JP2018145525A - 熱延鋼板及びその製造方法、冷延鋼板及びその製造方法、冷延焼鈍鋼板の製造方法、並びに溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

熱延鋼板及びその製造方法、冷延鋼板及びその製造方法、冷延焼鈍鋼板の製造方法、並びに溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高いMn,P成分を含有しながらもプレス加工後の表面性状に優れた冷延鋼板を提供する。【解決手段】Mn:0.2〜2.0%、P:0.005〜0.060%を含有する所定の成分組成を有し、板厚中央部におけるMn偏析度Smの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSm及びΔWmを求めたとき、ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10以下かつ標準偏差2σmが0.05以下である冷延鋼板。なお、Sm=任意の点におけるMn濃度(%)/鋼板の平均Mn濃度(%)、ΔSm:Smの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差、ΔWm:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離とする。同様に、板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルにおいても、平均値が0.20以下かつ標準偏差2σpが0.10以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車の外板パネルや家電製品の筐体など高強度とプレス成型後の優れた表面性状が要求される薄鋼板に好適な、プレス加工後の表面性状に優れた冷延鋼板及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記冷延鋼板の素材となる熱延鋼板及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記冷延鋼板を素材とした冷延焼鈍鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
自動車の外板パネルや家電製品の筐体など、優れた意匠性と美麗さの要求される部位に適用される薄鋼板には、高い成形性に加えて、プレス成形後に凹みなどの変形によって容易に意匠が毀損しないよう高強度であることが求められてきた。特に近年、自動車業界においてはCO2排出抑制の観点で車体軽量化が最重要課題となっており、外板パネルにおいても薄肉化を達成するため、高強度かつ表面性状に優れた薄鋼板の提供が求められている。
このような要請に対して、極低炭素鋼にTiやNbなどのC,N親和性の高い合金元素を微量添加して、C,Nをppmオーダーで除去し優れた成形性を発揮するIF(Interstitial Free)鋼は、優れた成形性や非時効性、表面性状を発揮する鋼板として使用されてきた。しかし、その引張強度は300MPa未満程度と低い。そこで、IF鋼をベースとしてMn,P,Siなどの固溶強化元素を添加したり、少量のフリーCを残すことで、加工後の熱処理に伴って降伏強度が上昇するBH(Bake Hardening)特性を付与した高強度鋼板の開発が進められてきた。
例えば、特許文献1〜3においてはIF鋼をベースにMn,PあるいはSiを添加することで、深絞り性を損なうことなく300MPa超の高強度鋼板を得られる手法が開示されている。
Mn,P,Siは高強度化に非常に有効な添加元素である。しかし、MnやPは鋳造時に濃度分布の不均一を生じやすく、これが薄鋼板となった後も残存するため、高濃度部と低濃度部の強度差に起因した局所的な変形の不均一が、プレス成形後に鋼板表面に縞状の凹凸形状が生じる要因となる。このような縞状の模様が塗装後にも顕在化すれば、最終製品の廃棄が必要になって歩留りを低下させる。特に近年、表面品質の要求レベルが厳格化するに伴い、以前は問題とされていなかったような非常に軽度のものでも、不合格と判断される場合が出てきた。このため、従来よりも更なる表面品質の向上が要請されている。
これまでにも300MPa超の高強度鋼板の表面品質を改善する先行技術が開示されてきた。例えば特許文献1には、成分組成の調整、及び巻取り温度や焼鈍温度の制御によって、FeNbP系の析出物密度を低減することで表面性状を改善する技術が開示されている。
また、特許文献2には、スラブに対して高温でのブレークダウン圧延などの塑性加工を行って、ある部位のPの偏析度αを「α=その部位のP濃度/鋼中のPの平均濃度」とするとき、鋼板断面における偏析度の最大値αMAX と最小値αMIN との比αMAX /αMIN が4以下であるプレス成形後の表面性状に優れた深絞り用高強度冷延鋼板を製造する技術が開示されている。
特許文献3には、P量とSi,Mn量の添加比率を適正化し、またTi,Nbの炭窒化物の生成を適切に制御することで、表面性状と材質安定性に優れた鋼板の製造方法が記載されている。
特開2006−328443号公報 特開平11−6028号公報 特開平11−335781号公報
しかし、特許文献1では、元素材である熱延板以前の成分元素の分布不均一を制御していないため、鋳造時の元素分布のバラツキに、熱延コイル中の巻取り温度や焼鈍温度のバラツキも相俟って、凹凸模様を十分に抑制するには至っていない。
特許文献2では、Pの偏析度の最大値αMAX と最小値αMIN との比αMAX /αMIN を4以下に制御しているが、本発明者らが検討したところ、該規定の範囲内でも表面性状が劣化したり、範囲外でも良好な表面性状を有したりする場合があった。また、特許文献2では、Mnの偏析については考慮されていない。また、本技術は、熱延前にスラブをブレークダウン圧延するなど前処理を加える必要があり、製造コストの増大やCO2排出量の増加を招く。
特許文献3では、P,Mnの濃度分布の制御手法については開示されておらず、凹凸模様を十分に抑制するには至っていない。
実際、上記特許文献1〜3において、表面性状を評価する際の加工歪は、特許文献1で5%、特許文献2,3で3%と極端に低く、深絞り用高強度鋼板がプレス成形で付与される加工歪のレベル(最大10%程度)よりも甘い評価となっており、近年のより厳格化された表面品質の要請に対して十分な表面品質を保証する技術とは言いがたい。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、高いMn,P成分を含有しながらもプレス加工後の表面性状に優れた冷延鋼板及びその製造方法、冷延焼鈍鋼板の製造方法、並びに溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、高いMn,P成分を含有しながらもプレス加工後の表面性状に優れた冷延鋼板の素材となる熱延鋼板及びその製造方法を提供することをも目的とする。
連続鋳造機によって製造されたスラブ内部、特に厚み中央付近には、PおよびMnの高濃度領域が幅方向に200μm以上から数mmの間隔で存在しており、プレス成形時に鋼板表面に凹凸状の模様が生じる原因と推定されている。これに対して、特許文献2のような偏析度の最大値と最小値の比による規定では、近年の厳格な表面品質への要求に対して十分な解決法とは言い難い。そこで、本発明者らが上述した課題を解決するために鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。本発明で特に重要なことは、P,Mnの隣り合った高濃度領域と低濃度領域の濃度差を多数の部位で測定して、その濃度差と分布形態を制御することにある。隣接した幅方向の濃度差が増大するほど、急峻な強度変化が発生するため縞状の模様を形成しやすいため、個々の濃度差を一定の水準以下に制御する必要がある。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨構成は、以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.04%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.2〜2.0%、P:0.005〜0.060%、S:0.004〜0.020%、Sol.Al:0.003〜1.0%、N:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、
板厚中央部におけるMn偏析度Smの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSm及びΔWmを求めたとき、ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10以下かつ標準偏差2σmが0.10以下であり、
板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSp及びΔWpを求めたとき、ΔWpが200μm以上となるΔSpの平均値が0.20以下かつ標準偏差2σpが0.15以下であることを特徴とする熱延鋼板。
ここで、
Sm=任意の点におけるMn濃度(%)/鋼板の平均Mn濃度(%)
ΔSm:Smの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
ΔWm:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
Sp=任意の点におけるP濃度(%)/鋼板の平均P濃度(%)
ΔSp:Spの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
ΔWp:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
とする。
(2)前記成分組成が、質量%で、Ti:0.10%以下、Nb:0.10%以下、V:0.05%以下、W:0.1%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下、Cu:1%以下のうち1種又は2種以上をさらに含有する、上記(1)に記載の熱延鋼板。
(3)前記成分組成が、質量%で、B:0.0050%以下、Sb:0.03%以下、Sn:0.03%以下のうち1種又は2種以上をさらに含有する、上記(1)又は(2)に記載の熱延鋼板。
(4)質量%で、C:0.04%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.2〜2.0%、P:0.005〜0.060%、S:0.004〜0.020%、Sol.Al:0.003〜1.0%、N:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、
板厚中央部におけるMn偏析度Smの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSm及びΔWmを求めたとき、ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10以下かつ標準偏差2σmが0.05以下であり、
板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSp及びΔWpを求めたとき、ΔWpが200μm以上となるΔSpの平均値が0.20以下かつ標準偏差2σpが0.10以下であることを特徴とする冷延鋼板。
ここで、
Sm=任意の点におけるMn濃度(%)/鋼板の平均Mn濃度(%)
ΔSm:Smの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
ΔWm:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
Sp=任意の点におけるP濃度(%)/鋼板の平均P濃度(%)
ΔSp:Spの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
ΔWp:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
とする。
(5)前記成分組成が、質量%で、Ti:0.10%以下、Nb:0.10%以下、V:0.05%以下、W:0.1%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下、Cu:1%以下のうち1種又は2種以上をさらに含有する、上記(4)に記載の冷延鋼板。
(6)前記成分組成が、質量%で、B:0.0050%以下、Sb:0.03%以下、Sn:0.03%以下のうち1種又は2種以上をさらに含有する、上記(4)又は(5)に記載の冷延鋼板。
(7)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の成分組成を有する溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、
前記スラブを、鋳型直下から(6min×Vc)[m]まではDe/Dc:1.1以上1.5以下の条件下で、(6min×Vc)[m]から凝固完了まではDe/Dc:0.7以上1.5以下の条件下で、かつ、二次冷却全体の平均の比水量Pは0.5以上2.5以下とする条件下で、二次冷却する工程と、
前記スラブを熱間圧延して熱延鋼板を得る工程と、
を有することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
ここで、
Dc:スラブの幅方向中央から幅方向1/2位置までの領域のスプレー水の水量密度
De:スラブの幅方向1/2位置から幅方向端部までの領域のスプレー水の水量密度
比水量P=L/(W×T×Vc×ρ)
L:スプレー水流量(L/min)
W:スラブ幅(m)
T:スラブ厚み(m)
Vc:鋳造速度(m/min)
ρ:溶鋼密度(kg-鋼/m)
とする。
(8)上記(7)に記載の熱延鋼板の製造方法における工程に加えて、
前記熱延鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を得る工程をさらに有することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
(9)上記(8)に記載の冷延鋼板の製造方法における工程に加えて、
前記冷延鋼板を焼鈍して冷延焼鈍鋼板を得る工程をさらに有することを特徴とする冷延焼鈍鋼板の製造方法。
(10)上記(8)に記載の冷延鋼板の製造方法における工程に加えて、
前記冷延鋼板を溶融亜鉛めっきして溶融亜鉛めっき鋼板を得る工程とさらに有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明の冷延鋼板は、高いMn,P成分を含有しながらもプレス加工後の表面性状に優れる。本発明の冷延鋼板の製造方法、冷延焼鈍鋼板の製造方法、及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法によれば、高いMn,P成分を含有しながらもプレス加工後の表面性状に優れた冷延鋼板、冷延焼鈍鋼板、及び溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
本発明の熱延鋼板を素材とすれば、高いMn,P成分を含有しながらもプレス加工後の表面性状に優れた冷延鋼板を得ることができる。本発明の熱延鋼板の製造方法は、高いMn,P成分を含有しながらもプレス加工後の表面性状に優れた冷延鋼板の素材となる熱延鋼板を製造することができる。
実施例No.1〜8において、冷延鋼板におけるMn偏析度差ΔSmの平均値及びP偏析度差ΔSpの平均値と、プレス加工後の縞状模様評価の平均値との関係を示すグラフである。 実施例No.1〜8において、鋳型直下から6Vc[m]までのエッジ/中央の水量密度比De/Dcと、冷延鋼板におけるMn偏析度差ΔSmの平均値及びP偏析度差ΔSpの平均値との関係を示すグラフである。 実施例のNo.1〜34,36〜38において、成分組成及び製造条件の本発明属否と、冷延鋼板におけるMn偏析度差ΔSmの平均値及び標準偏差との関係を示すグラフである。 実施例のNo.1〜34,36〜38において、成分組成及び製造条件の本発明属否と、冷延鋼板におけるP偏析度差ΔSpの平均値及び標準偏差との関係を示すグラフである。
(熱延鋼板及び冷延鋼板)
<成分組成>
以下、本発明の熱延鋼板及び冷延鋼板の成分組成の限定理由を説明する。特に断りのない限り、「%」は鋼中における対象の添加元素の濃度を示す「質量%」を意味する。
C:0.04%以下
C含有量が0.04%を超えると、鋼板の延性、深絞り性、伸びフランジ性が著しく低下する。さらに、Cの増大は凝固時の固液共存温度範囲を拡大し、スラブ中の液相の凝固を低温域まで遅延させる。このため、液相に分配されるP,Mn量が増加する結果、スラブのP,Mn濃度の不均一を助長し、表面品質の劣化を招く。このため、C含有量は0.04%以下とする。より好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。一方、C含有量の下限は定めないが、常法に従った精錬による極低炭素化では0.0005%以上が目安となり、それ未満とするには精錬コストや歩留りが極端に悪化する。よって、C含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
Si:1.5%以下
Si含有量が1.5%を超えると、熱延時に強固かつ厚みの不均一なスケールが形成して、酸洗後も鋼板表面にスケール残りや凹みが生じ、最終製品の表面品質が著しく劣化する。このため、Si含有量は1.5%以下とする。より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下とする。特に優れた表面品質を得る観点では0.2%以下とする。一方で、Siは固溶強化能の高い安価元素であり、鋼の高強度化に寄与するため少量加えてもよい。この観点から、Si含有量は0.10%以上とすることが好ましい。
Mn:0.2〜2.0%
Mnは鋼板を強化する元素であるだけでなく、鋼の高温脆化を招く不純物元素であるSをMnSとして固定する作用もあるため、添加する必要がある。この効果を得るには、Mn含有量は0.2%以上とする必要がある。ただし、2.0%を超えて過剰に添加すると、成形性やめっき性が損なわれる。さらに、Mnの濃度不均一が助長されプレス後の表面品質も顕著に劣化する。このため、Mn含有量は2.0%以下とする。より好ましくは1.8%以下、さらに好ましくは1.5%以下、特に優れた表面品質を得る観点では、1.3%以下とすることが好ましい。
P:0.005〜0.060%
Pは上述したように、Mnと同様に凝固時の濃度不均一を招き、プレス後の表面品質を顕著に毀損する。また、多量のP添加は耐二次加工脆性を低減したり、鋼板のめっき性を劣化したりするなどデメリットが著しい。これらを回避するため、P含有量は0.060%以下とする。より好ましくは0.050%以下、さらに好ましくは0.045%以下である。一方、0.005%未満にPを低減しようとすると、精錬負荷とコストが顕著に増大するため、P含有量の下限を0.005%とする。ただし、Pは安価で固溶強化能の優れた添加元素であることから、300MPa以上の強度を安定確保する観点では0.020%以上添加することができる。
S:0.004〜0.020%
Sは不可避的に鋼中に含有され、粒界に偏析することで赤熱脆化によるスラブ・熱延板の割れや、耐二次加工脆性の劣化を招く。このため、S含有量は0.020%以下とする。より好ましくは0.010%以下である。一方、Sは熱延スケールの剥離性を向上し、薄鋼板の表面品質を改善する効果も認められることから少量ならば含有させてもよい。この効果を得るには0.004%以上の添加が好ましい。
Sol.Al:0.003〜1.0%
Alは溶鋼の脱酸のために積極的に添加される元素であり、この効果を得るためには少なくとも0.003%以上のsol.Al含有量を確保する。より好ましくは0.010%以上である。さらに、Alは凝固時にP,Mnの高濃度領域に濃化せずに、逆にP,Mn低濃度領域に濃化する特性があるため、Alの固溶強化によってミクロ組織間の強度差を軽減し、プレス後の表面品質を改善する効果がある。このため、Pは積極的に含有させてもよい。ただし、1.0%を超える過剰なAlは、Siと同様にスケール欠陥増大やめっき性の低下、さらに溶接性の劣化も招く。それらの問題を回避するため、Al含有量は1.0%以下とする。より好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.2%以下である。
N:0.0050%以下
Nは不可避的に鋼中に含有される不純物であり、多量に含有すると成形性の劣化や時効硬化によるストレッチャストレインの発生をまねく。それらの課題を回避するため、N含有量は0.0050%以下とする。
上記元素以外の残部はFe及び不可避的不純物からなる。ただし、上記元素に加えて、任意で以下に示す合金元素を1種又は2種以上含有させてもよい。
Ti:0.10%以下、Nb:0.10%以下
TiやNbは鋼中のフリーC量を適切にコントロールするのに有効な元素である。それにより、最終製品の耐時効性を著しく向上することができるだけでなく、熱延板の微細化とフリーCの低減によって、焼鈍時の再結晶集合組織を発達させて顕著な深絞り性を獲得するのに極めて有効である。加えて、微細な炭化物を形成するため、鋼板の強度上昇にも寄与する。これらの効果を得るために、Ti,Nbを各々0.01%以上で添加しても良い。一方、過剰な添加は組織の硬質化や粗大な炭窒化物の形成によって、成形性の低下を招く。また、表面窒化によるプレス加工後の表面凹凸の形成という問題も生じることがある。このため、Ti,Nb含有量は各々0.10%以下に制限する。好ましくは0.05%以下である。
V:0.05%以下
Vは微細炭化物を形成するため、鋼板の強度向上のために0.01%以上添加しても良い。ただし、0.05%を超えて添加すると、組織の硬質化や粗大な炭窒化物の形成によって成形性の低下を招くため、0.05%以下とする。
W:0.1%以下
Wは微細炭化物を形成するため、鋼板の強度向上のために0.01%以上添加しても良い。ただし、0.1%を超えて添加すると、組織の硬質化や粗大な炭窒化物の形成によって成形性の低下を招くため、0.1%以下とする。
Ni:1%以下
Niは鋼板の耐食性や低温靭性を向上する効果が得られるため、0.01%以上添加しても良いが、1%を超える過剰な添加はコストの増大を招くため好ましくない。
Cr:1%以下
Crは鋼板の耐食性の向上や、炭化物の形成による強度向上の効果が得られるため、0.01%以上添加しても良いが、1%を超える過剰な添加はコストの増大を招くため好ましくない。
Cu:1%以下
Cuは鋼板の耐食性の向上や、Cu粒子の析出による強度向上効果が得られるため、0.01%以上添加しても良いが、1%を超える過剰な添加は熱間延性の低下によるスラブ・熱延板割れを招くため好ましくない。また、添加時には同量程度のNiを同時添加することが好ましい。
B:0.0050%以下
BはP,Sよりも結晶粒界に優先的に濃化することで、P,Sによる粒界脆化を抑制できるため、0.0003%以上添加しても良い。ただし、0.0050%を超えて過剰に添加しても、上記の効果は飽和し、逆に熱間変形抵抗を著しく増大するため生産性を阻害したり、仕上げ温度の上昇によってスケール性欠陥の増加を招く。このため、B含有量は0.0050%以下とする。より好ましくは0.0030%以下である。
Sb:0.03%以下、Sn:0.03%以下
SbおよびSnは、鋼板の表面酸化を抑制する効果があり、スケール性欠陥や表面窒化、脱炭を低減して表面品質を維持するのに有効である。この効果を得るには、SbまたはSnを各々0.005%以上含有することが好ましい。しかし、0.03%を超えて含有しても、効果は飽和し、成形性の劣化やコスト上昇などを招くことから、含有量は各々0.03%以下とする。
<Mn偏析度及びP偏析度の分布>
鋼板内のP,Mnは均一に分布していることが理想であるが、上述したように、実際にはスラブ凝固時にデンドライト樹間や最終凝固部へ分配されることで、Mn,Pの高濃度域とそれに隣接した低濃度領域が、数10μm〜数mm間隔で形成される。特にスラブ板厚の中央近傍は最終凝固部であるため、幅200μm以上の大きな濃度分布を形成しやすい。板厚中央以外でも内部割れによって局所的な濃度偏差を生じることもある。このような局所的なMn,P濃度差のうち、幅200μmを超えるサイズの高濃度域の周囲には、大きな強度変化が生じて歪が不均一になるため、薄鋼板がプレス成型された際に視認性の高い縞状模様を誘発することが分かった。
そこで本発明者らが縞状模様を顕在化させないMn,P濃度分布について鋭意検討した結果、幅200μm以上の個々の偏析の濃度差とバラツキを適切に制御することで、引張ひずみで10%の大きな塑性加工を受けても縞状模様の視認性が極めて低くなることを知見した。
具体的には、熱延鋼板においては、以下の条件を満たすことが肝要である。
−板厚中央部におけるMn偏析度Smの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSm及びΔWmを求めたとき、ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10以下かつ標準偏差2σmが0.10以下であること。
−板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSp及びΔWpを求めたとき、ΔWpが200μm以上となるΔSpの平均値が0.20以下かつ標準偏差2σpが0.15以下であること。
ここで、
Sm=任意の点におけるMn濃度(%)/鋼板の平均Mn濃度(%)
ΔSm:Smの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
ΔWm:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
Sp=任意の点におけるP濃度(%)/鋼板の平均P濃度(%)
ΔSp:Spの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
ΔWp:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
とする。
ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10超え又は標準偏差2σmが0.10超えの場合、熱延鋼板を素材として製造した冷延鋼板をプレス加工した後の表面性状が劣る。また、ΔWpが200μm以上となるΔSpの平均値が0.20超え又は標準偏差2σpが0.15超えの場合も、プレス加工後の表面性状が劣る。
また、冷延鋼板においては、以下の条件を満たすことが肝要である。
−板厚中央部におけるMn偏析度Smの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSm及びΔWmを求めたとき、ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10以下かつ標準偏差2σmが0.05以下であること。
−板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSp及びΔWpを求めたとき、ΔWpが200μm以上となるΔSpの平均値が0.20以下かつ標準偏差2σpが0.10以下であること。
ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10超え又は標準偏差2σmが0.05超えの場合、冷延鋼板をプレス加工した後の表面性状が劣る。また、ΔWpが200μm以上となるΔSpの平均値が0.20超え又は標準偏差2σpが0.10超えの場合も、プレス加工後の表面性状が劣る。
(熱延鋼板、冷延鋼板、冷延焼鈍鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法)
以下、上記本開示の熱延鋼板及び冷延鋼板を製造するための製造方法について説明する。まず、上記成分組成を有する溶鋼を連続鋳造してスラブを得る。溶鋼を鋳造するに際しては、湾曲型、垂直型または垂直曲げ型の連続鋳造機を使用することが好ましい。これは、幅方向の濃度不均一の制御と生産性を両立するのに好適であるためである。連続鋳造機における銅鋳型での一次冷却条件は、常法に従って鋳片を均一凝固させるよう適切に行う。
本発明では、熱延鋼板、あるいはこれを素材とする冷延鋼板において上記のMn偏析度及びP偏析度の分布を得るために、二次冷却における鋳型直下から凝固完了までの領域におけるスプレー冷却を制御することが肝要である。
具体的には、鋳型直下から(6min×Vc)[m]まではDe/Dc:1.1以上1.5以下の条件下で、(6min×Vc)[m]から凝固完了まではDe/Dc:0.7以上1.5以下の条件下で、かつ、二次冷却全体の平均の比水量Pは0.5以上2.5以下とする条件下で、スラブの二次冷却を行う。上記二次冷却の条件のいずれかを満たさない場合、Mn及び/又はPの偏析を十分に抑制することができず、本発明のMn偏析度及びP偏析度の分布を得ることができない。この理由は明確ではないが、鋳造初期の幅方向の水量密度を敢えてわずかに不均一にすることは、結果的に、スラブの冷却と凝固の進行に伴って凝固終端(いわゆるクレータエンド)形状が不均一になる影響を相殺し均一化することで、幅方向のMnやPといった合金元素のマクロな分布を均一化する効果が得られると考えられる。一方、比水量が乏しい場合は二次冷却のスプレー水の散布領域が不均一になること、過剰な場合にはスプレー水や乗り水が鋳片表面の所々で遷移沸騰現象に伴う過冷却を引き起こすこと、などにより均一な凝固終端形状を得られなくなると考えられる。
ここで、
Dc:スラブの幅方向中央から幅方向1/2位置までの領域のスプレー水の水量密度
De:スラブの幅方向1/2位置から幅方向端部までの領域のスプレー水の水量密度
比水量P=L/(W×T×Vc×ρ)
L:スプレー水流量(L/min)
W:スラブ幅(m)
T:スラブ厚み(m)
Vc:鋳造速度(m/min)
ρ:溶鋼密度(kg-鋼/m)
とする。なお、上記スラブの「幅方向1/2位置」とは、幅方向中央と幅方向端部の中間位置である。
また、スラブコーナーの過冷却を回避するために鋳片長辺面の両端部だけスプレー水の噴霧を行わない、いわゆる幅切りを実施する場合、鋳型直下から(6min×Vc)[m]までの幅切り量の平均がスラブコーナーから0.4T(m)以下で、(6min×Vc)[m]から凝固完了までは幅切り量の平均が0.8T(m)以下の領域に実施して良い。それよりも鋳片の幅中央寄りにまで幅切りを実施するとクレーターエンドのコーナー寄りの形状が伸長し、不均一な元素分布を助長するため筋模様を助長するため好ましくない。なお、二次冷却スプレーの幅切りを実施する場合は、水量密度Deを計算する対象となる鋳片表面の面積から幅切り適用領域の面積を除外すればよい。
二次冷却後のスラブを熱間圧延して熱延鋼板を得る。熱間圧延の条件は特に限定されず、常法とすることができる。ただし、熱間圧延での仕上げ圧延出側温度が900℃を超える場合、最終製品におけるスケール性の表面欠陥が増加し表面品質を損なう可能性があることから、仕上げ圧延出側温度は900℃以下が好ましい。一方、仕上げ圧延温度がAr3温度未満となると、オーステナイトの再結晶が不十分なままフェライト生成して圧延加工組織が残存する。これにより延性の低下や圧延皺が押し込まれた熱延性の線状欠陥を誘発するため、仕上げ圧延出側温度はAr3温度以上とすることが好ましい。なお、Ar3温度は以下の式で成分より求める。
Ar3温度=837-475[%C]+56[%Si]-20[%Mn]-16[%Cu]-27[%Ni]-5[%Cr]+38[%Mo]
+125[%V]-136[%Ti]-20[%Nb]+198[%Al]+3315[%B]
ここで、[%M]は元素Mの含有量を意味し、添加しない元素の場合にはゼロとする。
さらに、熱延鋼板を酸洗、冷間圧延して冷延鋼板を得る。冷間圧延の条件は特に限定されず、常法とすることができる。ただし、冷間圧延率が20%未満では、引き続いての焼鈍時にフェライト母相の再結晶が進まず延性が低下するため、冷間圧延率は20%以上とすることが好ましい。
そして、冷延鋼板を常法にて連続焼鈍し、さらに調質圧延を施して、薄鋼板とすることができる。なお、連続焼鈍に際しては、連続焼鈍ライン(CAL)又は連続溶融めっきライン(CGL)、あるいはバッチ焼鈍設備(BAF)、またはそれら複数ラインの組み合わせにて焼鈍処理を実施することが好ましい。なお、上記の一般的な焼鈍設備における加熱温度での工業的な処理時間の範疇では、鋳造時に決定したP,Mn元素の濃度分布を低減・消失することは実質的に不可能であり、焼鈍条件が本発明で規定するP,Mnの分布形態と筋状模様に及ぼす影響は少ない。そのため、焼鈍温度および焼鈍過程におけるヒートサイクルは本発明では特に規定せず、所望のミクロ組織と特性を得るための適切な焼鈍条件をそれぞれ採用することできる。ただし、焼鈍温度が700℃未満ではフェライト母相の再結晶と粒成長が不十分で冷圧による圧延加工組織が残存し延性が劣化するため、焼鈍温度は700℃以上が好ましい。CALまたはBAFにおいては冷延焼鈍鋼板、CGLにおいては溶融亜鉛めっき鋼板あるいは合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得られる。それらには、鋼帯の形状矯正や表面の色調の変更、あるいは降伏点伸びを調整する観点で、伸長率2.0%以下の調質圧延を施すことができる。伸長率2.0%を超える調質圧延は、延性の低下を招くため好ましくない。
表1に示す成分組成(残部はFe及び不可避的不純物)を有する鋼を転炉で溶製後に、溶鋼を垂直曲げ型の連続鋳造機によって連続鋳造してスラブとした。鋳造速度及び二次冷却条件を表2に示すものとして、表2に示すスラブ幅で、厚みが250mmのスラブを製造した。表2のNo.7の比較鋼においては、熱延前にスラブを一旦1200℃に10時間加熱し、圧下率20%の事前圧延(ブレークダウン圧延)を実施した。
次いで、得られたスラブを表2に示す均熱温度×1時間のスラブ再加熱後に、表2に示す仕上げ熱延温度と、表2に示す巻取温度で熱間圧延を施して、3mm厚の熱延鋼板を得た。
次いで、得られた熱延鋼板を常法に従い酸洗および冷間圧延(圧下率78%)を施した後に、表3に示す条件で連続焼鈍ライン(CAL)又は連続溶融めっきライン(CGL)にて焼鈍処理を実施し、伸長率1.0%の調質圧延を施して、最終的に0.6mm厚の薄鋼板を得た。溶融亜鉛めっきを施した鋼板については、片面45±3g/m2のめっきを両面に作製し、550℃で合金化処理を施して被覆中のFe濃度が10±1mass%の合金化溶融亜鉛めっきとした。
Figure 2018145525
Figure 2018145525
Figure 2018145525
<熱延鋼板におけるMn偏析度及びP偏析度の分布の評価>
各水準において、板幅方向に平行な板厚断面を有する鋼片を、鋼帯中央とエッジから300mmの位置を中心に各100mm幅以上サンプル採取した。各サンプルの断面を研磨により平滑に仕上げた後、電子線マイクロプローブアナライザー(EPMA)装置により、加速電圧25kV、電流2.5μA、ビーム径5μmの条件で、板厚中央から厚みの±10%の領域をマッピングして、Mnの定量濃度分布を得た。そして、Mnの定量濃度分布の各値を平均Mn濃度で割ることによって、偏析度Smの分布に変換した。
このうち、板厚中央部で最もSmの変化が大きい厚み領域50μm分のデータを厚み方向に平均化し、更に幅方向にも30μm分の移動平均による平滑化を実施して、Smの幅方向プロファイルを得た。これらの幅方向プロファイルにおいて、全ピークについて、極大値とそれに隣接する2つの極小値の値を求めて、各ピークについてΔSm及びΔWmを求めた。そのうち、ΔWmが200μm以上となるΔSmについて、平均値と標準偏差を算出した。
PについてもMnと同様にして、板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルを得た。そして、各ピークについてΔSp及びΔWpを求めた。そのうち、ΔWpが200μm以上となるΔSpについて、平均値と標準偏差を算出した。
得られた結果を表2に示す。
<冷延鋼板におけるMn偏析度及びP偏析度の分布の評価>
各水準において、板幅方向に平行な板厚断面を有する鋼片を、鋼帯中央とエッジから300mmの位置を中心に各100mm幅以上サンプル採取した。各サンプルの断面を研磨により平滑に仕上げた後、EPMA装置により、加速電圧25kV、電流2.5μA、ビーム径3μmの条件で、板厚中央から厚みの±25%の領域をマッピングして、Mnの定量濃度分布を得た。そして、Mnの定量濃度分布の各値を平均Mn濃度で割ることによって、偏析度Smの分布に変換した。
このうち、板厚中央部で最もSmの変化の大きい厚み領域30μm分のデータを厚み方向に平均化し、更に幅方向にも30μm分の移動平均による平滑化を実施して、Smの幅方向プロファイルを得た。これらの幅方向プロファイルにおいて、全ピークについて、極大値とそれに隣接する2つの極小値の値を求めて、各ピークについてΔSm及びΔWmを求めた。そのうち、ΔWmが200μm以上となるΔSmについて、平均値と標準偏差を算出した。
PについてもMnと同様にして、板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルを得た。そして、各ピークについてΔSp及びΔWpを求めた。そのうち、ΔWpが200μm以上となるΔSpについて、平均値と標準偏差を算出した。
得られた結果を表3に示す。
<機械的特性の評価>
鋼帯の幅中央から圧延方向に対して直角方向にJIS5号引張試験片(JIS Z 2201)を採取し、歪速度が10-3/sとするJIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行い、引張強度(TS)を求めた。全伸び(El)の測定は、まず引張前の試験片に標点間距離L=50mmの標点をマーキングし、引張試験で破断した試験片の破断面同士を突き合わせて標点間距離の増加量ΔL(mm)を測定して、全伸びEl(%)=ΔL/L×100として求めた。さらに、別途試験片に2%の予歪を引張変形で加えて170℃×20分の時効処理を施した後に引張試験を実施して時効後の降伏応力を測定し、2%予歪時の応力からの降伏強度の増加分をBHとした。結果を表3に示す。
<縞状模様の評価>
各水準において、鋼帯を長手方向に100mm分裁断した板を、幅方向に公称歪10%の引張加工を施し、表面に砥石掛けして目視による縞状模様の程度を5段階で評価した。評価基準は以下のとおりとして、N=10で評点を平均した。結果を表3に示す。
1=模様は皆無
2=模様はほとんど識別不可
3=全幅に薄い模様はあるが、明瞭な模様は認められない
4=明瞭な模様が3ヶ所以上発生
5=明瞭な模様がサンプル全幅に発生
<めっき不良有無の評価>
めっきの外観評価は、溶融亜鉛めっきされた鋼帯の外観を長手方向に少なくとも100m以上検査したうえで、不めっき、合金化むらによる外観不良が含まれる確率が長手100mにつき 1ヵ所/未満であり自動車外板として適切な表面品質が確保されている場合を「なし」、それ以上の多数の上記欠陥が認められる場合を「有り」とした。結果を表3に示す。
(評価結果の説明)
図1に、実施例No.1〜8において、冷延鋼板におけるMn偏析度差ΔSmの平均値及びP偏析度差ΔSpの平均値と、プレス加工後の縞状模様評価の平均値との関係を示す。また、図2に、実施例No.1〜8において、鋳型直下から6Vc[m]までのエッジ/中央の水量密度比De/Dcと、冷延鋼板におけるMn偏析度差ΔSmの平均値及びP偏析度差ΔSpの平均値との関係を示す。図1,2から明らかなように、De/Dc:1.1以上1.5以下の範囲内において、ΔSmの平均値を0.10以下、ΔSpの平均値を0.20以下とすることができ、縞状模様の平均値を2.0未満と、高い表面品質を実現することができた。
さらに比較として、No.7で、特許文献2に示されるような1200℃×10時間の加熱および圧下率20%のブレークダウン圧延を熱延前に一度実施して、P偏析の軽減を図った結果を示す。しかし、今回の評価方法では良好な表面品質が得られなかった。これは、特許文献2では規定されていないMnが、Pよりも拡散困難で偏析が残存したこと、さらには今回の表面品質の評価における引張ひずみ量が10%と大きいため、特許文献2では顕在化しなかった縞状模様も顕在化したことが理由と考えられる。
また、表2,3及び図3,4から明らかなように、本発明の成分条件および製造条件を満足した発明鋼では、Mn,Pの偏析度分布が本発明の規定を満足し、かつ300MPa以上のTSと良好なElおよび高いBH特性を示すとともに、縞状模様の評価が平均2.0未満で極めて良好な表面品質を示す。成分が規定範囲内でも鋳造条件が所定の条件から外れた比較鋼では、縞状模様の評価が劣位であった。一方、C、Mn、Pが所定の範囲より過剰な鋼H,I,Kは、製造条件が規定範囲内でも縞状模様が顕在化した。また、Si,Alが上限を超える鋼J、Mではめっき性が劣る。さらに、Pが下限以下の鋼Lは強度が300MPa未満となった。
本発明によれば、プレス加工などの薄板加工に適用できる美麗な表面性状を有する高強度薄鋼板を製造可能である。本発明は、高意匠性で美麗差の要求される自動車ボディや家電製品の筐体に適用でき、製品の付加価値と耐久性を高めると共に、自動車の車体軽量化を通して地球環境の負荷低減にも寄与するなど産業上の利用価値が高い。

Claims (10)

  1. 質量%で、C:0.04%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.2〜2.0%、P:0.005〜0.060%、S:0.004〜0.020%、Sol.Al:0.003〜1.0%、N:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    板厚中央部におけるMn偏析度Smの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSm及びΔWmを求めたとき、ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10以下かつ標準偏差2σmが0.10以下であり、
    板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSp及びΔWpを求めたとき、ΔWpが200μm以上となるΔSpの平均値が0.20以下かつ標準偏差2σpが0.15以下であることを特徴とする熱延鋼板。
    ここで、
    Sm=任意の点におけるMn濃度(%)/鋼板の平均Mn濃度(%)
    ΔSm:Smの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
    ΔWm:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
    Sp=任意の点におけるP濃度(%)/鋼板の平均P濃度(%)
    ΔSp:Spの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
    ΔWp:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
    とする。
  2. 前記成分組成が、質量%で、Ti:0.10%以下、Nb:0.10%以下、V:0.05%以下、W:0.1%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下、Cu:1%以下のうち1種又は2種以上をさらに含有する、請求項1に記載の熱延鋼板。
  3. 前記成分組成が、質量%で、B:0.0050%以下、Sb:0.03%以下、Sn:0.03%以下のうち1種又は2種以上をさらに含有する、請求項1又は2に記載の熱延鋼板。
  4. 質量%で、C:0.04%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.2〜2.0%、P:0.005〜0.060%、S:0.004〜0.020%、Sol.Al:0.003〜1.0%、N:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    板厚中央部におけるMn偏析度Smの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSm及びΔWmを求めたとき、ΔWmが200μm以上となるΔSmの平均値が0.10以下かつ標準偏差2σmが0.05以下であり、
    板厚中央部におけるP偏析度Spの幅方向プロファイルにおいて、各極大値についてΔSp及びΔWpを求めたとき、ΔWpが200μm以上となるΔSpの平均値が0.20以下かつ標準偏差2σpが0.10以下であることを特徴とする冷延鋼板。
    ここで、
    Sm=任意の点におけるMn濃度(%)/鋼板の平均Mn濃度(%)
    ΔSm:Smの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
    ΔWm:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
    Sp=任意の点におけるP濃度(%)/鋼板の平均P濃度(%)
    ΔSp:Spの極大値と、当該極大値に隣接する2つの極小値の平均値との差
    ΔWp:各極大値に隣接する2つの極小値間の幅方向距離
    とする。
  5. 前記成分組成が、質量%で、Ti:0.10%以下、Nb:0.10%以下、V:0.05%以下、W:0.1%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下、Cu:1%以下のうち1種又は2種以上をさらに含有する、請求項4に記載の冷延鋼板。
  6. 前記成分組成が、質量%で、B:0.0050%以下、Sb:0.03%以下、Sn:0.03%以下のうち1種又は2種以上をさらに含有する、請求項4又は5に記載の冷延鋼板。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の成分組成を有する溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、
    前記スラブを、鋳型直下から(6min×Vc)[m]まではDe/Dc:1.1以上1.5以下の条件下で、(6min×Vc)[m]から凝固完了まではDe/Dc:0.7以上1.5以下の条件下で、かつ、二次冷却全体の平均の比水量Pは0.5以上2.5以下とする条件下で、二次冷却する工程と、
    前記スラブを熱間圧延して熱延鋼板を得る工程と、
    を有することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
    ここで、
    Dc:スラブの幅方向中央から幅方向1/2位置までの領域のスプレー水の水量密度
    De:スラブの幅方向1/2位置から幅方向端部までの領域のスプレー水の水量密度
    比水量P=L/(W×T×Vc×ρ)
    L:スプレー水流量(L/min)
    W:スラブ幅(m)
    T:スラブ厚み(m)
    Vc:鋳造速度(m/min)
    ρ:溶鋼密度(kg-鋼/m)
    とする。
  8. 請求項7に記載の熱延鋼板の製造方法における工程に加えて、
    前記熱延鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を得る工程をさらに有することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
  9. 請求項8に記載の冷延鋼板の製造方法における工程に加えて、
    前記冷延鋼板を焼鈍して冷延焼鈍鋼板を得る工程をさらに有することを特徴とする冷延焼鈍鋼板の製造方法。
  10. 請求項8に記載の冷延鋼板の製造方法における工程に加えて、
    前記冷延鋼板を溶融亜鉛めっきして溶融亜鉛めっき鋼板を得る工程とさらに有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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