本発明者らは、従来の課題を改善するために、圧電素子の伸縮を直接弁体に伝えて駆動させ、且つ、弁体が弁座から引上げられる機構を設け、燃料を噴孔から噴射する燃料噴射装置を開発した。以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
本発明の燃料噴射装置の実施形態について図1乃至図11を用いて説明する。本実施例の目的は、圧電素子の伸縮を直接弁体に伝えて駆動させ、且つ弁体が弁座から引上げられたときに燃料を噴射する燃料噴射装置において、燃料の圧力損失を低減し種々の寸法関係を最適に設定することである。本実施例によれば、燃料に作用する圧力損失を低減できることから、噴霧性能の悪化を抑制することが可能となる。
図1は、本発明の一実施例に係る燃料噴射弁100の構成を示す断面図である。図2Aは、図1の弁体上流側シート部1a(図1のA部)の近傍を拡大して示す拡大断面図である。図2Bは、図1の弁体下流側シート部1b(図1のB部)の近傍を拡大して示す拡大断面図である。図3は、図1のベローズ体8の近傍を拡大して示す拡大断面図である。図4は、図1のダンパー体12の近傍を拡大して示す拡大断面図である。
本発明の一実施例に係る燃料噴射弁100の構成について、図1を参照して説明する。なお、以下の説明において、上流側及び下流側は、燃料の流れ方向における上流側及び下流側を表す。また、燃料噴射弁100の噴孔2bが設けられる側の端部を先端部(先端側の端部)と呼び、先端部に対して反対側の端部を基端部(基端側の端部)と呼ぶ。先端部は下流側の端部であり、基端部は上流側の端部である。また、説明の中で使用する上下方向を、図1に基づいて定義する。すなわち、基端部は先端部に対して上方にあり、先端部は基端部に対して下方にある。この上下方向は説明を簡便にするために定義するものであり、燃料噴射弁100の実装状態における上下方向とは関係が無い。
図1、図2Bに示すように、ノズル体3の下流側(先端側又は内燃機関側)には、ノズル体3と同軸上に下流側弁座部材(先端側弁座部材)2が接合されている。弁体1は下流側弁座部材2の上流側に配設されている。弁体1はノズル体3に内包され、ノズル体3に対して同軸状に配設されている。そして弁体1は、ノズル体3の内部で、ノズル体3の中心軸線100Aに沿う方向に、移動可能に設けられている。すなわち弁体1は、軸方向に変位可能に構成されている。さらに弁体1は、軸方向において燃料の流れる方向の上流側に配設された弁体上流側シート部1aと、下流側に配設された弁体下流側シート部1bとを有する。なおノズル体3の中心軸線は、燃料噴射弁100の中心軸線100Aに一致し、中心軸線100Aと同軸に構成されている。
図1、図2Aに示すように、ノズル体3と弁体1との間には、弁体1を上流側(基端側)に向けて付勢する第一付勢部材4が設置される。すなわち第一付勢部材4は、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aと当接する方向に弁体1を付勢する。本実施例の場合、第一付勢部材4はコイルスプリングで構成している。
図1、図3に示すように、弁体1の上流側には、燃料を封止するベローズ体(シール体)8が設けられている。ベローズ体8の上流側には、駆動素子11が弁体1及びベローズ体8と同軸上に位置するように設けられている。すなわち駆動素子11は、弁体上流側シート部1aに対して弁体下流側シート部1bが設けられた側とは反対側に設けられている。駆動素子11が収容された空間はベローズ体8により封止され、駆動素子11は燃料から遮蔽されている。
図1、図4に示すように、駆動素子11の上流側には構成部品の線膨張を相殺するためのダンパー体12が配設されている。ダンパー体12の上流側には、ダンパー体12の位置を固定する固定部品14が配設されている。駆動素子11及びベローズ体8の外周にはケーシング体16が設けられ、駆動素子11及びベローズ体8はケーシング体16に内包されている。ケーシング体16は二重円管構造を有し、二重円管で形成される隙間(内側の円管と外側の円管との間の隙間)に燃料通路を形成している。ケーシング体16の上流側に上部ケーシング13が接合されている。
燃料は、上部ケーシング13の燃料供給口13aから供給され、ケーシング体16が有する燃料通路を通り、弁体1の弁体上流側シート部1aに至る。弁体上流側シート部1aを通過した燃料は、弁体1とノズル体3との隙間を流れて、弁体1の弁体下流側シート部1bに至る。弁体下流側シート部1bを通過した燃料は噴孔2bから燃料噴射弁100の外部、例えば内燃機関に噴射され、燃料噴霧FSが生成される。
次に各部の構造について、詳細に説明する。
図2Bに示すように、下流側弁座部材2は下流側弁座2aと噴孔2bとを有する。噴孔2bは下流側弁座2aの下流側に設けられる。下流側弁座2aに弁体1の弁体下流側シート部1bが当接することにより、下流側弁座2aと弁体下流側シート部1bとの間の燃料通路が閉じられて閉弁し、下流側弁座2aから弁体下流側シート部1bが離間することにより、下流側弁座2aと弁体下流側シート部1bとの間の燃料通路が開かれて開弁する。このように弁体下流側シート部1bは、下流側弁座2aに当接する当接部を構成する。弁体下流側シート部1bが下流側弁座2aに当接することにより下流側燃料通路が閉じられ、弁体下流側シート部1bが下流側弁座2aから離間することにより下流側燃料通路が開かれる。
弁体下流側シート部1bが下流側弁座2aから離間することにより、下流側弁座2aと弁体下流側シート部1bとの間の燃料通路を流下した燃料は、噴孔2bから噴射される。このとき噴孔2bは、噴射した燃料が所望の噴霧を形成することができるように、形状(形、断面積、長さ等)や数が決められている。噴孔2bが形成される下流側弁座部材2は、必要とされる噴霧を形成するための部品である。
下流側弁座部材2はノズル体3の下流側端部の内周側に挿入されて固定されている。下流側弁座部材2は下流側端部の外面側に球状凸形状部2cを有し、内側に円錐面又は球面に形成された内面2dを有している。下流側弁座2aは下流側弁座部材2の内面2dに形成されている。
燃料を噴射するための噴孔2bは、球状凸形状部2cの箇所に1箇所以上開口される。この噴孔2bは球状凸形状部2cの外面から内側の円錐面又は球面2dまで貫通している。噴孔2bは、中心軸線2bA方向に単一の直径で形成される場合と、直径が異なる複数の孔を中心軸線2bA方向に連結した段付きの形状で形成される場合とがある。本実施例の噴孔2bは、2つの孔を連結した形状であり、下流側の孔の直径が上流側の孔の直径よりも大きい。しかし噴孔2bの形状は、この形状に限定される訳ではなく、その他の形状であってもよい。
下流側弁座部材2の円錐面又は球面2dには弁体1の弁体下流側シート部1bが衝突するために、高硬度、溶接性、機械的特性の良好な材料(例えば、SUS420J2の熱処理材)で製作する。
弁体1は、内燃機関へ燃料が洩れることを防止するために、弁体1の上流側部分と下流側部分とに分けられ、各部分に外方に向かって凸形状となる略球面状のシート部を具備する。弁体1の上流側部分に設けられる球面状シート部が弁体上流側シート部1aであり、弁体1の下流側部分に設けられる球面状シート部が弁体下流側シート部1bである。
図2A、図3に示すように本実施例では、弁体1の上流側端部に弁体中間部材1cとの嵌合凸部1eが設けられている。このため、弁体上流側シート部1aは弁体1の上流側端部よりも少し下流側(先端側)に寄った位置に設けられている。弁体上流側シート部1aには弁体1の衝突力が加わるので、嵌合凸部1eのように外径が細い箇所とのつなぎ部1dにはR部を形成し、衝撃による応力を緩和する構造にするとよい。一方、弁体下流側シート部1bは弁体1の下流側端部に設けられている。弁体1の詳細動作は図5にて説明する(後述)。
図2Bに示すように、弁体1はノズル体3の内面との摺動部18を1箇所以上有している。摺動部18は円筒形を一部切り欠き、流路を形成することもある。弁体1の弁体下流側シート部1bは下流側弁座部材2のテーパー面に衝突するために、高硬度、溶接性、機械的特性も良好な材料(例えば、SUS420J2の熱処理材)で製作する。
ノズル体3は弁体1を内包し、その内周面で、弁体1を中心軸線100Aに沿う方向に摺動可能に案内する。ノズル体3は噴霧位相を決めるため、下流側弁座部材2との接合時の位置あわせに必要な形状(例えば平面)を具備する。ノズル体3の先端部近傍の外周面には、内燃機関で発生する燃焼ガスをシールするため、シール部材19を取り付ける溝3aが1つ以上形成される。なお、弁体1の摺動部18はノズル体3の内径に接触摺動する面の一部を切り欠いて、燃料の流路を形成することも出来る。
図1に示すように、ノズル体3には上流側端部に径方向外方に拡大した、フランジ部(拡径部)3eが設けられている。このフランジ部3eに第一付勢部材4とリフト量の微調整に用いる円環状の調整リング5とを組付ける。
図1、図2Aに示すように、第一付勢部材4は、弁体1を上流方向に付勢するための部品である。第一付勢部材4の内径は、弁体1の外径より大きく、且つ第一付勢部材4の外径は第一ケーシング7の内径よりも小さく設定する。第一付勢部材4はノズル体3及び弁体1と同軸上に組付けられる。第一付勢部材4の一方の端面は、ノズル体3のフランジ部3eの上流側(基端側)の端面に着座している。一方、第一付勢部材4の他方の端面は弁体1の弁体上流側シート部1aのフランジ部1aaの下面(弁体上流側シート部1aとは反対側の面)に着座している。このために弁体上流側シート部1aは弁体1の軸方向における中央部分の直径よりも大きな直径を有している。すなわち、弁体1は弁体上流側シート部1aが設けられる部分で拡径しており、この拡径した部分の下端面に第一付勢部材4の他方の端面が着座している。第一付勢部材4は、倒れを防止するために、両端面を研磨する。また、第一付勢部材4には、腐食に強く、バネ定数が大きいSUS631等の材質が用いられる。
リフト量調整リング5の詳細は下記のとおりである。弁体1、ノズル体3及び下流側弁座部材2の部品公差によって寸法ばらつきが生じるため、必要とするリフト量(100μm程度)が得られるように、各部品の寸法ばらつきを調整する必要がある。そこで、リング幅W(図1参照)の公差を厳しく管理したリフト量調整リング5で、弁体1、ノズル体3及び下流側弁座部材2の部品公差によって生じる寸法ばらつきを調整する。図1に示すように、リフト量調整リング5はノズル体3のフランジ部3eに一方の端面を、他方の端面を第一ケーシング7に当接して、固定される。リフト量調整リング5は、弁体1の弁体下流側シート部1bと下流側弁座部材2の下流側弁座2aとの間に形成される隙間の実寸法と必要リフト量との差分をリフト量調整リング5の板厚Wで調整し、必要リフト量が得られるようにする。
図2Bに示すように、下流側弁座部材2の下流側弁座2a、つまり、弁体下流側シート部1bが当接する当接部の直径がφS1で定義される。また、下流側弁座部材2の軸方向断面図において、対称に配置される下流側弁座2aにより形成されるシート角度がθ1を有している。また、動作は後述するが、燃料噴射装置100が動作するときの下流側弁座2aからの弁体1の変位量はSt1となっている。
第一ケーシング7は、第一付勢部材4を内包し、弁体上流側シート部1aと協働して機関停止時の燃料封止を行なう部品である。第一ケーシング7は弁体上流側シート部1aと当接する上流側弁座7aを有している。第一ケーシング7をノズル体3に組付けると、弁体1の弁体上流側シート部1aは、先に組付けた第一付勢部材4の力により、第一ケーシング7の上流側弁座7aに当接した状態となる。弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aに当接することにより上流側燃料通路が閉じられ、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aから離間することにより上流側燃料通路が開かれる。
図3に示すように、第一ケーシング7の上流側には、ベローズ体8を支える構造を有している。例えば、第一ケーシング7とベローズ体8の上側金具8bとの間に支持部位7bを設けて、ベローズ体8が支持される構造とする。支持部位は第一ケーシング7と一体でも別体でもよい。本実施例では、支持部位7bを第一ケーシング7と一体にした構成について説明する。
第一ケーシング7の支持部位7bの下部に切欠き部(開口部)7cを設けて燃料流れFFの流路としている。弁体1の上端部には、嵌合凸部1eに下端部を嵌合した弁体中間部材1cが連結されている。弁体中間部材1cは弁体1と駆動素子11との間を中継する中継部材である。ベローズ体8の下端部と弁体中間部材1cの拡径部1cbとをレーザ溶接で接合するために、第一ケーシング7にはビームを通すための貫通部(本実施例では切欠き部7c)を設けている。第一ケーシング7は高い燃料圧力が印加されるので、許容耐力が大きく、且つ溶接性の優れた材料(例えば、SUS630といった析出硬化系ステンレス鋼)で製作される。
図1に示す溶接リング6は、ノズル体3と第一ケーシング7とを溶接するための部品である。溶接リング6はノズル体3と第一ケーシング7とに対して圧入により仮固定され、その後溶接にて完全固定される。
この箇所は、燃料の圧力が印加されるために、溶接長は0.5mm以上確保する必要がある。溶接リング6は高い燃料圧力が印加されるので、許容耐力が大きく、且つ溶接性の優れた材料(例えば、SUS630といった析出硬化系ステンレス鋼)で製作される。
図2Bに示すように、第一ケーシング7の上流側弁座7a、つまり、弁体上流側シート部1aが当接する当接部の直径がφSで定義される。また、第一ケーシング7の軸方向断面図において、対称に配置される上流側弁座7aにより形成されるシート角度がθ2を有している。また、動作は後述するが、燃料噴射装置100が動作するときの上流側弁座7aからの弁体1の変位量はSt2となっている。
燃料噴射装置100において、供給圧力Piに対して、途中の燃料通路においての圧力損失が大きいと噴射される圧力が小さくなり、噴霧の微粒化性能が抑制され、内燃機関より排出されるすすの排出量が増大する。燃料噴射装置において、燃料の圧力損失が大きくなるすなわち、燃料の流速が上がる狭窄部は、弁シート部となっている。
そこで、本実施例の燃料噴射弁は、下流側弁座2aと、下流側弁座2aの上流側に位置する上流側弁座7aと、下流側弁座2aまたは上流側弁座7aに当接することによって燃料通路を閉じ、下流側弁座2aおよび上流側弁座7aから離れることによって燃料通路を開く弁体1と、を備えている。そして、下流側弁座2aの直径をφS1、下流側弁座2aと弁体1(弁体下流側シート部1b)との当接面における下流側弁座2aのシート角度をθ1、上流側弁座7aの直径をφS2、上流側弁座7aと弁体1(弁体上流側シート部1a)との当接面における上流側弁座7aのシート角度をθ2、燃料通路の入口に流入する燃料の圧力をPi、燃料密度をρ、流量をQとする。この場合に、燃料噴射時において下記の(数1)を満たすように下流側弁座2aからの弁体1のリフト量St1、及び上流側弁座7aからの弁体1のリフト量St2が制御される。
これにより燃料通路においての圧力損失が小さくなり噴射される圧力が大きくなることから、噴霧の微粒化性能が抑制されることなく、内燃機関より排出されるすすの排出量を低減することが可能である。
図3、図11に示すベローズ体8は燃料が駆動素子11側に流入しないよう、駆動素子11の収容室と燃料流路部とを遮断する部品である。ベローズ体8は蛇腹状部材(蛇腹部材)8aと上側金具8bとで構成される。蛇腹状部材8aの上流側端部は上側金具8bと溶接により接合され、また蛇腹状部材8aの下流側端部は弁体中間部材1cの下部に形成された拡径部1cbの外周面と溶接により接合されている。
上側金具8bは、中心部に貫通孔8baが形成され、空洞となっている。空洞8baは、蛇腹状部材8aを上側金具8bに溶接すると、蛇腹状部材8aの内側の空間を駆動素子11の収容室に連通させる貫通孔となっている。弁体中間部材1cは蛇腹状部材8aの内部を貫通して、上側金具8bの上端面から突出し、駆動素子11と線接触で接合されている。すなわち蛇腹状部材8aは、弁体中間部材1cの径方向外方に設けられ、弁体中間部材1cを内包する。なお蛇腹状部材8aは、自然長(自然な状態での長さ)となる初期状態から圧縮した状態で、燃料噴射弁100に組み付けられている。
本実施例では、駆動素子11は下端面に円錐状の凹部11aを具備している。また弁体中間部材1cは、上端部が略球形に形成されている。弁体中間部材1cの略球形の上端部が凹部11aの開口縁と当接することで、弁体中間部材1cは駆動素子11と線接触で接合される。ベローズ体8は初期に圧縮状態としておくことで、耐久性が増加する。そのため、ベローズ体8に圧縮を加えるために、第一ケーシング7の突当て部に隙間8d(図11参照)を設けている。ベローズ体8の初期圧縮についての詳細は、図11を用いて後述する。
なお図3に示すように、上側金具8bの下面側の外周部には、蛇腹状部材8aの圧縮量を調整するための部品として、ベローズリング15が設けられる。ベローズ体8の寸法は、ベローズの製作方法や接合により、ばらつきが大きく、必要とする蛇腹状部材8aの圧縮量がばらつく。そのため、ベローズリング15の厚さを調整して、蛇腹状部材8aの圧縮量を調整することができる機構を設けた。
第二ケーシング9は、二重円管構造を有するケーシング体16の内側の円管部材(筒状部材)を構成する部品であり、駆動素子11の周方向の位置とベローズ体8の圧縮量を保持し、燃料流路を構成する部品である。第二ケーシング9の下流側端部の内周面に設けた径方向内方に向かって突出する凸部9bでベローズ体8の上側金具8bを下方に押し、ベローズ体8を圧縮する。この状態でベローズ体8の上側金具8bの外周と第二ケーシング9の外周は重ねあわせ溶接で接合する。第二ケーシング9の上流側端部の外周面には、図5に示すように、径方向外方に向かって突出するフランジ状突起(環状突起)9aがあり、フランジ状突起9aで上部ケーシング13との位置あわせを行なう。
第二ケーシング9は高い燃料圧力が印加されるので、許容耐力が大きく、且つ溶接性の優れた材料(例えば、SUS630といった析出硬化系ステンレス鋼)で製作される。
上部ケーシング13には、第二ケーシング9、第三ケーシング10、ダンパー体12及び固定部品14の取付け穴が同軸上に形成され、段付きの孔12eを形成している。燃料供給口13aは第二ケーシング9と第三ケーシング10とを取り付ける穴とは同軸上に構成されていない。なお第三ケーシング10は、二重円管構造を有するケーシング体16の外側の円管部材(筒状部材)を構成する部品であり、第二ケーシング9と共に燃料流路を構成するための部品である。
図4に示すように、上部ケーシング13の下流側端面から取付け穴12eに第二ケーシング9及び第三ケーシング10を挿入する。第二ケーシング9にはフランジ状突起9aが設けてあり、第三ケーシング10にはフランジ状突起10aが設けてある。フランジ状突起9a及びフランジ状突起10aは、それぞれ上部ケーシング13の取付け穴12eに当接した状態で位置が固定された後、全周が溶接される。なお、固定及び溶接は、第二ケーシング9、第三ケーシング10の順番で行う。
上部ケーシング13は高い燃料圧力が印加されるので、許容耐力が大きく、且つ溶接性の優れた材料(例えば、SUS630といった析出硬化系ステンレス鋼)で製作される。
駆動素子11は、弁体下流側シート部1bが下流側弁座2cと当接する方向に、弁体1を移動させるための部品である。前述の通り、駆動素子11の下流側端面(下端面)11aは弁体中間部材1cと当接している。駆動素子11の下流側端面11aは円錐状の凹部を具備し、下流側端面11aと同様、当接部の面圧を低減させ、磨耗を防ぐ。上流側端面も円錐状の凹部11bを具備しているが、円錐状の凹部を具備している別部材を上流部端面に組付けることもできる。駆動素子11は電圧を印加されると、全長が伸びる。駆動素子11の一例である圧電素子の場合、薄いセラミックス製の素子を積層して構成され、電圧を印加すると数μmから数十μm全長が伸びる。素子は両端部を金属製の蓋で固定され、素子の外周は伸縮できる形状の金属ケーシングにて覆われる。セラミックス製の圧電素子では、金属に比べて非常に線膨張率が低く、ステンレス鋼の1/10程度となる。
第三ケーシング10の上流側端面はフランジ状突起10aになっている。第三ケーシング10の下流側端面から10mmほど上流側までの内径は、第一ケーシング7の外径と同じだが、それより上流側では第一ケーシング7の外径よりも1mm以上大きくなる。第三ケーシング10の内周にノズル体3を下流側端部から挿入するようにして、第三ケーシング10を上部ケーシング13に組み付ける。第三ケーシング10のフランジ状突起10aを、上部ケーシング13の取付け穴12eに突き当てて固定し、上部ケーシング13と第三ケーシング10のフランジ状突起10aの外周とを溶接する。
また、第三ケーシング10の下流側内径部と第一ケーシング7の上流側外径部とは圧入となっており、第三ケーシング10の下流側と第一ケーシング7の上流側とを重ねあわせて、溶接で全周を接合する。これにより、第二ケーシング9の外径(外周)と第三ケーシング10の内径(内周)の間が隙間となり、ここを燃料が流れる。
ダンパー体12は、部品間の線膨張率の差を相殺するための部品である。ダンパー体12は駆動素子11の上流側に位置している。ダンパー体12は先端側の端部に略球状(半球状)になっている突起部12cを具備しており、駆動素子11の上流側端面に具備された円錐状の凹部11bと当接している。
ダンパー体12はシリンダ12bとプランジャ12aとダイアフラム12dとから構成されており、シリンダ12bとプランジャ12aとダイアフラム12dとの間には油が封入されている。油は気泡が混入しないように、脱気した状態でシリンダ12bとプランジャ12aとダイアフラム12dとの間に注入される。温度が高くなると油が膨張し、その膨張した分、ダイアフラム12dが変形し、それに接続されているシリンダ12bが追従して移動する。この移動により、下流側弁座2と弁体1の隙間が発生しないように接触を維持する。ダンパー体12は駆動素子11が高周波で駆動した場合の挙動では変動しない特性を有する。
固定部品14はダンパー体12を固定する部品である。ダンパー体12に当接している駆動素子11の駆動力は1000N以上あり、この荷重を受けても、固定部品14が軸方向に移動しないように、固定部品14に印加する圧入荷重が設定される。
固定部品14の固定方法は次のとおりである。固定部品14を上部ケーシング13の内周面13bに圧入する。固定部品14の圧入長さが規定値となるよう微調整を行なう。弁体11の移動量が規定値となったときに、上部ケーシング13と固定部品14は仮固定される。固定方法は、かしめ等とする。その後、駆動素子11が駆動するときの荷重に耐えるように、上部ケーシング13と固定部品14を接合して完全固定する。
図7A及び図7Bの(1)は機関及び燃料加圧装置の停止時の状態を示す。この時、駆動素子11への電圧の印加は行われていない。この状態では、弁体1に設けられた第一付勢部材4の力により、弁体1は弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aと当接する位置まで押し上げられ、弁体上流側シート部1aと上流側弁座7aとの間の燃料通路が閉じた状態である(図5(a)の状態)。この場合、燃料加圧装置は停止しているため燃料の供給は行われていないが、前回、機関の運転を停止するまで供給されていた燃料は弁体上流側シート部1a及び上流側弁座7aによって止められ、弁体上流側シート部1a及び上流側弁座7aの下流側には流下しない。従って、燃料噴射弁100は閉弁した状態である。なお、弁体下流側シート部1bと下流側弁座2aとの間の燃料通路は開いた状態である(図6(a)の状態)。
図7A及び図7Bの(1)で、機関が停止されたままの状態で燃料加圧装置が作動すると、燃料が供給される。しかしこの状態では、駆動素子11への電圧の印加は行われていない。そのため弁体1は、第一付勢部材4の付勢力とベローズ体8から作用する上流方向への力の双方により、上流方向へ押し上げられている。その結果、弁体1の弁体上流側シート部1aは第一ケーシング7の上流側弁座7aと当接し、弁体上流側シート部1aと上流側弁座7aとの間の燃料通路が閉じた状態が維持されている(図5(a)の状態)。この状態では、弁体下流側シート部1b側の燃料通路は開いているものの、弁体上流側シート部1a側の燃料通路が閉じているため、燃料の流れが遮断される。この場合も、燃料噴射弁100は閉弁した状態を維持している。このとき、燃料を遮断しないと、内燃機関の燃焼室内に燃料が流入してしまい、機関始動時に圧縮が発生し、内燃機関を破壊してしまう可能性がある。
図7A及び図7Bの(2)は、燃料加圧装置が始動された後、機関が始動された状態(機関の作動中の状態)を示している。この状態では、エンジンコントロールユニットからの指令値に基づいて、燃料を燃料噴射弁100から所定の流量だけ噴射する。弁体1は、必要とされる流量の燃料が流れ、圧力損失や噴霧性能が維持されるよう、弁体下流側シート部1b側の流路面積と弁体上流側シート部1a側の流路面積との比が最適となるように、駆動素子11に印加される電圧が制御されて駆動される。すなわち、駆動素子11の駆動電圧が図7Aの中間電圧に制御され、弁体上流側シート部1aと上流側弁座7aとの間の燃料通路が開き(図5(b)の状態)、弁体下流側シート部1bと下流側弁座2aとの間の燃料通路も開いている状態であり、燃料噴射弁100が開弁した状態である(図6(a)の状態)。
図7A及び図7Bの(3)は、機関及び燃料加圧装置が共に作動している状態において、燃料噴射を停止させる状態を示す。弁体1の弁体下流側シート部1bと下流側弁座2aとが当接するように、駆動素子11に通電を行う。これにより、弁体1が下流側弁座2a側へ移動する。結果、燃料流路が閉塞され、燃料噴射が停止する。すなわち、弁体上流側シート部1aと上流側弁座7aとの間の燃料通路は開いた状態(図5(c)の状態)であるが、弁体下流側シート部1bと下流側弁座2aとの間の燃料通路が閉じた状態(図6(c)の状態)となり、燃料噴射弁100が閉弁した状態となる。
機関駆動時には、図7A及び図7Bの(2)の状態と(3)の状態とを繰り返すことにより、機関の燃焼に必要とされる燃料量を適切なタイミングで燃料噴射弁100から供給することが可能となる。図7A及び図7Bの(4)の状態は(3)と同じ状態、(5)の状態は(2)と同じ状態である。ただし、(5)の状態では、途中で機関及び燃料加圧装置が停止され、弁体1は第一付勢部材4の付勢力とベローズ体8から作用する上流方向への力の双方により、上流方向へ押し上げられる。これにより、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aに当接し、燃料噴射弁100は閉弁した状態で動作を停止する。
すなわち本実施例の燃料噴射弁100は、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aから離間し、弁体下流側シート部1bが下流側弁座2aから離間した状態に、弁体1を駆動素子11により駆動して燃料を噴射する。燃料噴射弁100は、駆動素子11への通電を行っていない状態では、弁体上流側シート部1aが上流側弁座7aと当接する向きに弁体1を付勢する、第一付勢部材4の付勢力を含む上流向き付勢力が、弁体下流側シート部1bが下流側弁座2aと当接する向きに弁体1を付勢する下流向き付勢力よりも大きくなるように構成されている。燃料噴射弁100は、駆動素子11への通電中に、駆動素子11の駆動力を含む下流向き付勢力が上流向き付勢力よりも大きくなるように駆動素子11を駆動することにより、弁体下流側シート部1bを下流側弁座2aに当接させて下流側燃料通路を閉じる。
本実施例の構成、作用、効果を図8、図9を用いて説明する。本発明者らは下流側弁座2aの直径φS1または上流側弁座7aの直径φS2が大きいほど、圧力損失効果が大きいことを見出した。しかし、一方で直径が大き過ぎると燃料噴射弁の大型化を招くため、これのトレードオフが重要となる。つまり、下流側弁座2aの直径φS1、上流側弁座7aの直径φS2は大きいほど、圧力損失を低減することは可能であるが、燃料噴射装置100の下流のノズル体3の外径が拡大することになる。すなわち、内燃機関に対しての搭載性が悪化することが懸念される。
そこで、本実施例においては、下流側弁座2aの直径φS1が3.0〜4.5mmの範囲内にあるとともに、上流側弁座7aの直径φS2が2.5〜4.5mmの範囲内にあるように構成した。これにより圧力損失効果を大きく、かつ大型化を招くことなく燃料噴射弁を構成可能である。より具体的には、下流側弁座2aの直径φS1を3.5〜4.5mmの範囲内として、さらに上流側弁座7aの直径φS2が2.5〜3.5mmの範囲内とすることが望ましい。これにより高い圧力損失低減効果を図ることが可能となる。
また本発明者らは下流側弁座2aの弁体1との当接面におけるシート角度θ1、あるいは上流側弁座7aの弁体1との当接面におけるシート角度θ2が大きいほど、圧力損失効果が大きいことを見出した。しかし、一方で直径が大き過ぎると燃料噴射弁の大型化を招く。またシート角度が大きいと弁体先端を平坦に製造する必要性が生じ、製造が難しくなるという問題もある。つまり、シート角度θ1及びシート角度θ2は大きいほど、圧力損失を低減することが可能であるが、燃料をシールするための面圧を発生させる必要がある。このため、角度が大きすぎると、発生する面圧が低下することがあるために、角度は一定以内である必要がある。
そこで、本実施例においては下流側弁座2aは弁体1との当接面におけるシート角度θ1が60〜150°の範囲内にあるとともに、上流側弁座7aは弁体1との当接面におけるシート角度θ2が60〜150°の範囲内にあるように構成された。なお、60°であっても本実施例の作用、効果を奏することが可能であるが、さらに望ましくはシート角度θ1及びシート角度θ2が90〜150°の範囲内にあることである。これにより高い圧力損失低減効果を図ることが可能となる。
また本発明者らは燃料噴射時において下流側弁座2aからの弁体1のリフト量St1、あるいは上流側弁座7aからの弁体1のリフト量St2が大きいほど圧力損失効果が大きいことを見出した。これらのリフト量St1(ストローク量と呼んでも良い)及びリフト量St2は、大きく設定すれば圧力損失を低減することは可能であるが、駆動素子11の全長が長くなることになり、敷いては燃料噴射装置100の全長が長くなり、搭載性が悪化する要因となる。
そこで、本実施例では、燃料噴射時において下流側弁座2aからの弁体1のリフト量St1が25〜50μmの範囲内となるように制御されるとともに、上流側弁座7aからの弁体1のリフト量St2が20〜40μmの範囲内となるように制御されるように構成した。
また上記構成において下流側弁座1aの直径φS1が上流側弁座7aの直径φS2よりも大きく構成されることが望ましい。すなわち、下流側弁座1aは上流側弁座7aに比べてスペースに余裕がないため、加工することに対して制限がかかる。しかし、直径φS1を大きくすることだけであれば、加工上、問題なく行えるので、本構成により、容易に加工することを可能としつつ、圧力損失効果低減を図ることが可能である。
より具体的には、燃料噴射時における弁体1のリフト量St1が40〜50μmの範囲内として、さらに上流側弁座7aからの弁体1のリフト量St2が30〜40μmの範囲内とすることが望ましい。これにより高い圧力損失低減効果を図ることが可能となる。
また本実施例の燃料噴射装置は、燃料通路入口から流入する燃料の圧力をPiとした場合に、下流側弁座1aの下流側の燃料噴射孔2bから噴射される圧力が0.6Pi以上となるように、下流側弁座1aの直径φS1、上流側弁座7aの直径φS2、燃料噴射時におけるそれぞれのリフト量(St1、St2)、及びそれぞれのシート角度(θ1、θ2)が構成される。
燃料圧力が噴射時に低減していると、粒径及び内燃機関からのすす排出量に影響を与える。本発明者らの試験結果によると以下のことが分かっている。粒径及びすす排出量と燃料圧力の関係は、燃料圧力50MPaを基準に考えると、40%以上噴射圧力が下がる30MPa以下において、微粒化が促進せず、すす排出量の増加が著しい。噴霧の微粒化に関しては、燃料噴射圧力の低下により、噴霧の流速が低下し、剪断による微粒化効果が損なわれるためであると考えられる。また、すすの排出に対しては、内燃機関内における混合気の均一性及び筒内の壁面などへの付着が多いことによってすすが排出されることが分かっている。噴霧の微粒化が損なわれ、筒内の混合気の均一性が向上しないことと同時に、内燃機関筒内の壁面への燃料が付着しやすくなっていることが影響していると考えられる。
上記した本実施例における燃料噴射装置では、上流側弁座7aと下流側弁座2aとにおける燃料の圧力損失を小さくすることが可能である。したがって、噴霧の微粒化性能を抑制することなく、燃料を噴射することが可能となる。そして、これにより、内燃機関より排出されるすすの排出量を低減することが可能となる。本実施例において、上記のように圧力損失を40%以下にすることについて説明したが、図8及び図9において、20%以下に圧力損失を抑えることが更に好ましいと言える。
図10は、本実施例に係る燃料噴射弁100の弁体1に作用する力関係を示した図である。
図10(1)は機関及び燃料加圧装置の停止時に作用する力を示す。各部の荷重(力)関係は(数2)のとおりとなる。
k1x1は第一付勢部材4のばね定数k1と圧縮量x1により、弁体1が上流方向へ付勢される力である。F1はダンパー体12が駆動素子11を下流方向に押す荷重である。
図10(2)は機関が停止した状態で燃料加圧装置が動作して燃料圧力が印加された状態において作用する力を示す。各部の荷重(力)関係は(数3)のとおりとなる。
k1x1は第一付勢部材4のばね定数k1と圧縮量x1により、上流方向へ付勢される力である。(πD3 2/4)Pはベローズ体8の有効径D3に燃料圧力Pが作用し、弁体1が上流方向へ付勢される力である。これは、ベローズ体8内部が空気層となり、外部に加圧された燃料が存在するためである。(πD2 2/4)Pはシート径D2に液体の圧力Pが作用し、下流方向に付勢される力である。F1はダンパー体12が駆動素子11を押す荷重である。
図10(3)は燃料噴射時に作用する力を示す。各部の荷重(力)関係は(数4)のとおりとなる。
k1x1は第一付勢部材4のばね定数k1と圧縮量x1により、上流側方向へ付勢される力である。(πD3 2/4)Pはベローズ体8の有効径D3に液体圧力Pが作用し、弁体1が上流側方向へ印加される力である。これは、ベローズ体8内部が空気層となり、外部に加圧された燃料が存在するためである。F1はダンパー体12を押す下流側に印加する力である。F2は駆動素子11により弁体1が下流側に押される力である。右項と左項とは、平衡状態で釣り合い、弁体1は所望の位置で停止する。
図10(4)は燃料噴射停止時に作用する力を示す。各部の荷重(力)関係は(数5)のとおりとなる。
(πD1 2/4)Pは弁体1の下流側シート径D1に液体圧力Pが作用し、上流側方向へ印加される力である。k1x1は第一付勢部材4のばね定数k1と圧縮量x1により、弁体1が上流側方向へ付勢される力である。(πD3 2/4)Pはベローズ体8の有効径D3に液体圧力Pが作用し、弁体1が上流側方向へ付勢される力である。これは、ベローズ体8内部が空気層となり、外部に加圧された燃料が存在するためである。F1はダンパー12が駆動素子11を押す力であり、下流側に向かう力である。F2は駆動素子11により弁体1が下流側に押される力である。
上記(数2)〜(数5)の力関係が成立しない場合、燃料が噴射しない又弁体1が下流側弁座2cに当接せずに、燃料が洩れてしまう等の不具合が生じる。
≪弁座部径の大小関係に対しての作用効果≫
以上の面から、本実施例においては、上流側にある上流側弁座7aの直径φS2が下流側にある下流側弁座2aの直径φS1よりも小さくなることが望ましい。機関電源非通電時に、燃料をシールする場合を考えると、上流側弁座7aの直径φS2が小さいことが燃料によって受ける圧力に寄る力を小さくすることが可能となる。よって、第一付勢部材4の設定荷重を不要に上げる必要が無くなるため望ましい。
一方、逆に、上流側弁座7aの直径φS2が下流側弁座2aの直径φS1よりも大きい場合は、他の特徴を有する。この場合は、弁体中間部材1cの弁体1との接続部の径を大きくすることが可能となり、当該部品の倒れ等を抑制することが可能となり、組み立て性を向上することが可能となる。
図11は、本発明に係る燃料噴射弁100のベローズ体8の組付け方法の詳細を示した図である。
ベローズ体8は第二ケーシング9の組付け時に、ベローズ体8の上側金具8bが第二ケーシング9に引きずられて、蛇腹状部材8aを圧縮してしまう。蛇腹状部材8aの圧縮量が圧縮許容値を超えると、蛇腹状部材8aは塑性変形を起こして伸縮性が失われ、弁体1が移動しなくなる。そのため、上側金具8bの下端面に受け部品を設けるか、第一ケーシング7に受け部を設けて、蛇腹状部材8aの圧縮量を抑える必要がある。
一方、ベローズ体8は流体圧力、温度、弁体1の移動により伸びが発生する。このとき、蛇腹状部材8aの伸び量が伸び許容値を超えると、蛇腹状部材8aは塑性変形を起こして伸縮性が失われ、弁体1が移動しなくなる。蛇腹状部材8aの材質変更や肉圧増加、全長拡大により改善可能ではあるが、燃料噴射弁100の許容寸法や相手側の内燃機関レイアウトにより、ベローズ体8の改善は制約を受ける。そこで、図11に示すように、組付け時に蛇腹状部材8aに圧縮を与えて、伸び量の拡大を図る。そのために、第一ケーシング7とベローズ体8の上側金具8bの下端面との間にすきま8dを有する構造として、第二ケーシング9と第一ケーシング7とで上側金具8bを挟み込み、蛇腹状部材8aに圧縮を加える構造とする。ベローズリング15はベローズ体8の寸法ばらつきを吸収するための部品である。