以下、添付図面に従って本発明に係るワークの芯出し装置及び真円度測定装置について説明する。
図1は、実施形態に係るワークの芯出し装置(以下、芯出し装置と称する。)10が備えられた真円度測定装置12の外観を示す斜視図である。図2は、真円度測定装置12の構成を示したブロック図である。
図1及び図2に示すように、真円度測定装置12は、測定機本体14と演算処理部16とから構成される。
測定機本体14は、図1の如くベース17と、ベース17に回転自在に設けられた測定用テーブル(以下、テーブルと称する。)18と、を備える。このテーブル18に実施形態の芯出し装置10が搭載されている。芯出し装置10については後述する。
テーブル18は、その側面にX方向微動つまみ20及びY方向微動つまみ22を備えている。X方向微動つまみ20及びY方向微動つまみ22は、それぞれテーブル移動軸(不図示)に連結されており、X方向微動つまみ20及びY方向微動つまみ22を操作することによってテーブル18をX方向及びY方向に微小送りすることができる。これによって、テーブル18は、その水平位置が微調整される。
また、テーブル18は、その側面にX方向傾斜つまみ24及びY方向傾斜つまみ26を備えている。X方向傾斜つまみ24及びY方向傾斜つまみ26を操作することによってテーブル18は、そのX方向及びY方向の傾斜角度が微調整される。
また、ベース17の内部であってテーブル18の下部には、回転機構部28が設けられている。回転機構部28は、テーブル18を回転駆動することにより、芯出し装置10とともに芯出し装置10によって芯出しされたワークWを回転させるものである。なお、以下の説明において、「芯出し」と称したときは、芯出し装置10によって、ワークWの中心軸aをテーブル18の回転中心bに一致させることを言う。芯出し装置10の構成及び作用については後述する。
図1の如く、ベース17には、Z方向(上下方向)に沿ってコラム30が立設されており、コラム30にはスライダ32がZ方向に移動可能に装着されている。スライダ32には水平アーム34が水平方向に移動可能に装着されている。この水平アーム34の先端には、検出器36が設けられ、検出器36は測定子38が備えられている。
真円度測定装置12によるワークWの測定時には、ワークWを芯出し装置10に載置し、芯出し装置10によって芯出しした後、測定子38をワークWの外周面に接触させ、その後、テーブル18によってワークWを回転する。これによって、測定子38の変位が検出器36によって検出され、そして、検出器36からの変位信号が図2の演算処理部16に送信されて演算処理部16にて処理される。
なお、実施形態の真円度測定装置12は、検出器36に対してテーブル18を回転させる装置であるが、テーブル18に対して検出器36を回転させる装置であってもよい。また、検出器36としては、差動変圧器を用いた電気マイクロメータが使用されており、この電気マイクロメータによって測定子38の変位が検出される。
図2の如く、テーブル18の回転機構部28は、軸受39、エンコーダ40及びモータ42等を備えている。テーブル18は、軸受39を介してベース17(図1参照)に回転自在に支持され、モータ42の動力によって回転される。軸受39としては、例えば、超高精度の静圧エアーベアリングが用いられており、これによって、テーブル18は高い回転精度で回転される。エンコーダ40は、モータ42の回転軸43に取り付けられており、エンコーダ40によって回転軸43の回転角が高精度に読み込まれる。
演算処理部16は、増幅器44、A/D変換器46及び演算/処理手段48を備える。また、演算処理部16は、演算処理部16を制御するためのプログラム50、及び処理結果を表示する表示手段52を備えている。
演算処理部16は、検出器36からの検出信号(アナログ電圧値)を、増幅器44によって増幅した後、A/D変換器46によってデジタル信号に変換する。そして、演算/処理手段48は、エンコーダ40から入力される回転角度データと、A/D変換器46によって変換されたデジタル信号とに基づいて、ワークWの外周面の真円度を演算し、演算結果を表示手段52に表示させる。
次に、実施形態の芯出し装置10について説明する。
図3は、実施形態の芯出し装置10の平面図であって、3枚の絞り羽根(チャック部材)54、54、54が開放位置に位置された芯出し装置10の平面図である。また、図4は、3枚の絞り羽根54、54、54が絞り位置に位置された芯出し装置10の平面図である。図5は、芯出し装置10によってワークWが芯出しされた芯出し装置10の平面図である。図6は、図3のA−A線に沿う芯出し装置10の縦断面図である。
図3から図6に示す実施形態の芯出し装置10は、所謂アイリスチャックと称される構造のものであり、略三日月状に形成された3枚の絞り羽根54と、ベース板56と、チャックテーブル58と、複数の磁石60と、保持リング62と、操作リング64と、磁気シールド板66とを備えて構成されている。
ベース板56は、平面視で円形状に構成される。このベース板56は、図6の断面図の如く、その裏面側に平面視で円形の凹部68が形成され、この凹部68が図6の二点鎖線で示すテーブル18の上部に嵌合される。これにより、ベース板56の中心cがテーブル18の回転中心bに一致された状態で、芯出し装置10がテーブル18に搭載される。
ベース板56の表面側の中央部には、平面視で円形の台座部70がベース板56の表面56Aから突出して形成される。この台座部70の中央部にチャックテーブル58が台座部70と一体に設けられている。チャックテーブル58は、その表面にワークW(図5参照)が載置されるテーブルであり、平面視で円形状に構成される。
なお、後述するように、測定対象物である磁性体のワークWは、磁石60の磁力によってチャックテーブル58の表面に固定される。このため、チャックテーブル58は、例えば非磁性体であるオーステナイト系ステンレスによって製造されているが、これに限定されるものではない。磁石60の磁力によってワークWをチャックテーブル58の表面に固定することができる材料であれば、チャックテーブル58は樹脂製であってもよい。
図6の如く、チャックテーブル58の裏面には、円柱状に構成された複数の磁石60が配列されて配置される。この磁石60は永久磁石である。
図7は、チャックテーブル58に対する磁石60の配列形態の一例を示した芯出し装置10の平面図である。なお、図7では、磁石60の配置形態を分かり易くするために3枚の絞り羽根54を除いて示している。図7によれば、磁石60は、チャックテーブル58の中心cから放射方向に沿って複数配置される。具体的には、チャックテーブル58の中心cから放射方向に沿った6本の放射列に沿って、複数の磁石60が密接された状態で配置されている。
このように磁石60を配置することにより、チャックテーブル58の全面に磁石60の磁力を略均等に付与することができる。よって、直径又は内径のサイズが異なるワークWであっても、同一のチャックテーブル58でワークWを固定することができる。
一方、図6に示す保持リング62は、台座部70に嵌合されて固定される。保持リング62の表面には、保持リング62の内周に沿った等間隔位置に3本のピン72(図3及び図4参照)が設けられている。このピン72に、絞り羽根54の一方端が回動自在に連結されている。
3枚の絞り羽根54は、チャックテーブル58の中心c周りに設けられる。また、3枚の絞り羽根54は、チャックテーブル58の上方において互いに交差するように配置されており、その他方端にはカム溝74が形成されている。カム溝74には、操作リング64の裏面に設けられたピン76が嵌合されている。
図6に示すように、操作リング64は、その外周フランジ部64Aが保持リング62の外周フランジ部62Aに摺接され、保持リング62の外周フランジ部62Aをガイドとして回動自在に設けられる。また、操作リング64の外周フランジ部64Aには、図3の如く、つまみ78が設けられ、このつまみ78を利用して操作リング64が回動操作される。
図3の開放位置から操作リング64を矢印B方向に回動操作すると、操作リング64に設けられたピン76も同方向に移動する。これにより、ピン76にカム溝74を介して連結された絞り羽根54が、チャックテーブル58の中心cに向けて連動されて、図4に示した絞り位置に位置する。また、図4の絞り位置から操作リング64を矢印C方向に回動操作すると、操作リング64に設けられたピン76も同方向に移動する。これにより、ピン76にカム溝74を介して連結された絞り羽根54が、チャックテーブル58の中心cから離間する方向に向けて連動され、図3に示した開放位置に位置する。
図6に示すように磁気シールド板66は、チャックテーブル58の裏面側であって、チャックテーブル58との間で磁石60を保持するように設けられている。この磁気シールド板66によって、磁石60による磁界ノイズから真円度測定装置12の機器、例えばエンコーダ40等の機器を保護している。
次に、実施形態の芯出し装置10を使用したワークWの芯出し方法について説明する。図8(A)、(B)、(C)は、芯出し装置10を使用したワークWの芯出し手順と、その後に行われる真円度測定を示した説明図である。
まず、ワークWの芯出しに先立ち、芯出し装置10をテーブル18に搭載する。これにより、テーブル18の回転中心bと芯出し装置10のチャックテーブル58の中心cとが一致する。
次に、図3及び図8(A)の如く、3枚の絞り羽根54をチャックテーブル58の中心cから離間した開放位置に待機させておき、この状態でチャックテーブル58の表面の任意の位置にワークWを載置する。これにより、ワークWは、磁石60の磁力によってチャックテーブル58の表面に固定される。
次に、図3の開放位置から操作リング64を矢印B方向に回動操作し、3枚の絞り羽根54をチャックテーブル58の中心cに向けて連動させる。これにより、チャックテーブル58の表面に固定されたワークWが、3枚の絞り羽根54に押されて、チャックテーブル58の中心cに向けて移動していく。
そして、図5及び図8(B)の如く、ワークWが3枚の絞り羽根54に完全に挟み込まれると、3枚の絞り羽根54の連動が停止し、この時点でワークWが芯出しされる。すなわち、ワークの中心軸aがチャックテーブル58の中心cに一致し、かつテーブル18の回転中心bに一致する。
次に、絞り羽根54が当接された箇所dに測定子38を当接して、箇所dの測定を行う場合には、図5の操作リング64を矢印C方向に回動させて、3枚の絞り羽根54を図3の開放位置、すなわち、図8(C)の如く、チャックテーブル58の中心cから離間した位置に戻す。その後、その箇所dに測定子38を当接して箇所dの測定を行う。
測定中において、ワークWは、チャックテーブル58の表面に磁力によって固定されているので、チャックテーブル58に対してずれることなく芯出しされた状態で測定される。
したがって、実施形態の真円度測定装置12によれば、実施形態の芯出し装置10を使用することにより、絞り羽根54が当接された箇所dであっても、絞り羽根54に制約されることなく、その箇所dの測定を行うことができる。
以下、芯出し装置10の変形例について説明する。
磁石60の配列形態に関し、図7の一例では、チャックテーブル58の中心cから放射方向に沿った6本の放射列に沿って複数の磁石60を配置した。この配列形態に代えて、図9の芯出し装置10の平面図の如く、チャックテーブル58の中心cを中心とする複数(図9では3つ)の同心円に沿って複数の磁石60を配置してもよい。
図9のように磁石60を配置しても、チャックテーブル58の全面に磁石60の磁力を略均等に付与することができる。よって、直径又は内径のサイズが異なるワークWであっても、同一のチャックテーブル58でワークWを固定することができる。
また、磁石60として、実施形態では永久磁石を例示したが、これに代えて電磁石を使用することがきる。電磁石の場合も同様に、複数の電磁石をチャックテーブル58の中心cから放射方向に沿って配置してもよく、チャックテーブル58の中心cを中心とする複数の同心円に沿って配置してもよい。
また、電磁石の場合は、磁力を可変することができるので、チャックテーブル58に対するワークWの固定強度を可変することができる。例えば、チャックテーブル58に対して不安定に載置されるワーク(例えば、直径が小さく肉厚の薄い円筒状のワーク)の場合には、磁力を高めることが好ましい。
また、電磁石の場合には、全ての電磁石を駆動させることなく、ワークの芯出しに必要とする一部の電磁石のみを駆動させることもできる。