以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る防錆水性塗料組成物は、少なくとも、樹脂分としてのエポキシ樹脂及びアクリル樹脂と、アクリル樹脂用の架橋剤と、溶媒として、主成分の水及び特定の蒸発速度の有機溶剤とを含有するものである。
本実施の形態の防錆水性塗料組成物では、樹脂分としてエポキシ樹脂とアクリル樹脂が併用される。
エポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂等が使用される。また、エポキシ樹脂に酸成分を付加・縮合させてエステル結合したエポキシエステル樹脂であってもよい。このときの酸成分としては、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和脂肪酸類等を挙げることができる。更に、ウレタン変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性等の変性エポキシ樹脂を用いることもできる。
エポキシ樹脂の配合には、VOCの排出量の低減等の観点から有機溶剤が使用されることなく(有機溶剤で希釈されることなく)、水に溶解または分散(乳化等)させた水性エポキシ樹脂(エポキシ樹脂水溶液、エポキシ樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂ディスパージョン)が使用される。特に、水素イオン指数がpH7〜pH10の範囲内である弱アルカリ性(樹脂濃度が約1%〜99%の樹脂希釈液(エマルジョン、ディスパージョン、水溶液)の測定において)のものが好ましく、樹脂分の水への分散性が高く、成膜性や均一性が良好で緻密な塗膜であって、良好な防錆性等の塗膜性能を発揮する塗膜を形成できる。
なお、「エマルジョン(emulsion,エマルションともいう。)」とは、乳濁液ともいい、液体中に液体粒子がコロイド粒子あるいはそれより粗大な粒子として乳状をなすもの(分散系)が、本来の意味であるが(長倉三郎他編「岩波理化学辞典(第5版)」152頁,1998年2月20日株式会社岩波書店発行)、本明細書においては、より広い意味で一般的に用いられている「液体中に固体または液体の粒子が分散しているもの」として、「エマルジョン」という用語を用いるものとする。
また、上記水性樹脂の水性とは、水溶性または水分散性を意味する。
エポキシ樹脂は、その数平均分子量(Mn)が2万〜7万の範囲内であるのが好ましい。エポキシ樹脂の分子量が小さすぎると、乾燥性が低下したり、防錆性が低下したりする。一方、分子量が大きすぎると水性塗料組成物の油分への親和性が低下して付着性に影響を与える。エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)が2万〜7万の範囲内であれば、乾燥性に優れ、かつ、防錆性の高い塗膜を形成できる。
更に、エポキシ樹脂は、その粒子径が中位径(平均粒子径)10nm〜100nmの範囲内であるのが好ましい。当該範囲内であれば、樹脂分の水への分散性が高く、成膜性や均一性が良好で、良好な防錆性等の塗膜性能を有する塗膜を形成できる。
なお、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」の本文及び解説の用語の定義によれば、「中位径」とは、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数(または質量)が、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径(直径)、即ち、オーバサイズ50%の粒径であり、通常、メディアン径または50%粒子径といいD50と表わされる。定義的には、中位径と平均粒子径で粒子群のサイズを表現されるが、ここでは、商品説明の表示、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径の値である。
そして、この「レーザ回折・散乱法によって測定した中位径」は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算重量部が50%となる粒子径(D50)をいう。
但し、本実施の形態で使用した上記数値は、厳格なものでなく、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。また、この誤差の観点から見ると、正規分布に近いと、カタログ表示等の平均粒子径(含有粒子の平均値)との差も僅少であり、中位径≒平均粒子径であって中位径=平均粒子径と見做すことができ、一般的にカタログ表示等では累積の50%粒子径を平均粒子径として呼ばれる場合もある。
エポキシ樹脂の配合量は、防錆水性塗料組成物中の樹脂分総量の10質量%〜82質量%の範囲内、つまり、防錆水性塗料組成物に含まれる樹脂分(固形分)の全体のうち、エポキシ樹脂(樹脂固形分)の含有量は10質量%〜82質量%の範囲内であるのが好ましい。より好ましくは、65質量%〜75質量%の範囲内である。また、塗膜成分(乾燥後の塗膜を形成する成分)中においてエポキシ樹脂の含有量は30質量%〜60質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは30質量%〜50質量%の範囲内である。
ここで、エポキシ樹脂の配合量が少なすぎると、鋼板等の金属表面に対する密着性が低下し、高い防錆効果を得ることができなくなる。一方で、エポキシ樹脂の配合量が多くて相対的にアクリル樹脂の配合量が少なくなると、基材に対する塗膜の付着性が低下する。エポキシ樹脂の配合量が上記範囲内であれば、全樹脂分に対するエポキシ樹脂の含有量がより適切な範囲となり、油分が残存、付着した金属基材(鋼板)に対する付着性を確保しつつ、後述するJISK5600 7−1(1999)の塩水噴霧試験(SST)での480時間後の片錆幅が3mm未満である高い防錆性を確保できる。
また、アクリル樹脂は、広くアクリル樹脂及びメタクリル樹脂を含むものであって、(メタ)アクリル酸〔アクリル酸またはメタアクリル酸を意味する。以下、同様。〕及び(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体、または、これら(メタ)アクリル酸等と共重合可能な単量体との共重合体を意味する。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸等と共重合可能な単量体としては、エチレン性不飽和基を有する単量体が好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルフェノール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルアルコール、アリルアルコール、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。このときの共重合法としては、乳化重合が一般的であるが、これに限定されるものではない。また、酸の場合は、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等であってもよい。更に、上記(メタ)アクリル酸等の重合体及び共重合体をウレタン樹脂で変性したウレタン変性(メタ)アクリル酸等の重合体等やエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等で変性したエポキシ変性、フェノール変性、メラミン変性(メタ)アクリル酸等の重合体等でもよい。
アクリル樹脂についても、VOC排出量の低減等の観点から、樹脂を水に分散させたアクリル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂ディスパージョン、アクリル樹脂水溶液等の水性アクリル樹脂が使用される。特に、水素イオン指数がpH7〜pH9の範囲内である弱アルカリ性のもの(樹脂濃度が約1%〜99%の樹脂希釈液(エマルジョン、ディスパージョン、水溶液)の測定)が好ましく、樹脂分の水への分散性が高く、成膜性や均一性が良好で緻密性な塗膜を形成でき、また、油分が残存、付着した金属基材に対する付着性向上効果を高くできる。
アクリル樹脂は、その数平均分子量(Mn)が1万〜2.5万の範囲内であるのが好ましい。アクリル樹脂の分子量が小さすぎると、乾燥性や、油分が残存、付着した金属基材に対する塗膜の付着性や、塗膜の防錆性が低下する。一方で、分子量が大きすぎると、水への分散性が低下して、塗膜の成膜性や均一性が低下し、塗膜の付着性に影響を与えたり、塗膜の緻密性が低下したりして防錆性等の塗膜性能に影響を与える。アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)が1万〜2.5万の範囲内であれば、乾燥性に優れ、かつ、塗膜の成膜性や均一性も良好で、油分が残存、付着した金属基材に対する塗膜の付着性にも優れ、防錆性の高い優れた塗膜性能を発揮することができる。
更に、アクリル樹脂は、その粒子径が中位径(平均粒子径)50nm〜150nmの範囲内であるのが好ましい。当該範囲内であれば、樹脂分の水への分散性が高く、塗膜の成膜性や均一性が良好で、油分が残存、付着した金属基材に対する塗膜の付着性及び良好な防錆性等の塗膜性能を発揮できる。
アクリル樹脂の配合量は、防錆水性塗料組成物中の樹脂分総量の18質量%〜40質量%の範囲内、つまり、防錆水性塗料組成物に含まれる樹脂分(固形分)の全体のうち、アクリル樹脂(樹脂固形分)の含有量は18質量%〜40質量%の範囲内であるのが好ましい。より好ましくは、25質量%〜35質量%の範囲内である。また、塗膜成分(乾燥後の塗膜を形成する成分)中においてアクリル樹脂の含有量は7質量%〜25質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは10質量%〜20質量%の範囲内である。
ここで、アクリル樹脂の含有量が少なすぎると、樹脂分の親油性の向上による実用的な塗膜の付着性向上効果が得られない一方で、アクリル樹脂の含有量が多くて相対的にエポキシ樹脂の含有量が少なくなると、塗膜の金属面への密着性が低下し、防錆性が低下する。アクリル樹脂の配合量が上記範囲内であれば、全樹脂分に対するアクリル樹脂の含有量がより適切な範囲となり、油分が残存、付着した金属基材に対する付着性及び防錆性が両立する。
なお、本発明を実施する場合には、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂以外の塗膜成分となる樹脂分を含有することも可能であるが、エポキシ樹脂は金属表面への密着性や防食性に優れ、アクリル樹脂は親油性及び耐候性に優れることから、樹脂分としてはエポキシ樹脂及びアクリル樹脂が主成分とされる。樹脂分は、塗布対象である基材や塗膜の機能、用途等に応じてその配合量が設定されるが、塗膜中において樹脂分の含有量が少なすぎると塗膜の付着性及び防錆性が低下することから、例えば、防錆水性塗料組成物中において、樹脂分は、固形分換算で10質量%〜70質量%の範囲内、より好ましくは、30質量%〜60質量%の範囲内で配合され、塗膜成分中において樹脂分の含有量が30〜60%の範囲内、より好ましくは、35質量%〜50質量%の範囲内とされる。
そして、このような樹脂分としてのアクリル樹脂とエポキシ樹脂の配合比率は、アクリル樹脂/エポキシ樹脂=0.23/1〜0.6/1の範囲内が好ましい。
ここで、エポキシ樹脂の割合が多くアクリル樹脂の割合が少な過ぎるものでは、塗布液の親油性の向上効果が小さく、油分が残存、付着した金属基材に対しての付着性を向上させることができず、一方で、エポキシ樹脂の割合が少なくアクリル樹脂の割合が多くなり過ぎると、高い防錆効果を得ることができない。
アクリル樹脂とエポキシ樹脂の配合比率が、アクリル樹脂/エポキシ樹脂=0.23/1〜0.6/1の範囲内であれば、防錆性及び油分が残存、付着している金属基材に対する付着性が共に優れる。より好ましくはアクリル樹脂/エポキシ樹脂=0.3/1〜0.5/1の範囲内である。
本実施の形態の防錆水性塗料組成物に配合されるアクリル樹脂用の架橋剤としては、アクリル樹脂と反応、例えば、アクリル樹脂のカルボキシル基と反応して架橋構造を形成するものであればよく、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン樹脂、アジリジン化合物、イソシアネート化合物等が使用されるが、反応性、取扱性、安全性を考慮するとカルボジイミド系架橋剤やオキサゾリン系架橋剤が好ましく、特に、VOCの排出量の低減等の観点から水溶性またはエマルジョンタイプの水性(水系)架橋剤の使用が望ましい。なお、カルボジイミド系架橋剤では、次の化学式(一般式)[1]で示すように、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基がアクリル樹脂のカルボキシル基と反応し、N−アシルウレア結合の架橋構造が形成される。また、オキサゾリン系架橋剤では、次の化学式(一般式)[2]で示すように、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基がアクリル樹脂のカルボキシル基と反応し、アミドエステル結合の架橋構造が形成される。
ここで、アクリル樹脂用架橋剤の配合量は、アクリル樹脂100重量部(固形分)に対して、10重量部〜60重量部の範囲内が好ましい。架橋剤の配合量が少なすぎると、アクリル樹脂に対する架橋剤の反応量が少なく、形成される塗膜の防錆性が低下する。一方で、架橋剤の配合量が多すぎると、常温下でもアクリル樹脂との反応が進行して反応量が多くなり、塗布液に大幅な増粘が見られ、防錆水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下する。アクリル樹脂100重量部(固形分)に対して、アクリル樹脂用架橋剤が10重量部〜60重量部の範囲内であれば、塗膜の防錆性を確保しつつ、防錆水性塗料組成物において常温の保管条件で実用的な貯蔵安定性が得られる。より好ましくは、アクリル樹脂100重量部(固形分)に対して、10重量部〜40重量部の範囲内であれば、塗膜の防錆性を確保しつつ、防錆水性塗料組成物において常温の保管条件で増粘が少なく貯蔵安定性が良好となる。更に好ましくは、アクリル樹脂100重量部(固形分)に対して、アクリル樹脂用架橋剤が10重量部〜20重量部の範囲内であれば、塗膜の防錆性を確保しつつ、防錆水性塗料組成物において常温のみならず40℃〜45℃の保管条件でも増粘が少なく貯蔵安定性がより高いものとなる。
更に、本実施の形態の防錆水性塗料組成物では、特定の蒸発速度の有機溶剤が含有される。
詳細には、基準となる酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときに、相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤と、相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤とが使用される。
なお、遅揮発性有機溶剤及び速揮発性有機溶剤の蒸発速度は、温度23℃、相対湿度50%における酢酸n−ブチルの蒸発速度(100)に対する各試料(遅揮発性有機溶剤、速揮発性有機溶剤)の蒸発速度の割合で表したものである。なお、蒸発速度の測定方法は、例えば、ASTM D 3539−87標準試験法で規定されているように、温度が25℃及び相対湿度が55%RHのときの酢酸n−ブチルの単位時間当たりの重量減少量に対する相対速度として求められる。有機溶剤の蒸発速度は商品説明の表示等に記載された値を採用してもよく、蒸発速度の数値が大きいほど蒸発しやすい。
本発明者らの鋭意実験研究の結果、有機溶剤として、基準となる酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤と、相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤とを併用することで、乾燥性を低下せることなく、また、揮発性有機化合物(VOC)の量を低く抑えながら、油分が残存、付着した金属基材(鋼板)に塗布した際の塗膜の付着性を向上できることが判明した。
この理由については必ずしも明らかではないが、水と比較して有機溶剤では、表面張力や溶解パラメータSP値が鋼板に付着した油分に近いことで、有機溶剤の使用により、表面張力やSP値を制御して油分への親和性を高めることができるが、有機溶剤の蒸発速度が速すぎると、油分との十分な親和性を確保できず、一方で、有機溶剤の蒸発速度が遅いものでは、乾燥性が低下する。また、常温乾燥で十分に溶剤が蒸発せずに残存すると塗料成分の鋼板への付着性を阻害する可能性が考えられる。本実施の形態に係る特定の蒸発速度の遅揮発性有機溶剤及び速揮発性有機溶剤の併用によれば、揮発性有機化合物(VOC)の量を低く抑えながら、油分との十分な親和性、溶解性を確保しつつも、乾燥性も良くて付着性を阻害する有機溶剤の残存も少なく、油分が残存、付着した鋼板に塗布したときでも塗膜の付着性が高く塗膜剥がれが生じ難いものとなる。
そして、これらの有機溶剤によれば、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂との相溶性、親和性が良いことから、塗料成分の分散性や、組成物の均一性、流動特性、塗布性を高め、樹脂分の緻密性や金属基材との接触性を高めることができ、塗膜の高い防錆性及び付着性を獲得できる。エポキシ樹脂とアクリル樹脂が互いに相溶性に乏しいものであっても、これらの有機溶剤の使用により、分散性を高めることができる。
ここで、酢酸ブチルの蒸発速度100に対する相対蒸発速度が10未満のものでは、乾燥性が低下し、また、蒸発速度が210を超えるものでは、有機溶剤の揮発が速いことから防錆水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下する。
そして、遅揮発性有機溶剤の相対蒸発速度が60を超えると、それよりも蒸発速度が速い速揮発性有機溶剤と併用しても、少ない使用量(例えば、組成物全体の25質量%以下)、即ち、少ないVOC排出量で油分が残存、付着した金属基材に塗布した際の塗膜の付着性を向上させることができず、また、速揮発性有機溶剤の相対蒸発速度が60未満では、それよりも蒸発速度が遅い遅揮発性有機溶剤との併用で、溶剤系塗料に匹敵する乾燥性を確保することはできない。
酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤と、相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤を併用することで、溶剤系塗料に匹敵する乾燥性を確保しつつ、少ない使用量、即ち、少ないVOC排出量で、油分が残存、付着した金属基材に塗布した際の塗膜の付着性を向上できる。より好ましくは、遅揮発性有機溶剤の相対蒸発速度が10以上、50以下の範囲内、速揮発性有機溶剤の相対蒸発速度が70以上、100以下の範囲内である。
更に好ましくは、速揮発性有機溶剤の蒸発速度が、遅揮発性有機溶剤の蒸発速度の6倍〜20倍、より好ましくは、7〜10倍である。当該範囲内であれば、乾燥性と付着性向上のバランスが良い。
また、相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤と、相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤との配合比は、好ましくは、遅揮発性有機溶剤:速揮発性有機溶剤=0.23:1〜0.6:1の範囲内、より好ましくは、遅揮発性有機溶剤:速揮発性有機溶剤=0.3:1〜0.5:1の範囲内とされる。速揮発性有機溶剤よりも遅揮発性有機溶剤の配合割合が高くなり過ぎると、乾燥性が低下する。一方で、遅揮発性有機溶剤よりも速揮発性有機溶剤の配合割合が高くなり過ぎると、防錆水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下したり、油分が残存、付着した金属基材に塗布した際の塗膜の付着性が低下したりする。遅揮発性有機溶剤:速揮発性有機溶剤=0.23:1〜0.6:1の範囲内、より好ましくは、遅揮発性有機溶剤:速揮発性有機溶剤=0.3:1〜0.5:1の範囲内であれば、乾燥性や貯蔵安定性を低下させることなく、油分が残存、付着した金属基材に塗布した際でも付着性が高く塗膜剥がれを防止できる。
更に、相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤の合計量、即ち、有機溶剤の総量は、防錆水性塗料組成物中において、8質量%〜25質量%の範囲内であるのが好ましい。有機溶剤の総量が少なすぎると、油分が残存、付着した金属基材に塗布した際の塗膜の付着性の向上効果が得られず、一方で、有機溶剤の総量が多すぎると、防錆水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下し、VOCの排出量も多くなる。相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤の合計量が防錆水性塗料組成物中に8質量%〜25質量%の範囲内であれば、貯蔵安定性も維持され、油分が残存、付着した金属基材に対する塗膜の付着性の実用的な向上効果が得られる。より好ましくは、10質量%〜15質量%の範囲内である。
特に、相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤は、塗料組成物中に4質量%〜15質量%の範囲内、より好ましくは6質量%〜10質量%の範囲内であるのが好ましい。遅揮発性有機溶剤の含有量が少なすぎると、油分との十分な親和性が得られないことで付着性の向上効果が得られない。一方で、含有量が多すぎても塗膜に残存することで付着性が低下したり、防錆水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下したり、VOCの排出量が多くなったりする。また、相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤は、防錆水性塗料組成物中の含有量が2質量%〜10質量%の範囲内、より好ましくは、3質量%〜8質量%の範囲内が好ましい。速揮発性有機溶剤の含有量が少なすぎると、溶剤系塗料に匹敵する乾燥性を確保しつつ、油分が残存、付着した金属基材に対する塗膜の付着性の向上効果を得ることができず、一方で含有量が多すぎると防錆水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下したり、VOCの排出量が多くなったりする。
こうして、本実施の形態においては、相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤が使用されるが、相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル系溶剤や、メトキシブタノール等のアルコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤等が使用される。また、相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が使用される。
中でも、親油性、水との親和性(溶解性)、エポキシ樹脂やアルキル樹脂との相溶性、粘度特性(塗布性)、取扱性、作業性、コスト等の観点からすると、相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテルが好適であり、相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好適である。
また、このような有機溶剤は、発明者の実験によれば、溶解パラメータSP値が8〜11の範囲内で、表面張力が21〜30の範囲内であるのが好ましく、より好ましくはSP値が9〜11の範囲内で、表面張力が26〜28の範囲内である。該範囲内であれば、エポキシ樹脂やアルキル樹脂との相溶性も良く、金属基材に残存、付着した油分との親和性も高いため、塗膜の付着性を高めることができる。
そして、本実施の形態の防錆水性塗料組成物においては、鋼板等の金属基材への塗布性を確保するために、溶媒(分散媒)の主成分としてイオン交換水等の水が使用され、上述の塗料成分が水で希釈される。
このように、本実施の形態の防錆水性塗料組成物においては、樹脂分としてのエポキシ樹脂及びアクリル樹脂と、アクリル樹脂用架橋剤と、溶媒として主成分の水と、特定の蒸発速度の有機溶剤とを基本組成とするが、本発明を実施する場合には、これら基本組成の配合物に加え、従来の防錆塗料と同様、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、機能性顔料等の顔料を配合することも可能である。
着色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン等が使用される。
防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、ポリリン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛カルシウム、オルトリン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、酸化亜鉛、リン・ケイ酸亜鉛、リン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、シアナミド亜鉛カルシウム、メタホウ酸バリウム、アミノリン酸マグネシウム等が使用される。環境保護の観点からクロム系等の有害重金属を含まない防錆顔料が望ましい。このような防錆顔料は、塗膜成分中において、30質量%以下、より好ましくは20質量%以下であれば、防錆水性塗料組成物の安定性も良い。特に、本実施の形態の防錆水性塗料組成物では、樹脂分としてのエポキシ樹脂及びアクリル樹脂並びにアクリル樹脂用架橋剤の含有により、高い防錆性を発揮できるため、防錆顔料の含有量を塗膜成分中に10質量%以下に抑えて低コスト化を図ることができる。
体質顔料としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、クレー、シリカ、珪藻土、アルミナ、バリタ、ニ酸化ケイ素等が使用される。特に、タルクの使用により塗膜内に多くの層の積み重なりを形成し、タルクの配列により形成される層の緻密性によって腐食因子の侵入を防止することができる。
また、本発明を実施する場合には、必要に応じて、分散剤、消泡剤、充填材、可塑剤、タレ止め剤、造膜助剤、チキソ剤、レベリング剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、沈降防止剤、接着性付与剤、硬化触媒、中和剤、ドライヤ(乾燥剤)、安定剤、表面調整剤(塗膜面調整剤)等の添加剤も使用できる。
例えば、分散剤としては、ポリカルボン酸系等の分散剤を使用でき、このような分散剤の添加により、主に顔料をより良く分散させることができる。
消泡剤としては、例えば、シリコン系やアクリル系等の消泡剤が使用でき、このような消泡剤の添加により、防錆水性塗料組成物を調製する混合時に細かい泡が発生して防錆水性塗料組成物が不均一になるのを防止し、粘度や流動性を調整することができる。また、消泡により気泡からの水分の侵入による錆の発生を防止でき、防錆性の向上を図ることができる。
ドライヤ(乾燥剤)としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛等の金属ドライヤ(金属乾燥剤)を使用でき、このようなドライヤを添加することで、防錆水性塗料組成物が塗布されて塗膜が形成される段階において、乾燥の促進を図り、水性樹脂が更に重合して緻密な塗膜となるのを促進できる。
安定剤としては、例えば、アルカノールアミン誘導体(ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン)等を使用でき、このような安定剤を添加した場合には、流動性、粘度、分散性等を調製して塗料の安定化を図ることができる。また、アルカノールアミン誘導体は、初期錆防止剤として機能することもある。
そして、これらの配合材料からなる本実施の形態の防錆水性塗料組成物は、公知の混合分散機等を用いて均一に混合撹拌することによって調製される。
なお、このときの混合分散機としては、ディゾルバー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、バタフライミキサー、スパイラルミキサー、ロールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、グレンミル、高速インペラーミル、オープンニーダー、真空ニーダー、アトライター、高速ディスパー、ホモミキサー、ホモジナーザー、コロイドミル、マイクロフルイダイザー、ソノレーター、キャビトロン等を使用できる。
このように調製した防錆水性塗料組成物は、公知の塗装方法、例えば、エアスプレー法、シャワー法、スプレー法、ロールコート法、カーテンフローコート法、ダイコート法、刷毛塗り法、浸漬法、シボリ(シゴキ)法、ナイフコーター法、バーコート法、静電塗装法等の塗布手段により、鋼板等の金属基材の所定の塗装部位に任意の塗布量・厚さ及び塗布形態で塗布される。
そして、鋼板等の金属基材に塗布された防錆水性塗料組成物は、通常、所定温度で所定時間の加熱乾燥、乾燥機による強制乾燥、または、自然乾燥によって水分、有機溶剤等が蒸発、揮発されることで硬化し、金属基材の表面上に硬化塗膜を形成する。
塗膜硬化のための乾燥条件は、樹脂、有機溶剤等の種類や、添加剤(架橋剤、ドライヤの添加)等に応じて適宜設定されるが、本実施の形態の防錆水性塗料組成物では、有機溶剤として相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤の使用により、乾燥性を低下させることなく、油分が残存、付着した金属基材に対しての塗膜の付着性を向上できる。また、エポキシ樹脂の分子量(Mn)が2万〜7万の範囲内、アクリル樹脂の分子量(Mn)が1万〜2.5万の範囲内であると、乾燥性に優れる。よって、室温でも十分に乾燥できて溶剤系塗料に匹敵する優れた乾燥性を得ることができる。
また、本実施の形態の防錆水性塗料組成物は、例えば、自動車部品の鋼材に対して塗装する場合、乾燥後の塗膜の膜厚(硬化膜厚)が、20μm〜70μmの範囲内、好ましくは20μm〜40μmの範囲内、より好ましくは、20μm〜30μmの範囲内となるように所定の塗装部位に塗布される。乾燥後の塗膜の膜厚が小さすぎると鋼材に対して十分な防錆性、防食性を付与できず、一方で、膜厚が大きすぎると鋼材に対する塗膜の付着性が低下する。したがって、本実施の形態の防錆水性塗料組成物を鋼材に塗布した場合に形成される塗膜の乾燥膜厚(硬化膜厚)は、20μm〜70μmの範囲内、好ましくは20μm〜40μmの範囲内、より好ましくは、20μm〜30μmの範囲内とすることで、油分が残存、付着した鋼板に対しても塗膜の付着性が良好で、高防錆性が要求されるプロペラシャフトやドライブシャフト等を構成する鋼材に塗膜を形成する際でも十分に高い防錆性を確保できる。
そして、本実施の形態の防錆水性塗料組成物によれば、アクリル樹脂の配合により金属表面に付着、残存する油分との親油性が高められ、更に有機溶剤として酢酸ブチルの蒸発速度を100に対して相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤の併用により乾燥時間が短くても油分との十分な親和性、溶解性が高められることで、油分が残存、付着した金属基材に塗布した際でも塗布液のハジキ等が生じることがなく表面に付着し、金属基材に対する樹脂分の密着性が高められ緻密な塗膜の形成が促進される。
特に、有機溶剤が相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤の併用であるから、乾燥性を確保しつつ、塗布液の表面張力やSP値を下げて、金属基材に残存、付着した油分との親和性や油分の溶解性を高めることができ、乾燥時間が短くても溶剤が残存し難い。
これより、例えば、油分が残存、付着した鋼板(0.01〜0.15mg/cm2の油分が付着、残存)に対して塗装した際でも、後述するJIS5600 5−6に準拠した付着性試験において100個の桝目のうち1個も剥がれないという優れた付着性が得られる。
こうして、本実施の形態の防錆水性塗料組成物によれば、乾燥性を確保しつつ、油分が残存、付着した金属基材に塗装した際でも塗膜の付着性が向上し、塗膜剥がれが生じることがない。
更に、エポキシ樹脂の配合により塗膜の金属表面への密着性が高く、エポキシ樹脂の配合に加え、アクリル樹脂用架橋剤の配合によりアクリル樹脂が架橋されることで、塗膜の緻密性が高くなり、溶剤系に匹敵する高い防錆性が発揮される。
特に、アクリル樹脂は、その分子量が大きくなると、水との相溶性が低下し、形成する塗膜の緻密性が低下して、防錆性、硬度、付着性等の塗膜性能に影響を与え、一方で分子量が小さすぎると乾燥性が低下することから平均分子量(Mn)が1万〜2.5万の範囲内が好ましく、当該範囲内であれば、水との相溶性も良好で、乾燥性もよい。
しかし、樹脂分として、平均分子量(Mn)が1万〜2.5万の範囲内のアクリル樹脂は、エポキシ樹脂に比較して防錆効果に劣る。そこで、本実施の形態においては、アクリル樹脂用架橋剤の配合によりアクリル樹脂の架橋構造を形成することで、防錆効果を高めることができる。
また、エポキシ樹脂は、平均分子量(Mn)が2万〜7万の範囲内であれば、乾燥性も良く、防錆性、硬度、付着性等の塗膜性能を確保できる。
これより、例えば、油分が残存、付着した鋼板(0.01〜0.15mg/cm2の油分が付着、残存)に対して塗装した際でも、後述するJIS K5600−7−1に準拠した塩水噴霧試験において480時間でクロスカットからの片錆幅が3mm以下という溶剤系塗料に匹敵する優れた防錆性が得られる。
こうして、本実施の形態の防錆水性塗料組成物によれば、溶剤系塗料に匹敵する防錆性を確保できる。
このようにアクリル樹脂並びに相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤の配合によって、金属基材に残存、付着した油分との親和性が高まることで、油分が残存、付着した金属基材に対して塗布した際でも油はじきや塗布ムラが生じ難く、防錆水性塗料組成物の塗布液の金属基材への付着性を確保する。更に、防錆水性塗料組成物の塗布液の金属基材への付着性が確保されることで、塗料組成物中のエポキシ樹脂の金属基材表面への結合力が発揮され、基材と塗膜間の密着性が確保される。そして、このように基材に密着するエポキシ樹脂とアクリル樹脂用架橋剤の配合により架橋構造を形成したアクリル樹脂とによって緻密な膜が形成されて高い防錆性が発揮され、溶剤に匹敵する優れた防錆性を確保できる。更に、金属基材に対する塗膜の付着性も高いものとなる。加えて、アクリル樹脂が耐候性に優れ、エポキシ樹脂が防食性に優れることで、それらの併用により、そして、アクリル樹脂用架橋剤の配合により、高い防錆性を確保できるうえ、耐食性を向上させることができる。また、アクリル樹脂並びに相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤の配合によって油分との親和性を高めていることで、少ない有機溶剤の使用量でも、また、短い乾燥時間或いは常温の乾燥でも、塗膜の付着性に優れる。即ち、溶剤系塗料に匹敵する優れた乾燥性を確保しつつ、塗膜の付着性を向上させることができ、かつ、VOCの排出量も少なくできる。
こうして、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂と、アクリル樹脂用架橋剤と、酢酸ブチルの蒸発速度を100に対して蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤とを配合した本実施の形態の防錆水性塗料組成物によれば、油分が残存、付着した金属基材に塗装したときでも付着性が良くて塗膜剥がれが生じ難く、かつ、溶剤系塗料に匹敵する優れた乾燥性及び防錆性が得られ、例えば、塗布後、室温(20℃)下で約10分で乾燥するだけで、加熱することなく室温でも硬化させることができる。そして、油分が残存、付着した鋼板(残存油分0.01〜0.15mg/cm2)に対して、後述するようにJISK5600 5−6(1999)の付着性試験での枡目の剥がれが1枚もない付着性を有し、また、JISK5600 7−1(1999)の塩水噴霧試験(SST)での480時間後の片錆幅が3mm未満である防錆性を有する塗膜を形成できる。
したがって、本実施の形態の防錆水性塗料組成物によれば、塗布対象物の金属基材(鋼板等)の脱脂状態によらず、金属基材への高い付着性を確保して、優れた防錆性を発揮できる。特に、油分が残存、付着した金属基材への付着性及び高い防錆性を確保できることで、例えば、高い防錆性を必要とするも脱脂液を用いた脱脂処理が施されないプロペラシャフトやドライブシャフトといった駆動系部品等への塗装に好適であり、化成処理が行われず脱脂液を用いた脱脂処理が施されない鋼板や、脱脂処理が十分に行われない鋼板であっても、防錆水性塗料組成物を塗布するのみの簡易な工程によって塗膜剥がれが生じることのない塗膜の形成により高い防錆性を付与できる。しかも、溶剤系塗料に匹敵する乾燥性を有するから、乾燥のための大きなスペースを必要とせず、防錆塗料を塗布する塗布工程の生産性も良くて、乾燥過程における塗膜の品質の低下を招くこともない。
ここで、本実施の形態に係る防錆水性塗料組成物の配合組成として、実施例1乃至実施例8までの8種類の防錆水性塗料組成物を製造した。各実施例の配合を表1の上段に示す。なお、以下の表1乃至表3の上段において同一欄に記載の数値は、分量の大きさ(重量部)を示すものであり、基本的に材料に違いはないので、ここでは重複する説明を省略する。
表1に示されるように、実施例1乃至実施例8に係る防錆水性塗料組成物においては、水性エポキシ樹脂(DIC(株)製『ウォーターゾルWFW−640』:固形分40%、平均粒子径;80nm、平均分子量(Mn);6万、水素イオン指数;pH8.3)と、水性アクリル樹脂(DIC(株)製『ボンコート(アクリルースチレン系エマルジョン)EC740EF』:固形分40%、平均粒子径;90nm、平均分子量(Mn);1万5千、水素イオン指数;pH8.1)とを配合した。
また、有機溶剤として、エチレングリコールモノブチルエーテル(酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度が10;遅揮発性有機溶剤)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度が70;速揮発性有機溶剤)とを配合した。
更に、アクリル樹脂用架橋剤として、水性のカルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル(株)製『カルボジライド』)またはオキサゾリン系架橋剤(日本触媒(株)製『エポクロスK−2030E』)を配合した。
また、着色顔料としてカーボンブラック、体質顔料・充填材として炭酸カルシウム(球状)及びタルク(燐片状)、防錆顔料として酸化亜鉛を配合し、更に、添加剤としてポリカルボン酸系の分散剤、シリコン系の消泡剤及びコバルト系のドライヤを配合した。
そして、溶媒の主成分としてイオン交換水を配合した。
表1に示されるように、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、有機溶剤、顔料及び添加剤の配合量は、実施例1乃至実施例8において全て同一である。異なるのは、アクリル樹脂用架橋剤として用いられる化合物の種類または配合量及びイオン交換水の配合量であり、アクリル樹脂用架橋剤の配合量の増減に合わせて防錆水性塗料組成物の総量が100重量部となるようにイオン交換水の配合量を調整した。
即ち、実施例1においては、エポキシ樹脂ウォータゾルを37.5重量部(うち固形分(樹脂分)15重量部)、アクリル樹脂エマルジョンを12.5重量部(うち固形分(樹脂分)5重量部)、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルを7重量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを3重量部、アクリル樹脂用架橋剤としてのカルボジイミド系架橋剤を0.5重量部、着色顔料としてのカーボンブラックを2重量部、体質顔料・充填材としての炭酸カルシウムを6重量部及びタルクを15重量部、防錆顔料としての酸化亜鉛を2重量部、添加剤を1重量部、イオン交換水を43.5重量部配合した。この実施例1の配合では、アクリル樹脂100重量部に対するカルボジイミド系架橋剤の配合量は10重量部である。
また、アクリル樹脂用架橋剤及びイオン交換水以外は実施例1と同一の配合に対して、実施例2においてはカルボジイミド系架橋剤を1重量部、イオン交換水を43重量部配合し、実施例3においてはカルボジイミド系架橋剤を2重量部、イオン交換水を42重量部配合し、実施例4においてはアクリル樹脂用架橋剤としてオキサゾリン系架橋剤を0.5重量部、イオン交換水を43.5重量部配合し、実施例5においてはオキサゾリン系架橋剤を1重量部、イオン交換水を43重量部配合し、実施例6においてはオキサゾリン系架橋剤を1.5重量部、イオン交換水を42.5重量部配合し、実施例7においてはカルボジイミド系架橋剤を3重量部、イオン交換水を41重量部配合し、実施例8においてはオキサゾリン系架橋剤を3重量部、イオン交換水を41重量部配合した。
なお、アクリル樹脂100重量部に対するアクリル樹脂用架橋剤の配合量は、実施例2ではカルボジイミド系架橋剤の配合量が20重量部、実施例3ではカルボジイミド系架橋剤の配合量が40重量部、実施例4ではオキサゾリン系架橋剤の配合量が10重量部、実施例5ではオキサゾリン系架橋剤の配合量が20重量部、実施例6ではオキサゾリン系架橋剤の配合量が30重量部、実施例7ではカルボジイミド系架橋剤の配合量が60重量部、実施例8ではオキサゾリン系架橋剤の配合量が60重量部となっている。
実施例1乃至実施例8に係る防錆水性塗料組成物の配合材料の混合においては、添加剤としてのドライヤ以外の配合材料を全てサンドミルに入れ、分散媒体としてのガラスビーズ(2mmφ)を用いて、1時間回転分散させた。そして、最後に添加剤としてのドライヤを加えて、数回回転分散することによって調製した。
また、比較のために、比較例1乃至比較例14に係る防錆水性塗料組成物を作製した。各比較例の配合を表2及び表3の上段に示す。なお、比較例の配合材料においても実施例と同一の材料を使用しており、その製品名等はここでは省略する。また、比較例においても防錆水性塗料組成物の総量が100重量部となるように配合量を調整した。
表2に示すように、比較例1に係る防錆水性塗料組成物においては、アクリル樹脂、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びアクリル樹脂用架橋剤を配合せず、それ以外は実施例と同一の配合材料を使用した。即ち、比較例1では、エポキシ樹脂ウォータゾルを45重量部(うち固形分(樹脂分)18重量部)、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルを4重量部、着色顔料としてのカーボンブラックを2重量部、体質顔料・充填材としての炭酸カルシウムを7重量部及びタルクを18重量部、防錆顔料としての酸化亜鉛を2重量部、添加剤を3重量部、イオン交換水を46重量部配合した。なお、比較例1は、従来の低VOCで乾燥性が良い防錆水性塗料組成物(従来品)に相当する。
また、比較例2においては、アクリル樹脂及びアクリル樹脂用架橋剤を配合せず、それ以外は実施例と同一の配合材料を使用した。即ち、エポキシ樹脂ウォータゾルを37.5重量部(うち固形分(樹脂分)15重量部)、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルを7重量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを3重量部、着色顔料としてのカーボンブラックを2重量部、体質顔料・充填材としての炭酸カルシウムを6重量部及びタルクを15重量部、防錆顔料としての酸化亜鉛を2重量部、添加剤を1重量部、イオン交換水を49重量部配合した。
比較例3においては、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びアクリル樹脂用架橋剤を配合せず、それ以外は実施例と同一の配合材料を使用した。即ち、エポキシ樹脂ウォータゾルを37.5重量部(うち固形分(樹脂分)15重量部)、アクリル樹脂エマルジョンを12.5重量部(うち固形分(樹脂分)5重量部)、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルを7重量部、着色顔料としてのカーボンブラックを2重量部、体質顔料・充填材としての炭酸カルシウムを6重量部及びタルクを15重量部、防錆顔料としての酸化亜鉛を2重量部、添加剤を1重量部、イオン交換水を50重量部配合した。
比較例4においては、プロピレングリコールモノメチルエーテルを配合せず、それ以外は実施例と同一の配合材料を使用した。即ち、エポキシ樹脂ウォータゾルを37.5重量部(うち固形分(樹脂分)15重量部)、アクリル樹脂エマルジョンを12.5重量部(うち固形分(樹脂分)5重量部)、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルを7重量部、カルボジイミド系架橋剤を0.5重量部、着色顔料としてのカーボンブラックを2重量部、体質顔料・充填材としての炭酸カルシウムを6重量部及びタルクを15重量部、防錆顔料としての酸化亜鉛を2重量部、添加剤を1重量部、イオン交換水を46.5重量部配合した。
比較例5においては、アクリル樹脂用架橋剤を配合せず、それ以外は実施例と同一の配合材料を使用した。即ち、エポキシ樹脂ウォータゾルを37.5重量部(うち固形分(樹脂分)15重量部)、アクリル樹脂エマルジョンを12.5重量部(うち固形分(樹脂分)5重量部)、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルを7重量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを3重量部、着色顔料としてのカーボンブラックを2重量部、体質顔料・充填材としての炭酸カルシウムを6重量部及びタルクを15重量部、防錆顔料としての酸化亜鉛を2重量部、添加剤を1重量部、イオン交換水を44重量部配合した。
また、比較例6乃至比較例9では、アクリル樹脂用架橋剤を配合せず、それ以外は実施例と同一の配合材料を使用するも、実施例の配合に対してアクリル樹脂の配合量を変化させ、それに合わせてイオン交換水の配合量も調整した。
更に、表3に示すように、比較例10においては、アクリル樹脂用架橋剤を配合せず、それ以外は実施例と同一の配合材料を使用するも、実施例の配合に対して有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルの配合量を4重量部と少なくし、それに合わせてイオン交換水の配合量も調整した。
比較例11では、アクリル樹脂用架橋剤を配合せず、また、有機溶剤以外は実施例と同一の配合材料を使用し、実施例の配合に対して有機溶剤として酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度が10のエチレングリコールモノブチルエーテルを4重量部と、酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度が1未満のジエチレングリコールモノブチルエーテルを3重量部配合した。それに合わせてイオン交換水の配合量も調整した。
比較例12では、アクリル樹脂用架橋剤を配合せず、また、有機溶剤以外は実施例と同一の配合材料を使用し、実施例の配合に対して有機溶剤として酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度が10のエチレングリコールモノブチルエーテルを7重量部と、酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度が250を超える有機溶剤(メタノール及びメチルエチルケトン(MEK))を3重量部配合した。それに合わせてイオン交換水の配合量も調整した。
更に、比較例13では、アクリル樹脂用架橋剤を配合せず、アクリル樹脂以外は実施例と同一の配合材料を使用するも、実施例における分子量(Mn)が15000のアクリル樹脂にかえて、平均分子量(Mn)が10,000の水性アクリル樹脂(DIC(株)製『ボンコート(アクリルースチレン系エマルジョン)EC740EF』:固形分40%、平均粒子径;90nm、水素イオン指数;pH8.0)を使用した。
一方、比較例14では、アクリル樹脂用架橋剤を配合せず、アクリル樹脂以外は実施例と同一の配合材料を使用するも、実施例における分子量が15000のアクリル樹脂にかえて、平均分子量(Mn)が25,000の水性アクリル樹脂(ダウケミカル(株)製『EXP4275』:固形分40%、平均粒子径;150nm、水素イオン指数;pH8.0)を使用した。
このようにして調製した実施例1乃至実施例8、及び、比較例1乃至比較例14に係る防錆水性塗料組成物の特性について評価試験を行い、また、防錆水性塗料組成物によって形成される塗膜の特性について、供試体を作製して評価試験を行った。評価項目としては、防錆水性塗料組成物の塗布性・安定性・乾燥性、塗膜の防錆性・付着性を対象とした。
塗布性については、調製した防錆水性塗料組成物のエアースプレー塗布が可能であって、エアースプレー塗布後もタレが生じず、更に乾燥後の硬化塗膜に割れが生じない粘度特性(流動性)として、フォードカップNo4(測定温度20℃)による測定で防錆水性塗料組成物の粘度が30秒以上、45秒未満の範囲内であれば○とし、実用的な塗布レベルではあるもの45秒以上、60秒未満のものは△と評価した。
安定性(貯蔵安定性)については、粘度測定器としてB型回転粘度計(東機産業(株)製)を用い、20℃、30℃、40℃の各温度条件で10日間保存したときの初期からの増粘率(粘度変化率)で評価した。即ち、調製した防錆水性塗料組成物の初期粘度をB型回転粘度計(20℃条件下、20rpmで1分)で測定した後、この防錆水性塗料組成物を密閉容器に入れて20℃、30℃、40℃の各温度条件で10日間保存し、その後、20℃まで冷却して同様にB型回転粘度計(20rpmで1分)で粘度を測定した。そして、初期からの増粘率を次式(1)にしたがって算出した。
増粘率={10日後粘度−初期粘度}÷初期粘度×100 ‥‥(1)
20℃、30℃、40℃の各温度条件の全てで増粘率が50%未満であれば貯蔵安定性が高くて長期保存が可能である。特に20℃、30℃、40℃の各温度条件の全てで増粘率が40%未満であれば夏季の高温時における長期間の保存にも耐え得る高い貯蔵安定性であるから◎と評価し、20℃、30℃、40℃の各温度条件の全てで増粘率が40%以上、50%未満であれば○と評価した。増粘率が50%以上、60%未満のものは貯蔵安定性に劣るが、防錆水性塗料組成物を基材への塗布直前に調製したり、防錆水性塗料組成物の調製後に早く使用すれば実用に適するので、△と判定した。増粘率が60%以上のものは実用化に適さないとして×と判定した。
また、防錆水性塗料組成物の乾燥性や、塗膜性能の評価試験である塗膜の防錆性、付着性の評価試験に際しては、調製した防錆水性塗料組成物を鋼板基材(SPCC−SD)の表面に塗布して作製した供試体を用いた。
乾燥性については、シンナー脱脂された後50℃に加温した鋼板基材(0.01〜0.15mg/cm2の油分が付着、残存)に乾燥膜厚(塗膜厚さ)が30μmとなるようにエアースプレー塗装し、60℃で3分間乾燥させ、常温まで自然冷却した供試体を用いた。そして、かかる供試体の塗装面に軍手を装着した指で3Kg荷重し、塗装面に指紋跡(軍手跡)が全く見られなかったものを溶剤系塗料に匹敵するレベルであるとして◎と評価し、十分実用に耐え得るレベルであるが、僅かに指紋跡(軍手跡)が見られたものについては○と評価した。はっきり(くっきり)と指紋跡(軍手跡)が見られたものについては、乾燥が不十分で溶剤系塗料と比較して乾燥性に劣り、生産性が低下する恐れがあることから×と評価した。
付着性については、シンナー脱脂された鋼板基材(0.01〜0.15mg/cm2の油分が付着、残存)に乾燥膜厚(塗膜厚さ)が20μm〜30μmとなるようにエアースプレー塗装し、60℃で20分間乾燥させ、室温(20℃)で7日間養生(放置)した供試体を用いた。そして、かかる供試体について、JIS−K5600−5−6:1999に準拠して、付着性(クロスカット法)の評価を行った。具体的には、供試体の塗装面にカッターナイフで縦横に1mm間隔で11本ずつの平行な切れ目を入れて、合計100個の1mm×1mmの桝目を形成し、これら100個の桝目形成部分に上から粘着性セロハンテープを強く圧着させて貼り付け、そして一気に引き剥がし、100個の升目のうち何個剥がれたかを測定した。剥離した枡目の個数が2個以下であれば合格とし、剥離した桝目の個数が0個で剥がれのなかったものを◎と評価し、1個〜2個の剥がれが見られた場合には○と評価した。3個以上剥離していた場合には実用化に不向きであると判断し×(不合格)と判定した。
防錆性については、シンナー脱脂された鋼板基材(0.01〜0.15mg/cm2の油分が付着、残存)に乾燥膜厚(塗膜厚さ)が20μm〜30μmとなるようにエアースプレー塗装し、60℃で20分間乾燥させ、室温(20℃)で7日間養生(放置)した供試体を用いた。そして、かかる供試体の塗装面にカッターナイフで基材まで達するクロスカットを入れ、クロスカットを入れた供試体を塩水の霧が発生する塩水噴霧試験(SST)装置内に入れて、JIS K5600−7−1:1999に準拠して、塩水噴霧条件(試験室内の温度35±2℃、塩水の濃度5w/v%等)下におき、480時間(20日)後に取り出して、クロスカットからの片側の錆巾(片錆巾)を測定した。クロスカットからの片錆巾が3.0mm以下であれば溶剤系塗料と同等以上の防錆性であるとして合格(○)と評価した。クロスカットからの片錆巾が3.0mmを超えるものについては不合格(×)と判定した。
各特性試験の評価結果は、表1乃至表3の下段に示した通りである。
表1に示したように、実施例に係る防錆水性塗料組成物の塗布性については、実施例1乃至実施例8の全てで、エアースプレー塗装に適した粘度特性(流動性)を有し、塗布後にタレが生じることもなく○の評価であった。
また、実施例に係る防錆水性塗料組成物の安定性については、アクリル樹脂100重量部に対してカルボジイミド系架橋剤またはオキサゾリン系架橋剤の配合量を10〜40重量部とした実施例1乃至実施例6では、20℃、30℃、40℃の各温度条件の全てで増粘率が50%未満であり、貯蔵安定性が高いものであった。特に、アクリル樹脂100重量部に対してカルボジイミド系架橋剤の配合量を10〜20重量部とした実施例1及び実施例2、並びに、アクリル樹脂100重量部に対してオキサゾリン系架橋剤の配合量を10〜20重量部とした実施例4及び実施例5では、20℃、30℃、40℃の各温度条件の全てで増粘率が40%未満であり、貯蔵安定性に優れていた。一方、アクリル樹脂100重量部に対してカルボジイミド系架橋剤またはオキサゾリン系架橋剤の配合量が60重量部であった実施例7及び実施例8では、40℃の温度条件で増粘率が50%を超え、実施例1乃至実施例6と比較して貯蔵安定性に劣っていた。しかし、実施例7及び実施例8に係る防錆水性塗料組成物においては、塗布性及び乾燥性にも優れ、防錆水性塗料調製後の早くに使用すれば、防錆性及び付着性に優れる塗膜を形成できるため、実用の範囲内である。
これより、アクリル樹脂用架橋剤の配合量は、アクリル樹脂100重量部に対して10〜40重量部の範囲内であれば、常温(20℃±15℃)下の保存で増粘が少なくて防錆水性塗料組成物の貯蔵安定性が高い。より好ましくは、10〜20重量部の範囲内であれば、40℃以上となる夏季の高温条件下でも増粘が少なくて防錆水性塗料組成物の貯蔵安定性に優れる。
更に、実施例に係る防錆水性塗料組成物の乾燥性については、実施例1乃至実施例8の全てで、溶剤系塗料に匹敵する60℃×3分間の乾燥条件で十分に乾燥され、優れた乾燥性を有していた。また、本発明者らは、実施例1乃至実施例8に係る防錆水性塗料組成物によれば、油分が残存、付着した鋼板への塗布後、室温(20℃)においても約20分で乾燥されることを確認しており、室温でも乾燥できる優れた乾燥性を有している。
そして、実施例に係る防錆水性塗料組成物を油分が残存、付着された鋼板に塗布を行っても、実施例に係る防錆水性塗料組成物から形成された塗膜性能については、実施例1乃至実施例8の全てで、100個の桝目のうち1個も剥がれないという優れた付着性を示し、更に、塩水噴霧試験(SST)では480時間でクロスカットからの片錆幅が3mm以下という優れた防錆性を示した。
このように、実施例1乃至実施例8の防錆水性塗料組成物においては、塗布性(粘度特性)も良好で、溶剤系塗料に匹敵する乾燥性でありながら、油分が付着された鋼板に塗布した際でも、実施例1乃至実施例8の防錆水性塗料組成物から形成された塗膜は高い付着性を有し、防錆性も高いものであった。特に、アクリル樹脂用架橋剤の配合量が、アクリル樹脂100重量部に対して10重量部〜40重量部の範囲内である実施例1乃至実施例6の防錆水性塗料組成物においては20℃〜40℃の幅広い温度条件下での貯蔵安定性にも優れていた。
これに対し、表2に示したように、アクリル樹脂、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びアクリル樹脂用架橋剤を配合しなかった比較例1(従来品)では、塗布性(粘度特性)、塗料安定性、乾燥性、防錆性については良好な結果であるも、油分が残存、付着している鋼板への付着性が悪かった。したがって、比較例1に係る防錆水性塗料組成物では、油分が残存、付着した鋼板に塗布した際には塗膜剥がれが生じやすく、防錆性を付与できない。
また、比較例2は、プロピレングリコールモノメチルエーテルを実施例と同様の配合量で配合するもアクリル樹脂及びアクリル樹脂用架橋剤を配合しなかったものである。この比較例2においても、塗布性(流動特性)、塗料安定性、乾燥性、防錆性については良好な結果であるが、油分が残存、付着している鋼板への付着性が悪かった。したがって、比較例2に係る防錆水性塗料組成物では、油分が残存、付着した鋼板に塗布した際には塗膜剥がれが生じやすく、防錆性を付与できない。
比較例3は、アクリル樹脂を配合するもアクリル樹脂用架橋剤及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを配合しなかったものである。この比較例3では、塗布性(流動特性)、塗料安定性、乾燥性については良好な結果であったが、防錆性に劣り、付着性も悪かった。これに対し、比較例4では、アクリル樹脂に加えアクリル樹脂用架橋剤を配合したことで、防錆性については良好な結果が得られた。また、エチレングリコールモノブチルエーテルを多く配合したことで、付着性の向上が見られたが、乾燥性は悪かった。なお、比較例4でも塗布性(流動特性)、塗料安定性については良好な結果であった。
これら比較例1乃至比較例4と実施例との比較から、乾燥性を確保しつつ、油分が残存、付着している鋼板への付着性の向上効果を得るには、アクリル樹脂、並びに、有機溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの併用が必要であることが分かる。加えて、アクリル樹脂用架橋剤の配合により、高い防錆性を確保できることが分かる。
また、比較例5乃至比較例9においては、塗布性(流動特性)、塗料安定性、乾燥性については良好な結果であるも、アクリル樹脂用架橋剤を配合しなかったことで防錆性に劣っていた。
そして、油分が残存、付着している鋼板への付着性について、アクリル樹脂の配合量が防錆水性塗料組成物中において3.5質量%未満(防錆水性塗料組成物の全体が100重量部に対してアクリル樹脂の配合量が3.5重量部未満)である比較例6及び比較例7では、アクリル樹脂の配合量が防錆水性塗料組成物中の樹脂分総量の18質量%未満であり、塗膜成分中におけるアクリル樹脂の含有量(防錆水性塗料組成物の全固形分量に対するアクリル樹脂(固形分)の割合から算出)が7質量%未満であることにより、比較例6及び比較例7の防錆水性塗料組成物から形成された塗膜は、付着性にも劣っていた。この比較例6及び比較例7では、アクリル樹脂/エポキシ樹脂<0.23/1である。
一方、アクリル樹脂の配合量が防錆水性塗料組成物中において3.5質量%以上、7質量%以下(防錆水性塗料組成物の全体が100重量部に対してアクリル樹脂の配合量が3.5重量部以上、7重量部以下)である比較例5、比較例8及び比較例9では、アクリル樹脂の配合量が防錆水性塗料組成物中の樹脂分総量の18質量%以上、31質量%以下であり、塗膜成分中におけるアクリル樹脂の含有量(防錆水性塗料組成物の全固形分量に対するアクリル樹脂(固形分)の割合から算出)が7質量%以上、17質量%以下であることにより、油分が残存、付着している鋼板への付着性については良好であった。この比較例5、比較例8及び比較例9では、アクリル樹脂/エポキシ樹脂=0.23/1〜0.5/1の範囲内である。
特に、アクリル樹脂の配合量が防錆水性塗料組成物中の樹脂分総量の25質量%以上、31%質量以下であり、塗膜成分中におけるアクリル樹脂の含有量(防錆水性塗料組成物の全固形分量に対するアクリル樹脂(固形分)の割合から算出)が10質量%以上、17質量%以下である比較例5及び比較例9では、油分が残存、付着している鋼板への付着性の評価試験において、100個の桝目のうち1個も剥がれないという優れた付着性を示した。
この比較例5及び比較例9では、アクリル樹脂/エポキシ樹脂=0.3/1〜0.5/1の範囲内である。
これより、油分が残存、付着している鋼板への付着性向上の実用的な効果を得るためには、アクリル樹脂の配合量は、防錆水性塗料組成物中における樹脂分総量の18質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは、25質量%以上である。また、塗膜成分中におけるアクリル樹脂の含有量は7質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは、10質量%以上である。そして、アクリル樹脂/エポキシ樹脂≧0.23/1が好ましく、より好ましくは、アクリル樹脂/エポキシ樹脂≧0.3/1である。
更に、本発明者らの実験研究によれば、アクリル樹脂の配合量が多くなり過ぎると、相対的にエポキシ樹脂の配合量が少なくなることにより、防錆性が低下するから、アクリル樹脂の配合量は、防錆水性塗料組成物中における樹脂分総量の40質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは、35質量%以下である。また、塗膜成分中におけるアクリル樹脂の含有量は、25質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは、20質量%以下である。そして、アクリル樹脂/エポキシ樹脂≦0.6/1が好ましく、より好ましくはアクリル樹脂/エポキシ樹脂≦0.5/1である。
また、表3に示したように、アクリル樹脂及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを配合するも、アクリル樹脂用架橋剤を配合しなかった比較例10乃至比較例12でも、防錆性に劣っていた。
特に、防錆水性塗料組成物中において、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量が4質量%で、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量が3質量%である比較例10では、塗布性(流動特性)、塗料安定性、乾燥性について良好な結果であるも、油分が残存、付着している鋼板への付着性に劣っていた。これは、実施例と比較して、相対蒸発速度が10であるエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量が少なく有機溶剤の総量が少ないことで、鋼板に残存、付着している油分との十分な親和性が得られなかったためと考えられる。
本発明者らの実験研究によれば、防錆水性塗料組成物中において、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテルの配合量が5質量%以上、かつ、プロピレングリコールモノメチルエーテルの配合量が3質量%以上で有機溶剤の総量が8質量%以上であれば、乾燥性を確保しつつ、油分が残存、付着している鋼板への付着性向上の実用的な効果が得られることを確認している。より好ましくは、エチレングリコールモノブチルエーテルの配合量が7質量%以上、かつ、プロピレングリコールモノメチルエーテルの配合量が3質量%以上で有機溶剤の総量が10質量%以上である。そして、乾燥性を確保しつつ、油分が残存、付着している鋼板への付着性を高めるためには、エチレングリコールモノブチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテル≧1.6/1が好ましく、より好ましくは、エチレングリコールモノブチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテル≧2.3/1である。
また、有機溶剤の量が多すぎると、VOCの排出量が多くなることから、好ましくは、エチレングリコールモノブチルエーテルの配合量が15質量%以下、かつ、プロピレングリコールモノメチルエーテルの配合量が6質量%以下であり、より好ましくは、エチレングリコールモノブチルエーテルの配合量が10質量%以下、かつ、プロピレングリコールモノメチルエーテルの配合量が4質量%以下である。そして、乾燥性、付着性、VOCの排出量のバランスから、エチレングリコールモノブチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテル≦2.5/1が好ましい。
一方、防錆水性塗料組成物中において、有機溶剤として相対蒸発速度が10であるエチレングリコールモノブチルエーテルの配合量が4質量%で、相対蒸発速度が1未満である有機溶剤を3質量%使用した比較例11では、比較例10との比較で付着性が向上した。これは、比較例10に対し、更に蒸発速度が遅い有機溶剤を使用したことで、鋼板に付着している油分と親和する時間が長くなったためと思われる。しかし、相対蒸発速度が1未満である有機溶剤の使用では乾燥性が低下した。
また、防錆水性塗料組成物中において、有機溶剤として相対蒸発速度が10であるエチレングリコールモノブチルエーテルの配合量が7質量%で、相対蒸発速度が250を超える有機溶剤を3質量%使用した比較例12でも、比較例10と比較して付着性が向上した。これは、比較例10に対し、エチレングリコールモノブチルエーテルの配合量が多く有機溶剤の総量が多くなっているためである。しかし、相対蒸発速度が250を超える有機溶剤の使用により揮発が速く、貯蔵安定性が悪かった。なお、比較例12は、実施例と比較すると油分が残存、付着している鋼板への付着性は劣っている。これは、相対蒸発速度が250を超える有機溶剤では、実施例で使用した相対蒸発速度が70であるプロピレングリコールモノメチルエーテルよりも蒸発速度が速いことで、鋼板に付着している油分と親和する時間が減るためであると考えられる。
そして、比較例13及び比較例14についても、アクリル樹脂用架橋剤を配合しなかったため防錆性に劣っていたが、平均分子量(Mn)が10,000のアクリル樹脂を用いた比較例13及び平均分子量(Mn)が25,000のアクリル樹脂を用いた比較例14でも、塗布性(流動特性)、塗料安定性、乾燥性、付着性については良好な結果であった。
このように、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、カルボジイミド系架橋剤またはオキサゾリン系架橋剤、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び水を配合した実施例1乃至実施例8では、従来品である比較例1に対して、同等の優れた塗布性、防錆性及び乾燥性を維持するも、油分が残存、付着した鋼板に対する付着性の向上が確認された。したがって、本実施例に係る防錆水性塗料組成物によれば、油分が残存、付着した鋼板に塗布しても塗膜剥がれが生じ難く高い防錆性を付与できる。
即ち、実施例1乃至実施例8では、アクリル樹脂並びに相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテル及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルの配合によって、乾燥性を低下させることなく、鋼板に残存、付着した油分との親和性を向上させて、基材表面への樹脂分の結合性、塗膜の緻密性を確保することにより、鋼板に対する付着性が高まっている。そして、鋼板基材への密着性が高いエポキシ樹脂とアクリル樹脂の架橋により緻密性を確保し、特に、実施例1乃至実施例8の配合では粘度特性が良好で、塗布後にタレが生じることもなく、また塗膜の割れ等により錆を発生させる恐れもなく、高い防錆性を確保している。
加えて、実施例1乃至実施例8では、アクリル樹脂並びに相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテル及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルの配合によって、鋼板に残存、付着した油分との親和性を高めていることで、少ない有機溶剤の使用量で付着性を確保でき、VOCの排出量も少ないものである。
こうして実施例1乃至実施例8の水性塗料組成物では、VOCの排出量を抑えた水性塗料でありながら、油分が残存、付着した鋼板に対しても優れた付着性を示し、溶剤系塗料に匹敵する乾燥性及び防錆性を有する。
以上説明してきたように、本実施の形態の防錆水性塗料組成物によれば、樹脂分としてのエポキシ樹脂及びアクリル樹脂と、アクリル樹脂用架橋剤と、有機溶剤として酢酸ブチルの蒸発速度を100に対して蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤と、溶媒の主成分である水とを含有するものである。
したがって、本実施の形態の防錆水性塗料組成物によれば、アクリル樹脂の配合により塗布液における金属基材の油分との親油性を高め、更に、有機溶剤として相対蒸発速度が10以上、60未満の範囲内である遅揮発性有機溶剤及び相対蒸発速度が60以上、210以下の範囲内である速揮発性有機溶剤の使用により、短い乾燥時間でも或いは室温条件下でも、油分との十分な親和性、溶解性を高めることができる。よって、揮発性有機化合物(VOC)の量を低く抑えながら、かつ、溶剤系塗料に匹敵する乾燥性を確保しつつ、金属基材に対する付着性を高めることができる。そして、エポキシ樹脂の配合及びアクリル樹脂架橋剤によるアクリル樹脂の架橋により金属基材への密着性が高く緻密な塗膜が形成されて、溶剤系塗料と同等以上の優れた防錆性を確保できる。
このようにして、揮発性有機化合物(VOC)の量を低く抑え、有機溶剤系塗料と同等以上の良好な乾燥性を確保しつつ、油分が残存、付着した金属基材(鋼板)に塗布した際でも塗膜が剥がれを生じさせることなく、高い防錆性の塗膜性能を発揮する塗膜を形成できる防錆水性塗料組成物となる。
なお、上記実施例においては、本実施の形態に係る防錆水性塗料組成物を、油分が0.01〜0.15mg/cm2付着した鋼板に塗装した場合について説明したが、本実施の形態に係る防錆水性塗料組成物は、鋼板表面の脱脂が十分に行われた鋼材に対する防錆目的での使用でも、当然に優れた防錆性及び乾燥性を発揮し、基材への付着性に優れ塗膜剥がれが生じないものである。また、本実施の形態に係る防錆水性塗料組成物は、塗布対象が無塗装(未処理)の一般鋼板に特定されず、亜鉛系やアルミニウム系等のメッキ処理等が施された表面処理鋼材に対する防錆目的で塗装した際でも、優れた乾燥性を有し、基材への付着性に優れ塗膜剥がれが生じ難く、高い防錆性を発揮できる。
本発明を実施するに際しては、防錆水性塗料組成物のその他の構成、成分、材料、配合、製造方法等について、実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で上げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更しても実施を否定するものではない。