JP2018135419A - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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直哉 酒井
Naoya Sakai
直哉 酒井
愼一 北出
Shinichi Kitade
愼一 北出
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Abstract

【解決課題】流動性を高く維持した上で、射出成形や押出成形で作成した成形体の剛性が特に改善されたポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体、それを利用した自動車用部材を提供すること。【解決手段】分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)5〜50重量%と、条件(Y−i)〜(Y−ii)を満足するポリプロピレン系樹脂(Y)95〜50重量%とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物(但し、ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)との合計を100重量%とする)。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体に関し、詳しくは、成形性に
優れる上、剛性や耐衝撃性のバランスに優れ、このうち特に剛性が改良されたポリプロピ
レン系樹脂組成物およびその成形体に関する。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、工業部品分野における各種成形体、例えば、バンパー
、サイドモール、インストルメントパネルなどの自動車部品、テレビなどの家電機器製品
の部品などとして、その優れた成形性、機械的強度、環境問題適応性や経済性の特徴を活
かし、多く実用に供されてきている。なかでも自動車分野での成形体は、大型化、デザイ
ンの複雑化、薄肉化や無塗装化が進みつつあり、それに伴いポリプロピレン系樹脂組成物
およびその成形体には、高度な物性バランス(例えば、高い剛性と衝撃強度とのバランス
等)の発現が望まれている。
特に自動車分野においては、最近樹脂を外板材として使用することで軽量化を図り、も
って燃費を向上させることで、経済性をより向上させるための多くの努力が払われてきて
いる。これまでは、外板材として剛性や耐衝撃性に優れるポリアミド系樹脂が使用される
ケースが多かったが、ポリアミド系樹脂の使用は必ずしも経済性は高くなく、しかも成形
の自由度が低く、意匠性に乏しいなどの欠点を有しており、これらの点で大きく優位性を
持つポリオレフィン系樹脂、なかでも剛性の観点からポリプロピレン系樹脂の適用が望ま
れてきた。しかしながら、従来のポリプロピレン系樹脂では、剛性が必ずしも満足できる
レベルに無く、より一層の剛性向上が望まれていた。
ポリプロピレンは半結晶性高分子であるから、樹脂の剛性向上に最も寄与するものは、
結晶化度である。結晶化度は、ポリプロピレンの立体規則性に強く支配されることから、
これまでに多くの技術開発の努力が、ポリプロピレンの立体規則性向上のために払われて
きた。その歴史的経緯の概略は「新版ポリプロピレンハンドブック 基礎から用途開発ま
で、ネロ・パスクイーニ編著、日刊工業新聞社、2012年」第2章に詳しく述べられて
いる。一方で、射出成形や押出成形などを経て作成された成形体の剛性率、弾性率につい
ては、必ずしも結晶性だけに支配されるものではない。「新版ポリプロピレンハンドブッ
ク」の3章には、射出成形によって、スキン・コアモルフォロジーが形成されることが示
されている。これは、成形体表面近傍の配向した結晶の層(剪断配向層)と、中心付近の
球晶層からなることが通常である。また、同書には、R. Phillipsらの報告(
Polym. Eng. Sci. 34巻、 p.1731 (1994))からの引
用として、曲げ弾性率(FM)などの力学物性が、結晶化度のみならず、結晶配向度にも
依存することが示されている。
射出成形片における配向層とコア層のモルフォロジーやそれぞれの層の物性については
、「Polypropylene,structure,blends and com
posits, Volume 1,Structure and Morpholog
y,J.Karger−Kocsis ed., Chapman & Hall,19
95」の第6章に良くまとめられており、ポリプロピレンの分子量増加によって配向層厚
みが増すこと、配向層がシシ−ケバブモルフォロジーを取り、弾性率が高いことなどが示
されている。後にSomaniら(Macromolecules 33,9385(2
000))やSekiら(Macromolecules 35,2583(2002)
)によって明らかにされるように、配向層の形成には高分子量成分の存在が重要である。
従って、射出成形体や押出成形など、剪断流動を伴って形成される成形体で、弾性率の
高い配向構造を多く形成させるには高分子量であることが優位となるが、そうすると成形
性・流動性に劣ることとなり、特に前記のように昨今の成形体の薄肉化・軽量化の要請に
こたえることが出来ない。
これらを両立させるための方策の一つとして、低分子量成分と高分子量成分を同時に存
在させ、すなわち分子量分布を広くするという方法があり、例えば特許文献1には、a)
MFRが0.001〜5g/10分を有するプロピレンホモポリマ−、b)エチレン含量
5〜80w/w%を有するプロピレン/エチレンコポリマ−、c)MFRが1〜104g
/10分を有するプロピレンホモポリマ−を含有し、プロピレンホモポリマ−c)のMF
Rのプロピレンホモポリマ−a)のMFRに対する比が10:1〜10:1の範囲内に
あることを特徴とする、異なったプロピレンポリマ−のブレンドが、良好な流動性を有し
、かつ良好な機械特性、特に高い剛性を有することが記載されている。
また、特許文献2では、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A1P
)が0.5dl/g以上、2.0dl/g未満であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.
0未満であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロ
ピレン重合体を20〜80重量%、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η
]A2P)が2.0dl/g以上、7.0dl/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn
)が3.0以上であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上で
あるプロピレン重合体を5〜55重量%、エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜
80重量%である、エチレンとプロピレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとの共
重合体10〜50重量%からなる樹脂組成物が靭性と流動性のバランスに優れると記載さ
れている。
しかしながら、これら各種の改良手法がなされたプロピレン系樹脂組成物においても、
剛性や流動性のバランスが、充分に改良され向上されているとは未だいえず、これら物性
の更なる向上がなお待たれている状況であるというべきである。
特開平7−149974号公報 特開2013−79375号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、流動性を高く維持した上で、射出成形
や押出成形で作成した成形体の剛性が特に改善されたポリプロピレン系樹脂組成物および
その成形体、それを利用した自動車用部材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、分岐構造を有するポ
リプロピレン系樹脂と、特定の高い流動性、すなわち高いMFRを有するポリプロピレン
系樹脂との組み合わせからなるポリプロピレン系樹脂組成物が、高い流動性を持ち且つ機
械物性が良好、特に高い剛性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)5〜50重量%と、下記条件(Y−
i)〜(Y−ii)を満足するポリプロピレン系樹脂(Y)95〜50重量%とを含有す
るポリプロピレン系樹脂組成物(但し、ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系
樹脂(Y)との合計を100重量%とする)。
条件(Y−i)
ポリプロピレン系樹脂(Y)が、プロピレン単独重合体(Y−A)、プロピレン−α−
オレフィンランダム共重合体(Y−B)及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合
体(Y−C)からなる群から選ばれた少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である。
条件(Y−ii)
ポリプロピレン系樹脂(Y)のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg
荷重)が50〜500g/10分の範囲である。
[2]ポリプロピレン系樹脂(Y)がプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y
−C)である[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[3]プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、以下の条件(YC−
i)を満足する[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(YC−i)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン(共
)重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が80〜500
g/10分である。
[4]プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、以下の条件(YC−
ii)を満足する[2]又は[3]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(YC−ii)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン−α
−オレフィンランダム共重合体におけるα−オレフィンの含有量が、30〜80重量%で
ある(但し、α−オレフィンの含有量は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体
全体のモノマー分率を100重量%とした場合のα−オレフィンの割合である)。
[5]プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、以下の条件(YC−
iii)を満足する[2]〜[4]の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(YC−iii)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン−α
−オレフィンブロック共重合体(Y−C)に対するプロピレン−α−オレフィンランダム
共重合体の割合が5〜50重量%である(但し、プロピレン−α−オレフィンブロック共
重合体全体を100重量%とする)。
[6]分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)が以下の条件(X−i)を満足する
[1]〜[5]の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(X−i)
ポリプロピレン樹脂(X)の絶対分子量Mabsが100万における分岐指数gが0
.30以上1.00未満である。
[7]分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)が、以下の条件(X−ii)〜(X
−vi)を満足する[6]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(X−ii)
ポリプロピレン系樹脂(X)のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg
荷重)が0.1〜30g/10分の範囲である。
条件(X−iii)
ポリプロピレン系樹脂(X)の25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)が、ポリプロ
ピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満である。
条件(X−iv)
ポリプロピレン系樹脂(X)の13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率
が、95%以上である。
条件(X−v)
ポリプロピレン樹脂系(X)のGPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0以上10.
0以下であり、且つMz/Mwが2.5以上10.0以下である。
条件(X−vi)
ポリプロピレン系樹脂(X)の溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−
0.9×log(MFR)+0.7 またはMT≧15 のいずれかを満たす。
[8]ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)との合計100重量部
に対し、エチレン−α−オレフィンエラストマー(Z)1〜50重量部を更に含有する[
1]〜[7]の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[9]ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)との合計100重量部
に対し、下記条件(M−i)を満足するフィラー(M)1〜50重量部を更に含有する[
1]〜[8]の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(M−i)
フィラー(M)は無機フィラー及び有機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1
種のフィラーである。
[10][1]〜[9]の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を材料とし、
下記条件(1)を満足する成形体。
条件(1)
成型体が、射出成形体又は押し出し成形体の何れかである。
[11][10]に記載の成形体を用いた自動車用部材。
を提供するものである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、高い流動性を有し、且つ、機械物性が良好で
あり、特に高い剛性を有する。
CFC−FT−IRの概念図 実施例の射出成型片の結晶配向構造をX線小角散乱の実験の概要を示す。 実施例1、比較例1、参考例1で得られた試験片についてのQratioのプロットを示す。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、
本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載内容
に限定されるものではない。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X
)5〜50重量%と、230℃で測定されたメルトフローレートが50g/10分以上の
ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ポリプロピレンとプロピレン−エチレン
ランダム共重合体を逐次重合することで得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体
からなる群から選ばれた少なくとも一種のポリプロピレン樹脂(Y)95〜50重量%を
含有する(但し、ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)との合計を
100重量%とする)。
ここでいうプロピレン−エチレンブロック共重合体とは、第1工程で結晶性ポリプロピ
レンを第2工程でプロピレン−エチレン共重合体を製造する逐次重合法によって製造され
た、ポリプロピレンとプロピレン−エチレン共重合体のリアクターブレンドからなる樹脂
組成物である。
このうち、分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)の含有量の好ましい範囲は5
〜50重量%である。ポリプロピレン系樹脂(X)の含有量がこの範囲にあると、剛性の
改良効果が顕著であり、流動性が低下しない。より好ましい範囲としては、分岐構造を有
するポリプロピレン系樹脂(X)の含有量は7〜40重量%、さらに好ましくは10〜3
0重量%である。これに伴い、ポリプロピレン系樹脂(Y)の含有量の好ましい範囲は9
3〜60重量%、さらに好ましくは、90〜70重量%である。
1.ポリプロピレン系樹脂(X)
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂(X)は、分岐構造を有するポリプロピレンであ
る。
分岐構造を有していることの定義等に関しては後述する。ポリプロピレン系樹脂(X)
は、ホモポリプロピレンあるいは、エチレンやその他のα−オレフィンを数重量%の範囲
で含むランダムポリプロピレンであってもよいが、ポリオレフィン系樹脂組成物の剛性を
向上させるという観点から、分岐構造を有するホモポリプロピレンであることが望ましい
。なお、上記α−オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1−ヘキセン、1−オク
テン等、通常炭素数が10程度までの直鎖状あるいは分岐状のα−オレフィンが挙げられ
るが、通常エチレン、1−ブテンが好ましく用いられる。また、ランダムポリプロピレン
の場合、一般にコモノマーとしてのα−オレフィンの含量(コモノマー量)は、そのポリ
マーのモノマー全量を100重量%とした場合に、5重量%程度が上限である。
分岐構造を有していることは種々の分析方法によって確認することが出来るが、一つの
方法として、高分子の溶液中での固有粘度を利用する手法がある。詳細を以下に述べる。
分岐指数g’は、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有
する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]linに
よって与えられ、長鎖分岐構造が存在すると、1よりも小さな値をとる。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characte
rization−4」(J.V.Dawkins ed. Applied Scie
nce Publishers,1983)に、記載されており、当業者にとって公知の
指標である。
g’は、例えば、下記に記すような光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用す
ることによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。
本発明の1つの好ましい態様において、分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)
は、以下の条件(X−i)を満足する。
条件(X−i)
ポリプロピレン樹脂(X)の絶対分子量Mabsが100万における分岐指数gが0
.30以上1.00未満である。
1−1)条件(X−i):分岐指数g
本発明に係る長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)は、分岐が存在すると
同時に、ポリプロピレン系樹脂組成物全体の流動性を高く保つ必要が有り、その結果g’
には好ましい上限値と下限値が存在し、光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが10
0万の時に、g’が0.30以上1.00未満であることが好ましく、より好ましくは0
.55以上0.98以下、更に好ましくは0.75以上0.96以下、最も好ましくは0
.78以上0.95以下である。
g’がこの範囲にあると、分岐の量が十分あり、剛性改良の効果が得られ、流動性が良
好である。
具体的なg’の算出方法は、以下の通りである。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置
として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いる。また、光散乱
検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technol
ogy社のDAWN−Eを用いる。検出器は、MALLS、RI、Viscometer
の順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(BASFジャパン社
製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結し
て用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1
mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびV
iscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS
付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の
文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterizat
ion−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science
Publishers,1983.Chapter1.)
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘
度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)
との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン
(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標)グレード名:FY6)を用いる。線状ポ
リマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Ho
uwink−Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や
高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
このほか、本発明のポリプロピレン系樹脂(X)に求められる付加的な性質について以
下に述べる。
本発明の1つの好ましい態様において、分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)
は、条件(X−i)に加えて、以下の条件(X−ii)〜(X−vi)を満足する。
条件(X−ii)
ポリプロピレン系樹脂(X)のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg
荷重)が0.1〜30g/10分の範囲である。
条件(X−iii)
ポリプロピレン系樹脂(X)の25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)が、ポリプロ
ピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満である。
条件(X−iv)
ポリプロピレン系樹脂(X)の13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率
が、95%以上である。
条件(X−v)
ポリプロピレン樹脂系(X)のGPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0以上10.
0以下であり、且つMz/Mwが2.5以上10.0以下である。
条件(X−vi)
ポリプロピレン系樹脂(X)の溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−
0.9×log(MFR)+0.7 またはMT≧15 のいずれかを満たす。
1−2)条件(X−ii):メルトフローレート(MFR)
ポリプロピレン系樹脂(X)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30.0g
/10分の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜20.0g/10分、
最も好ましくは0.5〜10.0g/10分である。メルトフローレートがこの範囲にあ
ると、流動性が高く、剛性改良の効果が高い。
なお、MFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチッ
クのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)
の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したもので
、単位はg/10分である。
1−3)条件(X−iii):25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)
ポリプロピレン樹脂(X)は、製品となったときにベタツキや剛性低下の原因となる低
結晶性成分が少ないことが好ましい。この低結晶性成分は、25℃キシレン可溶成分量(
CXS)によって評価され、それが成分(X)全量に対して、5.0重量%未満であるこ
とが好ましく、さらに好ましくは3.0重量%以下であり、特に好ましくは1.0重量%
以下あり、最も好ましくは0.5重量%以下である。下限については、特に制限されない
が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上である。CXS測定法の詳
細は、以下の通りである。
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130
℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾
別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し室温キシ
レン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]
をCXSと定義する。
1−4)条件(X−iv):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率
ポリプロピレン系樹脂(X)は、立体規則性が高いことが好ましい。立体規則性の高さ
は、13C−NMRによって評価することができ、13C−NMRによって得られるプロ
ピレン単位3連鎖のmm分率が95.0%以上の立体規則性を有するものが好ましい。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プ
ロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合であり、そ
の上限は100%である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構
造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど、高度に制御され
ていることを意味する。mm分率がこの値以上であると、製品の弾性率が高いなど機械的
物性は良好である。
従って、mm分率は、95.0%以上が好ましく、より好ましくは96.0%以上であ
り、さらに好ましくは97.0%以上である。
なお、13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率の測定法の詳細は、以下
の通りである。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2、−テトラ
クロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップ
リング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン
の3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカル
シフトはこれを基準とする。
フリップ角:90度
パルス間隔:10秒
共鳴周波数:100MHz以上
積算回数:10,000回以上
観測域:−20ppmから179ppm
データポイント数:32768
mm分率の解析は、前記の条件により測定された13C−NMRスペクトルを用いて行う

スペクトルの帰属は、Macromolecules,(1975年)8卷,687頁
やPolymer, 30巻 1350頁(1989年)を参考に行う。
なお、mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009−275207号公報の段落
[0053]〜[0065]に詳細に記載されており、本願発明においても、この方法に
従って行うものとする。
1−5)条件(X−v):GPCによる分子量分布Mw/Mn
ポリプロピレン系樹脂(X)は、分子量分布が比較的広いことが必要であり、ゲルパー
ミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる分子量分布Mw/Mn(こ
こで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が3.0以上10.0以下であるこ
とが好ましい。長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)の分子量分布Mw/M
nは、そのより好ましい範囲としては3.5〜8.0、更に好ましくは4.1〜6.0の
範囲である。
さらに、分子量分布の広さをより顕著に表すパラメータとして、Mz/Mw(ここで、
MzはZ平均分子量である)が2.5以上10.0以下であることが好ましい。Mz/M
wのより好ましい範囲は2.8〜8.0、更に好ましくは3.0〜6.0の範囲である。
分子量分布の広いものほど成形加工性が向上するが、Mw/MnおよびMz/Mwがこ
の範囲にあるものは、成形加工性に特に優れるものである。
なお、Mn、Mw、Mzの定義は「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人
、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算可能である。
GPCの具体的な測定手法は、以下の通りである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/m
Lの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリス
チレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー
(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A50
00、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に
溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似
して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
1−6)条件(X−vi):溶融張力(MT)(単位:g)
ポリプロピレン系樹脂(X)は、以下の条件(1)を満たすことが好ましい。
・条件(1)
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7
又は
MT≧15
のうちの少なくとも1つを満たす。
ここでMTは、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて、キャピラリー:
直径2.0mm、長さ40mm、シリンダー径:9.55mm、シリンダー押出速度:2
0mm/分、引き取り速度:4.0m/分、温度:230℃の条件で、測定したときの溶
融張力を表し、単位はグラムである。ただし、成分(X)のMTが極めて高い場合には、
引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には
、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。また、
MFRの測定条件、単位は前述の通りである。
この規定は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)が発泡成形のために充
分な溶融張力を有するための指標であり、一般に、MTは、MFRと相関を有しているこ
とから、MFRとの関係式によって記述している。
このように、MTをMFRとの関係式で規定する手法は、当業者にとって通常の手法で
あって、例えば、特開2003−25425号公報には、高溶融張力を有するポリプロピ
レンの定義として、以下の関係式が提案されている。
log(MS)>−0.61×log(MFR)+0.82 (230℃)
(ここでMSは、MTと同義である。)
また、特開2003−64193号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定
義として、以下の関係式が提案されている。
11.32×MFR−0.7854≦MT (230℃)
さらに、特開2003−94504号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの
定義として、以下の関係式が提案されている。
MT≧7.52×MFR−0.576
(MTは190℃、MFRは230℃で測定した値である。)
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)が、上記条件(1)を満たせば、充
分に溶融張力の高い樹脂といえ、剛性向上の効果が顕著である。また、以下の条件(1)
’を満たすことがより好ましく、条件(1)”を満たすことが更に好ましい。
・条件(1)’
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.9
又は
MT≧15
のうちの少なくとも1つを満たす。
・条件(1)”
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+1.1
又は
MT≧15
のうちの少なくとも1つを満たす。
MTの上限値については、これを特に設ける必要は無いが、MTが40gを超えるよう
な場合には、上記測定手法では引き取り速度が著しく遅くなり、測定が困難となる。この
ような場合は、樹脂の延展性も悪化しているものと考えられるため、好ましくは40g以
下、さらに好ましくは35g以下、もっとも好ましくは30g以下である。
これらの特性をすべて有するポリプロピレン系樹脂(X)の好ましい製造方法として、
特開2013−199643号公報の[0042]〜[0099]に記載される手法が挙げられる。
2.ポリプロピレン系樹脂(Y)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(Y)は、下記条件(Y−i)〜(Y−ii
)を満足する。
条件(Y−i)
ポリプロピレン系樹脂(Y)が、プロピレン単独重合体(Y−A)、プロピレン−α−
オレフィンランダム共重合体(Y−B)及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合
体(Y−C)からなる群から選ばれた少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である。
条件(Y−ii)
ポリプロピレン系樹脂(Y)のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg
荷重)が50〜500g/10分の範囲である。
2−1)条件(Y−i):
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(Y)は、プロピレン単独重合体(Y−A)
、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(Y−B)及びプロピレン−α−オレフ
ィンブロック共重合体(Y−C)からなる群から選ばれた少なくとも一種のポリプロピレ
ン系樹脂である。
ここで、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)(Y−A)とは、モノマーとし
てプロピレンのみを用いた重合体であり、本発明においては、ポリプロピレン系樹脂組成
物全体の剛性を高く保つ必要が有ることから、その立体規則性mmは95.0%以上が好
ましく、より好ましくは96.0%以上であり、さらに好ましくは97.0%以上である
。なお、mmの求め方は既に記載した通りである。
また、ポリプロピレン系樹脂(Y)はランダムポリプロピレンであっても構わない。ラ
ンダムポリプロピレンとは、プロピレンに、エチレンやその他のα−オレフィンを数重量
%の範囲で含むプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(Y−B)である。上記α
−オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等、通常炭
素数が10程度までの直鎖状あるいは分岐状のα-オレフィンが挙げられるが、通常エチ
レン、1−ブテンが好ましく用いられる。また、プロピレン−α−オレフィンランダム共
重合体の場合、一般にコモノマーとしてのα−オレフィンの含量(コモノマー量)は、そ
のポリマーのモノマー全量を100重量%とした場合に、5重量%程度が上限である。本
発明のポリプロピレン系樹脂組成物の剛性を高く保つ必要から、好ましくは4重量%、さ
らに好ましくは3重量%がコモノマー量の上限である。
また、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)は、プロピレン(共)
重合体とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であることが好ま
しい。
プロピレン(共)重合体とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を逐次重合す
ることで得られるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体とは、従来公知の逐次重
合によって製造された、プロピレン(共)重合体およびプロピレン−α−オレフィン共重
合体からなるポリプロピレン系樹脂であり、プロピレン系ブロック共重合体とも称される
。ここで、プロピレン(共)重合体とは、ホモポリプロピレンであるか、あるいは本発明
の主旨を損なわない範囲で、通常数%の少量のα−オレフィンを共重合したランダムポリ
プロピレンの意である。一方、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体とは、α−
オレフィンを通常10重量%(プロピレン−α−オレフィンランダム共重合全体のモノマ
ーを100重量%とする)以上の量で含んだ、軟質の共重合体を意味する。
ここで用いるプロピレン系ブロック共重合体という語は、当業者によって慣用的に使用
されている、逐次重合法によって多段階の重合を行って得られたポリプロピレン系樹脂組
成物の通称であって、各段階で重合された成分同士が化学結合によって結合された、いわ
ゆる(リアル)ブロック共重合体あるいはグラフト共重合体とは異なるものである。多段
階重合それぞれの工程で製造された成分は、化学的には結合していないため、一般に、そ
れぞれの成分に結晶性や分子量、または溶媒への溶解度等の差を利用して、結晶性分別や
分子量分別、あるいは溶解度分別等の手法によって、各工程で製造された成分それぞれを
、分離することが可能である。
また、この従来公知の逐次重合法によるブロック共重合体には、前記ポリプロピレン系
樹脂(X)のような化学結合による長鎖分岐構造は、分析可能な精度では存在が認められ
ない。
2−2)条件(Y−ii):メルトフローレート(MFR)
ポリプロピレン系樹脂(Y)のMFRの好ましい範囲は、50g/10分以上であり、
さらに好ましくは60g/10分以上である。ポリプロピレン系樹脂(Y)のMFRがこ
の範囲にあると、ポリプロピレン系樹脂組成物全体の流動性が高く好ましい。上限は、ポ
リプロピレン系樹脂組成物全体の耐衝撃性の観点から、500g/10分以下、好ましく
は400g/10分以下、さらに好ましくは300g/10分以下である。
なお、MFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチッ
クのメルトマスフローレート(MFR)およびメルトボリュームフローレート(MVR)
の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したもので
、単位はg/10分である。
ポリプロピレン系樹脂(Y)の製造方法
ポリプロピレン系樹脂(Y)を製造するための触媒は、任意のものを用いることができ
るが、通常、チーグラー・ナッタ触媒を用いたものが用いられる。チーグラー・ナッタ触
媒を用いる場合、具体的な触媒の製造法は、特に限定されるものではないが、一例として
特開2007−254671号公報に開示された触媒を例示することができる。
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の製造に際しては、プロピレン(共)重
合体とプロピレン−α−オレフィン共重合体の2つの重合体成分を製造する必要がある。
相対的に分子量が高くMFRが低いプロピレン−α−オレフィン共重合体をプロピレン(
共)重合体中にきれいに分散させてプロピレン系ブロック共重合体本来の性能を発現させ
るという観点から、当該両成分を、逐次重合により製造することが必要である。
具体的には、第1工程において、プロピレン(共)重合体を重合した後で、第2工程に
おいて、プロピレン−α−オレフィン共重合体を重合することが望ましい。製造順を逆に
することも可能ではあるが、プロピレン−エチレン共重合体は、結晶性が低い重合体であ
るため、第1工程で製造すると重合槽内部で付着したり、移送配管を閉塞したりするなど
の製造トラブルを起こす可能性が高く、あまり好ましくない。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般
的には生産性の観点から、連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより単一の重合反応器を
用いてプロピレン(共)重合体とプロピレン−α−オレフィン共重合体を個別に重合する
ことが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の重合反応器を並列に接続して
用いてもよい。
連続法の場合には、プロピレン(共)重合体とプロピレン−α−オレフィン共重合体を
個別に重合する必要から2個以上の重合反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要が
ある。プロピレン(共)重合体を製造する第1工程に対応する重合反応器とプロピレン−
α−オレフィン共重合体を製造する第2工程に対応する重合反応器については、直列の関
係になくてはならないが、第1工程、第2工程のそれぞれについて複数の重合反応器を直
列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
ポリプロピレン系樹脂(Y)の重合プロセスは、任意のものを用いることができる。
反応相については、液体の媒体を用いる手法であっても良いし、気体の媒体を用いる手
法であっても良い。具体的な例として、スラリー法、バルク法、気相法を挙げることがで
きる。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが
、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。なお、多
槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場
合がある。また、バッチ法の場合に、第1工程をバルク法で行い、第2工程を気相法で行
うこともある。この様に反応相は、特に限定されるものではないが、スラリー法は、ヘキ
サンやヘプタンといった有機溶媒を用いるために付属設備が多く、一般的に生産コストが
高くなるという問題がある。従って、バルク法か気相法を用いる方が一層望ましい。
また、バルク法と気相法については、それぞれ種々のプロセスが提案されている。攪拌
(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において本発明は、特段プロセス種を
限定することはない。
ポリプロピレン系樹脂(Y)としては、剛性と耐衝撃性という力学特性のバランスを高
める観点から、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)を用いることが
好ましい。
また、本発明の1つの好ましい側面においては、プロピレン−α−オレフィンブロック
共重合体(Y−C)は、以下の条件(YC−i)を満足する。
条件(YC−i)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン(共
)重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が80〜500
g/10分である。
2−3)条件(YC−i)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)は、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であることが更に好まし
い。
さらにこの場合、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の第1工程で製造する
プロピレン(共)重合体のMFRが80g/10分以上であると、組成物全体の流動性を
上げることができ、好ましい。より好ましくは、100g/10分以上、さらに好ましく
は120g/10分以上である。MFRが500g/10分を超える場合には、耐衝撃性
が悪化することがあり、好ましくない。
この場合プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の第1工程で製造するプロピレ
ン(共)重合体のMFRは、逐次重合の第一段階の重合が終了した時点で、試料の一部を
抜き出して分析することで得られるし、他の手法としては、後述するクロス分別法とFT
−IR法の組み合わせの手法により得られる、140℃溶出成分の重量平均分子量と第1
工程プロピレン(共)重合体のMFRとの実験的な相関式を作製しておき、それを検量線
として140℃溶出成分の重量平均分子量から算出することも可能である。
また、本発明の1つの好ましい側面においては、プロピレン−α−オレフィンブロック
共重合体(Y−C)は、以下の条件(YC−ii)を満足する。
条件(YC−ii)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン−α
−オレフィンランダム共重合体におけるα−オレフィンの含有量が、30〜80重量%で
ある(但し、α−オレフィンの含有量は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体
全体のモノマー分率を100重量%とした場合のα−オレフィンの割合である)。
2-4)条件(YC−ii)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)は、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であることが更に好まし
い。
さらにこの場合、剛性と耐衝撃性という力学特性のバランスの観点から、プロピレン−
α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)の、プロピレン−α−オレフィンランダム共
重合体におけるα−オレフィン含量が、30〜80重量%であることが好ましい。ただし
、ここでのα−オレフィン含量は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体全体の
モノマー分率を100重量%とした場合の値とする。より好ましい範囲は、33〜75重
量%、さらに好ましい範囲は、35〜70重量%である。α−オレフィン含量がこの範囲
にあると、耐衝撃性、特に低温衝撃性が向上するので好ましい。
また、本発明の1つの好ましい側面においては、プロピレン−α−オレフィンブロック
共重合体(Y−C)は、以下の条件(YC−iii)を満足する。
条件(YC−iii)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン−α
−オレフィンブロック共重合体(Y−C)に対するプロピレン−α−オレフィンランダム
共重合体の割合が5〜50重量%である(但し、プロピレン−α−オレフィンブロック共
重合体全体を100重量%とする)。
2-5)条件(YC−iii)
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)は、プロピレン(共)重合体
とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であることが更に好まし
い。
さらにこの場合、上記条件(YC−ii)と同様の理由から、プロピレン−α−オレフ
ィンブロック共重合体(Y−C)の、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の重
量分率が、5〜50重量%であることが好ましい。ただし、ここではプロピレン−α−オ
レフィンブロック共重合体全体を100重量%とする。より好ましい範囲は、7〜45重
量%、さらに好ましい範囲は、10〜35重量%である。
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の、プロピレン−α−オレフィンランダ
ム共重合体のエチレン含量、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の、プロピレ
ン−α−オレフィンランダム共重合体の重量分率の分析手法について、以下に述べる。こ
こで、α−オレフィンがエチレンであるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体に
ついて述べる。この説明中では、第一工程で製造されるプロピレン(共)重合体を成分(
Y−1)、第2工程で製造されるプロピレン−エチレン共重合体を成分(Y−2)と呼称
する。
本発明においてはプロピレン−エチレンブロック共重合体の各種のインデックスは、以
下に記載のクロス分別法とFT−IR法の組み合わせの手法により決定することができる

(1)使用する分析装置
(i)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、
代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出
した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定
の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは、光路長1
mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段のGPCカラムは、昭和電工製AD806MSを3本直列に接続して使用す
る。
(2)CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクショ
ンに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で
溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)
の溶出割合(単位 重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W
100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−I
R分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1mL/分
(3)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を
行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
CFC−FT−IRの概念図を図1に示した。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm−1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
(4)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945
cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は、各溶出成分の溶出
量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成
しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。具体的な手法は、上に記載した
ものと同じである。
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、GP
C−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比
を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が
既知となっているエチレン−プロピレン−ラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用し
て、予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
(5)プロピレン−エチレン共重合体含有量
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体(Y)のプロピレン−エチレン共重合体
(Y−2)(以下、EPと記載)含有量は、下記式(I)で定義され、以下のような手順
で求められる。
EP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100+W1
40×A140/B140 (I)
W40、W100、W140は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位 重量%
)であり、A40、A100、A140は、W40、W100、W140に対応する各フ
ラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位 重量%)であり、B40、B
100、B140は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量(単位 重量%)
である。
A40、A100、A140、B40、B100、B140の求め方は後述する。
(I)式の意味は、以下の通りである。(I)式右辺の第一項は、フラクション1(4
0℃に可溶な部分)に含まれるEPの量を算出する項である。フラクション1がEPのみ
を含み、PPを含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由
来のEP含有量に寄与するが、フラクション1には、EP由来の成分のほかに少量のPP
由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため
、その部分を補正する必要がある。そこで、W40にA40/B40を乗ずることにより
、フラクション1のうち、EP成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均
エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるEPのエチレ
ン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即
ち75重量%)はEP由来、残りの1/4はPP由来ということになる。このように右辺
第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からEPの
寄与を算出することを意味する。右辺第二項以後も同様であり、各々のフラクションにつ
いて、EPの寄与を算出して加え合わせたものがEP含有量となる。
(i)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜3に対応する平均エ
チレン含有量をそれぞれA40、A100、A140とする(単位はいずれも重量%であ
る)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
(ii)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含
有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2および3については、ゴム
部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができない
ので、本発明では、B100=B140=100と定義する。B40、B100、B14
0は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求め
ることは実質的には不可能である。その理由は、フラクションに混在するPPとEPを完
全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結
果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有
量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。ま
た、B100、B140は、エチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフ
ラクションに含まれるEPの量がフラクション1に含まれるEPの量に比べて相対的に少
ないことの2点の理由により、ともに100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆
ど誤差を生じない。そこでB100=B140=100として、解析を行うこととしてい
る。
(iii)以下の式に従い、EP含有量を求める。
EP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100+W14
0×A140/100 (II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たない
EP含有量(重量%)を示し、第二項と第三項の和であるW100×A100/100+
W140×A140/100は、結晶性を持つEP含有量(重量%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1〜3の平均エチレン
含有量A40、A100、A140は、次のようにして求める。
結晶分布の違いによって分別されたフラクション1をCFC分析装置の一部を構成する
GPCカラムで分子量分布を測定した曲線、および、当該GPCカラムの後ろに接続され
たFT−IRによって、分子量分布曲線に対応して測定されるエチレン含有量の分布曲線
を求める。微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。
また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と
各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和が、平均エチレン含有量A40となる。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は、次の通りである。
本発明のCFC分析においては、40℃とは、結晶性を持たないポリマー(例えば、E
Pの大部分、もしくはプロピレン重合体成分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分お
よびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。
また、100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば、E
P中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結
晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。さらに、140℃とは、
100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高
い成分、およびEP中の極端に分子量が高くかつエチレン結晶性を有する成分)のみを溶
出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十
分な温度である。なお、W140に含まれるEP成分は、極めて少量であり、実質的には
無視できる。
EP中のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100+W140
×A140)/[EP] (III)
但し、[EP]は、先に求めたEP含有量(重量%)である。
EPのうち、結晶性を持たない部分のエチレン含有量(E)(重量%)は、ゴム部分の
溶出がほとんど40℃以下で完了することから、B40の値をもって近似する。
しかしながら、上述のクロス分別法とFT−IRの組み合わせによる分析方法では、(
Y−2)のエチレン含量が15wt%を下回り、(Y−1)との結晶性に大きな差がなく
なり、温度による分別が充分に行うことができないような場合では、正確な分析が難しく
なる。このような場合は、逐次重合の途中で(Y−1)成分を抜き取っておき、その分子
量(コモノマーを共重合する場合には、コモノマー含量も測定する)を測定し、さらに、
マテリアルバランスによる計算によって、(Y−1)と(Y−2)成分の量比を決定し、
さらに、逐次重合終了時の成分(Y)全体のコモノマー含量を測定することで、以下の重
量の単純な加成則を使用することで、(Y−2)成分のコモノマー含量を求めることが好
ましい。コモノマーとして、エチレンを使用する場合、以下の式によって(Y−2)のエ
チレン含量を求めるものとする。
(Y−2)成分のエチレン含量=[(Y)全体のエチレン含量−{(Y−1)成分のエチ
レン含量×(Y−1)成分の重量分率/100}]/{(Y−2)成分の重量分率/10
0}
(Y−1)成分と(Y−2)成分の量比を求める他の手法については、(Y−1)成分と
(Y−2)成分の平均分子量がある程度異なるものを製造する場合には、逐次重合終了後
の(Y)全体のGPC測定を行って、得られる多峰性の分子量分布曲線を市販のデータ解
析ソフトウェア等を用いてピーク分離し、その重量比を計算することで、求めることも可
能である。
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の、プロピレン−α−オレフィンランダ
ム共重合体のα−オレフィンがエチレン以外である場合にもやはり、クロス分別法とFT
−IRの組み合わせによる分析方法が適用できないので、その場合も上記と同じく、逐次
重合の途中で(Y−1)成分を抜き取っておき、その分子量(コモノマーを共重合する場
合には、コモノマー含量も公知のFT−IR法やNMR法を用いて測定する)を測定し、
さらに、マテリアルバランスによる計算によって、(Y−1)と(Y−2)成分の量比を
決定し、さらに、逐次重合終了時の成分(Y)全体のコモノマー含量を測定することで、
単純な加成則を使用することで、(Y−2)成分のコモノマー含量を求めることが好まし
い。
付加的成分
ポリプロピレン系樹脂組成物としての剛性、耐衝撃性等の力学特性をさらに向上させる
ため、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、エチレン−α−オレフィンエラストマ
ーを、無機または有機フィラーを適宜加えることが出来る。
すなわち、本発明の1つの好ましい別の態様は、ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプ
ロピレン系樹脂(Y)との合計100重量部に対し、エチレン−α−オレフィンエラスト
マー(Z)1〜50重量部を更に含有するポリプロピレン系樹脂組成物である。
エチレン−α−オレフィンエラストマー(Z)を添加する範囲としては、(X)及び(
Y)からなるポリプロピレン系樹脂組成物全体を100重量部として、エチレン−α−オ
レフィンエラストマーを1〜50重量部が、剛性、耐衝撃性のバランスの観点から好まし
い。好ましい範囲としては、エチレン−α−オレフィンエラストマーが、3〜45重量部
、さらに好ましくは5〜40重量部である。
ここで、エチレン−α−オレフィンエラストマーとは、例えば、エチレン・プロピレン
共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、
エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラ
ストマー(EOR)などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・
プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重
合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン・ジ
エン三元共重合体エラストマーなどを挙げられることができる。
ここで、エチレン−α−オレフィンエラストマーの好ましい密度範囲としては0.85
〜0.91g/cmより好ましくは0.86〜0.90g/cm、MFR範囲は0.
05〜100g/10分、より好ましくは1.0〜30g/10分である。ここで、MF
RはJIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準
拠して測定した値とする。
また、本発明の1つの好ましい別の態様は、ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピ
レン系樹脂(Y)との合計100重量部に対し、下記条件(M−i)を満足するフィラー
(M)1〜50重量部を更に含有する請求項1〜8の何れか1項に記載のポリプロピレン
系樹脂組成物である。
条件(M−i)
フィラー(M)は無機フィラー及び有機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1
種のフィラーである。
フィラー(M)を添加する範囲としては、(X)及び(Y)からなるポリプロピレン系
樹脂組成物全体を100重量部として、フィラー(M)を1〜50重量部を加えたものが
、剛性、耐衝撃性のバランスの観点から好ましい。好ましい範囲としては、フィラー(M
)が、3〜45重量部、さらに好ましくは5〜40重量部である。
2−6)条件(M−i)
フィラー(M)は無機フィラー及び有機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1
種のフィラーである。
また、無機フィラーとは、シリカ、ケイ藻土、バリウムフェライト、酸化ベリリウム、
軽石、軽石バルンなどの酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸
マグネシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソ
ナイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシ
ウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルー
ン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイ
トなどのケイ酸塩、硫化モリブデン、ボロン繊維、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホ
ウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊
維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維などを挙げる
ことができる。
一方、有機フィラーとしては、例えば、モミ殻などの殻繊維、木粉、木綿、ジュート、
紙細片、セロハン片、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエス
テル繊維、各種有機繊維、熱硬化性樹脂粉末などを挙げることができる。
中でも、強度、寸法安定性や経済性などの向上効果度合が大きいなどの点から、ガラス
繊維、タルク及びポリエステル繊維などの各種有機繊維(含有樹脂ペレット、マスター樹
脂ペレット含む)が好ましい。
このうち、特に好ましいフィラーとしては無機フィラーが挙げられ、特に剛性向上の観
点からタルクが好適に用いられる。
添加剤等
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には更なる付加的な成分を添加することができる
。具体的には、顔料などの着色剤、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾ
ール系などの紫外線吸収剤、ソルビトール系などの造核剤、フェノール系、リン系などの
酸化防止剤、非イオン系などの帯電防止剤、無機化合物などの中和剤、チアゾール系など
の抗菌・防黴剤、ハロゲン化合物などの難燃剤、可塑剤、有機金属塩系などの分散剤、脂
肪酸アミド系などの滑剤、窒素化合物などの金属不活性剤、非イオン系などの界面活性剤
や、前記以外のポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂やポリ
エステル樹脂などの熱可塑性樹脂などを挙げることができる。
これらの任意添加成分は、2種以上を併用してもよく、組成物に添加してもよいし、組
成物を構成する各々の成分に添加されていてもよく、夫々の成分においても2種以上併用
することもできる。
理論に拘束されることを意図するものではないが、本発明のポリプロピレン系樹脂組成
物は、成形時の流動により、結晶配向が誘起され剛性が向上するものであると、発明者ら
は考えている。結晶配向によって剛性が向上する現象が従来より報告されていることは既
に述べた通りである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、流動での結晶配向が主に分岐構造をもつポ
リプロピレン系樹脂によって発現されることに特徴がある。背景技術の項に記載したよう
に、流動による結晶配向は、分子量すなわち樹脂中の高分子成分の緩和時間と密接な関係
がある。しかるに、分岐構造を有する高分子では、分子量見合いの緩和時間が、それを持
たない高分子と劇的に異なり、長い緩和時間を有することが、例えば「“化学者のための
レオロジー”小野木重治著、化学同人、1982年、第8章」に記載されており、当業者
にとって公知である。即ち、本発明では、分岐を有するポリプロピレンによる長い緩和時
間を利用し、成形中の流動で組成物中に結晶配向を、通常の線状の分子以上の効果によっ
て形成せしめ、その結果として剛性を向上させるという機構が重要であると考えている。
従って、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の好ましい成形法としては、射出成形やフ
ィルム・シート成形に代表される押出成形など、成形時にある程度の流動の履歴がかかる
成形法が好ましく用いられる。なかでも、特に射出成形は、一般に、200℃近辺まで昇
温したポリプロピレン系樹脂を、数秒から数十秒の短時間の間に、型中に流し入れて冷却
・固化する成形法であるから、上記観点からして特に好ましい成形法であると言える。
本発明のもう1つの態様は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を材料とし、下記条
件(1)を満足する成形体である。
条件(1)
成型体が、射出成形体又は押し出し成形体の何れかである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形して得られる成形体は、シート、フィルム
、またはこれらを二次加工してなる食品容器等の生活産業資材や、自動車用部材、家電製
品の筐体等の工業用資材など、従来ポリプロピレン系樹脂が使用されてきた分野に全て好
適に使用することが可能であるが、剛性・耐衝撃性のバランス等に優れることから、特に
自動車用部材として好適に用いることが出来る。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によっ
て限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、ポリプロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組
成物の諸物性は、下記の評価方法に従って、測定、評価した。
(1)メルトフローレート(MFR):
JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠
して測定した。単位はg/10分である。
(2)溶融張力(MT):
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合
があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における
張力をMTとする。単位はグラムである。
(3)分子量分布Mw/MnおよびMz/Mn:
前述した方法に従って、GPC測定により求めた。
(4)mm分率:
日本電子社製、GSX−400、FT−NMRを用い、前述したとおり、特開平200
9−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に記載の方法で測定した。
単位は%である。
(5)分岐指数g’
前述したように、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱
検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCによって求めた。
(6)プロピレン−エチレンブロック共重合体中の(Y−1)、(Y−2)の比率、(Y
−2)中のエチレン含量:
明細書中に記載のクロス分別法とFT−IR法の組み合わせの手法により決定した。
(7)25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)
明細書中に記載の手法によって求めた。
力学物性試験
試験片は、成形機(東芝機械社製EC20型射出成形機)で、物性評価用平板状試験片用
金型(10×80×4t(mm)、2個取り)を用いて、成形条件(成形温度200℃、
金型温度40℃、射出圧力50MPa、射出時間8秒、冷却時間10秒、型開距離250
mm)にて作成した。
(8)曲げ弾性率、曲げ強度:
曲げ弾性率をJIS K7171に準拠して測定した。試験温度は23℃であった。
試験片は前記物性評価用試験片を用いた。
(9)耐衝撃性:
シャルピー衝撃強度(ノッチ付)をJIS K7111に準拠して測定した。試験温度
は23℃、−30℃であった。試験片は前記物性評価用試験片を用いた。
(10)荷重たわみ温度(HDT):
JIS K7152−1に準拠した試験片を用い、JIS K7191−1,2に準拠
して、荷重0.46MPaにて測定した。
(11)ロックウェル硬度
JIS K−7202−1982に準拠し、ロックウェル硬度を測定した。
(12)光沢
各サンプルを、以下の条件で試験片とした後、下記光沢計を用いて光沢を測定した。単
位は(%)である。
・試験片=平板状(60×80×2t(mm))。
・成形機=東芝機械社製EC20型射出成形機。
・成形条件=成形温度220℃、金型温度40℃、射出圧力50MPa、射出時間5秒、
冷却時間20秒。
・光沢計=日本電色工業社製VG−2000型
・入射角60°の条件で測定(n数=5)。
使用樹脂等
ポリプロピレン系樹脂(X)
ポリプロピレン系樹脂(X)は、特開2013−199643号公報の実施例に記載の
方法に準拠して製造したものを用いた。これを(X1)、(X2)とする。分析の結果、
表1に示す値を得た。
(X3)として、公知のチーグラー・ナッタ触媒を用いて重合された線状のホモポリプ
ロピレン(日本ポリプロ社製 ノバテックポリプロピレン)を用いた。分析値は、表1に
記載する。
Figure 2018135419

ポリプロピレン系樹脂(Y)
ポリプロピレン系樹脂(Y)は、公知のチーグラー・ナッタ触媒を用いて重合された線
状のホモポリプロピレン(Y1)と、プロピレン−エチレンブロック共重合体(Y2)を
用いた(日本ポリプロ社製 ノバテックポリプロピレン)。分析の結果、表2に示す値を
得た。
Figure 2018135419

エチレン−α−オレフィンエラストマー(Z)
エチレン−α−オレフィンエラストマーとして、三井化学社製A4050Sを使用した
。密度は0.86、MFRは230℃において6g/10分である。
フィラー(M)
無機充填剤として、日本タルク製MW5000SMAを使用した。
[参考例1〜6]
表3に記載の重量分率に従い、各材料をドライブレンドした後に、二軸混練機(テクノ
ベル社製、KZW−15−MG型)にて造粒して樹脂組成物ペレットを製造した。混練条
件は温度200℃、スクリュー回転数400rpm、吐出量は3kg/hrであった。そ
のペレットを用いて上述の方法で射出成形を行い、物性試験片を作製し、物性評価結果を
表3に示す。
Figure 2018135419

[実施例1〜13]
表4に記載の重量分率に従い、各材料をドライブレンドした後に、二軸混練機(テクノ
ベル社製、KZW−15−MG型)にて造粒して樹脂組成物ペレットを製造した。混練条
件は温度200℃、スクリュー回転数400rpm、吐出量は3kg/hrであった。そ
のペレットを用いて上述の方法で射出成形を行い、物性試験片を作製し、物性評価結果を
表4に示す。また、ポリプロピレン系樹脂(X)を含まない表3の参考例1〜6を基準と
して、基準となる参考例を表に示し、弾性率上昇率、曲げ強度上昇率、HDT上昇率を計
算した。
Figure 2018135419




弾性率上昇率=100×(実施例の曲げ弾性率/参考例の曲げ弾性率)−100
強度上昇率=100×(実施例の曲げ強度/参考例の曲げ強度)−100
HDT上昇率=100×(実施例の曲げ強度/参考例のHDT)−100
[比較例1〜12]
表5に記載の重量分率に従い、各材料をドライブレンドした後に、二軸混練機にて造粒
して樹脂組成物ペレットを製造した。そのペレットを用いて上述の方法で射出成形を行い
、物性試験片を作製し、物性評価結果を表4に示す。また、ポリプロピレン系樹脂(X)
を含まない表3の参考例1〜6を基準として、基準となる参考例を表に示し、弾性率上昇
率、曲げ強度上昇率、HDT上昇率を計算した。
Figure 2018135419






弾性率上昇率=100×(比較例の曲げ弾性率/参考例の曲げ弾性率)−100
強度上昇率=100×(比較例の曲げ強度/参考例の曲げ強度)−100
HDT上昇率=100×(比較例の曲げ強度/参考例のHDT)−100
以上、実施例と比較例を比較して考察すると、実施例1と比較例1では、ポリプロピレ
ン系樹脂(X)として分岐を有するポリプロピレン系樹脂を用いた場合に、分岐の無い場
合ポリプロピレンを用いた場合に比べて、曲げ弾性率、曲げ強度、HDTの上昇率が高く
、またロックウェル硬度等で明らかに優位性が見られており、その他の物性においても同
等以上の性能を保っていることは明らかである。同様に、実施例2と比較例2では、ポリ
プロピレン系樹脂(X)の配合量を増やしているが、同様に分岐を有するポリプロピレン
系樹脂の優位性が確認できる。実施例3、4とそれぞれ比較例3、4の比較においてはエ
ラストマーを添加した場合でもポリプロピレン系樹脂(X)として分岐を有するポリプロ
ピレン系樹脂を用いた場合に、分岐の無い場合ポリプロピレンを用いた場合に比べて、曲
げ弾性率、曲げ強度、HDTの上昇率が高い。実施例5、6とそれぞれ比較例5、6の比
較においてはフィラーであるタルクを添加した場合でもポリプロピレン系樹脂(X)とし
て分岐を有するポリプロピレン系樹脂を用いた場合に、分岐の無い場合ポリプロピレンを
用いた場合に比べて、曲げ弾性率、曲げ強度、HDTの上昇率が高い。実施例7〜12お
よび比較例7〜12については、ポリプロピレン(Y)を変更しており、実施例1〜6と
それぞれ比較例1〜6の対比でみられたのと同様にポリプロピレン系樹脂(X)として分
岐を有するポリプロピレン系樹脂を用いた場合に、分岐の無い場合ポリプロピレンを用い
た場合に比べて、曲げ弾性率、曲げ強度、HDTの上昇率が高い。また、実施例13では
MFRの高いポリプロピレン系樹脂(X)を用いているが、ここでもポリプロピレン系樹
脂(X)が分岐を有しており、曲げ弾性率、曲げ強度、HDTの上昇率が高い。
射出成型片の結晶配向構造をX線小角散乱によって検討した。実験は高輝度放射光施設
SPring−8のビームラインBL03XUにて実施した。課題番号は2016A72
18および2016B7268である。
上記成形の項で作成した10×80×4(mm)試験片では、長手方向に樹脂が流動す
るのでこれをMD方向とし、直交する10mm長さの方向をTD方向、厚み(4mm)の
方向をND方向とする。長手方向ほぼ中央部から、ゼーゲミクロトームを用いてMD−N
D断面を切り出した。この切片の厚みは約300μmである。
波長0.1nm、ビームサイズを29×29μmに絞ったX線を、上記切片MD−ND
面に垂直に入射し、カメラ長約1.7mで小角散乱像を二次元検出器によって記録した。
X線は、試料の端面(つまり射出成型片の表面)から、反対側の端面までスキャンした。
スキャンの間隔は25μmとした。本実験の概要を図2に示す。
小角散乱は散乱ベクトルで少なくとも1nm−1までのデータを採取する。得られた生
データからは、バックグラウンドの強度は透過率を考慮して減算し、以後の解析に用いた
。今回の実験系では、ビームストッパのため、測定散乱ベクトルの最低値は0.06nm
−1であった。ポリプロピレン樹脂のX線小角散乱領域には、結晶ラメラの長周期に由来
するピークが観測されるが、結晶に異方性がある場合、この長周期由来の散乱にも異方性
が生じる。そこで、二次元検出器上で、試料MDと平行方向を中心にした±45度と、N
D方向を中心とした±45度のそれぞれ扇形平均をとって、散乱強度と散乱ベクトルの一
次元化データを計算する。このようにして作成した一次元化データから、散乱ベクトル0
.1〜1.0nm−1の範囲で散乱不変量(Q;(強度)×(散乱ベクトルの二乗)の上
記範囲の積分値)を求め、MD方向のQのND方向のQに対する比(Qratio)を求
めた。即ち、射出流動方向MD方向に結晶配向が発達する場合、Qratioは大きくな
る。
実施例1、比較例1、参考例1で得られた試験片について、これをプロットしたものが
図3である。なお、図3横軸は試料ND方向の中心を0とし、試料厚みをD、ND中心か
らの距離をxとして規格化して表示したもので、1が試料表面である。
図3に示すように、本発明の規定を満足する実施例1のQratioは、参考例1と比
べて明らかに結晶異方性が大きく、特に試料表面に近いところで、その違いは顕著である
。かつ、実施例1では結晶異方性の及ぶ領域が比較例よりはるかに広く、試料の厚みのほ
ぼ中央部近傍まで広く存在していることが明らかである。比較例1は、低MFRつまり高
分子量の線状(分岐指数が1)のポリプロピレンを用いることで、試験片表面近傍では、
参考例1に対して異方性の大きいことが認められるが、その効果は実施例1と比べると極
めて小さく、剛性向上の効果は限定的である。
本発明の組成物の高い剛性向上の効果は、この実験によってその理由が結晶配向性に起
因しているという事が裏付けられており、特に実施例1と比較例1との対比により、結晶
配向性の効果が、線状の分子鎖の場合に比べて、分岐を有する高分子鎖の場合に特に顕著
に表れていることが明白である。

Claims (11)

  1. 分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)5〜50重量%と、下記条件(Y−i)
    〜(Y−ii)を満足するポリプロピレン系樹脂(Y)95〜50重量%とを含有するポ
    リプロピレン系樹脂組成物(但し、ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂
    (Y)との合計を100重量%とする)。
    条件(Y−i)
    ポリプロピレン系樹脂(Y)が、プロピレン単独重合体(Y−A)、プロピレン−α−
    オレフィンランダム共重合体(Y−B)及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合
    体(Y−C)からなる群から選ばれた少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である。
    条件(Y−ii)
    ポリプロピレン系樹脂(Y)のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg
    荷重)が50〜500g/10分の範囲である。
  2. ポリプロピレン系樹脂(Y)がプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C
    )である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、以下の条件(YC−i)
    を満足する請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(YC−i)
    プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
    とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン(共
    )重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が80〜500
    g/10分である。
  4. プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、以下の条件(YC−ii
    )を満足する請求項2又は3に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(YC−ii)
    プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
    とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン−α
    −オレフィンランダム共重合体におけるα−オレフィンの含有量が、30〜80重量%で
    ある(但し、α−オレフィンの含有量は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体
    全体のモノマー分率を100重量%とした場合のα−オレフィンの割合である)。
  5. プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、以下の条件(YC−ii
    i)を満足する請求項2〜4の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(YC−iii)
    プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(Y−C)が、プロピレン(共)重合体
    とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体との逐次重合体であり、プロピレン−α
    −オレフィンブロック共重合体(Y−C)に対するプロピレン−α−オレフィンランダム
    共重合体の割合が5〜50重量%である(但し、プロピレン−α−オレフィンブロック共
    重合体全体を100重量%とする)。
  6. 分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)が以下の条件(X−i)を満足する請求
    項1〜5の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(X−i)
    ポリプロピレン樹脂(X)の絶対分子量Mabsが100万における分岐指数gが0
    .30以上1.00未満である。
  7. 分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)が、以下の条件(X−ii)〜(X−v
    i)を満足する請求項6に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(X−ii)
    ポリプロピレン系樹脂(X)のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg
    荷重)が0.1〜30g/10分の範囲である。
    条件(X−iii)
    ポリプロピレン系樹脂(X)の25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)が、ポリプロ
    ピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満である。
    条件(X−iv)
    ポリプロピレン系樹脂(X)の13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率
    が、95%以上である。
    条件(X−v)
    ポリプロピレン樹脂系(X)のGPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0以上10.
    0以下であり、且つMz/Mwが2.5以上10.0以下である。
    条件(X−vi)
    ポリプロピレン系樹脂(X)の溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−
    0.9×log(MFR)+0.7 またはMT≧15 のいずれかを満たす。
  8. ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)との合計100重量部に対
    し、エチレン−α−オレフィンエラストマー(Z)1〜50重量部を更に含有する請求項
    1〜7の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  9. ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)との合計100重量部に対
    し、下記条件(M−i)を満足するフィラー(M)1〜50重量部を更に含有する請求項
    1〜8の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(M−i)
    フィラー(M)は無機フィラー及び有機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1
    種のフィラーである。
  10. 請求項1〜9の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を材料とし、下記条件
    (1)を満足する成形体。
    条件(1)
    成型体が、射出成形体又は押し出し成形体の何れかである。
  11. 請求項10に記載の成形体を用いた自動車用部材。
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