JP2018140954A - イリド化合物の製造方法、およびその利用 - Google Patents

イリド化合物の製造方法、およびその利用 Download PDF

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正孝 上遠野
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Abstract

【課題】高い安全性において5−アミノレブリン酸等のアミノ酸を製造することができる新規な合成経路の開発。
【解決手段】環状酸無水物と硫黄メチリドとを反応させることを特徴とするイリド化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、イリド化合物の製造方法、およびその利用に関する。より詳細には、イリド化合物の製造方法、当該イリド化合物の製造方法を利用したハロメチル化合物の製造方法およびアミノ酸の製造方法、ならびにイリド化合物に関する。
従来、5−アミノレブリン酸の製造方法は、光合成菌を利用する方法と、化学合成法とに大別される。
特許文献1には、無水コハク酸と青酸金属塩を反応させて、4−シアノ−4−オキソブタン酸または、その塩を経由し、次いで還元工程を経ることを特徴とする5−アミノレブリン酸の製造方法が記載されている。
先行文献2には、塩基の存在下、無水コハク酸とニトロメタンを反応させて、5−ニトロ−4−オキソペンタン酸もしくはその塩を得、次いで還元することからなる、δ−アミノレブリン酸もしくはその塩の製造法が記載されている。
特開2005−272360号公報(2005年10月6日公開) 特開平9−316041号公報(1997年12月9日公開)
しかしながら、従来の5−アミノレブリン酸の製造方法では、青酸金属塩またはニトロメタン等、危険性の高い化合物を使用する必要があるという欠点がある。そのため、安全性が向上した5−アミノレブリン酸の新規な合成経路の開発が求められる。
上記の課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、無水コハク酸等の環状酸無水物を、青酸金属塩およびニトロメタンよりも安全性の高い硫黄メチリドと反応させてイリド化合物を製造する工程を含む、5−アミノレブリン酸等のアミノ酸の新たな合成経路を見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の一実施形態に係るイリド化合物の製造方法は、環状酸無水物と硫黄メチリドとを反応させることを特徴とするイリド化合物の製造方法である。
本発明の一実施形態に係るイリド化合物の製造方法では、上記環状酸無水物が式(1)で表されることが好ましい。
Figure 2018140954
(式(1)中、nは1〜3の整数である)
本発明の一実施形態に係るイリド化合物の製造方法では、上記環状酸無水物が無水コハク酸であることが好ましい。
本発明の一実施形態に係るイリド化合物の製造方法では、上記硫黄メチリドが、トリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライドと塩基との反応から生成することが好ましい。
本発明の一実施形態に係るイリド化合物の製造方法では、上記硫黄メチリドが、トリメチルスルホキソニウムブロマイドまたはトリメチルスルホニウムブロマイドと塩基との反応から生成することがより好ましい。
本発明の一実施形態に係るイリド化合物の製造方法では、上記イリド化合物が、式(2−1)または式(2−2)で表されるイリド化合物であることが好ましい。
Figure 2018140954
Figure 2018140954
本発明の一実施形態に係るハロメチル化合物の製造方法は、上述のイリド化合物の製造方法により得られるイリド化合物の硫黄メチリドに由来する部分を、ハロゲン化水素でハロゲン化メチル化することが好ましい。
本発明の一実施形態に係るアミノ酸の製造方法は、上述のハロメチル化合物の製造方法により得られるハロメチル化合物のハロゲンを、アミノ基に置換することが好ましい。
本発明の一実施形態に係るイリド化合物は、式(3−1)または式(3−2)で表されることが好ましい。
Figure 2018140954
(式(3−1)中、Rは水素原子、アルカリ金属、および炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選ばれる一つである)
Figure 2018140954
(式(3−2)中、Rは水素原子、アルカリ金属、および炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選ばれる一つである)
本発明の一実施形態に係るイリド化合物の製造方法を用いれば、高い安全性において5−アミノレブリン酸等のアミノ酸を製造することができる。
以下、本発明に係るイリド化合物の製造方法およびその利用の一実施形態について、詳細に説明する。
〔1〕イリド化合物の製造方法の詳細
ここでは、本実施形態に係るイリド化合物の製造方法について、下記反応スキーム1を参照しつつ以下に説明する。なお、反応スキーム1に記載された各化合物は、好ましい一例であり、本実施形態はこれらに限定されるわけではない。
Figure 2018140954
上記反応スキーム1において、nは1以上の整数(好ましくは1〜3の整数)を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。
本実施形態に係るイリド化合物の製造方法では、環状酸無水物と、硫黄メチリドとを反応させて、イリド化合物を得る工程1を含む。その後、製造したイリド化合物を、工程2により、ハロゲン化水素と反応させて、ハロメチル化合物を製造してもよい。さらにその後、製造したハロメチル化合物に対し、工程3の操作を行って、ハロメチル化合物のハロゲンをアミノ基に置換し、アミノ酸を製造することもできる。
(1−1)工程1:イリド化合物の製造
工程1では、環状酸無水物に硫黄メチリドを作用させることで、環状酸無水物を開環し、イリド化合物を製造する。
具体的な反応方法は、特に限定されるものではないが、好ましい一例では、溶媒中で、硫黄メチリドと環状酸無水物とを反応させる。
(環状酸無水物)
環状酸無水物は、2価以上のカルボン酸のカルボキシル基が分子内脱水して環状になった構造を有する化合物であればよく、特に限定されない。環状酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸、および無水アジピン酸等が挙げられる。環状酸無水物は、好ましくは、2価のカルボン酸のカルボキシル基が分子内脱水して環状になった構造を有する化合物である。
2つ以上のカルボキシル基を有し、かつ環状ではないカルボン酸(無水物でないカルボン酸)をイリド化合物の製造に用いる場合、まずカルボン酸の2つ以上のカルボキシル基を、一つを除いて保護する。次に残った一つのカルボキシル基のみを活性化してから、硫黄メチリドを反応させるため、工程数がかかる。これに対し、本実施形態においては環状酸無水物を用いることで、上記のカルボキシル基を保護する工程、およびカルボキシル基を活性化する工程が不要であるため、必要な工程数が少ない。必要な工程数が少ないことで、副産物が少なく、後処理が容易である等、コスト面での利点がある。
好ましい一例では、環状無水化合物として、上記反応スキーム1の式(1)で表される化合物が用いられる。式(1)で表される化合物は、分子内で2つのカルボキシル基から水分子が脱離して環状になった構造を有する化合物である。
環状酸無水物は、好ましくは無水コハク酸である。無水コハク酸は安価である。そのため、環状酸無水物として無水コハク酸を用いることで、低コストで、産業上有用な5−アミノレブリン酸(以下、ALAとも称する)を製造することができる。
(硫黄メチリド)
硫黄メチリドの種類は、特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキソメチリド、およびジメチルスルホメチリドが挙げられる。硫黄メチリドは、例えば、トリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライド等と塩基とを反応させて調製することができる。
トリメチルスルホキソニウムハライドとしては、トリメチルスルホキソニウムブロマイド、トリメチルスルホキソニウムクロライド、およびトリメチルスルホキソニウムヨージド等が挙げられる。中でも、トリメチルスルホキソニウムブロマイドが特に好適に用いられる。トリメチルスルホキソニウムブロマイドは安価で取り扱いやすく、目的物であるイリド化合物を高い収率で製造できるためである。
トリメチルスルホニウムハライドとしては、トリメチルスルホニウムブロマイド、トリメチルスルホニウムクロライド、およびトリメチルスルホニウムヨージド等が挙げられる。中でも、取扱いの容易さから、トリメチルスルホニウムブロマイドが特に好適に用いられる。
塩基は、トリメチルスルホキソニウムハライドからプロトンを引き抜き、ジメチルスルホキソメチリドを生成させる。また、塩基は、トリメチルスルホニウムハライドからプロトンを引き抜き、ジメチルスルホメチリドを生成させる。塩基としては、例えばナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水素化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウム等が挙げられる。中でも、反応収率がよく、操作性に優れるとの理由から、塩基はナトリウムtert−ブトキシドであることが好ましい。
(第一の溶媒)
以下、トリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライド等と塩基との反応、及び工程1において硫黄メチリドおよび環状酸無水物を反応させるのに用いる溶媒を、第一の溶媒と称する。第一の溶媒の種類は特に限定されない。例えば、テトラヒドロフラン、tert−ブタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−メチルピロリドン、トルエン、およびジオキサン等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。中でも、反応収率がよく、操作性に優れるとの理由から、第一の溶媒は、テトラヒドロフランであることが好ましい。第一の溶媒は、さらに水を含んでいてもよい。
環状酸無水物と硫黄メチリドとを反応させる具体的な方法として、例えば、第一の溶媒中で、トリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライド等と塩基との反応により、硫黄メチリドが第一の溶媒中に生成した溶液を作製する。硫黄メチリドの溶液に対し、環状酸無水物を第一の溶媒に溶解した溶液を滴下する方法が挙げられる。また、溶解した環状酸無水物の溶液に対し、硫黄メチリドの溶液を滴下する方法も考えられる。以下、溶解した硫黄メチリドの溶液に対し、溶解した環状酸無水物の溶液を滴下する方法について、具体的に説明する。
まず、第一の溶媒を用いて、硫黄メチリドおよび環状酸無水物の溶液をそれぞれ作製する。
硫黄メチリドを第一の溶媒を用いて調製する方法は、特に限定されない。例えば、塩基を溶媒に加えた後、公知の方法により、溶解、あるいは懸濁させ、そこへトリメチルスルホキソニウムハライド、またはトリメチルスルホニウムハライドが溶解した溶液を添加する。その後、得られた混合溶液を反応させ、硫黄メチリドを生成させる。
第一の溶媒中で、環状酸無水物に対する塩基の量は、好ましくは0.01倍モル〜50倍モルであり、より好ましくは0.1倍モル〜10倍モルであり、さらに好ましくは0.5倍モル〜5倍モルである。塩基の量が上記の範囲内であることにより、副反応を抑えて収率を向上できるという効果を奏する。
反応の際の第一の溶媒の温度は、例えば5℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃である。溶媒の温度が上記の範囲内であることにより、収率よく硫黄メチリドを生成できるという効果を奏する。また、撹拌の時間は、例えば10分〜20時間、好ましくは30分〜10時間である。撹拌の時間が上記の範囲内であることにより、収率よく硫黄メチリドを生成できるという効果を奏する。
第一の溶媒中のトリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライドの量は、特に限定されない。第一の溶媒中のトリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライドの量は、好ましくは、0.01mM〜10000mMであり、より好ましくは、0.1mM〜1000mMであり、さらに好ましくは、1mM〜500mMである。第一の溶媒中のトリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライドの量が上記の範囲内であることにより、収率よく硫黄メチリドが生成でき、また操作性にも優れる。
環状酸無水物を第一の溶媒に溶解する方法は、特に限定されない。例えば、環状酸無水物を第一の溶媒に加えた後、公知の方法により、溶解するまで撹拌すればよい。撹拌の際、環状酸無水物を加えた溶媒の温度は、例えば5℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃である。溶媒の温度が上記の範囲内であることにより、大掛かりな付帯設備を使用せず低コストという効果を奏する。また、撹拌の時間は、例えば10分〜20時間、好ましくは30分〜10時間である。撹拌の時間が上記の範囲内であることにより、より均一な溶液を作製することができる。
第一の溶媒中の環状酸無水物の量は、特に限定されない。第一の溶媒中の環状酸無水物の量は、好ましくは、0.01mM〜10000mMであり、より好ましくは、0.1mM〜1000mMであり、さらに好ましくは、1mM〜500mMである。第一の溶媒中の環状酸無水物が上記の範囲内であることにより、滴下時の操作性に優れる。
硫黄メチリドの溶液に、環状酸無水物の溶液を滴下する方法は、特に限定されず、公知の方法により滴下すればよい。
また、トリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライドの量は、環状酸無水物に対して、例えば0.01倍モル〜100倍モルであり、0.5倍モル〜50倍モルであることが好ましく、0.1倍モル〜10倍モルであることがより好ましく、0.5倍モル〜5倍モルであることがさらに好ましい。
滴下は、例えば1分〜24時間、好ましくは10分〜10時間かけて行う。滴下を上記の時間の範囲内で行うことにより、副反応を低減でき、かつ反応収率を向上することができる。また、滴下の際の第一の溶媒の温度は、好ましくは、−70℃〜100℃、より好ましくは、−50℃〜70℃、さらに好ましくは、−20℃〜40℃にして行う。滴下の際の第一の溶媒の温度が上記の範囲内であることにより、滴下時の発熱を抑えることができる。
滴下を行った後、得られた反応液をよく撹拌する。撹拌は公知の方法により行えばよい。撹拌の条件は特に限定されず、環状酸無水物、硫黄メチリド、第一の溶媒等の種類および量によって適宜設定すればよい。撹拌は、滴下によって得られた反応液の温度を、好ましくは、−70℃〜100℃、より好ましくは、−50℃〜70℃、さらに好ましくは、−20℃〜40℃にして行う。滴下によって得られた反応液の温度を上記の範囲内にして撹拌することにより、反応を効率よく進行することができる。また、滴下によって得られた反応液の温度を上記の範囲内にして撹拌することにより、反応の急激な進行を抑制することができる。
また撹拌は、10分〜20時間かけて行うことが好ましく、20分〜10時間かけて行うことがより好ましく、30分〜5時間かけて行うことがさらに好ましい。
滴下後、析出したイリド化合物を、公知の方法により回収してもよい。例えば、滴下後の反応液を遠心分離することによりイリド化合物を沈降させ、回収する。必要に応じて、得られた沈降物を洗浄し、乾燥して、イリド化合物の固形物を得てもよい。
〔2〕イリド化合物
製造されるイリド化合物の構造は、用いる環状酸無水物および硫黄メチリドの種類に依存する。好ましい一例では、イリド化合物は、上記反応スキーム1の式(I−1)、または下記式(I−2)で表される新規の化合物であり、例えば下記式(2−1)および(2−2)で表される新規の化合物を含む。
Figure 2018140954
(式(I−2)中、nは1以上の整数(好ましくは1〜3の整数)を表す。)
Figure 2018140954
Figure 2018140954
式(2−1)で表される化合物は、無水コハク酸とジメチルスルホキソメチリド(例えば、トリメチルスルホキソニウムハライドから調製される)とを反応させて得られる。式(2−2)で表される化合物は、無水コハク酸とジメチルスルホメチリド(例えば、トリメチルスルホニウムハライドから調製される)とを反応させて得られる。
上記式(2−1)および(2−2)で表わされる化合物は、例えば5−アミノレブリン酸の製造等に用いることができる。
〔3〕イリド化合物からのハロメチル化合物等の製造
上記反応スキーム1の工程2および3に示されるように、上記の工程1により製造したイリド化合物から、さらに他の物質を製造してもよい。
(3−1)工程2:ハロメチル化合物の製造
工程2においては、イリド化合物をハロゲン化水素で処理して、イリド化合物の硫黄メチリドに由来する部分をハロゲン化メチル化し、ハロメチル化合物を製造する。なお、「硫黄メチリドに由来する部分」とは、例えば、硫黄メチリドとしてジメチルスルホキソメチリドを用いた場合、以下の式(2−α)で表される構造部分を指す。硫黄メチリドとしてジメチルスルホメチリドを用いた場合、以下の式(2−β)で表される構造部分を指す。
Figure 2018140954
イリド化合物をハロゲン化水素で処理する方法は、特に限定されない。例えば、溶媒存在下で、イリド化合物とハロゲン化水素とを共存させればよい。以下、この方法について、具体的に説明する。
ハロゲン化水素としては、フッ酸、フッ化水素、塩酸、塩化水素、臭化水素酸、臭化水素、ヨウ化水素等が挙げられる。ハロゲン化水素としては、コスト、および収率の観点から、臭化水素が好ましく用いられる。工程2において、イリド化合物に対するハロゲン化水素の量は、例えば0.1倍モル〜50倍モルであり、0.5倍モル〜20倍モルであることが好ましく、1倍モル〜10倍モルであることがより好ましい。
以下、工程2においてイリド化合物とハロゲン化水素とを反応させるのに用いる溶媒を、第二の溶媒と称する。第二の溶媒の種類は特に限定されない。例えば、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、およびジエチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。中でも、反応収率がよく、操作性に優れるとの理由から、第二の溶媒はテトラヒドロフランであることが好ましい。
イリド化合物の溶液に、ハロゲン化水素を加え、反応する。反応の温度は特に限定されるものではなく、例えば−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜100℃で行う。反応の温度が上記の範囲内であれば、反応収率がよいという効果を奏する。反応の時間は特に限定されるものではなく、例えば10分〜24時間、好ましくは30分〜10時間、反応を行う。反応の時間が上記の範囲内であれば、副反応が抑制でき、また操作性にも優れる。これにより、ハロメチル化合物を得ることができる。
(ハロメチル化合物)
製造されるハロメチル化合物の種類は、用いるイリド化合物、ハロゲン化水素等の種類に依存して決まる。例えば、上記反応スキーム1の式(II)で表される化合物を製造することができる。式(II)で表される化合物としては、例えば下記式(III)で表される化合物等がある。
Figure 2018140954
(式(III)中、Xはハロゲン原子を表す。)
好ましくは、ハロメチル化合物は、式(III)で表される化合物である。式(III)を出発物質とすれば、産業上有用な物質であるALAを製造することができる。
(3−2)工程3:ハロメチル化合物へのアミノ基の導入
工程3においては、ハロメチル化合物のハロゲンをアミノ基に置換し、アミノ酸を製造する。アミノ酸は塩の形態で得られてもよい。工程3の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、工程3−1〜3−3の操作を順に行うことができる。
以下、下記の反応スキーム2を参照しつつ、ハロメチル化合物のハロゲンをアミノ基に置換する方法を説明する。
Figure 2018140954
上記反応スキーム2において、nは1以上の整数(好ましくは1〜3の整数)を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキルを表す。
(3−2−1)工程3−1
工程3−1では、工程2で得られたハロメチル化合物をアルコール(ROH)(Rは炭素数1〜6のアルキル)で処理して、ハロメチル化合物のヒドロキシル基を、−OR(Rは炭素数1〜6のアルキル)へと置換する。具体的な反応方法は、特に限定されるものではないが、好ましい一例では、文献Moumne, R.; Lavielle, S.; Karoyan, P. J. Org. Chem. 2006, 71, 3332に記載の方法に従って反応を行う。
工程3−1で得られる化合物は、例えば上記反応スキーム2の式(IV)で表される化合物等である。式(IV)で表される化合物には、下記式(V)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2018140954
(式(V)において、Xはハロゲン原子を表す。Rは炭素数1〜6のアルキルを表す。)
(3−2−2)工程3−2
工程3−2では、工程3−1で得られた化合物に、フタルイミドを作用させて、工程3−1で得られた化合物のハロゲン原子を、フタルイミド基へと置換する。具体的な反応方法は、特に限定されるものではないが、好ましい一例では、文献Mitsunobu, O. Comp. Org. Syn. 1991, 6, 79-85. (Review)に記載の方法に従って反応を行う。
工程3−2で用いるフタルイミドの種類は特に限定されないが、例えばフタルイミドカリウム、フタルイミドナトリウム等を用いることができる。
工程3−2で得られる化合物は、例えば上記反応スキーム2の式(VI)で表される化合物である。式(VI)で表される化合物には、下記式(VII)で表される化合物が含まれる。
Figure 2018140954
(式(VIII)において、Rは炭素数1〜6のアルキルを表す。)
(3−2−3)工程3−3
工程3−3では、工程3−2で得られた化合物のフタルイミド基を、アミノ基へと変える。具体的な反応方法は、特に限定されるものではないが、好ましい一例では、文献Mitsunobu, O. Comp. Org. Syn. 1991, 6, 79-85. (Review)に記載の方法に従って反応を行う。
工程3−3で得られる化合物は、例えば上記反応スキーム2の式(VIII)で表される化合物である。式(VIII)で表される化合物には、下記式(IX)で表される5−アミノレブリン酸が含まれる。なお、アミノ酸は塩の形態(例えば、塩酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、硝酸塩等)で得られてもよい。
Figure 2018140954
(3−3)その他の方法
本実施形態においては、工程2によりハロメチル化合物を製造し、その後、工程3−1〜3−3の操作を順に行って、ハロメチル化合物にアミノ基を導入しているが、本実施形態に係るイリド化合物にアミノ基を導入する方法は、これに限定されるものではない。公知の方法を参照して、イリド化合物にアミノ基を導入すればよい。
〔4〕5−アミノレブリン酸の製造スキームの一例
本発明の一実施形態によれば、以下の反応スキーム3に従って、5−アミノレブリン酸を合成することができる。
Figure 2018140954
上記反応スキーム3において、nは1以上の整数(好ましくは1〜3の整数)を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキルを表す。TMSOBは、トリメチルスルホキソニウムブロマイドの略である。
工程1で、式(X)で表されるコハク酸に、硫黄メチリドを作用させる。反応スキーム3では、硫黄メチリドの原料としてトリメチルスルホキソニウムブロマイドを用いた例を示したが、用いられる硫黄メチリドは特に限定されない。工程2〜3−3は、上述した方法に従って行うことができる。
〔5〕イリド化合物
本発明はまた、下記式(3−1)および(3−2)で表される化合物も提供する。
Figure 2018140954
(式(3−1)中、Rは水素原子、アルカリ金属、および炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選ばれる一つである)
Figure 2018140954
(式(3−2)中、Rは水素原子、アルカリ金属、および炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選ばれる一つである)
式(3−1)および(3−2)で表される化合物は、RおよびRが水素の場合、上述した方法で製造することができる。R、Rがアルカリ金属である場合、式(3−1)および(3−2)で表される化合物は、上述した方法で製造したイリド化合物に、アルカリ金属を添加する方法によって製造することができる。R、Rが炭素数1〜6のアルキル基である場合、式(3−1)および(3−2)で表される化合物は、上述した方法で製造したイリド化合物を、アルコールを用いてエステル化する方法によって製造することができる。
式(3−1)および(3−2)で表される化合物は、例えば、アミノレブリン酸製造のための中間体等として用いることができる。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
本実施例は、下記の反応スキーム4に従って行った。本実施例では、本実施形態の一例として、無水コハク酸と、トリメチルスルホキソニウムブロマイドから調製されたジメチルスルホキソメチリドとから、式(2−1)で表される化合物、および式(XI)で表されるハロメチル化合物を製造した具体例について説明する。
Figure 2018140954
なお、t−BuONaは、ナトリウムtert‐ブトキシドの略である。
<式(2−1)で表される化合物の製造>
200mLの4口フラスコに攪拌機、および白金温度計をセットし、乾燥テトラヒドロフラン(以下、THFとも称する)40mL、ナトリウムtert‐ブトキシド(以下、t−BuONaとも称する)3.81g(39.7mM、2.1eq)を添加した。次いで、室温下、トリメチルスルホキソニウムブロマイド(以下、TMSOBとも称する)6.87g(39.7mM、2.1eq)を加え、乾燥THF42mLを追加した。フラスコ内の温度を50℃とし、3時間撹拌して、t−BuONaとTMSOBとを反応させ、ジメチルスルホキソメチリドの溶液を得た。また、乾燥したTHF50mLに無水コハク酸1.89gを溶解し、無水コハク酸の溶液(18.89mM、1eq)を得た。2℃まで冷却したジメチルスルホキソメチリドの溶液に、無水コハク酸の溶液を、30分かけて滴下し、滴下により得られた反応液を2℃で1時間、更に室温下で1時間撹拌した。反応液を遠心分離し、沈殿物をTHF、次いでトルエンで洗浄した。得られた沈殿物を、真空乾燥し、式(2−1)で表される化合物の白色固形物8.53gを得た。
<式(XI)で表されるハロメチル化合物の製造>
上記の白色固形物をTHF160mLに懸濁し、48%臭化水素4.70g(27.8mM)を加え、60℃で3時間加熱した。冷却後、反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮して褐色低粘度油状物3.03gを得た。この油状物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。シリカゲルクロマトグラフィーでは、展開溶媒として、はじめCHClを用い、その後、CHClとCHOHとを体積比10:1で混合した混合溶媒を用いた。式3で表される化合物を含む画分を、0.222g得た。H−NMRの積分比より、この画分中の式(XI)で表される化合物の含有率は、63%と推測した。この含有率から求めた、式(XI)で表される化合物の収量は、0.140g(0.718mM、収率3.8%)であった。
NMRの条件、および結果の詳細は、以下の通りであった。
H−NMR(400MHz、CDCl、δppm):
2.66(t−like、2H、J=6.7Hz)、2.94(t−like、2H、J=6.7Hz)、4.00(s、2H)
13C−NMR(400MHz、CDCl、δppm):
27.97、34.17、34.34、174.53、201.00
本発明は、医薬品、農薬、畜産水産飼料、機能性表示食品、健康食品、および化粧品等に利用できる5−アミノレブリン酸の製造に利用することができる。

Claims (9)

  1. 環状酸無水物と硫黄メチリドとを反応させることを特徴とするイリド化合物の製造方法。
  2. 上記環状酸無水物が式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載のイリド化合物の製造方法。
    Figure 2018140954
    (式(1)中、nは1〜3の整数である)
  3. 上記環状酸無水物が無水コハク酸であることを特徴とする請求項2に記載のイリド化合物の製造方法。
  4. 上記硫黄メチリドが、トリメチルスルホキソニウムハライドまたはトリメチルスルホニウムハライドと塩基との反応から生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のイリド化合物の製造方法。
  5. 上記硫黄メチリドが、トリメチルスルホキソニウムブロマイドまたはトリメチルスルホニウムブロマイドと塩基との反応から生成することを特徴とする請求項4に記載のイリド化合物の製造方法。
  6. 上記イリド化合物が、式(2−1)または式(2−2)で表されるイリド化合物であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のイリド化合物の製造方法。
    Figure 2018140954
    Figure 2018140954
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載のイリド化合物の製造方法により得られるイリド化合物の硫黄メチリドに由来する部分を、ハロゲン化水素でハロゲン化メチル化することを特徴とするハロメチル化合物の製造方法。
  8. 請求項7に記載のハロメチル化合物の製造方法により得られるハロメチル化合物のハロゲンを、アミノ基に置換することを特徴とするアミノ酸の製造方法。
  9. 式(3−1)または式(3−2)で表されることを特徴とするイリド化合物。
    Figure 2018140954
    (式(3−1)中、Rは水素原子、アルカリ金属、および炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選ばれる一つである)
    Figure 2018140954
    (式(3−2)中、Rは水素原子、アルカリ金属、および炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選ばれる一つである)
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