係る超微粒炭化タングステン粉を用いて製造された焼結体は従来の微粒炭化タングステン粉を用いた焼結体に対し、さらなる高強度、高硬度および高密度を有することから、切削工具や、金型などの塑性加工用耐摩工具としてきわめて有用なものである。

Claims (4)

  1. BET比表面積が、6.41m/g以上であり、BET法による平均粒径が60nm以下であることを特徴とする微粒炭化タングステン粉末。
  2. BET比表面積が、9.50m/g以上であり、BET法による平均粒径が40nm以下であることを特徴とする微粒炭化タングステン粉末。
  3. 請求項1または請求項2に記載された微粒炭化タングステン粉末において、Fe含有量
    が30ppm以下であることを特徴とする高純度微粒炭化タングステン粉末。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載された超硬質材料用の微粒炭化タングステン粉末。」
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