JP2018145861A - ピストン構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピストンの摺動面への潤滑油量を最適化して前記ピストンの焼き付き防止に関する信頼性を従来よりも大幅に向上する。【解決手段】エンジンのシリンダ1内で往復動するピストン2のスカート7に、スラスト側と反スラスト側とで非対称なバレル形の縦断面プロフィールを付したピストン構造に関し、前記スカート7のスラスト側におけるバレル形の最大径位置Aをピストンピン3より下方に配置し且つ反スラスト側における最大径位置Bをピストンピン3より上方に配置する。【選択図】図1
Description
本発明は、ピストン構造に関するものである。
図3に示す如く、自動車等に用いられる一般的なレシプロエンジンでは、シリンダ1内に収容されたピストン2がピストンピン3を介しコンロッド4の小端部4aにより揺動自在に支持されており、該コンロッド4の大端部4bがクランクピン5を介しクランクシャフト6と連結されている。
そして、クランクピン5はクランクアーム6aによりクランクシャフト6の中心からずらした位置に支持されており、クランクピン5がクランクシャフト6の中心回りに円軌道(図3中の一点鎖線を参照)を描いて移動するようになっているので、コンロッド4がピストンピン3を中心に揺動しつつピストン2がシリンダ1内を昇降することになる。
一般的に、ピストン2がアルミ製である場合には、スチール製のシリンダライナ1aに対する熱膨張差が大きくなるため、ピストン2側が大きく熱膨張して焼付きを起こすような事態を未然に回避し得るようピストンクリアランスを多く確保する必要があるが、ピストンクリアランスを多く確保してしまうと、ピストンスラップ時に打音が生じてしまうという不具合が生じる。
このため、従来においては、図4に示す如く、ピストン2の円滑な摺動とピストンスラップ時の打音低減を実現することを目指して、ピストン2のスカート7におけるスラスト側(図4中の左側)と反スラスト側(図4中の右側)に、側面視で中央付近が膨らんだバレル形の縦断面プロフィールを付すようにしている。
ここで、膨張行程にて爆発圧力P(図3参照)により下方に押し下げられるピストン2は、コンロッド4の傾斜によりピストン2の図3中左側が強くシリンダ1の内壁に押し付けられるようになっているため、このような側圧を受ける側をスラスト側と称し、その反対側を反スラスト側と称している。
また、ピストン2のスカート7とは、主としてシリンダ1の内壁に残る潤滑油を掻き取る役割で前記ピストン2の頭部に嵌着されている三番目のオイルリング8下の部分を指す。因みに、このオイルリング8の上には、主としてシリンダ1内の混合気や爆発ガス及び排気ガスを逃がさないためのトップリング9とセカンドリング10が嵌着されている。
尚、この種のピストン構造に関連する先行技術文献情報としては、本発明と同じ出願人による下記の特許文献1等がある。
しかしながら、図4の従来構造にあっては、ピストン2のスラスト側と反スラスト側での摺動面への潤滑油の取り込まれ方が異なるのに対し、単純にスラスト側と反スラスト側とで対称的にバレル形の縦断面プロフィールが付し、そのバレル形の最大径位置Cがスラスト側と反スラスト側とでピストンピン3付近の同じ高さに揃うようにしてあるだけであり、シリンダ1の内壁に対するピストン2の摺動面への潤滑油量の最適化が図られていないことは明らかであった。
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ピストンの摺動面への潤滑油量を最適化して前記ピストンの焼き付き防止に関する信頼性を従来よりも大幅に向上することを目的とする。
本発明は、エンジンのシリンダ内で往復動するピストンのスカートに、スラスト側と反スラスト側とで非対称なバレル形の縦断面プロフィールを付したピストン構造であって、前記スカートのスラスト側におけるバレル形の最大径位置がピストンピンより下方に配置され且つ反スラスト側における最大径位置がピストンピンより上方に配置されていることを特徴とするものである。
而して、このようにすれば、スカートのスラスト側でバレル形の最大径位置から下方へ楔形に開く隙間の楔角度が大きくなり、これによりピストンの下降行程(膨張行程、吸気行程)でシリンダの内壁の潤滑油が前記楔形の隙間に取り込まれ易くなると共に、その導入口にて楔効果により高い油圧が発生して油膜が形成され易くなり、これによりスラスト側のスカート下端から直ぐに良好な油膜が形成され且つピストンの下降に伴い良好な油膜が連続的に形成されて、スカートのスラスト側全域が油膜を介しシリンダ側との固体接触無しで離間して滑る流体潤滑の状態となる。
他方、スカートの反スラスト側でバレル形の最大径位置から上方へ楔形に開く隙間の楔角度が大きくなり、これによりピストンの上昇行程(排気行程、圧縮行程)でオイルリング直下に溜まった潤滑油が前記楔形の隙間に取り込まれ易くなると共に、その導入口にて楔効果により高い油圧が発生して油膜が形成され易くなり、これにより反スラスト側のスカート上端から直ぐに良好な油膜が形成され且つピストンの上昇に伴い良好な油膜が連続的に形成されて、スカートの反スラスト側全域が油膜を介しシリンダ側との固体接触無しで離間して滑る流体潤滑の状態となる。
また、本発明においては、スラスト側と反スラスト側の夫々のバレル形がピストンピンの軸心方向両側に近づくに従いフラットな縦断面プロフィールを成すよう徐変されていることが好ましく、このようにすれば、側圧が強くかからない領域でピストン側をいたずらに張り出させないようにして無用な固定接触を確実に回避させることが可能となる。
更に、本発明においては、オイルリング直下にガイド溝が全周に亘り形成されていることが好ましく、このようにすれば、ピストンの下降行程でスラスト側に多量に取り込まれる潤滑油をガイド溝に溜め、ピストンの上昇行程で前記ガイド溝から潤滑油を取り込むことが可能となる。
即ち、ピストンの下降行程でスラスト側に潤滑油が多量に取り込まれてしまうと、その潤滑油の一部がピストンの上まで回り込んで燃焼されてしまうことで潤滑油の消費量が増えてしまう懸念があるが、これをオイルリングの直下でスラスト側からガイド溝に溜められるようにしておけば、ピストン上への潤滑油の回り込みを抑制し且つスラスト側で余剰した潤滑油を反スラスト側にて上昇行程で有効に利用することが可能となる。
上記した本発明のピストン構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ピストンの下降行程でシリンダの内壁の潤滑油をスラスト側のスカートの下端から効果的に取り込み且つ楔効果により高い油圧を発生させることで良好な油膜を形成してスカートのスラスト側全域を流体潤滑の状態とすることができ、ピストンの上昇行程ではオイルリング直下に溜まった潤滑油を反スラスト側のスカートの上端から効果的に取り込み且つ楔効果により高い油圧を発生させることで良好な油膜を形成してスカートの反スラスト側全域を流体潤滑の状態とすることができるので、ピストンの摺動面への潤滑油量を最適化して前記ピストンの焼き付き防止に関する信頼性を従来よりも大幅に向上することができる。
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、側圧が強くかからない領域でピストン側をいたずらに張り出させないようにして無用な固定接触を確実に回避させることができ、ピストンの焼き付き防止に関する信頼性をより一層向上することができる。
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、ピストンの下降行程でスラスト側に多量に取り込まれる潤滑油をガイド溝に溜め、ピストンの上昇行程で前記ガイド溝から潤滑油を取り込むことができるので、スラスト側でのピストン上への潤滑油の回り込みを抑制し且つスラスト側で余剰した潤滑油を反スラスト側にて上昇行程で有効に利用することができて潤滑油の消費量の増加を抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図3及び図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしているが、本形態例にあっては、エンジンのシリンダ1内で往復動するピストン2のスカート7に、スラスト側(図1中の左側)と反スラスト側(図1中の右側)とで非対称なバレル形の縦断面プロフィールを付したピストン構造となっており、前記スカート7のスラスト側におけるバレル形の最大径位置Aがピストンピン3より下方のスカート7下端付近に配置されていると共に、反スラスト側における最大径位置Bがピストンピン3より上方のスカート7上端付近に配置されているところが特徴となっている。
ただし、スラスト側と反スラスト側の夫々のバレル形がピストンピン3の軸心方向(図1の図面に対し直角な方向)両側に近づくに従いフラットな縦断面プロフィールを成すよう徐変されており、側圧が強くかからない領域ではピストン2側がいたずらに張り出さないようにしてある。
而して、このようにすれば、スカート7のスラスト側でバレル形の最大径位置Aから下方へ楔形に開く隙間の楔角度が大きくなり、これによりピストン2の下降行程(膨張行程、吸気行程)でシリンダ1の内壁の潤滑油が前記楔形の隙間に取り込まれ易くなると共に、その導入口にて楔効果により高い油圧が発生して油膜が形成され易くなり、これによりスラスト側のスカート7下端から直ぐに良好な油膜が形成され且つピストン2の下降に伴い良好な油膜が連続的に形成されて、スカート7のスラスト側全域が油膜を介しシリンダ1側との固体接触無しで離間して滑る流体潤滑の状態となる。
他方、スカート7の反スラスト側でバレル形の最大径位置Bから上方へ楔形に開く隙間の楔角度が大きくなり、これによりピストン2の上昇行程(排気行程、圧縮行程)でオイルリング8直下に溜まった潤滑油が前記楔形の隙間に取り込まれ易くなると共に、その導入口にて楔効果により高い油圧が発生して油膜が形成され易くなり、これにより反スラスト側のスカート7上端から直ぐに良好な油膜が形成され且つピストン2の上昇に伴い良好な油膜が連続的に形成されて、スカート7の反スラスト側全域が油膜を介しシリンダ1側との固体接触無しで離間して滑る流体潤滑の状態となる。
また、スラスト側と反スラスト側の夫々のバレル形がピストンピン3の軸心方向両側に近づくに従いフラットな縦断面プロフィールを成すよう徐変されているので、側圧が強くかからない領域でピストン2側をいたずらに張り出させないようにして無用な固定接触を確実に回避させることが可能となる。
従って、上記形態例によれば、ピストン2の下降行程でシリンダ1の内壁の潤滑油をスラスト側のスカート7の下端から効果的に取り込み且つ楔効果により高い油圧を発生させることで良好な油膜を形成してスカート7のスラスト側全域を流体潤滑の状態とすることができ、ピストン2の上昇行程ではオイルリング8直下に溜まった潤滑油を反スラスト側のスカート7の上端から効果的に取り込み且つ楔効果により高い油圧を発生させることで良好な油膜を形成してスカート7の反スラスト側全域を流体潤滑の状態とすることができるので、ピストン2の摺動面への潤滑油量を最適化して前記ピストン2の焼き付き防止に関する信頼性を従来よりも大幅に向上することができる。
また、特に本形態例のように、スラスト側と反スラスト側の夫々のバレル形がピストンピン3の軸心方向両側に近づくに従いフラットな縦断面プロフィールを成すよう徐変されている構成とすれば、側圧が強くかからない領域でピストン2側をいたずらに張り出させないようにして無用な固定接触を確実に回避させることができるので、ピストン2の焼き付き防止に関する信頼性をより一層向上することができる。
また、図2は本発明の別の形態例を示すもので、本形態例においては、オイルリング8直下にガイド溝11が全周に亘り形成されており、ピストン2の下降行程でスラスト側に多量に取り込まれる潤滑油をガイド溝11に溜め、ピストン2の上昇行程で前記ガイド溝11から潤滑油を取り込むことができるようになっている。
即ち、ピストン2の下降行程でスラスト側に潤滑油が多量に取り込まれてしまうと、その潤滑油の一部がピストン2の上まで回り込んで燃焼されてしまうことで潤滑油の消費量が増えてしまう懸念があるが、これをオイルリング8の直下でスラスト側からガイド溝11に溜められるようにしておけば、ピストン2上への潤滑油の回り込みを抑制し且つスラスト側で余剰した潤滑油を反スラスト側にて上昇行程で有効に利用することができ、潤滑油の消費量の増加を抑制することができる。
尚、本発明のピストン構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
1 シリンダ
2 ピストン
3 ピストンピン
7 スカート
8 オイルリング
11 ガイド溝
A 最大径位置
B 最大径位置
2 ピストン
3 ピストンピン
7 スカート
8 オイルリング
11 ガイド溝
A 最大径位置
B 最大径位置
Claims (3)
- エンジンのシリンダ内で往復動するピストンのスカートに、スラスト側と反スラスト側とで非対称なバレル形の縦断面プロフィールを付したピストン構造であって、前記スカートのスラスト側におけるバレル形の最大径位置がピストンピンより下方に配置され且つ反スラスト側における最大径位置がピストンピンより上方に配置されていることを特徴とするピストン構造。
- スラスト側と反スラスト側の夫々のバレル形がピストンピンの軸心方向両側に近づくに従いフラットな縦断面プロフィールを成すよう徐変されていることを特徴とする請求項1に記載のピストン構造。
- オイルリング直下にガイド溝が全周に亘り形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のピストン構造。
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