JP2018156867A - 負極材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリコン材料を含有する負極材料について機能の更なる向上を図ること。【解決手段】複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料の粒子と、ピッチと、溶剤と、を含むスラリーを噴霧乾燥して、平均粒子径1.5〜50.0μmの造粒体を得る造粒工程と、前記造粒体を前記ピッチの炭化温度以上に加熱して負極材料を得る加熱工程と、を有する、負極材料の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は負極材料を製造する方法に関する。
リチウムイオン二次電池用の負極活物質として、リチウムイオン吸蔵能力が高いSiを含有する負極活物質が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、負極活物質がシリコンであるリチウムイオン二次電池が記載されている。特許文献3及び特許文献4には、負極活物質がSiOであるリチウムイオン二次電池が記載されている。
リチウムイオン二次電池の電池性能の更なる向上を目的として、Siを含有する新たな負極活物質の探索が進められている。Siを含有する新たな負極活物質として、特許文献5には、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料が開示されている。特許文献5には、更に、当該シリコン材料を炭素で被覆して炭素−シリコン複合体を製造したこと、及び、当該複合体がリチウムイオン二次電池の負極活物質として使用可能であることが記載されている。
特開2014−203595号公報 特開2015−57767号公報 特開2015−185509号公報 特開2015−179625号公報 国際公開第2015/114692号
ところで近年では、より電池性能に優れるリチウムイオン二次電池が要求されるようになっている。リチウムイオン二次電池用の負極活物質についても、リチウムイオン二次電池の電池性能の向上に寄与すべく各種の機能の向上が望まれている。特許文献5に開示されているシリコン材料についても同様に、更なる機能の向上が望まれている。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、シリコン材料を含有する負極材料について機能の更なる向上を図ることを目的とする。
本発明の負極材料の製造方法は、
複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料の粒子と、ピッチと、溶剤と、を含むスラリーを噴霧乾燥して、平均粒子径1.5〜50.0μmの造粒体を得る造粒工程と、
前記造粒体を前記ピッチの炭化温度以上に加熱して負極材料を得る加熱工程と、を有する、負極材料の製造方法である。
本発明の負極材料の製造方法によると、シリコン材料を含有する負極材料の機能の向上を図り得る。
実施例3の負極材料のSEM像である。 実施例3の負極材料の粒度分布図である。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
一般的な負極において、負極活物質は結着剤によって集電体に固着される。シリコン材料は理論容量が大きくリチウムイオン二次電池用の負極活物質として秀でているが、その一方で、充放電に伴って大きく体積変化する。シリコン材料が繰り返し大きく体積変化すると、結着剤がシリコン材料の体積変化に追従できず、シリコン材料が集電体から脱落する等、負極の構造的な耐久劣化が生じる場合がある。この耐久劣化を抑制するためには、予め微粉化し粒子状としたシリコン材料を用いて負極を形成することが有効だと考えられる。つまり、シリコン材料が微細な粒子状であれば、各々のシリコン材料粒子の体積変化量は小さくなるため、上記した負極の構造的な耐久劣化は生じ難くなると考えられる。
ところで、シリコン材料の導電性は、黒鉛等の一般的な負極活物質に比べて低い。
シリコン材料と炭素とを複合化して負極材料とすれば、シリコン材料に由来する大容量と、炭素に由来する優れた導電性とを当該負極材料に付与し得ると期待される。また、負極材料における炭素部分がシリコン材料を補強することで、負極材料自体の耐久性が向上することも期待される。
このような事情を鑑み、本発明の発明者は、炭素源とシリコン材料とを造粒し、得られた造粒体を加熱して造粒体に含まれる炭素源を炭化することで、ある程度粒径の大きな粒子状の負極材料を製造するという着想を得た。そして、更なる検討を進めるうちに、溶剤及び粘稠性を有する炭素源をシリコン材料に加えたスラリーを噴霧乾燥することで造粒体を得ること、及び、当該造粒体を加熱することで炭素源の炭化を行うことに到達した。更には、上記した粘稠性を有する炭素源として、ピッチを選択することで、望み通りの粒径の造粒体及び負極材料が得られることに到達し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の負極材料の製造方法は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料の粒子と、ピッチと、溶剤と、を含むスラリーを噴霧乾燥して、平均粒子径1.5〜50.0μmの造粒体を得る造粒工程と、前記造粒体を前記ピッチの炭化温度以上に加熱して負極材料を得る加熱工程と、を有する。
本発明の負極材料の製造方法の造粒工程においては、上記した特許文献5に開示されているシリコン材料を用い、当該シリコン材料とピッチと溶剤とを含むスラリーを噴霧乾燥することで、シリコン材料とピッチすなわち炭素源とを造粒して、造粒体を得る。当該造粒体は複数のシリコン材料の粒子を含むとともに当該シリコン材料の粒子がピッチにより連結されたものである。また、当該造粒体の平均粒子径は、1.5〜50.0μmであり、負極の製造に好適に使用できる程度に大きい。なお、本明細書でいう平均粒子径とは、一般的なレーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定した場合のD50を意味する。
造粒体の平均粒子径は、3.0〜10.0μmであるのが好ましく、4.0〜8.5μmであるのがより好ましく、4.5〜8.5μmであるのがさらに好ましく、或いは、5.5〜8.5μmであるのが好ましい。
造粒体に含まれるシリコン材料の粒子の平均粒子径は、造粒体の平均粒子径よりも小さければ良く、特に限定しないが、0.2〜3μmであるのが好ましく、0.4〜2.5μmであるのがより好ましく、0.6〜1.5μmであるのがさらに好ましい。
ところで、負極製造時の取り扱い性や、負極活物質としての機能性を考慮すると、造粒体の粒子径は揃っている方が良いと考えられる。造粒体の粒子径は揃っていることは、一般的なレーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定した場合のD10とD90とによって表すことができる。つまり、D10とD90との粒子径の差が小さければ、造粒体の粒子径は狭い範囲に分布しているということができ、造粒体の粒子径が揃っているということができる。具体的には、本発明の負極材料における(D90−D10)は、20μm以下であるのが好ましく、15μm以下であるのがより好ましく、13μm以下であるのが更に好ましく、10μm以下であるのが特に好ましい。
更には、造粒体におけるD10の好ましい範囲は、0.5〜5.0μm、1.0〜4.0μm、1.5〜2.5μm、2.5〜3.5μmの範囲を挙げることができる。また、造粒体におけるD90の好ましい範囲は、5.0〜20.0μm、6.0〜18.0μm、7.5〜16.0μm、8.0〜12.0μm、9.0〜16.0μmの範囲を挙げることができる。
ところで、造粒体はシリコン材料が造粒されたものである。そうすると、造粒体の粒子径は、シリコン材料の粒子径よりも大きい。具体的には、(シリコン材料の粒子径D50)<(造粒体の粒子径D50)、(シリコン材料の粒子径D90)<(造粒体の粒子径D90)、(シリコン材料の粒子径D10)<(造粒体の粒子径D10)の何れかを満足する場合には、造粒体の粒子径がシリコン材料の粒子径よりも大きいといい得る。好ましくは、(シリコン材料の粒子径D90)<(造粒体の粒子径D10)を満足するのが良い。
上記の造粒工程後に行う加熱工程では、造粒工程で得られた造粒体を、ピッチの炭化温度以上に加熱する。当該加熱工程においては、ピッチが炭化し、複数のシリコン材料の粒子を含むとともに当該シリコン材料の粒子が炭素により連結された本発明の負極材料が得られる。
造粒工程におけるスラリーは、ピッチ、シリコン材料及び溶剤を含む。シリコン材料の詳細については後述する。
スラリーを構成するピッチとしては、一般にピッチと称されるもの全般を使用し得る。本明細書においては、コールタールや木タールに代表される諸般のタールや石油類の蒸留後に得られる残渣であり、芳香族炭化水素を主成分とする高分子を含有するもの全般をピッチという。ピッチに含まれる芳香族炭化水素は、単環であっても良いし多環であっても良く、また、1種であっても良いし複数種であっても良い。一般には、ピッチは複数種の多環の芳香族炭化水素を含むとされている。また、ピッチは、酸素、窒素及び硫黄を含み得る。
ピッチは、固体状であっても良いし、流体状であっても良いし、また、両者が混在した半固体状であっても良い。何れの場合にもピッチは揮発性成分を含み得る。ピッチが固体状である場合、ピッチの少なくとも一部は結晶化していても良い。この場合、ピッチは等方性ピッチであっても良いしメソフェーズピッチであっても良く、その結晶状態は特に問わない。
ピッチの炭化温度は、1000℃以下であるのが好ましく、900℃以下であるのがより好ましく、800℃以下であるのが更に好ましく、700℃以下であるのが特に好ましい。板状シリコン体に作用する熱を抑制する為である。
ピッチの炭化率は50%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが更に好ましく、70%以上であるのがなお好ましく、80%以上であるのがなお好ましい。ピッチの炭化率の好ましい範囲としては、50〜90%、55〜85%、50〜60%、及び、60〜85%を挙げることができる。
ピッチの軟化点は、500℃以下であるのが好ましく、450℃以下であるのがより好ましく、400℃以下であるのが更に好ましく、350℃以下であるのがなお好ましく、300℃以下であるのが特に好ましい。ピッチの軟化点の好ましい範囲としては、50〜500℃、100〜400℃、150〜350℃、200〜400℃、及び、100〜200℃を挙げることができる。
本発明におけるピッチとして、例えば、JIS K 2425又はJIS K 2439で規定されるタールピッチを用いても良い。
造粒工程におけるスラリーの材料としては、シリコン材料及びピッチとともに、溶剤が用いられる。
スラリーを構成する溶剤としては、シリコン材料を分散可能であり、かつ、ピッチを分散又は溶解可能なものを使用できる。シリコン材料と、ピッチに由来する炭素とを均一に複合化するためには、ピッチが溶剤に溶解可能であると良い。この場合、スラリー中で、溶剤に溶解したピッチが、比較的低濃度の状態であっても、シリコン材料と均一に混ざり合う。そしてその結果、当該造粒体において、複数のシリコン材料の粒子を比較的少量のピッチで連結することも可能となる。そうすると、負極材料に含まれるピッチの量が過大となることが抑制されるため、本発明の負極材料の製造方法によると、負極材料の容量低下を抑制しつつ負極材料の導電性を高め得る。
ピッチを溶解し得る溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロキノリン等の含窒素環式化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物を挙げることができるが、これに限定されない。
スラリーにおけるシリコン材料、ピッチ及び溶剤の配合比は、噴霧乾燥して平均粒子径1.5〜50.0μmの造粒体を得ることのできる含有比であれば良く、特に限定しない。あえて例示すると、溶剤とピッチの配合比は、質量比で、100:1〜100:100であるのが好ましく、100:2〜100:50であるのがより好ましく、100:5〜100:20であるのがさらに好ましい。ピッチとシリコン材料との配合比は、質量比で、0.5:99.5〜30:70であるのが好ましく、1:99〜25:75であるのがより好ましく、5:95〜20:80であるのがさらに好ましい。
造粒工程は、スラリーを噴霧乾燥して平均粒子径1.5〜50.0μmの造粒体を得ることのできる乾燥装置を用いて行うことができる。ここでいう噴霧乾燥とは、平均粒子径1.5〜50.0μmの造粒体を得るべく、気体の流動を利用してスラリーを小径の粒子状に飛散させつつ乾燥させることをいう。したがって造粒工程に使用し得る乾燥装置としては、噴霧機能と乾燥機能とを有するものを選択し得る。このような乾燥装置としては、例えば、所謂スプレードライ式乾燥装置を始めとし、気流乾燥装置、流動層乾燥装置等の種々の乾燥装置を挙げることができる。
造粒工程における乾燥装置の最高温度は、700℃以下であるのが好ましく、500℃以下であるのがより好ましい。乾燥装置の更に好ましい最高温度として、300℃以下、250℃以下、200℃以下を挙げることができる。シリコン材料に過大な熱を作用させないためである。また、負極材料として好適な粒子径の造粒体を得るためには、造粒工程における乾燥装置の最高温度は100℃以上であるのが好ましく、150℃以上であるのがより好ましく、200℃以上であるのが更に好ましく、225℃以上であるのがなお好ましい。なお、乾燥装置の最高温度とは、例えばスプレードライ式乾燥装置の入口温度を指す。参考までに、後述する実施例においては、当該乾燥装置の最高温度は既述したピッチの軟化点以下である。ピッチは、造粒工程後の加熱工程においてその炭化温度以上に加熱され、炭化するために、本造粒工程においてはピッチを高温で加熱しなくても良い。
造粒工程において、乾燥装置にはスラリーの噴霧及び/又は乾燥のためにガスを供給する。ガスの種類は特に問わないが、スラリー及び造粒体との反応性を考慮すると、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスを選択するのが好ましい。乾燥装置におけるガス流量の範囲としては、5.0〜20.0リットル/分、7.5〜15.0リットル/分、7.5〜10.0リットル/分、9.0〜15リットル/分の範囲を挙げることができる。
本発明の負極材料の製造方法では、加熱工程において、ピッチとシリコン材料とを含む造粒体をピッチの炭化温度に加熱することで、ピッチを炭化して導電性の炭素を生成する。ピッチの炭化温度に加熱された造粒体は、複数のシリコン材料が炭素で連結された本発明の負極材料となる。
本発明の負極材料の平均粒子径は、造粒体の平均粒子径と同様に、1.5〜50.0μmであり、3.0〜10.0μmであるのが好ましく、4.0〜8.5μmであるのがより好ましい。本発明の負極材料におけるD90−D10は、造粒体同様に、20μm以下であるのが好ましく、15μm以下であるのがより好ましく、13μm以下であるのが更に好ましく、10μm以下であるのが特に好ましい。負極材料の平均粒子径は、造粒体同様に、3.0〜10.0μmであるのが好ましく、4.0〜8.5μmであるのがより好ましく、4.5〜8.5μmであるのがさらに好ましく、或いは、5.5〜8.5μmであるのが好ましい。
本発明の負極材料におけるD10の好ましい範囲は、0.5〜5.0μm、1.0〜4.0μm、1.5〜2.5μm、2.5〜3.5μmの範囲を挙げることができる。また、本発明の負極材料におけるD90の好ましい範囲は、5.0〜20.0μm、6.0〜18.0μm、7.5〜16.0μm、8.0〜12.0μm、9.0〜16.0μmの範囲を挙げることができる。
本発明の負極材料の製造方法において、加熱工程の加熱温度は400〜1000℃の範囲であるのが好ましく、500〜950℃の範囲であるのがより好ましく、700〜900℃の範囲であるのが特に好ましい。シリコン材料に過大な熱を作用させないためである。なお、本発明の負極材料の製造方法は、加熱工程後の負極材料を炭素被覆する炭素被覆工程を具備しても良いが、当該炭素被覆工程における加熱温度も同様に400〜1000℃の範囲であるのが好ましく、500〜950℃の範囲であるのがより好ましく、700〜900℃の範囲であるのが特に好ましい。
以下、シリコン材料の詳細を説明する。
既述したように、シリコン材料は、特許文献5に開示されているシリコン材料である。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させて、ポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造できる。
特許文献5に記載のシリコン材料の製造方法を、酸としては塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオン等の電荷担体の効率的な挿入及び脱離反応のためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
上記の方法で製造されたシリコン材料につき、平均粒子径が既述した好ましい範囲を超える場合には、当該シリコン材料を一般的な粉砕装置を用いて粉砕しても良い。つまり、本発明の負極材料の製造方法は、粉砕工程を有し得る。また、より均一な粒子径のシリコン材料を得るため、当該粉砕工程は粉砕装置を変えて複数回行うのが好ましい。粉砕工程用の粉砕装置としてはジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、転動ミル、振動ミル、遊星ミル、揺動ミル、水平ミル、ボールミル等の既知の粉砕装置を用いることができる。
本発明の負極材料は、リチウムイオン二次電池用の負極に使用することができる。以下、必要に応じて、本発明の負極材料を具備するリチウムイオン二次電池を本発明のリチウムイオン二次電池と呼ぶ。また、必要に応じて、負極と正極とを包括して電極と呼び、負極活物質と正極活物質とを包括して活物質と呼び、負極活物質層と正極活物質層とを包括して活物質層と呼ぶ。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の負極材料を含む負極、正極、電解液及び必要に応じてセパレータを具備する。このうち負極は、集電体と、当該集電体上に形成された負極活物質層とを有する。
負極活物質層は、本発明の負極材料、及び、必要に応じて、結着剤、導電助剤、分散剤及び増粘剤に代表される各種の添加剤を含み得る。また、負極活物質層は、本発明の負極材料以外にも、リチウムイオン二次電池用の負極活物質を含んでも良い。
本発明の負極材料以外の負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
負極活物質層は、負極活物質の他に、必要に応じて、導電助剤、結着剤、分散剤等の添加剤を適宜適切な量で含有し得る。なお、正極活物質層もまた同様に、後述する正極活物質の他に、これらの添加剤を適宜適切な量で含有し得るため、以下の項では負極活物質層及び正極活物質層を包括して説明する。以下、必要に応じて、負極及び正極を包括して電極といい、負極活物質及び正極活物質を包括して活物質といい、負極活物質層及び正極活物質層を包括して活物質層という。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために、必要に応じて活物質層に添加される。導電助剤は化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、及び各種金属粒子等が例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック等が例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
結着剤は、活物質等を集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂を例示することができる。また、結着剤として、親水基を有するポリマーを採用してもよい。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基が例示される。親水基を有するポリマーの具体例として、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸、ポリ(p−スチレンスルホン酸)を挙げることができる。
なお、負極用の結着剤として、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーをジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを、結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
導電助剤及び結着剤以外の分散剤などの添加剤は、公知のものを採用することができる。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。
集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
また、集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。
集電体の表面に活物質層を形成するには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を有する電極合材を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリー状の電極合材とし、当該スラリー状の電極合材を集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
本発明のリチウムイオン二次電池の正極に用いる正極活物質については特に限定されず、リチウムイオン二次電池用の一般的な正極活物質を使用し得る。
リチウムイオン二次電池用の一般的な正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。
本発明の負極材料を含む負極は正極及び必要に応じて既知のセパレータとともに電池容器に入れ、電解液を注入してリチウムイオン二次電池とすれば良い。
電解液は、有機溶媒と当該有機溶媒に溶解されたリチウム塩とを含む。
有機溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等が使用できる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。電解液には、これらの有機溶媒を単独で用いてもよいし、又は、複数を併用してもよい。
リチウム塩としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(FSO等を例示できる。
電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの有機溶媒に、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
以上、本発明の負極材料の製造方法、本発明の造粒体及び本発明の負極材料について実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。また、実施形態及び以下の実施例を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施することができる。
以下に、試験例及び実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、上記の実施形態及び下記の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
(造粒体の製造)
(シリコン材料製造工程)
アルゴン雰囲気下、0℃とした濃度35重量%のHCl水溶液507gに、50gのCaSi(Ca含有率32wt%)を加え、撹拌した。CaSiとHClのモル比は1:12であった。反応液から発泡が無くなったのを確認した後、さらに同条件下、合計で3時間攪拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、濾過を行った。濾過残渣を300mLの蒸留水で3回洗浄した後、300mLのエタノールで洗浄し、減圧乾燥し、Oを1体積%以下の量で含むアルゴン雰囲気下にて900℃で1時間加熱した。これを実施例1のシリコン材料とした。
(粉砕工程)
上記のシリコン材料製造工程で得たシリコン材料をジェットミルNJ−30(株式会社アイシンナノテクノロジーズ)で粗粉砕した。ジェットミルによる粉砕後のシリコン材料をさらに湿式ボールミルで細粉砕した。具体的には、ジェットミル後のシリコン材料35g、ジルコニア製のボール350g、及び、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン100gをジルコニアポット内に入れ、180rpmで10分間の混合と3分間の休止とを交互に繰り返す機械的混合を2時間行った。2時間後、得られたシリコン材料の粒子の平均粒子径D50は0.88μmであり、D10は0.17μmであり、D90は1.72μmであった。
(造粒工程)
N−メチル−2−ピロリドン100gにピッチ(JFEケミカル株式会社製、石油ピッチMCP150)16gを溶解させ、ピッチ溶液を得た。なお実施例1で用いたピッチは、150℃で軟化し、炭化率約55%であった。
当該ピッチ溶液116質量部と、上記のボールミル後のシリコン材料の粒子84質量部とを混合し、得られたスラリーを、スプレードライ装置(藤崎電気株式会社製、MDL−015(C)MGC)を用いて噴霧乾燥した。気体としては窒素ガスを用いた。このときのスプレードライの条件は、入口温度250℃、スラリーの送液速度2.5g/分、ガス流量13L/分であった。以上の工程で、実施例1の造粒体を得た。実施例1の造粒体の平均粒子径は4.76μmであった。実施例1の造粒体の詳細を以下の他の実施例及び比較例の造粒体の詳細とともに、後述する表1及び表2に示す。
(実施例2)
スプレードライの条件のうちスラリーの送液速度を5g/分としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の造粒体を得た。
(実施例3)
スプレードライの条件のうちスラリーの送液速度を5g/分とし、かつ、ガス流量を8.5L/分としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の造粒体を得た。
(実施例4)
ピッチとしてJFEケミカル株式会社製、石油ピッチMCP350を用いたこと、N−メチル−2−ピロリドン100gにピッチ8gを溶解させてピッチ溶液を得たこと、ピッチ溶液108質量部とボールミル後のシリコン材料の粒子92質量部とを混合してスラリーを得たこと、及び、スプレードライの条件のうち入口温度を175℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の造粒体を得た。なお実施例4で用いたピッチは、350℃で軟化し、炭化率約80%であった。
(実施例5)
スプレードライの条件のうちスラリーの送液速度を5g/分としたこと以外は、実施例4と同様の方法で、実施例5の造粒体を得た。
(実施例6)
スプレードライの条件のうちスラリーの送液速度を5g/分とし、かつ、ガス流量を8.5L/分としたこと以外は、実施例4と同様の方法で、実施例6の造粒体を得た。
(比較例1)
ピッチを用いずにエタノール100質量部とボールミル後のシリコン材料の粒子100質量部とを混合したスラリーをスプレードライしたこと、スプレードライの条件のうち入口温度を140℃としたこと、及び、スラリーの送液速度を10g/分としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の造粒体を得た。
(比較例2)
スプレードライの条件のうちスラリーの送液速度を5g/分としたこと以外は、比較例1と同様の方法で、比較例2の造粒体を得た。
(比較例3)
スプレードライの条件のうちガス流量を8.5L/分としたこと以外は、比較例1と同様の方法で、比較例3の造粒体を得た。
(比較例4)
スプレードライの条件のうち入口温度を200℃とし、かつ、ガス流量を8.5L/分としたこと以外は、比較例1と同様の方法で、比較例4の造粒体を得た。
(比較例5)
スプレードライの条件のうち入口温度を200℃としたこと以外は、比較例1と同様の方法で、比較例5の造粒体を得た。
(比較例6)
スプレードライの条件のうち入口温度を200℃とし、スラリーの送液速度を5g/分とし、かつ、ガス流量を8.5L/分としたこと以外は、比較例1と同様の方法で、比較例6の造粒体を得た。
(参考例1)
シリコン材料にかえて構造に特徴のない市販の結晶性Si粉末を用いたこと、ピッチを使用しなかったこと、及び、スプレードライの条件のうちスラリーの送液速度を5g/分としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、参考例1の造粒体を得た。
(参考例2)
スプレードライの条件のうちガス流量を8.5L/分としたこと以外は、参考例1と同様の方法で、参考例2の造粒体を得た。
(参考例3)
スプレードライの条件のうちスラリーの送液速度を2.5g/分としたこと以外は、参考例1と同様の方法で、参考例3の造粒体を得た。
表1に示すように、結晶性Siと溶剤のみを含むスラリーを噴霧乾燥する参考例1〜参考例3の方法によると造粒体を得ることができるのに対し、シリコン材料と溶剤のみを含むスラリーを噴霧乾燥する比較例1〜比較例6の方法によると造粒体を得ることはできなかった。つまり、シリコン材料を用いる場合には、通常の方法で造粒を行うことはできなかった。
これに対して、シリコン材料、ピッチ及び溶剤を含むスラリーを噴霧乾燥する実施例1〜実施例6の方法で製造した実施例1〜実施例6の造粒体は、何れも、平均粒子径1.5〜50.0μmの範囲に造粒された。
この結果から、造粒が困難なシリコン材料を用いる場合、ピッチとともに造粒を行う本発明の製造方法によると、好適な粒子径の造粒体を製造し得ることがわかる。
表2に示すように、実施例1〜実施例6の方法によると、何れも(D90−D10)が13μm以下である粒径の揃った造粒体が得られた。
(加熱工程)
実施例3及び実施例5の造粒体を、各々アルゴンガス雰囲気下、900℃で1時間加熱して、実施例3の負極材料及び実施例5の負極材料を得た。
(評価1)
実施例3の負極材料を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像した。得られたSEM像を図1に示す。図1のSEM像から、実施例3の負極材料は複数の粒子が連結された造粒体粒子であることがわかる。
(評価2)
実施例3の負極材料の平均粒子径を測定した。得られた粒度分布図を図2に示す。図2に示すように、実施例3の負極材料の粒度分布図は、粒子径3〜4μm付近にピークを有し、当該ピークの分布幅は比較的狭い。このため実施例3の負極材料は比較的粒子径の揃ったものであると考えられる。
(評価3)
実施例3の負極材料及び実施例5の負極材料につき、酸素量、炭素量、BET比表面積及び体積抵抗を測定した。同様に、実施例3の負極材料をCVD法で炭素被覆したもの(実施例3−1)、及び、実施例5の負極材料をCVD法で炭素被覆したもの(実施例5−1)につき、同様に、酸素量、炭素量、BET比表面積及び体積抵抗を測定した。酸素量については、酸素・窒素・水素分析装置EMGA(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。炭素量については、炭素・硫黄分析装置EMIA(株式会社堀場製作所製)を用い、酸素気流中燃焼(高周波加熱炉方式)−赤外線吸収法により測定した。BET比表面積についてはBET法により測定した。体積抵抗率については、抵抗測定装置(三菱化学アナリテック製、商品名 MCP−PD51)を用いて測定した。なお、体積抵抗率を測定するための試料は、実施例3の負極材料及び実施例5の負極材料各々1gを、直径2cmの円筒管に入れ、荷重20kNで圧縮したものを用いた。酸素量、炭素量、BET比表面積及び体積抵抗の測定結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例3、実施例3−1、実施例5及び実施例5−1の負極材料は何れも体積抵抗が充分に小さく、導電性に優れるといえる。特に炭素被覆した実施例3−1及び実施例5−1については、体積抵抗が非常に小さく、大変優れた導電性を示した。
(評価4)
実施例3の負極材料を用いた実施例3のリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
(電池)
(実施例3)
正極活物質としてLi1.1Ni5/10Co3/10Mn2/10を69質量部、正極活物質として炭素被覆したLiFePOを25質量部、導電助剤としてアセチレンブラック3質量部、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部を混合して混合物とした。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを製造した。正極用集電体としてアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、当該アルミニウム箔をプレスし接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で加熱乾燥して、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔からなる正極を製造した。
負極活物質として実施例3の負極材料72.5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13.5質量部、結着剤としてポリアクリル酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとの混合物14質量部、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で加熱乾燥して、負極活物質層が形成された銅箔からなる負極を製造した。なお、結着剤として用いたポリアクリル酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとの混合物は、上記加熱乾燥にて脱水反応が進行して、ポリアクリル酸を4,4’−ジアミノジフェニルメタンで架橋した架橋ポリマーに変化する。
環状カーボネートであるエチレンカーボネート、鎖状カーボネートであるエチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートを、30:30:40の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを加えて溶解させて、電解液を製造した。この電解液においては、LiPFの濃度が1mol/Lである。
セパレータとして、片面にセラミックス層を有するポリエチレン製多孔質膜を準備した。正極と負極とでセパレータを挟持し、極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに、先に調製した電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉された実施例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
実施例3の負極材料にかえて比較例1のシリコン材料を用いたこと以外は、実施例3のリチウムイオン二次電池と同様に、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(サイクル試験)
実施例3および比較例1のリチウムイオン二次電池につき、温度0℃の条件下、1Cレートの定電流にて、4.0Vまで充電した後に3.0Vまで放電して、放電容量を測定した。これらの放電容量を初期容量とした。
次いで、各リチウムイオン二次電池につき、温度0℃の条件下、1Cレートの定電流にて、4.0Vまで充電し3.0Vまで放電を行う4.0V−3.0Vの充放電サイクルを200サイクル行った。サイクル試験は、実施例3のリチウムイオン二次電池および比較例1のリチウムイオン二次電池につき各々n=2で行った。200サイクル時の各リチウムイオン二次電池につき放電容量を測定し、初期容量を基にした容量維持率(%)を以下の式で求めた。
容量維持率(%)=(各サイクルの放電容量/初期容量)×100
200サイクル時の実施例3のリチウムイオン二次電池の容量維持率は、74%であった。これに対して200サイクル時の比較例1のリチウムイオン二次電池の容量維持率は、57%であった。このように、実施例3のリチウムイオン二次電池は比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて耐久性に優れる。この結果から、本発明の負極材料が耐久性に優れることが示唆される。

Claims (8)

  1. 複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料の粒子と、ピッチと、溶剤と、を含むスラリーを噴霧乾燥して、平均粒子径1.5〜50.0μmの造粒体を得る造粒工程と、
    前記造粒体を前記ピッチの炭化温度以上に加熱して負極材料を得る加熱工程と、を有する、負極材料の製造方法。
  2. 前記造粒工程前に、前記シリコン材料を粉砕し平均粒子径0.5〜3μmとする粉砕工程を有する、請求項1に記載の負極材料の製造方法。
  3. 複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料の粒子と、複数の前記シリコン材料の粒子を連結するピッチと、を含み、平均粒子径1.5〜50.0μmの範囲である、造粒体。
  4. 前記シリコン材料の粒子の平均粒子径は0.5〜3μmである、請求項3に記載の造粒体。
  5. 複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料の粒子と、複数の前記シリコン材料の粒子を連結する炭素と、を含み、平均粒子径1.5〜50.0μmの範囲である、負極材料。
  6. 前記シリコン材料の粒子の平均粒子径は0.5〜3μmである、請求項5に記載の負極材料。
  7. 複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料の粒子と、ピッチと、溶剤と、を含むスラリーを噴霧乾燥して、平均粒子径1.5〜50.0μmの造粒体を得る造粒工程と、
    前記造粒体を前記ピッチの炭化温度以上に加熱して負極材料を得る加熱工程と、を有する、負極材料製造工程を有する、負極の製造方法。
  8. 複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料の粒子と、複数の前記シリコン材料の粒子を連結する炭素と、を含み、平均粒子径1.5〜50.0μmの範囲である、負極材料を有する、負極。
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