JP2018165235A - 微粒炭化タングステン粉末 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、具体的には、BET比表面積が5.73m2/gであり、BET法換算にて平均粒径が67nmであって、鉄の含有量が29ppmである超微粒WC粉が得られている。
そして、具体的には、FSSS法基準にて、0.6μmの平均粒子径を有し、Si、Ca、Feを含む不純物元素の総含有量が200ppmである微粒WC粉が得られている。
したがって、本発明は、炭化タングステン粉末の一層の微粒化や高純度化への検討を行うことにより、前記した従来の微粒炭化タングステン粉末、具体的には、BET比表面積は最大で5.7m2/gレベル、すなわち、BET法換算による平均粒径では、最小で67nmレベルの微粒炭化タングステン粉末に対して、さらなる超微粒化、加えて、さらなる高純度化を進め、特に、高硬度、高密度の切削工具や耐摩耗工具を製造する際に用いられる超硬合金やセラミックス焼結体の原料粉となる新規な超微粒炭化タングステン粉末を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、従来の微粒炭化タングステン粉末の製造方法、例えば、前記特許文献2に記載した従来の微粒炭化タングステン粉の製造方法において、その製造工程を見直し、調製した原料粉末を低温乾燥した後、引き続き行っていた窒素雰囲気下における還元炭化処理に先立ち、新たにアンモニア(NH3)雰囲気下にて還元窒化処理を行い、その後、窒素、Ar等の不活性雰囲気(以下、「不活性雰囲気」という。)下における還元炭化処理、次いで、水素雰囲気下における炭化処理を行うことにより、より微細化した新規な炭化タングステン粉末を得ることができることを見出したものである。(以下、「知見1」という。)
すなわち、本発明者らは、アンモニア(NH3)雰囲気での還元窒化処理後の反応生成物についてXRDスペクトルにより確認を行ったところ、還元窒化反応生成物として、酸窒化タングステン(WON)が生成していることが明らかとなり、しかも、生成した酸窒化タングステン(WON)粉のBET比表面積は10〜50m2/gと極めて高いものであり、きわめて微粒のものであった。
そして、前記微粒の酸窒化タングステン(WON)が生成することにより、最終生成物である炭化タングステンの微粒化が進むため、アンモニア(NH3)雰囲気での還元窒化処理温度を、例えば600〜800℃とすることにより、還元窒化反応生成物に占める酸窒化タングステン(WON)の比率が高まり、最終生成物として、BET比表面積が6.41m2/g以上、BET法換算による平均粒径が60nm以下、さらには、BET比表面積が9.50m2/g以上、BET法換算による平均粒径が40nm以下である微粒炭化タングステン粉末が得られることを見出した。
また、その際に、原料として高純度のものを用いることにより、不純物として含有されるFeの含有量を30ppm以下、さらには、20ppm以下とした、高純度微粒炭化タングステン粉末が得られることを見出したものである。
ここで、この知見1に基づいて製造された微粒炭化タングステン粉を、以下、「微粒炭化タングステン粉A」という。
なお、本発明に係る炭化タングステン粉末が、従来の微粒炭化タングステン粉末に対してきわめて微粒となる理由については、まず、アンモニア(NH3)雰囲気での還元窒化工程にて、炭化タングステン粉末の前駆体としてきわめて微細な酸窒化タングステンを製造することができたことに加え、それ以降の工程である、窒素中での還元炭化工程、および、水素中での炭化工程において、前記酸窒化タングステンが、粒成長を伴わず還元炭化が進行する製造条件を見出したことよるものと推定される。
そして、このような製造工程にて得られた、本発明にかかる超微粒炭化タングステン粉末は、従来の製造法にては製造することのできない超微粒レベルのものである。
また、本発明者らは、前記特許文献4などに記載された、従来の、例えば、原料であるパラタングステン酸アンモニウム(APT)等から三酸化タングステンを得た後、これを金属タングステンに還元し、これをさらに炭素と混合加熱し、炭化タングステン粉末を得るという還元・炭化法による微粒炭化タングステンの製造方法について、新たな知見による新規な製造プロセスの検討を行い、従来の微粒炭化タングステン粉末に比べ、より微粒の新規な炭化タングステン粉末が得られることを知見した。(以下、「知見2」という。)
(ア)炭化タングステン粉末の製造法において、まず、微粒の炭化タングステン粉末を製
造するためには、その原料粉となる三酸化タングステンの微粒粉を得ることが求められるが、この三酸化タングステンの製造に際して、現状では、出発原料として、例えば、APT等を用い、これをか焼することにより、三酸化タングステンを得ている。
しかしながら、APTのか焼温度は、500℃未満ではか焼が不十分であることから、一般的には500℃〜900℃の範囲であり、得られる三酸化タングステン(WO3)粉の平均粒子径も18〜20μm(FSSS法)と大きく、BET比表面積は最大値となる500℃でも高々9.6m2/g程度であった。
これに対し、本発明者らは、出発原料としてタングステン酸(WO3・H2O)を用い、大気雰囲気、または、窒素、Ar等の不活性雰囲気(以下、「不活性雰囲気」という。)にて、か焼を行う場合には、か焼温度を350℃から900℃までの範囲まで拡大できることができ、特に500℃以下の低温域においても十分なか焼が行えるため、熱効率の面からきわめて有利であることに加え、得られる三酸化タングステン(WO3)粉の平均粒子径は、フィッシャー法において3〜4μmとAPTを原料としたものに比較し極めて小粒径のものであって、しかも、低温でのか焼ほど微粒化でき、例えば、窒素雰囲気下350℃にてか焼が行われた場合には、平均粒子径が3〜4μm(さらに解砕後は0.22μm)、BET比表面積が34m2/gを超える微粒の三酸化タングステン(WO3)粉が得られることを見出した。
この還元工程においては、通常、600〜800℃において還元し、WO3→WO2.9→WO2.72→WO2を経て金属タングステンを得ており、ここで得られる金属タングステンの粒径は、BET法による測定ではBET比表面積は、7〜10m2/gであり、平均粒径はBET法基準にて31〜44nmであるのに対し、本発明者らは、この三酸化タングステンの還元工程を500℃以下の温度にて行うことにより、従来よりも微粒であり、BET比表面積が15〜35m2/g、平均粒径がBET法基準にて12〜27nmである微粒のβ-W(W3O)が得られ、かかる微粒のβ-W(W3O)を炭素粉末と混合し、加熱炭化することにより、従来より微粒の炭化タングステン粉末が製造できることを見出した。
すなわち、三酸化タングステンから微粒炭化タングステンを製造する方法としては、三酸化タングステン粉末と所定量の炭素粉末を混合・加熱し、三酸化タングステンから金属タングステンへの還元と炭化タングステン(WC、W2C)への炭化を同時に進める炭化法が知られているが、本発明者らは、出発原料となるタングステン酸から得られた三酸化タングステンについて、添加する炭素粉末の種類やタングステン量に対する添加量、反応温度、反応時間等の条件を変更し、得られる反応生成物をXRDにて確認したところ、500℃以下での還元処理では、金属タングステン粉及びβ-W(W3O)粉への還元反応は進行するものの、得られた金属タングステン粉及びβ-W(W3O)粉からの炭化物生成は行われないことを新たに見出した。
そこで、本発明者らは、水素還元炉にて、500℃以下の温度にて、所定時間、水素還元を行うことにより、三酸化タングステンから微細なβ-W(W3O)を得て、その後、異なる還元炉にて、もしくは、引き続き同じ還元炉にて、水素雰囲気下、または不活性雰囲気下にて、1000℃以上にて炭化を行うことにより、発火等を伴わない、より安全な工程により、微粒炭化タングステン粉末を製造することができることを見出し、しかも、処理温度や処理時間を調整することにより、炭化工程後には、BET比表面積が6.41m2/g以上、BET法基準の平均粒径が60nm以下のナノレベルの炭化タングステン粉末、さらには、BET比表面積が9.50m2/g以上、BET法基準の平均粒径が40nm以下のナノレベルの炭化タングステン粉末を製造できることを見出した。
また、その際に、原料として高純度のものを用いることにより、不純物として含有されるFeの含有量を30ppm以下とした、高純度微粒炭化タングステン粉末が得られることを見出したものである。
ここで、知見2に基づいて製造された新規な微粒炭化タングステン粉を、以下、「微粒炭化タングステン粉B」という。
なお、本発明において、得られる炭化タングステン粉末が、従来の微粒炭化タングステン粉末に対してきわめて微粒となる理由については、原料粉として、きわめて微粒の三酸化タングステン(WO3)粉を得て、これを用いたことに加え、水素還元工程において炭化タングステン粉の前駆体となる微粒のβ-W(W3O)を製造し、以降の工程においても粒成長を伴わない製造条件を見出したことによるものと推定される。
そして、このような製造工程にて得られた、本発明にかかる超微粒炭化タングステン粉末は、従来の製造法にては製造することのできない超微粒レベルのものである。
「(1)BET比表面積が、6.41m2/g以上であり、BET法による平均粒径が60nm以下であることを特徴とする微粒炭化タングステン粉末。
(2)BET比表面積が、9.50m2/g以上であり、BET法による平均粒径が40nm以下であることを特徴とする微粒炭化タングステン粉末。
(3) (1)または(2)に記載された微粒炭化タングステン粉末において、Fe含有量が30ppm以下であることを特徴とする高純度微粒炭化タングステン粉末。
(4) (1)乃至(3)のいずれか一つに記載された超硬質材料用の微粒炭化タングステン粉末。」
に特徴を有するものである。
特に、本発明にかかる微粒炭化タングステン粉末は、その製造工程において、炭化タングステン粉の前駆体として、きわめて微粒の中間生成物である、酸窒化タングステン(WON)、または、β-W(W3O)を新規に生成させることにより、従来法においては、達成することができなかったナノレベルの新規な超微粒炭化タングステン粉末を提供するものであり、従来の微粒炭化タングステン粉末を用いた焼結工具などに対し、より高強度、高硬度、高密度であって、抗折力に優れた焼結製品を提供することができるものである。
A.微粒炭化タングステン粉A
A−1.原料粉末
<原料の種類>
原料粉としては、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)、タングステン酸アンモニウム(AT)、パラタングステン酸アンモニウム(APT)、タングステン酸、三酸化タングステンなど炭化タングステン粉末を製造する際に通常原料となるタングステン含有化合物粉末を用いることができる。
また、炭素粉末としては、カーボンブラックや活性炭など炭化タングステン粉末を製造する際に通常原料として用いる炭素粉末を用いることができる。
<原料の純度>
原料として用いるタングステン含有化合物および炭素粉末の純度を99.9質量%以上、あるいは、99.99質量%以上とすることにより高純度の炭化タングステン粉末を製造することができる。
A−2.原料粉末の混合
<タングステン含有化合物粉末と炭素粉末の混合比率>
タングステン含有化合物粉末中のW量に対する炭素粉末の炭素量の割合(C/W)が、原子比で1未満では、還元反応生成物中に酸化物が残存する一方、原子比にて2を超えると、還元反応生成物中に占める炭素の割合が多くなり、還元炭化処理後の遊離炭素が多量に残存するおそれがあるため、その割合を1〜2とした。
<原料粉末の混合方法>
タングステン含有化合物粉末と炭素粉末の混合方式は、乾式法および湿式法のいずれの方式でもよく、湿式法を用いる場合の分散媒は、水溶液、有機溶媒のいずれでもよい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、アセトン、ヘキサンなどが一般的であるが、乾燥性、環境負荷等を考慮するとエタノールが好ましい。
A−3.乾燥温度
湿式法により混合されたタングステン含有化合物粉末と炭素粉末は、低温乾燥され、炭素粉末がタングステン含有化合物を担持してなる原料粉末となる。
この乾燥温度が350℃を超えると、タングステン含有化合物の分解反応が起こり、分解後に生成されるタングステン化合物の粗大化により、次工程での加熱還元処理において生成される還元反応生成物の微細化が困難となるおそれがあるため、乾燥温度を350℃以下とした。
タングステン含有化合物粉末と炭素粉末が混合されて得られた原料粉末は、還元窒化工程において、アンモニア(NH3)雰囲気中で還元窒化され、X-ray回折法により立方晶の結晶構造を有する微粒炭化タングステン粉の前駆体である酸窒化タングステン(WON)粉と炭素粉末を混合して含む還元窒化反応生成物を生成する。
アンモニア(NH3)雰囲気中での還元窒化温度は、600℃未満では、還元反応および窒化反応が十分には行われないため、前駆体である酸窒化タングステン(WON)の生成が満足に行われず、未反応のタングステン化合物が、次工程での還元炭化反応において、粒成長や粗粒子化の原因となるおそれがあり、また、800℃を超えるとアンモニアによる還元反応が進行し、生成するW粉の粒成長が生じるおそれがあるため、還元窒化温度は600℃〜800℃とした。
アンモニア(NH3)雰囲気中での還元窒化は、例えば、原料粉末が配置された還元窒化装置内にアンモニア(NH3)気流を導入し、所定温度に加熱することにより行うことができるが、その際の還元窒化装置内へのアンモニア(NH3)流量については、特に上限を規定する必要はない。
ただし、流量が少なすぎると還元反応および窒化反応が十分ではなく、前駆体である酸窒化タングステン(WON)の生成が満足に行われず、未反応のタングステン化合物が、次工程での還元炭化反応において、粒成長や粗粒子化の原因となるおそれがあるため、流量は10リットル/分以上が望ましく、処理時間についても同様の理由から未反応のタングステン化合物が生成されず、しかも、長時間処理での粒成長や粗粒子化が起こらない1〜2時間程度が望ましい。
なお、上記では、炭素粉末の分散性の観点から、タングステン含有化合物粉末と炭素粉末を初期の段階で混合し、その後、アンモニア雰囲気中での還元窒化処理を行うことにより、微粒炭化タングステン粉を製造するものとしたが、タングステン含有化合物粉末について、まず還元窒化処理を行い、生成される微粒酸窒化タングステン(WON)粉を炭素粉末と混合し、その後、還元炭化処理、炭化処理を行うことによっても微粒炭化タングステン粉を生成することができる。
前記還元窒化反応生成物は、還元炭化工程において、窒素、Ar等の不活性雰囲気中で還元炭化され、炭化タングステン(WC)を主体とし、残部をW2Cと金属タングステン、および、炭素粉末からなり、酸化物や酸窒化物を実質的に含有しない還元炭化反応生成物を生成する。
なお、前述したとおり、本件明細書では、不活性雰囲気とは、窒素、Ar等の不活性雰囲気をいう。
不活性雰囲気中での還元炭化温度が、1000℃未満では、還元反応および炭化反応が十分に進行せず、金属タングステンへの還元が十分に行われないおそれがあるため、不活性雰囲気中での還元炭化温度を1000℃以上とした。
不活性雰囲気中での還元炭化は、例えば、装置内への導入ガスを窒素気流に換えることにより行うことができる。その際の装置内への窒素流量については、流量が少なすぎると未反応のタングステン化合物が、次工程での炭化反応において、粒成長や粗粒子化の原因となるおそれがあるため10リットル/分以上とした。
また、処理時間は、短すぎると未反応のタングステン化合物が、次工程での炭化反応において、粒成長や粗粒子化の原因となるおそれがあり、長すぎると粒成長や粗粒子化が進み、微粒の炭化タングステン粒子が得られなくなるおそれがあるため1〜2時間程度が望ましい。
なお、還元炭化温度の上限は、特に規定していないが、高温での炭化処理は、WC粒子の粒成長や粗粒子化が進み、微粒の炭化タングステン粒子が得られなくなるため、1300℃以下が好ましい。
前記炭化反応生成物は、炭化工程において、水素雰囲気にて炭化され、微粒炭化タングステン粉が生成する。
水素雰囲気中での炭化温度が、1000℃未満では、炭化反応が十分に進行せず、金属タングステンおよびW2Cの炭化タングステン(WC)への炭化が十分に行われないおそれがあるため、水素雰囲気中での炭化温度を1000℃以上とする。
また、炭化温度の上限については、WC粒子の粒成長による粗粒子化が進まないよう、1300℃以下が好ましい。
なお、処理時間は、短すぎると未反応のタングステン化合物が残存するおそれがあり、長すぎると粒成長や粗粒子化が進み、微粒の炭化タングステン粒子が得られなくなるおそれがあるため1〜2時間程度が望ましい。
得られた炭化タングステン粉末の比表面積は、ガス吸着法により測定を行い、BET比表面積として示した。また、炭化タングステン粉末の平均粒径については、BET比表面積から算出されるBET法基準の平均粒径として示す。
なお、BET法による平均粒径とは、粒子を球体と見なし比表面積より算出するものであり、以下の式により求めることができる。
平均粒径(nm)={6/(理論密度(g/cm3)×比表面積(m2/g))}×1000
ここで、理論密度は、炭化タングステンWCについては、15.7(g/cm3)であり、酸窒化タングステン(WON)については、12.1(g/cm3)である。
B−1.原料粉末
<原料の種類>
超微粒炭化タングステンを製造するためには、原料となる三酸化タングステンや中間処理により得られるタングステン粉及びタングステン酸化物が微粒であることが求められる。
三酸化タングステンは、種々のタングステン含有化合物を出発原料として、か焼等により製造することができるが、出発原料となるタングステン含有化合物により得られる三酸化タングステンの粒径が相違するため、前述したとおり、出発原料としては、か焼後の三酸化タングステン粒径が微粒であって、BET比表面積の大きい、タングステン酸を用いることとした。また、炭化剤として用いるカーボンブラックなどの炭素粉末についても微粒のものを用いることが望ましく、粒径1.0μm以下のものを用いる。
<原料の純度>
出発原料であるタングステン酸や、カーボンブラックや活性炭などの炭素粉末として、たとえば、99.9質量%以上の高純度のものを用いることにより、99.9質量%以上、さらには、99.99質量%以上の高純度の炭化タングステン粉末を製造することができる。
<か焼による酸化タングステン粉末の製造>
三酸化タングステン粉末の原料として用いられるタングステン酸(WO3・H2O)のか焼は、熱効率や安全性の面や、三酸化タングステン粉末は低温か焼により粗粒化が抑制される等の特性により、350℃から500℃の温度域にて実施することが好ましく、粒径が3〜4μm(FSSS法基準)、BET比表面積が20m2/gを超えるタングステン酸由来の三酸化タングステン粉末を得ることができる。特に、大気雰囲気または不活性雰囲気における低温か焼により微粒化でき、350℃では、BET値が30m2/g以上のものが得られた。特に、大気雰囲気または窒素雰囲気における低温か焼により微粒化でき、350℃では、BET値が30m2/g以上のものが得られた。
前記タングステン酸を出発原料とする三酸化タングステン粉末は、か焼により高BET値の粒子が得られるものの、凝集が生じるため、ジェットミルなどにより解砕することにより、凝集のない300nm以下の微粒粒子を得ることができる。
なお、前述したとおり、本件明細書および特許請求の範囲では、不活性雰囲気とは、窒素、Ar等の不活性雰囲気をいう。
(1)三酸化タングステン粉末と炭素粉末の混合比率
三酸化タングステン粉末中のW量に対する炭素粉末の炭素量の割合(C/W)が、原子比で1未満では、還元反応生成物中に酸化物が残存する一方、原子比にて2を超えると、還元反応生成物中に占めるWCの割合が多くなり、還元炭化処理後の遊離炭素が多量に残存することになるため、その割合を1〜2とした。
(2)原料粉末の混合方法
三酸化タングステン粉末と炭素粉末の混合方式は、乾式法および湿式法のいずれの方式でもよく、湿式法を用いる場合の分散媒は、水溶液、有機溶媒のいずれでもよい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、アセトン、ヘキサンなどが一般的であるが、乾燥性、環境負荷等を考慮するとエタノールが好ましい。
本直接還元・炭化法においては、タングステン酸から得られた三酸化タングステンに対し、炭素粉末を混合した後、処理炉において、水素還元雰囲気、たとえば、水素気流中にて、500℃以下、たとえば、特に、450〜500℃にて2時間以上保持することにより、三酸化タングステンから微粒のβ-W(W3O)粉末への還元を、炭素と反応させることなく、炭素を残存させた状態にて行うことができ、大気(酸化雰囲気)中に暴露することなく次工程(炭化処理)へ進めることができるため、一部、金属タングステンが生成する場合も含めて、きわめて安全に微粒のβ-W(W3O)粉末を製造し、また、取り扱うことができる。
なお、処理炉における水素流量は、特に上限を規定する必要はないが、流量が少なすぎると還元反応が十分でなく、前駆体であるβ-W(W3O)の生成が満足に行われないので、10リットル/分以上が望ましい。
本直接還元・炭化法においては、還元された微粒のβ-W(W3O)粉末と残存する炭素粉末について、異なる還元炉にて、もしくは、引き続き同じ還元炉において、水素雰囲気下または不活性雰囲気下にて、1000℃以上まで昇温し、30〜120分間保持する炭化工程を経ることにより、BET比表面積が6.41m2/g以上、BET法基準の粒径が60nm以下、さらには、BET比表面積が9.50m2/g以上、BET法基準の粒径が40nm以下のナノレベルの炭化タングステン粉末を製造することができた。
なお、段落0020の前記A−7にても説明したとおり、BET法による平均粒径とは、粒子を球体と見なし比表面積より算出するものであり、以下の式により求めることができる。
平均粒径(nm)={6/(理論密度(g/cm3)×比表面積(m2/g))}×1000
ここで、理論密度は、炭化タングステンWCについては、15.7(g/cm3)を、β-W(W3O)については、14.6(g/cm3)を、三酸化タングステン(WO3)については、7.16(g/cm3)を、金属タングステンについては、19.3(g/cm3)を用いた。
そして、具体的に、表1には、本発明例1〜11、および、従来例1について、原料として用いたW含有化合物原料の種類とFSSS平均粒径(μm)、炭素原料粉の種類とBET値(m2/g)、C/Wの原子比、及び、W含有化合物原料と炭素原料粉との混合方式を示す。
また、合わせて、還元窒化工程における、還元窒化温度、処理時間、雰囲気ガスおよびその流量、還元窒化反応生成物の生成相の種類、BET値(m2/g)、N%、O%、C%について示すとともに、還元炭化工程における、還元温度、処理時間、雰囲気ガスおよび流量、還元炭化反応生成物の生成相の種類とBET値(m2/g)、および、炭化工程における、処理温度、処理時間、雰囲気ガス、および、得られた炭化タングステン粉の特性値(BET比表面積、BET換算粒径、炭素量、Fe含有量)を示す。
表1に示すように、本発明例1〜11では、タングステン含有化合物原料として、AMT、APT、三酸化タングステン、および、タングステン酸を用意し、炭素原料粉としては、平均粒径が0.1μm以下のカーボンブラック、または、活性炭を用意し、湿式混合においては、純水、または、エタノールまたはメタノールを溶媒として攪拌機、またはアトライター等の混合装置にて混合しスラリーとし、350℃にて低温乾燥を行い、原料粉末を得た。また、乾式混合においても同様の混合装置を乾式で用いて混合し、原料粉末を得た。
なお、酸窒化タングステン(WON)のBET比表面積に関して、酸窒化タングステン(WON)は、炭素微粒粉と混合した状態で微粒化しているため、炭素微粒粉を除いた状態での酸窒化タングステン(WON)のみでのBET比表面積として求めた。
また、BET法により得られたBET比表面積はいずれも6.41m2/g以上を有するものであり、BET換算の平均粒径は、60nm以下のナノレベルの炭化タングステンが得られていた。
比較例21は、本発明例に対し、還元工程における還元温度範囲が外れているものであって、従来の超微粒炭化タングステン粉である従来例2と同等レベルの比表面積、および、BET法換算粒径を有するものである。
また、比較例22は、本発明例に対して、炭化工程における炭化温度範囲が外れているものである。
そして、表3において、具体的には、本発明例21〜26、および、比較例21、22については、直接還元・炭化法を用いて炭化タングステン粉末を製造した際のか焼工程、還元工程、炭化工程における製造条件、および、出発原料粉末の特性や各工程で生成する三酸化タングステン粉末、β-W(W3O)粉末、炭化後の炭化タングステン粉末、および、金属タングステン粉末の特性値を測定、整理したものを示し、従来例2においては、従来法の各工程における製造条件、および、原料粉末の特性値や得られた炭化タングステン粉末の特性値を示す。
さらに、得られた微粒のβ−W(W3O)とカーボンブラックとの混合粉を、炭化工程において、水素還元雰囲気下、1000℃以上に加熱し炭化処理を行うことにより、BET比表面積が6.41m2/g以上、BET法による平均粒径が60nm以下であり、Fe含有量が30ppm以下の高純度微粒炭化タングステン粉末を得ることができた。
そして、ここで得られた本発明に係る微粒炭化タングステン粉末は、従来より硬質材料用原料として知られた微粒炭化タングステン粉末、すなわち、BET比表面積が5.38m2/g、BET法換算による平均粒径は71nmである、従来例2の微粒炭化タングステン粉末に対し、更なる微粒化を実現したものである。
なお、従来例2は、三酸化タングステン粉を原料とし、これをアセチレンブラックと混合し、窒素中1100℃にて還元処理を行なった後、水素中1100℃にて炭化処理を行い、炭化タングステン粉末を製造するものであるが、還元工程における還元温度が高く、雰囲気も異なり、XRDにてβ-W(W3O)粉の生成については確認できなかった。
また、比較例22は、原料の純度およびか焼条件、還元工程での還元条件において、本発明例21〜26と一致し、さらに、β-W(W3O)粉が生成しているものの、炭化工程における炭化温度が低いため、炭化タングステン(WC)の生成が十分ではなく、W2Cが残存する結果、目的とする炭化タングステン(WC)粉を得ることはできなかった。
なお、表3のβ-W(W3O)のBET比表面積については、β-W(W3O)が、炭素の微粒粉と混合した状態で微粒化しており、単独で直接測定することができないため、原料として、炭素の微粒粉を含まない、β-W(W3O)のみを還元生成した場合の値を記す。
表4に、本発明例21〜26、および、比較例21にて得られたWC焼結体について、測定された硬度、密度および抗折力値を示す。
本発明例21〜26にて得られた超微粒炭化タングステン粉末を用いて製造されたWC焼結体は、いずれも、ビッカース硬度2300kg/mm2以上、抗折力170kg/mm2以上、密度は99.5%以上であり、高硬度、高密度、高抗折力という優れた特性を有する、炭化タングステン焼結体であった。これに対して、比較例21の炭化タングステン粉末を用いて製造される、炭化タングステン焼結体は、ビッカース硬度1850kg/mm2、抗折力130kg/mm2、密度は98.7%レベルであり、本発明例21〜26にて得られる炭化タングステン焼結体に比較し、硬度、抗折力、および、密度のいずれにおいても、著しく劣ったものとなっていた。
そして、かかる点は、本発明例21〜26にて得られた超微粒炭化タングステン粉末を用いて製造されるWC焼結体と、比較例21のタングステン粉末と同程度のBET比表面積、および、BET法換算の平均粒径を有する従来例2の炭化タングステン粉末を用いて製造されるWC焼結体との対比においても同様であることが推定される。
しかも、本発明に係る超微粒炭化タングステン粉を用いて製造された焼結体は従来の微粒炭化タングステン粉を用いた焼結体に対し、さらなる高強度、高硬度および高密度を有することから、切削工具や、金型などの塑性加工用耐摩工具としてきわめて有用なものである。
Claims (4)
- BET比表面積が、6.41m2/g以上であり、BET法による平均粒径が60nm以下であることを特徴とする微粒炭化タングステン粉末。
- BET比表面積が、9.50m2/g以上であり、BET法による平均粒径が40nm以下であることを特徴とする微粒炭化タングステン粉末。
- 請求項1または請求項2に記載された微粒炭化タングステン粉末において、Fe含有量
が30ppm以下であることを特徴とする高純度微粒炭化タングステン粉末。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載された超硬質材料用の微粒炭化タングステン粉末。」
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