JP2018119055A - 引抜成形体およびその製造方法 - Google Patents

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尚 水野
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Abstract

【課題】MDに対して斜め方向に配向した炭素繊維の乱れが抑えられ、かつ単位質量あたりの強度が充分に高い引抜成形体およびその製造方法の提供。【解決手段】熱硬化性組成物の硬化物であるマトリックス樹脂と強化繊維基材とを含む引抜成形体であり;強化繊維基材として、MDに配向した複数の炭素繊維からなる第1の強化繊維基材と、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維(斜め配向炭素繊維32)およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条38が第1のステッチング糸条40によって結束された第2の強化繊維基材30とを含む、引抜成形体。【選択図】図4

Description

本発明は、引抜成形体およびその製造方法に関する。
マトリックス樹脂と強化繊維とを含む繊維強化複合材料の成形体は、高強度、高剛性、軽量性等の優れた特性から、様々な用途で使用されている。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維や、アラミド繊維等の有機繊維が使用されている。特に強化繊維として炭素繊維を用いた繊維強化複合材料は、強度、剛性に優れる傾向がある。
繊維強化複合材料の成形体の製造方法の一つとして引抜成形法(プルトルージョン法)がある。引抜成形法では、強化繊維基材に熱硬化性組成物を含浸し、熱硬化性組成物が含浸した強化繊維基材を加熱成形金型に引き込み、加熱成形金型内で熱硬化性組成物を硬化させて所定形状の成形体とし、加熱成形金型から成形体を引き抜いて繊維強化複合材料の成形体(以下、引抜成形体とも記す。)を得る。引抜成形法は、引抜成形体を連続して製造できるという利点を有する。
引抜成形法において熱硬化性組成物には、低粘度、速硬化性等が要求される。また、引抜成形法では通常、一方向に引き揃えられた強化繊維が引抜方向、つまりMD(Machine Direction)に沿って加熱成形金型に引き込まれる(特許文献1)。このようにして得られる引抜成形体は、MDに配向した強化繊維を含むため、MDの強度に優れる。しかし、該引抜成形体は、MD以外の方向の強度は充分ではない。
引抜成形体におけるMD以外の方向の強度を高めるためには、MDに配向した複数の強化繊維からなる第1の強化繊維基材とともに、MDに対して斜め方向に配向した複数の強化繊維(以下、斜め配向強化繊維とも記す。)を含む第2の強化繊維基材を同時に加熱成形金型に引き込むことが考えられる。しかし、引抜成形法においては、加熱成形金型に引き込まれる強化繊維基材にMDに高い張力がかかるため、第2の強化繊維基材における斜め配向強化繊維に乱れが生じやすい。たとえば、強化繊維が炭素繊維の場合、ガラス繊維より滑りやすく、また高い張力によってMDに伸びた第2の強化繊維基材においては、斜め配向強化繊維の配向角度が小さくなり、第2の強化繊維基材の両側縁が中央に寄ってくるという問題がある。
引抜成形法における斜め配向強化繊維の乱れを抑える方法としては、斜め配向強化繊維を含む第2の強化繊維基材の表面にマット成分を含む薄層を一体的に保持させる方法が提案されている(特許文献2)。
特開2008−038082号公報 特開2010−125660号公報
しかし、マット成分(チョップドストランドマット等)には配向性がないため、特許文献2の方法では、引抜成形体の単位質量あたりの強度が低下するという問題がある。
本発明は、MDに対して斜め方向に配向した炭素繊維の乱れが抑えられ、かつ単位質量あたりの強度が充分に高い引抜成形体およびその製造方法を提供する。
本発明は、下記の態様を有する。
<1>熱硬化性組成物の硬化物であるマトリックス樹脂と強化繊維基材とを含む引抜成形体であり;前記強化繊維基材として、MDに配向した複数の炭素繊維からなる第1の強化繊維基材と、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束された第2の強化繊維基材とを含む、引抜成形体。
<2>前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物の硬化物である、前記<1>の引抜成形体。
<3>熱硬化性組成物と強化繊維基材とを加熱成形金型に引き込み、前記加熱成形金型内で前記熱硬化性組成物を硬化させて所定形状の成形体とし、前記加熱成形金型から前記成形体を引き抜く、引抜成形体の製造方法であり;前記強化繊維基材として、炭素繊維がMDに配向した炭素繊維からなる第1の強化繊維基材と、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束された第2の強化繊維基材とを用いる、引抜成形体の製造方法。
<4>前記加熱成形金型に引き込まれる前記第2の強化繊維基材にかかる張力を、前記加熱成形金型に引き込まれる前記第1の強化繊維基材にかかる張力よりも低くする、前記<3>の引抜成形体の製造方法。
<5>前記熱硬化性組成物としてビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物を用いて引抜成形体の製造を開始し、その後、前記熱硬化性組成物をエポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物に切り替える、前記<3>または<4>の引抜成形体の製造方法。
本発明の引抜成形体は、MDに対して斜め方向に配向した炭素繊維の乱れが抑えられ、かつ単位質量あたりの強度が充分に高い。
本発明の引抜成形体の製造方法によれば、MDに対して斜め方向に配向した炭素繊維の乱れが抑えられ、かつ単位質量あたりの強度が充分に高い引抜成形体を製造できる。
本発明の引抜成形体の一例を示す斜視図である。 図1のII−II断面図である。 第1の強化繊維基材の一例を示す上面図である。 第2の強化繊維基材の一例を示す上面図である。 図4の第2の強化繊維基材の下面図である。 図5のVI−VI断面図である。 図5のVII−VII断面図である。 引抜成形体の製造装置の一例を示す概略図である。
<引抜成形体>
図1は、本発明の引抜成形体の一例を示す斜視図である。
引抜成形体10は、引抜方向であるMD(Machine Direction)に延びる平板状の成形体であり、マトリックス樹脂と強化繊維基材とを含む。
図2は、図1のII−II断面図、すなわち引抜成形体10のMDに直交する断面を示す図である。
引抜成形体10は、第1の主表面Aを含む第1の表層12と、第2の主表面Bを含む第2の表層14と、第1の表層12と第2の表層14との間にある中間層16とを有する。
第1の表層12および第2の表層14と、中間層16とは、各層に含まれる、強化繊維基材の形態、強化繊維基材における強化繊維の配向等の違いによって区別される。
引抜成形体10における強化繊維の体積含有率(Vf)は、35〜75%が好ましく、55〜65%がより好ましい。Vfが前記範囲内であれば、引抜成形体10がより高強度、高弾性率、軽量なものとなる。Vfは、製品の単位長さ当りの体積と、投入された強化繊維の質量とその比重により求められる。
(中間層)
中間層16は、マトリックス樹脂と第1の強化繊維基材とを含む。
第1の強化繊維基材は、MDに配向した複数の炭素繊維からなる。
図3は、第1の強化繊維基材の一例を示す上面図である。
第1の強化繊維基材20は、MDに配向した複数の炭素繊維22,22・・・からなる炭素繊維トウの複数束が、MD方向に沿うように隙間なく配置されたMD配向炭素繊維シート24からなる。
炭素繊維22がMDに配向した第1の強化繊維基材20は、引抜成形体10のMDの強度の向上に寄与する。
炭素繊維22としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が挙げられる。炭素繊維22としては、PAN系炭素繊維が好ましい。
炭素繊維22の直径(フィラメント直径)は、通常、1〜20μmである。
炭素繊維22は、サイジング剤で表面処理されていてもよい。サイジング剤としては、公知のものが挙げられる。サイジング剤を付与する前に、炭素繊維22の表面に酸化処理が施されていてもよい。酸化処理としては、液相処理、気相処理等が挙げられる。
炭素繊維トウとは、極めて多数のフィラメントから構成される長繊維束で撚りのないものを指す。
炭素繊維トウを構成する炭素繊維(フィラメント)の数は、通常、1000〜72000本である。
炭素繊維トウの繊度は、通常、660〜16500dtexである。
炭素繊維トウの引張強さは、通常、3000〜8000MPaである。
炭素繊維トウの引張弾性率は、通常、200〜800GPaである。
炭素繊維トウの伸びは、通常、0.5〜3.0%である。
炭素繊維トウの引張特性(引張強さ、引張弾性率および伸び)は、JIS R 7606:2000(対応国際規格ISO 11566:1996)に準拠して測定される。
炭素繊維トウの密度は、通常、17〜20dg/cmである。
中間層16の厚さは、0.3mm〜10cmが好ましい。中間層16の厚さは、引抜成形体10の厚さ方向における厚さである。
(表層)
第1の表層12および第2の表層14は、マトリックス樹脂と第2の強化繊維基材とを含む。
第2の強化繊維基材は、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維(以下、斜め配向炭素繊維とも記す。)およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束、一体化されたものである。
図4は、第2の強化繊維基材の一例を示す上面図であり、図5は、図4の第2の強化繊維基材の下面図である。
第2の強化繊維基材30は、複数の斜め配向炭素繊維32,32・・・からなる炭素繊維トウの複数束が、MDに対して斜め方向に沿うように隙間なく配置された第1の斜め配向炭素繊維シート34と;複数の斜め配向炭素繊維32,32・・・からなる炭素繊維トウの複数束が、第1の斜め配向炭素繊維シート34の炭素繊維32に対して直交する方向にかつMDに対して斜め方向に沿うように隙間なく配置された第2の斜め配向炭素繊維シート36と;MDに沿うように第2の斜め配向炭素繊維シート36の表面に所定の間隔で配置された複数条の無機繊維糸条38と;第1の斜め配向炭素繊維シート34、第2の斜め配向炭素繊維シート36および無機繊維糸条38を、無機繊維糸条38と同じ位置にてMDに沿ったチェーンステッチ(単環縫い)で結束して一体化する複数条の第1のステッチング糸条40と;第1の斜め配向炭素繊維シート34および第2の斜め配向炭素繊維シート36を、2条の無機繊維糸条38に挟まれた中間の位置にてMDに沿った本縫いで結束して一体化する複数条の第2のステッチング糸条42とを有する。
斜め配向炭素繊維32を有する第2の強化繊維基材30は、引抜成形体10のMD以外の強度の向上に寄与する。
また、斜め配向炭素繊維32がMDに配向した無機繊維糸条38によって補強され、かつこれらが第1のステッチング糸条40によって結束された第2の強化繊維基材30は、MDに高い張力がかかってもMDに伸びにくい。そのため、斜め配向炭素繊維32の配向角度が小さくなりにくく、第2の強化繊維基材30の両側縁が中央に寄りにくい、すなわち第2の強化繊維基材30における斜め配向炭素繊維32の乱れが抑えられる。
斜め配向炭素繊維32としては、第1の強化繊維基材20における炭素繊維22と同様のものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
炭素繊維トウとしては、第1の強化繊維基材20における炭素繊維トウと同様のものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
第1の斜め配向炭素繊維シート34における斜め配向炭素繊維32の配向角度は、MD(0゜)に対して、+10°以上+90°未満が好ましく、+20°以上+80°以下がより好ましく、+30°以上+70°以下がさらに好ましい。配向角度が前記範囲内であれば、引抜成形体10のMD以外の方向の強度がより優れる。図示例の第1の斜め配向炭素繊維シート34における斜め配向炭素繊維32の配向角度は、+45゜である。
第2の斜め配向炭素繊維シート36における斜め配向炭素繊維32の配向角度は、MD(0゜)に対して、−90°超−10°以下が好ましく、−80°以上−20°以下がより好ましく、−70°以上−30°以下がさらに好ましい。配向角度が前記範囲内であれば、引抜成形体10のMD以外の方向の強度がより優れる。図示例の第2の斜め配向炭素繊維シート36における斜め配向炭素繊維32の配向角度は、−45゜である。
無機繊維糸条38を構成する無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維(アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等)等が挙げられる。無機繊維としては、入手性、樹脂との親和性バランスの点から、ガラス繊維または炭素繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。
ガラス繊維の材質としては、Eガラス、Cガラス、Sガラス等が挙げられ、価格、入手性、樹脂との親和性のバランスの点から、Eガラスが好ましい。
ガラス繊維の直径(フィラメント直径)は、通常、3〜50μmである。
無機繊維糸条38の形態としては、作業性、入手性の点から、ヤーンが好ましい。
無機繊維ヤーンの繊度は、通常、1000〜5000dtexである。
無機繊維ヤーンは、バルキーヤーンであってもよい。バルキーヤーンとは、嵩高縒り糸である。
第1のステッチング糸条40および第2のステッチング糸条42を構成する繊維としては、縫いやすさの点から、有機繊維が好ましい。有機繊維の材質としては、ポリエステル、ナイロン等が挙げられ、縫いやすさの点から、ポリエステルが好ましい。
第1のステッチング糸条40および第2のステッチング糸条42の形態としては、縫いやすさの点から、ヤーンが好ましい。
図6は、図5のVI−VI断面図、すなわち第2の強化繊維基材30の第1のステッチング糸条40に沿った断面図である。第1のステッチング糸条40の縫い目は、チェーンステッチ(単環縫い)であり、第1の斜め配向炭素繊維シート34の表面に沿ってMDに連続したループ状のニードルループと;第1の斜め配向炭素繊維シート34および第2の斜め配向炭素繊維シート36を貫通して、第2の斜め配向炭素繊維シート36の表面に沿ってMDに連続した、ニードルループ間を繋ぐ直線状のシンカループとからなる。なお、図6においては、図の説明のしやすさの点から、無機繊維糸条38の図示を省略している。
図7は、図5のVII−VII断面図、すなわち第2の強化繊維基材30の第2のステッチング糸条42に沿った断面図である。第2のステッチング糸条42の縫い目は、本縫い(直線縫い)であり、図7に示すように、所定の間隔で第1の斜め配向炭素繊維シート34および第2の斜め配向炭素繊維シート36を貫通した上糸42aのループに下糸42bを通し、上糸42aと下糸42bの交差部分を第1の斜め配向炭素繊維シート34と第2の斜め配向炭素繊維シート36との境界付近まで引き上げて形成された、直線状の縫い目である。
第1の斜め配向炭素繊維シート34および第2の斜め配向炭素繊維シート36の厚さは、第1の表層12、第2の表層14それぞれの厚さに応じて設定される。
第1の表層12および第2の表層14の厚さは、それぞれ0.5mm〜5cmが好ましい。第1の表層12および第2の表層14の厚さは、引抜成形体10の厚さ方向における厚さである。
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、熱硬化性組成物の硬化物である。
熱硬化性組成物としては、熱硬化性樹脂および添加剤(硬化剤等)を含むものが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられ、炭素繊維との親和性、機械物性の発現性の点から、エポキシ樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、熱硬化性組成物としては、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、離型剤とを含む組成物が挙げられる。該熱硬化性組成物は通常、25℃において液状である。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシレンジアミン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシ)メタン等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂としては、入手性およびコストと、引抜成形体10の強度とのバランスの点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
硬化剤としては、酸無水物、ジシアンジアミド、脂肪族ポリアミン等が挙げられ、加熱成形金型への引き込み前の温度条件(たとえば−10〜40℃)で硬化反応が進みにくく、かつ加熱成形金型等で加熱したときに硬化反応が進みやすい点から、酸無水物が好ましい。
酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸等が挙げられる。酸無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸無水物としては、25℃における粘度が低く、得られる硬化物の耐熱性に優れる点から、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
硬化促進剤としては、イミダゾール誘導体、ホスフィン、三級アミン塩等が挙げられ、硬化時間、ポットライフのバランスの点から、イミダゾール誘導体が好ましい。
イミダゾール誘導体としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール等が挙げられる。イミダゾール誘導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性組成物が内部離型剤を含むことで、加熱成形金型からの引き抜きを良好に行うことができる。
内部離型剤としては、引抜成形の分野で公知の内部離型剤が挙げられる。内部離型剤としては、25℃で液状の内部離型剤が好ましい。引抜成形では、熱硬化性組成物を迅速に強化繊維基材に含浸させるため、熱硬化性組成物として低粘度のものが用いられる。そのため、エポキシ樹脂等としても低粘度のものが用いられる。内部離型剤が液状であれば、エポキシ樹脂等と良好に混合できる。
25℃で液状の内部離型剤としては、有機酸誘導体、シリコーンオイル等が挙げられる。有機酸誘導体である内部離型剤の市販品としては、Axel Plastics Research Laboratories,Inc.製のMoldWiz(登録商標) INT−1846、INT−1836、INT−1850、INT−1854、INT−1888LE等が挙げられる。シリコーンオイルである内部離型剤の市販品としては、信越化学工業社製のジメチルシリコーンオイルであるKF−96等が挙げられる。
熱硬化性組成物中の硬化剤の含有量は、硬化剤の種類等に応じて適宜設定できる。たとえば、酸無水物の含有量は、エポキシ樹脂のエポキシ価/酸無水物の酸価の比が、1/1〜1/1.2の範囲内となる量とすることができる。
熱硬化性組成物中の硬化促進剤の含有量は、硬化促進剤の種類等に応じて適宜設定できる。硬化促進剤がイミダゾール誘導体である場合、イミダゾール誘導体の含有量は、たとえば、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.2〜10質量部とすることができる。
熱硬化性組成物中の内部離型剤の含有量は、たとえば、エポキシ樹脂100質量部に対し、0.2〜10質量部とすることができる。
熱硬化性組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤及び離型剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、充填剤、反応性希釈剤等が挙げられる。
熱硬化性組成物の25℃における粘度は、500〜10000mPa・sが好ましく、1000〜3000mPa・sがより好ましい。25℃における粘度が前記範囲の上限値以下であれば、熱硬化性組成物が強化繊維基材に含浸しやすい。25℃における粘度が前記範囲の下限値以上であれば、熱硬化性組成物が強化繊維基材に保持されやすい。熱硬化性組成物の25℃における粘度は、B型粘度計によって測定される値である。
熱硬化性組成物の150℃におけるキュアタイムは、10〜600秒が好ましく、30〜240秒がより好ましい。150℃におけるキュアタイムが前記範囲の上限値以下であれば、引抜成形における通常の硬化条件で充分に硬化する。ゲルタイムは、JIS K 6901:2008を参考にバス温を150℃に設定した試験によって測定される値である。
(作用機序)
以上説明した引抜成形体10にあっては、強化繊維基材として、MDに配向した複数の炭素繊維22からなる第1の強化繊維基材20を含むため、MDの強度に優れる。
また、引抜成形体10にあっては、強化繊維基材として、複数の斜め配向炭素繊維32を有する第2の強化繊維基材30を含むため、MD以外の強度にも優れる。
また、引抜成形体10にあっては、第2の強化繊維基材30が、斜め配向炭素繊維32がMDに配向した無機繊維糸条38によって補強され、かつこれらが第1のステッチング糸条40によって結束されたものであるため、第2の強化繊維基材30に対してMDに高い張力がかかってもMDに伸びにくい。そのため、斜め配向炭素繊維32の配向角度が小さくなりにくく、第2の強化繊維基材30の両側縁が中央に寄りにくい、すなわち第2の強化繊維基材30における斜め配向炭素繊維32の乱れが抑えられる。
また、引抜成形体10にあっては、従来の引抜成形体にように斜め配向強化繊維の乱れを抑えるために、第2の強化繊維基材の表面にマット成分を含む薄層を一体的に保持させる必要がない。配向性がないマット成分を含まない引抜成形体10は、単位質量あたりの強度が充分に高い。
(他の実施形態)
なお、本発明の引抜成形体は、熱硬化性組成物の硬化物であるマトリックス樹脂と強化繊維基材とを含む引抜成形体であり、強化繊維基材として、MDに配向した複数の炭素繊維からなる第1の強化繊維基材と、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束された第2の強化繊維基材とを含むものであればよく、図示例の引抜成形体10に限定はされない。
たとえば、本発明の引抜成形体は、第1の強化繊維基材を含む層と、第2の強化繊維基材を含む層との2層構造であってもよい。
本発明の引抜成形体は、第1の強化繊維基材を含む第1の表層と、第1の強化繊維基材を含む第2の表層と、第2の強化繊維基材を含む中間層とを有するものであってもよい。
本発明の引抜成形体の形状は、図示例の平板状(フラットバー形状)に限定されず、断面L形状(アングル形状)であってもよく、断面T形状であってもよく、断面C形状(チャンネル形状)であってもよく、断面H形状であってもよく、角パイプ形状であってもよく、丸パイプ形状であってもよく、その他の引抜成形可能な形状であってもよい。
第2の強化繊維基材は、複数の斜め配向炭素繊維からなる斜め配向炭素繊維シートの他に、MDに配向した複数の炭素繊維からなるMD配向炭素繊維シートおよびTD(Transverse Direction)に配向した複数の炭素繊維からなるTD配向炭素繊維シートのいずれか一方または両方をさらに有していてもよい。
第2の強化繊維基材は、2枚の斜め配向炭素繊維シートの代わりに、斜め配向炭素繊維からなる炭素繊維織物を有するものであってもよい。炭素繊維織物の組織としては、平織、綾織等が挙げられる。
第2の強化繊維基材は、1枚の斜め配向炭素繊維シートおよび無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束されたものであってもよい。
第2の強化繊維基材における第1のステッチング糸条の縫い目は、図示例のチェーンステッチ(単環縫い)に限定されず、二重環縫いであってもよく、たて方向にループをつなぎ合わせた、たて編(鎖編(チェーンステッチ)を除く。)であってもよい。たて編の種類としては、JIS L 0211:2006「繊維用語−ニット部門」に記載されたものが挙げられる。
<引抜成形体の製造方法>
引抜成形法は、熱硬化性組成物と強化繊維基材とを加熱成形金型に引き込み、加熱成形金型内で熱硬化性組成物を硬化させて所定形状の成形体とし、加熱成形金型から成形体を引き抜く方法である。
本発明の引抜成形体の製造方法においては、強化繊維基材として、炭素繊維がMDに配向した炭素繊維からなる第1の強化繊維基材と、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束された第2の強化繊維基材とを用いる。
図8は、引抜成形体の製造装置の一例を示す概略図である。
製造装置50は、加熱成形金型52と;加熱成形金型52の上流側に配置された、熱硬化性組成物を貯留する樹脂槽54と;加熱成形金型52の下流側に配置された引抜機56と;引抜機56の下流側に配置された切断機58と;第1の強化繊維基材20を構成する複数の炭素繊維トウを供給する複数のボビン(図示略)と;第1の強化繊維基材20を樹脂槽54に案内し、樹脂槽54にて熱硬化性組成物が含浸された第1の強化繊維基材20を加熱成形金型52に案内する複数のガイドロール60と;第1の表層側の第2の強化繊維基材30を供給する第1の供給ロール62と;第2の表層側の第2の強化繊維基材30を供給する第2の供給ロール64と;樹脂槽54の上流側に配置された、樹脂槽54の熱硬化性組成物とは異なる熱硬化性組成物を第1の強化繊維基材20に塗布する塗布装置66とを備える。
加熱成形金型52には、引抜成形体10の断面形状に対応した断面形状の、強化繊維基材等が挿通可能な空間Sが形成されている。また、加熱成形金型52には、空間Sに引き込まれた熱硬化性組成物を加熱し、硬化させるための加熱機構(図示せず)が設けられている。
製造装置50を用いた引抜成形体10の製造は、たとえば以下の手順で行われる。
第1の強化繊維基材20を、液状の熱硬化性組成物が貯留された樹脂槽54に浸漬し、第1の強化繊維基材20に熱硬化性組成物を含浸させる。熱硬化性組成物が含浸した第1の強化繊維基材20を樹脂槽54から引き上げ、引抜機56によって引き取ることによって加熱成形金型52の空間Sに引き込む。同時に、第1の強化繊維基材20を挟むように、第1の供給ロール62および第2の供給ロール64から供給された2枚の第2の強化繊維基材30を、引抜機56によって引き取ることによって加熱成形金型52の空間Sに引き込む。加熱成形金型52内で熱硬化性組成物を硬化させて成形体とし、これを加熱成形金型52から引抜機56によって引き抜き、引抜成形体10を得る。引抜成形体10は、必要に応じて、所定の長さとなるように切断機58で切断される。
加熱成形金型52に引き込まれる前の第2の強化繊維基材30には、熱硬化性組成物が含浸していてもよく、含浸していなくてもよい。含浸していない場合でも、加熱成形金型52に引き込まれた際、第1の強化繊維基材20に含浸した熱硬化性組成物が第2の強化繊維基材30に含浸する。
第1の供給ロール62および第2の供給ロール64から2枚の第2の強化繊維基材30を加熱成形金型52に引き込む際には、加熱成形金型52に引き込まれる第2の強化繊維基材30にかかる張力を、加熱成形金型52に引き込まれる第1の強化繊維基材20にかかる張力よりも低くすることが好ましい。第2の強化繊維基材30は、MDに配向した強化繊維が少ないため、第1の強化繊維基材20に比べMDの引っ張りに対する強度が低い。そのため、第1の強化繊維基材20と同じ張力で第2の強化繊維基材30を引抜機56によって引き取った場合、第2の強化繊維基材30の強化繊維が破断しやすい。加熱成形金型52に引き込まれる第2の強化繊維基材30にかかる張力を、加熱成形金型52に引き込まれる第1の強化繊維基材20にかかる張力よりも低くすることによって、第2の強化繊維基材30における強化繊維の破断が抑えられる。
加熱成形金型52に引き込まれる第2の強化繊維基材30にかかる張力を、加熱成形金型52に引き込まれる第1の強化繊維基材20にかかる張力よりも低くする具体的な方法としては、第1の供給ロール62または第2の供給ロール64と加熱成形金型52との間で、第2の強化繊維基材30を弛ませる方法が挙げられる。第1の供給ロール62または第2の供給ロール64と加熱成形金型52との間で、第2の強化繊維基材30を弛ませるためには、たとえば、各供給ロールにおいて供給ロールに所定のトルクを付与するブレーキ(図示略)を緩めるまたは解除する。
熱硬化性組成物としてエポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物を用いた場合、加熱成形金型52内で熱硬化性組成物が硬化して形成された成形体と、加熱成形金型52の空間Sの内壁との間の引抜抵抗が高くなる。引抜抵抗は、引抜成形体の製造の開始直後において特に高くなる。そのため、引抜成形体の製造の開始直後においては、強化繊維基材にかかる張力が高くなり、強化繊維基材の強化繊維が破断しやすい。
したがって、熱硬化性組成物としてエポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物を用いる場合は、熱硬化性組成物としてビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物を用いて引抜成形体の製造を開始し、強化繊維基材にかかる張力が安定した後、熱硬化性組成物をエポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物に切り替えることが好ましい。熱硬化性組成物としてビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物を用いた場合、加熱成形金型52内での成形体と空間Sの内壁との間の引抜抵抗が比較的低くなる。そのため、引抜成形体の製造の開始直後において、強化繊維基材にかかる張力があまり高くならず、強化繊維基材の強化繊維が破断しにくくなる。
熱硬化性組成物の切り替えは、たとえば、以下のようにして行う。
第1の強化繊維基材20を、樹脂槽54内のエポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物から上方に引き上げた状態で、第1の強化繊維基材20に、塗布装置66からビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物を塗布する。ビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物が塗布された第1の強化繊維基材20を、2枚の第2の強化繊維基材30とともに、引抜機56によって引き取ることによって加熱成形金型52の空間Sに引き込む。加熱成形金型52内でビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物を硬化させて成形体とし、これを加熱成形金型52から引抜機56によって引き抜く。
強化繊維基材にかかる張力が安定するまで、成形体の引き抜きを続ける。強化繊維基材にかかる張力が安定した後、第1の強化繊維基材20を、エポキシ樹脂を含む液状の熱硬化性組成物が貯留された樹脂槽54に浸漬すると同時に、第1の強化繊維基材20に、塗布装置66からビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物を塗布することを中止する。以後、通常の引抜成形体10の製造を続ける。
樹脂槽54の温度は、10〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。樹脂槽54の温度が前記範囲の上限値以下であれば、熱硬化性組成物の硬化反応の開始による増粘を抑制できる。樹脂槽54の温度が前記範囲の下限値以上であれば、熱硬化性組成物の強化繊維基材への含浸性が良好である。
加熱成形金型52の温度は、100〜250℃が好ましく、120〜220℃がより好ましい。加熱成形金型52の温度が前記範囲内であれば、加熱成形金型52内での熱硬化性組成物の硬化が良好に進行する。
加熱成形金型52での滞留時間は、30秒間〜5分間が好ましい。滞留時間が30秒間以上であれば、加熱成形金型52内での熱硬化性組成物の硬化が充分に進み、引抜成形体10の外観が良好である。滞留時間が5分間以下であれば、加熱成形金型52から引抜成形体10を引き抜きやすい。
引抜成形体10に対し、さらに、アフターキュアを行ってもよい。
アフターキュアは、加熱成形金型52の下流側にオーブンを設置してオンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよい。
アフターキュアの温度は、耐熱性等の物性、生産性の点から、130〜220℃が好ましく、140〜200℃がより好ましい。アフターキュアの時間は、アフターキュアの温度にもよるが、5分間〜6時間が好ましい。
(作用機序)
以上説明した引抜成形体10の製造方法にあっては、強化繊維基材の一部として、MDに配向した複数の炭素繊維22からなる第1の強化繊維基材20を用いているため、MDの強度に優れる引抜成形体10を製造できる。
また、引抜成形体10の製造方法にあっては、強化繊維基材の一部として、複数の斜め配向炭素繊維32を有する第2の強化繊維基材30を用いているため、MD以外の強度にも優れる引抜成形体10を製造できる。
また、引抜成形体10の製造方法にあっては、第2の強化繊維基材30が、斜め配向炭素繊維32がMDに配向した無機繊維糸条38によって補強され、かつこれらが第1のステッチング糸条40によって結束されたものであるため、第2の強化繊維基材30に対してMDに高い張力がかかってもMDに伸びにくい。そのため、斜め配向炭素繊維32の配向角度が小さくなりにくく、第2の強化繊維基材30の両側縁が中央に寄りにくい、すなわち第2の強化繊維基材30における斜め配向炭素繊維32の乱れが抑えられる。
また、引抜成形体10の製造方法にあっては、従来の引抜成形体の製造方法のように斜め配向強化繊維の乱れを抑えるために、第2の強化繊維基材の表面にマット成分を含む薄層を一体的に保持させる必要がない。そのため、配向性がないマット成分を含むことなく、単位質量あたりの強度が充分に高い引抜成形体10を製造できる。
(他の実施形態)
なお、本発明の引抜成形体の製造方法は、熱硬化性組成物と強化繊維基材とを加熱成形金型に引き込み、加熱成形金型内で熱硬化性組成物を硬化させて所定形状の成形体とし、加熱成形金型から成形体を引き抜く、引抜成形体の製造方法であり;強化繊維基材として、炭素繊維がMDに配向した炭素繊維からなる第1の強化繊維基材と、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束された第2の強化繊維基材とを用いる方法であればよく、図示例の製造装置50を用いる引抜成形体10の製造方法に限定はされない。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。「部」は、特に記載のない限り、「質量部」を示す。
例1〜2は実施例であり、例3は比較例である。
<使用材料>
(第1の強化繊維基材)
図3に示す第1の強化繊維基材20を用意した。MD配向炭素繊維シート24としては、炭素繊維トウ(東レ社製、T700SC−24K−60E、フィラメント数:24000本、繊度:16500dtex、引張強さ:4900MPa、引張弾性率:230GPa、伸び:2.1%、密度:18dg/cm)の44束をMDに引き揃えたもの(フィラメント数:1,056,000本)を用いた。
(第2の強化繊維基材)
図4および図5に示す第2の強化繊維基材30(SHINDO社製、目付:286g/m、幅:100mm)を用意した。第1の斜め配向炭素繊維シート34としては、炭素繊維トウ(東レ社製のT300相当品)の複数をMDに対して+45゜に引き揃えたものを用いた。第2の斜め配向炭素繊維シート36としては、炭素繊維トウ(東レ社製のT300相当品)の複数をMDに対して−45゜に引き揃えたものを用いた。無機繊維糸条38としては、ガラス繊維ヤーンを用いた。第1のステッチング糸条40および第2のステッチング糸条42としては、ポリエステル糸を用いた。第1のステッチング糸条40と第2のステッチング糸条42との間隔は、5mmとした。
(他の強化繊維基材)
炭素繊維織物:SIGMATEX UK LTD.製、DMC2831524(炭素繊維トウ(T700SC−24K−60E)を使用、繊維配向±45°、目付300g/m、幅:100mm)。
(エポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物)
表1に記載の配合にしたがい、エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤、内部離型剤を混合して、25°にて液状の熱硬化性組成物(1)〜(2)を調製した。
Figure 2018119055
表1に示す各材料は下記のものである。
エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Olin Corporation製、AIRSTONE(登録商標) 550E Epoxy Resin)。
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Olin Corporation製、DER383)。
硬化剤1:メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の混合物(Olin Corporation製、AIRSTONE(登録商標) 555H Epoxy Hardener)。
硬化剤2:メチルテトラヒドロ無水フタル酸(日立化成工業社製、HN2200)。
硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成社製、キュアゾール2E4MZ)。
内部離型剤:有機酸誘導体等の混合物(Axel Plastics Research Laboratories,Inc.製、MoldWiz(登録商標) INT−1888LE)。
(ビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物)
ビニルエステル樹脂(日本ユピカ社製、8250H)、有機過酸化物(日本油脂社製、ナイパー(登録商標)NS)、離型剤(Axel Plastics Research Laboratories,Inc.製、INT−PUL24)を含む熱硬化性組成物(3)を用意した。
<例1>
図8に示す構成の製造装置50を用いて、以下の手順で製造した。
第1の強化繊維基材20を、樹脂槽54内の熱硬化性組成物(1)から上方に引き上げた状態で、第1の強化繊維基材20に、塗布装置66から熱硬化性組成物(3)を塗布した。熱硬化性組成物(3)が塗布された第1の強化繊維基材20を、弛ませた状態の2枚の第2の強化繊維基材30とともに、引抜機56によって引き取ることによって加熱成形金型52の空間S(断面形状:C形状)に引き込んだ。加熱成形金型52内で熱硬化性組成物(3)を硬化させて成形体とし、これを加熱成形金型52から引抜機56によって引き抜いた。強化繊維基材にかかる張力が安定した後、第1の強化繊維基材20を、熱硬化性組成物(1)が貯留された樹脂槽54に浸漬すると同時に、第1の強化繊維基材20に、塗布装置66から熱硬化性組成物(3)を塗布することを中止した。
第1の強化繊維基材20を、熱硬化性組成物(1)が貯留された樹脂槽54に1.5〜2.5分間潜らせて、第1の強化繊維基材20に熱硬化性組成物を含浸させた。熱硬化性組成物(1)が含浸した第1の強化繊維基材20を樹脂槽54から引き上げ、引抜機56によって引き取ることによって加熱成形金型52の空間S(断面形状:C形状)に引き込んだ。同時に、第1の強化繊維基材20を挟むように、第1の供給ロール62および第2の供給ロール64から弛ませた状態で供給された2枚の第2の強化繊維基材30を、引抜機56によって引き取ることによって加熱成形金型52の空間Sに引き込んだ。加熱成形金型52内で熱硬化性組成物を150℃で2〜3分間加熱硬化させて成形体とし、これを加熱成形金型52から引抜機56によって引き抜き、チャンネル形状の引抜成形体10(幅:50mm、高さ:34.5mm、厚さ:3.5mm)を得た。引抜成形体10に対し、オフラインにて200℃で6時間のアフターキュアを行った。
<例2>
熱硬化性組成物(1)を熱硬化性組成物(2)に変更した以外は例1と同様にして引抜成形体を得た。
<例3>
第2の強化繊維基材30の代わりに、MDに配向したガラス繊維を有さず、かつステッチング糸条で結束されていない炭素繊維織物を用いた以外は例1と同様にして引抜成形体を得た。
<結果>
例1〜2の引抜成形体の製造時においては、第2の強化繊維基材30の両側縁が中央に寄ってくることがなく、MDに対して斜め方向に配向した炭素繊維の乱れが抑えられていた。また、例1〜2の引抜成形体は、マット成分を含まないため、充分な強度を有していた。
例3の引抜成形体の製造時においては、炭素繊維織物の両側縁が中央に寄ってしまい、MDに対して斜め方向に配向した炭素繊維の乱れが発生した。
本発明の引抜成形体は、MDに対して斜め方向に配向した炭素繊維の乱れが抑えられて強度が均一であり、かつ単位質量あたりの強度が充分に高いことから、各種引抜成形体として有用である。
10 引抜成形体、
12 第1の表層、
14 第2の表層、
16 中間層、
20 第1の強化繊維基材、
22 炭素繊維、
24 MD配向炭素繊維シート、
30 第2の強化繊維基材、
32 斜め配向炭素繊維、
34 第1の斜め配向炭素繊維シート、
36 第2の斜め配向炭素繊維シート、
38 無機繊維糸条、
40 第1のステッチング糸条、
42 第2のステッチング糸条、
42a 上糸、
42b 下糸、
50 製造装置、
52 加熱成形金型、
54 樹脂槽、
56 引抜機、
58 切断機、
60 ガイドロール、
62 第1の供給ロール、
64 第2の供給ロール64、
66 塗布装置、
A 第1の主表面、
B 第2の主表面、
S 空間。

Claims (5)

  1. 熱硬化性組成物の硬化物であるマトリックス樹脂と強化繊維基材とを含む引抜成形体であり、
    前記強化繊維基材として、MDに配向した複数の炭素繊維からなる第1の強化繊維基材と、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束された第2の強化繊維基材とを含む、引抜成形体。
  2. 前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物の硬化物である、請求項1に記載の引抜成形体。
  3. 熱硬化性組成物と強化繊維基材とを加熱成形金型に引き込み、前記加熱成形金型内で前記熱硬化性組成物を硬化させて所定形状の成形体とし、前記加熱成形金型から前記成形体を引き抜く、引抜成形体の製造方法であり、
    前記強化繊維基材として、炭素繊維がMDに配向した炭素繊維トウからなる第1の強化繊維基材と、MDに対して斜め方向に配向した複数の炭素繊維およびMDに配向した少なくとも1条の無機繊維糸条がステッチング糸条によって結束された第2の強化繊維基材とを用いる、引抜成形体の製造方法。
  4. 前記加熱成形金型に引き込まれる前記第2の強化繊維基材にかかる張力を、前記加熱成形金型に引き込まれる前記第1の強化繊維基材にかかる張力よりも低くする、請求項3に記載の引抜成形体の製造方法。
  5. 前記熱硬化性組成物としてビニルエステル樹脂を含む熱硬化性組成物を用いて引抜成形体の製造を開始し、その後、前記熱硬化性組成物をエポキシ樹脂を含む熱硬化性組成物に切り替える、請求項3または4に記載の引抜成形体の製造方法。
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