JP2018149753A - 遠赤外線反射基板 - Google Patents

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行弘 前田
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雅之 北川
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佳昭 小久保
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Ryuhei Yonetahi
隆平 米多比
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三戸  理
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Abstract

【課題】耐腐食性に優れた遠赤外線反射基板の提供。【解決手段】基材[A]1と層[G]10の間に、層[G]10側から順に層[C]6、層[C]6に直接接している層[D]5、及び層[D]5に直接接している層[E]4を有し、遠赤外線反射率が60%以上であり、以下(1)〜(4)を満足する遠赤外線反射基板。(1)層[C]6が、一層又は複数層の金属からなる層を有し、層[C]6全体に対して銀を50原子数%以上含有する(2)層[D]5は珪素を含有するか、珪素及び炭素を含有しており、合計含有量が40原子数%以上である(3)層[E]4は窒素を含有するか、窒素及び酸素を含有しており、層[E]4の窒素含有量は2原子数%以上であり、層[E]4の酸素含有量は0〜45原子数%である(4)層[E]4における、窒素及び酸素の合計含有量(原子数%)は、層[D]5における、窒素及び酸素の合計含有量(原子数%)よりも大きい。【選択図】図3

Description

本発明は、遠赤外線反射基板に関する。
従来、例えば建築物や移動体の窓に省エネ性能を付与する手段として、遠赤外線反射性能を有する積層体を窓に設置することが知られている。この遠赤外線反射性能を有する積層体は、屋内等で発生する遠赤外線を主成分とする放射熱を反射し、屋内から屋外に上記の放射熱が流出することを抑制するものである。そして、この遠赤外線反射性能を有する積層体としては、プラスチックフィルムなどの基材に銀を主成分とした金属層を積層し、さらに、その上に表面保護層を設けた構成のものが多く知られている。
ここで、上記の表面保護層としては、ガラスや樹脂等からなるものが知られているが、遠赤外線を主成分とする放射熱をより多く室内に戻すためには、すなわち、遠赤外線反射性能をより優れたものとするためには、上記の表面保護層を厚みの薄いものとすることが好適であることも知られている。そして、厚みの薄い表面保護層としては、ウェットコーティングなどのプロセスを用いて成膜される有機系の表面保護層(特許文献1参照)や、ヘキサメチルジシロキサンなどの有機珪素化合物等を材料として化学蒸着(CVD)プロセスなどによって成膜される酸化珪素や酸化アルミニウムなどからなる無機系の表面保護層 (特許文献2参照)などが知られている。
特開平10-286900号公報 特表2002−539004号公報
赤外線の中でも、冬季暖房熱等により屋内で発せられる遠赤外線は、ガラスやプラスチックフィルムはもちろん、表面保護層によっても吸収されてしまう。よって、遠赤外線を反射することで熱エネルギーが屋外に流出するのを防ぐ性能を得るため、すなわち、赤外線反射基板の高い赤外線反射率を実現するためには、赤外線反射基板を厚い表面保護層で保護するような構成をとらず、その表面保護層を薄くすることが必要であることは上述のとおりである。しかし、表面保護層を薄くすると、化学物質による汚染を容易に受けることとなり、赤外線を反射する金属層の腐食等による劣化が進行しやすくなる課題に本発明者は直面した。すなわち、引用文献1及び2に記載された厚みの薄い表面保護層は遠赤外線反射性能を有する積層体の遠赤外線反射性能向上に寄与するものの、遠赤外線反射性能を有する積層体が備える金属層の腐食等による劣化や、遠赤外線反射基板が有する層により形成される層間の少なくとも一部にて層間剥離が進行しやすいとの課題に本発明者は直面したのである。
そこで、本発明の課題は、良好な遠赤外線反射性能を有する遠赤外線反射基板でありながら優れた耐腐食性を有する遠赤外線反射基板を提供することである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、
基材[A]と層[G]の間に、層[G]側から順に層[C]、層[C]に直接接している層[D]、および層[D]に直接接している層[E]を有し、遠赤外線反射率が60%以上であり、以下(1)〜(4)を満足する遠赤外線反射基板。
(1)前記層[C]が、一層又は複数層の金属からなる層を有し、層[C]全体に対して銀を50原子数%以上含有する
(2)層[D]は珪素を含有するか、珪素および炭素を含有しており、層[D]における珪素および炭素の層[D]全体に対する合計含有量が40原子数%以上である
(3)層[E]は窒素を含有するか、窒素および酸素を含有しており、層[E]の窒素含有量は層[E]全体に対し2原子数%以上であり、層[E]の酸素含有量は層[E]全体に対して0〜45原子数%である
(4)層[E]における、窒素および酸素の層[E]全体に対する合計含有量(原子数%)は、層[D]における、窒素および酸素の層[D]全体に対する合計含有量(原子数%)よりも大きい。
本発明の遠赤外線反射基板では、層[D]が層[C]および層[E]と直接接する構成となっている。そして、上記の構成により、遠赤外線反射基板の遠赤外線反射率や可視光透過性の低下を抑制しつつ、銀を含有する層[C]の腐食を抑制することができる。よって、本発明によれば遠赤外線反射率が60%以上という良好な遠赤外線反射性能を有しながら、耐腐食性に優れる赤外線反射基板を提供することができる。
本発明の遠赤外線反射基板の第1の形態例の断面模式図であり、具体的には、基材[A]、層[B]、第1の層[F]、層[E]、層[D]、層[C]、第2の層[F]、および無機系層[G1]がこの順に積層されてなる構成の断面模式図である。 本発明の遠赤外線反射基板の第2の形態例の断面模式図であり、具体的には、基材[A]、層[B]、第1の層[F]、層[E]、層[D]、層[C]、層[H]、第2の層[F]、および無機系層[G1]がこの順に積層されてなる構成の断面模式図である。 本発明の遠赤外線反射基板の第3の形態例の断面模式図であり、具体的には、基材[A]、層[B]、第1の層[F]、層[E]、層[D]、層[C]、層[H]、第2の層[F]、無機系層[G1]、および有機系層[G2]がこの順に積層されてなる構成の断面模式図である。 本発明の遠赤外線反射基板の第4の形態例の断面模式図であり、具体的には、基材[A]、層[B]、層[E]、層[D]、層[C]、層[H]、層[I]、および無機系層[G1]がこの順に積層されてなる構成の断面模式図である。 本発明の遠赤外線反射基板の第5の形態例の断面模式図であり、具体的には、基材[A]、層[B]、層[E]の構成層[K]、層[E]の構成層[J]、層[D]、層[C]、層[H]、層[I]、無機系層[G1]、および有機系層[G2]がこの順に積層されてなる構成の断面模式図である。 層[E]を有さない遠赤外線反射基板の断面模式図であり、基材[A]、層[B]、第1の層[F]、層[D]、層[C]、第2の層[F]、および無機系層[G1]がこの順に積層されてなるものである。
本発明の遠赤外線反射基板は、基材[A]と層[G]の間に、層[G]側から順に層[C]、層[C]に直接接している層[D]、および層[D]に直接接している層[E]を有し、遠赤外線反射率が60%以上であり、以下(1)〜(4)を満足するものである。
(1)前記層[C]が、一層又は複数層の金属からなる層を有し、層[C]全体に対して銀を50原子数%以上含有する。
(2)層[D]は珪素を含有するか、珪素および炭素を含有しており、層[D]における珪素および炭素の層[D]全体に対する合計含有量が40原子数%以上である。
(3)層[E]は窒素を含有するか、窒素および酸素を含有しており、層[E]の窒素含有量は層[E]全体に対し2原子数%以上であり、層[E]の酸素含有量は層[E]全体に対して0〜45原子数%である。
(4)層[E]における、窒素および酸素の層[E]全体に対する合計含有量(原子数%)は、層[D]における、窒素および酸素の層[D]全体に対する合計含有量(原子数%)よりも大きい。
本発明者が鋭意検討を行ったところ、本発明の遠赤外線反射基板が、基材[A]側から順に層[E]、層[D]、層[C]および層[G]を有し、特定の組成の層[C]が特定の組成の層[D]と直接接しており、さらに、上記の層[D]が特定の組成の層[E]と直接接している構成であることで、遠赤外線反射基板の遠赤外線反射性能を優れたものとすべく、例えば、この遠赤外線反射基板の有する層[G]を薄いものとしたとしても、この遠赤外線反射基板の腐食耐性が優れたものとなることを見出したのである。
また、本発明の遠赤外線反射基板の取り得る形態の例としては、図1〜5のような形態が例示できる。
まず、一つ目が、図1に示すような、基材[A]1、層[B]2、第1の層[F]3、層[E]4、層[D]5、層[C]6、第2の層[F]9、および無機系層[G1]11をこの順に有する遠赤外線反射基板である。なお、後述する実施例1の遠赤外線反射基板は、この実施形態例に属する。
二つ目としては、図2に示すような、基材[A]1、層[B]2、第1の層[F]3、層[E]4、層[D]5、層[C]6、層[H]7、第2の層[F]9、および無機系層[G1]11をこの順に有する遠赤外線反射基板である。この遠赤外線反射基板では、層[C]6の両面に層[D]5と層[H]7が形成されており、2つの珪素含有層を有する。なお、後述する実施例2の赤外線反射基板は、この実施形態例に属する。
三つ目としては、図3に示すような、基材[A]1、層[B]2、第1の層[F]3、層[E]4、層[D]5、層[C]6、層[H]7、第2の層[F]9、無機系層[G1]11、および有機系層[G2]12をこの順に有する遠赤外線反射基板である。この遠赤外線反射基板では、無機系層[G1]11と有機系層[G2]12の2つの層を有する。なお、後述する実施例6の赤外線反射基板は、この実施形態例に属する。
四つ目としては、図4に示すような、基材[A]1、層[B]2、層[E]4、層[D]5、層[C]6、層[H]7、層[I]8、および無機系層[G1]11をこの順に有する遠赤外線反射基板である。この遠赤外線反射基板では、層[E]4と層[I]8の2つの層を有する。なお、後述する実施例4の赤外線反射基板は、この実施形態例に属する。
五つ目として、図5に示すような、基材[A]1、層[B]2、層[E]4、層[D]5、層[C]6、層[H]7、層[I]8、無機系層[G1]11、および有機系層[G2]12をこの順に有する遠赤外線反射基板である。この遠赤外線反射基板では、層[E]は構成層[J]13および構成層[K]14の2つの構成層を有している。
なお、後述する実施例8の遠赤外線反射基板は、この実施形態例に属する。
また、基材[A]側から順に層[E]、層[D]および層[C]を有し、層[E]と層[D]とが直接接し、さらに、層[D]と層[C]とが直接接している構成を有さない遠赤外線反射基板としては、図6に示すような、基材[A]1、層[B]2、第1の層[F]3、層[D]5、層[C]6、第2の層[F]9、および無機系層[G1]11をこの順に有するものが挙げられる。後述する比較例1の赤外線反射基板は、この実施形態例に属する。
以下に本発明における各構成を説明する。
(基材[A])
本発明に用いる基材[A]としては、特に限定はされないが、ガラスなどの無機酸化物や樹脂からなるものを用いることが出来る。連続加工や取り扱いを容易とするために、基材[A]は可撓性を有する樹脂フィルムであることがより好ましい。樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表される芳香族ポリエステル、ナイロン6やナイロン66に代表される脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートフィルムなどに代表されるアクリル等が例示される。これらの中で、コストや取り扱いの容易さ、積層体を加工する際に受ける熱に対する耐熱性といった面で、芳香族ポリエステルが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。また、機械強度を高めた二軸延伸フィルムが好ましく、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。取り扱いの容易さや、加工単位の長尺化による生産性向上といった点からは、フィルムの厚みは5μm〜250μmの範囲が好ましく、15μm〜150μmであることがさらに好ましい。
また、樹脂フィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、耐電防止剤、核剤などが、樹脂フィルムの特性を悪化させない程度に添加されていても良い。
樹脂フィルム等からなる基材[A]と、後述する層[B]等の基材[A]以外の層と、の接着性を改善するために、例えば、特開2004−107627号公報などに記載されているように、基材[A]を、少なくとも基材[A]の層[B]や層[C]が積層される側の面にポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルグラフトポリエステル等の各種樹脂を含むプライマー層を設けたものとすることは好ましい態様の一つである。
(層[C])
本発明において層[C]を設ける目的としては、導電性や電磁波防止性、そして赤外線の反射による遮熱や断熱性能を得ることなどが挙げられる。良好な赤外線反射性能を得るためには、層[C]に優れた導電性を示す金属を用いることが必要であり、そのような金属としては銀(Ag)が挙げられる。可視光域の吸収が少なく、非常に優れた導電性を示す銀(Ag)を、層[C]の全体に対して50原子数%以上含有する層を有することで、光学的にも優れた遠赤外線反射基板を得ることができる。
層[C]の良好な赤外線反射率と可視光透過率を得るとの目的からは、層[C]の全体に対して銀(Ag)が、70原子数%以上含有されていることが好ましく、90原子数%以上含有されていることがより好ましい。一方で、銀(Ag)の含有量の上限は特に限定されず、銀(Ag)の含有量が100原子数%、すなわち、層[C]が銀(Ag)のみからなるものであってもよい。銀(Ag)が硫黄や酸素などと反応して劣化することを抑えたり、凝集などにより欠点が発生するのを防いだりするため、Au、Pt、Pd、Cu、Bi、Nd、Mg、Zn、Al、Ti、Y、Eu、Pr、Ce、Sm、Ca、Be、Cr、CoおよびNiなどから選ばれる1種以上の金属と銀(Ag)との合金として用いることが好ましい。遠赤外線反射基板の耐腐食性がより優れたものとなるとの理由から、層[C]は銀(Ag)の他に金(Au)を含むことが好ましく、銀(Ag)の他に金(Au)と銅(Cu)とを含むことがより好ましい。
層[C]の膜厚は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることはさらに好ましい。層[C]の膜厚を5nm以上とすることで、層[C]の厚みムラが抑制され、層[C]は安定した遠赤外線反射性能を発揮することができる。一方、層[C]の膜厚は、30nm以下であることが好ましく、25nm以下であることはさらに好ましい。層[C]の膜厚を30nm以下とすることで、遠赤外線反射基板の可視光透過性能をさらに向上させることができる。
また、層[C]の製膜方法としては、各種金属や合金のターゲットを用いて、スパッタリングプロセスにより薄膜を得る方法、蒸着プロセスにより抵抗加熱、電子ビーム、レーザ、高周波誘導加熱、アークなどの方法で気化させた各種金属や合金を堆積させることによって薄膜を得る方法などが挙げられる。中でも、膜厚や膜質の制御に優れ、良好な膜密着性が得られるという観点から、スパッタリングプロセスにより薄膜を得る方法が好ましい。
また、層[C]を腐食や酸化から保護する観点から、層[C]を、銀を全体に対し50原子数%以上含有する層[C1]とY、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ru、Ir、Pd、Pt、Ni、Cu、Au、Al、Ce、Nd、Sm、Sn、Zn、Cr及びTbなどから選ばれた金属やその混合物からなる金属薄膜[C2]とを有するものとし、さらに、層[C1]の片面または両面に金属薄膜[C2]を設けた構成とすることが好ましい。層[C]を腐食や酸化から十分に保護するためには、上記金属薄膜[C2]の膜厚は0.5nm以上であることが好ましい。また、良好な可視光透過性能を得るためには、上記金属薄膜[C2]の膜厚は10nm以下であることが好ましい。また、保護性能と可視光透過性能を両立するためには、上記金属薄膜[C2]の膜厚が1nm以上5nm以下であることがさらに好ましい。上記金属薄膜[C2]は、層[C]を腐食から保護するために設ける層であり、赤外線反射性能などの特性に対する影響は小さい。したがって、赤外線反射性能などの特性に対して層[C]の厚みを考慮する際には、金属薄膜[C2]は除外して考える。また、金属薄膜[C2]は銀(Ag)を含むものであってもよいが、その場合には、金属薄膜[C2]における銀の含有量は、金属薄膜[C2]に対して50原子数%未満であることが好ましい。なお、金属薄膜[C2]は銀(Ag)を含まないことがより好ましい。
(層[D])
本発明の遠赤外線反射基板では、基板[A]と層[C]の間に配置された層[D]が、層[C]と直接接する構造を採用することによって、良好な耐腐食性を得るものである。その理由は定かではないが、基板[A]と層[C]の間に層[D]配置する構成をとると、基板や層を形成する樹脂や金属酸化物の上に層[C]を直接形成する場合に対して、界面構造の欠陥を減少させる効果が大きいために良好な耐腐食性を示すのではないかと考えている。
また、層[D]は、珪素を含有するか、珪素および炭素を含有するものであり、層[D]における珪素と炭素の層[D]全体に対する合計含有量が40原子数%以上であることで、優れた耐腐食性を遠赤外線反射基板に付与することができる。
また、層[D]が、SiCなどのように、元素半導体である珪素と炭素とを含む、すなわち、2種類以上の元素半導体を含むものであってもよいことは上記のとおりである。また、層[D]は珪素や炭素以外の元素半導体として、ゲルマニウム等を含んでいてもよい。
そして、層[D]の特性を大幅に変えることのない範囲で、珪素、炭素、及びゲルマニウム以外の元素を、層[D]は含有していてもよい。
光学的、化学的に安定した遠赤外線反射基板を得るとの目的からは、層[D]における珪素と炭素の層[D]全体に対する合計含有量は45原子数%以上であることが好ましく、50原子数%以上であることがより好ましく、90原子数%以上であることが特に好ましい。
層[D]は可視光の透過を妨げるため、良好な透明性を得るためには層[D]の膜厚が10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることはより好ましく、3nm以下であることは更に好ましい。一方、良好な腐食耐性を得るためには、層[D]の膜厚が1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることはより好ましく、5nm以上であることは更に好ましい。
また、層[D]が酸素や窒素を多く含むと、遠赤外線反射基板の良好な腐食耐性が得られない傾向がみられる。その理由は定かではないが、酸素や窒素を多く含む層は金属酸化物と化学的な性質が近くなってしまい、層[C]との間に生じる層間に欠陥が増えるためではないかと考えている。層[D]の珪素(Si)に対する酸素(O)の含有比をx、層[D]の珪素(Si)に対する窒素(N)の含有比をy、層[D]の珪素(Si)に対するその他元素(M)の含有比をzとして、層[D]の元素含有比をSiOxNyMz(ここで、Mは、珪素、酸素および窒素以外の元素(例えば、炭素)を意味する)と表した際のx+yの値は1.2以下であることが好ましく、0.6以下であることはより好ましく、0.3以下であることは更に好ましい。同様の観点から、層[D]をX線光電子分光法で分析した際に得られる珪素のピークトップが示す結合エネルギー値BE−T([D])は、珪素酸化物や窒化物のピークトップが示す結合エネルギー値よりも小さいことが好ましい。すなわち、BE−T([D])の値が102eV以下であることが好ましく、101eV以下であることはより好ましく、100eV以下であることは更に好ましい。
また、本発明の遠赤外反射基板は、層[D]に加え層[H]を有していてもよい。そして、この遠赤外線反射基板の具体的な形態例としては、基材[A]と層[G]との間に、基材[A]側から順に層[E]、層[D]、層[C]および層[H]を有する遠赤外線反射基板であり、層[C]と層[H]とが直接接しているものを例示することができる(具体的には、基材[A]/層[E]/層[D]/層[C]/層[H]/層[G]など)。上記のような構成の遠赤外線反射基板では、その耐腐食性はより優れたものとすることができる。その理由については定かではないが、層[C]の両側の界面構造における欠陥の発生を抑制することができるためであると推測する。なお、層[H]の組成や厚みについては、上記の層[D]の組成や厚みについての記載をそのまま採用する。また、層[H]は、層[D]と、同一の構成であっても、異なる構成であってもよい。
(層[E])
本発明の遠赤外線反射基板では、基板[A]と層[C]の間に配置された層[D]が、層[C]および層[E]と直接接しており、さらに、層[E]は、窒素の含有量が層[E]全体に対し2原子数%以上であり、かつ、酸素の含有量が層[E]全体に対し0〜45原子数%である層である。そして、上記の構成の本発明の遠赤外線反射基板の耐腐食性は優れたものとなる。
上記の構成の本発明の遠赤外線反射基板の耐腐食性が優れたものとなるメカニズムの詳細については、以下の通り推測する。すなわち、本発明の遠赤外線反射基板においては、層[C]と層[E]との界面構造おける欠陥の発生が抑制されるためであると推測する。より具体的には、層[E]における、窒素の含有量が層[E]全体に対し2原子数%以上であり、かつ、酸素の含有量が層[E]全体に対し0〜45原子数%であることで、層[E]における正電荷と負電荷の局在の程度が小さくなり、層[C]と層[E]との界面構造おける欠陥の発生が抑制されるためであると推測する。
ここで、遠赤外線反射基板の耐腐食性がより優れたものとなるとの理由から、層[E]の窒素の含有量は、層[E]全体に対し、10原子数%以上であることが好ましく、20原子数%以上であることがより好ましい。また、層[E]の酸素の含有量については、遠赤外線反射基板の耐腐食性がより優れたものとなり、かつ遠赤外線反射基板の密着性が優れたものとなるとの理由から、層[E]全体に対し、40原子数%以下であることが好ましく、30原子数%以下であることがより好ましく、20原子数%以下であることが更に好ましい。
また、層[E]における窒素の含有量の上限については特に限定はされないが、層[E]に含まれる各元素を完全に窒化した値よりも小さいことが好ましい。
また、遠赤外線反射基板の透明性をより優れたものとするとの理由からは、層[E]は窒素や酸素を多く含有するものであることが好ましい。具体的には、層[E]における、窒素および酸素の層[E]に対する合計含有量20原子数%以上であることが好ましく、30原子数%以上であることがより好ましく、40原子数%以上であることが更に好ましい。また、上記のとおり、層[E]における、窒素の含有量は多く、かつ、酸素の含有量は少ないほど、遠赤外線反射基板の耐腐食性はより優れたものとなるため、遠赤外線反射基板の透明性と耐腐食性とを共に優れたものとするとの理由からは、層[E]における酸素の層[E]に対する含有量は0〜40原子数%と少量であり、かつ、層[E]における窒素の含有量は、層[E]全体に対し20原子数%以上であることが好ましい。なお、層[E]における窒素の含有量は、層[E]全体に対し30原子数%以上であることがより好ましく、40原子数%以上であることが更に好ましい。
また、本発明の遠赤外線反射基板において、層[E]における窒素および酸素の層[E]全体に対する合計含有量(原子数%)は、層[D]における窒素および酸素の層[D]全体に対する合計含有量(原子数%)よりも大きい。そして、この構成により本発明の遠赤外線反射基板の耐腐食性は優れたものとなる。
また、層[E]は窒素と酸素以外にも珪素、錫および亜鉛からなる群より選ばれる1種以上の元素等を含んでいてもよい。例えば、層[E]が珪素を含有するものである場合には、遠赤外線反射基板の密着性が優れたものを得やすくなる。また、層[E]が錫と亜鉛とを含有するものである場合には、(層[E]の屈折率が大きくなる傾向にあり、)遠赤外線反射基板の構成を単純化しつつ光学特性が優れたものを得やすくなる。
また、層[E]の屈折率や膜厚を、遠赤外線反射基板を構成する他の層の屈折率や膜厚に合わせて調整することは、遠赤外線反射基板の可視光透過率や赤外線反射性能を調整するための有効な手段である。安定した腐食耐性や層[E]と層[D]との間の良好な密着性を得るためには、層[E]の膜厚が1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることはより好ましく、10nm以上であることは更に好ましい。また、生産性や光学特性調整の容易さといった観点からは、層[E]の膜厚は、500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることはより好ましく、100nm以下であることは更に好ましい。
また、層[E]の屈折率が1.6以上であることは、層[E]の膜厚による遠赤外線反射基板の可視光透過率調整を容易に行うことができるために、好ましい態様である。層[E]の屈折率が1.7以上であることは、遠赤外線反射基板の界面反射を抑制する効果が大きくなるため、後述する層[F]を用いなくとも良好な可視光透過率を得ることが容易となるためにより好ましい態様である。
本発明の遠赤外線反射基板は、層[E]に加えて、層[I]を備えていてもよい。そして、この遠赤外線反射基板の具体的な形態例としては、基材[A]と層[G]との間に、基材[A]側から順に層[E]、層[D]、層[C]、層[H]および層[I]を有する遠赤外線反射基板であり、層[H]と層[I]とが直接接しているものを例示することができる(具体的には、基材[A]/層[E]/層[D]/層[C]/層[H]/層[I]/層[G]など)。上記のような構成の遠赤外線反射基板では、遠赤外線反射基板の耐腐食性をより優れたものとすることができる。その理由については定かではないが、層[H]と層[I]との間の界面構造における欠陥の発生を抑制することができるためであると推測する。なお、層[I]の組成や厚みについては、上記の層[E]の組成や厚みについての記載をそのまま採用する。また、層[I]は、層[E]と、同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
また、層[E]および/または層[I]は、互いに組成の異なる2つ以上の構成層を有するものであることが、遠赤外線反射基板の各構成層間の密着性や光学特性などの特性を調整することが容易になるとの理由から好ましい。ここで、各構成層の組成については、上記の層[E]の組成についての記載をそのまま適用する。
また、例えば、層[E]が2つ以上の構成層(これらの構成層のうち層[D]に直接接しているものを構成層[J]とし、構成層[J]以外の構成層を構成層[K]とする)を有するものである場合には、後述する層[F]を用いることなく遠赤外線反射基板の可視光透過率を優れたものとできるとの理由から構成層[K]の少なくとも1つは錫と亜鉛とを含有するものとし、さらに、遠赤外線反射基板の密着力を優れたものとできるとの理由から構成層[J]は珪素を含有するものとすることが好ましい。すなわち、この構成を有する遠赤外線反射基板は、後述する実施例5の遠赤外線反射基板のごとく、層[F]を別に備えずとも優れた可視光透過率を有し、さらに、優れた密着性を有したものとなる。そして、層[E]と層[D]との良好な密着性と遠赤外線反射基板の良好な可視光透過率を両立するためには、2つ以上の構成層を有する層[E]において、構成層[J]の酸素の含有量が、構成層[K]の酸素の含有量よりも少ないことは好ましい態様の一つである。
(層[F])
本発明の遠赤外線反射基板は、基材[A]と層[C]の間、層[C]と層[G]の間の少なくともいずれか一方に屈折率が1.7以上であり、層[D]及び層[E]と組成の異なる層[F]が形成されていることは、層[C]と他の層との界面における可視光線の反射を抑制するために好ましく、基材[A]と層[C]の間、層[C]と層[G]の間の両方に層[F]を有することはさらに好ましい。
層[F]の材料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫および酸化ビスマスといった酸化物、および、窒化珪素などの窒化物、ならびにそれらの混合物やそれらにアルミニウムや銅などの金属や炭素を含有ドープしたものなどから、適宜選択して用いることができる。層[F]の屈折率および厚みによって、遠赤外線反射基板の界面反射や反射光や透過光の色調を調整することが可能となる。層[F]の屈折率が高いほど、薄い膜厚で大きな効果を得ることが出来るため、屈折率が1.7以上であることが好ましく、1.9以上であることがより好ましい。また、層[F]は、各種金属および半金属・半導体元素や合金、それらの酸化物、窒化物、亜酸化物、亜窒化物、酸窒化物、亜酸窒化物などのターゲットを用いて、必要に応じて酸素や窒素などのガスと反応させるスパッタリングプロセスにより薄膜を得る方法、気化させた有機金属化合物と酸素や窒素などのガスをプラズマ等で反応させるCVDプロセスによって薄膜を得る方法、溶剤に希釈した有機金属化合物を乾燥・硬化させるウエットコーティングプロセスによって薄膜を得る方法などにより製膜することができる。層[C]をスパッタリングプロセスで製膜する場合においては、層[F]もスパッタリングプロセスで製膜することが、層[C]と連続して製膜するのに有利であるために好ましい。
遠赤外線反射基板全体の可視光透過性能および赤外線反射性能を制御するためには、例えば、(層[F])m(/層[C]/層[F])nのように層[F]と層[C]が複数積層されているものが挙げられる(ここで、mは0または1であり、かつnは1以上の整数である。)。ここで、繰り返し構造であるnの数や、層[F]や層[C]の屈折率や膜厚を調整することは、遠赤外線反射基板の可視光透過率や赤外線反射性能を調整するための有効な手段である。
また、本発明の遠赤外線反射基板が有する(/層[C]/層[F])の数「n」は、1以上であれば赤外線反射性能および可視光透過性能に優れた遠赤外線反射基板を得ることができる。さらに、(/層[C]/層[F])の数「n」を2以上とすることが赤外線反射性能および可視光透過性能をさらに向上することができるため好ましい。また、(/層[C]/層[F])の数「n」の上限については特に限定はないが、製造工程の煩雑さと得られる赤外線反射性能および可視光透過性能とのバランスの観点から3以下が好ましい。
また一方、遠赤外線反射基板をより耐候性に優れたものとするためには、層[F]が、それと隣接し得る基材[A]や層[C]、層[D]、層[E]、または、層[G]、後記する層[B]と、強固に密着していることが好ましい。ここで、例えば、特許文献2(特表2002−539004)では、ポリマー基板と透明金属酸化物層の密着性向上を図るはかるために、ポリマー基板と透明金属酸化物層との間にアルミニウムや銀などの金属層を密着力向上層として設ける技術が示されており本発明の技術にも適用することができるが、当該金属層は可視光線を反射・吸収してしまうために、可視光透過性能が低下するという傾向がみられる。そこで、本発明者は、層[F]に含まれる金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、層[F]に含まれる錫の含有原子数%を10原子数%以上90原子数%以下とし、かつ、層[F]に含まれる金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、層[F]に含まれる亜鉛の含有原子数%を10原子数%以上90原子数%以下とし、さらに、層[F]を、それらに隣接しうる基材[A]や層[C]、層[D]、層[E]、または、層[G]、後記する層[B]の少なくともいずれか一つに直接積層するものとすることで、遠赤外線反射基板の可視光透過性を低下させずに、層[F]とそれに隣接しうる層との密着性や遠赤外線反射基板の耐候性を向上させることができ、その形態は好ましいものである。上記の構成により層間の密着力や遠赤外線反射基板の耐候性が向上する理由は定かではないが、層[F]の組成を上記のものとすることで、製膜時に層[F]に生じる歪や、それに隣接しうる基材[A]や層[C]、層[D]、層[E]、後記する層[B]に与えるダメージが少なくなるためではないかと考えられる。また、層[E]や層[G]の製膜時に、層[E]や層[G]に生じる歪や、層[F]に与えるダメージが少なくなるためではないかと推測される。
なお、本発明において、金属および半金属・半導体元素とは、H、He、N、O、F、Ne、S、Cl、Ar、As、Br、Kr、I、Xe、At、Rnを除いたものである。
(層[B])
層[B]とは、基材[A]と層[G]や層[C]、層[D]、層[E]、層[F]との各界面が破損するのを抑制するために設ける層である。本発明の遠赤外線反射基板においては、基材[A]と層[G]や層[C]、層[D]、層[E]、層[F]との間に、層[B]を設けることが好ましい。これにより、遠赤外線反射基板の有する各層の内部や層間の界面に応力が集中し破損するのを防ぐことができる。また、層[B]の表面形状を設計することにより遠赤外線反射基板の光学特性を改善することができる。層[B]の厚みは、0.2μm〜10μmの範囲で、遠赤外線反射基板の構成や各層の組成、遠赤外線反射基板の用途によって適宜選択することが出来る。
層[B]の材料は、基材[A]、層[G]、層[C]、層[D]、層[E]、および層[F]との組み合わせに応じて、遠赤外線反射基板の有する各層の内部や層間の界面への応力集中を防ぐためや、遠赤外線反射基板の遠赤外線反射性能もしくは可視光透過性能、または、層[C]や層[D]、層[E]、および層[F]と層[B]との密着力などの観点から適宜選ぶことができる。そして、密着性、耐キズ性、耐湿熱性または耐候性などの各特性に対する要求に適応するように、架橋性樹脂を主成分とする有機系膜、金属や酸素、炭素などを主成分とする無機系膜、そして有機系膜に無機微粒子を分散したものや、無機系膜素材の有機変性物を用いたもの、あるいはそれらを混合して用いたものなどの有機−無機ハイブリッド系膜などから適宜選択して用いることができる。
例えば、層[B]が、アクリル系、ウレタン系、メラミン系などの架橋性樹脂を主成分とする有機系膜であることは、主鎖や側鎖の種類や量、含有官能基や含有粒子の種類や量によって、膜特性を比較的容易に調整することが出来るために好ましい。有機系膜を得る方法としては、(メタ)アクリレートを主成分とする樹脂組成物を溶剤に希釈した塗液を乾燥・硬化して得る方法などが挙げられる。
有機系膜が(メタ)アクリレートを架橋して得られるアクリル系の架橋樹脂であることは、光重合開始剤などを配合することによって、紫外線などのエネルギー線にて有機系膜の硬化を制御することができ、有機系膜の硬化による物性制御が容易になるため好ましい。(メタ)アクリレートの例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、イソシアヌレートジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、各種ウレタンアクリレートやメラミンアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1.4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1.6−ヘキサンジオールジメタクレート、1.9−ノナンジオールジメタクリレート、1.10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートやエトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。一般的に官能基数の多いアクリレートを用いるほど有機系膜の表面硬度が高くなる。これらは単独で使用しても良いが、2種以上の多官能(メタ)アクリレートや低官能基数の不飽和基を持つ樹脂を併用して、有機系膜の特性を調整することもできる。(メタ)アクリレートは、モノマーで用いてもプレポリマーで用いてもよく、複数種類のモノマーやプレポリマーを混合して使用してもよい。また、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂および、シリコーン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類を層[B]に、もしくは複数種類添加することにより層[B]を改質することは、層[C]や層[F]と層[B]との密着性を向上させるために好ましい。特に、層[B]としてアクリル系の架橋樹脂を用いる際に、添加樹脂としてシリコーン樹脂を用いることは、上記の架橋樹脂やその溶媒と添加樹脂との相溶性に優れることから好ましい。添加量は遠赤外線反射基板全体の組み合わせによる各物性や耐久性によって適宜選択するものであるが、十分な改質効果を得るとともに、層[B]の物性に及ぼす悪影響を抑えるためには、層[B]100質量%に対し、樹脂を0.1質量%以上〜30質量%以下の範囲で添加することが好ましく、0.1質量%〜15質量%以下であることがより好ましい。
有機系膜の収縮、表面硬度、光学特性や表面形状を改質する他の方法として、無機または有機の粒子またはそれらを組み合わせて、1種または2種以上の粒子を組み合わせて有機系膜に添加して用いることができる。例えば、無機粒子として、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化セリウムなどを使用することができる。有機微粒子として、粒子内部架橋タイプのスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などを使用することができる。粒子の形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、不定形状などがあり、必要特性に合わせて適宜選択することができる。さらに、これらの粒子表面に官能基を導入するような表面処理を行なうことで、架橋性樹脂と粒子表面の間に架橋反応が起こることで、層[B]の特性を改質することができる。官能基を導入する表面処理としては、例えば、重合性不飽和基を含む有機化合物を粒子と結合させることができる。重合性不飽和基としては、特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基およびアクリルアミド基を挙げることができる。
また、例えば、層[B]が、シリカ、アルミナ、ジルコニアやダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの金属や半金属・半導体元素と酸素や窒素、炭素などを主成分とする無機系膜であることは、層[C]や層[F]との親和性が良好であり、スパッタ等のドライコーティングプロセスで連続して加工することが可能であるなどプロセス適合性が高いことから好ましい。層[B]が無機系膜である場合、緻密な膜を得やすいことから、高硬度が得やすいなどの長所を有する一方、製膜速度が遅いことから厚膜化することが生産技術的に難しく、また、製膜時に発生する収縮応力によって遠赤外線反射基板が受ける歪が大きくなりがちになるなどの設計面で制約が生じる場合がある。無機系膜を得る方法の例としては、各種金属および半金属・半導体元素や合金、それらの酸化物、窒化物、亜酸化物、亜窒化物、酸窒化物、亜酸窒化物などのターゲットを用いて、必要に応じて酸素や窒素などのガスと反応させるスパッタリングプロセスにより層[B]を得る方法などが挙げられる。
層[B]としては、上述した有機系膜と無機系膜の長所を兼ね備えるものとして、有機−無機ハイブリッド系膜を用いることもできる。有機−無機ハイブリッド系膜を得る方法の例としては、アルキルシリケートやアルキルチタネートなどの有機−無機化合物を原料として、気化させた有機−無機化合物と酸素や窒素などのガスをプラズマ等で反応させるCVDプロセスによって層[B]を得る方法、溶剤に希釈した有機−無機化合物を乾燥・硬化させるウエットコーティングプロセスによって層[B]を得る方法などがある。
耐キズ性や表面硬度などの物性を得るためには層[B]の厚みを厚くすることが好ましく、層[B]の製膜時に生じる応力によるカール等の歪みを抑制するためには層[B]の厚みを薄くすることが好ましいことから、層[B]の厚みが0.1μm〜10μmであることが好ましく、0.2μm〜5μmであることがより好ましく、0.4μm〜3μmであることがさらに好ましい。
層[B]が、架橋性樹脂を主成分とする有機系膜である場合、層[B]の柔軟性が高まり変形に対する追従性が良好になるが、膜硬度は低下するため、層[B]の厚みを0.4μm以上に調整する必要があり、0.5μm以上とすることはより好ましく、1μm〜3μmであることはさらに好ましい。
(層[G])
本発明に用いる層[G]は、無機系層、有機系層、または無機系層と有機系層とを併用したものを採用することができる。層[G]は遠赤外線反射基板を傷などの欠損や薬品等による腐食から保護するために設けるものであるが、層[G]が遠赤外線を吸収することで遠赤外線反射性能が低下してしまうため、良好な遠赤外線反射性能が得るためには、層[G]を十分薄くする必要がある。したがって、層[G]にガラスやアクリル系ハードコート樹脂などの硬質膜を用いる場合、層[G]の厚みは5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることはより好ましく、0.5μm以下であることはさらに好ましい。また、層[G]の厚みの変化や、観察角度の変化が可視光線の透過光や反射光の色調の変化として観察されやすくなるのを抑制するためには、層[G]の厚みが0.2μm以下であることは好ましく、0.1μm以下であることはより好ましく、0.05μm以下であることはさらに好ましい。一方、前述したように遠赤外線反射基板を傷などの欠損や薬品等による腐食から保護するためには、層[G]は厚いほど好ましい。また、連続的で均一な層[G]を得るためには、層[G]の厚みは2nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることはさらに好ましい。
より薄い膜厚で硬い層[G]を得るためには、層[G]が珪素の酸化物、アルミニウムの酸化物、珪素の窒化物、及びアルミニウムの窒化物からなる群より選ばれる1種以上の酸窒化物を無機系層[G1]の全体に対して50原子数%以上含有する無機系層[G1]であることは好ましい態様である。緻密で高硬度の保護膜を得るとの目的からは、無機系層[G1]の全体に対して珪素の酸化物等が、70原子数%以上含有されていることが好ましく、90原子数%以上含有されていることがより好ましい。ここで、珪素の酸化物、アルミニウムの酸化物、珪素の窒化物、及びアルミニウムの窒化物からなる群より選ばれる1種以上の酸窒化物の原子数%は、無機系層[G1]の全体に対する、珪素、アルミニウム、酸素、窒素の原子数%の和である。
また、水分などの浸透に対してより均一な特性を得るためには、層[G]が−(CH)−や−(CF)−などからなる樹脂骨格を有する樹脂を含有する有機系層[G2]であることは好ましい態様である。また、水分等が赤外線反射基板に浸透するのを抑制するためには、有機系層[G2]の水に対する接触角が、60°以上であることは好ましく、80°以上であることはより好ましく、100°以上であることは更に好ましい。有機系層[G2]がフッ素樹脂やシリコーン樹脂を成分として含むものとし、さらに有機系層[G2]が遠赤外線反射基板の最外層となるようにすることは、有機系層[G2]の水に対する接触角を大きくするために好ましい態様である。また、上記のことに加え、上記の態様とすることは、有機系層[G2]の面上にテープ等の粘着物が取り付けられた遠赤外線反射基板から、この粘着物を取り外す際に、基材[A]の上に成膜された層が剥離するのを抑制されることからも好ましい態様である。基材[A]の上に成膜された層が剥離するのが抑制されるのは、この有機系層[G2]と粘着物との粘着力が、例えば無機系層[G1]等の層と粘着物との粘着力に比べ低いためであると考えられる。
また、有機系層[G2]の表面硬度や光学特性を改質する方法として、無機または有機の粒子またはそれらを組み合わせて、1種または2種以上の粒子を組み合わせて有機系層[G2]に添加して用いることができる。例えば、無機粒子として、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化セリウムなどを使用することができる。有機微粒子として、粒子内部架橋タイプのスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などを使用することができる。粒子の形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、不定形状などがあり、必要特性に合わせて適宜選択することができる。さらに、これらの粒子表面に官能基を導入するような表面処理を行なうことで、架橋性樹脂と粒子表面の間に架橋反応が起こることで、有機系層[G2]の特性を改質することができる。官能基を導入する表面処理としては、例えば、重合性不飽和基を含む有機化合物を粒子と結合させることができる。重合性不飽和基としては、特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基およびアクリルアミド基を挙げることができる。
また、遠赤外線反射基板を傷などの欠損や薬品等による腐食から保護するためには、無機系層[G1]と有機系層[G2]の双方を有することは好ましい態様である。
(遠赤外線反射基板)
例えば、遠赤外線反射基板を窓の内側に設けることで、室内の熱エネルギーが遠赤外線として流出するのを防ぎ、室内側の窓表面で反射して室内に熱エネルギーを戻す効果が期待できる。その際、遠赤外線反射率が高いほど、より多くの熱エネルギーを反射することができる。したがって、本発明の遠赤外線反射基板の遠赤外線反射率は、60%以上であり、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。ここで、遠赤外線反射基板の遠赤外線反射率を60%以上とするには、上述のとおり層[G]の膜厚を薄くすること等が挙げられる。
また、本発明の遠赤外線反射基板を窓の内側に貼合して用いる場合などにおいては遠赤外線反射基板の可視光透過性(すなわち、透明性)は高いことが好ましく、本発明の遠赤外線反射基板は、基材[A]、層[G]、層[C]、層[F]、層[B]、表面保護膜や他の構成層について、成分、膜質および膜厚を調整することで、用途に合わせた可視光透過率を設計することができる。遠赤外線反射基板の可視光透過率は40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
また、本発明の遠赤外線反射基板を窓の内側に貼合して用いる場合などにおいて、本発明の遠赤外線反射基板の表面に粘着性のテープ等を用いてポスター等の掲示物を一時的に貼り付けることなどが想定される。そして、粘着性のテープ等を取り外す際に遠赤外線反射基板を形成する各層が剥離するのを、より抑制するためには、下記の実施例の特性の評価方法の密着性の項に記載された評価方法よる判定がB以上である遠赤外線反射基板であることが好ましい。
(用途)
本発明の遠赤外線反射基板は、その優れた耐薬品性を活かし、建築物や乗り物などの窓や壁、家電などに流出入する熱エネルギーを反射することで、冷暖房効果の向上などエネルギー効率を良好とする機能を有する透明断熱、遮熱ウインドウ材、や電磁波シールド材などとして利用することができる。
上記したような本発明の遠赤外線反射基板は、前記説明の基材[A]表面に前記説明の層[G]等の各構成膜を、たとえば図面の簡単な説明の段落で示したように、積層することにより製造される。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[特性の評価方法]
本実施例で用いた遠赤外線反射基板の特性の評価方法は、下記のとおりである。
(1)耐腐食性1
1)評価用試験体の作製
ア.遠赤外線反射基板を50mm角正方形にカットする。
イ.前記ア項でカットした試料の基材側の面に粘着層を形成する。
ウ.次に、イ項で形成した粘着層を介して、3mm厚のフロートガラスに貼合し、評価用試験体を得る。
2)評価用試験体の判定
ア.作製した評価用試験体の表面に評価液(水50mlに乳酸2.5gとNaCl5gを溶解したもの)を滴下し、水を入れたシャーレとともに密閉した23℃の環境下で7時間暴露する。
イ.評価用試験体を水で洗い落とす。
3)評価用試験体の判定
評価用試験体上の評価液滴下箇所を、レーザー顕微鏡を用いて評価用試験体の腐食による変色点の有無、表層剥離の有無を観察する。
・測定機器:VK−X110(キーエンス社製)
・対物レンズ:標準レンズ 10倍・光学ズーム:1.0倍
ア.判定基準
A:変色点なし、表層剥離なし。
B:変色点あり、表層剥離なし。
C:変色点あり、表層剥離あり。
ここで、層[C]の腐食が軽微ではあるが進行すると変色点が発現し、さらに、層[C]の腐食が大きく進行すると表層剥離が発現する。すなわち、耐腐食性の判定としては、最も優れているのが判定Aであり、A判定に次いで優れているのが判定Bであり、劣るのが判定Cである。判定Aの評価試験体は、腐食の兆候が観察されないものである。一方、判定Bの評価試験体は目視においては外観の劣化がわかりにくい傾向にあるが、時間が経てば腐食が進むと予想されるものである。そして、判定Cの評価用試験体では目視においても外観劣化がわかるほど腐食が進んでいる傾向がある。
なお、上記の変色点とは、遠赤外線反射基板を層[G]側から観察したときに、遠赤外線反射基板の層[G]側の面で観察される、周囲と色調の異なるスポット、または周囲と色調の異なるスポットでクラックを有するものをいう。そして、上記の表面剥離とは、遠赤外線反射基板において基材[A]よりも層[G]側に配置される層のいずれかが遠赤外線反射基板より脱落している箇所をいう。
また、遠赤外線反射基板に腐食や層間剥離が発生すると、それらを起点にさらに腐食や層間剥離などの欠陥が拡大しやすくなる傾向がみられ、遠赤外線反射基板の使用期間が長くなるにつれ、遠赤外線反射基板の外観劣化や赤外線反射性能の低下などが進行していく傾向にある。
(2)耐腐食性2
作製した評価用試験体の表面に評価液(水50mlに乳酸2.5gとNaCl5gを溶解したもの)を滴下し、60℃×90%RH環境下で3時間暴露することとした以外は上記の「耐腐食性1」の評価方法と同様にして耐腐食性2の評価を行った。
(3)密着性
1)評価用試験体の作製
ア.遠赤外線反射基板を50mm角正方形にカットする。
イ.ア項でカットした試料の基材側の面に粘着層を形成する。
ウ.イ項で形成した粘着層を介して、3mm厚のフロートガラスに貼合し、遠赤外線反射基板のガラス貼合体を得る。
エ.ウ項で得たガラス貼合体に、クロスカット用間隔スペーサー(コーテック株式会社製:型番CROSSCCUT GUIDE1.0)、カッターナイフを用い、遠赤外線反射基板に縦方向6回、横方向6回の切り込みを1mm間隔で入れた評価用試験体を得る(本操作により、遠赤外線反射基板表面に5×5=25マスの格子が作製される)。
2)評価用試験体の判定
作製した評価用試験体の格子上に透明感圧付着テープ(日東電工株式会社製:型番31B)を圧着し、圧着したテープを約60度の方向に引き剥がす。
ア.判定基準
A:25マス全ての格子で剥離無し。
B:25マス中1マス以上の格子で、部分的な剥離が発生。
C:25マス中1マス以上の格子で、格子全面の剥離が発生。
密着性の判定がAの遠赤外線反射基板は密着性の判定がBの遠赤外線反射基板と比べ、より優れた密着性を有しているといえる。
(4)可視光透過率
1)評価用試験体の作製
ア.遠赤外線反射基板を50mm角正方形にカットする。
イ.前記ア項でカットした試料の基材側の面に透明粘着層を形成する。
ウ.次に、イ項で形成した粘着層を介して、3mm厚の透明フロートガラスに貼合し、評価用試験体を得る。
2)評価用試験体の判定
可視光透過率の測定は、JIS R 3106(1998)に準拠して行い、波長380〜780nmの分光透過率より求めたものを可視光透過率(%)とした。
・測定装置:島津製作所製 紫外可視近赤外分光光度計 UV−3600
・波長範囲:380〜780nm
・スリット幅:(20)
・スキャンスピード:高速
・サンプリング:1nm
・グレーティング:720nm
・測定内容:5検体を測定し、最大値を示す検体と最小値を示す検体除外した3検体の平均値をもとめた。
(5)遠赤外線反射性能
1)評価用試験体の作製
ア.遠赤外線反射基板を50mm角正方形にカットする。
イ.前記ア項でカットした試料の基材側の面に透明粘着層を形成する。
ウ.次に、イ項で形成した粘着層を介して、3mm厚の透明フロートガラスに貼合し、評価用試験体を得る。
2)評価用試験体の判定
遠赤外線反射率の測定は、JIS R 3106(1998)に準拠して行い、波長5〜25μmの分光反射率より、283Kの熱放射に対する反射率を求めたものを遠赤外線反射率(%)とした。
・測定装置:島津製作所製 フーリエ変換赤外分光光度計 IRPrestige−21
・正反射測定ユニット:SRM−8000A
・波数範囲:400〜2000cm−1
・測定モード:%Transmittance
・アボダイズ係数:Happ−Genzel
・積算回数:40
・分解:4.0
・測定内容:5検体を測定し、最大値を示す検体と最小値を示す検体除外した3検体の平均値をもとめた。
(6)層[G]、層[C]、層[D]、層[E]、層[F]の厚み
電界放出型電子顕微鏡(日本電子製JEM2100F)を用いて観察した、STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)像から厚みを測長した。
・試料作製:FIBマイクロサンプリング法(日立製 FB−2100μ-Sampling System)
・STEM像観察条件:加速電圧 200kV、beam spot size 1nmφ程度
・測定n数:1。
(7)層[C]、層[D]、層[E]、層[F]、層[G]の原子数%、含有比
X線光電子分光法を用いて、原子数%を算出した。なお、原子数%が1%未満となる元素については、原子数%の計算において除外した。層[D]の珪素(Si)に対する酸素(O)の含有比をx、層[D]の珪素(Si)に対する窒素(N)の含有比をy、層[D]の珪素(Si)に対するその他元素(M)の含有比をzとして、層[D]の元素含有比をSiOxNyMzと表した際のx+yの値の算出に用いられるxとyとは以下の式より求めた。
x=「得られた酸素の原子数%」/「珪素の原子数%」
y=「得られた窒素の原子数%」/「珪素の原子数%」
・観察元素:Li〜U
・測定n数:1。
(8)屈折率
以下の方法により波長589nmにおける屈折率を求めた。
1)測定法
下記の装置および測定条件により、測定サンプルからの反射光の偏光状態の変化を測定し、光学定数(屈折率および消衰係数)を計算により求めた。計算は、試料で測定されたΔ(位相差)とψ(振幅反射率)のスペクトルを計算モデルから算出された(Δ、ψ)と比較し、測定値(Δ、ψ)に近づくように誘電関数を変化させてフィッティングしていく。ここで示されたフィッティング結果は、測定値と理論値がベストフィット(平均二乗誤差が最小に収束)した結果である。
2)装置
・高速分光エリプソメーター M−2000(J.A.Woollam 社製)
・回転補償子型(RCE: Rotating Compensator Ellipsometer)
・300mm R−Theta ステージ
3)測定条件
・入射角:65度、70度、75度
・測定波長: 195nm〜1680nm
・解析ソフト:WVASE32
・ビーム径:1×2mm
・測定n数:1。
(9)水に対する接触角
水に対する接触角の測定は、JIS R 3257(1999)に準拠して、静適法を用いて、水に対する静的な接触角を求めた。
[実施例1]
厚さ2.5μmの層[B]を有する基材[A]として、ハードコートフィルム(タフトップ(登録商標)THS:東レフィルム加工(株)製)を使用した。
該フィルムの層[B]の上に、金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、錫が50原子数%、亜鉛が50原子数%である金属酸化物ターゲットを用いて、アルゴン/酸素の圧力比を90%/10%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み15nmの第1の層[F]を形成した。第1の層[F]の屈折率は2.0であった。
続いて、Siターゲットを用いて、アルゴン/窒素の圧力比を50%/50%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚さ10nmの層[E]を形成した。層[E]は、Siが44原子数%、窒素が39原子数%、酸素が17原子数%であった。
続いて、Siターゲットを用いて、アルゴン100%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚さ4nmの層[D]を形成した。層[D]は、Siが95原子数%、酸素が5原子数%であった。
続いて金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、銀(Ag)が97原子数%、金が2原子数%、銅が1原子数%である金属ターゲットを用いて、アルゴン100%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み13nmの層[C]を形成した。
続いて、金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、錫が50原子数%、亜鉛が50原子数%である金属酸化物ターゲットを用いて、アルゴン/酸素の圧力比を95%/5%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み5nmの第2の層[F]を形成した後、アルゴン/酸素の圧力比を90%/10%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、総厚みが35nmである第2の層[F]を形成した。第2の層[F]の屈折率は2.0であった。
更に続いて、Siターゲットを用いて、アルゴン/酸素/窒素の圧力比を50%/35%/15%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み20nmの無機系層[G1]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
実施例1の遠赤外線反射基板の構成を表1、評価結果を表2に示す。
[実施例2]
実施例1と同様に基板[A]、層[B]、第1の層[F]、層[E]、層[D]、層[C]を形成した後、Siターゲットを用いて、アルゴン100%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚さ4nmの層[H]を形成した。
続いて、金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、錫が50原子数%、亜鉛が50原子数%である金属酸化物ターゲットを用いて、アルゴン/酸素の圧力比を90%/10%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚みが30nmの第2の層[F]を形成した。
続いて、実施例1と同様に、無機系層[G1]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
実施例2の遠赤外線反射基板の構成を表1、評価結果を表2に示す。
[実施例3]
実施例2と同様に基板[A]、層[B]、第1の層[F]、層[E]、層[D]、層[C]、層[H]を形成した後、Siターゲットを用いて、アルゴン/窒素の圧力比を50%/50%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚さ10nmの層[I]を形成した。
続いて、金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、錫が50原子数%、亜鉛が50原子数%である金属酸化物ターゲットを用いて、アルゴン/酸素の圧力比を90%/10%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚みが15nmの第2の層[F]を形成した。
続いて、実施例1と同様に、無機系層[G1]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
実施例3の遠赤外線反射基板の構成を表1、評価結果を表2に示す。
[実施例4]
厚さ2.5μmの層[B]を有する基材[A]として、ハードコートフィルム(タフトップ(登録商標)THS:東レフィルム加工(株)製)を使用した。
該フィルムの層[B]の上に、金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、錫が50原子数%、亜鉛が50原子数%である金属酸化物ターゲットを用いて、アルゴン/窒素の圧力比を50%/50%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み30nmの層[E]を形成した。層[E]は、錫が28原子数%、亜鉛が25原子数%、酸素が43原子数%、窒素が4原子数%であった。
続いて、実施例2と同様に、層[D]、層[C]、層[H]を形成した。
続いて、金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、錫が50原子数%、亜鉛が50原子数%である金属酸化物ターゲットを用いて、アルゴン/窒素の圧力比を50%/50%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み30nmの層[I]を形成した。
続いて、実施例1と同様に、無機系層[G1]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
実施例4の遠赤外線反射基板の構成を表1、評価結果を表2に示す。
[実施例5]
厚さ2.5μmの層[B]を有する基材[A]として、ハードコートフィルム(タフトップ(登録商標)THS:東レフィルム加工(株)製)を使用した。
該フィルムの層[B]の上に、金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、錫が50原子数%、亜鉛が50原子数%である金属酸化物ターゲットを用いて、アルゴン/窒素の圧力比を50%/50%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み15nmの構成層[K]を形成した。
続いて、Siターゲットを用いて、アルゴン/窒素の圧力比を50%/50%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚さ10nmの構成層[J]を形成した。
続いて、実施例4と同様に、層[D]、層[C]、層[H]、層[I]、無機系層[G1]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
実施例5の遠赤外線反射基板の構成を表1、評価結果を表2に示す。
[実施例6]
実施例2と同様に基板[A]、層[B]、第1の層[F]、層[E]、層[D]、層[C]、層[H]、第2の層[F]、無機系層[G1]を形成した後、
無機系層[G1]の上に、Novec1720(スリーエム製、有効成分0.1wt%)をバーコーター(番手No.3)を用いてに塗布し、80℃で3分乾燥して有機系層[G2]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。有機系層[G2]表面の水に対する接触角は107°であった。
実施例6の遠赤外線反射基板の構成を表3、評価結果を表4に示す。
[実施例7]
実施例3と同様に基板[A]、層[B]、第1の層[F]、層[E]、層[D]、層[C]、層[H]、層[I]、第2の層[F]、無機系層[G1]を形成した後、実施例6と同様に、無機系層[G1]の上に、有機系層[G2]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
実施例7の遠赤外線反射基板の構成を表3、評価結果を表4に示す。
[実施例8]
実施例5と同様に、基板[A]、層[B]、層[D](構成層[K]および構成層[J])、層[D]、層[C]、層[H]、層[I]、無機系層[G1]を形成した後、実施例6と同様に、無機系層[G1]の上に、有機系層[G2]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
実施例8の遠赤外線反射基板の構成を表3、評価結果を表4に示す。
[比較例1]
厚さ2.5μmの層[B]を有する基材[A]として、ハードコートフィルム(タフトップ(登録商標)THS:東レフィルム加工(株)製)を使用した。
該フィルムの層[B]の上に、金属元素、半金属元素および半導体元素の総和に対して、錫が50原子数%、亜鉛が50原子数%である金属酸化物ターゲットを用いて、アルゴン/酸素の圧力比を90%/10%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み30nmの第1の層[F]を形成した。第1の層[F]は、錫が25原子数%、亜鉛が24原子数%、酸素が51原子数%であった。
続いてSiターゲットを用いて、アルゴン100%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚さ4nmの層[D]を形成した。
続いて、実施例1と同様に、層[C]、第2の層[F]、無機系層[G1]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
比較例1の遠赤外線反射基板の構成を表1、評価結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例2と同様に基板[A]、層[B]、第1の層[F]を形成した後、
Siターゲットを用いて、アルゴン/酸素/窒素の圧力比を50%/40%/10%とした製膜ガス条件下でスパッタリング加工を行い、厚み10nmの層[E]を形成した。層[E]は、Siが32原子数%、酸素が68原子数%であった。
続いて、実施例2と同様に層[D]、層[C]、層[H]、第2の層[F]、無機系層[G1]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
比較例2の遠赤外線反射基板の構成を表1、評価結果を表2に示す。
[比較例3]
実施例2と同様に基板[A]、層[B]、第1の層[F]、層[E]を形成した後、層[D]を形成することなく、実施例2と同様に、層[C]、層[H]、第2の層[F]、無機系層[G1]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
比較例3の遠赤外線反射基板の構成を表1、評価結果を表2に示す。
[比較例4]
比較例1と同様に、基板[A]、層[B]、第1の層[F]、層[D]、層[C]、第2の層[F]、無機系層[G1]を形成した後、
実施例6と同様に、無機系層[G1]の上に、有機系層[G2]を形成し、遠赤外線反射基板を得た。
比較例4の遠赤外線反射基板の構成を表3、評価結果を表4に示す。
Figure 2018149753
Figure 2018149753
Figure 2018149753
Figure 2018149753
本発明の遠赤外線反射基板は、その優れた耐腐食性を活かし、建築物や乗り物などの窓から流出入する熱エネルギーの遮断による冷暖房効果の向上するために金属層を設けた透明断熱、遮熱ウインドウ材や電磁波シールド材などとして利用することができる。
1:基材[A]
2:層[B]
3:第1の層[F]
4:層[E]
5:層[D]
6:層[C]
7:層[H]
8:層[I]
9:第2の層[F]
10:層[G]
11:無機系層[G1]
12:有機系層[G2]
13:構成層[J]
14:構成層[K]

Claims (7)

  1. 基材[A]と層[G]の間に、層[G]側から順に層[C]、層[C]に直接接している層[D]、および層[D]に直接接している層[E]を有し、遠赤外線反射率が60%以上であり、以下(1)〜(4)を満足する遠赤外線反射基板。
    (1)前記層[C]が、一層又は複数層の金属からなる層を有し、層[C]全体に対して銀を50原子数%以上含有する
    (2)層[D]は珪素を含有するか、珪素および炭素を含有しており、層[D]における珪素および炭素の層[D]全体に対する合計含有量が40原子数%以上である
    (3)層[E]は窒素を含有するか、窒素および酸素を含有しており、層[E]の窒素含有量は層[E]全体に対し2原子数%以上であり、層[E]の酸素含有量は層[E]全体に対して0〜45原子数%である
    (4)層[E]における、窒素および酸素の層[E]全体に対する合計含有量(原子数%)は、層[D]における、窒素および酸素の層[D]全体に対する合計含有量(原子数%)よりも大きい
  2. さらに、層[C]と層[G]との間に配置された層[H]を有し、
    層[H]は層[C]と直接接しており、
    層[H]は珪素を含有するか、珪素および炭素を含有しており、層[H]における珪素および炭素の層[H]全体に対する合計含有量が40原子数%以上である、請求項1記載の遠赤外線反射基板。
  3. さらに、層[C]と層[G]との間に配置された層[I]を有し、
    層[I]は層[H]と直接接しており、
    層[I]は窒素を含有するか、窒素および酸素を含有しており、層[I]の窒素含有量は層[I]全体に対し2原子数%以上であり、層[I]の酸素含有量は層[I]全体に対して0〜45原子数%であり、
    層[I]における、窒素および酸素の層[I]全体に対する合計含有量(原子数%)は、層[H]における、窒素および酸素の層[H]全体に対する合計含有量(原子数%)よりも大きい、請求項2記載の遠赤外線反射基板。
  4. 層[E]が、互いに組成の異なる2層以上の構成層を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の遠赤外線反射基板。
  5. 屈折率が1.7以上であり、層[D]および層[E]と組成の異なる層[F]を有し、層[F]が、基材[A]と層[C]の間、および層[C]と層[G]の間のうち、少なくともいずれか一方に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遠赤外線反射基板。
  6. 層[G]が、無機系層[G1]を有し、無機系層[G1]が珪素の酸化物、珪素の窒化物、アルミニウムの酸化物およびアルミニウムの窒化物からなる群より選ばれる1種以上を無機系層[G1]全体に対し50質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遠赤外線反射基板。
  7. 層[G]が、有機系層[G2]を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遠赤外線反射基板。
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