JP2018161736A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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隆之 木村
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強 大上
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Abstract

【課題】高速断続切削加工において、すぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】工具基体表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiAlN層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、(a)TiAlN層は、組成式:(TiAl1−x)Nで表した場合、0.10≦x≦0.35(xは原子比)を満足する平均組成を有し、(b)TiAlN層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、かつ100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、(c)TiAlN層の縦断面において、微細結晶粒が占める面積割合は10〜70面積%であり、(d)TiAlN層の縦断面において、工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度が20度以下である微細結晶粒が占める面積割合は、10面積%以上である。
【選択図】図3

Description

この発明は、合金鋼などの高速断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐欠損性と耐摩耗性を発揮し、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具として、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるエンドミル、前記被削材の歯形の歯切加工などに用いられるソリッドホブ、ピニオンカッタなどが知られている。
そして、被覆工具の切削性能改善を目的として、従来から、数多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1に示すように、工具基体表面に、物理蒸着によって堆積された耐火性層を含むコーティングを含む被覆工具であって、 前記耐火性層がM1−xAlN(式中、x≧0.68であり、MがTi、CrまたはZrである)を含み、前記耐火性層が立方晶結晶相を含有し、少なくとも25GPaの硬度を有する厚膜、高硬度および低残留応力の耐摩耗性被覆工具が提案されている。
また、特許文献2には、工具基体表面にTiAlN層からなる硬質被覆層を被覆した被覆工具において、上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Al最高含有点(Ti最低含有点)とAl最低含有点(Ti最高含有点)とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl(Ti)含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、さらに、上記Al最高含有点が、組成式:(Ti1−XAl)N(ただし、原子比で、Xは0.70〜0.95を示す)、上記Al最低含有点が、組成式:(Ti1−YAl )N(ただし、原子比で、Yは0.40〜0.65を示す)、をそれぞれ満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである耐摩耗性にすぐれた被覆工具が提案されている。
特開2015−36189号公報 特開2003−211304号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工はますます高速化・高能率化の傾向にあるが、上記従来の被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工に用いた場合には、特段の問題は生じないが、これを、例えば、合金鋼等の高速断続切削加工のような、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷がかかる切削加工に用いた場合には、クラックの発生・伝播を抑制することができないため、欠損が発生しやすく、また、摩耗進行も促進されるため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
例えば、特許文献1に示される従来被覆工具においては、M1−xAlNの一つの形態であるTiAlN層は高硬度で耐摩耗性にすぐれる層であり、Al含有量が多いほど耐摩耗性にすぐれるが、その一方で、格子歪が大きくなるため、耐欠損性が低下するという問題がある。
また、特許文献2に示される従来被覆工具においては、層厚方向に組成変化を形成することで高温硬さと耐熱性、靱性を両立せしめることができるが、層厚方向に形成される層内の異方性によって、層厚と垂直方向のクラックの発生・伝播を十分に防止することはできないという問題がある。
そこで、本発明者等は、上述の観点から、合金鋼などの高速断続切削加工のような、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する切削加工条件下で、硬質被覆層がすぐれた耐欠損性と耐摩耗性を両立し得る被覆工具を開発すべく、硬質被覆層の成分組成、結晶構造および層構造等に着目し研究を行った結果、以下のような知見を得た。
即ち、本発明者は、工具基体表面に、少なくともTiとAlの複合窒化物(以下、「TiAlN」で示す場合がある。)層を含む硬質被覆層を設けた被覆工具において、該層におけるAlのTiとAlの合量に占める組成割合を比較的高くし、もって、硬質被覆層全体としての耐摩耗性を確保し、さらに、前記TiAlN層を超微粒結晶粒と微細結晶粒で構成するとともに、前記微細結晶粒の占める面積割合を10〜70面積%とし、かつ結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、しかも、前記微細結晶粒の(001)面の法線と工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下となる前記微細結晶粒の占める面積割合を、微細結晶粒の全面積の10面積%以上とすることによって、微細結晶粒で耐摩耗性を向上させつつ、超微粒結晶粒で切削加工時の衝撃を緩和することができるため、本発明の被覆工具は、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する高速断続切削加工条件下で、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を両立することができるのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
組成式:(TiAl1−x)N
で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有し、
(b)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、かつ結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、
(c)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒が前記縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、
(d)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合は、10面積%以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
つぎに、この発明の被覆工具について、詳細に説明する。
TiAlN層の平均層厚:
硬質被覆層は、少なくともTiAlN層を含むが、該TiAlN層の平均層厚が0.5μm未満では、TiAlN層によって付与される耐摩耗性向上効果が十分に得られず、一方、平均層厚が10.0μmを超えると、TiAlN層の中の歪みが大きくなり自壊しやすくなるため、TiAlN層の平均層厚を0.5〜10.0μmとする。
TiAlN層の平均組成:
TiAlN層を、
組成式:(TiAl1−x)N
で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有することが必要である。
Ti成分の平均組成を表すxが0.10未満である場合には、六方晶構造のTiAlN結晶粒が形成されやすくなり、TiAlN層の硬度が低下し十分な耐摩耗性を得ることができない。
一方、Ti成分の平均組成を表すxが0.35を超える場合には、Al成分の組成割合が減少するため、TiAlN層の高温硬さおよび高温耐酸化性が低下する。
したがって、Ti成分の平均組成xは、0.10≦x≦0.35とする。
なお、前記組成式において、N/(Ti+Al+N)の値は、必ずしも、化学量論比である0.5である必要はなく、工具基体表面の汚染の影響などで不可避的に検出される炭素や酸素などの元素をのぞいてTi、Al、Nの含有割合の原子比を定量し、TiとAlとNの含有割合の原子比の合計に対するNの含有割合の原子比が0.45以上0.65以下の範囲であれば、本発明のTiAlN層において同等の効果が得られ特に問題は無い。
TiAlN層中の微細結晶粒:
本発明のTiAlN層では、工具基体表面と平行な方向に測定したTiAlN結晶粒の幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、かつ結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、前記微細結晶粒が前記TiAlN層の縦断面に占める面積割合は10〜70面積%とする。
ここで、微細結晶粒の結晶粒幅を30〜100nmと定め、かつ結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含めなかったのは、次の理由による。
結晶粒幅が100nmを超える過度に粗大なTiAlN結晶粒が存在すると、TiAlN層全体における粒界の長さが短くなるために、切削加工時に加わる衝撃を分散しにくくなるため、耐欠損性が低下する。
一方、微細結晶粒の結晶粒幅が30nm未満になると粒界が増えるため、切削加工時に被削材と粒界部との接触確率が高くなった結果、結晶粒の脱粒が起きやすくなるため、微細結晶粒による耐摩耗性の確保ができなくなるという理由による。
また、微細結晶粒の面積割合を、10〜70面積%と定めたのは、次の理由による。
微細結晶粒の面積割合が10面積%未満になると、TiAlN層中の超微粒結晶粒の割合が増加して粒界が増えるため、切削加工時に、粒内より相対的にもろい粒界部分での破壊が生じやすくなり、耐摩耗性が低下する。
一方、微細結晶粒の面積割合が70面積%を超えると、切削加工時の衝撃を分散化する役割を担う超微粒結晶粒の減少によって、耐欠損性が低下する。
また、本発明では、TiAlN層の縦断面において測定した場合、工具基体表面の法線と、立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合を、10面積%以上(100面積%の場合も含む)とする。
これは、耐摩耗性に優れる(001)方位を有する立方晶構造の微細結晶粒のうち、工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下となるような(001)方位を有する立方晶構造の微細結晶粒が多く存在する(10面積%以上)ことによって、切削加工時にTiAlN結晶粒の表面と被削材が接触した際に、いずれのTiAlN結晶粒も同一方向に均一に削られるため、偏摩耗の発生が抑えられ、その結果(001)方位を有する立方晶構造の微細結晶粒の耐摩耗性の効果を向上することができるからである。
仮に、工具基体表面の法線と、立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒の、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合が10面積%未満であるような場合には、切削加工時に、各結晶粒がそれぞれ異なる方向に削られるため、切削加工の進展につれ偏摩耗が発生し、耐摩耗性の低下を招くことになる。
本発明の硬質被覆層は、前記したTiAlN層の単層構造として構成することができるが、
2層以上の積層構造として構成された硬質被覆層にあっては、該積層構造を構成する層のうちの少なくとも一つの層として前記TiAlN層を形成することもできる。
微細結晶粒の結晶粒幅、微細結晶粒の面積割合、微細結晶粒の(001)の法線と工具基体表面の法線とのなす角度、ならびに度数分布の算出方法:
本発明のTiAlN層の微細結晶粒の結晶粒幅、結晶構造、面積割合及び工具基体表面に対する結晶方位の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡に付属する結晶方位解析装置を用いて、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を観察、測定することにより求めることができる。
なお、本発明における「硬質被覆層の縦断面」とは、硬質被覆層と工具基体の界面(工具基体表面)に対して垂直方向の断面のことをいう。
透過型電子顕微鏡で、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を観察する方法は以下の通りである。まず、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を切り出した後、結晶粒径と同程度の厚さ(30nm)以下に研磨した切片をセットし、200kVに加速された電子線を前記切片の表面(すなわちTiAlN層を含む硬質被覆層に相当する表面)に照射することで観察を行う。
次にTiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面の観察結果から、結晶粒幅、結晶構造、面積割合及び工具基体表面に対する結晶方位の解析範囲を決める方法は以下の通りである。
まず、硬質被覆層の縦断面の観察画像における、硬質被覆層と工具基体との界面上の2点を任意で選定する。その際、2点間を線分でつないだ長さは1000nmになるよう選定する。結晶方位の解析範囲は、前記線分と平行方向に1000nm(この方向を以下「解析範囲の横方向」と定義する)、垂直方向に400nm(この方向を以下「解析範囲の縦方向」と定義する)の長方形の範囲とする。その際、前記の範囲には全てTiAlN層の縦断面のみ含める(工具基体、ならびにTiAlN層以外の硬質被覆層は含めない)。
前記の測定範囲において、結晶方位のマップデータを得る解析方法は以下の通りである。前記切片の表面に、切片の表面の法線方向に対して0.5〜1.0度に傾けた電子線をPrecession(歳差運動) 照射しながら、電子線を任意のビーム径及び間隔でスキャンし、連続的に電子線回折パターンを取り込み、個々の測定点の結晶方位を解析する。なお、本測定に用いた回折パターンの取得条件は、カメラ長20cm、ビームサイズ2.2nmで、測定ステップは2.0nmである。
得られる電子線回折パターンから個々の結晶粒を判別するための解析方法は、以下の通りである。まず、測定点の隣接点同士の結晶方位が5度以上離れている場合、粒界に属する測定点と判断する。次に、粒界に属する測定点同士を線分でつなぎ合わせることで、前記線分に囲まれている部分を結晶粒と定義する。ただし、この線分がTiAlN層表面、TiAlN層と硬質被覆層が接する面、または工具基体表面と接する場合は、それぞれの表面または界面の粒界とみなす。そして解析範囲の横方向に平行な方向における粒界と粒界との距離から結晶粒幅を測定し、結晶粒幅が30nm以上かつ100nm以下の結晶粒を微細粒部とする。さらに、微細粒部内に含まれる測定点の全数を、結晶粒の測定点の全数で割ることにより、微細結晶粒の面積割合を算出する。なお、1つの測定点が占める面積は一定のため、測定点数の割合から面積割合が求められる。
工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度、ならびに角度数分布の算出方法について説明する。まず前記の結晶方位解析装置を用いて、工具基体表面1aの法線L1(工具基体表面1aと垂直な方向)に対して、微粒部内に含まれる測定点での結晶面である(001)面の法線L2がなす傾斜角(図1A、1B参照)を測定する。その傾斜角のうち、法線方向L1に対して0〜20度の範囲内(図1Aの0度から図1Bの20度までの範囲内)にある傾斜角を5度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する割合を集計する。なお20度以上に関しては5度のピッチ毎に区分するのではなく、20度以上のものを全て1つの区分として集計する。その結果を、横軸を傾斜角区分とし、縦軸を割合とした傾斜角度数分布グラフ(図2)で表す。
以上1つの解析範囲において結晶粒幅、微細結晶粒の面積割合、ならびに微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度、ならびに角度数分布の算出方法の算出方法について説明したが、実際観察、解析を行う際には5つの解析範囲を設定し、平均値を算出する。
なお、超微粒結晶粒(結晶粒幅30nm未満)ならびに粗大結晶粒(結晶粒幅100nmより大)の面積割合に関しても、微細結晶粒の面積割合と同様の方法で算出する。
TiAlN層の成膜方法:
本発明のTiAlN層は、例えば、スパッタリング装置とアークイオンプレーティング装置を併設した物理蒸着装置(以下、「SP/AIP装置」という)を用いたスパッタリングとアークイオンプレーティングの同時放電によって成膜することができる。
図3(a)、(b)に、本発明のTiAlN層を成膜するための、SP/AIP装置の概略図を示す。
図3(a)、(b)に示すSP/AIP装置の相対向する壁面に、アークイオンプレーティング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)を対向配置するとともに、同じく前記SP/AIP装置の他の相対向する壁面には、スパッタリング用の金属Tiカソード電極(ターゲット)を対向配置し、装置中央に設けられたテーブル上には、Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)と金属Tiカソード電極(ターゲット)からほぼ等距離となる位置(例えば、図3(a)に示されるような4箇所)に、工具基体を載置する。
次いで、テーブル上で工具基体を自転させながら、工具基体を所定の温度範囲に加熱し、反応ガスを装置内に導入し、スパッタリングとアークイオンプレーティングを同時に行うことにより、本発明のTiAlN層を成膜することができる。
なお、この場合のスパッタリング条件とアークイオンプレーティング条件は、概ね、以下のとおりである。
・スパッタリング条件
スパッタリングターゲット(カソード電極):金属Ti
スパッタリング電流(A):6〜7
・アークイオンプレーティング条件
TiAl合金ターゲット(カソード電極)のTi組成(原子%):5〜30
アーク電流(A):100〜110
・共通する条件
ガス圧力(Pa):2〜2.5
工具基体温度(℃):450〜500
バイアス電圧(−V):300〜320
本発明の被覆工具は、硬質被覆層が少なくともTiAlN層を含み、該TiAlN層は、結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、かつ結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、前記微細結晶粒がTiAlN層の縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、さらに、立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線と工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒は、前記縦断面の微細結晶粒の全面積の10面積%以上を占めることから、微細結晶粒の存在によって耐摩耗性を向上させつつ、一方、超微粒結晶粒が切削加工時の衝撃を緩和することができるため、本発明の被覆工具は、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する高速断続切削加工条件下で、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を両立することができる。
工具基体表面の法線(断面研磨面における工具基体表面と垂直な方向)に対する微細結晶粒の結晶面である(001)面の法線がなす傾斜角が0度の場合を示した模式図である。 工具基体表面の法線(断面研磨面における工具基体表面と垂直な方向)に対する微細結晶粒の結晶面である(001)面の法線がなす傾斜角が20度の場合を示した模式図である。 工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす傾斜角度数分布の一例を示すグラフである。 本発明被覆工具のTiAlN層を成膜するのに用いるスパッタリング装置とアークイオンプレーティング装置を併設した物理蒸着装置(SP/AIP装置)の概略図を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、具体的な説明としては、WC基超硬合金を工具基体とする被覆工具について説明するが、TiCN基サーメットあるいは立方晶窒化硼素焼結体を工具基体とする被覆工具についても同様である。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有する、Co粉末、TiC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を1370〜1470℃の範囲内の所定温度に1時間保持の条件で真空焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格SEEN1203AFENのインサート形状をもったWC基超硬合金工具基体1〜3を製造した。
上記の工具基体1〜3を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、スパッタリング用金属Tiカソード電極(ターゲット)とアークイオンプレーティング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)が配置されたSP/AIP装置内に配置し、かつ、その配置位置は、SP/AIP装置内に設けられた工具基体装着用のテーブルの中心軸から離れた位置であって、Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)と金属Tiカソード電極(ターゲット)からほぼ等距離となる位置(例えば、図3(a)に示す4箇所)に配置した。
SP/AIP装置内には、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒータで工具基体を400℃に加熱した後、前記テーブル上で自転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)に100Aのアーク電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄した。
ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2に示す窒素圧にすると共に、前記テーブル上で自転する工具基体の温度を表2に示す温度に加熱維持し、表2に示すバイアス電圧を工具基体に印加し、表2に示す所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)に表2に示すアーク電流を流してアーク放電を発生させ、アークイオンプレーティングを行った。
さらに、前記アークイオンプレーティングと同時に、工具基体と金属Tiカソード電極(ターゲット)に表2に示すバイアスを印加するとともに、金属Tiカソード電極(ターゲット)に表2に示す電流を印加することにより、スパッタリングを行った。
上記の工程で、スパッタリングとアークイオンプレーティングを同時に行うことにより、本発明のTiAlN層を成膜した表4に示す本発明被覆工具1〜10(以下、本発明工具1〜10という)を製造した。
比較の目的で、図3に示すSP/AIP装置を用いて、工具基体1、2のそれぞれに、本発明工具1〜10の場合と同様な条件でボンバード洗浄を施したのち、表3に示すアークイオンプレーティング条件のみでTiAlN層を形成することにより、表5に示す比較例被覆工具1〜10(以下、比較例工具1〜10という)をそれぞれ製造した。
また、参考のため、表3に示すスパッタリング条件のみでTiN層を形成することにより、表5に示す参考被覆工具1(以下、参考例工具1という)を製造した。
上記で作製した本発明工具1〜10、比較例工具1〜10のTiAlN層および参考例工具1のTiN層について、工具基体に垂直な断面を走査型電子顕微鏡を用いて複数視野観察し、5点の層厚の平均値から、平均層厚を算出した。
また、本発明工具1〜10、比較例工具1〜10のTiAlN層におけるAlとTiの合量に対するTiの平均組成(原子比)を電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)を用いて測定した。TiAlN層の縦断面を研磨した試料の表面に電子線を照射し、発生した特性X線の解析結果からTiの平均組成を算出し、10点の平均値を求めた。
表4、表5に、それぞれの値を示す。
また、本発明工具1〜10および比較例工具1〜10のTiAlN層について、透過型電子顕微鏡を用いて、TiAlN層中の結晶粒幅、微細結晶粒(結晶粒幅:30〜100nm)、超微粒結晶粒(結晶粒幅30nm未満)、粗大結晶粒(結晶粒幅100nmより大)の面積割合、ならびに微細結晶粒の結晶構造、工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度の算出を行った。
具体的には、以下のとおりである。
結晶粒幅は以下のように算出する。まず、測定点の隣接点同士の結晶方位が5度以上離れている場合、粒界に属する測定点と判断した。次に、粒界に属する測定点同士を線分でつなぎ合わせることで、前記線分に囲まれている部分を結晶粒と定義した。ただし、この線分が表面、または基体となす界面と接する場合は、この表面または界面の粒界とみなす。そして解析範囲の横方向に平行な方向における粒界と粒界との距離から結晶粒幅を測定した。
微細結晶粒の面積割合は、結晶粒幅が30nm以上かつ100nm以下の結晶粒を微細粒部とし、微細粒部内に含まれる測定点の全数を、結晶粒の測定点の全数で割ることにより、微細結晶粒の面積割合を算出した。なお、1つの測定点が占める面積は一定のため、測定点数の割合から面積割合が求められる。なお、超微粒結晶粒は結晶粒幅を30nm未満、粗大結晶粒は100nmより大きい結晶粒として微細結晶粒と同様の方法で面積割合を求めた。
微細粒部の結晶構造は、微細粒部の電子回折像から立方晶か六方晶かを判断した。
工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度は、工具基体表面1aの法線L1(工具基体表面1aに垂直な方向)に対して、微細粒部に含まれる測定点での結晶面である(001)面の法線L2がなす傾斜角(図1A、1B参照)を測定した。
表4、表5に、それぞれの値を示す。


次いで、本発明工具1〜10、比較例工具1〜10および参考例工具1について、以下の条件で、高速断続切削の一種である乾式高速正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削試験: 乾式高速正面フライス、センターカット切削加工
カッタ径: 125 mm、
被削材: JIS・SCM445 幅100mm、長さ380mmのブロック材、
切削速度: 355 m/min、
切り込み: 2.0 mm、
一刃送り量: 0.21 mm/刃、
切削時間: 8 分、
表6に、試験結果を示す。
表6に示される結果から、本発明の被覆工具は、TiAlN層が10〜70面積%の微細結晶粒を含み、さらに、該微細結晶粒の(001)の法線と工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下である微細結晶粒が、微細結晶粒の全面積の10面積%以上を占めることから、該TiAlN層の微細結晶粒の存在が耐摩耗性を高め、一方、超微粒結晶粒によって、切削加工時の衝撃が緩和されるため、合金鋼の高速断続切削加工において、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を発揮する。
これに対して、TiAlN層中に、10〜70面積%の微細結晶粒が存在していない比較例工具2、4、6、7、8と参考例工具1、あるいは、微細結晶粒の(001)の法線と工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下である微細結晶粒が、微細結晶粒の全面積の10面積%以上存在しない比較例工具1、3、5、9、10と参考例工具1、また、粗大結晶粒が存在する比較例工具2、参考例工具1においては、欠損の発生あるいは耐摩耗性の低下によって、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
この発明の被覆工具は、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する合金鋼などの高速断続切削加工に供した場合に、すぐれた耐欠損性とともに長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
    (a)前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
    組成式:(TiAl1−x)N
    で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有し、
    (b)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、かつ結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、
    (c)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒が前記縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、
    (d)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合は、10面積%以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。





















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