以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、第1実施形態に係る積層コイル部品1の全体的な構成について、図1〜4を参照しつつ説明する。
図1に示すように、積層コイル部品1は、素体2と、素体2の両端部にそれぞれ配置された一対の端子電極4、5とを備えている。
素体2は、直方体形状を呈している。素体2は、その外表面として、互いに対向する一対の端面2a、2bと、一対の端面2a、2bを連結するように一対の端面2a、2bの対向方向に延びる四つの側面2c、2d、2e、2fと、を有している。側面2dは、たとえば積層コイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基板、または、電子部品等)に実装する際、他の電子機器と対向する面(すなわち、実装面)として規定される。
端面2aと端面2bとの対向方向(図中のX方向)と、側面2cと側面2dとの対向方向(図中のZ方向)と、側面2eと側面2fとの対向方向(図中のY方向)とは、互いに略直交している。直方体形状には、角部および稜線部が面取りされている直方体の形状、並びに、角部および稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
素体2は、積層構造を有しており、図2(a)〜(l)に示す複数の磁性体層30〜32が積層されて構成されている。複数の磁性体層30〜32は、素体2の側面2cと側面2dとの対向方向に積層されている。すなわち、複数の磁性体層30〜32の積層方向は、素体2の側面2cと側面2dとの対向方向(図示のZ方向)と一致している。以下、素体2の磁性体層30〜32の積層方向(すなわち、側面2cと側面2dとの対向方向)を「Z方向」ともいう。複数の磁性体層30〜32は、それぞれ略矩形形状を呈している。実際の素体2では、複数の磁性体層30〜32は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
各磁性体層30〜32は、たとえば磁性体材料(Ni−Cu−Zn系フェライト材料、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト材料、またはNi−Cu系フェライト材料等)の粉末を含む磁性ペーストの焼結体から構成されている。すなわち、素体2は、磁性を有している。磁性ペーストには、Fe合金等の粉末が含まれていてもよい。
端子電極4は、素体2の端面2aに配置されており、端子電極5は、素体2の端面2bに配置されている。すなわち、端子電極4と端子電極5とは、端面2aと端面2bとの対向方向に互いに離間して位置している。端子電極4、5は、平面視で略矩形状を呈しており、その角が丸められている。端子電極4、5は、導電材(たとえば、AgまたはPd等)を含んでいる。端子電極4、5は、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末またはPd粉末等)およびガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。端子電極4、5には、電気めっきが施されることにより、その表面にはめっき層が形成されている。電気めっきには、たとえばNi、Sn等が用いられる。
端子電極4は、端面2a上に位置する電極部分4aと、側面2d上に位置する電極部分4bと、側面2c上に位置する電極部分4cと、側面2e上に位置する電極部分4dと、側面2f上に位置する電極部分4eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分4aは、端面2aの全面を覆っている。電極部分4bは、側面2dの一部を覆っている。電極部分4cは、側面2cの一部を覆っている。電極部分4dは、側面2eの一部を覆っている。電極部分4eは、側面2fの一部を覆っている。5つの電極部分4a、4b、4c、4d、4eは、一体的に形成されている。
端子電極5は、端面2b上に位置する電極部分5aと、側面2d上に位置する電極部分5bと、側面2c上に位置する電極部分5cと、側面2e上に位置する電極部分5dと、側面2f上に位置する電極部分5eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分5aは、端面2bの全面を覆っている。電極部分5bは、側面2dの一部を覆っている。電極部分5cは、側面2cの一部を覆っている。電極部分5dは、側面2eの一部を覆っている。電極部分5eは、側面2fの一部を覆っている。5つの電極部分5a、5b、5c、5d、5eは、一体的に形成されている。
続いて、本実施形態の素体2の内部に形成されたコイルC1について、図2〜4を参照しつつ説明する。
図2〜4に示すように、コイルC1は、複数層の導体パターン21、22、23、24を螺旋状に繋げることによって構成されている。図2(a)〜(l)では、複数層の導体パターン21、22、23、24を、側面2dから側面2cに向かって積層される順に示している。
図2(a)に示すように、最も側面2d側に位置する磁性体層30(第1の層)上に導体パターン21が形成されており、導体パターン21は、コイルパターン11と引出しパターン13とで構成されている。コイルパターン11は、略環状に巻かれている。コイルパターン11の一端部は、引出しパターン13に接続されている。引出しパターン13は、側面2a側の辺まで延びて、その端部が側面2aに露出している。コイルパターン11の他端部には、スルーホール導体17が接続される接続部18が設けられている。
図2(b)に示すように、導体パターン21が形成された磁性体層30上には、略環状に巻かれたコイルパターンで構成された導体パターン22が形成された磁性体層31(第2の層)が重ねられている。導体パターン22の両端部にはそれぞれ接続部18が設けられており、導体パターン22の一端部に設けられた接続部18と導体パターン21のコイルパターン11の接続部18とが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により互いに接続されている。
図2(c)に示すように、導体パターン22が形成された磁性体層31上には、略環状に巻かれたコイルパターンで構成された導体パターン23が形成された磁性体層31が重ねられている。導体パターン23の両端部にはそれぞれ接続部18が設けられており、導体パターン23の一端部に設けられた接続部18と導体パターン22の他端部に設けられた接続部18とが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により互いに接続されている。
積層コイル部品1では、導体パターン22が形成された磁性体層31と導体パターン23が形成された磁性体層31とが交互に重ねられている。具体的には、図2(b)〜(j)に示すように、導体パターン22がそれぞれ形成された5層の磁性体層31と導体パターン23が形成された4層の磁性体層31とが交互に重ねられている。
図2(k)に示すように、最も側面2c側に位置する導体パターン24が磁性体層31上に形成されている。導体パターン24は、コイルパターン12と引出しパターン14とで構成されている。コイルパターン12は、略U字状に巻かれている。コイルパターン12の一端部は、引出しパターン14に接続されている。引出しパターン14は、側面2b側の辺まで延びて、その端部が側面2bに露出している。コイルパターン12の他端部には接続部18が設けられており、該接続部18と導体パターン22の接続部18とが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により接続されている。
導体パターン24が形成された磁性体層31上には、図2(k)に示すように、導体パターンが形成されていない磁性体層32(第1の層)が重ねられている。
複数の導体パターン21、22、23、24は、Z方向から見て互いに重なり合っている部分を有するように、Z方向に互いに離間して配置されている。導体パターン21、22、23、24の接続部18同士は、その接続部同士の間に位置しているスルーホール導体17により互いに層間接続されている。導体パターン21〜24の接続部18同士がスルーホール導体17を介して互いに層間接続されていることにより、導体パターン21〜24は互いに電気的に接続されている。これにより、導体パターン21〜24を含むコイルC1が素体2内に形成されている。すなわち、積層コイル部品1は、素体2内に、コイルC1を備えている。コイルC1の軸心は、Z方向に沿って延びている。
コイルC1の両端部(すなわち、導体パターン21のコイルパターン11の一端部、および、導体パターン24のコイルパターン12の一端部)に接続された引出しパターン13、14はそれぞれ、コイルC1の各端部から素体2の側面2a、2bまで延びて、該側面2a、2bにおいて端部が露出している。素体2の側面2a、2bに露出した引出しパターン13、14の各端部は、該側面2a、2bに設けられる上述の端子電極4、5によって覆われる。
次に、上述した積層コイル部品1を作製する手順の一例について説明する。
まず、上述した磁性体層30〜32となるべき磁性グリーンシートと、導体パターン21〜24およびスルーホール導体17となるべき導電性ペーストパターンとを、印刷法等によって順次積層することにより、積層体を得る。
磁性グリーンシートは、磁性ペーストを塗布して乾燥させることによって形成される。磁性ペーストは、上述した磁性体材料の粉末と有機溶剤および有機バインダ等とを混合して作製される。導電性ペーストパターンは、導電性ペーストを塗布して乾燥させることによって形成される。導電性ペーストは、上記の導電性金属粉末と有機溶剤および有機バインダ等とを混合して作製される。
続いて、上記積層体を個々の積層コイル部品1の寸法形状になるように切断する。これにより、グリーンチップが得られる。続いて、得られたグリーンチップのバレル研磨をおこなう。これにより、角部または稜線が丸められたグリーンチップが得られる。続いて、バレル研磨されたグリーンチップを所定の条件で焼成して、素体2を得る。導電性ペーストパターンの焼結体として、導体パターン21〜24およびスルーホール導体17が構成される。このとき、素体2の側面2a、2bには、導体パターン21のコイルパターン11の一端部、および、導体パターン24のコイルパターン12の一端部が露出している。
続いて、素体2の外表面に端子電極4、5となるべき導電性ペーストを塗布し、所定条件にて熱処理をおこない、端子電極4、5を焼付形成する。このとき、素体2の側面2a、2bに露出した引出しパターン13、14の各端部が端子電極4、5によって覆われる。その後、端子電極4、5の表面にめっきを施す。以上の手順により、上述した積層コイル部品1が得られる。
ここで、複数の磁性体層31となる磁性グリーンシートはいずれも、グリーンチップの形態で焼成される際において同一(または実質的に同一)の熱収縮率を有しているが、磁性体層31となる磁性グリーンシートと磁性体層30、32となる磁性グリーンシートとではグリーンチップの形態で焼成される際の熱収縮率が異なっている。具体的には、磁性体層30、32となる磁性グリーンシートは、磁性体層31となる磁性グリーンシートの熱収縮率よりも高い熱収縮率を有するように調整されている。このような熱収縮率の調整は、たとえば、磁性体層の形成に用いる磁性ペーストの材料や組成比を変えることにより実現可能である。
磁性体層30、32となる磁性グリーンシートは、焼成されたときに磁性体層31となる磁性グリーンシートよりも大きく収縮し、図3、4に示すように、Z方向から見たときの側面2cの部分および側面2dの部分の寸法が狭まる。その結果、図5(a)に示すように、Z−X平面に平行な断面(すなわち、素体2の積層方向と側面2bの法線方向とで張られる平面に平行な断面)において、素体2の側面2cに最も近い磁性体層32が、引出しパターン14を介して積層方向で隣り合う磁性体層31よりも、側面2bに関して後退している。また、引出しパターン14の磁性体層32と接する面(図5(a)における上面)14aが磁性体層32の側面2b側の縁E1に達している。さらに、引出しパターン14の磁性体層31と接する面(図5(a)における下面)14bも、磁性体層31の側面2b側の縁E2に達している。そして、素体2の側面2bから露出する引出しパターン14の端面14cは、両縁E1、E2の間において、素体2の積層方向(Z方向)に対して傾斜している。
上記態様の積層コイル部品1においては、図5(b)に示すような磁性体層32が磁性体層31よりも側面2bに関して後退していない積層コイル部品に比べて、素体2の側面2bに露出する引出しパターン14の端面14cの面積が広く、すなわち、引出しパターン14の端部の露出面積が広くなっている。
上述した積層コイル部品1では、引出しパターン14の端部の露出面積が拡大していることで、側面2bに設けられる端子電極5と引出しパターン14との接触面積の拡大が図られている。端子電極5と引出しパターン14との接触面積が拡大すると引出しパターン14と端子電極5との接合強度が高まるため、上記積層コイル部品1においては、引出しパターン14と端子電極5との接合強度の向上が実現されている。
なお、引出しパターン13についても、上記引出しパターン14同様、Z−X平面に平行な断面において、素体2の側面2dに最も近い磁性体層30が、引出しパターン13を介して積層方向で隣り合う磁性体層31よりも、側面2aに関して後退している。また、引出しパターン13の磁性体層30と接する面が磁性体層30の側面2a側の縁に達している。さらに、引出しパターン13の磁性体層31と接する面も、磁性体層31の側面2a側の縁に達している。そして、素体2の側面2aから露出する引出しパターン13の端面は、両縁の間において、素体2の積層方向(Z方向)に対して傾斜している。
そのため、素体2の側面2aに露出する引出しパターン13の端面の面積が広く、すなわち、引出しパターン13の端部の露出面積が広くなっている。したがって、上記積層コイル部品1においては、引出しパターン13と端子電極4との接合強度の向上も実現されている。
次に、第2実施形態に係る積層コイル部品1Aの全体的な構成について、図6〜9を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る積層コイル部品1Aは、上述した端子電極4、5とは異なる形状の端子電極4A、5A、および、上述したコイルC1とは異なる形状のコイルC2を備えている点で第1実施形態に係る積層コイル部品1と異なり、それ以外の構成は同一または同様である。
端子電極4Aは、図8に示すようにL字状の断面を有しており、端面2a上に位置する電極部分4aと、側面2d上に位置する電極部分4bと、の2つの電極部分を含んでいる。電極部分4aは、端面2aの側面2d側の一部を覆っている。電極部分4bは、側面2dの一部を覆っている。2つの電極部分4a、4bは、一体的に形成されている。
端子電極5も、図8に示すようにL字状の断面を有しており、端面2b上に位置する電極部分5aと、側面2d上に位置する電極部分5bと、の2つの電極部分を含んでいる。電極部分5aは、端面2bの側面2d側の一部を覆っている。電極部分5bは、側面2dの一部を覆っている。2つの電極部分5a、5bは、一体的に形成されている。
続いて、本実施形態の素体2の内部に形成されたコイルC2について、図7〜9を参照しつつ説明する。
図7〜9に示すように、コイルC2は、複数層の導体パターン21A、21B、22A、22B、23A、23B、24Aを二重螺旋状に繋げることによって構成されている。図7(a)〜(l)では、複数層の導体パターン21A、21B、22A、22B、23A、23B、24Aを、側面2dから側面2cに向かって積層される順に示している。
図7(a)に示すように、最も側面2d側に位置する磁性体層30上に導体パターン21A、21Bが形成されている。導体パターン21Aは、コイルパターン11Aと引出しパターン13Aとで構成されている。コイルパターン11Aは、磁性体層30の短辺に沿う略I字状を呈している。コイルパターン11Aの一端部は、引出しパターン13Aに接続されている。引出しパターン13Aは、側面2a側の辺まで延びて、その端部が側面2aに露出している。コイルパターン11Aの他端部には、スルーホール導体17が接続される接続部18Aが設けられている。導体パターン21Bは、コイルパターン11Bと引出しパターン14Aとで構成されている。コイルパターン11Bは、磁性体層30の長辺に沿う略I字状を呈している。コイルパターン11Bの一端部は、引出しパターン14Aに接続されている。引出しパターン14Aは、側面2b側の辺まで延びて、その端部が側面2bに露出している。コイルパターン11Bの他端部には、スルーホール導体17が接続される接続部18Bが設けられている。
図7(b)に示すように、導体パターン21A、21Bが形成された磁性体層30上には、略U字状に巻かれたコイルパターンで構成された導体パターン22A、22Bが形成された磁性体層31が重ねられている。導体パターン22Aの両端部にはそれぞれ接続部18Aが設けられており、導体パターン22Aの一端部に設けられた接続部18Aと導体パターン21Aのコイルパターン11Aの接続部18Aとが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により互いに接続されている。同様に、導体パターン22Bの両端部にもそれぞれ接続部18Bが設けられており、導体パターン22Bの一端部に設けられた接続部18Bと導体パターン21Bのコイルパターン11Bの接続部18Bとが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により互いに接続されている。
図7(c)に示すように、導体パターン22A、22Bが形成された磁性体層31上には、略U字状に巻かれたコイルパターンで構成された導体パターン23A、23Bが形成された磁性体層31が重ねられている。導体パターン23Aの両端部にはそれぞれ接続部18Aが設けられており、導体パターン23Aの一端部に設けられた接続部18Aと導体パターン22Aの他端部に設けられた接続部18Aとが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により互いに接続されている。同様に、導体パターン23Bの両端部にもそれぞれ接続部18Bが設けられており、導体パターン23Bの一端部に設けられた接続部18Bと導体パターン22Bの他端部に設けられた接続部18Bとが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により互いに接続されている。
積層コイル部品1Aでは、導体パターン22A、22Bが形成された磁性体層31と導体パターン23A、23Bが形成された磁性体層31とが交互に重ねられている。具体的には、図7(b)〜(j)に示すように、導体パターン22A、22Bがそれぞれ形成された5層の磁性体層31と導体パターン23A、23Bが形成された4層の磁性体層31とが交互に重ねられている。
図7(k)に示すように、最も側面2c側に位置する導体パターン24Aが磁性体層31上に形成されている。導体パターン24Aは、略環状のコイルパターン12で構成されている。導体パターン24Aの一端部には接続部18Aが設けられており、該接続部18Aと導体パターン22Aの接続部18Aとが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により接続されている。また、導体パターン24Aの他端部には接続部18Bが設けられており、該接続部18Bと導体パターン22Bの接続部18Bとが、磁性体層31を貫くスルーホール導体17により接続されている。
導体パターン24Aが形成された磁性体層31上には、図7(k)に示すように、導体パターンが形成されていない磁性体層32が重ねられている。
複数の導体パターン21A、21B、22A、22B、23A、23B、24Aは、Z方向から見て互いに重なり合っている部分を有するように、Z方向に互いに離間して配置されている。導体パターン21A、21B、22A、22B、23A、23B、24Aの接続部18A同士および接続部18B同士は、その接続部同士の間に位置しているスルーホール導体17により互いに層間接続されている。導体パターン21A、21B、22A、22B、23A、23B、24Aの接続部18A同士および接続部18B同士がスルーホール導体17を介して互いに層間接続されていることにより、導体パターン21A、21B、22A、22B、23A、23B、24Aは互いに電気的に接続されている。これにより、導体パターン21A、21B、22A、22B、23A、23B、24Aを含むコイルC2が素体2内に形成されている。すなわち、積層コイル部品1Aは、素体2内に、コイルC2を備えている。コイルC2の軸心は、Z方向に沿って延びている。
コイルC2の両端部(すなわち、導体パターン21Aのコイルパターン11Aの一端部、および、導体パターン21Bのコイルパターン11Bの一端部)に接続された引出しパターン13A、14Aはそれぞれ、コイルC2の各端部から素体2の側面2a、2bまで延びて、該側面2a、2bにおいて端部が露出している。素体2の側面2a、2bに露出した引出しパターン13A、14Aの各端部は、該側面2a、2bに設けられる上述の端子電極4A、5Aによって覆われる。
そして、第2実施形態においても、複数の磁性体層31となる磁性グリーンシートはいずれも、グリーンチップの形態で焼成される際において同一(または実質的に同一)の熱収縮率を有しているが、磁性体層31となる磁性グリーンシートと磁性体層30、32となる磁性グリーンシートとではグリーンチップの形態で焼成される際の熱収縮率が異なっている。具体的には、磁性体層30、32となる磁性グリーンシートは、磁性体層31となる磁性グリーンシートの熱収縮率よりも高い熱収縮率を有するように調整されている。
そのため、磁性体層30、32となる磁性グリーンシートは、焼成されたときに磁性体層31となる磁性グリーンシートよりも大きく収縮し、図8、9に示すように、Z方向から見たときの側面2cの部分および側面2dの部分の寸法が狭まる。その結果、第1実施形態同様、図10(a)に示すように、Z−X平面に平行な断面において、素体2の実装面2dに最も近い磁性体層30が、引出しパターン13Aを介して積層方向で隣り合う磁性体層31よりも、側面2aに関して後退している。また、引出しパターン13Aの磁性体層30と接する面(図10(a)における上面)13aが磁性体層32の側面2a側の縁E1に達している。さらに、引出しパターン14の磁性体層31と接する面(図10(a)における下面)13bも、磁性体層31の側面2a側の縁E2に達している。そして、素体2の側面2aから露出する引出しパターン13Aの端面13cは、両縁E1、E2の間において、素体2の積層方向(Z方向)に対して傾斜している。
上記態様の積層コイル部品1Aにおいては、第1実施形態に係る積層コイル部品1同様、磁性体層30が磁性体層31よりも側面2aに関して後退していない積層コイル部品に比べて、素体2の側面2aに露出する引出しパターン13Aの端面13cの面積が広く、すなわち、引出しパターン13Aの端部の露出面積が広くなっている。
上述した積層コイル部品1Aでは、引出しパターン13Aの端部の露出面積が拡大していることで、側面2aに設けられる端子電極4Aと引出しパターン13Aとの接触面積の拡大が図られている。端子電極4Aと引出しパターン13Aとの接触面積が拡大すると引出しパターン13Aと端子電極4Aの接合強度が高まるため、上記積層コイル部品1Aにおいては、引出しパターン13Aと端子電極4Aとの接合強度の向上が実現されている。
なお、引出しパターン14Aについても、上記引出しパターン13A同様、Z−X平面に平行な断面において、磁性体層30が、引出しパターン14Aを介して積層方向で隣り合う磁性体層31よりも、側面2bに関して後退している。また、引出しパターン14Aの磁性体層30と接する面が磁性体層30の側面2b側の縁に達している。さらに、引出しパターン14Aの磁性体層31と接する面も、磁性体層31の側面2b側の縁に達している。そして、素体2の側面2bから露出する引出しパターン14Aの端面は、両縁の間において、素体2の積層方向(Z方向)に対して傾斜している。
そのため、素体2の側面2bに露出する引出しパターン14Aの端面の面積が広く、すなわち、引出しパターン14Aの端部の露出面積が広くなっている。したがって、上記積層コイル部品1Aにおいては、引出しパターン14Aと端子電極5Aとの接合強度の向上も実現されている。
さらに、第2実施形態に係る積層コイル部品1Aにおいては、図10(a)に示すように、素体2の側面2aから後退した磁性体層30の部分に端子電極4Aが部分的に入り込んでいる。そのため、図5(b)に示すような磁性体層30が磁性体層31よりも側面2aに関して後退していない積層コイル部品に比べて、端子電極4Aの側面2aにおける厚さを薄くすることができる。たとえば、図5(b)に示す積層コイル部品では、素体2の側面2aに対して端子電極4Aが厚さdだけ出っ張っているが、第2実施形態に係る積層コイル部品1Aにおいては、素体2の側面2aから後退した磁性体層30の部分に端子電極4Aが部分的に入り込むことで、素体2の側面2aに対する端子電極4Aの厚さをより薄くすることができ、端子電極4Aが素体2の側面2aから出っ張る事態を抑制することができる。
このように、第2実施形態に係る積層コイル部品1Aでは、側面2aにおける端子電極4Aの薄化が図られているため、規定の設置領域に、より大きな専有面積の素体2を配置することができ、そのような素体2内により大きなコイルC2を形成することができる。
なお、積層コイル部品は、上述した実施形態に限らず、様々に変形することができる。 たとえば、引出しパターンの一方面(たとえば、図5(a)の引出しパターンの面14a)は、必ずしも、第1の層(たとえば、図5(a)の磁性体層32)の側面側の縁E1に達していなくてよい。たとえば、図11に示すような態様であってもよい。図11に示した態様はいずれも、引出しパターン14の磁性体層32と接する面14aは磁性体層32の側面2b側の縁E1まで達しておらず、引出しパターン14の端部が磁性体層32から露出している。これらの態様であっても、素体2の側面2bに露出する引出しパターン14の端面の面積が広く、すなわち、引出しパターン14の端部の露出面積が広くなっている。そのため、引出しパターンと端子電極との接合強度の向上が実現される。
ただし、図5(a)に示したように、引出しパターンの一方面が第1の層の側面側の縁に達している場合には、素体の側面と引出しパターンの端面とが連続的な面となり、引出しパターンの端面周辺に鋭い凹凸が形成されない。そのため、素体の側面に端子電極を焼付形成する際に、熱収縮に起因するクラックや空隙が、素体と端子電極との界面に生じる事態が抑制され、素体と端子電極との接合不良が効果的に抑制され得る。
また、素体2については、磁性体材料で構成された態様を示したが、非磁性体材料で構成されていてもよい。すなわち、素体2を構成する層が、磁性体層ではなく非磁性体層であってもよい。非磁性体層は、たとえば非磁性体材料を含むセラミックグリーンシートを焼成して得られる焼成体で構成され得る。非磁性体材料としては、たとえばCu−Zn系フェライト、誘電体材料、ガラスセラミック材料等が挙げられる。