JP2018111108A - 複合部材およびこの複合部材からなる切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】WC基超硬合金とWC基超硬合金を、接合部材を介して接合した高温接合強度に優れた複合部材および切削工具を提供すること。【解決手段】WC基超硬合金部材同士を、Sm蒸着膜−Ti箔−Sm蒸着膜の積層体からなる接合部材を介して固液相拡散接合させ、WC基超硬合金部材と接合部との界面からWC基超硬合金部材には、Sm拡散層を形成し、接合部には、Co−Sm層、TiC層、Ti−Co層を形成した複合部材において、前記Sm拡散層は、5〜100μmの平均層厚を有し、かつ、前記Co−Sm層は、20〜80原子%Co−20〜80原子%Smの平均組成を有し、前記TiC層は、90原子%以上のTiCを含有し、前記Ti−Co層は、45〜75原子%Ti−25〜55原子%Coの平均組成を有する複合部材およびこの複合部材からなる切削工具。【選択図】図2
Description
本発明は、接合部の高温接合強度に優れた複合部材に関し、特に、WC基超硬合金とWC基超硬合金とを接合した複合部材およびこの複合部材からなる切削工具に関する。
従来から、工具材料としては、WC基超硬合金、TiCN基サーメット、cBN焼結体等が良く知られているが、近年、工具材料を単一素材から形成するのではなく複合部材として工具材料を形成することが提案されている。
例えば、特許文献1には、サーメット焼結体を第1の被接合材1とし、cBN焼結体またはダイヤモンド焼結体を第2の被接合材3とする接合体であって、第1の被接合材および第2の被接合材の間に1000℃未満では液相を生成しない接合材2(例えば、Ti、Co、Ni)を介して接合し、該接合は0.1MPa〜200MPaの圧力で加圧しながら通電加熱することによって行うことが提案されており、これによって得られた接合体は、切削中に、ロウ材が液相を生成する温度を超える高温となっても、接合層の接合強度が低下することがないため、高速切削加工工具やCVDコーティング切削工具として好適であるとされている。
また、特許文献2には、超硬合金焼結体を第1の被接合材1とし、cBN焼結体を第2の被接合材2とする接合体において、第1の被接合材および第2の被接合材の間にはチタン(Ti)を含有する接合材3を介して、少なくとも、第2の被接合材の背面と底面からなる2面で接合し、第2の被接合材と接合材との界面には、厚み10〜300nmの窒化チタン(TiN)化合物層を形成し、また、背面の接合層の厚みを、底面の接合層の厚みよりも薄くすることによって、接合強度が高い切削工具等の接合体を得ることが提案されている。
さらに、特許文献3には、cBNを20〜100質量%含むcBN焼結体と、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWの炭化物、炭窒化物およびこれらの相互固溶体から成る群より選択された少なくとも1種からなる硬質相:50〜97質量%と、残部として、Co、NiおよびFeから成る群より選択された少なくとも1種を主成分とする結合相:3〜50質量%とからなる硬質合金との複合体において、cBN焼結体と硬質合金との間に接合層を設け、該接合層をセラミックス相と金属相とから構成し、さらに、該接合層の厚さを2〜30μmとすることによって、複合体の接合強度を高めることが提案されている。
前記特許文献1〜3で提案された複合材料あるいはこれからなる切削工具は、通常条件の切削加工では、ある程度の性能を発揮するが、例えば、切れ刃に高負荷が作用し、かつ、高熱発生を伴う高送り、高切り込みの重切削条件では、高温接合強度が十分であるとはいえず、接合部からの破損が発生する問題があった。
そこで、切れ刃に高負荷が作用し、かつ、高熱発生を伴う重切削条件においても、接合部からの破断が生じないような、より高い高温接合強度を備えた接合部を有する複合部材およびこれからなる切削工具が望まれている。
そこで、切れ刃に高負荷が作用し、かつ、高熱発生を伴う重切削条件においても、接合部からの破断が生じないような、より高い高温接合強度を備えた接合部を有する複合部材およびこれからなる切削工具が望まれている。
本発明者らは、前記従来の複合部材およびこれからなる切削工具の問題点を解決すべく、WC基超硬合金とWC基超硬合金からなる複合部材およびこの複合材からなる切削工具、例えば、超高圧高温焼結時にcBN焼結体の焼結と同時にWC基超硬合金(裏打ち材)を接合した複合焼結体からなる切刃部とWC基超硬合金工具基体(台金)とを接合部材を介して接合した切削工具において、その接合部の接合強度を改善する方策について鋭意研究した結果、
一方のWC基超硬合金部材と他方のWC基超硬合金部材を、Ti箔の表面にSm薄膜を蒸着した接合部材を介して接合し、一方のWC基超硬合金部材と他方のWC基超硬合金部材とが接合部によって接合された複合部材において、WC基超硬合金部材と接合部との界面からWC基超硬合金の内部に向かって、WC基超硬合金の結合相中にSmが拡散した所定の平均層厚のSm拡散層が形成され、また、WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に向かって、Co−Sm層、TiC層及びTi−Co層が形成された接合部を設けることによって、WC基超硬合金部材と接合部との高温接合強度を向上させた複合部材が得られることを見出した。
一方のWC基超硬合金部材と他方のWC基超硬合金部材を、Ti箔の表面にSm薄膜を蒸着した接合部材を介して接合し、一方のWC基超硬合金部材と他方のWC基超硬合金部材とが接合部によって接合された複合部材において、WC基超硬合金部材と接合部との界面からWC基超硬合金の内部に向かって、WC基超硬合金の結合相中にSmが拡散した所定の平均層厚のSm拡散層が形成され、また、WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に向かって、Co−Sm層、TiC層及びTi−Co層が形成された接合部を設けることによって、WC基超硬合金部材と接合部との高温接合強度を向上させた複合部材が得られることを見出した。
そして、切削工具用の材料として、前記複合部材を用いた場合には、切れ刃に高負荷が作用し、かつ、高熱発生を伴う鋼や鋳鉄の重切削加工に供した場合であっても、接合部からの破断が発生することもなく、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮することができることを見出したのである。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金部材同士が1〜50μmの平均層厚を有する接合部を介して接合されている複合部材であって、
前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から、前記WC基超硬合金部材の内部に向かって、前記WC基超硬合金の結合相の平均組成がCo80原子%未満でSm20原子%以上となる平均層厚5〜100μmのSm拡散層が形成されていることを特徴とする複合部材。
(2)前記接合部におけるTiの平均組成は50〜99原子%であることを特徴とする(1)に記載の複合部材。
(3)前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に向かって、平均層厚0.1〜3μmのCo−Sm層、平均層厚0.5〜5μmのTiC層、および、Ti−Co層が形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の複合部材。
(4)前記Co−Sm層は、平均組成で20〜80原子%のCoと20〜80原子%のSmを含有し、前記TiC層は、平均組成で90原子%以上のTiCを含有し、前記Ti−Co合金層は、平均組成で45〜75原子%のTiと25〜55原子%のCoを含有することを特徴とする(3)に記載の複合部材。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の複合部材から構成されていることを特徴とする切削工具。」
を特徴とするものである。
「(1)WC基超硬合金部材同士が1〜50μmの平均層厚を有する接合部を介して接合されている複合部材であって、
前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から、前記WC基超硬合金部材の内部に向かって、前記WC基超硬合金の結合相の平均組成がCo80原子%未満でSm20原子%以上となる平均層厚5〜100μmのSm拡散層が形成されていることを特徴とする複合部材。
(2)前記接合部におけるTiの平均組成は50〜99原子%であることを特徴とする(1)に記載の複合部材。
(3)前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に向かって、平均層厚0.1〜3μmのCo−Sm層、平均層厚0.5〜5μmのTiC層、および、Ti−Co層が形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の複合部材。
(4)前記Co−Sm層は、平均組成で20〜80原子%のCoと20〜80原子%のSmを含有し、前記TiC層は、平均組成で90原子%以上のTiCを含有し、前記Ti−Co合金層は、平均組成で45〜75原子%のTiと25〜55原子%のCoを含有することを特徴とする(3)に記載の複合部材。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の複合部材から構成されていることを特徴とする切削工具。」
を特徴とするものである。
以下に、本発明について、詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の複合部材は、一方のWC基超硬合金部材と他方のWC基超硬合金部材との間に接合部材を配置し(図1(a)参照)、接合部材を介して一方のWC基超硬合金部材と他方のWC基超硬合金部材とを突き合わせ、所定の加圧力を付加した状態で、所定の温度、時間をかけて、WC基超硬合金部材と接合部材とを固液相拡散接合する(図1(b)参照)ことにより、WC基超硬合金部材同士が接合部を介して接合された本発明の複合部材を作製することができる。
図2は、図1(b)の拡大模式図を示す。
図2において、接合されるWC基超硬合金部材と接合部との界面から、WC基超硬合金部材の内部に向かって、平均層厚5〜100μmのSm拡散層が形成されており、該拡散層においては、WC基超硬合金の結合相の平均組成はCo80原子%未満でSm20原子%以上となる。
また、前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に向かって、接合部には、Co−Sm層、TiC層およびTi−Co層が形成されている。
図2において、接合されるWC基超硬合金部材と接合部との界面から、WC基超硬合金部材の内部に向かって、平均層厚5〜100μmのSm拡散層が形成されており、該拡散層においては、WC基超硬合金の結合相の平均組成はCo80原子%未満でSm20原子%以上となる。
また、前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に向かって、接合部には、Co−Sm層、TiC層およびTi−Co層が形成されている。
前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から、WC基超硬合金部材の内部に向かって形成されるSm拡散層は、Ti箔表面にSm蒸着膜を形成した接合部材を用いて固液相拡散接合を行った際、接合部材表面のSm成分が、WC基超硬合金の結合相成分であるCoと共晶反応を起こし、WC基超硬合金部材と接合部との界面で溶融するとともに、WC基超硬合金部材と接合部との界面からその内部に向けてSmが拡散したことによって形成される拡散層である。
また、固液相拡散接合時のSmの溶融によって、WC基超硬合金部材と接合部との界面での濡れ性を確保され、強固な接合が行われる。
さらに、SmはWC基超硬合金部材中に拡散し、結合相成分であるCoと合金化して等温凝固するため、高融点層が残存し、接合温度(600〜900℃)以上の温度環境で使用しても接合部が溶融・軟化することはないので、高い高温接合強度を確保することができる。
固液相拡散接合を生じ得るに十分な温度、時間、圧力を与えた場合には、該拡散層におけるWC基超硬合金の結合相成分であるCoにSmが拡散し、結合相の平均組成は、Co80原子%(以下、「原子%」を単に、「%」で示す。)未満でかつSm20%以上となり、拡散層の平均層厚は5〜100μmとなる。
なお、拡散層における好ましい結合相の平均組成は、Co50〜70%でかつSm
30〜50%の範囲内であり、また、拡散層の好ましい平均層厚は、20〜50μmである。
上記拡散層における結合相の平均組成が、Co80原子%以上、Sm20%未満の場合、あるいは、拡散層の平均層厚が5μm未満である場合には、WC基超硬合金部材と接合部材との十分な接合が行われていないため、複合部材の接合部における高温接合強度が満足できるものとはならない。
また、拡散層の平均層厚が100μmを超えるような場合には、接合部との界面近傍のWC基超硬合金部材におけるSm含有量が過剰となり、低融点化するため、高温使用条件下での使用、あるいは、高負荷条件下での使用において、接合強度が低下し、破損する恐れがある。
また、固液相拡散接合時のSmの溶融によって、WC基超硬合金部材と接合部との界面での濡れ性を確保され、強固な接合が行われる。
さらに、SmはWC基超硬合金部材中に拡散し、結合相成分であるCoと合金化して等温凝固するため、高融点層が残存し、接合温度(600〜900℃)以上の温度環境で使用しても接合部が溶融・軟化することはないので、高い高温接合強度を確保することができる。
固液相拡散接合を生じ得るに十分な温度、時間、圧力を与えた場合には、該拡散層におけるWC基超硬合金の結合相成分であるCoにSmが拡散し、結合相の平均組成は、Co80原子%(以下、「原子%」を単に、「%」で示す。)未満でかつSm20%以上となり、拡散層の平均層厚は5〜100μmとなる。
なお、拡散層における好ましい結合相の平均組成は、Co50〜70%でかつSm
30〜50%の範囲内であり、また、拡散層の好ましい平均層厚は、20〜50μmである。
上記拡散層における結合相の平均組成が、Co80原子%以上、Sm20%未満の場合、あるいは、拡散層の平均層厚が5μm未満である場合には、WC基超硬合金部材と接合部材との十分な接合が行われていないため、複合部材の接合部における高温接合強度が満足できるものとはならない。
また、拡散層の平均層厚が100μmを超えるような場合には、接合部との界面近傍のWC基超硬合金部材におけるSm含有量が過剰となり、低融点化するため、高温使用条件下での使用、あるいは、高負荷条件下での使用において、接合強度が低下し、破損する恐れがある。
前記拡散層の平均層厚は、例えば、次のような方法によって求めることができる。
走査型電子顕微鏡およびオージェ電子分光装置を用いて、WC基超硬合金部材と接合部との界面を縦断面観察し、WC基超硬合金部材側からみて、WC結晶粒が観察される臨界位置をWC基超硬合金部材と接合部との界面と定める。
前記界面からWC基超硬合金の内部側へ、界面に垂直な方向500μmにわたって、10μm間隔で50本の線分を引く。
該線分について、線分析を行ってWC基超硬合金の結合相中のCo含有量およびSm含有量を測定し、結合相中にSmを20%以上含有する測定点のうち、界面からWC基超硬合金の内部側に最も離れた測定点までの距離を各線分における拡散領域幅とする。
50本の線分についての線分析のうちで、前記拡散領域幅の広いもの10本の拡散領域幅を平均し、この値を拡散層の平均層厚として求める。
走査型電子顕微鏡およびオージェ電子分光装置を用いて、WC基超硬合金部材と接合部との界面を縦断面観察し、WC基超硬合金部材側からみて、WC結晶粒が観察される臨界位置をWC基超硬合金部材と接合部との界面と定める。
前記界面からWC基超硬合金の内部側へ、界面に垂直な方向500μmにわたって、10μm間隔で50本の線分を引く。
該線分について、線分析を行ってWC基超硬合金の結合相中のCo含有量およびSm含有量を測定し、結合相中にSmを20%以上含有する測定点のうち、界面からWC基超硬合金の内部側に最も離れた測定点までの距離を各線分における拡散領域幅とする。
50本の線分についての線分析のうちで、前記拡散領域幅の広いもの10本の拡散領域幅を平均し、この値を拡散層の平均層厚として求める。
また、前記拡散層の平均組成は、例えば、次のような方法によって求めることができる。
走査型電子顕微鏡を用いて、WC基超硬合金部材と接合部との界面を縦断面観察し、接合界面に平行な3本の線分を、拡散層を厚さ方向に4等分するように引き、オージェ電子分光装置を用いて、各直線状に存在する3点の結合相上で点測定を行い、測定点9点の測定値を平均することによって、拡散層におけるCo、Smの平均組成を求める。
走査型電子顕微鏡を用いて、WC基超硬合金部材と接合部との界面を縦断面観察し、接合界面に平行な3本の線分を、拡散層を厚さ方向に4等分するように引き、オージェ電子分光装置を用いて、各直線状に存在する3点の結合相上で点測定を行い、測定点9点の測定値を平均することによって、拡散層におけるCo、Smの平均組成を求める。
固液相拡散接合時に、接合部には、WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に向けて、Co−Sm層、TiC層およびTi−Co層が形成されるが、接合部全体としては、Tiの平均含有量が50〜99%であることが好ましい。
接合部全体としてのTiの平均含有量が50%未満では、接合部自体の強度が低下し、複合部材に高負荷が作用した場合には、接合部自体から破断・破損する恐れがあり、一方、Tiの平均含有量が99%を超えると、固液相拡散接合におけるSmの拡散が十分でないため、WC基超硬合金部材と接合部の接合強度が十分でなく、接合界面から破断することがあるという理由による。
接合部全体としてのTiの平均含有量が50%未満では、接合部自体の強度が低下し、複合部材に高負荷が作用した場合には、接合部自体から破断・破損する恐れがあり、一方、Tiの平均含有量が99%を超えると、固液相拡散接合におけるSmの拡散が十分でないため、WC基超硬合金部材と接合部の接合強度が十分でなく、接合界面から破断することがあるという理由による。
固液相拡散接合時に形成される前記Co−Sm層は、平均層厚0.1〜3μmであって、その組成は、20〜80%のCoと20〜80%のSmからなることが好ましい。
このCo−Sm層は、固液相拡散接合時、溶融したSmとのCoの共晶化反応によって形成されるものであるが、その平均層厚が0.1μm未満の場合、あるいは、Co含有量が20%未満であってSm含有量が80%を超えるような場合には、WC基超硬合金の内部へのSmの拡散が不十分であって、所定の平均層厚の拡散層が形成されないため、WC基超硬合金部材と接合部の界面接合強度が十分でない。
一方、Co−Sm層の平均層厚が3μmを超えるような場合、あるいは、Co含有量が80%を超えSm含有量が20%未満となる場合には、拡散層近傍のCo量が減少し、その結果、WC基超硬合金自体の靱性が低下するため、高負荷が作用した際に、WC基超硬合金部材と接合部との界面近傍で破断を起こしやすくなる。
したがって、Co−Sm層の平均層厚は0.1〜3μm、また、Co−Sm層の組成は、20〜80%Co−20〜80%Smとすることが好ましい。
なお、前記Co−Sm層の平均層厚、組成は、複合部材作成時の固液相拡散接合条件によって制御されるが、後記するTiC層の平均層厚、組成、また、Ti−Co層の組成についても、固液相拡散接合条件によって制御されることになる。
このCo−Sm層は、固液相拡散接合時、溶融したSmとのCoの共晶化反応によって形成されるものであるが、その平均層厚が0.1μm未満の場合、あるいは、Co含有量が20%未満であってSm含有量が80%を超えるような場合には、WC基超硬合金の内部へのSmの拡散が不十分であって、所定の平均層厚の拡散層が形成されないため、WC基超硬合金部材と接合部の界面接合強度が十分でない。
一方、Co−Sm層の平均層厚が3μmを超えるような場合、あるいは、Co含有量が80%を超えSm含有量が20%未満となる場合には、拡散層近傍のCo量が減少し、その結果、WC基超硬合金自体の靱性が低下するため、高負荷が作用した際に、WC基超硬合金部材と接合部との界面近傍で破断を起こしやすくなる。
したがって、Co−Sm層の平均層厚は0.1〜3μm、また、Co−Sm層の組成は、20〜80%Co−20〜80%Smとすることが好ましい。
なお、前記Co−Sm層の平均層厚、組成は、複合部材作成時の固液相拡散接合条件によって制御されるが、後記するTiC層の平均層厚、組成、また、Ti−Co層の組成についても、固液相拡散接合条件によって制御されることになる。
前記TiC層は、接合部材として用いたTi箔のTi成分と、WC基超硬合金の構成成分であるCが、固液相拡散接合時の反応で形成されたものであるが、前記所定の平均層厚及び組成の拡散層、また、前記所定平均層厚及び組成のCo―Sm層を形成させたときに、平均層厚0.5〜5μmの層として必然的に形成される層である。
TiC層の主要成分は、TiCであって、90%以上のTiCが含有されているが、TiC以外の成分(例えば、W成分、Co成分、Sm成分)が微量含有されていても、TiC層の高温強度に大きな悪影響を及ぼさないことから、W成分、Co成分、Sm成分等の微量成分については、合計含有量で10%未満の含有が許容される。
TiC層の主要成分は、TiCであって、90%以上のTiCが含有されているが、TiC以外の成分(例えば、W成分、Co成分、Sm成分)が微量含有されていても、TiC層の高温強度に大きな悪影響を及ぼさないことから、W成分、Co成分、Sm成分等の微量成分については、合計含有量で10%未満の含有が許容される。
前記Ti−Co層は、固液相拡散接合時にWC基超硬合金から拡散してきたCoと、接合部材として用いたTi箔のTi成分が反応して形成される層であるが、その組成は、Tiが45〜75%、また、Coが25〜55%であることが好ましい。
前記Ti−Co合金層において、Tiが45%未満でCoが55%を超えると、WC基超硬合金からのCo拡散量が多すぎるため、WC基超硬合金自体の強度が低下しやすくなり、一方、Tiが75%を超えCoが25%未満になると、接合部を介したWC基超硬合金同士の強固な接合状態を維持できなくなる。
したがって、接合部に形成されるTi−Co層におけるTi含有量は45〜75%、また、Co含有量は25〜55%とすることが好ましい。
前記Ti−Co合金層において、Tiが45%未満でCoが55%を超えると、WC基超硬合金からのCo拡散量が多すぎるため、WC基超硬合金自体の強度が低下しやすくなり、一方、Tiが75%を超えCoが25%未満になると、接合部を介したWC基超硬合金同士の強固な接合状態を維持できなくなる。
したがって、接合部に形成されるTi−Co層におけるTi含有量は45〜75%、また、Co含有量は25〜55%とすることが好ましい。
前記Co−Sm層、TiC層およびTi−Co層の平均層厚、組成は、次のようにして求めることができる。
WC基超硬合金部材と接合部との界面から、接合部側に界面に垂直な方向50μmにかけて、面状の元素分析を行い、接合部中でCoおよびSmを含有する層をCo−Sm層とし、TiおよびCを含有する層をTiC層とし、TiとCoを含有する層をTi−Co層として、各層の平均層厚および各層における各成分の含有量を測定し、各測定値を平均することによって、各層の平均層厚、平均組成を求めた。
なお、TiおよびCを含有するとともに、W、SmおよびTiの測定された合計含有量が10%未満である層はTiC層とした。
WC基超硬合金部材と接合部との界面から、接合部側に界面に垂直な方向50μmにかけて、面状の元素分析を行い、接合部中でCoおよびSmを含有する層をCo−Sm層とし、TiおよびCを含有する層をTiC層とし、TiとCoを含有する層をTi−Co層として、各層の平均層厚および各層における各成分の含有量を測定し、各測定値を平均することによって、各層の平均層厚、平均組成を求めた。
なお、TiおよびCを含有するとともに、W、SmおよびTiの測定された合計含有量が10%未満である層はTiC層とした。
本発明では、特定構造、材質の接合部材を用い、固液相拡散接合を施すことにより、前記本発明の複合部材を得ることができる。
本発明で使用する接合部材としては、前述したように、Sm蒸着膜−Ti箔−Sm蒸着膜の積層体からなる平均層厚1〜50μmの接合部材を用いることができ、Sm蒸着膜の厚さは、0.1〜5μmとすることが好ましい。
本発明で使用する接合部材としては、前述したように、Sm蒸着膜−Ti箔−Sm蒸着膜の積層体からなる平均層厚1〜50μmの接合部材を用いることができ、Sm蒸着膜の厚さは、0.1〜5μmとすることが好ましい。
本発明の複合部材は、例えば、以下の方法により、作製することができる。
前記の接合部材を、一方のWC基超硬合金部材と他方のWC基超硬合金部材との間に介在させ、例えば、1×10−3Pa以下の真空中、600〜900℃の範囲内の所定温度に5〜600分間保持し、荷重0.5〜10MPaの条件で加圧し、固液相拡散接合することによって、WC基超硬合金部材中に拡散層が形成され、また、接合部材中には、Co−Sm層、TiC層およびTi−Co層が形成されている接合部を有する複合部材を作製することができる。
特に、固液相拡散接合時において、接合部材表面のSm成分が溶融して、WC基超硬合金部材と接合部との界面での濡れ性を確保して高温接合強度を高めるとともに、WC基超硬合金の結合相であるCoと合金化して等温凝固する際、高融点層が残存するため高温接合強度を高めるため、すぐれた高温接合強度を備えた複合材料が形成される。
前記の接合部材を、一方のWC基超硬合金部材と他方のWC基超硬合金部材との間に介在させ、例えば、1×10−3Pa以下の真空中、600〜900℃の範囲内の所定温度に5〜600分間保持し、荷重0.5〜10MPaの条件で加圧し、固液相拡散接合することによって、WC基超硬合金部材中に拡散層が形成され、また、接合部材中には、Co−Sm層、TiC層およびTi−Co層が形成されている接合部を有する複合部材を作製することができる。
特に、固液相拡散接合時において、接合部材表面のSm成分が溶融して、WC基超硬合金部材と接合部との界面での濡れ性を確保して高温接合強度を高めるとともに、WC基超硬合金の結合相であるCoと合金化して等温凝固する際、高融点層が残存するため高温接合強度を高めるため、すぐれた高温接合強度を備えた複合材料が形成される。
前記の固液相拡散接合により作製した本発明の複合部材は、一方のWC基超硬合金部材を切刃部側とし、他方のWC基超硬合金部材を工具基体とすることにより切削工具を構成することができる。
より具体的にいえば、例えば、複合部材の一方のWC基超硬合金部材を、切刃部側であるcBN焼結体の裏打ち材とし、また、他方のWC基超硬合金部材を工具基体(台金)とすることにより、cBN切削工具を形成することができる。
より具体的にいえば、例えば、複合部材の一方のWC基超硬合金部材を、切刃部側であるcBN焼結体の裏打ち材とし、また、他方のWC基超硬合金部材を工具基体(台金)とすることにより、cBN切削工具を形成することができる。
本発明は、WC基超硬合金部材同士を、Ti箔の表面にSm蒸着膜が形成された積層体からなる接合部材を介して固液相拡散接合することによって、WC基超硬合金部材と接合部との界面からWC基超硬合金部材の内部にかけてSm拡散層を形成し、かつ、接合部には、接合部の厚さ方向中心に向かってCo−Sm層、TiC層およびTi−Co層を形成することによって、高温接合強度に優れた複合部材を得ることができるのである。
また、上記複合部材から切削工具を構成した場合には、切刃に高負荷が作用する重切削加工に供した場合であっても、接合部からの破断を生じることはなく、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮するのである。
また、上記複合部材から切削工具を構成した場合には、切刃に高負荷が作用する重切削加工に供した場合であっても、接合部からの破断を生じることはなく、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮するのである。
つぎに、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
なお、以下に説明した実施例は、本発明の一実施態様であって、本発明の具体的な実施の形態は、これに制限されるものではない。
なお、以下に説明した実施例は、本発明の一実施態様であって、本発明の具体的な実施の形態は、これに制限されるものではない。
原料粉末として、いずれも0.5〜1μmの平均粒径を有するWC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度1400℃、保持時間1時間の条件で焼結し、表1に示される4種のWC基超硬合金焼結体(以下、単に「超硬合金」という)A−1〜A−4を形成した。
次に、cBN焼結体の原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有するcBN粉末、TiN粉末、TiCN粉末、TiB2粉末、TiC粉末、AlN粉末、Al2O3粉末を用意し、これら原料粉末を所定の配合組成で配合し、ボールミルで24時間アセトンを用いて湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で直径15mm×厚さ1mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形した。
ついで、前記超硬合金A−1〜A−4を、直径15mm×厚さ2mmのサイズの焼結体とし、これを、cBN焼結体の焼結時の裏打ち材とし、裏打ち材上に前記cBN圧粉体を表2に示す組合せで積層し、ついでこの積層体を、超高圧発生装置を用いて、温度:1300℃、圧力:5.5GPa、時間:30分の条件で焼結し、複合焼結体B−1〜B−4を作製した。
複合焼結体B−1〜B−4のcBN焼結体の組成について、cBN焼結体断面研磨面のSEM観察結果の画像分析によりcBNの面積%を容量%として求めた。
cBN以外の成分については、主結合相およびその他の結合相を構成している成分を確認するに止めた。その結果を表2に示す。
ついで、前記超硬合金A−1〜A−4を、直径15mm×厚さ2mmのサイズの焼結体とし、これを、cBN焼結体の焼結時の裏打ち材とし、裏打ち材上に前記cBN圧粉体を表2に示す組合せで積層し、ついでこの積層体を、超高圧発生装置を用いて、温度:1300℃、圧力:5.5GPa、時間:30分の条件で焼結し、複合焼結体B−1〜B−4を作製した。
複合焼結体B−1〜B−4のcBN焼結体の組成について、cBN焼結体断面研磨面のSEM観察結果の画像分析によりcBNの面積%を容量%として求めた。
cBN以外の成分については、主結合相およびその他の結合相を構成している成分を確認するに止めた。その結果を表2に示す。
次に、本発明接合部材1〜4として、表3に示すSm蒸着膜−Ti箔−Sm蒸着膜からなる積層体C−1〜C−4を用意した。
また、後記する比較例のために、比較例接合部材5〜7として、同じく表3に示すSm蒸着膜−Ti箔−Sm蒸着膜からなる積層体C−5〜C−7も用意した。
また、後記する比較例のために、比較例接合部材5〜7として、同じく表3に示すSm蒸着膜−Ti箔−Sm蒸着膜からなる積層体C−5〜C−7も用意した。
次いで、超硬合金A−1〜A−4と複合焼結体B−1〜B−4の間に、表3に示す本発明の接合部材1〜4を挿入介在させ、表4に示す条件(即ち、1×10−3Pa以下の真空中、600〜900℃の範囲内の所定温度に5〜600分間保持し、0.5〜10MPaの加圧力を付加した条件)で複合焼結体と超硬合金を加圧接合し、表6に示す拡散層を形成するとともに、同じく表6に示すCo−Sm層、TiC層及びTi−Co層を備えた接合部を有する本発明複合部材1〜10を作製した。
なお、複合焼結体はcBN焼結体が外面、裏打ち材が内面となるように配置、即ち、裏打ち材であるWC基超硬合金と工具基体(台金)であるWC基超硬合金が接合部材を介し接合するように配置した。
また、今回の実施例においては、裏打ち材であるWC基超硬合金と同じ組成のWC基超硬合金を工具基体(台金)であるWC基超硬合金として用いたが、本発明の範囲内になるように異なる組成のWC基超硬合金を用い接合を行ってもよい。
なお、複合焼結体はcBN焼結体が外面、裏打ち材が内面となるように配置、即ち、裏打ち材であるWC基超硬合金と工具基体(台金)であるWC基超硬合金が接合部材を介し接合するように配置した。
また、今回の実施例においては、裏打ち材であるWC基超硬合金と同じ組成のWC基超硬合金を工具基体(台金)であるWC基超硬合金として用いたが、本発明の範囲内になるように異なる組成のWC基超硬合金を用い接合を行ってもよい。
比較のために、表3に示される接合部材を用い、これを、超硬合金A−1〜A−4と複合焼結体B−1〜B−4の間に介在装入し、表5に示す条件で、複合焼結体と超硬合金を加圧接合し、表7に示す拡散層、あるいは、表7に示す各層を備えた接合部を有する比較例複合部材1〜10を作製した。
なお、複合焼結体の接合配置は本発明複合部材と同様とした。
なお、複合焼結体の接合配置は本発明複合部材と同様とした。
ついで、本発明複合部材1〜10及び比較例複合部材1〜10について、WC基超硬合金部材と接合部との界面から内部に向けて形成された拡散層、WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に形成されたCo−Sm層、TiC層およびTi−Co層の平均層厚、成分組成を、走査型電子顕微鏡及びオージェ電子分光装置を用いて、次のように測定・算出した。
まず、WC基超硬合金部材と接合部との界面から内部に向けて形成された拡散層について、WC基超硬合金部材と接合部との界面を縦断面観察し、WC基超硬合金部材側からみて、WC結晶粒が観察される臨界位置をWC基超硬合金部材と接合部との界面と定めた。
ついで、前記界面からWC基超硬合金の内部側へ、界面に垂直な方向500μmにわたって、10μm間隔で50本の線分を引いた。
該線分について、線分析を行ってWC基超硬合金の結合相中のCo含有量およびSm含有量を測定し、結合相中にSmを20%以上含有する測定点のうち、界面からWC基超硬合金の内部側に最も離れた測定点までの距離を各線分における拡散領域幅とした。
50本の線分についての線分析のうちで、前記拡散領域幅の広いもの10本の拡散領域幅を平均し、この値を拡散層の平均層厚として求めた。
また、前記拡散層の平均組成は、走査型電子顕微鏡を用いて、WC基超硬合金部材と接合部との界面を縦断面観察し、接合界面に平行な3本の線分を、拡散層を厚さ方向に4等分するように引き、オージェ電子分光装置を用いて、各直線状に存在する3点の結合相上で点測定を行い、測定点9点の測定値を平均することによって、拡散層におけるCo、Smの平均組成を求めた。
ついで、前記界面からWC基超硬合金の内部側へ、界面に垂直な方向500μmにわたって、10μm間隔で50本の線分を引いた。
該線分について、線分析を行ってWC基超硬合金の結合相中のCo含有量およびSm含有量を測定し、結合相中にSmを20%以上含有する測定点のうち、界面からWC基超硬合金の内部側に最も離れた測定点までの距離を各線分における拡散領域幅とした。
50本の線分についての線分析のうちで、前記拡散領域幅の広いもの10本の拡散領域幅を平均し、この値を拡散層の平均層厚として求めた。
また、前記拡散層の平均組成は、走査型電子顕微鏡を用いて、WC基超硬合金部材と接合部との界面を縦断面観察し、接合界面に平行な3本の線分を、拡散層を厚さ方向に4等分するように引き、オージェ電子分光装置を用いて、各直線状に存在する3点の結合相上で点測定を行い、測定点9点の測定値を平均することによって、拡散層におけるCo、Smの平均組成を求めた。
また、前記Co−Sm層、TiC層およびTi−Co層の平均層厚、組成は、次のようにして求めた。
WC基超硬合金部材と接合部との界面から、接合部側に界面に垂直な方向50μmにかけて、10本の線分を引き、同線分上で元素分析を行い、接合部中でCoおよびSmを含有する層をCo−Sm層とし、TiおよびCを含有する層をTiC層とし、TiとCoを含有する層をTi−Co層として、各層の平均層厚を測定した。また、各層における厚さ方向の中央点における各成分の含有量を測定した。これら10本の線分上の各測定値を平均することによって、各層の平均層厚、平均組成を求めた。
なお、TiおよびCを含有するとともに、W、SmおよびTiの測定された合計含有量が10%未満である層はTiC層として扱った。
表6、表7に、その結果を示す。
WC基超硬合金部材と接合部との界面から、接合部側に界面に垂直な方向50μmにかけて、10本の線分を引き、同線分上で元素分析を行い、接合部中でCoおよびSmを含有する層をCo−Sm層とし、TiおよびCを含有する層をTiC層とし、TiとCoを含有する層をTi−Co層として、各層の平均層厚を測定した。また、各層における厚さ方向の中央点における各成分の含有量を測定した。これら10本の線分上の各測定値を平均することによって、各層の平均層厚、平均組成を求めた。
なお、TiおよびCを含有するとともに、W、SmおよびTiの測定された合計含有量が10%未満である層はTiC層として扱った。
表6、表7に、その結果を示す。
次に、本発明複合部材1〜10及び比較例複合部材1〜10から切削工具を作製し、切削加工における破断発生の有無を調査し、これによって本発明複合部材1〜10の特性を評価した。
まず、複合部材からなる切削工具は、以下のように作製した。
前記で作製した複合焼結体B−1〜B−4を、平面形状:開き角80°の一辺が4mmの二等辺三角形×厚さ:2mmの寸法に切断した。続いて、前記超硬合金A−1〜A−4を、平面形状:12.7mmの内接円で開き角80°の菱形×厚さ:4.76mmの寸法の焼結体とし、この焼結体の上下平行面の内、何れかの面の1角を、研削盤を用いて上記複合焼結体の形状に対応した大きさの切欠きを形成した。この切欠きの底面の面積は2.96mm2であり、側面の面積は4.89mm2である。次いで、超硬合金A−1〜A−4と複合焼結体B−1〜B−4の間に、表3に示される接合部材を挿入介在させ、表4に示す条件で複合焼結体とWC基超硬合金を加圧接合し、この複合部材を外周研磨加工後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNGA120408のインサート形状を有する、本発明切削工具1〜10を作製した。
なお、複合焼結体はcBN焼結体が外面、裏打ち材が内面となるよう、即ち、裏打ち材と工具基体(台金)が接合部材を介し接合するように配置した。
また、これら本発明切削工具1〜10の接合部は表6に示す本発明複合部材1〜10と実質的に同様であることを確認した。
同様に、前記で作製した複合焼結体B−1〜B−4と、前記で作製した超硬合金A−1〜A−4の間に、表3に示す接合部材を挿入介在させ、表5に示す条件で加圧接合し、比較例切削工具1〜10を作製した。
また、これら比較例切削工具1〜10の接合部は表7に示す比較例複合部材1〜10と実質的に同様であることを確認した。
まず、複合部材からなる切削工具は、以下のように作製した。
前記で作製した複合焼結体B−1〜B−4を、平面形状:開き角80°の一辺が4mmの二等辺三角形×厚さ:2mmの寸法に切断した。続いて、前記超硬合金A−1〜A−4を、平面形状:12.7mmの内接円で開き角80°の菱形×厚さ:4.76mmの寸法の焼結体とし、この焼結体の上下平行面の内、何れかの面の1角を、研削盤を用いて上記複合焼結体の形状に対応した大きさの切欠きを形成した。この切欠きの底面の面積は2.96mm2であり、側面の面積は4.89mm2である。次いで、超硬合金A−1〜A−4と複合焼結体B−1〜B−4の間に、表3に示される接合部材を挿入介在させ、表4に示す条件で複合焼結体とWC基超硬合金を加圧接合し、この複合部材を外周研磨加工後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNGA120408のインサート形状を有する、本発明切削工具1〜10を作製した。
なお、複合焼結体はcBN焼結体が外面、裏打ち材が内面となるよう、即ち、裏打ち材と工具基体(台金)が接合部材を介し接合するように配置した。
また、これら本発明切削工具1〜10の接合部は表6に示す本発明複合部材1〜10と実質的に同様であることを確認した。
同様に、前記で作製した複合焼結体B−1〜B−4と、前記で作製した超硬合金A−1〜A−4の間に、表3に示す接合部材を挿入介在させ、表5に示す条件で加圧接合し、比較例切削工具1〜10を作製した。
また、これら比較例切削工具1〜10の接合部は表7に示す比較例複合部材1〜10と実質的に同様であることを確認した。
つぎに、前記各種の切削工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明切削工具1〜10、比較例切削工具1〜10について、以下に示す浸炭焼き入れ鋼の乾式高速重切削試験を行い、刃先脱落の有無および破断部の場所を観察した。
被削材:JIS・SCM415(硬さ:58HRc)の丸棒、
切削速度:270 m/min.、
切り込み:0.4 mm、
送り:0.3 mm/rev.、
切削時間:13分、
(通常の切削速度、送りは、それぞれ、150m/min、0.2mm/rev.)
表8に、切削試験結果を示す。
被削材:JIS・SCM415(硬さ:58HRc)の丸棒、
切削速度:270 m/min.、
切り込み:0.4 mm、
送り:0.3 mm/rev.、
切削時間:13分、
(通常の切削速度、送りは、それぞれ、150m/min、0.2mm/rev.)
表8に、切削試験結果を示す。
表8に示されるように、本発明複合部材1〜10から構成された本発明切削工具1〜10は、刃先の脱落もなく、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮することから、本発明複合部材の接合部は、すぐれた高温接合強度を有するといえる。
これに対して、比較例複合部材1〜10から構成される比較例切削工具1〜10は、切削中に接合部から刃先脱落が生じ、早期に工具寿命に至ることから、本発明複合部材に比して、接合部の高温接合強度が劣っていることは明らかである。
これに対して、比較例複合部材1〜10から構成される比較例切削工具1〜10は、切削中に接合部から刃先脱落が生じ、早期に工具寿命に至ることから、本発明複合部材に比して、接合部の高温接合強度が劣っていることは明らかである。
なお、本実施例においては、切削工具としてインサートを例にとって説明したが、本発明は、インサートに限られることなく、ドリル、エンドミルなど切刃部と工具本体との接合部をもつすべての切削工具、ビット等の掘削工具に適用可能であることはいうまでもない。
本発明の複合部材は、その接合部の高温接合強度が大であり、この複合部材から作製した切削工具は、各種の鋼や鋳鉄などの高速重切削加工等の高負荷切削加工に使用することができ、しかも、長期に亘って安定した切削性能を発揮するものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (5)
- WC基超硬合金部材同士が1〜50μmの平均層厚を有する接合部を介して接合されている複合部材であって、
前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から、前記WC基超硬合金部材の内部に向かって、前記WC基超硬合金の結合相の平均組成がCo80原子%未満でSm20原子%以上となる平均層厚5〜100μmのSm拡散層が形成されていることを特徴とする複合部材。 - 前記接合部におけるTiの平均組成は50〜99原子%であることを特徴とする請求項1に記載の複合部材。
- 前記WC基超硬合金部材と接合部との界面から接合部の厚さ方向中心側に向かって、平均層厚0.1〜3μmのCo−Sm層、平均層厚0.5〜5μmのTiC層、および、Ti−Co層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の複合部材。
- 前記Co−Sm層は、平均組成で20〜80原子%のCoと20〜80原子%のSmを含有し、前記TiC層は、平均組成で90原子%以上のTiCを含有し、前記Ti−Co合金層は、平均組成で45〜75原子%のTiと25〜55原子%のCoを含有することを特徴とする請求項3に記載の複合部材。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合部材から構成されていることを特徴とする切削工具。
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