JP2018126678A - 選択吸着材料 - Google Patents

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Tetsushi Omura
哲賜 大村
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友佑 向江
瀬戸山 徳彦
Norihiko Setoyama
徳彦 瀬戸山
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Abstract

【課題】特定の物質を選択率高く吸着することを可能とする選択吸着材料を提供する。【解決手段】一般式(3)で表される2次元格子構造を繰り返し単位とする有機金属錯体選択吸着材料。【選択図】なし

Description

本発明は、選択吸着材料に関する。
従来から吸蔵物質等として利用することが可能な有機金属錯体が種々報告されている。このような有機金属錯体として、例えば、特開2007−169267号公報(特許文献1)においては、特定のポルフィリン誘導体が特定のカルボン酸金属錯体を介して結合された特定の2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体が知られている。
特開2007−169267号公報
しかしながら、特許文献1においては、そのような有機金属錯体を特定の物質(例えばCO等の特定のガス)を選択的に吸着させるために利用すること、すなわち、特定の物質を選択率高く吸着させるための材料として利用することは特に記載されていない。
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、特定の物質を選択率高く吸着することを可能とする選択吸着材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、選択吸着材料を下記一般式(1)で表される特定の2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体からなるものとすることにより、特定の物質を選択率高く吸着させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の選択吸着材料は、下記一般式(1):
[式(1)中、Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ、窒素原子に配位している金属原子を示すか或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示し、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(2):
(式(2)中、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を示し、Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。)
で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体からなることを特徴とするものである。
上記本発明の選択吸着材料においては、前記一般式(2)中のRがそれぞれ、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントリル基及び置換基を有していてもよいピレニル基からなる群から選択される基であることが好ましい。
また、上記本発明の選択吸着材料においては、前記一般式(1)中のMがそれぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子又は2個の水素原子であることが好ましい。
さらに、上記本発明の選択吸着材料においては、前記一般式(2)中のMがそれぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される二核構造を形成できる金属原子であることが好ましい。
なお、本発明の選択吸着材料によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明の選択吸着材料は、上記記一般式(1)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体からなる(なお、上記一般式(1)中においてXに結合する結合手は上記一般式(2)中のMに結合する結合手である)。このような2次元格子構造は下記一般式(3):
[式(3)中、M、R〜Rはそれぞれ上記一般式(1)中のM、R〜Rと同義である。]
で表されるポルフィリン誘導体が、上記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体(式(1)中のX)を介して結合することにより形成される構造である。このようなポルフィリン誘導体間を架橋するカルボン酸金属錯体において、構成配位子中のRが置換基を有していてもよいアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基)であり、比較的大きな分子構造を有する基からなるものである。ここで、上記2次元格子構造により有機金属錯体は細孔を有するものとなるが(式(1)中において4つのポルフィリン誘導体とカルボン酸金属錯体とにより囲まれた領域が細孔の空孔部分となる。なお、本発明にいう細孔とは上記一般式(1)で表される2次元格子構造が自己集積機能により積層した時に形成される空孔をいう)、本発明においては、Rがアリール基であるため、その芳香性に由来して、近接するX中のアリール基同士(R同士)において、一つのアリール基中のCHと他のアリール基のπ電子との間の相互作用(以下、場合により単に「CH−π相互作用」と称する)や、アリール基同士(R同士)のπ−スタックにより緩やかに結合する。そのため、本発明にかかる有機金属錯体は、有機金属錯体中のRによって構造が比較的緩やかに固定されるとともに、その細孔の入り口がCH−π相互作用やπ−スタックにより集積されたアリール基の影響で歪んで狭くなり、細孔内部が外部に対して閉鎖性の高い空間(閉塞性の高い空間)となるものと推察される。また、結晶の各層の集積様式もCH−π相互作用やπ−スタックにより結晶の層間が結合された集積構造となり、この点からも細孔の空隙が狭くなるような構造となるものと推察される。このように、本発明においては、有機金属錯体の結晶はCH−π相互作用やπ−スタックにより緩やかに固定され、且つ、細孔の空隙が狭く細孔が外部に対して閉鎖性の高い空間となるような構造のものとなる。そして、このように穏やかに固定された構造を有するため、本発明にかかる有機金属錯体は、吸着時に構造変化が起こり、細孔の構造が変化するものと考えられる。このように吸着時に結晶構造が変化するため、本発明の選択吸着材料においては、特定の物質(例えば特定のガス)を選択的に吸着することが可能なものとなるものと本発明者らは推察する。このように、本発明の選択吸着材料は、上記一般式(1)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体の特異な結晶の構造や特性(吸着に伴って結晶構造が変化するといった特性)を利用することで特定の物質を選択性高く吸着させることを可能とするものであると本発明者らは推察する。
なお、上記特許文献1に記載の従来の有機金属錯体に関して、該特許文献1の実施例により実際に実証されている有機金属錯体は、ポルフィリン誘導体が特定のカルボン酸金属錯体を介して結合して形成される構造を有するものである。しかしながら、かかる特許文献1の実施例に記載のカルボン酸金属錯体は、構成配位子が酢酸イオンであることから、その細孔が外部とアクセスが容易な構造のものとなる。そのため、上記特許文献1の実施例により実際に実証されている有機金属錯体にガスを吸着させる場合、ガス種によらず、十分な吸着性能を示すことが可能である。これに対して、本発明の選択吸着材料においては、前述のように、カルボン酸金属錯体の構成配位子がアリール基を含むものであり、結晶の集積様式も、前述のようなCH−π相互作用やπ−スタックによるものとなるため、酢酸イオンを利用した場合とは細孔の構造は異なるものとなると考えられる。例えば、カルボン酸金属錯体の構成配位子が酢酸イオンの場合(上記特許文献1の実施例の場合)には、結晶層間で酢酸イオン間の水素結合により構造が固定され、吸着前後で結晶構造は変化しないものと考えられるが、本発明にかかる有機金属錯体は上述のようにCH−π相互作用やπ−スタックにより穏やかに固定された構造を有し、吸着前後において結晶構造が変化するものと考えられる。このような結晶構造の変化に基づいて、本発明の選択吸着材料においては、特定の物質(例えばCOガス等)を選択率高く吸着させることが可能となるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、特定の物質を選択率高く吸着することを可能とする選択吸着材料を提供することが可能となる。
ナフトエ酸銅(II)錯体(前駆体1)の集積構造を結晶X線構造解析の結果に基づいて模式的に示す図面である。 実施例1で得られた有機金属錯体Aの結晶構造を結晶X線構造解析の結果に基づいて模式的に示す図面である。 実施例1で得られた有機金属錯体Aの結晶構造(集積構造)を結晶X線構造解析の結果に基づいて模式的に示す図面である。 実施例1で得られた有機金属錯体Aの結晶構造(特に細孔の構造)を結晶X線構造解析の結果に基づいて模式的に示す図面である。 比較例1で得られた有機金属錯体Cの調製方法から想定される結晶構造を表現した図面である。 比較例1で得られた有機金属錯体Cの調製方法から想定される結晶構造(集積構造)を表現した図面である。 比較例1で得られた有機金属錯体Cの調製方法から想定される結晶構造(集積構造)を、図6とは異なる方向から見た場合について表現した図面である。 実施例2で得られた有機金属錯体B及び比較例1で得られた有機金属錯体Cに関する二酸化炭素(CO)と窒素(N)の吸着等温線を示すグラフである。 実施例2で得られた有機金属錯体Bのクリプトン、メタン、窒素、二酸化炭素の吸脱着等温線をそれぞれ示すグラフである。 実施例2で得られた有機金属錯体Bのメタンの吸脱着等温線を示すグラフに、図9に示すグラフを重ねて記載したグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の選択吸着材料は、下記一般式(1):
[式(1)中、Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ、窒素原子に配位している金属原子を示すか或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示し、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(2):
(式(2)中、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を示し、Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。)
で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体からなることを特徴とするものである。
このような2次元格子構造は、上記一般式(1)で表される構造であり、下記一般式(3):
[式(3)中、M、R〜Rはそれぞれ上記一般式(1)中のM、R〜Rと同義である。]
で表されるポルフィリン誘導体が上記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体(式(1)中のX)を介して結合することにより形成される構造(前記ポルフィリン誘導体が前記カルボン酸金属錯体により架橋された構造)であるといえる(なお、上記一般式(1)中においてXに結合する2本の結合手のうちの一つは上記一般式(2)中の2つのMのうちの一方に結合する結合手であり、2本の結合手のうちのもう一つは上記一般式(2)中の2つのMのもう一方に結合する結合手である)。
このような一般式(1)中のMは同一でも異なっていてもよく、それぞれ、窒素原子に配位している金属原子又は窒素原子に結合している2個の水素原子である。なお、Mが窒素原子に結合している2個の水素原子である場合には、上記一般式(1)中のポルフィリン誘導体の構造部分が、下記一般式(4):
で表されるような構造を有するものとなる。
また、上述のようにMは、2個の水素原子又は金属原子を示す。このようなMとして選択され得る金属原子としては、ポルフィリン環の内部の窒素原子が配位することが可能な金属原子であればよく特に制限されず、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム、鉄、セリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、ケイ素、カルシウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、テクネチウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウム等が挙げられる。このようなMとして選択され得る金属原子としては、配位能力の高さとできた化合物の安定性及び毒性の観点から、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子であることが好ましい。また、Mとしては製造の容易さという観点からは、銅がより好ましい。
また、上記一般式(1)中のR〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれが一価の置換基である。このような一価の置換基としては特に制限されないが、立体障害とピロール環の電子密度の観点から、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、シアノ基、スルホン酸基、メルカプト基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基が好ましく、中でも水素原子、メチル基がより好ましい。
また、R〜Rとして選択され得るハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、中でもフッ素、塩素が好ましい。
また、R〜Rとして選択され得る前記アルキル基、前記ハロゲン化アルキル基、前記アリール基、前記ハロゲン化アリール基としては、炭素数が1〜12(更に好ましくは1〜6)のものがより好ましく、中でも、置換基のかさ高さの観点から、細孔容積を減少させないためにメチル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
また、上記一般式(1)中のXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ上記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体を示す。このような一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体中のRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基である。このようなRがアリール基(芳香環を有する基)であることから、本発明においては細孔が外部からアクセスし難い構造(細孔内が外部に対して閉鎖性の高い空間となるような構造)となり、また、近接したX中のR同士や、2次元格子構造の結晶層同士において、Rのアリール基に起因してCH−π相互作用やπ−スタックに基づく積層等が起こり、結晶が緩く固定された状態となるものと本発明者らは推察しており、これにより、Rがアリール基以外の基である場合と比較して、吸着時に構造を変化させることが可能となるため、特定の物質を選択率高く吸着できるものと本発明者らは推察する。
また、このようなRとして選択され得るアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等が挙げられる。また、このようなアリール基としては炭素数が6〜18(より好ましくは10〜14)のものが好ましい。このような炭素数が前記下限未満では細孔が外部からアクセスし難い構造を取りにくいため、特定の物質を選択的に吸着させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると一般式(2)で表されるカルボン酸錯体の溶解性が低下して、上記一般式(1)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体を製造することが困難となる傾向にある。
また、このようなRとして選択され得るアリール基が有していてもよい置換基(アリール基中の水素原子と置換する基)としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、シアノ基、スルホン酸基、メルカプト基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基が挙げられ、中でも、塩素原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基が好ましい。
また、このようなRとしては、CH−π相互作用やπ−スタックをより効率よく形成できるといった観点から、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントリル基、置換基を有していてもよいピレニル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、このようなRの中でも、合成のし易さの観点からは、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントリル基が更に好ましく、置換基を有していてもよいナフチル基が特に好ましい。なお、合成の容易さ等の観点等からは、Rとして選択され得るアリール基は置換基を有していないことが好ましい。
また、上記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体中のMは同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子である。このようなMとして選択され得る金属原子としては二核構造を形成できる金属原子であればよく特に制限されないが、例えば、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウムが挙げられる。このようなMとして選択され得る金属原子としては、カルボン酸と金属の配位能力の強さの観点から、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム又は鉄が好ましく、中でも銅、ルテニウム、ロジウム又は亜鉛がより好ましい。
このように、本発明にかかる有機金属錯体は、上記一般式(3)で表されるポルフィリン誘導体からなる構造部位が上記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合された、上記一般式(1)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有するものである。このような2次元格子構造を繰り返し単位として有することで、有機金属錯体が細孔を有するものとなる。ここで、本発明にいう細孔とは、上記一般式(1)で表される2次元格子構造が自己集積機能により積層した時に形成される空孔をいう。なお、本発明においては、前記2次元格子構造中のRが前述のようなアリール基であるため、一つの層中の細孔部分において近接するR同士がCH−π相互作用やπ−スタックにより集積して、上記格子構造は歪んだ形状となって細孔の入り口が、アリール基が大きな分子であることにも起因して、非常に狭いものとなり、細孔内部の空間は外部に対して閉鎖性の高い空間となるものと本発明者らは推察する。一方で、CH−π相互作用やπ−スタックは弱い相互作用であるため、吸着時に加圧等により容易に構造が変化して細孔内部と細孔外部との間でアクセスが可能となると本発明者らは推察しており、このような特性を利用することで、本発明においては、特定の物質を吸着する際に結晶構造が変化して、特定の物質に対する選択的な吸着性能を発現させることが可能なものと本発明者らは推察する。
このような有機金属錯体としては、前記2次元格子構造の繰り返し単位が有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径が0.3〜10nm(より好ましくは1〜5nm)であることが好ましい。なお、ここにいう細孔径とは原子のファンデルワールス半径を考慮した時に、他の原子や分子が存在しない空間内の最大距離をいう。このような細孔径が前記下限未満では仮に構造変化が起こって細孔が外部とのアクセスが容易な状態となっても、吸着分子が十分に吸着されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると当初より細孔が外部からのアクセスが容易な構造となり易く、特定の物質を選択的に吸着させることが困難となる傾向にある。
また、本発明にかかる有機金属錯体の比表面積は、100m/g以下であることが好ましく、10m/g以下であることがより好ましい。比表面積が前記上限を超えると、細孔が外部と容易にアクセス可能なものであるものと考えられ、特定の物質を選択的に吸着させることが困難となる傾向にある(例えば、ガスを吸着させる場合、あらゆるガス種を容易に吸着するものとなる傾向にある)。このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式、Langmuir吸着等温式を採用して算出することができる。
このような有機金属錯体を製造するための方法としては特に制限されず、例えば、テトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体(前記一般式(3)で表されるポルフィリン誘導体)を溶媒に溶解させて得られる第一の溶液と、前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体(テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体)を反応用有機溶媒に溶解させて得られる第二の溶液とを混合し、結晶が十分に析出するまで数時間〜数日間放置(場合によっては撹拌)し、その後、析出した結晶をろ過し、反応に用いた溶媒で洗浄し、真空乾燥することにより、前記一般式(1)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体を得る方法を採用することができる。
このようなテトラピリジルポルフィリンやテトラピリジルポルフィリン金属錯体並びにテトラキスモノカルボン酸金属二核錯体は、目的とする本発明の有機金属錯体の構造によって適宜選択されるものである。このようなテトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体の添加量と、テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体の添加量とのモル比としては、バルクで均一な目的物を得るという観点や、収率(ポルフィリンベース)向上の観点から、1:0.1〜1:20程度であることが好ましい。
また、このようなテトラピリジルポルフィリンやテトラピリジルポルフィリン金属錯体を溶解させる溶媒としては特に制限されないが、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等が挙げられる。更に、前記反応用有機溶媒としては特に制限されず、水酸基を有する溶媒等が挙げることができる。このような反応用有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、ペンタン、エチルベンゼン、n−ヘキサン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、クロロホルム、エチルプロピルエーテル、アリルエチルエーテル、アセトン、エチルメチルケトンが挙げられる。
また、前記溶液を混合する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜選択して採用することができ、例えば、細管を用いて細管の下層にテトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体を溶媒に溶解させた溶液を仕込んだ後、テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体をアルコール系溶媒に溶解させた溶液を静かに加える液−液拡散法を採用することができる。
また、結晶が十分に析出するまで数時間〜数日間放置する際に採用する温度条件としては0〜200℃程度が好ましく、室温程度(25℃±10℃)〜80℃程度であることがより好ましい。さらに、結晶が十分に析出するまで数時間〜数日間放置する際に採用する圧力条件としては0.01〜10MPa程度であることが好ましく、0.1〜1MPa程度であることがより好ましい。なお、結晶が十分に析出するまで数日間放置する代わりに混合液を撹拌した場合には数時間〜数日間放置した場合と比較して、反応時間を同一とした場合に、より収量が向上する傾向にある。一方、結晶が十分に析出するまで数日間放置した場合には、一つの結晶がより大きくなる傾向にある。なお、結晶の析出後のろ過、洗浄、真空乾燥の方法は特に制限されず、得られる結晶の種類に応じて、公知の方法を適宜採用することができる。このようにして、有機金属錯体を得ることができる。
また、本発明の選択吸着材料は、前記有機金属錯体からなるものであればよく、他の構成やその形状などは特に制限されるものではない。例えば、前記有機金属錯体そのものが本発明の選択吸着材料を構成していてもよく、或いは、前記有機金属錯体を他の基材に担持せしめて本発明の選択吸着材料が構成されていてもよい。更に、本発明の選択吸着材料の形状は特に限定されず、例えば、粉末、顆粒、膜状、球状、繊維状等を挙げることができる。また、本発明の選択吸着材料は、前記有機金属錯体を円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等に成形したものであってもよい。
また、このような本発明の選択吸着材料の用途としては特に制限されるものではないが、例えば、ガス中の特定の成分(例えばCO)を選択率高く吸着させるための材料等
として利用することができる。このような用途としては、例えば、発電所からの排ガス(排ガス中のCOとNの含有比は一般にCO:15〜16容量%程度、N:70〜75容量%程度であり、排ガス温度は一般に50〜75℃程度であり、圧力は1bar程度である)や、水性ガスシフト反応後のガス(ガス中のCOとHの含有比は、一般にCO:35.5容量%程度、H:61.5容量%程度であり、排ガス温度は一般に40℃程度であり、圧力は30bar程度である)、等といったガス成分からCOを選択率高く吸着して分離するための選択吸着材料としての用途等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
〈前駆体1の製造〉
酢酸銅(II)一水和物400mg(1mmol)とナフトエ酸689mg(4mmol)をメタノール中で混合し、室温(25℃程度)の温度条件下において放置することにより、沈殿物(緑色のブロック状単結晶)を形成した。その後、前記沈殿物をろ取し、室温(25℃程度)の温度条件下において真空乾燥を行することにより、緑色の結晶性の粉末(以下、場合により単に「前駆体1」と称する)を得た。
このようにして得られた前駆体1の単結晶X線構造解析を行なった。このような単結晶X線構造解析においては、X線構造解析装置としてRigaku社製の商品名「XtaLAB P200」を用い、解析ソフトとしてRigaku社製の商品名「Crystal Structure」を用い、測定温度:−100℃とし、解析手法としては直接法(SIR92)を採用した。なお、前駆体1の結晶学的データを表1に示す。このような解析により精度良く構造決定をすることができ、最終的なR因子(観測値と計算値とのずれの程度)は4.25%となった。
また、前記単結晶X線構造解析の結果として、前記解析ソフトにより表示した前駆体1の集積構造を図1に示す。なお、このような解析により、結晶溶媒として細孔中に取り込まれたメタノールや銅(II)に直接配位したメタノールまで精度良く構造決定することができ、構造を完全に収束させることができた。このような表1及び図1に示す結果からも明らかように、得られた緑色の結晶性の粉末はナフトエ酸銅(II)錯体であることが確認された。また、図1に示す結果からも明らかように、ナフトエ酸銅(II)錯体は、ナフチル基同士がπ−スタックやCH−π相互作用により自己集積していた。
〈有機金属錯体Aの製造〉
単結晶X線構造解析用の結晶合成方法の1つである「液−液拡散法」を採用して、以下のようにして有機金属錯体の結晶を合成した。すなわち、先ず、テトラピリジルポルフィリン62mg(0.1mmol)を200mlのクロロホルムに溶解させた溶液(テトラピリジルポルフィン/クロロホルム溶液)を細管(ミクロチューブ)に仕込んだ。次いで、前駆体1(ナフトエ酸銅(II)錯体)をエタノールに溶解させた溶液(前駆体1/エタノール溶液)を準備した。そして、前記細管中の前記テトラピリジルポルフィン/クロロホルム溶液(下層)の上に、前記前駆体1/エタノール溶液を静かに加えて、常圧(0.1MPa程度)、室温(25℃程度)の条件下において、数日間放置し、液−液拡散法により単結晶を析出させた。次に、得られた単結晶をろ過した後、クロロホルムとメタノールの混合溶媒で洗浄し、室温(25℃程度)の温度条件下において真空乾燥を施すことにより、茶色のブロック状単結晶(以下、場合により単に「有機金属錯体A」と称する)を収率90%以上の割合で得た。
このようにして得られた有機金属錯体A(単結晶サイズ:0.2×0.2×0.2mm)の単結晶X線構造解析を行なった。このような単結晶X線構造解析においては、X線構造解析装置としてRigaku社製の商品名「XtaLAB P200」を用い、解析ソフトとしてRigaku社製の商品名「Crystal Structure」を用い、測定温度:−100℃とし、解析手法としては直接法(SHELXS2013)を採用した。このような解析結果として、有機金属錯体Aの結晶学的データを表2に示す。また、このような解析により精度良く構造決定をすることができ、最終的なR因子(観測値と計算値とのずれの程度)は9.87%となった。
表2に示す結果からも明らかなように、有機金属錯体Aは、ナフトエ酸銅(II)錯体を介してテトラピリジルポルフィン錯体が結合された構造を有する錯体(ナフトエ酸銅(II)−銅(II)テトラピリジルポルフィン錯体)であることが確認された。
また、上記解析結果として、前記解析ソフトにより表示した有機金属錯体Aの結晶構造を図2に示す。なお、有機金属錯体Aにおいては特にナフタレン環の構造に歪みが生じ、そのままでは最終的に構造が収束に向かわないことから、歪んだベンゼン環を平滑な正六角形に固定した束縛条件を設定することにより構造決定を行ない、図2を示す結果を得た(なお、前記束縛条件を設定することで最終的には構造が収束に向かい、これにより構造決定ができた)。
図2に示す結果からも明らかなように、有機金属錯体Aの結晶構造は、前駆体1(ナフトエ酸銅(II)錯体:R9がナフチル基でありかつMが銅(II)である上記一般式(2)で表される錯体)がテトラピリジルポルフィン錯体間を架橋した2次元格子構造であった。すなわち、表2及び図2に示す結果から、得られた有機金属錯体Aは、Mが銅(II)(銅の含有率100%)であり、R〜Rがそれぞれ水素原子であり、かつ、Xが上記一般式(2)で表される錯体(式(2)中のRがナフチル基でありかつMが銅(II)である)である、上記一般式(1)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体であることが確認された。
また、図3に、前記解析ソフトにより表示した有機金属錯体Aの2次元格子構造における集積構造を示す。図3に示す結果からも明らかなように、結晶は主にナフタレン環同士のCH−π相互作用(近接するナフタレン環同士の距離:3.338オングストローム)により集積していることが確認された。なお、結晶溶媒のクロロホルム分子が存在していた部分が全て細孔となっており、細孔が多数確認できた。しかしながら、その構造からも明らかなように、細孔は外部との間で閉塞性が高いものであった。なお、このような細孔の状態がより明確となるように、上記ソフトにより解析された細孔の様子(有機金属錯体Aの結晶構造の様子)を図4に示す。図4において塗りつぶされている部分が細孔の空隙部分である。このような図4に示す構造からも、有機金属錯体Aの細孔は外部からのアクセスが困難な閉塞性の高いものであることが分かった。なお、このような有機金属錯体Aの細孔に関して、複数の細孔のうちの最大の細孔の細孔径(原子のファンデルワールス半径を考慮した時に、他の原子や分子が存在しない空間内の最大距離)は、1.9nmであることが分かった。
(実施例2)
〈有機金属錯体Bの製造〉
先ず、酢酸銅(II)一水和物400mg(1mmol)と、ナフトエ酸をメタノール中で混合し、室温(25℃程度)の温度条件下において12時間撹拌することにより前駆体1(ナフトエ酸銅(II)錯体)を調製した(撹拌法)。次いで、前駆体1をエタノールに溶解させた溶液(前駆体1/エタノール溶液)を準備した。次に、前記前駆体1/エタノール溶液をビーカーに入れた後、テトラピリジルポルフィリンをクロロホルムに溶解させた溶液(テトラピリジルポルフィン/クロロホルム溶液)を、前記ビーカー中の前記前駆体1/エタノール溶液の上に加えた後、常圧(0.1MPa程度)、室温(25℃程度)の条件下において、数日間撹拌して単結晶を析出させた。次に、得られた単結晶をろ過した後、クロロホルムとメタノールの混合溶媒で洗浄し、室温(25℃程度)の温度条件下において真空乾燥を施すことにより、茶色のブロック状単結晶(以下、場合により単に「有機金属錯体B」と称する)を収率90%以上の割合で得た。
このようにして得られた有機金属錯体B(粉末状:平均粒子径100nm)と、実施例1で得られた有機金属錯体Aに対して、それぞれ、粉末X線回折を行なったところ、回折パターンが一致したことから、これらの錯体が同一のものであることが分かった。このような結果から、得られた有機金属錯体Bは、実施例1と同様の2次元格子構造を有し、Mが銅(II)(銅の含有率100%)であり、R〜Rがそれぞれ水素原子であり、かつ、Xが上記一般式(2)で表される錯体(式(2)中のRがナフチル基でありかつMが銅(II)である)である、上記一般式(1)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体(ナフトエ酸銅(II)−銅(II)テトラピリジルポルフィン錯体)であることが確認された。また、このようにして得られた有機金属錯体Bに対して、Quantachrome社製の商品名「NOVA 3000e(高速比表面積・細孔分布測定装置)」を用い、100℃で2時間真空乾燥する前処理を施した後、測定温度:−196℃(液体窒素温度)の条件で、窒素ガスの吸脱着等温線を測定し、比表面積、細孔容積を求めたところ、比表面積は1m/g(BET等温吸着式により算出)であった。このような粉末X線回折や比表面積の測定結果と、有機金属錯体Aの2次元格子構造の構造確認の結果とを併せ勘案すれば、有機金属錯体Bは細孔の空隙部分が外部からのアクセスが困難であることが分かった。
また、前記有機金属錯体Bに対して、昇温脱離−質量分析(TD−MS;Thermal Desorption Mass Spectrometry)を行い、加熱により発生するガスを分析して前記有機金属錯体Bの結晶構造の熱安定性を評価した。すなわち、試料として前記有機金属錯体Bを0.6mg用い、Frontier Lab社製の「PY−2020D」とAgilent社製の商品名「6890−5970 GC−MS」とを測定装置として利用し、Heガス雰囲気下において、40℃から500℃の温度範囲において昇温速度が10℃/minである条件で前記試料を加熱して発生するガスを分析した。このような分析により、約180℃からナフタレン(m/z: 128)、ナフトフラノン(m/z: 170)およびナフタレンカルボン酸(m/z: 172)の脱離が確認され、その他の有機溶媒の脱離等は見られなかった。なお、脱離が確認された成分が前記2次元格子構造中の前駆体1に由来する成分であると考えられることから、有機金属錯体Bを加熱しても約180℃まではテトラピリジルポルフィン間を上記一般式(2)で表される錯体(式(2)中のRがナフチル基でありかつMが銅(II)である)が架橋する構造(架橋構造)が分解されることなく保持されることが分かった。すなわち、約180℃よりも低い温度(例えば100℃程度等)で前処理を施したとしても、有機金属錯体Bの結晶の2次元格子構造は十分に維持できることが分かった。
(比較例1)
先ず、酢酸銅(II)一水和物をメタノールに溶解させた溶液をビーカーに入れた後、該ビーカーに、テトラピリジルポルフィリンをクロロホルムに溶解させた溶液を加え、常圧(0.1MPa程度)、室温(25℃程度)の条件下において、終夜撹拌して結晶性粉末を析出させた。次に、得られた結晶性粉末をろ過した後、クロロホルムとメタノールの混合溶媒で洗浄し、室温(25℃程度)の温度条件下において真空乾燥を施すことにより、茶色のブロック状単結晶(以下、場合により単に「有機金属錯体C」と称する)を収率90%以上の割合で得た。
なお、比較のための有機金属錯体Cは、その調製方法から、Mが銅(II)でありかつRがアリール基ではなくメチル基である以外は上記一般式(2)で表される基と同一の基がXとなる、上記一般式(1)で表される2次元格子構造(なお、Mが銅(II)(銅の含有率100%)であり、R〜Rがそれぞれ水素原子である)を繰り返し単位として有する錯体(粉末状:平均粒子径6μm)であることは明らかである。なお、このような比較のための有機金属錯体Cの構造を、その調製方法から想定すると図5〜7に示すような2次元格子構造となることは明らかである。また、このような構造から、比較のための有機金属錯体Cは外部とのアクセスが容易な細孔構造を有するものであることは明らかである。また、比較のための有機金属錯体Cに対して、マイクロトラックベル社製の商品名「BELSORP 18 PLUS」を用い、100℃で2時間真空乾燥する前処理を施した後、測定温度−196℃(液体窒素温度)の条件で、窒素ガスの吸脱着等温線を測定し、比表面積、細孔容積を求めたところ、比表面積は812m/g(BET等温吸着式により算出)であり、細孔容積は0.4737cm/gであった。このような比表面積、細孔容積の測定結果からも比較のための有機金属錯体Cは外部とのアクセスが容易な細孔構造を有するものであることが確認された。
[CO選択吸着特性の評価試験1]
実施例2で得られた有機金属錯体B(粉末状)及び比較例1で得られた有機金属錯体C(粉末状)をそれぞれ用いて、以下のようにして、二酸化炭素(CO)と窒素(N)の吸着等温線をそれぞれ測定した。すなわち、先ず、各有機金属錯体の粉末に対して、80℃で2時間真空乾燥する前処理をそれぞれ施した。次いで、前記前処理後の各有機金属錯体をそれぞれ用いて、測定装置としてマイクロトラックベル社製の商品名「BELSORP−Max」を用いて、測定温度を0℃(273K)に設定して、各有機金属錯体の二酸化炭素(CO)の吸着等温線及び窒素(N)の吸着等温線(圧力[単位:KPa]と試料1gあたりに吸着するガス量(mg/g)との関係を示すグラフ)をそれぞれ求めた(なお、混合ガスではなく、それぞれのガス種を単独で用いて吸着等温線をそれぞれ測定した)。得られた結果を図8に示す。
図8に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた有機金属錯体Bは、圧力が大きくなっても窒素(N)をほとんど吸着しない一方で、圧力が大きくなるのに伴って二酸化炭素(CO)の吸着量がより大きくなっており、COは有意量で吸着できることが分かった。このような結果から、実施例2で得られた有機金属錯体Bは、COをより選択的に(より選択率高く)吸着する材料であることが分かった。これに対して、比較例1で得られた有機金属錯体Cは、圧力が大きくなるのに伴って窒素(N)も二酸化炭素(CO)も吸着量が大きくなることが分かり、ガス種によらず、ガスを十分に吸着するものであることが分かった。
また、2011年に発行された文献である「J. Phys. Chem. C(vol.115)」の第12941頁〜12950頁においても採用されている選択性の計算方法を利用して、COガスの選択性を評価した。すなわち、下記計算式(1):
[選択性]=(q/q)/(p/p) (1)
[式(1)中、qは錯体1gあたりのCOのモル吸着量(単位:mmol/g)を示し、qは錯体1gあたりのNのモル吸着量(単位:mmol/g)を示し、pはCOの分圧(吸着圧力:単位:kPa)を示し、pはNの分圧(吸着圧力:単位:kPa)を示す。]
に基づいて、COガスの選択性を算出した。なお、上記計算式(1)によるガスの選択性の計算に際しては、CO分圧が15kPa程度でありかつN分圧が75kPa程度である混合ガス(発電所の排ガスを模した混合ガス)を吸着したものと仮定して、図8に示す吸着等温線から、各成分の上記分圧値近傍の圧力におけるガスの吸着量(単位:mmol/g)をそれぞれ求めて選択性を計算した。なお、計算に利用した圧力と吸着量の値を表3に示す。
このようにして、上記計算式(1)に表3に示す数値を導入して選択性の値を計算したところ、実施例2で得られた有機金属錯体BのCOガスの選択性は49.6であり、比較例1で得られた有機金属錯体CのCOガスの選択性は22.9であった。かかる選択性の数値が大きな値となるほどCO/Nの吸着選択性(COの選択率)が高いことが示されることから、上記結果より、実施例2で得られた有機金属錯体Bは、COに対する選択性が十分に高く、COをより選択的に(選択率高く)吸着する材料であることが分かった。なお、表3に示す結果からは、実施例2で得られた有機金属錯体BはNをほとんど吸着せず、Nの吸着量はCOの吸着量の約1割程度であることも分かった。
[CO選択吸着特性の評価試験2]
実施例2で得られた有機金属錯体B(粉末状)及び比較例1で得られた有機金属錯体C(粉末状)をそれぞれ用いて、以下のようにして、二酸化炭素(CO)と窒素(N)の吸着量の割合(wt%)をそれぞれ測定した。すなわち、先ず、各有機金属錯体の粉末に対して、70℃で3時間真空乾燥する前処理をそれぞれ施した。次いで、前記前処理後の各有機金属錯体をそれぞれ用い、測定装置として株式会社豊田中央研究所製の商品名「メタン吸蔵量自動測定装置」を用い、27℃(300K)の温度条件下において、圧力を0〜1MPaまで変化させて、有機金属錯体に対する二酸化炭素(CO)の吸着量の割合(wt%)、及び、有機金属錯体に対する窒素(N)の吸着量の割合(wt%)をそれぞれ求めた。これらの測定結果として、圧力が0.1MPa近傍及び1MPaである場合の吸着量の割合(wt%)を表4に示す。なお、参考のために、比表面積の測定時の窒素ガスの吸脱着等温線に基づいて、測定温度−196℃(液体窒素温度:77K)、常圧(0.1MPa)の条件下での有機金属錯体に対する窒素(N)の吸着量の割合(wt%)も表4に示す。
表4に示す測定結果から、比較例1で得られた有機金属錯体Cはガス種によらず、ガスを十分に吸着するものであることが確認されたのに対して、実施例2で得られた有機金属錯体Bは、27℃(300K)の条件下で、二酸化炭素(CO)は吸着するものの窒素(N)の吸着は確認されず(測定誤差はあるものと考えられるがNの吸着量の測定値は0.00wt%)、COを選択的に吸着する材料であることが分かった。なお、有機金属錯体Bに関して、水素(H)の吸着量は未測定ではあるが、沸点で整理すると、実施例2で得られた有機金属錯体Bは沸点が−196℃のNをほとんど吸着しないことが明らかであるため(表4に示す結果においてはNの吸着量は0.00wt%)、沸点が−253℃のHもほとんど吸着しないものと本発明者らは推察している。そのため、実施例2で得られた有機金属錯体Bは、例えば、水性ガスシフト反応後のガスからCOを吸着分離するための材料等としても有用である。
[CO選択吸着特性の評価試験3]
実施例2で得られた有機金属錯体B(粉末状)を用いて、以下のようにして、メタン、クリプトン、窒素、二酸化炭素の吸脱着等温線を求めた。すなわち、先ず、有機金属錯体Bの粉末に対して100℃で3時間真空乾燥する前処理を施した。このような前処理後の有機金属錯体Bの粉末を用い、測定装置として株式会社豊田中央研究所製の商品名「メタン吸蔵量自動測定装置」を用いて、測定温度を27℃(300K)に設定して、圧力を0〜1MPaまで変化させて、ガス種(メタン、クリプトン、窒素、二酸化炭素)ごとに吸脱着等温線をそれぞれ求めた。得られた結果を図9に示す。
図9に示す結果(実施例2で得られた有機金属錯体Bの27℃の温度条件でのクリプトン、メタン、窒素、二酸化炭素の吸脱着等温線)からも明らかなように、圧力1MPaの条件では、実施例2で得られた有機金属錯体Bは、COの吸着量が1.0mmol/gであるのに対して、KrとCHの吸着量はともに0.4mmol/g程度(ほぼ同程度の量)であった。更に、実施例2で得られた有機金属錯体Bは、Nについてはほぼ吸着していなかった(測定誤差のため一部マイナスのプロットもあるが吸着量はほぼ0に近い値であることは明らかである)。このような結果から、有機金属錯体Bは、メタン、クリプトン、窒素、二酸化炭素といったガス種の中から、二酸化炭素(CO)をより選択率高く吸着できる材料であることが分かった。なお、KrとCHとは、分子の大きさ及び沸点などの性質が似ているため吸着量が同程度になったものと推察され、更に、COについては、KrやCHよりも沸点が高いことや極性分子であること等に起因して吸着量がより大きな値となっているものと推察される。このような各ガスの吸着量とガスの沸点との相関関係を考慮すれば、沸点が−253℃の水素(H)の吸着量は未測定ではあるが、沸点が−196℃のNがほとんど吸着されていないことから、Hは上記条件ではほとんど吸着されないものと本発明者らは推察している。
[メタンの吸着量の測定試験]
実施例2で得られた有機金属錯体B(粉末状)を用いて、以下のようにして、メタンの吸着量を測定した。すなわち、先ず、有機金属錯体Bの粉末に対して100℃で3時間真空乾燥する前処理を施した。このような前処理後の有機金属錯体Bの粉末を用い、測定装置としてヒューズ・テクノネット社製の商品名「PCT特性評価装置」を用いて、測定温度を25℃(298K)に設定して、圧力を0〜10MPaまで変化させて、メタンの吸脱着等温線を求めた。得られた結果を図10に示す。なお、図10には、参考のために、図9に示すガス種(メタン、クリプトン、窒素、二酸化炭素)ごとの吸脱着等温線を重ねて示す。
図10に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた有機金属錯体Bの25℃(298K)でのメタンの吸着等温線から、圧力10MPaの条件下において約2.5mmol/gのメタンを吸着することが分かった。このような結果(図10)と図9の結果(ほぼ同等の測定温度で測定された吸着等温線)とを併せ勘案すれば、混合ガスの種類によっては、例えば、メタンを選択的に吸着させるために利用することも可能であることが分かった。なお、図10において重ねて記載された他のガス種の吸着量(図9の結果)を併せ勘案すると、実施例2で得られた有機金属錯体Bは、他のガス種の比較してCOをより選択率高く吸着できることが分かった。
以上説明申し上げましたとおり、上述のCO選択吸着特性の評価試験1〜3やメタンの吸着試験等の結果から、実施例2で得られた有機金属錯体Bからなる本発明の選択吸着材料は、ガス選択吸着性を有していることが確認され、混合ガスから特定のガスを分離したり、特定のガス種を濃縮するために利用する材料等として利用できることが分かった。
以上説明したように、本発明によれば、特定の物質を選択率高く吸着することを可能とする選択吸着材料を提供することが可能となる。したがって、本発明の選択吸着材料は、特定のガスの分離や濃縮に利用するための材料等として特に有用である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1):
    [式(1)中、Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ、窒素原子に配位している金属原子を示すか或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示し、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(2):
    (式(2)中、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を示し、Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。)
    で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
    で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体からなることを特徴とする選択吸着材料。
  2. 前記一般式(2)中のRがそれぞれ、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントリル基及び置換基を有していてもよいピレニル基からなる群から選択される基であることを特徴とする請求項1に記載の選択吸着材料。
  3. 前記一般式(1)中のMがそれぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子又は2個の水素原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の選択吸着材料。
  4. 前記一般式(2)中のMがそれぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される二核構造を形成できる金属原子であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の選択吸着材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114878760A (zh) * 2022-07-11 2022-08-09 国网天津市电力公司电力科学研究院 一种用于一氧化碳在铑掺杂硒化铂上吸附分析方法

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